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特許7391710ファイバ構造体、光コンバイナ、レーザ光源及びレーザ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ファイバ構造体、光コンバイナ、レーザ光源及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20231128BHJP
   G02B 6/28 20060101ALI20231128BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20231128BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G02B6/255
G02B6/28 P
H01S3/067
G02B6/42
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020024546
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021128311
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明理
(72)【発明者】
【氏名】古澤 丈晴
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191298(JP,A)
【文献】特開2017-191261(JP,A)
【文献】特開2014-225584(JP,A)
【文献】特開2015-040992(JP,A)
【文献】特開2010-204329(JP,A)
【文献】米国特許第05420952(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/24-6/28
G02B 6/30-6/40
G02B 6/42-6/43
G02B 6/46-6/54
H01S 3/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ファイバ構造体と、第2ファイバ構造体とを備える光コンバイナであって、
前記第1ファイバ構造体及び前記第2ファイバ構造体が
光ファイバ素線を有する光ファイバ部と、
前記光ファイバ部を支持する支持部材と、
前記光ファイバ部を前記支持部材に固定する固定部とを備えるファイバ構造体であって、
前記支持部材が、
前記光ファイバ部に対向するベース部と、
前記ベース部の主面から延びて前記光ファイバ部に対向する側壁部とを有し、
前記固定部が、前記固定部よりも低いヤング率を有する緩衝部を介して前記ベース部の前記主面に固定されるとともに、前記側壁部にも固定されている、ファイバ構造体からなり、
前記第1ファイバ構造体においては、前記光ファイバ部が複数本の前記光ファイバ素線を有し、
前記第2ファイバ構造体においては、前記光ファイバ部が1本の前記光ファイバ素線を有し、
前記第1ファイバ構造体の前記光ファイバ部の端面と、前記第2ファイバ構造体の前記光ファイバ部の端面とが融着接続され、
前記第1ファイバ構造体の前記支持部材が前記第2ファイバ構造体の前記支持部材を兼ねている、光コンバイナ。
【請求項2】
前記ファイバ構造体において、前記固定部のヤング率に対する前記緩衝部のヤング率の比が0.3以下である、請求項1に記載の光コンバイナ。
【請求項3】
前記ファイバ構造体において、前記ベース部が、前記主面と前記緩衝部との間に設けられ、前記主面から前記光ファイバ部に向かって突出する突出部を有する、請求項1又は2に記載の光コンバイナ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光コンバイナと、
前記光コンバイナの前記第2ファイバ構造体の前記光ファイバ素線から出射される光に基づいて特定の波長の光をレーザ光として出射させる光共振部と、
前記光コンバイナの前記第1ファイバ構造体の複数本の前記光ファイバ素線の各々に励起光を入射させる励起光源と、
を備える、レーザ光源。
【請求項5】
複数のレーザ光源と、
前記複数のレーザ光源から入射されるレーザ光を結合して出射させる光コンバイナとを備え、
前記光コンバイナが、請求項1~3のいずれか一項に記載の光コンバイナからなる、レーザ装置。
【請求項6】
前記レーザ光源が請求項に記載のレーザ光源からなる、請求項に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバ構造体、光コンバイナ及びレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力ファイバレーザなどのレーザ光源においては一般に、複数の光源からの励起光を合波させて光共振部へ入射させる光コンバイナが用いられる。
【0003】
光コンバイナは、複数本の光ファイバ素線を有する第1光ファイバ部と、1本の光ファイバ素線を有する第2光ファイバ部と、これらを収容して支持する支持部材とを備えている。支持部材は、ベース部と、ベース部の主面の縁部から延びる側壁部とを有する。支持部材においては、第1光ファイバ部の複数本の光ファイバ素線の端面と、第2光ファイバ部の光ファイバ素線の端面とが融着接続されている。
【0004】
このような光コンバイナとして、例えば下記特許文献1に開示されているものが知られている。同文献には、第1光ファイバ部及び第2光ファイバ部を支持部材に固定するために、第1光ファイバ部及び第2光ファイバ部を固定樹脂で支持部材のベース部の主面及び側壁部に接着させて固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-191298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の光コンバイナは、コンバイナから出力されるビームの品質の点で改善の余地を有していた。
【0007】
なお、ビームの品質は、例えばM(エムスクエア)を指標にすることができる。Mは、ビームをどの程度小さく集光できるかを示すパラメーターであり、Mが小さいほどビームの品質がよいとされる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下を抑制することができるファイバ構造体、光コンバイナ、レーザ光源及びレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討を重ねた。まず、本発明者らは、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれる場合に以下のことが起こり得るのではないかと考えた。すなわち、光コンバイナが高温環境下に置かれると、固定樹脂が膨張してベース部の主面を押圧する。このとき、ベース部から固定樹脂への反作用により、固定樹脂がベース部から離間する方向へ応力を受ける。それに伴い、第1光ファイバ部のうち固定樹脂で固定されている被固定部の位置がベース部から離間する方向にずらされる。その結果、第1光ファイバ部の被固定部が、第1光ファイバ部のうち固定樹脂と第1光ファイバ部の端面との間で第2光ファイバ部によって位置が規制されている位置規制部に対して曲げられることとなる。一方、光コンバイナが低温環境下に置かれると、固定樹脂が収縮してベース部の主面が固定樹脂の方へ引っ張られる。このとき、固定樹脂からベース部への反作用により、固定樹脂がベース部の主面の方向へ応力を受ける。それに伴い、第1光ファイバ部の被固定部の位置がベース部に近づく方向にずらされる。その結果、第1光ファイバ部の被固定部が、第1光ファイバ部の位置規制部に対して曲げられることとなる。このように、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれる場合には、第1光ファイバ部の被固定部が、第1光ファイバ部の位置規制部に対して曲げられることとなる。同様に、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれる場合には、第2光ファイバ部の被固定部が、第2光ファイバ部の位置規制部に対して曲げられることとなる。従って、本発明者らは、光コンバイナから出力されるビームの品質を向上させるためには、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれても、固定樹脂の膨張又は収縮によって、第1光ファイバ部の被固定部が第1光ファイバ部の位置規制部に対して曲げられないようにするとともに、第2光ファイバ部の被固定部が第2光ファイバ部の位置規制部に対して曲げられないようにすることが重要になるのではないかと考えた。そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、光ファイバ素線を有する光ファイバ部と、前記光ファイバ部を支持する支持部材と、前記光ファイバ部を前記支持部材に固定する固定部とを備えるファイバ構造体であって、前記支持部材が、前記光ファイバ部に対向するベース部と、前記ベース部の主面から延びて前記光ファイバ部に対向する側壁部とを有し、前記固定部が、前記固定部よりも低いヤング率を有する緩衝部を介して前記ベース部の前記主面に固定されるとともに、前記側壁部にも固定されている、ファイバ構造体である。
【0011】
本発明のファイバ構造体(第1ファイバ構造体)によれば、同様の構成を有する第2ファイバ構造体を用意し、この第2ファイバ構造体の光ファイバ部の光ファイバ素線の端面と、第1ファイバ構造体の光ファイバ素線の端面とを融着接続し、第1ファイバ構造体の支持部材が第2ファイバ構造体の支持部材を兼ねるようにして光コンバイナを形成すると、光コンバイナにおいて、第1ファイバ構造体の光ファイバ部の位置は第2ファイバ構造体によって規制されることとなる。
【0012】
このとき、第1ファイバ構造体が高温環境下に置かれると、固定部が膨張し、緩衝部を介してベース部の主面を押圧する。このとき、緩衝部は固定部よりも低いヤング率を有しており、固定部よりも柔らかくなっている。このため、固定部が膨張しても、固定部からベース部への押圧力が緩衝部によって緩和される。その結果、ベース部から固定部への反作用が小さくなり、固定部がベース部から離間する方向へ受ける応力が小さくなる。それに伴い、第1光ファイバ部のうち固定部で固定されている被固定部の位置がベース部から離間する方向にずらされにくくなる。その結果、第1光ファイバ部のうち固定部と第1光ファイバ部の端面との間で第2光ファイバ部によって位置が規制されている位置規制部に対して、第1光ファイバ部の被固定部が曲げられにくくなる。
【0013】
一方、ファイバ構造体が低温環境下に置かれると、固定部が収縮し、緩衝部を介してベース部の主面が固定部の方へ引っ張られる。このとき、緩衝部は固定部よりも低いヤング率を有しており、固定部よりも柔らかくなっている。このため、固定部が収縮しても、緩衝部が伸びるため、固定部からベース部への反作用が小さくなり、固定部がベース部の主面の方向へ受ける応力が小さくなる。それに伴い、第1光ファイバ部の被固定部の位置がベース部に近づく方向にずらされにくくなる。その結果、第1光ファイバ部の被固定部が、第1光ファイバ部の位置規制部に対して、曲げられにくくなる。
【0014】
このように、本発明のファイバ構造体によれば、温度変化の大きい環境下に置かれても、光ファイバ部の被固定部が、光ファイバ部の位置規制部に対して、曲げられにくくなる。このため、本発明のファイバ構造体を用いて光コンバインナを形成した場合に、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下を抑制することができる。
【0015】
上記ファイバ構造体においては、前記固定部のヤング率に対する前記緩衝部のヤング率の比が0.3以下であることが好ましい。
【0016】
この場合、ファイバ構造体が温度変化の大きい環境下に置かれても、固定部のヤング率に対する緩衝部のヤング率の比が0.3を超える場合に比べて、光ファイバ部の被固定部が、光ファイバ部の位置規制部に対して、より曲げられにくくなり、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下をより抑制することができる。
【0017】
上記ファイバ構造体においては、前記ベース部が、前記主面と前記緩衝部との間に設けられ、前記主面から前記光ファイバ部に向かって突出する突出部を有することが好ましい。
【0018】
この場合、ファイバ構造体が高温環境下に置かれ、固定部の膨張に伴って緩衝部が固定部から押圧されて圧縮される場合に、ベース部が突出部を有しない場合に比べて、緩衝部が、突出部よりも外側にまで広がりやすくなり、固定部から緩衝部への応力が緩和されやすくなる。その結果、光ファイバ部の被固定部が、光ファイバ部の位置規制部に対して、より一層曲げられにくくなり、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下をより抑制することができる。
【0019】
また本発明は、第1ファイバ構造体と、第2ファイバ構造体とを備える光コンバイナであって、前記第1ファイバ構造体及び前記第2ファイバ構造体が、上述したファイバ構造体からなり、前記第1ファイバ構造体においては、前記光ファイバ部が複数本の前記光ファイバ素線を有し、前記第2ファイバ構造体においては、前記光ファイバ部が1本の前記光ファイバ素線を有し、前記第1ファイバ構造体の前記光ファイバ部の端面と、前記第2ファイバ構造体の前記光ファイバ部の端面とが融着接続され、前記第1ファイバ構造体の前記支持部材が、前記第2ファイバ構造体の前記支持部材を兼ねている、光コンバイナである。
【0020】
この光コンバイナによれば、第1ファイバ構造体が温度変化の大きい環境下に置かれても、第1光ファイバ部の被固定部が、第1光ファイバ部の位置規制部に対して、曲げられにくくなる。一方、第2ファイバ構造体が温度変化の大きい環境下に置かれても、第2光ファイバ部の被固定部が、第2光ファイバ部の位置規制部に対して、曲げられにくくなる。このため、本発明の光コンバインナによれば、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下を抑制することができる。
【0021】
また、本発明は、上述した光コンバイナと、前記光コンバイナの前記第2ファイバ構造体の前記光ファイバ素線から出射される光に基づいて特定の波長の光をレーザ光として出射させる光共振部と、前記光コンバイナの前記第1ファイバ構造体の複数本の前記光ファイバ素線の各々に励起光を入射させる励起光源とを備えるレーザ光源である。
【0022】
このレーザ光源によれば、励起光源から、光コンバイナの第1ファイバ構造体の複数本の光ファイバ素線の各々に励起光が入射され、光コンバイナの第2ファイバ構造体の光ファイバ素線から出射される光に基づいて特定の波長の光が光共振部からレーザ光として出射される。このとき、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下を抑制することができる。従って、本発明のレーザ光源が温度変化の大きい環境下に置かれても、レーザ光源から出力されるビーム品質の低下を抑制することができる。
【0023】
さらに、本発明は、複数のレーザ光源と、前記複数のレーザ光源から入射されるレーザ光を結合して出射させる光コンバイナとを備え、前記光コンバイナが、上述した光コンバイナからなる、レーザ装置である。
【0024】
このレーザ装置によれば、複数のレーザ光源からレーザ光が光コンバイナの第1ファイバ構造体に入射され、結合されて第2ファイバ構造体からレーザ光として出射される。このとき、光コンバイナが、上述した光コンバイナからなり、光コンバイナが温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下を抑制することができる。従って、本発明のレーザ装置が温度変化の大きい環境下に置かれても、レーザ装置から出力されるビーム品質の低下を抑制することができる。
【0025】
上記レーザ装置においては、前記レーザ光源が、上述したレーザ光源からなることが好ましい。
【0026】
この場合、レーザ光源が、上述したレーザ光源からなり、温度変化の大きい環境下に置かれても、レーザ光源から出力されるビーム品質の低下を抑制することができる。このため、本発明のレーザ装置が温度変化の大きい環境下に置かれても、レーザ装置から出力されるビーム品質の低下をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナから出力されるビームの品質の低下を抑制することができるファイバ構造体、光コンバイナ、レーザ光源及びレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の光コンバイナの一実施形態を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿った部分切断面端面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図3の光ファイバ素線を示す拡大図である。
図6】本発明の光コンバイナの効果を示すために使用される解析モデルとしての光コンバイナを示す部分側面図である。
図7図6のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9】光コンバイナ(3-1~3-4)における被覆光ファイバのY方向の変位量とZ座標との関係を示すグラフである。
図10】光コンバイナ(3-1~3-4)における被覆光ファイバの曲率半径rの逆数(1/r)とZ座標との関係を示すグラフである。
図11】光コンバイナ(1-1~1-4,2-1~2-4及び3-1~3-4)における曲率積分値(ピーク面積の総和)を示すグラフである。
図12】本発明のレーザ光源の一実施形態を示す概略図である。
図13】本発明のレーザ装置の一実施形態を示す概略図である。
図14】本発明の光コンバイナの他の実施形態を示す部分切断面端面図である。
図15】本発明の光コンバイナのさらに他の実施形態を示す部分切断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<光コンバイナ>
以下、本発明の光コンバイナの実施形態について図1~5を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の光コンバイナの一実施形態を示す平面図、図2は、図1のII-II線に沿った部分切断面端面図、図3は、図1のIII-III線に沿った断面図、図4は、図1のIV-IV線に沿った断面図、図5は、図3の光ファイバ素線を示す拡大図である。
【0030】
図1及び図2に示すように、光コンバイナ100は、複数本の光ファイバ素線21を有する第1光ファイバ部101aを有する第1ファイバ構造体101と、1本の光ファイバ素線21を有する第2光ファイバ部102aを有する第2ファイバ構造体102とを備えている。
【0031】
第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102は、第1光ファイバ部101a及び第2光ファイバ部102aを収容して支持する収容溝10aを有する支持部材10を備えている。支持部材10は、ベース部11と、ベース部11の主面11aの両縁部からそれぞれ延びて互いに対向する2つの側壁部12とを有している(図3及び図4参照)。ここで、第1ファイバ構造体101における支持部材10は、第2ファイバ構造体101における支持部材10を兼ねている。
【0032】
第1ファイバ構造体101は、第1光ファイバ部101aを支持部材10に固定する第1固定部30と、第1固定部30とベース部11の主面11aとの間に設けられる緩衝部50とをさらに備えている。第1固定部30は、2つの側壁部12の各々に接着により固定されるとともに、緩衝部50を介してベース部11の主面11aに接着により固定されている。ここで、第1固定部30は、第1光ファイバ部101aを包囲するように設けられている。こうして第1固定部30は支持部材10に固定されている。緩衝部50は、第1固定部30よりも低いヤング率を有する。
【0033】
第1光ファイバ部101aは、被覆部101Aと、被覆部101Aに隣接する素線露出部101Bとを有している。被覆部101Aは、複数本の光ファイバ素線21と、複数本の光ファイバ素線21の各々を被覆する被覆22とを有しており(図3参照)、素線露出部101Bは、露出された複数本の光ファイバ素線21からなる。ここで、複数本の光ファイバ素線21は被覆部101A及び素線露出部101Bに共通の光ファイバ素線である。すなわち、被覆部101Aの光ファイバ素線21の延長部が素線露出部101Bの光ファイバ素線21として構成されている。なお、以下、被覆部101A及び素線露出部101Bにおける光ファイバ素線21と被覆部101Aにおける被覆22とからなるものをまとめて光ファイバ20と呼ぶこととする。
【0034】
一方、第2ファイバ構造体102は、第2光ファイバ部102aを支持部材10に固定する第2固定部30と、第2固定部30とベース部11の主面11aとの間に設けられる緩衝部50とをさらに備えている。第2固定部30は、2つの側壁部12の各々に接着により固定されるとともに、緩衝部50を介してベース部11の主面11aに接着により固定されている。ここで、第2固定部30は、第2光ファイバ部102aを包囲するように設けられている。こうして第2固定部30は支持部材10に固定されている。緩衝部50は第2固定部30よりも低いヤング率を有する。
【0035】
第2光ファイバ部102aは、被覆部102Aと、被覆部102Aに隣接する素線露出部102Bとを有している。被覆部102Aは、1本の光ファイバ素線21と、光ファイバ素線21を被覆する被覆22とを有しており(図4参照)、素線露出部102Bは、露出された光ファイバ素線21からなる。ここで、1本の光ファイバ素線21は被覆部102A及び素線露出部102Bに共通の光ファイバ素線である。すなわち、被覆部102Aの光ファイバ素線21の延長部が素線露出部102Bの光ファイバ素線21として構成されている。なお、以下、被覆部102A及び素線露出部102Bにおける光ファイバ素線21と被覆部102Aにおける被覆22とからなるものもまとめて光ファイバ20と呼ぶこととする。
【0036】
そして、第1ファイバ構造体101の第1光ファイバ部101aの素線露出部101Bの端面と、第2ファイバ構造体102の第2光ファイバ部102aの素線露出部102Bの端面とが融着接続されている。ここで、図5に示すように、光ファイバ素線21は、コア21aと、コア21aを包囲するクラッド21bとを有しており、光コンバイナ100に入射された光は、第1ファイバ構造体101の光ファイバ素線21のコア21aを通り、第2ファイバ構造体102の光ファイバ素線21のコア21aを通ることとなる。こうして第1ファイバ構造体101と第2ファイバ構造体102とは光結合された状態で支持部材10の収容溝10aに収容されている。
【0037】
また、第1ファイバ構造体101は、被覆部101Aと素線露出部101Bとの境界を覆う封止部40を備えている。
【0038】
一方、第2ファイバ構造体102も、被覆部102Aと素線露出部102Bとの境界を覆う封止部40を備えている。
【0039】
封止部40は、支持部材10のベース部11の主面11a、及び2つの側壁部12の各々に接着されている。
【0040】
また、第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102においては、封止部40は、第1固定部30及び第2固定部30にそれぞれ接着されている。ここで、第1固定部30及び第2固定部30は、支持部材10に対して封止部40よりも大きい接着強度を有する。
【0041】
上記光コンバイナ100によれば、第1ファイバ構造体101の第1光ファイバ部101aの素線露出部101Bの端面と、第2ファイバ構造体102の第2光ファイバ部102aの素線露出部102Bの端面とが融着接続されている。このため、第1ファイバ構造体101の光ファイバ部101aは第2ファイバ構造体102によって規制されることとなる。
【0042】
このとき、第1ファイバ構造体101が高温環境下に置かれると、第1固定部30が膨張し、緩衝部50を介してベース部11の主面11aを押圧する。このとき、緩衝部50は第1固定部30よりも低いヤング率を有しており、第1固定部30よりも柔らかくなっている。このため、第1固定部30が膨張しても、第1固定部30からベース部11への押圧力が緩衝部50によって緩和される。その結果、ベース部11から第1固定部30への反作用が小さくなり、第1固定部30がベース部11から離間する方向へ受ける応力が小さくなる。それに伴い、第1光ファイバ部101aのうち第1固定部30で固定されている被固定部の位置がベース部11から離間する方向にずらされにくくなる。その結果、第1光ファイバ部101aのうち第1固定部30と第2光ファイバ部102aの端面との間で第2光ファイバ部102aによって位置が規制されている位置規制部に対して、第1光ファイバ部101aの被固定部が曲げられにくくなる。
【0043】
一方、第1ファイバ構造体101が低温環境下に置かれると、第1固定部30が収縮し、緩衝部50を介してベース部11の主面11aが第1固定部30の方へ引っ張られる。このとき、緩衝部50は第1固定部30よりも低いヤング率を有しており、第1固定部30よりも柔らかくなっている。このため、第1固定部30が収縮しても、緩衝部50が伸びるため、第1固定部30からベース部11への反作用が小さくなり、第1固定部30がベース部11の主面11aの方向へ受ける応力が小さくなる。それに伴い、第1光ファイバ部101aの被固定部の位置がベース部11に近づく方向にずらされにくくなる。その結果、第1光ファイバ部101aの被固定部が、第1光ファイバ部101aの位置規制部に対して、曲げられにくくなる。
【0044】
このように、第1ファイバ構造体101によれば、温度変化の大きい環境下に置かれても、第1光ファイバ部101aの被固定部が、第1光ファイバ部101aの位置規制部に対して、曲げられにくくなる。
【0045】
同様に、第2ファイバ構造体102によれば、温度変化の大きい環境下に置かれても、第2光ファイバ部102aのうち第2固定部30で固定されている被固定部が、第2固定部30と第1光ファイバ部101aの端面との間で第1ファイバ構造体101の光ファイバ部101aによって位置が規制されている位置規制部に対して、曲げられにくくなる。
【0046】
以上のことから、光コンバイナ100によれば、光コンバイナ100から出力されるビームの品質の低下を抑制することができる。
【0047】
また、第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102においては、封止部40が、第1固定部30及び第2固定部30にそれぞれ接着され、第1固定部30及び第2固定部30は、支持部材10に対して封止部40よりも大きい接着強度を有する。
【0048】
このように、第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102が、支持部材10に対して封止部40より大きい接着強度を有する第1固定部30及び第2固定部30で支持部材10に固定されることで、第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102の支持部材10への固定が補強される。このため、第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102と支持部材10との分離を抑制することができる。
【0049】
次に、光コンバイナ100における支持部材10、光ファイバ20、第1固定部30、第2固定部30、封止部40及び緩衝部50について詳細に説明する。
【0050】
(支持部材)
支持部材10を構成する材料は、特に制限されるものではなく、樹脂又は無機材料のいずれであってもよいが、無機材料で構成されることが好ましい。この場合、無機材料は、樹脂に比べて硬質であるため、第1光ファイバ部101a及び第2光ファイバ部102aを外力や衝撃、振動から保護できる。また、無機材料は樹脂に比べて熱膨張係数が小さいため、周囲の温度環境の変化に伴う熱膨張又は熱収縮が抑制され、光ファイバ20にマイクロベンドを発生させることが抑制され、光ファイバ20における光学特性の低下を抑制することができる。このような無機材料としては、例えばネオセラム(登録商標)や石英などのガラス材料が挙げられる。
【0051】
(光ファイバ)
光ファイバ20は、光ファイバ素線21と被覆22とを有する。ここで、被覆22は、光ファイバ素線21のクラッド21bの屈折率よりも小さい屈折率を有する材料で構成されることが好ましい。被覆22を構成する材料としては、例えばシリコン樹脂及びポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0052】
(第1固定部及び第2固定部)
第1固定部30及び第2固定部30は、支持部材10に第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102を固定させることができる材料で構成されればよい。第1固定部30及び第2固定部30を構成する材料としては、例えばシリコン樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0053】
第1固定部30及び第2固定部30のヤング率はそれぞれ、特に制限されるものではないが、通常は0.1MPa以上であり、好ましくは1MPa以上である。但し、第1固定部30又は第2固定部30のヤング率は、100MPa以下であることが好ましい。なお、本明細書において、ヤング率は、室温(23℃)における値をいうものとする。
【0054】
(封止部)
封止部40は、封止性能を有する材料で構成されればよく、このような材料としては、例えば下記式(1)で表される構造を有するフッ素樹脂を含む。
【化1】
(上記式(1)中、Rは、二価の有機フッ素化合物基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【0055】
このフッ素樹脂は、下記式(2)で表される構造を主鎖に含む架橋性化合物を紫外線又は加熱によって架橋させることによって得ることができる。
【化2】
(上記式(2)中、Rは、二価の有機フッ素化合物基を表し、nは1以上の整数を表す。R~Rは各々独立に、有機基を表す。)
【0056】
上記式(1)及び(2)におけるRは二価の有機フッ素化合物基であればよく、二価の有機フッ素化合物基としては、例えば-CF-CF(CF)-O-、-CF-O-、-CF-CF-O-、-CF-CF-CF-O-が好ましい。
【0057】
この場合、封止部40が、C-C結合やC-H結合よりも大きな結合エネルギーを有するC-F結合及びSi-O結合を有することとなるため、封止部40の耐熱性がより向上し、第1ファイバ構造体101及び第2ファイバ構造体102の耐久性をより向上させることができる。
【0058】
上記式(2)におけるR~Rで表される有機基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の、末端にCH=CH-構造を有する基、及び、アルキル基などの炭化水素基が挙げられる。
【0059】
封止部40の屈折率は特に制限されないが、クラッド21bの屈折率よりも小さいことが好ましい。この場合、光ファイバ素線21内に光を閉じ込めることが可能となる。
【0060】
封止部40のヤング率は特に制限されるものではないが、10MPa以下であることが好ましい。
【0061】
この場合、光コンバイナ100の第1ファイバ構造体101に光が入射され、光コンバイナ100の第2ファイバ構造体102から出射されると、封止部40のヤング率が10MPaを超える場合に比べて、出射される光のビーム品質をより向上させることができる。
【0062】
但し、封止部40の形状を維持するという理由から、封止部40のヤング率は、1kPa以上であることが好ましい。
【0063】
(緩衝部)
緩衝部50は、第1固定部30及び第2固定部30よりも低いヤング率を有するものであればよい。すなわち、第1固定部30又は第2固定部30のヤング率に対する緩衝部50のヤング率の比率Rは1より小さければよい。
【0064】
但し、Rは、0.3以下であることが好ましい。この場合、光コンバイナ100が温度変化の大きい環境下に置かれても、Rが0.3を超える場合に比べて、第1光ファイバ部101aの被固定部が、第1光ファイバ部101aの位置規制部に対して、より曲げられにくくなる。また、第2光ファイバ部102aの被固定部も、第2光ファイバ部102aの位置規制部に対して、より曲げられにくくなる。このため、光コンバイナ100から出力されるビームの品質の低下をより抑制することができる。
【0065】
但し、緩衝部50がその形状を維持できるヤング率であること、高ヤング率の第1固定部30及び第2固定部30により光ファイバ素線21に過大な応力が加わるのを防ぐことを考慮して、Rは1×10-5以上であることが好ましい。
【0066】
また、緩衝部50は、ベース部11のヤング率以上のヤング率を有していてもよく、ベース部11のヤング率より低いヤング率を有していてもよいが、緩衝部50は、ベース部11のヤング率より低いヤング率を有している場合に特に有効に機能する。ベース部11のヤング率に対する緩衝部50のヤング率の比率R1は1より小さければよい。
【0067】
ここで、本発明の効果を確認するために、以下の構成を有する光コンバイナを解析モデルとし、以下の解析条件で、且つ、表1に示すように固定部及び緩衝部のヤング率の組み合わせが異なる12個の光コンバイナ(1-1~1-4,2-1~2-4及び3-1~3-4)について解析を行った。このとき、解析に際しては、有限要素法解析ソフトウェア(製品名「ANSYS」、アンシスインコーポレーテッド社製)を使用した。結果を図9~11に示す。
【0068】
図9は、図6に示す光コンバイナ(3-1~3-4)についての光ファイバ20におけるY方向の変位量とZ座標との関係、すなわち光ファイバ20におけるY方向の変位量分布を示すグラフであり、図10は、図6に示す光コンバイナ(3-1~3-4)についての光ファイバ20における曲率半径rの逆数(1/r)とZ座標との関係、すなわち光ファイバ20における曲率半径rの逆数(1/r)の分布を示すグラフである。
【0069】
図11は、図6に示す光コンバイナ(1-1~1-4,2-1~2-4及び3-1~3-4)における曲率積分値を示すグラフである。ここで、曲率積分値とは、図10において、第1光ファイバ部の領域(z座標=0~40mm)における曲率半径rの逆数(1/r)のピークの面積の積分値(総和)を示す。
【0070】
なお、図9には、緩衝部50がない場合の光ファイバ20におけるY方向の変位量分布も示してあり、図10には、緩衝部50がない場合の光ファイバ20の曲率半径rの逆数(1/r)の分布を示してある。また図9及び図10において、z座標40mmにおける破線は、第1光ファイバ部101aと第2光ファイバ部102aとの融着箇所を示す。さらに図11には、緩衝部50がない場合の曲率積分値も示してある。
【0071】
<光コンバイナの構成>
光コンバイナの構成は以下の通りとした。
(第1光ファイバ部)
光ファイバ素線の本数:7本
外径:175μm
光ファイバ素線の材料:石英
光ファイバ素線の物性値:ヤング率E=72000MPa、ポアソン比ν=0.17
被覆の外径:390μm
被覆の物性値:ヤング率E=700MPa、ポアソン比ν=0.35
素線露出部のZ方向の長さ:20mm(図6参照)
被覆部のうち第1固定部を除いた部分の長さ:5mm(図6参照)
(第2光ファイバ部)
光ファイバ素線の本数:1本
外径:550μm
光ファイバ素線の材料:石英
光ファイバ素線の物性値:ヤング率E=72000MPa、ポアソン比ν=0.17
被覆の外径:800μm
被覆の物性値:ヤング率E=700MPa、ポアソン比ν=0.35
素線露出部のZ方向の長さ:20mm(図6参照)
被覆部のうち第2固定部を除いた部分の長さ:5mm(図6参照)
(第1固定部)
第1固定部のZ方向の長さ:15mm(図6参照)
第1固定部の断面の寸法:1.5mm×1.5mm(図7参照)
(第2固定部)
第2固定部のZ方向の長さ:15mm(図6参照)
第2固定部の断面の寸法:1.5mm×1.5mm(図8参照)
(緩衝部)
X方向の幅:1.5mm
Y方向の厚さ:0.5mm
Z方向の長さ:15mm
<解析条件>
解析は、第1固定部30及び第2固定部30の熱膨張率(=熱膨張係数α×ΔT)が-1%となる温度条件で行った。
【表1】
【0072】
図9に示す結果より、緩衝部50を有する光コンバイナでは、Z座標が0~16mm又は64~80mmであるとき、すなわち、光ファイバ20が固定部30で固定されている領域では、緩衝部50を有しない光コンバイナに比べて、Y方向の変位量が顕著に小さくなることが分かる。なお、図9は、3-1~3-4の光コンバイナについての結果を示しているが、1-1~1-4及び2-1~2-4の光コンバイナについても同様の結果が得られている。
【0073】
また図10に示す結果より、緩衝部50を有する光コンバイナでは、Z座標が0~16mm又は64~80mmであるとき、すなわち、光ファイバ20が固定部30で固定されている領域では、緩衝部50を有しない光コンバイナに比べて、曲率半径rの逆数のピークが顕著に小さくなることが分かる。なお、図10は、3-1~3-4の光コンバイナについての結果を示しているが、1-1~1-4及び2-1~2-4の光コンバイナについても同様の結果が得られている。ここで、曲率半径rの逆数のピークは、大きく曲げられているほど大きくなり、小さく曲げられるほど小さくなる。
【0074】
さらに図11に示す結果より、緩衝部50を有する光コンバイナでは、固定部30のヤング率の大小にかかわらず、緩衝部50を有しない光コンバイナに比べて、曲率積分値が顕著に小さくなることが分かる。
【0075】
以上のことから、緩衝部50を有する光コンバイナでは、緩衝部50を有しない光コンバイナに比べて、光ファイバ20が固定部30によって曲げられにくくなることが分かる。従って、本発明の光コンバイナによれば、出力されるビームの品質の低下を抑制できるものと考えられる。
【0076】
<レーザ光源>
次に、本発明のレーザ光源の実施形態について図12を参照しながら説明する。図12は、本発明のレーザ光源の一実施形態を示す概略図である。
【0077】
図12に示すように、レーザ光源200は、光コンバイナ100と、光コンバイナ100の第2ファイバ構造体102の光ファイバ20の光ファイバ素線21から出射される光に基づいて特定の波長の光をレーザ光として出射させる光共振部201と、光コンバイナ100の第1ファイバ構造体101の複数本の光ファイバ20の光ファイバ素線21の各々に励起光を入射させる励起光源D1~D7と、光共振部201からレーザ光として出射される光を出力する出力用ファイバ205とを備える。
【0078】
このレーザ光源200によれば、励起光源D1~D7から、光コンバイナ100の第1ファイバ構造体101の複数本の光ファイバ20の光ファイバ素線21の各々に励起光が入射され、光コンバイナ100の第2ファイバ構造体102の光ファイバ20の光ファイバ素線21から出射される光に基づいて特定の波長の光が光共振部201からレーザ光として出射され、このレーザ光が出力用ファイバ205から出力される。このとき、既に述べたように、光コンバイナ100が温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナ100から出力されるビームの品質の低下を抑制することができる。従って、レーザ光源200が温度変化の大きい環境下に置かれても、レーザ光源200から出力されるビーム品質の低下を抑制することができる。
【0079】
励起光源D1~D7は、励起光を出射するものであればよく、励起光源D1~D7としては、例えばレーザダイオード等を用いることができる。
【0080】
光共振部201は、増幅用光ファイバ202と、その一端に設けられる第1反射部203と、その他端に設けられる第2反射部204とを備えている。第1反射部203は、光コンバイナ100の第2ファイバ構造体102の光ファイバ20に接続され、第2反射部204は、出力用ファイバ205に接続されている。光共振部201では、入射された励起光により自然放出光が発生し、発生した自然放出光のうち第1反射部203及び第2反射部204によって選択的に反射された特定の波長の光を種として光の誘導放出が起こり、この誘導放出が繰り返されることで特定の波長の光がレーザ光として出力される。
【0081】
第1反射部203及び第2反射部204は、例えばファイバーブラッググレーティング(FBG)等で構成されている。
【0082】
増幅用光ファイバ202は、希土類元素添加光ファイバで構成される。希土類元素は、特に制限されるものではないが、希土類元素としては、例えばイッテルビウム(Yb)などが用いられる。
【0083】
なお、励起光源D1~D7の数は、7個となっているが、7個に限定されるものではない。光コンバイナ100の第1ファイバ構造体101に含まれる光ファイバ20の本数に応じて適宜変更が可能である。
【0084】
<レーザ装置>
次に、本発明のレーザ装置の実施形態について図13を参照しながら説明する。図13は、本発明のレーザ装置の一実施形態を示す概略図である。
【0085】
図13に示すように、レーザ装置300は、複数のレーザ光源L1~L7と、複数のレーザ光源L1~L7から入射されるレーザ光を結合して出力する光コンバイナ100と、光コンバイナ100の第2ファイバ構造体102の光ファイバ20に接続される出力用ファイバ301とを備えている。
【0086】
このレーザ装置300によれば、複数のレーザ光源L1~L7からレーザ光が光コンバイナ100の第1ファイバ構造体101に入射され、結合されて第2ファイバ構造体102の光ファイバ20から出射され、この出射光が出力用ファイバ301から出力される。このとき、既に述べたように、光コンバイナ100が温度変化の大きい環境下に置かれても、光コンバイナ100から出力されるビームの品質の低下を抑制することができる。従って、レーザ装置300が温度変化の大きい環境下に置かれても、レーザ装置300から出力されるビーム品質の低下を抑制することができる。
【0087】
上記レーザ装置300においては、レーザ光源L1~L7は、レーザ光源であればいかなるものでもよく、レーザ光源L1~L7としては、例えばレーザダイオード、COレーザ、YAGレーザ、上述したレーザ光源200などが挙げられる。中でも、レーザ光源L1~L7は、上述したレーザ光源200からなることが好ましい。
【0088】
この場合、レーザ光源L1~L7が上述したレーザ光源200からなり、耐久性を向上させることが可能な光コンバイナ100を有する。このため、レーザ装置300は、より耐久性を向上させることが可能となる。
【0089】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば上記実施形態では、第1固定部30及び第2固定部30が封止部40に接着されているが、図14に示す光コンバイナ400のように、第1固定部30及び第2固定部30はそれぞれ封止部40から離間していてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、封止部40が、ベース部11の主面11a及び2つの側壁部12の各々に接着されているが、ベース部11の主面11aには接着されていなくてもよく、ベース部11の主面11aから離間していてもよい。あるいは、封止部40は、ベース部11の主面11aにのみ接着され、側壁部12には接着されていなくてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、封止部40は省略されてもよい。
【0092】
さらに、上記実施形態では、第1固定部30が第1光ファイバ部101aを包囲するように設けられているが、第1固定部30は、第1光ファイバ部101aを支持部材10のベース部11の主面11a及び側壁部12の各々に固定されれば必ずしも第1光ファイバ部101aを包囲していなくてもよい。同様に、第2固定部30も、第2光ファイバ部102aを支持部材10のベース部11の主面11a及び側壁部12の各々に固定されれば必ずしも第2光ファイバ部102aを包囲していなくてもよい。
【0093】
さらに、上記実施形態では、緩衝部50が支持部材10のベース部11の主面11a上に直接設けられているが、ベース部11の主面11aに凹部(図示せず)が形成され、その凹部の上に緩衝部50が設けられてもよく、図15に示す光コンバイナ500のように、ベース部11の主面11a上に、主面11aから第1光ファイバ部101aに向かって突出する突出部13が設けられ、その突出部13の上に緩衝部50が設けられてもよい。このうち、ベース部11の主面11a上に、主面11aから第1光ファイバ部101aに向かって突出する突出部13が設けられ、その突出部13の上に緩衝部50が設けられることが好ましい。この場合、光コンバイナ100が高温環境下に置かれ、第1固定部30の膨張に伴って緩衝部50が第1固定部30から押圧されて圧縮される場合に、ベース部11が突出部13を有しない場合に比べて、緩衝部50が、突出部13よりも外側にまで広がりやすくなり、第1固定部30から緩衝部50への応力が緩和されやすくなる。その結果、第1光ファイバ部101aの被固定部が、第1光ファイバ部101aの位置規制部に対して、より一層曲げられにくくなる。
【0094】
また、ベース部11の主面11a上に、主面11aから第2光ファイバ部102aに向かって突出する突出部13が設けられ、その突出部13の上に緩衝部50が設けられてもよい。この場合、第2光ファイバ部102aの被固定部も、第2光ファイバ部102aの位置規制部に対して、より一層曲げられにくくなる。従って、光コンバイナ100から出力されるビームの品質の低下をより一層抑制することができる。
【0095】
突出部13のうち緩衝部50側の主面は、緩衝部50のうちベース部11側の面全体と接触していてもよく、緩衝部50のうちベース部11側の面の一部と接触していてもよいが、緩衝部50のうちベース部11側の面全体と接触していることが好ましい。この場合、緩衝部50の緩衝作用を効果的に発揮させることができる。
【0096】
なお、緩衝部50と封止部40とは離間していることが好ましい。この場合、緩衝部50と封止部40との間に空間が形成されるため、第1固定部30又は第2固定部30によって緩衝部50が圧縮される際に、緩衝部50がその空間にまで広がることが可能となり、緩衝部50が圧縮されやすくなり、緩衝部50の緩衝作用をより効果的に発揮させることができる。
【符号の説明】
【0097】
10…支持部材
11…ベース部
11a…主面
12…側壁部
13…突出部
21…光ファイバ素線
30…第1固定部、第2固定部
50…緩衝部
100,400,500…光コンバイナ
101…第1ファイバ構造体
101a…第1光ファイバ部
102…第2ファイバ構造体
102a…第2光ファイバ部
200…レーザ光源
201…光共振部
300…レーザ装置
301…出力用ファイバ
D1~D7…励起光源
L1~L7…レーザ光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15