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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20231128BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20231128BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20231128BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01J37/317 D
H01J37/20 D
H01J37/20 Z
H01J37/22 502H
G01N1/28 F
G01N1/28 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020047470
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021057331
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2019173889
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村木 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】上本 敦
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-505899(JP,A)
【文献】特開2016-066553(JP,A)
【文献】特開2016-157671(JP,A)
【文献】特開2018-116860(JP,A)
【文献】特開2018-133552(JP,A)
【文献】特開2018-133553(JP,A)
【文献】特表2019-508678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0330511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01J 37/20
H01J 37/22
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出する前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
対象物に関する位置についての第1の判定の結果に応じて行われる前記位置についての第2の判定の結果と、前記荷電粒子ビームの照射によって取得した画像を含む情報に基づいて前記位置の制御を行うコンピュータと、
を備え、
前記第1の判定、前記対象物についてのテンプレートを用いたテンプレートマッチングに基づく判定であり前記第2の判定は、第2対象物の第2画像を含む第2情報が学習された機械学習のモデルに基づく判定であるか、または、前記第1の判定は、前記機械学習のモデルに基づく判定であり、前記第2の判定は、前記テンプレートマッチングに基づく判定である
荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記コンピュータは、判定の種類を選択するための第3の判定の結果に応じて前記第1の判定と、前記第2の判定とのうち少なくとも一方について前記種類を選択する
請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記第1の判定の結果と前記第2の判定の結果との少なくとも一方に基づいて選択された第4の判定の結果と、前記荷電粒子ビームの照射によって取得した画像を含む情報に基づいて前記位置の制御を行う
請求項1または請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に電子またはイオンから成る荷電粒子ビームを照射することによって作製した試料片を摘出して、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscpe)などによる観察、分析、及び計測などの各種工程に適した形状に試料片を加工する装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の装置では、透過電子顕微鏡によって観察を行う場合には、観察対象物である試料から微細な薄膜試料片を取り出した後、該薄膜試料片を試料ホルダに固定してTEM試料を作成する、いわゆるマイクロサンプリング(MS:Micro-sampling)が行われる。
【0003】
TEM観察用の薄片試料の作製において、マイクロプローブ先端、薄片試料のピックアップ位置、メッシュホルダ上のピラー端などの対象物をテンプレートマッチングにより検出する荷電粒子ビーム装置が知られている(特許文献2)。特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、荷電粒子ビームの照射によって取得した対象物の画像に基づいて作成したテンプレートと、対象物の画像から得られる位置情報とに基づいて、対象物に関する位置制御を行う。これによって特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、自動でMS(自動MS)を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-102138号公報
【文献】特開2016-157671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、荷電粒子ビームの照射によって取得した対象物の画像とテンプレート画像との間でコントラストやフォーカスが異なっている場合や、対象物の画像とテンプレート画像との間で対象物の(異物の付着を含む)表面形状が異なっている場合には、テンプレートマッチングに失敗することがあった。テンプレートマッチングに失敗する場合、特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、自動MSが停止してしまう。
このように従来、自動MSの安定性は十分ではなく、自動MSを安定化し、スループットを向上させることが求められていた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、自動MSを安定化できる荷電粒子ビーム装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。(1)本発明の一態様は、試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、前記試料を載置して移動する試料ステージと、前記試料から分離および摘出する前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、前記試料片が移設される試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、対象物に関する位置についての第1の判定の結果に応じて行われる前記位置についての第2の判定の結果と、前記荷電粒子ビームの照射によって取得した画像を含む情報に基づいて前記位置の制御を行うコンピュータと、を備える荷電粒子ビーム装置である。
【0008】
上記(1)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、第1の判定の結果に応じて行われる第2の判定の結果に基づいて対象物の位置を検出することができるため、自動MSを安定化できる。
ここで従来、対象物の位置の検出に失敗して自動MSが停止してしまう場合、自動MSが停止する度にユーザーが対処をしなくてはならず、スループットの低下を招いていた。上記(1)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、第1の判定に失敗した場合であっても、第2の判定の結果に基づいて対象物の位置を検出することができるため、位置検出の成功率の向上、テンプレートマッチング失敗時のリカバリを可能とする。
【0009】
(2)上記(1)に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記第1の判定は、前記対象物についてのテンプレートを用いたテンプレートマッチングに基づく判定であり、前記第2の判定は、第2対象物の第2画像を含む第2情報が学習された機械学習のモデルに基づく判定である。
上記(2)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、テンプレートマッチングに基づく判定の結果に応じて行われる機械学習のモデルに基づく判定の結果に基づいて対象物の位置を検出することができるため、テンプレートマッチングと機械学習のモデルとに基づいて自動MSを安定化できる。特に、上記(2)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、テンプレートマッチングに失敗した場合であっても、機械学習のモデルに基づいて、対象物の位置を検出できる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記コンピュータは、判定の種類を選択するための第3の判定の結果に応じて前記第1の判定と、前記第2の判定とのうち少なくとも一方について前記種類を選択する。
上記(3)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、対象物の位置の判定に用いられる判定の種類(適切な画像処理アルゴリズム)を選択できるため、対象物の位置の検出の精度を向上させることができる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置において、前記コンピュータは、前記第1の判定の結果と前記第2の判定の結果との少なくとも一方に基づいて選択された第4の判定の結果と、前記荷電粒子ビームの照射によって取得した画像を含む情報に基づいて前記位置の制御を行う。
上記(4)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、第1の判定の結果と第2の判定の結果との少なくとも一方に基づいて選択された第4の判定の結果に基づいて対象物の位置を検出することができるため、第2の判定の結果に基づいて対象物の位置を検出する場合に比べて自動MSを安定化できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動マイクロサンプリングを安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置と画像処理用コンピュータとの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る試料片を示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る試料片ホルダの平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る試料片ホルダの側面図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る画像処理用コンピュータの構成の一例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る初期設定工程の一例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る柱状部の上面図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る柱状部の側面図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る柱状部の学習画像の一例を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部の一例を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部の学習画像の一例を示す図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る試料片ピックアップ工程の一例を示す図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係るニードルの移動処理の一例を示す図である。
図15】本発明の第1の実施形態に係るニードル先端位置判定処理の一例を示す図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係るニードルの先端が含まれるSEM画像データの一例を示す図である。
図17】本発明の第1の実施形態に係るニードルの先端が含まれるSIM画像データの一例を示す図である。
図18】本発明の第1の実施形態に係るニードルの先端の一例を示す図である。
図19】本発明の第1の実施形態に係るニードルの学習画像の一例を示す図である。
図20】本発明の第1の実施形態に係るニードルの先端に付着した試料片の一例を示す図である。
図21】本発明の第1の実施形態に係る異常ケースのための学習画像の一例を示す図である。
図22】本発明の第1の実施形態に係る異物の除去の一例を示す図である。
図23】本発明の第1の実施形態に係るピックアップ位置判定処理の一例を示す図である。
図24】本発明の第1の実施形態に係る試料片が含まれるSIM画像データの一例を示す図である。
図25】本発明の第1の実施形態に係る試料片の学習画像の一例を示す図である。
図26】本発明の第1の実施形態に係る学習画像の一例を示す図である。
図27】本発明の第1の実施形態に係る追加画像の一例を示す図である。
図28】本発明の第1の実施形態に係る特徴点が判定された画像の一例を示す図である。
図29】本発明の第1の実施形態に係る特徴点が判定された画像の一例を示す図である。
図30】本発明の第1の実施形態に係るSIM画像データにおける試料および試料片の支持部の切断加工位置を示す図である。
図31】本発明の第1の実施形態に係る試料片マウント工程の一例を示す図である。
図32】本発明の第2の実施形態に係る画像処理用コンピュータの構成の一例を示す図である。
図33】本発明の第2の実施形態に係るベアウェアの一例を示す図である。
図34】本発明の第2の実施形態に係るパターン画像の一例を示す図である。
図35】本発明の第2の実施形態に係る疑似画像の一例を示す図である。
図36】本発明の第2の実施形態に係るピックアップ位置の検出処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10と画像処理用コンピュータ30との構成の一例を示す図である。荷電粒子ビーム装置10に備えらえる制御用コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射によって取得した画像データを取得する。制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30とデータの送受信を行う。画像処理用コンピュータ30は、制御用コンピュータ22から受信した画像データに含まれる対象物を、まずテンプレートTを用いたテンプレートマッチングに基づいて判定する。画像処理用コンピュータ30は、テンプレートマッチングによる判定に失敗した場合、機械学習モデルMに基づいて当該対象物を判定する。制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30の判定結果に基づいて、対象物に関する位置の制御を行う。
制御用コンピュータ22は、対象物に関する位置についての第1の判定(テンプレートマッチング)の結果に応じて対象物の位置についての第2の判定(機械学習モデルMに基づく判定)を行い、第2の判定の結果と、荷電粒子ビームの照射によって取得した画像を含む情報に基づいて第2対象物に関する位置の制御を行うコンピュータの一例である。
なお、画像処理用コンピュータ30は、荷電粒子ビーム装置10に備えられてもよい。
【0015】
ここで図2を参照し、荷電粒子ビーム装置10の構成について説明する。
(荷電粒子ビーム装置)
図2は、実施形態の荷電粒子ビーム装置10の構成の一例を示す図である。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11と、試料ステージ12と、ステージ駆動機構13と、集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15と、検出器16と、ガス供給部17と、ニードル18と、ニードル駆動機構19と、吸収電流検出器20と、表示装置21と、制御用コンピュータ22と、入力デバイス23とを備える。
【0016】
試料室11は、内部を真空状態に維持する。試料ステージ12は、試料室11の内部において試料Sおよび試料片ホルダPを固定する。ここで試料ステージ12は、試料片ホルダPを保持するホルダ固定台12aを備える。このホルダ固定台12aは複数の試料片ホルダPを搭載できる構造であってもよい。
【0017】
ステージ駆動機構13は、試料ステージ12を駆動する。ここでステージ駆動機構13は、試料ステージ12に接続された状態で試料室11の内部に収容されており、制御用コンピュータ22から出力される制御信号に応じて試料ステージ12を所定軸に対して変位させる。ステージ駆動機構13は、少なくとも水平面に平行かつ互いに直交するX軸およびY軸と、X軸およびY軸に直交する鉛直方向のZ軸とに沿って平行に試料ステージ12を移動させる移動機構13aを備えている。ステージ駆動機構13は、試料ステージ12をX軸またはY軸周りに傾斜させる傾斜機構13bと、試料ステージ12をZ軸周りに回転させる回転機構13cと、を備えている。
【0018】
集束イオンビーム照射光学系14は、試料室11の内部における所定の照射領域(つまり走査範囲)内の照射対象に集束イオンビーム(FIB)を照射する。ここで、集束イオンビーム照射光学系14は、試料ステージ12に載置された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に鉛直方向上方から下方に向かい集束イオンビームを照射する。
【0019】
集束イオンビーム照射光学系14は、イオンを発生させるイオン源14aと、イオン源14aから引き出されたイオンを集束および偏向させるイオン光学系14bと、を備えている。イオン源14aおよびイオン光学系14bは、制御用コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、集束イオンビームの照射位置および照射条件などが制御用コンピュータ22によって制御される。
【0020】
電子ビーム照射光学系15は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に電子ビーム(EB)を照射する。ここで電子ビーム照射光学系15は、試料ステージ12に固定された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に、鉛直方向に対して所定角度(例えば60°)傾斜した傾斜方向の上方から下方に向かい電子ビームを照射可能である。
【0021】
電子ビーム照射光学系15は、電子を発生させる電子源15aと、電子源15aから射出された電子を集束および偏向させる電子光学系15bと、を備えている。電子源15aおよび電子光学系15bは、制御用コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、電子ビームの照射位置および照射条件などが制御用コンピュータ22によって制御される。
【0022】
なお、電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14の配置を入れ替えて、電子ビーム照射光学系15を鉛直方向に、集束イオンビーム照射光学系14を鉛直方向に所定角度傾斜した傾斜方向に配置してもよい。
【0023】
検出器16は、集束イオンビームまたは電子ビームの照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(二次電子、二次イオン)Rを検出する。ガス供給部17は、照射対象の表面にガスGを供給する。ニードル18は、試料ステージ12に固定された試料Sから微小な試料片Qを取り出し、試料片Qを保持して試料片ホルダPに移設する。ニードル駆動機構19は、ニードル18を駆動して試料片Qを搬送する。以下では、ニードル18とニードル駆動機構19を合わせて試料片移設手段と呼ぶこともある。
【0024】
吸収電流検出器20は、ニードル18に流入する荷電粒子ビームの流入電流(吸収電流とも言う)を検出し、検出した結果を流入電流信号として制御用コンピュータ22に出力する。
【0025】
制御用コンピュータ22は、少なくともステージ駆動機構13と、集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15と、ガス供給部17と、ニードル駆動機構19を制御する。制御用コンピュータ22は、試料室11の外部に配置され、表示装置21と、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウスやキーボードなどの入力デバイス23とが接続されている。制御用コンピュータ22は、入力デバイス23から出力される信号または予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号などによって、荷電粒子ビーム装置10の動作を統合的に制御する。
【0026】
ここで上述したように、制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30の判定結果に基づいて、対象物に関する位置の制御を行う。制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30と通信を行うための通信インターフェースを備える。
【0027】
また、制御用コンピュータ22は、吸収電流検出器20から出力される流入電流信号を吸収電流画像データとして画像化する。ここで、制御用コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながら検出器16によって検出される二次荷電粒子Rの検出量を、照射位置に対応付けた輝度信号に変換して、二次荷電粒子Rの検出量の2次元位置分布によって照射対象の形状を示す吸収電流画像データを生成する。吸収電流画像モードでは、制御用コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながらニードル18に流れる吸収電流を検出することによって、吸収電流の2次元位置分布(吸収電流画像)によってニードル18の形状を示す吸収電流画像データを生成する。制御用コンピュータ22は、生成した画像データを表示装置21に表示させる。
表示装置21は、検出器16によって検出された二次荷電粒子Rに基づく画像データなどを表示する。
【0028】
荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面に集束イオンビームを走査しながら照射することによって、照射対象の画像化やスパッタリングによる各種の加工(掘削、トリミング加工など)と、デポジション膜の形成などが実行可能である。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10において、集束イオンビームを試料Sの表面(斜線部)に照射して形成された、試料Sから摘出される前の試料片Qを示す平面図である。符号Fは集束イオンビームによる加工枠、つまり、集束イオンビームの走査範囲を示し、その内側(白色部)が集束イオンビーム照射によってスパッタ加工されて掘削された加工領域Hを示している。レファレンスマークRefは、試料片Qを形成する(掘削しないで残す)位置を示す基準点である。試料片Qの概略の位置に知るにはデポジション膜を利用し、精密な位置合わせには微細穴を利用する。試料Sにおいて試料片Qは、試料Sに接続される支持部Qaを残して側部側および底部側の周辺部が削り込まれて除去されるようにエッチング加工されており、支持部Qaによって試料Sに片持ち支持されている。
【0030】
次に図4及び図5を参照し、試料片ホルダPについて説明する。
図4は試料片ホルダPの平面図であり、図5は側面図である。試料片ホルダPは、切欠き部41を有する略半円形板状の基部42と、切欠き部41に固定される試料台43とを備えている。基部42は、一例として円形板状の金属で形成されている。試料台43は櫛歯形状であり、離間配置されて突出する複数で、試料片Qが移設される柱状部(以下、ピラーとも言う)44を備えている。
【0031】
(画像処理用コンピュータ)
次に図6を参照し、画像処理用コンピュータ30について説明する。図6は、本実施形態に係る画像処理用コンピュータ30の構成の一例を示す図である。画像処理用コンピュータ30は、制御部300と、記憶部305とを備える。
制御部300は、学習データ取得部301と、学習部302と、判定画像取得部303と、判定部304とを備える。
【0032】
学習データ取得部301は、学習データを取得する。学習データは、機械学習の学習に用いられる情報である。学習データは、学習画像と、この学習画像内の対象物の位置を示す情報との組である。学習画像内の対象物には、一例として、試料片、ニードルや試料片ホルダに備えらえる柱状部などが含まれる。ここで学習画像内の対象物の種類と、判定画像内の対象物の種類とは同じである。例えば、学習画像内の対象物の種類が試料片、ニードル、または柱状部である場合、判定画像内の対象物の種類はそれぞれ試料片、ニードル、または柱状部である。
【0033】
ここで本実施形態では、学習画像として、対象物への荷電粒子ビームの照射によって予め得られたSIM画像やSEM画像が用いられる。荷電粒子ビームは所定の方向から対象物へ照射される。荷電粒子ビーム装置10において、荷電粒子ビーム照射系の鏡筒の方向は固定されているため、荷電粒子ビームが対象物に照射される方向は予め決められている。
【0034】
学習画像内の対象物の位置を示す情報とは、一例として、この対象物の学習画像内の位置を示す座標である。この学習画像内の位置を示す座標は、例えば、2次元の直交座標や極座標などである。
【0035】
学習画像は、対象物のSIM画像とSEM画像との両方を含む。学習画像は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像と、対象物を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像との両方である。つまり、学習画像は、試料ステージ12を基準とする第1方向から対象物をみた場合の画像と、この対象物を第2方向からみた場合の画像とを含む。第2方向は、試料ステージ12を基準とする第1方向とは異なる方向である。
【0036】
学習部302は、学習データ取得部301が取得した学習データに基づいて、機械学習を実行する。学習部302は、学習した結果を機械学習モデルMとして記憶部305に記憶させる。学習部302は、一例として、学習データに含まれる学習画像の対象物の種類毎に機械学習を実行する。したがって、機械学習モデルMは、学習データに含まれる学習画像の対象物の種類毎に生成される。なお、学習部302は、対象物の種類毎に機械学習を実行しなくてもよい。つまり、対象物の種類によらず共通の機械学習を実行してもよい。学習部302が機械学習を対象物の種類毎に実行するか否かは、例えば、制御用コンピュータ22へ入力される設定に応じて画像処理用コンピュータ30において設定される。
また、機械学習モデルMには、複数のモデルが含まれる。機械学習モデルMに含まれる複数のモデルは、モデルの生成に用いられた学習データのセットだけでなく、機械学習のアルゴリズムによっても区別される。
なお、以下の説明において画像に撮像されている、または描画されている対象物を、この画像の対象物という場合がある。
【0037】
ここで学習部302が実行する機械学習とは、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)などを用いた深層学習である。この場合、機械学習モデルMには、学習画像と、この学習画像内の対象物の位置との対応に応じてノード間の重みが変更された多層ニューラルネットワークが含まれる。この多層ニューラルネットワークは、画像の各画素に対応するノードをもつ入力層と、この画像内の各位置に対応するノードをもつ出力層を備え、入力層にSIM画像とSEM画像の各画素の輝度値が入力されると、この画像における位置を示す値の組が出力層から出力される。
【0038】
判定画像取得部303は、判定画像を取得する。判定画像とは、制御用コンピュータ22から出力されるSIM画像とSEM画像である。判定画像には、上述した対象物の画像が含まれる。判定画像の対象物には、試料片Qや使用後のニードル18など荷電粒子ビームの照射に関する物体が含まれる。
【0039】
判定画像は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像と、対象物を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像との両方である。つまり、判定画像は、対象物を第1方向からみた場合の画像と、この対象物を第2方向からみた場合の画像とを含む。ここで第1方向とは、試料ステージ12を基準とする方向であり、第2方向とは、試料ステージ12を基準とする第1方向とは異なる方向である。
【0040】
判定部304は、テンプレートマッチングに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる対象物の位置を判定する。ここで判定部304は、テンプレートマッチングにおいて、対象物についてのテンプレートTを用いる。テンプレートTは、荷電粒子ビームの照射によって取得した対象物の画像を基にして予め作成される。テンプレートTは、一例として記憶部305に記憶される。
判定部304は、テンプレートマッチングに失敗した場合、学習部302によって学習が実行された機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる対象物の位置を判定する。
【0041】
ここで判定画像に含まれる対象物の位置とは、例えば、SIM画像とSEM画像内の試料片のピックアップ位置や、SIM画像とSEM画像内のニードルの先端の位置や、SIM画像とSEM画像内の柱状部44の位置が含まれる。判定部304は、判定画像に含まれる対象物の位置として、一例として、判定画像内の対象物の座標を判定する。
【0042】
なお、本実施形態においては、一例として、判定部304は、対象物が試料片Qである場合には、テンプレートマッチングに基づいて試料片Qのピックアップ位置を判定し、テンプレートマッチングに失敗した場合、機械学習モデルMに基づいてピックアップ位置を判定する。一方、判定部304は、対象物が柱状部44またはニードル18である場合には、機械学習モデルMに基づいて柱状部44の位置またはニードル18の先端の位置を判定する。判定部304は、対象物が柱状部44またはニードル18など試料片Q以外である場合にも、試料片Qの場合と同様に、テンプレートマッチングに基づいて判定し、判定に失敗した場合に、機械学習モデルMに基づいて対象物の位置を判定してもよい。
対象物の位置の判定にいずれのアルゴリズムを用いるかは、例えば、ユーザーによって予め設定される。
テンプレートマッチングに基づく判定は、第1の判定の一例であり、機械学習モデルMに基づく判定は、第2の判定の一例である。
【0043】
なお、画像処理用コンピュータ30は、テンプレートTや学習済みの機械学習モデルを、例えば外部のデータベースから取得してもよい。その場合、制御部300は、学習データ取得部301と学習部302とを備えていなくてもよい。
【0044】
以下、制御用コンピュータ22が実行する自動マイクロサンプリング(MS:Micro-sampling)の動作、つまり荷電粒子ビーム(集束イオンビーム)による試料Sの加工によって形成された試料片Qを自動的に試料片ホルダPに移設させる動作について、初期設定工程、試料片ピックアップ工程、試料片マウント工程に大別して、順次説明する。
(初期設定工程)
図7は、本実施形態に係る初期設定工程の一例を示す図である。
ステップS10:制御用コンピュータ22は、モード及び加工条件の設定を行う。モードの設定とは、自動シーケンスの開始時に操作者の入力に応じて後述する姿勢制御モードの有無等の設定である。加工条件の設定は、加工位置、寸法、試料片Qの個数等の設定である。
【0045】
ステップS20:制御用コンピュータ22は、柱状部44の位置を登録する。ここで制御用コンピュータ22は、対象物として柱状部44が含まれるSIM画像とSEM画像を画像処理用コンピュータ30に送信する。
【0046】
本実施形態において、対象物が含まれる吸収電流画像データは、対象物のSIM画像と、対象物のSEM画像との組である。つまり、対象物が含まれるSIM画像とSEM画像は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像と、対象物を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像との組である。
【0047】
判定画像取得部303は、画像処理用コンピュータ30からSIM画像とSEM画像を判定画像として取得する。判定部304は、機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる柱状部44の位置を判定する。判定部304は、判定した柱状部44の位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力する。
【0048】
ここで判定部304は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像から、対象物の位置の試料ステージ12における2次元座標を判定する。一方、判定部304は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSEM画像とから、対象物の位置の当該傾斜方向に垂直な平面における2次元座標を判定する。判定部304は、判定した試料ステージ12における2次元座標と、傾斜方向に垂直な平面における2次元座標とに基づいて、対象物の位置を3次元座標の値として判定する。
【0049】
なお、判定部304は、荷電粒子ビーム装置10において電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14とが配置される方向や両者の間の角度の情報である方向情報を3次元座標の値の算出に用いる。判定部304は、方向情報を予め記憶部305に記憶させ読み出すか、制御用コンピュータ22から取得する。
ここでステップS20においては、対象物とは、柱状部44である。以下の工程においても、判定部304が対象物の位置を判定する処理は、対象物が試料片Qである場合を除いて同様である。
【0050】
ここで図8から図12を参照し、柱状部44や、機械学習モデルMの生成に用いられる柱状部44の学習画像について説明する。
図8及び図9は、本実施形態に係る柱状部44の一例を示す図である。図8及び図9に示す柱状部A0は、柱状部44の設計上の構造の一例である。ここで図8は、柱状部A0の上面図であり、図9は、柱状部A0の側面図である。柱状部A0は、基部A02に段上の構造のピラーA01が接着された構造を有する。
【0051】
図10は、本実施形態に係る柱状部44の学習画像の一例を示す図である。学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13は、柱状部44の位置の学習に用いられる。学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13では、柱状部の位置を示す情報が円として示されている。
学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13では、ピラーA11、ピラーA21、ピラー31の形状はそれぞれ異なっている。一方、学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13では、基部A12、基部A22、基部A32の形状は同一である。
【0052】
なお、学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13は、一例として、柱状部44を試料ステージ12の水平方向からみた場合のSIM画像とSEM画像に含まれる柱状部44の位置を判定するための学習画像である。図2では、集束イオンビーム照射光学系14や電子ビーム照射光学系15は試料ステージ12の水平方向から試料ステージ12に臨んでいないが、集束イオンビーム照射光学系14や電子ビーム照射光学系15のいずれか一方は水平方向から試料ステージ12に臨んでもよく、学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13は、その場合の柱状部44の位置を判定するための学習画像である。
【0053】
図11は、本実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部44の一例を示す図である。図11に示す柱状部A4は、ピラーが段上構造になっていない柱状部44の設計上の構造の一例の側面図である。
【0054】
図12は、本実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部44の学習画像の一例を示す図である。学習画像X21、学習画像X22、学習画像X23は、一例として、柱状部44を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像に含まれる柱状部44の位置を判定するための学習画像である。
学習画像X21、学習画像X22、学習画像X23では、ピラーA51、ピラーA61、ピラー71の形状はそれぞれ異なっている。一方、学習画像X21、学習画像X22、学習画像X23では、基部A52、基部A62、基部A72の形状は同一である。
【0055】
従来のテンプレートマッチングでは、ピラーの形状が異なっている場合に、柱状部の位置を判定できないことがあった。一方、機械学習モデルMは、柱状部44の基部が含まれた学習画像を用いた機械学習に基づいて生成されるため、機械学習モデルMでは、例えば、基部の形状が特徴量として学習されている。そのため、荷電粒子ビーム装置10では、ピラーの形状が異なっている場合であっても、柱状部の判定の精度が向上する。
学習画像の対象物体は、複数の学習画像の対象物体相互間において同じ形状の部位が含まれていることが好ましい。
【0056】
図7に戻って初期設定工程の説明を続ける。
制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30によって判定された柱状部44の位置を示す位置情報に基づいて、柱状部44の位置を登録する。
なお、柱状部44の学習画像では、柱状部44のうち試料台43の両端に位置する柱状部の画像が含まれることが好ましい。この学習画像を含む学習データを用いて生成された機械学習モデルMに基づいて、画像処理用コンピュータ30は、柱状部44のうち試料台43の両端の柱状部を、両端以外の柱状部と区別して検出する。制御用コンピュータ22は、検出した両端の柱状部の位置から試料片ホルダPの傾きを算出してもよい。制御用コンピュータ22は、算出した傾きに基づいて対象物の位置の座標の値を補正してもよい。
【0057】
ステップS30:制御用コンピュータ22は、集束イオンビーム照射光学系14を制御して、試料Sを加工する。
【0058】
(試料片ピックアップ工程)
図13は、本実施形態に係る試料片ピックアップ工程の一例を示す図である。ここで、ピックアップとは、集束イオンビームによる加工やニードルによって、試料片Qを試料Sから分離、摘出することを言う。
【0059】
ステップS40:制御用コンピュータ22は、試料の位置を調整する。ここで制御用コンピュータ22は、対象とする試料片Qを荷電粒子ビームの視野に入れるためにステージ駆動機構13によって試料ステージ12を移動させる。ここで、制御用コンピュータ22は、レファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置関係を用いる。制御用コンピュータ22は、試料ステージ12の移動後、試料片Qの位置合わせを行なう。
【0060】
ステップS50:制御用コンピュータ22は、ニードル18の移動を実行する。
ここで図14を参照し、制御用コンピュータ22が実行するニードル18の移動のための処理について説明する。図14は、本実施形態に係るニードル18の移動処理の一例を示す図である。図14のステップS510からステップ540は、図13のステップS50に対応する。
【0061】
ステップS510:制御用コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(粗調整)を実行する。
ステップS520:制御用コンピュータ22は、ニードル18の先端を検出する。ここで制御用コンピュータ22は、対象物としてニードル18が含まれる吸収電流画像データを画像処理用コンピュータ30に送信する。
【0062】
判定画像取得部303は、画像処理用コンピュータ30からSIM画像とSEM画像とを判定画像として取得する。判定部304は、機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれるニードル18の位置を、対象物の位置として判定する。判定部304は、判定したニードル18の位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力する。
【0063】
次に、制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30によって判定されたニードル18の位置を示す位置情報に基づいて、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(微調整)を実行する。
【0064】
ここで図16から図19を参照し、ニードル18や、機械学習モデルMの生成に用いられるニードル18の学習画像について説明する。
図16は、本実施形態に係るニードル18の先端が含まれるSEM画像データの一例を示す図である。図17は、本実施形態に係るニードル18先端が含まれるSIM画像データの一例を示す図である。
【0065】
図18は、本実施形態に係るニードル18の先端の一例を示す図である。図18では、ニードル18の一例として、試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のニードルB1が示されている。
【0066】
図19は、本実施形態に係るニードル18の学習画像の一例を示す図である。学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33は、ニードル18の先端の位置の学習に用いられる。学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33では、ニードル18の先端の位置を示す情報が円として示されている。学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33では、ニードルの先端の太さはそれぞれ異なっている。一方、学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33では、ニードルの先端の形状は同一である。
【0067】
実際のニードル18の先端の太さは、クリーニングによって太さが変化する。従来のテンプレートマッチングでは、ニードルの先端の太さが異なっている場合に、ニードルの先端の位置を判定できないことがあった。一方、機械学習モデルMは、ニードル18の先端が含まれた学習画像を用いた機械学習に基づいて生成されるため、機械学習モデルMでは、例えば、ニードルの先端の形状が特徴量として学習されている。そのため、荷電粒子ビーム装置10では、ニードルの先端の太さが異なっている場合であっても、ニードルの先端の判定の精度が向上する。
【0068】
ここで図15を参照し、画像処理用コンピュータ30がニードル18の先端の位置を判定する処理の詳細について説明する。図15は、本実施形態に係るニードル先端位置判定処理の一例を示す図である。図15に示すニードル先端位置判定処理は、図14のステップS520において実行される。
【0069】
ステップS5210:判定部304は、機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれるニードル18の先端の位置を、対象物の位置として判定する。
【0070】
ステップS5220:判定部304は、ニードル18の先端の位置を判定できたか否かを判定する。判定部304は、ニードル18の先端の位置を判定できたと判定する場合(ステップS5220;YES)、判定したニードル18の先端の位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力し、ニードル先端位置判定処理を終了する。一方、判定部304は、ニードル18の先端の位置を判定できなかったと判定する場合(ステップS5220;NO)、ステップS5230の処理を実行する。
【0071】
ニードル18の先端の位置を判定できない場合とは、例えば、ニードル18の先端に試料片Qを切断した一部が付着しておりニードル18の先端の位置が正しく判定されない場合である。図20は、本実施形態に係るニードルB2の先端に付着した試料片Q2の一例を示す図である。
以下では、ニードル18の先端の位置を判定できない場合を異常ケースということがある。
【0072】
ステップS5230:判定部304は、現在のピックアップ位置判定処理において異物検知を実行済みであるか否かを判定する。判定部304は、異物検知を実行済みであると判定する場合(ステップS5230;YES)、ステップS5240の処理を実行する。一方、判定部304は、異物検知を実行済みでないと判定する場合(ステップS5230;NO)、ステップS5250の処理を実行する。
【0073】
ステップS5240:判定部304は、制御用コンピュータ22に自動MSを停止させる。ここで判定部304は、自動MSを停止させるための停止信号を制御用コンピュータ22に出力する。その後、判定部304は、ニードル先端位置判定処理を終了する。
【0074】
ステップS5250:判定部304は、機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる異物を判定する。ここで異物とは、ニードル18の先端に試料片Qの一部が付着したものである。
【0075】
ここで図21を参照し、異常ケースの判定を機械学習によって行うための学習画像について説明する。図21は、本実施形態に係る異常ケースのための学習画像の一例を示す図である。学習画像Y41、学習画像Y42、学習画像Y43、学習画像Y44、学習画像Y45、学習画像Y46では、ニードル(ニードルB41、ニードルB42、ニードルB43、ニードルB44、ニードルB45、ニードルB46)の先端に試料片の一部(試料片Q41、試料片Q42、試料片Q43、試料片Q44、試料片Q45、試料片Q46)が付着している。
【0076】
ステップS5260:判定部304は、異物を判定できたか否かを判定する。判定部304は、異物を判定できたと判定する場合(ステップS5260;YES)、一方、判定部304は、異物を判定できなかったと判定する場合(ステップS5260;NO)、ステップS5270の処理を実行する。
【0077】
ステップS5270:判定部304は、制御用コンピュータ22に異物を除去させる。ここで判定部304は、異物の除去を実行させるための制御信号を制御用コンピュータ22に出力する。その後、判定部304は、ステップS5210の処理を再度実行する。つまり、判定部304は、異物が除去されたニードル18の先端の位置を判定する。
【0078】
異物を除去とは、ニードル18のクリーニングによって、ニードル18の先端に付着した試料片Qの一部を除去することである。図22は、本実施形態に係る異物の除去の一例を示す図である。図22に示す異物の除去では、ニードル18のクリーニング用の加工枠FR6が設置されて、ニードルB6の異物Q6が除去される。
【0079】
図14に戻ってニードル18の移動処理の説明を続ける。
ステップS530:制御用コンピュータ22は、試料片Qのピックアップ位置を検出する。ここで制御用コンピュータ22は、対象物として試料片Qが含まれるSIM画像とSEM画像を画像処理用コンピュータ30に送信する。
【0080】
ここで図23を参照し、画像処理用コンピュータ30のピックアップ位置を判定する処理について説明する。
図23は、本実施形態に係るピックアップ位置判定処理の一例を示す図である。図23に示すステップS5310からステップS5370までの各処理は、図14のステップS530の処理に対応する。
【0081】
ステップS5310:判定部304は、テンプレートマッチングに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる試料片Qのピックアップ位置を判定する。ここで判定部304は、テンプレートマッチングにおいて、記憶部305に記憶されるテンプレートTを用いる。
【0082】
ステップS5320:判定部304は、テンプレートマッチングに基づいて、試料片Qのピックアップ位置を判定できたか否かを判定する。判定部304は、テンプレートマッチングのスコアが所定の値以上である場合にピックアップ位置を判定できたと判定する。
判定部304は、ピックアップ位置を判定できたと判定する場合(ステップS5320;YES)、判定したピックアップ位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力し、ピックアップ位置判定処理を終了する。一方、判定部304は、ピックアップ位置を判定できなかったと判定する場合(ステップS5320;NO)、ステップS5330の処理を実行する。
【0083】
ステップS5330:判定部304は、ピックアップ位置の判定に用いる機械学習モデルM-jを選択する。ここで判定部304は、機械学習モデルMに含まれる機械学習モデルM-i(i=1、2、・・・、N:Nはモデルの数)のなかからピックアップ位置の判定に用いる機械学習モデルM-jを1つ選択する。本実施形態では、一例として、判定部304は、機械学習モデルMに含まれる機械学習モデルM-i(i=1、2、・・・、N:Nはモデルの数)のうち現在のピックアップ位置判定処理において選択していないものを所定の順番に基づいて選択する。所定の順番とは、例えば、機械学習モデルM-iのインデックスiの昇順である。
【0084】
ステップS5340:判定部304は、選択した機械学習モデルM-jに基づいてピックアップ位置を判定する。この判定の処理は、上述のステップS20などにおいて判定部304が対象物の位置を判定する処理と同様である。
【0085】
ステップS5350:判定部304は、選択した機械学習モデルM-jに基づいて、試料片Qのピックアップ位置を判定できたか否かを判定する。
判定部304は、ピックアップ位置を判定できたと判定する場合(ステップS5350;YES)、判定したピックアップ位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力し、ピックアップ位置判定処理を終了する。一方、判定部304は、ピックアップ位置を判定できなかったと判定する場合(ステップS5350;NO)、ステップS5360の処理を実行する。
【0086】
ステップS5360:判定部304は、機械学習モデルMに含まれるすべての機械学習モデルM-i(i=1、2、・・・、N:Nはモデルの数)が用いられたか否かを判定する。判定部304は、すべての機械学習モデルが用いられたと判定する場合(ステップS5360;YES)、ステップS5370の処理を実行する。一方、判定部304は、すべての機械学習モデルが用いられていないと判定する場合(ステップS5360;NO)、ステップS5330の処理を再度実行する。
【0087】
ステップS5370:判定部304は、制御用コンピュータ22に自動MSを停止させる。ここで判定部304は、自動MSを停止させるための停止信号を制御用コンピュータ22に出力する。その後、判定部304は、ピックアップ位置判定処理を終了する。
【0088】
ここで図24及び図25を参照し、試料片Qや、機械学習モデルMの生成に用いられる試料片Qの学習画像について説明する。
図24は、本実施形態に係る試料片Qが含まれるSIM画像データの一例を示す図である。図24では、試料片Qの一例として、試料片Q71が、ピックアップ位置を示す円とともに示されている。
【0089】
図25は、本実施形態に係る試料片Qの学習画像の一例を示す図である。学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13は、試料片Qの先端の位置の学習に用いられる。学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13では、試料片Qのピックアップ位置を示す情報が円として示されている。学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13では、試料片のサイズや表面の形状はそれぞれ異なっている。一方、学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13では、試料片のピックアップ位置における形状は同一である。
【0090】
実際の試料片の表面の形状は、個体毎に異なる。従来のテンプレートマッチングでは、試料片の表面の形状が異なっている場合に、試料片のピックアップ位置を判定できないことがあった。一方、機械学習モデルMは、試料片Qのピックアップ位置が含まれた学習画像を用いた機械学習に基づいて生成されるため、機械学習モデルMでは、例えば、試料片Qのピックアップ位置の形状が特徴量として学習されている。そのため、荷電粒子ビーム装置10では、試料片の表面の形状が異なっている場合であっても、試料片Qのピックアップ位置の判定の精度が向上する。
【0091】
なお、図23に示したステップS5330において、機械学習モデルMに含まれる機械学習モデルM-i(i=1、2、・・・、N:Nはモデルの数)のなかから対象物の判定に用いる機械学習モデルM-jを1つ選択する処理における順番は変更されてもよい。例えば、画像処理用コンピュータ30が対象物(図23の一例においてピックアップ位置)を判定する処理を最初に実行する場合に、上述した所定の順番とし、2回目以降の処理においては、当該順番は前回対象物が判定できたか否かに応じて変更されてもよい。
例えば、前回の対象物を判定する処理において、機械学習モデルM-kに基づいて対象物を判定できた場合に、判定部304は、この機械学習モデルM-kの順番を、機械学習モデルMに含まれる機械学習モデルM-i(i=1、2、・・・、N:Nはモデルの数)のなかにおいて最初の順番としてもよい。あるいは、判定部304は、この機械学習モデルM-kの順番を、所定の順位(例えば1つ)だけ繰り上げてもよい。また、前回の対象物を判定する処理において、機械学習モデルM-mに基づいて対象物を判定できなかった場合に、判定部304は、この機械学習モデルM-mの順番を最後の順番としてもよい。あるいは、判定部304は、この機械学習モデルM-mの順番を所定の順位(例えば1つ)だけ繰り下げてもよい。
【0092】
また、図23に示した対象物を判定する処理において、機械学習モデルMに含まれるすべての機械学習モデルM-i(i=1、2、・・・、N:Nはモデルの数)が用いられた後、対象物を判定できなかった場合に、学習部302は、対象物を判定できなかった判定画像を学習画像に含めて新たに機械学習を実行し、機械学習モデルMを更新してもよい。その場合、例えば、学習部302は、対象物を判定できなかった判定画像を学習データに追加し、新たに機械学習を実行し機械学習モデルMを更新する。学習データに追加される対象物を判定できなかった判定画像の数は複数であってよい。
機械学習モデルMを更新するとは、機械学習モデルMに、新たに学習を実行した結果得られたモデルを追加することである。あるいは、機械学習モデルMを更新するとは、新たに学習を実行した結果得られたモデルによって、機械学習モデルMに含まれる複数のモデルのうちいずれかを置き換えることであってもよい。
【0093】
学習部302が機械学習モデルMを更新する時期は、例えば、所定の日数毎の時期である。学習部302は、例えば、7日毎に機械学習モデルMを更新する。なお、学習部302は、画像処理用コンピュータ30が荷電粒子ビーム装置10のユーザーから機械学習モデルMを更新する操作を受け付けた場合に、機械学習モデルMを更新してもよい。
【0094】
学習部302は、機械学習モデルMを更新した後、更新した機械学習モデルMに基づいて判定精度を算出してもよい。その場合、例えば、記憶部305にテスト画像セットが予め記憶される。テスト画像セットは、判定画像に含まれる対象物(図23の例ではピックアップ位置)と同じ種類の対象物の画像を含む複数の画像である。テスト画像セットは、記憶部305に予め記憶されたものから、荷電粒子ビーム装置10のユーザーによって変更されてもよい。
例えば学習部302は、更新する前の機械学習モデルMに基づいて、テスト画像セットに含まれる画像に含まれる対象物を判定部304に判定させ、判定結果に基づいて判定精度を算出する。次に、学習部302は、更新した後の機械学習モデルMに基づいて、テスト画像セットに含まれる画像に含まれる対象物を判定部304に判定させ、判定結果に基づいて判定精度を算出する。学習部302は、例えば、判定精度として、テスト画像セットに含まれる画像に対する対象物の判定に成功した画像の割合を算出する。学習部302は、更新した後の機械学習モデルMが更新する前の機械学習モデルMに比べて判定精度が向上した場合、更新した機械学習モデルMによって記憶部305に記憶される機械学習モデルMを置き換える。一方、学習部302は、更新した後の機械学習モデルMが更新する前の機械学習モデルMに比べて判定精度が向上していない場合、更新した後の機械学習モデルMを破棄する。
【0095】
また、ユーザーによって機械学習モデルMが生成されてもよい。その場合、例えば、ユーザーは、画像処理用コンピュータ30を操作して機械学習モデルMを生成する。ユーザーは、学習画像を予め用意する。学習データ取得部301は、ユーザーによって予め用意された学習画像を取得する。予め用意された学習画像は、例えば、荷電粒子ビーム装置を用いてSIM画像やSEM画像を撮像することによって生成する。ここで予め用意された学習画像は、実際に荷電粒子ビーム装置10が判定画像としてSIM画像やSEM画像を生成するのと同程度の範囲で画像についてのパラメータを変化させて生成されることが好ましい。画像についてのパラメータには、コントラスト、ブライトネス、倍率、フォーカス、及びビーム条件などが含まれる。
【0096】
ユーザーが学習画像を予め用意する場合、学習画像に含まれる複数の画像において特定の種類の画像の割合が多くなることは好ましくない。ユーザーが学習画像を予め用意する場合、学習画像には、複数の種類の画像の枚数が互いに均等となるようにそれらの複数の画像が含まれることが好ましい。ここで画像の種類は、例えば、上述した画像についてのパラメータによって区別される。
なお、学習画像には、後述する疑似画像が含まれてもよい。
【0097】
また、ユーザーによって機械学習モデルMが生成される場合に、機械学習に用いられる学習画像の妥当性はユーザーによって判定される。その場合、ユーザーは、学習画像の妥当性を判定する場合に、XAI(Explainable AI)を利用してよい。XAIでは、機械学習のモデルが判定を行う過程を説明する。学習部302は、XAIに基づいて、機械学習モデルMが対象物を含む画像において対象物の位置を判定する過程で、当該画像において対象物の位置を示す特徴点として用いられた領域を判定する。学習部302は、XAIとして例えば、Layerwise relevance propagation(LRP)などの手法を用いる。ユーザーは、学習部302が判定した特徴点として用いられた領域を目視で確認して学習画像の妥当性を判定する。
【0098】
ここで図26から図29を参照し、XAIに基づく学習画像の妥当性の判定について説明する。図26は、本実施形態に係る学習画像Y5の一例を示す図である。学習画像Y5には、画像Y51から画像Y54が含まれる。画像Y51から画像Y54は、SEM画像、SIM画像、あるいは後述する疑似画像などのいずれであってもよい。画像Y51から画像Y54では、それぞれニードルB41からニードルB44がそれぞれ含まれる。学習画像Y5に基づいて学習された機械学習モデルM5では、画像Y51から画像Y54においてそれぞれ領域R41から領域R44が、ニードルの先端を示す領域であるという条件が課されて機械学習が実行されている。図26では、領域R41から領域R44のそれぞれの形状は、一例として楕円である。
【0099】
図27は、本実施形態に係る追加画像I1の一例を示す図である。追加画像I1は、学習画像Y5に追加しようとしている学習画像であり、学習画像Y5にするべきかについての妥当性を判定する対象である。追加画像I1は、一例として、ニードルの画像が含まれている。追加画像I1は、SEM画像、SIM画像、あるいは後述する疑似画像などのいずれであってもよい。
【0100】
図28及び図29は、本実施形態に係る特徴点が判定された画像の一例を示す図である。図28では、機械学習モデルMとして、例えば機械学習モデルM1に基づいて図27に示した追加画像I1に含まれるニードルの先端の位置が判定された場合に、機械学習モデルM1が特徴点として用いた領域R1が示された画像O1が示されている。図29では、機械学習モデルMとして、例えば機械学習モデルM2に基づいて図27に示した追加画像I1に含まれるニードルの先端の位置が判定された場合に、機械学習モデルM2が特徴点として用いた領域R21及び領域R22が示された画像O2が示されている。機械学習モデルM1、及び機械学習モデルM2は、それぞれ学習画像Y5に基づいて機械学習が実行されて生成されている。
【0101】
画像O1によれば、機械学習モデルM1は領域R1を特徴点として用いて判定を行っている。領域R1は、ニードルの先端の位置に対応する。上述したように図26に示した学習画像Y5では、ニードルの先端を示す領域が示されているため、追加画像I1を機械学習モデルM1に追加する必要はない。この場合、ユーザーは、追加画像I1を学習画像Y5に追加することは妥当でなないと判定する。
画像O2によれば、機械学習モデルM2は領域R21及び領域R22を特徴点として用いて判定を行っている。領域R21はニードルの先端の位置に対応する。一方、領域R22はニードルの先端以外の位置に対応する。領域R22がニードルの先端以外の位置に対応するという条件を課して、追加画像I1を機械学習モデルM2の学習に用いれば、領域R22が示すニードルの先端以外の位置をニードルの先端として判定することが抑制されることが期待される。この場合、ユーザーは、追加画像I1を学習画像Y5に追加することは妥当であると判定する。
【0102】
また、図23に示した対象物を判定する処理では、ステップS5310においてテンプレートマッチングに基づいて、対象物を判定できなかった場合に、画像処理用コンピュータ30は、機械学習モデルMに含まれる機械学習モデルM-i(i=1、2、・・・、N:Nはモデルの数)のなかから対象物の判定に用いる機械学習モデルM-jを1つ選択する場合の一例、つまりリトライが行われる場合の一例について説明したが、これに限らない。画像処理用コンピュータ30は、テンプレートマッチングに基づく判定と、機械学習モデルMに基づく判定とを並行して実行して、妥当であると判定される結果を対象物の判定結果として選択してもよい。
【0103】
図14に戻ってニードル18の移動処理の説明を続ける。
ステップS540:制御用コンピュータ22は、検出したピックアップ位置までニードル18を移動させる。
以上で、制御用コンピュータ22は、ニードル18の移動処理を終了する。
【0104】
図13に戻って試料片ピックアップ工程の説明を続ける。
ステップS60:制御用コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを接続する。ここで制御用コンピュータ22は、デポジション膜を用いて接続を行う。
ステップS70:制御用コンピュータ22は、試料Sと試料片Qとを加工分離する。ここで図30は、加工分離の様子を示しており、本発明の実施形態に係るSIM画像データにおける試料Sおよび試料片Qの支持部Qaの切断加工位置T1を示す図である。
【0105】
ステップS80:制御用コンピュータ22は、ニードル18を退避させる。ここで制御用コンピュータ22は、ステップS50のニードル18の移動処理と同様にしてニードル18の先端の位置を検出してニードル18を移動させて退避を行う。
【0106】
ステップS90:制御用コンピュータ22は、試料ステージ12を移動させる。ここで制御用コンピュータ22は、上述のステップS20において登録した特定の柱状部44が、荷電粒子ビームによる観察視野領域内に入るようにステージ駆動機構13によって試料ステージ12を移動させる。
【0107】
(試料片マウント工程)
図31は、本実施形態に係る試料片マウント工程の一例を示す図である。ここで試料片マウント工程とは、摘出した試料片Qを試料片ホルダPに移設する工程のことである。ステップS100:制御用コンピュータ22は、試料片Qの移設位置を判定する。ここで制御用コンピュータ22は、上述のステップS20において登録した特定の柱状部44を、移設位置として判定する。
【0108】
ステップS110:制御用コンピュータ22は、ニードル18の位置を検出する。ここで制御用コンピュータ22は、上述のステップS520と同様にしてニードル18の先端の位置を検出する。
ステップS120:制御用コンピュータ22は、ニードル18を移動させる。ここで制御用コンピュータ22は、ニードル18をステップS100で判定した試料片Qの移設位置までニードル駆動機構19によってニードル18を移動させる。制御用コンピュータ22は、柱状部44と試料片Qとの間に予め定めた空隙を空けてニードル18を停止させる。
【0109】
ステップS130:制御用コンピュータ22は、ニードル18に接続された試料片Qを柱状部44に接続する。
ステップS140:制御用コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを分離する。ここで制御用コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを接続するデポジション膜DM2を切断することによって分離を行う。
ステップS150:制御用コンピュータ22は、ニードル18を退避させる。ここで制御用コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を試料片Qから所定距離だけ遠ざける。
【0110】
ステップS160:制御用コンピュータ22は、次のサンプリングを実行するか否かを判定する。ここで次のサンプリングを実行するとは、引き続いて同じ試料Sの異なる場所からサンプリングを継続することである。サンプリングすべき個数の設定は、ステップS10で事前に登録しているため、制御用コンピュータ22はこのデータを確認して次のサンプリングを実行するかを判定する。次のサンプリングを実行すると判定する場合は、制御用コンピュータ22は、ステップS50に戻り、上述のように後続するステップを続けサンプリング作業を実行する。一方、制御用コンピュータ22は、次のサンプリングを実行しないと判定する場合は、自動MSの一連のフローを終了する。
【0111】
なお、本実施形態では、学習データが、学習画像と、この学習画像内の対象物の位置を示す情報との組である場合の一例について説明したが、これに限らない。学習データには、学習画像以外に、試料の種類、スキャンパラメータ(集束イオンビーム照射光学系14、及び電子ビーム照射光学系15の加速電圧など)、ニードル18のクリーニングを実行してからの使用回数、ニードル18の先端に異物が付着しているか否か、などを示す情報であるパラメータ情報が含まれてもよい。
【0112】
その場合、機械学習モデルM1は、学習画像と、パラメータ情報とに基づいて機械学習が実行されて生成される。また、判定部304は、制御用コンピュータ22からSIM画像やSEM画像の画像データに加え、パラメータ情報を取得して、画像データ、パラメータ情報と、機械学習モデルM1とに基づいて対象物の画像内の位置を判定する。
【0113】
また、さらにパラメータ情報に、上述した方向情報が含まれてもよい。学習データに方向情報が含まれる場合、対象物と、この対象物をみている方向(試料ステージ12を基準とする方向)との関係が学習されて機械学習モデルM1が生成されるため、判定部304は、対象物の位置の判定に方向情報を用いる必要はない。
【0114】
なお上述したように、コンピュータ(本実施形態において、制御用コンピュータ22)は、画像処理用コンピュータ30が機械学習のモデル(本実施形態において、機械学習モデルM1)と、第2画像(本実施形態において、柱状部44、ニードル18、及び試料片QのSIM画像やSEM画像)を含む第2情報とに基づいて第2対象物(本実施形態において、柱状部44、ニードル18、及び試料片Q)に関する位置を判定した結果に基づいて、第2対象物(本実施形態において、柱状部44、ニードル18、及び試料片Q)に関する位置の制御を行う。なお、画像処理用コンピュータ30と、制御用コンピュータ22とは、一体となって荷電粒子ビーム装置10に備えられてもよい。
【0115】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
本実施形態では、学習画像として、対象物の種類に応じて生成された疑似画像が用いられたり、対象物の種類に応じて用いられる機械学習モデルが選択されたりする場合について説明をする。
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10を荷電粒子ビーム装置10aといい、画像処理用コンピュータ30を画像処理用コンピュータ30aという。
【0116】
図32は、本実施形態に係る画像処理用コンピュータ30aの構成の一例を示す図である。本実施形態に係る画像処理用コンピュータ30a(図32)と第1の実施形態に係る画像処理用コンピュータ30(図6)とを比較すると、学習画像生成部306a、分類部307a、機械学習モデルM1a、及び分類用学習モデルM2aが異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
制御部300aは、学習データ取得部301と、学習部302と、判定画像取得部303と、判定部304とに加え、学習画像生成部306aと、分類部307aとを備える。
【0117】
学習画像生成部306aは、学習画像として疑似画像PIを生成する。本実施形態において疑似画像PIとは、対象物への荷電粒子ビームの照射によって予め得られたSIM画像とSEM画像を元に生成した画像である。学習画像生成部306aは、一例として、ベアウェアBWと、パターン画像PTとに基づいて疑似画像PIを生成する。
【0118】
ベアウェアBWとは、対象物から表面のパターンが除かれて対象物の形状を示す画像である。ベアウェアBWは、サイズ、コントラスト、フォーカスなどが異なる複数の対象物の形状を示す複数の画像であることが好ましい。ベアウェアBWは、SIM画像とSEM画像とは異なり、画像ソフトウェアを用いて描画された画像である。
パターン画像PTとは、対象物の内部構造に応じたパターンを示す画像である。パターン画像PTは、荷電粒子ビームの照射によって得られたSIM画像やSEM画像であってもよいし、画像ソフトウェアを用いて描画された画像であってもよい。
【0119】
学習画像生成部306aは、疑似画像生成アルゴリズムを用いて、パターン画像PTが示す対象物の内部構造に応じたパターンにランダムノイズを加えて、ベアウェアBWに重畳することによって疑似画像PIを生成する。
【0120】
本実施形態では、一例として、学習画像生成部306aが、試料片Qの学習画像として疑似画像PIを生成する場合の一例について説明するが、これに限らない。学習画像生成部306aは、ニードル18や柱状部44の学習画像として疑似画像PIを生成してもよい。また、学習画像生成部306aは、上述した異常ケースの学習画像としてニードル18の先端に試料片Qの一部が付着した場合の疑似画像PIを生成してもよい。
【0121】
なお、学習画像生成部306aは、学習画像に、上述した第1実施形態の対象物への荷電粒子ビームの照射によって予め得られたSIM画像とSEM画像を含めてもよい。つまり、学習画像生成部306aは、学習画像として、疑似画像PIのみを用いてもよいし、疑似画像PIとSIM画像とSEM画像とを組み合わせて用いてもよい。
【0122】
学習部302は、機械学習において、学習画像生成部306aが生成した学習画像から、対象物の表面の形状や、内部構造のパターンを特徴量として抽出して、機械学習モデルM1aを生成する。
【0123】
ここで図33から図35を参照し、疑似画像PIの生成方法について説明する。
図33は、本実施形態に係るベアウェアBWの一例を示す図である。図33では、試料片QのベアウェアBWとして、ベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3が示されている。ベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3は、複数のサイズの試料片Qの形状を模した画像である。なお、ベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3には、ピックアップ位置を示す情報としてニードル18に対応する画像がそれぞれ含まれている。
【0124】
図34は、本実施形態に係るパターン画像PTの一例を示す図である。図34では、パターン画像PTとして、ユーザーサンプルU1が示されている。ユーザーサンプルU1は、荷電粒子ビーム装置10aのユーザーが加工しようとする試料片Qの種類に応じて予め用意された画像である。ユーザーサンプルU1では、複数の層からなる試料片について、それら複数の層を構成する物質の種類に応じたパターンが描かれている。
【0125】
図35は、本実施形態に係る疑似画像PIの一例を示す図である。図35では、疑似画像PIとして、図33のベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3と、図34のユーザーサンプルU1とに基づいて生成された疑似画像PI1、疑似画像PI2、疑似画像PI3が示されている。疑似画像PI1、疑似画像PI2、疑似画像PI3は、複数のサイズの試料片Qの形状に、ユーザーサンプルU1が示す内部構造のパターンが重畳されている。
【0126】
図32に戻って画像処理用コンピュータ30aの構成の説明を続ける。
分類部307aは、分類用学習モデルM2aに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像を分類する。分類用学習モデルM2aは、対象物の種類に応じて、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから、判定部304が判定に用いるモデルを選択するためのモデルである。ここで機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルは、モデルの生成に用いられた学習データのセットだけでなく、機械学習のアルゴリズムによっても区別される。
【0127】
分類用学習モデルM2aは、例えば、ユーザー毎の加工する試料片Qの種類と、機械学習モデルM1aに含まれるモデルとを対応づける。分類用学習モデルM2aは、機械学習に基づいて予め生成されて記憶部305に記憶される。
【0128】
次に図36を参照し、分類用学習モデルM2aが用いられた荷電粒子ビーム装置10aの自動MSの動作として、試料片Qのピックアップ位置を検出する処理について説明する。
図36は、本実施形態に係るピックアップ位置の検出処理の一例を示す図である。
ステップS310:分類部307aは、分類用学習モデルM2aに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像を分類する。
ステップS320:分類部307aは、分類した結果に応じて、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから、判定部304が判定に用いる機械学習モデルを選択する。なお、分類部307aは、分類した結果に応じて、判定部304が判定に用いるアルゴリズムとしてテンプレートマッチングを選択してもよい。
ステップS330:判定部304は、分類部307aが選択した機械学習モデルに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる試料片Qのピックアップ位置を判定する。ここで判定部304は、ステップS330において上述した図23のピックアップ位置判定処理を実行する。
【0129】
ここで分類部307aによる分類は、判定の種類を選択するための第3の判定の一例である。図23のステップS5310のテンプレートマッチングの代わりに機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのいずれかを用いて機械学習に基づく判定が実行されてもよい。したがって、分類部307aは、判定の種類(アルゴリズム)を選択するための第3の判定の結果に応じて第1の判定(一例として、ステップS5310における判定)と、第2の判定(一例として、ステップS5340における判定)とのうち少なくとも一方について判定の種類(アルゴリズム)を選択する。
【0130】
ステップS340:判定部304は、試料片Qのピックアップ位置を判定できたか否かを判定する。判定部304は、ピックアップ位置を判定できたと判定する場合(ステップS340;YES)、判定したピックアップ位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力し、ピックアップ位置判定処理を終了する。一方、判定部304は、ピックアップ位置を判定できなかったと判定する場合(ステップS340;NO)、ステップS350の処理を実行する。
【0131】
ステップS350:判定部304は、制御用コンピュータ22に自動MSを停止させる。ここで判定部304は、自動MSを停止させるための停止信号を制御用コンピュータ22に出力する。その後、判定部304は、ピックアップ位置判定処理を終了する。
【0132】
なお、上述した実施形態では、判定部304は、対象物の位置の判定において、第1の判定が失敗した場合に、第2の判定を行う場合の一例について説明したが、これに限らない。判定部304は、第1の判定が成功した場合にも続けて、第2の判定を行い、第1の判定の結果と第2の判定の結果との両方に基づいて対象物の位置を判定してもよい。
例えば、判定部304は、テンプレートマッチングに基づいて対象物の位置を判定し、続けて機械学習に基づいて対象物の位置を判定し、それぞれの判定結果が示す位置が一致した場合に、判定結果が示す位置を、対象物の位置として判定してもよい。
【0133】
なお、判定部304は、第1の判定の結果と第2の判定の結果との少なくとも一方に基づいて選択された第4の判定の結果に基づいて対象物の位置の制御を行ってもよい。以下にこの場合の具体例を説明する。
例えば、判定部304は、対象物の位置の判定について、前回に行った判定の結果に基づいて、次回の判定方法を選択してもよい。対象物の位置の判定について、前回に行った判定の結果に基づいて、次回の判定方法を選択する場合、例えば、判定部304は、前回に行った第1の判定の結果と、前回に行った第2の判定の結果とに基づいて、第1の判定の精度が第2の精度よりも低かった場合、次回の判定において第2の判定を最初に行ってもよい。
さらに判定部304は、第1の判定の種類や、第2の判定の種類について、前回行った判定の種類に基づいて次回に用いる判定の種類の種類を選択してもよい。
【0134】
また、判定部304は、次回の判定に用いる第1の判定の種類を、前回の第1の判定の結果に応じて行われる第2の判定の結果に基づいて選択してもよい。例えば、判定部304は、テンプレートマッチングにおいて用いるテンプレートの種類を、テンプレートマッチングに失敗した場合に行う機械学習に基づく判定の精度に基づいて選択してもよい。
【0135】
また、判定部304は、次回の判定に用いる第2の判定の種類を、前回の第2の判定の結果に基づいて選択してもよい。例えば、判定部304は、第2の判定の種類のうちある種類を、次回以降の判定において第2の判定の精度が所定の値以下となるまで継続して用いて、第2の判定の精度が所定の値以下となった場合に、第2の判定の種類を変更してもよい。この場合、例えば、判定部304は、機械学習の複数のモデルのうちあるモデルを、次回以降の判定においてこのモデルに基づく判定の精度が所定の値以下となるまで継続して用いて、このモデルに基づく判定の精度が所定の値以下となった場合に、機械学習のモデルを変更してもよい。
【0136】
このように、判定部304は、第1の判定の結果と第2の判定の結果との少なくとも一方に基づいて選択された第4の判定の結果と、荷電粒子ビームの照射によって取得した画像を含む情報に基づいて対象物の位置の制御を行ってもよい。
【0137】
なお、図36に示したピックアップ位置の検出処理では、ステップS320において、判定画像が分類された結果に応じて、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから、判定に用いる機械学習モデルが選択される場合の一例について説明したが、これに限らない。判定画像が分類された結果に対して算出されたスコアに基づいて判定に用いる機械学習モデルが選択されてもよい。
【0138】
例えば、分類部307aは、分類用学習モデルM2aに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像を分類した後、分類した結果に対してスコア(分類スコアという)を算出する。分類部307aは、例えば、分類した結果に対する事後確率を算出することによって分類スコアを算出する。分類部307aは、0点から100点などの所定の範囲に値をもつ数値として分類スコアを算出する。分類部307aは、算出した分類スコアが所定の値以上である場合、分類した結果に応じて、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから、判定部304が判定に用いる機械学習モデルを選択する。
【0139】
一方、分類部307aは、算出した分類スコアが所定の値未満である場合、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから、分類した結果に応じた機械学習モデルに加えて、分類した結果と類似する分類に対応する機械学習モデルを選択する。つまり、分類部307aは、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから複数の機械学習モデルを選択する。判定部304は、分類部307aが選択した複数の機械学習モデルに基づいて、判定画像に含まれる対象物の位置を複数の機械学習モデル毎に判定する。判定部304は、判定した結果を複数の機械学習モデル相互間において比較する。判定部304は、例えば、判定した結果に対してスコア(位置判定スコアという)を算出し、位置判定スコアが最も高い結果を、対象物の位置の判定結果として選択する。位置判定スコアは、機械学習モデルMに基づく対象物の位置の判定に対するスコアである。
【0140】
なお、判定部304が対象物の位置の判定を行うために、位置判定スコアの閾値が予め設定されてもよい。位置判定スコアの閾値は、判定部304が対象物の位置の判定を行う前の時期に、荷電粒子ビーム装置10のユーザーによって予め設定される。その場合、判定部304は、対象物の位置を判定できたか否かを判定する場合に、対象物の位置を判定できたか否かに加えて、位置判定スコアが閾値以上であるか否かを判定する。判定部304は、対象物の位置を判定できたと判定し、かつ位置判定スコアが閾値以上である場合に、対象物の位置を判定できたと判定する。判定部304は、対象物の位置を判定できたと判定した場合であっても、位置判定スコアが閾値以上でない場合には、対象物の位置を判定できなかったと判定する。
【0141】
また、対象物の位置がある範囲に含まれていることが予めわかっている場合、対象物の位置の判定結果において対象物の位置を示す座標の範囲に制限が設けられてもよい。座標の範囲は、判定部304が対象物の位置の判定を行う前の時期に、荷電粒子ビーム装置10のユーザーによって予め設定される。その場合、判定部304は、対象物の位置が判定できたか否かを判定する場合に、対象物の位置を判定できたと判定し、かつ位置判定スコアが閾値以上であり、なおかつ対象物の位置を示す座標が予め設定された範囲内にある場合のみ、対象物の位置を判定できたと判定する。判定部304は、対象物の位置を判定できたと判定した場合であっても、位置判定スコアが閾値未満であるか、あるいは対象物の位置を示す座標が予め設定された範囲外である場合には、対象物の位置を判定できなかったと判定する。
【0142】
なお、上述した実施形態では、荷電粒子ビーム装置10、10aが集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15との2つの荷電粒子ビーム照射光学系を備える場合の一例について説明したが、これに限らない。荷電粒子ビーム装置は、1つの荷電粒子ビーム照射光学系を備えてもよい。その場合、荷電粒子ビーム照射光学系の荷電粒子ビーム照射によって得られる判定画像には、例えば、対象物に加えこの対象物の影が映っていることが好ましい。また、その場合、対象物はニードル18である。
【0143】
ニードル18の影とは、試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向から観察時にニードル18が試料片Qの表面に接近すると、ニードル18近傍の試料片Qの表面から発生する2次電子(又は2次イオン)の検出器16への到達を遮蔽するために生じる現象で、ニードル18と試料片Qの表面との距離が近いほど顕著になる。したがって、ニードル18と試料片Qの表面との距離が近いほど判定画像における影の輝度値が高くなる。
【0144】
画像処理用コンピュータ30は、判定画像からニードル18の先端の位置を判定画像における2次元の座標として判定することに加え、ニードル18の影の輝度値からニードル18の先端と試料片Qの表面との距離を算出する。これによって、画像処理用コンピュータ30は、判定画像からニードル18の先端の位置を、3次元座標の値として判定する。
【0145】
なお、上述した実施形態における制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aの一部、例えば、学習データ取得部301、学習部302、判定画像取得部303、判定部304、学習画像生成部306a、分類部307aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aに内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、上述した実施形態における制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aの一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aの各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0146】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0147】
10、10a…荷電粒子ビーム装置、S…試料、Q…試料片、14…集束イオンビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、15…電子ビーム照射光学系15(荷電粒子ビーム照射光学系)、12…試料ステージ、18…ニードル(試料片移設手段)、19…ニードル駆動機構(試料片移設手段)、P…試料片ホルダ、12a…ホルダ固定台、22…制御用コンピュータ(コンピュータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
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