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特許7391764活性金属処理方法および活性金属処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】活性金属処理方法および活性金属処理装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
G21F9/30 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020093042
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188985
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金村 祥平
(72)【発明者】
【氏名】大森 孝
(72)【発明者】
【氏名】島野 国男
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-144186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性金属を溶融塩中で酸素原子を含む処理用ガスと反応させて前記活性金属を非金属形態へ転換する工程と、
前記活性金属を処理して得られる還元性ガスを空気または酸素分子を含む雰囲気中で燃焼させて前記処理用ガスに再生する工程と、
を含む、
活性金属処理方法。
【請求項2】
前記処理用ガスは、COx、SOx、NOxの少なくともいずれか1つである、
請求項1に記載の活性金属処理方法。
【請求項3】
前記活性金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属の少なくともいずれか一方である、
請求項1または請求項2に記載の活性金属処理方法。
【請求項4】
前記溶融塩は、前記活性金属よりも密度が大きいものを用いる、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の活性金属処理方法。
【請求項5】
前記活性金属よりも低い位置に存在する前記溶融塩中に設けられた導入口から前記処理用ガスを吹き込む工程を含む、
請求項4に記載の活性金属処理方法。
【請求項6】
活性金属を溶融塩中で酸素原子を含む処理用ガスと反応させて前記活性金属を非金属形態へ転換する反応容器と、
前記活性金属を処理して得られる還元性ガスを空気または酸素分子を含む雰囲気中で燃焼させて前記処理用ガスに再生するガス再生ユニットと、
を備える、
活性金属処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、活性金属処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム冷却高速炉では、冷却材として金属ナトリウムまたはナトリウムカリウム合金が用いられる。これらの金属は、熱中性子吸収断面積が小さく、かつ熱伝導性が高いため除熱性能が高いというメリットがあるが、酸素または水と激しく反応して発火または爆発するというデメリットがある。ナトリウム冷却高速炉を廃炉にする際には、多量の金属ナトリウムが発生する。ナトリウム冷却高速炉で使用されるナトリウム量は、フランスのスーパーフェニックスでは4700t、日本のもんじゅでは1520tと非常に多い。特に、金属ナトリウムは危険物(自然発火性物質および禁水性物質)であるため、廃炉時には金属ナトリウムを安定な状態に処理することが望ましい。
【0003】
ナトリウム冷却高速炉の廃炉が進んでいる国では、NOAH法と呼ばれる手法で既に多量の金属ナトリウムの処理が行われている。このNOAH法では金属ナトリウムを多量の水と反応させ、水酸化ナトリウム水溶液とし、これを中和処理して廃棄する。しかし、その際に多量の水素ガスが発生するため、爆発の危険性がある。また、多量の廃液または中和用強酸が必要なため、二次廃棄物の量が多くなってしまう。NOAH法は、原理的に単純であり使用実績もあるが、禁水性物質を水と接触させるため本質的に危険であること、多量の液体廃棄物および気体廃棄物が発生してしまうという問題がある。今後の高速炉の廃炉では、より安全で廃棄物発生量の少ない処理方法が必要である。
【0004】
このような問題を解決すべく、水を使わないで金属ナトリウムを処理する技術が提案されている。この技術では水を含まない溶融塩を反応場として用い、溶融塩中で金属ナトリウムと、処理剤である金属酸化物を以下の反応式で反応させる。なお、反応式中のMは所定の金属マテリアルである。
【0005】
2Na + MO = Na2O + M
【0006】
この反応式に従って生成されたNa2Oは、金属ナトリウムに比べ活性が低く、かつ溶融塩中に溶解されるため、廃棄物として安全に保管できる。しかしながら、処理剤として用いる金属酸化物は固体であり、溶融塩よりも密度が大きい場合には、溶融塩中に沈殿してしまい、金属酸化物が金属ナトリウムと充分に接触されないおそれがある。そこで、さらなる処理効率の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-47881号公報
【文献】特開2020-8322号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Fast Reactor Database 2006 Update (IAEA)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、溶融塩を用いて活性金属を安全に安定化させるための処理の効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る活性金属処理方法は、活性金属を溶融塩中で酸素原子を含む処理用ガスと反応させて前記活性金属を非金属形態へ転換する工程と、前記活性金属を処理して得られる還元性ガスを空気または酸素分子を含む雰囲気中で燃焼させて前記処理用ガスに再生する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態により、溶融塩を用いて活性金属を安全に安定化させるための処理の効率を向上させることができる活性金属処理技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】活性金属処理装置を示す構成図。
図2】活性金属処理方法を示す処理フロー図。
図3】実施例1の反応を示すグラフ。
図4】実施例2の反応を示すグラフ。
図5】実施例3の反応を示すグラフ。
図6】実施例4の反応を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、活性金属処理方法および活性金属処理装置の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1の符号1は、本実施形態の活性金属処理装置である。この活性金属処理装置1は、活性金属2を溶融塩3中で安定化させるための装置である。処理剤としては酸素原子を含む処理用ガス4を用いる。この処理用ガス4によって溶融塩3中で活性金属2を酸化させ、より安定な酸化物を形成させる。
【0015】
本実施形態において、安定化処理の対象となる活性金属2として金属ナトリウムを例示する。また、溶融塩3とは、高温で溶融した塩からなる液体である。溶融塩3は、金属塩を溶解させることができ、高温であるため溶質の反応速度が速い。さらに、溶融塩3は、耐放射線性が高く、不純物を除去することで再利用が可能であるという利点がある。
【0016】
溶融塩3としては、塩化ナトリウム-塩化リチウム、塩化ナトリウム-塩化カリウム、塩化ナトリウム-塩化カルシウム、または塩化ナトリウム-塩化バリウムを用いることができる。なお、これらの塩を組み合わせて用いても良い。
【0017】
活性金属2としては、アルカリ金属のナトリウム(Na)を例示する。また、その他のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を活性金属2として適用しても良い。例えば、活性金属2として、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウムを適用しても良い。なお、これらの金属の組み合わせでも良い。つまり、本実施形態の活性金属2は、アルカリ金属、アルカリ土類金属の少なくともいずれか一方である。このようにすれば、活性金属2がアルカリ金属またはアルカリ土類金属であっても、溶融塩3中であれば安全に安定化させることができる。
【0018】
活性金属処理装置1は、反応容器5とガス導入パイプ6とガス排出パイプ7とガス供給ポンプ8とガス再生ユニット9とガス収容タンク10とを備える。
【0019】
反応容器5は、活性金属2と溶融塩3を保持する。反応容器5は、容器本体とこの容器本体の開口を閉塞する蓋とで構成されている。そして、反応容器5の内部を密閉することができる。この反応容器5の内部で安定化処理が行われる。
【0020】
なお、溶融塩3は、活性金属2よりも密度が大きいものを用いる。このようにすれば、反応容器5の内部で液相の溶融塩3の層が液相の活性金属2の層よりも低い位置にできる。
【0021】
ガス導入パイプ6は、反応容器5の外部から内部に向かって延びる筒状の部材である。このガス導入パイプ6を介して反応容器5の内部に処理用ガス4が導入される。ガス導入パイプ6は、反応容器5の蓋から下方に向かって延び、その下端には、導入口11が開口されている。この導入口11は、反応容器5の内部で溶融塩3が存在する高さ位置に設けられる。つまり、溶融塩3と活性金属2の界面12よりも低い位置に導入口11が設けられる。なお、反応容器5の内部で溶融塩3が存在する位置は、投入される溶融塩3の量に応じて予め特定される。
【0022】
ガス排出パイプ7は、反応容器5の外部から内部に向かって延びる筒状の部材である。このガス排出パイプ7を介して、反応容器5の内部で発生した還元性ガス13を反応容器5の外部に排出する。ガス排出パイプ7は、反応容器5の蓋から下方に向かって延び、その下端には、排気口14が開口されている。この排気口14は、反応容器5の内部で活性金属2の液面15よりも高い位置に設けられる。反応容器5の内部の活性金属2の液面15は、投入される活性金属2の量に応じて予め特定される。
【0023】
ガス供給ポンプ8は、ガス導入パイプ6を介して処理用ガス4を反応容器5の内部に供給する。ガス供給ポンプ8が駆動されることで、導入口11から処理用ガス4が吹き込まれる。この導入口11から吹き込まれた処理用ガス4は細かい気泡となって上昇される。なお、ガス供給ポンプ8の先端に気泡を生じさせる散気装置を接続しても良い。
【0024】
ガス再生ユニット9は、ガス排出パイプ7を介して排出された還元性ガス13を処理用ガス4に再生する。ガス収容タンク10は、処理用ガス4を収容する。ガス供給ポンプ8は、ガス収容タンク10に収容された処理用ガス4を反応容器5に供給する。さらに、ガス供給ポンプ8は、ガス再生ユニット9で再生された処理用ガス4を反応容器5に供給する。
【0025】
処理用ガス4は、少なくとも酸素原子を含む酸化物ガスである。本実施形態の処理用ガス4としては、二酸化炭素(CO)を例示する。また、処理用ガス4は、二酸化硫黄(SO)でも良いし、二酸化窒素(NO)でも良い。つまり、本実施形態の処理用ガス4は、COx、SOx、NOxの少なくともいずれか1つである。このようにすれば、酸素原子を含む処理用ガス4として容易に入手することができる。なお、これらのガスの組み合わせでも良い。
【0026】
本実施形態では、煩雑な装置およびプロセスを用いずに、溶融塩3中で活性金属2(金属ナトリウム)を処理し、非金属形態である安定な化合物に転換する。発明者らが着目した酸素原子を含む処理用ガス4は、従来技術の金属酸化物に替わる新たな処理剤である。この処理用ガス4を溶融塩3中に処理用ガス4を吹き込み、活性金属2と処理用ガス4を反応させることで、活性金属2を安定な化学形態に転換する。
【0027】
図2に示すように、活性金属処理方法では、吹込工程16と安定化工程17と再生工程18とを含む。これらの工程が並列に実行される。
【0028】
吹込工程16は、反応容器5の内部で活性金属2よりも低い位置に存在する溶融塩3中に設けられた導入口11から処理用ガス4を吹き込む工程である。このようにすれば、溶融塩3中の導入口11から吹き込まれた処理用ガス4が上昇し、活性金属2と溶融塩3の界面12で活性金属2と溶融塩3と処理用ガス4が繰り返し混ざり合うようになるため、処理の効率を向上させることができる。
【0029】
安定化工程17は、反応容器5の内部で活性金属2を溶融塩3中で酸素原子を含む処理用ガス4と反応させて活性金属2を非金属形態へ転換する工程である。この安定化工程17は、まず、活性金属2と溶融塩3とが反応容器5に投入される。そして、吹込工程16により反応容器5の内部に吹き込まれた処理用ガス4により活性金属2が非金属形態に転換される。
【0030】
本実施形態では、溶融塩3が活性金属2よりも密度が大きいため、反応容器5の内部で液相の溶融塩3の層が液相の活性金属2の層よりも低い位置にできる。さらに、処理用ガス4が、活性金属2よりも低い位置に存在する溶融塩3中にガス導入パイプ6を用いて吹き込まれる。このガス導入パイプ6の導入口11から上昇する処理用ガス4の気泡が、溶融塩3と活性金属2の界面12で混ざり合い、反応が促進される。また、処理用ガス4の気泡によって、界面12にて溶融塩3と活性金属2とが混ざり合うように撹拌される。
【0031】
安定化工程17では、処理済化合物19と使用済溶融塩20と還元性ガス13が生成される。例えば、活性金属2としての金属ナトリウムを処理した場合には、処理済化合物19に酸化ナトリウムが含まれる。また、COを処理用ガス4として用いた場合には、還元性ガス13として一酸化炭素(CO)が発生する。
【0032】
再生工程18は、活性金属2を処理して得られる還元性ガス13を空気または酸素分子を含む雰囲気中で燃焼させて処理用ガス4に再生する工程である。このようにすれば、活性金属2の処理に応じて排出される還元性ガス13を処理用ガス4として再利用することができる。
【0033】
本実施形態では、活性金属2と処理剤である処理用ガス4の酸化還元反応を用いるようにし、さらに、活性金属2、溶融塩3、処理用ガス4の密度差を利用する。このようにすれば、活性金属2を、酸化物、塩化物、炭酸塩などの様々な形態に転換することができる。そして、反応効率を向上させるとともに、処理済化合物19と使用済溶融塩20の分離性を向上させることができる。
【0034】
具体的な反応の一例を説明する。なお、具体例として、活性金属2をナトリウム(Na)とし、処理用ガス4を二酸化炭素(CO)とするが、その他の物質を本実施形態に適用しても良い。
【0035】
まず、反応容器5の内部で液体として保持された溶融塩3中に活性金属2を添加する。溶融塩3としては、NaCl-CaCl、NaCl-KCl、NaCl-LiClなどを用いることができる。このとき、比重差により活性金属2は、溶融塩3よりも高い存在する。この溶融塩3中にガス導入パイプ6などを通じて処理用ガス4を吹き込む。活性金属2と処理用ガス4の酸化還元反応によって、活性金属2が非金属形態の処理済化合物19に転換される。酸化還元反応は反応式(1)で進行する。
【0036】
2Na + CO = NaO + CO (1)
【0037】
このように、金属ナトリウム(Na)は酸化ナトリウム(NaO)へと酸化され、COガスはCOガスへと還元される。
【0038】
従来技術のように、Naと固体の金属酸化物を反応させた場合には、金属酸化物が金属に還元され、溶融塩3中にとどまるが、本実施形態のように、処理用ガス4としてCOガスを用いた場合は、還元性ガス13としてCOガスが生成されるので、特別な機器を用いなくても反応容器5の外部へ連続的にCOガスを排出することが可能である。反応容器5の外部に排出されたCOガスは、ガス再生ユニット9で空気などと加熱混合すれば、燃焼反応によりCOとなるため、処理用ガス4として再利用することができる。
【0039】
また、ガス導入パイプ6の導入口11から溶融塩3中に吹き込まれたCOガスは、必ず上方向へ移動するので、溶融塩3の層とNa(活性金属2)の層の界面12において、COガスによる反応が起きる。このときに生成されるNaOは、溶融塩3の層へ溶解除去されるため、界面12では常に新しいNaの表面が形成され、COガスによる反応が継続的に進行する。
【0040】
図3は、溶融塩3として700℃のNaCl-KCl(50:50mol%)を用い、処理用ガス4にCOを用いて、金属Naを1mol処理した際の反応挙動を熱力学平衡計算により求めたグラフである。なお、グラフ中の(l)は(例えばNaCl(l))、液体であることと意味し、(g)は(例えばCO(g))、ガスであることを意味する。
【0041】
このグラフに示すように、COガスが0.6mol程度吹き込まれた辺りで、金属Naが系内から消失し、NaがNaClに転換されていることが分かる。吹き込まれたCOガスにより、反応初期ではC(炭素)が生成されるが、充分な量のCOガスが吹き込まれると、その大部分は、COおよびCOの混合ガスとなり系外へ排出される。なお、その一部は溶融塩3と反応して、NaCOとKCOが形成される。使用済溶融塩20(処理済化合物19を含む)は、NaCl-KCl-NaCO-KCOとなる。なお、使用済溶融塩20には、その他の物質が含まれる場合がある。
【0042】
図4は、溶融塩3として700℃のNaCl-CaCl(50:50mol%)を用い、処理用ガス4にCOを用いて、金属Naを1mol処理した際の反応挙動を熱力学平衡計算により求めたグラフである。
【0043】
このグラフに示すように、COガスが0.2mol程度吹き込まれた辺りで、金属Naが系内から消失し、NaがNaClに転換されていることが分かる。吹き込まれたCOガスにより、反応初期ではC(炭素)が生成されるが、充分な量のCOガスが吹き込まれると、その大部分は、COおよびCOの混合ガスとなり系外へ排出される。なお、その一部は溶融塩3と反応して、CaCOが形成される。使用済溶融塩20(処理済化合物19を含む)は、NaCl-CaCl-CaCOとなる。なお、使用済溶融塩20には、その他の物質が含まれる場合がある。
【0044】
図5は、溶融塩3として700℃のNaCl-CaCl(50:50mol%)を用い、処理用ガス4にSOを用いて、金属Naを1mol処理した際の反応挙動を熱力学平衡計算により求めたグラフである。
【0045】
このグラフに示すように、SOガスが0.2mol程度吹き込まれた辺りで、金属Naが系内から消失し、NaがNaClに転換されていることが分かる。SOは硫化物として溶融塩3中に存在するが、さらにSOガスを吹き込むと、硫化物が消失して、NaSO、CaSOといった硫酸塩が形成される。使用済溶融塩20(処理済化合物19を含む)は、NaCl-CaCl-NaSO-CaSOとなる。なお、使用済溶融塩20には、その他の物質が含まれる場合がある。
【0046】
図6は、溶融塩3として700℃のNaCl-CaCl(50:50mol%)を用い、処理用ガス4にNOを用いて、金属Naを1mol処理した際の反応挙動を熱力学平衡計算により求めたグラフである。
【0047】
このグラフに示すように、NOガスが0.4mol程度吹き込まれた辺りで、金属Naが系内から消失し、NaがNaClに転換されていることが分かる。なお、NOガスの吹き込み開始時点から、NOガスが即座に反応を開始し、NとOが生成されていることが分かる。そのため、グラフ中にNOの線が存在していない。使用済溶融塩20(処理済化合物19を含む)は、NaCl-CaCl-CaOとなる。なお、使用済溶融塩20には、その他の物質が含まれる場合がある。
【0048】
本実施形態では、活性金属2である金属ナトリウムが溶融塩3中に溶けることで、活性金属2と処理用ガス4との反応を促進することができる。仮に、活性金属2を所定の溶媒に溶かさずに処理用ガス4と反応させようとした場合、活性金属2が微細な塊となり、その塊の表面のみが反応してしまい、その内部まで反応な進まなくなる。活性金属2を溶媒に溶かすことで、常に活性金属2の分子が処理用ガス4と接触できるようになるので、反応を促進することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、活性金属処理装置1を廃棄物の処理工程の一部として用いているが、廃棄物の処理のみならず、活性金属2を再利用する処理工程の一部として用いても良い。
【0050】
また、高速炉炉心を直接冷却するナトリウムを処理する場合、ナトリウム中に放射性物質が含まれる可能性がある。そのため、活性金属処理装置1は、生体遮蔽の役割を果たす遮蔽壁をさらに備えても良い。
【0051】
なお、処理用ガス4としては、酸素ガス(酸素分子)以外のガスを用いると良い。このようにすれば、処理用ガス4が活性金属2と激しく反応してしまうことを抑制することができる。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、活性金属を溶融塩中で酸素原子を含む処理用ガスと反応させて活性金属を非金属形態へ転換する工程を含むことにより、溶融塩を用いて活性金属を安全に安定化させるための処理の効率を向上させることができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…活性金属処理装置、2…活性金属、3…溶融塩、4…処理用ガス、5…反応容器、6…ガス導入パイプ、7…ガス排出パイプ、8…ガス供給ポンプ、9…ガス再生ユニット、10…ガス収容タンク、11…導入口、12…界面、13…還元性ガス、14…排気口、15…液面、16…吹込工程、17…安定化工程、18…再生工程、19…処理済化合物、20…使用済溶融塩。
図1
図2
図3
図4
図5
図6