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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】レーダシステムの試験設備
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20231128BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20231128BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G01S7/40
H05K9/00 M
H01Q1/52
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047164
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148529
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】三上 成
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-243202(JP,A)
【文献】特開2008-278236(JP,A)
【文献】特開2012-225731(JP,A)
【文献】特開昭63-073600(JP,A)
【文献】特開2004-101450(JP,A)
【文献】特開2006-166111(JP,A)
【文献】特開2015-212705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0039332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
H05K 9/00
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電波送受信装置と第2の電波送受信装置との間に設置され、前記第2の電波送受信装置から前記第1の電波送受信装置に直接的に放射される電波を遮蔽する本体部と、
前記本体部の端部に形成され、前記本体部の端部で回折される電波を遮蔽する屈曲部と、
を具備する遮蔽構造を有するレーダシステムの試験設備。
【請求項2】
前記屈曲部の先端は、尖っている請求項1に記載のレーダシステムの試験設備。
【請求項3】
前記屈曲部は、円筒状に屈曲している請求項1又は2に記載のレーダシステムの試験設備。
【請求項4】
前記屈曲部の曲率半径は、前記電波の波長の1/4である請求項3に記載のレーダシステムの試験設備。
【請求項5】
前記本体部の先端は、尖っている請求項1乃至4の何れか1項に記載のレーダシステムの試験設備。
【請求項6】
前記屈曲部には、電波吸収体が形成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載のレーダシステムの試験設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダシステムの試験設備に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダシステムの試験設備が知られている。この種の試験設備においては、電波暗室内にレーダシステム等の複数の電波送受信装置が近接して配置されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007‐101260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電波送受信装置の試験が別個に行われる場合等、複数の電波送受信装置で送信又は受信される電波が互いに干渉しないことが重要な場合がある。複数の電波送受信装置の間に金属製の遮蔽構造、例えば衝立を設置することによって電波の干渉は抑制され得る。しかしながら、電波暗室内を衝立によって完全に仕切るためには、大型の衝立が必要になる。一方で、小型の衝立では、仕切りの端部における電波の回折等によって電波干渉が生じる可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小型の遮蔽構造を用いつつ、複数の電波送受信装置の間の電波干渉を抑制することができるレーダシステムの試験設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、試験設備は、遮蔽構造を有する。遮蔽構造は、本体部と、屈曲部とを有する。本体部は、第1の電波送受信装置と第2の電波送受信装置との間に設置され、第2の電波送受信装置から第1の電波送受信装置に直接的に放射される電波を遮蔽する。屈曲部は、本体部の端部に形成され、本体部の端部で回折される電波を遮蔽する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態のレーダシステムの試験設備の一例の構成を示す図である。
図2図2は、変形例1の遮蔽構造の構成を示す図である。
図3図3は、変形例2の遮蔽構造の構成を示す図である。
図4図4は、変形例3の遮蔽構造の構成を示す図である。
図5図5は、変形例4の遮蔽構造の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。図1は、一実施形態のレーダシステムの試験設備の一例の構成を示す図である。試験設備1は、電波送受信装置2aと電波送受信装置2bとの少なくとも一方のための試験設備である。試験設備1は、遮蔽構造3を有している。電波送受信装置2a、電波送受信装置2b、遮蔽構造3は、電波暗室4に収容される。電波暗室4の壁面には、通常電波吸収体が設けられる。
【0009】
電波送受信装置2a及び2bは、電波を送信し、また、電波を受信するように構成されたシステムである。電波送受信装置2a及び2bの構成は、特定の構成に限定されない。実施形態では、電波送受信装置2a及び2bの少なくとも何れかが試験対象のレーダシステムである。試験対象のレーダシステムである電波送受信装置は、必ずしも電波を送信できるように構成されていなくてもよい。この場合、試験対象のレーダシステムである電波送受信装置は、例えば電波暗室4に配置された電波送信装置からの電波を受信することで試験されてよい。また、試験対象のレーダシステムでない電波送受信装置は、必ずしも電波を受信できるように構成されていなくてもよい。試験対象のレーダシステムでない電波送受信装置は、例えば電波暗室4の空間中に試験のための電波を送信する電波送信装置であってよい。
【0010】
遮蔽構造3は、例えば、金属製の構造物である。遮蔽構造3は、本体部31と、屈曲部32とを有する。遮蔽構造3の本体部31は、衝立状の構造物であって、電波送受信装置2aと電波送受信装置2bとの間に配置される。本体部31は、電波送受信装置2aと電波送受信装置2bとの間の見通しが無くなる程度の大きさを有している。また、本体部31の、電波送受信装置2aから電波送受信装置2bの電波の放射方向側の先端は例えば鋭角に尖っている。
【0011】
また、本体部31の厚さ(電波送受信装置2aから電波送受信装置2bに向かう方向の長さ)は、下式(1)の表皮深さ以上である。
【数1】
【0012】
本体部31の厚さが表皮深さ以上であるとき、電波は本体部31を超えることができない。したがって、本体部31が電波送受信装置2aと電波送受信装置2bとの間の見通しを無くすように形成されていることにより、電波送受信装置2aから電波送受信装置2bに直接的に放射される電波及び電波送受信装置2bから電波送受信装置2aに直接的に放射される電波は遮蔽される。
【0013】
ここで、本体部31は、電波暗室4を電波送受信装置2aの側と電波送受信装置2bの側とで完全に仕切るように構成されていなくてよい。つまり、本体部31は、電波暗室4における電波送受信装置2aの電波の送信側と電波送受信装置2bの電波の送信側とにある程度の見通しを確保できる程度の小型に形成されていてよい。
【0014】
屈曲部32は、本体部31の電波送受信装置2a及び電波送受信装置2bの側ではない端部に形成されている。屈曲部32は、本体部31と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。屈曲部32は、例えば、電波送受信装置2aの側から電波送受信装置2bの側に向けて円筒状に屈曲したスリーブである。屈曲部32の厚さ(屈曲部32の径方向の長さ)は、本体部31と同様に表皮深さ以上であってもよい。また、屈曲部32の曲率半径は、遮蔽対象の電波の波長の1/4(0.25波長)であることが望ましい。また、屈曲部32の、電波送受信装置2bの電波の放射方向側の先端は例えば鋭角に尖っている。
【0015】
さらに、屈曲部32の外周は、電波吸収体33によって覆われている。電波吸収体33は、例えばカーボン混入発泡ポリエチレンによって形成される層である。ここで、図1では、電波吸収体33は、屈曲部32の全域を覆うように形成されている。実際には、電波吸収体33は、屈曲部32の先端近傍に少なくとも形成されていればよい。
【0016】
以下、試験設備1の動作を説明する。ここでは、電波送受信装置2aが試験対象のレーダシステムであるとする。一方、図1に示すように、電波送受信装置2bは、電波Wを空間に放射している。
【0017】
電波送受信装置2bからの電波は、アンテナから放射状に送信される。ここで、電波送受信装置2bから電波送受信装置2aへの直接波は、本体部31によって遮蔽される。一方、電波暗室4の中での見通しがある程度に確保されるように、本体部31は小型に形成されている。したがって、電波Wは、本体部31の端部において回折し得る。ここで、本体部31の先端31aは点状に極限されている。したがって、本体部31における電波Wの回折は、先端31aを中心とする放射状に限定されて発生する。
【0018】
前述したように、屈曲部32は、例えば、電波送受信装置2aの側から電波送受信装置2bの側に向けて円筒状に屈曲したスリーブである。このような構造により、先端31aから電波送受信装置2aの見通し方向に向けて回折した回折波W1は、屈曲部32によって遮蔽される。
【0019】
なお、屈曲部32も端部を有している。したがって、先端31aから屈曲部32の端部に向かう回折波W2は、屈曲部32の端部において回折し得る。しかしながら、屈曲部32の端部も点状に極限されている。したがって、屈曲部32における回折波も、先端32aを中心とする放射状に限定されて発生する。
【0020】
さらに、屈曲部32の外周は、電波吸収体33で覆われている。したがって、先端32aにおける回折波のうち、屈曲部32の外周に沿って回折する回折波W3は、電波吸収体33によって吸収される。電波吸収体33の電気特性から電波吸収体33の減衰定数は下式(2)で計算され得る。
【数2】
【0021】
一例として、市販の電波吸収体には周波数10GHz付近での減衰率が10dB/cm程度のものがある。このような電波吸収体33を回折波W3が3cm程度通過した場合の減衰量は(2)から30dBとなる。つまり、回折波W3は、電波吸収体33をほぼ通過することはできない。屈曲部32の曲率半径及び電波吸収体33の厚さを変えることで減衰量は、調整され得る。なお、屈曲部32は円筒状に屈曲しているので、電波送受信装置2aに向かう回折波W3は、電波吸収体33に対して斜めに入射する。したがって、電波吸収体33の厚さがそれほど厚くなくとも、回折波W3の通過量を稼ぐことができる。
【0022】
また、屈曲部32の曲率半径は、遮蔽対象の電波Wの波長の1/4(0.25波長)であれば、屈曲部32における電波の共振も抑制される。
【0023】
以上説明したように本実施形態によれば、衝立状の本体部31にスリーブ状の屈曲部32が形成された遮蔽構造3により、遮蔽構造3としての小型化が図られつつも、電波送受信装置2bから送信された電波が電波送受信装置2aで受信されることはない。このことは、電波送受信装置2aから送信された電波が電波送受信装置2bで受信されることはないことも意味している。このようにして本実施形態によれば、電波送受信装置2aと電波送受信装置2bとの間の電波の干渉が抑制され得る。遮蔽構造3の小型化により、電波送受信装置2aと電波送受信装置2bの電波の送信方向の見通しもある程度は確保される。
【0024】
[変形例1]
以下、実施形態の変形例を説明する。実施形態では、本体部31の先端は、回折点が極限されるように尖っている。しかしながら、本体部31の先端は、図2に示すように、尖っていなくてもよい。図2の場合、本体部31の端点31b及び31cを含む先端面において回折が生じ得る。しかしながら、本体部31の先端面での回折も、屈曲部32によって遮蔽され得る。
【0025】
[変形例2]
また、実施形態では、屈曲部32は、本体部31の先端面からではなく、先端面の近傍から形成されている。これに対し、図3に示すように、屈曲部32は、本体部31の先端面から形成されていてもよい。この場合も、図2と同様に、本体部31の先端面で回折が生じる。しかしながら、本体部31の先端面での回折も、屈曲部32によって遮蔽され得る。
【0026】
[変形例3]
また、実施形態では、屈曲部32は、電波送受信装置2aの側から電波送受信装置2bの側に向けて円筒状に屈曲しているものとしている。これに対し、図4に示すように、屈曲部32は、電波送受信装置2aの側から電波送受信装置2bの側に向けて折れ曲がって形成されてもよい。
【0027】
[変形例4]
また、図3では、本体部31の先端面は、平面である。これに対し、図5に示すように、屈曲部32は、本体部31の端面も含んで円筒状に形成されていてもよい。
【0028】
[その他の変形例]
また、実施形態では、屈曲部32は、電波送受信装置2aの側から電波送受信装置2bの側に向けて屈曲しているものとしている。逆に、屈曲部32は、電波送受信装置2bの側から電波送受信装置2aの側に向けて屈曲していてもよい。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 試験設備、2a,2b 電波送受信装置、3 遮蔽構造、4 電波暗室、31 本体部、32 屈曲部、33 電波吸収体。
図1
図2
図3
図4
図5