(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】接触を検出するための多相アブレーション発生器の位相の調整
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019237803
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-25
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-513617(JP,A)
【文献】国際公開第2008/157399(WO,A1)
【文献】特表2014-500058(JP,A)
【文献】特開2016-185295(JP,A)
【文献】特表2001-518352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波(RF)アブレーションシステムであって、
所与の周波数を有するRF信号を生成するように構成されている、信号発生器と、
前記信号発生器によって生成された前記RF信号の複数の複製の位相及び振幅を設定するように構成されている、制御回路と、
前記RF信号の前記複数の複製を増幅するように、かつ、前記増幅された複製を用いて患者の身体内の複数のアブレーション電極のそれぞれを駆動するように構成されている、
前記複数のアブレーション電極のそれぞれに対応した複数の非線形増幅器と、
前記増幅された複数の複製のそれぞれを測定する測定回路と、
前記患者の身体に取り付けられた
単一の戻り電極であるパッチ電極によって感知された
、前記複数のアブレーション電極のそれぞれから前記患者を通って流れた前記
増幅された複製の重ね合わせを含む帰還信号を受信
し、
組織接触チェック動作モードにおいて、前記増幅された複製の前記位相が同一
となるように前記制御回路を制御し、
アブレーション動作モードにおいて、
前記増幅された複数の複製のそれぞれの測定値と前記帰還信号とに基づいて推定される前記複数のアブレーション電極のクロストークを低減するように、前記位相が互いに異なる前記増幅された複製の位相及び振幅を適応的に調整するように
前記制御回路を制御するように、構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記アブレーション動作モードにおいて、前記増幅された複製の前記位相は、互いに少なくとも3.6度異なっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記増幅器はD級増幅器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の電極が取り付けられた前記患者の身体内に挿入されるように構成されているカテーテルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記カテーテルが、膨張可能なバルーン及び拡張可能なバスケットアセンブリのうちの一方を含む、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記組織接触
チェック動作モードにおいて接触した組織が肺静脈を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記アブレーション動作モードにおいて、前記RF信号の電圧が27V RMS~47V RMSである、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2018年12月28日出願の米国仮特許出願第62/786,037号の利益を主張するものであり、その先行出願は、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(著作権表示)-本特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であっても全ての著作権を保有する。
【0003】
(発明の分野)本発明は、身体における内部医療検査を行うことに関する。より具体的には、本発明は、診断及び治療のために、身体に又は身体からの非機械的形態のエネルギーを伝達するように適合されたカテーテルに関する。
【背景技術】
【0004】
本明細書で使用される特定の頭字語及び略語の意味を表1に示す。
【0005】
【0006】
様々な既知の侵襲性医療器具設計は、複数の電極を使用して患者の組織に切除高周波数(RF)エネルギーを印加する。例えば、米国特許出願公開第2015/0272655号は、意図しない双極RFエネルギーの送達から意図しない組織損傷を防止するためのシステム及び方法を記載している。システムは、マルチ電極アブレーション装置及びRF送達ユニットを含み得る。RF送達ユニットは、単極エネルギーを複数の電極に伝送してもよく、エネルギーは同相であり、全ての電極は同じ電圧を送達し、同時に起動されて双極エネルギーを送達しない。追加的に又は代替的に、RF送達ユニットは、電極に双極エネルギーを伝送してもよい。ここで、隣接する電極の各対間の電圧差を監視してもよく、送達される双極エネルギーのレベルを計算することができる。各隣接する電極対内の少なくとも1つの電極に送達されるエネルギーの電圧は、送達された双極エネルギーの量が安全閾値を超える場合に調整されてもよい。
【0007】
改良現在位置(ACL)システムは、電極から患者の皮膚上のバックパッチへの交流電流を測定することによって、患者の身体内の電極の位置を見出す。現在、複数の電極を有するカテーテルの場合、電極に注入される電流は、区別され、所与の電極に固有であるように選択された周波数で電極に注入された交流を変調することによって別々に分析される。しかしながら、異なる交流は、A級増幅器によって生成され、これらは非常に効率が悪い。ACLシステムを説明する文書は、米国特許第7,536,218号、同第7,775,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号、又は同第8,456,182号に示され、記載されており、これらの全てが参照により本出願に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示される実施形態によれば、マルチ電極アブレーションカテーテルは、2つの動作モードを有する。アブレーション電極と標的組織との間の接触を確認するための組織接触チェック動作モードでは、電極内の電流は全て、同じ位相及び共通周波数ωを有する。アブレーションモードでは、電極電流は共通周波数ωで変調されるが、電極を流れる電流の位相は、クロストーク電流を最小化するために個別に変動する。
【0009】
本発明の実施形態によれば、高周波(RF)アブレーションシステムが提供され、高周波(RF)アブレーションシステムは、所与の周波数でRF信号を生成するように構成されている信号発生器と、RF信号の複数の複製の位相及び振幅を設定するように構成されている制御回路と、RF信号の複数の複製を増幅するように、かつ増幅された複製を用いて患者の身体内の複数のアブレーション電極のそれぞれを駆動するように構成されている複数の非線形増幅器と、プロセッサと、を含む。プロセッサは、患者の身体に取り付けられたパッチ電極によって感知される帰還信号として、複数の複製の重ね合わせを受信するように、かつ制御回路を制御することによって帰還信号に応答して増幅された複製の位相及び振幅を適応的に調整するように構成されている。組織接触チェック動作モードでは、増幅された複製の位相は同一であり、アブレーション動作モードでは、増幅された複製の位相は互いに異なる。
【0010】
アブレーション動作モードでは、増幅された複製の位相は、互いに少なくとも3.6度異なっている。
【0011】
システムの一態様によれば、増幅器は、D級増幅器を含む。
【0012】
システムの更に別の態様は、増幅器によってそれぞれ増幅される複製を測定するように構成されている測定回路を含み、プロセッサは、アブレーション動作モードで測定された複製に基づいて、複製の位相及び振幅を調整するように構成されている。
【0013】
本発明の実施形態によれば、アブレーションの方法が更に提供され、その方法は、所与の周波数でRF信号の複数の複製を生成することと、複数の複製の位相及び振幅を設定することと、RF信号の複数の複製を増幅することと、増幅された複製を用いて患者の身体内の複数のアブレーション電極のそれぞれを駆動することと、によって実行される。この方法は、パッチ電極を患者の身体に取り付けることと、パッチ電極によって感知された帰還信号として複数の複製の重ね合わせを受信することと、帰還信号に応答して増幅された複製の位相及び振幅を適応的に調整することと、によって、更に実行される。この方法は、組織接触チェック動作モードで更に実行され、増幅された複製の位相は同一であり、患者の身体内のアブレーション電極と標的組織との間に接触状態が存在することを帰還信号から決定し、アブレーション動作モードでは、増幅された複製の位相が互いに異なり、標的組織をアブレーション電極でアブレーションする。
【0014】
本方法の別の態様によれば、アブレーション動作モードでは、増幅された複製の位相は、互いに少なくとも3.6度異なっている。
【0015】
本方法の更なる態様によれば、増幅することは、D級増幅によって実行される。
【0016】
本方法の更に別の態様によれば、複製の測定を更に実行し、その測定に応じてアブレーション動作モードで複製の位相及び振幅を調整することによってアブレーション電極間のクロストーク電流をゼロ調整する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明をより深く理解するため、本発明の詳細な説明を実例として参照するが、この説明は以下の図面と併せて読むべきものである。図中、同様の要素には同様の参照数字を付してある。
【
図1】本発明の一実施形態によるシステムの絵画図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるACLシステムのブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるACL回路の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるD級増幅器を使用したカテーテルベースのアブレーションシステムの概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、
図4に示すシステムの動作の特定の詳細を示す概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、
図4に示すシステムの動作の2つのモードを示す一連の概要図である。
【
図7】
図6に示す動作モードのために構成されたシステム内に存在する抵抗を概略的に示す。
【
図8】本発明の一実施形態によるアブレーションアルゴリズムの工程のフローチャートを示す。
【
図9】本発明の一実施形態によるアブレーションアルゴリズムの工程のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では、本発明の様々な原理が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらの詳細の全てが本発明を実施する上で必ずしも必要であるとは限らない点は当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0019】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読まれるべきものであり、異なる図面における同様の要素には同一の番号が付けられている。図面は、必ずしも縮尺どおりとは限らず、所定の実施形態を示しており、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。詳細な説明は、本発明の原理を限定ではなく一例として例証するものである。この説明により、当業者が本発明を作製し使用することが明確に可能になり、本発明を実施する最良の形態であると現時点において考えられるものを含む、本発明のいくつかの実施形態、適用例、変形例、代替例、及び使用が説明される。本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、適当な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば、「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。更に、本明細書で使用するとき、用語「患者」、「ホスト」、「ユーザー」、及び「被験者」は、任意のヒト又は動物被験体を指し、システム又は方法をヒトにおける使用に限定することを意図していないが、ヒト患者における本発明の使用は、好ましい実施形態を代表するものである。参照により本明細書に援用される文書は本出願の一体部分とみなされるべきであり、いずれかの用語が、それらの援用された文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0020】
概論
次に図面を参照し、
図1を最初に参照すると、この図は、開示される本発明の実施形態に従って構築され、動作する、生存被験体の心臓12に対して診断的又は治療的手技を実施するためのシステム10を絵で表したものである。このシステムは、患者の脈管系を通って心臓12の腔又は脈管構造内に操作者16によって経皮挿入されるカテーテル14を備えている。通常は医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端18を、心臓壁、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。電気的活動マップは、米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って作製されてもよく、この米国特許の開示内容は、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される。
【0021】
システム10は、以下に説明する機能を実行するための好適なソフトウェアでプログラムされた汎用又は組込み型コンピュータプロセッサを備えることができる。したがって、システム10の、本明細書の他の図に示されている部分は、いくつかの別個の機能ブロックを含むものとして示されているが、これらのブロックは必ずしも別個の物体ではなく、むしろ例えば、プロセッサが利用できるメモリに格納されている異なる計算タスク又はデータオブジェクトを表し得る。これらのタスクは、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサで動作するソフトウェアで実行することができる。ソフトウェアは、1つ又は2つ以上のプロセッサに、CD-ROM又は不揮発性メモリのような有形の非一時的媒体で提供され得る。あるいは、又は加えて、システム10は、デジタル信号プロセッサ又は実配線ロジックを備えてもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(33 Technoogy Drive,Irvine,CA,92618)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0022】
例えば電気的活動マップの評価によって異常と判定された領域は、熱エネルギーの印加によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端18の1つ又は2つ以上の電極に、高周波電流をカテーテル内のワイヤを介して流すことによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、電気的励起性が恒久的に失われる点(通常、50℃超)まで加熱する。成功裏に行われた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心腔に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0023】
カテーテル14は、典型的には、ハンドル20を備えており、このハンドル上に好適な制御部を有して、操作者16がアブレーションを行うためにカテーテルの遠位端の操舵、位置決め、及び方向付けを所望のとおりに行うことを可能にする。操作者16を補助するために、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、後述のようないくつかの処理機能を果たすことができる。
【0024】
カテーテル14は、マルチ電極カテーテルであり、これは、バルーン若しくはバスケットカテーテル、又は
図1に示されているようなスパインカテーテルであり得る。いずれの場合にも、複数の電極32が存在し、これらは、感知電極として使用され、バスケット又はスパイン上の既知の位置、及びそれらの既知の相互関係を有する。このため、カテーテルが心臓内に配置されると、例えば、現在位置マップを構築することにより、心臓内の電極32の各々の位置が分かる。現在位置マップを生成するための1つの方法は、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された、Bar-Talらに対する米国特許第8,478,383号に記載されている。
【0025】
電気信号は、カテーテル14の遠位先端18に又は遠位先端18近くに配置された電極32からケーブル34を介して心臓12へと、かつ心臓12からコンソール24へと伝達され得る。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を介して、心臓12へと伝達され得る。
【0026】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、有効電流位置(ACL)パッチ30、並びにカテーテル14の位置座標及び方向座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってもよい。あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される、Govariらに付与された米国特許第7,536,218号において教示されているように、電極32及び身体表面パッチ30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定してもよい。温度センサ(図示せず)、通常、熱電対又はサーミスタが、カテーテル14の遠位先端18近くに搭載されてもよい。
【0027】
コンソール24には、典型的には、1つ以上のアブレーション発電機25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギー等の任意の既知のアブレーション技術を使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝えるように適合され得る。かかる方法は、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0028】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを判定する磁気位置追跡配置を備える。好適な位置決めサブシステムは、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される、米国特許第7,756,576号、及び上記の同第7,536,218号に記載されている。
【0029】
上述のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、これにより操作者16は、カテーテル14を観察し、その機能を調節することができる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は、通常、カテーテル14内の遠位に位置する上述のセンサ及び複数の位置検知電極(図示せず)によって生成される信号を含むカテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、かつ以下に更に詳細に記載される電極からの電気信号を分析するために使用される。
【0030】
簡略化のために図示されないが、典型的には、システム10は、他の要素を含む。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含み得るが、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述のように、システム10は、通常、被験者の身体の外側に取り付けられた外側取付参照パッチ上、又は、心臓12内に挿入され、かつ心臓12に対して固定位置に維持された、内側に配置されたカテーテル上のいずれかに、基準位置センサも含む。システム10は、MRIユニットなどのような外部の画像診断モダリティからの画像データを受信することができ、画像を生成及び表示するためにプロセッサ22に組み込まれる又はプロセッサ22によって呼び出されることができる画像プロセッサを含む。電気的結合は、D.Curtis Deno*,Member,IEEE,Haris J.Sih,Stephan P.Miller,Liane R.Teplitsky,及びRuss Kuenziによる「Measurement of Electrical Coupling Between Cardiac Ablation Catheters and Tissue」,IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING,VOL.61,NO.3,MARCH 2014に記載され、ヒトにおけるインピーダンス範囲は、Mark Borganelli,MD,Rafel El-Atassi,MD,Angel Leon,MD,Steven J.Kalbfleisch,MD,Hugh Calkins,MD,Fred Morady,MD,及びJonathan J.Langberg,MDによる「Determinants of impedance During Radiofrequency Catheter Ablation in Humans」;Department of Internal Medicine,Division of Cardiology,University of Michigan Medical Center,1500 E.Medical Center Drive,Bl F245,Ann Arbor,Michigan 48109-0022,Dec.1991に記載され、インピーダンス制御アブレーションのモデリングは、「Theoretical modeling for radiofrequency ablation:state-of-the-art and challenges for the future」Enrique J Berjano,18 April 2006 BioMedical Engineering OnLine2006に記載されており、それらの全ては、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により援用される。
【0031】
ACLシステム。
ACLシステムは、本発明の原理が適用され得る一実施形態である。ACLシステムの簡単な説明は、便宜上、本明細書に提示される。更なる詳細は、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される、2017年8月21日付の「Advanced Current Location(ACL)Automatic Map Rotation to Detect Holes in Current Position Map(CPM)Mapping」と題する、本願と同一譲受人に譲渡された出願番号第15/681,474号(代理人整理番号BIO5844USNP)に見出される。
【0032】
次に、本発明の一実施形態によるACLシステム130のブロック図である
図2を参照する。システム130を操作するために、操作者はまず、較正段階でシステムを操作し、その後、システムが追跡段階で操作される。2つの段階で実行されるアクションの詳細は、上述の出願番号第15/681,474号に記載されている。
【0033】
次に、
図1に示されるシステムと共に使用するためのアブレーション及び有効現在位置(ACL)回路134の概略図である、
図3を参照する。この構成は、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように、参照により本明細書に援用される、Govariらによる米国特許出願公開第2006/0173251号、及びOsadchyによる米国特許出願公開第2007/0038078号に記載されているものと同様である。構成は、本発明の原理に従って動作するように変更され得る。説明の便宜上、以下に簡潔に記載する。
【0034】
接着皮膚用パッチであり得る、身体表面の複数の電極136は、被験者140の身体表面138(例えば、皮膚)に結合される。身体表面の電極136は、本明細書で「パッチ」と称されることがある。心臓用途では、身体表面の電極136は、通常、心臓を取り囲むように、3つが被験者の胸に、3つが背中に割り振られる。しかしながら、身体表面の電極136の数は重要ではなく、それらは医療処置部位付近全体の、身体表面138上の便利な位置に定置してよい。
【0035】
通常、コンソール24(
図1)内に配置される制御ユニット142は、電流測定回路144、及び後述のように単一の周波数で電極136のうちの1つ又は2つ以上を通して身体表面の電極136のうちの1つ又は2つ以上に電流を駆動するための、1つ又は2つ以上のカテーテル電極伝送器146を含む。制御ユニット142は、位置決めプロセッサに連結される。制御ユニット142は、少なくとも1つのアブレーション発生器150を備えるアブレータ148に連結される。身体表面の電極136及びアブレータ本体表面の電極152を通る電流は、アブレーション発生器150を有する回路内を流れ、本明細書では「パッチ測定回路」と称されることもある、身体電極受信器154内に配置されるそれぞれの電流測定回路によって測定される。身体電極受信器154は、通常、制御ユニット142に組み込まれる。あるいは、それらは、身体表面の電極136に貼り付けられてもよい。カテーテル電極は、測定電極156(円)及び二重目的用電極158(楕円)として
図4に表される。二重目的用電極158はアブレーション電極として機能し、また測定電極の1つとしての役割も果たす。
【0036】
身体表面の電極136は、アブレーション及び除細動電流からシステムを保護するパッチボックス160を介して身体電極受信器154に接続される。典型的には、システムは、6つの身体電極受信器154を備えて構成される。パッチボックスの寄生インピーダンス162(Z)は、製造中に測定されるため、事前に知られている。これらのインピーダンスについて以下で論じる。
【0037】
典型的には、便宜上2つの測定電極156のみが示されているが、約80個の測定電極がインピーダンス測定に用いられる。典型的には、1つ又は2つのアブレーション電極が存在する。身体内部のカテーテルの座標は、カテーテル上の電極と身体表面の電極136との間に電流を通すことにより、位置決めシステムで判定される。
【0038】
制御ユニット142はまた、アブレータ148を有するアブレーション回路、及び二重目的用電極158を制御し得る。アブレータ148は、通常、制御ユニット142の外部に配置され、アブレーション発生器150を内蔵する。アブレーション発生器150は、アブレータ本体表面の電極152、及びこの例では制御ユニット142内に示される、アブレータフィルタ164と接続している。ただし、この位置は、必須ではない。スイッチ166は、以下に記載される様々な動作モードのためのアブレータ回路を構成する。電圧測定回路が、カテーテル電極伝送器146の出力を決定するために提供される。
図4の検査から、アブレーション回路が、カテーテル電極伝送器146のうちの1つに接続されていることが分かるであろう。
【0039】
複数のアブレーション電極用の単一周波数発生器。
図4は、本発明の一実施形態による、D級増幅器254を使用したカテーテルベースのアブレーションシステム220の概略図である。物理的に、図示されるように、カテーテルの遠位端222には、複数の電極259を備えるRFアブレーション装置が装備され、増幅器254の出力は、カテーテルを通る配線によって電極259にそれぞれ結合され、この電極は、カテーテルの近位端で連結されて制御ユニット250を備える制御コンソールに連結される。
【0040】
カテーテルの遠位端は、明確にするためにのみ電極の線形アレイとして示される。実際には、遠位端は、典型的には、問題のアブレーション処置に好適なマルチ電極ジオメトリを含む。例示的な構成は、肺静脈のアブレーションを行うために使用される膨張可能なバルーン又は拡張可能なバスケットアセンブリである。
【0041】
本実施例では、制御ユニット250は、電極259の数に等しい数のD級増幅器を並列に制御する。D級増幅器のそれぞれは、移相器252及び増幅器254を含む。制御ユニット250は、増幅器254を駆動するためのRF信号247の複製信号(又は「複製」)248に分割された共通RF信号247を生成する共通信号発生器246を備える。制御ユニット250は、各移相器252に、それぞれの位相を増幅器254の入力電流波形に割り当てるように別々に命令し、入力電流波形は、次に増幅されて、関連電極259を介して患者の身体249内に注入された出力電流255になるように増幅される。
【0042】
図に見られるように、結果として生じるアブレーション電流266は、アブレーションされた組織264を通って局所的に流れ、次いで患者の身体249を通って流れ、共通のバックパッチ電極262によって収集される。しかしながら、任意の2つの電極間の組織の有限抵抗は、例えば、結合抵抗258によって示されるように、血管のアブレーションの場合には血液を通じて、注入電流255の一部に、クロストーク電流257の形態で1つの電極から別の電極への経路を取らせることができる。
【0043】
制御ユニット250は、リターン電流268を分析し、その測定された瞬間振幅及び位相に基づいて、場合によっては計算に必要な他の入力間で、注入されたアブレーション電流266のそれぞれの実際の電流振幅を決定する分析器260を備える。最適化アルゴリズムで実施される要件及び計算工程に基づいて、分析器は、電流255のうちの1つ又は2つ以上の振幅若しくは位相又は両方を調整して、特定の要件に従って電流255の振幅及び位相又は両方を最適化し、その一部が以下に詳述される。制御ユニット250は、最適化された振幅及び位相をリアルタイムで受信し、移相器252若しくは増幅器254又は両方にリアルタイムで、注入された電流255の位相及び振幅の少なくとも一部を応答的に修正するように命令する。一実装形態では、最適化アルゴリズムは、リアルタイムでクロストーク電流257を調整するために、瞬時に測定された増幅器254の出力電圧及び電流を利用することができる。例えば、アルゴリズムは、クロストーク電流257をゼロにするために、「電流行列」を対角行列に変えることができる。追加的に又は代替的に、バックパッチ電極262の測定された瞬間振幅及び位相を組み込むものなどの、所与の制約及び/又はコスト関数を利用して、他の最適化アルゴリズムを適用してもよい。
【0044】
図5は、本発明の一実施形態による、システム220の動作の特定の詳細を示す概略図である。図に見られるように、インセット269の波形は、一般に、振幅271及び位相273の異なる値を含む。電圧及び電流センサ256は、増幅器出力電圧及び電流を測定し、分析器260は、リターン電流268の瞬時振幅及び位相を測定し、特に、実際の電極出力電圧及び電流を抽出するために、この情報を使用する。したがって、
図5の構成は、電極259のそれぞれ及び電極259のうちの1つの電流255、266における様々な電流振幅を隔離及び測定し、クロストーク電流257を推定する。
【0045】
クロストーク電流257は、アブレーションプロセス中に、電極259の一部又は全部に類似の、又は実質的に同一の電圧をリアルタイムで印加することによって、低減され、更に相殺され得る。この設定は、同一の周波数ωで全ての電極の電流を変調し、インセット269に見られるように、電流255の個々の振幅及び位相をリアルタイムで選択することによって達成される。したがって、任意の2つの電極間の電圧差(すなわち、抵抗258を超える)が常に最小に保たれると、任意の2つの電極間のクロストーク電流が低減され、特定の場合では互いに相殺さえされる。
【0046】
上述したように、常時変動するクロストーク電流、又は更にはそれらの相殺のかかる最小化を実際に達成するために、リターン電流268は、振幅及び位相選択が十分に高い速度及び十分に短い応答時間で発生するように、十分に高い速度で分析器260によって分析されるべきである。電流の分析修正のこの閉ループ適合は、例えば、kHZ~MHzスペクトルの周波数範囲で動作する移相器及びD級増幅器などの、適切な電子回路及び非線形増幅器を使用することによって達成することができる。
【0047】
システム220の構成及び動作に関する更なる詳細は、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように参照により本明細書に援用される、2017年9月7日に出願された、本発明の譲受人に譲渡された同時係属出願第15/697,811,号(代理人整理番号BIO5865USNP)表題「Variable Phase Generation And Detection For Radio-Frequency(RF)Ablation」に開示されている。
【0048】
位相調整。
アブレーションが有効であるために、電極259(
図4)はアブレーションされている身体組織と接触しなければならない。接触を検出する1つの方法は、
図2及び
図3に記載される回路を使用して、接触におけるインピーダンスの変化を観察することによるものである。しかしながら、任意の所与の電極に対するインピーダンスの変化は小さいが、あたかも本明細書に漏れなく論述されているかのように参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第9,168,004号(Govariら)、表題「Machine Learning in Determining Catheter Electrode Contact」に記載されている方法を使用して感度を改善することができる。
【0049】
本発明者らは、組織接触チェック動作モードを介してアブレーション部位との電極接触を確実に判定する技術を考案した。この技術では、共通周波数ωにおける電極電流の位相は概ね同一である。
図6は、例示的なシステム220(
図4)の2つの動作モードを示す一連の概要図である。多相単一周波数発生器275は、それぞれのカテーテル電極279を通って流れ、そこから身体組織281及び戻り電極283を通って流れる出力電流277を生成する。アブレーション動作モードでは、
図6の上部の略
図285に示すように、出力電流277及び電極279内の電流は、異なる位相φ
1~φ
nを有する。任意の2つの電極間の位相差は、周期の少なくとも1/100、例えば、約3.6°であるべきである。
【0050】
図の下部の略
図287は、組織接触チェック動作モードを示す。単一周波数発生器275によって生成される出力電流277及び電極279内の電流は全て、同じ位相φ
1を有する。各電極への供給が異なる位相を有する場合、発生器275は、比較的低い電圧で動作することができる。身体のインピーダンスに応じて、アブレーションの電圧は、約27V RMS(組織インピーダンスが約50オームの場合)~39V RMS(組織インピーダンスが約100オームの場合)まで及び47V RMS(組織インピーダンスが約150オームである場合)までとすることができる。しかしながら、組織接触チェックの場合、身体組織インピーダンスに打ち勝つために、大きな電圧が必要とされる。したがって、組織接触チェック動作モードは、アブレーションのためには非実用的である。
【0051】
それにもかかわらず、本発明者らは、アブレーションに使用される同じ電極が同じアブレーション処置中に十分な組織接触を判定することを可能にするために、身体インピーダンスのこの挙動を利用する技術を考案した。具体的には、
図7は、略
図287(
図5)に従って構成されたシステム内に存在する抵抗を概略的に示す。n個の電極279のそれぞれは、抵抗289(r)を示し、戻り電極283に単一の共通抵抗291(R)が存在する。単純化のために、電流Iがn個の電極279のそれぞれを流れると仮定すると、電流が同相であるため、共通抵抗291 Rを通る電流はnIである。したがって、任意の電極279について発生器によって見られる電圧は、以下のとおりである。
V=Ir+nIR。
【0052】
電圧Vは、効果的にほぼ、異相の場合よりも高いnの因数であり、一般的な位相状態がアブレーションに使用されるべきではない理由である。しかし、組織接触チェック構成における比較的大きな電圧は、組織接触に生じるインピーダンスの小さい変化が、測定された電圧の変化を効果的に増幅することを意味し、したがって、
図6に示す組織接触チェック構成は、標的組織とアブレーション電極279との間の接触を測定する良好な方法であることを意味する。
【0053】
本明細書で提供される開示の長所により、本発明者らは、n個のアブレーション電極と十分に接触している組織をアブレーションする以下の方法を考案した。この方法は、アブレーション電極(複数可)と接触している組織をアブレーションする意図された目的で使用するために好適なコンピュータプラットフォーム内に好適なソフトウェアコードを生成するために、当業者によって利用され得る、
図8に示されるアブレーションアルゴリズム300を参照することによって達成することができる。アルゴリズム300は、システム134用に考案された多くのアルゴリズムのうちの1つであり得、簡潔にするために、アルゴリズム300を補助する任意の他のアルゴリズムについて説明しないことに留意されたい。
【0054】
図8では、アルゴリズム300は、工程302において所与の周波数でRF信号の複数の複製を生成するようにプログラムされたシステム134を用いて開始する。工程304において、n個のアブレーション電極について複製の位相及び振幅が設定される。工程306において、システムは、複数の複製を増幅し、増幅された複製を用いて患者の身体内の複数のn個のアブレーション電極のそれぞれに通電又はそれらを駆動するようにプログラムされる。工程308において、システム134は、複製の重ね合わせを含み得るパッチ電極262から帰還信号を受信するようにプログラムされる。工程310において、システム134は、n個のアブレーション電極に注入された電流の複製を同相であるように調整するようにプログラムされる。工程312において、システム134は、組織が電極(複数可)と接触しているかどうかを判定するようにプログラムされる。工程310及び312は、
図9のサブルーチン400として更に説明される。
【0055】
図9を参照すると、当業者は、組織接触判定の詳細を理解して好適なコンピュータコードを生成することができる。一般に、各電極279に注入される同相電流が、アブレーションモードで必要とされる典型的なアブレーション電圧(所与の組織インピーダンスの量に対して)よりも約3~10%以上の(電圧及び電流センサ256によって測定されるような)電圧増加を必要とする場合に、組織との接触を検出することができる。したがって、本発明者らは、工程402において、レベルを増加して電圧を印加しながら、n個の電極279に注入された電流又は複製を同相に切り替え、工程404において、分析器260で電圧及び電流を測定することによって、アブレーション処置中に十分な組織接触をチェックすることを可能にする技術を考案した。工程406において、ゼロベース値の形態で変化がない場合、システムアルゴリズムは「いいえ」を返し、電極が身体組織と十分に接触していないと判定する。システムは、工程404に戻る前に、工程408で電極(複数可)に接触していないというフラグを立てることができる。他方では、工程406において「はい」を戻すシステムから、組織接触が確認されると(すなわち、注入されている同相電流(すなわち、複製の)が、ゼロベース値に対する変化を必要とする場合)、コントローラは、工程410で電極(複数可)に接触しているというフラグを立てることができる。その後、サブルーチン400は、アブレーションアルゴリズム300(
図8)に戻り、組織のアブレーションを継続する(この組織は、ここで電極(複数可)と十分に接触している)ために工程316でn個の電極を異相に切り替えるか又は変化させる。接触チェック(すなわち、同相電極279への切り替え)と工程316の組織アブレーション(
図8、異相電極279への変化)との間のかかる動作(工程402、404及び406)は、毎秒多数回の非常に速い速度で生じ、典型的には約50Hzで切り替わることが意図される。n個の電極の数は、約2~約192の任意の数であり得る。
【0056】
本発明が、本明細書上に具体的に示されて記載されたものに限定されない点が、当業者により理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術にはない上述の特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 高周波(RF)アブレーションシステムであって、
所与の周波数を有するRF信号を生成するように構成されている、信号発生器と、
前記信号発生器によって生成された前記RF信号の複数の複製の位相及び振幅を設定するように構成されている、制御回路と、
前記RF信号の前記複数の複製を増幅するように、かつ、前記増幅された複製を用いて患者の身体内の複数のアブレーション電極のそれぞれを駆動するように構成されている、複数の非線形増幅器と、
前記患者の身体に取り付けられたパッチ電極によって感知された前記複数の複製の重ね合わせを含む帰還信号を受信するように、かつ、組織接触チェック動作モードにおいて、前記増幅された複製の前記位相が同一であり、アブレーション動作モードにおいて、前記増幅された複製の前記位相が互いに異なるように前記制御回路を制御することによって、前記帰還信号に応答して、前記増幅された複製の位相及び振幅を適応的に調整するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(2) 前記アブレーション動作モードにおいて、前記増幅された複製の前記位相は、互いに少なくとも3.6度異なっている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記増幅器はD級増幅器を含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記増幅器によってそれぞれ増幅される前記複製を測定するように構成されている測定回路を更に備え、前記プロセッサは、前記アブレーション動作モードにおいて前記測定された複製に基づいて、前記複製の前記位相及び前記振幅を調整するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記複数の電極が取り付けられた前記患者の身体内に挿入されるように構成されているカテーテルを備える、実施態様1に記載のシステム。
【0058】
(6) 前記カテーテルが、膨張可能なバルーン及び拡張可能なバスケットアセンブリのうちの一方を含む、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記組織接触モードにおいて接触した組織が肺静脈を含む、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記アブレーション動作モードにおいて、前記RF信号の電圧が27V RMS~47V RMSである、実施態様1に記載のシステム。
(9) アブレーションの方法であって、
所与の周波数を有するRF信号の複数の複製を生成する工程と、
前記複数の複製の位相及び振幅を設定する工程と、
前記RF信号の前記複数の複製を増幅し、前記増幅された複製を用いて、患者の身体内の複数のアブレーション電極のそれぞれを駆動する工程と、
前記パッチ電極によって感知された前記複数の複製の重ね合わせを含む帰還信号を受信する工程と、
前記増幅された複製の前記位相を同相に調整する工程と、
前記帰還信号から、前記アブレーション電極と前記患者の標的組織との間に接触状態が存在すると判定する工程と、
前記増幅された複製の前記位相が互いに異なるアブレーション動作モードにおいて、前記標的組織を前記アブレーション電極でアブレーションする工程と、を含む、方法。
(10) 前記アブレーション動作モードにおいて、前記増幅された複製の前記位相は、互いに少なくとも3.6度異なっている、実施態様9に記載の方法。
【0059】
(11) 増幅する工程は、D級増幅によって実行される、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記複製の測定を更に行い、
前記測定に応じて、前記アブレーション動作モードで前記複製の前記位相及び前記振幅を調整することによって、前記アブレーション電極間のクロストーク電流をゼロ調整する、実施態様9に記載の方法。
(13) 前記判定する工程が、
前記n個のアブレーション電極に注入された電流の前記複製を、レベルを増加して電圧を印加しながら同相に切り替え、分析器を用いて電流の前記複製を測定することと、
各電極に注入された電流の前記同相複製がゼロベース値よりも大きい電圧増加を必要とするときに、組織が接触しているかどうかをチェックすることと、を含む、実施態様9に記載の方法。
(14) 前記複数の電極を、前記患者の身体内に挿入されるように構成されているカテーテルに取り付けることを含む、実施態様9に記載の方法。
(15) 前記組織接触モードにおいて接触した組織が肺静脈を含む、実施態様9に記載の方法。
【0060】
(16) 前記アブレーション動作モードにおいて、前記RF信号の電圧が27V RMS~47V RMSである、実施態様9に記載の方法。
(17) システムにおいて組織をアブレーションする方法であって、前記システムが、制御回路に結合されたRF信号を生成するように構成されている信号発生器であって、前記制御回路が、複数の非線形増幅器を用いて、前記信号発生器によって生成された前記RF信号の複数の複製の位相及び振幅を設定して、前記RF信号の前記複数の複製を増幅し、前記増幅された複製を用いて患者の身体内の複数のn個のアブレーション電極のそれぞれを駆動するように構成されている、信号発生器と、プロセッサであって、前記患者の身体に取り付けられたパッチ電極によって感知された前記複数の複製の重ね合わせを含む帰還信号を受信するように構成されている、プロセッサと、を有し、前記方法が、
前記n個のアブレーション電極に注入された電流の前記複製を、レベルを増加して電圧を印加しながら同相に切り替え、分析器を用いて電流の前記複製を測定する工程と、
各電極に注入された電流の前記同相複製がゼロベース値よりも大きい電圧の変化を必要とするときに、組織が接触しているかどうかをチェックする工程と、
前記n個の電極を異相に変化させて、前記組織のアブレーションを継続する工程と、を含む、方法。
(18) 前記n個の電極を同相に切り替える工程、及び前記n個の電極を異相に変化させる工程が、毎秒多数回の速度で行われる、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記速度が50Hzの速度を含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記n個の電極が、2~192の任意の数の電極を含む、実施態様17に記載の方法。