(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】蒸着マスクユニットの作製方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
C23C14/04 A
(21)【出願番号】P 2020037764
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西ノ原 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】渡部 将弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 優子
(72)【発明者】
【氏名】木村 遼太郎
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/009088(WO,A1)
【文献】特開2020-007622(JP,A)
【文献】特開昭59-119724(JP,A)
【文献】特開平6-333795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口を有する蒸着マスクを形成すること、
光硬化性樹脂膜と保護膜を有するレジストフィルムを、前記光硬化性樹脂膜が前記蒸着マスクと前記保護膜によって挟まれるように、かつ前記光硬化性樹脂膜が前記複数の開口を覆うように前記蒸着マスク上に配置すること、
前記保護膜を介して前記光硬化性樹脂膜に第一露光を実施すること、
前記保護膜を除去すること、
前記保護膜を除去した後に前記光硬化性樹脂膜に第二露光を実施すること、
前記光硬化性樹脂膜を現像することで複数のレジストマスクを形成すること、
少なくとも一つの窓を有する支持フレームを、前記蒸着マスクに接するように、前記蒸着マスク上に配置すること、および
前記支持フレームを前記蒸着マスクに固定する接続部をめっき法を用いて形成することを含む、蒸着マスクユニットを作製する方法。
【請求項2】
前記第一露光、および前記第二露光は、同一のフォトマスクを介して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保護膜は、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、またはフッ素含有ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記支持フレームは、鉄とニッケルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接続部の形成は、前記接続部の厚さが前記複数のレジストマスクの厚さ以下となるように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つの窓は複数の窓を含み、
前記支持フレームは、前記複数のレジストマスクの少なくとも一つが前記複数の窓の一つから露出するように前記蒸着マスク上に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の開口を有する蒸着マスクを形成すること、
前記複数の開口を覆うように第1の光硬化性樹脂膜を前記蒸着マスク上に配置すること、
第2の光硬化性樹脂膜と保護膜を有するレジストフィルムを、前記第2の光硬化性樹脂膜が前記蒸着マスクと前記保護膜によって挟まれるように、かつ前記第2の光硬化性樹脂膜が前記複数の開口を覆うように前記第1の光硬化性樹脂膜上に配置すること、
前記保護膜を介して前記第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜に第一露光を実施すること、
前記保護膜を除去すること、
前記保護膜を除去した後に前記第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜に第二露光を実施すること、
前記前記第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜を現像することで複数のレジストマスクを形成すること、
少なくとも一つの窓を有する支持フレームを、前記蒸着マスクに接するように、前記蒸着マスク上に配置すること、および
前記支持フレームを前記蒸着マスクに固定する接続部をめっき法を用いて形成することを含む、蒸着マスクユニットを作製する方法。
【請求項8】
前記第一露光、および前記第二露光は、同一のフォトマスクを介して行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記保護膜は、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、またはフッ素含有ポリオレフィンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記支持フレームは、鉄とニッケルを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記接続部の形成は、前記接続部の厚さが前記複数のレジストマスクの厚さ以下となるように行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの窓は複数の窓を含み、
前記支持フレームは、前記複数のレジストマスクの少なくとも一つが前記複数の窓の一つから露出するように前記蒸着マスク上に配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
複数の開口を有する蒸着マスクを形成すること、
第1の光硬化性樹脂膜と第1の保護膜を有する第1のレジストフィルムを、前記第1の光硬化性樹脂膜が前記蒸着マスクと前記第1の保護膜によって挟まれるように、かつ前記第1の光硬化性樹脂膜が前記複数の開口を覆うように前記蒸着マスク上に配置すること、
前記第1の保護膜を介して前記第1の光硬化性樹脂膜に第一露光を実施すること、
前記第1の保護膜を除去すること、
前記複数の開口を覆うように第2の光硬化性樹脂膜を有する第2のレジストフィルムを前記第1の光硬化性樹脂膜上に配置すること、
前記第1の光硬化性樹脂膜と前記第2の光硬化性樹脂膜に第二露光を実施すること、
前記前記第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜を現像することで複数のレジストマスクを形成すること、
少なくとも一つの窓を有する支持フレームを、前記蒸着マスクに接するように、前記蒸着マスク上に配置すること、および
前記支持フレームを前記蒸着マスクに固定する接続部をめっき法を用いて形成することを含む、蒸着マスクユニットを作製する方法。
【請求項14】
前記第一露光、および前記第二露光は、同一のフォトマスクを介して行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の保護膜は、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、またはフッ素含有ポリオレフィンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のレジストフィルムは第2の保護膜を含み、
前記第1の保護膜を除去した後の前記第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜の前記第二露光は、前記第2の保護膜を介して行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の保護膜は、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、またはフッ素含有ポリオレフィンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記支持フレームは、鉄とニッケルを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記接続部の形成は、前記接続部の厚さが前記複数のレジストマスクの厚さ以下となるように行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも一つの窓は複数の窓を含み、
前記支持フレームは、前記複数のレジストマスクの少なくとも一つが前記複数の窓の一つから露出するように前記蒸着マスク上に配置される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、蒸着マスクユニットの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル型表示装置の一例として、液晶表示装置や有機電界発光表示装置が挙げられる。これらの表示装置は、絶縁体、半導体、導電体などの様々な材料を含む薄膜が基板上に積層された構造体であり、これらの薄膜が適宜パターニング、接続され、表示装置としての機能が発現される。
【0003】
薄膜を形成する方法は、大別すると気相法、液相法、固相法に分類される。気相法は物理的気相法と化学的気相法に分類され、前者の代表的な例として蒸着法が知られている。蒸着法のうち最も簡便な方法が真空蒸着法であり、高真空下において材料を加熱することで材料を昇華、あるいは蒸発(以下、昇華と蒸発を総じて気化と呼ぶ)させて材料の蒸気を生成し、この蒸気を目的とする領域(以下、蒸着領域)で固化、堆積することで材料の薄膜を得ることができる。この時、蒸着領域に選択的に薄膜を形成し、それ以外の領域(以下、非蒸着領域)には材料を堆積させないために、非蒸着領域を物理的に遮蔽するマスクが用いられる(特許文献1、2参照)。当該マスクは蒸着マスクなどと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-87840号公報
【文献】特開2013-209710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、蒸着マスクユニットの作製方法を提供することを課題の一つとする。例えば、本発明の実施形態の一つは、蒸着マスクユニットを高い歩留りで、または低コストで製造するための方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つは蒸着マスクユニットを作製する方法である。この方法は、複数の開口を有する蒸着マスクを形成すること、光硬化性樹脂膜と保護膜を有するレジストフィルムを、光硬化性樹脂膜が蒸着マスクと保護膜によって挟まれるように、かつ光硬化性樹脂膜が複数の開口を覆うように蒸着マスク上に配置すること、保護膜を介して光硬化性樹脂膜に第一露光を実施すること、保護膜を除去すること、保護膜を除去した後に光硬化性樹脂膜に第二露光を実施すること、光硬化性樹脂膜を現像することで複数のレジストマスクを形成すること、少なくとも一つの窓を有する支持フレームを、蒸着マスクに接するように、蒸着マスク上に配置すること、および支持フレームを蒸着マスクに固定する接続部をめっき法を用いて形成することを含む。
【0007】
本発明の実施形態の一つは蒸着マスクユニットを作製する方法である。この方法は、複数の開口を有する蒸着マスクを形成すること、複数の開口を覆うように第1の光硬化性樹脂膜を蒸着マスク上に配置すること、第2の光硬化性樹脂膜と保護膜を有するレジストフィルムを、第2の光硬化性樹脂膜が蒸着マスクと保護膜によって挟まれるように、かつ第2の光硬化性樹脂膜が複数の開口を覆うように第1の光硬化性樹脂膜上に配置すること、保護膜を介して第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜に第一露光を実施すること、保護膜を除去すること、保護膜を除去した後に第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜に第二露光を実施すること、第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜を現像することで複数のレジストマスクを形成すること、少なくとも一つの窓を有する支持フレームを、蒸着マスクに接するように、蒸着マスク上に配置すること、および支持フレームを蒸着マスクに固定する接続部をめっき法を用いて形成することを含む。
【0008】
本発明の実施形態の一つは蒸着マスクユニットを作製する方法である。この方法は、複数の開口を有する蒸着マスクを形成すること、第1の光硬化性樹脂膜と第1の保護膜を有する第1のレジストフィルムを、第1の光硬化性樹脂膜が蒸着マスクと第1の保護膜によって挟まれるように、かつ第1の光硬化性樹脂膜が複数の開口を覆うように蒸着マスク上に配置すること、第1の保護膜を介して第1の光硬化性樹脂膜に第一露光を実施すること、第1の保護膜を除去すること、複数の開口を覆うように第2の光硬化性樹脂膜を有する第2のレジストフィルムを第1の光硬化性樹脂膜上に配置すること、第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜に第二露光を実施すること、第1の光硬化性樹脂膜と第2の光硬化性樹脂膜を現像することで複数のレジストマスクを形成すること、少なくとも一つの窓を有する支持フレームを、蒸着マスクに接するように、蒸着マスク上に配置すること、および支持フレームを蒸着マスクに固定する接続部をめっき法を用いて形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の一つに係る方法で作製される蒸着マスクユニットが適用可能な蒸着装置の模式的上面図と側面図。
【
図2】本発明の実施形態の一つに係る方法で作製される蒸着マスクユニットの模式的上面図。
【
図3】本発明の実施形態の一つに係る方法で作製される蒸着マスクユニットの模式的断面図。
【
図4】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図5】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図6】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図7】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図8】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図9】蒸着マスクユニットを作製する従来の方法を示す模式的断面図。
【
図10】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図11】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図12】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図13】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図14】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【
図15】本発明の実施形態の一つに係る、蒸着マスクユニットを作製する方法を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
以下、「ある構造体が他の構造体から露出するという」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態の一つに係る蒸着マスクユニット100の作製方法について説明する。
【0015】
1.蒸着装置
本作製方法によって作製される蒸着マスクユニット100は、有機化合物、無機化合物、または有機化合物と無機化合物を含む膜を蒸着法によって形成する際、目的とする蒸着領域に選択的に膜を形成するために用いることができる。
図1(A)と
図1(B)に、蒸着による膜形成の際に用いられる典型的な蒸着装置の模式的上面図と側面図を示す。蒸着装置は、種々の機能を有する複数のチャンバーで構成される。チャンバーの一つが
図1(A)に示す蒸着チャンバー160であり、蒸着チャンバー160は、隣接するチャンバーとロードロック扉162で仕切られ、内部が高真空の減圧状態、あるいは窒素やアルゴンなどの不活性ガスで満たされた状態が維持されるよう構成される。したがって、図示しない減圧装置やガス吸排気機構などが蒸着チャンバー160に接続される。
【0016】
蒸着チャンバー160は、基板などの膜が形成される対象物が収納可能な空間を提供する。
図1(A)、
図1(B)に示した例では、基板180の下に蒸着源164が配置され、蒸着源164には蒸着される材料が充填される。蒸着源164において材料が加熱されて気化し、材料の蒸気が蒸着マスクユニット100の開口102a(後述)を介して基板180の表面へ到達すると冷却されて固化し、材料が堆積して基板180上(
図1(B)では基板180の下側の面上)に材料の膜を与える。
図1(A)に示す例では、概ね線状の形状を有し、基板180の一つの辺に沿って配置された蒸着源164(リニアソースとも呼ばれる)が備えられているが、蒸着源164は任意の形状持つことが可能であり、基板180の重心に重なるような、いわゆるポイントソースと呼ばれる蒸着源164でもよい。ポイントソースの場合には、基板180と蒸着源164の相対的な位置は固定され、基板180を回転するための機構を設けてもよい。
【0017】
リニアソース型の蒸着源164が用いられる場合、蒸着チャンバー160は基板180と蒸着源164が相対的に移動するよう構成される。
図1(A)では、蒸着源164が固定され、その上を基板180が移動する例が示されている。
図1(B)に示すように、蒸着チャンバー160にはさらに、基板180と蒸着マスクユニット100を保持するためのホルダー170、ホルダー170を移動するための移動機構168、シャッター166などが備えられる。ホルダー170によって基板180と蒸着マスクユニット100の互いの位置関係が維持され、移動機構168によって基板180と蒸着マスクユニット100が蒸着源164の上を移動することができる。シャッター166は、材料の蒸気を遮蔽する、あるいは基板180への到達を許容するために蒸着源164の上に設けられ、図示しない制御装置によって開閉が制御される。図示しないが、蒸着チャンバー160には、材料の蒸着速度をモニターするためのセンサ、材料による汚染を防ぐための防着板、蒸着チャンバー160内の圧力をモニターするための圧力計などが備えられる。
【0018】
2.蒸着マスクユニット
蒸着マスクユニット100の上面模式図を
図2に、
図2の鎖線A-A´に沿った断面模式図を
図3に示す。蒸着マスクユニット100は少なくとも一つ、または複数の蒸着マスク102を有する。以下の説明では、一つの蒸着マスクユニット100が複数の蒸着マスク102を有する例を用いて説明する。
【0019】
蒸着マスク102は、蒸着マスク102を貫通する複数の開口102aを備える。蒸着マスク102のうち、開口102a以外の領域を非開口部と呼ぶ。非開口部は開口102aを取り囲む。蒸着マスクユニット100はさらに、接続部120を介して非開口部において蒸着マスク102と接続される支持フレーム110を有する。接続部120は複数の開口102aを囲み、非開口部において支持フレーム110と蒸着マスク102に接する。
【0020】
蒸着時には、蒸着領域と開口102aが重なり、非蒸着領域と非開口部が重なるように蒸着マスクユニット100と基板180が配置され、材料の蒸気が開口102aを通過し、蒸着領域上に材料が堆積する。複数の開口102aの配置に制約はないが、例えば表示装置の表示領域に設けられる複数の画素のそれぞれに膜を形成する場合には、複数の開口102aが基板上の画素が設けられる領域に重なるように設けられる。したがって、複数の画素がマトリクス状に配列する場合には、複数の開口102aもマトリクス状に配列される。一つの蒸着マスクユニット100を用いて複数の表示装置を製造する場合には、マザーガラスと呼ばれる大型の基板180上に複数の表示装置の表示領域が形成される。この場合、複数の開口102aは、複数の表示領域にそれぞれ対応する複数の開口群102bを形成するように設けられる。隣接する開口群102b間の距離は、各開口群102bにおける隣接する開口102a間の距離よりも大きい。
【0021】
支持フレーム110は、少なくとも一つの窓110aを有する(
図3)。複数の開口群102bを形成するように開口102aが設けられる場合には、少なくとも一つの窓110aは複数の窓110aを含んでもよい。各窓110aは、蒸着マスク102の複数の開口102aと重なるように設けられる。すなわち、複数の開口102aは支持フレーム110からいずれかの窓110aを介して露出する。また、各開口群102bも支持フレーム110からいずれかの窓110aを介して露出し、支持フレーム110の一部は、隣接する開口群102bの間で蒸着マスク102および接続部120と接する。
【0022】
接続部120は、蒸着マスク102と支持フレーム110を接続し、これらを互いに固定する機能を有する。したがって、支持フレーム110は蒸着マスク102と直接接触しないものの、接続部120は蒸着マスク102の非開口部において蒸着マスク102の上面と接し、かつ、支持フレーム110の側面と接する。
【0023】
蒸着マスク102や接続部120はニッケルや銅、チタン、クロムなどの0価の金属を含み、ニッケルを含むことが好ましい。蒸着マスク102と接続部120の材料の組成は互いに同一でもよい。支持フレーム110も0価の金属を含み、金属としてはニッケル、鉄、コバルト、クロム、マンガンなどから選択される。例えば支持フレーム110は鉄とクロムを含む合金、鉄、ニッケル、マンガンの合金でもよく、合金には炭素が含まれていてもよい。
【0024】
3.蒸着マスクユニットの作製方法
蒸着マスクユニット100の作製方法の一例を
図4(A)から
図8(B)を用いて説明する。これらの図は蒸着マスクユニット100の模式的断面図であり、
図3に対応する。
3-1.蒸着マスクの形成
まず、剥離層132が設けられた支持基板130上に、レジストマスク134を形成する。支持基板130は、蒸着マスクユニット100を形成する際に蒸着マスク102や支持フレーム110を保持する機能を有する基板であり、ガラスや石英、プラスチック、あるいは銅やアルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、マンガンなどの金属、若しくはこれらの合金を含む。蒸着マスク102が合金を含む場合、合金は、例えば鉄とクロムを含む合金、鉄、ニッケル、およびマンガンの合金でもよく、合金には炭素が含まれていてもよい。ガラスや石英、プラスチックを含む基板を用いる場合には、上述した金属や合金の膜が形成された基板を用いてもよい。後述するように、蒸着マスク102や接続部120は、電解めっき法または無電解めっき法(以下、これらを総じてめっき法と記す)を用いて形成されるため、電解めっき法を利用する場合には、電極として機能できる金属基板または合金基板を支持基板130として使用することが好ましい。剥離層132は、支持基板130上に形成される蒸着マスクユニット100を支持基板から剥離することを促進するための機能層であり、例えばニッケルやモリブデン、タングステンなどの金属薄膜を用いることができる。剥離層132は、例えば20μm以上200μm以下、または40μm以上150μm以下の厚さとなるよう、めっき法、スパッタリング法、または化学気相堆積(CVD)法を利用して形成すればよい。
【0025】
レジストマスク134は島状に設けられる。すなわち、複数の開口102a、および後述するダミーパターン104を形成する領域に選択的に形成される。例えばネガ型のフォトレジストを剥離層132上に塗布し、複数の開口102aとダミーパターン104を形成する領域が選択的に露光されるよう、フォトマスクを介して露光を行う。あるいは、ポジ型のフォトレジストを剥離層132上に塗布し、非開口部が選択的に露光されるよう、フォトマスクを介して露光を行う。その後、現像を行い、パターニングされたレジストマスク134を得る(
図4(A))。なお、レジストマスク134の形成は、剥離層132を蒸着マスクユニット100から容易に剥離することができるよう、剥離層132の外縁部にも形成することが好ましい。
【0026】
次に、めっき法を利用し、レジストマスク134によって被覆されていない領域にめっきパターンを形成し、蒸着マスク102を形成する(
図4(B))。めっきパターンの形成は、一段階で行ってもよく、数段階に分けて行ってもよい。複数の段階で行う場合、異なる段階で異なる金属が形成されるよう、めっきを行ってもよい。また、めっきは、めっきパターンの上面がレジストマスク134の上面よりも低くなるように行ってもよく、高くなるように行ってもよい。後者の場合、表面を研磨することでめっきパターン上面の平坦化を行ってもよい。この後、レジストマスク134を剥離液によるエッチング、あるいは/およびアッシングによって除去することで、複数の開口102aを有する蒸着マスク102が形成される(
図4(C))。
【0027】
蒸着マスク102の形成時、蒸着マスク102から離隔するダミーパターン104が形成される。ダミーパターン104は、平面視において複数の蒸着マスク102を囲むように構成される。ダミーパターン104と蒸着マスク102は同時に形成されるため、これらは互いに同一の組成と厚さを有することができる。図示しないが、隣接する窓110aの間と重なる領域に設けてもよい。
【0028】
3-2.開口の保護
ダミーパターン104上には支持フレーム110が配置され、その後めっき法によって接続部120が形成されることで蒸着マスク102と支持フレーム110が互いに固定される。したがって、接続部120の形成の際に開口102aに金属がめっきされることを防ぐため、後述するように開口102aを覆うレジストマスク150を形成する。
【0029】
レジストマスク150の形成は、フィルム状のレジスト(以下、レジストフィルム)136を用いて行われる。レジストフィルム136としては、例えば
図5(A)に示すように、光硬化性樹脂膜136bが剥離膜136aと保護膜136cによって挟まれた構造を有することができる。光硬化性樹脂膜136bには、ネガ型の光硬化性樹脂が含まれる。すなわち、光によって硬化する高分子またはオリゴマーが含まれる。光硬化性樹脂膜136bの厚さは任意に選択することができ、例えば20μm以上500μm以下、50μm以上200μm以下、または50μm以上120μm以下の範囲から選択すればよい。当該厚さを確保するために、レジストフィルム136を積層してもよい。保護膜136cは高分子を含み、高分子としては、例えばポリオレフィン、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、またはフッ素含有ポリオレフィンなどから選択することができる。
【0030】
レジストフィルム136は、剥離膜136aを剥離した後、光硬化性樹脂膜136bが蒸着マスク102と保護膜136cによって挟まれるよう、蒸着マスク102上に配置される(
図5(B))。レジストフィルム136は、少なくとも全ての開口102aを覆うように設けられ、一部は非開口部を覆う。
【0031】
次に、光硬化性樹脂膜136bに対して一回目の露光を行う。具体的には、
図6(A)に示すように、遮光部138aと透光部138bを有するフォトマスク138を、透光部138bが複数の開口102aと重なるよう、レジストフィルム136上に配置し、フォトマスク138を介して露光を行う。これにより、露光された部分の現像液に対する溶解性が低下する。ここで、露光は保護膜136cを配置したまま行う。換言すると、露光は保護膜136cを介して行われる。
【0032】
この後、さらに二回目の露光を行う。二回目の露光では、一回目の露光と同じ光源(すなわち、同じ波長の光)を用いてもよく、フォトマスク138も同一でもよい。具体的には
図6(B)に示すように、保護膜136cを剥離して除去し、フォトマスク138を介して露光を行う。すなわち、透光部138bが複数の開口102aと重なるよう、フォトマスク138をレジストフィルム136上に配置し、フォトマスク138を介して露光を行う。したがって、二回目の露光では、光硬化性樹脂膜136bが露出した状態で露光が行われる。一回目の露光で既にレジストフィルム136の大部分の領域は露光が完了しており、二回目の露光ではその膜質はほとんど変化しない。この後、現像液を用いて現像を行って未露光部分を除去することで、複数の開口102aを覆うレジストマスク150が形成される(
図7(A))。なお、この工程では、全ての開口102aを覆う単一のレジストマスク150を形成してもよい。あるいは、複数の開口群102bを設ける場合には、一つまたは複数の開口群102bをそれぞれ覆う複数のレジストマスク150を形成してもよい。仮に剥離前の保護膜136c上にパーティクルが存在し、当該パーティクルが露光の陰となってレジストフィルム136の一部に、本来露光されるべきところが露光されなかった領域として残った後も、保護膜136c剥離後の二回目の露光により、正常に露光することができる。さらに、剥離後にレジストフィルム136上に新たにパーティクルが載ったとしても、その下は既に一回目の露光が実施されているため、露光不良の原因とはなり得ない。
【0033】
3-3.支持フレームの配置と接続部の形成
引き続き、
図7(B)に示すように、支持フレーム110を蒸着マスク102、およびダミーパターン104上に配置する。支持フレーム110は、窓110aが複数の開口102aと重なるように配置される。換言すると、支持フレーム110が開口102aのいずれとも重ならず、非開口部と重なり、複数のレジストマスク150がそれぞれ対応する窓110aから露出するよう、蒸着マスク102上に配置される。
【0034】
この後、めっき法を用い、接続部120を形成する。接続部120は、蒸着マスク102の表面のうち支持フレーム110とレジストマスク150に覆われていない部分から主に成長し、その結果、
図8(A)に示すように、蒸着マスク102の上面、および支持フレーム110の窓110aを構成する側面110bと接する接続部120が形成される。これにより、蒸着マスク102と支持フレーム110が固定される。
【0035】
接続部120は、その厚さがレジストマスク150の厚さと同じになるように形成してもよい。あるいは接続部120は、厚さがレジストマスク150の厚さよりも小さくなるように形成してもよく、
図8(A)に示すように、大きくなるように形成してもよい。接続部120の厚さがレジストマスク150の厚さよりも大きい場合、蒸着マスク102と支持フレーム110間により強固な結合力を与えることができる。一方、レジストマスク150の厚さ以下の厚さを有するように接続部120を形成することで、レジストマスク150上に接続部120が形成されることが防止されるため、レジストマスク150の除去の際に接続部120が破壊されたり、これに起因して開口102aが破損したりするなどの不具合を防止することができる。
【0036】
その後、レジストマスク150を剥離液を用いるエッチング、および/またはアッシングなどによって除去し(
図8(B))、さらに剥離層132を蒸着マスク102から剥離することで蒸着マスクユニット100を作製することができる。この時、ダミーパターン104も支持フレーム110から分離されて、最終的に
図3に示したような形状となる。
【0037】
上述したように、本実施形態では、光硬化性樹脂膜136bに対して二回露光を行う。一回目の露光では保護膜136cを介して光が照射され、二回目の露光は保護膜136cを除去した後に行われる。このように露光を行うことで、複数の開口102aを確実にレジストマスク150によって保護し、引き続くめっきにおいて開口102a内がめっきされることを防止することができる。その結果、歩留まりよく蒸着マスクユニット100を製造することが可能となる。この理由を
図9(A)から
図9(C)を用いて説明すする。
【0038】
従来の方法では、レジストフィルム136を用いて開口102aを保護する際には、剥離膜136aを除去した後に蒸着マスク102上にレジストフィルム136を配置し、さらに保護膜136cを剥離した後に露光を行う。この場合、保護膜136cを剥離すると光硬化性樹脂膜136bの表面が帯電することがあり、このため、露光環境に存在するほこりなどの異物152が表面に付着しやすい(
図9(A))。この状態で露光が行われると、異物152と重なる領域では十分な露光ができない。その結果、この領域の光硬化性樹脂膜136bが現像時に除去され、レジストマスク150にピンホール150aが生じる(
図9(B))。ピンホール150aが存在する状態でめっき法を適用して接続部120を形成すると、ピンホール150aの下に位置する蒸着マスク102からもめっき成長が起こるため、開口102aが金属によって塞がれてしまう(
図9(C)の矢印参照)。開口102aが塞がれると、その部分では蒸着される材料の蒸気が通過できないため、蒸着領域に膜を形成することができない。このような不良の発生は、蒸着マスクユニットの歩留まり低下の原因となる。
【0039】
一方、保護膜136cを剥離する前に露光を行うと、保護膜136cの表面に異物が付いている場合に異物の下が露光されず、保護膜136cを剥離した後の現像で、異物の下の露光されなかった箇所に同じくピンホール150aが形成されてしまい、前述と同様の不良発生の原因となる。
【0040】
しかしながら、本発明の実施形態の一つに係る蒸着マスクユニット100の作製方法により、上述した不良の発生が効果的に防止される。すなわち、保護膜136cを剥離せずに一回目の露光を行うため、レジストフィルム136の帯電が抑制され、異物が付着する確率が低下する。たとえ異物152が付着した状態で露光が行われることで十分に露光されない領域136dが発生しても(
図10(A))、保護膜136cを剥離することでこの異物152も除去されるため、二回目の露光によってこの領域136dに対しても十分な露光が可能である(
図10(B))。また、保護膜136cを剥離した後に新たな異物154が付着したとしても、この異物154に覆われる部分は一回目の露光によって十分に露光されているため、現像時にピンホールを与えない。さらに、領域136d上に異物154が重なるように付着する可能性は極めて低いため、領域136dは二回目の露光によって確実に硬化することができる。このため、ピンホールの発生が防止され、高い歩留りで蒸着マスクユニットを製造することが可能となる。このことは、蒸着マスクユニットの製造コストの低下にも寄与する。
【0041】
<第2実施形態>
本実施例では、上述した蒸着マスクユニット100製造方法の変形例について説明する。以下の変形例では、第1実施形態で述べた方法や構造と同様または類似する方法や構成については説明を割愛することがある。
【0042】
1.変形例1
まず、第1実施形態と同様に、複数の開口102aを備える蒸着マスク102を作製する(
図4(C))。その後、レジストフィルム136から剥離膜136aを剥離し、光硬化性樹脂膜136bが蒸着マスク102と保護膜136cに挟まれるよう、蒸着マスク102上にレジストフィルム136を配置する(
図5(B))。レジストフィルム136は、複数の開口102aの全てを覆うように設けられる。
【0043】
本変形例では、露光前に保護膜136cを除去するとともに、
図5(A)に示すレジストフィルム136と同様の構造を有するレジストフィルム(以下、第2のレジストフィルム)140をさらに用いる。具体的には、保護膜136cをを除去した後、剥離膜(図示しない)、第2の光硬化性樹脂膜140b、第2の保護膜140cがこの順で積層された第2のレジストフィルム140から剥離膜を取り除き、第2の光硬化性樹脂膜140bが蒸着マスク102と第2の保護膜140cに挟まれるよう、蒸着マスク102上に第2のレジストフィルム140を配置する(
図11(A))。第2のレジストフィルム140も、複数の開口102aの全てを覆うように設けられる。なお、第2の光硬化性樹脂膜140bと第2の光硬化性樹脂膜140bの厚さは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0044】
次に、第2の保護膜140cを第2の光硬化性樹脂膜140b上に配置した状態でフォトマスク138を介して露光を行い(
図11(A))、引き続いて第2の保護膜140cを剥離し、二回目の露光をフォトマスク138を介して行う(
図11(B))。その後、現像を行って未露光部を除去することにより、レジストマスク150が形成される(
図12(A))。
【0045】
この後、第1実施形態と同様に、支持フレーム110を配置し、めっき法を用いて接続部120を形成する。これらの工程は第1実施形態の工程と同様であるので、説明は割愛する。
【0046】
この変形例では、複数のレジストフィルムを用いるため、より大きな厚さを有するレジストマスク150を形成することができる。したがって、厚さがレジストマスク150の厚さを超えないように接続部120を形成しても、蒸着マスク102と支持フレーム110間に強固な結合力を与えることができる。さらに、レジストマスク150を覆うように接続部120を形成する必要がない。このため、接続部120の形成後に剥離液を用いてレジストマスク150を除去する際、レジストマスク150の膨潤に伴う見かけ上の体積膨張に起因して接続部120が破損することを防止することができる。
【0047】
本変形例でも、第2の保護膜140cを剥離せず、第2の保護膜140cを介して一回目の露光が行われる。このため、第1実施形態の製造方法と同様、異物の付着確率が低い。また、第2の保護膜140c上に異物152が付着した状態で露光が行われても、その後第2の保護膜140cを剥離し、二回目の露光が行われるため、異物152に起因する未露光部分が露光される。したがって、現像時にピンホールがレジストマスク150に発生することを効果的に防止することが可能であり、これにより、高い歩留りで蒸着マスクユニットを低コストで製造することができる。
【0048】
なお、図示しないが、レジストフィルムの数は二枚に限定されず、三枚以上用いてもよい。この場合には、最上層に配置されるレジストフィルムの保護膜のみを残した状態で、この保護膜を介して一回目の露光を行い、その後この保護膜を除去した後に二回目の露光を行えばよい。
【0049】
2.変形例2
本変形例でも、変形例1と同様、複数のレジストフィルムが用いられる。ただし、一回目の露光で光硬化性樹脂膜136bのみを露光した後、二回目の露光を光硬化性樹脂膜136bと第2の光硬化性樹脂膜140bに対して行う点が変形例1と異なる点である。
【0050】
具体的には、第1実施形態と同様、保護膜136cを介し、光硬化性樹脂膜136bに対して一回目の露光を行う(
図13(A))。引き続き、保護膜136cを取り除き、剥離膜が取り除かれた第2のレジストフィルム140を、第2の光硬化性樹脂膜140bが蒸着マスク102と第2の保護膜140cに挟まれるよう、光硬化性樹脂膜136b上に配置する。その後、第2の光硬化性樹脂膜140bに対して露光を行う。この二回目の露光は、第2の保護膜140cを取り除いた後に行ってもよく、あるいは
図13(B)に示すように、第2の保護膜140cを第2の光硬化性樹脂膜140b上に残したまま行ってもよい。その後の工程は変形例1と同様であるため、説明は割愛する。説明は割愛するが、本変形例でも三枚以上のレジストフィルムを用いてもよい。この場合、レジストフィルムの使用枚数と露光回数が同一となる。
【0051】
本変形例でも、大きな厚さを有するレジストマスク150を形成することができるため、蒸着マスク102と支持フレーム110間に強固な結合力を与えることができだけでなく、レジストマスク150の除去の際に接続部120が破損することを防止することができる。
【0052】
本変形例では、第2の保護膜140cだけでなく保護膜136cも剥離せず、これらを介して露光が行うことができる。このため、保護膜136cや第2の保護膜140cの剥離で生じる光硬化性樹脂膜136bや第2の光硬化性樹脂膜140bの表面の帯電が抑制され、異物の付着確率が低い。また、保護膜136c上に異物152が付着した状態で露光が行われても、第2のレジストフィルム140を配置して二回目の露光が行われるため、異物152に起因する未露光部分が露光される。したがって、現像時にピンホールがレジストマスク150に発生することを効果的に防止することが可能であり、これにより、高い歩留りで蒸着マスクユニットを低コストで製造することができる。
【0053】
3.変形例3
本変形例でも、変形例1、2と同様、複数のレジストフィルムを用いる。ただし、各露光後に現像を行う点で変形例1や2と異なる。
【0054】
具体的には、第1実施形態と同様、剥離膜136aを剥離したレジストフィルム136を蒸着マスク102上に設け、保護膜136cを介して露光を行う(
図14(A))。その後、保護膜136cを取り除き、さらに現像を行ってレジストマスク150bを形成する(
図14(B))。
【0055】
その後、剥離膜を剥離した第2のレジストフィルム140をレジストマスク150b上に配置する(
図15(A))。第2のレジストフィルム140の大きさは、レジストフィルム136のそれよりも小さくてもよく、レジストマスク150bの全体を覆う大きさであればよい。また、光硬化性樹脂膜136bの厚さと第2の光硬化性樹脂膜140bの厚さは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0056】
引き続き、第2の保護膜140cを第2の光硬化性樹脂膜140b上に配置したまま、フォトマスク138を介して第2の光硬化性樹脂膜140bを露光する(
図15(A))。この後、現像によって未露光部を除去することで、レジストマスク150b上にレジストマスク150cが形成される(
図15(B))。この後の工程は第1実施形態のそれと同様であるので、説明は割愛する。
【0057】
本変形例でも、レジストマスク150bと150cによって大きな厚さを有するマスクが形成されるため、蒸着マスク102と支持フレーム110間に強固な結合力を与えることができだけでなく、レジストマスク150b、150cの除去の際に接続部120が破損することを防止することができる。
【0058】
本変形例では、レジストマスク150bの形成における露光は、保護膜136cを介して行われる。したがって、異物の付着確率が低い。また、レジストマスク150bの形成後、その上に設けられる第2のレジストフィルム140に対し、第2の保護膜140cを介して露光が行われる。このため、異物に起因してレジストマスク150bにピンホールが発生しても、このピンホールを覆うようにレジストマスク150bが形成される。したがって、ピンホールに起因する不良の発生が防止され、高い歩留りで蒸着マスクユニットを低コストで製造することができる。
【0059】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の作製方法を基にして、当業者が適宜工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0060】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0061】
100:蒸着マスクユニット、102:蒸着マスク、102a:開口、102b:開口群、104:ダミーパターン、110:支持フレーム、110a:窓、110b:側面、120:接続部、130:支持基板、132:剥離層、134:レジストマスク、136:レジストフィルム、136a:剥離膜、136b:光硬化性樹脂膜、136c:保護膜、136d:領域、138:フォトマスク、138a:遮光部、138b:透光部、140:第2のレジストフィルム、140b:第2の光硬化性樹脂膜、140c:第2の保護膜、150:レジストマスク、150a:ピンホール、150b:レジストマスク、150c:レジストマスク、152:異物、154:異物、160:蒸着チャンバー、162:ロードロック扉、164:蒸着源、166:シャッター、168:移動機構、170:ホルダー、180:基板