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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/00 20060101AFI20231128BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20231128BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20231128BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20231128BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20231128BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20231128BHJP
   F24F 1/44 20110101ALI20231128BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20231128BHJP
【FI】
F25B27/00 Z
F25B49/02 D
F25B5/02 Z
F25B1/00 321B
F25B27/02 U
F24F11/88
F24F1/44
F24F11/46
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020127768
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024919
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】井本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松下 智史
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】加茂田 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】相川 照規
(72)【発明者】
【氏名】岩見 拓馬
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-114068(JP,A)
【文献】特開2014-025593(JP,A)
【文献】特開2010-007879(JP,A)
【文献】特開2018-185104(JP,A)
【文献】特開2002-303466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 27/00
F25B 49/02
F25B 5/02
F25B 1/00
F25B 27/02
F24F 11/88
F24F 1/44
F24F 11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を加圧するコンプレッサーと、
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される発電機と、
前記発電機により生成される電力によって動作し、前記コンプレッサーを駆動するモーターと、
バッテリーと、
前記コンプレッサーを経由する前記冷媒の循環経路において前記冷媒を利用流体と熱交換させる第1熱交換器と、
前記コンプレッサーおよび前記第1熱交換器を経由する前記冷媒の循環経路において前記冷媒を開放流体と熱交換させる第2熱交換器と、
前記冷媒の循環経路における前記冷媒を減圧する減圧部から前記冷媒の一部を分岐させ、分岐させた前記冷媒を前記コンプレッサーの入口へ導く冷媒分岐管と、
前記冷媒分岐管の途中に設けられ前記冷媒を前記バッテリーとの間で熱交換させるバッテリー熱交換部と、を備え
ヒートポンプ装置。
【請求項2】
記発電機によって生成される電力を含む利用可能電力から前記モーターを含む負荷へ供給される電力を除いた余剰電力を前記バッテリーに蓄積させる蓄電制御と、前記バッテリーに蓄積された電気を前記利用可能電力として出力する放電制御とを選択的に実行可能なバッテリー制御部をさらに備える、請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記バッテリーの蓄電量が予め定められた基準範囲を上回ったときに前記エンジンを停止させ、前記エンジンが停止中に前記蓄電量が前記基準範囲を下回ったときに前記エンジンを起動させるエンジン制御部をさらに備える、請求項2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
外部電源と電気的に接続可能であり、前記外部電源から供給される電力を前記利用可能電力として出力可能な外部電源接続部をさらに備える、請求項2または請求項3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記外部電源が、再生可能エネルギーから電力を生成する外部発電機または電気自動車が内蔵する駆動バッテリーである、請求項4に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
商用電源から電力が供給される前記負荷である外部負荷と電気的に接続可能であり、前記利用可能電力のうち前記ヒートポンプ装置で利用される電力を除いた残りの電力を前記商用電源と連系して前記外部負荷へ供給可能な外部負荷接続部をさらに備える、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記商用電源が停電したときに、前記商用電源の給電ラインおよび前記外部負荷接続部の電力出力ラインと前記外部負荷とを電気的に接続する連系状態から前記商用電源の給電ラインと前記外部負荷接続部とを電気的に遮断するとともに前記外部負荷接続部の電力出力ラインと前記外部負荷とを電気的に接続する連系解除状態へ切り替わる接続切替回路をさらに備え、
前記外部負荷接続部は、前記接続切替回路が前記連系解除状態であるときに、前記利用可能電力を前記外部負荷へ供給可能である、請求項6に記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
前記減圧部は、前記冷媒の循環経路における前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に設けられている、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載のヒートポンプ装置。
【請求項9】
前記コンプレッサーを経由する前記冷媒の循環経路において前記冷媒を利用流体と熱交換させる第1熱交換器と、
前記コンプレッサーおよび前記第1熱交換器を経由する前記冷媒の循環経路において前記冷媒を開放流体と熱交換させる第2熱交換器と、
冷却液を循環させることにより前記エンジンを冷却するエンジン冷却装置を備え、
前記エンジン冷却装置は、前記エンジンと熱交換した後の前記冷却液をさらに前記第2熱交換器と熱交換させる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびコンプレッサーを備えるヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプ装置は、コンプレッサーを含むヒートポンプ部と、前記コンプレッサーを駆動するエンジンとを備える(例えば、特許文献1参照)。前記エンジンは、都市ガスまたはガソリンなどを燃料として動作する。前記ヒートポンプ装置は、空気調和機における空気の熱量の調節装置などとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-250438号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記コンプレッサーの出力は、前記空気調和機における必要熱量などの負荷の変動に応じて調節される必要がある。前記エンジンが前記コンプレッサーを直接駆動する場合、前記エンジンの出力が、前記負荷の変動に応じて調節される必要がある。
【0005】
一方、前記エンジンの出力が特定の出力範囲から外れると、前記エンジンのエネルギー効率が悪化する。従って、前記エンジンの出力が前記ヒートポンプ部の前記負荷の変動に応じて調節されると、前記エンジンのエネルギー効率が悪化する。
【0006】
本発明の目的は、負荷が変動する場合でもエンジンを高効率で動作させることができるヒートポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係るヒートポンプ装置は、コンプレッサーと、エンジンと、発電機と、モーターと、を備える。前記コンプレッサーは冷媒を加圧する。前記発電機は、前記エンジンによって駆動される。前記モーターは、前記発電機により生成される電力によって動作し、前記コンプレッサーを駆動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷が変動する場合でもエンジンを高効率で動作させることができるヒートポンプ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係るヒートポンプ装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係るヒートポンプ装置における減圧部およびバッテリー冷却装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、第2実施形態に係るヒートポンプ装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、第3実施形態に係るヒートポンプ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るヒートポンプ装置1は、ヒートポンプ部2、エンジン31、主制御装置6および操作部60を備える。
【0012】
エンジン31は、都市ガスまたはガソリンなどを燃料として動作する。エンジン31は、ヒートポンプ部2の動力源である。ヒートポンプ部2は、空気調和機における空気の熱量の調節装置などとして用いられる。なお、ヒートポンプ部2が、水などの液体の加熱または冷却に用いられてもよい。
【0013】
主制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサー、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、およびROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリーなどの二次記憶装置を含む。
【0014】
前記プロセッサーが、前記二次記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを前記主記憶装置へ展開し、さらに前記コンピュータープログラムを実行する。これにより、主制御装置6は、エンジン31が備える不図示のセルモーターおよびヒートポンプ部2が備える不図示の各種のバルブなどの制御対象機器を制御する。
【0015】
操作部60は、ユーザーの操作を受け付ける装置である。例えば、操作部60は、タッチパネルおよび操作ボタンなどを含む。主制御装置6は、操作部60に対する操作に応じて各種の動作モードを選択する処理も実行する。
【0016】
ヒートポンプ部2は、冷媒管で連結されたコンプレッサー22、四方弁23、室外熱交換器24、室内熱交換器25および減圧部26を含む。前記冷媒管は、冷媒が流れる管である。減圧部26は、主膨張弁26aおよびレシーバー26bを含む。コンプレッサー22は、前記冷媒を加圧する。
【0017】
室内熱交換器25は、室内に配置され、コンプレッサー22を経由する前記冷媒の循環経路において前記冷媒を室内空気と熱交換させる。前記室内空気は利用流体の一例であり、室内熱交換器25は第1熱交換器の一例である。
【0018】
室外熱交換器24は、室外に配置され、コンプレッサー22および室内熱交換器25を経由する前記冷媒の循環経路において前記冷媒を室外空気と熱交換させる。前記室外空気は開放流体の一例であり、室外熱交換器24は第2熱交換器の一例である。
【0019】
減圧部26は、ヒートポンプ部2の前記冷媒の循環経路における室内熱交換器25と室外熱交換器24との間に配置され、前記冷媒を減圧する。
【0020】
減圧部26において、主膨張弁26aは、高圧の前記冷媒を蒸発しやすい状態へ減圧する。レシーバー26bは、前記冷媒を一時的に貯えるとともに、前記冷媒中のガスと液を分離する。
【0021】
ヒートポンプ部2は、前記空気調和機における前記室内空気の熱量の調節装置として用いられる場合、冷房モードまたは暖房モードで動作する。主制御装置6は、四方弁23を制御することにより、ヒートポンプ部2を前記冷房モードまたは前記暖房モードで動作させる。主制御装置6は、操作部60に対する操作に応じて前記冷房モードおよび前記暖房モードの一方を選択する。
【0022】
ヒートポンプ部2は、前記冷房モードで動作する場合、前記冷媒をコンプレッサー22から、四方弁23、室外熱交換器24、減圧部26および室内熱交換器25の順に循環させる。
【0023】
また、ヒートポンプ部2は、前記暖房モードで動作する場合、前記冷媒をコンプレッサー22から、四方弁23、室内熱交換器25、減圧部26および室外熱交換器24の順に循環させる。
【0024】
ところで、コンプレッサー22の出力は、前記空気調和機における必要熱量などの負荷の変動に応じて調節される必要がある。仮に、エンジン31がコンプレッサー22を直接駆動する場合、エンジン31の出力が、前記負荷の変動に応じて調節される必要がある。
【0025】
一方、エンジン31の出力が特定の出力範囲から外れると、エンジン31のエネルギー効率が悪化する。従って、エンジン31の出力がヒートポンプ部2の前記負荷の変動に応じて調節されると、エンジン31のエネルギー効率が悪化する。
【0026】
ヒートポンプ装置1は、ヒートポンプ部2の前記負荷が変動する場合でもエンジン31を高効率で動作させることができる構成を備える。以下、その構成について説明する。
【0027】
ヒートポンプ装置1は、発電機32、電力調整回路4およびバッテリー5をさらに備える。発電機32は、エンジン31によって駆動される。エンジン31および発電機32は、エンジン駆動発電機3を構成している。
【0028】
エンジン31は、予め定められた一定の出力で動作する。例えば、エンジン31は、定格出力で動作する。即ち、エンジン31は、ヒートポンプ部2の負荷に応じた出力調節を行わず、定常動作をする。これにより、エンジン31は、エネルギー効率が高い出力で動作する。
【0029】
また、ヒートポンプ部2は、コンプレッサー22を駆動するモーター21と、モーター21に電力を供給するモーター駆動回路20とを備える。モーター駆動回路20は、供給される電力をモーター21へ出力することによってモーター21を回転駆動する。
【0030】
モーター駆動回路20は、予め設定される目標温度と不図示の温度センサーで検出される室内温度との差に応じたフィードバック制御により、モーター21に供給する電力を調節する。
【0031】
電力調整回路4は、AC/DCコンバーター41およびバッテリー制御回路42を含む。AC/DCコンバーター41は、発電機32によって生成される交流電力を直流電力へ変換するとともに、出力電圧をモーター駆動回路20の入力電圧に調節する。
【0032】
発電機32によって生成される電力は、AC/DCコンバーター41を通じてヒートポンプ部2のモーター駆動回路20へ供給される。モーター駆動回路20の消費電力はモーター21の消費電力に相当し、ひいてはヒートポンプ部2の消費電力に相当する。
【0033】
AC/DCコンバーター41、バッテリー制御回路42およびモーター駆動回路20は、主導電部2xによって電気的に接続されている。主導電部2xは、ヒートポンプ装置1において利用可能な電力が出力される部分であるとともに、モーター21などの電気負荷への給電ラインである。以下の説明において、主導電部2xに出力される電力のことを利用可能電力と称する。
【0034】
発電機32によって生成される電力は、AC/DCコンバーター41を通じて主導電部2xへ出力され、さらに、主導電部2xからモーター駆動回路20を通じてモーター21へ供給される。モーター駆動回路20によって駆動されるモーター21は、前記電気負荷の一例である。
【0035】
また、発電機32によって生成される電力を含む前記利用可能電力のうち、ヒートポンプ部2で消費される電力を除いた残りの電力がバッテリー制御回路42に入力される。
【0036】
即ち、発電機32によって生成される電力は、AC/DCコンバーター41および主導電部2xを通じてヒートポンプ部2のモーター駆動回路20およびバッテリー制御回路42へ供給される。
【0037】
バッテリー制御回路42は、蓄電制御と放電制御とを選択的に実行可能である。バッテリー制御回路42は、バッテリー制御部の一例である。
【0038】
前記蓄電制御は、発電機32によって生成される電力を含む前記利用可能電力からモーター21を含む前記電気負荷へ供給される電力を除いた余剰電力をバッテリー5に蓄積させる処理である。本実施形態において、バッテリー制御回路42は、エンジン31が動作しているときに前記蓄電制御を実行する。
【0039】
前記放電制御は、バッテリー5に蓄積された電気を前記利用可能電力として主導電部2xへ出力する処理である。バッテリー制御回路42は、前記放電制御において、前記電気負荷の消費電力に応じてバッテリー5からの放出電力を調節する。本実施形態において、バッテリー制御回路42は、エンジン31が停止しているときに前記放電制御を実行する。
【0040】
即ち、バッテリー制御回路42は、前記利用可能電力と主導電部2xに接続された前記電気負荷の消費電力とがバランスするように、前記蓄電制御または前記放電制御を実行する。
【0041】
なお、前記利用可能電力は、ヒートポンプ部2が備える不図示の電動バルブなどにも供給される。前記電動バルブなども前記電気負荷の一例である。
【0042】
モーター21は、前記蓄電制御が実行されているときに、発電機32により生成される電力によって動作する。また、モーター21は、前記放電制御が実行されているときに、バッテリー5から放出される電力によって動作する。
【0043】
バッテリー制御回路42は、バッテリー5の蓄電量を検出し、検出信号を主制御装置6へ出力する。主制御装置6は、バッテリー5の蓄電量の検出信号に基づいてエンジン作動制御を実行する。
【0044】
前記エンジン作動制御は、バッテリー5の前記蓄電量が予め定められた基準範囲を上回ったときにエンジン31を停止させる処理を含む。さらに、前記エンジン作動制御は、エンジン31が停止しているときにバッテリー5の前記蓄電量が前記基準範囲を下回ったときにエンジン31を起動させる処理を含む。
【0045】
従って、エンジン31は、バッテリー5の前記蓄電量が前記基準範囲を上回ってから前記基準範囲を下回るまで停止し、バッテリー5の前記蓄電量が前記基準範囲を下回ってから前記基準範囲を上回るまで作動する。これにより、エンジン31の燃料消費が抑制される。前記エンジン作動制御を実行する主制御装置6は、エンジン制御部の一例である。
【0046】
以上に示されるように、ヒートポンプ装置1において、エンジン31の動力は、コンプレッサー22を駆動するモーター21に供給される電力に変換される。そして、ヒートポンプ部2の負荷が変動した場合、エンジン31の出力は定格出力で維持され、モーター21に使用されない余剰電力が変動する。前記余剰電力は、他の用途に容易に利用可能である。
【0047】
本実施形態では、前記余剰電力は、エンジン駆動発電機3が動作中にバッテリー5に蓄積され、エンジン駆動発電機3が停止したときにヒートポンプ部2の駆動に利用される。従って、ヒートポンプ部2の負荷が変動する場合でもエンジン31を常に高効率で動作させることができる。
【0048】
ヒートポンプ装置1は、ヒートポンプ部2における前記冷媒をバッテリー5と熱交換させるバッテリー冷却装置27をさらに備える(図2参照)。バッテリー冷却装置27は、冷媒分岐管27a、バッテリー熱交換部27bおよび補助膨張弁27cを備える。冷媒分岐管27aの一部は、レシーバー26b内に配置されたSC(Subcooling)コイル27dを形成している。
【0049】
図2において、ヒートポンプ部2が前記冷房モードで動作するときの減圧部26における前記冷媒の流れの経路および方向が細い実線の矢印で示されている。また、ヒートポンプ部2が前記暖房モードで動作するときの減圧部26における前記冷媒の流れの経路および方向が細い破線の矢印で示されている。
【0050】
冷媒分岐管27aは、減圧部26から前記冷媒の一部を分岐させ、分岐させた前記冷媒をコンプレッサー22における前記冷媒の入口へ導く。冷媒分岐管27aの終端は、コンプレッサー22の入口に連結された流入管に連結されている。
【0051】
冷媒分岐管27aは、レシーバー26bおよびバッテリー熱交換部27bを経由して配置されている。以下の説明において、冷媒分岐管27aを流れる前記冷媒のことを分岐冷媒と称する。
【0052】
補助膨張弁27cは、冷媒分岐管27aにおけるSCコイル27dに対し前記分岐冷媒の流れ方向の上流側に配置され、前記分岐冷媒を減圧する。補助膨張弁27cは、減圧部26の構成要素の一部でもある(図1参照)。
【0053】
前記分岐冷媒は、補助膨張弁27cおよびSCコイル27dを経由することにより温度が低下する。前記分岐冷媒は、補助膨張弁27cおよびSCコイル27dを経由した後、さらにバッテリー熱交換部27bを経由し、コンプレッサー22へ戻る。
【0054】
バッテリー熱交換部27bは、冷媒分岐管27aの途中に設けられ、前記分岐冷媒をバッテリー5との間で熱交換させる。これにより、ヒートポンプ部2が前記冷房モードおよび前記暖房モードのいずれで動作する場合においてもバッテリー5が前記分岐冷媒によって冷却される。その結果、バッテリー5が過度な高温になることによるバッテリー5の動作効率の悪化を回避することができる。
【0055】
また、ヒートポンプ装置1は、冷却液を循環させることによりエンジン31を冷却するエンジン冷却装置28をさらに備える(図1参照)。エンジン冷却装置28は、冷却液管28a、循環ポンプ28b、エンジン熱交換部28c、室外機熱交換部28dおよび不図示のラジエーターを備える。
【0056】
冷却液管28aは、前記冷却液が流れる管である。冷却液管28aは、エンジン熱交換部28c、室外機熱交換部28dおよび前記ラジエーターを経由して配管されている。循環ポンプ28bは、冷却液管28a内で前記冷却液を予め定められた方向へ循環させる。
【0057】
エンジン冷却装置28は、エンジン熱交換部28cにおいてエンジン31と熱交換した後の前記冷却液を前記ラジエーターへ送る。これにより、エンジン31が前記冷却液により冷却され、高温になった前記冷却液が前記ラジエーターにより冷却される。
【0058】
また、エンジン冷却装置28は、エンジン31と熱交換した後の前記冷却液の一部または全部を、室外機熱交換部28dを経由して前記ラジエーターへ送る。室外機熱交換部28dは、エンジン31と熱交換した後の前記冷却液を室外熱交換器24と熱交換させる。
【0059】
室外機熱交換部28dにおいて、ヒートポンプ部2の前記冷媒がエンジン冷却装置28の前記冷却液によって加熱される。これにより、ヒートポンプ部2のエネルギー効率がより高まる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、図3を参照しつつ、第2実施形態に係るヒートポンプ装置1Aについて説明する。ヒートポンプ装置1Aは、ヒートポンプ装置1に、光電池接続回路43、外部負荷接続回路44および接続切替回路7が追加された構成を備える。光電池接続回路43および外部負荷接続回路44は、電力調整回路4の一部を成す。
【0061】
光電池接続回路43は、太陽の光エネルギーから電力を生成する光電池8と電気的に接続されるインターフェイス回路である。光電池接続回路43は、光電池8から供給される電力を前記利用可能電力として主導電部2xへ出力する。光電池8は外部電源の一例である。
【0062】
例えば、光電池接続回路43は、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行いつつ光電池8の出力電圧をモーター駆動回路20の入力電圧へ変換するDC/DCコンバーターを含む。
【0063】
なお、太陽の光エネルギーは再生可能エネルギーの一例であり、光電池8は、前記再生可能エネルギーから電力を生成する外部発電機の一例である。また、光電池接続回路43は、前記外部電源と電気的に接続可能な外部電源接続部の一例である。
【0064】
外部負荷接続回路44は、商用電源101から電力が供給される外部負荷103と電気的に接続されるインターフェイス回路である。外部負荷接続回路44は、商用電源101から外部負荷103への給電ラインと主導電部2xとを電気的に接続する。
【0065】
外部負荷接続回路44は、前記利用可能電力のうちヒートポンプ装置1で利用される電力を除いた残りの電力を商用電源101と連系して外部負荷103へ供給する。
【0066】
本実施形態において、外部負荷103は、前記利用可能電力の供給先となる前記電気負荷の一例である。外部負荷接続回路44は、外部負荷接続部の一例である。
【0067】
接続切替回路7は、商用電源101から外部負荷103への給電ラインと外部負荷接続回路44の電力出力ラインと外部負荷103との電気的な接続を切り替える回路である。接続切替回路7は、商用電源101が停電したときに、連系状態から連系解除状態へ切り替わる。
【0068】
前記連系状態は、商用電源101の前記給電ラインおよび外部負荷接続回路44の電力出力ラインと外部負荷103とを電気的に接続する状態である。
【0069】
前記連系解除状態は、商用電源101の給電ラインと外部負荷接続回路44とを電気的に遮断するとともに、外部負荷接続回路44の電力出力ラインと外部負荷103とを電気的に接続する状態である。
【0070】
外部負荷接続回路44は、接続切替回路7が前記連系状態であるときに、前記利用可能電力のうちヒートポンプ装置1で利用される電力を除いた残りの電力を商用電源101と連系して外部負荷103へ供給する。また、外部負荷接続回路44は、接続切替回路7が前記連系解除状態であるときも、前記利用電力を外部負荷103へ供給可能である。
【0071】
一方、外部負荷接続回路44は、接続切替回路7が前記連系状態であるときに、前記利用可能電力を商用電源101との連系無しで外部負荷103へ供給する。
【0072】
バッテリー制御回路42は、接続切替回路7が前記連系状態および前記連系解除状態のいずれであるかに関わらず、前記利用可能電力と主導電部2xに接続された前記電気負荷の消費電力とがバランスするように、前記充電制御または前記放電制御を実行する。
【0073】
接続切替回路7は、前記連系状態および前記連系解除状態のいずれであるかを表す連系信号を主制御装置6へ出力する。前記連系信号は、商用電源101が通電状態であるか停電状態であるかを表す信号でもある。
【0074】
主制御装置6は、前記連系信号が前記連系解除状態を表す場合に、バッテリー5の前記蓄電量に基づくヒートポンプ作動制御を実行する。
【0075】
前記ヒートポンプ作動制御は、バッテリー5の前記蓄電量が予め定められた監視範囲を下回ったときにヒートポンプ部2を停止させる処理を含む。ヒートポンプ部2が停止した場合、モーター駆動回路20も停止し、モーター21への給電も停止する。これにより、外部負荷103の消費電力が多いこと、または、光電池8の発電量が少ないことに起因してバッテリー5の前記蓄電量が少なくなった場合に、前記利用可能電力が、ヒートポンプ部2よりも優先して外部負荷103へ供給される。
【0076】
さらに、前記ヒートポンプ作動制御は、ヒートポンプ部2が停止している状況下でバッテリー5の前記蓄電量が前記監視範囲を上回ったときにヒートポンプ部2の停止を解除する処理を含む。これにより、外部負荷103の消費電力が少ないこと、または、光電池8の発電量が多いことに起因してバッテリー5の前記蓄電量が多くなった場合に、前記利用可能電力を外部負荷103およびヒートポンプ部2の両方に利用することが可能となる。
【0077】
また、主制御装置6は、接続切替回路7が前記連系状態および前記連系解除状態のいずれであるかに関わらず、バッテリー5の前記蓄電量に応じた前記エンジン作動制御を実行する。
【0078】
従って、光電池8および発電機32により生成される電力が外部負荷103を含む前記電気負荷の消費電力に対して大きい場合には、バッテリー5の前記蓄電量が前記基準範囲を上回ってから前記基準範囲を下回るまで、バッテリー5が発電機32の代わりに外部負荷103へ電力を供給する。これにより、エンジン31の燃料消費が抑制される。
【0079】
ヒートポンプ装置1Aが採用される場合、ヒートポンプ装置1が採用される場合よりも自由度の高い運用が可能になる。
【0080】
また、外部負荷接続回路44は、接続切替回路7が前記連系状態である状況下で商用電源101の電力を前記利用可能電力として主導電部2xへ出力することが可能である。従って、外部負荷接続回路44は、商用電源101のAC電力をモーター駆動回路20へ供給可能なDC電力へ変換するAC/DCコンバーターを含む。
【0081】
例えば、外部負荷接続回路44は、接続切替回路7が前記連系状態である状況下で商用電源101の電力以外の前記利用可能電力がヒートポンプ部2の消費電力を下回る場合に、商用電源101の電力を前記利用可能電力として主導電部2xへ出力する。この場合、外部負荷接続回路44は、商用電源101の電力を含む前記利用可能電力がヒートポンプ部2の消費電力とバランスするように商用電源101の電力を主導電部2xへ出力する。
【0082】
[第3実施形態]
次に、図4を参照しつつ、第3実施形態に係るヒートポンプ装置1Bについて説明する。ヒートポンプ装置1Bは、ヒートポンプ装置1Aに、EV(Electric Vehicle)接続回路45が追加された構成を備える。EV接続回路45は、電力調整回路4の一部を成す。
【0083】
EV接続回路45は、電気自動車80が内蔵する駆動バッテリー80aと電気的に接続されるインターフェイス回路である。駆動バッテリー80aは、電気自動車80の走行モーターへ電力を供給する。
【0084】
電気自動車80は、駆動バッテリー80aを制御するEVバッテリー制御回路80bを備える。EV接続回路45は、EVバッテリー制御回路80bを介して駆動バッテリー80aと接続される。
【0085】
EV接続回路45は、駆動バッテリー80aから供給される電力を前記利用可能電力として主導電部2xへ出力する。この場合、EVバッテリー制御回路80bは、駆動バッテリー80aに蓄積された電気を放電させるEV放電制御を実行する。
【0086】
なお、電気自動車80の駆動バッテリー80aは外部電源の一例である。EV接続回路45は、前記外部電源と電気的に接続可能な外部電源接続部の一例である。
【0087】
EV接続回路45は、EVバッテリー制御回路80bの出力電圧をモーター駆動回路20の入力電圧へ変換するDC/DCコンバーターを含む。EV接続回路45は、EVバッテリー制御回路80bから駆動バッテリー80aの蓄電量の情報を取得する。
【0088】
EV接続回路45は、駆動バッテリー80aの蓄電量が予め設定された下限量を上回り、かつ、バッテリー制御回路42が前記充電制御を実行していない場合に前記EV放電制御を実行し、そうでない場合に前記EV放電制御を停止する。
【0089】
例えば、EV接続回路45は、前記EV放電制御として、以下に示される第1EV放電制御または第2EV放電制御を実行する。
【0090】
前記第1EV放電制御は、予め設定された定常電力を前記利用可能電力として駆動バッテリー80aから主導電部2xへ出力する処理である。
【0091】
前記第1EV放電制御が実行される場合に、主制御装置6が、光電池接続回路43から光電池8の発電量の情報を取得し、光電池8の発電量に応じてEV接続回路45に出力させる前記定常電力を設定してもよい。この場合、主制御装置6は、光電池8の発電量が多い場合よりも少ない場合の方が大きな前記定常電力を設定する。
【0092】
前記第2EV放電制御は、バッテリー5の蓄電量が前記最低残量を下回る場合に、前記利用可能電力と主導電部2xに接続された前記電気負荷の消費電力とがバランスするように駆動バッテリー80aに蓄積された電気を放電させ、そうでない場合に、駆動バッテリー80aを放電させない処理である。
【0093】
ヒートポンプ装置1Bが採用される場合、ヒートポンプ装置1,1Aが採用される場合よりも自由度の高い運用が可能になる。
【0094】
[応用例]
ヒートポンプ装置1Aまたはヒートポンプ装置1Bが、図3または図4に示される構成から光電池接続回路43または外部負荷接続回路44が除かれた構成を備えていてもよい。なお、外部負荷接続回路44が構成から除かれる場合、接続切替回路7も一緒に除かれる。
【符号の説明】
【0095】
1,1A,1B:ヒートポンプ装置
2 :ヒートポンプ
2x :主導電部
3 :エンジン駆動発電機
4 :電力調整回路
5 :バッテリー
6 :主制御装置
7 :接続切替回路
8 :光電池
20 :モーター駆動回路
21 :モーター
22 :コンプレッサー
23 :四方弁
24 :室外熱交換器(第2熱交換器)
25 :室内熱交換器(第1熱交換器)
26 :減圧部
26a :主膨張弁
26b :レシーバー
27 :バッテリー冷却装置
28 :エンジン冷却装置
31 :エンジン
32 :発電機
41 :AC/DCコンバーター
42 :バッテリー制御回路
43 :光電池接続回路
44 :外部負荷接続回路
45 :EV接続回路
図1
図2
図3
図4