(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】建物からの視認性評価方法及び建物からの視認性評価システム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20231128BHJP
【FI】
G06T19/00 A
(21)【出願番号】P 2020209380
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】相川 隆
(72)【発明者】
【氏名】樋村 恭一
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036745(JP,A)
【文献】特開2012-043278(JP,A)
【文献】特開2011-210006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用い、一つ又は複数の建物が立ち並ぶ区域の三次元モデルを生成するモデル生成工程と、
前記モデル生成工程において生成した前記三次元モデルにおける前記建物の外側の任意の箇所に観測点を設定する観測点設定工程と、
一つ又は複数の前記建物における複数の開口部を前記観測点から見た場合の視角をそれぞれ測定する視角測定工程と、
前記視角測定工程においてそれぞれ測定した複数の前記視角の合計値を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出した前記合計値に基づいて前記区域の前記観測点における建物からの視認性を評価する評価工程と、を有することを特徴とする建物からの視認性評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建物からの視認性評価方法において、
前記視角測定工程において、前記開口部における水平方向一端側の第一の点と前記観測点とを通る第一の直線と、前記開口部における水平方向他端側の第二の点と前記観測点とを通る第二の直線と、がなす角の角度である開口角に基づいて前記視角を測定することを特徴とする建物からの視認性評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載の建物からの視認性評価方法において、
前記モデル生成工程において、前記三次元モデルとして、前記建物の前方に遮蔽物が設けられた区域のものを生成し、
前記遮蔽物が、前記観測点から見たときの前記開口部の少なくとも一部を遮蔽しているか否かを判定する判定工程を更に有し、
前記判定工程において前記遮蔽物が前記開口部の少なくとも一部を遮蔽していると判定した場合、前記視角測定工程において、前記第一の直線及び前記第二の直線を含む平面と前記開口部を含む平面に投影された前記遮蔽物の投影像との交線における一端側の第三の点と前記観測点とを通る第三の直線と、前記交線における他端側の第四の点と前記観測点とを通る第四の直線と、がなす角のうち、前記第一の直線と前記第二の直線とがなす角と重複する部分の角度である遮蔽角を測定し、前記開口角から前記遮蔽角を差し引いた角を前記視角とすることを特徴とする建物からの視認性評価方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の建物からの視認性評価方法において、
前記観測点設定工程において、前記観測点を、地面から鉛直方向に任意の高さだけ離れた箇所に設定することを特徴とする建物からの視認性評価方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の建物からの視認性評価方法において、
前記モデル生成工程において、前記三次元モデルとして、前記建物の前方に道路が設けられた区域のものを生成し、
前記観測点設定工程において、前記観測点を、前記道路を通る鉛直線上に設定することを特徴とする建物からの視認性評価方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の建物からの視認性評価方法において、
前記算出工程の終了後、次の観測点設定工程において、前の前記観測点設定工程において設定した前記観測点とは異なる位置に新たな観測点を設定し、
次の視角測定工程において、新たな前記観測点に基づいて、複数の開口部を新たな前記観測点から見た場合の視角をそれぞれ測定し、
次の前記算出工程において、新たに測定した複数の前記視角の合計値を算出し、
前記評価工程において、複数の前記合計値に基づいて前記区域の建物からの視認性を評価することを特徴とする建物からの視認性評価方法。
【請求項7】
一つ又は複数の建物が立ち並ぶ区域の三次元モデルを生成するモデル生成手段と、
前記モデル生成手段が生成した前記三次元モデルにおける前記建物の外側の任意の箇所に観測点を設定する観測点設定手段と、
一つ又は複数の前記建物における複数の開口部を前記観測点から見た場合の視角をそれぞれ測定する視角測定手段と、
前記視角測定手段がそれぞれ測定した複数の前記視角の合計値を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする建物からの視認性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物からの視認性評価方法及び建物からの視認性評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の防犯性能の評価技術が従来提案されている。
例えば特許文献1には、複数の建物が密集した地域に対する防犯性評価に用いられる防犯マップであって、街路を示す街路表示領域が、前記街路に面して配置される前記複数の建物のそれぞれの宅地毎に区画され、当該区画された領域毎に防犯性評価値が表示されており、防犯性評価値は、複数の建物のうち街路に面して配置される建物の街路に面する開口部の数を、当該建物の宅地の前記街路に面する間口寸法を示す値で除した値である防犯マップについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防犯環境設計(CPTED)では、自然監視性の要素に、建物や街にいる住民等から敷地や街路に居る人に対する自然な監視が挙げられている。
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の防犯性能評価方法は、街路上における防犯性能を評価することしかできなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一つの建物が建つ又は複数の建物が立ち並ぶ区域において周囲の建物から視認されにくい箇所を見つける等の、区域に関する各種評価を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、建物からの視認性評価方法において、例えば
図1~6,8~10に示すように、
コンピュータ(演算装置2)を用い、一つ又は複数の建物B
1,B
2・・が立ち並ぶ区域の三次元モデルMを生成するモデル生成工程と、
前記モデル生成工程において生成した前記三次元モデルMにおける前記建物B
1,B
2・・の外側の任意の箇所に観測点A
m(1≦m≦M)を設定する観測点設定工程と、
一つ又は複数の前記建物B
1,B
2・・における複数の開口部K
1,K
2・・K
Nを前記観測点A
mから見た場合の視角θ
m1,θ
m2・・θ
mNをそれぞれ測定する視角測定工程と、
前記視角測定工程においてそれぞれ測定した複数の前記視角θ
m1・・θ
mNの合計値Σθ
mを算出する算出工程と、
前記算出工程において算出した前記合計値Σθmに基づいて前記区域の前記観測点A
mにおける建物からの視認性を評価する評価工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
この合計値Σθmは、建物B1,B2・・の外(敷地G、道路R等)の観測点Amに居る人が視認可能な開口部K1・・KNの多さや大きさを示す。観測点Amから視認可能な開口部K1・・KNの数が少ない(多い)あるいは小さい(大きい)ということは、一つ又は複数の建物B1,B2・・の中に居る人が、各開口部K1・・KNを通して観測点Amに居る人を視認している可能性が低い(高い)ことを意味する。すなわち、三次元モデルMの複数個所において、この合計値Σθmを算出することにより、区域における周囲の建物からの視認性(被監視性)の低い場所を明らかにすることができる。
このため、請求項1に記載の発明によれば、建物B1,B2・・の敷地Gの外、又は一つもしくは複数の建物B1,B2・・が立ち並ぶ区域における各種評価を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物からの視認性評価方法において、例えば
図4~6,8に示すように、
前記視角測定工程において、前記開口部K
n(1≦n≦N)における水平方向一端側の第一の点P
nと前記観測点A
mとを通る第一の直線A
mP
nと、前記開口部K
nにおける水平方向他端側の第二の点Q
n(1≦n≦N)と前記観測点A
mとを通る第二の直線A
mQ
nと、がなす角P
nA
mQ
nの角度である開口角θ
Aに基づいて前記視角θ
mnを測定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、視角θmnを容易に測定することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の建物からの視認性評価方法において、例えば
図4,7,8に示すように、
前記モデル生成工程において、前記三次元モデルMとして、前記建物B
1,B
2・・の前方に遮蔽物Sが設けられた区域のものを生成し、
前記遮蔽物Sが、前記観測点A
mから見たときの前記開口部K
nの少なくとも一部を遮蔽しているか否かを判定する判定工程を更に有し、
前記判定工程において前記遮蔽物Sが前記開口部K
nの少なくとも一部を遮蔽していると判定した場合、前記視角測定工程において、前記第一の直線A
mP
n及び前記第二の直線A
mQ
nを含む平面と前記開口部K
1・・K
Nを含む平面Lに投影された前記遮蔽物Sの投影像S
Pとの交線P
nQ
nにおける一端側の第三の点R
nと前記観測点A
mとを通る第三の直線A
mR
nと、前記交線P
nQ
nにおける他端側の第四の点S
nと前記観測点A
mとを通る第四の直線A
mS
nと、がなす角R
nA
mS
nのうち、前記第一の直線A
mP
nと前記第二の直線A
mQ
nとがなす角P
nA
mQ
nと重複する部分の角度である遮蔽角θ
Bを測定し、前記開口角θ
Aから前記遮蔽角θ
Bを差し引いた角を前記視角θ
mnとすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、視角θmnの測定に、遮蔽物Sによって開口部Knの視認範囲が狭められる分を反映させるため、視角θmnの測定をより正確に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の建物からの視認性評価方法において、例えば
図5,6,9,11に示すように、
前記観測点設定工程において、前記観測点A
mを、地面から鉛直方向に任意の高さだけ離れた箇所に設定することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、観測点Amを地面から離すことにより、観測点Amが(周囲の建物B1,B2・・の開口部K1・・KNから見られていると感じる)人の目線の高さに近づくため、視角θmnの測定をより現実の区域に即した形で行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の建物からの視認性評価方法において、例えば
図3,8,11に示すように、
前記モデル生成工程において、前記三次元モデルMとして、前記建物B
1,B
2・・の前方に道路Rが設けられた区域のものを生成し、
前記観測点設定工程において、前記観測点A
mを、前記道路Rを通る鉛直線上に設定することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、観測点Amが(周囲の建物B1,B2・・の開口部K1・・KNから見られていると感じる)、人が区域内を移動する際の経路上に位置することになるため、視角θmnの測定をより現実の区域に即した形で行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の建物からの視認性評価方法において、例えば
図3,8~10に示すように、
前記算出工程の終了後、次の観測点設定工程において、前の前記観測点設定工程において設定した前記観測点A
mとは異なる位置に新たな観測点A
m+1を設定し、
次の視角測定工程において、新たな前記観測点A
m+1に基づいて、複数の開口部K
1・・K
Nを新たな前記観測点A
m+1から見た場合の視角θ
(m+1)1・・θ
(m+1)nをそれぞれ測定し、
次の前記算出工程において、新たに測定した複数の前記視角θ
(m+1)1・・θ
(m+1)nの合計値Σθ
m+1を算出し、
前記評価工程において、複数の前記合計値Σθ
m,Σθ
m+1に基づいて前記区域の建物からの視認性を評価することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、区域全体の建物からの視認性の評価(相対的に建物からの視認性の高い(低い)箇所の特定、建物からの視認性の高低の分布等)が可能となる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、建物からの視認性評価システムにおいて、例えば
図1~6,8に示すように、
一つ又は複数の建物B
1,B
2・・が立ち並ぶ区域の三次元モデルMを生成するモデル生成手段と、
前記モデル生成手段が生成した前記三次元モデルMにおける前記建物B
1,B
2・・の外側の任意の箇所に観測点A
mを設定する観測点設定手段と、
一つ又は複数の前記建物B
1,B
2・・における複数の開口部K
1・・K
Nを前記観測点A
mから見た場合の視角θ
m1・・θ
mNをそれぞれ測定する視角測定手段と、
前記視角測定手段がそれぞれ測定した複数の前記視角θ
m1・・θ
mNの合計値Σθ
mを算出する算出手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、建物B1,B2・・の敷地Gの外、又は一つ又は複数の建物B1,B2・・が立ち並ぶ区域全体の建物からの視認性を評価することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、建物B1,B2・・の敷地Gの外、又は一つもしくは複数の建物B1,B2・・が立ち並ぶ区域における各種評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る建物からの視認性評価システムを示すブロック図である。
【
図2】
図1の建物からの視認性評価システムが備えるモデル生成装置(演算装置)を示すブロック図である。
【
図3】
図2のモデル生成装置が生成する三次元モデルの一例を示す図である。
【
図4】
図2の演算装置が実行する指標値算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図2の演算装置による開口角の測定方法を示す図である。
【
図6】観測点に立つ人から見た開口部の位置と開口角との関係を示す図である。
【
図7】遮蔽物が、観測点から見たときの開口部の少なくとも一部を遮蔽している状態を示す図である。
【
図8】
図2の演算装置による視角の合計値の算出方法を示す図である。
【
図9】
図1の建物からの視認性評価システムが備える表示装置が表示する(
図2の演算装置が出力する)視角の合計値の一例を示すグラフである。
【
図10】
図1の建物からの視認性評価システムが備える表示装置が表示する(
図2の演算装置が出力する)視角の合計値の他の例を示す表である。
【
図11】本発明における建物からの視認性(自然監視性)の考え方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
<1.建物からの視認性評価システム>
はじめに、本実施形態に係る建物からの視認性評価システム(以下、システム100)の概略構成について説明する。
図1はシステム100を表すブロック図である。
【0024】
システム100は、
図1に示すように、モデル生成装置1と、演算装置2と、を備えている。
また、本実施形態に係るシステム100は、表示装置3を更に備えている。
各装置1~3は、例えば通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0025】
〔1-1.モデル生成装置〕
モデル生成装置1は、一つ又は複数の建物が立ち並ぶ区域の三次元モデルを生成するものである。
モデル生成装置1は、PC、専用の装置等で構成されている。
このモデル生成装置1の詳細については後述する。
【0026】
〔1-2.演算装置〕
演算装置2は、三次元モデルに基づいて、建物からの視認性(被監視性)を評価するための指標値を算出するものである。
表示装置3は、PC、専用の装置等で構成されている。
この演算装置2の詳細についても後述する。
【0027】
〔1-3.表示装置〕
表示装置3は、演算装置2の演算結果を表示するためのものである。
表示装置3は、PC、携帯端末、専用の装置等で構成されている。
表示装置3は、表示部31を有している。
表示部31は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等で構成されている。
そして、演算装置2から受信した情報(指標値等)に基づく各種画面を表示部31に表示するようになっている。
【0028】
〔1-4.建物からの視認性評価システムその他〕
なお、システム100は、モデル生成装置1及び表示装置3の少なくとも一方の装置が、演算装置2と一体になったものであってもよい。
また、システム100は、モデル生成装置1を備えていなくてもよい。すなわち、システム100は、三次元モデルMをシステム100の外の他の装置から取得するようになっていてもよい。
また、システム100は、表示装置3を備えていなくてもよい。すなわち、システム100は、演算装置2の演算結果をシステム100の外の他の装置へ出力するようになっていてもよい。
【0029】
<2.モデル生成装置の詳細>
次に、上記システム100が備えるモデル生成装置1の詳細について説明する。
図2はモデル生成装置1を表すブロック図、
図3はモデル生成装置1が生成する三次元モデルMの一例を示す図である。
なお、
図2における括弧書きの符号及び名称は、後述する演算装置2のものである。
【0030】
〔2-1.モデル生成装置の構成〕
モデル生成装置1は、
図2に示すように、第一制御部11と、第一記憶部12と、第一通信部13と、を備えている。
各部11~13は、バス等で電気的に接続されている。
【0031】
第一制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、第一制御部11のCPUは、第一記憶部12に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、モデル生成装置1各部の動作を集中制御するようになっている。
【0032】
第一記憶部12は、不揮発性のメモリー、ハードディスク等により構成されている。
また、第一記憶部12は、第一制御部11が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶している。
なお、第一記憶部12は、生成した三次元モデルのデータを記憶することが可能となっていてもよい。
【0033】
第一通信部13は、通信モジュール等で構成されている。
そして、第一通信部13は、通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して有線又は無線で接続された他の装置(演算装置2、表示装置3等)との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
【0034】
〔2-2.モデル生成装置の動作〕
上記のように構成されたモデル生成装置1の第一制御部11は、所定条件が成立したことを契機として、モデル生成処理を実行する。
所定条件には、例えば、モデル生成装置1の電源がオンにされたこと、他の装置(演算装置2、表示装置3等)から所定の制御信号を受信したこと、モデル生成装置1に所定操作がなされたこと等が含まれる。
【0035】
このモデル生成処理において、第一制御部11は、例えば一つの建物が建つ区域の三次元モデルM又は
図3に示すような複数の建物B1,B2・・が立ち並ぶ区域の三次元モデルMを生成する。
三次元モデルMの生成には、従来知られた各種方法を用いることができる。
建物B
1,B
2・・は、住宅であってもよいし、店舗、ビル等であってもよい。
また、
図3に示した建物B
1,B
2・・は、全て大きさが等しい矩形となっているが、これらのうちの少なくともいずれかは大きさ及び形状のうちの少なくとも一方が異なっていてもよい。
また、モデル生成処理において、第一制御部11は、三次元モデルMとして、少なくとも一部の建物B
1,B
2・・が開口部K
1,K
2・・K
Nを有するものを生成する。
本実施形態に係る三次元モデルMの開口部K
1・・K
Nは、いずれも、矩形であり、且つ上辺及び下辺が水平に延び、左右側辺が鉛直に延びた窓となっている。
なお、開口部K
1・・K
Nの形状は、矩形以外であってもよい。
【0036】
また、本実施形態に係るモデル生成処理において、第一制御部11は、三次元モデルMとして、建物B1,B2・・の少なくとも前方に道路Rが設けられた区域のものを生成する。
また、本実施形態に係るモデル生成処理において、第一制御部11は、三次元モデルMに区域の特性を紐づける。
具体的には、第一制御部11は、区域の特性として、例えば、地形の関係(日光が山に遮られる等の理由)で暗くなる時間が早い、街頭に設置されている街灯の数が多い/少ない等の情報を紐づける。
【0037】
また、本実施形態に係るモデル生成処理において、第一制御部11は、三次元モデルM内に、X軸、Y軸及びZ軸をそれぞれ設定する。
本実施形態のように道路Rが設けられた区域の三次元モデルMを生成する場合、第一制御部11は、建物B1,B2・・の前方に位置する道路Rの中心線をX軸に設定してもよい。
【0038】
また、本実施形態に係るモデル生成処理において、第一制御部11は、建物B1,B2・・の各開口部K1・・KNに、X軸、当該開口部K1・・KNの存在範囲を規定するための情報を紐づける。
具体的には、第一制御部11は、存在範囲を規定するための情報として、例えば、Y軸及びZ軸の交点を原点Oとしたときの開口部K1・・KNの四隅の座標を紐づける。
また、本実施形態に係るモデル生成処理において、第一制御部11は、各開口部K1・・KNに、各々の特性を紐づける。
具体的には、第一制御部11は、開口部K1・・KNの特性として、例えば、曇りガラスの窓がはめ込まれている、外側(観測点との間)にフェンスが設けられている等の情報を紐づける。
【0039】
なお、本実施形態に係るモデル生成処理において、第一制御部11は、三次元モデルMにおいて、開口部K1・・KN・・と任意の観測点(詳細後述)との間に存在し、視角の算出に影響を与え得る物体を遮蔽物Sとして設定するようになっていてもよい。
遮蔽物Sは、塀、柵、植栽及び建物B1,B2・・の躯体、電柱、標識、看板等、何であってもよい。
三次元モデルMにおける遮蔽物Sは、従来ある描画技術を用いてポリゴンで表すことができる。
【0040】
また、この場合、第一制御部11は、遮蔽物Sに、当該遮蔽物Sの存在範囲を規定するための情報を紐づける。
例えば、遮蔽物Sの形状が長方形である場合、第二制御部21は、存在範囲を規定するための情報として、例えば、長方形の四隅の座標を遮蔽物Sに紐づける。
また、遮蔽物Sの形状が円柱である場合、第二制御部21は、存在範囲を規定するための情報として、例えば、円柱の上面の中心の座標及び上面(円)の半径を遮蔽物Sに紐づける。
また、遮蔽物Sの形状が球である場合、第二制御部21は、存在範囲を規定するための情報として、例えば、球の中心の座標及び球の半径を遮蔽物Sに紐づける。
また、遮蔽物Sの形状が直方体である場合、第二制御部21は、存在範囲を規定するための情報として、例えば、直方体の上面の四隅の座標を遮蔽物Sに紐づける。
【0041】
第一制御部11は、以上説明してきたモデル生成処理を実行することにより、システム100におけるモデル生成手段をなす。
また、モデル生成処理を実行することは、建物からの視認性評価方法におけるモデル生成工程に相当する。
【0042】
<3.演算装置の詳細>
次に、上記システム100が備える演算装置2の詳細について説明する。
図4は演算装置2が実行する指標値算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
〔3-1.演算装置の構成〕
演算装置2は、
図2に示したように、第二制御部21と、第二記憶部22と、第二通信部23と、を備えている。
各部21~23は、バス等で電気的に接続されている。
【0044】
第二制御部21は、CPU、RAM等により構成されている。
そして、第二制御部21のCPUは、第二記憶部22に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、演算装置2各部の動作を集中制御するようになっている。
【0045】
第二記憶部22は、不揮発性のメモリー、ハードディスク等により構成されている。
また、第二記憶部22は、第二制御部21が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶している。
なお、第二記憶部22は、演算装置2から取得した三次元モデルMのデータを記憶することが可能となっていてもよい。
【0046】
第二通信部23は、通信モジュール等で構成されている。
そして、第二通信部23は、通信ネットワークNを介して有線又は無線で接続された他の装置(モデル生成装置1、表示装置3等)との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
【0047】
〔3-2.演算装置の動作〕
上記のように構成された演算装置2の第二制御部21は、所定条件が成立したことを契機として、例えば
図4に示すような指標値算出処理を実行する。
所定条件には、例えば、演算装置2の電源がオンにされたこと、モデル生成装置1から三次元モデルMのデータを取得したこと、他の装置(モデル生成装置1、表示装置3等)から所定の制御信号を受信したこと、演算装置2に所定操作がなされたこと等が含まれる。
【0048】
この指標値算出処理において、第二制御部21は、まず、取得処理を実行する(ステップS1)。
この取得処理において、第二制御部21は、モデル生成装置1から三次元モデルMのデータを取得する。
本実施形態に係る取得処理において、第二制御部21は、第二通信部23にデータを受信させることにより取得する。
なお、この取得処理において、第二制御部21は、図示しない読取部に記憶媒体(例えばUSBメモリ、SDカード等)に記憶されたデータを読み取らせることにより取得するようになっていてもよい。
また、データの取得が指標値算出処理を開始する契機となっている場合、この取得処理は不要である。
【0049】
三次元モデルMのデータを取得した後、第二制御部21は、観測点設定処理を実行する(ステップS2)
この観測点設定処理において、第二制御部21は、取得した(モデル生成装置1が生成した)三次元モデルMにおける建物B1,B2・・の外側の任意の箇所(座標)に観測点Am(1≦m≦M)を設定する。
本実施形態に係る観測点設定処理において、第二制御部21は、観測点Amを、地面から鉛直方向(Z方向)に任意の高さだけ離れた箇所に設定する。
設定する高さは、例えば、平均的な身長の人の目線の高さとしてもよい。
このように、本実施形態に係る観測点設定処理においては、観測点Amを地面から離すことにより、観測点Amが(周囲の建物B1,B2・・の開口部K1・・KNから見られていると感じる)人の目線の高さに近づくため、視角θm1・・θmNの測定をより現実の区域に即した形で行うことができる。
【0050】
なお、三次元モデルMが道路Rの設けられた区域のものである場合、観測点設定処理において、第二制御部21は、観測点Amを、道路Rを通る鉛直線上に設定するようになっていてもよい。
このようにすれば、観測点Amが、(周囲の建物B1,B2・・の開口部K1・・KNから見られていると感じる)人が区域内を移動する際の経路上に位置することになるため、後述する視角θm1・・θmNの測定をより現実の区域に即した形で行うことができる。
【0051】
本実施形態に係る第二制御部21は、以上説明してきた観測点設定処理を実行することにより、システム100における観測点設定手段をなす。
また、第二制御部21が観測点設定処理を実行することは、建物からの視認性評価方法における観測点設定工程に相当する。
【0052】
観測点A
mを設定した後、第二制御部21は、視角測定処理を実行する(ステップS3)。
この視角測定処理において、第二制御部21は、まず、一つ又は複数の建物B
1,B
2・・における複数の開口部K
1・・K
Nを観測点A
mから見た場合の視角θ
m1・・θ
mNをそれぞれ測定する(ステップS31)。
複数の開口部K
1・・K
Nは、観測点A
mから視認可能な全てのものとしてもよいし、その一部(例えば、観測点A
mを設定した道路Rに面した開口部K
1・・K
N等)としてもよい。
本実施形態に係る視角測定処理において、第二制御部21は、開口角θ
Aに基づいて視角θ
m1・・θ
mNを測定する。
開口角θ
Aは、例えば
図5に示すような、開口部K
nにおける水平方向一端側の第一の点P
nと観測点A
mとを通る第一の直線A
mP
nと、開口部K
nにおける水平方向他端側の第二の点Q
nと観測点A
mとを通る第二の直線A
mQ
nと、がなす角P
nA
mQ
nの角度である。
【0053】
本実施形態に係る視角測定処理において、第二制御部21は、第一の点Pnを、開口部Knにおける一方の側辺の中間部に設定し、第二の点Qnを、開口部Knの他方の側辺における第一の点Pnと同じ高さに設定する。
なお、第一の点Pnの高さと第二の点Qnの高さは異なっていてもよい。
そして、下記式(1)を用いて開口角θAを算出する。
θA=arccos(AmPn×AmQn/|AmPn|×|AmQn|)・・(1)
【0054】
この視角測定処理において算出される開口角θ
Aは、
図6(a)に示すように、間口(X軸)方向に離れた開口部K
nのものほど(開口部K
nと観測点A
mとを結ぶ直線とX軸とがなす角の角度が小さくなるほど)小さくなる。
また、算出される開口角θ
Aは、
図6(b)に示すように、奥行き(Y軸)方向に離れた開口部K
nのものほど(開口部K
nが観測点A
mから遠のくほど)小さくなる。
また、算出される開口角θ
Aは、
図6(c)に示すように、高さ(Z軸)方向に離れた開口部K
nのものほど(開口部K
nと観測点A
mとを結ぶ直線とZ軸とがなす角の角度が小さくなるほど)小さくなる。
また、算出される開口角θ
Aは、
図6(d)に示すように、開口部K
nの間口(X軸)方向の幅が小さくなる程小さくなる。
すなわち、開口角θ
Aは、各開口部K
1・・K
Nから観測点A
mに立つ人の視認のし易さを示す一つの指標となる。
【0055】
開口角θ
Aを測定した後、第二制御部21は、
図4に示したように、遮蔽物Sが、観測点A
mから見たときの開口部K
nの少なくとも一部を遮蔽しているか否かを判定する(ステップS32)。
本実施形態に係る視角測定処理において、第二制御部21は、立体空間における二つの図形の交差判定(衝突判定)の手法を用いて判定を行う。
遮蔽物Sが長方形(壁、柵等)、球(背の低い植栽)又は直方体(建物B
1,B
2・・の躯体)である場合、第二制御部21は、例えば、各点の座標(ベクトル)に基づいて、長方形、球又は直方体が、観測点A
m、第一の点P
n及び第二の点Q
nの三点を頂点とする三角形A
mP
nQ
nと交差するか否かを判定する。
また、遮蔽物Sが円柱(背の高い植栽)である場合、第二制御部21は、観測点A
mを光源として円柱を開口部K
nを含む平面Lへ投影したときの投影像S
Pが、第一の点P
nと第二の点Q
nとを結ぶ線分と交差するか否かを判定する。
【0056】
そして、交差しない(接する場合を含む)との判定結果が出た場合、第二制御部21は、遮蔽物Sが開口部K
nを遮蔽していないと判定する。
一方、交差するとの判定結果が出た場合(例えば
図7に示すように、観測点A
mを通り遮蔽物Sに接点Cで接する直線A
mCと平面L(開口部K
nのある平面)との交点R
nが線分P
nQ
n上に存在するような場合)、第二制御部21は、遮蔽物Sが開口部K
nの少なくとも一部を遮蔽していると判定する。
【0057】
上記判定において、遮蔽物Sが、観測点Amから見たときの開口部Knを遮蔽していないと判定した場合(ステップS32:No)、第二制御部21は、測定した開口角θAをそのまま視角θmnとする(ステップS33)。
このように、遮蔽物Sが開口部Knを遮蔽していない場合、第二制御部21は、視角θmnを容易に測定することができる。
【0058】
一方、上記判定において遮蔽物Sが開口部K
nの少なくとも一部を遮蔽していると判定した場合(ステップS32:Yes)、第二制御部21は、
図4に示したように、遮蔽角θ
Bを測定する(ステップS34)。
遮蔽角θ
Bは、第一の直線A
mP
n及び第二の直線A
mQ
nを含む平面と開口部K
nを含む平面Lに投影された遮蔽物Sの投影像S
Pとの交線P
nQ
nにおける一端側の第三の点R
nと観測点A
mとを通る第三の直線A
mR
nと、交線P
nQ
nにおける他端側の第四の点S
nと観測点A
mとを通る第四の直線A
mS
nと、がなす角R
nA
mS
nのうち、第一の直線A
mP
nと第二の直線A
mQ
nとがなす角P
nA
mQ
nと重複する部分の角度である。
例えば、開口部K
1・・K
4及び遮蔽物Sが
図8に示すような配置となっている場合、第一の直線A
7P
1と第三の直線A
7R
1とがなす角P
1A
7R
1、第一の直線A
7P
2と第三の直線A
7R
2とがなす角P
2A
7R
2及び第一の直線A
7P
3と第三の直線A
7R
3とがなす角P
3A
7R
3が遮蔽角θ
Bとなる。
このようにすれば、遮蔽角θ
Bを容易に測定することができる。
【0059】
そして、第二制御部21は、
図4,8に示したように、開口角θ
Aから遮蔽角θ
Bを差し引いた角を視角θ
mnとする(ステップS35)。
このように、遮蔽物Sが開口部K
nを遮蔽している場合、第二制御部21は、遮蔽物Sによって開口部K
nの視認範囲が狭められる分を反映させるため、視角θ
mnの測定をより正確に行うことができる。
【0060】
この後、第二制御部21は、必要に応じて、上記開口部Kn以外の開口部Kn+1・・KNの視角θm(n+1)・・θmNの測定を繰り返す。
これにより、複数の開口部K1・・KNを観測点Amから見た場合の各視角θm1・・θmNが得られる。
【0061】
複数の視角θm1・・θmNを測定した後、第二制御部21は、測定した複数の視角θm1・・θmNのうち、視認性低下の要因となる特性を有した開口部K1・・KNに対応する視角θm1・・θmNの値を補正する。
具体的には、視角θm1・・θmNに特性に応じた係数を乗じて補正された視角θm1・・θmNを算出する。
なお、各開口部K1・・KNに視認性低下の要因となる特性が全く紐づけられていない場合には、この第一補正処理をスキップしてもよい。
【0062】
本実施形態に係る第二制御部21は、以上説明してきた視角測定処理を実行することにより、システム100における視角測定手段及び判定手段をなす。
また、第二制御部21が視角測定処理を実行することは、建物からの視認性評価方法における視角測定工程及び判定工程に相当する。
【0063】
なお、三次元モデルMに、開口部K1・・KNの座標及び遮蔽物Sの座標が紐づけられていない場合、第二制御部21は、視角測定処理を実行する前に、三次元モデルMから開口部K1・・KN及び遮蔽物Sの座標を検出する処理を実行するようになっていてもよい。
また、三次元モデルMが遮蔽物Sの存在しない区域のものである場合、視角判定処理においてステップS32,S34,S35の処理は不要である。
【0064】
複数の視角θm1・・θmNを測定した後、又は少なくとも一部の視角θm1・・θmNを補正した後、第二制御部21は、算出処理を実行する(ステップS4)。
この算出処理において、第二制御部21は、まず、視角測定処理においてそれぞれ測定した複数の視角θm1・・θmNの合計値Σθm(指標値)を算出する(ステップS41)。
なお、第二制御部21は、複数の視角θm1・・θmNのうちの一部の値(例えば最も小さい視角θmn以外の値)を合算して合計値Σθmとするようになっていてもよい。
【0065】
合計値Σθmを算出した後、第二制御部21は、算出した合計値Σθmの値を補正する(ステップS42)。
具体的には、合計値Σθmに区域の特性に応じた係数を乗じて補正された合計値Σθmを算出する。
なお、区域に特性が紐づけられていない場合には、この第二補正処理をスキップしてもよい。
【0066】
本実施形態に係る第二制御部21は、以上説明してきた算出処理を実行することにより、システム100における算出手段をなす。
また、第二制御部21が算出処理を実行することは、建物からの視認性評価方法における算出工程に相当する。
【0067】
合計値Σθm又は補正後の合計値Σθmを算出した後、第二制御部21は、必要に応じて、観測点設定処理、視角測定処理算出処理を繰り返す。
次の観測点設定工程において、第二制御部21は、前の観測点設定工程において設定した観測点Amとは異なる位置に新たな観測点Am+1・・AMを設定する。
また、次の視角測定処理において、第二制御部21は、新たな観測点Am+1・・AMに基づいて、複数の開口部K1・・KNを新たな観測点Am+1・・AMから見た場合の視角θ(m+1)1・・θ(m+1)N・・θM1・・θMNをそれぞれ測定する。
また、次の算出工程において、新たに測定した複数の視角θ(m+1)1・・θ(m+1)N・・θM1・・θMNの合計値Σθm+1・・ΣθMを算出する。
これにより、観測点Am,Am+1を含む複数の観測点A1・・AMにおける各合計値Σθ1・・ΣθMが得られる。
【0068】
少なくとも一つの合計値Σθ1・・ΣθMを算出した後、第二制御部21は、出力処理を実行する(ステップS5)。
この出力処理において、第二制御部21は、算出した少なくとも一つの合計値Σθ1・・ΣθMを出力する。
本実施形態に係る出力処理において、第二制御部21は、第二通信部23に、少なくとも一つの合計値Σθ1・・ΣθMのデータを表示装置3へ送信させる。
【0069】
表示装置3は、演算装置2から合計値Σθ
mを受信すると、合計値Σθ
mを表示部31に表示する。
具体的には、表示装置3は、例えば、
図9に示すような観測点A
1・・A
MのX座標を横軸、合計値Σθ
1・・Σθ
Mを縦軸とするグラフ、
図10に示すような観測点A
1・・A
MのX座標と合計値Σθ
1・・Σθ
Mとの関係を示す表等を表示する。
その後、評価者(人)は、表示装置3の表示部31に表示された(演算装置2が算出した)合計値Σθ
mに基づいて、区域の観測点A
mにおける建物からの視認性を評価する。
例えば、合計値Σθ
mを所定の閾値と比較し、合計値Σθ
mが閾値よりも高ければ観測点A
mにおける建物からの視認性は高いと評価し、閾値よりも低ければ建物からの視認性は低いと評価することができる。
【0070】
また、表示装置3は、演算装置2から複数の合計値Σθ1・・ΣθM(グラフ、表等)を受信すると、合計値Σθ1・・ΣθMを表示部31に表示する。
その後、評価者は、複数の合計値Σθ1・・ΣθMに基づいて区域の建物からの視認性を評価する。
例えば、上述した観測点Amにおける建物からの視認性の評価と同様の手法を用いて、他の観測点A1・・Am-1,Am+1・・AMにおける建物からの視認性を評価し、区域における建物からの視認性が相対的に高い箇所、相対的に低い個所を一覧化する。
このようにすれば、区域全体の建物からの視認性の評価(相対的に建物からの視認性の高い(低い)箇所の特定、建物からの視認性の高低の分布等)が可能となる。
【0071】
以上説明してきた評価者が建物からの視認性を評価することは、建物からの視認性評価方法における評価工程に相当する。
なお、建物からの視認性の評価と同様の手法を用いて、建物からの視認性以外に、例えば区域の防犯性能を評価することもできる。
【0072】
〔3-3.演算装置その他〕
なお、上記指標値算出処理において、合計値Σθ1・・ΣθMを算出した後、第二制御部21は、評価処理を実行するようになっていてもよい。
この場合、評価処理において、第二制御部21は、上記評価者による建物からの視認性の評価作業のうちの少なくとも一部を、評価者に代わって行う。
また、この場合、第二制御部21は、例えば、合計値Σθ1・・ΣθMを入力、当該観測点における建物からの視認性の高さ(又は空間の環境特性に関する値、例えば防犯性能等の高さ)を出力として機械学習させた学習済モデルを用いて、ある観測点A1・・Am-1,Am+1・・AMにおける建物からの視認性(又は空間の環境特性に関する値、例えば防犯性能)を自動的に評価するようになっていてもよい。
また、この場合、出力処理において、第二制御部21は、第二通信部23に、少なくとも一つの合計値Σθ1・・ΣθMの代わりに建物からの視認性の評価結果を表示装置3へ送信させるようになっていてもよい。
【0073】
また、演算装置2は、指標値算出処理を実行する前に、上記モデル生成装置1が実行していたモデル生成処理をモデル生成装置1に代わって実行するようになっていてもよい。
この場合、システム100にモデル生成装置1は不要となる。
【0074】
また、演算装置2は、表示部を備えていてもよい。
この場合、出力処理において、第二制御部21は、複数の合計値Σθ1・・ΣθMを表示部に表示させるようになっていてもよい。
この場合、システム100に表示装置3は不要となる。
【0075】
<4.作用・効果>
以上説明してきた本実施形態に係る演算装置2を備えるシステム100は、一つ又は複数の建物B1,B2・・が立ち並ぶ区域の三次元モデルMを生成するモデル生成装置1(モデル生成手段)と、モデル生成装置1が生成した三次元モデルMにおける建物B1,B2・・の外側の任意の箇所に観測点A1・・AMを設定し、一つ又は複数の建物B1,B2・・における複数の開口部K1・・KNを観測点A1・・AMから見た場合の視角θ11・・θ1N・・θM1・・θMNをそれぞれ測定し、それぞれ測定した複数の視角θ11・・θ1N・・θM1・・θMNの合計値Σθ1・・ΣθMを算出する演算装置2(観測点設定手段、視角測定手段、算出手段)と、を有する。
【0076】
この合計値Σθ
mは、建物B
1,B
2・・の外(敷地G、道路R等)の観測点A
mに居る人が視認可能な開口部K
1・・K
Nの多さや大きさを示す。観測点A
mから視認可能な開口部K
1・・K
Nの数が多いあるいは大きいということは、
図11に示すように、一つ又は複数の建物B
1,B
2・・の中に居る人が、各開口部K
1・・K
Nを通して観測点A
mに居る人を視認している可能性が高いことを意味する。すなわち、この合計値Σθ
mが大きくなる程、対応する観測点A
mが建物からの視認性の高い(自然監視性の強い)個所であることを示す。
このため、請求項1に記載の発明によれば、建物B
1,B
2・・の敷地Gの外、又は一つもしくは複数の建物B
1,B
2・・が立ち並ぶ区域における各種評価を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
100 建物からの視認性評価システム
1 モデル生成装置
11 第一制御部
12 第一記憶部
13 第一通信部
2 演算装置
21 第二制御部
22 第二記憶部
23 第二通信部
3 表示装置
31 表示部
N 通信ネットワーク
M 三次元モデル
B1,B2・・ 建物
G 敷地
R 道路
S 遮蔽物
C 接点
A1・・Am・・AM 観測点
K・・Kn・・KN 開口部
Pn 第一の点
Qn 第二の点
SP 投影像
Rn 第三の点
Sn 第四の点
L 開口部を含む平面
Σθ1・・Σθm・・ΣθM 合計値
θ11・・θ1N・・θM1・・θMN 視角
θA 開口角
θB 遮蔽角