(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】管理装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2020064638
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羽野 勝之
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100990(JP,A)
【文献】特開2002-321266(JP,A)
【文献】特開平03-203621(JP,A)
【文献】特開2019-126907(JP,A)
【文献】特開2006-051675(JP,A)
【文献】特開2018-167424(JP,A)
【文献】特開2017-114109(JP,A)
【文献】特開2007-290154(JP,A)
【文献】国際公開第2008/071669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形セルに含まれる機器のうち少なくとも射出成形機の管理を行うための管理装置であって、
前記成形セルでイベントが発生したとき前記成形セルを含む領域の画像情報を前
記イベントに関連付けて記憶する記憶部
と、
前記イベントの内容と当該イベントに関連付けて記憶された前記画像情報とを同時に表示する表示部と
を備える、
管理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記イベントが発生したとき、前記イベントの発生前、前記イベントの発生時及び前記イベントの発生後の少なくとも1つのタイミングの画像情報を前記イベントに関連付けて記憶する、
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記成形セルのイベントは、前記射出成形機が動作履歴を残すイベントを含む、
請求項1又は請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記成形セルのイベントは、前記成形セルに含まれる機器の動作異常を含む、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記成形セルのイベントは、前記成形セルに含まれる機器の動作に対する操作者の介入を含む、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記成形セルのイベントは、前記成形セルに含まれる機器の設定変更を含む、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項7】
前記成形セルのイベントは、前記射出成形機により成形された成形品の検査を行うための検査装置による成形品異常検出を含む、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項8】
前記成形セルのイベントが発生した際に、前記イベントの内容に基づき、前記成形セルを含む領域を撮像する撮像装置の動作を制御する撮像制御部と
をさらに備える、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項9】
前記画像情報を解析する画像解析部
をさらに備え、
前記記憶部は、前記成形セルのイベントに関連付けて、前記画像解析部の解析により得られた情報をさらに記憶する、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項10】
前記画像解析部は、
前記記憶部が記憶する画像情報と、該画像情報に関連付けられた前記成形セルのイベントとを学習することにより、該画像情報と成形セルのイベントの発生との関連性を得るとともに、
解析対象の画像情報において前記関連性を検出した際に、前記関連性の検出を報知する、
請求項9に記載の管理装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記イベントが選択されると、前記イベントの内容及び前記イベントに関連付けて記憶された画像情報を表示する、
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項12】
前記記憶部が記憶する画像情報は、前記射出成形機の全体が撮像された画像、及び/又は前記成形セルの機器を操作する操作者が写る領域の画像を含む、
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形セルに含まれる機器のうち少なくとも射出成形機の管理を行うための管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記の特許文献1等に示されているように、成形材料を金型装置内に射出する射出成形機が知られている。また、例えば下記の特許文献2等に示されているように、操作者の監視に依らず、型閉動作の異常等の動作異常を検出する射出成形機の制御装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-171818号公報
【文献】特開2002-248665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような制御装置において、動作異常等のイベントが発生した際に、そのイベントの発生日時及び名称が自動的に記録されることある。しかしながら、イベントの発生日時及び名称だけでは、イベントの発生状況を把握することが難しいことがある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、イベントの発生状況をより確実に把握することができる管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の管理装置のうちの一つは、成形セルに含まれる機器のうち少なくとも射出成形機の管理を行うための管理装置であって、成形セルでイベントが発生したとき成形セルを含む領域の画像情報をイベントに関連付けて記憶する記憶部と、イベントの内容と当該イベントに関連付けて記憶された画像情報とを同時に表示する表示部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記の管理装置によれば、記憶部が、成形セルを含む領域の画像情報を成形セルのイベントに関連付けて記憶するので、イベントの発生状況をより確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1による管理装置を含む射出成形システムを示す説明図である。
【
図2】
図1の成形機制御装置を示すブロック図である。
【
図3】
図2の記憶部が記憶する停止履歴の一例を示す説明図である。
【
図4】
図2の記憶部が記憶する設定変更履歴の一例を示す説明図である。
【
図5】
図2の記憶部がイベントに関連付けて記憶する画像情報の一例を示す説明図である。
【
図6】
図2の記憶部が成形セルのイベントに関連付けて記憶するカメラの画像情報の一例を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態2による管理装置を含む射出成形システムを示す説明図である。
【
図8】
図7の成形機管理システムを示すブロック図である。
【
図9】
図1及び
図7の金型装置及び射出成形機の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による管理装置(成形機制御装置2)を含む射出成形システムを示す説明図である。
図1に示すように、本実施の形態の射出成形システムは、成形セル1、成形機制御装置2、ネットワーク3、撮像装置としてのカメラ4、画像管理サーバ5及び検査装置6を含んでいる。
【0011】
成形セル1は、少なくとも射出成形機10を含む装置ユニットである。射出成形機10は、所定形状の成形品を成形するための装置である。本実施の形態の射出成形機10は、射出装置100を含んでいる。射出装置100は、所定量の成形材料(熱可塑性樹脂材料等)を溶融するとともに、溶融された成形材料を射出するための装置である。
【0012】
本実施の形態の成形セル1は、付属機器11を含むことができる。射出成形機10及び付属機器11をまとめて、成形セル1に含まれる機器と呼ぶことがある。付属機器11は、射出成形機10の動作を補助する機器である。本実施の形態の成形セル1では、付属機器11は成形機制御装置2(又は射出成形機10)に接続されており、成形機制御装置2(又は射出成形機10)は付属機器11の動作を監視及び制御することができる。
【0013】
付属機器11の構成は任意であるが、本実施の形態の付属機器11には、金型装置110、材料乾燥機111、金型温調機112、報知機113及び取出機114が含まれている。金型装置110は、射出装置100から射出された成形材料を冷却固化することにより成形品を成形するための装置である。材料乾燥機111は、射出装置100に供給する成形材料を乾燥させるための装置である。金型温調機112は、金型装置110の温度を調整するための装置である。金型温調機112は、金型装置110及び金型温調機112を循環する例えば水又は油等の流体の温度を制御することにより、金型装置110の温度を調整することができる。報知機113は、例えば射出成形機10の動作異常等の操作者に報知すべきイベントが生じた際に、そのイベントの発生を報知するための装置である。報知機113は、発光及び/又は音によりイベントの発生を報知することができる。取出機114は、金型装置110から成形品を取り出すための装置である。
【0014】
成形機制御装置2は、射出成形機10に設けられており、射出成形機10及び付属機器11の動作を監視及び制御するための装置である。成形機制御装置2は、例えばプログラムに基づき演算処理を行うコンピュータ若しくは専用回路、ディスプレイ等の表示装置及びキーボード等の入力装置等の装置によって構成され得る。成形機制御装置2を構成するハードウェアの数及び位置は任意である。
【0015】
本実施の形態の成形機制御装置2は、成形セル1に含まれる機器のうち少なくとも射出成形機10の管理を行うため管理装置を構成する。なお、管理装置は、射出成形機10に内蔵されていてもよいし、射出成形機10の外に配置されていてもよい。成形機制御装置2は、射出成形機10及び付属機器11の一部を管理してもよいし、すべてを管理してもよい。
成形機制御装置2については、後に詳しく説明する。
【0016】
ネットワーク3は、例えば有線、無線LAN、イントラネット又はインターネット等により構成されるものである。成形セル1に含まれる機器(特に成形機制御装置2)、カメラ4、画像管理サーバ5及び検査装置6は、ネットワーク3を介して互いに接続されている。
【0017】
カメラ4は、成形セル1を含む領域を撮像するための装置である。カメラ4は、成形セル1を含む領域を連続的又は断続的に撮像することができる。カメラ4は、得られた画像情報を成形機制御装置2及び画像管理サーバ5に入力できる。画像情報は、静止画及び動画のいずれであってもよい。
【0018】
本実施の形態では、1つのカメラ4が成形セル1の全体を撮像できるように設けられている。より具体的には、カメラ4は、成形セル1が設けられた設備の天井又は壁に取り付けられており、上方から俯瞰して成形セル1の全体を撮像するように設けられている。しかしながら、成形セル1を含む領域を撮像するカメラ4の数及び位置は任意である。例えば成形セル1を含む領域を複数のカメラ4によって異なる角度から撮像してもよい。また、カメラ4は、操作者の頭部位置等のより低い位置から成形セル1の撮像を行ってもよい。成形セル1を含む領域には、成形セル1の少なくとも一部が含まれる領域に加えて、成形セル1の機器を操作する操作者が写る領域も含まれる。実施態様によっては、カメラ4は、例えば成形機制御装置2の正面など、操作者のみが写る(成形セル1の機器が写らない)ように撮像を行ってもよい。
【0019】
本実施の形態のカメラ4は、カメラ本体40、撮像レンズ41及び支持機構42を有している。カメラ本体40は、例えばCCD等の撮像素子を有する装置である。撮像レンズ41は、カメラ本体40に取り付けられており、カメラ4の撮像は撮像レンズ41を通して行われる。撮像レンズ41は、倍率又は焦点距離を変更できるズームレンズであり得る。支持機構42は、カメラ4を支持するための機構である。本実施の形態の支持機構42は、カメラ4の向きを調整できるように構成されている。支持機構42は、互いに直交する2軸周りに回転可能にカメラ4を支持できる。カメラ4は、鉛直方向に延びる第1軸周り、及び水平方向に延びる第2軸周りに回転可動に支持機構42に支持され得る。また、本実施の形態の支持機構42は、カメラ4の位置を調整できるように構成されている。カメラ4の向き位置を変更することにより、撮像対象に対するカメラ4のアングルを調整できる。カメラ4の位置調整には、高さ位置の調整が含まれる。すなわち、支持機構42は、上下動可能にカメラ4を支持することができる。支持機構42は、所定軌道に沿ってカメラ4が変位できるようにカメラ4を支持してもよい。カメラ4は、例えば成形セル1を含む領域を取り囲むように天井に設けられたレールに沿って変位できるように支持機構42によって支持されてもよい。
【0020】
画像管理サーバ5は、カメラ4からの画像情報を蓄積するための装置である。画像管理サーバ5は、カメラ4からの画像情報を非選択的に蓄積できる。換言すると、画像管理サーバ5は、カメラ4によって得られたすべての画像情報を少なくとも一時的に蓄積することができる。画像管理サーバ5は、例えば1か月間等の所定期間の画像情報を蓄積し、所定期間が経過した画像情報を削除してもよい。画像管理サーバ5は、例えば日時又は成形品のロットナンバー等の特定情報をカメラ4からの画像情報に付加することができる。特定情報は、射出成形機10又は成形機制御装置2から入力され得る。
【0021】
検査装置6は、射出成形機10によって成形された成形品の検査を行うための装置である。検査装置6は、例えば形状不良等の成形品の成形不良を検出することができる。検査装置6は、成形不良の検出を成形機制御装置2に入力することができる。
【0022】
次に、
図2は、
図1の成形機制御装置2を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施の形態の成形機制御装置2は、異常検出部20、操作入力部21、記憶部22、撮像制御部23及び画像解析部24を含んでいる。
【0023】
異常検出部20は、成形セル1に含まれる機器の動作異常を検出できる。異常検出部20は、機器の動作異常を検出した際に、成形セル1に含まれる機器の動作を停止させることができる。異常検出部20は、検出した動作異常を示す情報を記憶部22及び撮像制御部23に入力することができる。検出した異常を示す情報には、動作異常を検出した日時及び動作異常の内容が含まれる。動作異常の内容には、動作異常の名称及び動作異常を起こした機器の情報が含まれ得る。
【0024】
操作入力部21は、操作者の操作の入力を受け付ける。操作入力部21は、例えばタッチパネル、キーボード又は操作盤等の機器であり得る。操作者の操作の入力には、成形セル1に含まれる機器の動作に対する操作者の介入操作、及び成形セル1に含まれる機器の設定変更が含まれる。介入操作には、成形セル1に含まれる機器の停止及び手動操舵が含まれる。機器の停止は、例えば金型装置110のメンテナンス、成形品のサンプルチェック、及び生産段取り(材料交換等)等のタイミングで行われ得る。手動操作としては、プログラム等により予め設定された動作とは異なる動作を機器に行わせることが挙げられる。設定変更としては、例えば充填最高圧力、射出速度、射出圧力、及びノズル温度の変更等が挙げられる。
【0025】
操作入力部21は、介入操作又は設定変更を検出したとき、検出した介入操作又は設定変更を示す情報を記憶部22及び撮像制御部23に入力することができる。
【0026】
操作入力部21は、介入操作又は設定変更を行う操作者の登録を受け付けることができる。成形機制御装置2は、介入操作又は設定変更を受け付ける前に、介入操作又は設定変更を行う操作者の登録を促すことができる。
【0027】
記憶部22は、成形セル1を含む領域の画像情報を成形セル1のイベントに関連付けて記憶する。操作者は、成形機制御装置2を操作することにより、成形セル1のイベントととともに、そのイベントに関連する画像情報を確認することができる。これにより、イベントの発生状況をより確実に把握することができる。
【0028】
記憶部22は、イベントが発生したとき、イベントの発生前、イベントの発生時及びイベントの発生後の少なくとも1つのタイミングの画像情報をイベントに関連付けて記憶することができる。本実施の形態の記憶部22は、イベントが発生したとき、イベントの発生前、イベントの発生時及びイベントの発生後のすべてのタイミングの画像情報をイベントに関連付けて記憶する。しかしながら、実施態様によっては、記憶部22は、例えばイベントの発生時以後の画像情報等、イベントの発生前、イベントの発生時及びイベントの発生後の1つ又は2つのタイミングの画像情報を記憶してもよい。
【0029】
本実施の形態の記憶部22は、イベントが発生したとき、記憶すべき画像情報を画像管理サーバ5から入手できる。但し、記憶部22は、カメラ4から直接入力される画像情報をイベントに関連付けて記憶してもよい。記憶部22は、イベントに関連付けて記憶する画像情報とは別に、少なくとも所定期間中のカメラ4からの画像情報を蓄積してもよい。
【0030】
成形セル1のイベントは、射出成形機10が動作履歴を残すイベントを含む。記憶部22は、射出成形機10の動作履歴を残すイベントに関連付けてカメラ4の画像情報を記憶することができる。記憶部22は、射出成形機10のすべての動作履歴を残すイベントに関連付けてカメラ4の画像情報を記憶してもよいし、特定の動作履歴を残すイベントに関連付けてカメラ4の画像情報を記憶してもよい。例えば、動作履歴を残す各イベントに重要度が設定されており、記憶部22は、所定レベル以上の重要度のイベントに関連付けてカメラ4の画像情報を記憶し、所定レベル未満の重要度のイベントについてはカメラ4の画像情報を関連付けて記憶しなくてもよい。
【0031】
動作履歴を残すイベントには、成形セル1に含まれる機器の動作異常、成形セル1に含まれる機器の動作に対する操作者の介入、成形セル1に含まれる機器の設定変更が含まれる。記憶部22は、異常検出部20及び操作入力部21からの情報により、イベントの発生を検出することができる。
【0032】
また、成形セル1のイベントは、検査装置6による成形品異常検出を含む。記憶部22は、検査装置6による成形品異常検出に関連付けてカメラ4の画像情報を記憶することができる。記憶部22は、検査装置6により成形異常が検出された成形品が成形された時のカメラ4の画像情報を記憶することができる。成形品の成形には、所定量の成形材料が溶融される計量工程、溶融された成形材料が金型装置110内に充填される充填工程、金型装置110内の成形材料を所定の圧力に保持する保圧工程、金型装置110内の成形材料を冷却固化する冷却工程、及び金型装置110から成形品を取り出す取出工程が含まれる。記憶部22は、検査装置6からの情報により、イベント(成形品異常検出)の発生を検出することができる。
【0033】
撮像制御部23は、成形セル1のイベントが発生した際に、イベントの内容に基づきカメラ4の動作を制御する。撮像制御部23によるカメラ4の動作制御には、カメラ4の向き及び/又は位置の変更、並びに撮像レンズ41の倍率又は焦点距離の変更が含まれる。上述のように、カメラ4の向き及び位置を変更することで、アングルの変更が可能となる。撮像制御部23は、発生したイベントに関連する機器を含む領域を拡大して撮像するようにカメラ4の動作を制御することができる。例えば金型温調機112の動作異常時に、撮像制御部23は、金型温調機112にカメラ4を向けるとともに、金型温調機112の状態を確認できるように撮像レンズ41の倍率を切り替えることができる。
【0034】
画像解析部24は、画像情報を解析する。画像解析部24は、カメラ4からの及び/又は記憶部22が記憶する画像情報を解析できる。記憶部22は、成形セル1のイベントに関連付けて、画像解析部24の解析により得られた情報をさらに記憶することができる。
【0035】
画像解析部24の解析により得られる情報には、画像情報に含まれる操作者に係る情報が含まれる。操作者に係る情報には、例えば操作者の顔画像、名前又は識別番号等の操作者を特定するための情報が含まれる。
【0036】
また、画像解析部24の解析により得られる情報には、成形セルに含まれる機器の停止理由に係る情報が含まれる。例えば、画像解析部24は、カメラ4からの及び/又は記憶部22が記憶する画像情報と成形セル1のイベントの発生との関連性との比較により、機器の停止理由に係る情報を得ることができる。関連性は、正常稼働時に所定のタイミングで所定の動作又は作業が行わなければ、所定理由により機器が停止することを示す情報であり得る。例えば、金型温調機112で異常報知が行われた後に所定時間内に処置が行わなければ射出成形機10の全体が停止されるという関連性情報を画像解析部24が有しており、画像解析部24は、カメラ4からの及び/又は記憶部22が記憶する画像情報において金型温調機112の異常報知が所定時間以上放置された上で機器が停止したとき、機器停止理由として温調機不良を得ることができる。また、例えば材料不足が報知されているときに所定時間内に材料を補充しなければ射出成形機10の全体が停止されるという関連性情報を画像解析部24が有しており、画像解析部24は、カメラ4からの及び/又は記憶部22が記憶する画像情報において材料不足の報知が所定時間以上放置された上で機器が停止したとき、機器停止理由として材料不足を得ることができる。
【0037】
また、画像解析部24の解析により得られる情報には、成形セルに含まれる機器が停止した後の操作者による処置内容に係る情報が含まれる。例えば、画像解析部24は、処置内容毎に操作者の挙動を示す情報を有しており、カメラ4からの及び/又は記憶部22が記憶する画像情報において操作者が特定の挙動をとっていることを検出することにより、その挙動に対応する処置が行われたこと及びその処置の名称を得ることができる。
【0038】
画像解析部24は、記憶部22が記憶する画像情報と、その画像情報に関連付けられた成形セル1のイベントとを学習することにより、その画像情報と成形セル1のイベントの発生との関連性を得ることができる。画像解析部24は、解析対象の画像情報において関連性を検出した際に、関連性の検出を報知する。解析対象の画像情報は、カメラ4からの画像情報であり得る。すなわち、画像解析部24は、過去に発生したイベントと類似するイベントの発生を予測し、そのイベントが発生する前にイベント発生予測を操作者に報知することができる。画像解析部24は、報知機113を通して報知を行う事ができる。これにより、報知に応じて操作者が回避作業を行うことで、装置の突発防止を回避することができる。
【0039】
画像解析部24は、カメラ4からの画像情報において関連性を検出した際に、成形セルに含まれる機器の動作を制御することができる。例えば、画像解析部24は、特定の操作者が成形機制御装置2の操作を行おうとしたとき、その操作者による少なくとも1つ操作(例えば設定変更等)を無効にする等の制御を行うことができる。また、例えば、画像解析部24は、金型温調機112からの水漏れを画像データから検知したとき、報知機113を通して水漏れを報知する事ができる。また、例えば、画像解析部24は、金型装置110の画像データから金型装置110の汚れ度合いを判定し、報知機113を通して作業者に清掃を促す事ができる。
【0040】
次に、
図3は
図2の記憶部22が記憶する停止履歴の一例を示す説明図である。
図3に示すように、記憶部22は、成形セル1の機器の停止履歴を記憶することができる。
図3に示す表の各行が、成形セル1の機器の停止をそれぞれ示している。
【0041】
停止履歴には、停止時間、停止時刻、再開時刻、機械状態及び内容が含まれ得る。停止時間は、停止時刻と再開時刻との差分である。停止時刻及び再開時刻は、機器の状態監視等から得られる。機械状態は、異常発生か又は通常停止かを示し得る。異常発生は、異常検出により機器が停止されたことを示し得る。通常停止は、操作者の介入による停止、カレンダタイマによる自動停止及び生産完了による自動停止等を示し得る。機械状態は、異常検出部20及び操作入力部21からの情報の基づき作成され得る。内容は、機器の停止を示す情報である。例えば、内容を示す複数のラベル又はタグが記憶部22に予め登録されており、操作者による複数のラベル又はタグの選択により内容が作成され得る。
【0042】
次に、
図4は、
図2の記憶部22が記憶する設定変更履歴の一例を示す説明図である。
図4に示すように、記憶部22は、成形セル1の機器の設定変更履歴を記憶することができる。
図4に示す表の各行が、成形セル1の機器の設定変更をそれぞれ示している。
【0043】
設定変更履歴には、変更日時、成形条件名、項目名、変更前後の設定値、及び担当者が含まれ得る。変更日時は、設定変更が行われた日時である。成形条件名は設定変更が行われた成形条件の名称を示し、項目名は設定変更が行われた成形条件の項目の名称を示している。変更前後の設定値及び担当者は、操作者の入力に基づいて作成され得る。
【0044】
次に、
図5は、
図2の記憶部22がイベントに関連付けて記憶する画像情報の一例を示す説明図である。
図5では、
図3の表における第1行目の停止履歴に関連づけられて記憶される画像情報を示している。
図5の上段右端の画像が機器停止というイベント発生時の画像であり、上段左2つの画像がイベント発生前の画像であり、下段2つの画像がイベント発生後の画像である。
【0045】
図5では、成形セル1の機器が通常動作していたところ(上段左端)、金型温調機112で異常報知が行われた後に(上段中央)、機器の停止に至るとともに報知機113による報知が行われ(上段右端)、処置を行うために操作者Aが現れた後に(下段左端)、配管清掃が完了した(下段右端)状況を表している。記憶部22は、一連の複数の静止画を記憶してもよいし動画を記憶してもよい。
図3及び
図4に示すイベント(履歴)の内の1つを選択することにより、
図5に示すような画像情報(イベントに関連付けられた画像情報)を確認することができる。
【0046】
次に、
図6は、
図2の記憶部22が成形セルのイベントに関連付けて記憶するカメラ4の画像情報の一例を示す説明図である。
図6に示すようにカメラ4の画像情報をイベントの一覧(履歴)と同時に表示してもよい。画像情報とイベントの一覧との配置は任意である。例えば、
図6では、イベントの一覧の上方に画像情報を示しているが、画像情報の横にイベントの一覧を表示してもよい。イベントの選択により、表示される画像情報を切り替えることができる。
【0047】
また、
図6に示すように、イベント及び画像情報に加えて、画像解析によって得られた情報を表示してもよい。画像解析によって得られた情報であることの表示とともに、画像解析によって得られた情報を表示できる。
図6では、異常停止時に処置を行った作業者(操作者)、停止理由、及び処置内容が画像解析により得られたことが示されている。
図6の下段の表に示すように、画像解析により得られた情報がイベント一覧の表に盛り込まれてもよい。
【0048】
本実施の形態の管理装置(成形機制御装置2)では、記憶部22が、成形セル1を含む領域の画像情報を成形セル1のイベントに関連付けて記憶するので、イベントの発生状況をより確実に把握することができる。
【0049】
また、記憶部22は、イベントが発生したとき、イベントの発生時前後の画像情報をイベントに関連付けて記憶するので、イベントの発生状況をさらに確実に把握することができる。
【0050】
また、成形セル1のイベントは、射出成形機10が動作履歴を残すイベントを含むので、射出成形機10が動作履歴と関連付けて画像情報を確認でき、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0051】
また、成形セル1のイベントは、成形セル1に含まれる機器の動作異常を含むので、機器の動作異常と関連付けて画像情報を確認でき、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0052】
また、成形セル1のイベントは、成形セル1に含まれる機器の動作に対する操作者の介入を含むので、操作者の介入と関連付けて画像情報を確認でき、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0053】
また、成形セル1のイベントは、成形セル1に含まれる機器の設定変更を含むので、設定変更と関連付けて画像情報を確認でき、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0054】
また、成形セル1のイベントは、射出成形機10により成形された成形品の検査を行うための検査装置6による成形品異常検出を含むので、成形品の異常と関連付けて画像情報を確認でき、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0055】
また、撮像制御部23は、成形セル1のイベントが発生した際に、イベントの内容に基づきカメラ4の動作を制御するので、成形セル1のイベントに関連するより適切な画像情報を得ることができ、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0056】
また、画像解析部24は、画像情報を解析し、記憶部22は、成形セル1のイベントに関連付けて、画像解析部24の解析により得られた情報をさらに記憶するので、成形セル1のイベントの発生理由等の分析をより容易に行うことできる。
【0057】
また、画像解析部24は、画像情報に含まれる操作者に係る情報を得るので、イベントに関わる操作者をより容易に確認でき、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0058】
また、画像解析部24は、成形セル1に含まれる機器の停止理由に係る情報を得るので、成形セル1のイベントの発生理由等の分析をより容易に行うことできる。
【0059】
また、画像解析部24は、成形セル1に含まれる機器が停止した後の操作者による処置内容に係る情報を得るので、成形セル1の管理をより確実に行うことができる。
【0060】
また、画像解析部24は、記憶部22が記憶する画像情報と、その画像情報に関連付けられた成形セル1のイベントとを学習することにより、その画像情報と成形セル1のイベントの発生との関連性を得るとともに、解析対象の画像情報において関連性を検出した際に、関連性の検出を報知するので、過去に発生したイベントと類似するイベントの発生を予測し、そのイベントが発生する前にイベント発生予測を操作者に報知することができる。
【0061】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2による管理装置(成形機管理システム7)を含む射出成形システムを示す説明図である。
図7に示すように、本実施の形態2の射出成形システムは、複数の成形セル1、複数の成形機制御装置2、ネットワーク3、複数のカメラ4、画像管理サーバ5、検査装置6及び成形機管理システム7を含んでいる。成形セル1、成形機制御装置2、ネットワーク3、カメラ4、画像管理サーバ5及び検査装置6については、実施の形態1で説明した通りである。
【0062】
成形機管理システム7は、ネットワーク3を介して、成形セル1、成形機制御装置2、ネットワーク3、カメラ4、画像管理サーバ5及び検査装置6に接続されており、複数の射出成形機10及び付属機器11の動作を監視及び制御するためのシステムである。成形機管理システム7は、例えばプログラムに基づき演算処理を行うコンピュータ及び/又は専用回路等の装置によって構成され得る。成形機管理システム7を構成するハードウェアの数及び位置は任意である。
【0063】
本実施の形態2の成形機管理システム7は、複数の成形セル1に含まれる機器のうちそれぞれの少なくとも射出成形機10の管理を行うため管理装置を構成する。本実施の形態2のように成形機管理システム7が複数の成形セル1にわたる管理を行うため管理装置を構成するとき、成形機制御装置2は、実施の形態1で説明したように1つの成形セル1における管理を行うための管理装置を構成してもよいし、例えば記憶部22等の管理装置としての少なくとも一部の機能を有していなくてもよい。
【0064】
次に、
図8は、
図7の成形機管理システム7を示すブロック図である。
図8に示すように、本実施の形態の成形機管理システム7は、異常検出部70、操作入力部71、記憶部72、撮像制御部73及び画像解析部74を含んでいる。
【0065】
これら異常検出部70、操作入力部71、記憶部72、撮像制御部73及び画像解析部74は、実施の形態1の異常検出部20、操作入力部21、記憶部22、撮像制御部23及び画像解析部24と基本的に同様である。
【0066】
但し、成形機管理システム7の異常検出部70は、各成形セル1に含まれる機器の動作異常を検出できる。操作入力部71は、各成形セル1の機器に対する操作者の操作の入力を受け付けることができる。
【0067】
記憶部72は、成形セル1毎に成形セル1のイベントに関連付けて画像情報を記憶することができる。操作者は、成形機管理システム7を操作することにより、任意の成形セル1のイベントととともに、そのイベントに関連する画像情報を確認することができる。これにより、イベントの発生状況をより確実かつより容易に把握することができる。
【0068】
撮像制御部73は、いずれかの成形セル1のイベントが発生した際に、そのイベントの内容に基づき、その成形セル1を含む領域を撮像するカメラ4の動作を制御する。
【0069】
画像解析部74は、画像情報を解析する。記憶部72は、成形セル1のイベントに関連付けて、画像解析部74の解析により得られた情報を成形セル1毎に記憶することができる。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0070】
このように、成形機管理システム7(管理装置)により複数の成形セル1の管理を行ってもよい。
【0071】
次に、
図9は、
図1及び
図7の金型装置110及び射出成形機10の一例を示す部分断面図である。
図1及び
図7の金型装置110及び射出成形機10は、
図9に示すような構成を採り得る。
【0072】
金型装置110は、図示の例では、固定金型110a、可動金型110b及び可動部材110cを有している。固定金型110a及び可動金型110bは、型締状態で内側(互いの間に)にキャビティを区画形成する金型である。可動金型110bは、固定金型110aに対して近づく方向及び離れる方向に変位可能に設けられている。可動部材110cは、後述のエジェクタ装置400により変位されて成形品を押し出して取り出すエジェクタピン等により構成されるものである。この金型装置110は、主に固定金型110aと可動金型110bの二つに分割された2プレート金型と称され得るものであるが、さらにスライド型ないしスライドコアもしくはストリッパープレートを有して三つに分割された3プレート金型とすることも可能である。金型装置110は、製造しようとする成形品の形状等に応じて適宜、射出成形機10に取り付けられ、また交換され得るものである。ここでは、金型装置110は射出成形機10の一部とはみなさない。
【0073】
射出成形機10は、射出装置100、移動装置200、型締装置300及びエジェクタ装置400を有している。
【0074】
(射出装置)
射出装置100は、成形材料を溶融させて金型装置110内に向けて射出するための装置である。射出装置100は主に、シリンダ101、スクリュ102、ヒータ103及びモーターボックス104を備える。
【0075】
以下、前方側及び後方側との用語を用いて各構成の位置を説明することがある。これら前方側及び後方側との用語は後述する固定プラテン301aを基準とする用語であり、固定プラテン301aに接近する向きを前方側とし、固定プラテン301aから離隔する向きを後方側とする。例えば、
図9において固定プラテン301aの右側に位置する射出装置100について見ると、固定プラテン301aに接近する左向きが前方側となり、固定プラテン301aから離隔する右向きが後方側になる。
【0076】
シリンダ101は、金型装置110に向けて延びる筒状の部材である。シリンダ101の断面形状は、円形であることが好ましいが、他の形状としてもよい。シリンダ101には、供給口101a及びノズル101bが設けられている。供給口101aは、成形材料をシリンダ101内に投入するためのホッパーが取り付けられ得る開口である。供給口101aは、シリンダ101の後方側かつモーターボックス104の手前に配置され得る。供給口101aの近傍には水冷等による水冷シリンダ101cを設けることができる。ノズル101bは、金型装置110に近接する先端部に設けられた開口である。ノズル101bの横断面積は、シリンダ101の後方側の横断面積よりも小さくされている。
【0077】
スクリュ102は、シリンダ101の内部に挿通された長手状の部材である。スクリュ102の中心軸線は、シリンダ101の中心軸線と平行に延在されていることが好ましい。スクリュ102の周囲にはフライトが螺旋状に設けられている。スクリュ102の回転に応じて成形材料がシリンダ101の先端部に送られ得る。
【0078】
スクリュ102の先端側には、外径が部分的に小さくされた括れ部が設けられている。括れ部の周囲には、スクリュ102とともに前進及び後退可能な逆流防止リング102aが配置されている。逆流防止リング102aは、シリンダ101の前方側に送られた成形材料の後方側への逆流を防止することができる。逆流防止リング102aは、たとえば、逆流防止リング102aより前方側又は後方側に位置する成形材料から受ける圧力に応じて、スクリュ102に対して前後に変位可能とされており、それにより後方側から前方側に向かう成形材料の流れのみを許容する。
【0079】
ヒータ103は、シリンダ101の外周を取り囲んで配置されている。ヒータ103は、ノズル101bの周囲を含むシリンダ101の周囲に配置されている。ヒータ103は、バンド状等の形状を採り得る。ヒータ103は、軸線方向に一体に形成されてもよいが、図示のように軸線方向(
図9の左右方向)に互いに分割された複数のヒータ部分を有していてもよい。ヒータ部分の位置毎に、シリンダ101の内部を異なる温度で加熱してもよい。各ヒータ部分には、温度センサー103aを設けることができる。
【0080】
モーターボックス104は、シリンダ101及びスクリュ102の後方側に配置されている。図示は省略するが、モーターボックス104内には、シリンダ101の先端部に所定の量の成形材料を充満させるため、スクリュ102を中心軸線周りに回転させる計量モーターや、金型装置110に接近する方向及び金型装置110から離れる方向の各方向へのスクリュ102の前進及び後退変位を行う射出モーター、スクリュ102が成形材料から受ける圧力を検出する圧力検出センサー等が配置されている。
【0081】
なお、この射出成形機10はインラインスクリュ式のものであるが、可塑化シリンダ及び可塑化スクリュと、射出シリンダ及び射出プランジャーとに構造及び機能上分離させたプリプラ式の射出成形機とすることも可能である。
【0082】
(移動装置)
移動装置200は、射出装置100を金型装置110に対して前進・後退変位させるための装置である。移動装置200は、たとえば射出装置100のモーターボックス104の下部等に設けられ、後述の固定プラテン301aに対して射出装置100を前進及び後退変位させる進退駆動機構である。
【0083】
移動装置200を構成する進退駆動機構としては種々の機構を採用することができるが、図示の移動装置200は、油圧等の液圧ポンプ201と、液圧ポンプ201を作動させる電動等によるポンプ作動用モーター202と、液圧ポンプ201から作動液が供給されて、先端が固定プラテン301aに固定されたピストンロッドを押出・引込運動させる複動型の液圧シリンダ203とを含んでいる。
【0084】
この移動装置200は、スライドベース204及びガイド205をさらに含む。スライドベース204には、上述の液圧ポンプ201、ポンプ作動用モーター202及び液圧シリンダ203が取り付けられている。ガイド205は、フレームFr上に敷設されており、スライドベース204の直線運動を案内することができる。スライドベース204及びガイド205により、スライドベース204の上部に載置された射出装置100の進退変位を実現する。
【0085】
移動装置200により、射出装置100を金型装置110から離隔させたり、射出装置100を金型装置110に接近させて、射出装置100のシリンダ101のノズル101bを所定の圧力で金型装置110に押し付ける、いわゆるノズルタッチを行ったりすることが可能になる。
【0086】
(型締装置)
型締装置300は、金型装置110を型締状態と型開状態との間で開閉させるための装置である。型締装置300は、金型装置110の固定金型110aに対して可動金型110bを変位させて金型装置110を開閉し、金型装置110を型締状態、型閉状態または型開状態とする。
【0087】
この射出成形機10の型締装置300は、主として、プラテン301及びプラテン稼働機構302を有している。
【0088】
プラテン301は、金型装置110を両側から挟んで配置されている。プラテン301は、射出装置100と金型装置110との間に位置しフレームFrに対して固定された固定プラテン301aと、固定プラテン301aとの間に金型装置110を隔てて位置し固定プラテン301aに対して接近・離隔変位可能な可動プラテン301bとを含む。固定プラテン301aには、可動プラテン301bの変位をガイドするための一本又は複数本のタイバー301cが取り付けられている。金型装置110の固定金型110aは、固定プラテン301a側に取り付けられている。可動金型110bは、可動プラテン301b側に取り付けられている。
【0089】
固定プラテン301aに対して可動プラテン301bが離隔する位置では、金型装置110の可動金型110bが固定金型110aから開いた型開状態となる。この離隔位置から可動プラテン301bを固定プラテン301aに向けて接近させることで、可動金型110bが固定金型110aに対して閉じた型閉状態となる。型閉状態からさらに可動プラテン301bを固定プラテン301aにて接近させることで、可動金型110bが固定金型110aに対して押し付けられた型締状態となる。
【0090】
なお、型締装置300の固定プラテン301aを除く大部分及び、後述のエジェクタ装置400は、
図9において固定プラテン301aの左側に位置するので、型締装置300のその大部分及びエジェクタ装置400について見れば、固定プラテン301aに接近する右向きが前方側となり、固定プラテン301aから離隔する左向きが後方側になる。
【0091】
プラテン稼働機構302は、プラテン301を稼働させるための機構である。プラテン稼働機構302は、フレームFr上で移動可能に載置されたリヤプラテン304と、リヤプラテン304上に設けた型締モーター305と、型締モーター305の回転運動を可動プラテン301bの変位方向の直線運動に変換する運動変換機構306と、運動変換機構306に伝達された力を増大させて可動プラテン301bに伝えるトグル機構307とを備える。
【0092】
このうち、運動変換機構306は、回転運動を直線運動に変換できる種々の機構とすることができるが、この例では、型締モーター305により回転駆動されるねじ軸306a及び、ねじ軸306aに羅合するナット306bを含んで構成されるものとしている。運動変換機構306をボールねじとすることも可能である。
【0093】
そして、運動変換機構306からの伝達力を増大させるトグル機構307は、リヤプラテン304及びナット306bと可動プラテン301bとをつなぐ複数のリンク307a~307cをジョイントで揺動可能に接続してなるものである。リンク及びジョイントの個数ならびにその形状は適宜変更することが可能であるが、
図9に示すところでは、ナット306bに接続されて上下方向に延びるクロスヘッド307dに、該クロスヘッド307dを隔てて上下に位置するリンク307a~307cからなる一対のリンク群が、揺動可能に接続されて設けられている。
【0094】
なお、リヤプラテン304上には、上述した型締モーター305の他、型厚調整モーター308も設けることができる。この型厚調整モーター308は、先述のプラテン301の各タイバー301cの延長部分に接続されたねじ軸及びナットに回転駆動力を付与することにより、固定プラテン301aと、フレームFr上で移動可能にレールを介して配置されたリヤプラテン304との間の間隔を調整するべく機能する。これにより、金型装置110の交換や、温度変化に起因する金型装置110の厚みの変更等の際にも、金型装置110に所期したとおりの型締力を与えることができるように型厚の調整を行うことができる。図示は省略するが、フレームFr上で固定プラテン側を移動可能とし、リヤプラテン側を固定としても、型厚の調整を実現可能である。
【0095】
図示の型締装置300は、可動プラテン301bの移動方向が水平方向と平行な横型のものであるが、該移動方向を垂直方向とした竪型のものとすることも可能である。
【0096】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置400は、型開状態の金型装置110から成形品を取り出すための装置であり、可動プラテン301bに設けられている。エジェクタ装置400は、可動プラテン301bを貫通して延びて、金型装置110のエジェクタピン等の可動部材110cを後方側から押圧するよう進退駆動されるエジェクタロッド402と、エジェクタロッド402を作動させるべく、たとえばモーター及びボールねじ等の運動変換機構を含むロッド駆動源403とを有する。
【0097】
エジェクタ装置400により、成形品の取出工程で、ロッド駆動源403により駆動されるエジェクタロッド402を前進させて、金型装置110内で可動部材110cを突き出し、金型装置110から成形品を取り出すことが可能になる。なお、可動部材110cを突き出した後は、ロッド駆動源403によりエジェクタロッド402を後退させて元の位置に戻すことができる。
【0098】
次に、
図9の射出装置100を用いる成形品の成形方法の一例を述べる。成形品の成形方法では、計量工程、充填工程、保圧工程、冷却工程及び取出工程がこの順で実施される。
【0099】
計量工程では、供給口101aからシリンダ101の内部に投入された成形材料が、シリンダ101の外周側のヒータ103による加熱の下、計量モーターで駆動されるスクリュ102の回転に基いて溶融されつつ、シリンダ101の内部で前方側に向けて送られて、シリンダ101の先端部に充満される。この際に、射出モーターによりスクリュ102が後退変位させられて、成形材料が充満される空間がシリンダ101の先端部に形成される。この計量工程は、前回の成形時の冷却工程等のタイミングで行うことができる。この計量工程が行われるとき、型締装置300を用いて金型装置110を閉じて型締状態とされる。
【0100】
充填工程では、スクリュ102が前進変位されることにより、シリンダ101の先端部の成形材料がノズル101bを経て金型装置110に向けて射出される。
【0101】
保圧工程では、スクリュ102がさらに前進変位されて射出装置100の先端部の内部にある成形材料が所定の圧力に保持される。保圧工程では、シリンダ101の先端部に残留している成形材料を通じて、金型装置110のキャビティに充填された成形材料に圧力が作用される。このとき、金型装置110のキャビティで成形材料の冷却収縮に起因して不足した成形材料が補充され得る。
【0102】
冷却工程では、金型装置110のキャビティに充填された成形材料が冷却固化されて、成形品が得られる。この冷却工程において、後続の成形品を成形するための計量工程が行われ得る。
【0103】
取出工程では、型締装置300により金型装置110が開かれることにより型開状態とされて、エジェクタ装置400により可動部材110cが移動され、金型装置110から成形品が取り出される。
【0104】
なお、実施の形態1,2では、成形機制御装置2及び/又は成形機管理システム7が管理装置を構成する(兼ねる)ように説明したが、これら成形機制御装置2及び成形機管理システム7とは別に、例えば画像管理サーバ5等、成形セル1に含まれる機器のうち少なくとも射出成形機10の管理を行うための管理装置が設けられていてもよい。画像管理サーバ5等、成形機制御装置2及び成形機管理システム7とは別の装置が管理装置を構成するとき、成形機制御装置2又は成形機管理システム7がイベントの発生を検出した際に、成形機制御装置2又は成形機管理システム7から管理装置にイベント発生情報が送信され、そのイベント発生情報に基づき、管理装置が、成形セルのイベントに関連付けて成形セルを含む領域の画像情報を記憶することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 成形セル
10 射出成形機
2 成形機制御装置(管理装置)
22 記憶部
23 撮像制御部
24 画像解析部
4 カメラ(撮像装置)
6 検査装置
7 成形機管理システム(管理装置)
72 記憶部
73 撮像制御部
74 画像解析部