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特許7391681検査方法、検査装置、検査システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】検査方法、検査装置、検査システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3586 20140101AFI20231128BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G01N21/3586
G01N21/88 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020011692
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021039084
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019158355
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年9月17日 「第50回電気電子絶縁材料システムシンポジウム論文集」87頁から90頁 2019年9月17日から9月19日 「第50回電気電子絶縁材料システムシンポジウム」
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水内 理映子
(72)【発明者】
【氏名】久里 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】角本 雄一
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/108306(WO,A1)
【文献】特開2013-167499(JP,A)
【文献】特開2017-67631(JP,A)
【文献】李 大治ら,テラヘルツ波による絶縁材料非破壊診断,レーザー技術総合研究所,2015年,2015年報,PP.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器を覆う樹脂に照射されたパルス波の当該樹脂内に混入している異物の界面からの反射波に応じた反射波信号を取得するステップと、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物の深さを算出するステップと、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物を含む平面画像を生成するステップと、
前記取得された反射波信号に基づいて反射波形を生成するステップと、
記樹脂内に混入している異物の種別を判別するステップと
を具備し、
前記判別するステップは、
前記算出された異物の深さと前記取得された反射波信号から抽出される反射強度との関係性を含む第1指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第1判別処理を実行するステップと、
前記算出された異物の深さと前記生成された平面画像における前記異物の面積との関係性を含む第2指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第2判別処理を実行するステップと、
前記算出された異物の深さと前記生成された反射波形の形状的な特徴との関係性を含む第3指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第3判別処理を実行するステップと、
前記第1及び第2判別処理において前記異物が金属であると判別された場合には、前記第1及び第2判別処理以外の判別処理で金属と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として金属を決定するステップと、
前記第3判別処理において前記異物が気泡であると判別された場合には、前記第3判別処理以外の判別処理で気泡と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として気泡を決定するステップと
を含む
検査方法。
【請求項2】
記パルス波は、複数の周波数帯の電磁波を含み、
前記判別するステップは、前記算出された異物の深さと前記取得された反射波信号から抽出される前記複数の周波数帯の各々に対応する反射波信号との関係性を含む第4指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第4判別処理を実行するステップを更に含む
請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記第1~第3判別処理を実行するステップは、前記第1~第3指標の各々に対して異物の種別に応じて設定された閾値を用いて前記第1~第3判別処理実行するステップを含み、
前記閾値は、前記異物が混入しているサンプル樹脂に対してパルス波を照射することによって得られる実験値または当該実験値を統計的に解析することによって得られる解析値に基づいて決定される
請求項1記載の検査方法。
【請求項4】
前記パルス波は、少なくとも0.1テラヘルツ帯のテラヘルツ波を含む請求項1~のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項5】
電力機器を覆う樹脂に照射されたパルス波の当該樹脂内に混入している異物の界面からの反射波に応じた反射波信号を取得する取得手段と、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物の深さを算出する算出手段と、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物を含む平面画像を生成する第1生成手段と、
前記取得された反射波信号に基づいて反射波形を生成する第2生成手段と、
記樹脂内に混入している異物の種別を判別する判別手段と
を具備し、
前記判別手段は、
前記算出された異物の深さと前記取得された反射波信号から抽出される反射強度との関係性を含む第1指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第1判別処理を実行する手段と、
前記算出された異物の深さと前記生成された平面画像における前記異物の面積との関係性を含む第2指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第2判別処理を実行する手段と、
前記算出された異物の深さと前記生成された反射波形の形状的な特徴との関係性を含む第3指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第3判別処理を実行する手段と、
前記第1及び第2判別処理において前記異物が金属であると判別された場合には、前記第1及び第2判別処理以外の判別処理で金属と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として金属を決定する手段と、
前記第3判別処理において前記異物が気泡であると判別された場合には、前記第3判別処理以外の判別処理で気泡と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として気泡を決定する手段と
を含む
検査装置。
【請求項6】
電力機器を覆う樹脂に対してパルス波を照射する照射装置と、前記パルス波の当該樹脂内に混入している異物の界面からの反射波を検波する検波装置と、検査装置とを備える検査システムにおいて、
前記検査装置は、
前記検波装置によって検波された反射波に応じた反射波信号を取得する取得手段と、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物の深さを算出する算出手段と、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物を含む平面画像を生成する第1生成手段と、
前記取得された反射波信号に基づいて反射波形を生成する第2生成手段と、
記樹脂内に混入している異物の種別を判別する判別手段と
を含み、
前記判別手段は、
前記算出された異物の深さと前記取得された反射波信号から抽出される反射強度との関係性を含む第1指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第1判別処理を実行する手段と、
前記算出された異物の深さと前記生成された平面画像における前記異物の面積との関係性を含む第2指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第2判別処理を実行する手段と、
前記算出された異物の深さと前記生成された反射波形の形状的な特徴との関係性を含む第3指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第3判別処理を実行する手段と、
前記第1及び第2判別処理において前記異物が金属であると判別された場合には、前記第1及び第2判別処理以外の判別処理で金属と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として金属を決定する手段と、
前記第3判別処理において前記異物が気泡であると判別された場合には、前記第3判別処理以外の判別処理で気泡と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として気泡を決定する手段と
を含む
検査システム。
【請求項7】
検査装置のコンピュータが実行するプログラムであって、
前記コンピュータに、
電力機器を覆う樹脂に照射されたパルス波の当該樹脂内に混入している異物の界面からの反射波に応じた反射波信号を取得するステップと、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物の深さを算出するステップと、
前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物を含む平面画像を生成するステップと、
前記取得された反射波信号に基づいて反射波形を生成するステップと、
記樹脂内に混入している異物の種別を判別するステップと
を実行させ
前記判別するステップは、
前記算出された異物の深さと前記取得された反射波信号から抽出される反射強度との関係性を含む第1指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第1判別処理を実行するステップと、
前記算出された異物の深さと前記生成された平面画像における前記異物の面積との関係性を含む第2指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第2判別処理を実行するステップと、
前記算出された異物の深さと前記生成された反射波形の形状的な特徴との関係性を含む第3指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第3判別処理を実行するステップと、
前記第1及び第2判別処理において前記異物が金属であると判別された場合には、前記第1及び第2判別処理以外の判別処理で金属と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として金属を決定するステップと、
前記第3判別処理において前記異物が気泡であると判別された場合には、前記第3判別処理以外の判別処理で気泡と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として気泡を決定するステップと
を含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査方法、検査装置、検査システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力機器は、樹脂で覆われることによって絶縁性を維持することができるように構成されている場合が多い。
【0003】
しかしながら、電力機器を樹脂で覆う工程においては、当該樹脂内に異物が混入する場合がある。このような異物は、電力機器における部分放電または絶縁破壊を引き起こし、当該電力機器の故障原因となり得る。
【0004】
このため、異物の混入に関して電力機器を覆う樹脂を検査することが求められている。この場合、例えば電力機器を覆う樹脂を破壊して当該樹脂内に異物が混入しているか否かを検査することは可能であるが、このような検査手法は、破壊費用の発生または検査にかかる労力等の観点から好ましくない。このため、樹脂を破壊することなく(つまり、非破壊で)検査することが望ましい。
【0005】
しかしながら、電力機器を覆う樹脂は厚みがあり、非破壊で当該樹脂内を検査することは困難である。また、異物の混入に対する対策を講じるためには樹脂内に混入している異物の種別を判別することが有用であるが、非破壊で当該異物の種別を判別することも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-122875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、非破壊で電力機器を覆う樹脂を検査することが可能な検査方法、検査装置、検査システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る検査方法は、電力機器を覆う樹脂に照射されたパルス波の当該樹脂内に混入している異物の界面からの反射波に応じた反射波信号を取得するステップと、前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物の深さを算出するステップと、前記取得された反射波信号に基づいて前記樹脂内に混入している異物を含む平面画像を生成するステップと、前記取得された反射波信号に基づいて反射波形を生成するステップと、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別するステップとを具備する。前記判別するステップは、前記算出された異物の深さと前記取得された反射波信号から抽出される反射強度との関係性を含む第1指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第1判別処理を実行するステップと、前記算出された異物の深さと前記生成された平面画像における前記異物の面積との関係性を含む第2指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第2判別処理を実行するステップと、前記算出された異物の深さと前記生成された反射波形の形状的な特徴との関係性を含む第3指標に基づいて、前記樹脂内に混入している異物の種別を判別する第3判別処理を実行するステップと、前記第1及び第2判別処理において前記異物が金属であると判別された場合には、前記第1及び第2判別処理以外の判別処理で金属と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として金属を決定するステップと、前記第3判別処理において前記異物が気泡であると判別された場合には、前記第3判別処理以外の判別処理で気泡と異なる種別が判別されている場合であっても、前記異物の種別として気泡を決定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る検査装置を含む検査システムの機能構成の一例を示す図。
図2】検査装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】サンプル樹脂の正面図。
図4】サンプル樹脂の断面図。
図5】照射装置と検波装置との位置関係の一例を示す図。
図6】照射装置と検波装置との位置関係の他の例を示す図。
図7】サンプル樹脂に混入している異物の種別毎の反射強度の一例を示す図。
図8】異物の深さと反射強度との関係性の一例を示す図。
図9】サンプル樹脂に混入している異物を含む平面画像の一例を当該異物の種別毎に示す図。
図10】異物の深さと可視化面積との関係性の一例を示す図。
図11】サンプル樹脂に混入している金属の界面で反射した反射波の波形の一例を示す図。
図12】サンプル樹脂に混入している気泡の界面で反射した反射波の波形の一例を示す図。
図13】サンプル樹脂に混入している樹脂バリの界面で反射した反射波の波形の一例を示す図。
図14】反射波形の形状的な特徴について説明するための図。
図15】異物が金属、気泡及び樹脂バリである場合の反射波形の形状的な特徴を表形式で示す図。
図16】異物の深さと特定周波数帯毎に抽出された強度値との関係性の一例を示す図。
図17】電力機器を覆う樹脂を検査する際の検査装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
図18】サンプル樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られる異物の深さ、当該異物からの反射強度及び当該異物の可視化面積を3次元プロットで示した図。
図19】第2実施形態に係る検査装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
図20】電力装置の製造工程の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る検査装置は、電力機器を覆う樹脂に対してパルス波を照射することにより当該樹脂の内部を非破壊で検査するとともに、当該樹脂内に混入している異物の種別を判別するために用いられる。なお、本実施形態においては、樹脂内に混入している異物の種別として、例えば金属、気泡及び樹脂バリ等を想定している。
【0011】
電力機器は、例えば遮断機、断路器、変流器または変圧器等の機器を含む。また、電力機器は、部分放電を発生する可能性がある機器であれば、例えば電力用変圧器、ガス絶縁開閉器、発電機、電動機またはリアクトル等であってもよい。このような電力機器は、電源ケーブルを介して外部から高電圧及び大電流を通電するため、絶縁性を維持するように樹脂で覆われている。なお、以下の説明においては、上記した電力機器及び当該電力機器を覆う樹脂をまとめて電力装置と称する。
【0012】
ここで、上記した樹脂の内部を非破壊で検査する手法としては、例えばX線または赤外線等の電磁波を用いる手法や超音波を用いる手法がある。以下、このような検査に使用されるいくつかの手法について簡単に説明する。
【0013】
まず、X線は、樹脂透過性がよいため、樹脂の内部の検査に使用することができる。しかしながら、X線は金属に対しては透過性が低いため、金属が埋め込まれている構造体の場合には、適切な検査を行うことができない可能性がある。なお、例えばX線CT装置を用いた検査(X線CT検査)によれば金属が埋め込まれていても樹脂内部の検査(観察)は可能であるが、大型の電力装置の場合は一般的なX線CT装置で検査することができない。大型の電力装置に対応可能なX線CT装置も存在するが、このようなX線CT装置は特殊仕様であり、当該X線CT装置を用いた検査は現実的でない。また、X線を用いる場合には放射線管理も必要となる。更に、異物の種別を判別する観点からすれば、X線を使用した場合には、密度の違いにより、樹脂内に混入している金属及び気泡等について判別することが可能であると考えられるが、樹脂内に混入している樹脂バリを検出することはできない。
【0014】
次に、赤外線(を用いたサーモグラフィ)に関しては、簡便に樹脂内部の情報を得ることが可能であるが、樹脂が厚く(例えば、3mm以上)なると当該情報を得ることが難しくなる。また、赤外線の場合には、分解能が低いため、小さな異物を検出することは困難である。また、異物の種別については熱伝導差で判別することになるため、赤外線を用いて異物の種別を判別するのは困難である。
【0015】
また、超音波は、比較的簡易に、高い分解能で樹脂内部の情報を得ることができる。しかしながら、超音波は樹脂中での減衰が大きく、一般的な手法では厚い樹脂(例えば、10mm以上)の検査は困難である。また、超音波は空気中での減衰も大きいため、検査時には例えば水浸やゲルを介する必要があり、煩雑である。異物の種別については、超音波の反射率や物質中での伝搬速度が物質によって異なる性質を利用すれば判別可能である。特に、電力装置(樹脂)の表層部の異物に対しては、超音波を用いた検査は有効な手法である。
【0016】
なお、上記したX線、赤外線及び超音波以外では、高周波数帯の電磁波(例えば、テラヘルツ波)を用いることが考えられる。テラヘルツ波は、樹脂透過性の良い電磁波であり、厚みのある樹脂(例えば、60mm程度)であっても内部に混入している異物を検出することができる。また、走査機構等を設けた場合には、大型の電力装置を検査することも可能である。
【0017】
そこで、本実施形態においては、上記したテラヘルツ波を用いて電力機器を覆う樹脂を検査し、かつ、当該樹脂内に混入している異物の種別を判別する検査装置について説明する。本実施形態に係る検査装置においては、樹脂表面または内部の異物の種別を判別するために、テラヘルツ波の測定及び解析、当該測定に適した周波数の選定、または僅かな波形の変化を捉えるための信号処理等を導入する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る検査装置を含む検査システムの機能構成の一例を示す。図1に示す検査装置10は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータまたはサーバ装置等の情報処理装置(電子機器)である。
【0019】
また、図1に示すように、検査装置10は、照射装置20及び検波装置30と接続される。照射装置20は、例えば検査装置10からの指示に応じて、電力機器を覆う樹脂に対して所定のパルス波(テラヘルツ波)を照射するように構成されている。なお、照射装置20によって照射されるテラヘルツ波は、例えば0.05~10THzの範囲に該当する周波数帯の電磁波であるものとする。
【0020】
上記したように照射装置20から樹脂に対してテラヘルツ波が照射された場合、当該テラヘルツ波は、例えば樹脂内に混入している異物の界面において反射する。検波装置30は、このような反射波を検波(受信)するように構成されている。検波装置30は、検波された反射波を電気信号に変換することによって反射波信号を生成する。この反射波信号には、検波された反射波の信号強度、当該信号強度のピーク値及び当該ピークに到達した時間(以下、ピーク到達時間と表記)等が含まれる。
【0021】
図1に示す検査装置10は、反射波信号取得部11、深さ算出部12、平面画像生成部13、波形生成部14及び異物判別部15を含む。
【0022】
反射波信号取得部11は、上記した検波装置30において生成された反射波信号を当該検波装置30から取得する。
【0023】
深さ算出部12は、反射波信号取得部11によって取得された反射波信号に含まれるピーク到達時間(遅延時間)及び樹脂の屈折率に基づいて、当該樹脂内に混入している異物の深さを算出する。本実施形態において異物の深さとは、照射装置20によってテラヘルツ波が照射される樹脂の表面から当該異物までの距離をいう。なお、異物の深さを算出するために用いられる樹脂の屈折率は、例えば予め計測されて検査装置10内部で保持されているものとする。
【0024】
平面画像生成部13は、反射波信号取得部11によって取得された反射波信号に基づいて平面画像(平面図)を生成する。具体的には、平面画像生成部13は、反射波信号に基づいて3次元画像データを生成する。なお、3次元画像データは、例えば3次元空間の直交座標系の各座標値毎に反射波信号に含まれる信号強度等に相当する画素値を含む。平面画像生成部13は、この3次元画像データに基づいて異物が含まれる平面画像を生成する。具体的には、平面画像生成部13は、3次元空間の座標値(x,y,z)のうち、いずれか1つの座標軸の値を固定した平面画像を生成する。例えばZ軸の座標値を固定した場合、平面画像生成部13は、固定されたZ軸の座標値におけるXY平面に関する平面画像を生成することができる。
【0025】
波形生成部14は、反射波信号取得部11によって取得された反射波信号に基づいて反射波形を生成する。具体的には、波形生成部14は、反射波信号に含まれる信号強度、当該信号強度のピーク値及びピーク到達時間等に基づいて反射波形を生成する。
【0026】
異物判別部15は、反射波信号取得部11によって取得された反射波信号を解析することによって得られる異物の種別に応じて値が異なる指標に基づいて樹脂内に混入している異物の種別を判別する。異物判別部15による判別処理には、上記した深さ算出部12によって算出された異物の深さ、平面画像生成部13によって生成された平面画像及び波形生成部14によって生成された反射波形等が用いられる。なお、本実施形態における異物の種別を判別するための指標の詳細については後述する。
【0027】
図2は、図1に示す検査装置10のハードウェア構成の一例を示す。検査装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、RAM103及び通信デバイス104等を備える。また、検査装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、RAM103及び通信デバイス104を相互に接続するバス105を有する。
【0028】
CPU101は、検査装置10内の各コンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU101は、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。CPU101は、不揮発性メモリ102からRAM103にロードされる様々なプログラムを実行する。本実施形態において、CPU101によって実行されるプログラムには、検査プログラム103aが含まれる。
【0029】
なお、上記した図1に示す反射波信号取得部11、深さ算出部12、平面画像生成部13、波形生成部14及び異物判別部15の一部または全ては、例えばCPU101(つまり、検査装置10のコンピュータ)が検査プログラム103aを実行すること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。この検査プログラム103aは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネットワークを通じて検査装置10にダウンロードされてもよい。
【0030】
上記した各部11~15の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成によって実現されてもよい。
【0031】
不揮発性メモリ102は、補助記憶装置として用いられる記憶媒体である。RAM103は、主記憶装置として用いられる記憶媒体である。図2においては、不揮発性メモリ102及びRAM103のみが示されているが、検査装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
【0032】
通信デバイス104は、外部機器との有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0033】
図2においては省略されているが、検査装置10は、例えばマウスまたはキーボードのような入力装置及びディスプレイのような表示装置を更に備えていてもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る検査装置10において異物の種別を判別する原理について説明する。ここでは、電力機器を覆う樹脂(電力装置)を模擬したサンプル樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られる各種実験値または当該実験値を統計的に解析(例えば、主成分分析等)することによって得られる解析値等を用いて説明する。
【0035】
まず、上記した実験値を得るために用いるサンプル樹脂について簡単に説明する。図3は、サンプル樹脂50の正面図である。図3に示すように、サンプル樹脂50は、樹脂部51及び金属部52を有する。
【0036】
樹脂部51は、例えばフィラーを含むエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂が用いられてもよい。また、樹脂部51の硬化剤としては、酸無水物系が用いられてもよい。フィラーとしては、例えばシリカが用いられる。なお、ここで説明した樹脂部51は一例であり、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにジシクロペンタジエン等が用いられてもよい。
【0037】
金属部52は、例えばアルミニウムから構成されている。金属部52は、上記した樹脂部51によって覆われる電力機器(導電体)を模擬している。
【0038】
また、サンプル樹脂50(樹脂部51)には、異物53が混入されている。異物53は、金属、気泡(ボイド)及び樹脂バリ(等の有機物)を含む。
【0039】
図4は、図3に示すサンプル樹脂50のX軸に沿った断面図である。図4によれば、サンプル樹脂50のX軸方向の幅は170mm、Z軸方向の高さは65mmである。また、金属部52のZ軸方向の高さは5mm、X軸方向の幅は150mmである。また、サンプル樹脂50(樹脂部51)の上端部から金属部52までの深さは60mmである。
【0040】
次に、上記したサンプル樹脂50に対してテラヘルツ波を照射する照射装置20及び当該サンプル樹脂50からのテラヘルツ波の反射波を検波する検波装置30について説明する。
【0041】
図5は、例えばサンプル樹脂50と空気との界面に対して垂直方向からテラヘルツ波を照射する場合の照射装置20と検波装置30との位置関係を示している。
【0042】
この場合、照射装置20から照射されたテラヘルツ波の一部はビームスプリッタ61によって反射されるが、当該ビームスプリッタ61によって反射されないテラヘルツ波はビームスプリッタ61を透過する。ビームスプリッタ61を透過したテラヘルツ波は、レンズ62によって収束される。収束されたテラヘルツ波は、サンプル樹脂50に到達する。サンプル樹脂50で反射されたテラヘルツ波の一部は、ビームスプリッタ61で屈折し、検波装置30(受信器)によって検波される。
【0043】
一方、図6は、例えばサンプル樹脂50と空気との界面に対して垂直ではない角度からテラヘルツ波を照射する場合の照射装置20と検波装置30との位置関係を示している。
【0044】
この場合、照射装置20は、所定の角度を設けてサンプル樹脂50にテラヘルツ波を照射(つまり、斜入射)する。所定の角度とは、例えばサンプル樹脂50と空気との界面に対して垂直ではない角度である。照射装置20から照射されたテラヘルツ波は、サンプル樹脂50に到達する。サンプル樹脂50で反射されたテラヘルツ波は、検波装置30(受信器)によって検波される。
【0045】
上記した図5において説明した位置関係で照射装置20及び検波装置30を使用した場合には、ビームスプリッタ61の影響により、理論上75%のテラヘルツ波の損失がある。
【0046】
一方、図6に示した位置関係で照射装置20及び検波装置30を使用した場合には、図5に示すビームスプリッタ61を介さずに検波装置30がテラヘルツ波(反射波)を検波することが可能であるため、当該ビームスプリッタ61による損失を低減し、反射波の検出能力を向上させることができる。
【0047】
ただし、本実施形態における照射装置20及び検波装置30は、照射装置20によって照射されたテラヘルツ波(パルス波)の反射波を検波装置30で検波することが可能であれば、図5に示す位置関係で使用されてもよいし、図6に示す位置関係で使用されても構わない。
【0048】
なお、照射装置20から照射されるテラヘルツ波の計測光遅延時間は例えば160secである。なお、この計測光遅延時間を光路長に換算した場合は48mmとなる。反射型使用時測定可能厚さは24mm(往復48mm、屈折率1.0)である。テラヘルツ波形取得速度は1000波形/秒である。なお、イメージング時の取得速度は1000ピクセル/秒である。サンプリング間隔は0.1psecである。テラヘルツ波発振帯域は2.0THzより大きい。なお、照射装置20(及び検波装置30)には、走査機構が構築されているものとする。
【0049】
上記したサンプル樹脂50を検査する場合、照射装置20は、サンプル樹脂50の深さ方向(Z軸方向)に焦点を順次変えながらテラヘルツ波を照射する。また、照射装置20は、上記した走査機構によりサンプル樹脂50の例えば上面(XY平面)を走査することができるものとする。このような構成によれば、検波装置30は、上記したサンプル樹脂50内部に混入している異物53の界面からの反射波を検波することができる。
【0050】
ここで、本実施形態に係る検査装置10においては異物の種別に応じて値が異なる指標に基づいて当該異物の種別を判別するが、以下、上記したサンプル樹脂50に対して照射装置20がテラヘルツ波を照射することによって得られた実験値を参照しながら当該指標について具体的に説明する。なお、本実施形態において異物の種別を判別するために用いる指標は、第1~第4指標を含む。
【0051】
まず、第1指標について説明する。第1指標は、異物の深さと反射強度との関係性を含む。なお、反射強度とは、異物の界面で反射した反射波に応じた反射波信号に含まれるピーク値(信号強度)であり、例えば当該反射波信号から形成される反射波形の振幅値等に相当する。
【0052】
ここで、サンプル樹脂50に混入している同一の深さに位置する異物53の種別毎の反射強度は、図7に示すように、金属>気泡>樹脂バリである。なお、図7においては、金属、気泡及び樹脂バリの各々の界面からの反射波に応じた反射波信号に基づいて形成される反射波形の振幅値を反射強度として示している。
【0053】
一方、図8は、異物53の深さと反射強度との関係性(第1指標)を示している。なお、図8においては、異物53が1mmのサイズの金属である場合、異物53が1mmのサイズの気泡である場合、異物53が5mmのサイズの樹脂バリである場合の各々の反射強度(計測値)が異物53の深さ毎に示されている。図8によれば、異物の深さと反射強度との関係は、概ね指数関数的な傾向を有することが示されている。
【0054】
ここで、樹脂内の異物からの反射強度(異物の界面で反射した反射波の強度)に影響を及ぼす因子は、大きく分けて、樹脂による吸収と異物の界面での反射の2つである。なお、本実施形態においては、樹脂内の異物の種別を判別するのであるから、当該樹脂による吸収は異物の種別によって変わらない。このため、異物の種別の判別に重要なのは、異物の界面での反射である。
【0055】
テラヘルツ波は電波と光波の中間領域に相当するところ、テラヘルツ波に置き換えて光波の反射率を考える。この場合、光波の反射率は、以下の式(1)及び式(2)のように表される。
【数1】

【数2】
【0056】
上記した式(1)のRpはP偏光の場合の反射率であり、式(2)のRsはS偏光の場合の反射率である。また、式(1)及び(2)のε1は光波が反射する界面を形成する媒質1の誘電率であり、ε2は光波が反射する界面を形成する媒質2の誘電率である。また、ψ0は入射角である。
【0057】
これによれば、入射角等の条件が変わらない限り、光波の反射率は媒質の誘電率によって決まり、異物の誘電率が大きい方が反射率が小さくなる。
【0058】
このため、異物の種別毎に誘電率を比較すると樹脂>空気(気泡)であるため、光波の反射率は気泡>樹脂となる。テラヘルツ波も光波と同様であるとすると、テラヘルツ波の反射率も気泡>樹脂となると考えられる。テラヘルツ波を全反射する性質を持つ金属も考慮すると、理論的には、テラヘルツ波の反射強度は、金属>空気>樹脂となる。この傾向は、上記した図7及び図8の内容(実験値)とも一致する。
【0059】
このため、本実施形態においては、異物の深さと反射強度との関係性が例えば図8に示すような傾向を有していること(第1指標)を利用して、例えば異物の深さ毎に各異物の種別と判別するための閾値(反射強度の範囲)を設定しておくことにより、電力機器を覆う樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られる異物の深さ及び当該異物からの反射強度に基づいて、当該異物の種別を判別することが可能となる。具体的には、例えば図8に示す傾向に基づいて、異物の深さが10mmである場合において当該異物からの反射強度が例えば0.05以上であれば、当該異物が金属であると判別することができる。
【0060】
なお、上記した閾値(反射強度の範囲)は、上記した図8に示す実験値または当該実験値を統計的に解析することによって得られる解析値等に基づいて決定することができる。
【0061】
また、図8に示す異物の種別と反射強度との関係性(第1指標)においては、異物が気泡及び樹脂である場合の反射強度と比較して異物が金属である場合の反射強度を区別しやすい。このため、上記した第1指標は主に異物が金属であることを判別するために用いられてもよい。
【0062】
次に、第2指標について説明する。第2指標は、異物の深さと平面画像における異物の面積(以下、可視化面積と表記)との関係性を含む。
【0063】
図9は、サンプル樹脂50に混入している異物53を含む平面画像を当該異物53の種別毎に示している。図9においては、サンプル樹脂50の上面から深さ10mmの位置にある実際のサイズが1mmの金属を含む平面画像、サンプル樹脂50の上面から深さ10mmの位置にある実際のサイズが1mmの気泡を含む平面画像、サンプル樹脂50の上面から深さ10mmの位置にある実際のサイズが5mmの樹脂バリを含む平面画像が示されている。
【0064】
図9によれば、同一の深さに位置する異物53の可視化面積は、当該異物53の種別によって異なっている。なお、本実施形態における可視化面積とは、当該平面画像において異物53を表示するピクセル数であってもよいし、そのピクセル数から算出した面積値であってもよい。なお、面積値は、例えば単位ピクセル当たりの面積×ピクセル数等によって算出されればよい。
【0065】
図10は、異物53の深さと可視化面積との関係性(第2指標)を示している。図10によれば、金属>気泡>樹脂バリの順で可視化面積が小さくなる傾向にあることがわかる。これは、上記した異物53からの反射率がこの順で低くなり、テラヘルツ波の散乱強度が変化するためであると考えられる。
【0066】
このため、本実施形態においては、異物の深さと可視化面積との関係性が例えば図10に示すような傾向を有していること(第2指標)を利用して、例えば異物の深さ毎に各異物の種別と判別するための閾値(可視化面積の範囲)を設定しておくことにより、電力機器を覆う樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られる異物の深さ及び当該異物の可視化面積に基づいて、当該異物の種別を判別することが可能となる。具体的には、例えば図10に示す傾向に基づいて、異物の深さが30mmである場合において可視化面積が25mm以上であれば、当該異物が金属であると判別することができる。なお、図10に示すような異物の深さと可視化面積との関係性であれば、例えば可視化面積が30mm以上であれば異物が金属であると判別するようにしてもよい。
【0067】
なお、上記した閾値(可視化面積の範囲)は、上記した図10に示す実験値または当該実験値を統計的に解析することによって得られる解析値等に基づいて決定することができる。
【0068】
また、図10に示す異物の深さと可視化面積との関係性(第2指標)においては、異物が気泡及び樹脂である場合の可視化面積と比較して異物が金属である場合の可視化面積を区別しやすい。このため、上記した第2指標は主に異物が金属であることを判別するために用いられてもよい。
【0069】
なお、可視化面積は異物の実際のサイズによっても変化する可能性があるが、1~3mm程度の異物では可視化面積に差は見られない。これは、テラヘルツ波の分解能が波長程度であり、異物のサイズが小さい場合には正確に異物のサイズを可視化できないためと考えられる。ただし、例えば5mm程度以上の異物であれば、当該異物のサイズが可視化面積に反映される傾向にある。
【0070】
次に、第3指標について説明する。第3指標は、異物の深さと反射波形の形状的な特徴との関係性を含む。
【0071】
図11は、サンプル樹脂50に混入している異物53の種別が金属である場合に当該金属の界面で反射した反射波の波形(反射波形)を示している。なお、図11においては、異物53(金属)までの深さが20mmである場合の反射波形と、当該異物53までの深さが30mmである場合の反射波形とが示されている。
【0072】
図12は、サンプル樹脂50に混入している異物53の種別が気泡である場合に当該気泡の界面で反射した反射波の波形(反射波形)を示している。なお、図12においては、異物53(気泡)までの深さが10mmである場合の反射波形と、当該異物53までの深さが15mmである場合の反射波形と、当該異物53までの深さが20mmである場合の反射波形とが示されている。
【0073】
図13は、サンプル樹脂50に混入している異物53の種別が樹脂バリである場合に当該樹脂バリの界面で反射した反射波の波形(反射波形)を示している。なお、図13においては、異物53(樹脂バリ)までの深さが5mmである場合の反射波形と、当該異物53までの深さが10mmである場合の反射波形とが示されている。
【0074】
ここで、図11図13に示すように、反射波形の形状的な特徴は、異物53の種別に応じて異なる。また、異物53の種別が同一であれば、当該異物53の深さが異なっていても反射波形の形状的な特徴は概ね維持されている。
【0075】
このため、第3の指標としては、このような反射波形の形状的な特徴に着目する。本実施形態において、反射波形の形状的な特徴には、山部及び谷部の数、第1波の向き、及び第1波と第3波との関係等が含まれる。
【0076】
山部とは、閾値以上に値が変化(増加)した場合に反射波形に現れる凸形状の部分である。谷部とは、閾値以上に値が変化(減少)した場合に反射波形に現れる凹形状(つまり、山部とは反対の下向きの凸形状)の部分である。
【0077】
第1波とは、反射波形に最初に現れる山部または谷部をいう。第2波とは、反射波形に2番目に現れる山部または谷部をいう。第3波以降についても同様である。また、第1波の向きとは、反射波形における第1波が山部であるか谷部であるかに相当する。
【0078】
上記した図11に示す異物53(金属)の深さが20mmである場合の反射波形の形状的な特徴について、図14を用いて具体的に説明する。
【0079】
図14に示すように、異物53である金属の深さが20mmである場合の反射波形の第1波71は山部であり、第2波72は谷部であり、第3波73は山部であり、第4波74は谷部である。
【0080】
これによれば、異物53が金属である場合の反射波形は、例えば山部及び谷部がそれぞれ2つずつあり、第1波の向きが山部であり、第1波と第3波との関係が同一であるか第3波の方が若干大きい、という形状的な特徴を有している。
【0081】
ここでは、異物53が金属である場合の反射波形の形状的な特徴について説明したが、図12に示す異物53が気泡である場合の反射波形は、例えば山部及び谷部がそれぞれ2つずつあり、第1波の向きが谷部であり、第1波と第3波との関係が同一であるか第3波の方が若干大きい、という形状的な特徴を有している。
【0082】
また、図13に示す異物53が樹脂バリである場合の反射波形は、例えば山部が2つ、谷部が1つあり、第1波の向きが山部であり、第1波と第3波との関係が第3波の方が小さい、という形状的な特徴を有している。
【0083】
なお、図15は、上記した異物53が金属、気泡及び樹脂バリである場合の反射波形の形状的な特徴を表形式で示している。
【0084】
このため、本実施形態においては、異物の種別に応じて反射波形の形状的な特徴が異なること(第3指標)を利用して、電力機器を覆う樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られる異物からの反射波の波形が上記した異物53の種別毎の反射波形の形状的な特徴と一致(または類似)するか否かによって、当該異物の種別を判別することが可能となる。
【0085】
なお、上記した図11図13に示すように、反射波形の変化量は異物の深さが深くなるにつれて小さくなる傾向にあるため、反射波形における変化が山部または谷部としてカウントするか否かを判別するための閾値は、異物の深さと異物の種類によって変化するものとするとする。この閾値は、上記した図11図13に示す実験値または当該実験値を統計的に解析することによって得られる解析値等に基づいて決定することができる。
【0086】
また、図15に示すように、異物が金属である場合の反射波形と異物が樹脂バリである場合の反射波形とでは第1波の向きが山部である点で共通しているのに対し、異物が気泡である場合の反射波形では第1波の向きが谷部である。このような反射波形の形状的な特徴によれば、異物が気泡である場合の反射波形は、異物が金属及び樹脂である場合の反射波形と比較して区別しやすい。このため、上記した第3指標は主に異物が気泡であることを判別するために用いられてもよい。
【0087】
次に、第4指標について説明する。第4指標は、異物の深さと特定周波数帯(複数の周波数帯)の各々に対応する反射波信号との関係性を含む。
【0088】
本実施形態においては、テラヘルツ波が例えば0.05~10THzの範囲に該当する周波数帯の電磁波であると説明したが、上記した照射装置20は、例えば0.05~0.3THz程度の幅のある周波数帯のテラヘルツ波(つまり、複数の周波数帯のテラヘルツ波)をサンプル樹脂50に対して照射するものとする。
【0089】
これにより、検波装置30においては上記した0.05~0.3THzの周波数帯のテラヘルツ波の反射波が検波され、検査装置10においては当該反射波に応じた反射波信号を取得することができる。
【0090】
この場合、検査装置10において取得された反射波信号に基づくスペクトルデータ(パワースペクトル)を例えば0.05~0.1THzの帯域毎に細分化し、当該細分化した特定周波数帯毎に信号強度(以下、強度値と表記)を抽出する。
【0091】
ここで、図16を参照して、異物の深さと特定周波数帯毎に抽出された強度値との関係性について説明する。図16は、サンプル樹脂50に混入している異物53の深さと、当該異物53の種別(及び当該異物53のサイズ)と、特定周波数帯(ここでは、0.05THz、0.1THz、0.15THz、0.2THz、0.3THz)とに対応づけて、当該異物53を可視化することができる程度の強度値が抽出されたか否かを示している。
【0092】
なお、図16に示されている「○」は、異物53を含む平面画像を生成した場合に当該異物53を明瞭に可視化することができる程度の強度値が抽出されたことを示す。また、「×」は、異物53を含む平面画像を生成した場合に当該異物53を可視化することができない強度値が抽出されたことを示す。「△」は、明瞭には可視化できないが、全く可視化できないほどではない程度の強度値が抽出されたことを示す。
【0093】
ここで、例えばサンプル樹脂50の深さが10mmの位置に異物53が存在しているものとする。この異物53が金属である場合には、図16に示すように、上記した特定周波数帯の全てにおいて「○」であることが示されている。これに対して、この異物53が気泡である場合には、図16に示すように、特定周波数帯のうち、0.2及び0.3THzの周波数帯では「△」または「×」であることが示されている。更に、この異物53が樹脂バリである場合には、図16に示すように、特定周波数のうち、0.05及び0.3THzの周波数帯では「×」であることが示されている。
【0094】
これによれば、例えば深さが10mmの位置に異物が存在する場合において、全ての特定周波数帯において「○」に相当する強度値が抽出されるのであれば、当該異物の種別が金属であると判別することができる。また、0.05THzの周波数帯で「○」に相当する強度値が抽出されるが、0.2及び0.3THzの周波数帯で「△」または「×」に相当する強度値が抽出されるのであれば、異物の種別が気泡であると判別することができる。更に、0.05及び0.3THzの周波数帯において「×」に相当する強度値が抽出されるのであれば、異物の種別が樹脂バリであると判別することができる。
【0095】
このため、本実施形態においては、図16に示す異物の深さと特定周波数帯(特定周波数成分)毎に抽出された強度値との関係性(第4指標)を利用して、特定周波数帯毎の異物の種別に応じた強度値の範囲(「○」、「△」及び「×」の各々に相当する強度値の範囲)を閾値として設定しておくことにより、電力機器を覆う樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られる異物の深さ及び各特定周波数帯に対応する反射波信号(強度値)に基づいて、当該異物の種別を判別することができる。
【0096】
次に、図17のフローチャートを参照して、電力機器を覆う樹脂(以下、検査対象樹脂と表記)を検査する際の検査装置10の処理手順の一例について説明する。
【0097】
検査対象樹脂を検査する場合、照射装置20は、上記したサンプル樹脂50の場合と同様に、検査対象樹脂に対して焦点を順次変えながらテラヘルツ波を照射する。また、照射装置20は、走査機構により検査対象樹脂の上面を走査する。これにより、検波装置30は、検査対象樹脂全体からの反射波を検波する。
【0098】
この場合、反射波信号取得部11は、検波装置30によって検波された反射波に応じた反射波信号を当該検波装置30から取得する(ステップS1)。
【0099】
ここで、検査対象樹脂に異物が混入している場合には当該異物の界面からの反射波に応じた反射波信号が取得されるため、検査装置10においては、当該反射波信号(に含まれる信号強度、ピーク値及びピーク到達時間等)により、検査対象樹脂に異物が混入していることを検知することができる。
【0100】
次に、深さ算出部12は、ステップS1において取得された反射波信号に基づいて検知された異物の深さを算出する(ステップS2)。この場合、深さ算出部12は、例えばステップS1において取得された反射波信号(異物の界面からの反射波に応じた反射波信号)に含まれるピーク到達時間及び検査対象樹脂の屈折率に基づいて、当該異物の深さを算出する。
【0101】
ここで、上記したようにステップS1において取得される反射波信号は、照射装置20が検査対象樹脂に対して焦点を順次変えながらテラヘルツ波を照射し、かつ、当該検査対象樹脂を走査することによって得られる信号である。このため、平面画像生成部13は、このような反射波信号に基づいて検査対象樹脂の3次元画像データを生成することができる。平面画像生成部13は、生成された3次元画像データに基づいて、異物を含む平面画像を生成する(ステップS3)。
【0102】
波形生成部14は、ステップS1において取得された反射波信号に含まれる信号強度、ピーク値及びピーク到達時間等に基づいて反射波形を生成する(ステップS4)。
【0103】
なお、ステップS2においては反射波信号に含まれるピーク到達時間及び検査対象樹脂の屈折率に基づいて異物の深さを算出するものとして説明したが、当該異物の深さは、例えば上記した平面画像生成部13によって生成された3次元画像データから得られる断層画像等から算出されても構わない。この場合には、ステップS3の処理がステップS2よりも前に実行されてもよい。
【0104】
また、ステップS3においては反射波信号に基づいて平面画像(3次元画像データ)が生成されるものとして説明したが、当該平面画像は、ステップS4において生成される反射波形から生成されても構わない。この場合には、ステップS4の処理がステップS3よりも前に実行されてもよい。
【0105】
次に、異物判別部15は、上記した第1~第4指標に基づいて、検査対象樹脂に混入している異物の種別を判別する。
【0106】
具体的には、異物判別部15は、異物の界面からの反射波に応じた反射波信号から反射強度(信号強度)を抽出し、ステップS2において算出された異物の深さ及び当該抽出された反射強度との関係性を第1指標として用いて当該異物の種別を判別する処理(以下、第1判別処理と表記)を実行する(ステップS5)。なお、第1指標を用いて異物を判別する原理については上記した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0107】
次に、異物判別部15は、ステップS2において算出された異物の深さ及びステップS3において生成された平面画像における異物の面積(可視化面積)との関係性を第2指標として用いて当該異物の種別を判別する処理(以下、第2判別処理と表記)を実行する(ステップS6)。なお、第2指標を用いて異物を判別する原理については上記した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0108】
更に、異物判別部15は、ステップS2において算出された異物の深さ及びステップS4において生成された反射波形の形状的な特徴との関係性を第3指標として用いて当該異物の種別を判別する処理(以下、第3判別処理と表記)を実行する。なお、第3指標を用いて異物を判別する原理については上記した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0109】
また、異物判別部15は、ステップS2において算出された異物の深さ及びステップS1において取得された反射波信号から抽出される複数の周波数帯(特定周波数帯)の各々に対応する反射波信号(強度値)との関係性を第4指標として用いて当該異物の種別を判別する処理(以下、第4判別処理と表記)を実行する(ステップS8)。なお、第4指標を用いて異物を判別する原理については上記した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0110】
ここで、本実施形態においては第1~第4判別処理が実行されるものとして説明したが、異物の深さまたは当該異物の種別によっては、当該第1~第4判別処理を個別に実行しただけでは当該異物の種別を一意に判別することができない場合がある。
【0111】
このため、本実施形態においては、上記した第1~第4判別処理の結果を総合的に勘案して、異物の種別を決定するものとする(ステップS9)。
【0112】
具体的には、ステップS9においては、例えば第1~第4判別処理のうちの3つ以上の処理において同一の種別が判別された場合には、当該種別を異物の種別として決定することができる。
【0113】
また、第1~第4判別処理の各々において異物の種類を絞っていくことによって1つの種別を決定するようにしてもよい。例えば第1及び第2判別処理で異物の種別が気泡または樹脂バリである(つまり、金属ではない)と判別され、第3判別処理において異物の種別が金属または樹脂バリである(つまり、気泡ではない)と判別された場合には、異物の種別として樹脂バリを決定することができる。
【0114】
更に、上記したように第1及び第2指標を用いた場合には比較的高い精度で異物が金属であることを判別可能である。このため、第1及び第2判別処理で異物が金属であると判別されている場合には、他の判別処理で異なる異物の種別が判別されている場合であっても当該異物の種別として金属を決定してもよい。同様に、第3指標を用いた場合には比較的高い精度で異物が気泡であることを判別可能である。このため、第3判別処理で異物が気泡であると判別されている場合には、他の判別処理で異なる異物の種別が判別されている場合であっても当該異物の種別として気泡を決定してもよい。
【0115】
上記したように第1~第4判別処理の結果に基づいて異物の種別を決定することにより、異物の種別の判別精度を向上させることができる。
【0116】
なお、図17に示す例では、第1~第4判別処理が個別に実行されるものとして説明したが、上記した第1~第4指標のうちの2つ以上を組み合わせた判別処理が実行される構成としてもよい。図18は、上記したサンプル樹脂50に対してテラヘルツ波を照射することによって得られた異物53の深さ、当該異物53からの反射強度及び当該異物53の可視化面積(実験値)を、異物53の種別毎に3次元プロットで示している。これによれば、図18に示すような3次元空間において異物の種別毎に領域を切り分けておき、検査対象樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られた異物の深さ、当該異物からの反射強度及び当該異物の可視化面積(の組み合わせ)が当該切り分けられたいずれの領域に該当するかを判別することによって、当該異物の種別を判別することが可能となる。
【0117】
また、図17に示す処理においては、第1~第4判別処理(第1~第4指標を用いて異物の種別を判別する処理)の全てが実行されるものとして説明したが、当該第1~第4判別処理のうちの少なくとも1つが実行される構成であればよい。具体的には、第1判別処理のみが実行されるのであれば、ステップS3、S4及びS6~S9の処理は省略されてもよい。第2判別処理のみが実行されるのであれば、ステップS4、S5及びS7~S9の処理は省略されてもよい。第3判別処理のみが実行されるのであれば、ステップS3、S5、S6、S8及びS9の処理は省略されてもよい。第4判別処理のみが実行されるのであれば、ステップS3~S7及びS9の処理は省略されてもよい。
【0118】
上記したように本実施形態においては、電力機器を覆う樹脂(検査対象樹脂)に照射されたパルス波の当該樹脂内に混入している異物の界面からの反射波に応じた反射波信号を取得し、当該取得された反射波信号を解析することによって得られる異物の種別に応じて異なる指標に基づいて、当該樹脂内に混入している異物の種別を判別する。
【0119】
なお、異物の種別は、異物の深さと反射波信号から抽出される反射強度との関係性(第1指標)、異物の深さと反射波信号に基づいて生成される平面画像における異物の面積との関係性(第2指標)、異物の深さと反射波信号に基づいて生成された反射波形の形状的な特徴との関係性(第3指標)、及び異物の深さと反射波信号から抽出される複数の周波数帯の各々に対応する反射波信号との関係性(第4指標)のうちの少なくとも1つに基づいて判別される。
【0120】
すなわち、本実施形態においては、上記した各指標が異物の種類毎に異なる傾向を示すことに着目し、想定される異物についてサンプル樹脂50にテラヘルツ波を照射することによって得られる実験値や当該実験値に対する解析値から各指標のデータ(閾値等)を予め取得しておき、当該各指標のデータを電力機器を覆う樹脂に対してテラヘルツ波を照射することによって得られるデータと照らし合わせる(比較する)ことにより機械的に異物を判別する。
【0121】
本実施形態においては、上記した構成により、非破壊で電力機器を覆う樹脂(電力装置)を検査し、当該樹脂に混入している異物の種別を判別することが可能となる。なお、異物の種別の判別結果は、例えば電力機器を覆う樹脂の品質チェック、当該樹脂に異物が混入した原因の分析及び当該異物の混入に対する対策等に利用することができる。
【0122】
また、本実施形態においては、上記した第1~第4指標を適宜組み合わせて異物の種別を判別する構成とすることにより、当該判別精度を向上させることも可能である。
【0123】
更に、本実施形態においては、例えば0.05~10THzの範囲に該当するテラヘルツ波を用いるものとして説明したが、具体的には、0.075~0.125THzの周波数帯のテラヘルツ波を利用することが好ましい。また、図16に示す例によれば、0.1THzのテラヘルツ波は広範囲の異物を可視化することが可能である。このため、0.075~0.125THzの周波数帯の中でも特に0.1THzのテラヘルツ波を利用するとよい。また、上記したように幅のある周波数帯のテラヘルツ波を利用する場合であっても、0.1THzを含む周波数帯のテラヘルツ波を利用して、検波及び解析することが好ましい。
【0124】
なお、本実施形態においては、電力機器を覆う樹脂に混入している異物の種別が金属、気泡及び樹脂バリである場合について主に説明したが、当該金属、気泡及び樹脂バリと同様に例えばセラミック等の他の異物の種別を判別する構成とすることも可能である。
【0125】
なお、本実施形態においては、電力機器を覆う樹脂にテラヘルツ波を照射することによって当該樹脂に混入している異物を判別するものとして説明したが、当該樹脂に照射するパルス波として超音波を用いることも可能である。
【0126】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態においては電力機器を覆う樹脂に照射されるパルス波として例えば0.05~10THzの周波数帯のテラヘルツ波を利用するものとして主に説明したが、本実施形態においては、当該パルス波として異物の種別に応じた周波数帯のテラヘルツ波を用いる点で、前述した第1実施形態とは異なる。
【0127】
すなわち、本実施形態に係る検査装置は、電力機器を覆う樹脂に対して照射されるテラヘルツ波の周波数帯(特定周波数帯)に応じて、異物の界面からの反射波(反射波信号)が異なる点に基づいて異物の種別を判別する構成を有する。
【0128】
なお、以下の本実施形態に係る検査装置の説明においては、適宜、図1等を用いるが、当該検査装置においては、例えば図1に示す機能部11~15のうちの一部が省略されていても構わない。
【0129】
以下、上記した図16を参照して、本実施形態においてパルス波として用いる異物の種別に応じた周波数帯のテラヘルツ波について説明する。前述したように、図16は、サンプル樹脂50内に混入している異物53の深さと、テラヘルツ波が照射された際の当該異物53の界面からの反射波に応じた反射波信号(強度値)との関係性を、当該テラヘルツ波の周波数帯(特定周波数帯)毎に示している。なお、図16の詳細については、第1実施形態において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0130】
ここで、図16においては、例えばサンプル樹脂50内の深さが30mmの位置にサイズが1mmの金属(異物53)がある場合、0.2THz帯及び0.3THz帯のテラヘルツ波では当該金属を可視化することができない強度値が抽出されることが示されている。しかしながら、0.05THz帯、0.1THz帯及び0.15THz帯のテラヘルツ波を用いた場合には、深さに関係なく、金属を可視化することができる(または全く可視化できないほどではない)程度の強度値が抽出される(つまり、金属の混入を検知することができる)ことが示されている。このため、樹脂内に金属が混入していることを検知する(つまり、金属を検知対象とする)場合には、少なくとも0.05~0.15THzのうちの一部の周波数帯のテラヘルツ波を用いることが好ましい。
【0131】
また、図16においては、例えばサンプル樹脂50内の深さが25mmの位置にサイズが1mmの気泡(異物53)がある場合、0.15THz帯、0.2THz帯及び0.3THz帯のテラヘルツ波では当該気泡を可視化することができない強度値が抽出されることが示されている。しかしながら、0.05THz帯及び0.1THz帯のテラヘルツ波を用いた場合には、深さに関係なく、気泡を可視化することができる程度の強度値が抽出される(つまり、気泡の混入を検知することができる)ことが示されている。このため、樹脂内に気泡が混入していることを検知する(つまり、気泡を検知対象とする)場合には、少なくとも0.05~0.1THzのうちの一部の周波数帯のテラヘルツ波を用いることが好ましい。
【0132】
更に、図16においては、例えばサンプル樹脂50内の深さが30mmの位置にサイズが5mmの樹脂バリがある場合、0.15THz帯、0.2THz帯及び0.3THz帯のテラヘルツ波では当該樹脂バリを可視化することができない強度値が抽出されることが示されている。同様に、図16においては、例えばサンプル樹脂50内の深さが10mmの位置にサイズが5mmの樹脂バリがある場合、0.05THz帯のテラヘルツ波では当該樹脂バリを可視化することができない強度値が抽出されることが示されている。しかしながら、図16においては、0.1THz帯のテラヘルツ波を用いた場合には、深さに関係なく、樹脂バリを可視化することができる程度の強度値が抽出される(つまり、樹脂バリを検知することができる)ことが示されている。このため、樹脂バリを検知する(つまり、樹脂バリを検知対象とする)場合には、少なくとも0.1THz帯のテラヘルツ波を用いることが好ましい。
【0133】
上記したように異物の混入を検知することができるテラヘルツ波の周波数帯は当該異物の種別や厚みに応じて異なるため、例えば異物の混入が検知されたテラヘルツ波の周波数帯(つまり、いずれの周波数帯のテラヘルツ波を用いた場合に異物の混入が検知されたか)に基づいて、当該異物の種別を判別するような構成を実現することができる。なお、例えば検知対象とする異物の種別に応じてテラヘルツ波の周波数帯を切り替える(使い分ける)ような構成としてもよい。
【0134】
以下、図19のフローチャートを参照して、電力機器を覆う樹脂(以下、検査対象樹脂と表記)を検査する際の検査装置10の処理手順の一例について説明する。
【0135】
検査対象樹脂を検査する場合、照射装置20は検査対象樹脂に対してテラヘルツ波を照射するが、検査装置10に含まれる異物判別部15は、当該テラヘルツ波の周波数帯として、第1周波数帯を選択する(ステップS11)。
【0136】
なお、上記した図16によれば、金属の混入は0.05THz帯、0.1THz帯及び0.15THz帯のテラヘルツ波で検知可能であり、気泡の混入は0.05THz帯及び0.1THz帯で検知可能であり、樹脂バリの混入は0.1THz帯のテラヘルツ波で検知可能である。この場合、ステップS11においては、金属、気泡及び樹脂バリを含む全ての異物の混入を検知することができる0.1THz帯が第1周波数帯として選択される。検査装置10(異物判別部15)は、選択された第1周波数帯を照射装置20に通知する。
【0137】
照射装置20は、検査装置10から通知された第1周波数帯(0.1THz帯)に基づいて、当該第1周波数帯のテラヘルツ波を検査対象樹脂に対して照射する。なお、照射装置20は、検査対象樹脂に対して焦点を順次変えながら、当該検査対象樹脂の上面を走査するようにテラヘルツ波を照射する。
【0138】
ここで、検査対象樹脂内に異物(金属、気泡または樹脂バリ)が混入している場合には、当該異物の界面からの反射波の応答があり、当該反射波に応じた反射波信号を検波装置30から取得することができる。この場合、検査装置10は、検波装置30から取得される反射波信号により、検査対象樹脂内に異物が混入していること(以下、単に検査対象樹脂に対する異物の混入と表記)を検知することができる。
【0139】
なお、検査対象樹脂に対する異物の混入が検知されない場合(ステップS12のNO)、図19に示す処理は終了される。
【0140】
ここで、上記した第1周波数帯は全ての種別の異物を検出することが可能な0.1THz帯である。このため、第1周波数帯のテラヘルツ波を用いて当該検査対象樹脂に対する異物の混入が検知されたとしても、当該異物の種別を判別(特定)することはできない。
【0141】
そこで、本実施形態においては、ステップS12において検査対象樹脂に対する異物の混入が検知された場合(ステップS12のYES)、当該異物に対して他の周波数帯のテラヘルツ波を更に照射し、当該テラヘルツ波に対する反射波の応答性から異物の種別を判別するものとする。なお、第1周波数帯のテラヘルツ波で検査対象樹脂に対する複数の異物の混入が検知された場合、以下のステップS13以降の処理は当該複数の異物の各々に対して実行される。
【0142】
具体的には、異物判別部15は、検査対象樹脂に対して照射されるテラヘルツ波の周波数帯として、第1周波数帯とは異なる(第1周波数帯とは重複しない)第2周波数帯を選択する(ステップS13)。ここでは、例えば気泡及び樹脂バリを検知することができない場合があるが、金属を検知することができる0.15THz帯が第2周波数帯として選択される。検査装置10(異物判別部15)は、選択された第2周波数帯を照射装置20に通知する。
【0143】
照射装置20は、検査装置10から通知された第2周波数帯(0.15THz帯)に基づいて、当該第2周波数帯のテラヘルツ波を検査対象樹脂に対して照射する。
【0144】
これにより、検査装置10は、検波装置30から取得される反射波信号により、検査対象樹脂に対する異物の混入を検知することができる。
【0145】
ここで、第2周波数帯は、気泡及び樹脂バリを検出することができない場合があるが、金属を検出することができる0.15THz帯である。このため、ステップS14において検査対象樹脂に対する異物の混入が検知された場合(ステップS14のYES)、異物判別部15は、当該検査対象樹脂内に混入している異物の種別が金属である可能性が高いと判別することができる(ステップS15)。
【0146】
一方、検査対象樹脂に対する異物の混入が検知されない場合(ステップS14のNO)、当該検査対象樹脂内に混入している異物の種別は、気泡及び樹脂バリのいずれかである可能性が高い。
【0147】
次に、異物判別部15は、検査対象樹脂に対して照射されるテラヘルツ波の周波数帯として、第1及び第2周波数帯とは異なる(第1及び第2周波数帯とは重複しない)第3周波数帯を選択する(ステップS16)。ここでは、例えば樹脂バリを検知することができない場合があるが、金属及び気泡を検知することができる0.05THz帯が第3周波数帯として選択される。検査装置10(異物判別部15)は、選択された第3周波数帯を照射装置20に通知する。
【0148】
照射装置20は、検査装置10から通知された第3周波数帯(0.05THz)に基づいて、当該第3周波数帯のテラヘルツ波を検査対象樹脂に対して照射する。
【0149】
この場合、検査装置10は、検波装置30から取得される反射波信号により、検査対象樹脂に対する異物の混入を検知することができる。
【0150】
ここで、第3周波数帯は、樹脂バリを検出することができない場合があるが、金属及び気泡を検出することができる0.05THz帯であるが、ステップS17の処理が実行される場合、金属を検出することができる0.15THz帯のテラヘルツ波で異物の混入が検知されていないため、検査対象樹脂内に混入している異物は金属でない可能性が高い。このため、ステップS17において検査対象樹脂に対する異物の混入が検知された場合(ステップS17のYES)、異物判別部15は、検査対象樹脂内に混入している異物の種別が気泡である可能性が高いと判別することができる(ステップS18)。
【0151】
一方、検査対象樹脂に対する異物の混入が検知されない場合(ステップS17のNO)、第1周波数帯(0.1THz帯)のテラヘルツ波では当該検査対象樹脂に対する異物の混入が検知されているが、第2周波数帯(0.15THz帯)及び第3周波数帯(0.05THz帯)のテラヘルツ波では当該検査対象樹脂に対する異物の混入が検知されていないため、異物判別部15は、当該検査対象樹脂内に混入している異物の種別が樹脂バリである可能性が高いと判別することができる(ステップS19)。
【0152】
上記したように図19に示す処理によれば、異物の種別に応じた第1~第3周波数帯(例えば、0.1THz帯、0.15THz帯及び0.05THz帯)のテラヘルツ波を検査対象樹脂に順次照射し、当該テラヘルツ波に対する応答性(つまり、検査対象樹脂対する異物の混入の検知結果)から、異物の種別を判別(推定)することが可能となる。
【0153】
なお、図19においては、それぞれ異なる第1~第3周波数帯のテラヘルツ波を照射することによって検査対象樹脂内に混入している異物の種別を判別するものとして説明したが、より細分化された周波数帯のテラヘルツ波を用いて異物の種別を判別するようにしても構わない。また、異物の種別や樹脂の種類、厚みに応じたテラヘルツ波(パルス波)を用いるのであれば、第1~第3周波数帯はここで説明した以外の周波数帯であってもよい。
【0154】
更に、気泡は第2周波数帯(0.15THz帯)のテラヘルツ波で検知することができない場合があるものとして説明したが、図16に示す例では、例えば深さが15mmの位置に気泡が存在する場合、当該気泡の混入は0.15THz帯のテラヘルツ波でも検知することができる(つまり、気泡を可視化することができる程度の強度値が抽出される)ことが示されている。同様に、樹脂バリは第2周波数帯(0.15THz帯)及び第3周波数帯(0.05THz帯)のテラヘルツ波で検知することができない場合があるものとして説明したが、図16に示す例では、例えば深さが10mmの位置に樹脂バリが存在する場合、当該樹脂バリの混入は0.15THz帯のテラヘルツ波で検知することができる(つまり、樹脂バリを可視化することができる程度の強度値が抽出される)ことが示されている。
【0155】
これによれば、例えば第1周波数帯(0.1THz帯)のテラヘルツ波及び第2周波数帯(0.15THz)のテラヘルツ波の両方で異物の混入が検知された場合であっても、当該異物の種別が金属以外(気泡または樹脂バリ)である可能性があり、当該異物の種別の判別精度が低い可能性がある。このような場合には、上記した図19の処理が実行される際に、例えば前述した深さ算出部12によって算出される異物の深さや第1~第3周波数帯以外の周波数帯(例えば、0.2THz帯または0.3THz帯)のテラヘルツ波を更に用いることによって、異物の種別の判別精度を向上させるようにしてもよい。
【0156】
更に、深さ算出部12によって算出された異物の深さが10mmであり、当該異物がサイズが1mmの気泡である場合には、第1周波数帯(0.1THz帯)及び第2周波数帯(0.15THz)のテラヘルツ波で検査対象樹脂に対する異物の混入が検知されるため、当該異物の種別が気泡であると判別することができないが、更に0.3THz帯のテラヘルツ波を用いることによって異物の混入が検知されなければ、当該異物の種別を気泡であると判別することができる。
また、異物の混入を検知することができるテラヘルツ波の周波数帯は検査対象樹脂の厚み(樹脂厚)によっても変化する場合がある。これは、エポキシ樹脂に対するテラヘルツ波の特徴として、樹脂が厚くなるほど、かつ高周波数帯ほど減衰が大きくなるためである。具体的には、検査対象樹脂の厚みが小さい場合には、周波数帯を大きく(例えば、0.3THz帯)することで、金属と樹脂バリとの差が顕著になる。このため、検査対象樹脂の厚みに応じて第1~第3周波数帯を決定する構成とすることも可能である。なお、検査対象樹脂の厚みは電力機器(検査対象となる製品)によって特定することができる。
【0157】
また、電力機器(電力装置)によっては、検出すべき異物の種別や当該電力機器を覆う樹脂内に混入している可能性のある異物の種別が異なる場合がある。このような場合には、電力機器に合わせて必要な周波数帯を選定し、当該選定された周波数帯のテラヘルツ波を照射するようにすればよい。具体的には、例えば樹脂内に樹脂バリが混入していても問題がないような電力機器であれば、0.1THz帯以外の周波数帯のテラヘルツ波を用いて異物の混入を検知することによって、電力機器を覆う樹脂内に混入している樹脂バリに関する検知数を削減することが可能となる。検知された異物の全てについて異物の種別を判別する必要があるところ、このような構成によれば、異物の検知数の削減により、当該異物の種別の判別にかかる処理負荷等を低減することが可能となる。
【0158】
上記したように本実施形態においては、電力機器を覆う樹脂に照射されたパルス波の当該樹脂内に混入している異物の界面からの反射波に応じた反射波信号を取得し、当該取得された反射波信号に基づいて当該樹脂内に異物が混入していることを検知するが、この場合におけるパルス波としては、異物の種別に応じた周波数帯のテラヘルツ波を用いる。
【0159】
具体的には、異物として樹脂バリが混入していることを検知する場合、パルス波としては、少なくとも0.1THz帯のテラヘルツ波を用いる。また、異物として金属が混入していることを検知する場合、パルス波としては、少なくとも0.05~0.15THzのうちの一部の周波数帯のテラヘルツ波を用いる。更に、異物として気泡が混入していることを検知する場合、パルス波としては、少なくとも0.05~0.1THzのうちの一部の周波数帯のテラヘルツ波を用いる。
【0160】
本実施形態においては、このような異物の種別に応じて異なる周波数帯のテラヘルツ波を組み合わせて用いることにより、電力機器を覆う樹脂内に混入している異物の種別を非破壊で判別することが可能となる。
【0161】
ここで、前述した第1実施形態において説明したように、異物の種別の判別結果は例えば電力機器を覆う樹脂の品質チェック、当該樹脂に異物が混入した原因の分析及び当該異物の混入に対する対策等に利用されるところ、知識及び経験のある作業者は、上記したように検査装置10において判別された種別の異物が電力装置(電力機器の樹脂モールド品)を製造する工程のいずれの段階で混入したかを経験的に判断することができる。
【0162】
しかしながら、知識及び経験の乏しい作業者はこのような判断を行うことができないため、本実施形態においては、電力装置を製造するための複数の工程のうち、検査装置10において判別された種別の異物が電力機器を覆う樹脂内に混入する可能性がある工程(つまり、異物の混入位置またはタイミング)を出力する構成としてもよい。具体的には、図20には、電力装置を製造するための一連の工程(以下、製造工程と表記)として「金属導体加工」、「金型掃除、型組、予熱」、「樹脂計量・混合」、「樹脂注入」、「硬化、離型、仕上げ」の順で電力装置が製造されることが示されている。この図20に示す製造工程によれば、金属導体を切断加工後、金型に設置して樹脂を注入及び脱泡し、加熱硬化後に離型するような工程で電力装置が製造される。
【0163】
ここで、このような製造工程で製造された電力装置に含まれる検査対象樹脂内に異物として金属が混入していた場合には、例えば「金属導体加工」の工程において発生した切子が混入したことが考えられる。また、検査対象樹脂内に異物として気泡が混入していた場合には、例えば「樹脂計量・混合」または「樹脂注入」の工程における脱泡に不備があった可能性がある。更に、検査対象樹脂内に異物として樹脂が混入していた場合には、例えば「金型掃除、型組、予熱」の工程における金型に付着した樹脂バリの除去が不十分であった可能性がある。
【0164】
本実施形態においては、このような異物が混入する可能性のある工程を当該異物の種別の各々に対応づけて管理しておくことにより、検査装置10において異物の種別が判別された際に、当該異物が混入する可能性のある工程を出力(提示)することができるため、例えば経験や知識の乏しい作業者であっても異物の混入に対する対策を行わなければならない箇所等を容易に把握することが可能となる。具体的には、例えば異物の種別として金属が判別された場合には、当該異物が混入した可能性のある工程として「金属胴体加工」を提示することにより、作業者は金属導体の切断加工において異物混入を回避する対策を行う必要があることを容易に把握することができる。
【0165】
なお、図20には製造工程のうちの各工程に対応づけて当該工程において異物が混入する原因が示されている。具体的には、「金属導体加工」の工程に対しては「発生した切子が付着」が異物が混入する原因として示されている。また、「金型掃除、型組、予熱」の工程に対しては「掃除不十分」及び「予熱不足」が異物が混入する原因として示されている。
【0166】
本実施形態においては、上記した異物の種別に応じた工程(当該異物が混入する可能性がある工程)に加えて、当該異物が混入する原因を出力(提示)する構成としても構わない。このような構成によれば、作業員は、異物混入に対する原因(及び対策)をより容易に把握することができる。
【0167】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、非破壊で電力機器を覆う樹脂を検査することが可能な検査方法、検査装置、検査システム及びプログラムを提供することができる。
【0168】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0169】
10…検査装置、11…反射波信号取得部、12…深さ算出部、13…平面画像生成部、14…波形生成部、15…異物判別部、101…CPU、102…不揮発性メモリ、103…RAM、103a…検査プログラム、104…通信デバイス、20…照射装置、30…検波装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20