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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】搬送装置および錠剤印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 35/08 20060101AFI20231128BHJP
   A61J 3/06 20060101ALI20231128BHJP
   B65B 35/40 20060101ALI20231128BHJP
   B65B 35/56 20060101ALI20231128BHJP
   B65G 47/84 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B65B35/08
A61J3/06 Q
B65B35/40
B65B35/56
B65G47/84 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019235169
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102476
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 侑弥
(72)【発明者】
【氏名】松田 邦利
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】片岡 雅人
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061432(WO,A1)
【文献】特開2019-167171(JP,A)
【文献】特開平08-058970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 35/08
A61J 3/06
B65B 35/40
B65B 35/56
B65G 47/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を搬送する搬送装置であって、
複数の粒状物を、水平な搬送方向に沿って供給する供給機構と、
前記搬送方向に対して直交しかつ水平な方向である幅方向と平行な軸を中心として回転しつつ前記供給機構から供給される前記粒状物を受け取るドラムと、
前記供給機構から前記ドラムへの受け渡し位置の付近に配置された第1押圧部材と、
前記第1押圧部材を前記ドラムへ向けて押圧する第1弾性部材と、
を備え、
前記ドラムは、前記ドラムの上端部付近において、前記供給機構から供給される前記粒状物を受け取り、
前記ドラムの外周面は、
前記軸を中心とする周方向に間隔をあけて配列された複数の凹状のポケット
を有し、
前記ポケットは、
前記ドラムの回転方向における後端部に、前記ポケットの底面から後方へ向かうにつれて次第に高くなる傾斜面
を有し、
前記ドラムは、
粒状物を吸着する複数の吸着孔
を有し、
前記吸着孔は、前記ポケットの底面の、前記ドラムの回転方向における中央よりも前端側に位置する、搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記吸着孔は、前記ポケットの底面の、前記ドラムの回転方向における前端部に位置する、搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の搬送装置であって、
前記第1押圧部材は、
前記傾斜面との間で粒状物を保持する当接面
を有し、
前記軸を中心とする周方向に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記周方向に対する前記当接面の傾斜角度よりも大きい、搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の搬送装置であって、
前記ドラムは、
円筒状の外周面を有するドラム本体と、
前記ドラム本体の外周面に対して着脱可能な保持リングと、
を有し、
複数の前記ポケットは、前記保持リングの外周面に設けられている、搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の搬送装置であって、
前記粒状物は錠剤である、搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送装置と、
錠剤の表面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷部と、
を備える錠剤印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物を搬送する搬送装置および当該搬送装置を備えた錠剤印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品である錠剤には、製品を識別するための文字やコードが印刷される。また、ラムネ等の錠菓にも、マークやイラストが印刷される場合がある。従来、このような錠剤・錠菓等の粒状物に、インクジェット方式で画像を印刷する印刷装置が知られている。特に、近年では、後発医薬品の普及により、錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を識別しやすくするために、錠剤にインクジェット方式で鮮明に画像を印刷する技術が注目されている。
【0003】
この種の印刷装置では、多数の錠剤が搬入用のホッパに流し込まれる。印刷装置は、流し込まれた複数の錠剤を、1つ1つ搬送方向に所定の間隔をあけて整列させる。そして、整列した状態で搬送される複数の錠剤に対して、印刷が行われる。また、印刷装置に限らず、錠剤の検査を行う検査装置や、錠剤の包装を行う包装装置においても、複数の錠剤を搬送方向に所定の間隔をあけて整列させつつ搬送することが必要である。
【0004】
複数の錠剤を搬送方向に所定の間隔をあけて整列させつつ搬送する機構については、例えば、特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-59036号公報
【文献】特開平5-85519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構造では、シュート(22)に沿って供給される複数の錠剤(t)が、供給ローラ(3)の複数の切出片(31)により個々の錠剤(t)に切り出され、投入ドラム(1)の外周面へ供給されている(段落0036,図4等参照)。
【0007】
特許文献2の構造では、シュート(50)内の最下部の錠剤(9a)が、ストッパ(70)により保持されている。そして、ドラム(1)の回転に合わせてストッパ(70)が後退することにより、錠剤(9a)が落下して、ドラム(1)のリセス(2)へ供給されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1,2の構造では、シュートと、切り出し片またはストッパとの間に錠剤が挟まることによって、錠剤の詰まりや、錠剤の割れが発生するおそれがある。
【0009】
これに対し、例えば、ドラムの外周面に設けられたポケットに対して、錠剤を水平方向に供給すれば、錠剤の詰まりや錠剤の割れが、比較的生じにくいと考えられる。ただし、錠剤を水平方向に供給すると、錠剤同士を互いに接触させた状態で連続的に供給することが難しく、錠剤の供給間隔が安定しにくい。このため、錠剤の供給タイミングによっては、ポケットの後端部に、錠剤が乗り上げた状態となる場合がある。
【0010】
本発明は、錠剤等の粒状物の搬送装置において、ドラムの外周面に設けられたポケットに対して、粒状物を水平方向に供給し、かつ、ポケットの後端部に粒状物が乗り上げた状態となることを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、粒状物を搬送する搬送装置であって、複数の粒状物を、水平な搬送方向に沿って供給する供給機構と、前記搬送方向に対して直交しかつ水平な方向である幅方向と平行な軸を中心として回転しつつ前記供給機構から供給される前記粒状物を受け取るドラムと、前記供給機構から前記ドラムへの受け渡し位置の付近に配置された第1押圧部材と、前記第1押圧部材を前記ドラムへ向けて押圧する第1弾性部材と、を備え、前記ドラムは、前記ドラムの上端部付近において、前記供給機構から供給される前記粒状物を受け取り、前記ドラムの外周面は、前記軸を中心とする周方向に間隔をあけて配列された複数の凹状のポケットを有し、前記ポケットは、前記ドラムの回転方向における後端部に、前記ポケットの底面から後方へ向かうにつれて次第に高くなる傾斜面を有し、前記ドラムは、粒状物を吸着する複数の吸着孔を有し、前記吸着孔は、前記ポケットの底面の、前記ドラムの回転方向における中央よりも前端側に位置する。
【0013】
本願の第発明は、第発明の搬送装置であって、前記吸着孔は、前記ポケットの底面の、前記ドラムの回転方向における前端部に位置する。
【0014】
本願の第発明は、第1発明または第2発明の搬送装置であって、前記第1押圧部材は、前記傾斜面との間で粒状物を保持する当接面を有し、前記軸を中心とする周方向に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記周方向に対する前記当接面の傾斜角度よりも大きい。
【0015】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の搬送装置であって、前記ドラムは、円筒状の外周面を有するドラム本体と、前記ドラム本体の外周面に対して着脱可能な保持リングと、を有し、複数の前記ポケットは、前記保持リングの外周面に設けられている。
【0016】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の搬送装置であって、前記粒状物は錠剤である。
【0017】
本願の第発明は、錠剤印刷装置であって、第発明の搬送装置と、錠剤の表面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本願の第1発明~第発明によれば、ポケットの後端部に粒状物が乗り上げた状態となったときに、傾斜面と第1押圧部材との間に、当該粒状物を挟んで、粒状物の進行を止めることができる。そして、ドラムの回転が進むことにより、ドラムの次のポケットに、粒状物を落とすことができる。これにより、粒状物がポケットの後端部に乗り上げた状態のまま搬送されることを、抑制できる。また、吸着孔がポケットの前端側にあることにより、供給機構から供給される粒状物が、ポケットの前端側まで移動しやすくなる。これにより、ポケットの後端部に粒状物が乗り上げた状態となることを、より抑制できる。
【0020】
特に、本願の第発明によれば、ポケットの前端面に粒状物の前端部を接触させることにより、粒状物の姿勢を安定させることができる。これにより、粒状物が起立した姿勢で吸着保持されることを防止できる。
【0021】
特に、本願の第発明によれば、傾斜面と当接面との間の隙間が小さくなる。このため、ポケットの後端部に粒状物が乗り上げた状態となることを、より抑制できる。
【0022】
特に、本願の第発明によれば、粒状物の形状や大きさに応じて、保持リングを交換できる。これにより、ドラム本体の形状を変更することなく、ポケットの傾斜面の形状を、搬送すべき粒状物に適した形状に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】錠剤印刷装置の構成を示した図である。
図2】搬送コンベアの部分斜視図である。
図3】1つのヘッドの下面図である。
図4】制御部と、錠剤印刷装置内の各部との接続を示したブロック図である。
図5】第1ドラムの部分側面図である。
図6】押圧機構の側面図である。
図7】ある時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
図8】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
図9】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
図10】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
図11】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
図12】第1変形例に係る第1ドラムの部分側面図である。
図13】第2変形例に係る第1ドラムの部分側面図である。
図14】第3変形例に係る押圧機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置を含む錠剤印刷装置1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、粒状物である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。錠剤9は、素錠(裸錠)であってもよく、あるいは、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)等のコーティング錠であってもよい。また、錠剤9は、硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤であってもよい。また、本発明における「粒状物」は、医薬品としての錠剤に限らず、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、供給機構10、第1ドラム20、第2ドラム30、搬送コンベア40、第1カメラ50、印刷部60、第2カメラ70、乾燥機構80、排出機構90、および制御部100を備えている。
【0027】
供給機構10は、錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9を、第1ドラム20へ供給する機構である。本実施形態の供給機構10は、ボウルフィーダ11、第1シュート12、供給コンベア13、および第2シュート14を有する。
【0028】
ボウルフィーダ11は、複数の錠剤9を受ける円盤状のトラフ110を有する。ボウルフィーダ11は、トラフ110を振動させることにより、複数の錠剤9を移動させて、第1シュート12へ供給する。第1シュート12は、トラフ110の排出口と供給コンベア13との間で、円弧状に延びている。第1シュート12は、複数の搬送路を有する。ボウルフィーダ11は、第1シュート12の各搬送路へ錠剤9を供給する。これにより、多数の錠剤9が複数の列に整列される。すなわち、搬送方向に並ぶ錠剤9の列が、幅方向(搬送方向に直交しかつ水平な方向)に複数列形成される。そして、整列後の錠剤9が、第1シュート12から供給コンベア13へ供給される。なお、図1では、1つの列の錠剤9のみが示されている。
【0029】
供給コンベア13は、第1シュート12から第2シュート14へ、錠剤9を水平かつ直線状に搬送する機構である。供給コンベア13は、2つのプーリ131と、2つのプーリ131に掛け渡された環状の供給ベルト132とを有する。2つのプーリ131の一方は、モータ(図示省略)から得られる動力により回転する。これにより、供給ベルト132が、図1中の矢印の方向に回動する。他方のプーリ131は、供給ベルト132の回動に伴い従動回転する。また、供給ベルト132の上部には、錠剤9の列の境界に沿って延びる仕切プレートが設けられている。第1シュート12から供給される錠剤9は、仕切プレートによって複数の列に整列された状態を維持しつつ、供給ベルト132の回動により、搬送方向の下流側へ搬送される。
【0030】
第2シュート14は、供給コンベア13と第1ドラム20との間で、直線状に延びている。第2シュート14は、複数の搬送路を有する。供給コンベア13から供給される複数の錠剤9は、第2シュート14の各搬送路へ供給される。そして、第2シュート14内の錠剤9は、供給コンベア13により搬送される後続の錠剤9に押されることによって、搬送方向の下流側へ進行する。そして、第2シュート14の搬送方向下流側の端部から第1ドラム20へ、錠剤9が供給される。
【0031】
第1ドラム20は、第2シュート14から供給される複数の錠剤9を、搬送方向に一定の間隔をあけて保持しつつ搬送する機構である。第1ドラム20は、幅方向に延びる第1軸O1を中心とする略円筒状の外周面を有する。また、第1ドラム20には、図示を省略したモータが接続されている。モータを駆動させると、第1ドラム20は、第1軸O1を中心として、図1中の矢印の方向へ回転する。第1ドラム20は、その上端部付近の第1受渡位置P1から、第2ドラム30に近接する第2受渡位置P2まで、錠剤9を搬送する。
【0032】
図1に示すように、第1ドラム20は、ドラム本体21と、保持リング22とを有する。ドラム本体21は、第1軸O1を中心とする円筒状の外周面を有する。ドラム本体21は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。保持リング22は、ドラム本体21の外周面に装着される。具体的には、複数の保持リング22が、錠剤9の列のそれぞれに対応する幅方向の位置に配置される。保持リング22は、例えば、ポリアセタール等の樹脂により形成される。
【0033】
各保持リング22の外周面は、複数の凹状のポケット23を有する。複数のポケット23は、第1軸O1を中心とする周方向に、一定の間隔で設けられている。また、保持リング22は、各ポケット23の底部に、錠剤9を吸着するための吸着孔24を有する。吸着孔24は、保持リング22を貫通する貫通孔である。
【0034】
第1ドラム20は、図示を省略した吸引機構と接続されている。吸引機構を動作させると、第1受渡位置P1と第2受渡位置P2との間の角度範囲に位置する第1ドラム20の内部空間から、気体が吸い出される。これにより、当該内部空間が、大気圧よりも低い負圧となる。また、当該内部空間と連通する吸着孔24にも、負圧が生じる。第2シュート14から供給される複数の錠剤9は、この負圧によって、保持リング22の吸着孔24に、吸着保持される。
【0035】
第2シュート14から供給される錠剤9は、1つずつポケット23に収容されて、吸着孔24に吸着保持される。その結果、複数の錠剤9の搬送方向の間隔が、ポケット23の間隔に応じた所定の間隔となる。各錠剤9は、ポケット23内の吸着孔24に吸着保持されつつ、第1ドラム20の回転によって、第1受渡位置P1から第2受渡位置P2まで搬送される。そして、錠剤9が第2受渡位置P2を通過すると、上記の負圧に保たれた内部空間の角度範囲から外れることによって、錠剤9の吸着が解除される。これにより、第1ドラム20から第2ドラム30へ、錠剤9が受け渡される。
【0036】
なお、第1受渡位置P1では、錠剤9は、押圧機構25に押圧されることにより、保持リング22のポケット23へ誘い込まれる。これにより、錠剤9の詰まりや割れを抑制しつつ、各ポケット23に錠剤9を1つずつ収容することができる。この押圧機構25の詳細については、後述する。
【0037】
第2ドラム30は、第1ドラム20から受け渡される錠剤9を、搬送コンベア40まで搬送する機構である。第2ドラム30は、幅方向に延びる第2軸O2を中心とする略円筒状の外周面を有する。本実施形態では、第1ドラム20の外径と、第2ドラム30の外径とが、略同一である。ただし、第1ドラム20の外径と、第2ドラム30の外径とは、相違していてもよい。第2ドラム30には、図示を省略したモータが接続されている。モータを駆動させると、第2ドラム30は、第2軸O2を中心として、第1ドラム20とは反対の向きに回転する。第2ドラム30は、第1ドラム20に近接する第2受渡位置P2から、搬送コンベア40に近接する第3受渡位置P3まで、錠剤9を搬送する。第3受渡位置P3の高さは、第1受渡位置P1および第2受渡位置P2の高さよりも高い。
【0038】
図1に示すように、第2ドラム30は、ドラム本体31と、保持リング32とを有する。ドラム本体31は、第2軸O2を中心とする円筒状の外周面を有する。ドラム本体31は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。保持リング32は、ドラム本体31の外周面に装着される。具体的には、複数の保持リング32が、錠剤9の列のそれぞれに対応する幅方向の位置に配置される。保持リング32は、例えば、シリコン等の樹脂により形成される。
【0039】
各保持リング32は、複数の吸着孔34を有する。吸着孔34は、保持リング22を貫通する貫通孔である。また、第2ドラム30は、図示を省略した吸引機構と接続されている。吸引機構を動作させると、第2受渡位置P2と第3受渡位置P3との間の角度範囲に位置する第2ドラム30の内部空間から、気体が吸い出される。これにより、当該内部空間が、大気圧よりも低い負圧となる。また、当該内部空間と連通する吸着孔34にも、負圧が生じる。第1ドラム20から受け渡される複数の錠剤9は、この負圧によって、保持リング32の吸着孔34に吸着保持される。
【0040】
吸着孔34に吸着保持された錠剤9は、第2ドラム30の回転によって、第2受渡位置P2から第3受渡位置P3まで搬送される。そして、錠剤9が第3受渡位置P3を通過すると、上記の負圧に保たれた内部空間の角度範囲から外れることによって、錠剤9の吸着が解除される。これにより、第2ドラム30から搬送コンベア40へ、錠剤9が受け渡される。
【0041】
このように、本実施形態では、供給機構10から供給される複数の錠剤9を、第1ドラム20および第2ドラム30の2つのドラムを介して、搬送コンベア40へ搬送する。第1ドラム20は、複数の錠剤9を、搬送方向に間隔をあけた状態で保持する。第2ドラム30は、その搬送方向の間隔を保ちながら、搬送コンベア40へ錠剤9を搬送する。その際、第1ドラム20と第2ドラム30とで、錠剤9の搬送の向き(回転の向き)が反転する。これにより、搬送コンベア40の動作の向きに合わせて、第2ドラム30から搬送コンベア40へ、錠剤9を送ることができる。
【0042】
また、第2ドラム30の保持リング32は、第1ドラム20の保持リング22よりも、弾性変形しやすい材料からなる。すなわち、第2ドラム30の外周面は、第1ドラム20の外周面よりも、弾性変形しやすい材料からなる。また、第2ドラム30の保持リング32は、搬送コンベア40の後述する搬送ベルト42よりも、弾性変形しやすい材料からなる。具体的には、第2ドラム30の保持リング32は、例えば、シリコンからなる。このようにすれば、第1ドラム20から第2ドラム30への錠剤9の受け渡し、および第2ドラム30から搬送コンベア40の受け渡しの際に、保持リング32の弾性力がはたらくため、錠剤9の脱落や割れを抑制して、受け渡しの成功率を高めることができる。
【0043】
搬送コンベア40は、第2ドラム30から受け渡される複数の錠剤9を、吸着保持しつつ搬送する機構である。搬送コンベア40は、一対のプーリ41と、一対のプーリ41の間に架け渡された環状の搬送ベルト42とを有する。一対のプーリ41の一方は、図示を省略したモータから得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト42が、図1中の矢印の方向に回動する。一対のプーリ41の他方は、搬送ベルト42の回動に伴い従動回転する。
【0044】
図2は、搬送コンベア40の部分斜視図である。図2に示すように、搬送ベルト42の外周面には、複数の吸着孔421が設けられている。複数の吸着孔421は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、搬送コンベア40は、搬送ベルト42の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構(図示省略)を有する。吸引機構を動作させると、搬送ベルト42の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔421に1つずつ吸着保持される。
【0045】
このように、複数の錠剤9は、搬送ベルト42の表面に、搬送方向よび幅方向に整列した状態で保持される。そして、搬送コンベア40は、搬送ベルト42を回動させることによって、複数の錠剤9を搬送する。後述する4つのヘッド61の下方では、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0046】
また、図1中に示すように、搬送コンベア40は、ブロー機構44を有する。ブロー機構44は、搬送ベルト42の内側、かつ、後述する排出シュート91と搬送ベルト42を介して対向する位置に、設けられている。ブロー機構44は、搬送ベルト42の複数の吸着孔421のうち、排出シュート91と対向する吸着孔421のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔421が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔421における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト42から排出シュート91を通って排出コンベアへ、錠剤9が受け渡される。
【0047】
このように、本実施形態では、供給機構10、第1ドラム20、第2ドラム30、および搬送コンベア40により、錠剤9を搬送する搬送装置が構成されている。
【0048】
第1カメラ50は、印刷前の錠剤9を撮影するための処理部である。第1カメラ50は、上述した第3受渡位置P3よりも搬送経路の下流側かつ印刷部60よりも搬送経路の上流側に位置する。第1カメラ50には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第1カメラ50は、搬送ベルト42により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第1カメラ50から後述する制御部100へ送信される。制御部100は、第1カメラ50から得られた画像に基づいて、各吸着孔421における錠剤9の有無、錠剤9の位置、および錠剤9の姿勢を検出する。また、制御部100は、第1カメラ50から得られた画像に基づいて、各錠剤9に欠け等の欠陥が無いかどうかの検査も行う。
【0049】
印刷部60は、搬送ベルト42により搬送される錠剤9の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する処理部である。図1に示すように、本実施形態の印刷部60は、4つのヘッド61を有する。4つのヘッド61は、搬送ベルト42の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。4つのヘッド61は、錠剤9に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド61から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0050】
図3は、1つのヘッド61の下面図である。図3には、搬送ベルト42と、搬送ベルト42に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。図3中に拡大して示したように、ヘッド61の下面には、インク滴を吐出可能な複数のノズル611が設けられている。本実施形態では、ヘッド61の下面に、複数のノズル611が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル611は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル611を二次元的に配置すれば、各ノズル611の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル611は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0051】
ノズル611からのインク滴の吐出方式には、例えば、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル611内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル611内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0052】
第2カメラ70は、印刷後の錠剤9を撮影するための処理部である。第2カメラ70は、印刷部60よりも搬送経路の下流側かつ乾燥機構80よりも搬送経路の上流側に位置する。第2カメラ70には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第2カメラ70は、搬送ベルト42により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第2カメラ70から後述する制御部100へ送信される。制御部100は、第2カメラ70から得られた画像に基づいて、錠剤9に印刷された画像の良否を検査する。
【0053】
乾燥機構80は、錠剤9に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構80は、第2カメラ70よりも搬送経路の下流側かつ後述する排出シュート91よりも搬送経路の上流側に位置する。乾燥機構80には、例えば、搬送ベルト42により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤9に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面または裏面に定着する。
【0054】
排出機構90は、搬送コンベア40から錠剤印刷装置1の外部へ、複数の錠剤9を排出するための機構である。排出機構90は、図1に示す排出シュート91と、図示を省略した排出コンベアとを有する。排出シュート91は、乾燥機構80よりも搬送経路の下流側に位置する。吸着孔421に吸着された錠剤9が、排出シュート91に対向する位置に到達すると、ブロー機構44により錠剤9の吸着が解除される。これにより、搬送ベルト42の吸着孔421から、排出シュート91を通って排出コンベアの上面へ、錠剤9が落下する。そして、落下した錠剤9が、排出コンベアによって、錠剤印刷装置1の外部へ排出される。
【0055】
制御部100は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。図4は、制御部100と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。図4中に概念的に示したように、制御部100は、CPU等のプロセッサ101、RAM等のメモリ102、およびハードディスクドライブ等の記憶部103を有するコンピュータにより構成される。記憶部103内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムCPが、インストールされている。
【0056】
また、図4に示すように、制御部100は、上述したボウルフィーダ11、供給コンベア13、第1ドラム20、第2ドラム30、搬送コンベア40、第1カメラ50、印刷部60、第2カメラ70、乾燥機構80、および排出機構90と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。制御部100は、記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムCPやデータをメモリ102に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ101が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9の搬送と、各錠剤9に対する印刷処理とが進行する。
【0057】
<2.第1ドラムの外周面形状について>
続いて、第1ドラム20の外周面の詳細な形状について、説明する。図5は、第1ドラム20の部分側面図である。図5に示すように、第1ドラム20の保持リング22は、複数のポケット23と、複数の凸状部230とを有する。複数のポケット23は、保持リング22の外周面において、周方向に一定の間隔で設けられている。凸状部230は、隣り合うポケット23の間に位置する。ポケット23の周方向の長さは、搬送対象となる錠剤9の1つ分より大きく、かつ、2つ分より小さい。したがって、1つのポケット23に正常に収容できる錠剤9の数は、1つである。
【0058】
図5に示すように、本実施形態のポケット23は、底面231と、前端面232と、後部傾斜面233とを有する。底面231は、ポケット23の底部を構成する面である。底面231は、第1ドラム20の回転方向に沿って、略平面状に広がる。前端面232は、ポケット23の前端部(搬送方向下流側の端部)に位置する。前端面232は、第1軸O1を中心とする周方向に対して、略垂直に広がる。後部傾斜面233は、ポケット23の後端部(搬送方向上流側の端部)に位置する。後部傾斜面233は、底面231と、後方の凸状部230の外表面とを接続する傾斜面である。後部傾斜面233の高さは、後方へ向かうにつれて次第に高くなる。
【0059】
第1ドラム20の各吸着孔24は、ポケット23の底面231の、第1ドラム20の回転方向における前端部(第1ドラム20に貫設された吸着孔24の内面の一部が前端面232にほぼ一致する、あるいは吸着孔24の内面の一部が前端面232よりドラム20の回転方向前方側に存在する位置)に位置する。
【0060】
<3.押圧機構について>
この錠剤印刷装置1は、第2シュート14と第1ドラム20との間に、押圧機構25を有する。押圧機構25は、錠剤9の列ごとに設けられている。各押圧機構25は、第1受渡位置P1において、第2シュート14から供給される錠剤9を、第1ドラム20へ向けて押圧する。これにより、第1ドラム20の複数のポケット23に、錠剤9が1つずつ収容される。
【0061】
図6は、押圧機構25の側面図である。図6に示すように、押圧機構25は、第1押圧部材26、第1弾性部材27、第2押圧部材28、および第2弾性部材29を有する。
【0062】
第1押圧部材26は、幅方向に延びる第1回動軸A1を中心として回動可能に支持されている。第1押圧部材26の先端部は、第2シュート14の搬送方向下流側の端部と、第1ドラム20の外周面との間に位置する。第1押圧部材26は、例えば、ポリアセタール等の樹脂により形成される。
【0063】
第1弾性部材27は、第1押圧部材26を第1ドラム20へ向けて押圧するための部材である。第1弾性部材27には、例えば、コイルばねが用いられる。第1弾性部材27の下端部は、第1押圧部材26に接続されている。第1弾性部材27の上端部は、位置が固定されたフレームに接続されている。したがって、第1押圧部材26の先端部が上方へ変位すると、第1弾性部材27の収縮によって、第1押圧部材26の先端部に、下向きの押圧力が発生する。なお、第1弾性部材27は、コイルばね以外の弾性部材(例えば、トーションばねや板ばねなど)であってもよい。
【0064】
図6に示すように、第1押圧部材26の先端部は、保持面261と当接面262とを有する。保持面261は、第1押圧部材26の先端部の下面である。保持面261と、第1ドラム20の外周面とは、上下方向に対向する。第1押圧部材26の先端部が上方へ変位していない状態において、保持面261と凸状部230との間の上下方向の間隔は、搬送対象となる錠剤9の厚みよりも小さい。
【0065】
当接面262は、保持面261よりも搬送経路の上流側(第2シュート14側)に位置する。当接面262は、保持面261の上流側の端部から、斜め上方へ向けて広がる。具体的には、当接面262は、第2シュート14へ近づくにつれて、第1ドラム20の外周面から徐々に離れるように傾斜する。当接面262の上流側の端部は、第2シュート14の下流側の端部に近接する。保持面261と当接面262とは、滑らかな曲面を介して接続されている。このため、錠剤9に割線等の溝がある場合であっても、保持面261と当接面262との境界部に錠剤9が引っかかることを抑制できる。
【0066】
第2押圧部材28は、第1押圧部材26よりも搬送経路の下流側に位置する。第2押圧部材28は、幅方向に延びる第2回動軸A2を中心として回動可能に支持されている。第2押圧部材28の先端部は、第1押圧部材26の先端部の下流側に隣接した位置に配置される。第2押圧部材28は、例えば、ポリアセタール等の樹脂により形成される。
【0067】
第2弾性部材29は、第2押圧部材28を第1ドラム20へ向けて押圧するための部材である。第2弾性部材29には、例えば、コイルばねが用いられる。第2弾性部材29の下端部は、第2押圧部材28に接続されている。第2弾性部材29の上端部は、位置が固定されたフレームに接続されている。したがって、第2押圧部材28の先端部が上方へ変位すると、第2弾性部材29の収縮によって、第2押圧部材28の先端部に、下向きの押圧力が発生する。なお、第2弾性部材29は、コイルばね以外の弾性部材(例えば、トーションばねや板ばねなど)であってもよい。
【0068】
図6に示すように、第2押圧部材28の先端部は、下方へ向けて突出する押圧突起281を有する。そして、押圧突起281は、下端部に押圧面282を有する。押圧面282は、第1押圧部材26の保持面261の下流側に近接した位置に配置される。第2押圧部材28の先端部が上方へ変位していない状態において、押圧面282と凸状部230との間の上下方向の間隔は、搬送対象となる錠剤9の厚みよりも小さい。
【0069】
また、図6に示すように、第2押圧部材28は、ガイド面283を有する。ガイド面283は、押圧突起281よりも、搬送経路の下流側に位置する。また、ガイド面283は、搬送経路の下流側へ向かうにつれて、徐々に第1ドラム20の外周面に近づくように傾斜する。ガイド面283の下流側の端部は、第2回動軸A2の近傍に位置する。
【0070】
<4.第1受渡位置における錠剤の搬送状態について>
図7は、複数の錠剤9を連続的に搬送しているときの、ある時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。図7に示すように、第2シュート14から供給される複数の錠剤9のうち、一部の錠剤9は、直接ポケット23に収容されず、凸状部230の上に供給される場合がある。このとき、当該錠剤9は、第1押圧部材26の当接面262に当接する。これにより、第1ドラム20の次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達するまで、錠剤9が堰き止められる。そして、第1ドラム20の回転により、次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達すると、堰き止められていた錠剤9が、ポケット23へ落下する。これにより、錠剤9をポケット23に正常に収容することができる。
【0071】
図8は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。第1弾性部材27による第1押圧部材26の押圧力は、錠剤9を破損させない程度の力に設定されている。このため、図8のように、錠剤9に押されて、第1押圧部材26が上方へ変位する場合がある。この場合、錠剤9は、第1押圧部材26の保持面261と、第1ドラム20の凸状部230との間に挟まれる。すなわち、第1弾性部材27による第1押圧部材26の押圧力によって、第1押圧部材26の保持面261と凸状部230との間に、錠剤9が保持される。これにより、錠剤9は、搬送経路の当該位置において、下流側へ移動することなく停止する。そして、第1ドラム20の回転により、次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達すると、停止していた錠剤9が、ポケット23へ落下する。これにより、錠剤9をポケット23に正常に収容することができる。
【0072】
図9は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。図9に示すように、ポケット23に1つの錠剤9が収容された後、同じポケット23に、後続の錠剤9の前端部(下流側の端部)が入る場合がある。この場合、錠剤9は、ポケット23の後部傾斜面233に沿って、斜めに配置される。また、錠剤9の後端部(上流側の端部)は、ポケット23からはみ出した状態となる。
【0073】
このように、ポケット23の後端部に乗り上げた錠剤9は、ポケット23の後部傾斜面233と、第1押圧部材26の当接面262との間に挟まれて保持される。これにより、錠剤9の搬送方向下流側への移動が止まる。そして、第1ドラム20の回転が進むことにより、錠剤9の位置は、後部傾斜面233から、凸状部230の上面に移動する。その結果、錠剤9は、上述した図8と同様に、第1押圧部材26の保持面261と、凸状部230との間に保持される。
【0074】
その後、さらに第1ドラム20が回転することにより、次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達すると、停止していた錠剤9が、ポケット23へ落下する。これにより、錠剤9が、ポケット23の後端部に乗り上げた状態のまま、搬送方向の下流側へ移動することを防止し、各ポケット23に、錠剤9を1つずつ正常に収容することができる。
【0075】
吸着孔24は、ポケット23の底面231のうち、第1ドラム20の回転方向における中央よりも前端側に位置する。このため、1つのポケット23に最初に供給される錠剤9が、ポケット23の後端部に乗り上げた状態で、吸着孔24に吸着されることはない。すなわち、1つのポケット23に最初に供給される錠剤9は、ポケット23の前端部まで、円滑に移動する。これにより、ポケット23の後端部に錠剤9が乗り上げた状態のまま搬送されることを、より抑制できる。
【0076】
特に、本実施形態では、吸着孔24は、ポケット23の底面231のうち、第1ドラム20の回転方向における前端部に位置する。このようにすれば、ポケット23の前端面232に錠剤9の前端面を接触させて、錠剤9を位置決めしつつ、錠剤9を吸着保持できる。したがって、錠剤9を、搬送方向に、精度良く一定の間隔で整列させることができる。また、ポケット23の前端面232に錠剤9の前端面を接触させることにより、錠剤9の前端面が、ポケット23の前端面232に沿う姿勢となる。これにより、錠剤9が起立した姿勢で吸着孔24に吸着保持されることを防止できる。
【0077】
なお、図9に示すように、本実施形態では、第1軸O1を中心とする周方向に対する後部傾斜面233の傾斜角度αは、第1軸O1を中心とする周方向に対する当接面262の傾斜角度βよりも、やや大きい。すなわち、これらの傾斜角度α,βの関係が、α>βとなっている。このようにすれば、α≦βの場合と比べて、後部傾斜面233と当接面262との隙間が小さくなる。このため、ポケット23の後端部に錠剤9が乗り上げた状態となることを、より抑制できる。
【0078】
また、上述の通り、保持リング22は、ドラム本体21の外周面に対して着脱可能である。このため、錠剤9の形状や大きさに応じて、保持リング22を交換できる。これにより、ドラム本体21の形状を変更することなく、ポケット23の後部傾斜面233の形状を、処理対象となる錠剤9に適した形状に変更できる。例えば、傾斜角度αが異なる複数の保持リング22を用意しておき、錠剤9の種類に応じて、最適な傾斜角度αの保持リング22を選択して使用すればよい。
【0079】
図10は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。錠剤9が凸状部230の上面に供給され、第1押圧部材26による堰き止めに失敗した場合、当該錠剤9は、凸状部230の上面に乗った状態のまま、第2押圧部材28の下方まで搬送される場合がある。この場合、第2押圧部材28の押圧突起281は、錠剤9に押されることにより、一旦上方へ変位する。そして、錠剤9の後端が押圧突起281に差し掛かると、第2弾性部材29の弾性力により、押圧突起281が再び降下する。そうすると、錠剤9は、押圧突起281の押圧面282に押圧されて、図10中の破線矢印のように、前方(搬送方向下流側)のポケット23へ押し込まれる。その際、錠剤9は、ポケット23の後部傾斜面233に沿って、ポケット23内へ円滑に移動する。これにより、錠剤9をポケット23に正常に収容することができる。
【0080】
図11は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。一部の錠剤9は、ポケット23内において、正常ではない姿勢で保持される場合がある。例えば、一部の錠剤9は、図11のように、起立した姿勢で吸着孔24に吸着保持されている場合がある。このような錠剤9は、第1ドラム20の回転により下流側へ搬送されるにつれて、徐々に接近するガイド面283によって、正常な姿勢に矯正される。その結果、錠剤9をポケット23に正常な姿勢で収容することができる。
【0081】
以上のように、この錠剤印刷装置1では、第2シュート14から第1ドラム20のポケット23へ、錠剤9が直接的に入らなかった場合であっても、押圧機構25により、第1ドラム20の外周面における錠剤9の周方向の位置を調整して、ポケット23に錠剤9を誘い込むことができる。これにより、錠剤9の詰まりや錠剤9の割れを抑制しつつ、第1ドラム20の各ポケット23に、錠剤9を正常に収容することができる。
【0082】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0083】
<5-1.第1変形例>
図12は、第1変形例に係る第1ドラム20の部分側面図である。上記の実施形態では、吸着孔24が、ポケット23の底面231のうち、第1ドラム20の回転方向における前端部に設けられていた。しかしながら、吸着孔24は、ポケット23の底面231の前端部以外の位置に設けられていてもよい。例えば、図12のように、吸着孔24は、ポケット23の底面231のうち、第1ドラム20の回転方向における中央付近に設けられていてもよい。この場合でも、ポケット23の後端部に後部傾斜面233を設けることにより、ポケット23の後端部に錠剤9が乗り上げた状態となることを抑制できる。すなわち、本発明において、ポケット23の底面231の前端部に吸着孔24を設けることは、必須ではない。
【0084】
<5-2.第2変形例>
図13は、第2変形例に係る第1ドラム20の部分側面図である。上記の実施形態では、保持リング22に設けられたポケット23の底面231に、吸着孔24が設けられていた。これに対し、図13の保持リング22は、ポケット23と幅方向に隣接する壁部221を有する。そして、壁部221に吸着孔24が設けられている。吸着孔24は、ポケット23側へ向けて、幅方向に開口する。この例では、吸着孔24が、ポケット23に収容された錠剤9の側面を吸着することにより、錠剤9を保持する。
【0085】
錠剤9の側面が円環状である場合、錠剤9の側面が吸着孔24に吸着されることにより、吸着孔24に対して錠剤9を、一定の位置に位置決めしつつ、保持することができる。したがって、上記の実施形態のように、ポケット23の前端面232に錠剤9の前端部を接触させて、錠剤9を位置決めする必要がない。
【0086】
<5-3.第3変形例>
図14は、第3変形例に係る押圧機構25の側面図である。上記実施形態の押圧機構25は、第1押圧部材26および第1弾性部材27と、第2押圧部材28および第2弾性部材29と、を有していた。そして、第2押圧部材28および第2弾性部材29は、図10または図11の状態となった場合に、錠剤9をポケット23に正常に収容する役割を果たしていた。しかしながら、錠剤9の種類によっては、図10図11の状況自体が発生しにくい場合もある。そのような場合には、図14のように、第2押圧部材28および第2弾性部材29を省略し、押圧機構25を、第1押圧部材26および第1弾性部材27のみで構成してもよい。すなわち、本発明において、第2押圧部材28および第2弾性部材29は必須ではない。
【0087】
<5-4.他の変形例>
第1押圧部材、第2押圧部材、保持リング等の各部材の形状は、本願の各図に示した形状に限定されるものではない。これらの各部材の形状は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。
【0088】
また、上記の実施形態では、印刷部60に、4つのヘッド61が設けられていた。しかしながら、印刷部60に含まれるヘッド61の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、錠剤9に対して画像を印刷する錠剤印刷装置1について説明した。しかしながら、本発明の搬送装置は、錠剤9に対して検査を行う検査装置や、錠剤9の包装を行う包装装置に用いられるものであってもよい。
【0090】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
10 供給機構
20 第1ドラム
21 ドラム本体
22 保持リング
23 ポケット
24 吸着孔
25 押圧機構
26 第1押圧部材
27 第1弾性部材
28 第2押圧部材
29 第2弾性部材
30 第2ドラム
31 ドラム本体
32 保持リング
40 搬送コンベア
50 第1カメラ
60 印刷部
70 第2カメラ
80 乾燥機構
90 排出機構
100 制御部
151 溝
230 凸状部
231 底面
232 前端面
233 後部傾斜面
261 保持面
262 当接面
281 押圧突起
282 押圧面
283 ガイド面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14