(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20231128BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231128BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20231128BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20231128BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/0432
F24H1/00 631A
(21)【出願番号】P 2020075015
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-02-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年10月31日 リモコン取扱説明書(浴室リモコンFC-718-SO-FN)(台所リモコンMC-H718F-SOEN-FN)(増設リモコンSC-717EL)
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000170130
【氏名又は名称】パーパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 素生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伴野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小野 一弥
(72)【発明者】
【氏名】佐野 宏貴
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-333251(JP,A)
【文献】特開2008-215782(JP,A)
【文献】特開2014-025682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/00
H01M 8/0432
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃料を用いて発電する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールからの排熱を利用して加熱された水を蓄える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの湯温を計測する温度計と、
前記温度計により計測された湯温と上水の温度とに基づいて、蓄熱表示部への蓄熱状態表示を制御する表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部は、上水温度よりもΔT℃高い温度を第1基準温度、前記第1基準温度よりも高い温度を第2基準温度とすると、前記第1基準温度よりも低い低温表示、前記第1基準温度以上且つ前記第2基準温度以下の中温表示、及び前記第2基準温度よりも高い高温表示、の3つの蓄熱状態表示を区別して前記蓄熱表示部へ表示する、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記ΔT℃は、0℃~60℃の範囲内である、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第2基準温度は、32℃~75℃の範囲内である、
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記蓄熱表示部は、同一表示部分について色を異ならせることにより、前記蓄熱状態表示を行うこと、を特徴とする、請求項1~
請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに係り、特に、電気エネルギーと共に熱エネルギーを供給するコージェネレーションの燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池システムにおいて、燃料電池で発電すると共に、燃料電池からの排熱により水を加熱し、貯湯タンクで蓄熱を行うコージェネレーションシステムが提案されている。貯湯タンクに貯留された湯は、湯の使用量や発電状態により所定の温度以上の湯量が変化する。
【0003】
例えば、特許文献1には、温度調整スイッチでの操作に対応したレベルが表示される表示部が開示されている。しかしながら、タンク内の湯温に応じた表示は行われていない。ユーザーに対して、湯の適切な使用について指標を示すことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので有り、貯湯タンクの湯温に基づいて、ユーザーに、適切な湯の使用の指標を示すことが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムは、ガス燃料を用いて発電する燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールからの排熱を利用して加熱された水を蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの湯温を計測する温度計と、前記温度計により計測された湯温と上水の温度とに基づいて、蓄熱表示部への蓄熱状態表示を制御する表示制御部と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る燃料電池システムによれば、貯湯タンクの湯温と上水の温度とに基づいて、蓄熱表示部への蓄熱状態表示が行われる。したがって、単なる貯湯タンクの湯温だけでなく、上水と貯湯タンクの湯温とに基づいて、適切な湯の使用指標をユーザーへ示すことができる。
【0008】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムは、前記表示制御部は、上水温度よりもΔT℃高い温度を第1基準温度、前記第1基準温度よりも高い温度を第2基準温度とすると、前記第1基準温度よりも低い低温表示、前記第1基準温度以上且つ前記第2基準温度以下の中温表示、及び前記第2基準温度よりも高い高温表示、の3つの蓄熱状態表示を区別して前記蓄熱表示部へ表示する。
【0009】
請求項1に係る燃料電池システムによれば、蓄熱表示部には、低温表示、中温表示、高温表示が区別されて表示される。低温表示は、上水温度よりもΔT℃高い第1基準温度よりも低い温度に対応した表示である。中温表示は、第1基準温度以上且つ第1基準温度よりも高い第2基準温度以下の温度に対応した表示である。高温表示は、第2基準温度よりも高い温度の表示である。
【0010】
このように、温度表示を区別して行うことにより、よりわかりやすく、適切な湯の使用指標をユーザーへ示すことができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の燃料電池システムは、前記ΔT℃は、0℃~60℃の範囲内である。
【0012】
第1基準温度を、このような上水温度よりもΔT℃高い範囲内に設定することにより、蓄熱表示部に低温表示が行われている時には、蓄熱量が少なく湯の使用に適していない状態であることを示すことができる。
【0013】
本発明の請求項3に記載の燃料電池システムは、前記第2基準温度は、32℃~75℃の範囲内である。
【0014】
第2基準温度を、このような範囲内に設定することにより、蓄熱表示部に高温表示が行われている時には、蓄熱量が多く湯の使用を積極的に行うことが提案されている状態であることを示すことができる。
【0015】
本発明の請求項4に記載の燃料電池システムは、前記蓄熱表示部は、同一表示部分について色を異ならせることにより、前記蓄熱状態表示を行うこと、を特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の燃料電池システムによれば、異なる色を用いることにより、わかりやすい蓄熱状態表示を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、貯湯タンクの湯温に基づいて、ユーザーに、湯の適切な使用について指標を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図2】本実施形態に係るコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る操作リモコンの正面図である。
【
図4】本実施形態に係る蓄熱状態表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。
【0020】
図1には、本実施形態に係る燃料電池システム10の概略図が示されている。
【0021】
燃料電池システム10は、燃料電池ユニット12を備えている。燃料電池ユニット12には、貯湯タンク14が併設されており、燃料電池システム10は、所謂コージェネレーションシステムである。
【0022】
なお、本実施形態では、燃料電池ユニット12に貯湯タンク14が設けられている構成を一例としているが、燃料電池ユニット12と貯湯タンク14とは、別々のユニットであってもよい。
【0023】
燃料電池ユニット12は、コントローラ16、脱硫器20、燃料電池(FC)モジュール22、インバータ28、熱交換器30、貯湯タンク14を備えている。
【0024】
脱硫器20は、ガス供給管18から供給されるガス(例えば、都市ガス13A)に含まれている硫黄分や硫黄化合物を除去する。
【0025】
燃料電池モジュール22は、内部に改質部及び発電部を有している。改質部では、脱硫器20を経たガスが、水素を主成分とするガスに改質される。発電部では、水素を利用して発電を行う。燃料電池モジュール22の発電部からの電力は、インバータ28によって交流に変換された後、家屋48内の家電24(家庭電化製品)や照明26等の電力負荷で消費される。
【0026】
貯湯タンク14には、湯が貯留されている。当該湯は、燃料電池モジュール22から排出される高温の排ガスと熱交換器30での熱交換により加熱される。貯湯タンク14の湯は、直接または間接的に熱交換を行うことにより、家屋48の内部の給湯設備49(シャワー、風呂、シンク等)への給湯用、及び床暖房や空調設備等での熱交換用として利用される。貯湯タンク14に貯留された湯をこのように利用することにより、発電に伴って発生する熱を利用できることから、別途燃料を用いて湯を加熱し、給湯、熱交換を行う場合と比較して、省エネルギーとなる。
【0027】
(コントローラ16の構成)
【0028】
図2に示されるように、コントローラ16は、CPU34、RAM36、ROM38、ストレージ35、I/O40、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバスを備える。ROM38には、後述する蓄熱状況表示処理のプログラム、第1基準温度T1、第2基準温度T2などのデータが格納されている。
【0029】
I/O40には、燃料電池ユニット12の制御対象機器12Dが接続されている。コントローラ16の制御により、制御対象機器12Dのそれぞれの動作が制御される。また、I/O40には、リモコンパネル46、タンク温度計15、上水温度計17、が接続されている。
【0030】
リモコンパネル46は、燃料電池システム10が設置される対象の家屋48(
図1参照)の内部に設置され、利用者が燃料電池システム10に関して指令を入力するための機能や、燃料電池システム10の状態を表示する機能を有する。リモコンパネル46には、貯湯タンク14における蓄熱状態が蓄熱表示部66(
図3参照)に表示される。
【0031】
タンク温度計15は、貯湯タンク14に設けられ、貯湯タンク14に蓄えられた湯の上側の湯温を測定する。タンク温度計15で測定された温度をタンク湯温W1とする。上水温度計17は、上水の温度を測定する。ここでの上水は、貯湯タンク14へ直接供給される上水であってもよいし、貯湯タンク14の湯と熱交換により加熱される上水であってもよい。上水温度計17は、貯湯タンク14の湯により加熱される上水の温度を測定できるのであれば、上水を直接的に貯湯タンク14へ供給する配管に設けてもよいし、他の設備(例えばバックアップ給湯器)などに供給される上水の温度を測定できる箇所に設けてもよい。上水温度計17で測定された温度を上水温度W2とする。
【0032】
図1に示されるように、ガス供給管18には、マイコンメータ50が取り付けられている。マイコンメータ50の下流側には、分岐部B1が設けられ、その一方の枝管18Aが燃料電池ユニット12へガスを供給し、他方の枝管18Bが家屋48内のガス機器(コンロ52、ガスファンヒータ54等)へガスを供給する。
【0033】
マイコンメータ50は、供給するガスの流量を計測すると共に、ガスの供給における異常を監視する複数の機能(異常流出監視機能、感震機能、圧力監視機能、長時間使用監視機能、微量漏洩監視機能等)を有している。
【0034】
ここで、第1基準温度T1、第2基準温度T2、及び蓄熱状態について説明する。第1基準温度T1は、上水温度W2よりもΔT℃高い温度である。ΔT℃は、上水の予熱により得られる熱量が、当該予熱に必要なコスト(補機の消費電力)または予熱に必要なエネルギーと同程度になるように設定される。ΔT℃としては、0℃~60℃の範囲内であることが好ましい。
【0035】
また、第2基準温度T2は、第1基準温度T1よりも高い温度、且つ、給湯設定温度を出湯するための最低温度である。第2基準温度T2としては、32℃~75℃の範囲内であることが好ましい。第1基準温度T1及び第2基準温度T2は、後述する蓄熱状況表示処理での判断に用いられる。
【0036】
貯湯タンクの蓄熱状態は、リモコンパネル46の蓄熱表示部66に表示され、タンク温度計15で測定されたタンク湯温W1が、第1基準温度T1よりも低い低温表示L、第1基準温度T1以上で第2基準温度T2よりも低い中温表示M、第2基準温度T2以上の高温表示H、の3種類を区別して表示する。本実施形態では、一例として、低温表示Lを青、中温表示Mを黄、高温表示Hを赤、の色で表示する。なお、3種類の異なる蓄熱状態を、色以外の表示としてもよい。例えば、アルファベット「L、M、H」で区別してもよいし、「低、中、高」、で区別する表示としてもよい。
【0037】
図3は、本実施の形態に係るリモコンパネル46の正面図である。
【0038】
図3に示されるように、リモコンパネル46は外観が矩形状で、メインパネル56の上部には、タッチパネル部64が配置されている。
【0039】
タッチパネル部64は、時刻や運転状況、設定された数値等が表示されると共に、表示面の一部又は全部に重なるように、タッチパッド部が敷設され、ユーザーのタッチ操作を認識することができるようになっている。
図3においてメインパネル56の表示は運転状況画面の一例で有り、タッチパッド部である「画面切替」にタッチすることにより、メインパネル56を各種の別画面に切り替えることができる。
【0040】
また、タッチパネル部64よりも下側のメインパネル56は、複数の操作スイッチ群の配置領域68となっている。操作スイッチ群は、所謂ハードスイッチであり、給湯及び発電に関わる操作スイッチが配列されている。
【0041】
なお、
図3に示すリモコンパネル46は、タッチパネル部64、及び操作スイッチ群の配置位置、数、機能、形状等は、型式、年式、バージョン等によって変更される場合があり、
図3のリモコンパネル46の形状に限定されるものではない。
【0042】
次に、本実施形態の燃料電池システム10における、蓄熱状態表示処理について説明する。蓄熱状態表示処理は、燃料電池システム10の運転中、
図4に示すフローに基づいた処理が継続して行われる。
【0043】
まずステップS12で、蓄熱表示部66に低温表示Lの青色を表示し、ステップS14で、タンク湯温W1を取得してタンク湯温W1が第1基準温度T1よりも低いか否かを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS12へ戻り、低温表示Lを継続する。判断が否定された場合、すなわち、取得したタンク湯温W1が第1基準温度T1以上の場合には、ステップS16で、蓄熱表示部66に中温表示Mの黄色を表示する。
【0044】
次に、ステップS18で、タンク湯温W1を取得してタンク湯温W1が第1基準温度T1-T0℃よりも低いか否かを判断する。ここでのT0℃は、2℃~3℃程度で設定される。これにより、上水温度やタンク湯温W1に2℃~3℃程度のバラツキや温度低下があっても、蓄熱表示が維持され、安定した表示を行うことができる。
【0045】
ステップS18での判断が肯定された場合には、ステップS12へ戻り、低温表示Lを行う。
【0046】
ステップS18での判断が否定された場合には、ステップS20で、タンク湯温W1を取得してタンク湯温W1が第2基準温度T2よりも低いか否かを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS16へ戻り、中温表示Mを継続する。判断が否定された場合、すなわち、取得したタンク湯温W1が第2基準温度T2以上の場合には、ステップS22で、蓄熱表示部66に高温表示Hの赤色を表示する。
【0047】
次に、ステップS24で、タンク湯温W1を取得してタンク湯温W1が第2基準温度T2-T0℃よりも低いか否かを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS16へ戻り、中温表示Mを行う。判断が否定された場合には、ステップS22へ戻り、高温表示Hを継続する。
【0048】
本実施形態の燃料電池システム10では、タンク湯温W1だけでなく、上水温度W2を加味した温度(第1基準温度T1)に基づいて、蓄熱表示を行うので、より適切な湯の使用指標をユーザーへ示すことができる。例えば、ユーザーは、蓄熱表示部66に高温表示Hの赤色が表示されている場合には、積極的に湯を使用することが推奨される。また、蓄熱表示部66に中温表示Mの黄色が表示されている場合には、省エネルギーのまま湯の使用は可能であるが、風呂の湯張りなどの大量の湯の使用を控えることが推奨される。また、蓄熱表示部66に低温表示Lの青色が表示されている場合には、湯の使用は時間をおいて行うことが推奨される。
【0049】
なお、一般的に、給湯の際にバックアップ熱源機が単独で上水を加熱するか(A)、貯湯タンク14の湯で上水を予熱した後にバックアップ熱源機で加熱するか(B)、の制御が行われる。この場合に、タンク湯温W1と上水温度W2との温度差に応じて(A)と(B)の制御を切り替える場合には、当該温度差をΔT℃とすることにより、第1基準温度T1と連動させることができる。
【0050】
また、異なる色を用いて蓄熱表示部66に表示することにより、わかりやすい蓄熱状態表示を行うことができる。
【0051】
なお、本実施形態では、蓄熱状態を3つに区別して表示したが、2種類の区別で表示しても、4種類以上の区別で表示してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 燃料電池システム
14 貯湯タンク
16 コントローラ
22 燃料電池モジュール
W1 タンク湯温
W2 上水温度
T1 第1基準温度
T2 第2基準温度
L 低温表示
M 中温表示
H 高温表示