IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧 ▶ 西川ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図1
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図2
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図3
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図4
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図5
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図6
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図7
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図8
  • 特許-ガスケットとガスケット付き外壁パネル 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ガスケットとガスケット付き外壁パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20231128BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20231128BHJP
   E04C 2/38 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
E04B1/684 D
F16J15/10 P
F16J15/10 S
E04C2/38 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019217304
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085298
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-032132(JP,A)
【文献】特開平08-302845(JP,A)
【文献】特開平04-182540(JP,A)
【文献】特開平10-245901(JP,A)
【文献】米国特許第05749282(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/684
F16J 15/10
E04C 2/38
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次防水材と二次防水材が繋ぎ部を介して一体となっているガスケットであって、
前記ガスケットの長手方向に直交する、前記一次防水材と前記二次防水材の断面形状が異なっており、
前記ガスケットがその途中位置に折り曲げ部を有しており、
前記折り曲げ部を介して折り曲げられ、平面視L形の線形に姿勢変更自在であることを特徴とする、ガスケット。
【請求項2】
前記一次防水材が、複数の中空を有していることを特徴とする、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記二次防水材が、
外壁パネルを構成する外壁面材の背面に固定される固定部と、
前記固定部の側面から張り出して前記一次防水材側に位置する雨水排水部と、
前記固定部の前記側面から張り出して室内側に位置する雨水遮蔽部と、を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
外壁面材と、該外壁面材の背面に取り付けられている縦胴縁と、該縦胴縁の背面に取り付けられている防水シート及び断熱ボードと、該断熱ボードの背面に取り付けられている外壁フレームと、を有する、外壁パネルであって、
一次防水材と二次防水材が繋ぎ部を介して一体となっているガスケットの長手方向に直交する、該一次防水材と該二次防水材の断面形状が異なっている、該ガスケットの該一次防水材が、前記外壁面材のうち、縦目地及び/又は横目地を形成する小口面に配設され、前記外壁面材の背面と前記縦胴縁と前記防水シートにより形成されている空間に二次防水材が嵌め込まれていることを特徴とする、ガスケット付き外壁パネル。
【請求項5】
外壁面材と、該外壁面材の背面に取り付けられている縦胴縁と、該縦胴縁の背面に取り付けられている防水シート及び断熱ボードと、該断熱ボードの背面に取り付けられている外壁フレームと、を有する、コーナーカバーを形成する外壁パネルであって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスケットが前記折り曲げ部を介して折り曲げられて平面視L形の線形の姿勢とされた状態で、前記コーナーカバーを構成する外壁面材の横目地を形成する小口面に前記一次防水材が配設され、前記コーナーカバーの背面と前記縦胴縁と前記防水シート及びにより形成されている空間に前記二次防水材が嵌め込まれていることを特徴とする、ガスケット付き外壁パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットとガスケット付き外壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば都市部において鉄骨造の建物を施工するに当たり、施工対象の建物の外壁と隣地境界との間には、足場の組立てに十分なスペースがない場合が往々にしてある。あるいは、仮に足場を組むことができたとしても、足場と外壁設置位置との間に外壁パネルが入り込むスペースや、さらには、外壁パネルを設置するためのスペースがない場合がある。
【0003】
通常、足場と外壁設置位置との間に十分なスペースがある場合は、クレーン等の重機にて吊り上げられた外壁パネルがこのスペースに落とし込まれ、足場上にいる作業員は、外壁パネルをその下方が外壁設置位置側に向くようにして斜め姿勢とし、外壁パネルの下端に取り付けられている取り付けボルトを、各階の外壁設置位置の下方に取り付けられている下方取り付け金具の有する溝に対してまず設置する。そして、この取り付けボルトと溝との係合部を支点として、外壁パネルの上方を外壁設置位置側に起こし、外壁パネルの上方を屋外側から室内側へ面外方向に回動させることにより、外壁パネルの上端に開設されているボルト孔を、外壁設置位置にある上方取り付け金具の有するボルト孔に位置合わせする。双方のボルト孔が位置合わせされることにより貫通孔が形成され、この貫通孔にボルトを挿通し、ナット締めすることにより、外壁パネルの取り付けが行われる。
【0004】
すなわち、この施工では、外壁パネルの下端が固定されてここを支点として、外壁パネルの上方が屋外側から室内側へ円弧を描いて面外の動きで回動しながら設置されることから、外壁設置位置と足場との間には、ある程度余裕のあるスペースが必要になる。
【0005】
そこで、上記するように足場を設置するスペースがない狭小敷地においても、外壁パネルを好適に施工することのできる建築方法が提案されている。具体的には、建物の躯体を構成する下階天井梁及び上階天井梁の長手方向に延びるように、それぞれ案内レールを設ける。一方、下階外壁パネル及び上階外壁パネルの上端部には、案内レールに引っ掛けられるハンガーを取り付ける。そして、それぞれのハンガーを各天井梁の案内レールに引っ掛けることにより、各外壁パネルは各天井梁に吊り下げられた状態となる。この吊り下げ状態においてハンガーを案内レールに沿ってスライドさせることにより、各外壁パネルを所定の取り付け位置に移動させる。この取り付け位置において、各外壁パネルを屋内側からボルト等により固定する建築方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
例えば特許文献1に記載の建築方法のように、外壁パネルを横引き(もしくはスライド)しながら建物の架構に設置することにより、狭小敷地においても外壁パネルの設置が可能になる。ところで、一般に工場生産化(工業化)された外壁においては、面材(外壁面材)、外壁フレーム、断熱材、防水シート、縦胴縁(通気下地)等が工場にて組み立てられることにより外壁パネルが製作され、現場に搬送される。例えば、クレーンにて吊り下げられた外壁パネルが、上記するように横引きされながら、建物の架構に対して左右及び上下に順次設置される。
【0007】
従来の一般的な外壁パネルの設置方法、すなわち、横引きによる設置方法ではなく、外壁パネルの下方を外壁設置位置に係合させ、外壁パネルの上方を屋外側へ回動させながら起こして順次設置する設置方法では、外壁パネルの設置後に、外壁パネル間の目地(縦目地、横目地(階間目地を含む))に防水用のガスケットが設置される。
【0008】
このガスケットとしては、一般にその長手方向に直交する断面形状が中心軸に対して左右対称となっている。このようなガスケットの一例として、例えば、レインバリヤ部とウインドバリヤ部の役割が的確に発揮されるガスケットが提案されている。より具体的には、隣り合う外壁パネルの間に形成される目地内の中央側に位置する芯部と、外壁パネルの外壁面材の裏面に設けられている縦胴縁の間の目地となる空間内で芯部から目地幅方向に突出し、空間内へ侵入した水を受け止めて流す第3フィン部(レインバリヤ部)と、第3フィン部から独立して、縦胴縁の裏面に設けられている板材の小口面の間の箇所で芯部から目地幅方向に突出し、当該箇所と空間との間を封じる第2フィン(ウインドバリヤ部)と、を備えるガスケットである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-127927号公報
【文献】特開2016-132953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載のガスケットによれば、目地にガスケットを装着する際の作業効率を向上することができ、レインバリヤ部とウインドバリヤ部の役割を的確に発揮させることができる。尚、特許文献2に記載のガスケットでは、さらに、外壁面材の間に第4フィン乃至第6フィンが配設され、これらのフィンと外壁面材により一次防水を構成し、ウインドバリヤ部と板材により二次防水を構成している。
【0011】
しかしながら、このように左右対称のガスケットは、建物の架構に設置されている外壁パネル間の目地に対して後施工により取り付けられるものであるため、上記するように外壁パネルを横引きにより施工せざるを得ない狭小敷地においては、ガスケットを後施工するスペースが無く、設置が困難になる。また、二階以上の外壁パネル間の目地へのガスケットの設置においても、足場が設置できないことからその取り付けが困難になる。
【0012】
そこで、例えば、外壁パネルの小口面に両面テープ等を介してガスケットを予め取り付けておく方策もあるが、横引きされた外壁パネルの設置に際して、断面が左右対称のガスケットでは、レインバリヤ部を外壁面材と板材の間の空間内に精度よく配設し、かつ、ウインドバリヤ部を板材の小口面の間に精度よく配設するのが困難である。さらに、外壁面材の小口面には面取り部が設けられていることが往々にしてあるが、長尺なガスケットを外壁パネルの小口面に接着する際に、この面取り部のラインに沿って長尺なガスケットを精度よく接着するのは困難であり、手間を要する。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、足場を設置するスペースがない狭小敷地において、横引きしながら外壁パネルを建物の架構に順次設置する施工においても、隣接する外壁パネルの間の目地に精度よく、効率的に設置することのできるガスケットと、ガスケット付き外壁パネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明によるガスケットの一態様は、
一次防水材と二次防水材が繋ぎ部を介して一体となっているガスケットであって、
前記ガスケットの長手方向に直交する、前記一次防水材と前記二次防水材の断面形状が異なっていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、繋ぎ部を介して一体となっている一次防水材と二次防水材の、双方の長手方向に直交する断面形状が異なっていることにより、一次防水材と二次防水材がそれぞれに固有の断面形状にて固有の機能を奏することができる。また、具体的には、一次防水材は、外壁パネルを構成する外壁面材のうち、縦目地もしくは横目地を形成する小口面に配設されて、外壁面材とともに一次防水を形成する。一次防水材の断面形状は、円形や矩形、多角形の他、矩形や多角形の隅角部が湾曲した形状など、多様な形状が適用でき、中実なブロック体の他、中空を有する中空体などが適用できる。一方、二次防水材は、外壁面材の背面に配設されて、当該背面と外壁パネルを構成する縦胴縁と防水シートにより形成されている空間に嵌め込まれて、ガスケットの全体を目地の周辺に固定しながら、防水シートとともに二次防水を形成する。二次防水材の断面形状は、円形や矩形等のブロック体の他、例えば、矩形断面から複数のフィンが張り出した形状などが適用できる。例えば、二次防水材を構成する矩形断面の領域がガスケットの全体を目地周辺に固定する固定部として機能し、矩形断面から張り出したフィンが防水シートとともに二次防水として機能し得る。
【0016】
このように、本態様のガスケットは、外壁パネルの縦目地や横目地に予め固定することができるため、横引きしながら外壁パネルを建物の架構に順次設置する施工においても、隣接する外壁パネルの間の目地に精度よく、効率的に設置される。すなわち、工場において外壁パネルに本態様のガスケットが取り付けられてもよいし、現場搬入された外壁パネルに対して本態様のガスケットが取り付けられた後、外壁パネルが設置されてもよい。いずれにせよ、建物架構に外壁パネルが設置された後、ガスケットを後施工にて縦目地や横目地に設置する施工を不要にできる。
【0017】
また、本発明によるガスケットの他の態様は、前記一次防水材が、複数の中空を有していることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、一次防水材が複数の中空を有していることにより、一次防水材が適度な剛性と適度な変形性能を有することができる。従って、建物架構に対して既に設置されている外壁パネルの例えば縦目地に本態様のガスケットが取り付けられている状態において、横引きされてきた別途の外壁パネルがガスケットを挟むようにして建物架構に設置される場合に、ガスケットはその剛性と変形性能により、適度に潰されながらシール構造(一次防水及び二次防水)を形成することができる。尚、外壁面材の背面と縦胴縁と防水シートにより形成されている空間に嵌め込まれる二次防水材も、一つもしくは複数の中空を有していてもよく、この中空により、二次防水材に適度な変形性能が付与され、空間への嵌め込み性が良好になる。
【0019】
また、本発明によるガスケットの他の態様は、前記二次防水材が、
外壁パネルを構成する外壁面材の背面に固定される固定部と、
前記固定部の側面から張り出して前記一次防水材側に位置する雨水排水部と、
前記固定部の前記側面から張り出して室内側に位置する雨水遮蔽部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、二次防水材が、固定部と雨水排水部と雨水遮蔽部を備えていることにより、ガスケットの全体を固定部にて外壁パネルに固定することができ、一次防水材を介して室内側に漏洩してきた雨水を雨水排水部にて目地(縦目地もしくは横目地)の長手方向に流すことができる。さらに、雨水遮蔽部が例えば、隣接する外壁パネルを構成する防水シート及びその室内側にある断熱ボードに当接することにより、二次防水を形成することができる。ここで、雨水排水部と雨水遮蔽部はいずれも、目地の長手方向に延設するフィンにより形成できる。
【0021】
また、本発明によるガスケットの他の態様は、前記ガスケットがその途中位置に折り曲げ部を有しており、
前記折り曲げ部を介して折り曲げられ、平面視L形の線形に姿勢変更自在であることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、ガスケットがその途中位置に折り曲げ部を有し、折り曲げ部を介して折り曲げられて平面視L形の線形に姿勢変更自在であることにより、コーナーカバーの横目地に本態様のガスケットを予め取り付けておくことができる。
【0023】
また、本発明によるガスケット付き外壁パネルの一態様は、
外壁面材と、該外壁面材の背面に取り付けられている縦胴縁と、該縦胴縁の背面に取り付けられている防水シート及び断熱ボードと、該断熱ボードの背面に取り付けられている外壁フレームと、を有する、外壁パネルであって、
前記外壁面材のうち、縦目地及び/又は横目地を形成する小口面に、前記ガスケットの前記一次防水材が配設され、前記外壁面材の背面と前記縦胴縁と前記防水シートにより形成されている空間に前記二次防水材が嵌め込まれていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、本発明によるガスケットを外壁面材の縦目地及び/又は横目地を形成する小口面に備えていることにより、横引きしながら外壁パネルを建物の架構に順次設置する施工において、外壁パネルの設置に応じて自動的に縦目地や横目地にガスケットを配設することができる。さらに、隣接する外壁パネルの間の目地に対して、精度よくガスケットを配設することができる。
【0025】
尚、例えば、外壁パネルの上端が階間に位置する場合において、この階間目地である横目地を本態様のガスケットにより形成する場合には、外壁パネルの幅方向の全長に亘りガスケットを構成する一次防水材を外壁面材の上に配設する一方で、二次防水材は端部のみ残し、中央の二次防水材を一次防水材から切り離して外壁パネルの上端にガスケットを取り付けるのが好ましい。このような構成のガスケットに加工することにより、外壁パネルの中央の通気層が二次防水材にて遮断されるのを防止しながら、外壁パネルに対してガスケットを取り付けることができる。
【0026】
また、本発明によるガスケット付き外壁パネルの他の態様は、
外壁面材と、該外壁面材の背面に取り付けられている縦胴縁と、該縦胴縁の背面に取り付けられている防水シート及び断熱ボードと、該断熱ボードの背面に取り付けられている外壁フレームと、を有する、コーナーカバーを形成する外壁パネルであって、
前記ガスケットが前記折り曲げ部を介して折り曲げられて平面視L形の線形の姿勢とされた状態で、前記コーナーカバーを構成する外壁面材の横目地を形成する小口面に前記一次防水材が配設され、前記コーナーカバーの背面と前記縦胴縁と前記防水シート及びにより形成されている空間に前記二次防水材が嵌め込まれていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、本発明によるガスケットを、コーナーカバーを形成する外壁パネルの横目地を形成する小口面に備えていることにより、横引きしながらコーナーカバーを形成する外壁パネルを上方に積み上げていくに当たり、外壁パネルの設置に応じて自動的に横目地にガスケットを配設することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から理解できるように、本発明のガスケットとガスケット付き外壁パネルによれば、足場を設置するスペースがない狭小敷地において、横引きしながら外壁パネルを建物の架構に順次設置する施工においても、隣接する外壁パネルの間の目地に精度よく、効率的にガスケットを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係るガスケットの一例の斜視図である。
図2】第1実施形態に係るガスケット付き外壁パネルの一例に対して、別途の外壁パネルが横引きされて近接している状態を説明する横断面図である。
図3図2に続いて、横引きされてきた別途の外壁パネルが設置され、縦目地が形成されている状態を説明する横断面図である。
図4】階間付近における、第2実施形態に係るガスケット付き外壁パネルにより形成される外壁の正面図である。
図5図4のV-V矢視図である。
図6図4のVI-VI矢視図である。
図7図4のVII-VII矢視図である。
図8】第2実施形態に係るガスケットの一例の形成途中の状態を説明する斜視図である。
図9】第3実施形態に係るガスケット付き外壁パネルの一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、各実施形態に係るガスケットとガスケット付き外壁パネルの一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0031】
[第1実施形態に係るガスケット]
はじめに、図1を参照して、第1実施形態に係るガスケットの一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係るガスケットの一例の斜視図である。
【0032】
ガスケット40は、一次防水材10と、二次防水材30が、繋ぎ部20を介して一体に形成されている。後述するように、一次防水材10は、外壁面材とともに一次防水を構成するシール部材であり、二次防水材30は、ガスケット40の全体を外壁パネルに固定しながら、防水シートとともに二次防水を構成するシール部材である。
【0033】
ガスケット40は全体として一体に成形されており、圧縮性のある弾性体である乾式の止水材である。より具体的には、EPDMゴム(エチレンプロピレンゴム)や塩素化ポリエチレンゴム等により成形される。
【0034】
また、発泡倍率の高い発泡構造体が付加されている部位もある。具体的には、一次防水材10の本体11や二次防水材30の固定部31、繋ぎ部20等はソリッドゴムであるのに対して、緩衝材15,36,37は発泡倍率の高いEPDMゴムにより成形されている。尚、ガスケット40の成形材料は、その他、オレフィン系エラストマーのような熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル(PVC)等が適用されてもよい。
【0035】
ガスケット40は、外壁パネルを構成する外壁面材の縦目地を形成する小口面や、横目地を形成する小口面に配設されるものであり、従って、外壁面材の横幅もしくは縦長さに相当する長さを有している。
【0036】
一次防水材10は、長手方向に直交する断面形状が略矩形を呈し、その内部に長手方向に延設する複数(図示例は二つ)の中空12を有している。また、二つの中空12を隔てる中央の縦片の上方には、本体11の長手方向に延設する芯線14が埋設されており、この芯線14により、一次防水材10が外力を受けた際に過度に伸びることを抑止できるようになっている。
【0037】
一次防水材10が複数の中空12を有していることにより、適度な剛性と適度な変形性能を備えることができ、左右や上下から外壁面材にて挟圧された際に、適度に潰されながら所定幅のシール目地を形成することができる。
【0038】
また、本体11の天井面には、本体11とは色の異なる意匠材13が固定されている。例えば、一次防水材10の本体11や二次防水材30が黒色を呈しているのに対して、意匠材13は、淡い灰白色等を呈しており、外壁パネル間の目地にガスケット40が配設された状態において、外部から意匠材13が視認された際に優れた外観意匠性を醸し出すような色や柄を有している。例えば、ガスケット40は、全体として押し出し成形により成形できるが、一次防水材成形用材料の表面に意匠材成形用材料が重なるように押出し成形することにより、本体11の表面に意匠材13が固定された態様で一次防水材10(ひいてはガスケット40)を製造することができる。
【0039】
本体11のうち、隣接する外壁パネルを構成する外壁面材に押圧される部位には、本体11の長手方向に延設する、断面が略半円形の緩衝材15も押出し成形により形成されている。
【0040】
一次防水材10の一方の縦片の下端から、繋ぎ部20が下方に延設し、繋ぎ部20に対して二次防水材30が連続している。二次防水材30は、その長手方向に直交する断面形状が矩形(図示例は略正方形)の固定部31を有する。固定部31は、その内部に長手方向に延設する一つの中空32を有している。固定部31が中空32を有していることにより、後述するように、外壁面材の背面と縦胴縁と防水シートにより形成されている空間に対して、固定部31が適度に変形しながらスムーズに嵌め込まれるようになっている。
【0041】
固定部31の一方の縦片より、一次防水材10の直下の位置において、フィン状の雨水排水部33が側方に張り出すように設けられ、雨水排水部33よりも下方の位置(目地に取り付けられた際に室内側となる位置)において、フィン状の雨水遮蔽部34が同様に側方に張り出すように設けられている。
【0042】
雨水排水部33は、一次防水材10の本体11の下方に位置しており、一次防水材10とこれを挟持する外壁パネルの外壁面材の間を通過した雨水をここで堰き止め、雨水排水部33に沿って排水する機能を有している。そのため、雨水排水部33は、固定部31の根元位置よりも、その張り出し先端が上方の本体11側に傾斜するように設けられている。
【0043】
また、固定部31と雨水排水部33の取り合い部(雨水排水部33の根元)には、二次防水材30の長手方向に延設する芯金35が埋設されている。この芯金35により、固定部31と雨水排水部33の取り合い部における強度が高められている。
【0044】
一方、雨水遮蔽部34は、側方への張り出し方向において、その中央付近が上方に突であり、先端が下方に垂れるように湾曲している。雨水遮蔽部34は、隣接する外壁パネルの外壁面材の有する防水シートや断熱ボードに当接されて変位し、ここで二次防水を形成することから、下方に変位し易いような上記線形を有している。
【0045】
また、固定部31と雨水遮蔽部34の取り合い部には緩衝材36が取り付けられており、雨水遮蔽部34の先端の上面には別途の緩衝材37が取り付けられている。
【0046】
図1からも明らかなように、ガスケット40において、一次防水材10と二次防水材30の断面形状が完全に異なっている。一次防水材10は、外壁パネル50を構成する外壁面材51のうち、縦目地もしくは横目地を形成する小口面に配設されて、外壁面材51とともに一次防水を形成する。一方、二次防水材30は、外壁面材の背面に配設されて、当該背面と外壁パネルを構成する縦胴縁と防水シートにより形成されている空間に嵌め込まれて、ガスケット40の全体を目地の周辺に固定しながら、防水シートとともに二次防水を形成する。このように、一次防水材10と二次防水材30はそれぞれに固有の機能を有していることから、それらの断面形状が完全に相違している。
【0047】
[第1実施形態に係るガスケット付き外壁パネル]
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態に係るガスケット付き外壁パネルの一例について説明する。ここで、図2は、第1実施形態に係るガスケット付き外壁パネルの一例に対して、別途の外壁パネルが横引きされて近接している状態を説明する横断面図であり、図3は、図2に続いて、横引きされてきた別途の外壁パネルが設置され、縦目地が形成されている状態を説明する横断面図である。
【0048】
ガスケット付き外壁パネル60は、正面視矩形の外壁パネル50のうち、一方の鉛直端面にガスケット40が取り付けられている外壁パネルである。図2においては、右側に位置するガスケット付き外壁パネル60の備えるガスケット40が図示されており、左側からX2方向に横引きされてきた他方の外壁パネル50にも、その左側に不図示のガスケットが取り付けられていて、ガスケット付き外壁パネル60を構成している。
【0049】
外壁パネル50は、外壁面材51と、外壁面材51の背面にある縦胴縁52と、縦胴縁52の背面にある透湿防水シート53(防水シートの一例)と、透湿防水シート53が貼り付けられている断熱ボード54と、断熱ボード54の背面(室内側)に固定されている外壁パネルフレーム55とを有する。尚、外壁パネル50と縦胴縁52、縦胴縁52と断熱ボード54、断熱ボード54と外壁パネルフレーム55等は、ビスや釘等の固定手段(図示せず)により相互に固定されている。また、外壁パネルフレーム55の内部において、グラスウールやロックウール等により形成される断熱材が充填されてもよい。
【0050】
外壁面材51は、サイディング材から形成されており、複数の縦柄目地と横柄目地をその表面に備えている。このサイディング材としては、窯業系サイディング、アルミや鋼板からなる金属系サイディング、天然木を加工してなる木質系サイディング、塩化ビニル樹脂等からなる樹脂系サイディングなどが挙げられる。
【0051】
縦胴縁52を介して外壁面材51と透湿防水シート53及び断熱ボード54を配設することにより、外壁面材51の背面側に通気層56が形成される。縦胴縁52は、外壁面材51の端面(小口面)から若干内側に入った位置に配設されており、外壁面材51の背面と縦胴縁52と透湿防水シート53により、空間Gが形成されている。
【0052】
図2に示すように、外壁パネル50のうち、外壁面材51の小口面に一次防水材10を当接させ、二次防水材30の固定部31を空間GにX1方向に嵌め込むことにより、外壁パネル50の縦目地にガスケット40が固定されたガスケット付き外壁パネル60が形成される。空間Gに固定部31が嵌め込まれた状態において、固定部31の隅角部にある緩衝材36が、透湿防水シート53及び断熱ボード54の隅角部に位置決めされており、この構成により、固定部31が直接この隅角部に接触して破損するのを防止している。
【0053】
このガスケット付き外壁パネル60は、工場にて形成された後、現場搬送されてもよいし、現場において外壁パネル50にガスケット40を固定することにより形成してもよい。外壁パネル50の有する空間Gに二次防水材30の固定部31を嵌め込むだけで、ガスケット付き外壁パネル60を容易に形成することができる。
【0054】
また、外壁パネルの小口面に対して長尺のガスケットを接着等により固定するものでないことから、外壁パネル50の縦目地にガスケット40を精度よく配設することができる。
【0055】
足場を設置するスペースがない狭小敷地において、クレーン等の重機にて垂下されたガスケット付き外壁パネル60(図2における左側の外壁パネル)を、X2方向に横引きし、既に建物架構に設置されているガスケット付き外壁パネル60(図2における右側の外壁パネル)に近接させ、所定の設置位置に設置することにより、図3に示すように、二つのガスケット付き外壁パネル60にてガスケット40が挟圧された縦目地58が形成される。
【0056】
図3に示すように、左右の外壁パネル50にてガスケット40が挟圧されて縦目地58が形成された状態において、一次止水材10の緩衝材15が相手側の外壁パネル50の小口面に当接しており、この構成により、本体11が相手側の外壁パネル50に直接当接して押圧され、破損するのを防止しているとともに、止水性をより一層確実なものとしている。
【0057】
また、ガスケット40にて縦目地58が形成された状態において、雨水排水部33は、相手側の外壁パネル50の隙間Gの内部に延設している。一方、雨水遮蔽部34は、相手側の外壁パネル50の有する透湿防水シート53及び断熱ボード54の小口面に対して、緩衝材37を介して当接している。変位した雨水遮蔽部34が緩衝材37を介して相手側の外壁パネル50の断熱ボード54等の小口面に当接されることにより、雨水遮蔽部34が断熱ボード54等の小口面に直接当接して押圧され、破損するのを防止しているとともに、止水性をより一層確実なものとしている。
【0058】
図3に示すように、左右の外壁パネル50の外壁面材51と、これらにより挟圧される一次止水材10とにより、外壁の一次防水が形成される。また、左右の透湿防水シート53及び断熱ボード54と、これらを繋ぐ二次止水材30により、外壁の二次防水が形成される。
【0059】
図示するように、雨水排水部33が、相手側の外壁パネル50の隙間Gの内部に延設していることにより、ガスケット40と、相手側の外壁パネル50の外壁面材51との間を仮に通過した雨水を雨水排水部33にて堰き止め、雨水排水部33を介して下方に流下させることができる。
【0060】
また、この雨水排水部33よりもさらに室内側に雨水が浸入したとしても、二次防水により、雨水の室内側への浸入を確実に防止することができる。
【0061】
[第2実施形態に係るガスケット付き外壁パネル]
次に、図4乃至図7を参照して、第2実施形態に係るガスケット付き外壁パネルの一例について説明する。ここで、図4は、階間付近における、第2実施形態に係るガスケット付き外壁パネルにより形成される外壁の正面図である。また、図5図6、及び図7はそれぞれ、図4のV-V矢視図、VI-VI矢視図、及びVII-VII矢視図である。尚、図4においては、各外壁パネルの一部のみを図示している。
【0062】
図4は、例えば二階の階間付近を示しており、より詳細には、階間付近の縦目地58と横目地59の上下左右にあるガスケット付き外壁パネル60Aを示している。このガスケット付き外壁パネル60Aは、外壁パネル50の上端の小口面と右端の小口面にそれぞれガスケット40を備えている。
【0063】
図4に示すように、外壁パネル50の背面のうち、右端の小口面から若干内側に入った位置に縦胴縁52(点線)が配設されている。縦胴縁52よりも端の断面を示す図5に示すように、ここには、ガスケット40を構成する二次止水材30の固定部31が嵌め込まれている。
【0064】
一方、図6に示すように、縦胴縁52に対応する位置では、ガスケット40の二次止水材30のうち、縦胴縁52と緩衝する固定部31が切り取られており、雨水排水部33や雨水遮蔽部34が縦胴縁52の上端に載置されている。
【0065】
一方、図7に示すように、縦胴縁52よりも内側においては、ガスケット40から二次止水材30が完全に切り取られている。この構成により、上下に配設される外壁パネル50の背面において、上下に通気層56を連通させることができる。
【0066】
このように、特に上下の外壁パネル50間の横目地59にガスケット40が適用される場合においては、二次止水材30が完全に残された部位、二次止水材30の一部が切り取られた部位、及び、二次止水材30が完全に切り取れた部位を有するガスケット40が適用されることにより、通気層56を確保しながら、ガスケット40を外壁パネル50に固定することができる。
【0067】
[第2実施形態に係るガスケットと第3実施形態に係るガスケット付き外壁パネル]
次に、図8及び図9を参照して、第2実施形態に係るガスケットと第3実施形態に係るガスケット付き外壁パネルの一例について説明する。ここで、図8は、第2実施形態に係るガスケットの一例の形成途中の状態を説明する斜視図であり、図9は、第3実施形態に係るガスケット付き外壁パネルの一例の斜視図である。
【0068】
図示するガスケット40Aは、図1に示すガスケット40と基本構成は同一であるものの、その途中位置に折り曲げ部41を有している。図8は、折り曲げ部41を介して左右片を折り曲げている途中の状態を示しているが、左右片を相互に近接する方向であるX3方向に完全に折り曲げることにより、図9に示すように平面視L形の線形に姿勢変更されたガスケット40Aが形成される。
【0069】
このガスケット40Aは、外壁パネル50Aがコーナーカバーであって、コーナーカバー50Aの横目地を形成する際に適用される。
【0070】
コーナーカバー50Aの基本構成も、基本的には一般の外壁パネル50と同様であるが、その平面視形状がL形の線形を有している点で相違している。
【0071】
図8に戻り、ガスケット40Aは、図5乃至図7を参照して説明した内容と同様に、二次止水材30が完全に残された部位(t2の範囲)、二次止水材30の一部が切り取られた部位(t1の部位)、及び、二次止水材30が完全に切り取れた部位(t3の部位)を有するガスケットが適用される。
【0072】
そして、図9に示すように、コーナーカバー50Aの上端の小口面にガスケット40の第一止水材10を配設し、第二止水材30の固定部31を縦胴縁52の内側の空間に嵌め込むことにより、通気層56が確保されたガスケット付き外壁パネル60Bが形成される。外壁のコーナー部においては、図9に示すガスケット40Aが階間に位置決めされ、さらに上階のガスケット付き外壁パネル60Bもしくはコーナーカバー50A(図示せず)が載置されることにより、ガスケット40Aがコーナー部における横目地を形成する。
【0073】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0074】
10:一次防水材
11:本体
12:中空
13:意匠材
14:芯線
15:緩衝材
16:案内係合溝
20:繋ぎ部
30:二次防水材
31:固定部
32:中空
33:雨水排水部
34:雨水遮蔽部
35:芯金
36,37:緩衝材
40,40A:ガスケット
41:折り曲げ部
50:外壁パネル
50A:外壁パネル(コーナーカバー)
51:外壁面材
52:縦胴縁
53:防水シート(透湿防水シート)
54:断熱ボード
55:外壁パネルフレーム
56:通気層
58:縦目地(目地)
59:横目地(目地)
60,60A,60B:ガスケット付き外壁パネル
G:空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9