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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】冷凍機械
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20231128BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20231128BHJP
   F25B 29/00 20060101ALI20231128BHJP
   F25B 1/04 20060101ALI20231128BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
F25B1/00 396U
F25B1/00 396D
F25B7/00 D
F25B29/00 441
F25B1/00 311B
F25B1/04 A
F25B1/04 Y
F25B43/00 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020163122
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055607
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】難波 悠輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆英
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 篤
(72)【発明者】
【氏名】石田 寿幸
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/080436(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221382(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0120179(US,A1)
【文献】特開2017-044420(JP,A)
【文献】特開2012-007825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍室内の空気と第一冷媒とを熱交換させる蒸発器、前記蒸発器を通過した低圧気相の前記第一冷媒を圧縮する第一圧縮機、及び該第一圧縮機を通過した前記第一冷媒の圧力を下げる低温側膨張弁を有する低温サイクルと、
外気と第二冷媒とを熱交換させる放熱器、及び前記放熱器に前記第二冷媒を圧縮して供給する第二圧縮機、及び該放熱器を通過した前記第二冷媒の圧力を下げる高温側膨張弁を有する高温サイクルと、
前記第一圧縮機から流通する前記第一冷媒と前記高温側膨張弁から流通する前記第二冷媒とを熱交換させる中間熱交換器と、
前記低温サイクル、及び前記高温サイクルの少なくとも一方に設けられ、圧縮される前の前記第一冷媒又は前記第二冷媒を、前記第一圧縮機、及び前記第二圧縮機の少なくとも一方に供給するガスインジェクション回路と、
を備え、
前記第一冷媒は、二酸化炭素とR32冷媒とを含む混合冷媒であり、前記第二冷媒は、二酸化炭素であり、
前記低温側膨張弁、及び前記高温側膨張弁は、それぞれ2つずつの膨張弁を有し、
前記低温サイクル、及び前記高温サイクルは、前記2つの膨張弁の間にそれぞれ設けられた低温側レシーバ、及び高温側レシーバをさらに備え、
前記ガスインジェクション回路は、
前記低温側レシーバから前記第一冷媒を前記第一圧縮機に供給する低温側回路と、
前記高温側レシーバから前記第二冷媒を前記第二圧縮機に供給する高温側回路と、
を有する冷凍機械。
【請求項2】
前記第一冷媒は、16%以上22重量%以下のR32冷媒を含む混合冷媒である請求項1に記載の冷凍機械。
【請求項3】
前記第一圧縮機、及び前記第二圧縮機は、それぞれ低圧側のロータリー圧縮機と、該ロータリー圧縮機に連結された高圧側のスクロール圧縮機とを含み、前記ガスインジェクション回路は、前記スクロール圧縮機の上流側に前記第一冷媒又は前記第二冷媒を供給するように構成されている請求項1又は2に記載の冷凍機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍機械の分野では、GWP(温暖化係数)の値を小さく抑えることが求められている。このため、使用可能な冷媒の種類には制約がある場合が多い。低GWPを実現可能な冷媒として具体的には、R32と呼ばれる冷媒や二酸化炭素が挙げられる(下記特許文献1参照)。
【0003】
他方で、このような低GWP冷媒を用いた場合、冷凍機械の冷凍能力向上の妨げとなることがある。特に、-45~-70℃程度の超低温を目標温度とする冷凍機械ではその影響が顕著である。そこで、例えば冷凍機械に用いられる圧縮機の圧縮比を高める等の措置が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4543469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように圧縮比を単に高めた場合、圧縮機の吐出温度が過度に高くなってしまい、所望の冷凍能力を発揮できなくなる虞がある。このように、低GWP冷媒を用いながらも、超低温の冷凍能力を有する冷凍機械に対する要請が高まっている。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、低GWPと高い冷凍能力とを両立させることが可能な冷凍機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る冷凍機械は、冷凍室内の空気と第一冷媒とを熱交換させる蒸発器、前記蒸発器を通過した低圧気相の前記第一冷媒を圧縮する第一圧縮機、及び該第一圧縮機を通過した前記第一冷媒の圧力を下げる低温側膨張弁を有する低温サイクルと、外気と第二冷媒とを熱交換させる放熱器、及び前記放熱器に前記第二冷媒を圧縮して供給する第二圧縮機、及び該放熱器を通過した前記第二冷媒の圧力を下げる高温側膨張弁を有する高温サイクルと、前記第一圧縮機から流通する前記第一冷媒と前記高温側膨張弁から流通する前記第二冷媒とを熱交換させる中間熱交換器と、前記低温サイクル、及び前記高温サイクルの少なくとも一方に設けられ、圧縮される前の前記第一冷媒又は前記第二冷媒を、前記第一圧縮機、及び前記第二圧縮機の少なくとも一方に供給するガスインジェクション回路と、を備え、前記第一冷媒は、二酸化炭素とR32冷媒とを含む混合冷媒であり、前記第二冷媒は、二酸化炭素であり、前記低温側膨張弁、及び前記高温側膨張弁は、それぞれ2つずつの膨張弁を有し、前記低温サイクル、及び前記高温サイクルは、前記2つの膨張弁の間にそれぞれ設けられた低温側レシーバ、及び高温側レシーバをさらに備え、前記ガスインジェクション回路は、前記低温側レシーバから前記第一冷媒を前記第一圧縮機に供給する低温側回路と、前記高温側レシーバから前記第二冷媒を前記第二圧縮機に供給する高温側回路と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低GWPと高い冷凍能力とを両立させることが可能な冷凍機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る冷凍機械の構成を示す冷媒回路図である。
図2】本開示の実施形態に係る冷凍機械のサイクル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(冷凍機械の構成)
以下、本開示の実施形態に係る冷凍機械100について、図1図2を参照して説明する。図1に示すように、冷凍機械100は、高温サイクルCHと、低温サイクルCLと、これら高温サイクルCHと低温サイクルCLを接続する中間熱交換器10と、ガスインジェクション回路9と、を備えている。つまり、この冷凍機械100は、カスケードサイクル型の冷凍回路を構成している。高温サイクルCHで外気と熱交換した冷媒(後述する第二冷媒)は、中間熱交換器10で低温サイクル側の他の冷媒(後述する第一冷媒)と熱交換する。低温サイクルでは、室内の空気と冷媒との間で熱交換が行われる。
【0011】
(高温サイクルの構成)
高温サイクルCHは、高温側配管P2と、第二圧縮機4と、放熱器5と、高温側膨張弁6(高温側第一膨張弁61、及び高温側第二膨張弁62)と、高温側レシーバ82と、を有している。高温側配管P2は環状に接続された管路であり、その内部には第二冷媒が充填されている。第二冷媒は、二酸化炭素のみを含む。
【0012】
高温側配管P2上には、第二冷媒の流れ方向の上流側から下流側に向かって、第二圧縮機4と、放熱器5と、高温側第一膨張弁61と、高温側レシーバ82と、高温側第二膨張弁62と、がこの順番で配列されている。
【0013】
第二圧縮機4は、中間熱交換器10から供給された低圧の気相冷媒を圧縮して、高温高圧の気相冷媒を生成する。第二圧縮機4は、いわゆるスクロータリー型と呼ばれる二段圧縮機であり、低圧側としてロータリー圧縮機41が用いられ、高圧側としてスクロール圧縮機42が用いられている。これらロータリー圧縮機41とスクロール圧縮機42は、異例として同軸に連結されている。
【0014】
第二圧縮機4で生成された高温高圧の気相冷媒は、放熱器5に流入する。放熱器5は、冷凍室(冷凍対象となる部屋)の外部に設けられている。放熱器5では、第二冷媒と外部の空気との間で熱交換が行われる。なお、放熱器5には不図示のファンによって外気が強制的に送られることが望ましい。これにより、放熱器5では気相冷媒が凝縮し、高圧の液相冷媒が生成される。
【0015】
高圧の液相冷媒は、高温側第一膨張弁61、高温側レシーバ82、及び高温側第二膨張弁62をこの順で通過する。高圧の液相冷媒は、高温側第一膨張弁61を通過することで一定程度圧力が下がり、中圧中温の液相冷媒となる。この液相冷媒は、高温側レシーバ82に貯留されて気液分離される。このうち、気相成分はガスインジェクション回路9としての高温側回路92を通じて第二圧縮機4(具体的には、高圧側のスクロール圧縮機42の上流側の位置)に供給される。つまり、高温側回路92を通じて、圧縮される前の低温の第二冷媒(気相成分)が第二圧縮機4に送られる。
【0016】
高温側レシーバ82を通過した中温中圧の液相冷媒は、高温側第二膨張弁62を通過することでさらに圧力が下がり、低温低圧の液相冷媒となる。
【0017】
高温側第二膨張弁62を経て低温低圧となった液相冷媒は、中間熱交換器10に流入する。中間熱交換器10では、高温サイクルCH中の第二冷媒と、後述する低温サイクル中の第一冷媒との間で熱交換が行われる。具体的には、低温サイクルCLを流通する高温高圧の気相冷媒(第一冷媒)と、高温サイクルCHを流通する低温低圧の液相冷媒(第二冷媒)との間で熱交換が行われる。これに伴って、高温サイクルCHでは、中間熱交換器10を流通する液相冷媒の温度が上昇するとともに、液相から気相に変化する。
【0018】
中間熱交換器10を経て気相となった冷媒は、再び第二圧縮機4に吸入される。高温サイクルCHではこのようなサイクルが連続的に行われる。
【0019】
(低温サイクルの構成)
低温サイクルCLは、低温側配管P1と、第一圧縮機2と、蒸発器1と、低温側膨張弁3(低温側第一膨張弁31、及び低温側第二膨張弁32)と、低温側レシーバ81と、を有している。低温側配管P1は環状に接続された管路であり、その内部には第一冷媒が充填されている。第一冷媒は、二酸化炭素と、R32冷媒との混合冷媒である。R32冷媒は、16重量%以上、22重量%以下の範囲で第二冷媒に含まれている。その残余の成分は二酸化炭素である。
【0020】
低温側配管P1上には、第一冷媒の流れ方向の上流側から下流側に向かって、第一圧縮機2と、低温側第一膨張弁31と、低温側レシーバ81と、低温側第二膨張弁32と、蒸発器1と、がこの順番で配列されている。
【0021】
第一圧縮機2は、蒸発器1から供給された低圧の気相冷媒を圧縮して、高温高圧の気相冷媒を生成する。第一圧縮機2は、第二圧縮機4と同様に、いわゆるスクロータリー型と呼ばれる二段圧縮機であり、低圧側としてロータリー圧縮機21が用いられ、高圧側としてスクロール圧縮機22が用いられている。これらロータリー圧縮機41とスクロール圧縮機42は、異例として同軸に連結されている。
【0022】
第一圧縮機2で生成された高温高圧の気相冷媒は、中間熱交換器10に流入する。中間熱交換器10では、高温サイクルCH中の第二冷媒と、低温サイクル中の第一冷媒との間で熱交換が行われる。具体的には、低温サイクルCLを流通する高温高圧の気相冷媒(第一冷媒)と、高温サイクルCHを流通する低温低圧の液相冷媒(第二冷媒)との間で熱交換が行われる。これにより、中間熱交換器10では気相冷媒が凝縮し、高圧の液相冷媒が生成される。
【0023】
高圧の液相冷媒は、低温側第一膨張弁31、低温側レシーバ81、及び低温側第二膨張弁32をこの順で通過する。高圧の液相冷媒は、低温側第一膨張弁31を通過することで一定程度圧力が下がり、中圧中温の液相冷媒となる。この液相冷媒は、低温側レシーバ81に貯留されて気液分離される。このうち、気相成分はガスインジェクション回路9としての低温側回路91を通じて第一圧縮機2(具体的には、高圧側のスクロール圧縮機22の上流側の位置)に供給される。つまり、低温側回路91を通じて、圧縮される前の低温の第一冷媒(気相成分)が第一圧縮機2に送られる。
【0024】
低温側レシーバ81を通過した中温中圧の液相冷媒は、低温側第二膨張弁32を通過することでさらに圧力が下がり、低温低圧の液相冷媒となる。
【0025】
低温側第二膨張弁32を経て低温低圧となった液相冷媒は、蒸発器1に流入する。蒸発器1は、冷凍室の内部に設けられている。蒸発器1では、冷凍室内の空気と第一冷媒との間で熱交換が行われる。なお、蒸発器1には、ファンによって冷凍室内の空気を強制的に送ることが望ましい。低温の液相冷媒によって冷凍室内の熱が吸収されることで、冷凍室内の温度が低くなる方向に変化する。つまり、冷凍室内が冷却される。これに伴って、蒸発器1を流通する液相冷媒の温度が上昇するとともに、液相から気相に変化する。蒸発器1を経て気相となった冷媒は再び第一圧縮機2に吸入される。このようなサイクルが連続的に行われることで、冷凍室の温度が所望の値に調節される。
【0026】
(作用効果)
近年、冷凍機械の分野では、GWP(温暖化係数)の値を小さく抑えることが求められている。このため、使用可能な冷媒の種類には制約がある場合が多い。低GWP冷媒としては上述した二酸化炭素やR32冷媒が例として挙げられる。他方で、このような低GWP冷媒を用いた場合、冷凍機械の冷凍能力向上の妨げとなることがある。特に、-45~-70℃程度の超低温を目標温度とする冷凍機械ではその影響が顕著である。そこで、例えば冷凍機械に用いられる圧縮機の圧縮比を高める等の措置が考えられる。しかしながら、上記のように圧縮比を単に高めた場合、圧縮機の吐出温度が過度に高くなってしまい、所望の冷凍能力を発揮できなくなる虞がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、冷凍機械100は、低温サイクルCL、及び高温サイクルCHと、これらの間に設けられた中間熱交換器10と、を主に備えるカスケードサイクルを構成している。これにより、第一圧縮機2、及び第二圧縮機4で必要とされる圧縮比をそれぞれ小さく抑えることができる。その結果、これら圧縮機から吐出される冷媒の温度(吐出温度)をさらに下げることができる。つまり、冷凍機械100の冷凍能力をさらに高めることができる。
【0028】
具体的には図2に示すように、高温サイクルCHと低温サイクルCLのサイクル線図が互いに中間位置(中間熱交換器10)で重畳されている。これにより、高温サイクルCHのみを用いた場合に比べて、より低い温度にまで冷媒の温度を下げることができる。例えば、高温サイクルCHの放熱器出口温度が34℃である場合、低温サイクルCLでは蒸発温度を-68℃程度の超低温とすることができる。
【0029】
また、カスケードサイクルを用いることにより、低温サイクルCLと高温サイクルCHとで異なる種類の冷媒を用いることが可能となる。低温サイクルCLでは二酸化炭素を主成分としつつ、R32を含む混合冷媒が第一冷媒として用いられる。高温サイクルCHでは二酸化炭素が第二冷媒として用いられる。このように二酸化炭素を主として用いることにより、低GWPを実現しながらも、二酸化炭素のみを冷媒とした場合に比べて冷凍能力をさらに高めることが可能となる。また、高温サイクルCHでは、二酸化炭素のみを第二冷媒として用いることから、R32を混合した場合に比べて密度が過度に低くならない。これにより、第二圧縮機4で必要とされる圧縮比を小さく抑えることもできる。
【0030】
加えて、ガスインジェクション回路9によって、第一圧縮機2、及び第二圧縮機4の少なくとも一方に、圧縮される前の低温の第一冷媒又は第二冷媒が供給される。これにより、例えば第一圧縮機2、及び第二圧縮機4を複数段の圧縮機によって構成した場合に、これら複数段の中間位置に低温の冷媒を供給することで、最終的な冷媒の吐出温度をさらに下げることが可能となる。
【0031】
また、上記構成によれば、第一冷媒として、16重量%以上22重量%以下のR32を含む二酸化炭素との混合冷媒が用いられる。これにより、GWPを150以下に抑え、国際的な規制値以下とすることが可能となる。このように、本実施形態によれば、低GWPと高い冷凍能力とを両立させることが可能な冷凍機械100を提供することができる。
【0032】
さらに、上記構成によれば、ガスインジェクション回路9は、高圧側のスクロール圧縮機22,42の上流側に冷媒を供給するように構成されている。ここで、スクロール圧縮機22,42では、ケーシングの内部を流通する冷媒が、流れ方向等の制約をあまり受けることなく圧縮室に向けて流入する構成が採られる。つまり、ロータリー圧縮機21,41に比べて、スクロール圧縮機22,42では圧縮室の外部に他の冷媒を追加しやすいと言える。これにより、ガスインジェクション回路9によってより容易かつ円滑に冷媒を追加することが可能となる。
【0033】
より具体的には、上記構成によれば、低温サイクルCL、及び高温サイクルCHにそれぞれガスインジェクション回路9としての低温側回路91、及び高温側回路92が設けられている。これにより、低温サイクルCLと高温サイクルCHの双方で、圧縮機(第一圧縮機2、及び第二圧縮機4)の吐出温度を下げることが可能となる。
【0034】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0035】
<付記>
各実施形態に記載の冷凍機械は、例えば以下のように把握される。
【0036】
(1)第1の態様に係る冷凍機械100は、冷凍室内の空気と第一冷媒とを熱交換させる蒸発器1、前記蒸発器1に前記第一冷媒を圧縮して供給する第一圧縮機2、及び該第一圧縮機2を通過した前記第一冷媒の圧力を下げる低温側膨張弁3を有する低温サイクルCLと、外気と第二冷媒とを熱交換させる放熱器5、及び前記放熱器5に前記第二冷媒を圧縮して供給する第二圧縮機4、及び該放熱器5を通過した前記第二冷媒の圧力を下げる高温側膨張弁6を有する高温サイクルCHと、前記第一圧縮機2から流通する前記第一冷媒と前記高温側膨張弁6から流通する前記第二冷媒とを熱交換させる中間熱交換器10と、前記低温サイクルCL、及び前記高温サイクルCHの少なくとも一方に設けられ、圧縮される前の前記第一冷媒又は前記第二冷媒を、前記第一圧縮機2、及び前記第二圧縮機4の少なくとも一方に供給するガスインジェクション回路9と、を備え、前記第一冷媒は、二酸化炭素とR32冷媒とを含む混合冷媒であり、前記第二冷媒は、二酸化炭素である。
【0037】
上記構成によれば、冷凍機械100は、低温サイクルCL、及び高温サイクルCHと、これらの間に設けられた中間熱交換器10と、を主に備えるカスケードサイクルを構成している。これにより、第一圧縮機2、及び第二圧縮機4で必要とされる圧縮比をそれぞれ小さく抑えることができる。その結果、これら圧縮機から吐出される冷媒の温度(吐出温度)をさらに下げることができる。つまり、冷凍機械100の冷凍能力をさらに高めることができる。
また、カスケードサイクルを用いることにより、低温サイクルCLと高温サイクルCHとで異なる種類の冷媒を用いることが可能となる。低温サイクルCLでは二酸化炭素を主成分としつつ、R32を含む混合冷媒が第一冷媒として用いられる。高温サイクルCHでは二酸化炭素が第二冷媒として用いられる。このように二酸化炭素を主として用いることにより、低GWPを実現しながらも、二酸化炭素のみを冷媒とした場合に比べて冷凍能力をさらに高めることが可能となる。また、高温サイクルCHでは、二酸化炭素のみを第二冷媒として用いることから、R32を混合した場合に比べて密度が過度に低くならない。これにより、第二圧縮機4で必要とされる圧縮比を小さく抑えることもできる。
加えて、ガスインジェクション回路9によって、第一圧縮機2、及び第二圧縮機4の少なくとも一方に、圧縮される前の低温の第一冷媒又は第二冷媒が供給される。これにより、例えば第一圧縮機2、及び第二圧縮機4を複数段の圧縮機によって構成した場合に、これら複数段の中間位置に低温の冷媒を供給することで、最終的な冷媒の吐出温度をさらに下げることが可能となる。
【0038】
(2)第2の態様に係る冷凍機械100では、前記第一冷媒は、16重量%以上22重量%以下のR32冷媒を含む混合冷媒である。
【0039】
上記構成によれば、第一冷媒として、16重量%以上22重量%以下のR32を含む二酸化炭素との混合冷媒が用いられる。これにより、GWPを150以下に抑え、国際的な規制値以下とすることが可能となる。
【0040】
(3)第3の態様に係る冷凍機械100では、前記第一圧縮機2、及び前記第二圧縮機4は、それぞれ低圧側のロータリー圧縮機21,41と、該ロータリー圧縮機21,41に連結された高圧側のスクロール圧縮機22,42とを含み、前記ガスインジェクション回路9は、前記スクロール圧縮機22,42の上流側に前記第一冷媒又は前記第二冷媒を供給するように構成されている。
【0041】
上記構成によれば、ガスインジェクション回路9は、高圧側のスクロール圧縮機22,42の上流側に冷媒を供給するように構成されている。ここで、スクロール圧縮機22,42では、ケーシングの内部を流通する冷媒が、流れ方向等の制約をあまり受けることなく圧縮室に向けて流入する構成が採られる。つまり、ロータリー圧縮機21,41に比べて、スクロール圧縮機22,42では圧縮室の外部に他の冷媒を追加しやすいと言える。これにより、ガスインジェクション回路9によってより容易かつ円滑に冷媒を追加することが可能となる。
【0042】
(4)第4の態様に係る冷凍機械100では、前記低温側膨張弁3、及び前記高温側膨張弁6は、それぞれ2つずつの膨張弁を有し、前記低温サイクルCL、及び前記高温サイクルCHは、前記2つの膨張弁の間にそれぞれ設けられた低温側レシーバ81、及び高温側レシーバ82をさらに備え、前記ガスインジェクション回路9は、前記低温側レシーバ81から前記第一冷媒を前記第一圧縮機2に供給する低温側回路91と、前記高温側レシーバ82から前記第二冷媒を前記第二圧縮機4に供給する高温側回路92と、を有する。
【0043】
上記構成によれば、低温サイクルCL、及び高温サイクルCHにそれぞれガスインジェクション回路9としての低温側回路91、及び高温側回路92が設けられている。これにより、低温サイクルCLと高温サイクルCHの双方で、圧縮機(第一圧縮機2、及び第二圧縮機4)の吐出温度を下げることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
100 冷凍機械
1 蒸発器
2 第一圧縮機
3 低温側膨張弁
4 第二圧縮機
5 放熱器
6 高温側膨張弁
9 ガスインジェクション回路
10 中間熱交換器
21 ロータリー圧縮機
22 スクロール圧縮機
31 低温側第一膨張弁
32 低温側第二膨張弁
41 ロータリー圧縮機
42 スクロール圧縮機
61 高温側第一膨張弁
62 高温側第二膨張弁
81 低温側レシーバ
82 高温側レシーバ
91 低温側回路
92 高温側回路
CH 高温サイクル
CL 低温サイクル
P1 低温側配管
P2 高温側配管
図1
図2