(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】温度取得装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/24 20060101AFI20231128BHJP
H03M 1/10 20060101ALI20231128BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G01K7/24 M
H03M1/10 C
H03M1/12 A
G01K7/24 D
(21)【出願番号】P 2020019599
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】曽我 浩二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇文
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-064372(JP,A)
【文献】特開2001-244813(JP,A)
【文献】特開平01-101020(JP,A)
【文献】特開平02-254330(JP,A)
【文献】特開2010-188952(JP,A)
【文献】特開2009-103546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H03M 1/00-1/88
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサが接続される複数の入力ポートを備え、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧をデジタル値に変換することによって、複数の前記温度センサで検出された温度を取得する温度取得装置において、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートに接続されることによって、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧で充電されるコンデンサと、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートを選択して、前記コンデンサに接続するセレクタと、
前記コンデンサの端子間電圧をデジタル値に変換するAD変換器と、
前記セレクタが前記コンデンサに接続される前記入力ポートを切り換える動作と、前記AD変換器が前記コンデンサの前記端子間電圧を前記デジタル値に変換する動作とを制御することによって、複数の前記温度センサの出力電圧を前記デジタル値で取得する制御部と
を備え、
前記複数の入力ポートの中の少なくとも1つの前記入力ポートには、他の前記入力ポートと同じ前記温度センサが接続されており、
前記制御部は、
同じ前記温度センサが接続された前記入力ポートである重複ポートが連続しない順序で、前記複数の入力ポートを前記セレクタに選択させると共に、
前記重複ポートのそれぞれの入力ポートから得られた出力電圧の電圧差が所定の許容値より大きかった場合は、前記重複ポートの何れかで故障が発生していると判断する
ことを特徴とする温度取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度取得装置において、
前記制御部は、前記重複ポートから得られた出力電圧と、前記重複ポートの直前の入力ポートから得られた出力電圧との電圧差が所定の閾値以下であった場合に、重複ポートのそれぞれの入力ポートから得られた出力電圧の電圧差に基づいて、前記重複ポートでの故障の発生有無を判断する
ことを特徴とする温度取得装置。
【請求項3】
請求項2に記載の温度取得装置において、
前記制御部は、前記重複ポートのそれぞれの入力ポートから得られた出力電圧の電圧差が前記許容値より大きい場合には、該重複ポートの直前の入力ポートから得られた前記出力電圧との電圧差が前記閾値以下であった前記重複ポートが故障していると判断する
ことを特徴とする温度取得装置。
【請求項4】
温度センサが接続される複数の入力ポートを備え、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧をデジタル値に変換することによって、複数の前記温度センサで検出された温度を取得する温度取得装置において、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートに接続されることによって、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧で充電されるコンデンサと、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートを選択して、前記コンデンサに接続するセレクタと、
前記コンデンサの端子間電圧をデジタル値に変換するAD変換器と、
前記セレクタが前記コンデンサに接続される前記入力ポートを切り換える動作と、前記AD変換器が前記コンデンサの前記端子間電圧を前記デジタル値に変換する動作とを制御することによって、複数の前記温度センサの出力電圧を前記デジタル値で取得する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記セレクタによって前記複数の入力ポートを所定の順序で切り換えさせることによって、前記複数の入力ポートの前記出力電圧を取得した後、前記所定の順序とは異なる順序で前記複数の入力ポートを切り換えさせることによって、前記複数の入力ポートの前記出力電圧を取得し、
前記複数の入力ポートの中に、切り換える順序によって取得される前記出力電圧の値が所定の許容値以上に異なる前記入力ポートが存在する場合には、前記複数の入力ポートの何れかで故障が発生していると判断する
ことを特徴とする温度取得装置。
【請求項5】
請求項4に記載の温度取得装置において、
前記制御部は、前記複数の入力ポートを前記所定の順序で選択して前記出力電圧を検出した後、前記所定の順序とは逆方向の順序で前記複数の入力ポートを選択して、前記出力電圧を取得する
ことを特徴とする温度取得装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の温度取得装置において、
前記制御部は、前記複数の入力ポートを選択する順序によって検出した前記出力電圧の値が前記許容値以上に異なる前記入力ポートで、故障が発生していると判断する
ことを特徴とする温度取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサが接続される複数の入力ポートを備え、入力ポートに接続された温度センサの出力電圧をデジタル値に変換することによって、複数の温度センサで検出された温度を取得する温度取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、給湯装置や、暖房装置、加熱調理装置などにもコンピュータが搭載されており、コンピュータを用いて複雑な制御を実行することが可能となっている。こうした機器(コンピュータを用いて複雑な制御を実行可能な機器)には、複数の温度センサが搭載されており、これらの温度センサで検出した温度に基づいて、コンピュータが複雑な制御を実行している。
【0003】
ここで、温度センサは、検出した温度をアナログ値の電圧として出力するが、コンピュータはアナログ値の情報を取り扱うことができない。そこで、温度センサが出力する電圧(以下、出力電圧)は、AD変換器を用いてデジタル値の情報に一旦変換されて、そのデジタル値がコンピュータに読み込まれるようになっている。尚、アナログ値からデジタル値への変換は「AD変換」と呼ばれている。
【0004】
AD変換にはある程度の時間が掛かるから、AD変換中に、温度センサの出力電圧が変化すると、正しいデジタル値に変換することが出来なくなる。そこで、温度センサとAD変換器との間には、温度センサから受け取った出力電圧を保持しておく保持回路が挿入されている。保持回路は、出力電圧を保持しておくための保持コンデンサと、切換スイッチとを備えている。そして、切換スイッチをONにすると、温度センサが接続された入力ポートと保持コンデンサとが導通状態となって、温度センサの出力電圧によって保持コンデンサが充電されていき、保持コンデンサの端子間電圧は温度センサの出力電圧と同じ電圧値となる。その後、切換スイッチをOFFにして、保持コンデンサの端子間電圧をAD変換する。切換スイッチをOFFにしておけば、AD変換中に保持コンデンサの端子間電圧が変化することは無いので、正しいデジタル値に変換することができる。
【0005】
こうして得られたデジタル値をコンピュータで読み込んだら、再び切換スイッチをONにする。すると、保持コンデンサの端子間電圧が、その時点での温度センサの出力電圧に更新されるので、再び切換スイッチをOFFにした後、更新された保持コンデンサの端子間電圧をAD変換して、得られたデジタル値をコンピュータで読み込む。このような操作を繰り返せば、入力ポートに接続された温度センサの出力電圧を、コンピュータで取り扱うことが可能となる。また、複数の温度センサの出力電圧を読み込む必要がある場合には、温度センサ毎に入力ポートを設けておき、保持コンデンサに接続する入力ポートを切り換える。こうすれば、複数の温度センサの出力電圧を正しいデジタル値に変換して、コンピュータで読み込むことが可能となる。
【0006】
もっとも、入力ポート内で接触不良や断線などの故障が発生していると、その入力ポートと保持コンデンサとを接続しても、保持コンデンサは温度センサの出力電圧で充電されることは無い。このため、保持コンデンサの端子間電圧と温度センサの出力電圧とは一致しなくなり、保持コンデンサの端子間電圧をAD変換しても正しいデジタル値を得ることはできない。そこで、温度センサを2つの入力ポートに接続しておき、それらの入力ポートの出力電圧をAD変換して得られたデジタル値が一致していれば、入力ポートは正常と判断するようにした技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、提案されている従来の技術では、2つの入力ポートの一方で接触不良や断線などが発生している場合でも、入力ポートは正常であると誤判断してしまう可能性があるという問題があった。例えば、AD変換する入力ポートを正常な入力ポートから故障した入力ポートに切り換えた場合を考えると、切り換えた入力ポートは故障しているので、保持コンデンサは充電されることも、放電することもない。このため、保持コンデンサの端子間電圧は、正常な入力ポートに接続されていた時の端子間電圧を維持することになり、正常な入力ポートに接続したときに得られるデジタル値と、故障した入力ポートに接続したときのデジタル値が一致してしまうので、どちらの入力ポートも正常であると誤判断してしまうためである。
【0009】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するために成されたものであり、複数の温度センサの出力電圧をAD変換して温度を検出すると共に、温度センサが接続された入力ポートの故障の有無を確実に判断することが可能な温度取得装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の温度取得装置は次の構成を採用した。すなわち、
温度センサが接続される複数の入力ポートを備え、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧をデジタル値に変換することによって、複数の前記温度センサで検出された温度を取得する温度取得装置において、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートに接続されることによって、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧で充電されるコンデンサと、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートを選択して、前記コンデンサに接続するセレクタと、
前記コンデンサの端子間電圧をデジタル値に変換するAD変換器と、
前記セレクタが前記コンデンサに接続される前記入力ポートを切り換える動作と、前記AD変換器が前記コンデンサの前記端子間電圧を前記デジタル値に変換する動作とを制御することによって、複数の前記温度センサの出力電圧を前記デジタル値で取得する制御部と
を備え、
前記複数の入力ポートの中の少なくとも1つの前記入力ポートには、他の前記入力ポートと同じ前記温度センサが接続されており、
前記制御部は、
同じ前記温度センサが接続された前記入力ポートである重複ポートが連続しない順序で、前記複数の入力ポートを前記セレクタに選択させると共に、
前記重複ポートのそれぞれの入力ポートから得られた出力電圧の電圧差が所定の許容値より大きかった場合は、前記重複ポートの何れかで故障が発生していると判断する
ことを特徴とする。
【0011】
かかる本発明の第1の温度取得装置においては、複数の入力ポートに温度センサの出力電圧が入力されており、セレクタを用いて複数の入力ポートの中の1の入力ポートを選択して、その入力ポートに入力されている出力電圧でコンデンサを充電する。そして、AD変換器を用いてコンデンサの端子間電圧をデジタル値で出力電圧を検出することによって、温度センサで検出された温度を取得する。ここで、複数の入力ポートの中の少なくとも1つの入力ポートには、他の入力ポートと同じ温度センサの出力電圧が入力された重複ポートとなっている。そして、複数の入力ポートを選択して出力電圧を検出する際には、重複ポートが連続しない順序で複数の入力ポートを選択して、出力電圧を検出すると共に、重複ポートのそれぞれの入力ポートから得られた出力電圧の電圧差が所定の許容値より大きかった場合は、その重複ポートの何れかで故障が発生していると判断する。
【0012】
重複ポートには同じ温度センサからの出力電圧が入力されているから、重複ポートで故障が発生していなければ、重複ポートのそれぞれの入力ポート間の電圧差が所定の許容値よりも小さくなる筈である。従って、重複ポートの入力ポート間の電圧差が所定の許容値よりも大きいか否かを判断することによって、重複ポートの入力ポートでの故障の有無を判断することができる。また、複数の入力ポートの出力電圧を検出する際には、重複ポートの入力ポートが連続しないような順序で検出する。このため、重複ポートとなっているある入力ポートの出力電圧を検出した直後に、重複ポートとなっている故障した別の入力ポートの出力電圧を検出したために、これらの重複ポートの入力ポートで検出した出力電圧が同じとなって、重複ポートが故障しているにも拘わらず、故障していないと誤判断してしまうこともない。その結果、重複ポートの故障の有無を確実に判断することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明の第1の温度取得装置においては、重複ポートの入力ポートから得られた出力電圧と、その出力電圧の直前に得られた入力ポートの出力電圧との電圧差が所定の閾値以下であった場合に、重複ポートのそれぞれの入力ポートから得られた出力電圧の電圧差に基づいて、重複ポートでの故障の発生有無を判断するようにしても良い。
【0014】
こうすれば、重複ポートの入力ポートから得られた出力電圧と、その出力電圧の直前に得られた入力ポートとの電圧差が所定の閾値よりも大きかった場合には、故障の発生有無を判断する必要が無いので、判断のための処理負担を軽減させることが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明の第1の温度取得装置においては、重複ポートでの故障の発生有無を判断するだけでなく、以下のようにして、故障している重複ポートを特定しても良い。すなわち、重複ポートのそれぞれの入力ポート間での電圧差が所定の許容値より大きい場合には、それらの重複ポートの入力ポートの中で、直前に検出した入力ポートの出力電圧との電圧差が所定の閾値以下であった入力ポートを、重複ポートの中の故障した入力ポートと判断してもよい。
【0016】
こうすれば、重複ポートの複数の入力ポートの中から故障した入力ポートを簡単に特定することが可能となる。
【0017】
また、前述した従来の技術が有する課題を解決するために、本発明の第2の温度取得装置は次の構成を採用した。すなわち、
温度センサが接続される複数の入力ポートを備え、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧をデジタル値に変換することによって、複数の前記温度センサで検出された温度を取得する温度取得装置において、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートに接続されることによって、前記入力ポートに接続された前記温度センサの出力電圧で充電されるコンデンサと、
前記複数の入力ポートの中の1の前記入力ポートを選択して、前記コンデンサに接続するセレクタと、
前記コンデンサの端子間電圧をデジタル値に変換するAD変換器と、
前記セレクタが前記コンデンサに接続される前記入力ポートを切り換える動作と、前記AD変換器が前記コンデンサの前記端子間電圧を前記デジタル値に変換する動作とを制御することによって、複数の前記温度センサの出力電圧を前記デジタル値で取得する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記セレクタによって前記複数の入力ポートを所定の順序で切り換えさせることによって、前記複数の入力ポートの前記出力電圧を取得した後、前記所定の順序とは異なる順序で前記複数の入力ポートを切り換えさせることによって、前記複数の入力ポートの前記出力電圧を取得し、
前記複数の入力ポートの中に、切り換える順序によって取得される前記出力電圧値が所定の許容値以上に異なる前記入力ポートが存在する場合には、前記複数の入力ポートの何れかで故障が発生していると判断する
ことを特徴とする。
【0018】
かかる本発明の第2の温度取得装置においても、複数の入力ポートに温度センサの出力電圧が入力されており、セレクタを用いて複数の入力ポートの中の1の入力ポートを選択して、その入力ポートに入力されている出力電圧でコンデンサを充電する。そして、AD変換器を用いてコンデンサの端子間電圧をデジタル値で出力電圧を検出することによって、温度センサで検出された温度を取得する。ここで、複数の入力ポートの出力電圧を検出する際には、複数の入力ポートを所定の順序で選択して出力電圧を検出した後、その順序とは異なる順序で複数の入力ポートを選択して出力電圧を検出する。そして、選択する順序によって、検出した出力電圧が所定の許容値以上に異なる入力ポートが存在する場合には、複数の入力ポートの何れかで故障が発生していると判断する。
【0019】
入力ポートが故障している場合、その入力ポートで検出される出力電圧は、直前に検出した入力ポートの出力電圧となる。従って、複数の入力ポートを異なる順序で選択して出力電圧を検出した時に、故障している入力ポートの出力電圧は、入力ポートを選択した順序によって異なった値となる。このことから、選択する順序によって、検出した出力電圧の電圧差が所定の許容値以上に大きな入力ポートが存在していれば、複数の入力ポートの何れかで故障が発生していると判断することができる。
【0020】
また、上述した本発明の第2の温度取得装置においては、複数の入力ポートを所定の順序で選択して出力電圧を検出した後、所定の順序とは逆方向の順序で複数の入力ポートを選択することによって出力電圧を取得することとしても良い。
【0021】
こうすれば、複数の入力ポートを選択する2通りの順序を簡単に作成することが可能となる。
【0022】
また、上述した本発明の第2の温度取得装置においては、複数の入力ポートを選択する順序によって検出した出力電圧値が許容値以上に異なる入力ポートが存在する場合には、その入力ポートで故障が発生していると判断してもよい。
【0023】
こうすれば、複数の入力ポートの中から故障した入力ポートを簡単に特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施例の温度取得装置10を含んだ加熱調理装置1の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】第1実施例の温度取得装置10の内部構造を示す説明図である。
【
図3】第1実施例の温度取得装置10が入力ポートInP1~InP4の電圧をデジタル値に変換して取得する動作の概要を示した説明図である。
【
図4】従来の温度取得装置90についての説明図である。
【
図5】従来の温度取得装置90では入力ポートの故障の有無を誤判断することがある理由についての説明図である。
【
図6】第1実施例の温度取得装置10が実行する温度取得処理のフローチャートである。
【
図7】第1実施例の温度取得装置10が入力ポートの故障の有無を判断する方法の概要を示した説明図である。
【
図8】第1実施例の温度取得装置10が実行する故障判断処理の一部を示すフローチャートである。
【
図9】第1実施例の温度取得装置10が実行する故障判断処理の残りの部分を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施例の温度取得装置10の内部構造を示す説明図である。
【
図11】第2実施例の温度取得装置10が実行する温度取得処理のフローチャートである。
【
図12】第2実施例の温度取得装置10が各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する順序についての説明図である。
【
図13】第2実施例の温度取得装置10が各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する他の態様の順序についての説明図である。
【
図14】第2実施例の温度取得装置10が各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する更に他の態様の順序についての説明図である。
【
図15】第2実施例の変形例の温度取得装置10が実行する温度取得処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.第1実施例 :
A-1.第1実施例の装置構成 :
図1は、第1実施例の温度取得装置10を含んだ加熱調理装置1の外観形状を示した斜視図である。加熱調理装置1は、上面が開口した背の低い箱型形状の本体ケース2と、本体ケース2の上面を覆う天板3とを備えている。天板3の中央には加熱位置を表す円形の図形4が表示されていると共に、天板3の手前側の右隅の位置には、電源スイッチを表す図形5が表示されている。また、加熱位置を表す図形4が表示された位置の天板3の裏面側には、円板形状の誘導コイル6が搭載されている。更に、天板3上で加熱位置を表す図形4よりも手前側の領域には、タッチパネル7が搭載されている。ユーザが電源スイッチの図形5を触ると、加熱調理装置1に電源が入って、文字や数字やカーソルなどがタッチパネル7に表示される。そして、天板3上で加熱位置を表す図形4内に金属製の調理容器を置くと、誘導コイル6が発生させる交流磁場によって調理容器が加熱されるようになっている。尚、第1実施例では、誘導コイル6を用いて調理容器を加熱するものとしているが、誘導コイル6以外の加熱体を用いて調理容器を加熱してもよい。例えば、電気ヒータを用いて加熱してもよいし、ガスバーナを用いて加熱してもよい。
【0026】
本体ケース2の内部には図示しないコンピュータが搭載されており、コンピュータは、誘導コイル6の温度を検出して、加熱調理装置1の動作を制御している。第1実施例の加熱調理装置1は、誘導コイル6の内側寄りの位置と、外側寄りの位置の2か所で、誘導コイル6の温度を検出しており、このことに対応して加熱調理装置1には、誘導コイル6の内側寄りの位置での温度を検出するための温度センサTh1と、外側寄りの位置での温度を検出するための温度センサTh2とが搭載されている。更に、第1実施例の加熱調理装置1の内部には、コンピュータが搭載された図示しない基板の温度を検出するための温度センサTh3や、雰囲気の温度を検出するための温度センサTh4も搭載されている。もっとも、これら温度センサTh1~Th4が出力する電圧はアナログ値なので、そのままではコンピュータに読み込ませることが出来ない。そこで、加熱調理装置1の内部には、以下に説明する温度取得装置10が搭載されており、温度センサTh1~Th4が出力する電圧をデジタル値に変換してからコンピュータに読み込ませるようになっている。
【0027】
図2は、第1実施例の加熱調理装置1に搭載された温度取得装置10の内部構造を示す説明図である。図示されるように、温度取得装置10はアナログ値の電圧が入力される複数の入力ポートInP0~InP6を備えており、温度取得装置10の内部には、AD変換器11や、セレクタ12や、制御部13や、コンデンサCsなどが搭載されている。尚、複数の入力ポートInP0~InP6を区別する必要があるときは、以下では、入力ポートInP0を0番ボートと称し、入力ポートInP1を1番ボートと称して区別するものとする。同様に、入力ポートInP2~InP6についても、それぞれ2番ボート~6番ボートと称して区別するものとする。
【0028】
AD変換器11は、アナログ値の電圧を受け取ってデジタル値に変換する機能を有する電子部品である。また、セレクタ12は、複数のスイッチ素子SW0~SW6を内蔵しており、これらのスイッチ素子SW0~SW6を切り換えることによって、複数の入力ポートInP0~InP6の中から1の入力ポートを選択してAD変換器11に接続する機能を有している。制御部13はマイクロコンピュータであり、セレクタ12内のスイッチ素子SW0~SW6のON/OFF状態を切り換えたり、AD変換器11に対してアナログ値をデジタル値に変換するタイミングを指示したり、AD変換器11が変換したデジタル値を読み出したりする機能を有している。
【0029】
更に、コンデンサCsは、いわゆるサンプリングコンデンサと呼ばれるコンデンサであり、AD変換器11がアナログ値の電圧をデジタル値に変換する間、変換しようとする電圧を保持しておく機能を有している。すなわち、AD変換器11は、デジタル値への変換中に、変換対象の電圧が変化してしまうと、正しいデジタル値に変換することが出来ないので、変換しようとする電圧をコンデンサCsに蓄えておき、コンデンサCsの端子間電圧をデジタル値に変換するようになっている。
【0030】
図2に示すように、温度取得装置10の0番ポートInP0には基準電圧Vccが入力されている。また、1番ポートInP1には、温度センサTh1(
図1参照)からの出力電圧が入力されている。第1実施例の加熱調理装置1では、温度センサとして、温度によって抵抗値が変化するサーミスタと呼ばれる素子が用いられている。図示されるように、温度センサTh1は抵抗R1と直列に接続されると共に、温度センサTh1および抵抗R1の一端側(図示した例ではR1側)が基準電圧Vccに接続され、他端側(図示した例では温度センサTh1側)が接地されている。そして、温度センサTh1と抵抗R1との間の電圧V1が、温度センサTh1の出力電圧として1番ポートInP1に入力されている。また、温度センサTh1の出力電圧は、4番ポートInP4にも入力されている。このように、温度センサTh1の出力電圧が2つの入力ポートに入力されているのは、温度センサTh1は調理容器の加熱温度という制御上、重要な情報を検出しているので(
図1参照)、加熱温度を誤検出してしまう事態を回避するためである。
【0031】
2番ポートInP2には温度センサTh2(
図1参照)からの出力電圧が入力されている。温度センサTh2にも、温度センサTh1と同様にサーミスタが用いられている。温度センサTh2には抵抗R2が直列に接続されており、温度センサTh2および抵抗R2の一端側が基準電圧Vccに接続され、他端側が接地されると共に、温度センサTh2と抵抗R2との間の電圧V2が、温度センサTh2の出力電圧として2番ポートに入力されている。更に、温度センサTh2の出力電圧は5番ポートにも入力されている。
図1を用いて前述したように、温度センサTh2も調理容器の加熱温度を検出しているので、加熱温度を誤検出してしまう事態を回避するために、温度センサTh2の出力電圧についても、2つの入力ポートに入力されている。
【0032】
3番ポートInP3および6番ポートInP6には、それぞれ温度センサTh3および温度センサTh4(
図1参照)からの出力電圧が入力されている。温度センサTh3および温度センサTh4もサーミスタが用いられており、温度センサTh3および温度センサTh4には、それぞれに抵抗R3、抵抗R4が直列に接続されて、一端側が基準電圧Vccに接続され、他端側が接地されている。そして、温度センサTh3と抵抗R3との間の電圧V3は、温度センサTh3の出力電圧として3番ポートに入力され、温度センサTh4と抵抗R4との間の電圧V4は、温度センサTh4の出力電圧として6番ポートに入力されている。尚、温度センサTh3および温度センサTh4については、上述した温度センサTh1や温度センサTh2に比べると制御上の重要性は小さいので、出力電圧が2つの入力ポートに重複して入力されてはいない。
【0033】
図3は、第1実施例の温度取得装置10が複数の入力ポートInP1~InP6に入力された電圧(すなわち、温度センサTh1~Th4からの出力電圧)をデジタル値に変換する動作の概要を示した説明図である。尚、図示が煩雑となることを避ける目的で、
図3では、4番ポートInP4~6番ポートInP6や制御部13については図示を省略している。また、ここでは、0番ポートInP0には電圧Vaが入力され、1番ポートInP1には電圧Vbが入力され、2番ポートInP2には電圧Vcが入力され、3番ポートInP3には電圧Vdが入力されているものとする。
【0034】
0番ポートInP0に入力された電圧Vaを検出する際には、
図3(a)に示したように、セレクタ12内のスイッチ素子SW0をONにすると共に、他のスイッチをOFFにする。すると、0番ポートInP0とコンデンサCsとが電気的に接続された状態となり、0番ポートInP0に入力されている電圧VaによってコンデンサCsが充電されて、コンデンサCsの端子間電圧が電圧Vaとなる。
図3(a)中で、0番ポートInP0からスイッチ素子SW0を経由してコンデンサCsまでが太い実線で表示されているのは、0番ポートの電圧Vaが、スイッチ素子SW0を介してコンデンサCs(およびAD変換器11)に印加されている様子を概念的に表している。こうして、0番ポートInP0の電圧VaによってコンデンサCsが充電されたら、スイッチ素子SW0をOFFにした後、AD変換器11を用いてコンデンサCsの端子間電圧をデジタル値に変換する。
【0035】
続いて、
図3(b)に示したように、セレクタ12内の他のスイッチはOFFにしたままでスイッチ素子SW1をONにすると、1番ポートInP1とコンデンサCsとが電気的に接続された状態となる。その結果、コンデンサCsには、1番ポートInP1の電圧Vbが印加される。
図3(b)中で、1番ポートInP1からスイッチ素子SW1を経由してコンデンサCsまでが太い実線で表示されているのは、1番ポートの電圧Vbが、スイッチ素子SW1を介してコンデンサCs(およびAD変換器11)に印加されている様子を概念的に表している。
【0036】
ここで、コンデンサCsには既に電圧Vaが充電されているが、この電圧Vaが1番ポートInP1の電圧Vbよりも低い場合は、コンデンサCsの端子間電圧が電圧VbになるまでコンデンサCsが充電される。逆に、コンデンサCsに充電されている電圧Vaが1番ポートInP1の電圧Vbよりも高い場合は、コンデンサCsの端子間電圧が電圧Vbになるまで、コンデンサCsが放電することになる。そして、コンデンサCsが充電される場合、あるいは放電する場合の何れでも、コンデンサCsの端子間電圧は1番ポートの電圧Vbとなる。その後、スイッチ素子SW1をOFFにして、AD変換器11を用いてコンデンサCsの端子間電圧をデジタル値に変換する。
【0037】
以上の説明から明らかなように、n番ポートInPnの電圧を検出する場合は、セレクタ12内の他のスイッチはOFFにしたままで、n番ポートInPnに対応するスイッチ素子SWnをONにすればよい。すると、n番ポートInPnがスイッチ素子SWnを経由してコンデンサCsに接続されて、コンデンサCsの端子間電圧がn番ポートInPnの電圧となる。その後、スイッチ素子SWnをOFFにして、AD変換器11を用いてコンデンサCsの端子間電圧をデジタル値に変換すれば、n番ポートInPnの電圧をデジタル値に変換して取得することができる。もっとも、入力ポートで断線や接触不良などの故障が発生していると、正しいデジタル値を取得することができなくなる。
【0038】
例えば、1番ポートInP1の電圧Vbの次に2番ポートInP2の電圧Vcを検出しようとしたときに、その2番ポートInP2で断線などの故障が発生していたものとする。
図3(c)中で2番ポートInP2が黒く塗りつぶされて表示されているのは、2番ポートInP2が故障していることを表している。2番ポートInP2の電圧Vcを検出するために、対応するスイッチ素子SW2をONにしても、2番ポートInP2が故障しているので、2番ポートInP2の電圧VcがコンデンサCsに印加されることはない。このためコンデンサCsの端子間電圧は、その前に電圧を検出していた1番ポートInP1の電圧Vbを保持したままとなっている。そして、その状態でスイッチ素子SW2をOFFにしてコンデンサCsの端子間電圧をデジタル値に変換する結果、直前に電圧を検出した1番ポートInP1の電圧Vbを、2番ポートInP2の電圧Vcとして誤検出してしまうことになる。
【0039】
このように、入力ポートで故障が発生すると正しいデジタル値を取得することが出来なくなるので、同じ電圧を複数の入力ポートに重複して入力しておき、それらの入力ポートの電圧を比較することによって、入力ポートの故障の有無を判断する技術も提案されている。例えば、
図4に例示した従来の温度取得装置90では、温度センサThAから出力される電圧VAが、入力ポートInPaと入力ポートInPbとに入力されている。また、温度センサThBから出力される電圧VBは、入力ポートInPcと入力ポートInPdとに入力されている。従って、入力ポートInPaの電圧と入力ポートInPbの電圧とが一致していない場合は、入力ポートInPaまたは入力ポートInPbの何れかが故障しているものと判断することができる。同様に、入力ポートInPcの電圧と入力ポートInPdの電圧とが一致していない場合は、入力ポートInPcまたは入力ポートInPdの何れかが故障しているものと判断することができる。但し、このような従来の温度取得装置90では、入力ポートInPa~InPdの中に故障している入力ポートが存在しているにも拘わらず、全ての入力ポートInPa~InPdが正常であると誤判断してしまうことがある。
【0040】
図5には、従来の温度取得装置90で入力ポートInPbが故障しており、入力ポートInPbの電圧を検出する前に、入力ポートInPaの電圧を検出する場合が例示されている。尚、
図5中で入力ポートInPbが黒く塗りつぶされているのは、入力ポートInPbが故障していることを表している。
【0041】
入力ポートInPaの電圧を検出する場合には、
図5(a)に示したように、セレクタ12内のスイッチ素子SWaをONにして、他のスイッチはOFFにする。すると、入力ポートInPaの電圧VAによってコンデンサCsが充電されるので、スイッチ素子SWaをOFFにした後、AD変換器11を用いてコンデンサCsの端子間電圧をデジタル値に変換して、入力ポートInPaの電圧として取得する。
【0042】
続いて、入力ポートInPbの電圧を検出するために、スイッチ素子SWbをONにする。しかし、入力ポートInPbは故障しているので、
図5(b)に示すように、入力ポートInPbの電圧はコンデンサCsに加わることはなく、コンデンサCsは電圧VAで充電された状態を保持したままとなっている。その後、スイッチ素子SWbをOFFにして、コンデンサCsの端子間電圧をデジタル値に変換して、入力ポートInPbの電圧として取得する。このようにして取得した電圧は、実際には入力ポートInPaの電圧である。従って、入力ポートInPaから検出した電圧と、入力ポートInPbから検出した電圧とが一致してしまい、入力ポートInPaおよび入力ポートInPbが何れも正常であると誤判断してしまう。このように、従来の温度取得装置90では、入力ポートの故障を検出することが出来ない場合があった。
【0043】
A-2.第1実施例の温度取得処理 :
図6は、第1実施例の温度取得装置10が実行する温度取得処理のフローチャートである。この処理は、温度取得装置10の制御部13によって実行されている。第1実施例の温度取得処理では、まず初めに、温度を検出するか否かを判断する(STEP10)。第1実施例の温度取得装置10は、加熱調理装置1での加熱を開始すると、所定時間が経過する度に温度を検出している。このため、温度取得処理を開始すると先ず初めに、温度を検出するタイミングになったか否かを判断する。そして、まだ温度を検出するタイミングになっていない場合は(STEP10:no)、同じ判断を繰り返すことによって待機状態となる。
【0044】
これに対して、温度を検出するタイミングになったと判断したら(STEP10:yes)、基準電圧Vccを検出するか否かを判断する(STEP11)。
図2を用いて前述したように、温度センサTh1~Th4の出力電圧は、温度センサTh1~Th4と抵抗R1~R4とによって、基準電圧Vccを分圧した電圧となるので、基準電圧Vccが変化すると温度センサTh1~Th4の出力電圧も変化してしまう。そこで、第1実施例の温度取得装置10は、加熱調理装置1の電源投入後に初めて温度取得処理を開始する場合や、一定時間が経過する度に、基準電圧Vccを検出することによって基準電圧Vccが正常範囲内にあることを確認するようになっている。このことに対応して、温度を検出すると判断した場合は(STEP10:yes)、続いて、基準電圧Vccを検出するか否かを判断する(STEP11)。
【0045】
その結果、基準電圧Vccを検出すると判断した場合は(STEP11:yes)、基準電圧Vccが入力されている0番ポートInP0の電圧を検出する(STEP12)。0番ポートInP0の電圧を検出するには、
図3を用いて前述したように、セレクタ12内のスイッチ素子SW0を除いて、他のスイッチ素子はOFFにしたまま、スイッチ素子SW0を一定時間ONにした後、スイッチ素子SW0をOFFに戻してコンデンサCsの端子間電圧を検出する。
【0046】
こうして基準電圧Vccを検出した後は(STEP12)、検出した基準電圧Vccが正常範囲内か否かを判断する(STEP13)。その結果、基準電圧Vccが正常範囲内になかった場合は(STEP13:no)、何らかの異常が発生しているため、正しい温度は取得できないと考えられるので、異常の発生を報知した後(STEP14)、温度取得処理を終了する。これに対して、基準電圧Vccが正常範囲内にあると判断した場合は(STEP13:yes)、1番ポートInP1の電圧を検出する(STEP15)。
【0047】
また、STEP11で「no」と判断した場合、すなわち、基準電圧Vccを検出しない場合は、0番ポートの電圧を検出したり(STEP12)、STEP13の判断をしたりすることなく、1番ポートInP1の電圧を検出する(STEP15)。STEP15で1番ポートInP1の電圧を検出する際には、セレクタ12内のスイッチ素子SW1を除いて、他のスイッチ素子はOFFにしたまま、スイッチ素子SW1を一定時間ONにした後、スイッチ素子SW1をOFFに戻してコンデンサCsの端子間電圧を検出する。
【0048】
尚、STEP15で、複数の入力ポートInP0~InP6の中から、1番ポートInP1の電圧を検出しているのは、第1実施例の温度取得処理では、1番ポートInP1~6番ポートInP6の電圧を昇順の順序で検出することとしているためである。すなわち、初めに1番ポートInP1の電圧を検出し、次は2番ポートInP2の電圧を、その次は3番ポートInP3、更にその次は4番ポートInP4というように、6番ポートInP6まで順番に検出するので、0番ポートの基準電圧Vccを検出した後は、必ず1番ポートの電圧を検出することになるためである。また、0番ポートInP0ではなく、1番ポートの電圧を検出している理由は、0番ポートInP0の電圧はSTEP12で既に検出している場合があるためである。
【0049】
尚、複数の入力ポートInP0~InP6の電圧を検出する順序は、重複ポートとなっている入力ポートが連続しない順序であれば良く、従って、必ずしも入力ポートの番号が1つずつ大きくなるような順序である必要はない。例えば、6番ポートInP6から1つずつ番号が小さくなるような順序であっても良いし、予め定めておいた別の順序であっても良い。更には、各入力ポートInP0~InP6の電圧を検出する度に、新たな順序を決定するようにしても良い。これらの場合は、STEP15で電圧を検出する入力ポートは、各入力ポートInP0~InP6の電圧を検出する順序に応じて適宜変更されることになる。
【0050】
STEP15で1番ポートInP1の電圧を検出したら、その入力ポート(ここでは1番ポートInP0)が重複ポートか否かを判断する(STEP16)。ここで、重複ポートとは、他の入力ポートにも、同じ温度センサの出力電圧が入力されている入力ポートのことである。
図2に示したように第1実施例の温度取得装置10では、1番ポートInP1および4番ポートInP4には温度センサTh1の出力電圧V1が入力されているので、これらの入力ポートInP1、InP4は重複ポートとなる。また、2番ポートInP2および5番ポートInP5にも温度センサTh2の出力電圧V2が入力されているので、これらの入力ポートInP2、InP5も重複ポートとなる。これに対して、3番ポートInP3や6番ポートInP6は、他に同じ温度センサの出力電圧が入力されている入力ポートは存在していないので、これらは重複ポートには該当しない。
【0051】
また、0番ポートInP0については、入力されているのは、温度センサの出力電圧ではなく基準電圧Vccであるが、0番ポートInP0の他には基準電圧Vccが入力されている入力ポートは存在しないので、0番ポートInP0も重複ポートには該当しない。逆に、0番ポートInP0以外にも基準電圧Vccが入力されている入力ポートが存在していた場合は、0番ポートInP0も重複ポートに準じた入力ポートとして取り扱うことが可能である。
【0052】
STEP16で、入力ポートが重複ポートであると判断された場合は(STEP16:yes)、後述する故障判断処理(STEP20)を実行することによって、入力ポートで故障が発生しているか否かを判断する。これに対して、入力ポートが重複ポートでは無いと判断した場合は(STEP16:no)、故障判断処理(STEP20)の実行は省略する。
【0053】
その後、電圧を検出した入力ポートが最後の入力ポートであるか否かを判断する(STEP17)。また、故障判断処理(STEP20)を実行した場合は、故障判断処理の終了後に、同様な判断を実行する。尚、ここでは、1番ポートInP1から6番ポートInP6に向かって順番に電圧を検出するものとしているから、STEP17では、電圧を検出した入力ポートが6番ポートInP6であるか否かを判断することになる。
【0054】
その結果、電圧を検出した入力ポートが最後の入力ポートでは無いと判断した場合は(STEP17:no)、次の入力ポートの電圧を検出する(STEP18)。そして、STEP16に戻って、電圧を検出した入力ポートが重複ポートか否かを判断した後、上述した続く一連の処理(STEP20、STEP17、STEP18)を実行する。こうした処理を繰り返していると、やがては、最後の入力ポートの電圧を検出することになって、STEP17で「yes」と判断されるので、検出フラグおよび要確認フラグをOFFに初期化する(STEP19)。ここで、検出フラグや要確認フラグとは、後述する故障判断処理(STEP20)の中で使用されるフラグである。故障判断処理は、電圧を検出した入力ポートが重複ポートと判断される度(STEP16:yes)に開始され、故障した入力ポートが存在するか否かを判断するが、その際に、検出フラグや要確認フラグを使用する。こうして、重複ポートの電圧を検出する度に、検出フラグや要確認フラグを用いて故障の有無を判断しながら、最後の入力ポートに達したら(STEP17:yes)、検出フラグや要確認フラグを一旦初期化した後(STEP19)、STEP10に戻って、初めから同じ処理を繰り返す。
【0055】
A-3.故障判断処理 :
上述したように故障判断処理は、電圧を検出した入力ポートが重複ポートと判断される度に実行されて、重複ポートの故障の有無を判断する処理である。処理の詳細については以下に説明するが、理解の便宜を図るために、故障の有無を判断する基本的な考え方について、予め概要を説明しておく。
【0056】
図3(c)を用いて前述したように、電圧を検出しようとした入力ポートが故障していた場合、コンデンサCsは直前に検出した入力ポートの電圧を保持しているので、同じ電圧が連続して検出されることになる。また、同じ電圧ではないが、非常に近い電圧が連続して検出された場合には、入力ポートが接触不良となって断線しかけている可能性がある。もっとも、連続して検出した入力ポートの電圧が、偶然に同じ電圧(あるいは非常に近い電圧)であった可能性もあるため、単に同じ電圧(あるいは非常に近い電圧)を連続して検出しただけでは、入力ポートが故障していると断定することはできない。そこで、その入力ポートが重複ポートであった場合は、重複ポート間で電圧が一致するか否かを判断する。そして、重複ポート間で電圧が一致していなければ、重複ポートが故障しているものと判断することができ、逆に、重複ポート間で電圧が一致していれば、重複ポートは故障していないと判断することができる。
【0057】
以上のことから明らかなように、同じ電圧(あるいは非常に近い電圧)が連続して検出されるという条件(以下、条件1)と、重複ポート間で電圧が一致しないという条件(以下、条件2)とが同時に満たされた場合は、重複ポートが故障したものと判断することができる。ここで、
図2を用いて前述したように、第1実施例の温度取得装置10では、1番ポートInP1および4番ポートInP4という重複ポートの組と、2番ポートInP2および5番ポートInP5という重複ポートの組との2組の重複ポートが存在する。そして、第1実施例では、1番ポートInP1~6番ポートInP6は昇順の順序で電圧を検出するものとしているから、上述した条件1および条件2が同時に満たされる(従って、入力ポートの故障発生と判断される)のは、次の4つのパターンとなる。
【0058】
図7は、第1実施例の温度取得装置10で重複ポートの故障発生と判断される4つのパターンを示した説明図である。尚、
図7中で、1番ポートInP1と4番ポートInP4とに細かいハッチングが付されているのは、これらが互いに重複ポートであることを表している。また、2番ポートInP2と5番ポートInP5とに粗いハッチングが付されているのは、これらが互いに重複ポートであることを表している。更に、0番ポートInP0が破線で表示されているのは、0番ポートInP0については電圧を検出する場合と検出しない場合とが存在することを表している。
【0059】
図7(a)では、1番ポートInP1の電圧が、直前に検出した0番ポートInP0の電圧と同じ(あるいは非常に近い)場合が示されている。
図7(a)で、0番ポートInP0と1番ポートInP1とが、破線の矩形で囲われているのは、これらの入力ポートの電圧が同じ(あるいは非常に近い)ことを表している。このような場合は、1番ポートInP1の故障が疑われるので、1番ポートに対応する重複ポートである4番ポートInP4の電圧を参照する必要が生じるが、この時点では未だ4番ポートInP4の電圧は検出されていない。そこで、1番ポートInP1で故障が疑われることを表すフラグ(要確認フラグ)をONにすると共に、1番ポートInP1の電圧を記憶しておく。そして、4番ポートInP4の電圧を検出した際に、対応する重複ポートである1番ポートInP1の要確認フラグがONに設定されていた場合には、記憶されている1番ポートInP1の電圧と、検出した4番ポートInP4の電圧とを比較して、両者が一致していなければ、1番ポートInP1が故障しているものと判断することができる。
【0060】
尚、
図7(a)では、1番ポートInP1の電圧を検出する前に0番ポートInP0の電圧を検出しているものとして説明したが、0番ポートInP0については電圧を検出しない場合も発生する。この場合は、1番ポートInP1の直前に電圧を検出するのは6番ポートInP6となるので、1番ポートInP1の電圧が、直前に検出した6番ポートInP6の電圧と同じ(あるいは非常に近い)場合に、1番ポートInP1の要確認フラグをONに設定すると共に1番ポートInP1の電圧を記憶しておき、4番ポートInP4の電圧と比較することになる。
【0061】
以上では、重複ポートである1番ポートInP1および4番ポートInP4の中で、始めに電圧を検出する1番ポートInP1で故障の発生が疑われた場合について説明した。しかし、後から電圧を検出する4番ポートInP4で故障の発生が疑われる場合も生じ得る。すなわち、
図7(b)中で、3番ポートInP3と4番ポートInP4とを、破線の矩形で囲って表したように、4番ポートInP4の電圧が、直前に検出した3番ポートInP3の電圧と同じ(あるいは非常に近い)ため、4番ポートInP4で故障の発生が疑われる場合も起こり得る。そして、この場合は、4番ポートInP4に対応する重複ポートである1番ポートInP1の電圧を参照する必要が生じる。
【0062】
そこで、このような場合を考えて、始めに電圧を検出した重複ポート(ここでは、1番ポートInP1)で故障が疑われなかった場合でも、検出した電圧を記憶しておくと共に、電圧を検出済みであることを表すフラグ(検出フラグ)をONに設定しておく。そして、4番ポートInP4の電圧を検出した結果、故障の発生が疑われた場合には、検出フラグを参照することによって、対応する重複ポート(ここでは、1番ポートInP1)の電圧が既に記憶されていることを確認した後、重複ポート間で電圧が一致するか否かを判断する。その結果、電圧が一致していれば、故障は発生していないが、電圧が一致していない場合は、4番ポートInP4で故障が発生したものと判断することができる。
【0063】
以上では、1番ポートInP1および4番ポートInP4の重複ポートについて説明したが、2番ポートInP2および5番ポートInP5の重複ポートについても、全く同様な説明が当て嵌まる。すなわち、
図7(c)に示したように、重複ポートである2番ポートInP2および5番ポートInP5の中で、初めに電圧を検出した2番ポートInP2の電圧が、直前に検出した1番ポートInP1の電圧と同じ(あるいは近い)ために、2番ポートInP2での故障が疑われた場合には、2番ポートInP2の要確認フラグをONに設定すると共に、2番ポートInP2の電圧を記憶しておく。そして、そして、5番ポートInP5の電圧を検出すると、記憶しておいた2番ポートInP2の電圧と比較して、両者が一致していなければ、2番ポートInP2が故障しているものと判断する。
【0064】
また、
図7(d)に示したように、始めに電圧を検出した重複ポート(ここでは、2番ポートInP2)の故障が疑われなかった場合でも、検出した電圧を記憶しておくと共に、電圧を検出済みであることを表すフラグ(検出フラグ)をONに設定しておく。そして、5番ポートInP5の電圧が、直前に検出した4番ポートInP4の電圧と同じ(あるいは非常に近い)ために故障の発生が疑われた場合には、検出フラグがONに設定されていることを確認して、2番ポートInP2の電圧と5番ポートInP1の電圧とが一致するか否かを判断する。その結果、電圧が一致していれば、故障は発生していないが、電圧が一致していない場合は、5番ポートInP5が故障したものと判断することができる。
【0065】
また、
図6を用いて前述したように、第1実施例の温度取得装置10は、各入力ポートの電圧を所定のサンプリング周期で検出しているため、今回の検出時と、次回の検出時とでは、各入力ポートの電圧が変化している可能性がある。従って、重複ポートでの故障の有無は、毎回の検出毎に独立して判断する必要がある。このことから、
図6を用いて前述した温度取得処理では、電圧を検出した入力ポートが最後の入力ポートであると判断すると(STEP17:yes)、検出フラグおよび要確認フラグをOFFに初期化することとしている(STEP19)。
【0066】
図8および
図9は、第1実施例の温度取得装置10が以上のような考え方に基づいて、重複ポートでの故障の有無を判断する故障判断処理のフローチャートである。この故障判断処理は、
図6を用いて前述した温度取得処理の中で、電圧を検出した入力ポートが重複ポートと判断される度に(STEP16:yes)実行される処理である。
【0067】
図8に示すように、故障判断処理を開始すると先ず初めに、要確認フラグがONに設定されているか否かを判断する(STEP21)。要確認フラグとは、
図7(a)あるいは
図7(c)を用いて前述したように、重複ポートを形成する複数の入力ポートの中の最初に電圧を検出した入力ポートで故障が疑われた場合に、ONに設定されるフラグである。要確認フラグをONに設定する処理については後述する。
【0068】
通常は、要確認フラグはOFFに設定されているので、STEP21では「no」と判断されて、続いて、直前に検出した電圧との電圧差を算出する(STEP22)。すなわち、
図8および
図9に示した故障判断処理は、重複ポートの電圧を検出する度に実行されるから、その重複ポートの電圧と、その重複ポートの直前に電圧を検出していた入力ポートの電圧との電圧差を算出する。そして、その電圧差を所定の閾値と比較する(STEP23)。
図7を用いて前述したように、連続して検出した入力ポートの電圧差が小さい場合は、後から検出した入力ポートの故障が疑われる。もちろん、複数の入力ポートInP0~InP6の中には、同じ出力電圧が入力される重複ポートが存在しているので、重複ポートの電圧を連続して検出した場合には電圧差は生じない。しかし、第1実施例の温度取得装置10は、複数の入力ポートInP0~InP6の電圧を検出する際に、組になる重複ポート同士は連続しないような順序(すなわち、1番ポートInP1と4番ポートInP4との間には必ず他の入力ポートが入り、2番ポートInP2と5番ポートInP5との間にも必ず他の入力ポートが入るような順序)で、各入力ポートInP0~InP6の電圧を検出するようになっている。このため、重複ポートで故障が発生していない通常の場合は、STEP23では「no」と判断されることになる。
【0069】
また、STEP23で「no」と判断した場合は、その重複ポートは故障していないと考えられるが、
図7(b)あるいは
図7(d)に示した場合のように、その重複ポートと組になる他の重複ポートで故障の発生が疑われる可能性もある。そして、この場合は、重複ポート間で検出された電圧が一致するか否かを判断する必要が生じる。そこで、STEP23で「no」と判断した場合は、その重複ポートについては電圧を検出済みであることを表す検出フラグをONに設定すると共に(STEP24)、検出した電圧を重複ポートに対応付けて記憶した後(STEP24)、
図6の温度取得処理に復帰する。
【0070】
入力ポートInP0~InP6で故障が発生していない場合は、上述したように、
図6の温度取得処理で重複ポートの電圧を検出する度に(STEP16:yes)、検出フラグをONに設定して(
図8のSTEP24)、
図6の温度取得処理に復帰する。そして、温度取得処理の中で、最後の入力ポートの電圧を検出したと判断されると(STEP17:no)、STEP19で検出フラグをOFFに初期化する動作を繰り返すことになる。
【0071】
これに対して、重複ポートの電圧を検出した時に、直前に検出した電圧との電圧差が小さかった場合は、
図8の故障判断処理の中で、電圧差が閾値よりも小さいと判断される(STEP23:yes)。そして、この場合は、続いて、その重複ポートの検出フラグがONに設定されているか否かを判断する(STEP26)。前述したように、検出フラグは重複ポートの電圧が検出されるとONに設定されるから、検出フラグがONに設定されていない(STEP26:no)ということは、検出フラグが初期化された後、最初に電圧を検出した重複ポートであることを示している。そして、その重複ポートで電圧差が閾値よりも小さいと判断されている(STEP23:yes)のだから、
図7(a)または
図7(c)に示した状況(すなわち、最初に検出した重複ポートで故障が疑われる状況)に該当する。そこで、この場合は、重複ポートの要確認フラグをONに設定した後(STEP27)、検出した電圧を重複ポートに対応付けて記憶して(STEP25)、
図6の温度取得処理に復帰する。
【0072】
また、STEP26で「yes」と判断された場合は、最初の重複ポートは既に電圧が検出されており、後から検出した重複ポートで故障が疑われる状況(従って、
図7(b)または
図7(d)に示した状況)に該当する。そこで、この場合は、その重複ポートに対応する重複ポート(すなわち、最初の重複ポート)に記憶されている電圧を読み出して(STEP28)、読み出した重複ポートの電圧と、この度に検出した重複ポートの電圧との電圧差を算出する(STEP29)。
【0073】
そして、重複ポート間の電圧差が所定の許容値以下か否かを判断する(STEP30)。前述したように、重複ポートを形成する複数の入力ポートには同じ温度センサの出力電圧が入力されているから、それらの入力ポートが故障していない限り、重複ポート間の電圧差は誤差程度の小さな値となる筈である。従って、重複ポート間の電圧差が所定の許容値以下であった場合は(STEP30:yes)、その重複ポートを形成する入力ポートは正常と判断できるので、そのまま、
図8および
図9の故障判断処理を終了して、
図6の温度取得処理に復帰する。
【0074】
これに対して、重複ポート間の電圧差が許容値よりも大きかった場合は(STEP30:no)、少なくとも、その重複ポートを形成する何れかの入力ポートが故障していると判断できる。そして、重複ポートを形成する複数の入力ポートの中で、この度に電圧を検出した入力ポート(すなわち、後から電圧を検出した重複ポート)は、直前に検出した電圧との電圧差が閾値よりも小さく(STEP23:yes)、故障が疑われていた重複ポートである。従って、故障しているのは、この度に電圧を検出した重複ポートと判断して(STEP31)、入力ポートで故障が発生した旨を報知した後(STEP32)、
図6の温度取得処理に復帰することなく、
図8および
図9の故障判断処理を終了する。
【0075】
尚、ここでは、入力ポートでの故障発生を報知すると(STEP32)、故障判断処理および温度取得処理を終了してしまうものとして説明した。しかし、重複ポートの一方が故障していても、他方の重複ポートは故障していないと考えられ、その重複ポートについては通常の入力ポートと同様に温度を検出することができる。従って、重複ポートの一方が故障したと判断した場合には(STEP31)、故障の発生を報知すると共に(STEP32)、その入力ポートの電圧は検出しないようにした後、残った重複ポートを通常の入力ポートと同様に取り扱うことによって、
図6の温度取得処理に復帰することとしても良い。こうすれば、重複ポートの一方が故障した場合でも、残った他方の重複ポートを用いて温度を検出することによって、加熱調理装置1の制御を継続することが可能となる。
【0076】
以上では、重複ポートの電圧を検出した時に、要確認フラグがONに設定されていない場合(
図8のSTEP21:no)について説明した。これに対して、要確認フラグがONに設定されていた場合(
図8のSTEP21:yes)は、既に重複ポートの電圧が検出されており、且つ、その重複ポートで故障発生が疑われた場合に該当する。例えば、
図7(a)のように1番ポートInP1で故障発生が疑われた状態で、4番ポートInP4の電圧を検出した場合や、
図7(c)のように2番ポートInP2で故障発生が疑われた状態で、5番ポートInP4の電圧を検出した場合に該当する。
【0077】
そこで、このような場合(STEP21:yes)は、その重複ポートに対応する重複ポート(すなわち、最初の重複ポート)に記憶されている電圧を読み出して(STEP33)、読み出した重複ポートの電圧と、この度に検出した重複ポートの電圧との電圧差を算出する(STEP34)。そして、重複ポート間の電圧差が所定の許容値以下か否かを判断して(STEP35)、電圧差が所定の許容値以下であった場合は(STEP35:yes)、その重複ポートを形成する入力ポートは正常と判断できる。そこで、この場合は
図8および
図9の故障判断処理を終了して、
図6の温度取得処理に復帰する。これに対して、重複ポート間の電圧差が許容値よりも大きかった場合は(STEP35:no)、この度に電圧を検出した重複ポートに対応する重複ポート(すなわち、先の電圧を検出していた重複ポート)で故障が発生したものと判断して(STEP36)、入力ポートで故障が発生した旨を報知した後(STEP37)、
図6の温度取得処理に復帰することなく、
図8および
図9の故障判断処理を終了する。
【0078】
尚、ここでも、重複ポートの一方が故障したと判断した場合には(STEP36)、故障の発生を報知すると共に(STEP37)、その入力ポートの電圧は検出しないようにした後、残った重複ポートを通常の入力ポートと同様に取り扱うことによって、
図6の温度取得処理に復帰することとしても良い。こうすれば、残った他方の重複ポートを用いて温度を検出することによって、加熱調理装置1の制御を継続することが可能となる。
【0079】
第1実施例の温度取得装置10は、以上に説明した温度取得処理および故障判断処理を実行することで、重複ポートを形成する何れの入力ポートについても、故障の有無を確実に判断することが可能となる。
【0080】
B.第2実施例 :
上述した第1実施例では、複数の入力ポートInP0~InP6の中に、同じ温度センサの出力電圧が入力された重複ポートを設けておき、重複ポートについての故障の有無を判断していた。しかし、特に重複ポートを設けなくても、複数の入力ポートInP0~InP6についての故障の有無を判断することも可能である。以下では、このような第2実施例の温度取得装置10について説明する。
【0081】
B-1.第2実施例の装置構成 :
図10は、第2実施例の温度取得装置10の内部構造を示す説明図である。第2実施例の温度取得装置10も、
図1に示した加熱調理装置1に搭載されている。
図1を用いて前述したように、加熱調理装置1に搭載されている温度センサの個数は4つであり、検出すべき電圧は、基準電圧Vccを含めて5つに過ぎないが、前述した第1実施例の温度取得装置10では、2組の重複ポートが設定されていたために、7つの入力ポートInP0~InP6が必要であった。これに対して、第2実施例の温度取得装置10では、重複ポートを設定しておく必要が無いので、
図10に示されるように、5つ入力ポートInP0~InP4があれば良い。このことに対応して、セレクタ12内にも、入力ポートInP0を選択するためのスイッチ素子SW0と、入力ポートInP1を選択するためのスイッチ素子SW1と、入力ポートInP2を選択するためのスイッチ素子SW2と、入力ポートInP3を選択するためのスイッチ素子SW3と、入力ポートInP4を選択するためのスイッチ素子SW4の合計で5つのスイッチ素子があれば充分である。
【0082】
図10に示した第2実施例の温度取得装置10は、上述した事項では、前述した第1実施例の温度取得装置10とは異なるが、その他の事項、例えば、AD変換器11や、制御部13や、コンデンサCsや、これらの動作については、第1実施例の温度取得装置10と同様である。また、第2実施例でも、入力ポートInP0~InP4を区別する必要がある場合は、入力ポートInP0を0番ポートInP0と称し、入力ポートInP1を1番ポートInP1と、入力ポートInP2を2番ポートInP2、入力ポートInP3を3番ポートInP3、入力ポートInP4を4番ポートInP4と称して区別するものとする。
【0083】
B-2.第2実施例の温度取得処理 :
図11は、第2実施例の温度取得装置10が実行する温度取得処理のフローチャートである。この処理も、温度取得装置10の制御部13によって実行されている。第2実施例の温度取得処理でも、
図6を用いて前述した第1実施例の温度取得処理と同様に、まず初めに、温度を検出するか否かを判断する(STEP50)。このような判断をするのは、第2実施例の温度取得装置10も、第1実施例の温度取得装置10と同様に、加熱調理装置1での加熱が開始されると、所定時間が経過する度に温度を検出しているためである。そして、まだ温度を検出するタイミングになっていない場合は(STEP50:no)、同じ判断を繰り返すことによって待機状態となる。
【0084】
その後、温度を検出するタイミングになったら(STEP50:yes)、基準電圧Vccを検出するべく、0番ポートの電圧を検出する(STEP51)。尚、第2実施例の温度取得処理では、毎回、基準電圧Vccを検出するものとしているが、前述した第1実施例と同様に、基準電圧Vccを検出するか否かを判断するようにしても良い。
【0085】
続いて、検出した基準電圧Vccが正常範囲内か否かを判断して(STEP52)、正常範囲内になかった場合は(STEP52:no)、正しい温度は取得できないと考えられるので、異常の発生を報知した後(STEP53)、温度取得処理を終了する。これに対して、基準電圧Vccが正常範囲内にあると判断した場合は(STEP52:yes)、正順方向に各入力ポートの電圧を検出して、入力ポート毎に検出した電圧を記憶する(STEP54)。ここで、正順方向とは、1番ポートInP1の次は2番ポートInP2、2番ポートInP2の次は3番ポートInP3、3番ポートInP3の次は4番ポートInP4というように、入力ポートの番号が昇順となる方向である。
【0086】
こうして正順方向に各入力ポートの電圧を検出したら、今度は、逆順方向に各入力ポートの電圧を検出して、入力ポート毎に検出した電圧を記憶する(STEP55)。ここで、逆順方向とは、4番ポートInP4の次は3番ポートInP3、3番ポートInP3の次は2番ポートInP2、2番ポートInP2の次は1番ポートInP1というように、入力ポートの番号が降順となる方向である。STEP54およびSTEP55で、正順方向および逆順方向に各入力ポートの電圧を検出する動作について、補足して説明する。
【0087】
図12は、5つの入力ポートInP0~InP4を正順方向および逆順方向に検出する動作を示した説明図である。
図12(a)には正順方向に検出する場合が示されており、
図12(b)には逆順方向に検出する場合が示されている。
図12(a)に示すように、正順方向に検出する場合は、初めに1番ポートInP1、次に2番ポートInP2、その次に3番ポートInP3、その次に4番ポートInP4、最後に0番ポートInP0という順序で、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する。正順方向が0番ポートInP0ではなく、1番ポートInP1から始まっているのは、
図11の温度取得処理のSTEP54で正順方向に各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する直前に、STEP52で既に0番ポートInP0の電圧を検出しているため、STEP54では1番ポートInP1から電圧の検出を開始したことによる。また、このことに対応して、正順方向では最後に0番ポートInP0の電圧を検出する。
【0088】
続いて、逆順方向に検出する場合は、
図12(b)に示すように、初めに4番ポートInP4、次に3番ポートInP3、その次に2番ポートInP2、その次に1番ポートInP1、最後に0番ポートInP0という順序で、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する。逆順方向が4番ポートInP4から始まっているのは、直前に行われた正順方向が0番ポートInP0で終了しているためである。このようにして、第2実施例の温度取得処理では、正順方向および逆順方向で、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出して記憶しておく。
【0089】
そして、各入力ポートInP0~InP4の各々について、正順方向で検出した電圧と逆順方向で検出した電圧との電圧差を算出して(STEP56)、電圧差が所定の許容値よりも大きい入力ポートが存在するか否かを判断する(STEP57)。その結果、電圧差が許容値よりも大きな入力ポートが存在する場合は(STEP57:yes)、故障した入力ポートが存在すると判断し(STEP59)、更に、電圧差が許容値よりも大きい入力ポートを、故障した入力ポートと特定する(STEP60)。これに対して、電圧差が許容値よりも大きな入力ポートが存在しない場合は(STEP57:no)、故障した入力ポートは存在しないと判断する(STEP58)。このようにして、入力ポートでの故障の有無を判断し、故障した入力ポートを特定することが出来るのは、次のような理由による。
【0090】
例えば、
図12に示したように、2番ポートInP2が故障していたものとする。
図3(c)を用いて前述したように、故障した入力ポートでは、その入力ポートの直前に電圧を検出した入力ポートと同じ電圧が検出されるから、
図12(a)のように正順方向で検出した場合、2番ポートInP2では、直前に電圧を検出した1番ポートInP1と同じ電圧が検出される。これに対して、
図12(b)のように逆順方向で検出した場合、2番ポートInP2では、直前に電圧を検出した3番ポートInP3と同じ電圧が検出される。このように、故障した入力ポートでは、正順方向と逆順方向とで異なる電圧が検出されることになる。もちろん、故障していない正常な入力ポートでは、正順方向でも逆順方向でも検出される電圧は同じとなる。
【0091】
同様なことは、0番ポートInP0についても成立する。例えば、
図12(a)に示した正順方向では、0番ポートInP0の直前に検出する入力ポートは4番ポートInP4となる。これに対して、
図12(b)に示した逆順方向では、0番ポートInP0の直前に検出する入力ポートは1番ポートInP1となる。従って、0番ポートInP0が故障していれば、正順方向と逆順方向とで異なる電圧が検出されることになる。以上のような理由から、正順方向で検出した電圧と、逆順方向で検出した電圧との電圧差が許容値よりも大きな入力ポートを検出することによって、入力ポートでの故障の有無を判断すると共に、故障した入力ポートを特定することが可能となる。
【0092】
以上のようにして、入力ポートでの故障の有無を判断すると共に、故障していた場合は、故障した入力ポートを特定したら(STEP57~STEP60)、処理の先頭に戻って、上述した処理を再開する。こうすれば、入力ポートInP0~InP4の何れについても、故障の有無を確実に判断することが可能となる。
【0093】
尚、上述した第2実施例では、
図12に示した方法で正順方向および逆順方向に電圧を検出することで、入力ポートInP0~InP4の何れについても、正順方向および逆順方向の2つの電圧を検出可能となっている。しかし、正順方向および逆順方向の2つの電圧が検出可能となるのは、入力ポートInP0~InP4の一部であっても構わない。
【0094】
例えば、正順方向では、
図13(a)に示すように0番ポートInP0から4番ポートInP4に向かって昇順の順序で電圧を検出し、逆順方向では、
図13(b)に示すように4番ポートInP4から0番ポートInP0に向かって降順の順序で電圧を検出しても良い。このような場合、0番ポートInP0の直前では必ず1番ポートInP1の電圧を検出し、また、4番ポートInP4の直前では必ず3番ポートInP3の電圧を検出することになる。このため、正順方向および逆順方向の2つの電圧が検出可能となるのは、1番ポートInP1~3番ポートInP3の3つの入力ポートとなる。しかし、これら3つの入力ポートについては、正順方向の電圧と逆順方向の電圧との電圧差を許容値と比較することによって、故障の有無を判断すると共に、故障している入力ポートを特定することが可能となる。
【0095】
また、上述した第2実施例では、
図12あるいは
図13に例示したように、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する順序は、入力ポートの番号が昇順、あるいは降順となる順序であるものとして説明した。しかし、実際には、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出する所定の順序と、その順序とは異なる順序とで、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出すればよい。例えば、
図12(a)あるいは
図13(a)に例示した正順方向の代わりに、
図14(a)に例示した第1方向で、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出し、
図12(b)あるいは
図13(b)に例示した逆順方向の代わりに、
図14(b)に例示した第2方向で、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出してもよい。
【0096】
図14(c)には、
図14(a)に示した第1方向と、
図14(b)に示した第2方向とで、各入力ポートInP0~InP4の直前に電圧を検出することとなる入力ポートが示されている。
図14(c)に示されるように、入力ポートInP0~InP4の何れについても、第1方向で検出した場合と、第2方向で検出した場合とで、直前に電圧を検出する入力ポートが異なっている。このため、第1方向で検出した電圧と、第2方向で検出した電圧との電圧差を算出することによって、故障した入力ポートを検出することが可能となる。
【0097】
B-3.第2実施例の変形例の温度取得処理 :
上述した第2実施例の温度取得処理では、温度を検出する(
図11のSTEP50:yes)と判断する度に、正順方向および逆順方向に各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出した(STEP54、STEP55)。このように、正順方向および逆順方向の電圧を一度に検出する理由は、正順方向に電圧を検出してから逆順方向に電圧を検出するまでの間に、各入力ポートInP0~InP4の電圧が変化して、故障の有無を誤判断する事態を回避するためである。しかし、温度を検出すると判断する周期(すなわち、サンプリング周期)を短い周期に設定しておけば、必ずしも、正順方向および逆順方向の電圧を一度に検出する必要はない。以下では、このようは変形例の温度取得処理について、第2実施例の温度取得処理との相違点を中心にして簡単に説明する。
【0098】
図15は、第2実施例の変形例の温度取得処理のフローチャートである。この変形例の温度取得処理は、
図11を用いて前述した第2実施例の温度取得処理に対して、各入力ポートInP0~InP4の電圧を、正順方向または逆順方向の何れか一方で、交互に検出する点が異なっている。また、変形例の温度取得処理では、電圧を検出する方向が、正順方向と逆順方向とで交互になるようにする目的で、電圧の検出方向を制御するフラグ(正順方向フラグ)を使用する点でも、第2実施例の温度取得処理とは異なっている。しかし、その他の点では、前述した第2実施例の温度取得処理と同様である。
【0099】
図15に示されるように、第2実施例の変形例の温度取得処理の場合でも、まず初めに、温度を検出するか否かを判断する(STEP70)。変形例の温度取得処理でも、前述した第2実施例の温度取得処理と同様に、所定のサンプリング周期で温度を検出するが、変形例のサンプリング周期は第2実施例の比べて短い周期に設定されている。そして、まだ温度を検出するタイミングになっていない場合は(STEP70:no)、同じ判断を繰り返すことによって待機状態となるが、温度を検出するタイミングになったら(STEP70:yes)、基準電圧Vccが入力されている0番ポートの電圧を検出する(STEP71)。そして、検出した基準電圧Vccが正常範囲内か否かを判断して(STEP72)、正常範囲内になかった場合は(STEP72:no)、異常の発生を報知した後(STEP73)、温度取得処理を終了する。
【0100】
これに対して、基準電圧Vccが正常範囲内にあると判断した場合は(STEP72:yes)、正順方向フラグの設定を確認して、正順方向フラグがONに設定されている場合は(STEP74:yes)、正順方向に各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出して、入力ポート毎に検出した電圧を記憶する(STEP75)。一方、正順方向フラグがOFFに設定されている場合は(STEP74:no)、逆順方向に各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出して、入力ポート毎に検出した電圧を記憶する(STEP76)。尚、正順方向および逆順方向に電圧を検出する態様は、
図12に例示した態様、または
図13に例示した態様の何れであっても構わない。
【0101】
そして、正順方向または逆順方向の何れの方向で検出した場合も、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出した後は、正順方向フラグを反転させておく(STEP77)。こうすることによって、各入力ポートInP0~InP4の電圧を正順方向に検出したら、次は逆順方向に検出し、逆順方向に検出したら、次は正順方向に検出するというように、正順方向と逆順方向とが交互になるように、各入力ポートInP0~InP4の電圧を検出することができる。
【0102】
続いて、各入力ポートInP0~InP4の各々について、今回に検出した電圧と前回に検出した電圧との電圧差を算出して(STEP78)、電圧差が所定の許容値よりも大きい入力ポートが存在するか否かを判断する(STEP79)。その結果、電圧差が許容値よりも大きな入力ポートが存在する場合は(STEP79:yes)、故障した入力ポートが存在すると判断し(STEP81)、更に、電圧差が許容値よりも大きい入力ポートを、故障した入力ポートと特定する(STEP82)。これに対して、電圧差が許容値よりも大きな入力ポートが存在しない場合は(STEP79:no)、故障した入力ポートは存在しないと判断する(STEP80)。
【0103】
以上のようにして、入力ポートでの故障の有無を判断すると共に、故障していた場合は、故障した入力ポートを特定したら(STEP79~STEP82)、処理の先頭に戻って、上述した処理を再開する。こうすれば、入力ポートInP0~InP4の何れについても、故障の有無を確実に判断することが可能となる。また、上述した変形例の温度取得処理では、一度に検出する電圧は、正順方向または逆順方向の何れかで良いので、各温度センサTh1~Th4で検出された温度を迅速に取得することが出来ると共に、各入力ポートInP0~InP4での故障の有無を判断するための処理負担も軽減させることが可能となる。
【0104】
以上、各種の実施例や変形例について説明したが、本発明は上記の実施例や変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上述した各種の実施例や変形例では、温度取得装置10が、加熱調理装置1に搭載されているものとして説明した。しかし、複数の温度センサを用いて温度を検出する機器であれば、給湯器や、温風暖房装置や、衣類乾燥機など、加熱調理装置1以外の機器に温度取得装置10が搭載されていても良い。
【符号の説明】
【0105】
1…加熱調理装置、 2…本体ケース、 3…天板、 4、5…図形、
6…誘導コイル、 7…タッチパネル、 10…温度取得装置、
11…AD変換器、 12…セレクタ、 13…制御部、
InP0~6…入力ポート、 Cs…コンデンサ、 SW0~6…スイッチ素子、
Th1~4…温度センサ、 Vcc…基準電圧。