(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】コンロバーナ、およびコンロバーナを搭載したガス加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
F23D14/06 L
(21)【出願番号】P 2020057622
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一浩
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-020017(JP,A)
【文献】特開昭59-153018(JP,A)
【文献】特開2018-053343(JP,A)
【文献】特開2003-207106(JP,A)
【文献】特開2014-016139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0172906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
F24C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する環状の混合室を有するバーナボディと、該バーナボディに載置されて前記混合室の上面開口部を覆うバーナキャップとを備え、前記バーナキャップの外縁部分から下方に向けて筒状に突出した筒状壁が設けられていると共に、当該筒状壁の下端面に複数の溝が該筒状壁の中心に対して放射状に形成されており、前記バーナキャップを前記バーナボディに載置すると、前記上面開口部の周囲に位置する環状の載置面に前記筒状壁の下端面が当接し、前記複数の溝と前記載置面とによって前記混合室に連通する複数のガス通路が形成され、該ガス通路で前記筒状壁の外側に向けて開口した炎口から噴出する前記混合ガスを燃焼させるコンロバーナにおいて、
前記バーナキャップにおける前記筒状壁の外周面と、前記バーナボディにおける前記載置面の外側から下方に続く外周部とで表面処理の性質を異ならせており、
前記バーナキャップ
における前記筒状壁の外周面に
は、撥水性の表面処理が施されて
いるのに対し、
前記バーナボディ
における前記載置面の外側から下方に続く外周部に
は、親水性の表面処理が施されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナにおいて、
前記ガス通路は、前記溝の内面に対する前記撥水性の表面処理、および前記載置面に対する前記親水性の表面処理の少なくとも一方が施されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンロバーナにおいて、
前記筒状壁の外周面は、前記載置面の外周よりも外側に張り出している
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のコンロバーナを搭載し、該コンロバーナの上方に置かれた調理容器を加熱するガス加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナボディにバーナキャップが載置されたコンロバーナ、および当該コンロバーナを搭載したガス加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンロバーナは、燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する環状の混合室を有するバーナボディと、バーナボディに載置されて混合室の上面開口部を覆うバーナキャップとを備えたものが普及している。バーナキャップの外縁部分からは下方に向けて筒状に突出した筒状壁が設けられており、この筒状壁の下端面には複数の溝が筒状壁の中心に対して放射状に形成されている。バーナキャップをバーナボディに載置すると、上面開口部の周囲に位置する環状の載置面に筒状壁の下端面が当接し、複数の溝と載置面とによって混合室に連通する複数のガス通路が形成される。そして、ガス通路で筒状壁の外側に向けて開口した炎口から噴出する混合ガスを燃焼させて、コンロバーナの上方に置かれた鍋などの調理容器を加熱する。
【0003】
こうしたコンロバーナでは、調理容器から煮こぼれた際に、バーナキャップに煮こぼれ液がかかることがあり、煮こぼれ液が炎口からガス通路に浸入して閉塞が生じると、混合ガスを噴出できなくなってしまう。そこで、炎口からの煮こぼれ液の浸入を抑制するために、例えば特許文献1のコンロバーナでは、バーナボディの載置面を径方向の外側に向かって下方に傾斜させ、それに合わせてバーナキャップの筒状壁の下端面も同様に傾斜させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1で提案されている技術では、バーナボディおよびバーナキャップの双方に対して形状の見直しが必要となることから、コンロバーナの形状について設計変更が大掛かりなものになってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、コンロバーナの形状を大きく変更することなく、煮こぼれ液による炎口やガス通路の閉塞を抑制することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明のコンロバーナは次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する環状の混合室を有するバーナボディと、該バーナボディに載置されて前記混合室の上面開口部を覆うバーナキャップとを備え、前記バーナキャップの外縁部分から下方に向けて筒状に突出した筒状壁が設けられていると共に、当該筒状壁の下端面に複数の溝が該筒状壁の中心に対して放射状に形成されており、前記バーナキャップを前記バーナボディに載置すると、前記上面開口部の周囲に位置する環状の載置面に前記筒状壁の下端面が当接し、前記複数の溝と前記載置面とによって前記混合室に連通する複数のガス通路が形成され、該ガス通路で前記筒状壁の外側に向けて開口した炎口から噴出する前記混合ガスを燃焼させるコンロバーナにおいて、
前記バーナキャップにおける前記筒状壁の外周面と、前記バーナボディにおける前記載置面の外側から下方に続く外周部とで表面処理の性質を異ならせており、
前記バーナキャップにおける前記筒状壁の外周面には、撥水性の表面処理が施されているのに対し、
前記バーナボディにおける前記載置面の外側から下方に続く外周部には、親水性の表面処理が施されている
ことを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明における撥水性とは、個体表面に付着した液滴の接触端部における液体表面と個体表面とのなす角である接触角が、90度以上であることをいい、150度以上であることが望ましい。また、本発明における親水性とは、接触角が90度未満であることをいい、40度以下であることが望ましい。
【0009】
このような本発明のコンロバーナでは、バーナキャップに煮こぼれ液がかかっても、筒状壁の外周面の撥水性で煮こぼれ液をはじき球状の液滴として重力での流下を容易にすると共に、バーナキャップとバーナボディとの境では、重力に加えて、バーナボディの外周部の親水性で液滴を引き寄せて流下を促すことができ、炎口の付近に煮こぼれ液が留まり難くなるので、煮こぼれ液による炎口やガス通路の閉塞を抑制することが可能となる。そして、バーナキャップとバーナボディとに異なる表面処理を施すだけでよいので、基本的にはコンロバーナの形状に変更を加える必要がなく、簡便に適用することが可能である。
【0010】
上述した本発明のコンロバーナにおけるガス通路では、溝の内面に対する撥水性の表面処理、および載置面に対する親水性の表面処理の少なくとも一方を施してもよい。
【0011】
このようにすれば、煮こぼれ液が炎口からガス通路に浸入したとしても。ガス通路の天面や側面で液滴をはじいたり、ガス通路の底面に液滴が広がったりすることから、ガス通路の閉塞を抑制することが可能となる。
【0012】
こうした本発明のコンロバーナでは、筒状壁の外周面を、載置面の外周よりも外側に張り出させておいてもよい。
【0013】
このようにすれば、バーナキャップに煮こぼれ液がかかり、筒状壁の外周面に沿って流下する液滴がガス通路(溝)に浸入しようとしても、ガス通路における筒状壁の外周側には底面(載置面)が存在しないので、液滴を落下させてバーナボディの外側に流すことができる。結果として、ガス通路における混合室側への煮こぼれ液の浸入および閉塞を抑制することが可能となる。
【0014】
また、こうした本発明のコンロバーナをガス加熱調理器に搭載することとして、コンロバーナの上方に置かれた調理容器を加熱してもよい。
【0015】
このようなガス加熱調理器では、コンロバーナの上方の調理容器から煮こぼれたとしても、煮こぼれ液による炎口やガス通路の閉塞を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施例のコンロバーナ5を搭載したガス加熱調理器としてのガスコンロ1の外観を示した斜視図である。
【
図2】本実施例のコンロバーナ5の構造を示した縦断面図である。
【
図3】バーナキャップ12が載置されたバーナボディ10の外観を拡大して示した説明図である。
【
図4】ガス通路13の内部を拡大して示した縦断面図である。
【
図5】変形例のコンロバーナ5においてバーナボディ10の載置面10dに載置されたバーナキャップ12の筒状壁12aの形状を拡大して示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施例のコンロバーナ5を搭載したガス加熱調理器としてのガスコンロ1の外観を示した斜視図である。例示したガスコンロ1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに開口した収容空間に嵌め込んで設置されるビルトインタイプであり、収容空間に収容される箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の開口した上面を覆って設置される天板3とを備えている。
【0018】
コンロ本体2には、燃料ガスを燃焼させるコンロバーナ5が2つ左右に設置されており、天板3に形成された挿通孔からコンロバーナ5の上部が突出している。また、天板3上には、コンロバーナ5の上方に鍋などの調理容器を置くための五徳6がコンロバーナ5を囲んで設置されている。
【0019】
図示したガスコンロ1の前面には、グリル扉7が設けられており、コンロ本体2に内蔵されたグリルの前方を開閉可能になっている。グリル扉7の右方には、2つのコンロバーナ5の各々に対応して、使用者が点火時や消火時、あるいは火力調節時などに操作するコンロ操作ボタン8が設けられている。また、グリル扉7の左方には、使用者がグリルの点火時や消火時、あるいは火力調節時などに操作するグリル操作ボタン9が設けられている。
【0020】
図2は、本実施例のコンロバーナ5の構造を示した縦断面図である。コンロバーナ5は、環状の混合室10cが内部に形成されたバーナボディ10と、バーナボディ10に載置されて混合室10cの上面開口部を覆う環状のバーナキャップ12と、図示しない取付金具でバーナキャップ12の上方に取り付けられた環状のバーナカバー14などを備えている。
【0021】
本実施例のバーナボディ10は、ステンレス鋼などの薄板をプレス加工して形成された2枚の板金(外面板10aおよび内面板10b)を向かい合わせて気密に接合することで、外面板10aと内面板10bとの間に環状の混合室10cが形成されている。外面板10aの上端側には、内向きに折り曲げて環状の載置面10dが形成されており、外面板10aの上部が天板3上に突出している。そして、この載置面10dにバーナキャップ12が載置される。
【0022】
また、バーナボディ10からは、混合室10cと連通する混合管11が延設されている。図中に白抜きの矢印で示すように、燃料ガスが混合管11の開口端11aに向けて噴射されると、一次空気を吸い込みながら混合管11に流入し、混合管11を通って混合室10cに供給されることで燃料ガスと一次空気との混合ガスが生成される。
【0023】
バーナキャップ12は、アルミニウム合金や真鍮などを用いて、鋳造あるいはダイカストなどによって環状に形成されている。バーナキャップ12の外縁部分からは下方に向けて筒状の筒状壁12aが延設されており、内縁部分からは下方に向けて筒状の嵌合筒12bが筒状壁12aよりも長く延設されている。バーナキャップ12をバーナボディ10に載置する際には、嵌合筒12bを内面板10bの内側に嵌め合わせて、筒状壁12aの下端面を、混合室10cの上面開口部の周囲に位置する環状の載置面10dに当接させる。これにより、混合室10cの上面開口部がバーナキャップ12で覆われる。
【0024】
また、バーナキャップ12の筒状壁12aの下端面(載置面10dに当接する面)には、筒状壁12aの中心に対して放射状に複数の溝12dが形成されている。尚、
図2における左側の筒状壁12aでは、溝12dの位置で切断した断面を表しており、右側の筒状壁12aでは、溝12dの無い位置で切断した断面を表している。バーナキャップ12をバーナボディ10に載置した状態では、筒状壁12aの複数の溝12dとバーナボディ10の載置面10dとによって、混合室10cに連通する複数のガス通路13が形成される。そして、このガス通路13で筒状壁12aの外側に向けて開口した炎口13aから混合室10cの混合ガスが噴出し、図示しない点火プラグで火花を飛ばすと混合ガスの燃焼が開始され、五徳6上の調理容器を加熱する。尚、図示した例では、環状の載置面10dが径方向の外側に向かって上方に傾斜しており、これに合わせて、筒状壁12aの下端面も同様に傾斜している。
【0025】
バーナキャップ12の嵌合筒12bの内側は、コンロバーナ5を上下方向に貫通する中央通路12cになっており、この中央通路12cには、上端に温度センサ15が取り付けられた支持ポール16が挿通されている。バーナキャップ12の上方を覆うバーナカバー14は、五徳6上の調理容器から煮こぼれた際に、煮こぼれ液が中央通路12cに浸入するのを抑制しており、バーナカバー14の中央に形成された貫通孔14aから温度センサ15の上部が突出している。温度センサ15は、図示しない付勢バネで上方に付勢されており、五徳6に置かれた調理容器の下面に温度センサ15の上端が当接して、調理容器の温度を検出する。
【0026】
こうしたコンロバーナ5では、五徳6上の調理容器からあふれた煮こぼれ液がバーナキャップ12の筒状壁12aにかかることがあり、炎口13aに煮こぼれ液が浸入してガス通路13などで閉塞が生じると、混合ガスを噴出できなくなってしまう。例えば、調理容器から煮こぼれた際に、使用者が急いでコンロ操作ボタン8を操作してコンロバーナ5を消火する(燃料ガスの供給を停止する)と、ガス通路13における混合ガスの噴出圧が低下するため、煮こぼれ液による炎口13aやガス通路13の閉塞が生じ易くなり、閉塞が生じた炎口13aでは、次回の点火時に混合ガスが噴出せず点火不良となってしまう。そこで、本実施例のコンロバーナ5では、煮こぼれ液による炎口13aやガス通路13の閉塞を抑制するために、以下の構成を採用している。
【0027】
図3は、バーナキャップ12が載置されたバーナボディ10の外観を拡大して示した説明図である。まず、本実施例のバーナキャップ12は、筒状壁12aの外周面に撥水性のコーティングが施されている。ここで、撥水性とは、個体表面に付着した液滴の接触端部における液体表面と個体表面とのなす角である接触角が、90度以上であることをいい、150度以上の超撥水性であることが望ましい。撥水性のコーティングとしては、例えば、フッ素系の塗料を用いることができる。
【0028】
撥水性のコーティングを施しておけば、筒状壁12aに煮こぼれ液がかかっても、付着した液滴は、筒状壁12aの外周面に対して接触角θ1が90度以上の球状になり、液滴と筒状壁12aとの接触面積を小さくすることができる。こうして筒状壁12aの外周面の撥水性で煮こぼれ液をはじくことにより、球状の液滴を筒状壁12aの外周面に沿って重力で流下(落下)させることが可能となる。
【0029】
一方、本実施例のバーナボディ10の外面板10aは、前述した環状の載置面10dの外側から屈曲部を介して鉛直下方に外周面が続いており、この載置面10dの外側から下方に続く外周部(屈曲部および鉛直外周面)に親水性のコーティングが施されている。ここで、親水性とは、個体表面に液滴が付着した際に接触角が90度未満であることをいい、40度以下であることが望ましい。親水性のコーティングとしては、例えば、酸化チタンを含有する塗料を用いることができる。
【0030】
こうしてバーナボディ10に親水性のコーティングを施しておけば、上述のように煮こぼれ液が筒状壁12aの外周面に沿って流下してバーナボディ10に到達すると、付着した液滴は、外面板10aの外周部(鉛直外周面)に対して接触角θ2が90度未満になって広がり、液滴と外面板10aとの接触面積を大きくすることができる。
【0031】
このように本実施例のコンロバーナ5では、バーナキャップ12側に撥水性のコーティングを施すのに対して、バーナボディ10側に親水性のコーティングを施し、コーティングの性質を異ならせている。これにより、バーナキャップ12に煮こぼれ液がかかっても、筒状壁12aの外周面の撥水性で煮こぼれ液をはじき球状の液滴として重力での流下を容易にすると共に、バーナキャップ12とバーナボディ10との境では、重力に加えて、バーナボディ10における外面板10aの外周部の親水性で液滴を引き寄せて流下を促すことができ、炎口13aの付近に煮こぼれ液が留まり難くなるので、煮こぼれ液による炎口13aやガス通路13の閉塞を抑制することが可能となる。
【0032】
そして、本実施例のコンロバーナ5では、バーナキャップ12やバーナボディ10にコーティングを施すだけでよく、基本的にはコンロバーナ5の形状を変更する必要がないので、コンロバーナ5の形状については従前の設計のままで、簡便に適用することが可能である。
【0033】
また、
図4は、ガス通路13の内部を拡大して示した縦断面図である。前述したようにバーナキャップ12をバーナボディ10に載置すると、筒状壁12aの下端面が載置面10dに当接して、筒状壁12aの溝12dと載置面10dとによってガス通路13が形成される。このガス通路13は、筒状壁12aの内側で混合室10cと連通しており、筒状壁12aの外側に向けて炎口13aが開口している。
【0034】
そして、本実施例のガス通路13は、溝12dの内面(ガス通路13の天面および側面)に撥水性のコーティングが施されているのに対して、載置面10d(ガス通路13の底面)に親水性のコーティングが施されている。このようにすれば、煮こぼれ液が炎口13aからガス通路13に浸入したとしても、ガス通路13の天面や側面で液滴をはじき、ガス通路13の底面に液滴が広がることから、ガス通路13の閉塞を抑制することが可能となる。尚、本実施例のガス通路13では、溝12dの内面に対する撥水性のコーティング、および載置面10dに対する親水性のコーティングの両方を施すこととしたが、何れか一方だけでもよく、ガス通路13の天面および側面で液滴をはじいたり、ガス通路13の底面に液滴が広がったりすることにより、ガス通路13の閉塞を抑制する効果を得ることができる。
【0035】
上述した本実施例のコンロバーナ5には、次のような変形例も存在する。以下では、上述の実施例とは異なる点を中心に変形例について説明する。尚、変形例の説明では、上述の実施例と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
上述した実施例のコンロバーナ5では、バーナキャップ12の筒状壁12aの外径と、バーナボディ10の環状の載置面10dの外径とが略同一に設定されており、バーナキャップ12をバーナボディ10に載置すると、筒状壁12aの外周面が載置面10dの外周上に位置するようになっていた(
図4参照)。
【0037】
これに対して、
図5は、変形例のコンロバーナ5においてバーナボディ10の載置面10dに載置されたバーナキャップ12の筒状壁12aの形状を拡大して示した縦断面図である。図示されるように変形例のコンロバーナ5では、バーナキャップ12の筒状壁12aの外径が、バーナボディ10の環状の載置面10dの外径よりも大きくなっており、筒状壁12aの外周面が載置面10dの外周よりも外側に張り出している。
【0038】
このような変形例のコンロバーナ5では、バーナキャップ12に煮こぼれ液がかかり、筒状壁12aの外周面に沿って流下する液滴が、ガス通路13(溝12d)に浸入しようとしても、ガス通路13の手前側(筒状壁12aの外周側)には底面(載置面10d)が存在しないので、液滴を落下させてバーナボディ10の外側に流すことができる。また、仮に液滴が溝12dを伝って炎口13a(ガス通路13の底面がある端部)に達したとしても、バーナボディ10の外周部の親水性で液滴を引き寄せて流下を促すことができる。結果として、ガス通路13の奥側(混合室10c側)への煮こぼれ液の浸入および閉塞を抑制することが可能となる。
【0039】
尚、上記のように筒状壁12aの外周面を載置面10dの外周よりも外側に張り出させるためには、コンロバーナ5の形状を変更する必要があるものの、バーナキャップ12の外径を大きくするだけでよく、コンロバーナ5の形状についての設計変更を最小限に留めることができる。
【0040】
以上、本実施例および変形例のコンロバーナ5について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0041】
例えば、前述した実施例のコンロバーナ5では、コーティングを施すことによって、バーナキャップ12側を撥水性とし、バーナボディ10側を親水性としていた。しかし、撥水性または親水性を付与するための表面処理は、コーティングに限られず、表面に機械的な加工を施してもよい。例えば、バーナキャップ12の筒状壁12aの外周面にロータス加工を施すこととして、ロータス効果による撥水性を付与してもよい。また、バーナボディ10の外面板10aにショットブラストによる梨地加工を施すこととして、表面を荒らすことで親水性を付与してもよい。
【0042】
また、前述した実施例のコンロバーナ5では、バーナボディ10の外面板10aの外周面が鉛直面になっていた。しかし、外面板10aの外周面は、鉛直面に限られず、径方向の外側に向かって下方に傾斜した傾斜面であってもよい。傾斜面とした場合においても、前述した実施例と同様に、親水性のコーティングを施しておくことにより、バーナキャップ12の筒状壁12aに煮こぼれ液がかかった際に、液滴を引き寄せて流下を促すことができるので、煮こぼれ液による炎口13aやガス通路13の閉塞を抑制することが可能となる。
【0043】
さらに、煮こぼれ液は、水だけでなく油分を含んでいる場合があることから、撥水性の表面処理には撥油性を兼ね備えていてもよく、親水性の表面処理には親油性を兼ね備えていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、
5…コンロバーナ、 6…五徳、 7…グリル扉、
8…コンロ操作ボタン、 9…グリル操作ボタン、 10…バーナボディ、
10a…外面板、 10b…内面板、 10c…混合室、
10d…載置面、 11…混合管、 11a…開口端、
12…バーナキャップ、 12a…筒状壁、 12b…嵌合筒、
12c…中央通路、 12d…溝、 13…ガス通路、
13a…炎口、 14…バーナカバー、 14a…貫通孔、
15…温度センサ、 16…支持ポール。