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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】耐層剥離性ガラス製容器の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020105942
(22)【出願日】2020-06-19
(62)【分割の表示】P 2018136482の分割
【原出願日】2013-11-26
(65)【公開番号】P2020147500
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-07-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】61/731,767
(32)【優先日】2012-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/088,556
(32)【優先日】2013-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ポール スティーヴン ダニエルソン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アンソニー シャウト
(72)【発明者】
【氏名】サラ ジーン シック
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】増山 淳子
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128439(JP,A)
【文献】特開2011-178642(JP,A)
【文献】特開2008-115028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J1/00-19/06
C03B23/00-35/26
C03B40/00-40/04
C03C15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製容器の形成方法であって、
内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程であって、前記サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分が前記サイドウォールの中間点に比して永続性のある層不均質性を有する内部表面層を有し、前記内部表面層が前記サイドウォールの前記中間点と比較して貧シリカ性でありかつ富ホウ素領域を含む工程、および
前記サイドウォールの被改質内部表面が、前記被改質内部表面の下方10nmから前記サイドウォールの肉厚部中に延在する内部領域を有するよう、前記サイドウォールの前記内部表面から前記内部表面層をフッ化水素酸と鉱酸と、キレート化剤よび界面活性剤の少なくとも一つを含むエッチング剤により除去する工程であって、前記内部領域が、前記被改質内部表面が層剥離に対して耐性であるよう、前記サイドウォールの前記中間点に比して永続性のある層均質性を有する工程、
を含み、
前記内部表面層が除去された後において、前記内部領域における各構成成分の層濃度の極値が、前記サイドウォールの前記肉厚部の中間点における同一の構成成分のバルク濃度の92%以上、かつ、108%以下である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガラス製容器が成形されたままの状態である場合、前記内部表面層における各構成成分の層濃度の極値が、前記サイドウォールの中間点における同一の構成成分のバルク濃度の80%未満または120%超であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイドウォールの前記被改質内部表面が、前記ガラス製容器の前記被改質内部表面の全体にわたって、前記ガラス製容器の前記被改質内部表面から10nmから50nmの深度まで延在する表面領域を備え、
前記永続的層不均質性が除去された後において、前記ガラス製容器の前記被改質内部表面上の独立した点について、前記独立した点における前記表面領域中の前記ガラスの構成成分の各々の表面濃度の極値が、前記ガラス製容器の前記被改質内部表面上の任意の第2の独立した点における前記表面領域中の同一の構成成分の70%以上、かつ、130%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
外表面層を前記サイドウォールの外表面から除去する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記内部表面層が除去された後、前記ガラス製容器が10以下の層剥離係数を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラス製容器が、ASTM規格E438-92に準拠したType I、クラスAまたはType I、クラスBガラスから形成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被改質内部表面の表面積10,000μm当たりの平均山対谷粗さが1μm未満であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本明細書は、共に本明細書において参照により援用される、2012年11月30日に出願され、「Glass Containers With Improved Attributes」と題された米国仮特許出願第61/731,767号、および、2013年11月25日に出願され、「Methods For Forming Delamination Resistant Glass Containers」と題された米国仮特許出願第14/088,556号に対する優先権を主張するものである。また、本願は、2018年7月20日に、特願2015-545160の分割出願として出願された特願2018-136482号の分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、一般に、ガラス製容器の形成方法に関し、より具体的には、ガラス製容器が層剥離に耐性であるようなガラス製容器の形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、ガラスは、他の材料に対するその気密性、光学的透明性および優れた化学的耐久性のために、医薬品をパッケージングするための好ましい材料として用いられている。特に、医薬品のパッケージングに用いられるガラスは、中に入れられる医薬品組成物の安定性に影響を及ぼすことがないよう十分な化学的耐久性を有していなければならない。好適な化学的耐久性を有するガラスは、化学的耐久性に関して実績を有する、ASTM規格E438.92「Type IA」および「Type IB」ガラス組成物におけるガラス組成物を含む。一般的な用語において、化学的に耐久性であるガラスは、溶液に対してガラスが長期間にわたって曝露された場合においても構成成分がガラスから溶出しないガラスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学的耐久性を有しているために、Type IAおよびType IBガラス組成物が通例医薬品のパッケージに用いられるが、これらは、医薬品溶液に曝露された後に、医薬品パッケージの内表面においてガラス微粒子の脱落または「層剥離」が生じる傾向といった数々の不具合を有するものである。
【0005】
従って、層剥離の発生傾向が低い代替的なガラス製容器に対する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、ガラス製容器の形成方法は、内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程を含み得る。サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分は、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層不均質性を有する内部表面層を有し得る。ガラス製容器の内部表面層は、サイドウォールの被改質内部表面が、被改質内部表面の下方約10nmからサイドウォールの肉厚部中に延在する内部領域を有するよう、サイドウォールの内部表面から除去され得る。内部領域は、被改質内部表面が層剥離に対して耐性であるよう、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層均質性を有し得る。
【0007】
他の実施形態において、ガラス製容器の形成方法は、内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程を含み得る。サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分は、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層不均質性を有する内部表面層を有し得る。サイドウォールの内部表面は、サイドウォールの被改質内部表面が、被改質内部表面の下方約10nmからサイドウォールの肉厚部中に延在する内部領域を有するよう、エッチングされて内部表面層が除去される。内部領域は、被改質内部表面が層剥離に対して耐性であるよう、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層均質性を有し得る。
【0008】
他の実施形態において、ガラス製容器の形成方法は、サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分が内部表面層を有するよう、内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程を含む。ガラス製容器が成形されたままの状態である場合、内部表面層における各構成成分の層濃度の極値は、サイドウォールの中間点における同一の構成成分のバルク濃度の約80%未満または約120%超である。内部表面層は、サイドウォールの被改質内部表面がサイドウォールの肉厚部中に延在する内部領域を有するよう、サイドウォールの内部表面から除去される。内部表面層が除去された後、内部領域における各構成成分の層濃度の極値は、サイドウォールの肉厚部の中間点において同一の構成成分のバルク濃度の約92%以上、かつ、約108%以下である。
【0009】
本明細書に記載のガラス製容器の追加の特性および利点が以下の発明を実施するための形態に記載されており、これらは、この記載によりある程度において当業者とって容易に明らかとなるか、または、以下の発明を実施するための形態、特許請求の範囲および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態の実施によって、当業者により認識されることとなる。
【0010】
前述の概要および以下の発明を実施するための形態は共に種々の実施形態を記載するものであり、特許請求されている主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供するものであることが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、種々の実施形態の理解をさらに深めるために含まれており、この明細書に組み込まれていると共にその一部を構成するものである。図面は、本明細書に記載の種々の実施形態を図示するものであり、説明を伴うことにより、特許請求されている主題の原理および作用の説明に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書に記載の実施形態の1つ以上に係るガラス製容器、具体的にはガラスバイアルの断面を概略的に示す。
図2】永続的層不均質性を有する内部表面層を除去する前における図1に示すガラス製容器のサイドウォールの一部分を概略的に示す。
図3】永続的層不均質性を有する内部表面層を除去した後における図1に示すガラス製容器のサイドウォールの一部分を概略的に示す。
図4】永続的層不均質性を有する内部表面層を除去した後における図1に示すガラス製容器のサイドウォールの一部分を概略的に示す。
図5】異なるType IBガラスから形成され、異なるエッチング剤でエッチングされたガラス製容器に係るエッチング時間(x軸)に応じた重量損失(y軸)を図示する。
図6A】永続的層不均質性を有する内部表面層が存在していることを示す染色を伴うガラスバイアルの写真である。
図6B】エッチング処理およびメチレンブルー染色後のガラスバイアルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、添付の図面に例を図示した、層剥離に対して向上した耐性を有するガラス製容器の形成方法に係る種々の実施形態をより詳細に説明する。同一または類似の部品の参照には、可能な場合には常に図面全体を通して同一の符号を使用する。一実施形態において、ガラス製容器の形成方法は、内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程を含み得る。サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分は、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層不均質性を有する内部表面層を有し得る。ガラス製容器の内部表面層は、サイドウォールの被改質内部表面が、被改質内部表面の下方約10nmからサイドウォールの肉厚部中に延在する内部領域を有するよう、サイドウォールの内部表面から除去され得る。内部領域は、被改質内部表面が層剥離に対して耐性であるよう、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層均質性を有し得る。層剥離に対して耐性であるガラス製容器の形成方法、および、ガラス製容器の特性を、添付の図面を特定的に参照して、本明細書においてより詳細に説明する。
【0013】
本明細書において用いられるところ、「化学的耐久性」という用語は、特定の化学的条件に曝露された場合における劣化に対するガラス組成物の耐性能を指す。具体的には、本明細書に記載のガラス組成物の化学的耐久性は、3種の確立された材料テスト規格:2001年3月付けの「Testing of glass-Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid-Method of test and classification」と題されたDIN 12116;「Glass--Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali--Method of test and classification」と題されたISO 695:1991;「Glass--Hydrolytic resistance of glass grains at 121 degrees C--Method of test and classification」と題されたISO 720:1985;および、「Glass-Hydrolytic resistance of glass grains at 98 degrees C--Method of test and classification」と題されたISO 719:1985に従って評価され得る。各規格および各規格における分類は本明細書においてさらに詳細に説明されている。あるいは、ガラス組成物の化学的耐久性は、ガラス表面の耐久度を評価する、「Surface Glass Test」と題されたUSP<660>、および/または、「Glass Containers For Pharmaceutical Use」と題されたヨーロッパ薬局方3.2.1に従って評価され得る。
【0014】
医薬品組成物を入れるための従来のガラス製容器またはガラスパッケージは、一般に、化学的耐久性を示すと共に熱膨張が少ないことが知られている、Type IBアルカリホウケイ酸ガラスなどのガラス組成物から形成されている。アルカリホウケイ酸ガラスは良好な化学的耐久性を示す一方で、ガラス製容器に含まれる溶液中に分散する富シリカガラスフレークが容器製造業者によって観察されている。この現象は層剥離と称されている。層剥離は、特に、長期間(数ヶ月から数年)にわたって、溶液がガラス表面に直接接触して保管されている場合に生じるものである。従って、良好な化学的耐久性を示すガラスは、必ずしも層剥離に対して耐性ではない場合がある。
【0015】
層剥離とは、一連の浸出、浸食および/または風化反応を経てガラスの表面からガラス粒子が放出される現象を指す。普通、このガラス粒子は、パッケージに含まれる溶液中への変性剤イオンの浸出により、パッケージの内表面からもたらされるシリカに富むガラスフレークである。これらのフレークは、一般に、厚さが約1nm~約2μmであり、幅が約50μmを超えるものであり得る。これらのフレークは主にシリカからなるため、フレークは、一般に、ガラスの表面から放出された後、さらに分解することはない。
【0016】
従前においては、層剥離は、ガラスを容器形状に再成形する際に用いられる高温にガラスが曝露される場合にアルカリホウケイ酸ガラスにおいて生じる相分離が原因であると仮説が立てられていた。
【0017】
しかしながら、現在においては、ガラス製容器の内表面からの富シリカガラスフレークの層剥離は、形成されたままの状態にあるガラス製容器の組成上の特徴が原因であると考えられている。具体的には、アルカリホウケイ酸ガラスのシリカ含有量が高いために、ガラスの溶融温度および成形温度は比較的高いものとなる。しかしながら、ガラス組成物中のアルカリおよびホウ酸塩成分は、これよりもかなり低い温度で溶融および/または揮発する。特に、ガラス中のホウ酸塩種は揮発性が高く、ガラスの成形および再成形に必要とされる高温ではガラスの表面から気化してしまう。
【0018】
具体的には、ガラス管などのガラスストックは、高温で、および、火炎中においてガラス製容器に再成形される。器具速度が高い場合には高い温度が必要とされ、これにより、ガラスの表面の一部からの揮発性ホウ酸塩種の気化が増加してしまう。この蒸発がガラス製容器の内部空間中で生じた場合、揮発したホウ酸塩種はガラス製容器表面の他の領域に再付着して、特にガラス製容器内部の近表面領域(すなわち、ガラス製容器の内表面における領域またはガラス製容器の内表面に隣接する領域)に対し、ガラス製容器表面における組成不均質性を生じさせてしまう。
【0019】
図1を一例として参照すると、医薬品組成物を保管するためのガラス製容器などのガラス製容器が、断面で概略的に図示されている。ガラス製容器100は、一般に、ガラス本体102を有するガラス物品を備える。ガラス本体102は内部表面104と外部表面106との間に延在するものであり、全体で内部空間108を内包する。図1に示されているガラス製容器100の実施形態において、ガラス本体102は、一般に、壁部分110および床部分112を備える。壁部分110および床部分112は、一般に、約0.5mm~約3.0mmの範囲内の肉厚部を有し得る。壁部分110はヒール部分114を介して床部分112に続いている。内部表面104および床部分112はコーティングされておらず(すなわち、これらは、無機コーティングまたは有機コーティングのいずれをも含んでいない)、従って、ガラス製容器100の内部空間108の中に保管されている内容物はガラス製容器100を形成するガラスと直接接触している。ガラス製容器100は特定の形状(すなわち、バイアル)を有するものとして図1に図示されているが、ガラス製容器100は、特に制限されないが、バキュテナー、カートリッジ、シリンジ、シリンジバレル、アンプル、ボトル、フラスコ、小ビン、管、ビーカ等を含む他の形状を有していてもよいことが理解されるべきである。
【0020】
本明細書において記載されているとおり、ガラス製容器100は、ガラス管を容器の形状に変形させることにより形成され得る。例えば、ガラス管の一端を加熱してガラス管を塞いで容器100の底または床部分112を形成する際、ホウ酸塩種および/またはアルカリ種等などの揮発性の高い種が管の底部分から蒸発して、管における他の箇所に再度付着してしまう場合がある。容器のヒールおよび床部分からの物質の蒸発が特に顕著であるが、これは、容器のこれらの領域は再成形される程度が最も大きく、従って、最も高い温度に曝露されるためである。その結果、床部分112などのより高い温度に曝露される容器の領域は、富シリカ表面を有し得る。壁部分110などの、揮発した種が付着し易い容器の内部表面104の他の領域は、揮発した種の凝縮により形成された内部表面層105(図2に概略的に図示されている)を有し得、従って、表面は貧シリカ性である。例えば、ホウ酸塩種の場合、ガラス組成物の徐冷点よりも高いが再成形中にガラスが供される最高温度よりも低い温度でホウ素が付着し易い領域では、ガラス表面へのホウ素の取り込みが生じる可能性がある。
【0021】
ここで図1および2を参照すると、図2は、揮発した種が付着している内部表面層105を含むガラス製容器100の一部分の内部表面104を概略的に示す。内部表面層105の組成は、壁部分110の中間点MPなどの壁部分における深層部のガラスの組成とは異なる。具体的には、図2は、図1に示すガラス製容器100の壁部分110の部分的な断面を概略的に示す。ガラス製容器100のガラス本体102は、ガラス製容器100の内部表面104から壁部分110の肉厚部中に、ガラス製容器の内部表面104を基準とした深度DSLまで延在する内部表面層105を有する。内部表面層105中のガラス組成は、壁部分の中間点MPにおけるガラスに対する永続的層不均質性であり、従って、内部表面層105中のガラスの組成は、壁部分110の中間点MPにおけるガラスとは異なるものであることが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは少なくとも約30nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは少なくとも約50nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは少なくとも約100nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは少なくとも約150nmである。いくつかの他の実施形態において、内部表面層の厚さTSLは少なくとも約200nm、または、さらには約250nmである。いくつかの他の実施形態において、内部表面層の厚さTSLは少なくとも約300nm、または、さらには約350nmである。さらに他の実施形態において、内部表面層の厚さTSLは少なくとも約500nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層は、少なくとも約1μm、または、さらには少なくとも約2μmの厚さTSLに延在し得る。
【0022】
本明細書に記載の実施形態において、「永続的層不均質性」という句は、内部表面層105中のガラス組成物の構成成分(例えば、SiO、Al、NaO等)の濃度が、ガラス本体の肉厚部の中間点(すなわち、ガラス本体を内部表面104と外部表面106とに等分する中間線MPに沿った点)における同一の構成成分の濃度とは、ガラス製容器中に含まれる溶液に対する長期にわたる曝露によりガラス本体の層剥離が生じることとなるであろう程度に異なっていることを意味する。本明細書に記載の実施形態において、ガラス本体の内部表面層における永続的層不均質性は、内部表面層105中のガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値(すなわち、最低または最大)が、ガラス製容器100が成形されたままの状態である場合において、ガラス本体の肉厚部の中間点における同一の構成成分の約92%未満または約108%超であるようなものである。他の実施形態において、ガラス本体の内部表面層105における永続的層不均質性とは、内部表面層105中のガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値が、ガラス製容器100が成形されたままの状態である場合において、ガラス本体の肉厚部の中間点における同一の構成成分の約90%未満または約110%超であるようなものである。さらに他の実施形態において、ガラス本体の内部表面層105における永続的層不均質性とは、内部表面層105中のガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値が、ガラス製容器100が成形されたままの状態である場合において、ガラス本体の肉厚部の中間点における同一の構成成分の約80%未満または約120%超であるようなものである。いくつかの実施形態において、永続的層不均質性においては、約2mol.%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分は含まれない。永続的層不均質性はまた、ガラス組成物中に存在し得るすべての水を含まない。
【0023】
本明細書において用いられるところ、「成形されたままの状態」という用語は、ガラス製容器がガラスストックから成形された後であるが、イオン交換強化、コーティング、硫酸アンモニウム処理、酸エッチングおよび/またはいずれかの他の表面改質などのいずれかの追加の処理工程に容器を供する前のガラス製容器100の組成を指す。本明細書に記載の実施形態において、ガラス組成物中の構成成分の層濃度は、動的二次イオン質量分光(「D-sims」)を用いて関心領域におけるガラス本体の肉厚部中から組成物サンプルを採集することにより測定される。本明細書に記載の実施形態において、組成物プロファイルは、ガラス本体102の内部表面104の領域からサンプルされる。サンプルされた領域は1mmの最大面積を有する。この技術では、サンプル領域について、ガラス本体の内部表面からの深さに応じたガラス中の種の組成プロファイルが得られる。
【0024】
ガラス製容器がホウケイ酸ガラス組成物(Type IBガラス組成物など)から形成されている場合、揮発性種が付着した内部表面層105の存在はまた、定性的に確認され得る。具体的には、ガラス製容器100に、メチレンブルー染料溶液を充填し得る。メチレンブルー染料はガラス表面の富ホウ素領域と反応して化学的に結合し、この領域を視認可能に青色に染色する。好適なメチレンブルー染料溶液としては、特に制限されないが、メチレンブルーの1%水溶液が挙げられ得る。
【0025】
この付着した揮発した種の内部表面層105が内部表面104に残っていると、容器中に含まれる溶液によって付着した揮発した種が内部表面層105から浸出され得る。これらの揮発した種がガラスから浸出されるに伴って、高シリカガラスネットワーク(ゲル)が内部表面104に残ることとなり、これにより水和中に膨潤および歪みが生じて、最終的には、表面から剥落してしまい(すなわち、ガラス製容器100の内部表面104が層剥離する)、場合によっては、ガラス製容器中に含まれる溶液中に粒状物質が混入してしまう。
【0026】
層剥離に対する従来の対処法の一つは、ガラス製容器の本体の内部表面をSiOなどの無機コーティングでコーティングすることである。このコーティングは、約100nm~200nmの厚さを有し得、容器の内容物と本体の内部表面との接触を防止すると共に、層剥離の発生を防止する。しかしながら、このようなコーティングの適用は困難であって、追加の製造および/または検査工程が必要とされ得、これにより、容器の製造に係る全体的なコストが増加してしまう。さらに、コーティングにおける不連続部を介するなどして容器の内容物がコーティングに浸透し、本体の内部表面に接触してしまうと、結果的なガラス本体の層剥離に起因してコーティングの一部分が本体の内部表面から剥離してしまう場合がある。
【0027】
本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器が層剥離する傾向は、内部表面層105をガラス製容器から除去することにより軽減され、これにより、被改質内部表面(すなわち、内部表面層を除去した後のガラス製容器の内部表面)がガラス製容器の壁部分110の中間点MPに対してより均質性の高い組成を有することとなる。ガラス製容器100は、内部表面層105が除去された後に、層剥離に対する向上した耐性を示す。
【0028】
いくつかの実施形態において、内部表面層105は、ガラス製容器の壁部分110からエッチングにより除去される。例えば、エッチング剤を内部空間108に入れ、内部表面層105を除去するのに十分な時間、内部空間中においてそのままとすればよい。好適なエッチング剤によって、内部表面層105は均一に溶解されることとなる。具体的には、ガラス製容器100は一般に、主なネットワーク形成要素としてシリカ(SiO)と、シリカネットワーク中に存在する追加の構成成分(例えば、B、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物等)とを含むガラス組成物から形成される。しかしながら、シリカおよびこれらの構成成分は、必ずしも同一の溶液中に可溶性ではないか、または、溶液中に同一の速度で溶解しない。従って、エッチング剤溶液は、内部表面層105中に含有されるガラスネットワークおよび追加の構成成分の均一な溶解を助けるために、1種以上の酸を含有し得る。
【0029】
例えば、フッ素による化学作用でシリカのSi-O-Si結合が侵蝕されるため、フッ化水素酸(HF)がシリカネットワークの溶解に利用され得る。残留する構成成分(すなわち、シリカ以外の構成成分)はHF中に難溶性であり得、その結果、ガラス製容器の内部に付着物として残留し得る。これらの付着物は顕微鏡検査下で表面形状を呈し得るが、付着物の周囲のネットワークは溶解されてしまっているため、この付着物はガラス製容器の内部に単に弱く付着しているのみであり、従って、汚染のリスクを引き起こしてしまう場合がある。これらの残留する構成成分を内部表面から除去するために、エッチング剤は、残留する構成成分を溶解する1種以上の鉱酸をさらに含んでいてもよく、これにより、ガラスネットワークと追加の構成成分との均一な溶解が促進され、ガラス製容器の内部において滑らかで平らな被改質内部表面が達成され得る。
【0030】
普通、エッチング剤は、シリカネットワークを溶解するための少なくとも0.1モル濃度のHFと、ガラスネットワーク中に存在する他の構成成分を溶解するための少なくとも1種の鉱酸とを含む。好適なエッチング剤の一例としては、特に制限されないが、1.5モル濃度のフッ化水素酸および3モル濃度の塩酸(HCl)が挙げられる。このようなエッチング剤は、典型的なType IB医薬品ガラスを4分間当たりおよそ1μm(すなわち、0.25μm/min)の速度で溶解し得る。1ミクロンの深度は、一般に、溶解されるガラス約0.24mg/cmに対応する。エッチング剤中においてガラスの溶解速度は時間と略比例し(すなわち、調和溶解)、これにより、エッチング剤で除去される層の深度を正確に制御することが可能となる。例えば、前述のHF-HCl溶液で12分間処理した場合、約3μmの厚さを有するガラスの層が除去されることとなる。本明細書に記載の実施形態において、エッチング剤は、内部表面層105を除去して永続的層不均質性を消失させ、これにより、ガラス製容器の層剥離に対する耐性が向上されるのに十分な時間の間容器の内部に入れて置かれる。いくつかの実施形態において、エッチング剤は、一般に永続的層不均質性を消失させるのに十分である少なくとも1μmの厚さ、または、さらには少なくとも1.5μmの厚さを有するガラスの層を除去するのに十分な時間の間、ガラス製容器の内部空間中に入れて置かれる。いくつかの実施形態において、エッチング剤は、少なくとも3μmの厚さのガラスの層を除去するのに十分な時間の間、ガラス製容器の内部空間に入れて置かれる。
【0031】
本明細書に記載の実施形態において、処理条件がエッチング剤におけるガラスのエッチング速度に作用する場合があり、ガラスの溶解速度を制御するよう調整され得ることが理解されるべきである。例えば、エッチング剤および/またはガラスバイアルの温度を高くすることでエッチング剤におけるガラスのエッチング速度が高くなり、これにより、処理時間が短縮され得る。あるいは、エッチング剤の濃度を高くすることでエッチング剤におけるガラスのエッチング速度が高くなり、これにより、処理時間が短縮され得る。
【0032】
特定のエッチング剤溶液が本明細書に記載されているが、ガラス製容器の内部からの永続的層不均質性を消失させるために他のエッチング剤も予期されることが理解されるべきである。例えば、エッチング剤としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸およびリン酸などの他の鉱酸、ならびに/または、種々のこれらの組合せが挙げられ得る。一実施形態において、酸溶液としては、1.5Mのフッ化水素酸と0.9Mの硫酸との混合物が挙げられ得る。これらの酸溶液は、ガラス製容器の内表面に欠乏した「浸出層」を残留させることなく、揮発し、再付着した有機溶液の薄い表皮層を効果的に除去する。他の好適なエッチング剤としては、特に制限されないが、米国特許第2,106,744号明細書、米国特許出願公開第2011/0165393号明細書、米国特許出願公開第2013/0122306号明細書および米国特許出願公開第2012/0282449号明細書に開示されているエッチング処理をガラス製容器の少なくとも内部表面のエッチングに用い得る。
【0033】
一定の事例において、エッチング剤は、キレート化を促進させると公知である化合物を含有していてもよい。キレート化剤は、溶液中に溶解している金属の活性の低減を補助するために加えられる。「金属」という用語は、エッチング剤によって溶解されるガラス状成分(Si、Al、B、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Ti、Zr等)を指す。エッチング剤中の金属の活性/濃度を低減させることにより、エッチング剤はより均一にガラス表面を溶解し、均一なガラス表面における化学特性の形成を促進する。換言すると、キレート化剤は、差別的なエッチングにより深さ方向における組成的な不均質性をもたらす非調和溶解を制限するために加えられ得る。
【0034】
同様に、ルシャトリエの原理を用いて、金属種をエッチング剤から析出させることも可能である。キレート化剤とは異なり、反応性アニオン(または官能基)をエッチング剤に添加してエッチング剤から金属種を析出させ、エッチング剤中における金属濃度を低く維持することが可能である。金属濃度が十分に低い場合、エッチング溶液により、均一なガラス表面における化学特性の形成が促進される。
【0035】
表面組成におけるいくらかの不均質性は有機および無機粒状物質の表面への付着に関連する。界面活性剤をエッチング剤溶液に添加してこれらの粒子の洗浄/除去を促進し、エッチングプロセスの一部としてガラス表面から不均質性を消失させることが可能である。界面活性剤を適切に選択することにより、不均質性および粒子濃度を低減させ、かつ、均一な表面における化学特性の形成を補助することが可能である。
【0036】
エッチング処理によりガラス製容器の内部表面から永続的層不均質性を消失させた後、容器を洗浄および乾燥させると、その後、エッチング処理による視覚的に認識可能な徴候は存在しない。しかも、エッチング処理の後、ガラス製容器の被改質内部表面は滑らかであり、かつ、未溶解のガラス構成成分の付着物が存在することにより生じるトポグラフィ変位を含む凹凸などのトポグラフィ変位を有さない。本明細書において用いられるところ、ガラス製容器の被改質内部表面は、表面積10,000μm当たりの平均山対谷粗さが1μm未満である場合、「トポグラフィ変位を有さない」とみなされる。いくつかの実施形態において、ガラス製容器の被改質内部表面は、表面積10,000μm当たりの平均山対谷粗さが100nm未満である場合に、「トポグラフィ変位を有さない」とみなされる。いくつかの他の実施形態において、ガラス製容器の被改質内部表面は、表面積10,000μm当たりの平均山対谷粗さが50nm未満である場合に、「トポグラフィ変位を有さない」とみなされる。永続的層不均質性を有する内部表面層を除去した後のガラス製容器におけるトポグラフィ変位の不在は、その後、溶液への曝露後における層剥離の存在(または不在)の定性的評価を補助し得る。例えば、層剥離を評価するための定性的技術の一つは、ガラス製容器の表面トポグラフィを溶液への曝露後に試験することである。内部表面が最初から滑らかであり、その後において、溶液への曝露後にへこみがあるように見える場合には、層剥離が生じている可能性がある。しかしながら、ガラス製容器が最初から実質的にトポグラフィ変位を有していない場合を除き、このような定性的評価を行うことは困難であり得る。
【0037】
本明細書中上記においてはガラス製容器の内部空間にエッチング剤を入れると記載されているが、他の実施形態も可能であることが理解されるべきである。例えば、ガラス製容器を、エッチング剤がガラス製容器の内部表面およびガラス製容器の外部表面の両方と直接接触するように、エッチング剤中に完全に浸漬してもよい。これにより、ガラス製容器の外部表面からガラスの層を同時に除去して、ガラス製容器の機械特性を向上させることが可能である。具体的には、スクラッチ、欠け等などの欠陥が、成形されたままの状態にあるガラス製容器の外部に生じ得る。このような欠陥は、容器を、処理器具等により機械的に取り扱うことに起因するものであり得る。これらの欠陥は「応力集中部」として作用し、かつ、亀裂発生部位となり、ガラス製容器の強度を効果的に低減させてしまう可能性がある。この実施形態において、ガラス製容器の外部表面は、ガラス製容器の壁部分の外部表面に存在する表面欠陥の深度より深い深度までエッチングされる。ガラス製容器の外表面のエッチングによって、これらの欠陥を含有するガラスの層を除去することによって欠陥の除去を可能とし、これにより、既存の欠陥に起因するガラス製容器の破壊に対する脆弱性が低減される。加えて、ガラス製容器の外表面のエッチングによって、この外表面にその後適用される、特に制限されないが、有機コーティングおよび無機コーティングを含むコーティングの固着性が向上され得る。
【0038】
ここで図1および3を参照すると、ガラス製容器から内部表面層105が除去された後、ガラス製容器は、壁、ヒールおよび床部分の各々においてガラス本体の肉厚部102にわたって均質な組成を有する。具体的には、図3は、ガラス製容器100の壁部分110の部分断面を概略的に示す。ガラス製容器100のガラス本体102は、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’の下方約10nm(図3においてDLR1と示されている)から壁部分110の肉厚部中に、ガラス製容器の被改質内部表面104’’を基準とした深度DLR2まで延在する内部領域120を有する。被改質内部表面104’’の下方約10nmから延在する内部領域は、実験アーチファクトにより、表面下方における最初の5~10nm中の組成物とは差別される。DSIMS分析の開始時において、以下の3つの問題により最初の5~10nmは分析に含まれない:外因的な炭素による表面からのイオンの変動的なスパッタリング速度、変動的なスパッタリング速度に起因する部分的な定常状態電荷の確立、および、定常状態スパッタリング条件が確立するまでの種の混合。従って、内部領域120は、DLR2-DLR1に等しい厚さTLRを有することが理解されるべきである。内部領域中のガラス組成物は、ガラス製容器100の内部空間108に入れられた溶液に対する長期にわたる曝露後において、内部領域の厚さTLRと併せて、ガラス本体の層剥離を防止するのに十分な永続的層均質性を有する。いくつかの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約100nmである。いくつかの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約150nmである。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約200nm、または、さらには約250nmである。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約300nm、または、さらには約350nmである。さらに他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約500nmである。いくつかの実施形態において、内部領域120は、少なくとも約1μm、または、さらには少なくとも約2μmの厚さTLRに延在していてもよい。
【0039】
内部領域120は、本明細書において、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’の下方10nmから壁部分110の肉厚部中に、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’を基準として深度DLR2まで延在すると上記に記載されているが、他の実施形態も可能であることが理解されるべきである。例えば、上記の実験アーチファクトにかかわらず、永続的層均質性を有する内部領域が、実際には、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’から壁部分の肉厚部中に延在し得ると仮定される。従って、いくつかの実施形態において、厚さTLRは、内部表面から深度DLR2まで延在していてもよい。これらの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約100nmであり得る。いくつかの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約150nmである。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約200nm、または、さらには約250nmである。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約300nm、または、さらには約350nmである。さらに他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約500nmである。いくつかの実施形態において、内部領域120は、少なくとも約1μm、または、さらには少なくとも約2μmの厚さTLRまで延在していてもよい。
【0040】
本明細書に記載の実施形態において、「永続的層均質性」という句は、内部領域におけるガラス組成物の構成成分(例えば、SiO、Al、NaO等)の濃度が、ガラス本体の肉厚部の中間(すなわち、ガラス本体を被改質内部表面104’’と外部表面106とに等分する中間線MPに沿った点)における同一の構成成分の濃度とは、ガラス製容器中に含まれる溶液に対する長期にわたる曝露によりガラス本体の層剥離が生じることとなるであろう程度には異なっていないことを意味する。本明細書に記載の実施形態において、ガラス本体の内部領域における永続的層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値(すなわち、最低または最大)が、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ガラス本体の肉厚部の中間点で、同一の構成成分の約80%以上、かつ、約120%以下であるようなものである。他の実施形態において、ガラス本体の内部領域における永続的層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値が、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ガラス本体の肉厚部の中間点で、同一の構成成分の約90%以上、かつ、約110%以下であるようなものである。さらに他の実施形態において、ガラス本体の内部領域における永続的層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値が、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ガラス本体の肉厚部の中間点で、同一の構成成分の約92%以上、かつ、約108%以下であるようなものである。いくつかの実施形態において、永続的層均質性は、約2mol.%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分を含まない。永続的層均質性はまた、ガラス組成物中に存在し得るすべての水を含まない。
【0041】
上記のとおり、ガラス製容器の被改質内部表面が永続的層均質性を有するよう永続的層不均質性を有する内部表面層を除去することにより、一般に、ガラス製容器の層剥離に対する耐性が改善される。具体的には、ガラス製容器を組成が均質である(すなわち、内部領域における構成成分の濃度の極値が、ガラス本体の肉厚部の中間点において、同一の構成成分の+/-20%である)内部領域を有するものとすることで、浸出されやすい可能性があるガラス組成物の構成成分の局所的な濃縮が排除され、その結果、ガラス表面からこれらの構成成分が浸出されるような場合においてもガラス製容器の内部表面からのガラス粒子の損失が軽減される。
【0042】
永続的層不均質性を有する内部表面層を除去した後、ガラス製容器は、本体の内部表面から少なくとも250nm、または、さらには少なくとも300nmの深度まで延在する実質的に単一の組成を有する。「単一の組成」という用語は、本体の一部が、被改質内部表面から本体の肉厚部中に、少なくとも250nm、または、さらには少なくとも300nmの深度まで延在するガラスが、組成が同一または異なる他の材料に適用されるコーティング材料と比して物質の単独の組成物であるという事実を指す。例えば、いくつかの実施形態において、容器の本体は、単独のガラス組成物から構成され得る。他の実施形態において、容器の本体は、本体の内部表面が、内部表面から少なくとも250nm、または、さらには少なくとも300nmの深度まで延在する単一の組成を有するよう、積層ガラスから構成され得る。ガラス製容器は、上記のとおり、被改質内部表面または被改質内部表面の下方10nmのいずれかから、少なくとも100nmの深度まで延在する内部領域を含み得る。この内部領域は永続的層均質性を有し得る。
【0043】
ここで図1および4を参照すると、永続的表面不均一性を有する内部表面層が除去された後、本明細書に記載のガラス製容器は、壁、ヒールおよび床部分を含むガラス本体102の被改質内部表面104’’全体にわたっても均質な表面組成を有する。図4は、ガラス製容器100の壁部分110の部分断面を概略的に示す。ガラス製容器100は、ガラス製容器の内部表面全体にわたって延在する表面領域130を有する。表面領域130は、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’からガラス本体の肉厚部中に、外部表面106に向かって延在する深度DSRを有する。従って、表面領域130は、深度DSRと等しい厚さTSRを有することが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、表面領域は、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’から少なくとも約10nmの深度DSRまで延在する。いくつかの他の実施形態において、表面領域130は、少なくとも約50nmの深度DSRまで延在し得る。いくつかの他の実施形態において、表面領域130は、約10nm~約50nmの深度DSRまで延在し得る。従って、表面領域130は、内部領域120よりも浅い深度まで延在するものであることが理解されるべきである。表面領域のガラス組成物は、ガラス製容器の内部空間に入れられた溶液に対する長期にわたる曝露後において、内部領域深度DSRと併せて、ガラス本体の層剥離を防止するのに十分な永続的表面均質性を有する。
【0044】
本明細書に記載の実施形態において、「永続的表面均質性」という句は、表面領域中の独立した点におけるガラス組成物の構成成分(例えば、SiO、Al、NaO等)の濃度と、表面領域中の任意の第2の独立した点における同一の構成成分の濃度とが、ガラス製容器中に含まれる溶液に対する長期にわたる曝露でガラス本体の層剥離がもたらされることとなるであろう程度には異なっていないことを意味する。本明細書に記載の実施形態において、表面領域における永続的表面均質性は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ガラス製容器の被改質内部表面104’’における独立した点について、独立した点における表面領域130中の構成成分の各々の表面濃度の極値(すなわち、最低または最大)が、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’上の任意の第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約70%以上、かつ、約130%以下であるようなものである。例えば、図3には、3つの独立した点(A、BおよびC)が壁部分110の被改質内部表面104’’上に図示されている。各々の点は、隣接する点から少なくとも約3mm離間している。点「A」における表面領域130中の構成成分の各々の表面濃度の極値は、点「B」および「C」における表面領域130中の同一の構成成分の約70%以上、かつ、約130%以下である。容器のヒール部分について言及すると、独立した点は、ヒールの頂点を略中心としていてもよく、ここで、隣接する点は、容器の床部分および容器の壁部分に沿ってヒールの頂点から少なくとも3mmの場所に位置しており、点同士の距離は、バイアルの半径およびサイドウォールの高さ(すなわち、バイアルのサイドウォールがショルダに続いている点)によって限定されている。
【0045】
いくつかの実施形態において、表面領域における永続的表面均質性は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’上の任意の独立した点に係る表面領域130中のガラス組成物の構成成分の各々の表面濃度の極値が、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’上の任意の第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約75%以上、かつ、約125%以下であるようなものである。いくつかの他の実施形態において、表面領域における永続的表面均質性は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’上の任意の独立した点に係る表面領域130中のガラス組成物の構成成分の各々の表面濃度の極値が、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’上の任意の第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約80%以上、かつ、約120%以下であるようなものである。さらに他の実施形態において、表面領域における永続的表面均質性は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’上の任意の独立した点に係る表面領域130中のガラス組成物の構成成分の各々の表面濃度の極値が、ガラス製容器100の内部表面104上の任意の第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約85%以上、かつ、約115%以下であるようなものである。本明細書に記載の実施形態において、表面領域におけるガラス組成物の構成成分の表面濃度は、光電子分光法によって計測される。いくつかの実施形態において、表面領域における永続的表面均質性は、約2mol.%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分を含まない。永続的表面均質性はまた、ガラス組成物中に存在し得るすべての水を含まない。
【0046】
永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後における、表面領域130中のガラス構成成分の表面濃度の均質性は、一般に、ガラス製容器100の被改質内部表面104’’からガラス粒子が層剥離して脱落するガラス組成物に係る傾向の指標である。ガラス組成物が表面領域130において永続的表面均質性を有する場合(すなわち、内部表面104上の独立した点における表面領域130中のガラス構成成分の表面濃度の極値が内部表面104上の任意の第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の+/-30%以内である場合)、ガラス組成物は層剥離に対する向上した耐性を有する。
【0047】
ここで、本明細書に記載のガラス製容器は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後における、層剥離に対するガラス製容器の耐性を各々が向上させる永続的層均質性および/または永続的表面均質性を有することが理解されるべきである。永続的層均質性および/または永続的表面均質性は、内部空間との境界を形成するガラス製容器の表面が層剥離に対して耐性であるよう、ガラス製容器のサイドウォール部分のみならず、ガラス製容器のヒール部分および床部分においても存在する。
【0048】
上記のとおり、層剥離は、ガラス製容器中に含まれる溶液に対する長期の曝露後における、富シリカガラスフレークのこの溶液中への放出によりもたらされ得る。従って、層剥離に対する耐性は、特定の条件下におけるガラス製容器中に含まれる溶液への曝露後における、この溶液中に存在するガラス微粒子の数によって特徴付けられ得る。層剥離に対するガラス製容器の長期耐性を評価するために、加速層剥離テストが利用された。このテストは、イオン交換および非イオン交換ガラス製容器の両方に対して行われた。このテストは、ガラス製容器を室温で1分間洗浄する工程、約320℃で1時間容器に発熱物質除去を行う工程からなった。その後、pH10の20mMグリシン水溶液をガラス製容器の8割から9割まで入れ、ガラス製容器に蓋をし、100℃まで急速に加熱し、次いで、2気圧の圧力で、1deg/minの昇温速度で100℃から121℃まで加熱する。ガラス製容器および溶液をこの温度で60分間保持し、0.5deg./minの速度で室温に冷却し、この加熱サイクルおよび保持を繰り返す。次いで、ガラス製容器を50℃に加熱し、高温条件のために10日間以上保持する。加熱後、ガラス製容器を少なくとも18インチ(45.72センチメートル)の高さからラミネートタイルフロアなどの堅固な表面上に落とし、ガラス製容器の内表面に弱く付着しているフレークまたは粒子をすべて取り除く。落下高さは、衝撃による大型のバイアルの欠損を防止するために、適切に見積もられ得る。
【0049】
その後、ガラス製容器中に含まれる溶液を分析して、1リットルの溶液当たりに存在するガラス粒子の数を判定する。具体的には、ガラス製容器からの溶液を、減圧吸引に接続したMillipore Isoporeメンブランフィルタ(Millipore #ATTP02500を部品番号AP1002500およびM000025A0でアセンブリに保持)の中心に直接注ぎ入れて、5mLを10~15秒間以内でフィルタを介して溶液をろ過する。その後、さらなる5mLの水をすすぎに用いてフィルタ媒体から緩衝剤残渣を除去した。次いで、粒状フレークを、「Differential interference contrast (DIC) microscopy and modulation contrast microscopy」,Fundamentals of light microscopy and digital imaging.New York:Wiley-Liss,pp153-168に記載されているとおり、微分干渉顕微鏡(DIC)により反射モードでカウントする。視野をおよそ1.5mm×1.5mmに設定し、50μmより大きい粒子を手作業でカウントする。各フィルタメンブランの中心において、イメージの重畳を伴わない3×3パターンで、このような測定を9回行う。フィルタ媒体のより大きな面積を分析した場合は、結果を相当面積(すなわち、20.25mm)に対して基準化することが可能である。光学的顕微鏡から回収したイメージをイメージ分析プログラム(Media Cybernetic’s ImagePro Plus version 6.1)で調べて存在するガラスフレークの数を測定しカウントする。これは以下の通り達成された:単純なグレースケールセグメント化により背景より暗く見えるイメージ中の特性のすべてをハイライトし;次いで、25マイクロメートルを超える長さを有するハイライトした特性のすべての長さ、幅、面積および周囲長を測定し;次いで、明らかにガラス粒子ではないものをすべてデータから除去し;次いで、測定データをスプレッドシートにエクスポートする。次いで、長さが25マイクロメートルを超えると共に、背景より明るい特性のすべてを抽出し、測定し;25マイクロメートルを超える長さを有するハイライトした特性のすべての長さ、幅、面積、周囲長およびX-Yアスペクト比を測定し;明らかにガラス粒子ではないものをすべてデータから除去し;ならびに、測定データをスプレッドシート中の既にエクスポートしたデータに加える。次いで、スプレッドシート中のデータを特性の長さにより仕分けし、サイズに応じてビンに分ける。報告された結果は長さが50マイクロメートルより大きい特性に関する。次いで、これらのグループの各々をカウントし、カウントをサンプルの各々について報告する。
【0050】
最低で100mLの溶液をテストする。従って、複数の小さな容器から溶液をプールしておき、溶液の総量を100mLとしてもよい。10mLを超える容積を有する容器については、テストを同一のガラス組成物から同一の加工条件下で形成した10個の容器の試験について繰り返し、粒子のカウント結果を10個の容器について平均して平均粒子カウントを判定する。あるいは、小型の容器の場合には、テストを10個のバイアルの試験について繰り返し、その各々を分析し、粒子のカウント複数の試験について平均して、試験毎の平均粒子カウントを判定する。複数の容器に係る粒子カウントの平均は、個別の容器の層剥離挙動における潜在的な違いを包含する。表1に、テストに係る容器のサンプル体積および数のいくつかの非限定的な例がまとめられている。
【0051】
【表1】
【0052】
前述のテストは、成形プロセスから容器中に存在する混入粒子、または、溶液とガラスとの反応によりガラス製容器中に含まれている溶液から析出する粒子ではなく、層剥離によりガラス製容器の内壁から脱落される粒子を識別するために用いられることが理解されるべきである。具体的には、層剥離粒子は、粒子のアスペクト比(すなわち、粒子の最大長対粒子の厚さの比、または、最大寸法対最小寸法の比)に基づいて、混入ガラス粒子とは区別され得る。層剥離では、不規則な形状を有し、典型的には約50μmを超え、度々、約200μmを超える最大長を有する粒状フレークまたは薄板が生成される。フレークの厚さは通常、約100nmを超え、約1μmもの厚さであり得る。それ故、フレークの最低アスペクト比は、典型的には約50超である。アスペクト比は、約100超、度々、約1000超であり得る。対照的に、混入ガラス粒子は、一般に、約3未満という低いアスペクト比を有することとなる。従って、層剥離に由来する粒子は、顕微鏡による観察におけるアスペクト比に基づいて、混入粒子とは区別され得る。他の一般的な非ガラス粒子は、毛髪、繊維、金属粒子、プラスチック粒子および他の汚染物を含み、それ故、検査の過程で排除される。結果の検証は、テストした容器の内部領域を評価することにより達成可能である。観察の過程において、「Nondestructive Detection of Glass Vial Inner Surface Morphology with Differential Interference Contrast Microscopy」,Journal of Pharmaceutical Sciences,101(4),2012,pages 1378-1384に記載されている表皮浸食/点食/フレーク除去の証拠が注目される。
【0053】
本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後に存在する粒子の数を利用して、テストした一連のバイアルに係る層剥離係数を確定し得る。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で10個未満であるガラス製容器の試験では、10の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で9個未満であるガラス製容器の試験では、9の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で8個未満であるガラス製容器の試験では、8の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で7個未満であるガラス製容器の試験では、7の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で6個未満であるガラス製容器の試験では、6の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で5個未満であるガラス製容器の試験では、5の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で4個未満であるガラス製容器の試験では、4の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で3個未満であるガラス製容器の試験では、3の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で2個未満であるガラス製容器の試験では、2の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で1個未満であるガラス製容器の試験では、1の層剥離係数を有するものとみなされる。本明細書に記載の実施形態において、加速層剥離テスト後の試験1回当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子を0個有するガラス製容器の試験では、0の層剥離係数を有するものとみなされる。従って、層剥離係数が低いほど、ガラス製容器の層剥離に対する耐性が良好であることが理解されるべきである。本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、10以下の層剥離係数(すなわち、3、2、1または0の層剥離係数)を有する。
【0054】
本明細書において上記の特徴(すなわち、内部表面全体および肉厚部中にわたる均質な組成、ならびに、層剥離に対する耐性)を有するガラス製容器は、本明細書に記載のとおり、永続的層不均質性を有する内部表面層をガラス製容器から除去することにより入手される。具体的には、ガラス製容器の内部表面中に延在する永続的層不均質性を有する内部表面層をガラス製容器が有する(すなわち、内部表面層の組成は壁部分の中間点におけるガラスの組成とは異なる)状態で、容器が先ずType IBガラス組成物から形成される。容器は先ず、ガラス管、ガラスシート等などのガラスストック材料を用意し、ガラス製容器の少なくとも内部表面が永続的不均一性を有する内部表面層を有することとなる状態で、従来の成形技術を用いてガラスストック材料でガラス製容器を成形する。その後、永続的層不均質性を有する内部表面層が、ガラス製容器が内部表面全体にわたり、かつ、壁部分の肉厚部を通して均質な組成を有するよう、本明細書に記載のとおりガラス製容器の内部表面から除去される。
【0055】
本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器は、「Standard Specification for Glasses in Laboratory Apparatus」と題されたASTM規格E438-92(2011)に従うType I、クラスA(Type IA)またはType I、クラスB(Type IB)ガラスに係る基準を満たすガラス組成物から形成され得る。ホウケイ酸ガラスは、Type I(AまたはB)基準を満たし、医薬品のパッケージング用としてルーチン的に用いられる。ホウケイ酸ガラスの例としては、特に制限されないが、Corning(登録商標)Pyrex(登録商標)7740、7800、Wheaton 180、200、および、400,Schott Duran(登録商標)、Schott Fiolax(登録商標)、KIMAX(登録商標)N-51A、Gerresheimer GX-51 Flint等が挙げられる。
【0056】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、ガラス本体102は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、イオン交換強化等などにより強化される。実施形態において、ガラス本体102は、ガラスの表面において、約250MPa以上、300MPa以上、または、さらには約350MPa以上の圧縮応力を有し得る。実施形態において、圧縮応力は、ガラスの表面において約400MPa以上、または、さらには、ガラスの表面において約450MPa以上であり得る。いくつかの実施形態において、圧縮応力は、ガラスの表面において約500MPa以上、または、さらには、ガラスの表面において約550MPa以上であり得る。さらに他の実施形態において、圧縮応力は、ガラスの表面において約650MPa以上、または、さらには、ガラスの表面において約750MPa以上であり得る。ガラス本体102における圧縮応力は、一般に、少なくとも約10μmの層深度(DOL)に達する。いくつかの実施形態において、ガラス本体102は、約25μm超、または、さらには約50μm超の層深度を有し得る。いくつかの他の実施形態において、層深度は、約75μm以下、または、さらには約100μm以下であり得る。イオン交換強化は、約350℃~約600℃の温度に維持した溶融塩浴において実施され得る。所望の圧縮応力を達成するために、成形されたままの状態におけるガラス製容器を、約30時間未満、または、さらには約20時間未満の間塩浴に浸漬させ得る。実施形態において、容器は、約15時間未満、または、さらには約12時間未満の間浸漬させられ得る。他の実施形態において、容器は約10時間未満の間浸漬させられ得る。例えば、一実施形態において、ガラス製容器は、ガラス組成物の化学的耐久性を維持したままに所望される層深度および圧縮応力を達成するため、約450℃の100%KNO塩浴中に、約5時間~約8時間の間浸漬される。
【0057】
ガラス製容器が形成されるガラス組成物は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ISO 720規格による判定で、化学的に耐久性であると共に劣化に対して耐性である。ISO 720規格は、蒸留水中における劣化に対するガラスの耐性(すなわち、ガラスの加水分解耐性)の基準である。要するに、ISO 720規格プロトコルでは、オートクレーブ条件(121℃、2atm)下で30分間、18MΩ水と接触させた破砕したガラス粒が利用される。次いで、溶液を希釈したHClで中性pHまで比色滴定する。次いで、中性溶液までの滴定に必要とされたHClの量を、ガラスから抽出されたNaO当量に変換し、ガラスのμg量で報告されるが、ここでは、より小さい値がより優れた耐久性を示す。ISO 720規格は個々の種類に分けられる。Type HGA1には、62μg以下の抽出されたNaO当量が規定されており;Type HGA2には、62μg超および527μg以下の抽出されたNaO当量が規定されており;およびType HGA3には、527μg超および930μg以下の抽出されたNaO当量が規定されている。本明細書に記載のガラス製容器は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ISO 720 Type HGA1の加水分解耐性を有する。
【0058】
ガラス製容器が形成されるガラス組成物はまた、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ISO 719規格による判定で、化学的に耐久性であると共に劣化に対して耐性である。ISO 719規格は、蒸留水中における劣化に対するガラスの耐性(すなわち、ガラスの加水分解耐性)の基準である。要するに、ISO 719規格プロトコルでは、2atmの圧力および98℃の温度で60分間の間18MΩ水と接触させた破砕したガラス粒が利用される。次いで、溶液を希釈したHClで中性pHまで比色滴定する。次いで、中性溶液までの滴定に必要とされたHClの量を、ガラスから抽出されたNaO当量に変換し、ガラスのμg量で報告されるが、ここでは、より小さい値がより優れた耐久性を示す。ISO 719規格は個々の種類に分けられる。Type HGB1には、31μg以下の抽出されたNaO当量が規定されており;Type HGB2には、31μg超および62μg以下の抽出されたNaO当量が規定されており;Type HGB3には、62μg超および264μg以下の抽出されたNaO当量が規定されており;Type HGB4には、264μg超および620μg以下の抽出されたNaO当量が規定されており;およびType HGB5には、620μg超および1085μg以下の抽出されたNaO当量が規定されている。本明細書に記載のガラス製容器は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、ISO 719 Type HGB1の加水分解耐性を有する。
【0059】
USP<660>テストおよび/またはヨーロッパ薬局方3.2.1テストに関して、本明細書に記載のガラス製容器は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、Type1化学的耐久性を有する。上記のとおり、USP<660>およびヨーロッパ薬局方3.2.1テストは破砕したガラス粒ではなく完全な状態のガラス製容器で実施され、従って、USP<660>およびヨーロッパ薬局方3.2.1テストは、ガラス製容器の内部表面の化学的耐久性を直接評価するために用いられ得る。
【0060】
ガラス製容器が形成されるガラス組成物はまた、DIN 12116規格による測定で、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、酸性溶液中において化学的に耐久性であると共に劣化に対して耐性である。要するに、DIN 12116規格は、計量し、次いで、相対的な量の沸騰している6Mの塩酸に6時間接触させた既知の表面積を有する研磨したガラスサンプルを利用する。次いで、サンプルを溶液から取り出し、乾燥させ、再度計量する。酸性溶液に対する曝露の最中におけるガラスの質量損失がサンプルの酸耐久性に係る指標であり、ここでは、より小さい数がより良好な耐久性を示す。テストの結果は、表面積当たりの半分の質量の単位、具体的にはmg/dmで報告されている。DIN 12116規格は個々のクラスに分かれている。クラスS1には、0.7mg/dm以下の重量損失が規定されており;クラスS2には、0.7mg/dm~1.5mg/dmの重量損失が規定されており;クラスS3には、1.5mg/dm~15mg/dmの重量損失が規定されており;および、クラスS4には、15mg/dm超の重量損失が規定されている。本明細書に記載のガラス製容器は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、DIN 12116クラスS2またはそれを超える酸耐性を有する。
【0061】
ガラス製容器が形成されるガラス組成物はまた、ISO 695規格による測定で、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、塩基性溶液中において化学的に耐久性であると共に劣化に対して耐性である。要するに、ISO 695規格は、計量し、次いで、沸騰している1M NaOH+0.5M NaCOの溶液に3時間入れた研磨したガラスサンプルを利用する。次いで、サンプルを溶液から取り出し、乾燥させ、再度計量する。塩基性溶液に対する曝露の最中におけるガラスの質量損失がサンプルの塩基耐久性に係る指標であり、ここでは、より小さい数がより良好な耐久性を示す。DIN 12116規格と同様に、ISO 695規格の結果は、表面積当たりの質量単位、具体的にはmg/dmで報告されている。ISO 695規格は個々のクラスに分かれている。クラスA1には、75mg/dm以下の重量損失が規定されており;クラスA2には、75mg/dm~175mg/dmの重量損失が規定されており;および、クラスA3には、175mg/dm超の重量損失が規定されている。本明細書に記載のガラス製容器は、永続的層不均質性を有する内部表面層がガラス製容器から除去された後において、クラスA2またはそれを超えるISO 695塩基耐性を有する。
【0062】
ISO 695、ISO 719、ISO 720またはDIN 12116に準拠した上記に言及されている分類を参照する場合、特定の分類「またはそれを超える」ガラス組成物またはガラス物品とは、ガラス組成物の性能が、特定の分類と同等またはそれを超えていることを意味すると理解されるべきである。例えば、「クラスA2」またはそれを超えるISO 695塩基耐性を有するガラス物品は、クラスA2またはクラスA1のISO 695分類を有し得る。
【実施例
【0063】
本明細書に記載の層剥離に対する向上した耐性を有するガラス製容器の実施形態を、以下の実施例によりさらに明確にする。
【0064】
実施例1
Type IB医薬品ホウケイ酸ガラスから形成されたガラス製容器のエッチング速度を測定した。各々がGerresheimerから市販されているType IB医薬品ホウケイ酸ガラスから形成された5本のガラス製容器2組(組G1およびG2)をテストした。具体的には、容器は、Gerresheimer GX-51 Flintガラス製の3mlガラスバイアルであった。各々がType IB医薬品ホウケイ酸ガラスから形成されており、Schott Glassから市販されている5本のガラス製容器2組(組S1およびS2)もまたテストした。具体的には、容器は、Schott Fiolax(登録商標)ガラス製の3mlガラスバイアルであった。容器の各々を最初に計量し、重量を記録した。組G1およびS1を、0.5モル濃度のフッ化水素酸および0.9モル濃度の塩酸の溶液で満たした。この溶液を、1分間~12分間(すなわち、1分間、2分間、4分間、8分間および12分間)の範囲内の異なる時間の間、容器の各々において保持した。時間が経過した後、溶液を各容器から出し、容器をすすぎ、乾燥させ、計量して重量損失を測定した。次いで、重量損失を推定表面積に正規化した。
【0065】
組G2およびS2を、1.5モル濃度のフッ化水素酸および3.0モル濃度の塩酸の溶液で満たした。この溶液を、1分間~12分間(すなわち、1分間、2分間、4分間、8分間および12分間)の範囲内の異なる時間の間、容器の各々において保持した。時間が経過した後、溶液を各容器から出し、容器をすすぎ、乾燥させ、計量して重量損失を測定した。次いで、重量損失を推定表面積に正規化した。
【0066】
エッチング時間(分間)に応じた重量損失(mg/cm)が、図5においてグラフにより図示されている。図5に示されているとおり、エッチング剤に対する曝露時間が長くなるに伴って、重量損失はより負の値となっている(すなわち、重量の損失が増えている)。図5にはまた、エッチング剤の濃度を高めると重量損失速度が増加していることが示されており、曝露時間および/またはエッチング剤濃度を介して、ガラスの内部表面から除去される物質の量を制御可能であることが実証されている。
【0067】
実施例2
2組の容器をテストして、容器の内部からの永続的層不均質性を有する内部表面層の除去におけるエッチング剤の効力を評価した。これらの容器は、Type IB医薬品ホウケイ酸ガラス製であった。テストしたガラス製容器は、Gerresheimer GX-51 Flintガラス製3mlガラスバイアル(「G」サンプル)およびSchott Fiolax(登録商標)ガラス製3mlガラスバイアル(「S」サンプル)であった。5本の容器(GおよびSサンプルの混合)の第1の組をテストして、永続的層不均質性を有する内部表面層の存在を判定した。具体的には、メチレンブルー染料の1%水溶液を、その組の各容器の内部空間に1分間入れた。次いで、容器を空にし、水ですすいだ。この組における各容器を青色の染色について視覚的に検査した。各容器は、容器の内部表面において認識可能な程度の青色の着色を有するもので、特に富ホウ素領域といった永続的層不均質性を有する内部表面層の存在を示しており、これは、各バイアルの底付近において青色の着色が灰色の領域として現れている図6Aに示されているとおりである。
【0068】
第1の組と同等である5本の容器の第2の組を、1.5モル濃度のフッ化水素酸および3モル濃度の塩酸を含むエッチング剤で処理した。エッチング剤を12分間の間容器の中に入れたままにした。次いで、容器を空にし、すすぎ、乾燥させた。次いで、メチレンブルー染料の1%水溶液を、その組の各容器の内部空間に1分間入れた。次いで、容器を空にし、水ですすいだ。テスト後の容器が図6Bに示されている。この組における各容器を青色の染色について視覚的に検査した。染色を示す容器はなく、エッチング剤処理により永続的層不均質性を有する内部表面層が完全に除去されたことが示された。
【0069】
実施例3
ガラス製容器をテストして、永続的層不均質性を有する内部表面層を除去することによる、ガラス製容器の加水分解耐性に対する効果を判定した。容器は、Type IB医薬品ホウケイ酸ガラス製であった。具体的には、「G」容器は、Gerresheimer GX-51 Flintガラス製の3mlガラスバイアルであった。「S」容器は、Schott Fiolax(登録商標)ガラス製の3mlガラスバイアルであった。サンプルを、「Glass Containers For Pharmaceutical Use」と題されたヨーロッパ薬局方7.0の第3.2.1節に準拠してテストした(本明細書において以降、欧州特許第3.2.1テスト)。サンプルG1、S1~S3、Gエッチングしていない、S4、S5、G6およびG7を、成形されたままの状態でテストした。Gエッチングしたは、1.5モル濃度のフッ化水素酸および3モル濃度の塩酸を含むエッチング剤で処理した後にテストした。エッチング剤を12分間の間容器の中に入れたままにした。次いで、容器を空にし、すすぎ、乾燥させ、テストした。
【0070】
表2に、欧州特許第3.2.1テストの結果が報告されている。具体的には、テスト結果は、テスト中に容器から抽出されたアルカリを中和するために、溶液1ミリリットル当たりで用いられた0.01M HClの体積で報告されている。従って、用いたHClの値が小さいことが、良好な加水分解耐性を示している。表2に示されているとおり、エッチングしていない容器では、抽出されたアルカリを中和するために約0.4ml~約1.14mlのHClが必要とされた。しかしながら、エッチングした容器(Gエッチングした)では、抽出されたアルカリを中和するために、わずかに0.1mlのHClしか必要とされず、エッチング後の溶液中に存在するアルカリの量がかなり少なく、エッチングしていない容器と比して加水分解耐性が顕著に向上したことが示されている。
【0071】
【表2】
【0072】
前述のガラス製容器の形成方法は、多数の態様に従って理解され得る。
【0073】
第1の態様は、内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程を含み得るガラス製容器の形成方法を含む。サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分は、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層不均質性を有する内部表面層を有し得る。ガラス製容器の内部表面層は、サイドウォールの被改質内部表面が、被改質内部表面の下方約10nmからサイドウォールの肉厚部中に延在する内部領域を有するよう、サイドウォールの内部表面から除去され得る。内部領域は、被改質内部表面が層剥離に対して耐性であるよう、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層均質性を有し得る。
【0074】
第2の態様は、内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程を含み得るガラス製容器の形成方法を含む。サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分は、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層不均質性を有する内部表面層を有し得る。サイドウォールの内部表面は、サイドウォールの被改質内部表面が、被改質内部表面の下方約10nmからサイドウォールの肉厚部中に延在する内部領域を有するよう、エッチングされて、内部表面層が除去される。内部領域は、被改質内部表面が層剥離に対して耐性であるよう、サイドウォールの中間点に比して永続性のある層均質性を有し得る。
【0075】
第3の態様は、サイドウォールの内部表面の少なくとも一部分が内部表面層を有するよう、内部空間を少なくとも部分的に内包するサイドウォールを備えるガラス製容器を形成する工程を含むガラス製容器の形成方法を含む。ガラス製容器が成形されたままの状態である場合、内部表面層における各構成成分の層濃度の極値は、サイドウォールの中間点における同一の構成成分のバルク濃度の約80%未満または約120%超である。内部表面層は、サイドウォールの被改質内部表面がサイドウォールの肉厚部中において延在する内部領域を有するよう、サイドウォールの内部表面から除去される。内部領域における各構成成分の層濃度の極値は、内部表面層が除去された後において、サイドウォールの肉厚部の中間点における同一の構成成分のバルク濃度の約92%以上、かつ、約108%以下である。
【0076】
第4の態様は、外表面層をサイドウォールの外表面から除去する工程をさらに含む、第1の態様~第3の態様のいずれかの方法を含む。外部表面は、サイドウォールの外部表面に存在する表面欠陥の深度を超える深度までエッチングされ得る。
【0077】
第5の態様は、ガラス製容器の少なくとも内部表面が、内部表面層が除去された後、10以下の層剥離係数を有する、第1の態様~第4の態様のいずれかの方法を含む。
【0078】
第6の態様は、内部表面層が、エッチング剤でサイドウォールの内部表面から除去される、第1の態様~第5の態様のいずれかの方法を含む。
【0079】
第7の態様は、エッチング剤が、フッ化水素酸および/または少なくとも1種の鉱酸を含む、第6の態様の方法を含む。
【0080】
第8の態様は、内部表面層が、10nm以上、または、さらには30nm以上の厚さを有する、第1の態様~第7の態様のいずれかの方法を含む。
【0081】
第9の態様は、内部表面層における各構成成分の層濃度の極値が、ガラス製容器が成形されたままの状態である場合、サイドウォールの中間点における同一の構成成分のバルク濃度の約80%未満または約120%超である、第1の態様および第2の態様、ならびに、第4の態様~第8の態様のいずれかの方法を含む。
【0082】
第10の態様は、ガラス製容器が、ASTM規格E438-92に準拠するType I、クラスAまたはType I、クラスBガラスから形成される、第1の態様~第9の態様のいずれかの方法を含む。
【0083】
第11の態様は、ガラス製容器はホウケイ酸ガラス製である、第1の態様~第10の態様のいずれかの方法を含む。
【0084】
第12の態様は、内部表面層が貧シリカ性である、第1の態様~第11の態様のいずれかの方法を含む。
【0085】
第13の態様は、内部領域における各構成成分の層濃度の極値が、内部表面層が除去された後において、サイドウォールの肉厚部の中間点における同一の構成成分のバルク濃度の約92%以上、かつ、約108%以下である、第1の態様および第2の態様、ならびに、第4の態様~第12の態様のいずれかの方法を含む。
【0086】
第14の態様は、サイドウォールの被改質内部表面が、ガラス製容器の被改質内部表面の全体から、ガラス製容器の内部表面から約10nm~約50nmの深度まで延在する表面領域を備え;永続的層不均質性が除去された後において、ガラス製容器の被改質内部表面上の独立した点について、独立した点における表面領域中のガラスの各構成成分の表面濃度の極値が、ガラス製容器の被改質内部表面上の任意の第2の独立した点における表面領域中の同一の構成成分の約70%以上、かつ、約130%以下である、第1の態様~第13の態様のいずれかの方法を含む。
【0087】
第15の態様は、ガラス製容器の被改質内部表面は実質的にトポグラフィ変位を有さない、第1の態様~第14の態様のいずれかの方法を含む。
【0088】
第16の態様は、内部表面層は富ホウ酸ナトリウムガラス材料を含む、第1の態様~第15の態様のいずれかの方法を含む。
【0089】
第17の態様は、被改質内部表面の表面積10,000μm当たりの平均山対谷粗さが1μm未満である、第1の態様~第16の態様のいずれかの方法を含む。
【0090】
特許請求された主題の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいて、本明細書に記載の実施形態に対して種々の変更および変形を行うことが可能であることは当業者に明らかであろう。それ故、変更および変形が添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に含まれる場合に限り、本明細書は、本明細書に記載の種々の実施形態の変更および変形を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B