(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/75 20130101AFI20231128BHJP
【FI】
G06F21/75
(21)【出願番号】P 2020201101
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 紘帆
(72)【発明者】
【氏名】花谷 嘉一
【審査官】行田 悦資
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-186374(JP,A)
【文献】特開平11-053545(JP,A)
【文献】特開平02-171870(JP,A)
【文献】特開平09-114974(JP,A)
【文献】特開2012-174275(JP,A)
【文献】特開2005-347963(JP,A)
【文献】特開平10-254403(JP,A)
【文献】特開昭61-145963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定されたn次元(nは、1以上の整数)のマップに配置された複数のデータを含む第1データ群を、前記マップに配置された複数のデータを含む第2データ群に変換する情報処理装置であって、
前記第1データ群を複数の元データとして取得する入力部と、
変換ルールを出力するルール出力部と、
前記複数の元データを前記変換ルールに従って、前記マップに配置された複数の新データに変換する変換部と、
前記複数の新データを前記第2データ群として出力する出力制御部と、
を備え、
前記複数の元データのそれぞれおよび前記複数の新データのそれぞれは、基準内を表す2以上の予め定められた個数の値または基準外を表す1以上の予め定められた個数の値のうち、何れかであり、
前記変換ルールは、
前記マップにおける対象位置の元データが前記基準外の値の場合、前記対象位置の新データを前記対象位置の元データの値とし、
前記対象位置の元データが前記基準内の値の場合、前記対象位置を基準として予め定められた範囲である参照領域に含まれる2以上の元データから前記基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を選択し、前記選択した1以上の元データの値を多数決し、前記対象位置の新データを多数決で決定された値とする
情報処理装置。
【請求項2】
前記第1データ群に含まれる前記複数のデータに対する、前記複数の新データの変化率を算出する変化率算出部
をさらに備え、
前記出力制御部は、
前記変化率が予め設定された値より小さい場合、前記複数の新データを前記複数の元データとし、前記変化率が前記予め設定された値以上となるまで繰り返して前記複数の元データを前記複数の新データに変換させ、
前記変化率が前記予め設定された値以上となった場合、前記複数の新データを前記第2データ群として出力する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記参照領域は、前記マップにおける前記対象位置に連続した領域である
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記参照領域に含まれる元データの数は、奇数である
請求項1から3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記変換ルールは、前記選択した1以上の元データの多数の値が複数種類存在する場合、前記選択した1以上の元データの値に前記対象位置の元データの値を追加して、または、前記対象位置の元データの値を削減して多数決をし、前記対象位置の新データを多数決で決定された値とする
請求項1から4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記変換ルールは、前記選択した1以上の元データの多数の値が複数種類存在する場合、前記選択した1以上の元データの値に前記対象位置に対して所定の位置の元データの値を追加して、または、前記対象位置に対して所定の位置の元データの値を削減して多数決をし、前記対象位置の新データを多数決で決定された値とする
請求項1から4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記変換ルールは、前記参照領域に含まれる2以上のデータのそれぞれに対して前記参照領域の中の位置に応じて予め定められた対応する票数を割り当て、前記選択した1以上の元データの値に割り当てられた票数の合計を多数決し、前記対象位置の新データを多数決で決定された値とする
請求項1から6の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記ルール出力部は、前記第1データ群の種類毎に、異なる種類の前記変換ルールを前記変換部に出力する
請求項1から7の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記ルール出力部は、前記対象位置に応じて異なる種類の前記変換ルールを前記変換部に出力する
請求項1から8の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置により、予め設定されたn次元(nは、1以上の整数)のマップに配置された複数のデータを含む第1データ群を、前記マップに配置された複数のデータを含む第2データ群に変換する情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、前記第1データ群を複数の元データとして取得し、
前記情報処理装置が、変換ルールを出力し、
前記情報処理装置が、前記複数の元データを前記変換ルールに従って、前記マップに配置された複数の新データに変換し、
前記情報処理装置が、前記複数の新データを前記第2データ群として出力し、
前記複数の元データのそれぞれおよび前記複数の新データのそれぞれは、基準内を表す2以上の予め定められた個数の値または基準外を表す1以上の予め定められた個数の値のうち、何れかであり、
前記変換ルールは、
前記マップにおける対象位置の元データが前記基準外の値の場合、前記対象位置の新データを前記対象位置の元データの値とし、
前記対象位置の元データが前記基準内の値の場合、前記対象位置を基準として予め定められた範囲である参照領域に含まれる2以上の元データから前記基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を選択し、前記選択した1以上の元データの値を多数決し、前記対象位置の新データを多数決で決定された値とする
情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、予め設定されたn次元(nは、1以上の整数)のマップに配置された複数のデータを含む第1データ群を、前記マップに配置された複数のデータを含む第2データ群に変換する情報処理装置として機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記第1データ群を複数の元データとして取得する入力部と、
変換ルールを出力するルール出力部と、
前記複数の元データを前記変換ルールに従って、前記マップに配置された複数の新データに変換する変換部と、
前記複数の新データを前記第2データ群として出力する出力制御部と、
して機能させ、
前記複数の元データのそれぞれおよび前記複数の新データのそれぞれは、基準内を表す2以上の予め定められた個数の値または基準外を表す1以上の予め定められた個数の値のうち、何れかであり、
前記変換ルールは、
前記マップにおける対象位置の元データが前記基準外の値の場合、前記対象位置の新データを前記対象位置の元データの値とし、
前記対象位置の元データが前記基準内の値の場合、前記対象位置を基準として予め定められた範囲である参照領域に含まれる2以上の元データから前記基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を選択し、前記選択した1以上の元データの値を多数決し、前記対象位置の新データを多数決で決定された値とする
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
依頼元会社が、データ群の解析を外部の解析会社に依頼することが行われている。例えば、チップ製造会社は、チップ毎の良否を表すウェハマップの解析を外部の解析会社に依頼する場合がある。解析会社は、例えば、多数のウェハマップをクラスタリングして、不良が発生する原因等を解析する。
【0003】
ここで、データ群をそのまま外部の解析会社に渡した場合、秘密情報が外部に漏えいする可能性がある。このため、依頼元会社は、秘匿情報が漏えいしないように解析対象のデータ群を加工し、加工後のデータ群を外部の解析会社に渡したい。例えば、チップ製造会社は、チップの歩留まりが漏えいしないように加工したウェハマップを外部の解析会社に渡したい。
【0004】
しかし、データ群を適切に加工しなければ、正しい解析結果を得ることはできなくなる。このため、依頼元会社は、秘密情報が漏えいしない程度に且つ解析結果への影響を小さくするように、適切にデータ群を変換しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/141802号
【文献】特開2019-092101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、データ群を適切に変換することができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る情報処理装置は、予め設定されたn次元(nは、1以上の整数)のマップに配置された複数のデータを含む第1データ群を、前記マップに配置された複数のデータを含む第2データ群に変換する。前記情報処理装置は、入力部と、ルール出力部と、変換部と、出力制御部とを備える。前記入力部は、前記第1データ群を複数の元データとして取得する。前記ルール出力部は、変換ルールを出力する。前記変換部は、前記複数の元データを前記変換ルールに従って、前記マップに配置された複数の新データに変換する。前記出力制御部は、前記複数の新データを前記第2データ群として出力する。前記複数の元データのそれぞれおよび前記複数の新データのそれぞれは、基準内を表す2以上の予め定められた個数の値または基準外を表す1以上の予め定められた個数の値のうち、何れかである。前記変換ルールは、前記マップにおける対象位置の元データが前記基準外の値の場合、前記対象位置の新データを前記対象位置の元データの値とし、前記対象位置の元データが前記基準内の値の場合、前記対象位置を基準として予め定められた範囲である参照領域に含まれる2以上の元データから前記基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を選択し、前記選択した1以上の元データの値を多数決し、前記対象位置の新データを多数決で決定された値とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る変換装置の機能構成を示す図。
【
図2】変換装置の処理の流れを示すフローチャート。
【
図3】複数の元データおよび複数の新データの一例を示す図。
【
図4】データを変換する対象位置の選択順序の一例を示す図。
【
図5】対象位置の元データが基準外の値である場合の変換ルールを示す図。
【
図7】対象位置の元データが基準内の値である場合の変換ルールを示す図。
【
図8】参照領域に基準外の値の元データを含む場合の変換ルールを示す図。
【
図14】1次元マップに配置された複数の元データおよび参照領域を示す図。
【
図15】3次元マップに配置された複数の元データおよび参照領域を示す図。
【
図16】変形例に係る変換装置の機能構成を示す図。
【
図17】情報処理装置のハードウェア構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る変換装置10について説明する。
【0010】
図1は、変換装置10の機能構成を示す図である。変換装置10は、予め設定されたn次元(nは、1以上の整数)のマップに配置された複数のデータを含む第1データ群を、同一のマップに配置された複数のデータを含む第2データ群に変換する。例えば、第1データ群は、依頼元会社により作成される。変換装置10は、依頼元会社により用いられる。変換装置10は、第2データ群を、依頼元会社等とは異なる外部の解析会社に供給する。解析会社は、依頼元会社等から受け取った複数の第2データ群を解析する。
【0011】
本実施形態において、依頼元会社は、チップ製造会社であり、第1データ群は、チップ毎の良否を示す値を表すウェハマップである。解析会社は、チップ製造会社からの依頼を受けて、多数のウェハマップをクラスタリングして、チップ製造工程における不良が発生する原因等を解析する。
【0012】
変換装置10は、専用または汎用のコンピュータである情報処理装置が変換プログラムを実行することにより実現される。変換装置10は、変換プログラムを実行することにより、
図1に示すような機能構成を備える。すなわち、変換装置10は、入力部22と、ルール出力部24と、変換部26と、変化率算出部28と、出力制御部30とを備える。
【0013】
入力部22は、他装置から第1データ群を取得する。入力部22は、取得した第1データ群を複数の元データとして変換部26に与える。
【0014】
ルール出力部24は、予め設定された変換ルールを出力する。ルール出力部24は、メモリから、変換ルールを含む情報を読み出し、読み出した情報を変換部26に与える。変換ルールは、複数の元データを、複数の新データに変換するための規則である。変換ルールは、例えば、管理者または設計者等により予め設定されている。
【0015】
変換部26は、変換ルールを受け取る。変換部26は、複数の元データを受け取った場合、n次元のマップに配置された複数の元データを変換ルールに従って、同一のマップに配置された複数の新データに変換する。
【0016】
変化率算出部28は、第1データ群に含まれる複数のデータに対する、変換部26から出力された複数の新データの変化の割合を表す変化率を算出する。例えば、変化率算出部28は、第1データ群のデータ数に対する、複数の新データのうちの値が変更されたデータ数の割合を変化率として算出する。また、例えば、変化率算出部28は、第1データ群のうちの基準内の値のデータ数に対する、複数の新データのうちの値が変更されたデータ数の割合を変化率として算出してもよい。なお、基準内の値については、詳細を後述する。
【0017】
出力制御部30は、変換部26から複数の新データを受け取るとともに、変化率算出部28から変化率を受け取る。出力制御部30は、受け取った変化率が予め設定された値より小さい場合、受け取った複数の新データを複数の元データとして、変換部26に再度与える。変換部26は、出力制御部30から複数の元データを受け取った場合、出力制御部30から受け取った複数の元データを変換ルールに従って複数の新データに変換する。出力制御部30は、変化率が予め設定された値以上となるまで繰り返して複数の元データを複数の新データに変換させる。
【0018】
そして、出力制御部30は、変化率が予め設定された値以上となった場合、複数の新データを第2データ群として出力する。
【0019】
図2は、変換装置10の処理の流れを示すフローチャートである。変換装置10は、
図2に示す流れで処理を実行する。
【0020】
まず、S11において、変換装置10は、他装置から第1データ群を複数の元データとして取得する。続いて、S12において、変換装置10のルール出力部24は、予め設定された変換ルールを出力する。
【0021】
続いて、S13において、変換装置10は、n次元のマップに配置された複数の元データを変換ルールに従って、同一のマップに配置された複数の新データに変換する。続いて、S14において、変換装置10は、第1データ群に含まれる複数のデータに対する、変換装置10から出力された複数の新データの変化率を算出する。
【0022】
続いて、S15において、変換装置10は、算出した変化率が予め設定された値以上であるか否かを判断する。算出した変化率が予め設定された値より小さい場合(S15のNo)、変換装置10は、処理をS13に戻す。S13に処理が戻された場合、複数の新データを複数の元データに置き換え、複数の元データを変換ルールに従って複数の新データに変換する。
【0023】
変化率が予め設定された値以上となった場合(S15のYes)、変換装置10は、処理をS16に進める。そして、S16において、変換装置10は、複数の新データを第2データ群として出力する。変換装置10は、S16の処理を終えると、本フローを終了する。
【0024】
このような変換装置10は、第1データ群に対して予め定められた変化率以上変化した第2データ群を出力することができる。これにより、変換装置10は、第2データ群を取得する会社等に対して、第1データ群の内容を秘匿化することができる。
【0025】
図3は、複数の元データおよび複数の新データの一例を示す図である。
【0026】
複数の元データと複数の新データとは、互いに同一のマップに配置されたデータ群である。例えば、複数の元データが8×8の2次元マトリクス状のマップに配置された64個のデータ群である場合、複数の新データも、8×8の2次元マトリクス状のマップに配置された64個のデータ群である。
【0027】
また、複数の元データのそれぞれおよび複数の新データのそれぞれは、マップにおける位置により特定される。複数の元データが8×8の2次元マトリクス状のマップに配置されている場合、複数の元データのそれぞれは、列番号(例えばX方向の位置)および行番号(例えばY方向の位置)により特定される。
【0028】
また、複数の元データのそれぞれおよび複数の新データのそれぞれは、複数の種類の値のうちの何れかである。複数の種類の値は、互いに相関の無い。具体的には、複数の元データのそれぞれおよび複数の元データのそれぞれは、基準内を表す2以上の予め定められ個数の値、または、基準外を表す1以上の予め定められた個数の値のうちの、何れかである。
【0029】
本実施形態において、複数の元データおよび複数の新データは、ウェハマップである。より具体的には、複数の元データのそれぞれおよび複数の新データのそれぞれは、対応する位置にチップを作成したことを表す値または対応する位置にチップを作成していないことを表す値である。さらに、複数の元データのそれぞれおよび複数の新データのそれぞれは、対応する位置にチップを作成した場合、さらに、そのチップが良品であることを表す値、または、そのチップが不良品であることを表す値である。
【0030】
本実施形態において、対応する位置にチップを作成していないことを表す値は、-1である。対応する位置にチップを作成していないことを表す値(-1)は、基準外の値の一例である。
【0031】
また、本実施形態において、対応する位置にチップを作成しており、そのチップが良品であることを表す値は、0である。また、本実施形態において、対応する位置にチップを作成しており、そのチップが不良品であることを表す値は、1である。対応する位置にチップを作成していることを表す値(0または1)は、基準内の値の一例である。
【0032】
なお、基準内を表す値は、2個以上の種類の値のうちの何れかである。本実施形態においては、基準内を表す値は、0または1の2種類のうちの何れかである。しかし、基準内を表す値は、例えば、0、1または2のうちの何れかといったような、3種類以上の値のうちの何れかであってもよい。
【0033】
また、基準外を表す値は、1個以上の種類の値のうちの何れかである。本実施形態においては、基準外を表す値は、-1の1種類である。しかし、基準外を表す値は、例えば、-1または-2のうちの何れかといったような、2種類以上の値のうちの何れかであってもよい。
【0034】
図4は、データを変換する対象位置の選択順序の一例を示す図である。本実施形態において、変換装置10は、複数の元データのうちの1つの元データを選択し、選択した元データを、マップにおける同一位置の新データに変換する。例えば、複数の元データおよび複数の新データが2次元のマトリクス状のマップに配置されている場合、
図4に示すように、ラスタスキャンをして1つずつ元データを選択してもよい。なお、変換装置10は、複数の元データの全てを1回ずつ選択することができれば、どのような順序で元データを選択してもよい。また、変換装置10は、2個以上の元データを同時に選択して、並列に変換処理を実行してもよい。
【0035】
図5は、対象位置の元データが基準外の値である場合の変換ルールを示す図である。変換ルールは、少なくとも、
図5に示すようなルールが記述される。すなわち、変換ルールは、マップにおける対象位置の元データが基準外の値の場合、対象位置の新データを対象位置の元データの値とすることが記述される。
【0036】
例えば、対象位置の元データが-1である場合、変換ルールは、対象位置の新データを-1とする記述される。これにより、変換部26は、実質上、基準外の値のデータに対して変換処理を実行せず、基準内の値のデータに対して変換処理を実行することができる。
【0037】
図6は、参照領域の一例を示す図である。変換ルールは、少なくとも、対象位置の元データが基準内の値の場合、参照領域を特定することが記述される。参照領域は、対象位置を基準として予め定められた範囲である。より具体的には、参照領域は、少なくとも2以上のデータを含む領域である。さらに、参照領域は、マップにおける対象位置に連続した領域である。
【0038】
例えば、マップが2次元のマトリクス状である場合、参照領域は、対象位置のデータと、対象位置に隣接する周囲の8個のデータとを含む範囲であってもよい。参照領域は、対象位置のデータを含んでもよいし、対象位置のデータを含まなくてもよい。なお、参照領域は、このような範囲に限らず、他の範囲であってもよい。参照領域の他の例については後述する。
【0039】
図7は、対象位置の元データが基準内の値である場合であって、参照領域に基準外の値の元データを含まない場合の変換ルールを示す図である。
図8は、対象位置の元データが基準内の値である場合であって、参照領域に基準外の値の元データを含む場合の変換ルールを示す図である。
【0040】
変換ルールは、
図7および
図8に示すように、少なくとも、対象位置の元データが基準内の値の場合、参照領域に含まれる2以上の元データから基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を選択することが記述される。
【0041】
例えば、
図7に示すように、参照領域に基準外の値の元データを含まない場合には、変換ルールは、参照領域に含まれる2以上の元データの全ての値を選択する。また、例えば、
図8に示すように、参照領域に基準外の値の元データを含む場合には、変換ルールは、参照領域に含まれる2以上の元データのうちの基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を選択する。
【0042】
そして、変換ルールは、少なくとも、選択した1以上の元データの値を多数決し、対象位置の新データを多数決で決定された値とすることが記述される。例えば、変換ルールは、対象領域に含まれる9個のデータのうち値が0のデータ数が最も多い場合、対象位置の新データの値を0とし、1のデータ数が最も多い場合、対象位置の新データの値を1とすることが記述される。
【0043】
なお、変換ルールは、選択した1以上の元データの多数の値が複数種類存在する場合、対象位置の新データを、他のアルゴリズムにより決定された値とする。例えば、基準内の値が0または1の何れかである場合であって、多数決の結果、値が0のデータ数と値が1のデータ数とが同一の場合、変換ルールは、0または1の予め定められた一方を、対象位置の新データの値とすることが記述されてもよい。
【0044】
また、例えば、変換ルールは、選択した1以上の元データの多数の値が複数種類存在する場合、選択した1以上の元データの値に対象位置に対して所定の位置の元データの値を追加して、または、対象位置に対して所定の位置の元データの値を削減して多数決をし、対象位置の新データを多数決で決定された値とすることが記述されてもよい。すなわち、変換ルールは、選択した1以上の元データの多数の値が複数種類存在する場合、参照領域を変更して、再度多数決をし、対象位置の新データを多数決で決定された値とすることが記述されてもよい。また、例えば、変換ルールは、選択した1以上の元データの多数の値が複数種類存在する場合、選択した1以上の元データの値に対象位置の元データの値を追加して、または、対象位置の元データの値を削減して多数決をし、対象位置の新データを多数決で決定された値とすることが記述されてもよい。
【0045】
また、参照領域は、含まれるデータ数が奇数であることが好ましい。例えば、基準内の値が0または1であって、且つ、参照領域に含まれるデータ数が奇数である場合、多数決の勝者が0となるデータ配置のパターン数は、多数決の勝者が1となるデータ配置のパターン数と同一となる。しかし、基準内の値が0または1であって、且つ、参照領域に含まれるデータ数が偶数である場合、変換ルールは、0のデータ数と1のデータ数とが同数の時のルールが記述される。例えば、変換ルールは、0のデータ数と1のデータ数とが同数の場合、0または1の予め定められた方が勝者となるという記述がされる。この場合、多数決の勝者が0となるデータ配置のパターン数と、多数決の勝者が1となるデータ配置のパターン数と異なってしまい、新データの値から元データの値を逆解析できる可能性を高くしてしまう。従って、変換ルールは、含まれるデータ数が奇数である参照領域を設定することにより、逆解析できる可能性を低くすることができる。
【0046】
図9は、変換部26による変換処理の流れを示すフローチャートである。変換部26は、変換ルールに従って変換処理を実行する。変換ルールに従って処理を実行した場合、変換部26は、元データの位置毎にS22~S27の処理を実行する(S21とS28との間のループ処理)。
【0047】
S22において、変換部26は、対象位置の元データが、基準外の値であるか否かを判断する。本実施形態においては、変換部26は、対象位置の元データが-1であるか否かを判断する。対象位置の元データが基準外の値である場合(S22のYes)、例えば対象位置の元データが-1である場合、変換部26は、処理をS23に進める。対象位置の元データが基準外の値でない場合(S22のNo)、例えば対象位置の元データが0または1である場合、変換部26は、処理をS24に進める。
【0048】
S23において、変換部26は、対象位置の新データの値を、対象位置の元データの値とする処理を実行する。例えば、変換部26は、対象位置の新データの値を、-1とする処理を実行する。変換部26は、S23を終えると、処理をS28に進める。
【0049】
S24において、変換部26は、参照領域を特定する。参照領域は、対象位置を基準として予め定められた範囲である。より具体的には、参照領域は、少なくとも2以上のデータを含む領域であり、且つ、マップにおける対象位置に連続した領域である。
【0050】
続いて、S25において、変換部26は、参照領域に含まれる2以上の元データから基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を選択する。
【0051】
続いて、S26において、変換部26は、選択した1以上の元データの値を多数決する。例えば、変換部26は、選択した1以上の元データのうちの値が0のデータ数と、値が1のデータ数とを比較し、数が多い方の値を決定する。
【0052】
続いて、S27において、変換部26は、対象位置の新データを、多数決で決定された値とする処理を実行する。なお、多数の値が複数種類存在する場合、例えば、値が0のデータ数と値が1のデータ数とが同一の場合、変換部26は、他のアルゴリズムにより、何れか1つの種類の値を決定し、対象位置の新データを、他のアルゴリズムにより決定された値とする。変換部26は、S27を終えると、処理をS28に進める。
【0053】
S28において、変換部26は、複数の元データの全てについて、S22からS27の処理を実行したか否かを判断する。そして、変換部26は、複数の元データの全てについて、S22からS27の処理を実行した場合には、本フローを終了する。
【0054】
変換部26は、以上のように処理を実行することにより、クラスタリング等の解析に影響を与えないように第1データ群を第2データ群に変換することができる。
【0055】
図10は、参照領域の第1変形例を示す図である。参照領域は、対象位置を基準として予め定められた範囲であって、少なくとも2以上のデータを含む領域であって、マップにおける対象位置に連続した領域であれば、どのような領域であってもよい。例えば、複数の元データが2次元マトリクス状のマップに配置されている場合、参照領域は、
図10に示すように、列方向の範囲と行方向の範囲が異なる領域であってもよい。
【0056】
図11は、参照領域の第2変形例を示す図である。例えば、複数の元データが2次元マトリクス状のマップに配置されている場合、参照領域は、
図11に示すように、対象位置に対して列方向および行方向のそれぞれに連続しており、斜め方向に連続していない領域であってもよい。例えば、参照領域は、対象位置のデータ、対象位置の右側のデータ、対象位置の左側のデータ、対象位置の上側のデータ、および、対象位置の下側のデータの5つのデータを含む領域であってもよい。
【0057】
図12は、参照領域の第3変形例を示す図である。例えば、複数の元データが2次元マトリクス状のマップに配置されている場合、参照領域は、
図12に示すように、対象位置に対して斜め方向のそれぞれに連続しており、列方向および行方向に連続していない領域であってもよい。例えば、参照領域は、対象位置のデータ、対象位置の斜上右側のデータ、対象位置の斜上左側のデータ、対象位置の斜下右側のデータ、および、対象位置の斜下左側のデータの5つのデータを含む領域であってもよい。
【0058】
図13は、多数決処理の変形例を示す図である。例えば、変換ルールは、参照領域に含まれる2以上のデータのそれぞれに対して参照領域の中の位置に応じて予め定められた対応する票数を割り当てることが記述されてもよい。そして、変換ルールは、選択した1以上の元データの値に割り当てられた票数の合計を多数決し、対象位置の新データを多数決で決定された値とすることが記述されてもよい。
【0059】
例えば、複数の元データが2次元マトリクス状のマップに配置されており、参照領域が、対象位置および対象位置の周囲の合計9個のデータである場合、対象位置に3票が割り当てられ、対象位置に対して左右および上下方向のデータのそれぞれに2票が割り当てられ、対象位置に対して斜め方向のデータのそれぞれに1票が割り当てられてもよい。なお、この場合、参照領域に割り当てられた合計の票数は、奇数であることが好ましい。
【0060】
図14は、1次元マップに配置された複数の元データおよび参照領域を示す図である。複数の元データおよび複数の元データが配置されるマップは、1次元以上であれば、どのような構成であってもよい。例えば、複数の元データが1次元のマップに配置される場合、参照領域は、対象位置のデータと、対象位置の前後の所定個のデータを含む。例えば、
図14の例では、参照領域は、対象位置(i)のデータと、対象位置(i-1)の1つ前のデータと、対象位置(i+1)の1つ後ろのデータを含む。
【0061】
図15は、3次元マップに配置された複数の元データおよび参照領域を示す図である。例えば、
図15の例では、参照領域は、対象位置(k,i,j)のデータと、対象位置(k,i,j)の3方向の周囲の26個のデータを含む。
【0062】
図16は、変形例に係る変換装置10の機能構成を示す図である。変換装置10は、
図16に示すような構成であってもよい。
【0063】
変形例において、ルール出力部24は、第1データ群を取得する。そして、ルール出力部24は、第1データ群の種類毎に、異なる種類の変換ルールを変換部26に出力する。例えば、ルール出力部24は、第1データ群のマップの種類によって異なる変換ルールを出力してもよい。また、例えば、ルール出力部24は、第1データ群に含まれる総データ数に応じて異なる変換ルールを出力してもよい。また、例えば、ルール出力部24は、データがとり得る値の種類に応じて異なる変換ルールを出力してもよい。
【0064】
また、変形例において、ルール出力部24は、変換対象のデータの対象位置に応じて、異なる種類の変換ルールを変換部26に出力してもよい。例えば、ルール出力部24は、一定のデータ数毎に変換ルールを切り替えて出力してもよい。
【0065】
以上のような変換装置10は、第1データ群に対して予め定められた変化率以上変化した第2データ群を出力することができる。これにより、変換装置10は、第2データ群を取得する会社等に対して、第1データ群の内容を秘匿化することができる。さらに、変換装置10は、対象位置の元データが基準内の値の場合、値を変更しない。そして、変換装置10は、対象位置の元データが基準内の値の場合、参照領域に含まれる2以上の元データから基準外の値の元データを除いた1以上の元データのそれぞれの値を多数決し、対象位置の新データを多数決で決定された値とする。これにより、変換装置10は、クラスタリング等の解析に影響を与えないように、第1データ群を第2データ群に変換することができる。
【0066】
以上により、変換装置10によれば、第1データ群を適切に第2データ群に変換することができる。
【0067】
(ハードウェア構成)
図17は、実施形態に係る変換装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。変換装置10は、例えば
図17に示すようなハードウェア構成のコンピュータにより実現される。変換装置10は、CPU(Central Processing Unit)301と、RAM(Random Access Memory)302と、ROM(Read Only Memory)303と、操作入力装置304と、表示装置305と、記憶装置306と、通信装置307とを備える。そして、これらの各部は、バスにより接続される。
【0068】
CPU301は、プログラムに従って演算処理および制御処理等を実行するプロセッサである。CPU301は、RAM302の所定領域を作業領域として、ROM303および記憶装置306等に記憶されたプログラムとの協働により各種処理を実行する。
【0069】
RAM302は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のメモリである。RAM302は、CPU301の作業領域として機能する。ROM303は、プログラムおよび各種情報を書き換え不可能に記憶するメモリである。
【0070】
操作入力装置304は、マウスおよびキーボード等の入力デバイスである。操作入力装置304は、ユーザから操作入力された情報を指示信号として受け付け、指示信号をCPU301に出力する。
【0071】
表示装置305は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示デバイスである。表示装置305は、CPU301からの表示信号に基づいて、各種情報を表示する。
【0072】
記憶装置306は、フラッシュメモリ等の半導体による記憶媒体、または、磁気的若しくは光学的に記録可能な記憶媒体等にデータを書き込みおよび読み出しをする装置である。記憶装置306は、CPU301からの制御に応じて、記憶媒体にデータの書き込みおよび読み出しをする。通信装置307は、CPU301からの制御に応じて外部の機器とネットワークを介して通信する。
【0073】
コンピュータで実行される変換プログラムは、入力モジュールと、ルール出力モジュールと、変換モジュールと、変化率算出モジュールと、出力制御モジュールとを含むモジュール構成となっている。このプログラムは、CPU301(プロセッサ)によりRAM302上に展開して実行されることにより、コンピュータを入力部22、ルール出力部24、変換部26、変化率算出部28、および、出力制御部30として機能させる。なお、入力部22、ルール出力部24、変換部26、変化率算出部28、および、出力制御部30の一部または全部は、ハードウェア回路により実現されてもよい。
【0074】
また、コンピュータで実行されるプログラムは、コンピュータにインストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、CD-ROM、フレキシブルディスク、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0075】
また、このプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、このプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、変換装置10で実行されるプログラムを、ROM303等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10 変換装置
22 入力部
24 ルール出力部
26 変換部
28 変化率算出部
30 出力制御部