(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】可搬式消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A62C27/00 508
(21)【出願番号】P 2020057196
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019059753
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石郷岡 将平
(72)【発明者】
【氏名】志賀 法道
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 治靖
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-126854(JP,U)
【文献】特開2017-221445(JP,A)
【文献】特開昭54-9497(JP,A)
【文献】特開昭63-92364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な荷台部に搭載されるものとして、
高粘度消火剤が貯蔵される樹脂製の貯蔵容器と、
前記高粘度消火剤を放出する放出部と、
圧縮ガスの圧力によって駆動して、前記貯蔵容器内の高粘度消火剤を前記放出部に圧送するエア駆動型ポンプと、
前記ポンプに圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給源と、を備えることを特徴とする可搬式消火装置。
【請求項2】
前記貯蔵容器、前記放出部、前記エア駆動型ポンプ及び前記圧縮ガス供給源は、前記荷台部に、前記貯蔵容器が略中央部に位置すると共に、その他のものが前記貯蔵容器の周囲に分散して位置する配置で搭載されることを特徴とする請求項1に記載の可搬式消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動して、消火や延焼防止ができる可搬式消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、消火や延焼防止用の薬剤(以下、単に「消火剤」という)として、チキソトロピー性(掻き混ぜたり振り混ぜたりすることにより、ゲルからゾルに変化する性質)を有する高粘度液体を用いる技術を種々提案している(スプリンクラ消火設備で用いるものとして、例えば、特許文献1参照)。
【0003】
消火剤として用いられる、チキソトロピー性を有する高粘度液体(以下、単に「高粘度消火剤」という)は、放出時には、せん断力が加えられることにより低粘度になって放出し易い状態になる一方、放出後には、放出した箇所で高粘度に戻って、その箇所に留まり易い状態になるものであり、水損を小さくしたり、周囲から飛散する火の粉による延焼を防止したりできる等、高粘度であるがゆえの利点が得られるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高粘度消火剤を容器に貯蔵して、それを放出手段等と共に移動可能とすれば、高粘度消火剤により消火や延焼防止ができる可搬式消火装置を構成することが可能である。
【0006】
その場合、高粘度消火剤を貯蔵する容器としては、放出のために高圧ガスを利用するため、一般的に消火器で採用されているような金属製の耐圧容器とすることが考えられる。また、その放出の圧力方式としても、消火器で採用されているような蓄圧式や加圧式とすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、高粘度消火剤の使用が想定される現場によっては、比較的多量(例えば40L以上)の消火剤が必要とされることがある。金属製の耐圧容器の場合、それくらい多量の消火剤を貯蔵可能な容量の大きいものになると、容器自体の質量がかなり重くなるという問題が生じる。可搬式の荷台は安全に取り扱えるようにするため、搭載可能な総重量が制限されている場合が多い。そのため、貯蔵される消火剤を含む総質量が重くなり過ぎると、可搬式消火装置を構成するものとして使用できないことがあると考えられる。
【0008】
具体的には、例えば、被牽引車両に必要な構成部分を搭載して移動可能な可搬式消火装置を構成する場合に、高粘度消火剤が貯蔵される容器を金属製の耐圧容器とすると、被牽引車両の最大積載量との関係で、例えば40L程度の消火剤を貯蔵可能な容量の大きいものは、貯蔵される消火剤の質量を含む総質量が重くなり過ぎて、被牽引車両に搭載することができず、使用できないことがある。
【0009】
つまり、高粘度消火剤が貯蔵される容器を金属製の耐圧容器として可搬式消火装置を構成する場合、その容器として容量の大きいものを備えることができないので、山間部や文化財保存地区などの消火用の水源が確保しにくい場所では、十分に消火・延焼防止活動が行えなくなる。
【0010】
この発明は、前記の事情に鑑み、高粘度消火剤が貯蔵される容器として容量の大きいものを備えることができる、可搬式消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、移動可能な荷台部に搭載されるものとして、高粘度消火剤が貯蔵される樹脂製の貯蔵容器と、前記消火剤を放出する放出部と、圧縮ガスの圧力によって駆動して、前記貯蔵容器内の消火剤を前記放出部に圧送するエア駆動型ポンプと、前記ポンプに圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給源と、を有することを特徴とする可搬式消火装置である。
【0012】
この発明において、前記貯蔵容器、前記放出部、前記エア駆動型ポンプ及び前記圧縮ガス供給源は、前記荷台部に、前記貯蔵容器が略中央部に位置すると共に、その他のものが前記貯蔵容器の周囲に分散して位置する配置で搭載されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明においては、エア駆動型ポンプを備えるものとして、ポンプ式を採用していることで、消火剤の貯蔵容器に金属製の高耐圧のものを用いる必要がなく、樹脂製のものを用いることができる。そして、樹脂製の貯蔵容器を備えるものとしていることで、例えば金属製のものを用いる場合と比較して、容器自体の質量が軽いため、多量の消火剤を貯蔵可能な容量の大きなものを用いたとしても、その消火剤の質量を含む総質量を軽くすることができる。
【0014】
したがって、この発明によれば、高粘度消火剤が貯蔵される容器として容量の大きいものを備えることができる、可搬式消火装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施形態の一例を示したものであり、被牽引車両の荷台部に消火装置が搭載されている状態における、上面図である。
【
図2】同上の荷台部が牽引車両と連結されている状態における、側面図である。
【
図3】この発明の実施形態の他の一例を示したものであり、自動車の後部に固定的に設ける荷台部に搭載されている状態における、上面図である。
【
図4】
図3の側面図である(荷台部の側板の図示は省略)。
【
図5】同上の他の一例を示したものであり、エアチャンバの支持構造部を拡大して示した図面代用写真である。
【
図6】同上の他の一例を示したものであり、圧力調整器の支持構造部を拡大して示した図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態の一例を、牽引車両によって牽引される被牽引車両の荷台部に搭載されるものとする場合を例に、図面を参照しつつ説明する。なお、この発明は、自動車の後部に固定的に設けられる荷台部に搭載されるものとすることも可能であるし、人によって牽引される被牽引車両の荷台部に搭載されるものとすることも可能である。
【0017】
・基本構成
図1及び2に示したように、消火装置1は、牽引車両20(自動車)によって牽引される被牽引車両10の荷台部10aに搭載されて移動可能な可搬式のものとして構成される。
【0018】
この消火装置1は、高粘度消火剤が貯蔵される樹脂製の貯蔵容器の一例である薬剤タンク2と、その高粘度消火剤を外部に放出する放出部の一例であり、先端側にノズル3aを有する消火用ホース3と、圧縮ガスの圧力によって駆動して、薬剤タンク2に貯蔵される高粘度消火剤を消火用ホース3に圧送するエア駆動型ポンプ4と、エア駆動型ポンプ4に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給源の一例である加圧ガス容器5と、を備える。
【0019】
そして、消火装置1は、それら構成部分が適宜の配置で荷台部10aに搭載される。なお、図示の例の場合、上面視で、薬剤タンク2が略中央部に位置すると共に、その他の構成部分が薬剤タンク2の周囲に分散して位置する配置で、荷台部10aに搭載されるものとしている(
図1参照)。このような配置とすることにより、牽引車両20への連結作業(被牽引車両10側の連結部分を持ち上げて行うことになる)等が容易なものとすることができる。また、牽引車量20に連結していない状態でも、薬剤タンク2内の高粘度消火剤の有無に関わらず、重心が偏ることがない。そのため、装置全体の取り扱いが容易なものとすることができる。
【0020】
・高粘度消火剤
高粘度消火剤としては、チキソトロピー性(掻き混ぜたり振り混ぜたりすることにより、ゲルからゾルに変化する性質)を有する高粘度液体が用いられる。そのような高粘度液体としては、例えば、水にチキソトロピー性もたらすコロイド性含水ケイ酸塩を含む鉱物やそのケイ酸塩からなる化合物等を含む添加剤を添加して調整したものを用いることができる。
【0021】
・エア駆動型ポンプ
エア駆動型ポンプ4は、そのガス導入部4aが加圧ガス容器5の吹出口部5aと圧力調整器8(吹出口部5aから吹き出される圧縮ガスを適正圧力に減圧する機能を有する)を介して導管6によって接続され、また、その一次側接続部4bが薬剤タンク2の吐出口部2aと接続管7によって接続されると共に、その二次側接続部4cが消火用ホース3の基端側接続部3bと接続される。これにより、エア駆動型ポンプ4は、加圧ガス容器5から圧力調整器8及び導管6を介して供給される圧縮ガスの圧力によって駆動して、薬剤タンク2に貯蔵される高粘度消火剤を接続管7を介して一次側から吸い込んで、二次側の消火用ホース3に押し出して圧送し、ノズル3aから放出させるものとして機能する。
【0022】
このエア駆動型ポンプ4は、粘度の高い液体を圧送するのに適しており、高粘度消火剤を圧送するのに好適に用いることができる。また、可搬式の消火装置1として、後記で説明する加圧ガス容器5等の自己完結型の圧縮ガス供給源と共に荷台部10aに搭載されることで、モータ駆動のポンプ等の電源が必要なものとする場合と異なり、電源に接続する必要がなく、現場到着後、直ちにポンプ駆動させて、消火活動を行うことができる。さらに、高粘度消火剤の圧送手段としてエア駆動型ポンプ4を用い、ポンプ式を採用していることで、薬剤タンク2として蓄圧式消火器や加圧式消火器に使用される金属製の高耐圧のものを用いる必要がない。そのため、消火活動中でも、薬剤タンク2に高粘度消火剤を補充することができる。
【0023】
・圧縮ガス供給源(加圧ガス容器)
エア駆動型ポンプ4への圧縮ガス供給源としては、前記の通り、加圧ガス容器5が用いられる。加圧ガス容器5としては、窒素ガス等の不活性ガスを充填したものを用いることができる。この加圧ガス容器5は、自己完結型の圧縮ガス供給源(単独で圧縮ガスの供給が可能な圧縮ガス供給源)として機能し、現場到着後、開弁操作をすれば、前記の通り、直ちにエア駆動型ポンプ4を駆動させることができる。なお、この圧縮ガス供給源としては、現場で電源への接続が必要なモータ駆動のエアコンプレッサ等を用いることもできるが、加圧ガス容器5のように自己完結型のものを用いていることで、エア駆動型ポンプ4を用いていることとも相俟って、現場で電源に接続する作業等の準備作業を行う必要がなく、前記の通り、現場到着後直ちに、消火活動を行うことができる。
【0024】
・貯蔵容器(薬剤タンク)
高粘度消火剤の圧送手段をエア駆動型ポンプ4とし、ポンプ式を採用していることで、貯蔵容器に高い圧力をかけることなく高粘度消火剤を圧送できる。そのため、高粘度消火剤の貯蔵容器として、低耐圧のものを用いることでき、樹脂製のものを用いることができる。
【0025】
消火装置1においては、前記の通り、樹脂製の薬剤タンク2が用いられる。樹脂製の薬剤タンク2は、例えば金属製のものを用いる場合と比較して、容器自体の質量が軽いため、多量の高粘度消火剤を貯蔵可能な容量の大きなものを用いたとしても、その消火剤の質量を含む総質量を軽くすることができる。
【0026】
消火装置1のように、被牽引車両10に搭載されて移動可能な可搬式の装置を構成する場合に、高粘度消火剤が貯蔵される容器を金属製の高耐圧のものとすると、被牽引車両10の最大積載量との関係で、例えば40L程度の高粘度消火剤を貯蔵可能な容量の大きいものは、その消火剤の質量を含む総質量が重くなり過ぎて、被牽引車両10に搭載することができず、使用できないことがある。
【0027】
しかしながら、消火装置1によれば、薬剤タンク2を樹脂製のものとしていることで、例えば40L程度の高粘度消火剤を貯蔵可能な容量の大きいものを用いたとしても、容器自体の質量が軽いため、貯蔵される高粘度消火剤の質量を含めた、搭載されるすべての構成部分の質量による総積載量を被牽引車両10の最大積載量の範囲内に収めることが可能である。
【0028】
さらに、薬剤タンク2を樹脂製のものとしていることで、金属製の高耐圧の容器と異なり、形状の自由度が高いので、種々の形状のものを用いることができる。なお、本実施形態の場合、箱形のものとしているが、もちろん、それ以外の形状のものとしてもよい。
【0029】
・ダンパー(エアチャンバ)
本実施形態において、エア駆動型ポンプ4には、その脈動を低減するダンパーとして機能するエアチャンバ4eが設けられる。このエアチャンバ4eが設けられることにより、ポンプ4による脈動を抑えることができ、高粘度消火剤の放出効率を良くすることができる。また、放出の際、ノズル部3aに作用する放出圧力(放出反力)の変動を抑えることができ、ノズル部3aの操作性を向上させることができる。
【0030】
なお、エアチャンバ4eは、エア駆動型ポンプ4の本体4d内部のポンプ室出口(図示省略)と消火用ホース3との間に設けられる。本実施形態の場合、ポンプ室出口と二次側接続部4cの間から分岐するものとして、本体4d上部に縦立して設けられるものとしており、その形状は有蓋円筒状をなすものとしている。なお、その位置や形状は、ポンプ4による脈動を低減することができるものでれば、適宜変更してもよい。
【0031】
・実施形態の変更例等
以上、この発明の実施形態について、この発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲内で種々の変更等が可能である。
【0032】
例えば、自己完結型の圧縮ガス供給源としては、高粘度の液体でも圧送できるほどの圧縮エアを生成できるものであれば、電池を電源とするモータ駆動のエアコンプレッサ等を用いてもよい。
【0033】
また、エア駆動ポンプは、供給された窒素ガスが排気される排気口を備えている(図示せず)。本実施例では、圧縮ガスに窒素を用いているので、安全であるが、例えば二酸化炭素などを用いる場合、排気口から放出されるガスが人体に影響無い位置まで移動させる筒を設けても良い。
【0034】
・他の実施形態
以下、この発明の他の実施形態の消火栓装置1’について、
図3乃至6を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の消火栓装置1’の構成中、前記の実施形態の消火栓装置1の構成と同一のものについては、同一の図面符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
・自動車後部に固定の荷台部
消火栓装置1’は、
図3及び4に示した通り、車両(自動車)30の後部に固定のものとして設けられる荷台部30aに搭載されるものとしている。
【0036】
この消火装置1’も、前記の消火装置1と同様、薬剤タンク2、消火用ホース3、エア駆動型ポンプ4、加圧ガス容器5等を備えている。ただし、それらの配置は、前記の消火栓装置1におけるものと一部異なるものとしている。すなわち、荷台部30a上、前部側(助手席側)に薬剤タンク2が配置されるものとしている。
【0037】
・ダンパー(エアチャンバ)の支持構造部
消火装置1’においては、エア駆動型ポンプ4の脈動を低減するエアチャンバ4eを同ポンプ4の本体4dの側方に位置して設けられるものとしている。具体的には、
図3乃至5に示した通り、本体4dと二次側接続管部4cとの間で、本体4dの吐出口部4hから側方に延びる吐出管部4iに接続される配管部分として、本体4dの側方に位置しつつ、エアチャンバ4eを支持する、複数の配管の組み合わせによる支持構造部4fが設けられるものとしており、その支持構造部4f上に縦立してエアチャンバ4eが設けられるものとしている。
【0038】
支持構造部4fは、L字状の管継手やT字状の管継手等の複数の配管の組み合わせによって構成されており、下部側に荷台部30aの床面に沿って水平方向に延びる水平配管部4faを有する。水平配管部4faは、支持構造部4fの底部をなし、荷台部30aの床面に近接して設けられている。エアチャンバ4eは、その水平配管部4fa上に縦立して設けられる(
図5参照)。
【0039】
このような支持構造部4fを備えるものとしていることにより、本実施形態の消火装置1’においては、重量物であるエアチャンバ4eを安定して支持することができる。また、荷台部30a上、床面に近く、低い位置からエアチャンバ4eを支持することができ、エアチャンバ4eを縦立させていても、その上端部の高さ位置を低く抑えることができる。さらに、エアチャンバ4eを適切な配置で複数、設けることができる。なお、本実施形態の場合、
図3乃至5に示した通り、エアチャンバ4eが2つ、均等(本体4dからの距離が同じ)の配置で設けられるものとしている。
【0040】
ここで、本実施形態において、荷台部30aには、
図5に示した通り、その床面上にベース板30bが設けられるものとしている。エア駆動型ポンプ4の本体4dや、エアチャンバ4eを支持する支持構造部4f等は、そのベース板30b上に配置されて設けられており、支持構造部4fの水平配管部4faは、より詳細には、ベース板30bの上面に近接して設けられている。
【0041】
・支持構造部の台座、結束手段
支持構造部4fの水平配管部4faとベース板30bの間には、
図5に示した通り、ゴム等の弾性材料からなるシート部4fbが設けられている。シート部4fbは、エアチャンバ4eを支持する支持構造部4fの台座となり、エア駆動型ポンプ4駆動時の作動振動や、車両30の走行時の振動を吸収し、エアチャンバ4eと共に支持構造部4fの配管構造を保護するものとして機能する。さらに、支持構造部4fの水平配管部4faとベース板30bの間には、結束バンド4fcが設けられている。結束バンド4fcは、水平配管部4faをシート部4fbに締め付けることができるものであり、適度に締め込むことで、シート部4fbによって適切に、エア駆動型ポンプ4駆動時の作動振動や、車両30の走行時の振動を吸収しつつ、エアチャンバ4eと支持構造部4fの配管構造を保護するものとすることができる。なお、結束バンド4fcに代えて、Uボルトを用いてもよい。Uボルトを用いる場合、振動等でシート部4fbが圧縮されて締め付けが弱くなることが考えられる。そこで、ナットとしてはダブルナットや緩み止めナットを用いるのが好適である。
【0042】
・ダンパー(エアチャンバ)の支持金具
消火装置1’は、
図3乃至5に示した通り、エアチャンバ4eを支持するものとして、支持金具4gをさらに有する。支持金具4gは、エアチャンバ4eの横揺れを防ぐもの(揺れ止め)として機能する。本実施形態の場合、エアチャンバ4eは、前記の通り、2つ設けられており、支持金具4gは、2つのエアチャンバ4eを連結するものとして設けられる。
【0043】
この支持金具4gは、より詳細には、2つのエアチャンバ4eの胴部周囲に装着される2つのクランプ4ga、4gaと、2つのクランプ同士を連結する、2つの連結金具4gb、4gbを有する。2つの連結金具4gb、4gbは、水平方向に延びて、2つのクランプ4ga、4gaの締結部を貫通すると共に、その貫通部分の両端がナットで締結される、全ネジの棒状の部材からなる(
図5参照)。
【0044】
消火栓装置1’は、配管の組み合わせによる支持構造部4fに加えて、この支持金具4gを備えていることにより、重量物であるエアチャンバ4eをより好適に安定して支持することができる。
【0045】
・支持金具のカバー(ホースガード)
なお、支持金具4gには、
図3乃至5に示した通り、2つの棒状の連結金具4gb、4gbの末端をカバーする末端カバー4gc、4gcが設けられている。末端カバー4gc、4gcは、消火ホース3の引き出し時、そのホース3が連結金具4gb、4gbの末端に引っ掛かるのを防ぐものとして機能する。
【0046】
なお、本実施形態の場合、この末端カバー4gc、4gcとしては、2つの連結金具4gb、4gbの両末端部をそれぞれ連結する、断面円形状の金属製のU字パイプを用いているが、消火ホース3が引っ掛かるのを防ぐことのできるものであれば、もちろん、他の形状、構造をなすものとしてもよい。
【0047】
・圧力調整器の支持部
エア駆動型ポンプ4と加圧ガス容器5とを接続する導管6の途中に圧力調整器8が設けられている。消火装置1’は、
図6に示した通り、その圧力調整器8を支持する支持部9をさらに有する。
【0048】
ここで、圧力調整器8を導管6だけで支持されるものとした場合、圧力調整器の重さで導管6が破損する可能性がある。また、エア駆動型ポンプ4の駆動時、振動等によりポンプ4側と圧力調整器8側が異なる動きをすることによっても、導管6が破損する可能性がある。圧力調整器8を支持部9で支持していれば、導管6への負担を軽減することができ、その破損を防ぐことができる。
【0049】
すなわち、消火栓装置1’は、圧力調整器8を支持する支持部9を備えていることにより、エア駆動型ポンプ4と加圧ガス容器5を接続する導管6の破損を防ぐことができる。
【0050】
本実施形態において、この支持部9は、圧力調整器8を下方から支持する板状の支持板部9aと、支持板部9aを圧力調整器8を下方から支持可能な高さ位置に支持すると共に、その高さ位置を調整可能な全ネジの支柱部9b等を備え、全体として櫓状をなす、高さ調整可能な構造を有するものとしている(
図6参照)。この支持部9は、圧力調整器8を支持することのできるものであれば、もちろん、他の形状、構造をなすものとしてもよい。
【0051】
さらに、支持部9には、支柱部9bの下端部にゴム等の弾性材料からなる足部9cが設けられており、エア駆動型ポンプ4の駆動時や、車両30の走行時に、比較的重量のある圧力調整器8が設けられる部分で発生する振動を吸収することができるようになっている。
【0052】
・圧力調整器を接続する配管部分の太さ
導管6は、エア駆動型ポンプ4側に剛性があり、径の太い太管部分6aを有すると共に、加圧ガス容器5側にフレキシブルで、径の細い細管部分6bを有するものとしている(
図6参照)。
【0053】
圧力調整器8は、その導管6の太管部分6aに接続されて設けられるものとしている(
図6参照)。これによっても、消火装置1’は、導管6の破損を防ぐことができるが、前記の通り、圧力容器8を支持部9で支持する構造としていれば、より好適に導管6の破損を防ぐことができる。
【0054】
なお、支持部9を支持板9aの高さ位置を調整可能なものとしていることにより、圧力調整器8の高さを調整することができる。本実施形態のように、圧力調整器8を導管6の太管部分6a(エア駆動型ポンプ4側の部分)に設けられるものとしていても、圧力容器8の高さを調整することにより、エア駆動型ポンプ4に対する太管部分6aの高さ位置(例えば水平になる高さ位置)を適切なものとすることができる。
【0055】
・エアブリーザ
薬剤タンク2には、
図3に示した通り、異物混入防止フィルタ付きのエアブリーザ2bが設けられる。
【0056】
エア駆動型ポンプ4の駆動時、加圧ガス容器5の内圧は低下することになる。薬剤タンク2として樹脂製等の強度の低いものを用いている場合、薬剤タンク2は、内圧の低下によって破損する可能性がある。エア抜きキャップ等の開放操作を事前にしておけば、薬剤タンク2が破損するのを防ぐことができるが、その操作を忘れてしまう可能性がある。また、その操作を忘れなかったとしても、エア抜きキャップ等からごみや虫等が容器内に混入してしまう可能性がある。
【0057】
異物混入防止フィルタ付きのエアブリーザ2bを設けていれば、エア抜きキャップ等の開放操作をしなくても、ごみや虫等の容器内への混入を防ぎつつ、薬剤タンク2の破損を防ぐことができる。また、操作手順を省略することができ、早期に消火活動を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1、1’:可搬式の消火装置 2:薬剤タンク 2a:吐出口部
2b:エアブリーザ 3:消火ホース 3a:ノズル 3b:基端側接続部
4:エア駆動型ポンプ 4a:ガス導入部 4b:一次側接続部
4c:二次側接続部 4d:本体 4e:エアチャンバ 4f:支持構造部
4fa:水平配管部 4fb:シート部 4fc:結束バンド
4g:支持金具 4ga:クランプ 4gb:連結金具
4gc:末端カバー 4h:吐出口部 4i:吐出管部
5:加圧ガス容器 5a:吹出口 6:導管 6a:太管部分
6b:細管部分 7:接続管 8:圧力調整器 9:支持部 9a:支持板
9b:支持柱 9c:足部 10:被牽引車両 10a:荷台部
20:牽引車両 30:車両 30a:荷台部 30b:ベース板