(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】衣料用補強部材、及び衣料用補強部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
A41C 3/00 20060101AFI20231128BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231128BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231128BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20231128BHJP
A41C 3/10 20060101ALI20231128BHJP
A41C 3/14 20060101ALI20231128BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20231128BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A41C3/00 B
B32B27/32 A
B32B27/32 C
B32B27/40
B32B5/32
A41C3/10 B
A41C3/14 B
C08K5/5415
C08K5/14
(21)【出願番号】P 2019230441
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
(72)【発明者】
【氏名】安井 達彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳典
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-115948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0144622(US,A1)
【文献】特開2018-104495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0352874(US,A1)
【文献】特開平06-105857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C1/00-1/20
A41C3/00-3/14
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリオレフィンを含有する補強部が備えられた衣料用補強部材であって、
前記架橋ポリオレフィンは、ポリオレフィンがシランカップリング剤にて架橋された架橋構造を有し、
前記架橋ポリオレフィンのゲル分率は、30%以上98%以下であ
り、
以下の測定方法にて測定した前記補強部の復元率が70%以上である、衣料用補強部材。
[測定方法]
(1)前記補強部の評価サンプルの全長L0を測定する。
(2)長手側に180°曲げた状態で固定し、常温(25℃)で180分放置する。その後、固定状態を解いて、解放する。
(3)解放してから5分間放置し、評価サンプルの全長の長さL1を測定する。
(4)復元率は、(L1/L0)×100(%)で算出する。
【請求項2】
前記架橋ポリオレフィンのゲル分率は、75.4%以上98%以下である、請求項1に記載の衣料用補強部材。
【請求項3】
前記ポリオレフィンには、植物由来のポリオレフィンが含有されている、請求項1又は請求項2に記載の衣料用補強部材。
【請求項4】
更に、ポリウレタンフォーム部を備え、
前記補強部は、前記ポリウレタンフォーム部に挟み込まれている
又は内包されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の衣料用補強部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の衣料用補強部材の製造方法であって、
ポリオレフィン、シランカップリング剤、及び有機過酸化物を含有する樹脂組成物を成形して成形体とする成形工程と、
前記成形体と水を接触させる接触工程と、
を備える、衣料用補強部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衣料用補強部材、及び衣料用補強部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料には、補強部材が用いられている場合がある(特許文献1-2参照)。例えば、ブラジャー、水着、ブラキャミソールなど乳房カップを有する衣料には、乳房を美しく整えるために乳房カップの下に、乳房に沿うような湾曲形状の補強部材(ワイヤー部材)が用いられている。補強部材としては、金属ワイヤー、一般樹脂製の部材、スーパーエンプラ製の部材、エラストマー製の部材などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-183111号公報
【文献】特開2001-131806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属製ワイヤーは、剛性が過剰であるため、硬く、着用感が悪い。例えば、乳房への食い込みによる痛みの要因となるおそれがあり、破損した場合には怪我につながるおそれがある。
一般樹脂として、ソフト感、軽量化を求めて、例えば、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PC(ポリカーボネート)等の樹脂が使われる。しかし、これらの樹脂を用いた場合には、折り曲げを繰り返した際の復元性が弱く、洗濯時等による繰返し変形により破損・破断しやすいという課題がある。
スーパーエンプラとして、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等の使用も考えらえる。しかし、これらの樹脂は、一般的に耐熱性が高い、すなわち、融点、ガラス転移温度が高いため、成形性に劣るとともに、原料コストも高い。また、これらの樹脂は、一般樹脂より、より高剛性なため、硬く、着用感が悪くなってしまうという課題がある。
エラストマーとして、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)、TPS(スチレン系熱可塑性エラストマー)、TPU(ウレタン系熱可塑性エラストマー)、TPEE(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)等に代表される熱可塑性エラストマーを用いることも考えられる。これらの熱可塑性エラストマーは柔らかい素材であり、着用感が良い反面、乳房等を美しく整える機能に劣る。
また、従来は、石油由来の樹脂が用いられており、カーボンニュートラルの観点から環境に配慮すべきである。
また、補強部材を他部材とともに、加熱する二次成形をする場合があるが、この場合には、補強部材に耐熱性が要求される。
このように、補強部材の材質ごとに、様々な課題はあるが、原料コスト的に有利なポリオレフィンを用いた補強部材の開発が切望されていた。しかし、ポリオレフィンを用いた補強部材は、折り曲げを繰り返した際の復元性が弱く、しかも、熱に弱いため二次加工性も十分ではなかった。
本開示は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ポリオレフィンを樹脂として用いた補強部材であって、復元性に優れ、二次加工性にも優れた補強部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕架橋ポリオレフィンを含有する補強部が備えられた衣料用補強部材であって、
前記架橋ポリオレフィンは、ポリオレフィンがシランカップリング剤にて架橋された架橋構造を有し、
前記架橋ポリオレフィンのゲル分率は、30%以上98%以下である、衣料用補強部材。
【発明の効果】
【0006】
本開示の衣料用補強部材は、復元性に優れ、二次加工性も優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】衣料用補強部材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】加熱工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】復元率の測定方法を模式的に示す説明図である。
【
図5】二次成形の際の耐熱性を評価するための熱プレス成形を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記補強部には、触媒が添加されている、〔1〕に記載の衣料用補強部材。
この構成では、ゲル分率が短時間で高められるから、衣料用補強部材の生産性が向上する。
〔3〕前記シランカップリング剤は、前記ポリオレフィン100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下配合されている、〔1〕又は〔2〕に記載の衣料用補強部材。
この範囲内では、衣料用補強部材は、特に復元性に優れる。また、この範囲内では、二次加工性も極めても良好である。
〔4〕前記ポリオレフィンには、植物由来のポリオレフィンが含有されている、〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の衣料用補強部材。
植物由来のポリオレフィンを用いることで、環境に配慮した衣料用補強部材を提供できる。
〔5〕更に、ポリウレタンフォーム部を備え、
前記補強部は、前記ポリウレタンフォーム部に挟み込まれている、〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の衣料用補強部材。
補強部をポリウレタンフォーム部で挟み込むことで、衣料用補強部材を用いた衣料の装着感が良くなる。
しかも、この衣料用補強部材を製造するに際して、ポリウレタンフォーム部の形状を整える等の目的で熱加工したとしても、補強部が架橋ポリオレフィンを含有していて溶融しないため、製造しやすい。
〔6〕ポリオレフィン、シランカップリング剤、及び有機過酸化物を含有する樹脂組成物を成形して成形体とする成形工程と、
前記成形体と水を接触させる接触工程と、
を備える、衣料用補強部材の製造方法。
この製造方法では、復元性に優れる衣料用補強部材が提供される。
〔7〕前記架橋工程における前記水の温度は、5℃以上130℃以下であり、処理時間が0.5時間以上24時間以下である、〔6〕に記載の衣料用補強部材の製造方法。
この条件とすることで、ゲル分率を高めることができる。
〔8〕前記ポリオレフィンには、植物由来のポリオレフィンが含有されている、〔6〕又は〔7〕に記載の衣料用補強部材の製造方法。
植物由来のポリオレフィンを用いることで、環境に配慮した衣料用補強部材を提供できる。
〔9〕更に、前記接触工程後の前記成形体を、ポリウレタンフォームで挟んだ状態で加熱する加熱工程を備える、〔6〕から〔8〕のいずれか一項に記載の衣料用補強部材の製造方法。
この構成では、補強部の周りにポリウレタンフォーム部を備えた衣料用補強部材を製造できる。
以下、本発明を詳しく説明する。なお、"x~y"という範囲を示す表記は、特に断りが無い限り、当該範囲にxとyが入るものとする。
【0009】
1.衣料用補強部材1
衣料用補強部材1には、架橋ポリオレフィンを含有する補強部3が備えられている。架橋ポリオレフィンは、ポリオレフィンがシランカップリング剤にて架橋された架橋構造を有する。架橋ポリオレフィンのゲル分率は、30%以上98%以下である。
衣料用補強部材1のサイズ、形状は、特に限定されない。サイズ、形状は、使用される衣料等に応じて適宜変更できる。衣料用補強部材1が、ブラジャーに用いられる場合は、ワイヤーとして用いられる。衣料用補強部材1が用いられる衣料としては、ブラジャー、ドレス、水着、スポーツウェア等が好適に例示される。
【0010】
(1)架橋ポリオレフィン
架橋ポリオレフィンは、ポリオレフィンがシランカップリング剤にて架橋された架橋構造を有する。
ベースとなるポリオレフィンとしては、バイオマス由来のポリオレフィン、及び化石燃料由来のポリオレフィンからなる群より選ばれた少なくとも1種以上を用いることができる。
ベースとなるポリオレフィンとして、バイオマス由来のポリオレフィン、及び化石燃料由来のポリオレフィンを混合して用いる場合には、バイオマス由来のポリオレフィンの質量(A)と、化石燃料由来のポリオレフィンの質量(B)との比率は、特に限定されない。例えば、質量基準にて、A:B=0.1:99.9~99.9:0.1の混合比率で用いることができる。
【0011】
(1.1)バイオマス由来のポリオレフィン
バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを原料として用いている。バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、及びマニオクを挙げることができる。
【0012】
バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いると、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0013】
バイオマス由来のポリオレフィンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレン及び化石燃料由来のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種を更に含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンを更に含んでもよい。
【0014】
上記α-オレフィンの炭素数は、特に限定されない。α-オレフィンの炭素数は、通常、3~20の整数である。α-オレフィンは、ブチレン、ヘキセン、オクテンであることが好ましい。
【0015】
バイオマス由来のポリオレフィンと化石燃料由来のポリオレフィンとは、分子量や機械的性質・熱的性質などの物性に差が生じないので、これらを区別するために、一般にASTM D6866で規定されたバイオマスプラスチック度が用いられる。
大気中では1012個に1個の割合で放射性炭素14Cが存在し、この割合は大気中の二酸化炭素でも変わらないので、この二酸化炭素を光合成で固定化した植物の中でも、この割合は変わらない。このため、バイオマス由来のポリオレフィンの炭素には放射性炭素14Cが含まれる。これに対し、石油由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cがほとんど含まれない。そこで、加速器質量分析器で樹脂中の放射性炭素14Cの濃度を測定することにより、樹脂中の植物由来樹脂の含有割合、すなわちバイオマスプラスチック度を求めることができる。
【0016】
バイオマス由来のポリオレフィンのバイオマスプラスチック度は、特に限定されない。バイオマス由来のポリオレフィンのバイオマスプラスチック度は、カーボンニュートラルの考え方において、環境に配慮するという観点から、下限値に関して、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、94%以上が更に好ましい。上限値に関して、特に限定されず、100%でもよいが、通常、99%以下である。よって、バイオマス由来のポリオレフィンのバイオマスプラスチック度は、80%以上99%以下が好ましく、90%以上99%以下がより好ましく、94%以上99%以下が更に好ましい。
【0017】
バイオマス由来のポリオレフィンとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好適に例示される。シラノール架橋により復元率を向上できる為、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、密度が0.941g/cm3以上の高密度ポリエチレン(HDPE)、密度が0.910g/cm3以上0.94g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3未満の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が例示される。
ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、特に限定されない。MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重))は、成形性の観点から、1g~30g/10分であることが好ましく、1g~25g/10分であることがより好ましく、1g~20g/10分であることが更に好ましい。
【0018】
バイオマス由来のポリオレフィンとしては、Braskem社製の製品名「SHA7260」(HDPE)、「SBC818」(LDPE)、「SLL118/21」(LLDPE)等を用いることができる。
【0019】
(1.2)化石燃料由来のポリオレフィン
化石燃料由来のポリオレフィンは、化石燃料由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。原料であるモノマーとして化石燃料由来のエチレンを用いると、重合されてなるポリオレフィンは化石燃料由来となる。化石燃料由来のポリオレフィンには、バイオマス由来のモノマーを用いない。
【0020】
化石燃料由来のポリオレフィンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のα-オレフィンを更にさらに含んでもよい。
【0021】
上記α-オレフィンの炭素数は、特に限定されない。α-オレフィンの炭素数は、通常、3~20の整数である。α-オレフィンは、ブチレン、ヘキセン、オクテンであることが好ましい。
【0022】
化石燃料由来のポリオレフィンとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好適に例示される。シラノール架橋により復元率を向上できる為、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、密度が0.941g/cm3以上の高密度ポリエチレン(HDPE)、密度が0.910g/cm3以上0.94g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3未満の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が例示される。
ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、特に限定されない。MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重))は、成形性の観点から、1g~30g/10分であることが好ましく、1g~25g/10分であることがより好ましく、1g~20g/10分であることが更に好ましい。
【0023】
化石燃料由来のポリオレフィンとしては、東ソー株式会社製の製品名「ニポロンハード2300」(HDPE)、「ペトロセン340」(LDPE)、「ニポロン-Z ZF260」(LLDPE)等を用いることができる。
【0024】
(2)シランカップリング剤
シランカップリング剤は、特に限定されない。シランカップリング剤は、不飽和シラン化合物を用いることができる。不飽和シラン化合物として、一般式R1SiR2
mY3-mで表されるものを好適に採用できる。
この式中、R1は、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル等のシクロアルケニル基や、γ-クロロエチル基、γ-ブロモエチル基等のハロゲン化アルキル基、グリシジル基、アミノ基、メタクリル基等の有機官能基を示す。
R2は脂肪族飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。また、mは0、1又は2を示す。
Yは加水分解可能な有機基を示し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオノキシ基、アルキル基、又はアリールアミノ基等が挙げられ、mが0又は1のとき、Y同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
上記一般式で表わされる不飽和シラン化合物として好ましくは、一般式CH2=CHSi(OA)3で表されるものが挙げられる。
この式中、Aはアルキル基又はアシル基であって、炭素数が1~8、中でも1~4のものが好ましく、このような好適なA基をもつ不飽和シラン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0026】
シランカップリング剤の配合割合は、特に限定されない。シランカップリング剤の配合割合は、復元性に優れ、二次加工性にも優れた補強部材とする観点から、ベース樹脂(ポリオレフィン)100質量部に対して、下限値に関し、0.1質量部以上が好ましく、0.15質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上が更に好ましい。上限値に関して、脆くならずに壊れにくいという観点から5.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下が更に好ましい。よって、シランカップリング剤の配合割合は、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.15質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、0.2質量部以上2.0質量部以下が更に好ましい。
【0027】
(3)架橋ポリオレフィン
架橋ポリオレフィンは、ポリオレフィンがシランカップリング剤にて架橋された架橋構造を有する。
ベースとなるポリオレフィンがシランカップリング剤でグラフト変性されると、シラン変性ポリオレフィン系樹脂となる。シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、主鎖であるポリオレフィンに、不飽和シラン化合物等のシランカップリング剤が側鎖としてグラフト共重合した構造を有する。
架橋ポリオレフィンは、シラン変性ポリオレフィン系樹脂中の活性シラン基が水と反応して架橋反応した架橋構造を有する。架橋ポリオレフィンは、網目状高分子である。架橋ポリオレフィンは、線状高分子たるポリオレフィンの分子同士が、Si-O-Si結合によって架橋した構造を有している。
なお、グラフト変性(グラフト化反応)は、後述する有機過酸化物から発生するラジカルにより、生起させられる。
【0028】
(4)有機過酸化物
有機過酸化物は、熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤のポリオレフィンへのラジカル反応によるグラフト化反応を生起させる働きをする。ここで、グラフト化反応とは、シランカップリング剤のグラフト化反応部位と、ポリオレフィンのグラフト化反応可能な部位と、の共有結合形成反応であって、(ラジカル)付加反応をいう。例えば、有機過酸化物は、シランカップリング剤がエチレン性不飽和基を含む場合には、エチレン性不飽和基とポリオレフィンとのラジカル反応(ポリオレフィンからの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を生起させる働きをする。
【0029】
有機過酸化物としては、上記機能をするものであれば、特に制限されない。例えば、一般式:R3-OO-R4、R5-OO-C(=O)R6、R7C(=O)-OO(C=O)R8で表される化合物が好ましい。ここで、R3~R8は各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR3~R8のうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。このような有機過酸化物としては、ラジカル重合又は従来のシラン架橋法に用いられるものを特に制限されずに用いることができる。有機過酸化物として、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3が好適に採用される。
【0030】
有機過酸化物の配合割合は、特に限定されない。有機過酸化物の配合割合は、シランカップリング剤のグラフト化反応を十分に促進する観点から、ベース樹脂(ポリオレフィン)100質量部に対して、下限値に関し、0.01質量部以上が好ましく、0.015質量部以上がより好ましく、0.02質量部以上が更に好ましい。上限値に関して、補強部3が脆くならずに壊れにくいという観点から0.25質量部以下が好ましく、0.2質量部以下がより好ましく、0.1質量部以下が更に好ましい。よって、有機過酸化物の配合割合は、0.01質量部以上0.25質量部以下が好ましく、0.015質量部以上0.2質量部以下がより好ましく、0.02質量部以上0.1質量部以下が更に好ましい。
【0031】
(5)触媒(シラノール縮合触媒)
補強部3は、触媒を含有していてもよい。触媒は、架橋ポリオレフィンのゲル分率を短時間で高める効果を奏する。すなわち、触媒は、活性シラン基が水と反応する架橋反応の反応速度を速めることができるから、浸水工程等において、シラン変性ポリオレフィン系樹脂と水とを接触させて架橋反応させる時間を短縮して、衣料用補強部材1の製造スピードを上げることができる。
触媒は、シラン架橋に用いられるものであれば特に限定されない。触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、スズ(II)オクテート、ナフテン酸スズ、カプリル酸亜鉛、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジイソプロピルチタネート等が挙げられる。
触媒の配合割合は、ベース樹脂(ポリオレフィン)100質量部に対して0.0005質量部以上1質量部以下が好ましく、0.01質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。触媒はマスターバッチ化された市販品を用いることもできる。例えば、HZ082(三菱ケミカル社)を用い、この場合、ベース樹脂(ポリオレフィン)100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下用いることができる。
【0032】
(6)架橋ポリオレフィンのゲル分率
架橋ポリオレフィンのゲル分率は、復元性に優れ、二次加工性も良好にする観点から、下限値に関して、30%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。上限値に関して、脆くならずに壊れにくいという観点から98%以下であり、90%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。よって、架橋ポリオレフィンのゲル分率は、30%以上98%以下であり、50%以上90%以下が好ましく、60%以上70%以下がより好ましい。
なお、ゲル分率は、JIS K 6796(キシレン8h還流後、乾燥して測定)に基づいて測定された値である。
【0033】
(7)補強部3の添加成分
補強部3には、必要に応じ、所望の物性を損なわない範囲内で、樹脂に通常用いられる添加成分、例えば強化剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、充填剤(炭酸カルシウム等)等を添加することができる。
【0034】
(8)ポリウレタンフォーム部7
衣料用補強部材1は、ポリウレタンフォーム部7を備えていてもよい。この場合、補強部3は、ポリウレタンフォーム部7に挟み込まれていることが好ましい。ポリウレタンフォーム部7に挟み込まれた補強部3は、補強部3をポリウレタンフォームに挟み込んで、熱プレス成型したり、接着剤を塗布して成形できる。
ポリウレタンフォーム部7を構成するポリウレタンフォームの物性は、特に限定されない。ポリウレタンフォームの物性は、使用される衣料等に応じて適宜変更できる。
補強部3をポリウレタンフォーム部7に挟み込む前の、ポリウレタンフォームの物性は、以下のとおりである。ポリウレタンフォームのセル数は、感触、触感の観点から、15~70(個/25mm)が好ましく、20~60(個/25mm)がより好ましく、30~50(個/25mm)が更に好ましい。なお、セル数は、JIS K6400-1 付属書1に基づいて測定された値である。
ポリウレタンフォームの見掛け密度は、感触、触感の観点から、10kg/m3以上70kg/m3以下が好ましく、20kg/m3以上60kg/m3以下がより好ましく、30kg/m3以上50kg/m3以下が更に好ましい。なお、見掛け密度はJIS K 7222:2005に基づいて測定された値である。見掛け密度をこの範囲内とすることで、ポリウレタンフォームを衣料用補強部材1に適した硬さとすることができる。
ポリウレタンフォームは、25%圧縮荷重が0.02MPa以上0.3MPa以下が好ましく、0.025MPa以上0.25MPa以下がより好ましく、0.03MPa以上0.2MPa以下が更に好ましい。25%圧縮荷重は、JIS K 6400-2 D法による。25%圧縮荷重をこの範囲内とすることで、ポリウレタンフォームの弾性変形が良好となりブラパットとしての触感が良くなる。また、ポリウレタンフォームで補強部3を挟んで熱プレス成形した際に、ポリウレタンフォームと補強部3の密着性が高くなり、また長期間の使用時にブラワイヤーとポリウレタンフォームとの接着界面での剥離が生じがたくなり、耐久性に優れる。
ポリウレタンフォームは、平均セル径が300μm以上1700μm以下であることが好ましい。平均セル径は、ポリウレタンフォームの断面を走査型電子顕微鏡により倍率200倍で観察したときの、25mmの直線に接触するセルについて、セル径の累計をセルの個数で除して算出することができる。
成形後のポリウレタンフォーム部7(補強部3を挟み込んだポリウレタンフォーム)の厚さTは、特に限定されない。成形後のポリウレタンフォーム部7の厚さTは、衣料用補強部材1全体の強度確保しつつ、衣料の着心地を良くする観点から、0.5mm以上25mm以下が好ましく、1mm以上20mm以下がより好ましく、2mm以上15mm以下が更に好ましい。
【0035】
(9)衣料用補強部材1の効果
衣料用補強部材1は、ゲル分率が30%以上98%以下である架橋ポリオレフィンを含有する補強部3を備えている。よって、衣料用補強部材1は、復元性に優れ、二次加工性も優れる。
補強部3に、触媒が添加されている場合には、ゲル分率が短時間で高められるから、衣料用補強部材1の生産性が向上する。
植物由来のポリオレフィンを用いることで、環境に配慮した衣料用補強部材1を提供できる。
架橋ポリオレフィンを用いた衣料用補強部材1は、未架橋のポリオレフィンを用いた衣料用補強部材1と曲げ強度、装着感は変わらないにも拘わらず、復元性及び二次加工性が向上する。
補強部3をポリウレタンフォーム部7で挟み込むことで、衣料の装着感が良くなる。衣料用補強部材1を製造するに際して、ポリウレタンフォーム部7の形状を整える等の目的で熱加工したとしても、補強部3が架橋ポリオレフィンを含有していて溶融しないため、製造しやすい。
【0036】
2.衣料用補強部材1の製造方法
(1)製造方法
衣料用補強部材1の製造方法は、ポリオレフィン、シランカップリング剤、及び有機過酸化物を含有する樹脂組成物を成形して成形体とする成形工程と、成形体と水を接触する接触工程と、を備える。なお、この製造方法の欄における「ポリオレフィン」、「シランカップリング剤」、「有機過酸化物」、「触媒」、及びこれらの配合割合、並びに「架橋ポリオレフィン」、「ポリウレタンフォーム」等については、上述の「1.衣料用補強部材1」の欄の説明をそのまま適用し、重複する説明を省略する。
【0037】
成形工程では、例えば、二軸押出機等の押出機で溶融混錬してペレットを得る。その後、ペレットを射出成形機等の成形機にて補強部3の形状に成形して成形体とする。射出成形機に用いるペレットに触媒等をドライブレンドしてもよい。成形体は、シラン変性ポリオレフィン系樹脂を含有している。
接触工程では、例えば、架橋反応(水架橋反応)を促進させるために、成形体を水に漬ける工程を採用できる。接触工程では、成形体を蒸気に曝す方法を採用してもよい。接触工程後の成形体は、架橋ポリオレフィンを含有する補強部3となる。この架橋ポリオレフィンは、上述の「1.衣料用補強部材1」の「(6)架橋ポリオレフィンのゲル分率」の欄で説明したゲル分率となる。
接触工程における水の温度は、特に限定されない。水の温度は、架橋反応を十分に進行させる観点から、下限値に関して、5℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。上限値に関して、架橋ポリオレフィンの劣化を抑制する観点から130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。よって、水の温度は、5℃以上130℃以下が好ましく、20℃以上110℃以下がより好ましく、30℃以上100℃以下が更に好ましい。
接触工程における処理時間は、特に限定されない。処理時間は、架橋反応を十分に進行させる観点から、下限値に関して、0.5時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上が更に好ましい。上限値に関して、架橋ポリオレフィンの劣化を抑制する観点から24時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましく、15時間以下が更に好ましい。よって、処理時間は、0.5時間以上24時間以下が好ましく、3時間以上20時間以下がより好ましく、5時間以上15時間以下が更に好ましい。
なお、衣料用補強部材1の製造方法は、接触工程の後に、乾燥工程を備えていてもよい。
【0038】
衣料用補強部材1の製造方法は、更に、接触工程後の成形体たる補強部3を、ポリウレタンフォーム11で挟んだ状態で加熱する加熱工程を備えていてもよい(
図3参照)。ここで用いるポリウレタンフォーム11の性状は、上述の「1.衣料用補強部材1」の「(8)ポリウレタンフォーム部7」の欄で説明した通りである。
加熱工程で用いるポリウレタンフォーム11の厚さT1は、特に限定されない。ポリウレタンフォーム11の厚さT1は、衣料用補強部材1全体の強度確保しつつ、衣料の着心地をよくする観点から、0.5mm以上40mm以下が好ましく、1mm以上35mm以下がより好ましく、2mm以上30mm以下が更に好ましい。
加熱工程における加熱温度は、特に限定されない。加熱温度は、ポリウレタンフォーム11と補強部3の密着性を上げて一体化する観点から、160℃以上250℃以下が好ましく、170℃以上240℃以下がより好ましく、180℃以上230℃以下が更に好ましい。
加熱工程における加熱時間は、特に限定されない。加熱時間は、ポリウレタンフォーム11と補強部3の密着性を上げて一体化する観点から、30秒以上600秒以下が好ましく、60秒以上500秒以下がより好ましく、120秒以上400秒以下が更に好ましい。
加熱工程においては、ポリウレタンフォーム11と補強部3の密着性を上げて一体化する観点から、圧力をかけることが好ましい。すなわち、加熱工程においては、熱プレスを採用することが好ましい。
【0039】
(2)製造方法の効果
本実施形態の製造方法では、復元性に優れる衣料用補強部材1が提供される。
架橋工程における水の温度を5℃以上130℃以下とし、処理時間を0.5時間以上24時間以下とすると、架橋ポリオレフィンのゲル分率を高めることができる。
植物由来のポリオレフィンを用いることで、環境に配慮した衣料用補強部材1を提供できる。
接触工程後の成形体(補強部3)を、ポリウレタンフォーム11で挟んだ状態で加熱する加熱工程を備えると、補強部3の周りにポリウレタンフォーム部7を備えた衣料用補強部材1を製造できる。成形体には、架橋ポリオレフィンが含有されているから、加熱工程の際に、成形体は熱変形せずに形状が保持される。その結果、形状の整った衣料用補強部材1を製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示し、本開示をさらに具体的に説明する。ただし、本開示は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0041】
1.衣料用補強部材の作製
表1,2に示す配合比で、ポリオレフィン(HDPE、LDPE、LLDPE)、シランカップリング剤(表1,2では、「カップリング剤」と表記)、過酸化物をドライブレンドした(一次配合)。
ドライブレンドした原料を、二軸押出機(株式会社 神戸製鋼所製 KTX30)で溶融混錬して各種ペレットを得た。
その後、各種ペレットに触媒をドライブレンドして(二次配合)、射出成型機にてブラワイヤ形状の成形体に成形した。成形体のサイズは、厚み1.5mm、幅5mm、長さ150mmとした。
成形体を90℃の水(お湯)に5時間浸けて、架橋反応を促進させた。成形体は、水から取り出した後、乾燥させ評価サンプル9とした。
【0042】
各原料の詳細は、以下の通りである。
・バイオHDPE:Braskem社製の製品名「SHA7260」
MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重)):20g/10分
・バイオLDPE:Braskem社製の製品名「SBC818」
MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重)):8.30g/10分
・バイオLLDPE:Braskem社製の製品名「SLL118/21」
MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重)):1.0g/10分
・石油由来HDPE:東ソー株式会社製の製品名「ニポロンハード2300」
MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重)):7.0g/10分
・石油由来LDPE:東ソー株式会社製の製品名「ペトロセン340」
MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重)):7.0g/10分
・石油由来LLDPE:東ソー株式会社製の製品名「ニポロン-Z ZF260」
MFR(JIS K6922-1:1997附属書(190℃、21.18N荷重)):2.0g/10分
・シランカップリング剤:信越化学工業株式会社の製品名「KBM-1003」(ビニルトリメトキシシラン)
・過酸化物:日本油脂社製の製品名「パーヘキサ25B」、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン
・触媒:三菱化学株式会社製のシラノール縮合触媒マスターバッチ(MB) 製品名「HZ082」、錫触媒含有高密度ポリエチレン、錫触媒含有量1質量
【0043】
【0044】
【0045】
2.評価方法
2.1 ゲル分率は、JIS K 6796(キシレン8h還流後、乾燥して測定)に基づいて測定した。
2.2 曲げ弾性率は、JIS K7171に基づいて測定した。
2.3 曲げ弾性率の変化率は、次のようにして算出した。
バイオHDPEを用いた実施例1~5は、バイオHDPEを用いているが、シランカップリング剤を添加していない比較例2と比較した。表1の実施例1~5の曲げ弾性率の変化率は、表2の比較例2の曲げ弾性率を100とした場合の百分率で記載されている。例えば、実施例1の場合は、(920/910)×100=101(%)と計算される。
石油由来HDPEを用いた実施例8は、石油由来HDPEを用いているが、シランカップリング剤を添加していない比較例1と比較した。表2の実施例8の曲げ弾性率の変化率は、表2の比較例1の曲げ弾性率を100とした場合の百分率で記載されている。
【0046】
2.4 復元性
復元性は、以下のように復元率を測定することで評価した。復元率が100%に近い程、復元性に優れることを意味する。
(1)評価サンプル9の全長L0を測定した(
図4(A)参照)。
(2)長手側に180°曲げた状態で固定し、常温(25℃)で180分放置した(
図4(B)参照)。その後、固定状態を解いて、解放した。
(3)解放してから5分間放置し、評価サンプル9の全長の長さL1(両端間の長さ)を測定した(
図4(C)参照)。
(4)復元率は、(L1/L0)×100(%)で算出した。
復元性の評価は、次のようにした。
評価A:復元率 70%以上
評価B:復元率 70%未満
【0047】
2.5 二次成形の際の耐熱性
二次成形の際の耐熱性は、次のように評価した。評価サンプル9を厚さ10mmのポリウレタンフォーム11で、両側から挟み込んだ(
図5参照)。この状態で、190℃×180sの条件で、熱プレス成形を行い、スペーサの厚み5mmにして、熱プレス成形を行い、評価サンプル9(補強部)を挟み込み、
図2のように上下のポリウレタンフォームが熱融着一体化したポリウレタンフォーム部を形成した。
その後、評価サンプル9の回りを囲んだポリウレタンフォーム部を破壊して、評価サンプル9を取出し、評価サンプル9の形状が保持されていれば評価Aとし、溶融等にて形状が保持されていなければ評価Bとした。
【0048】
2.6 総合評価
復元性の評価、及び二次成形の際の耐熱性の評価に基づいて次のように総合評価した。
総合評価A:復元性の評価、及び二次成形の際の耐熱性の評価が共に評価Aである。
総合評価B:復元性の評価、及び二次成形の際の耐熱性の評価の1つが評価Aである。
総合評価C:復元性の評価、及び二次成形の際の耐熱性の評価が共に評価Bである。
【0049】
3.評価結果
評価結果を表1,2に示す。表1,2の結果から、評価サンプル9が架橋ポリオレフィンである架橋ポリエチレンを含有し、ゲル分率が30%以上98%以下であると、総合評価がB以上であることが分かった。
【符号の説明】
【0050】
1…衣料用補強部材
3…補強部
7…ポリウレタンフォーム部
9…評価サンプル
11…ウレタンフォーム