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特許7391683燃料改質触媒、燃料電池システム及び燃料電池セル構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】燃料改質触媒、燃料電池システム及び燃料電池セル構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/847 20060101AFI20231128BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231128BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20231128BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20231128BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231128BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20231128BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20231128BHJP
【FI】
B01J23/847 M
B01J37/02 101Z
C01B3/40
H01M8/0612
H01M8/12 101
H01M8/12 102C
H01M8/1213
H01M8/1226
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020013142
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2020124704
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019016534
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】越後 満秋
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】平野 竹徳
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047504(WO,A1)
【文献】特開2012-209122(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021385(WO,A1)
【文献】特開2016-039049(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094688(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021224(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
H01M 8/0612
H01M 8/12
H01M 8/1213
H01M 8/1226
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガドリニウム、サマリウム、イットリウムのうちの少なくともいずれか一つをドープしたセリアであるセリア系金属酸化物を主成分とする担体に少なくともニッケルとバナジウムを担持した燃料改質触媒。
【請求項2】
触媒全体に対する前記担体の割合が55重量%以上である請求項1記載の燃料改質触媒。
【請求項3】
前記ニッケルの担持量が0.5重量%以上である請求項1又は2記載の燃料改質触媒。
【請求項4】
前記バナジウムの担持量が前記ニッケルの担持量と同一以下である請求項1~のいずれか1項記載の燃料改質触媒。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項記載の燃料改質触媒を少なくとも含み、原燃料ガスを前記燃料改質触媒により水素リッチな改質ガスに改質する改質部を有し、前記改質部から前記改質ガスの供給を受けるとともに、酸化性ガスの供給を受けて発電する燃料電池を備えた燃料電池システム。
【請求項6】
電解質層を挟んでアノード電極層とカソード電極層が少なくとも形成された燃料電池セルと、前記アノード電極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、前記カソード電極層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給路とを備えて構成され、
請求項1~のいずれか1項記載の燃料改質触媒を少なくとも有する改質部を内部改質部として備えた燃料電池セル構造体。
【請求項7】
電解質層を挟んでアノード電極層とカソード電極層が少なくとも形成された燃料電池セルと、前記アノード電極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、前記カソード電極層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給路とを備えて構成され、
前記燃料電池セルが支持体上に形成されるとともに、
請求項1~のいずれか1項記載の燃料改質触媒を少なくとも有する改質部を内部改質部として備えた燃料電池セル構造体。
【請求項8】
前記支持体が金属である請求項に記載の燃料電池セル構造体。
【請求項9】
前記燃料電池セルが固体酸化物形燃料電池である請求項6~8のいずれか1項記載の燃料電池セル構造体。
【請求項10】
少なくともニッケルとバナジウムを含有する溶液に、ガドリニウム、サマリウム、イットリウムのうちの少なくともいずれか一つをドープしたセリアであるセリア系金属酸化物を主成分とする担体を添加し、前記担体に少なくともニッケルとバナジウムを含浸担持する含浸担持工程を少なくとも有する燃料改質触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項又は記載の燃料電池セル構造体の製造方法であって、
前記担体に前記ニッケルとバナジウムを含浸担持する含浸担持工程を経て得られる含浸担持物を前記支持体の少なくとも一部に配置して前記改質部を得る燃料電池セル構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料改質触媒に関するとともに、このような燃料改質触媒を用いて燃料改質を実行する改質部を備える燃料電池システム、この種の燃料電池システムにおいて発電を担う燃料電池セル構造体に関する。さらには、当該燃料改質触媒の製造方法及び燃料電池セル構造体の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃料改質触媒として、炭化水素系燃料を水蒸気改質する水蒸気改質触媒が良く知られている。従来、このような水蒸気改質触媒として、ニッケルや貴金属を活性金属として担体に担持した触媒が広く使われてきた。例えば、特許文献1には、γ‐アルミナに酸化セリウムを12重量%、酸化ストロンチウムを3重量%それぞれ加えた無機酸化物担体に、γ‐アルミナに対して10重量%のニッケルと0.1重量%のパラジウムをそれぞれ担持させた水蒸気改質触媒が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、水蒸気改質触媒活性成分と、バナジウムとを含む触媒活性粒子を含有する水蒸気改質触媒組成物が提案されている。
この水蒸気改質触媒組成物は、水蒸気改質触媒活性成分(代表的にはニッケル)にバナジウムを加えることにより、水蒸気改質触媒活性成分が本来有する触媒性能を低下させることなく、且つ、500℃以上の温度での還元処理または改質反応時のシンタリングを抑制して、触媒性能の劣化を抑制することができるとされている。水蒸気改質触媒活性成分をニッケルとする場合、組成物に占めるニッケルの割合は比較的高い。
【0004】
燃料電池システムにあっては、水蒸気改質触媒は、従来燃料電池本体に対して外部に別体として配置されていた「外部改質器」で使用されてきた。しかしながら、特許文献3には、改質部を燃料電池セル(本発明にいう燃料電池セル構造体に相当)内に備えることが提案されている。またこの特許文献3では、改質部に使用する水蒸気改質触媒として、ニッケル鍍金層PR1を設けることが示されている(〔0048〕)。
【0005】
ここで、本発明の理解を容易とするめ、本明細書における「燃料電池セル」「燃料電池セル構造体」「改質部」に関して説明しておく。
燃料電池セルは、電解質層を挟んでアノード電極層とカソード電極層が少なくとも形成されて構成され、前記アノード電極層に燃料ガス(還元性ガス)を、前記カソード電極層に酸素を含有する酸化性ガスを、それぞれ供給される状態で、電池反応により両極間で発電する基本単位である。
燃料電池セル構造体は、上記の燃料電池セルを備えるとともに、前記燃料ガス(還元性ガス)の供給路と、酸化性ガスの供給路とを形成可能に構成されている構造体である。燃料電池セル自体或いは燃料電池セルを支持する支持体とを含む概念であり、後述する燃料電池セルユニットは、この燃料電池セル構造体の一例となる。
また、改質部は、燃料改質触媒を備え、例えば炭化水素燃料といった原燃料ガスが供給されて、触媒反応により、少なくとも水素を含有するガスである改質ガスを得る部位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-184394号公報
【文献】WO2016/047504号公報
【文献】特開2017-208232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各特許文献に開示の技術は以下のような課題がある。
特許文献 1
当該特許文献に記載の触媒は貴金属系触媒となっているため、非常に高活性ではあるが、貴金属を用いるためコストが高い。
【0008】
特許文献 2
当該特許文献に記載の水蒸気改質組成物は酸化ニッケルを基本材料とするため、ニッケルの使用量が大となる。さらに、ニッケルを含む粒子の表面に、(a):バナジウム酸化物もしくはバナジウム・ニッケル複合酸化物と、(b):ケイ素酸化物及びジルコニア酸化物の両方、とが存在する必要がある。結果、(a)と(b)の最低2度の含浸担持工程が必要となるため製造過程が複雑となりコスト上昇を招く。
【0009】
特許文献 3
当該特許文献には、燃料電池セル構造体内に改質部を設けることが提案されているが、このニッケルは鍍金とされているため、内部改質部は実質的にニッケル層であり、ニッケルを多量に必要とする。また、この層と燃料電池セル構造体を構成する他の部位(本発明で説明する支持体、燃料電池セル)とのなじみも問題となる。
【0010】
以上纏めると、貴金属系触媒を使用する場合は、触媒に貴金属を含み高活性のため使用量を抑えることはできるがコスト高となる。一方、ニッケル系触媒は貴金属系触媒よりも活性が低いため、比較的活性の高い改質部を得るためには、貴金属系触媒に比べてニッケル量を増やす必要がある。結果、コスト的には貴金属触媒を使用するのと同程度のコストを要することとなる。さらに、触媒を燃料電池セル構造体内に設ける技術に関しても、なお多量のニッケルを必要としている。
【0011】
本発明は、こうした課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、貴金属を用いることなく低コストでありながら、高い改質性能を得ることができ、例えば、燃料電池セルユニット内に改質部を設ける構造にあっても、燃料電池としての性能を安定して発揮できる燃料改質触媒を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は、セリア系金属酸化物もしくはジルコニア系金属酸化物を主成分とする担体に少なくともニッケルとバナジウムを担持した燃料改質触媒としてある点にある。
【0013】
セリア系金属酸化物もしくはジルコニア系金属酸化物を主成分とする担体に少なくともニッケルとバナジウムを担持した燃料改質触媒であるから、ニッケルとバナジウムの担持量が少なくても高い改質性能が得られる。また、担体が、セリア系金属酸化物もしくはジルコニア系金属酸化物を主成分とするから、燃料電池セル構造体に用いる場合、燃料電池システム内で使用する他の構成材料と熱膨張係数が近いため、燃料電池セル構造体の起動停止時の熱応力耐性が向上し、信頼性・耐久性に優れた燃料改質触媒とすることができる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、触媒全体に対する前記担体の割合が55重量%以上である点にある。重量%は質量%と同義である。
触媒全体に対する担体の割合を少なくとも55重量%とすることにより、活性成分としてのニッケル及びバナジウムを高分散に担持できるようになり、高い燃料改質性能を得ながら、シンタリングなどの影響を抑制しつつ、その改質性能を長期にわたって維持可能となる。そして、それらの使用量を低減してコストを低減できる。一方、担体割合が高いことから、燃料電池セル構造体におけるその構造材(後述する、本願にいう支持体)さらにはその構造材上に設けられる燃料電池セルとのなじみが良く、燃料電池セルユニットに用いる場合、燃料電池システム内で使用する他の構成材料と熱膨張係数が近いため、燃料電池セル構造体の起動停止時の熱応力耐性などが向上し、信頼性・耐久性に優れた燃料改質触媒とすることができる。なお、前記担体の割合が60重量%以上であるとより好ましく、65重量%以上であると更に好ましい。このようにすると上述の効果が更に得やすくなるからである。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、前記セリア系金属酸化物が、ガドリニウム、サマリウム、イットリウムのうちの少なくともいずれか一つをドープしたセリアである点にある。
【0016】
このようにすると、燃料電池システム(特に燃料電池セル構造体)内で使用する他の構成材料と熱膨張係数が近い上に、燃料電池で使用する他の材料と同様の材料にすることが可能となるため、材料の入手性が向上する。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、前記ジルコニア系金属酸化物が、イットリウム、スカンジウムのうちの少なくともいずれか一つで安定化したジルコニアである点にある。
【0018】
このようにすると、燃料電池システム(特に燃料電池セル構造体)内で使用する他の構成材料と熱膨張係数が近い上に、燃料電池で使用する他の材料と同様の材料にすることが可能となるため、材料の入手性が向上する。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、前記ニッケルの担持量が0.5重量%以上である点にある。
【0020】
担持量が0.5重量%未満の場合、ニッケルが寄与する触媒活性を得にくいためである。担持量は、好ましくは1重量%以上であり、良好な触媒活性が得られる。より好ましくは5重量%以上であり、十分な活性を得ることができる。一方、35重量%未満とすると好ましい。なぜならば、これ以上担持させても担体上に高分散にニッケルを担持させることが困難となり、触媒活性の更なる向上が見込めないからである。また、好ましくは30重量%以下であり、この程度でも十分な触媒活性を得る事ができる。より好ましくは25重量%以下であり、ニッケルの使用量を制限しても、所望の燃料改質性能を得ることができる。
【0021】
本発明の第6特徴構成は、前記バナジウムの担持量が前記ニッケルの担持量と同一以下である点にある。
【0022】
このようにすると、非常に少ないバナジウム担持量でも、ニッケルとの相乗効果で十分な改質性能が得られるからである。
【0023】
本発明の第7特徴構成は、燃料電池システムが、これまで説明してきたいずれかの特徴構成を有する燃料改質触媒を少なくとも含み、原燃料ガスを前記燃料改質触媒により水素リッチな改質ガスに改質する改質部を有し、前記改質部から前記改質ガスの供給を受けるとともに、酸化性ガスの供給を受けて発電する燃料電池を備えた点にある。
【0024】
このようにすると、非常に安価で十分な改質性能が得られる改質部を備えた燃料電池システムを構築できる。
【0025】
本発明の第8特徴構成は、燃料電池セル構造体が、
電解質層を挟んでアノード電極層とカソード電極層が少なくとも形成された燃料電池セルと、前記アノード電極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、前記カソード電極層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給路とを備えて構成され、
これまで説明してきた燃料改質触媒を少なくとも有する改質部を内部改質部として備えて構成される点にある。
【0026】
ここで、燃料ガスは、アノード電極層に供給されて発電可能な還元性ガスである。後述する実施形態において、外部改質部と内部改質部との両方を有する場合は、原燃料ガスがまず外部改質部に供給され、原燃料ガスの一部が改質されて水素を含む改質ガスとなり、一部の原燃料ガスは未反応のまま改質ガスに含まれた状態となる。そして、一部の未反応の原燃料ガスを含む改質ガスが内部改質部に供給され、未反応の原燃料ガスが内部改質部で改質されて水素を含む改質ガスとなり、燃料電池の発電に使われる燃料ガスとしてアノード電極層に供給されることとなる。一方、外部改質部が無く内部改質部のみで改質を行う場合は、原燃料ガスが内部改質部に供給され、内部改質部で原料ガスが改質されて水素を含む改質ガスとなり、燃料電池の発電に使われる燃料ガスとしてアノード電極層に供給されることとなる。加えて、内部改質部が無く外部改質部のみで改質を行う場合は、原燃料ガスが外部改質部に供給され、外部改質部で原料ガスが改質されて水素を含む改質ガスとなり、燃料電池の発電に使われる燃料ガスとしてアノード電極層に供給されることとなる。
この構成を採用することにより、燃料電池セルと一体に内部改質部を備えることで、燃料電池セル構造体内で良好に燃料改質を行い、改質ガスを得て発電を実行できる。このため、コンパクトで高効率な燃料電池セル構造体とすることができる。
【0027】
本発明の第9特徴構成は、燃料電池セル構造体が、
電解質層を挟んでアノード電極層とカソード電極層が少なくとも形成された燃料電池セルと、前記アノード電極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、前記カソード電極層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給路とを備えて構成され、
前記燃料電池セルが支持体上に形成されるとともに、
これまで説明してきたいずれかの燃料改質触媒を少なくとも有する改質部を内部改質部として備える点にある。
【0028】
このようにすると、安価で十分な改質性能が得られる改質部を内部に備えた燃料電池セル構造体を構成できる。
【0029】
本発明の第10特徴構成は、前記支持体が金属である点にある。
【0030】
このようにすると、安価でかつ薄くても強度の高い金属を支持体に用いることができるため、安価でコンパクトかつ強度に優れた燃料電池セル構造体を構成できる。とりわけ、金属支持体の材料として、フェライト系ステンレス鋼を用いると、燃料改質触媒の担体と熱膨張係数が近くなるので、安価でコンパクト、かつ、起動・停止時のヒートサイクル耐性などに優れた信頼性・耐久性の高い燃料電池セル構造体を構成できる。
【0031】
本発明の第11特徴構成は、燃料電池セルが固体酸化物形燃料電池である点にある。
【0032】
このようにすると、安価で十分な改質性能が得られ、例えば、燃料電池セル、或いは、その支持体を構成する構成部材と熱膨張係数が近い担体を有する燃料改質触媒を燃料電池セル構造体内に配置できるため、安価で高性能、かつ、起動・停止時のヒートサイクル耐性などに優れた信頼性・耐久性の高い燃料電池セル構造体、或いはそれを用いた燃料電池システムを構築できる。
【0033】
本発明の第12特徴構成は、少なくともニッケルとバナジウムを含有する溶液に、セリア系金属酸化物もしくはジルコニア系金属酸化物を主成分とする担体を添加し、担体に少なくともニッケルとバナジウムを含浸担持する含浸担持工程を少なくとも有する点にある。
【0034】
このようにすると、簡便な方法で、少量のニッケルとバナジウムを担体に担持した性能の高い燃料改質触媒を安価に製造することができる。
【0035】
この燃料改質触媒の製造方法においても、触媒全体に対する前記担体の割合を55重量%以上に調整することが好ましく、60重量%であるとより好ましく、65重量%以上であると更に好ましい。
【0036】
このようにして燃料改質触媒を製造することで、先に説明した本発明の第2特徴構成をとることにより得られた作用・効果を得ることができる。
【0037】
本発明の第13特徴構成は、先に説明した燃料電池セル構造体を製造するに際して、これまで説明してきた燃料改質触媒を採用するに、前記担体に前記ニッケルとバナジウムを含浸担持する含浸担持工程を経て得られる含浸担持物を前記支持体の少なくとも一部に配置して前記改質部を得る点にある。
【0038】
このような製造方法をとることで、燃料電池セルを支持する支持体に本発明に係る燃料改質触媒を燃料電池セルユニットに配置するのに、含浸担持物を例えば塗布等の簡易な手法で配置して、燃料電池としての作動に有用な改質部を燃料電池セル構造体内に形成することができる。
本発明に係る燃料改質触媒は、含浸担持工程を実行するとともに、最終的には焼成等の加熱処理工程が必要となるが、この加熱処理工程を、燃料電池セル構造体に備えることとなる燃料電池セルの形成工程に重ねて、或いは、その前、後に行ってもよい。即ち、加熱処理工程に於ける温度、加熱時間等の条件が合致すれば、同じタイミングでの処理を行える。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】燃料電池システムの概略構成を示す図
図2】燃料電池モジュールの正面図及び要部断面図
図3】燃料電池セルユニットの外観視図
図4】燃料電池セルユニットの製造工程を示す図
図5】燃料電池セルユニット内に於けるガス反応系の説明図
図6】内部改質部の構成説明図
図7】実施例1のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図8】実施例2のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図9】実施例3のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図10】実施例4のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図11】参考例2のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図12】実施例5のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図13】参考例7のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図14】実施例6のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図15】参考例10のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図16】実施例7のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
図17】参考例12のXrd測定結果を示す図((a)は全走査領域を、(b)は一部走査領域を示す)
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る燃料改質触媒に関して、その構成、調整方法及び燃料改質性能の順に説明するとともに、この燃料改質触媒の使用に関して、図面を参照して、触媒を燃料電池システムに利用する場合に関して説明する。
【0041】
本発明の燃料改質触媒は、従来知られているように燃料電池本体となる燃料電池モジュールMとは独立に設けられる外部改質器34(外部改質部の一例)において原燃料ガスの改質に使用することができる他、燃料電池モジュールM内に多数備えられる燃料電池セルユニットU(燃料電池セル構造体の一例)内に内部改質触媒層Dを設ける構成(内部改質部の一例)でも良好に採用することができる。
【0042】
1.燃料改質触媒
構成
本発明に係る燃料改質触媒は、セリア系金属酸化物もしくはジルコニア系金属酸化物を主成分とする担体に少なくともニッケルとバナジウムを担持して構成される。
【0043】
(担体)
材料
担体をセリア系金属酸化物とする場合、担体の主成分(50重量%以上)を酸化セリウム(セリア)とし、ガドリニウム、サマリウム、イットリウムのうちの少なくともいずれか一つをドープしておいてもよい。
後述するGDC(ガドリニウムドープセリア)は、セリア系金属酸化物として、ガドリニウムがドープされた例である。
【0044】
担体をジルコニア系金属酸化物とする場合、担体の主成分(50重量%以上)を酸化ジルコニウム(ジルコニア)とし、イットリウム、スカンジウムのうちの少なくともいずれか一つで安定化したジルコニアであることも好ましい。
後述するYSZ(イットリア安定化ジルコニア)は、ジルコニア系金属酸化物として、ジルコニアにイットリアを固溶して蛍石型構造の結晶構造を安定化させた例である。
また、セリア系金属酸化物とジルコニア系金属酸化物との混合物としてもよい。
【0045】
燃料改質触媒に占める担体の割合
触媒全体に対する担体の割合は55重量%以上に調整すると好ましく、60重量%以上でるとより好ましく、65重量%以上であると更に好ましい。以下に紹介する実施例では、担体割合は概ね70重量%以上としている。従って、先に紹介した特許文献2に開示の触媒組成物に対する主成分(主にニッケル)の量は異なっている。
さらに、本発明においては、燃料改質触媒を構成する担体成分を問題とするが、この点に関しては、後に紹介するように、燃料電池用途に使用する場合に、燃料電池に用いる材料と大きく関係する。
【0046】
(触媒活性成分)
触媒活性成分としては、ニッケル及びバナジウムを共に使用する。
ニッケルの担持量は、0.5重量%以上とすることができ、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上とする。一方、35重量%未満、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下となる。
バナジウムの担持量は、前記ニッケルの担持量と同等以下とすることが好ましい。
【0047】
触媒活性成分の存在形態
別途実施したX線回折測定結果により、触媒調製後(使用前還元処理を施さない状態)の本発明の燃料改質触媒には、ニッケル及びバナジウムが、主に、酸化ニッケルと、ニッケルとバナジウムの複合酸化物の状態で存在していると考えられるが、ニッケルとバナジウムの複合酸化物については、Ni(V)、Ni1.5(VO)、Ni、Ni、(V1.8Ni0.2)O、その他の内の、幾つかの複合酸化物が混在して存在しているものと考えられる。図7(a)~10(a)、図7(b)~10(b)に下記する実施例1~4の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がCeOのピークを示し、さらに下向き黒三角はニッケルとバナジウムの複合酸化物のピークと想定される。
【0048】
バナジウム添加量が増えるにつれ黒丸●のNiOのピーク強度が減少し、下向き黒三角のニッケルとバナジウムの複合酸化物と想定されるピーク強度が増出した。また、バナジウム添加量の多い実施例4においては下向き三角▽のCe(VO)のピークを示した。
【0049】
図11(a)、図11(b)に下記する参考例2の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がCeOのピークを示した。
【0050】
図12(a)、図12(b)に下記する実施例5の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がGDCの、下向き三角▽がCe(VO)のピークを示し、さらに下向き黒三角はニッケルとバナジウムの複合酸化物のピークと想定される。
【0051】
図13(a)、図13(b)に下記する参考例7の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がGDCのピークを示した。
【0052】
図14(a)、図14(b)に下記する実施例6の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がZrOのピークを示し、さらに下向き黒三角はニッケルとバナジウムの複合酸化物のピークと想定される。
【0053】
図15(a)、図15(b)に下記する参考例10の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がZrOのピークを示した。
【0054】
図16(a)、図16(b)に下記する実施例7の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がYSZの、白丸○がYのピークを示し、さらに下向き黒三角はニッケルとバナジウムの複合酸化物のピークと想定される。
【0055】
図17(a)、図17(b)に下記する参考例12の触媒のXrd測定結果を示した。(a)は全走査領域の結果を、(b)は一部走査領域(2θが30~50degreeの領域)の結果である。これらの図において、黒丸●がNiOの、上向き黒三角がYSZのピークを示した。
【0056】
なお、本発明の燃料改質触媒を燃料改質反応に使用する前に、前処理として還元前処理を行う場合、上述の酸化物が還元されることになる。その結果、NiOはNiに還元され、ニッケルとバナジウムの複合酸化物は、それぞれの複合酸化物の形態に応じて生じる還元物が担体の表面に高分散に担持された状態となる。
【0057】
調製
燃料改質触媒の調製に際しては、目的とする触媒の組成に従って、水溶性のニッケル化合物(硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、クエン酸ニッケル等)及び水溶性のバナジウム化合物(オキシシュウ酸バナジウム、オキシ硫酸バナジウム、オキシ二塩化バナジウム、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム、塩化バナジウム、ヨウ化バナジウム、臭化バナジウム等)を定量し、ニッケル化合物とバナジウム化合物の両者を溶かした水溶液を得る。当該水溶液に所定量の担体粉(セリア、ジルコニア、GDC、YSZ)を投入し、撹拌、含浸した後、蒸発乾固、乾燥、その後、粉砕、成形した後、空気中で焼成する。この含侵が本発明にいう「含浸担持工程」であり、その結果物が「含浸担持物」である。
なお、下記の実施例の触媒は、硝酸ニッケル六水和物とオキシシュウ酸バナジウムを用いて調製した。
【0058】
上記の蒸発乾固や乾燥、焼成の温度は、一般的に用いられる温度域で実施できるが、下記の実施例の触媒は、それぞれ、80℃、60℃、800℃として調製した。
【0059】
この調製方法は、実施例のみならず触媒活性成分を異にする比較例や参考例においても、出発原料を異にするだけで同様であり、検討対象とする金属成分を含有する化合物の水溶液を得て、当該水溶液に担体を投入して、撹拌、含浸した後、蒸発乾固、乾燥、その後、粉砕成形した後、空気中で焼成を行うことで、目的物を得ることができる。
【0060】
実施例・参考例・比較例
表1、2に、検討対象とした実施例(1~7)、参考例(1~14)、比較例(1~13)の組成を示した。
これらの表は、実施例、参考例及び比較例の組成及びその物性、さらにはメタンの水蒸気改質性能(メタン転換率)を示したものである。
【0061】
表において、触媒の組成表記は〔活性触媒成分/担体成分〕とした。
活性触媒成分の記載は、第1金属(元素名)-第2金属(元素名)を原則としている。ただし、第1金属、第2金属に関して、それらなきものは記載していない。なお、第1金属、第2金属の担持量は、調製した各触媒をICP分析により得た金属元素量を記載している。
【0062】
担体の検討対象は、CeO(セリア)、ZrO(ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)とした。因みに、本願の実施例、比較例、参考例で用いたGDCに於けるガドリニウムのドープ量は10重量%程度であり、YSZにおけるイットリアの固溶量は8mol%程度とした。
【0063】
表1の横軸は、担体の種別、第1金属担持量(重量%;表ではwt.%と表記)、第2金属担持量(重量%;表ではwt.%と表記)、CO吸着量(Nml/g)、BET表面積(m/g)としている。
なお、CO吸着量については、触媒を350℃で水素雰囲気下1時間の還元前処理を施した後に、CO吸着量を測定した。
【0064】
この表からも判明するように、触媒活性成分の検討対象は、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)としている。
【0065】
ここで、第1金属としたニッケルの担持量は0.5~30重量%程度とし、第2金属としてバナジウムの担持量は1~10重量%程度とした。さらに、第2金属としての比較対象の担持量はニッケル-バナジウムの組み合わせと同程度の3~10重量%程度とした。
【0066】
また、比較として従来のニッケル担持アルミナ触媒(市販品)の試験も行い、比較例13とした。
【0067】
【表1】
【0068】
(改質活性試験)
触媒活性試験は固定床流通式反応器を用いて行った。
試験条件は以下の通りである。
前処理;活性試験前に前処理として水素中600℃で還元前処理を行った。
改質活性試験
各サンプルを反応管に充填し、GHSV10000 H-1の条件で、原燃料ガスとしてのメタンと水蒸気を供給して、触媒層の出口温度が600℃~800℃となるように反応管の温度を制御して、原燃料ガスの改質反応を行った。なお、反応管に導入するガスのS/C比〔水蒸気のモル数/原燃料ガス中のカーボンのモル数〕は2.5とした。
反応管出口ガスに対してガスクロマトグラフを用いて組成分析を行った。
同表において横軸は温度であり、600℃から800℃まで50℃毎に触媒層の出口温度を変更しながら触媒活性試験を行った結果を示した。
【0069】
試験結果
表2に各試験条件でのメタン転換率(%)を示した。
メタンの転換率の定義は、以下の通りである。
(入口メタン流量-出口メタン流量)/入口メタン流量×100
【0070】
【表2】
なお、表中の「-」は改質反応が起こらなかったことを示している。
【0071】
上記試験結果から以下のことが判明した。
1.第1活性成分としてニッケルを第2活性成分としてバナジウムを担持する触媒において、担体として、セリア、GDC,ジルコニア、YSZを使用する触媒は、いずれも実用上良好な高い改質性能(ここではメタン転換率)を示す。
2.第1活性成分としてニッケルを第2活性成分としてバナジウムを担持した触媒は、ニッケルのみを担持した触媒に対して改質性能が高い。
3.第1活性成分としてニッケルを担持し、第2活性成分を担持する触媒において、バナジウムを担持する触媒が今回検討対象とした他の金属を担持した触媒より改質性能が高い。
4.第1活性成分としてニッケルを第2活性成分としてバナジウムを担持する触媒において、担体として、セリア、GDC,ジルコニア、YSZを使用する触媒において、ニッケルの担持量は0.5~30重量%程度でよい。また、バナジウムの担持量は1~10重量%程度でよい。
5.アルミナにニッケルを担持した従来の触媒よりも、第1活性成分としてニッケルを第2活性成分としてバナジウムを、セリア、GDC,ジルコニア、YSZの各担体に担持した触媒の方が改質性能が高い。
【0072】
以上より、これまで説明してきたように、燃料改質触媒として、セリア系金属酸化物もしくはジルコニア系金属酸化物を主成分とする担体に少なくともニッケルとバナジウムを担持した燃料改質触媒を採用することが好ましい。
【0073】
以下、特許文献2に開示の「水蒸気改質触媒組成物」との差異に関して説明しておく。
段落〔0024〕〔0038〕〔0039〕から明らかなように、この組成物はニッケルを含む粒子の表面に、(a):バナジウム酸化物もしくはバナジウム・ニッケル複合酸化物と、(b):ケイ素酸化物及びジルコニア酸化物の両方、とが存在するものである。ケイ素酸化物及びジルコニア酸化物は触媒の担体ではなく、ニッケルを含む粉末にバナジウムを含浸させたコア粒子の表面に存在する表面酸化物である。つまり、ニッケルを含む粒子が担体としての機能を有しており、その表面に(a)が含浸担持され、更に(b)が表面に付加されたものと言える。しかも、段落〔0030〕に記載されているように、ケイ素酸化物及びジルコニア酸化物の含有量は、コアとなるバナジウムを含浸させたニッケルを含む粉末100重量%に対して、2~15重量%が好ましいとされていることからケイ素酸化物及びジルコニア酸化物は、明らかに担体では無い。また、同段落に記載されているように、ケイ素酸化物及びジルコニア酸化物は、コアとなるバナジウムを含浸させたニッケルを含む粉末の表面の20%以上100%以下を被覆する被覆物であることが記載されている。また、微小クラックがあれば表面被覆率が100%であっても良いと記載されている。
加えて、製造方法は、バナジン酸アンモニウム水溶液に、水酸化ニッケル粉又は酸化ニッケル粉を添加してバナジウムを含浸吸着、蒸発乾固させて触媒粒子を焼成して触媒組成物を得ている。
このように、触媒組成物の核となる材料が水酸化ニッケル粉又は酸化ニッケル粉であるから、ニッケルの使用量を減らすことは不可能である。
【0074】
また、段落〔0030〕に記載されているように、ケイ素酸化物及びジルコニア酸化物の含有量は、コアとなるバナジウムを含浸させたニッケルを含む粉末100重量%に対して、2~15重量%が好ましいとされているから、コアとなるバナジウムを含浸させたニッケルを含む粉末は約85~98重量%となる。また、段落〔0023〕に記載されているように、バナジウムは水蒸気改質触媒活性成分100mol%に対して1mol%以上100mol%以下であることが記載されているから、当該明細書の図3図4より触媒組成物のニッケルはNiかNiOであることを踏まえると、約85~98重量%の半分以上がニッケルか酸化ニッケルであることが分かり、触媒組成物のNi含有量は、少なくとも40重量%程度以上と計算される。
以上より、「水蒸気改質触媒組成物」はその製造工程が複雑となり、同時にニッケル量も多い。これらの点から、後述する内部改質部には採用しづらい。
【0075】
2. 燃料改質触媒の使用
以下、図1図6を参照して、本発明に係る燃料改質触媒を改質部(外部改質器34及び内部改質触媒層D)の両方に使用する実施形態に関して説明する。
説明は、燃料電池システムYの全体構成、燃料電池システムYの中核を成す燃料電池モジュールM、多数併設されて燃料電池モジュールMを構成する燃料電池セルユニットU、燃料電池セルRの順に説明する。
【0076】
先にも示したように、本発明において、燃料電池セルユニットUは、金属支持体1(支持体の一例)に支持される燃料電池セルRと、当該燃料電池セルユニットUに設けられるガス供給路(還元性ガス供給路L1(燃料ガス供給路の一例)及び酸化性ガス供給路L2)を形成可能に構成されている。前記燃料電池セルRは電解質層Bを挟んでアノード電極層Aとカソード電極層Cが形成された構成とされ、燃料電池セルユニットUは金属支持体1の片側に燃料電池セルRを備え、他方の側に、これまで説明してきた改質部としての内部改質部である内部改質触媒層Dを備えて構成される。
【0077】
燃料電池システムY
図1に示すように、燃料電池システムYは燃料電池モジュールMを中核として構成されている。この燃料電池モジュールMは燃料電池(具体的には燃料電池セルR)を備えることにより、少なくとも水素を含有する還元性ガス(燃料ガスの一例)及び少なくとも酸素を含有する酸化性ガスの供給を受けて発電する。発電は高温状態での発熱反応となる。結果、燃料電池システムYは、電力と熱の両方を発生・供給可能な、所謂「コジェネレーションシステム」となっている。
【0078】
燃料電池システムYにおいて、発電電力はインバータ38を介して出力され、熱は排ガスの保有する熱を熱交換器36により温水として回収される。インバータ38は、例えば、燃料電池モジュールMの直流を変換して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧および同じ周波数に変換して出力する。制御部39は、このインバータ38を適宜制御する他、燃料電池システムYを構成している各機器の作動を制御する。
【0079】
燃料電池システムYは、発電の用を担う燃料電池モジュールMに対して、還元性ガス供給用の主な機器として、昇圧ポンプ30、脱硫器31、改質水タンク32、気化器33及び外部改質器34を備えている。酸化性ガス供給用の主要機器はブロア35であり、このブロア35により空気を吸引して酸素を含有する酸化性ガスが供給可能となっている。
【0080】
還元性ガスの供給系統に関してさらに説明すると、都市ガス等の炭化水素系の原燃料ガス(主成分はメタン)が昇圧ポンプ30により吸引されるとともに昇圧されて燃料電池モジュールMに送られる。都市ガスには硫黄化合物成分が含有されているため、脱硫器31においてこの硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料ガスは、気化器33の上流側で改質水タンク32から供給される改質水と混合され、気化器33において水は水蒸気とされる。
【0081】
原燃料ガスと水蒸気とは外部改質器34に送られ、原燃料ガスは水蒸気改質される。この水蒸気改質反応は、改質器内に収納される改質触媒(本発明に係る燃料改質触媒である)による反応であり、後述する内部改質反応と同様に、炭化水素系の原燃料ガス(例えばメタンやエタン、プロパン、ブタンなど)が改質され、少なくとも水素を含有する水素リッチなガス(改質ガス)が生成され、燃料電池セルRで発電の用に供される。なお、ここでは、一部の未反応のメタンも改質ガスに含まれている。
【0082】
図2に燃料電池モジュールMの正面図及び断面図を示すが、図1図2からも判明するように、この例の燃料電池モジュールMは概略直方型に構成され、燃料電池システムYは一の筐体10内にこの燃料電池モジュールM、外部改質器34、気化器33等を備えて構成されている。
【0083】
この構成では、外部改質器34及び気化器33が燃料電池モジュールMが収納される筐体10内に位置されるため、燃料電池モジュールMの熱が有効に利用できる。即ち、燃料電池モジュールMは、その上部に水素を含有する排ガスの燃焼部101が設けられており、この部位101で燃料電池の排ガスに含まれる残余の燃焼成分(具体的には水素、一酸化炭素及びメタン)を燃焼して、その熱を水蒸気改質及び気化に利用する。
【0084】
以下、筐体10内における、燃料電池セルユニットU或いは燃料電池セルRに備えられる各電極層(アノード電極層A及びカソード電極層C)への水素を含有する還元性ガスの供給、酸素を含有する酸化性ガスの供給に関して説明する。
【0085】
図1に戻ってその概略を説明すると、外部改質器34の下流側にはガスマニホールド102が設けられ、原燃料ガスを含む改質ガスが、燃料電池セルユニットUに備えられる還元性ガス供給路L1に分配供給され、この供給路L1からアノード電極層Aに水素を含有するガスが供給される。
【0086】
一方、酸素の酸化性ガス供給路L2への供給は、ブロア35により空気を筐体10内に吸引し、吸引された酸素を含む酸化性ガスを、燃料電池セルユニットU、集電板CPそれぞれに設けられた酸化性ガス供給路L2を介してカソード電極層Cに供給するように構成されている(図5参照)。この実施形態では、燃料電池モジュールMと外部改質器34との間が燃焼部101としているため、ブロア35により吸引された空気は、燃焼部101における残余の燃料の燃焼にも利用される。
【0087】
このようにして所定の電池反応、燃焼反応により発生する排ガスは熱交換器36に送られ、所定の熱利用の用に供される。ここで、筐体10の排気口103に設けられている機器103aは、排ガス処理用の機器である。
【0088】
<燃料電池モジュールM>
図2(a)に燃料電池モジュールMの正面図を示し、図2(b)に、その断面図(図2(a)のII-II断面)を示した。さらに図3に、燃料電池セルR側からみた燃料電池セルユニットUの斜視図を、図4にその製造順を示した。
【0089】
ここで、燃料電池モジュールMは、燃料電池セルユニットUの複数を横方向(図2(a)の左右方向)に積層して構成される。この燃料電池セルユニットUは、それぞれ、具体的には、先に説明したガスマニホールド102に立設置した構造とされる。即ち、燃料電池セルRを支持する金属支持体1をガスマニホールド102に立設することで、燃料電池モジュールMを構築してある。
【0090】
図2(b)、図3に示すように、金属支持体1は、その立設状態で上下方向に延びる還元性ガス供給路L1を備えて構成される筒状に形成する。一方、この金属支持体1に電気的に接続される形態で、凹凸形状の集電板CPが備えられ、集電板CPが通気性を有することで、燃料電池モジュールMの周部に吸引された酸化性ガス(具体的には空気)を燃料電池セルRのカソード電極層Cまで到達させる。
【0091】
即ち、燃料電池モジュールMは、複数の燃料電池セルユニットU、ガスマニホールド102、集電板CP、終端部材104および電流引出し部105を備えて構成される。
【0092】
燃料電池セルユニットUは、中空の筒である金属支持体1の一方の面に燃料電池セルRを備え、全体として長尺な平板状あるいは平棒状の形状とされる。そして燃料電池セルユニットUの長手方向の一方の端部が、ガスマニホールド102に対してガラスシール材等の接着部材により固定される。金属支持体1とガスマニホールド102との間は電気的に絶縁されている。
【0093】
このように、複数の燃料電池セルユニットUを、一の燃料電池セルユニットUの金属支持体1の背面に他の燃料電池セルユニットUの集電板CPとが接触する状態で積層することで、所定の電気的出力を取り出すことができる。
【0094】
集電板CPには、導電性、ガス透過性及び燃料電池セルユニットUの積層並列配置の方向に弾性を有する部材を用いる。例えば集電板CPには、金属箔を用いたエキスパンドメタルや金属メッシュ、フェルト様部材が用いられる。これによりブロア35から供給される空気が集電板CPを透過または通流して燃料電池セルRのカソード電極層Cに供給することができる。本発明では、燃料電池セルユニットUを構成して、この集電板CPを通過して酸素を含有するガスが流れる流路を酸化性ガス供給路L2と呼ぶ(図5参照)。
【0095】
また集電板CPが燃料電池セルユニットUの並列配置の方向に弾性を有するので、ガスマニホールド102に片持ち支持された金属支持体1は並列配置の方向にも変位することができ、振動や温度変化等の外乱に対する燃料電池モジュールMのロバスト性が高められる。
【0096】
並列配置された複数の燃料電池セルユニットUは、一対の終端部材104に挟持されている。終端部材104は、導電性を有し弾性変形可能な部材であり、その下端がガスマニホールド102に固定されている。終端部材104には、燃料電池セルユニットUの並列配置の方向に沿って外側に向けて延びる電流引出し部105が接続されている。電流引出し部105はインバータ38に接続され、燃料電池セルRの発電により生じる電流をインバータ38へ送る。
【0097】
<燃料電池セルユニットU>
これまでも説明したように、燃料電池セルユニットUは、導電性を有する金属支持体1と、燃料電池セルRとを備えて構成されており、燃料電池セルRは、電解質層Bを挟んだ状態で、アノード電極層Aと、カソード電極層Cとを少なくとも有して構成されている。
燃料電池セルRの詳細に関して、以下順に詳述する。
【0098】
<金属支持体1>
図2図3に示すように、この例の金属支持体1は、長方形の平板部材72と、長手方向に直交する断面がU字状のU字部材73と、蓋部74とを備えて構成されている。平板部材72の長辺とU字部材73の長辺(U字の2つの頂点に対応する辺)とが接合され、一方の端部(図示するものでは上端側)が蓋部74で塞がれている。これにより、内部に空間を有し全体として平板あるいは平棒状の金属支持体1が構成される。平板部材72は、金属支持体1の中心軸に対して平行に配置される。
【0099】
金属支持体1の内部空間が、これまで説明してきた還元性ガス供給路L1とされる。蓋部74には、還元性ガス供給路L1を流れたガスが金属支持体1の外部に排出する排ガス排出口77が設けられる。この排ガス排出口77の排出側(上側)が、先に説明した燃焼部101となる。蓋部74が設けられる端部とは逆側(下側であって、先に説明したガスマニホールド102に接続される部位)の端部は開口しており、還元性ガス供給路L1の入口とされる。
【0100】
平板部材72、U字部材73および蓋部74の材料としては、導電性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル基合金などが用いられる。すなわち金属支持体1は堅牢に構成される。特にフェライト系ステンレス鋼が好適に用いられる。
【0101】
金属支持体1の材料にフェライト系ステンレス鋼を用いた場合、燃料電池セルRにて材料に用いられるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア、CGOとも呼ばれる)等と熱膨張係数が近くなる。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も燃料電池セルユニットUがダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた燃料電池セルRを実現できるので好ましい。
本発明では、燃料電池セルRと金属支持体1との関係、及び、後述する内部改質部(内部改質触媒層D)との関係において、材料選択を適切に行うことにより、熱膨張係数について、上記同様に熱膨張係数が近くなる。結果、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も燃料電池セルユニットUがダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた内部改質部を実現できる。
【0102】
なお金属支持体1の材料としては、熱伝導率が3Wm-1-1を上回る材料を用いることが好ましく、10Wm-1-1を上回る材料であればさらに好ましい。例えばステンレス鋼であれば熱伝導率が15~30Wm-1-1程度であるため、金属支持体1の材料として好適である。
【0103】
また、金属支持体1の材料としては、脆性破壊を起こさない高靱性材料であることがさらに望ましい。セラミックス材料などと比較して金属材料は高靱性であり、金属支持体1として好適である。
【0104】
図4からも判明するように、平板部材72には、平板部材72の表面と裏面とを貫通して複数の貫通孔78を設ける。この貫通孔78を通して金属支持体1の内側と外側との間でガスの通流が可能となっている。他方、平板部材72やU字部材73における貫通孔78が設けられない領域は、金属支持体1の内側と外側との間でガスが通流できない。
【0105】
図5に示すように、金属支持体1の一方に面(図3において表側、図5において上側)に燃料電池セルRが設けるが、この燃料電池セルRを配置する金属支持体1の表面には金属酸化物層xを設けている。このように金属酸化物層xを設けることで、金属支持体1とアノード電極層A及び電解質層Bとの間の構成元素の相互拡散を防止することができる。即ち、この金属酸化物層xは、拡散抑制層として働く。このような拡散抑制層について、本例では、燃料電池セルRに対して3層x、y、zを設けている。これら3層x、y、zを図5に示した。
【0106】
<燃料電池セル>
燃料電池セルRは、アノード電極層A、電解質層B、カソード電極層Cと、これらの層の間に適宜拡散抑制層y、zを有して構成される。この燃料電池セルRは、固体酸化物形燃料電池SOFCである。この実施形態として示す燃料電池セルRは拡散抑制層y、zを備えることにより、電解質層Bは、アノード電極層Aとカソード電極層Cとで間接的に挟まれた構造となる。電池発電のみを発生させるという意味からは、電解質層Bの一方の面にアノード電極層Aを、他方の面にカソード電極層Cを形成することで、発電することは可能である。即ち、少なくともこれら3層A,B,Cを備えることで燃料電池となる。
【0107】
<アノード電極層>
アノード電極層Aは、図3図5等に示すように、金属支持体1の表側であって貫通孔78が設けられた領域より大きな領域に、薄層の状態で設けることができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。貫通孔78が設けられた領域の全体が、アノード電極層Aに覆われている。つまり、貫通孔78は金属支持体1におけるアノード電極層Aが形成された領域の内側に形成されている。換言すれば、全ての貫通孔78がアノード電極層Aに面して設けられている。
【0108】
アノード電極層Aの材料としては、例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用いることができる。これらの例では、GDC、YSZ、CeOを複合材の骨材と呼ぶことができる。なお、アノード電極層Aは、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法やパルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに、良好なアノード電極層Aが得られる。そのため、金属支持体1を傷めることなく、また、金属支持体1とアノード電極層Aとの元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
なお、このアノード電極層Aに含むNiの量は、35重量%以上85重量%以下の範囲とできる。また、アノード電極層Aに含むNiの量は、発電性能をより高められるので、40重量%より多いとより好ましく、45重量%より多いと更に好ましい。一方、コストダウンし易くなるので、80重量%以下であるとより好ましい。
【0109】
アノード電極層Aは、ガス透過性を持たせるため、その内部および表面に複数の細孔(図示省略)を有する。すなわちアノード電極層Aは、多孔質な層として形成する。アノード電極層Aは、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。なお緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1-空孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
【0110】
(中間層)
中間層yは、図5に示すように、アノード電極層Aを覆った状態で、アノード電極層Aの上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは4μm~25μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な中間層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。中間層yの材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にセリア系のセラミックスが好適に用いられる。
【0111】
中間層yは、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに中間層yが得られる。そのため、金属支持体1を傷めることなく、金属支持体1とアノード電極層Aとの元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた燃料電池セルRを実現できる。また、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0112】
中間層yは、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有する。また、酸素イオン(酸化物イオン)と電子との混合伝導性を有すると更に好ましい。これらの性質を有する中間層yは、燃料電池セルRへの適用に適している。
【0113】
(電解質層)
電解質層Bは、アノード電極層Aおよび中間層yを覆った状態で、中間層yの上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成することもできる。詳しくは電解質層Bは、図3図5等に示すように、中間層yの上と金属支持体1の上とにわたって(跨って)設けられる。このように構成し、電解質層Bを金属支持体1に接合することで、電気化学素子全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
【0114】
また電解質層Bは、金属支持体1の表側であって貫通孔78が設けられた領域より大きな領域に設けられる。つまり、貫通孔78は金属支持体1における電解質層Bが形成された領域の内側に形成されている。
【0115】
また電解質層Bの周囲においては、アノード電極層Aおよび中間層yからのガスのリークを抑制することができる。説明すると、発電時には、金属支持体1の裏側から貫通孔78を通じてアノード電極層Aへガスが供給される。電解質層Bが金属支持体1に接している部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。なお、本実施形態では電解質層Bによってアノード電極層Aの周囲をすべて覆っているが、アノード電極層Aおよび中間層yの上部に電解質層Bを設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
【0116】
電解質層Bの材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層Bをジルコニア系セラミックスとすると、燃料電池セルRを用いたSOFCの稼働温度をセリア系セラミックスに比べて高くすることができる。SOFCとする場合、電解質層Bの材料としてYSZのような650℃程度以上の高温域でも高い電解質性能を発揮できる材料を用い、システムの原燃料ガスに都市ガスやLPG等の炭化水素系の原燃料を用い、原燃料ガスを水蒸気改質等によってSOFCの還元性ガスとするシステム構成とすると、SOFCのセルスタックで生じる熱を原燃料ガスの改質に用いる高効率なSOFCシステムを構築することができる。
【0117】
電解質層Bは、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃を越える高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層Bが得られる。そのため、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1とアノード電極層Aとの元素相互拡散を抑制することができ、性能・耐久性に優れた燃料電池セルRを実現できる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、スプレーコーティング法を用いると、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層が低温域で容易に得られやすいので更に好ましい。
【0118】
電解質層Bは、還元性ガスや酸化性ガスのガスリークを遮蔽し、かつ、高いイオン伝導性を発現するために、緻密に構成される。電解質層Bの緻密度は90%以上が好ましく、95%以上であるとより好ましく、98%以上であると更に好ましい。電解質層Bは、均一な層である場合は、その緻密度が95%以上であると好ましく、98%以上であるとより好ましい。また、電解質層Bが、複数の層状に構成されているような場合は、そのうちの少なくとも一部が、緻密度が98%以上である層(緻密電解質層)を含んでいると好ましく、99%以上である層(緻密電解質層)を含んでいるとより好ましい。このような緻密電解質層が電解質層の一部に含まれていると、電解質層が複数の層状に構成されている場合であっても、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層を形成しやすくできるからである。
【0119】
(反応防止層)
反応防止層zは、電解質層Bの上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは3μm~15μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な反応防止層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。反応防止層zの材料としては、電解質層Bの成分とカソード電極層Cの成分との間の反応を防止できる材料であれば良いが、例えばセリア系材料等が用いられる。また反応防止層zの材料として、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有する材料が好適に用いられる。なお、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有し、これら元素の含有率の合計が1.0重量%以上10重量%以下であるとよい。反応防止層zを電解質層Bとカソード電極層Cとの間に導入することにより、カソード電極層Cの構成材料と電解質層Bの構成材料との反応が効果的に抑制され(拡散抑制)、燃料電池セルRの性能の長期安定性を向上できる。反応防止層zの形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1とアノード電極層Aとの元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた燃料電池セルRを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0120】
(カソード電極層)
カソード電極層Cは、電解質層Bもしくは反応防止層zの上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価なカソード電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。カソード電極層Cの材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物、セリア系酸化物およびこれらの混合物を用いることができる。特にカソード電極層Cが、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。以上の材料を用いて構成されるカソード電極層Cは、カソードとして機能する。
【0121】
なお、カソード電極層Cの形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1とアノード電極層Aとの元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた燃料電池セルRを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PDV法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0122】
以上が、燃料電池の基本構成に関する説明であるが、以下、本実施形態の燃料電池セルユニットUの特徴構成に関して、主に図3図5を使用して説明する。
これまでも説明してきたように、本実施形態では、金属支持体1内に、アノード電極層Aに水素を含有する燃料ガスを供給する燃料ガス供給路である還元性ガス供給路L1が形成されている。そして、図3に一点鎖線矢印でも示すようにこの供給路L1におけるガスは、金属支持体1の軸方向開口側(下側)から軸方向蓋体部側(上側)への一方向とされる。平板部材72の表裏を貫通して設けられた貫通孔78を介して、アノード電極層Aに発電反応用の水素Hを供給できる。ここで、燃料電池セルR中に於ける発電反応は、公知の電池反応であるが、この反応に伴って、アノード電極層Aから貫通孔78には、水分(水蒸気)HOが放出される。結果、本発明の還元性ガス供給路L1は、水素Hを含有するガスを供給する供給部L3bとなっていると同時に、水分(水蒸気)HOの排出部L3a伴っているのである。
【0123】
そこで、図2(b)、図5に示すように、金属支持体1の内面に、内部改質触媒層Dを設けている。先に説明した本発明独特の燃料改質触媒を塗布している。
【0124】
還元性ガス供給路L1には、外部改質により得られる水素の他、改質対象となる改質前ガス(原燃料ガスであり、具体的にはメタンCH)を流通するが、アノード電極層Aで生成される水分(水蒸気)HOを内部改質触媒層Dに戻すことで水蒸気改質を行い、下流側(図5の場合は紙面裏側)に位置する貫通孔78から水素Hをアノード電極層Aへ供給して発電を行うことが可能となる。そこで、内部改質燃料供給路L3として、生成される水蒸気HOの排出部L3aと、内部改質された水素Hの供給部L3bを備えて構成することとなる。なお、排出部L3aは供給部L3bとしての機能を同時に担うこともできる構成とし、供給部L3bが排出部L3aとしての機能を同時に担うこととなる。
【0125】
内部改質触媒層Dの材料としては、先に説明した本発明に係る燃料改質触媒を使用する。即ち、内部改質触媒層Dとする部位に配置する。この触媒は比表面積の比較的高い通気可能な状態となる。
【0126】
なお、この内部改質触媒層Dは、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)などにより形成することが好ましい。例えば、本発明に係る燃料改質触媒の粉末を有機系分散媒と混合して得たスラリーを所望の部位に塗布し、焼成することで内部改質触媒層Dを形成することができる。このような低温域で使用可能なプロセスにより、内部改質触媒層Dを設ける還元性ガス供給路L1の高温加熱によるダメージを抑制しつつ、良好な内部改質触媒層Dを形成し、耐久性に優れた燃料電池セルユニットUを実現できるからである。また、金属支持体1の表面に拡散抑制層xを形成した後、内部改質触媒層Dを形成すると、金属支持体1からのCrの飛散を抑制できるので好ましい。
【0127】
このような内部改質触媒層Dは、その厚さを、例えば、1μm以上にすると好ましく、2μm以上にするとより好ましく、5μm以上にすると更に好ましい。このような厚さにすることで、燃料ガスや水蒸気との接触面積を増やして、内部改質率を高められるからである。また、その厚さを、例えば、500μm以下にすると好ましく、300μm以下にするとより好ましく、100μm以下にすると更に好ましい。このような厚さにすることで、高価な内部改質触媒材料の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。
【0128】
再度、図5に戻って、この内部改質触媒層Dでの水蒸気改質反応に関して簡単に説明しておく。同図に示すように、燃料電池セルユニットUに内部改質触媒層Dを設けることで、還元性ガス供給路L1に供給される原燃料ガスであるメタンCHを以下のように改質して、燃料ガスとなる水素H、一酸化炭素COを生成することができる。
【0129】
〔化1〕
CH+HO→CO+3H
〔化2〕
CO+HO→CO+H
〔化3〕
CH+2HO→CO+4H
【0130】
この還元性ガス供給路L1(内部改質触媒層D)の温度は、事実上、燃料電池セルRの作動温度(SOFCの作動温度)である600℃~900℃となっている。これまで説明してきた実施形態の燃料電池セルユニットUの燃料電池としての機能構成を模式的に示すと、図6(a)に示す構造となる。
【0131】
このような構造を採用することにより、金属支持体1内で、アノード電極層Aから排出される水分(水蒸気)HOを利用して、水蒸気改質を起こさせ、改質により得られる水素H2および一酸化炭素COを発電用燃料ガスとしてアノード電極層Aに供給・利用することができる。
【0132】
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、燃料電池セルユニットUが金属支持体1を備え、この金属支持体1により燃料電池セルRが支持されるとともに、ガス供給路L1,L2が形成される例を示した。そして、還元性ガス供給路L1に本発明に係る燃料改質触媒を配置して、燃料改質を燃料電池セルRが一体化された構造体内で実行するものとした。
しかしながら、燃料電池の作動においては、各電極に発電に必要となるガスを供給できればよく、燃料電池セル自体が自立型とされ、各供給路を備えて構成される場合もある。
このような構成にあっては、燃料電池セル自体或いはこれと一体に本発明に係る燃料改質触媒を備え、当該部位で原燃料ガスの改質を行ってもよい。
そこで、本発明にあっては、燃料電池セルRと一体に構造体として備えられる改質部を内部改質部と呼び、その構造体を燃料電池セル構造体と呼ぶ。
【0133】
(2)上記の実施形態では、本発明に係る燃料改質触媒を、燃料電池システムYにおいて改質部となる外部改質部(具体的には外部改質器34)及び内部改質部(具体的には内部改質触媒層D)の両方に採用する例を示したが、燃料電池システムYとしては、燃料電池に必要となる還元性ガス(燃料ガスとなる改質ガス)を発電に見合って供給できればよく、外部改質部或いは内部改質部の何れか一方を備える構成としてもよい。
1.外部改質
外部改質部のみを備える場合は、原燃料ガスのほぼ全てを改質して改質ガスを燃料ガスとして燃料電池セルユニットUに供給することとなる。
2.内部改質
内部改質部のみを備える場合は、還元性ガス供給路L1に原燃料ガス及び水蒸気を供給する状態で、燃料電池セル構造体内で、原燃料ガスの改質を実行し、水素リッチな改質ガスを燃料ガスとして燃料電池セルRのアノード電極層A側に到達する構成をとることとなる。
さらに、これまでも説明してきたように、燃料電池の発電反応により発生する水分(水蒸気)を還元性ガス(燃料ガス)の流れ方向、下流側で改質に利用しようとする場合は、図6(a)(b)の構成となる。
【0134】
(3)上記の実施形態では、本発明に係る燃料改質触媒を燃料電池セルユニットU内に配置する(内部改質部を設ける)構造として、金属支持体1に於ける還元性ガス供給路L1の全領域に配置する例を示した。これまでも説明してきたように、図6(a)は、この構造を示す模式図である。
これに対して、改質部を燃料電池セルユニットU内に設ける場合に、本発明に係る燃料改質触媒の配置位置を制限することで、使用する触媒量を低減して、コスト低減を図ることもできる。即ち、燃料電池での発電に伴って発生する水蒸気を改質に利用する場合、図6(b)に示すように、還元性ガス供給路L1において、最も上流側に位置する貫通孔78より下手側(下流側)となる位置にのみ設けるものとしてもよい。このように構成することで、貴重な燃料改質触媒の量を低減できる。
【0135】
また、図6(a)(b)に示す例においては、燃料電池が発電することにより生成される水蒸気を改質に使用する例を示したが、この水蒸気ではなく、燃料電池セルユニットUに供給される原燃料ガス、あるいは当該原燃料ガスを含む改質ガスと共存する水蒸気のみ(外部から供給する水蒸気のみ)により燃料改質を実行する構造としてもよい。
即ち、燃料電池セルRに対して、還元性ガス供給路L1の上流側に燃料改質触媒が配置される改質部(内部改質触媒層D)を設けるとともに、その改質部から燃料電池セルRに改質ガスが供給されるものとし、燃料電池セルRから放出されるガスに関しては、別途、独立に排出する構成としてもよい。このような構成例が図6(c)の構成となる。
【0136】
(4)上記(3)が内部改質部を設ける場合の模式例であるが、図2図4に示す例では、金属支持体1の内部に形成される還元性ガス供給路L1の、流路断面全周に設ける例を示しているが、この改質部は還元性ガス供給路L1を流れるガスの接触できる位置に設けられていればよく、燃料電池セルRの形成面とは反対側となる面のみ、或いは、当該反対側の面に対向する面のみに設けておいてもよい。
【0137】
(5)さらに、内部改質部とする部位は、金属支持体1に形成される貫通孔78の内面としてもよい。
【0138】
(6)上記の実施形態では、燃料電池セルユニットUに金属支持体1を使用する例を示したが、支持体としては、金属の他、セラミックとしてもよい。そこで、燃料電池セル構造体において燃料電池セルRを支持する構造体を単に支持体と呼ぶ。
【0139】
(7)上記の実施形態では、粉末の担体を使用する例を示したが、ある程度の大きさに成形した担体(例えば、直径数mmの球状体)をニッケル成分やバナジウム成分を含有する水溶液に添加して含浸担持させ、更に乾燥や焼成等の行程を必要に応じて行うことで、本発明に係る燃料改質触媒を得ることもできる。
【0140】
(8)上記の実施形態では、例えばメタンやエタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素ガスを原燃料として使用する例を示したが、原燃料としては、天然ガス、ナフサ、灯油等の炭化水素類や、メタノールやエタノール等のアルコール類、DME等のエーテル類などを原燃料として改質する際の燃料改質触媒として、本発明に係る燃料改質触媒を使用することもできる。
【0141】
(9)上記の実施形態では、本発明に係る燃料改質触媒を固体酸化物形燃料電池のシステムや燃料電池セル構造体に使用する例を示したが、固体高分子形燃料電池やリン酸形燃料電池や溶融炭酸塩形燃料電池等の固体酸化物形燃料電池以外の燃料電池を用いる燃料電池システムの外部改質部に本発明に係る燃料改質触媒を使用することもできるし、溶融炭酸塩形燃料電池等の固体酸化物形燃料電池以外の燃料電池セル構造体に本発明に係る燃料改質触媒を使用することもできる。
【0142】
(10)上記の実施形態では、本発明に係る燃料改質触媒をメタンの水蒸気改質反応に使用する例を示したが、水蒸気改質反応以外の部分燃焼(酸化)改質反応やドライリフォーミング反応および、それらの各燃料改質反応を組み合わせた燃料改質反応にも本発明に係る燃料改質触媒を使用することもできる。
【符号の説明】
【0143】
1 金属支持体(支持体)
34 外部改質器(外部改質部;改質部)
A アノード電極
B 電解質層
C カソード電極
D 内部改質触媒層(内部改質部;改質部)
L1 還元性ガス供給路(燃料ガス供給路)
L2 酸化性ガス供給路
R 燃料電池セル
U 燃料電池セルユニット(燃料電池セル構造体)
Y 燃料電池システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17