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  • 特許-トナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20231128BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 374
G03G9/097 365
G03G9/087 331
G03G9/087 325
G03G9/097 375
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019221384
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2020109500
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2018247032
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康弘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 洋二朗
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】古井 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】野村 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】長島 裕二郎
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003749(WO,A1)
【文献】特開2013-140235(JP,A)
【文献】特開2018-072389(JP,A)
【文献】特開2018-205374(JP,A)
【文献】特開2018-112637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子と、有機ケイ素重合体粒子とを含むトナーであって、
該有機ケイ素重合体粒子は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有する有機ケイ素重合体を含有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、RSiO3/2で表されるT3単位構
造を有しており、
該Rは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子の29Si-NMR測定において、該有機ケイ素重合体粒子に含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、該T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.70以上1.00以下であり、
走査透過型電子顕微鏡で観察される該トナー粒子の断面には、該ワックスのドメインが複数存在しており、
該ワックスが、2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル化合物である2官能エステルワックスであり、
該ワックスの該ドメインの平均長径が、0.03μm以上2.00μm以下であり、
該ワックスのSP値SPwが、8.59以上9.01以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記有機ケイ素重合体粒子のSP値SPsiと前記ワックスのSP値SPwとの差が、0.40以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
トナー粒子に対して飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を行い、その測定により同定される、前記トナー粒子の表面近傍の樹脂のSP値SPsが、9.94以上10.90以下である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ワックスのSP値SPwと、トナー粒子に対して飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を行い、その測定により同定される、前記トナー粒子の最表面近傍の樹脂のSP値SPsとが、下記式(1)の関係を満たす請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
1.10≦SPs-SPw≦2.60 ・・・(1)
【請求項5】
走査透過型電子顕微鏡で観察される前記トナー粒子の断面において、
前記トナー粒子表面から0.05μm以内の領域に前記ワックスのドメインが存在するトナー粒子の割合が、20個数%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記有機ケイ素重合体粒子による前記トナー粒子表面の被覆率が、30面積%以上70面積%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナーは、さらに無機微粒子を有し、
該無機微粒子による前記トナー粒子表面の被覆率が、30面積%以上である請求項1~6のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項8】
前記ワックスが、融点63℃以上95℃以下で、ピーク分子量Mp400以上2500以下の脂肪族系エステルワックスである請求項1~7のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項9】
前記トナーの個数平均粒径Dtに対する前記ワックスの前記ドメインの平均長径Dwの比(Dw/Dt)が、0.10以上0.45以下である請求項1~のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項10】
前記トナー粒子が結晶性ポリエステルを含有する請求項1~のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項11】
前記有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径Dsiが、80nm以上300nm以下である請求項1~1のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項12】
前記トナーの個数平均粒径Dtに対する前記有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径Dsiの比(Dsi/Dt)が、0.0125以上0.0750以下である請求項1~1のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項13】
前記有機ケイ素重合体粒子がポリアルキルシルセスキオキサン粒子である請求項1~1のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項14】
前記有機ケイ素重合体粒子の形状係数SF-1が、120以下である請求項1~1のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法による画像形成に使用される静電荷像現像用のトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターなどの画像形成装置に対する品質要求は厳しく、トナーに要求される性能も高度なものとなっている。特に、フルカラー複写機又はフルカラープリンタなどにおいては、小型化、軽量化、省エネ、高画質化や環境対応への要求が強く求められており、耐久性や低温定着性の更なる向上が求められている。トナーとしても、より良好な耐久性や低温定着性、トナーの小粒径化、帯電性の環境差低減が求められている。
【0003】
その要求に対して、重合によってトナーを製造する方法において、コア-シェル構造を有するトナーの粒子径、平均円形度及び硬度を適正な範囲にすることで、良好な保存性と定着性を有し、高画質で耐久性に優れたトナーが得られることが記載されている(特許文献1)。
また、特定の一次粒径でかつ、特定の樹脂を含有する外添剤を外添することで長期間の使用において優れた現像性を示すトナーを得る方法がある(特許文献2)。
また、シリコーンオイルを含有するエラストマー粒子と特定の元素を含有するチタン酸化物を外添することで放置後のカブリや画像濃度低下を抑制するトナーを得る方法がある(特許文献3)。
また、特定の粒径かつ粒径分布のシリコーン樹脂粒子と特定の粒径の正帯電性無機微粒子を特定の部数外添することで帯電性の環境安定性が優れ、印字耐久性の優れたトナーを得る方法がある(特許文献4)。
また、トナー粒子の結着樹脂中に分散する離型剤のドメインの偏在度合いを制御し、トナー粒子に樹脂粒子を外添することでクリーニング性と部材汚染抑制を両立するトナーを得る方法がある(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-171272号公報
【文献】特開2018-54961号公報
【文献】特開2017-62316号公報
【文献】特開2013-140235号公報
【文献】特開2017-21262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1は、高温高湿環境下や低温低湿環境下においては、耐久性に関して未だ若干の課題が存在していることがわかった。
また、特許文献2は、高温高湿環境下や低温低湿環境下においては、耐久性に関して未だ若干の課題が存在し、定着性に関しても未だ若干の課題が存在していることがわかった。
特許文献3及び4は、低温低湿環境下においては、耐久性に関して未だ若干の課題が存在し、定着性に関しても未だ若干の課題が存在していることがわかった。
また、特許文献5は、定着性に関して未だ若干の課題が存在し、樹脂粒子の埋め込みによる耐久性の低下に関しても未だ若干の課題が存在していることがわかった。
本発明の目的は、耐久性、及び定着性に優れたトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、以下の方法を見出した。
すなわち、本発明は、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子と、有機ケイ素重合体粒子とを含むトナーであって、
該有機ケイ素重合体粒子は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有する有機ケイ素重合体を含有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、RSiO3/2で表されるT3単位構
造を有しており、
該Rは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子の29Si-NMR測定において、該有機ケイ素重合体粒子に含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、該T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.70以上1.00以下であり、
走査透過型電子顕微鏡で観察される該トナー粒子の断面には、該ワックスのドメインが複数存在しており、
該ワックスが、2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル化合物である2官能エステルワックスであり、
該ワックスの該ドメインの平均長径が、0.03μm以上2.00μm以下であり、
該ワックスのSP値SPwが、8.59以上9.01以下であることを特徴とするトナーに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐久性、及び定着性に優れたトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】冷却工程の温度推移の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
以下、本発明を詳細に説明する。
結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子と、有機ケイ素重合体粒子とを含むトナーであって、
該有機ケイ素重合体粒子は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有する有機ケイ素重合体を含有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、RSiO3/2で表されるT3単位構
造を有しており、
該Rは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子の29Si-NMR測定において、該有機ケイ素重合体粒子に含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、該T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.70以上1.00以下であり、
走査透過型電子顕微鏡で観察される該トナー粒子の断面には、該ワックスのドメインが複数存在しており、
該ワックスが、エステルワックスであり、
該ワックスの該ドメインの平均長径が、0.03μm以上2.00μm以下であり、
該ワックスのSP値SPwが、8.59以上9.01以下であることを特徴とするトナー。
【0010】
本発明の効果が発現する理由について、本発明者らは次のように考えている。
通常、トナー粒子中のワックスのドメインの平均長径が0.03μm未満であり、ワックスの種類がエステルワックスであると、電子写真の画像形成工程での摩擦や撹拌熱、熱
源による発熱、使用環境起因によりワックスが熱により融解し、結着樹脂に相溶しながらトナー粒子表面に染み出してくる。そのため特に高温高湿環境下での長期使用において、画質が低下しやすい。一方、ワックスのドメインの平均長径が2.00μmを超えると、耐熱性には優れるが、定着時におけるワックスの染み出しが不足するため、定着性が低下する。
ワックスのドメインの平均長径は、好ましくは0.03μm以上1.80μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上1.50μm以下である。ワックスのドメインの平均長径は、後述の冷却工程における冷却速度や冷却開始温度、冷却到達温度などの冷却条件やワックスの種類を変更することにより制御できる。
【0011】
有機ケイ素重合体粒子は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有する有機ケイ素重合体を含有する。有機ケイ素重合体粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は、好ましくは90質量%~100質量%である。
また、該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、RSiO3/2で表されるT3
単位構造を有しており、該Rは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子の29Si-NMR測定において、該有機ケイ素重合体粒子に含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、該T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.70以上1.00以下であることが必要である。当該要件を満たすと、有機ケイ素重合体粒子が、適度に疎水性で、その架橋密度が適度で、架橋点間距離のムラも小さくなる。そのため、適度な弾性を有し、通常のシリカなど無機物並みに耐久性に優れるにも関わらず、SP値が該有機ケイ素重合体粒子のSP値に近いエステルワックスほど馴染みが良いことが分かった。
該T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、0.80以上1.00以下であることが好ましく、0.90以上1.00以下であることがより好ましく、0.97以上1.00以下であるとより一層好ましい。
【0012】
SP値が該有機ケイ素重合体粒子のSP値に近いエステルワックスのドメインが複数存在しているトナー粒子の表面に該有機ケイ素重合体粒子が存在していると、エステルワックスとの親和性が高い為、トナーの定着時に、エステルワックスの染み出しを促進し、定着性が優れるため好ましい。
この時、エステルワックスのSP値SPwが8.59以上9.01以下であると定着時にエステルワックスの染み出しが良いだけでなく、該エステルワックスが適度に疎水性のため、トナー粒子表面に露出しにくい。さらに、有機ケイ素重合体粒子との馴染みやすさが適度な為、定着時以外の工程では該エステルワックスのトナー粒子表面への染み出しが促進されない。そのため、長期使用において画質に優れるため望ましい。
SPwは、好ましくは8.59以上8.98以下であり、より好ましくは8.59以上8.93以下である。
【0013】
また、上記の効果が発現するには、SPwが8.59以上9.01以下であり、エステルワックスのドメインの平均長径が0.03μm以上2.00μm以下の状態で、該ドメインが複数存在しているトナー粒子表面に特定の有機ケイ素重合体粒子が存在していることが必要である。該エステルワックスのドメインが1つであると該ワックスの染み出しが不十分となり、定着性の点で望ましくない。
該有機ケイ素重合体粒子において、ケイ素原子の性質が炭素原子と類似しており、且つ該有機ケイ素重合体粒子中の酸素原子比率がエステルワックスとの適度な親和性を発現するのに最適であり、且つ該有機ケイ素重合体粒子の架橋点間距離の分布が適度なため、該エステルワックスのトナー粒子表面への染み出しが適度に制御されると思われる。
仮に該ワックスがエステルワックスでなく、特に炭化水素ワックスなどの場合は、該有機ケイ素重合体粒子の構造及び性状の類似性が低いため、お互いの親和性が低く、定着時に本件のような作用効果は発現しない。
【0014】
また、該有機ケイ素重合体のSP値SPsiと該エステルワックスのSP値SPwの差が0.40以下であることが好ましく、0.04以上0.40以下であることがより好ましい。
ワックスがエステルワックスである場合、エステル結合を有しており、さらに、トナーの一般的な結着樹脂、例えばポリエステル樹脂やスチレン―アクリル樹脂もエステル結合を有している。そのため、お互いの親和性がある程度高いため、定着時に該エステルワックスの染み出し速度が大きくはならない。
それに対して、SPsiとSPwの差が0.40以下であると、エステルワックスとトナー粒子表面に存在する有機ケイ素重合体との親和性が高いため、定着時にエステルワックスのトナー粒子表面への染み出し速度が大きくなるため定着性の点で望ましい。さらに、SPsiとSPwの差が0.04以上0.40以下であると、定着性だけでなく、長期使用における保存性やワックスの染み出しによる部材汚染の抑制の点でも望ましい。
【0015】
有機ケイ素重合体のSP値SPsiは、7.80以上11.50以下が好ましく、8.40以上10.30以下がより好ましく、8.70以上10.30以下がさらに好ましい。有機ケイ素重合体においては、シロキサン結合を多く含む構造ほどSP値が大きいため、SP値が上記の範囲内となるためには、下記式(B)(RSiO3/2)や(A)(SiO4/2)の割合がある程度多いことが好ましく、下記式(C)(RSiO2/2)や(D)(RSiO1/2)の割合が少ないことが好ましい。
従って、SPsiが、7.80以上11.50以下であると、T3単位構造が適正な割合含まれるだけでなく、下記式(A)、(C)、(D)の構造の割合が適正である。そのため、有機ケイ素重合体の架橋密度が適正な範囲となるため、耐久性に優れた硬度及び弾性を有しており、かつワックスが定着時に染み出す際に、有機ケイ素重合体の内部をワックス分子が浸透しやすいため、耐久性と定着性の両立の点で望ましい。
【0016】
【0017】
有機ケイ素重合体中の各構造のモル割合をW,X,Y,Z(W+X+Y+Z=1.00)としたとき、Xが、0.70~1.00であることが好ましく、0.90~1.00であることがより好ましい。式中のR、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基、フェニ
ル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、炭素数が1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルコキシ基を表す。Rは、炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基又はフェニル基を表す。各構造において、R、R、R、R及びRのうち少なくとも1つは前記アルキル基又はフェニル基を表す。
該有機ケイ素重合体は、式(A)、(B)、(C)及び(D)で表される構造からなる群から選択される少なくとも一つの構造からなることが好ましく、式(B)で表される構造を有することがより好ましい。
【0018】
<溶解度パラメータ(SP値)の計算方法>
溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorsの下記式を用いて求める。
下記Δei、及び、Δviの値は、「コーティングの基礎科学、54~57頁、1986年(槇書店)の表3-9に記載された、原子及び原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)」を参考にする。
なお、SP値の単位は、(cal/cm1/2であるが、1(cal/cm1/2=2.046×10(J/m1/2によって(J/m1/2の単位に換算することができる。
δi=(Ev/V)1/2=(Δei/Δvi)1/2
Ev:蒸発エネルギー
V:モル体積
Δei:i成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:i成分の原子又は原子団のモル体積
【0019】
<ワックス及び結晶性ポリエステルの構造の同定>
ワックスは分子量が低く、結晶性ポリエステルはそれよりも高い。このことを利用して、トナーからワックスと結晶性ポリエステルを分離する。
具体的には、トナー100mgをクロロホルム3mlに溶解する。次いで、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えば、マイショリディスクH-25-2(東ソー社製)などを使用)を取り付けたシリンジで吸引ろ過することで不溶分を除去する。分取HPLC(装置:日本分析工業社製 LC-9130 NEXT 分
取カラム[60cm]排除限界:20000、70000 2本連結)に可溶分を導入し
クロロホルム溶離液を送液する。得られるクロマトグラフの表示でピークが確認できたら、単分散ポリスチレン標準試料で分子量5000となるリテンションタイム前後を分取する。
分取した溶液をエバポレーターによって、溶媒を除去した後に24時間真空乾燥させて分子量5000未満(X成分)と5000以上(Y成分)のサンプルを得る。
その後、X成分を熱分解装置JPS-700(日本分析工業社製)を用い、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)共存下で590℃まで加熱し、メチル化しながら熱分解する。
その後、GC-MASS(Thermo Fisher Scientific社製 I
SQ Focus GC、HP-5MS[30m])によってエステル化合物由来のアルコール成分、カルボン酸成分のそれぞれについてのピークを得る。一般的に結晶性ポリエステルやワックスを熱分解した際にはメチル化物が得られる。得られたピークを解析し、ワックス及び結晶性ポリエステルの構造を推測及び同定することができる。
【0020】
<ワックスのピーク分子量(Mp)の測定方法>
ワックスのピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、室温で、ワックスAをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク
」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF-604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6mL/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード
ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成された分子量校正曲線を使用する。
【0021】
<走査透過型電子顕微鏡におけるトナー粒子の断面の観察>
トナー粒子中でのワックスの存在状態は、走査透過型電子顕微鏡を用いトナー粒子の断面を観察することにより確認する。
走査透過型電子顕微鏡を用いたトナー粒子の断面画像において、ワックスはドメインとして観察される。このワックスのドメインの個数及び形状を計測することにより、ワックスの存在状態を特定する。
トナー粒子の断面の観察手順は以下の通りである。
トナーを可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(UC7、ライカ社製)により70nm厚に切削する。
得られた薄片サンプルのうち、トナー粒子断面の直径がトナー粒子の重量平均粒径(D4)±2.0μm以内のものを任意に10個選択する。
選択された薄片サンプルを、真空染色装置(VSC4R1H、フィルジェン社製)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、走査透過型電子顕微鏡(JEM2800、JEOL社)の走査像モードを用いて、STEM画像を作成する。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得した。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、STEM画像を取得する。
得られたSTEM画像は、画像処理ソフト「Image-Pro Plus (Media Cybernetics社製)」にて2値化(閾値120/255段階)を行い、ワックスのドメインと結着樹脂の領域の区別を明確化する。
2値化の閾値を210とした場合に白く見える部分がワックスのドメインである。
【0022】
<ワックスのドメインの平均個数、平均長径の算出方法>
選択された10個のトナー粒子断面のSTEM画像において、各々のワックスのドメイン数をカウントし、その平均値をトナー1粒子当たりのドメインの平均個数とする。
また、選択された10個のトナー粒子断面のSTEM画像において、各々、任意に2μm×2μmの領域を選択し、そこに含まれるドメインの長径(最大径)をすべて計測し、その平均値をドメインの平均長径(r1)とする。
【0023】
<トナー粒子表面から0.05μm以内の領域に、該ワックスのドメインが存在するトナー粒子の割合の算出方法>
後述するトナー粒子表面から0.05μm(あるいは0.10μm及び1.00μm)以内の領域に、該ワックスのドメインが存在するトナー粒子の割合は、上記STEM画像及び画像処理ソフト「Image-Pro Plus (Media Cybernet
ics社製)」を用いて以下の方法で算出する。
得られたSTEM画像においてトナー粒子表面(トナー粒子断面の輪郭)及びトナー粒子断面の重心を特定する。得られた重心から、トナー粒子断面の輪郭上の点に対して線を引く。該線上において、輪郭(トナー粒子表面)から0.05μmの位置を特定する。
そして、トナー粒子断面の輪郭に対して一周分この操作を行い、トナー粒子表面から0.05μm以内の領域を明示する。そして、該領域にドメインが存在しているトナー数を計測する。なお、トナー粒子表面から0.05μmの境界を跨ぐドメインは、該領域に存在するドメインとはみなさない。断面100個を観察し、その割合を算出する。
トナー粒子表面から0.10μm以内の領域及びトナー粒子表面から1.00μm以内の領域についても同様に特定し、算出する。
【0024】
該トナー粒子の表面に存在する樹脂のSP値SPsは、好ましくは9.94以上10.90以下であり、より好ましくは10.00以上10.80以下である。上記範囲であれば、SPsとワックスのSP値SPwとに適度な差があるため、ワックスの染み出し性が適度になり、定着性と長期使用日おける画質が良好になる。
【0025】
<飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を用いたトナー粒子の表面に存在する樹脂のSP値(SPs)の算出方法>
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)では、トナー粒子の表面から数nmの情報を得ることができるため、トナー粒子の最表面近傍の構成材料を特定することができる。
TOF-SIMSを用いたトナー粒子の表面に存在する樹脂の同定には、アルバック・ファイ社製、TRIFT-IVを使用する。
分析条件は以下の通りである。
サンプル調整:トナーをインジウムシートに付着させる
サンプル前処理:なし
一次イオン:Auイオン
加速電圧:30kV
電荷中和モード:On
測定モード:Negative
ラスター:100μm
各ピークからトナー粒子の表面に存在する樹脂の組成の同定及び存在比率を算出する。
トナー粒子の表面に存在する樹脂の組成から前述の溶解度パラメータ(SP値)の計算方法を用いてトナー粒子の表面に存在する樹脂のSP値(SPs)を算出する。
例えば、S211はそのビスフェノールAに由来するピークである。
また、例えば、S85はそのアクリル酸ブチルに由来するピークである。
ビニル樹脂に由来するピーク強度(S85)の算出の場合:アルバック・ファイ社標準ソフト(Win Cadense)に従い、質量数84.5~85.5の合計カウント数
をピーク強度(S85)とする。
非晶性ポリエステルに由来するピーク強度(S211)の算出の場合:アルバック・ファイ社標準ソフト(Win Cadense)に従い、質量数210.5~211.5の
合計カウント数をピーク強度(S211)とする。
各物質の存在比率(S211/S85)の算出:算出されたS85、S211を用い、強度比(S211/S85)を算出する。
【0026】
ワックスのSP値SPwと、トナー粒子表面に存在する樹脂のSP値SPsとが、下記式(1)の関係を満たすことが好ましく、下記式(1’)の関係を満たすことがより好ましい。
1.10≦SPs-SPw≦2.60 ・・・(1)
1.15≦SPs-SPw≦2.25 ・・・(1’)
上記式を満たすとワックスの染み出し性がより最適化されるため、定着性と長期使用における画質が良好になる。
【0027】
走査透過型電子顕微鏡で観察される該トナー粒子の断面において、該トナー粒子表面から0.05μm以内の領域に、該ワックスのドメインが存在するトナー粒子の割合が、20個数%以下であることが好ましく、18個数%以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、2個数%以上であることが好ましく、5個数%以上であることがより好ましい。該トナー粒子の割合は、トナー表面層を形成するシェル層の材料の種類や含有量、該ワックスの種類や含有量及び後述の冷却工程の冷却条件を制御することにより制御することができる。
該トナー粒子表面から0.10μm以内の領域に、該ワックスのドメインが存在するトナー粒子の割合が、50個数%以下であることが好ましく、45個数%以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、5個数%以上であることが好ましく、10個数%以上であることがより好ましい。該トナー粒子の割合は、トナー表面層を形成するシェル層の材料の種類や含有量、該ワックスの種類や含有量及び後述の冷却工程の冷却条件を制御することにより制御することができる。
また、該トナー粒子表面から1.00μm以内の領域に、該ワックスのドメインが存在するトナー粒子の割合が、50個数%以上であることが好ましく、55個数%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、95個数%以下であることが好ましく、90個数%以下であることがより好ましい。該トナー粒子の割合は、トナー表面層を形成するシェル層の材料の種類や含有量、該ワックスの種類や含有量及び後述の冷却工程の冷却条件を制御することにより制御することができる。
上記範囲であると、高温環境下での使用において該トナー粒子表面へのワックスの染み出しが適度なため定着性と耐久性を両立しやすくなる。
【0028】
該ワックスが、融点63℃以上95℃以下で、ピーク分子量Mp400以上2500以下(より好ましくは500以上2000以下)の脂肪族系エステルワックスである。ワックスが、融点65℃以上95℃以下で、ピーク分子量Mpが400以上2500以下の脂肪族系エステルワックスであるとより好ましい。
このようなワックスを用いると、ワックスの染み出し性がより最適化されるため、定着性と長期使用における画質が良好になる。
【0029】
ワックスのピーク分子量をMpとし、結着樹脂のSP値をSPbとしたとき、該Mp、SPw及びSPbが、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(2’)を満たすことがより好ましい。
500≦(SPb-SPw)×Mp≦3000 ・・・(2)
500≦(SPb-SPw)×Mp≦2600 ・・・(2’)
2つの物質(例えば結着樹脂とワックス)の相溶性を表す指標としてχパラメーターが考えられるが、このχパラメーターは2つの物質のSP値の差の二乗(SPb-SPw)とワックスのピーク分子量Mpの積に比例する。
そのため、式(2)は、ワックスが結着樹脂を通って、トナー粒子表面に染み出しやすいかどうかを示すことになる。式(2)を満たすと、該ワックスが該結着樹脂との相溶性が適度なため、定着時においてトナー粒子表面へワックスが染み出しやすくなる。そのため、定着時以外での染み出しがより抑制され、トナーの帯電性に優れる。
【0030】
トナーの個数平均粒径Dtに対するワックスのドメインの平均長径Dwの比(Dw/Dt)が、0.05以上0.45以下であることが好ましく、0.10以上0.45以下であることがより好ましく、0.10以上0.40以下であることがさらに好ましい。
上記範囲であると、ワックスの染み出し具合だけでなく、ワックスのシャープメルト性や、ワックスの硬度とトナーの硬度のバランスが最適化されるため、トナー層規制部材へ
のトナーの融着が抑制される。また、定着時のワックスの染み出しと定着時以外でのワックスの染み出し抑制を両立しやすくなる。
【0031】
該トナー粒子が結晶性ポリエステルを含有することが好ましい。トナー粒子が、結晶性ポリエステルを含有していると、定着時にシャープメルトするため、ワックスのトナー粒子からの染み出しが迅速に行われる。
トナー粒子中の結晶性ポリエステルの含有量は、好ましくは1.00質量%~30.00質量%であり、より好ましくは2.00質量%~20.00質量%である。
【0032】
有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径Dsiが、80nm以上300nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましい。上記範囲であると、有機ケイ素重合体粒子が長期使用においてもトナー粒子表面に埋没しにくく、かつ脱離しにくい為、定着性と耐久性を両立しやすくなる。
【0033】
[有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径の算出]
有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径Dsiは、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー表面の画像から算出される。S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
下記「被覆率の算出」と同様に(1)~(2)まで操作を行い、(3)と同様にトナー表面を倍率5万倍で焦点調整を行ってピントを合わせた後、ABCモードで明るさ合わせを行う。その後、倍率を10万倍とした後に(3)と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、更に、オートフォーカスでピントを合わせる。焦点調整の操作を再度繰り返し、10万倍にてピントを合わせる。
その後、トナー表面上の少なくとも500個の有機ケイ素重合体粒子について粒径を測定して、個数平均粒径を求める。
外添前の有機ケイ素重合体粒子を入手可能な場合は、それを用いて上記方法により個数平均粒径を算出することもできる。
【0034】
なお、トナーに含まれる有機ケイ素重合体粒子とシリカなどの外添剤とは、以下のように区別することができる。
<トナー中の有機ケイ素重合体粒子の確認方法>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合粒子の同定方法はSEMによる形状観察およびEDSによる元素分析を組み合わせて行うことができる。
走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて、最大5万倍に拡大した視野において、トナーを観察する。トナー粒子表面にピントを合わせて、外添剤を観察する。外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子が有機ケイ素重合体粒子であるか否かを判断する。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子とシリカ微粒子の両方が含まれている場合には、Si、Oの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで有機ケイ素重合体の同定を行う。有機ケイ素重合体粒子、シリカ微粒子それぞれの標品に対して、同条件でEDS分析を行い、Si、Oそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。有機ケイ素重合体粒子のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A,Bそれぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。
判別対象の微粒子のSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に前記微粒子を有機ケイ素重合体粒子と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
【0035】
有機ケイ素重合体粒子がポリアルキルシルセスキオキサン粒子であることが好ましい。アルキル基とワックスとの親和性が適切であるため、定着性が良好になる。特に、アルキル基の炭素数が1以上4以下であるとワックスとの親和性がより適度であるため、ワックスの染み出しが適度になり、定着性と耐久性を両立しやすい。
【0036】
<有機ケイ素重合体粒子の同定>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の組成と比率の同定は、固体熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下熱分解GC/MS)及びNMRを用いる。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子に加えて、シリカ微粒子が含まれる場合、トナー1gをバイアル瓶に入れクロロホルム31gに溶解させ、分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、下層に比重の重いシリカ微粒子が含まれる。上層の有機ケイ素重合体粒子を含むクロロホルム溶液を採取して、クロロホルムを真空乾燥(40℃/24時間)にて除去しサンプルを作製する。
上記サンプル又は有機ケイ素重合体粒子を用いて、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の存在量比及び、有機ケイ素重合体粒子中のT3単位構造の割合を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の種類の分析は固体熱分解GC/MSが用いられる。
トナーを550℃~700℃程度で熱分解させた際に生じる、有機ケイ素重合体粒子由来の分解物の成分のマススペクトルを計測し、分解ピークを分析する事で、有機ケイ素重合体粒子構成化合物の種類を同定することができる。
[熱分解GC/MSの測定条件]
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ (Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃ Mass Range 45-650
続いて同定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の存在量比を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
固体29Si-NMRでは、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。
各ピーク位置は標準サンプルを用いて特定することでSiに結合する構造を特定することができる。また得られたピーク面積から各構成化合物の存在量比を算出することができる。全ピーク面積に対してT3単位構造のピーク面積の割合を計算によって求めることができる。
固体29Si-NMRの測定条件は、例えば下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DDMAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay :180s
Scan:2000
該測定後に、有機ケイ素重合体粒子の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィッティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
なお、下記X3構造が本発明におけるT3単位構造である。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 (A1)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2 (A2)
X3構造:RmSi(O1/2 (A3)
X4構造:Si(O1/2 (A4)
【0037】
【0038】
また、上記Rで表される有機基は、13C-NMRにより確認する。
13C-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)、エチル基(Si-C)、プロピル基(Si-C)、ブチル基(Si-C)、ペンチル基(Si-C11)、ヘキシル基(Si-C13)またはフェニル基(Si-C
-)などに起因するシグナルの有無により、上記Rで表される炭化水素基を確認する。
【0039】
有機ケイ素重合体粒子は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有する有機ケイ素重合体を含有し、有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、RSiO3/2
表されるT3単位構造を有していることが好ましい。(該Rは炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基又はフェニル基を表す。)。
また、該有機ケイ素重合体粒子の29Si-NMR測定において、有機ケイ素重合体粒子に含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピーク面積の割合S(T3)が、0.70以上1.00以下であることが好ましく、0.90以上1.00以下であることがより好ましく、0.95以上1.00以下であることがさらに好ましい。
S(T3)が、上記範囲であると、有機ケイ素重合体粒子に適切な弾性を持たせることができ、且つ、特定のSPwを有するエステルワックスとの親和性が良く、該エステルワックスの染み出しが適正であるため定着性に優れ、本発明の効果が得られやすい。
【0040】
有機ケイ素重合体粒子は、下記式(2)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
【0041】
【0042】
式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基若しくはフェニル基、又は反応基(例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、若しくはアルコキシ基)を表す。
【0043】
有機ケイ素重合体粒子を得るには、
式(2)の一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、
式(2)中のRがアルキル基またはフェニル基を表し、3つの反応基(R、R、R)を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、
式(2)中のR、Rがアルキル基またはフェニル基を表し、2つの反応基(R、R)を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)、
式(2)中のR、R、Rがアルキル基またはフェニル基を表し、1つの反応基(R)を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を用いることができる。S(T3)を0.70以上1.00以下とするためには、有機ケイ素化合物として三官能性シランを70モル%以上使用することが好ましい。
【0044】
式(2)Rとしては、炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。R、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルコキシ基であることが好ましい。
これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮合重合させて架橋構造を形成し、有機ケイ素重合体粒子を得ることができる。R、R及びRの加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0045】
四官能性シランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソシアネートシランなどが挙げられる。
【0046】
三官能性シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランなどが挙げられる。
【0047】
二官能性シランとしては、
ジ-tert-ブチルジクロロシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジブチルジクロロシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジメトキシデシルメチルシラン、ジエトキシデシルメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、 ジエチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
一官能性シランとしては、
t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジメチルメトキシシラン、t-ブチルジメチルエトキシシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、t-ブチルジフェニルメトキシシラン、t-ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロジメチルフェニルシラン、メトキシジメチルフェニルシラン、エトキシジメチルフェニルシラン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリペンチルメトキシシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0049】
<トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の定量>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の含有量は以下の方法で求めることができる。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、トナー1gをバイアル瓶に入れクロロホルム31gに溶解させ、ケイ素含有物をトナー粒子から分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷
水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、下層に有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる。上層のクロロホルム溶液を採取して、クロロホルムを真空乾燥(40℃/24時間)にて除去する。
上記工程を繰り返し、乾燥させたサンプルを4g用意する。これをペレット化し、蛍光X線にてケイ素の含有量を求める。
蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.5.0L」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球
のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mmとする。
測定は、Omnianのメソッドを用いて元素FからUまでの範囲を測定し、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。また、X線発生装置の加速電圧、電流値は、出力2.4kWとなるように設定する。測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にサンプル4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
前述条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに各元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)から各元素の質量比率を算出する。
解析は、FP定量法を用いて、サンプルに含まれる全元素の質量比率を算出し、トナー中のケイ素の含有量を求める。なお、FP定量法においては、トナーのバインダー樹脂に合わせたバランスを設定する。
蛍光X線で求めたトナー中のケイ素の含有量と、構成化合物中のケイ素の含有量比の関係から、計算によってトナー中の有機ケイ素重合体粒子の含有量を求めることができる。
【0050】
有機ケイ素重合体粒子の形状係数SF-1が、120以下であることが好ましく、115以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、103以上であることが好ましく、107以上であることがより好ましい。該SF-1は、有機ケイ素重合体粒子の製造条件により制御することができる。
SF-1が120以下であると、トナー粒子に付着した有機ケイ素重合体粒子に対して外力が掛かっても力が均一に掛かり、トナー粒子表面への接地面の分布が均一である。そのため、耐久性の点でも、ワックスの染み出しの点でも効果がより一層大きくなる。また、帯電性の点でも優れる。
【0051】
<有機ケイ素重合体粒子の形状係数SF-1の測定方法>
有機ケイ素重合体粒子のSF-1は、走査型電子顕微鏡(SEM)「S-4800」(日立製作所製)でトナー表面を観察して測定する。10万倍~20万倍に拡大した視野において、100個の一次粒子の最大長、周囲長を画像処理ソフトImage-Pro P
lus5.1J(MediaCybernetics社製)を使用して測定する。
SF-1は下記の式にて算出し、100個の平均値をSF-1とする。
SF-1=(一次粒子の最大長)/一次粒子の面積×π/4×100
外添前のシルセスキオキサン粒子を入手可能な場合は、それを用いて上記方法によりSF-1を算出することもできる。
【0052】
有機ケイ素重合体粒子によるトナー粒子表面の被覆率が30面積%以上70面積%以下
であることが好ましく、35面積%以上65面積%以下であることがより好ましい。該被覆率が上記範囲であると、トナー粒子表面へのワックスの染み出しが適度であるので定着性と耐久性を両立しやすい。該被覆率は、有機ケイ素重合体粒子の部数や粒子径、外添条件により制御することができる。
【0053】
<被覆率の測定方法>
被覆率は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー表面画像を、画像解析ソフトImage-ProPlus ver.5.0((株)日本ローパー)により解析して算出する。S-4800
の画像撮影条件は以下のとおりである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
被覆率の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。被覆率を測定する際には、予めエネルギー分散型X線分析装置(EDAX)による元素分析を行い、トナー表面における有機ケイ素重合体粒子以外の粒子を除外した上で測定を行う。なお、有機ケイ素重合体粒子とシリカとは、前述したSEMによる形状観察及びEDSによる元素分析を組み合わせて区別すことができる。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[1.1kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[4.5mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)焦点調整
操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50,000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー一つに対して写真を1枚撮影し、少なくともトナー25粒子以上について画像を得る。
(5)画像解析
本発明では下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで被覆率を算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0の解析条件は以下のとおりである。
ソフトImage-ProPlus5.1J
ツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2~10と入力する。
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って行う。このとき、領域の面積(C)は24,000~26,000ピクセルになるようにする。「処理」-2値化で自動2値化し、有機ケイ素重合体粒子の無い領域の面積の総和(D)を算出する。
正方形の領域の面積C、有機ケイ素重合体粒子の無い領域の面積の総和Dから下記式で被覆率が求められる。
被覆率(%)=100-(D/C×100)
得られた全データの平均値を本発明における被覆率とする。
有機ケイ素重合体粒子以外の無機微粒子による被覆率は、上記と同様にして有機ケイ素重合体粒子と無機微粒子を区別して測定することができる。
【0054】
トナーの個数平均粒径Dtに対する有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径Dsiの比(Dsi/Dt)が、0.0125以上0.0750以下であることが好ましく、0.0150以上0.0650以下であることがより好ましい。
Dsi/Dtが上記範囲であると、有機ケイ素重合体粒子がトナー粒子表面から脱離しにくく、かつ埋め込まれにくいため、長期使用においてワックスの染み出しが適度になる。
【0055】
トナーは、外添剤としてさらに無機微粒子を有することが好ましい。無機微粒子は特に制限されず公知のものを使用できるが、例えば、シリカやチタニア、アルミナなどを用いることができる。
該無機微粒子による該トナー粒子表面の被覆率が、30面積%以上であることが好ましく、35面積%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、70面積%以下であることが好ましく、65面積%以下であることがより好ましい。該被覆率は、該無機微粒子の部数や粒子径、外添条件により制御することができる。
上記被覆率であると、トナー粒子表面の抵抗や流動性などが適度となり、帯電性が良好になる。
【0056】
ワックスは、SP値(SPw)が上記特定の範囲であれば特に制限されず公知のエステルワックスを用いることができる。カルナバワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物などの誘導体などが挙げられる。これらは単独又は併せて用いることができる。
好ましくは脂肪族系多官能エステルワックスである。
【0057】
エステルワックスの少なくとも1つは、融点(温度20~200℃の範囲におけるDSC吸熱曲線の最大吸熱ピークに対応する温度)が63℃以上95℃以下であることが好ま
しく、65℃以上90℃以下であることがより好ましい。また、室温で固体であることが好ましく、特に、融点が65℃以上90℃以下の固体ワックスがトナーの耐ブロッキング性、多数枚耐久性、低温定着性及び耐オフセット性の点から好ましい。
【0058】
エステルワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナウバワックスなどの脂肪酸エステル類から酸成分の一部又は全部を脱酸したもの;植物性油脂の水素添加等によって得られる、ヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸モノエステル類;セバシン酸ジベヘニル、ドデカン二酸ジステアリル、オクタデカン二酸ジステアリル等の飽和脂肪族ジカルボン酸と飽和脂肪族アルコールとのジエステル化物;ノナンジオールジベヘネート、ドデカンジオールジステアレート等の飽和脂肪族ジオールと飽和脂肪族モノカルボン酸とのジエステル化物が挙げられる。好ましくは脂肪族系エステルワックスである。
【0059】
また、エステルワックスとしては、1分子中にエステル結合を1つ含有するモノエステル化合物、1分子中にエステル結合を2つ含有するジエステル化合物をはじめ、1分子中にエステル結合を4つ含有する4官能エステル化合物や、1分子中にエステル結合を6つ含有する6官能エステル化合物などの多官能エステル化合物を用いることができる。
なお、これらのワックスの中でも、分子構造中に2つのエステル結合を有する2官能エステルワックス(ジエステル)を含有していることが好ましい。
2官能のエステルワックスは、2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル化合物である。
上記脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、べへン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
上記脂肪族モノアルコールの具体例としては、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、べへニルアルコール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノールなどが挙げられる。
【0060】
2価のカルボン酸の具体例としては、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
2価のアルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-へキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、1,30-トリアコンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、1,4-フェニレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0061】
トナー中のエステルワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下が好ましい。該エステルワックスの添加量が下限値以上であるとオフセットを防止しやすい。一方、上記上限値以下の場合は耐ブロッキング効果が良好になり、耐オフセット性が良好であり、トナーのドラム融着やトナーの現像スリーブ融着を抑制できる。
【0062】
なお、上記物性を求めるにあたって、ワックスをトナーから抽出することを必要とする場合には、抽出方法は特に制限されるものではなく、任意の方法を用いることができる。例えば、所定量のトナーをトルエンにてソックスレー抽出し、得られたトルエン可溶分から溶剤を除去した後、クロロホルム不溶分を得る。その後、IR法などにより同定分析をする。
【0063】
また、定量に関しては、示差走査熱量計(DSC)などにより定量分析を行う。本発明ではTAインスツルメンツジャパン社製DSC-2920を用いて測定を行う。測定時の比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をガラス転移点とする。また、得られた昇温時のDSC曲線からワックス成分の最大吸熱ピーク温度を得る。
【0064】
有機ケイ素重合体粒子の製法は特に限定されず、例えば水に3官能のシラン化合物を滴下し、触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られた懸濁液を濾過、乾燥し得る。触媒の種類、配合比、反応開始温度、滴下時間などにより粒径をコントロールすることができる。
触媒として酸性触媒は塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、塩基性触媒はアンモニア水、水酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0065】
有機ケイ素重合体粒子のような小粒径の粒子を安定的に得るために、有機ケイ素重合体粒子は、次の方法により製造することが好ましい。
具体的には、(i)オルガノトリアルコキシシラン(有機ケイ素化合物)の加水分解物を得る第一の工程、(ii)該加水分解物と、アルカリ性水系媒体と、を混合して、該加水分解物を重縮合反応させることで球状有機ケイ素重合体粒子を分散させた球状有機ケイ素重合体粒子分散液を得る第二の工程、を含むことが好ましい。
場合によっては、さらに、球状有機ケイ素重合体粒子分散液に疎水化剤を配合して疎水化球状有機ケイ素重合体粒子を得てもよい。
【0066】
第一の工程は、水に触媒となる酸性又はアルカリ性の物質を溶解させた水溶液中において、オルガノトリアルコキシシラン(有機ケイ素化合物)と触媒とを、撹拌、混合等の方法で接触させることにより行なう。
触媒としては公知の触媒を好適に使用することができる。具体的には、触媒として酸性触媒は塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、塩基性触媒はアンモニア水、水酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0067】
触媒の使用量は、オルガノトリアルコキシシラン(有機ケイ素化合物)及び触媒の種類によって適宜調整すればよいが、オルガノトリアルコキシシラン(有機ケイ素化合物)を加水分解する場合に用いる水の量100質量部に対して1×10-3~1質量部の範囲で選ばれる。
触媒の使用量が1×10-3質量部以上であれば、反応が十分に進行する。一方、1質量部以下であると、微粒子中に不純物として残存する濃度が低くなり、加水分解物させやすくなる。水の使用量は、オルガノトリアルコキシシラン(有機ケイ素化合物)1モルに対して2~15モルが好ましい。水の量が2モル以上であると加水分解反応が十分に進行し、15モル以下であると生産性が向上する。
【0068】
反応温度はとくに制限されず、常温又は加熱状態で行なってもよいが、短時間で加水分解物が得られ、かつ生成した加水分解物の部分縮合反応を抑制できることから、10~60℃に保持した状態で反応を行うことが好ましい。反応時間はとくに制限されず、用いるオルガノトリアルコキシシラン(有機ケイ素化合物)の反応性や、オルガノトリアルコキ
シシラン(有機ケイ素化合物)と酸と水とを調合した反応液の組成、生産性を考慮して適宜選択すればよい。
【0069】
有機ケイ素重合体粒子の製造方法では、第二の工程として、上記第一工程で得られた原料溶液と、アルカリ性水系媒体とを混合して、粒子前駆体を重縮合反応させる。これにより重縮合反応液を得る。ここで、アルカリ性水系媒体は、アルカリ成分と、水と、必要に応じて有機溶媒などとを混合して得られる液である。
【0070】
アルカリ性水系媒体に使用されるアルカリ成分は、その水溶液が塩基性を示すものであり、第1の工程で用いられた触媒の中和剤として、また第2の工程の重縮合反応の触媒として作用するものである。かかるアルカリ成分としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;アンモニア;及びモノメチルアミン、ジメチルアミンのような有機アミン類を例示することができる。
アルカリ成分の使用量は、酸を中和し、重縮合反応の触媒として有効に作用する量であり、例えばアルカリ成分としてアンモニアを用いた場合には水と有機溶媒との混合物100質量部に対して、通常は0.01質量%以上12.5質量%以下の範囲で選ばれる。
【0071】
第二の工程においては、アルカリ性水系媒体を調製するために、アルカリ成分及び水に加えて、さらに有機溶媒を使用してもよい。有機溶媒は水に対して相溶性を有するものであれば、特に制限されないが、常温、常圧下で100g当たり10g以上の水を溶解する有機溶媒が好適である。
具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジアセトンアルコール等のエーテル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド化合物等が挙げられる。
以上に挙げた有機溶媒の中でも、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。さらには、加水分解、脱水縮合反応の観点から、脱離生成するアルコールと同一のアルコールを有機溶媒として選択するのがより好ましい。
【0072】
得られた重縮合反応液から有機ケイ素重合体粒子を回収する方法は、公知の方法を特に制限なく使用することができる。例えば浮遊する粉体をすくい取ることもできるし濾過法を採用してもよいが、操作が簡便であることから濾過法が好ましい。
濾過の方法は特に制限されず、減圧濾過や遠心濾過、加圧濾過等、公知の装置を選択すればよい。濾過で使用する濾紙やフィルター、濾布等は、工業的に入手可能なものであれば特に制限されることはなく、使用する装置に応じて適宜選択すればよい。
回収した有機ケイ素重合体粒子の粉体はそのまま使用することもできるが、不純物の少ない粒子を得るために、粉体を乾燥することが好ましい。粉体の乾燥方法は特に制限されず、送風乾燥や減圧乾燥等公知の方法から選択できる。その中でも特に減圧乾燥は、解れ易い乾燥粉末が得られるためより好ましい。
乾燥温度は、疎水化球状有機ケイ素重合体粒子に含まれるアルキル基などの官能基が分解しない温度であれば、特に制限されず、好ましくは65~350℃の範囲、より好ましくは80~250℃の範囲で、好適な温度を適宜設定すればよい。また、乾燥時間は特に制限されないが、2~48時間にすることにより、十分乾燥した有機ケイ素重合体粒子を得ることができる。
【0073】
有機ケイ素重合体粒子はシランカップリング剤やシリコーンオイルなど公知の手段により表面処理を行い、疎水化度の調整を行ってもよい。
本発明において、有機ケイ素重合体粒子の疎水化度は、安定した摩擦帯電量を得る観点から、好ましくは45~80%、より好ましくは55~80%である。
【0074】
<有機ケイ素重合体粒子及び無機微粒子の疎水化度の算出方法>
疎水化度は、「メタノール滴定試験」によって規定される。
具体的には、サンプル粒子0.2gを容量250mlの三角フラスコ中の水50mlに添加する。メタノールをビューレットから無機微粒子の全量が湿潤されるまで滴定する。この際フラスコ内の溶液はマグネチックスターラーで常時撹拌する。その終点はサンプル粒子の全量が液体中に懸濁されることによって観察され、疎水化度は終点に達した際のメタノール及び水の液状混合物中のメタノールの百分率として表される。
【0075】
[結着樹脂]
トナーに使用される結着樹脂としては、特に限定されず、下記の重合体又は樹脂を用いることが可能である。
例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、スチレン-メタクリル酸系共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。
上記の中でも、エステル結合を有する樹脂が好ましい。特に、スチレン-アクリル酸系共重合体、スチレン-メタクリル酸系共重合体、スチレン-アクリル酸エステル系共重合体、及びスチレン-メタクリル酸エステル系共重合体などのビニル系樹脂、並びにポリエステル樹脂が好ましい。
【0076】
〔重合性単量体〕
ビニル系樹脂を作製する為に使用する重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が挙げられる。ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体又は多官能性重合性単量体を使用することができる。
単官能性重合性単量体としては、スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタク
リレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトンが挙げられる。
【0077】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’-ビス(4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’-ビス(4-(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0078】
上記した単官能性重合性単量体を単独若しくは2種以上組み合わせて、又は、上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組合せて使用することができる。
スチレン以外に用いる重合性単量体としてはスチレン誘導体、n-ブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸エステル系重合性単量体もしくはn-ブチルメタクリレートや2-エチルヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル系重合性単量体が望ましい。これは重合性単量体を重合して得られる結着樹脂の強度や柔軟性の点で優れているためである。
【0079】
ポリエステル樹脂は非晶性ポリエステル樹脂の場合は、重量平均分子量(Mw)が6000~100000であることが好ましく、6500~85000であることがより好ましく、6500~45000であることがさらに好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が6000以上であると、連続画像出力においてトナー表面の外添剤が耐久によって埋没しにくく、転写性の低下を抑えられる。重量平均分子量が100000以下であれば、重合性単量体に非晶性ポリエステル樹脂を溶解するのに時間を多く費やすことがなく、さらに、重合性単量体組成物の粘度上昇も抑えられるため、粒径が小さくかつ、粒度分布の揃ったトナーが得やすくなる。
【0080】
非晶性ポリエステル樹脂は、例えば、カルボン酸成分とアルコール成分の脱水縮合反応を利用する方法、やエステル交換反応で製造できる。触媒としては、エステル化反応に使う一般の酸性、アルカリ性触媒、例えば酢酸亜鉛、チタン化合物などでよい。その後、再結晶法、蒸留法などにより高純度化させてもよい。
特に好ましい製造方法は、原料の多様性、反応のしやすさからカルボン酸成分とアルコール成分の脱水縮合反応である。
【0081】
縮合系樹脂としてポリエステルを用いる際のポリエステルの組成について以下に説明す
る。
非晶性ポリエステル樹脂は、全成分中43~57mol%がアルコール成分であり、57~43mol%が酸成分であることが好ましい。
ポリエステル樹脂を製造する上で、公知のアルコール成分を用いることができる。アルコール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記式(I)で示されるビスフェノール誘導体、又は下記式(II)で示されるジオールなどのジオール類が挙げられる。
【0082】
【0083】
式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x,yはそれぞれ1以上の整数を示し、かつx+yの平均値は2以上10以下を示す。
【0084】

式中、R’は

を示す。
【0085】
2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ジフェニル-P・P’-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸,ジフェニルメタン-P・P’-ジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸,1,2-ジフェノキシエタン-P・P’-ジカルボン酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グリタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリエチレンジカルボン酸、マロン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、またさらに炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
【0086】
特に好ましいアルコール成分としては前記(I)式で示されるビスフェノール誘導体、エチレングリコールであり、酸成分としては、テレフタル酸、又はその無水物、こはく酸、n-ドデセニルコハク酸、又はその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の如きジカルボン酸が挙げられる。特にテレフタル酸が好ましい。
【0087】
ポリエステル樹脂は、2価のジカルボン酸及び2価のジオールから合成することにより得ることが可能であるが、場合により、3価以上のポリカルボン酸又はポリオールを本発明に悪影響を与えない範囲で少量使用してもよい。
3価以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサ
ントリカルボン酸類、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチレンカルボキシルプロパン、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸及びそれらの無水物が挙げられる。
【0088】
3価以上のポリオールとしては、スルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4-メタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0089】
3価以上のポリカルボン酸の量は全酸モノマーを基準として、10.00mol%以下であると好ましい。また同様に、3価以上のポリオールの量は全アルコールモノマーを基準として、10.00mol%以下であると好ましい。
上記範囲であると、架橋による不溶分が少ないため顔料分散性の点で好ましい。また、不溶分を生成しないように製法を工夫した場合でも、分岐型のポリエステル樹脂の割合が少なく、強度に優れるため耐久性の点で好ましい。
【0090】
非晶性ポリエステル樹脂は芳香族系飽和ポリエステルであると好ましい。これは、該トナーの帯電性、耐久性、定着性に優れ、該トナー及び該ポリエステルの物性の制御が容易であるためである。特に芳香族の有するπ電子の相互作用により帯電性に優れる。
【0091】
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応により得ることができる。その中でも、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を主成分とするポリエステルが、結晶化度が高く好ましい。結晶性ポリエステルは、1種類のみを用いても、複数種を併用してもよい。さらに、結晶性ポリエステルの他に非晶質のポリエステルをトナーに含有させてもよい。
【0092】
結晶性ポリエステルとは、示差走査熱量測定(DSC)において昇温時に吸熱ピークがあり、降温時に発熱ピークを有するポリエステルを指し、その測定は「ASTM D 3417-99」に準じて行う。
【0093】
このような結晶性ポリエステルを得るためのアルコール単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタジエングリコールその他が挙げられる。
【0094】
また、本発明においては上記のようなルコール単量体が主成分として用いられるが、上記成分の他に、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の二価のアルコール、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価のアルコール等を用いてもよい。
【0095】
上記結晶性ポリエステルを得るためのカルボン酸単量体としては、シュウ酸、マロン酸
、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n-ドデシルコハク酸、n-デドセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
また、本発明においては上記のようなカルボン酸単量体を主成分として用いるが、上記の成分の他に三価以上の多価カルボン酸を用いてもよい。
【0096】
三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。
【0097】
特に好ましい結晶性ポリエステルとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、テトラメチレングリコール及びエチレングリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル、ヘキサメチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、テトラメチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、ジエチレングリコールとデカンジカルボン酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができる。
結晶性ポリエステルは飽和ポリエステルであると一層望ましい。結晶性ポリエステルが不飽和部分を有する場合と比較して、過酸化物系重合開始剤との反応で架橋反応が起こらないため、結晶性ポリエステルの溶解性の点で有利だからである。
【0098】
結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることによって得ることができる。
【0099】
結晶性ポリエステル樹脂の融点(DSC吸熱ピーク)としては、50.0℃以上90.0℃以下であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点(DSC吸熱ピーク)が、50.0℃以上90.0℃以下であると、トナー粒子が凝集しにくく、トナー粒子の保存性、定着性が維持でき、かつ重合法によりトナー粒子を製造する場合に重合性単量体への溶解性が高くなり、好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の融点(DSC吸熱ピーク)は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。また結晶性ポリエステル樹脂の融点は、使用するアルコール単量体やカルボン酸単量体の種類、重合度等によって調整することができる。
【0100】
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は5000以上35000以下であることが好ましい。上記範囲であれば、得られるトナー粒子において、結晶性ポリエステルの分散性が向上され、耐久安定性が向上するため望ましい。
【0101】
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)が5000以上の場合では、結晶性ポリエステルの密度が高くなり、耐久安定性が向上する。一方、結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)が35000以下の場合には、結晶性ポリエステルの溶融が迅速に行われ、分散状態が均一になるために、現像安定性が向上する。結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、使用するアルコール単量体やカルボン酸単量体の種類、重合時間や
重合温度等によって調整することができる。
【0102】
結晶性ポリエステルの酸価(AV)は0.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下であるとより好ましく、0.0mgKOH/g以上5.0mgKOH/g以下であると特に好ましい。酸価を下げることにより、画像形成時におけるトナーと紙との接着性は向上する。
また重合法によりトナー粒子を製造する場合、結晶性ポリエステルの酸価(AV)が20.0mgKOH/g以下であると、トナー粒子同士の凝集が起こりにくくなる傾向にあり、また、トナー中における該結晶性ポリエステルの分布状態に偏りが出にくくなるため、帯電安定性及び耐久安定性が向上する。
【0103】
<結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂やスチレン-アクリル樹脂の分子量及び分子量分布>
試料の分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算で算出される。酸基を有する樹脂の分子量を測定する場合は、カラム溶出速度が酸基の量にも依存してしまうため、予め酸基をキャッピングした試料を用意する必要がある。キャッピングにはメチルエステル化が好ましく、市販のメチルエステル化剤が使用できる。具体的には、トリメチルシリルジアゾメタンで処理する方法が挙げられる。
GPCによる分子量の測定は、以下のようにして行う。まず、室温で24時間かけて、測定サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
測定サンプルの分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0104】
<非晶性ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂やトナー粒子のガラス転移温度>
試料のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC測定装置)を用いて測定する。
示差走査熱量計は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418-82に準じて以下のように測定する。測定サンプルは2~5mg、好ましくは3mgを精密に秤量する。それをアルミニウム製のパン中に入れ、対照用に空のアルミパンを用いる。20℃で5分間平衡を保った後、測定範囲20~180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。本発明においては、ガラス転移温度は中点法で求めることができる。
【0105】
<該ポリエステル樹脂、該結晶性ポリエステル樹脂、該スチレン-アクリル樹脂及びトナーの結着樹脂の構造分析>
該ポリエステル樹脂、該結晶性ポリエステル樹脂、該荷電制御樹脂、該スチレンーアク
リル樹脂及びトナーの結着樹脂の構造決定は、核磁気共鳴装置(1H-NMR、13C-N
MR)並びにFT-IRスペクトルを用いて行うことができる。以下に用いる装置について記す。
各樹脂サンプルはトナー中から分取することで採取し、分析してもよい。
(i)1H-NMR、13C-NMR
日本電子製FT-NMR JNM-EX400(使用溶媒 重クロロホルム)
(ii)FT-IRスペクトル
Thermo Fisher Scientific Inc.製 AVATAR360FT-IR
【0106】
<結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂やスチレン-アクリル樹脂の酸価の測定>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。本発明における酸価は、JIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
0.1モル/L水酸化カリウムエチルアルコール溶液(キシダ化学社製)を用いて滴定を行う。前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクターは、電位差滴定装置(京都電子工業株式会社製 電位差滴定測定装置AT-510)を用いて求めることができる。0.100モル/L塩酸100mLを250mLトールビーカーに取り、前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液の量から求める。前記0.100モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作成されたものを用いる。
下記に酸価測定の際の測定条件を示す。
滴定装置:電位差滴定装置AT-510(京都電子工業株式会社製)
電極:複合ガラス電極ダブルジャンクション型(京都電子工業株式会社製)
滴定装置用制御ソフトウエア:AT-WIN
滴定解析ソフト:Tview
滴定時における滴定パラメーター並びに制御パラメーターは下記のように行う。
滴定パラメーター
滴定モード:ブランク滴定
滴定様式:全量滴定
最大滴定量:20mL
滴定前の待ち時間:30秒
滴定方向:自動
制御パラメーター
終点判断電位:30dE
終点判断電位値:50dE/dmL
終点検出判断:設定しない
制御速度モード:標準
ゲイン:1
データ採取電位:4mV
データ採取滴定量:0.1mL
本試験;
測定サンプル0.100gを250mLのトールビーカーに精秤し、トルエン/エタノール(3:1)の混合溶液150mLを加え、1時間かけて溶解する。前記電位差滴定装置を用い、前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液を用いて滴定する。
空試験;
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(3:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
(式中、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。)
【0107】
<結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂やスチレン-アクリル樹脂の水酸基価の測定>
水酸基価は、試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。本発明における水酸基価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
特級無水酢酸25.0gをメスフラスコ100mLに入れ、ピリジンを加えて全量を100mLにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガスなどに触れないように、褐色びんにて保存する。
1.0モル/L水酸化カリウムエチルアルコール溶液(キシダ化学社製)を用いて滴定を行う。水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクターは、電位差滴定装置(京都電子株式会社製 電位差滴定測定装置AT-510)を用いて求める。具体的には、1.00mol/L塩酸100mLを250mLトールビーカーに取り、水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、中和に要した水酸化カリウムエチルアルコール溶液の量から求める。1.00mol/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
以下に、水酸基価測定の際の測定条件を示す。
滴定装置:電位差滴定装置AT-510(京都電子工業株式会社製)
電極:複合ガラス電極ダブルジャンクション型(京都電子工業株式会社製)
滴定装置用制御ソフトウエア:AT-WIN
滴定解析ソフト:Tview
滴定時における滴定パラメーター並びに制御パラメーターは下記のように行う。
滴定パラメーター
滴定モード:ブランク滴定
滴定様式:全量滴定
最大滴定量:80mL
滴定前の待ち時間:30秒
滴定方向:自動
制御パラメーター
終点判断電位:30dE
終点判断電位値:50dE/dmL
終点検出判断:設定しない
制御速度モード:標準
ゲイン:1
データ採取電位:4mV
データ採取滴定量:0.5mL
本試験;
測定サンプル2.00gを200mL丸底フラスコに精秤し、これに上記アセチル化試薬5.00mLを、ホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
フラスコの口に小さな漏斗をのせ、97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1.00mLを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5.0
0mLで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
得られたサンプルを250mLのトールビーカーに移し、トルエンとエタノール(3:1)の混合溶液100mLを加え、1時間かけて溶解する。電位差滴定装置を用い、水酸化カリウムエチルアルコール溶液を用いて滴定する。
空試験;
試料を用いない(すなわち、トルエンとエタノール(3:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B-C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター、S:試料の質量(g)、D:樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
【0108】
(荷電制御剤)
トナーには、公知の荷電制御剤を使用することができる。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0109】
(顔料)
トナーは、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
シアン系着色剤に用いられる顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、並びに、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3及び15:4。
マゼンタ系着色剤に用いられる顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物が利用できる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド31、32、122、150、254、264及び269。
【0110】
イエロー系着色剤に用いられる顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物及びアリルアミド化合物が利用できる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー74、93、120、139、151、155、180及び185。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、並びに、上記イエロー系、マゼンタ系及びシアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。
【0111】
顔料がカーボンブラック、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122、150、32、269、C.I.ピグメントイエロー155、93、74、180及び185であると本発明の効果が高く望ましい。特に望ましくはカーボンブラック、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122である。カーボンブラックの場合は、pHが6以上で吸油量(DBP)が30(ml/100g)以上120(ml/100g)以下であると好ましい。これは、本発明で用いられる重合開始剤が反応阻害されにくいためである。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0112】
(その他の添加剤)
トナーには、本発明の効果を阻害しない範囲で各種特性付与を目的として公知の様々な無機、有機の添加剤を用いることが可能である。用いる添加剤は、トナーに添加した時の耐久性の点から、トナー粒子の重量平均径の3/10以下の粒径であることが好ましい。この添加剤の粒径とは、走査型電子顕微鏡におけるトナー粒子の表面観察により求めたその平均粒径を意味する。
これら添加剤の含有量は、トナー100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.02質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これらの添加剤は、単独で用いても複数併用してもよい。
【0113】
また、これらの添加剤は疎水化処理されていてもよい。疎水化処理の方法としては、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤など各種カップリング剤を用いることが可能であるが、シリコーンオイルで疎水化度を高くすることが好ましい。高湿下での無機微粉体の水分吸着を抑制することができ、さらには、規制部材や帯電部材などの汚染が抑制することができるため、高品位の画像が得られるためである。
【0114】
トナーの製造方法は、懸濁重合法、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知のトナー製造方法であれば特に限定されないが、乳化凝集法や懸濁重合法が望ましい。
製造方法として乳化凝集法について説明する。
乳化凝集法とは、目的の粒子径に対して、十分に小さい樹脂微粒子を前もって準備し、その樹脂微粒子を水系媒体中で凝集することによりコア粒子を製造する製造方法である。乳化凝集法では、樹脂微粒子の乳化工程、凝集工程、融合工程、冷却工程、洗浄工程を経てトナー粒子が製造される。また必要に応じて、冷却工程後にシェル化工程を加え、コアシェルトナーにすることもできる。
【0115】
・樹脂微粒子の乳化工程
ポリエステル樹脂などの結着樹脂を主成分とする樹脂微粒子は公知の方法で調製できる。例えば、樹脂を有機溶剤に溶かして水系媒体に添加し、界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水系媒体に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。
有機溶剤は、樹脂を溶解させるものであればどのようなものでも使用可能であるが、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルムなどが高い溶解性を有するため好ましい。
また、水系媒体中に樹脂と界面活性剤、塩基等を加え、クレアミックス、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの高速剪断力をかける分散機により実質的に有機溶媒を含まない水系媒体で乳化分散することが環境負荷の点からこの好ましい。特に、沸点が100℃以下の有機溶剤の含有量が、100μg/g以下であることが好ましい。上記の範囲内の場合、トナーを製造する際、有機溶剤を除去、回収する工程が不要であり、廃水処理対策に負荷がかからない。なお水系媒体中の有機溶剤含有量はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定することができる。
【0116】
乳化時に使用する界面活性剤は、特に限定されるものでは無いが、例えば、以下のものが挙げられる。硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤。当該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂微粒子の体積分布基準のメジアン径は0.05~1.0μmが好ましく、0.05~0.4μmがより好ましい。1.0μm以下であればトナー粒子として適切な体積分布基準のメジアン径である4.0~7.0μmのトナー粒子を得ることが容易になる。なお体積分布基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA-EX150:日機装(株)製)を使用することによって測定可能である。
【0117】
・凝集工程
凝集工程とは、上述の樹脂微粒子、必要に応じて着色剤微粒子、離型剤微粒子などを必要量に応じて混合し混合液を調製し、ついで、調製された混合液中に含まれる粒子を凝集し、凝集体を形成させる工程である。当該凝集体を形成させる方法としては、例えば凝集剤を上記混合液中に添加・混合し、温度、機械的動力等を適宜加える方法が好適に例示できる。
上記凝集剤としては、例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩があげられる。
【0118】
前記凝集剤の添加・混合は、混合液中に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で上記混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。上記混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
ここで形成される凝集体の重量平均粒径は、特に制限はないが、通常、得ようとするトナー粒子の重量平均粒径と同じ程度になるよう4.0μm~7.0μmに制御するとよい。制御は、例えば、上記凝集剤等の添加・混合時の温度と上記撹拌混合の条件を適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。なお、トナー粒子や凝集体の粒度分布はコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:ベックマン・コールター(株)製)にて測定できる。
【0119】
・融合工程
融合工程とは、上記凝集体を、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上に加熱し融合することで、凝集体表面を平滑化させた粒子を製造する工程である。一次融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜投入することができる。
キレート剤の例としては、以下のものが挙げられる。エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩等のアルカリ金属塩、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、COOH及びOHの両方の官能性を含む多くの水溶性ポリマー類(高分子電解質)。
【0120】
上記加熱の温度としては、凝集体に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)から、樹脂が熱分解する温度の間であればよい。加熱・融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、加熱・融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分~10時間である。
【0121】
・冷却工程
冷却工程とは、上記粒子を含む水系媒体の温度を、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)より低い温度まで冷却する工程である。冷却をTgより低い温度まで行わないと、粗大粒子が発生してしまう。具体的な冷却速度は0.003~15℃/secである。特に0.1℃/sec以上であるとエステルワックスのドメインの分散状態が均一になり、定着性と耐久性の両立の点で特に効果が大きい。
【0122】
該冷却工程を経た該トナー粒子分散液を、結着樹脂のTg-10℃以上結着樹脂のTg+10℃以下の温度で30分以上保持する保持工程を有しているとより好ましい。好ましい保持時間は90分間以上であり、さらに好ましい時間は120分間以上である。一方、該保持時間の上限値は、その効果が飽和する1440分間程度である。
保持工程により、トナー粒子中に生成したエステルワックスなどの結晶性物質の結晶核
が十分に結晶成長することで、結着樹脂に相溶する結晶性物質の割合が低下するため、トナー粒子の耐衝撃性が向上し、機内付着を抑制でき、現像性が良好になる。
この工程において、結着樹脂のガラス転移温度Tg(℃)は、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)を用いてもよい。
【0123】
・シェル化工程
必要に応じて、下記の洗浄乾燥工程の前にシェル化工程を入れることができる。シェル化工程はこれまでの工程で作製した粒子に、樹脂微粒子を新たに添加し付着させて、シェル化させる工程である。
ここで添加する結着樹脂微粒子はコアに使用した結着樹脂微粒子と同一の構造でもよいし、異なる構造の結着樹脂微粒子でもよい。
【0124】
このようなシェル層を構成する樹脂としては、特に限定はなく、トナーに用いられる公知の樹脂、例えばポリエステル樹脂、スチレン-アクリル共重合体などのビニル系重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等が使用できる。なかでも、ポリエステル樹脂又はスチレン-アクリル共重合体が好ましく、定着性及び耐久性が高いという観点から、ポリエステル樹脂がより好ましい。
ポリエステル樹脂は、主鎖中に剛直な芳香環を有する場合、スチレン-アクリル共重合体のようなビニル系重合体と比較して可撓性を有するため、ビニル系重合体より低分子量のものであっても同等の機械的強度を付与できる。そのため、低温定着性に適した樹脂としてもポリエステル樹脂が好ましい。
シェル層を構成する結着樹脂は単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせてもよい。
【0125】
・洗浄乾燥工程
上記工程を経て作製した粒子を、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムでpHを調整されたイオン交換水で洗浄濾過を行い、続いて、イオン交換水で洗浄、濾過を複数回行う。その後、乾燥し、乳化凝集トナー粒子を得ることができる。
【0126】
懸濁重合によりトナーを得る場合、以下のような製造方法によって直接的にトナーを製造することが可能である。
結着樹脂を生成する重合性単量体並びに、必要に応じてポリエステル樹脂などの極性樹脂、離型剤、着色剤、及び架橋剤などその他の添加剤を混合し、ホモジナイザー、超音波分散機等によって均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。
得られた重合性単量体組成物を、分散安定剤を有する水系媒体中に通常の撹拌機又はホモミキサー、ホモジナイザーなどにより分散させる。その際、重合性単量体組成物の液滴が所望のトナーのサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒して重合性単量体組成物の粒子を形成する。その後は、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えばよい。
重合開始剤を添加することで重合反応を進行させるが、重合温度は、通常40℃以上、好ましくは50~120℃の温度に設定して重合を行う。重合温度が95℃以上の場合は重合反応を行う容器を加圧して水系媒体が蒸発するのを抑制してもよい。重合反応後半に昇温してもよく、必要に応じpHを変更してもよい。
さらに、定着時の臭いの原因となる未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半に反応温度を上げる、もしくは反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を留去してもよい。反応終了後、生成したトナー粒子前駆体分散液を得る。次に該トナー粒子前駆体分散液を濃縮、冷却、洗浄、ろ過により収集し、乾燥する。
【0127】
造粒中の水系媒体中のpHは特に制約は受けないが、好ましくはpH3.0~13.0、より好ましくは3.0~7.0、さらに好ましくは3.0~6.0である。pHが3.0以上であると、分散安定化させやすく、造粒が容易になる。
【0128】
また、トナー粒子の洗浄をpH2.5以下、より好ましくはpH1.5以下の酸を用いて行うことが好ましい。トナー粒子の洗浄を酸で行うことにより、トナー粒子表面に存在する分散安定剤を低減することができる。洗浄に用いる酸としては、特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸などの無機酸を用いることができる。これによりトナー粒子の帯電性を所望の範囲に調整することも可能である。
【0129】
分散安定剤としての難水溶性無機微粒子以外に有機系化合物、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して0.01質量部以上2.0質量部以下使用することが好ましい。
【0130】
さらに、これら分散安定剤の微細化のため0.001質量%以上0.1質量%以下の界面活性剤を併用してもよい。
具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0131】
(冷却工程)
該トナー中のワックスのドメイン径や該ドメインの分布を制御する場合、トナー粒子を含有するトナー粒子分散液を冷却する冷却工程における冷却条件やその後のアニール工程である程度制御することが可能である。
該冷却工程におけるトナー粒子分散液の冷却開始温度は、好ましくはワックスのDSC吸熱ピーク温度(℃)と結着樹脂(トナー粒子)のガラス転移温度Tg(℃)とのうちの高いほうの温度以上である。冷却終了温度は該ガラス転移温度Tg(℃)以下である。冷却速度は、0.3℃/sec以上であると好ましく、1.5℃/sec以上であるとより好ましい。
【0132】
水系媒体の温度を急速に冷却する手段としては、例えば冷水や氷を混合する操作や、冷風により水系媒体をバブリングする操作、熱交換器を用いて水系媒体の熱を除去する操作等を用いることが可能である。
【0133】
反応終了後、生成したトナー粒子分散液を、急激に冷却することでトナー粒子に含有されるワックスなどの結晶性物質のうち、結着樹脂中に相溶している成分が微細な結晶として析出する。その際、トナー粒子表面近傍には分子量の大きいポリマーが分布しているため、析出する結晶性物質は相溶しにくく、トナー粒子最表面近傍は結晶性物質の存在量は少なくなるため、濃縮装置の耐機内付着性や現像性に優れる。
さらに、該結晶性物質の多くはトナー粒子最表面より内側に微細な結晶状態で析出する。この結晶性物質はトナー粒子最表面近傍での存在量は少ないが、微細な結晶で均一に分散する割合が増加するため、定着時には結晶性物質が迅速に溶融するため定着性にも優れる。特に本発明で用いられる有機ケイ素重合体粒子がトナー粒子表面に存在していると定着性と耐久性の両立の点で特に効果が大きい。
【0134】
冷却工程におけるトナー粒子分散液の冷却開始温度は、ワックスなどの結晶性物質のDSC吸熱ピーク(℃)と結着樹脂(トナー粒子)のガラス転移温度Tg(℃)とのうちの高い方の温度以上(好ましくは、該DSC吸熱ピーク(℃)と該ガラス転移温度Tg(℃)とのうちの高いほうの温度より5℃以上、より好ましくは10℃以上)であり、冷却終
了温度は該ガラス転移温度Tg(℃)以下(より好ましくは、Tg-3℃以下)であると好ましい。
【0135】
トナー粒子を、結晶性物質のDSC吸熱ピーク(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tgより高い温度にすると、該結晶性物質はトナー粒子中により均一に溶融する。ここで、急速に冷却した場合、その状態を維持したまま、トナー粒子中に結晶性物質が微細な結晶として析出する。さらに、該結晶性物質の結晶の大きさにムラが少ないため、濃縮機の機内付着抑制、トナーの現像性及び定着性の点で優れる。
また、冷却終了温度を該ガラス転移温度Tg(℃)以下にすることにより、前述の状態を維持し続けることができるため、より一層、濃縮機の機内付着抑制、現像性と定着性に優れる。該結晶性物質のピーク分子量Mpは600以上であると上記作用効果が大きいため好ましい。
【0136】
以下に、冷却工程について、図面を参照して説明する。冷却工程は、好ましくは工程(1)~(3)を有する。
工程(1)は、結着樹脂を含有するトナー粒子が水系媒体中に分散された分散液を調整する工程である。
【0137】
図1は、本発明の工程(1)~(3)のトナー粒子を分散した水系媒体の温度の推移を模式的に示す。図1において、601は工程(1)を示し、602は工程(2)を示す。609はトナー粒子又は結着樹脂のガラス転移温度Tg、607は結晶性物質のDSC吸熱ピーク温度を示す。
工程(2)では、水系媒体の温度を結晶性物質のDSC吸熱ピーク温度及び該Tgのいずれかのうちの高い温度よりも高い温度へ昇温する。604は水系媒体を冷却する直前の温度を示し、開始温度T1とする。605は冷却を完了した直後の温度を示し、停止温度T2とする。
続いて、工程(3)において、結晶性物質の核形成及び成長を促すために、水系媒体の温度を保持する。603は工程(3)を示す。608及び610は、それぞれTg+10℃、Tg-10℃を示す線である。606は、工程(3)を開始した時間から30分経過した時間における水系媒体の温度T4を示す。611及び612はT1からT2に係る冷却速度1及びT3からT4に係る冷却速度2を示す。冷却速度及び冷却速度2は以下の式により算出される。
冷却速度1=(T1(℃)-T2(℃))/冷却に要した時間(分)
冷却速度2=(T3(℃)-T4(℃))/30(分)
【0138】
工程(2)及び工程(3)の処理を行う際、水系媒体中で処理を行うことで、疎水性である結晶性物質は、トナー粒子内部に閉じ込められる。このため、得られるトナー粒子の粒子表面に、結晶性物質が存在することを抑制できる。
工程(2)における水系媒体の温度を高い温度へ昇温する操作は、トナー粒子に含まれる結晶性物質及び結着樹脂を共に溶解させるために行う。この操作により、結晶性物質及び結着樹脂が分子レベルで混ざり合うことができる。
【0139】
さらに結着樹脂と結晶性物質を共に十分に溶融させるために、水系媒体の温度が結晶性物質のDSC吸熱ピーク温度(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のいずれかのうちの高い温度より高い温度が冷却開始温度であると好ましい。
なお、工程(1)を経た水系媒体の温度が既に、結晶性物質のDSC吸熱ピーク温度(℃)及びトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のいずれかのうち、高い温度より高い温度を満たす場合、さらに水系媒体を加熱する等の操作は必要がない。
【0140】
以下、トナーの製造に用いることのできるその他の製造装置について説明する。本発明
では、公知のものが使用できるが、造粒工程における撹拌手段の一例としては、パドル翼、傾斜パドル翼、三枚後退翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック社製)、マックスブレンド(住友重機社製)、スーパーミックス(佐竹化学機械工業社製)、Hi-Fミキサー(綜研化学社製)等の撹拌翼を有するものを用いることができる。他にも、高剪断力を付与できる撹拌機がより好ましい。
高剪断撹拌機としては、高速回転する撹拌ロータと該撹拌ロータを囲うように設けられたスクリーンとによって形成される撹拌室を備えているものが好ましく用いられる。具体的には、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)、クレアミックス(エムテクニック社製)、Wモーション(エムテクニック社製)、キャビトロン(キャビトロン社製)、シャープフローミル(太平洋機工社製)等が用いられる。
【0141】
トナーの重量平均粒径(D4)は、4.0μm以上12.0μm以下であると好ましく、4.0μm以上9.0μm以下であるとより好ましい。重量平均粒径が4.0μm以上であると長期使用において耐久性や耐熱性に良好であり、重量平均粒径が12.0μm以下であるとトナーの着色力及び画像の解像度の点で良好となる。
【0142】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。
また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下までに設定する。
【0143】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水
槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)、体積基準メジアン径、個数基準メジアン径を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、「中位径」が体積基準メジアン径(Dv50)である。また、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)であり、「中位径」が個数基準メジアン径(Dn50)である。
【0144】
トナー粒子のガラス転移温度は、保存性と定着性の観点から53℃以上75℃以下が好ましい。
【0145】
トナー粒子の平均円形度は、0.960以上が好ましい。トナー粒子間で、あるいはトナー担持体、又はトナー層規制部材との間で、トナー粒子が均一に摩擦帯電する確率が高く、トナー粒子が受けるストレスも均一化され、帯電性や、トナー層規制部材への融着の点で好ましい。
【0146】
<トナー粒子の平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて2000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水
で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.977μm以上、39.54μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行う。
【実施例
【0147】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の配合における部は特に断りのない限り全て質量部である。
【0148】
〔結晶性ポリエステル樹脂製造例1〕
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、
・セバシン酸:175部
・1、6-ヘキサンジオール:170部
・エチレングリコール:50部
・シュウ酸チタン酸カリウム:0.40部
上記ポリエステルモノマーを仕込み、窒素雰囲気下、常圧下で200℃で6時間反応を行い、その後更に10~20mmHgの減圧下で220℃で1.5時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂1は、酸価=1.3mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=21000、DSC吸熱ピーク=79.8℃であった。
SP値は10.00であった。
【0149】
〔結晶性ポリエステル樹脂製造例2〕
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、
・セバシン酸:175部
・1、6-ヘキサンジオール:20部
・エチレングリコール:190部
・シュウ酸チタン酸カリウム:0.40部
上記ポリエステルモノマーを仕込み、窒素雰囲気下、常圧下で200℃で6時間反応を行い、その後更に10~20mmHgの減圧下で220℃で1.5時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂2を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂2は、酸価=1.3mgKOH/g、水酸基価=30.3mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=21000、DSC吸熱ピーク=77.8℃であった。SP値は10.51であった。
【0150】
〔結晶性ポリエステル樹脂製造例3〕
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、
・セバシン酸:175部
・1、6-ヘキサンジオール:190部
・1、12-ドデカンジオール:20部
・シュウ酸チタン酸カリウム:0.40部
上記ポリエステルモノマーを仕込み、窒素雰囲気下、常圧下で200℃で6時間反応を行い、その後更に10~20mmHgの減圧下で220℃で1.5時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂3を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂3は、酸価=1.3mgKOH/g、水酸基価=27.3mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=25000、DSC吸熱ピーク=75.8℃であった。SP値は9.80であった。
【0151】
〔非晶性ポリエステル樹脂1の製造〕
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、
テレフタル酸:75部
ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:100部
テトラブトキシチタネート:0.125部
上記ポリエステルモノマーを仕込み、窒素雰囲気下、常圧下で200℃で5時間反応を行い、その後トリメリット酸を2.1部及びテトラブトキシチタネートを0.120部追加し、220℃で3時間反応させ、更に10~20mmHgの減圧下で2時間反応させて非晶性ポリエステル樹脂1を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂1は、酸価=8.3mgKOH/g、水酸基価=33.3mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=10000、DSC吸熱ピーク=72.5℃であった。SP値は10.04であった。
【0152】
〔非晶性ポリエステル樹脂2の製造〕
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、
テレフタル酸:61部
フマル酸:27部
ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:100部
テトラブトキシチタネート:0.125部
上記ポリエステルモノマーを仕込み、窒素雰囲気下、常圧下で200℃で5時間反応を行い、その後トリメリット酸を2.1部及びテトラブトキシチタネートを0.120部追加し、220℃で3時間反応させ、更に10~20mmHgの減圧下で2時間反応させて非晶性ポリエステル樹脂2を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂2は、酸価=10.0mgKOH/g、水酸基価=30.3mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=12000、DSC吸熱ピーク=70.8℃であった。SP値は10.51であった。
【0153】
[有機ケイ素重合体粒子1の製造例]
(第1工程)
温度計、攪拌機を備えた反応容器に、水:360部を入れ、濃度5.0質量%の塩酸:15部を添加して均一溶液とした。これを温度25℃で撹拌しながらメチルトリメトキシシラン136部を添加し、5時間撹拌した後、濾過してシラノール化合物またはその部分縮合物を含む透明な反応液を得た。
(第2工程)
温度計、攪拌機、滴下装置を備えた反応容器に、水:540部を入れ、濃度10.0質量%のアンモニア水:17部を添加して均一溶液とした。これを温度35℃で撹拌しながら第一工程で得られた反応液100部を0.5時間かけて滴下し、6時間撹拌し、有機ケイ素重合体粒子分散液を得た。
(第3工程)
得られた有機ケイ素重合体粒子分散液に、疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン5部を添加して、25℃で48時間攪拌すると液の上層部に疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粉体が浮遊する、粉体浮遊液が得られた。5分静置して浮かび上がった粉体を吸引濾過で回収し、100℃で24時間減圧乾燥して白色の疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(有機ケイ素重合体粒子1)の乾燥粉末を得た。物性を表1に示す。
【0154】
[有機ケイ素重合体粒子16の製造例]
(第1工程)
温度計、攪拌機を備えた反応容器に、水:360部を入れ、濃度5.0質量%の塩酸:
17部を添加して均一溶液とした。これを温度25℃で撹拌しながらメチルトリメトキシシラン136部を添加し、5時間撹拌した後、濾過してシラノール化合物またはその部分縮合物を含む透明な反応液を得た。
(第2工程)
温度計、攪拌機、滴下装置を備えた反応容器に、水:1540部、メタノール:1500部を入れ、濃度10.0質量%のアンモニア水:19部を添加して均一溶液とした。これを温度30℃で撹拌しながら第一工程で得られた反応液100部を0.33時間かけて滴下し、6時間撹拌し、有機ケイ素重合体粒子分散液を得た。
得られた懸濁液を遠心分離器にかけて微粒子を沈降させ取り出し、温度200℃の乾燥機で24時間乾燥させて有機ケイ素重合体粒子16を得た。物性を表1に示す。
【0155】
[有機ケイ素重合体粒子2~15、17~24の製造例]
シラン化合物、反応開始温度、触媒添加量、滴下時間などを表1に記載の様に変更した以外は、有機ケイ素重合体粒子1の製造例と同様にして、有機ケイ素重合体粒子2~15、17~24を得た。物性を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
[疎水性シリカ1の製造]
シリカ(AEROSIL 200CF、日本アエロジル製)100部をヘキサメチルジシラザン10部で処理し、さらにジメチルシリコーンオイル20部で処理して疎水性シリカ1を得た。疎水性シリカ1の一次粒子の個数平均粒径は12nm、疎水化度は97であった。
【0158】
[実施例1]
<樹脂粒子分散液1の調製>(SA-1)樹脂粒子 SP値:10.15
スチレン89.0部、メタクリル酸6.0部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート9.0部、n-ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)2.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質
量%、体積基準のメジアン径が0.15μmの樹脂粒子分散液1を得た。
【0159】
<樹脂粒子分散液2~10の調製>
モノマー組成を表2に記載のように変更した以外は樹脂粒子分散液1と同様にして、樹脂粒子分散液2~10を製造した。体積基準のメジアン径を表2に示す。
【0160】
【表2】

粒径は、体積基準のメジアン径である。表中の略称は以下の通り。
Ac:アクリル酸、MMA:メチルメタクリレート、St:スチレン、2-HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、Mac:メタクリル酸
【0161】
<樹脂粒子分散液11の調製>
高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)の乳化タンクに、非晶性ポリエステル樹脂1を3,000部、イオン交換水10,000部、界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム150部を投入した。130℃に加熱溶融後、110℃で流量3L/mにて10,000回転で30分間分散させ、冷却タンクを通過させて非晶性ポリエステル樹脂分散液(高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット0.4mm、キャビトロン社製)を回収した。
室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.15μmの非晶性ポリエステル樹脂分散液である樹脂粒子分散液11を得た。
【0162】
<樹脂粒子分散液12の調製>
非晶性ポリエステル樹脂1を非晶性ポリエステル樹脂2に変更した以外は樹脂粒子分散液11と同様にして樹脂粒子分散液12を製造した。体積基準のメジアン径は0.15μmであった。
【0163】
<樹脂粒子分散液13の調製>
高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)の乳化タンクに、結晶性ポリエステル樹脂1を3,000部、イオン交換水10,000部、界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム150部を投入した。130℃に加熱溶融後、110℃で流量3L/mにて10,000回転で30分間分散させ、冷却タンクを通過させて結晶性ポリエステル樹脂分散液(高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット0.4mm、キャビトロン社製)を回収した。
室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.15μmの結晶性ポリエステル樹脂の分散液である樹脂粒子分散液
13を得た。
【0164】
<樹脂粒子分散液14及び15の調製>
結晶性ポリエステル樹脂1をそれぞれ結晶性ポリエステル樹脂2及び3に変更した以外は樹脂粒子分散液13と同様にして樹脂粒子分散液14及び15を製造した。体積基準のメジアン径は0.15μmであった。
【0165】
(樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50))
樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置を用いて測定する。具体的にはJIS Z8825-1(2001年)に準じて測定さ
れる。測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、LA-920に付属の専用ソフト「HORIBA LA-920 for Windows(登録商標) WET(LA-920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純
固形物などを除去したイオン交換水を用いる。測定手順は、以下の通りである。
【0166】
(1)バッチ式セルホルダーをLA-920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、相対屈折率を樹脂粒子に対応した値に設定する。(5)「表示条件設定」画面において、粒径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100.0ml平底ビーカーに樹脂粒子の分散液を3ml入れる。さらに57mlのイオン交換水を入れて樹脂粒子の分散液を希釈する。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽
内に3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0ml添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)60秒間超音波分散処理を継続する。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した樹脂粒子の分散液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%~95%となるように調整する。そして、樹脂粒子の粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、D50を算出する。
【0167】
<着色剤分散液1の調製>
着色剤としてカーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液を得た。
【0168】
<ワックス分散液1の調製>
ワックス(エチレングリコールジステアレート、融点:76℃)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散してワックス分散液を得た。ワックス分散液の濃度は20質量%であった。該ワックス微粒子の体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装製)を用いて測定し、0.20μmであった。
【0169】
<ワックス分散液2~22の調製>
ワックスを表3に記載のように変更した以外はワックス分散液1と同様にしてワックス分散液2~10を製造した。体積基準のメジアン径は表3に示す。
【0170】
【表3】
【0171】
<トナー1の作製例>
樹脂粒子分散液1(表5-1に記載の樹脂粒子A):265部、ワックス分散液1:10部、着色剤分散液1:10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させる。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した。凝集剤として、硫酸マグネシウム0.250部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を、30℃攪拌下、10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。
50℃で30分保持した後、更に樹脂粒子分散液1(表5-1に記載の樹脂粒子C)を70部追加した。
その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定する。重量平均粒径が4.5μmになった時点で、塩化ナトリウム3.0部とネオゲンRK8.0部を添加して粒子成長を停止させた。
その後、95℃まで昇温して会合粒子の融着と球形化を行った。平均円形度が0.980に到達した時点で冷却工程を行った。95℃のトナー粒子前駆体分散液に5℃の水を混合し冷却速度を4.000℃/secとして30℃まで冷却した。
その後、1.00℃/minの昇温速度で55℃まで昇温し、55℃で180分温度を
保持した後、5℃の水を混合し冷却速度を5℃/secで30℃まで冷却した。
得られたトナー粒子分散液1に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子100部と、有機ケイ素重合体粒子2を6.67部、疎水性シリカ1を0.43部加え、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)で混合し、外添剤を有するトナー1を得た。得られたトナー1の物性等については表8-1に記載した。
(外添方法)
ジャケット内に7℃の水を通水したFMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)に投入した。
ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから回転羽根の周速38m/secで5分間混合し、トナー混合物を得た。
この際FMミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
得られたトナー混合物を目開き75μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
【0172】
<トナー2~10、15~58、61~75、77~82、84~90の作製例>
表5-1、5-2、6-1及び6-2に記載のように処方や冷却条件を変更した以外は、トナー1の製造例と同様にしてトナー2~10、15~58、61~75、77~82、84~90を得た。物性及び評価結果については表7-1、7-2、8-1,8-2、9-1、9-2に示す。
【0173】
<トナー59の作製例>
樹脂粒子分散液11(表5-2に記載の樹脂粒子A):225部、樹脂粒子分散液13(表5-2に記載の樹脂粒子B):40部、ワックス分散液1:10部、着色剤分散液1:10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させる。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した。凝集剤として、硫酸マグネシウム0.250部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を、30℃攪拌下、10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。
50℃で30分保持した後、更に樹脂粒子分散液11(表5-2に記載の樹脂粒子C)を70部追加した。
その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定する。重量平均粒径が4.5μmになった時点で、塩化ナトリウム3.0部とネオゲンRK8.0部を添加して粒子成長を停止させた。
その後、95℃まで昇温して会合粒子の融着と球形化を行った。平均円形度が0.980に到達した時点で冷却工程を行った。95℃のトナー粒子前駆体分散液に5℃の水を混合し冷却速度を4.00℃/secとして30℃まで冷却した。
その後、1.00℃/minの昇温速度で55℃まで昇温し、55℃で180分温度を保持した後、5℃の水を混合し冷却速度を5℃/secで30℃まで冷却した。
得られたトナー粒子分散液に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放
置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒子59を得た。
得られたトナー粒子100部と、有機ケイ素重合体粒子2を6.67部、疎水性シリカ1を0.43部加え、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)で混合し、外添剤を有するトナー59を得た。物性及び評価結果については表7-1、7-2、8-1,8-2、9-1、9-2に示す。
(外添方法)
ジャケット内に7℃の水を通水したFMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)に投入した。
ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから回転羽根の周速38m/secで5分間混合し、トナー混合物を得た。
この際FMミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
得られたトナー混合物を目開き75μmのメッシュで篩い、トナー59を得た。
【0174】
<トナー60の作製例>
樹脂粒子分散液13を表5-2,6-2に記載のように樹脂粒子分散液14に変更した以外はトナー59と同様にしてトナー60を製造した。物性及び評価結果については表7-1、7-2、8-1,8-2、9-1、9-2に示す。
【0175】
(トナー11の製造例)
分散媒(水系媒体)
反応容器中のイオン交換水1000部に、リン酸ナトリウム19.2部及び10%塩酸を6.2部投入し、Nパージしながら65℃で60分保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水13.8部に10.7部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
重合性単量体組成物
・スチレン 60部
カーボンブラック(Orion Engineerred Carbons社製、商品名「Printex35」) 7部
荷電制御剤(オリエント社製:ボントロンE-89) 0.25部
上記材料をアトライタ分散機(三井三池化工機株式会社)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、重合性単量体組成物を得た。
上記重合性単量体組成物に
・スチレン: 20部
・n-ブチルアクリレート: 20部
・結晶性ポリエステル樹脂3: 5部
・非晶性ポリエステル樹脂1: 5部
エチレングリコールジステアレート(融点76.0℃): 9部
を加えた。
別容器中で上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業製)を用い
て、500rpmにて均一に溶解、分散した。これに、重合開始剤t-ヘキシルパーオキシピバレート(日本油脂社製、商品名「パーヘキシルPV」、分子量:202、10時間半減期温度:53.2℃)10.0部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
造粒タンク中の上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、65℃、Nパージ下において、T.K.ホモミクサーにて10000rpmで5分間攪拌し、pH5.2で造粒した。その後、その後、重合タンクに移して、パドル攪拌翼で30回転/分で攪拌しつつ70℃で6時間(転化率は90%であった)、さらに95℃に昇温し、2時間反応させた。
重合反応終了後、冷却工程を行った。95℃のトナー粒子前駆体分散液に5℃の水を混合し冷却速度を4.00℃/secとして30℃まで冷却した。
その後、1.00℃/minの昇温速度で55℃まで昇温し、55℃で180分温度を保持した後、5℃の水を混合し冷却速度を5℃/secで30℃まで冷却した。
得られたトナー粒子分散液に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒子11を得た。
トナー粒子11:100質量部と、有機ケイ素重合体粒子2を5.88部、疎水性シリカ1を0.38部加え、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)で混合し、外添剤を有するトナー11を得た。物性及び評価結果については表7-1、7-2、8-1,8-2、9-1、9-2に示す。
(外添方法)
ジャケット内に7℃の水を通水したFMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)に投入した。
ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから回転羽根の周速38m/secで5分間混合し、トナー混合物を得た。
この際FMミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
得られたトナー混合物を目開き75μmのメッシュで篩い、トナー11を得た。
【0176】
(トナー12~14、83の製造例)
表4に記載のように結晶性ポリエステル樹脂3の有無や有機ケイ素重合体粒子の量や冷却条件を変更した以外は、トナー11の製造例と同様にしてトナー12~14および83を得た。物性及び評価結果については表7-1、7-2、8-1,8-2、9-1、9-2に示す。
【0177】
【表4】

ワックスの分子量はピーク分子量である。
【0178】
(トナー76の製造例)
(トナーバインダー溶液の合成)
非晶性ポリエステル樹脂1:1000部を酢酸エチル溶剤2000部に溶解、混合し、トナーバインダー(1)の酢酸エチル溶液を得た。
(トナーの作製)
ビーカー内に上記トナーバインダー(1)の酢酸エチル溶液240部、カーボンブラック(Orion Engineerred Carbons社製、商品名「Printex 35」)6.0部、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸のアルミ化合物〔ボントロンE88(オリエント化学工業社製)〕を1.0部、及び、エチレングリコールジステアレート(融点76.0℃)13部を入れ、55℃にてTK式ホモミキサーで12,000rpmで撹拌し、均一に溶解、分散させ、トナー材料溶液を得た。ビーカー内に水系媒体1(1036.3部)、及び、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.27部を入れ、均一に溶解した。
ついで60℃にてTK式ホモミキサーで12,000rpmで撹拌しながら、上記トナー材料溶液を投入して3時間撹拌した。ついで、混合液を撹拌棒及び温度計付のコルベンに移し、98℃に昇温して溶剤を除去した。
溶媒除去終了後、冷却工程を行った。95℃のトナー粒子前駆体分散液に5℃の水を混合し冷却速度を4.00℃/secとして30℃まで冷却した。
その後、1.00℃/minの昇温速度で55℃まで昇温し、55℃で180分温度を保持した後、5℃の水を混合し冷却速度を5℃/secで30℃まで冷却した。
得られたトナー粒子分散液に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒
子76を得た。
トナー粒子76:100部と、有機ケイ素重合体粒子2を6.67部、疎水性シリカ1を0.43部加え、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)で混合し、外添剤を有するトナー76を得た。物性及び評価結果については表7-1、7-2、8-1,8-2、9-1、9-2に示す。
(外添方法)
ジャケット内に7℃の水を通水したFMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)に投入した。
ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから回転羽根の周速38m/secで5分間混合し、トナー混合物を得た。
この際FMミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
得られたトナー混合物を目開き75μmのメッシュで篩い、トナー76を得た。
【0179】
(トナー91の製造例)
非晶性ポリエステル樹脂1: 100.0部
カーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)
7.00部
ワックス(エチレングリコールジステアレート、融点:76℃) 4.00部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、125℃で二軸混練押出機によって溶融混練を行い、混練物を室温まで徐々に冷却後、カッターミルで粗粉砕、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて粉砕し、風力分級することで、ブラック着色粒子を作製した。
得られたブラック着色粒子100部と、有機ケイ素重合体粒子2を6.67部、疎水性シリカ1を0.43部加え、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)で混合し、外添剤を有するトナー91を得た。物性及び評価結果については表7-1、7-2、8-1,8-2、9-1、9-2に示す。
(外添方法)
ジャケット内に7℃の水を通水したFMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)に投入した。
ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから回転羽根の周速38m/secで5分間混合し、トナー混合物を得た。
この際FMミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
得られたトナー混合物を目開き75μmのメッシュで篩い、トナー91を得た。
【0180】
【表5-1】
【0181】
【表5-2】
【0182】
【表6-1】
【0183】
【表6-2】
【0184】
【表7-1】
【0185】
【表7-2】
【0186】
【表8-1】
【0187】
【表8-2】

Dt:トナーの個数平均粒径(D1)
Dw:ワックスのドメインの平均長径
Dsi:有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径
【0188】
[実施例1~82]
トナー1~82をそれぞれ評価機を用いて各種画像評価を行った。評価結果は表15に示す。尚、実施例20~24、31、33及び35~38は、参考例として評価を行った。
【0189】
[比較例1~9]
トナー83~91をそれぞれ評価機を用いて各種画像評価を行った。評価結果は表15に示す。
【0190】
<トナー評価>
キヤノン製レーザービームプリンタLBP652Cの定着温度、プロセススピードが調
整できるように改造し、以下の評価を行った。
【0191】
<カブリ>
カブリの測定は、画像形成装置として後述の評価機を用い、下記の環境下で印字率1%にて2枚印刷する度に1分休止する方式で耐久試験を行い、初期から耐久13000枚印字後に各環境下において6日間放置した。
常温常湿環境(N/N)25.0℃60%RH
高温高湿環境(H/H)32.5℃85%RH
低温低湿環境(L/L)10.0℃10%RH
その後の1枚目の画像サンプルのカブリ量を東京電色社製のREFLECT METER MODELTC-6DSを使用して測定し、下記式より算出した。耐久試験に用いた記録材としてはA4サイズの普通紙(キヤノンマーケティングジャパン社製、GF-C081A4)を用いた。
カブリ量(%)=(プリントアウト前の記録材の白色度)-(プリント後の記録材の非画像形成部(白地部)の白色度)
【0192】
<定着性>
低温低湿環境下(SL/L:温度5℃、湿度10%RH)で、後述の評価機を用い、マシン及びトナーを充填したカートリッジが環境になじんだ状態(該環境下に24時間放置後)から電源を入れた。ウェイトアップ直後に200μm幅の横線パターン(横幅200μm、間隔200μm)をプリントアウトし、50枚目のプリント画像を定着性の評価に用いた。定着性の評価は画像をシルボン紙で5往復100g荷重でこすり、画像のはがれを反射濃度の低下率(%)の平均で評価した。
評価には表面平滑度10〔sec〕以下のボンド紙を用いた。以下に評価基準を示す。反射濃度の測定は、東京電色社製のREFLECT METER MODELTC-6DSを用いた。濃度低下率15%未満(B以上)を良好と判断した。
A:濃度低下率5%未満
B:濃度低下率5%以上15%未満
C:濃度低下率15%以上
【0193】
<トナーの融着・固着>
トナー担持体及びトナー層規制部材へのトナーの融着や固着は高温高湿環境下(H/H:温度32.5℃,湿度80%RH)、過酷高温高湿環境下(SH/H:温度35.0℃,湿度85%RH)で、後述の評価機を用いて評価した。印字率1%にて2枚印刷する度に1分休止する方式で耐久試験を行い、耐久8000枚目の画像サンプルについて目視にて融着や固着に起因するスジの発生を評価した。記録材として、A4サイズの普通紙(キヤノンマーケティングジャパン社製、GF-C081A4)を用いた。以下に評価基準を示す。B以上を良好と判断した。
A:融着や固着に起因するスジが、画像上に全く発生せず
B:融着や固着に起因する軽微なスジが、端部に1~3本発生
C:融着や固着に起因するスジが、端部に4本以上発生
【0194】
<耐オフセット性>
耐オフセット性は、低温低湿環境下(L/L:温度10℃、湿度10%RH)および苛
酷低温低湿環境下(SL/L:温度0℃、湿度10%RH)で、後述の評価機を用いて評
価した。マシン及びトナーを充填したカートリッジが環境になじんだ状態(該環境下に24時間放置後)から電源を入れ、ウェイトアップ直後に全面ベタ画像を100枚プリントアウトし、オフセット発生枚数について評価を行った。
評価にはOHPフィルム(CG3700、住友スリーエム株式会社製)を用いた。以下に評価基準を示す。C以上を良好と判断した。
A:オフセットが全く発生せず
B:オフセットの発生枚数1~2枚
C:オフセットの発生枚数3~4枚
D:オフセットの発生枚数5枚以上
【0195】
<潜像担持体へのフィルミング>
潜像担持体へのフィルミングは低温低湿環境下(L/L:温度10℃、湿度10%RH)および苛酷低温低湿環境下(SL/L:温度0℃、湿度10%RH)において後述の評価機を用い、印字率1%にて連続印字にて耐久試験を行った。耐久2000枚目の画像サンプルについて目視にてフィルミングの発生を評価した。記録材として、A4サイズの普通紙(キヤノンマーケティングジャパン社製、GF-C081A4)を用いた。以下に評価基準を示す。B以上を良好と判断した。
A:フィルミングが全く発生せず
B:長さ2mm前後の縦線が少し記録材上に存在
C:長さ5mm前後の縦線が多量に記録材上に存在
【0196】
<画像濃度>
初期画像濃度は、過酷高温高湿環境下(SH/H:温度35.0℃,湿度85%RH)で、後述の評価機を用い、紙上のトナーの載り量が0.38(mg/cm)にした全面
ベタチャートを1枚印字し、各画像の画像濃度を測定した。画像サンプルの濃度については東京電色社製のREFLECT METER MODELTC-6DSを使用して濃度を測定した。記録材としてはA4サイズの普通紙(キヤノンマーケティングジャパン社製、GF-C081A4)を用いた。
【0197】
<保存安定性>
トナーの保存安定性評価は、10gのトナーを100mlの樹脂製カップに量り取り、50℃又は55℃の恒温層の中へ3日間放置した後、200メッシュ(目開き)の篩にかけて評価した。測定装置として、デジタル振動計(DEGITAL VIBLATIONMETERMODEL 1332 SHOWA SOKKI CORPORATION製)を有するパウダーテスター(細川ミクロン社製)を用いた。
測定法としては、セットした200メッシュふるい(目開き75μm)上に評価用のトナーのせ、デジタル振動計の変位の値を0.50mm(peak-to-peak)になるように調整し、30秒間振動を加えた。その後、各ふるい上に残ったトナーの凝集塊の状態から保存安定性を評価した。以下に評価基準を示す。B以上を良好と判断した。
A:メッシュ上のトナー残量が1.0g未満
B:メッシュ上のトナー残量が1.0g以上2.5g未満
C:メッシュ上のトナー残量が2.5g以上
【0198】
(評価機)
キヤノン製レーザービームプリンタLBP652Cの定着温度、プロセススピードが調整できるように改造し、以上の評価を行った。
【0199】
【表9-1】
【0200】
【表9-2】
【符号の説明】
【0201】
601:工程(1)、602:工程(2)、609:トナー粒子のガラス転移温度Tg、607:結晶性物質のDSC吸熱ピーク温度、604:開始温度T1、605:停止温度T2、603:工程(3)、608:Tg+10℃示す線、610:Tg-10℃を示す線、606:温度T4、611:冷却速度1、612:冷却速度2
図1