(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】受注支援装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/9032 20190101AFI20231128BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231128BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231128BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20231128BHJP
G06F 16/908 20190101ALI20231128BHJP
【FI】
G06F16/9032
G06Q50/04
G06T7/00 350B
G05B19/418 Z
G06F16/908
(21)【出願番号】P 2020057169
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516176361
【氏名又は名称】株式会社コアコンセプト・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】山川 和浩
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 英明
(72)【発明者】
【氏名】田口 紀成
(72)【発明者】
【氏名】熊田 聖也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 允文
(72)【発明者】
【氏名】石原 雅崇
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116454(JP,A)
【文献】特開2019-045894(JP,A)
【文献】特開2020-160752(JP,A)
【文献】特許第6538977(JP,B2)
【文献】特開2001-175727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06Q 10/00-99/00
G06T 7/00- 7/90
G06V 10/00-40/20
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の製造を受注する業務を管理する
受注者の端末装置との間でネットワークを介してデータ伝送が可能な受注支援装置であって、
前記物品の設計図情報および受注内容を示す情報を含む過去の複数の受注済情報を記憶する記憶媒体と、
前記端末装置から新規の
見積依頼に応じた検索要求を受信した場合に、
受信した前記見積依頼に係る物品の設計図情報、および記憶された前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の設計図情報から、それぞれ前記
見積依頼に係る物品の形状および前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の形状を認識すると共に、前記端末装置から新規の受注依頼に応じた検索要求を受信した場合に、受信した前記受注依頼に係る物品の設計図情報、および記憶された前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の設計図情報から、それぞれ前記受注依頼に係る物品の形状および前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の形状を認識する形状認識部と、
認識された前記
見積依頼に係る物品の形状
、および認識された前記受注依頼に係る物品の形状を、
それぞれ、認識された前記過去の複数の受注済情報に係る物品の形状と比較することにより、前記複数の受注済情報の中から、前記
見積依頼に係る物品と所定の条件の範囲で形状が一致する類似物品に対応する受注済情報を検索する
と共に、前記受注依頼に係る物品と所定の条件の範囲で形状が一致する類似物品に対応する受注済情報を検索する検索部と、
前記見積依頼に対しては前記検索された受注済情報を見積参考情報として前記端末装置へ送信
し、かつ前記受注依頼に対しては前記検索された受注済情報を設計の参考情報として前記端末装置へ送信する送信部と
を具備する受注支援装置。
【請求項2】
前記形状認識部は、
前記物品の設計図情報から前記物品の形状に係る複数の特徴量を算出する特徴量算出部と、
算出された前記複数の特徴量を説明変数として与えられたとき前記物品の形状の認識結果を表す情報
を出力する学習モデルと
を備える、請求項1に記載の受注支援装置。
【請求項3】
前記端末装置から、新規の受注に係る物品の設計図情報および受注内容を示す情報を含む新規の受注済情報を受信した場合に、当該新規の受注済情報を前記記憶媒体に追加記憶させる受注済情報追加部を、さらに具備する請求項1に記載の受注支援装置。
【請求項4】
物品の製造を受注する業務を管理する
受注者の端末装置との間でネットワークを介してデータ伝送が可能な情報処理装置が実行する受注支援方法であって、
前記物品の設計図情報および受注内容を示す情報を含む過去の複数の受注済情報を記憶媒体に記憶させる過程と、
前記端末装置から新規の
見積依頼に応じた検索要求を受信した場合に、
受信した前記見積依頼に係る物品の設計図情報、および記憶された前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の設計図情報から、それぞれ前記
見積依頼に係る物品の形状および前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の形状を認識すると共に、前記端末装置から新規の受注依頼に応じた検索要求を受信した場合に、受信した前記受注依頼に係る物品の設計図情報、および記憶された前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の設計図情報から、それぞれ前記受注依頼に係る物品の形状および前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の形状を認識する過程と、
認識された前記
見積依頼に係る物品の形状
、および認識された前記受注依頼に係る物品の形状を、
それぞれ、認識された前記過去の複数の受注済情報に係る物品の形状と比較することにより、前記複数の受注済情報の中から、前記
見積依頼に係る物品と所定の条件の範囲で形状が一致する類似物品に対応する受注済情報を検索する
と共に、前記受注依頼に係る物品と所定の条件の範囲で形状が一致する類似物品に対応する受注済情報を検索する過程と、
前記見積依頼に対しては前記検索された受注済情報を見積参考情報として前記端末装置へ送信
し、かつ前記受注依頼に対しては前記検索された受注済情報を設計の参考情報として前記端末装置へ送信する過程と
を具備する受注支援方法。
【請求項5】
請求項1乃至
3のいずれかに記載の受注支援装置が具備する前記
形状認識部、前記検索部および送信部の処理を、前記受注支援装置が備えるハードウェアプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、例えば部品メーカにおける部品等の受注業務を支援する受注支援装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工業製品を製造する場合に製品メーカは、一般に設計担当者が製品および当該製品で使用する部品の設計図をCAD(Computer Aided Design)等を使用した設計システムにより作成すると共に、作成された設計図をもとに部品の製造に必要な詳細な仕様情報および製造指示内容を含む製造指示書を別の書類として手作業で作成する。そして、作成された上記設計図および製造指示書に基づいて、調達担当者が部品ごとに部品のサプライヤ(例えば加工業者)に対し見積を依頼し、条件を満たした加工業者を選択して部品の製造を発注するようにしている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、加工業者は、製品メーカから見積が依頼される毎に、提示された部品の設計図や仕様情報に基づいて見積書を作成しなければならず、また発注を受け付ける毎に、発注書に記載された部品の設計図や製造指示書に基づいて加工工程を設計しなければならない。このため、加工業者の受注に係る作業負荷が高かった。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、一側面では、受注業務の重複を減らして業務効率の向上を図る技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明に係る受注支援装置および受注支援方法の一態様は、物品の製造を受注する業務を管理する受注者の端末装置との間でネットワークを介してデータ伝送が可能な受注支援装置において、前記物品の設計図情報および受注内容を示す情報を含む過去の複数の受注済情報を記憶する。そして、前記端末装置から新規の見積依頼に応じた検索要求を受信した場合、および新規の受注依頼に応じた検索要求を受信した場合に、受信した前記見積依頼および前記受注依頼に係る物品の設計図情報および記憶された前記複数の受注済情報に含まれる前記物品の設計図情報からそれぞれ前記見積依頼に係る物品の形状および前記受注依頼に係る物品の形状を認識し、認識された前記見積依頼に係る物品の形状および前記受注依頼に係る物品の形状を、認識された前記過去の複数の受注済情報に係る物品の形状と比較することにより、前記複数の受注済情報の中から、前記見積依頼に係る物品および受注依頼に係る物品と所定の条件の範囲で形状が一致する類似物品に対応する受注済情報を検索し、前記見積依頼に対しては前記検索された受注済情報を見積参考情報として前記端末装置へ送信し、かつ前記受注依頼に対しては前記検索された受注済情報を設計の参考情報として前記端末装置へ送信するようにしたものである。
【0007】
この発明の一態様によれば、例えば、部品の加工業者が過去に受注した依頼に係る複数の受注済情報が記憶媒体に記憶され、この状態で新規の見積依頼または受注依頼に応じた検索要求が受信されると、受信した上記見積依頼または受注依頼に係る物品の形状が設計図情報から認識されて、過去の複数の受注済情報に係る物品の形状とそれぞれ比較され、形状が類似する物品に係る受注済情報が検索されて部品の加工業者に提示される。このため、加工業者は、例えば新規の見積依頼に対しては受注済情報が見積参考情報として提示され、また前記新規の受注依頼に対しては受注済情報が設計参考情報として提示されるので、新規の受注に対する見積回答や、部品の加工等に必要に付加情報を作成することが可能となり、これにより見積回答および付加情報の作成に係る作業の重複を減らして作業効率の向上を図ることが可能となる。また、部品の形状比較により過去の類似部品の受注情報が検索される。このため、受注情報に部品の類似性を示す情報が含まれていない場合でも、類似部品の過去の受注情報を検索することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
すなわちこの発明の一態様によれば、受注業務の重複を減らして業務効率の向上を図る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る受注支援装置を含むシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係る受注支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、この発明の一実施形態に係る受注支援装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した受注支援装置による受注支援処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示した受注支援処理に係るデータの入出力と処理の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0011】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る受注支援装置を含むシステムの全体構成を示す図である。
この例では、システムは受注支援装置として動作するサーバコンピュータ(以後サーバ装置と称する)SVを備える。そして、サーバ装置SVは、それぞれの部品メーカ(加工業者)において使用される複数の端末装置MA1~MAnとの間で、それぞれネットワークNWを介してデータ伝送を行えるようになっている。
【0012】
ネットワークNWは、例えば、インターネットを中核とする広域網と、この広域網にアクセスするためのアクセス網とを備える。アクセス網としては、例えば有線および無線の公衆ネットワーク、有線および無線のLAN(Local Area Network)、CATV(Cable Television)ネットワークが使用される。
【0013】
(2)装置
(2-1)端末装置MA1~MAn
端末装置MA1~MAnは、例えばメーラまたはブラウザを備えた汎用のパーソナルコンピュータにより構成され、加工業者が製品メーカの発注用端末装置および上記サーバ装置SVとの間でそれぞれデータ伝送を行うために使用される。
【0014】
(2-2)サーバ装置SV
図2および
図3は、それぞれサーバ装置(プラットフォームとも云う)SVのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
サーバ装置SVは、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部1を備え、この制御部1に対しバス5を介して、プログラム記憶部2およびデータ記憶部3を有する記憶ユニットと、通信インタフェース(通信I/F)4を接続したものとなっている。
【0015】
通信I/F4は、制御部1の制御の下、ネットワークNWにより定義される通信プロトコルを使用して上記端末装置MA1~MAnとの間でデータ伝送を行うもので、例えば有線ネットワーク用のインタフェースにより構成される。
【0016】
プログラム記憶部2は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納する。
【0017】
データ記憶部3は、例えば、記憶媒体として、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと組み合わせたもので、この発明の一実施形態を実施するために必要な主たる記憶部として、受注済情報記憶部31と、部品学習モデル記憶部32とを備えている。
【0018】
受注済情報記憶部31は、上記端末装置MA1~MAnからそれぞれ取得された過去の複数の受注済情報を、加工業者の識別情報と紐づけて記憶するために使用される。
【0019】
部品学習モデル記憶部32は、部品の3DCADデータ(3D Computer Aided Design)から部品の形状を認識するために用いる部品学習モデルを記憶する。
【0020】
制御部1は、この発明の一実施形態に係る処理機能として、受注済情報取得部11と、部品形状認識処理部12と、見積・受注参考情報検索処理部13と、新規受注情報登録処理部14とを備えている。これらの処理部11~14は、何れもプログラム記憶部2に格納されたプログラムを制御部1のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0021】
受注済情報取得部11は、端末装置MA1~MAnから受注済情報の登録要求を受信した場合に、端末装置MA1~MAnから送信される過去の複数の受注済情報を通信I/F4を介して受信し、受信された各受注済情報を、送信元を示す加工業者IDと紐づけて受注済情報記憶部31に記憶させる処理を行う。
【0022】
部品形状認識処理部12は、新規の見積依頼または受注依頼に係る部品の3DCADデータ、および受注済情報記憶部31に記憶された過去の複数の受注済情報に含まれる各部品の3DCADデータから、それぞれ部品の形状を認識する処理を行う。この部品の形状の認識処理には、部品学習モデル記憶部32に記憶された部品学習モデルが使用される。また部品形状認識処理部12は、上記部品の形状の認識処理に応じて部品学習モデルを更新する処理も行う。なお、部品学習モデルを使用した部品の形状の認識処理の一例は後述する。
【0023】
見積・受注参考情報検索処理部13は、端末装置MA1~MAnから受注情報の検索要求を受信した場合に、上記部品形状認識処理部12に対し、上記検索要求と共に受信された新規の見積依頼または受注依頼に係る部品の形状の認識処理と、上記受注済情報記憶部31に記憶されている過去の複数の受注済情報に係る部品の形状の認識処理を依頼する。
【0024】
また見積・受注参考情報検索処理部13は、上記部品形状認識処理部12により認識された、上記新規の見積依頼または受注依頼に係る部品の形状を、上記過去の複数の受注済情報に係る部品の形状とそれぞれ比較し、その比較結果をもとに上記過去の複数の受注済情報の中から、上記新規の見積依頼または受注依頼に係る部品との形状の差が予め設定された範囲内の類似部品を検索する。そして、検索された類似部品に対応する過去の受注済情報を、見積回答または受注情報作成のための参考情報として、通信I/F4から上記検索要求元の端末装置MA1~MAnへ送信する処理を行う。
【0025】
新規受注情報登録処理部14は、端末装置MA1~MAnから新規の受注依頼に基づいて作成された受注情報をその登録要求と共に受信した場合に、当該新規の受注情報を送信元の加工業者IDと紐づけて上記受注済情報記憶部31に追加記憶させる処理を行う。
【0026】
(動作例)
次に、以上のように構成されたサーバ装置SVの動作例を説明する。
図4はサーバ装置SVによる受注支援動作に係る処理の一例を示すフローチャート、
図5は上記受注支援動作におけるデータの入出力と処理の概要を示す図である。
なお、部品学習モデル記憶部32には、製品に使用される多数の部品について学習済の部品学習モデルのデータが既に記憶されているものとして説明を行う。
【0027】
(1)受注済情報の初期登録
加工業者がサーバ装置SVの提供する受注支援サービスを利用するには、自身が保存している過去の受注情報をサーバ装置SVに登録する必要がある。そこで、加工業者の受注担当者は、例えば自身が使用する端末装置MA1を使用して、保存されている上記複数の受注済情報をその登録要求と共にサーバ装置SVへ送信する。
【0028】
各受注済情報には、例えば
図5に示すように、部品の設計図情報である3DCADデータと、仕様・補足情報と、受注履歴を表す情報とが含まれる。このうち仕様・補足情報には、例えば部品の材質、硬度、製造指示コメント(留意点)、幾何公差が含まれる。また、受注履歴を表す情報には、例えば部品の発注元である製品メーカ名、受注日時、数量、単価、納期および加工工程を表す情報が含まれる。なお、受注履歴を表す情報のうち、加工工程を表す情報のみ加工業者により作成され、その他の情報は製品メーカから発注情報として指示された情報である。
【0029】
サーバ装置SVの制御部1は、受注済情報取得部11の制御の下、ステップS10において受注済情報の登録要求の受信を監視している。この状態で、例えば端末装置MA1から上記登録要求を受信すると、受注済情報取得部11はステップS11において、上記登録要求と共に端末装置MA1から送信される過去の複数の受注済情報を通信I/F4を介して受信し、受信された上記過去の複数の受注済情報を送信元の加工業者IDと紐づけて受注済情報記憶部31に記憶させる。
【0030】
なお、複数の受注済情報は、一括して登録されてもよいし、分割して登録されてもよい。また、伝送する際の受注情報の圧縮符号化方式の方式や多重化方式等については任意に選択可能である。
【0031】
(2)受注履歴の検索
(2-1)見積依頼を受信した場合
製品メーカから新規の見積依頼を受信すると、加工業者の受注担当者は、受信された上記見積依頼に含まれる部品の3DCADデータを、自身の端末装置MA1からサーバ装置SVへ送信する。
【0032】
これに対しサーバ装置SVの制御部1は、ステップS12において見積依頼に係る検索要求を監視している。この状態で上記検索要求を受信すると、サーバ装置SVの制御部1は、見積・受注参考情報検索処理部13の制御の下、上記検索要求と共に受信された上記見積依頼に係る部品の3DCADデータを部品形状認識処理部12に与える。そして、部品形状認識処理部12に対し、部品の形状の認識処理を指示する。
【0033】
部品形状認識処理部12は、上記認識処理の指示を受け取ると、先ず上記見積依頼に係る部品の3DCADデータから当該部品の形状を認識する処理を行う。次に、受注済情報記憶部31に記憶されている過去の複数の受注済情報に含まれる部品の3DCADデータから当該部品の形状をそれぞれ認識する処理を行う。これらの部品認識処理は、例えば以下のように行われる。
【0034】
すなわち、部品形状認識処理部12は、先ず与えられた部品の3DCADデータをもとに、その正12面体の20箇所の頂点から2D画像データを作成する。続いて、作成された上記2D画像データから複数の特徴ベクトルを算出し、算出された複数の特徴ベクトルを部品学習モデル記憶部32に記憶されている学習モデルに説明変数として与える。この結果、部品学習モデルから上記特徴ベクトルに応じてクラスタリングされた部品形状の認識結果が出力される。同様に部品形状認識処理部12は、受注済情報記憶部31に記憶されている過去の複数の受注済情報の各々について、上記部品学習モデルを用いて部品の形状を認識する処理を行う。
【0035】
見積・受注参考情報検索処理部13は、上記部品形状認識処理部12における部品形状の認識処理が終了すると、ステップS13において、認識された上記見積依頼に係る部品の形状を、認識された過去の複数の受注済部品の形状とそれぞれ比較する。そして、その比較結果をもとに、上記過去の複数の受注済部品の中から、上記見積依頼に係る部品との形状の差が予め設定された範囲内の類似部品を検索する。なお、上記形状の比較手法としては、例えば、形状を認識する際に算出した特徴ベクトル間の差を算出する手法や、認識された部品の画像間で一致する画素数を算出する手法が用いられるが、それに限るものではない。
【0036】
見積・受注参考情報検索処理部13は、次にステップS14において、検索された上記類似部品に対応する過去の受注済情報を受注済情報記憶部31から読み出し、当該受注済情報を、見積参考情報として通信I/F4から上記検索要求元の端末装置MA1へ送信する。
【0037】
加工業者は、サーバ装置SVから送られた上記過去の受注済情報に含まれる受注履歴を表す情報の内容、つまり数量、単価、納期および加工工程を表す情報を参考にして、見積依頼に対する回答書を作成する。そして、作成された見積の回答書を、端末装置MA1から依頼元の製品メーカへ返送する。
【0038】
(2-2)受注依頼を受信した場合
上記見積の回答後に、製品メーカから新規の部品加工の受注依頼を受け取ると、加工業者は当該受注依頼に係る部品の3DCADデータを、端末装置MA1からサーバ装置SVへ送信する。
【0039】
これに対しサーバ装置SVの制御部1は、ステップS15において新規の受注依頼に応じた検索要求を監視している。この状態で上記検索要求を受信すると、サーバ装置SVの制御部1は、見積・受注参考情報検索処理部13の制御の下、ステップS16において、上記受注依頼に係る受注対象部品の3DCADデータを部品形状認識処理部12に与える。そして、部品形状認識処理部12に対し、上記受注済部品および過去の受注済部品の形状の認識処理を指示する。
【0040】
部品形状認識処理部12は、上記認識処理の指示を受け取ると、上記受注対象部品の3DCADデータから当該部品の形状を認識する処理と、受注済情報記憶部31に記憶されている過去の複数の受注済情報に係る受注済部品の3DCADデータから当該各部品の形状を認識する処理を、部品学習モデルを用いてそれぞれ行う。これらの部品の認識処理は、先に述べた見積依頼時と同一なので再度の説明は省略する。
【0041】
見積・受注参考情報検索処理部13は、上記部品形状認識処理部12における部品形状の認識処理が終了すると、ステップS16において、認識された上記受注対象部品の形状を、認識された過去の複数の受注済部品の形状とそれぞれ比較する。そして、その比較結果をもとに、上記過去の複数の受注済部品の中から、上記受注対象部品との形状の差が予め設定された範囲内の類似部品を検索する。
【0042】
見積・受注参考情報検索処理部13は、次にステップS17において、検索された上記類似部品に対応する過去の受注済情報を受注済情報記憶部31から読み出し、当該受注済情報を、加工工程等を設計する際の参考情報として通信I/F4から上記検索要求元の端末装置MA1へ送信する。
【0043】
加工業者は、サーバ装置SVから送られた上記過去の受注済情報を参考にして、今回発注された部品の加工工程等を設計する。そして、設計した加工工程を示す情報を含む新規の受注情報を以下のように作成する。すなわち、新規の受注情報には、製品メーカから受注依頼と共に受信された部品の3DCADデータおよび仕様・補足情報をそのまま含め、さらに発注履歴に含まれる発注元の製品メーカ名、発注日時、数量、単価および納期に上記加工工程を示す情報を追加し、これを受注履歴として含める。
【0044】
(3)新規の受注情報の追加登録
加工業者は、作成された上記新規受注情報をその登録要求と共に端末装置MA1からサーバ装置SVへ送信する。
【0045】
これに対しサーバ装置SVの制御部1は、ステップS18において新規受注情報の登録要求を監視している。この状態で、上記登録要求を受信するとサーバ装置SVの制御部1は、新規受注情報登録処理部14の制御の下、ステップS19において、上記端末装置MA1から送信された上記新規受注情報を通信I/F4を介して受信し、受信された新規受注情報を登録要求元の加工業者IDと紐づけて受注済情報記憶部31に追加記憶させる。
【0046】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態に係るサーバ装置SVでは、以下のような受注支援処理が行われる。すなわち、サーバ装置SVは、加工業者が保存している過去の複数件受注済情報を、当該加工業者の端末装置MA1~MAnから取得して受注済情報記憶部31に記憶させる。この状態で、加工業者が製品メーカから新規の見積依頼または受注依頼を受信し、当該見積依頼または受注依頼に係る受注対象部品の3DCADデータを送信すると、上記受注対象部品の3DCADデータから当該部品の形状を認識すると共に、受注済情報記憶部31に記憶されている過去の複数の受注済情報に含まれる受注済部品の形状をそれぞれ認識する。そして、認識された上記受注対象部品の形状を、上記過去の複数の受注済部品の形状とそれぞれ比較することにより、過去の複数の受注済部品の中から上記受注対象部品の形状と類似する部品を検索する。そして、検索された上記類似部品に対応する過去の受注済情報を、検索要求元の加工業者が使用する端末装置MA1~MAnへ送信するようにしている。
【0047】
従って、加工業者は、例えば新規の受注に係る見積依頼や受注依頼を受け取った場合に、サーバ装置SVから提示される、受注対象部品と形状が類似する過去の受注済部品に対応する受注済情報を流用して、新規依頼に対する見積回答や部品加工に必要に情報を作成することが可能となる。この結果、見積回答および部品加工に必要な情報の作成作業の重複が減少し、これにより受注作業の効率の向上を図ることが可能となる。
【0048】
また、部品の形状比較により過去の類似部品が検索される。このため、受注済情報に部品の類似性を示す情報が特に含まれていない場合でも、類似部品を検索することが可能となる。
【0049】
さらに、加工業者において新規に作成された受注情報は、端末装置MA1~MAnからサーバ装置SVへ送られて受注済情報記憶部31に追加記憶される。従って、加工業者が新たな部品加工業務を受注するごとに、その新規の受注情報がサーバ装置SVの受注済情報に反映されることになり、これにより受注済情報記憶部31の記憶情報をさらに充実させることが可能となる。
【0050】
[他の実施形態]
(1)前記一実施形態では、サーバ装置SVは加工業者の端末装置MA1~MAnから検索要求を受信する毎に、新規の受注対象部品の形状の認識処理と共に、受注済情報記憶部31に記憶されている過去の各受注済情報に含まれる受注済部品の形状の認識処理を行う場合について説明した。
【0051】
しかし、上記例に限らず、受注済情報記憶部31に記憶されている過去の各受注済情報に含まれる受注済部品については、事前に形状の認識処理を行って、その認識結果を示す形状の一覧情報をデータ記憶部3に記憶しておくようにしてもよい。
【0052】
このようにすると、サーバ装置SVは、加工業者の端末装置MA1~MAnから検索要求を受信する毎に、その都度過去の複数の受注済部品について形状の認識処理を行う必要がなくなり、その分サーバ装置SVの処理負荷を減らして検索応答時間を短縮することが可能となる。
【0053】
(2)前記一実施形態では、サーバ装置SVは過去の受注済情報から検索した類似部品に対応する受注情報をそのまま加工業者へ送信するようにした。しかし、加工業者からの検索要求の種類が見積依頼に伴うものか受注依頼に伴うものかを判定し、見積依頼の場合には、類似部品に対応する受注情報の中から見積回答に必要な情報要素のみを選択して送信し、受注依頼の場合には、加工工程の設計に必要な情報要素のみを選択して送信するようにしてもよい。
【0054】
(3)また、物品は部品に限らずモジュールやユニットでもよく、その他受注支援装置の構成や設置場所、受注支援処理の手順と処理内容、部品の形状の認識手法等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0056】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0057】
SV…サーバ装置
MA1~MAn…加工業者の端末装置
NW…ネットワーク
1…制御部
2…プログラム記憶部
3…データ記憶部
4…通信インタフェース(通信I/F)
5…バス
11…受注済情報取得部
12…部品形状認識処理部
13…見積・受注参考情報検索処理部
14…新規受注情報登録処理部
31…受注済情報記憶部
32…部品学習モデル記憶部