(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】携帯型大規模並列バイオ光電子機器
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20231128BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20231128BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231128BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C12M1/00 A
H01L31/02 D
G01N21/64 F
C12M1/34 Z
(21)【出願番号】P 2020503787
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(86)【国際出願番号】 US2018043390
(87)【国際公開番号】W WO2019023174
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】チプリアニー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】リアリック、トッド
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ポール イー.
(72)【発明者】
【氏名】アフマド、ファイサル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ロズウェック、トッド
(72)【発明者】
【氏名】ラスロップ、ブリタニー
(72)【発明者】
【氏名】コノリー、トーマス
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0369332(US,A1)
【文献】特表2016-522676(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141873(WO,A1)
【文献】米国特許第08654427(US,B1)
【文献】V. F. -G. Tseng and H. Xie,Simultaneous piston position and tilt angle sensing for large vertical displacement micromirrors by frequency detection inductive sensing.,Appl. Phys. Lett.,2015年11月25日,Vol.107, Issue.21,Article No.214102,doi: 10.1063/1.4936375
【文献】Appl. Phys. Lett., 2015, Vol.107, Article No.214102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
H01L 31/0232
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型生体分析機器であって、
レーザダイオードが搭載されたパルス光源回路基板を含むパルス光学光源と、
パッケージ化バイオ光電子チップを受け入れるように構成されたチップレセプタクルと、
前記パルス光学光源から前記パッケージ化バイオ光電子チップに光パルスのビームを方向制御するように構成されたビームステアリングアセンブリであって、複数の可動
構成要素と、前記複数の可動
構成要素の動きを検出する
前記パルス光源回路基板上に配置された
誘導性センサと、を含む前記ビームステアリングアセンブリと、
前記携帯型生体分析機器の少なくとも1つの囲い壁の大部分を形成し、且つ放熱機能を提供する位置合わせ構造と、を備え、
前記位置合わせ構造は、前記パルス光学光源、前記チップレセプタクル、および前記ビームステアリングアセンブリの各々を物理的に支持する、生体分析機器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの囲い壁は、前記生体分析機器の外壁を含み、前記生体分析機器内で発生した熱を前記生体分析機器の外に直接的に放散する、請求項1に記載の生体分析機器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの囲い壁は、前記生体分析機器内で強制される空気流を案内するかまたは遮断する、請求項1に記載の生体分析機器。
【請求項4】
前記生体分析機器の重量は、3キログラム以下であり、前記生体分析機器は、該生体分析機器の複数のエッジのうちの25センチメートル以下である最大長さのエッジを有する、請求項1に記載の生体分析機器。
【請求項5】
前記位置合わせ構造は、前記パルス光学光源および前記ビームステアリングアセンブリが物理的に支持される見当合わせプラットフォームを備え、
前記見当合わせプラットフォームに取り付けられ、光パルスのビームに作用する少なくとも1つの光学部品をさらに備える請求項4に記載の生体分析機器。
【請求項6】
前記パッケージ化バイオ光電子チップおよび前記少なくとも1つの光学部品は、前記見当合わせプラットフォームの第1の表面において物理的に支持され、前記パルス光学光源および前記ビームステアリングアセンブリは、前記見当合わせプラットフォームの第1の表面に対向する第2の表面において物理的に支持される、請求項5に記載の生体分析機器。
【請求項7】
前記チップレセプタクルに隣接して配置され、前記パッケージ化バイオ光電子チップから前記生体分析機器の室に向かって熱を伝達するように構成されたサーマルポストと、
前記室内に配置され、前記サーマルポストに熱的に結合された熱放散要素と、をさらに備える請求項1~4のいずれか1項に記載の生体分析機器。
【請求項8】
前記パルス光学光源が搭載された回路基板に取り付けられ、前記パルス光学光源から前記生体分析機器の室に向かって熱を伝達するように構成された熱伝導性補強要素と、
前記室内に配置され、前記熱伝導性補強要素に熱的に結合された熱放散要素と、をさらに備える請求項1~4のいずれか1項に記載の生体分析機器。
【請求項9】
前記パルス光学光源は
、
前記パルス
光源回路基板上に構成されたレーザダイオードのドライバ回路であって、前記パルス
光源回路基板は、前記ビームステアリングアセンブリに直接的に取り付けられる、前記ドライバ回
路を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体分析機器。
【請求項10】
前記ビームステアリングアセンブリ内の複数の可動構成要素に取り付けられ、前記複数の可動構成要素の動きに伴って前記誘導性センサのインダクタンスを変化させる導電性要
素を
さらに備える請求項9に記載の生体分析機器。
【請求項11】
前記パルス
光源回路基板に取り付けられた集光レンズと、
前記パルス
光源回路基板に取り付けられた2つ以上のボイスコイルであって、前記ビームステアリングアセンブリ内の複数の可動構成要素を作動させるように構成される2つ以上のボイスコイルと、
前記バイオ光電子チップ上の少なくとも1つのフォトダイオードから信号を受信し、前記2つ以上のボイスコイルを活性化させて光パルスを光カプラに対して位置決めするように構成されたビーム制御回路と、をさらに備える請求項10に記載の生体分析機器。
【請求項12】
前記ビームステアリングアセンブリは、前記チップレセプタクルの位置における光パルスのビームの位置の動きを、2時間にわたって、ドリフトが1ミクロン以下に安定化させる、請求項11に記載の生体分析機器。
【請求項13】
前記パルス
光源回路基板を補強するパルス
光源回路基板に取り付けられた基板補強要素をさらに備え、
前記基板補強要素は、熱放散要素に熱的に結合される、請求項9に記載の生体分析機器。
【請求項14】
前記ドライバ回路は、
単極パルスを生成するように構成されたパルス発生回路と、
電気パルスをレーザダイオードに出力するダイオードドライバ回路と、を含み、
前記ダイオードドライバ回路は、
共通ソース増幅器として接続され、前記パルス発生回路から単極パルスを受け取るように構成された第1のトランジスタと、
ソースフォロワとして接続され、前記共通ソース増幅器からの出力を受け取るように構成された第2のトランジスタと、を含む、請求項9に記載の生体分析機器。
【請求項15】
前記ビームステアリングアセンブリは、
レンズと、
前記レンズを支持し、前記レンズを2つの軸の周りで回転させて、前記レンズを通過するビームを横方向に平行移動させるジンバルと、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体分析機器。
【請求項16】
前記生体分析機器は、前記パッケージ化バイオ光電子チップから受信したデータを処理してDNAに関する情報、1つまたは複数のタンパク質に関する情報、または少なくとも1つの代謝反応に関する情報を決定するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体分析機器。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の携帯型生体分析機器を動作させる方法であって、
レーザダイオードが搭載されたパルス光源回路基板を含むパルス光学光源によって光パルスのビームを生成すること、
ビームステアリングアセンブリによって、パッケージ化バイオ光電子チップを受け入れるように構成されたチップレセプタクルに前記光パルスのビームを方向制御することであって、前記ビームステアリングアセンブリは、複数の可動
構成要素と、前記複数の可動
構成要素の動きを検出するように構成された
前記パルス光源回路基板上に配置された
誘導性センサと、を含み、前記位置合わせ構造は、前記携帯型生体分析機器の少なくとも1つの囲い壁の大部分を形成し、前記位置合わせ構造は、前記パルス光学光源、前記チップレセプタクル、および前記ビームステアリングアセンブリの各々を物理的に支持する、前記方向制御すること、
前記少なくとも1つの囲い壁を用いて前記生体分析機器内で発生した熱を放散すること、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、数万又はそれ以上の反応室に同時に短い光パルスを提供することによって複数の試料の大規模並列分析を行うことができ、複数の試料分析のために反応室から並列に複数の蛍光信号を受信することができる携帯型バイオ光電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的または化学的試料の大規模な並行分析が可能な機器は、典型的には、それらの大きなサイズ、携帯性の欠如、機器を操作する熟練した技術者の要求、電力の必要性、制御された操作環境の必要性、およびコストを含むいくつかの要因のために、試験室の複数の設定に制限される。このような装置を使用して試料を分析する場合、一般的なパラダイムは、ケアポイントまたは現場で試料を抽出し、試料を試験室に送り、分析の結果を待つことである。結果の待機時間は、数時間から数日間の範囲である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で説明する技術は、大規模並列試料分析用の携帯型バイオ光電子機器に関する。携帯型機器は、ポイントオブケア(point-of-care)の遺伝子配列決定及び個別化医療に役立つことができる。この機器は、試料の分析を含む他の態様(例えば、薬物またはタンパク質の検出、ウイルスの検出、ウイルスまたは細菌の突然変異の追跡、プロテオミクス、および代謝アッセイ)に使用され得る。
【0004】
複数の実施形態では、機器は、600ピコ秒未満の時間スケールにおけるピーク値よりも少なくとも40dB下までオフにすることができる光パルスを生成する光源および回路と、少なくとも3万個の試料分析画素およびミクロンスケールの光導波路を含むユーザ交換可能なパッケージ化バイオ光電子チップを受け取るためのレセプタクルと、コンパクトなビーム成形およびステアリングアセンブリと、光源から光パルスを光導波路および試料分析画素に案内する結合光学系を含む。機器は、オンボード電源、制御、診断、およびデータ処理電子機器をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、機器の重量は2キログラム未満であり、片手で容易に保持することができる。たとえば、機器の最大エッジ長は25センチ以下である。
【0005】
機器内の位置合わせ構造は、光源、ビームステアリングアセンブリ、結合光学系、およびユーザ交換可能なバイオ光電子チップの正確な位置合わせを提供するのに役立つ。位置合わせ構造は、光源、ビームステアリングアセンブリ、結合光学系、およびユーザ交換可能なバイオ光電子チップの相対位置の機械的安定性を提供できる。位置合わせ構造は、光源、バイオ光電子チップ、および他の構成要素に熱放散機能を提供することもできる。さらに、いくつかの事例では、位置合わせ構造は、機器の筐体の一部分を形成することができる。
【0006】
各試料分析画素は、試料を保持し、光導波路からの光を受け取るように構成された反応室と、反応室からの光を受け取るように構成された光検出器を含み得る。この機器は、レセプタクル内に配置されると、バイオ光電子チップと電子的及び光学的にインタフェースして、数万又はそれ以上の反応室に短い光パルスを同時に供給し、反応室での蛍光発光から生じる試料分析のための電子信号を受け取る。いくつかの実施形態では、機器は、遺伝子配列決定に使用されてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態は、位置合わせ構造と、位置合わせ構造に見当合わせされたパルス光源と、位置合わせ構造内に形成され、パッケージ化バイオ光電子チップを受け取るように構成されたチップレセプタクルと、位置合わせ構造に見当合わせされ、パルス光源からパッケージ化光電子チップへ光パルスビームを方向制御するように構成されたビームステアリングアセンブリと、を含む携帯型生体分析機器に関するものであり、位置合わせ構造は、携帯型生体分析機器内又はその上の少なくとも1つの囲い壁の大部分を形成する。
【0008】
いくつかの実施形態は、試料内の異なる生化学試料を識別するシステムに関する。システムは、単一の固有波長で動作するように構成されたレーザダイオードを含む携帯型生体分析機器と、レーザダイオードに接続され、単一の固有波長を有する光パルスをレーザダイオードに出力させるドライバ回路と、複数の試料が含まれる複数の反応室を有するパッケージ化バイオ光電子チップを受け取り、パッケージ化チップ上の複数のピンに電気的にコンタクトして、複数の反応室で光検出器によって生成された複数の電気信号を受け取るように構成されたチップレセプタクルと、を含み得る。機器は、レーザダイオードからバイオ光電子チップに光パルスを方向制御し、バイオ光電子チップ上の光カプラへの光パルスの位置合わせを自動的に維持するように構成されたコンパクトなビームステアリングアセンブリをさらに含み得る。機器は、機器内の光学部品および電子部品の正確な位置合わせ、ならびに機器内の光学部品に対するバイオ光電子チップの正確な位置合わせおよび見当合わせを可能にする位置合わせ構造をさらに含み得る。
【0009】
本教示の上記の及び他の態様、実施態様、動作、機能、特徴及び実施形態は、添付の図面とともに以下の説明からより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書において記載されている図は、例示を目的としたものにすぎないことを、当業者は理解しよう。
いくつかの事例において、本発明の様々な態様は、本発明の理解を容易にするために、誇張又は拡大されて示されている場合があることを理解されたい。図面において、同様の参照符号は、概して様々な図全体を通じて同様の特徴、機能的に類似する及び/又は構造的に類似する要素を参照する。図面は、必ずしも原寸に比例してはおらず、むしろ、本教示の原理を例示しているところが強調されている。図面は、決して本教示の範囲を限定するようには意図されていない。
【
図1-1】いくつかの実施形態による携帯型バイオ光電子機器における複数の構成要素およびそれらの配置の簡略図。
【
図1-2】いくつかの実施形態による光パルスの列を示す図。
【
図1-3】いくつかの実施形態による、1つ又は複数の導波路を介してパルスレーザによって光学的に励起することができる並列な反応室及び各室のための対応する検出器の1例を示す図。
【
図1-4】いくつかの実施形態による、導波路からの反応室の光学的励起を示す図。
【
図1-5】いくつかの実施形態による、集積反応室、光導波路、及び時間ビニング光検出器のさらなる詳細を示す図。
【
図1-6】いくつかの実施形態による、反応室内で生じ得る生物学的反応の1例を示す図。
【
図1-7】異なる減衰特性を有する2つの異なる蛍光色素分子の発光確率曲線を示す図。
【
図1-8】いくつかの実施形態による、蛍光発光の時間ビニング検出を示す図。
【
図1-9】いくつかの実施形態による、時間ビニング光検出器を示す図。
【
図1-10A】いくつかの実施形態による、パルス励起及び試料からの蛍光発光の時間ビニング検出を示す図。
【
図1-10B】いくつかの実施形態による、試料の繰り返しのパルス励起後の様々な時間ビンにおける累積蛍光光子カウントのヒストグラムを示す図。
【
図1-11A-1-11D】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T,A,C,G)又はヌクレオチド類似体に対応し得るヒストグラムを示す図。
【
図2-1A】いくつかの実施形態による、利得切換のための光学ポンプ及び出力パルスを示す図。
【
図2-1B】いくつかの実施形態による、緩和振動を示す図。
【
図2-1C】いくつかの実施形態による、テールを示している光出力パルスを示す図。
【
図2-2A】いくつかの実施形態によるパルス半導体レーザダイオードを示す図。
【
図2-2B】一実施形態による、利得切換レーザダイオードの簡略化された回路図。
【
図2-2C】いくつかの実施形態による、レーザダイオードに送達される電流の改善を示す図。
【
図2-3】いくつかの実施形態による、パルスドライバ回路を示す図。
【
図2-4A】いくつかの実施形態による、パルス発生器を示す図。
【
図2-4B】いくつかの実施形態による、パルス発生器の論理ゲートで受信される波形および出力パルス波形を示す図。
【
図2-4C】いくつかの実施形態による、パルス発生器を示す図。
【
図2-5A】いくつかの実施形態による、ダイオードドライバ回路の第1段を示す図。
【
図2-5B】いくつかの実施形態による、ダイオードドライバ回路の第2段を示す図。
【
図2-5C】いくつかの実施形態による、ダイオードドライバ回路の第3段を示す図。
【
図2-6】いくつかの実施形態による、利得切換レーザダイオードの出力パルスを示す図。
【
図3-1A】いくつかの実施形態による、携帯型生体分析機器の位置合わせ構造を示す斜視図。
【
図3-1B】いくつかの実施形態による、携帯型生体分析機器の位置合わせ構造を示す底面斜視図。
【
図3-2A】いくつかの実施形態による、生体分析機器の光学システムのレイアウトを示す図。
【
図3-2B】変向ミラーマウントおよびレンズマウントの複数の例を示す図。
【
図3-3】いくつかの実施形態による、生体分析機器のビームステアリングアセンブリを示す図。
【
図3-4A】いくつかの実施形態による、パルスソース基板を示す図。
【
図3-4B】いくつかの実施形態による、パルス光源および熱伝導素子の複数の態様を示す図。
【
図3-5】いくつかの実施形態による、誘導性センサを示す図。
【
図3-6A】いくつかの実施形態による、ビームステアリングアセンブリ内のジンバルマウントのY-X結合を示す。
【
図3-6B】いくつかの実施形態による、ビームステアリングアセンブリ内のジンバルマウントのX-Y結合を示す図。
【
図3-7】いくつかの実施形態によるプリント回路基板に取り付けられた基板補強部材を示す図。
【
図3-8】いくつかの実施形態による、誘導性センサを使用するビームステアリングアセンブリの長期安定性を示す図。
【
図3-9A】いくつかの実施形態による、位置合わせ構造の見当合わせプラットフォームに形成されたチップガイドの拡大図。
【
図3-9B】
図3-9Aのチップガイド内に配置されたインターポーザの底面図。
【
図3-10A】いくつかの実施形態による、携帯型バイオ光電子機器内の複数の構成要素の配置を示す図。
【
図3-10B】いくつかの実施形態による、携帯型バイオ光電子機器内の複数の構成要素の他の配置を示す図。
【
図3-10C】いくつかの実施形態による、携帯型バイオ光電子機器内の複数の構成要素の位置合わせを示す図。
【
図4-1】いくつかの実施形態による、バイオ光電子チップ上の光カプラに対するパルスレーザビームの位置合わせを示す図。
【
図4-2】いくつかの実施形態による、パルスレーザダイオードからの光パルスをバイオ光電子チップの複数の導波路に結合するための検出及び制御回路を示す図。
【
図4-3】いくつかの実施形態による、パルスレーザダイオードからの光パルスをバイオ光電子チップの複数の導波路に結合する方法に関連する工程を示す図。
【0011】
本発明の特徴及び利点は、図面とともに取り上げられるときに下記に記載される詳細な説明からより明らかとなろう。図面を参照して実施形態を説明するとき、方向に関する参照(「上(above)」、「下(below)」、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「左(left)」、「右(right)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」など)が使用される場合がある。そのような参照は、読者が図面を通常の向きで見るのを補助するものとしてのみ意図している。これらの方向に関する記載は、具現化されるデバイスの特徴の好適な向き又は唯一の向きを説明することを意図していない。デバイスは、他の向きを使用して具現化されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.導入
本発明者らは、大規模並列試料分析が可能な携帯型機器が、患者検体分析またはウイルスまたは他の生物の遺伝子配列決定などのポイントオブケアサービス(point-of-care services)に非常に有用であり得ることを認識し、諒解した。そのような機器がコンパクトで、持ち運びが容易で、操作が簡単な場合、医師または助手は、オフィス(office)で使用するかまたは遠隔地の患者を治療する場合には現場に持ち込むことができる。いくつかの実施形態によれば、最小限の訓練(例えば、ビデオまたはオンラインガイダンスまたは医師によるガイダンス)を有するユーザは、携帯型機器を操作し得る。結果は、医師(オフィス滞在中またはオンライン相談中)またはオンラインリソースによって判断され得る。携帯型機器は、試験および分析を容易にすることができるが、大規模並列生体分析機器をコンパクトにすることには、いくつかの重要な課題がある。
【0013】
好ましくは、大規模並列試料分析が可能な機器は、同時に数万又はそれ以上の試料を処理することができるべきである。いくつかの実施形態では、携帯型機器はより多くの試料を同時に処理できる。本発明者らは、コンパクトな機器においてこの数の試料を達成するために、試料ウェル(sample well)または反応室は、機器内で交換可能なチップ上に集積されるべきであることを認識し、諒解した。さらに、本発明者らは、複数の反応室の照明の均一性を改善し、そうでなければ必要となる可能性のある多数の外部光学構成要素を削減するために、チップ上に形成された集積された光学系を使用して、励起光を反応室に送達する必要があることを認識し、諒解した。さらに、本発明者らは、複数の反応室からの蛍光放出が、各反応室に集積光検出器を備えた同じチップ上で検出され、検出効率を改善し、そうでなければ必要となる可能性のある集光構成要素(light-collection component)の数を減らすことが好ましいことを認識し、諒解した。また、本発明者らは、励起光によって圧倒される(例えば、飽和される)ことなく検出されるのに十分な蛍光レベルがある励起後に反応室からの発光信号を検出することができるように、迅速に(例えば、ピーク値から500ピコ秒未満で)オフするパルス励起ソース(pulsed excitation source)を有することが好ましいことを認識し、諒解した。例えば、蛍光の検出は、光検出器が励起光で飽和していないときに実施することが好ましい。バイオ光電子チップに関するこれらの条件は、携帯型機器に大きな制約を課す可能性がある。
【0014】
一部の制約は光源に関連する。コンパクトでありながら、数万の反応室内の試料を十分に励起するのに十分な光パワー(例えば、約2mW~約6mW)を提供できる必要がある。より強力なまたは複数の光源を備えたより高い出力レベルでは、携帯型機器において最大100万個の反応室などより多くの反応室が照明され得る。また、例えば、パルスピークよりも少なくとも40dB下のレベルまで最大500psのターンオフ時間を有する短い光パルス(例えば、約100ピコ秒以下のパルス持続時間)を生成することができるコンパクトなドライバ回路があり得る。さらに、合理的なデータ取得時間のために、光パルスは、例えば、約50MHz~約200MHzの繰り返し率(repetition rate)で提供すべきである。いくつかの実施形態では、異なる電力レベル、パルス持続時間、ターンオフ動態(turn-off dynamics)、およびパルス繰り返し率が使用され得る。場合によっては、10MHzの低いパルス繰り返し率が使用され得る。
【0015】
追加の制約は、熟練した技術者による操作を必要としないコンパクトなパッケージで、光源からバイオ光電子チップへの出力パルスの正確な調整を取得および維持することに関する。例えば、光源からの出力ビームは、ミクロンレベルの精度でバイオ光電子チップ上の光カプラ(optical coupler)に位置合わせされ、数時間にわたってミクロンレベルの精度で位置合わせされた位置に維持される必要がある。さらに、光カプラへの光パルスのビームの入射角は、1度未満の精度に調整され、数時間維持される必要がある。また、光カプラのビームスポットサイズは、数時間の変動が5%未満に安定している必要がある。さらに、光源からの励起波長は数時間、2nm以内に安定したままであるべきである。
【0016】
さらなる制約は、機器内の温度制御に関連する。例えば、熱が機器の光学的アライメント又はパルス動作に悪影響を及ぼさないように、駆動電子機器及び光源によって生成された熱を放散することが必要であり得る。また、ゲノムなどの一部の検体では、反応が進行するように、反応室内の試料の温度を維持する必要があり得る。場合によっては、たとえば、レーザダイオードと熱接触する熱電冷却器及び/又は放熱構成要素(フィンなど)を使用して、レーザダイオードの温度を制御する必要があり得る。レーザダイオードの熱制御は、レーザダイオードの寿命を延長し、レーザダイオードからの発光波長を安定化および制御し得る。機器はフィールドで使用される可能性があるため、熱制御と熱放散は広範囲の周囲環境に対応する必要があり得る。
【0017】
さらなる課題は、異なる試料の異なる特徴を示す反応室からの異なる発光を区別することに関する。例えば、遺伝子配列決定又は大規模並列アッセイなどの一部の生体分析の態様では、光源からの光励起エネルギーが、一定期間にわたって複数の生化学反応を受ける検体を含む複数の反応室に送られる。いくつかの実施形態によれば、励起後に、試料もしくは試料と相互作用する分子が、蛍光を発する1つもしくは複数の蛍光色素分子によって標識化されてもよく、又は、試料自体が蛍光を発してもよい。反応室からの蛍光発光の検出及び分析は、室内の試料に関する情報をもたらす。異なる時間に反応室に入る異なる種類の試料または反応物がある場合、同じ光源(すなわち、同じ固有波長を有する光パルス)で励起されることが好ましい異なる種類の試料または反応物を区別する何らかの方法が必要である。
【0018】
本発明者らは、大規模並列試料分析が可能なコンパクトな携帯型バイオ光電子機器を製造および操作する装置および方法を考案した。概要においておよびいくつかの実施形態によれば、機器は、短波長レーザダイオードおよび関連するドライバ回路、コンパクトなビームステアリングおよび成形モジュール、パッケージ化バイオ光電子チップのための温度制御されたレセプタクル(receptacle)、ならびに機器内の光学的および電気的構成要素の正確な位置合わせを提供するとともに放熱機能を提供する位置合わせ構造を含む。位置合わせ構造は、機器の筐体の一部を形成することもでき、機器の外部に熱を直接的に放散できる。
【0019】
遺伝子配列決定などの態様では、機器は、同じ固有波長を有する光励起パルスを使用して、少なくとも4種類の試料または反応物を区別できる。薬物、ウイルス、または病原体の検出などの他の態様では、少なくとも4種類の試料を区別する必要はなく、4種類未満の試料の識別で十分な場合がある。またこの機器は、複数の異なる固有波長を有する光励起パルスを送達するように構成されて、最大4つ以上の異なるタイプの試料を検出し得る。
【0020】
選択した機器構成要素の詳細を説明する前に、遺伝子配列決定との関連で機器の概要を提供する。遺伝子配列決定は説明目的のために使用されるが、機器は、他の実施形態において種々の種類の生化学的アッセイ(biochemical assays)のために使用され得る。
【0021】
概要および
図1-1を参照すると、携帯型生体分析機器1-100は、パルスソース基板(pulsed source board)1-110と、コンパクトなビームステアリングおよび成形アセンブリ1-115と、パッケージ化バイオ光電子チップ(packaged bio-optoelectronic chip)1-140が搭載されるレセプタクルガイド(receptacle guide)1-107を有する位置合わせ構造(alignment structure)1-102と、を含み得る。機器は、変向ミラー(turning mirror)1-121、集束レンズ(focusing lens)1-127、1つ以上のサーマルポスト(thermal post)1-185、制御基板1-180、およびヒートシンク要素(heat sinking element)1-190をさらに含み得る。変向ミラー1-121は、プラットフォーム1-102に取り付けられる調整可能なミラーマウント(mirror mount)1-106に搭載されてもよく、集束レンズ1-127は、プラットフォーム1-102に取り付けられる調整可能なレンズマウント1-108に搭載されてもよい。パルスソース基板1-110、コンパクトなビームステアリングおよび成形アセンブリ1-115、変向ミラー1-121、集束レンズ1-127、およびパッケージ化バイオ光電子チップ1-140はすべて、位置合わせ構造1-102に見当合わせして、パルスソース基板1-110からパッケージ化バイオ光電子チップ1-140の複数の光学構成要素への(破線で示される)光ビームの正確かつ安定した光学的アライメントを提供し得る。
【0022】
動作中、パルスソース基板1-110からの光パルス1-122は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140内に含まれるバイオ光電子チップ1-141上に配置された(図示しない)光カプラに向けられ、集束されてもよい。チップのパッケージは、光ビームの位置合わせ(例えば、変向ミラー)と試料の保持を補助する機構を含んでもよい。バイオ光電子チップ1-141上の集積された複数のフォトニックコンポーネント(Integrated photonic components)は、受け取った各光パルスから励起放射を分割してバイオ光電子チップ1-141に配置された数万個の反応室に送達し得る。反応室では、励起放射が、分析対象の蛍光色素分子または試料を励起し、励起から生じる信号が、各反応室の光検出器によって検出され得る。検出された信号は、バイオ光電子チップ1-141上で部分的に処理されてもされなくてもよい。信号は、データ記憶およびデータ処理及び/又は外部デバイスへの送信のために、制御基板1-180に送信されてもよい。いくつかの実装形態では、(未処理または処理済みの)信号は、データを分析するように構成されたサーバにデータをルーティングできるインターネットなどのコンピューティングデバイスのネットワークに送信され得る。
【0023】
光パルス1-122は、単一の横方向光モードを有するものとして
図1-1に示されているが、いくつかの実施形態において、パルスソース基板1-110からの光出力は、マルチモード横方向プロファイル(multimode transverse profile)を有してもよい。例えば、出力ビームの横方向強度プロファイルは、複数の強度ピーク及び最小値を有してもよい。いくつかの実施形態において、横方向マルチモード出力は、バイオ光電子チップ1-141に結合されるときに(例えば、拡散光学素子によって)均質化することができる。いくつかの実施形態において、マルチモード出力は、バイオ光電子チップ1-141内の複数の導波路に結合され得る。例えば、マルチモード出力の各強度ピークが、バイオ光電子チップ1-141上の別個の導波路に結合されてもよい。パルスレーザがマルチ横方向モード状態で動作することを可能にすることによって、パルスレーザからの出力パワーをより高くすることが可能になり得る。異なる横方向モードをチップ1-141上の異なる導波路に結合することによって、全てのパワーが単一の導波路に結合された場合により高い光強度で発生し得るチップの光劣化を回避することができる。
【0024】
図1-2は、パルスソース基板1-110によって生成され得る光パルス1-122の列の時間強度プロファイルを示す。いくつかの実施形態において、放出されるパルスのピーク強度値は、ほぼ等しくなり得、プロファイルは、ガウス等の時間プロファイルを有してもよい。いくつかの事例において、パルス1-122は、対称時間プロファイルを有しなくてもよく、他の時間的形状を有してもよい。各パルスの持続時間は、
図1-2に示すような、半値全幅(FWHM)値によって特性化することができる。パルスレーザのいくつかの実施形態によれば、光パルス1-122は、50ピコ秒(ps)~200psのFWHM値を有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、蛍光色素分子の寿命及び/又は励起波長フィルタリングによってより長い励起期間を可能にする場合、最長1ナノ秒までのパルス持続時間を使用することができる。
【0025】
光パルス1-122は、周期的な間隔Tによって分離され得る。いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔Tは、約1nsと約100nsとの間であってもよい。いくつかの事例において、パルス分離間隔Tは、約5nsと約20nsとの間であってもよい。パルス分離間隔Tは、パルスソース基板1-110上の光源をパルス化するために使用される駆動周波数fdによって決定され得る。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、チップ1-141上の反応室の数、蛍光発光特性、及び、バイオ光電子チップ1-141からデータを読み出すためのデータ処理回路の速度の組み合わせによって、所望のパルス分離間隔T及び駆動周波数fdを決定することができる。本発明者らは、異なる蛍光色素分子を、それらの異なる蛍光減衰率によって識別することができることを認識し、諒解するに至った。したがって、選択される蛍光色素分子がそれらの異なる減衰率の間を識別するために、十分な統計値を収集するのに十分なパルス分離間隔Tがある必要がある。加えて、パルス分離間隔Tが短すぎる場合、生体分析機器1-100のデータ処理回路は、大量のデータが多数の反応室によって収集されるのについていくことができない。本発明者らは、約5nsと約20nsとの間のパルス分離間隔Tが、約2nsの減衰率を有する蛍光色素分子に、及び、約30,000個と600,000個との間の反応室からのデータの処理に適していることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施形態によれば、より長い減衰率(例えば、最大約7ns)は、より長いパルス分離間隔(例えば、約15nsと約30nsの間)を必要とし得る。
【0027】
図1-3を参照すると、光パルス1-122を、バイオ光電子チップ1-141上の1つ又は複数の光導波路1-312に結合することができる。1つまたは複数の導波路1-312は、複数の反応室1-330に隣接して延びており、光励起エネルギーを複数の反応室に送達してもよい。いくつかの事例において、光パルス1-122は、格子カプラ1-310を介して1つ又は複数の導波路1-312に結合することができるが、いくつかの実施形態において、バイオ光電子チップ上の光導波路の端部への結合が使用されてもよい。いくつかの実施形態によれば、光パルス1-122のビームの格子カプラ1-310への位置合わせを補助するために、クワッド検出器1-320が、格子カプラ1-310に近い半導体基板1-305(例えば、シリコン基板)上に位置してもよい。いくつかの実施態様では、1つまたは複数の光検出器1-322を使用して励起放射を検知し、光パルス1-122のビームを格子カプラ1-310に位置合わせするのを補助することができる。1つ又は複数の導波路1-312及び反応室1-330が、基板、導波路、反応室、及び光検出器1-322の間に誘電体層(例えば、図示しない二酸化ケイ素層)を介在させて、同じ半導体基板上に集積されてもよい。
【0028】
各導波路1-312は、導波路に沿って反応室に結合される光パワーを均質化するために、反応室1-330の下の先細り部分1-315を含むことができる。狭まる先細りによって、より多くの光エネルギーを導波路のコアの外側に押しやることができ、反応室への結合が増大し、反応室に結合する光の損失を含む、導波路に沿った光学的損失が補償される。光エネルギーを集積フォトダイオード1-324に方向付けるために、各導波路の端部に第2の格子カプラ1-317を配置することができる。集積フォトダイオードは、導波路を下って結合されるパワーの量を検出することができ、例えば、ビームステアリングモジュール1-115を制御するフィードバック回路に、電気信号を与えることができる。
【0029】
反応室1-330は、導波路の先細り部分1-315と位置合わせすることができ、タブ1-340において陥凹することができる。各反応室1-330に対して、半導体基板1-305上に配置された複数の光検出器1-322(例えば、時間ビニング光検出器または単一光子アバランシェフォトダイオード)があり得る。試料分析画素(sample analysis pixel)は、試料が分析されるべき単一の反応室1-330と、励起光を反応室に送達する導波路1-312の一部と、反応室から蛍光発光を受け取るように配置された対応する光検出器1-322と、を含み得る。反応室内にない蛍光色素分子(例えば、反応室の上で溶液中に分散している)の光励起を防止するために、反応室の周囲及び導波路の上に、金属コーティング及び/又は多層コーティング1-350を形成することができる。金属コーティング及び/又は多層コーティング1-350は、各導波路の入力端及び出力端における導波路1-312内の光エネルギーの吸収損失を低減するために、タブ1-340の縁部を越えて隆起することができる。いくつかの実施態様では、多層光学構造が、各光検出器1-322上に形成され、複数の蛍光体からの発光よりも励起放射を優先的に減衰させるように構成されてもよい。
【0030】
バイオ光電子チップ1-141上には、複数列の導波路1-312、複数の反応室1-330、及び複数の光検出器1-322があり得る。例えば、いくつかの実施態様において、各々が512個の反応室を有する64列があってもよく、反応室は合計で32,768個になる。他の実施態様は、より少ない又はより多い反応室を含んでもよく、他のレイアウト構成を含んでもよい。パルスソース基板1-110からの光パワーは、光カプラ1-310と複数の導波路1-312との間に位置する、(図示しない)1つ又は複数のスター・カプラもしくはマルチモード干渉カプラ、又は任意の他の手段を介して複数の導波路1-312に分配することができる。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、
図1-4は、導波路1-315内の光パルス1-122から反応室1-330への光エネルギー結合を示す。図面は、導波路寸法、反応室寸法、種々の材料の光学特性、及び、反応室1-330からの導波路1-315の距離を考慮する、光波の電磁場シミュレーションから生成されている。導波路は、例えば、周囲にある二酸化ケイ素の媒体1-410内の窒化ケイ素から形成されてもよい。導波路、周囲の媒体、及び反応室は、「分子を調査、検出及び分析するための統合デバイス(Integrated Device for Probing, Detecting and Analyzing Molecules)」と題する、2015年8月7日に出願された米国特許出願第14/821,688号に記載されている微細加工工程によって形成されてもよい。いくつかの実施形態によれば、エバネセント光場1-420が、導波路によって運ばれる光エネルギーを反応室1-330に結合する。
【0032】
反応室1-330内で起こる生物学的反応の非限定的な例が
図1-5に示されているが、他の反応または試料を他の用途で使用されてもよい。この例において、標的核酸1-510に対して相補的である伸長鎖1-512へのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の連続的な取り込みが、反応室1-330内で行われている。単一分子検出(Single-molecule detection)を用いて、連続的な取り込みを検出し、DNAを配列決定することができる。単一分子検出は、DNA配列決定との関連で以下に記載されるが、単一分子検出は、プロテオミクス研究のタンパク質の検出等の他の用途のために、本明細書に記載される装置および方法を用いて適用され得る。タンパク質の検出は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるSomaLogic,Inc.(2013)、Doc.SSM-002,DCN13-038によって配布された「SOMAscan
TMプロテオミクスアッセイ」という題名の技術的なホワイトペーパーに記載されているように、修飾されたヌクレオチドで構築されるタンパク質捕獲、低速オフ速度修飾アプタマー試薬(protein-capture, slow off-rate modified aptamer reagents that are constructed with modified nucleotides)を用いることができる。例えば、アッセイにおける最終溶出段階からの残りのアプタマー試薬は、反応室1-330内のDNA定量技術を用いて定量化され得る。追加的または代替的に、本明細書に記載の装置および方法を使用して、大規模並行代謝アッセイ(massively parallel metabolic assays)を実施することができる。たとえば、いくつかの実装形態では、生体分析機器1-100は、機器に搭載されたパッケージ化バイオ光電子チップ1-140からデータを受信し、データを分析してDNAに関する情報(たとえば、DNA配列及び/又は定量化情報)を決定できる。いくつかの事例では、生体分析機器1-100は、機器に搭載されたパッケージ化バイオ光電子チップ1-140からデータを受信し、データを分析して反応室1-330内のタンパク質に関する情報を決定できる。いくつかの実施形態では、生体分析機器1-100は、機器に搭載されたパッケージ化バイオ光電子チップ1-140からデータを受信し、データを分析して代謝反応に関する情報を決定できる。
【0033】
反応室は、約150nm~約250nmの深さ、及び、約80nm~約160nmの直径を有することができる。隣接する反応室及び他の望ましくない軸外(off-axis)の光源からの迷光を阻害する開口部を設けるために、金属化層1-540(例えば、基準電位のための金属化)を、光検出器の上にパターニングすることができる。いくつかの実施形態によれば、ポリメラーゼ1-520が、反応室1-330内に位置する(例えば、室の基部に付着する)ことができる。ポリメラーゼは、標的核酸1-510(例えば、DNAから導出される核酸の一部分)に作用し、相補的な核酸の伸長鎖をシーケンシングして、DNA1-512の伸長鎖を生成することができる。(
図1.6に示された)異なる蛍光色素分子を用いて標識化されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体1-610は、反応室1-330の上の溶液に分散され、反応室内に入ってもよい。
【0034】
図1-6に示すように、標識化されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体1-610が相補的な核酸の伸長鎖に取り込まれると、1つ又は複数の付着した蛍光色素分子1-630を、導波路1-315から反応室1-330に結合されている光エネルギーのパルスによって繰り返し励起することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の蛍光色素分子1-630は、任意の適切なリンカ1-620を用いて1つ又は複数のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体1-610に付着することができる。取り込み事象は、最大約100msの期間にわたって継続し得る。この時間の間、蛍光色素分子(複数可)の励起からもたらされる蛍光発光のパルスを、光検出器1-322を用いて検出することができる。異なる発光特性(例えば、蛍光減衰率、強度、蛍光波長)を有する蛍光色素分子を異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させ、DNA1-512のストランドが各核酸を取り込んでいる間に異なる発光特性を検出及び識別することによって、DNAの伸長鎖の遺伝子配列を決定することが可能である。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、蛍光発光特性に基づいて試料を分析するように構成されている生体分析機器1-100は、異なる蛍光分子の間の蛍光寿命及び/もしくは強度の差、ならびに/又は、異なる環境における同じ蛍光分子の寿命及び/もしくは強度の間の差を検出することができる。説明として、
図1-7は、例えば、2つの異なる蛍光分子からの蛍光発光を表すことができる、2つの異なる蛍光発光確率曲線(A及びB)をプロットしている。曲線A(破線)を参照すると、短パルス又は超短光パルスによって励起された後、第1の分子からの蛍光発光の確率p
A(t)は、示されているように、時間とともに減衰し得る。いくつかの事例において、経時的な光子が放出される確率の低減は、指数減衰関数
【0036】
【数1】
によって表すことができ、式中、P
A0は初期発光確率であり、τ1は、発光減衰確率を特性化する、第1の蛍光分子と関連付けられる時間パラメータである。τ1は、第1の蛍光分子の「蛍光寿命」、「発光寿命」又は「寿命」と称されてもよい。いくつかの事例において、τ1の値は、蛍光分子のローカル環境によって変更されてもよい。他の蛍光分子は、曲線Aに示すものとは異なる発光特性を有し得る。例えば、別の蛍光分子は、単一の指数関数的減衰とは異なる減衰プロファイルを有する場合があり、その寿命は、半減期値又は何らかの他の測定基準によって特性化することができる。
【0037】
第2の蛍光分子は、
図1-7の曲線Bについて示すように、指数関数的ではあるが、測定可能に異なる寿命τ2を有する減衰プロファイルを有し得る。図示されている例において、曲線Bの第2の蛍光分子の寿命は曲線Aの寿命よりも短く、発光の確率は、第2の分子の励起直後では、曲線Aよりも高い。いくつかの実施形態において、種々の蛍光分子は、約0.1ns~約20nsに及ぶ範囲の寿命又は半減期値を有し得る。
【0038】
本発明者らは、蛍光発光寿命の差を使用して、異なる蛍光分子の存否を判別し、及び/又は、蛍光分子がさらされる異なる環境もしくは条件の間で判別することができることを認識し、諒解するに至った。いくつかの事例において、寿命(例えば、発光波長ではなく)に基づいて蛍光分子を判別することによって、生体分析機器1-100の態様を単純化することができる。1例として、寿命に基づいて蛍光分子を判別する場合、波長弁別光学素子(波長フィルタ、各波長の専用検出器、異なる波長における専用パルス光源、及び/又は回折光学素子)の数を低減することができるか、又は、なくすことができる。いくつかの事例において、単一の固有波長において動作する単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能に異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起することができる。同じ波長領域内で発光する複数の異なる蛍光分子を励起及び判別するために、異なる波長における複数の光源ではなく、単一のパルス光源を使用する生体分析システムは、動作及び保守管理の複雑さを低減することができ、よりコンパクトにすることができ、より低いコストで製造することができる。
【0039】
蛍光寿命分析に基づく分析システムは、一定の利点を有することができるが、追加の検出技法を可能にすることによって、分析システムによって得られる情報の量及び/又は検出精度を増大することができる。例えば、いくつかの生体分析システム1-100は、蛍光波長及び/又は蛍光強度に基づいて試料の1つ又は複数の特性を判別するようにさらに構成されてもよい。
【0040】
再び
図1-7を参照すると、いくつかの実施形態によれば、蛍光分子の励起後の蛍光発光事象を時間ビニングするように構成されている光検出器1-322を用いて、異なる蛍光寿命を区別することができる。時間ビニングは、光検出器1-322の単一の電荷蓄積サイクルの間に行われ得る。電荷蓄積サイクルは、読み出し事象の間の間隔であり、その間に光発生キャリアが時間ビニング光検出器のビン内に蓄積される。発光事象の時間ビニングによって蛍光寿命を決定するという概念は、
図1-8にグラフで紹介されている。時刻t
1の直前の励起時刻t
eにおいて、蛍光分子又は同じタイプ(例えば、
図1-7の曲線Bに対応するタイプ)の蛍光分子の集合が、短パルス又は超短光パルスによって励起される。分子の大きい集合について、発光の強度は、
図1-8に示すように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有し得る。
【0041】
一方、単一の分子又は少数の分子について、蛍光光子の放出は、この例については、
図1-7の曲線Bの統計値に従って生じる。時間ビニング光検出器1-322は、発光事象から発生するキャリアを、蛍光分子(複数可)の励起時間に関して時間分解されている個別の時間ビン(
図1-8には3つが示されている)に蓄積することができる。たとえば、第1のビン(ビン1)は、時刻t1と時刻t2との間に発生する発光事象を記録し得る。第2のビン(ビン2)は、時刻t2と時刻t3の間に発生する発光事象を記録し、第3のビン(ビン3)は、時刻t3と時刻t4との間に発生する発光事象を記録し得る。他の実施形態では、より多いまたはより少ないビンが使用され得る。
【0042】
多数の発光事象が合計される場合、結果もたらされる時間ビンは、
図1-8に示す減衰強度曲線を近似することができ、ビニングされた信号を使用して、異なる蛍光分子又は蛍光分子が位置している異なる環境の間で区別することができる。いくつかの実施形態では、ビニングされた信号を使用して、異なる生化学的および生体機械的な度合い(biochemical and biomechanical degrees)を区別することができる。
【0043】
時間ビニング光検出器1-322の実施例は、参照によりその全体が本願明細書に援用される、「受け取られる光子の時間ビニングのための統合デバイス(Integrated Device for Temporal Binning of Received Photons)」と題する、2015年8月7日に出願された米国特許出願第14/821,656号および「直接ビニング画素を有する集積型光検出器(Integrated Photodetector with Direct Binning Pixel)」と題する、2017年12月22日に出願された米国特許出願第15/852,571号に記載されている。説明を目的として、時間ビニング光検出器の非限定的な実施形態が、
図1-9に示されている。単一の時間ビニング光検出器1-322は、すべて半導体基板上に形成される、光子吸収/キャリア発生領域1-902、キャリア放出チャネル1-906、及び複数のキャリア貯蔵ビン1-908a、1-908bを備えることができる。キャリア移動チャネル1-907は、光子吸収/キャリア発生領域1-902とキャリア貯蔵ビン1-908a、1-908bとの間を接続することができる。図示の例では、2つのキャリア貯蔵ビンが示されているが、これよりも多くてもまたは少なくてもよい。キャリア貯蔵ビンに接続されている読み出しチャネル1-910があり得る。光子吸収/キャリア発生領域1-902、キャリア放出チャネル1-906、キャリア貯蔵ビン1-908a、1-908b、及び読み出しチャネル1-910は、半導体を局所的にドーピングすること、及び/又は、調整絶縁領域を形成して光検出機能をもたらし、キャリアを閉じ込め、移動させることによって形成することができる。時間ビニング光検出器1-322はまた、デバイスを通じてキャリアを輸送するための電場をデバイス内に発生させるように構成されている、基板上に形成されている複数の電極1-920、1-921、1-922、1-923、1-924をも含むことができる。
【0044】
動作中、パルス光源1-108(例えば、モードロックレーザ(mode-locked laser))からの励起パルス1-122の一部分は、時間ビニング光検出器1-322上で試料ウェル1-330に送達される。最初に、いくつかの励起放射光子1-901は、光子吸収/キャリア発生領域1-902に到達し、(薄い影の円で示される)キャリアを生成し得る。励起放射光子1-901とともに到達し、(濃い影の円で示される)対応するキャリアを生成するいくつかの蛍光発光光子1-903も存在し得る。最初に、励起放射によって生成されるキャリアの数は、蛍光発光によって生成されるキャリアの数と比較して極めて多い場合がある。時間間隔|te-t1|の間に生成された初期キャリアは、たとえば、第1の電極1-920を備えたキャリア放出チャネル1-906にゲーティングする(gating)ことで除去され得る。
【0045】
その後、大部分の蛍光発光光子1-903は、光子吸収/キャリア発生領域1-902に到達し、試料ウェル1-330からの蛍光発光を表す有用かつ検出可能な信号を提供する(濃い影の円で示される)キャリアを生成する。いくつかの検出方法によれば、第2の電極1-921および第3の電極1-923は、後の時点で(例えば、第2の時間間隔|t1-t2|の間に)生成されたキャリアを第1のキャリア貯蔵ビン1-908aに方向付けするために、後の時点でゲーティングされ得る。続いて、第4の電極1-922および第5の電極1-924は、後の時点で(例えば、第3の時間間隔|t2-t3|の間に)ゲーティングされて、キャリアを第2のキャリア貯蔵ビン1-908bに方向付けすることができる。多数の励起パルスに対して励起パルスの後に、電荷蓄積がこのようにして継続して、各キャリア貯蔵ビン1-908a、1-908b内にかなりの数のキャリアおよび信号レベルを蓄積することができる。後の時点で、ビンから信号を読み出すことができる。いくつかの実施態様において、各貯蔵ビンに対応する時間間隔は、ナノ秒未満の時間スケールにあるが、いくつかの実施形態(例えば、蛍光色素分子がより長い減衰時間を有する実施形態)では、より長い時間スケールが使用されてもよい。この例では、2つの時間ビンのみが使用される。
【0046】
励起事象(例えば、パルス光源からの励起パルス)後にキャリアを発生及び時間ビニングする工程は、単一の励起パルスの後に1度行われてもよく、又は、時間ビニング光検出器1-322の単一の電荷蓄積サイクルの間に複数の励起パルス後に複数回繰り返されてもよい。電荷蓄積が完了した後、キャリアは、読み出しチャネル1-910を介して貯蔵ビンから読み出すことができる。例えば、適切なバイアスシーケンスを電極1-923,1924及び少なくとも電極1-940に印加して、貯蔵ビン1-908a、1-908bからキャリアを除去することができる。電荷蓄積及び読み出しプロセスは、光電子チップ1-140での大規模並列処理で実施し、データのフレームが生成される。
【0047】
図1-9に関連して説明した例は、複数の電荷貯蔵ビン1-908a、1-908bを含むが、場合によっては、単一の電荷貯蔵ビンを代わりに使用してもよい。たとえば、時間ビニング光検出器1-322にはビン1のみが存在してもよい。そのような場合、単一の貯蔵ビン1-908aは、異なる励起事象後の異なる時間間隔で検出するために、可変時間ゲーティング方式(variable time-gated manner)で処理され得る。例えば、最初の一連の励起パルスにおける複数のパルスの後、貯蔵ビン1-908aの電極をゲーティングして、第1の時間間隔(たとえば、第2の時間間隔|t
1-t
2|の間)で生成したキャリアを収集し、蓄積された信号を所定数の第1のパルスの後に読み出すことができる。同じ試料ウェルでの後続の一連の励起パルスにおける複数のパルスの後、貯蔵ビン1-908aの同じ電極をゲーティングして、異なる時間間隔(たとえば、第3の時間間隔|t
2-t
3|の間)で生成したキャリアを収集し、蓄積された信号を所定数の第2のパルスの後に読み出すことができる。キャリアは、必要に応じて同様の方法で後者の時間間隔で収集され得る。このようにして、試料ウェルに励起パルスが到達した後の異なる時間における蛍光発光に対応する複数の信号レベルは、単一のキャリア貯蔵ビンを用いて生成され得る。
【0048】
いくつかの実装形態では、各光検出器1-322は、そのようなフォトダイオードのアレイ内の単一光子アバランシェフォトダイオード(single-photon avalanche photodiode : SPAD)を備えてもよい。SPADは、単一の光子の到達を検知して、高速で(サブナノ秒の時間スケールなどで)処理し得る。いくつかの実施形態では、各SPADは、個々の蛍光光子の到達を知らせて、(例えば、励起光パルスの時刻に対する)発光事象の発生時刻を示し得る。複数の発光事象の発生時刻は、放出統計値または参照値と比較するために、データ取得中に複数の時間ビンにおいてビニングされ得る。
【0049】
複数の励起事象の後、各時間ビン内の蓄積された信号を読み出して、例えば、蛍光発光減衰率及び/又は強度を表す対応するビンを有するヒストグラムをもたらすことができる。そのような工程は、
図1-10A及び
図1-10Bに示されている。ヒストグラムのビンは、反応室内の蛍光色素分子(複数可)の励起後の時間間隔中に検出される光子の数を示すことができる。いくつかの実施形態において、ビンの信号は、
図1-10Aに示すように、多数の光励起パルス後に蓄積される。励起パルスは、パルス間隔時間Tによって分離されている時刻t
e1、t
e2、t
e3、...、t
eNにおいて生じ得る。電子貯蔵ビン内の信号の蓄積の間に反応室に印加される10
5個と10
7個との間の光励起パルスがあり得る。いくつかの実施形態において、1つのビン(ビン0)は、各光パルスによって送達される励起エネルギーの大きさを検出するように構成することができ、(例えばデータを正規化するための)基準信号として使用することができる。いくつかの実施形態では、参照ビン(ビン0)は使用されなくてもよい。
【0050】
いくつかの実施態様において、
図1-10Aに示すように、平均して単一の光子のみが、励起事象後に蛍光色素分子から放出され得る。時刻t
e1における最初の励起事象の後、時刻t
f1において放出される光子が、第1の時間間隔内に生じ得、それによって、もたらされる電子信号が、例えば、(ビン1に寄与する)第1の電子貯蔵ビン内に蓄積される。時刻t
e2における後続の励起事象において、時刻t
f2において放出される光子が、第2の時間間隔内に生じ得、それによって、もたらされる電子信号が、ビン2に寄与する。
【0051】
多数の励起事象及び信号蓄積の後、例えば、時間ビニング光検出器1-322の電子貯蔵ビンを読み出して、反応室に関する多値信号(例えば、2つ以上の値を備えるヒストグラム、N次元ベクトルなど)を与えることができる。各ビンの信号値は、蛍光色素分子の減衰率に部分的に依存し、関連する光検出器1-322のインパルス応答にも依存し得る。例えば、再び
図1-8を参照すると、減衰曲線Bを有する蛍光色素分子は、減衰曲線Aを有する蛍光色素分子よりも高い、ビン1内の信号のビン2内の信号に対する比を有することになる。いくつかの実施形態では、各ビンの信号値は、光検出器のインパルス応答にさらに依存し得る。ビンからの値は、較正値、閾値及び/又は互いに対して分析及び比較して、特定の蛍光色素分子の強度を決定することができ、この蛍光色素分子が、反応室内にあるときに蛍光色素分子に結合されているヌクレオチド又はヌクレオチド類似体(又は対象の任意の他の分子もしくは試料)を同定する。単一光子アバランシェフォトダイオードの場合、(パルス到達時間に基づく)ビニングパルスカウントを使用して、蛍光発光に対応する2つ以上のビンを生成できまる。
【0052】
信号分析の理解をさらに補助するために、蓄積されたマルチ・ビン値を、例えば
図1-10Bに示すようにヒストグラムとしてプロットすることができ、又は、N次元空間内のベクトルもしくは位置として記録することができる。較正ランを別個に実施して、4つのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に結合されている4つの異なる蛍光色素分子の多値信号(例えば、較正ヒストグラム)の較正値を取得することができる。1例として、較正ヒストグラムを、
図1-11A(Tヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)、
図1-11B(Aヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)、
図1-11C(Cヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)、及び
図1-11D(Gヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)に示されているように見ることができる。測定された多値信号(
図1-10Bのヒストグラムに対応する)を、較正多値信号と比較することによって、DNAの伸長鎖に取り込まれているヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のアイデンティティ「T」(
図1-11A)を決定することができる。場合によっては、境界内にあるN次元空間内のヒストグラム、ベクトル、または位置がその境界内の蛍光標識に従って分類されるように、境界は、較正統計学に基づいて各蛍光標識の周りに設定され得る。
図1-11A~
図1-11Dには3つの信号ビンが示されているが、一部の実施形態では、2つの信号ビンのみが使用されて、3つ、4つ、またはそれ以上の異なる蛍光色素分子を区別し得る。
【0053】
いくつかの実施態様において、異なる蛍光色素分子の間で区別するために、蛍光強度が追加的に又は代替的に使用されてもよい。例えば、いくつかの蛍光色素分子は、たとえそれらの減衰率が類似し得ても、大きく異なる強度において発光する場合があるか、又は、それらの励起の確率に著しい差(例えば、少なくとも約35%の差)を有する場合がある。ビニングされている信号(ビン1~3)を、測定された励起エネルギービン0に対して参照することによって、強度レベルに基づいて異なる蛍光色素分子を区別することが可能であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、同じタイプの異なる数の蛍光色素分子を異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に結合することができ、それによって、蛍光強度に基づいてヌクレオチドを同定することができる。例えば、2つの蛍光色素分子を第1のヌクレオチド(例えば、「C」)又はヌクレオチド類似体に結合することができ、4つ以上の蛍光色素分子を第2のヌクレオチド(例えば、「T」)又はヌクレオチド類似体に結合することができる。蛍光色素分子の数が異なるため、異なるヌクレオチドに関連付けられる異なる励起及び蛍光色素分子発光確率があり得る。例えば、信号蓄積間隔中に、「T」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体についてより多くの発光事象があり得、それによって、これらのビンの見かけの強度は、「C」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体よりも大幅に高い。
【0055】
本発明者らは、蛍光色素分子減衰率及び/又は蛍光色素分子強度に基づいてヌクレオチド又は任意の他の生物又は化学試料を区別することによって、生体分析機器1-100内の光励起及び検出システムを単純化することが可能になることを認識し、諒解するに至った。例えば、光励起は、単一波長源(例えば、複数の光源又は複数の異なる固有波長において動作する光源ではなく、1つの固有波長を生成する光源)を用いて実施することができる。さらに、異なる波長で発光する異なる蛍光色素分子が使用される場合の典型的な場合のように、波長弁別光学素子およびフィルタは、検出システムにおいて必要とされなくてもよい。また、単一の光検出器を各反応室に使用して、異なる蛍光色素分子からの発光を検出することができる。
【0056】
「固有波長」又は「波長」という語句は、限定された放射の帯域幅内の中心波長又は主波長(例えば、パルス光源によって出力される20nm帯域幅内の中心波長又はピーク波長)を参照するために使用される。いくつかの事例において、「固有周波数」又は「波長」は、光源によって出力される放射の全帯域幅内のピーク波長を参照するために使用されてもよい。
【0057】
本発明者らは、約560nmと約900nmとの間の範囲内の発光波長を有する蛍光色素分子が、時間ビニング光検出器(CMOS工程を使用してシリコン・ウェハ上に作製することができる)または単一光子アバランシェフォトダイオードによって検出されるのに十分な量の蛍光発光を与え得ることを認識し、諒解するに至った。これらの蛍光色素分子は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のような、対象の生体分子に結合することができる。この波長範囲内の蛍光発光は、シリコン・ベースの光検出器内で、より長い波長の蛍光発光よりも高い応答度で検出することができる。加えて、蛍光色素分子及び関連付けられるリンカはこの波長範囲において、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の、DNAの伸長鎖への取り込みに干渉しないことができる。本発明者らはまた、約560nmと約660nmとの間の範囲内の発光波長を有する蛍光色素分子を、単一波長源を用いて光励起することができることを認識し、諒解するに至った。この範囲内の例示的な蛍光色素分子は、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック・インコーポレイテッド社(Thermo Fisher Scientific Inc.)[米国マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在]から入手可能なAlexa Fluor 647である。場合によっては、より長い放出波長は、試料に近接して関連付けられた異なる2つの蛍光色素分子を使用して取得され得る。特定の蛍光色素分子は、パルス光源によって励起されて、そのエネルギーを、例えば、660nmよりも長い波長で放射する第2の蛍光色素分子に非放射的に(例えば、フェルスター共鳴エネルギー移動(Forster resonance energy transfer : FRET)を介して)移動させることができる。本発明者らはまた、より短い波長(例えば、約500nmと約650nmとの間)における励起エネルギーが、パルスレーザから、約560nmと約900nmとの間の波長を発光する蛍光色素分子を励起するために必要とされ得ることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施形態において、時間ビニング光検出器は、例えば、Geのような他の材料を光検出器活性領域に組み込むことによって、試料からより長い波長の発光を効率的に検出することができる。
【0058】
本発明者らは、パルスレーザからの光パルスは、励起エネルギーが後続して検出される蛍光信号を圧倒しないように、又は、それと干渉しないように、上述した検出方式のために迅速に消滅すべきであるということを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施形態において、再び
図1-5を参照すると、導波路1-315と時間ビニング光検出器1-322との間に波長フィルタはなくてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、光フィルタが、光検出器1-322上に形成されて光励起パルスからの放射を弁別し得る。いくつかの事例において、発光波長が励起波長よりも著しく長い場合、単純な光学フィルタを光検出器の上に組み込んで、時間ビニング光検出器に対する励起パルスの影響をさらに低減することができる。
【0059】
光励起エネルギーとその後の蛍光信号収集との干渉を避けるために、光励起パルスは、好ましくは、光励起パルスのピークから±500ピコ秒以内で40dB以上強度を低下させることができる。たとえば、励起光パルスのピーク値が1ワットの場合、パルス強度は、±500ps以内で約0.0001ワットまで低下する。いくつかの実施形態において、励起パルスの強度は、励起パルスのピークから±500ps以内に、60dB以上低下させてもよい。いくつかの実施形態によれば、パルス間の励起エネルギーの強度の低減は、励起エネルギーが蛍光信号の検出装置から離れる方向に向けられる場合、さらに20dB以上だけ低減することができる。例えば、励起エネルギーは、
図1-3に示すように、蛍光検出経路(垂直)とは異なる方向(水平)に伝播する導波路内で送達されてもよい。いくつかの実装形態では、2つの経路の方向は、図面に示されているようにほぼ直交してもよい。パルス間の励起エネルギーの低減はまた、導波路材料開発及びデバイス作製(例えば散乱損失の低減及び蛍光発光の低減を呈する導波路材料、ならびに、滑らかな導波路側壁を生成するエッチング工程)を通じて達成することもできる。さらに、反応室から離れた励起エネルギーの散乱は、電磁的シミュレーションからの結果に基づいて、室幾何形状、材料、及び周囲の構造の気化形状を選択することによって低減することができる。レーザ波長除去フィルタが光検出器1-322上に組み込まれる場合、より遅いターンオフ時間(turn-off time)が許容され、例えば、強度を、光励起パルスのピークから±500ピコ秒以内で20dB~30dB以上低減し得る。
【0060】
本発明者らはまた、パルスレーザは、各励起パルスについてバイオ光電子チップ上の反応室の各々の中の少なくとも1つの蛍光色素分子を励起するのに十分なパルスあたりのエネルギーを与えるべきであることを認識し、諒解するに至った。約32,000個の反応室を含むチップについて、また、システム全体を通じた光学的損失を考慮に入れて、本発明者らは、パルスレーザが、励起波長において約4mW以上の平均光パワーをもたらすべきであると決定した。
【0061】
本発明者らはさらに、光カプラへの効率的な結合およびバイオ光電子チップ1-141の複数の導波路へのエネルギーの均一な分配を達成することができるように、パルスレーザは、高いビーム品質であるべきである(例えば、1.5未満のM2値および最大λ/4のピークツーバレー(peak-to-valley)の波面歪)ことを認識し、諒解するに至った。いくつかの実装形態では、波面歪みは、最大λ/10のピークツーバレーであり得る。携帯型機器の場合、レーザダイオードが好ましい光源であり得る。ただし、レーザダイオードの放射領域はミクロン単位であり、エネルギーをバイオ光電子チップ1-141の複数の導波路に適切に結合するには、ビームの大きな拡大(20倍以上)が必要になる場合がある。ビーム品質を維持しながらコンパクトな機器でこのような大きなビーム拡大を達成することは技術的な課題である。加えて、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140への改善された安定した結合のために、光ビームを調整および方向制御する(steer)装置が必要である。
【0062】
さらに、短いターンオフ時間でレーザダイオードから光パルスを生成し、パッケージ化バイオ光電子チップに結合する高品質で方向制御可能なビームを提供できる携帯型生体分析システム1-100の詳細を説明する。
【0063】
II.パルス光源
いくつかの実施形態では、生体分析機器1-100用のパルスソース基板1-110上の光源として利得切換レーザダイオード(gain-switched laser diode)が使用され得る。利得切換レーザは、典型的には、モードロックレーザの超短パルス持続時間を達成できないが、より複雑さがなく、典型的にはサイズが小さく、より低コストで製造できる。ラボオンチップ(lab-on-chip)、寿命識別、大規模並列生体分析用途の文脈における利得切換レーザダイオードに関連する課題は、寿命分析には十分短い光パルス持続時間を得ること、及び励起エネルギーをチップに結合し、エネルギーを多数の反応室に均一に分配するための適切なビーム品質を得ることである。
【0064】
本発明者らは、レーザダイオードから短光パルス及び超短光パルスを生成するためのパルスドライバ回路及び技法を着想した。いくつかの実施形態によれば、パルスドライバ回路およびレーザダイオードは、パルスソース基板1-110上に集合されてもよい。パルスドライバ回路およびレーザダイオードは、約4mWの平均パワーで約100ps(FWHM)のオーダーのパルス持続時間を有する光パルスの列を生成し得る。場合によっては、パルス幅は、40psから250psの間であってもよい。いくつかの実装形態では、パルス幅は、40psから150psの間であってもよい。光パルスは、パルスのピークから500ps以下の範囲内で、パルスのピークより少なくとも40dB下までオフにすることができる。場合によっては、光パルスは、パルスのピークから600ps以下の範囲内で、パルスのピークよりも40dB以上低くなるまでオフしてもよい。パルスの繰返し率は、例えば、50MHzと200MHzとの間の任意の値となるようにユーザによって選択され得る。いくつかの実施形態では、単極電流波形は、パルスドライバ回路で生成され、レーザダイオードを駆動して光パルスを出力するように用いられ得る。
【0065】
利得切換の導入として、
図2-1A~
図2-1Cは、レーザにおける利得切換に関連するレーザ動態を示す。
図2-1Aは、いくつかの実施形態によれば、光学的にポンピングされた(optically-pumped)利得切換レーザの利得媒体に印加される光学ポンプ・パワーを表すポンプ・パワー曲線2-110を示す。図示されているように、ポンプ・パワーは、レーザの利得媒体に、短い持続時間(約0.6マイクロ秒として示されている)にわたって印加することができる。持続時間は、レーザダイオードの利得切換などの高速の実施形態ではより短くてもよい。半導体レーザダイオードについて、ポンプ・パワーの印加は、1ナノ秒未満の持続時間におけるレーザダイオードの活性領域でp-n接合又は多重量子井戸(MQW)にわたってバイアス電流を印加することを含むことができる。ポンプ・パワー・パルスは、周期的に離間された時間間隔で、例えば、パルス分離間隔又はパルス繰り返し時間Tで、繰り返し印加することができる。
【0066】
ポンプ・パワー・パルスが印加されている間、レーザの光学利得は、利得がレーザのキャビティにおける光学損失を超え始めるまで増大する。この時点の後、レーザはレージング(すなわち、誘導放出の工程によって利得媒体を通過する光子を増幅)し始めることができる。増幅工程の結果として、レーザ光が急速に増大し、利得媒体内の励起状態が空乏して、少なくとも1つの出力パルス2-130がグラフに示されるように生成される。いくつかの実施形態において、ポンプ・パワー・パルス2-110は、出力パルスのピークが生じるのとほぼ同時にオフになるように、タイミングをとられる。ポンプ・パワー・パルスがオフになることによって、さらなるレージングが終了し、それによって、出力パルス2-130が消える。いくつかの実施形態において、出力パルス2-130は、図面に示すように、ポンプ・パルス2-110よりも短い持続時間を有し得る。例えば、利得切換によって生成される出力パルス2-130は、ポンプ・パルス2-110の持続時間の1/5よりも小さくてもよい。
【0067】
ポンプ・パワー・パルスがオフにされない場合、
図2-1Bに示す動態が生じ得る。この事例において、ポンプ・パワー曲線2-140は、半導体レーザダイオードに印加される電流密度の階段関数として示される。レージング閾値電流密度I
thの約2倍のポンプ電流密度Iが時刻t=0において印加され、その後、そのままにされる。グラフは、印加されたポンピング電流密度によって利得媒体が励起され、それによって、レーザダイオードの利得領域におけるキャリア密度Nが生成されることを示している。グラフは、レーザの光学利得がキャビティ内の損失を超えるまで、半導体利得領域のキャリア密度Nが増大することを示している。この時点の後、キャリア密度及び光学利得をキャビティ損失を下回る値まで空乏させる第1のパルス2-161が増大し、第1のパルス2-161が放出される。その後、第2のパルス2-162が増大し、キャリア密度Nを空乏させ、放出される。キャリア密度の増大及び空乏は、レーザが安定して連続波動作になる(例えば、この例では約7ナノ秒後)まで、数サイクルにわたって繰り返す。パルス(パルス2-161、パルス2-162、及び後続のパルス)のサイクルは、レーザの緩和振動と称される。
【0068】
本発明者らは、超短パルスを生成するためにレーザダイオードを利得切換するときの課題は、緩和振動が継続することの有害な影響を回避することであることを認識し、諒解するに至った。例えば、
図2-1Cに示すように、ポンプ・パワー・パルス2-110が十分迅速に終端しない場合、少なくとも第2の光パルス2-162(緩和振動に起因する)がレーザキャビティ内で増大し始め、利得切換出力パルス2-170にテール(tail)2-172を付加する場合がある。本発明者らは、そのようなテールは、蛍光寿命に基づいて蛍光分子を区別することを目標とする用途のようないくつかの用途にとっては望ましくない可能性があることを認識し、諒解するに至った。励起パルスのテールが十分迅速に低減されない場合、波長フィルタリングが利用されない限り、励起放射は、検出器を圧倒する場合がある。代替的に又は付加的に、励起パルス上のテールは、蛍光分子を励起し続ける場合があり、蛍光寿命の検出を複雑にする場合がある。
【0069】
(例えば、パルスピークの後に500ピコ秒以下だけパルスピークよりも最大40dB低く)励起パルスのテールが十分迅速に低減する場合、蛍光発光中に存在する励起放射は無視できるかまたは管理可能である。そのような実施態様において、蛍光発光の検出中に励起放射をフィルタリングすることは、蛍光発光を検出し、蛍光分子寿命を区別するためには必要ない場合がある。いくつかの事例において、励起フィルタリングをなくすことによって、バイオ光電子チップ1-141を大幅に単純化し、その費用を低減することができ、システムの構成をよりコンパクトにすることを可能にすることができる。例えば、蛍光発光中の励起波長を抑制するためにフィルタが必要ない場合、励起源及び蛍光検出器は密に近接して(例えば、同じ回路基板又は集積デバイス上に、またさらには互いの数マイクロメートル(数ミクロン)以内に)位置することができる。
【0070】
本発明者らはまた、場合によっては、励起パルスからの放射量が、許容される、及び/又は時間ビニング光検出器1-322と試料ウェル1-330との間に堆積された低コスト波長弁別薄膜または薄膜の多層スタックによって除去されることを認識し、諒解した。例えば、バイオ光電子チップ1-141は、薄膜波長フィルタを検出光路に組み込むことを可能にする光学的構成を有することができる。波長フィルタは、検出器1-322が生物学的試料から定量化可能な蛍光を受信するように、検出光路において励起波長を拒絶するように選択することができる。結果として、パルス光源からの励起放射は、検出される蛍光を圧倒しない可能性がある。そのような場合、波長フィルタは、反応室1-330とその関連する光検出器1-322との間に形成される単層または多層の光学コーティングを備えてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、蛍光分子の発光寿命τは、1/e強度値によって特性化することができるが、いくつかの実施形態では、他の測定基準が使用されてもよい(例えば1/e2、発光半減期など)。蛍光分子の寿命を決定する正確度は、蛍光分子を励起するために使用される励起パルスが、蛍光分子の寿命よりも短い持続時間を有する場合に改善される。好ましくは、励起パルスは、蛍光分子の発光寿命よりも少なくとも3倍だけ短いFWHM持続時間を有する。より長い持続時間を有する励起パルス、又は、相当のエネルギーを有するテール2-172は、減衰する発光が評価されている間に蛍光分子を励起し続け、蛍光分子寿命の分析を複雑にする場合がある。そのような事例における蛍光寿命決定を改善するために、デコンボリューション技法を使用して、検出されている蛍光から、励起パルス・プロファイルの畳み込みを解くことができる。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔T(
図1-2参照)もまた、パルスレーザ・システムの重要な態様になり得る。例えば、蛍光分子の発光寿命を評価及び/又は区別するためにパルスレーザを使用するとき、励起パルスの間の時間は好ましくは、発光寿命を十分に正確に決定することを可能にするために、試験されている蛍光種の任意の発光寿命よりも長い。例えば、後続のパルスは、先行するパルスから励起される蛍光分子又は励起される蛍光分子の集合が、蛍光を発するために妥当な時間を得る前に到来するべきではない。いくつかの実施形態において、間隔Tは、蛍光分子を励起する励起パルスと、励起パルスの終端後で、かつ次の励起パルスの前に、蛍光分子によって放出される後続の光子との間の時間を決定するのに十分に長い必要がある。
【0073】
励起パルス間の間隔Tは、蛍光種の減衰特性を決定するのに十分に長くなるべきであるが、パルス分離間隔Tが、短期間に多くの測定が行われることを可能にするのに十分に短いことも望ましい。限定ではなく例として、いくつかの用途において使用される蛍光分子の発光寿命(1/e値)は、約100ピコ秒~約10ナノ秒の範囲内であり得る。それゆえ、使用される蛍光分子に応じて、約200ps程度と短いパルス分離間隔を使用することができ、一方で、より寿命の長い蛍光分子については、約20ナノ秒よりも長いパルス分離間隔Tを使用することができる。したがって、蛍光寿命分析のために蛍光発光を励起するために使用される励起パルスは、いくつかの実施形態によれば、約25ピコ秒と約2ナノ秒との間のFWHM持続時間を有することができる。
【0074】
パルスレーザダイオード2-200の一例が、
図2-2Aに示されている。いくつかの実施形態によれば、パルスレーザダイオード2-200は、基板2-208上に形成されている市販の又はカスタム半導体レーザダイオード2-201を備えることができる。レーザダイオードは、駆動信号をレーザダイオード2-201に印加するための電気コネクタまたはピン2-224を含むハウジング2-212内にパッケージされてもよい。レーザダイオードからの出力ビームを伝送し、再成形し、及び/又は、その発散を変化させるためにパッケージに含まれる、1つ又は複数の光学素子2-205(例えば、ウィンドウ及び/又は1つ又は複数のレンズ)があり得る。
【0075】
レーザダイオード2-201は、ケーブルまたは導電性相互接続2-226および少なくとも1つのワイヤ2-220(例えば、パッケージ内のボンドワイヤ)を介してレーザダイオード2-201に一連の電流パルスを提供し得るパルスドライバ回路2-210によって駆動され得る。場合によっては、パルスドライバ回路は、レーザダイオード2-201と同じ基板上に集積されてもよい。パルスドライバ回路2-210からの駆動電流によって、レーザダイオードからの放出される光パルスの列2-222が生成され得る。いくつかの実装形態では、光パルスは、レーザダイオード2-201の放出面から伝送するときにサイズが拡大され得る。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、レーザダイオード2-201は、第1の導電型(例えば、p型)を有する第1の層2-202と、反対の導電型を有する第2の層2-206とを備える半導体接合を含むことができる。第1の層と第2の層との間には、1つ又は複数の中間層2-204が形成されてもよい。例えば、中間層は、第1の層及び第2の層から注入されるキャリアが再結合して光子を生成する多重量子井戸(MQW)層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、中間層は、電子及び/又は正孔ブロック層を含み、このブロック層は、電子および正孔を、光子を再結合して放出するダイオードの活性領域に保持することを補助し得る。レーザダイオードは、いくつかの実施態様において、無機材料及び/又は有機半導体材料を含んでもよい。材料は、所望の発光波長が得られるように選択することができる。例えば、無機半導体について、III族窒化物組成が約500nm未満の波長において発光するレーザに使用されてもよく、III族窒化物、III族ヒ化物組成又はIII族リン化物組成が、約500nmを超える波長において発光するレーザに使用されてもよい。限定ではないが、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、端面発光レーザダイオード、又は、スラブ結合光導波路レーザ(SCOWL)を含む、任意の適切なタイプのレーザダイオード2-201が使用されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、ドイツのレーゲンスブルクのOSRAM Opto Semiconductors GmbHから入手可能な緑色レーザダイオード、モデルPL520Bなどのレーザダイオードが使用されてもよいが、他のレーザダイオードが他の実施形態で使用されてもよい。レーザダイオードは、いくつかの実施形態によれば、515nm~530nmの範囲の単一の固有波長で放出し、基板実装可能なパッケージ(例えば、TO金属缶パッケージ(TO metal can package))で提供されてもよい。いくつかの実施形態によれば、そのようなパッケージは、パルスソース基板1-110に直接取り付けられるか、またははんだ付けされてもよい。例えば、電気コネクタ2-224は、ハウジング2-212の底部から延びる複数のピンを備えてもよい。いくつかの実施形態では、複数のピンは、パルスソース基板1-110上の導電性相互接続に直接的はんだ付けされてもよく、または他の実施形態では、パルスソース基板上の導電性相互接続にはんだ付けされるプラグレセプタクル(plug receptacle)に挿入してもよい。
【0078】
本発明者らは、いくつかの従来のレーザダイオードおよび電流ドライバが、
図2-2Bに示すようにモデル化され得ることを認識し、諒解するに至った。例えば、パルスドライバ回路2-210は、レーザダイオード2-201に電流パルスを送達するように構成されているパルス電圧源2-230を備えることができる。レーザダイオードへの接続は、少なくとも部分的に、レーザダイオード2-201上のコンタクト・パッドに結合され得る単一のボンドワイヤ2-220を介してなされる。レーザダイオードへの接続は、直列インダクタンスL1及び直列抵抗R1を含むことができる。接続はまた、コンタクト及び/又はダイオード接合と関連付けられる小さい接合静電容量(図示せず)をも含むことができる。高い駆動周波数では、インダクタンスL1は、レーザダイオード2-201に供給される電流の量を制限し得る。
【0079】
本発明者らは、ワイヤ・ボンド(例えばコネクタ2-224とレーザダイオード2-201との間)の数を増大することによって、レーザダイオード2-201への接続のインダクタンス及び/又は抵抗を低減することができることを認識し、諒解するに至った。そのようなインダクタンス及び/又は抵抗の低減は、レーザダイオードの電流変調をより高速にし、出力パルスをより短くすることを可能にすることができる。いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードの速度を向上させるために、単一のワイヤ・ボンド2-220が、複数の並列ワイヤ・ボンドに置き換えられてもよい。例えば、ワイヤ・ボンドの数は、3本以上に増大することができる。いくつかの実施態様において、レーザダイオードに対する最大50本のワイヤ・ボンドがあってもよい。
【0080】
本発明者らは、市販のレーザダイオードに対する、ワイヤ・ボンド2-220の数の増大の影響を調査した。ワイヤ・ボンドの数を増大させる数値シミュレーションの結果が、
図2-2Cに示されている。このシミュレーションでは、市販のレーザが考慮された(現在ウシオ(Ushio)[米国カリフォルニア州サイプレス(Cypress)所在]から入手可能なオクラロ(Oclaro)レーザダイオード、モデルHL63133DG)。シミュレーションは、ワイヤ・ボンドの数を、市販のデバイスの単一のボンド(曲線2-250)から、3本のワイヤ・ボンド(曲線2-252)及び36本のワイヤ・ボンド(曲線2-254)へと増大させた。固定18Vパルスについてレーザダイオードへと送達される平均駆動電流が、3つの異なる事例について、一定範囲の周波数にわたって決定された。結果は、ワイヤ・ボンドの数が多くなるほど、より多くの電流がより高い周波数においてレーザダイオードに送達されることが可能になることを示している。例えば、1GHzにおいて、3本だけのワイヤ・ボンドを使用することによって(曲線2-252)、単一のワイヤ・ボンドの場合よりも4倍を超える量の電流が、レーザダイオードに送達されることが可能になる。短パルス及び超短パルスは、より広い帯域幅(短パルスを形成するためのより高い周波数成分)を必要とするため、複数のワイヤ・ボンドを加えることによって、より高い周波数成分が、単一のワイヤ・ボンドよりも短いパルスにおいてレーザダイオードを駆動することを可能にする。いくつかの実施態様において、複数のワイヤ・ボンドは、レーザダイオード上の単一のコンタクト・パッド又は複数のコンタクト・パッドと、レーザダイオード・パッケージ上のアダプタ又はコネクタ2-224との間に延在することができる。コネクタは、外部標準ケーブルへ(例えば、50オームBNC又はSMAケーブルへ)接続するように構成するか、またはパルスソース基板1-110に直接的に取り付けるための複数のピンを備えることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、ワイヤ・ボンドの数及びワイヤ・ボンド構成は、レーザダイオードに接続されているアダプタ及び/又は回路のインピーダンスに整合するように選択することができる。例えば、ワイヤ・ボンドを備えるレーザダイオードへの入力インピーダンスは、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードから電流ドライバへのパワー反射を低減するために、コネクタ2-224、ケーブル2-226、またはレーザダイオードに接続された回路のインピーダンスに整合することができる。他の実施形態において、ワイヤ・ボンドのインピーダンスは、レーザダイオードの入力インピーダンスと意図的に不整合になってもよい。不整合は、正の電流駆動パルスの間の負のパルスを発生させることができる。レーザダイオードのパッケージング方法を選択すること(例えば、レーザダイオードに接続するワイヤ・ボンドの数を選択すること)によって、より高い周波数においてレーザダイオードに供給される電流変調を改善することができる。これは、高速利得切換信号に対するレーザダイオードの応答性を高めることができ、光パルスをより短くすること、パルスピーク後の光パワーの低減をより高速にすること、及び/又は、パルス繰り返し数を増大することを可能にすることができる。
【0082】
いくつかの実施形態によるパルスドライバ回路2-210の一例を
図2-3に示す。パルスドライバ回路は、パルス発生器2-380及びダイオードドライバ回路2-390を備えてもよい。パルス発生器2-380は、例えば、システムクロックからのまたはシステムクロックから導出される1つ以上のクロック信号を受け取り、電気パルスの列をダイオードドライバ回路2-390に出力し得る。パルス列の電気パルスは、任意の過渡的で低レベルのリンギング(例えば、パルス振幅の10%未満)とは別に、ベースレベル信号から単一方向に延びる単極パルスであってもよい。ダイオードドライバ回路2-390は、パルス発生器2-380からの電気パルスで動作し、対応する電流パルスをレーザダイオードに注入することができる。電流パルスは、レーザダイオードによって光パルスに変換される。したがって、レーザダイオードからの出力光パルスは、システムクロックに同期することができる。システムクロック、またはそれから導出されたクロックは、バイオ光電子チップ1-141上のデータ取得電子機器に提供され、その機器を動作させるために使用され得る。この方法で、試料の光学励起およびデータ収集が同期される。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、パルス発生器2-380は、受動電子構成要素とデジタル電子構成要素との組み合わせから形成することができる。いくつかの事例において、パルス発生器2-380は、アナログ回路構成要素を含んでもよい。パルス発生器2-380は、パルスソース基板1-110上に形成されるか、または別個の基板上に形成されてもよい。他の実施形態では、パルス発生器2-380の一部分が、ダイオードドライバ回路2-390と同じ基板上に形成されてもよく、パルス発生器2-380の一部分が、ダイオードドライバ回路2-390から遠隔した別個の基板上に形成されてもよい。ダイオードドライバ回路2-390は、受動、アナログ、及びデジタル電子構成要素から形成されてもよく、パルス発生器2-380又はパルス発生器の一部分と同じ又は異なる回路基板上に形成されてもよい。いくつかの実施態様において、パルス発生器2-380及び/又はダイオードドライバ回路2-390は、エミッタ結合論理要素を含むことができる。光源(レーザダイオード)は、ダイオードドライバ回路2-390を有する回路基板上に含まれてもよく、又は、システム内に位置して、高速ケーブル(例えばSMAケーブル)によってダイオードドライバ回路2-390に接続されてもよい。いくつかの実施形態によれば、パルス発生器2-380、ダイオードドライバ回路2-390、及びレーザダイオード2-201は、同じプリント回路基板、ラミネート、又は集積回路に集積することができる。例えば、パルス発生器2-380、ダイオードドライバ回路2-390、およびレーザダイオード2-201は、パルスソース基板1-110上に集積されてもよく、パルスソース基板1-110は、生体分析機器1-100内のユーザが交換可能な基板であり得る。
【0084】
いくつかの実施形態による、パルス発生器2-380、2-381のさらなる詳細を、
図2-4Aおよび
図2-4Cに示す。複数の実施態様によれば、パルス発生器2-380は、一方が他方に対して遅延されている、2つの差動クロック出力を生成する第1の段を含むことができる。第1の段は、クロック入力を受信することができ、ファン・アウトチップ2-481と、信号遅延2-483とを含むことができる。ファン・アウトは、クロック信号の2つのコピー及びクロック信号の2つの反転コピーを生成するように構成されている論理ドライバ及び論理インバータを含むことができる。複数の実施形態によれば、クロックは、対称デューティ・サイクルを有してもよいが、場合によっては、非対称デューティ・サイクルが使用されてもよい。1つのコピー及び1つの反転コピーが、差動クロック出力(CK1、
【0085】
【数2】
)を形成することができ、遅延要素2-483によって、第2のコピー及び第2の反転コピー(CK2、
【0086】
【数3】
)に対して遅延させることができる。遅延要素は、任意の適切な可変又は固定遅延要素を含んでもよい。遅延要素の例は、RF遅延線及び論理ゲート遅延を含む。いくつかの実施態様において、第1の対のクロック信号(CK1、
【0087】
【0088】
【数5】
)に対して1クロックサイクルのうちの少なくとも一部分だけ遅延される。遅延は、部分サイクルに加えて、1つもしくは複数の全サイクルを含んでもよい。各対のクロック信号の中で、反転信号は、クロックの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが基本的に同時に生じるように、その対応する一方に同期することができる。
【0089】
本発明者らは、パルス発生器2-380からの電流駆動電気パルスの期間を調整し、超短電流駆動パルスの振幅を調整するのではなく、パルスの固定振幅を維持することによって、レーザダイオードの超短パルス化をより確実に制御することができることを見出した。電流駆動パルスの長さを調整することによって、パルスあたりにレーザダイオードに送達されるエネルギーの量が調整される。いくつかの実施形態において、高速回路は、(例えば、アナログ又はデジタル遅延要素2-483を用いて遅延又は位相を調整することによって)信号位相を高分解能に制御することを可能にし、これは、いくつかの実施態様によれば、パルス長の高分解能制御を達成するために使用することができる。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、遅延クロック信号CK1、CK2及びそれらの反転信号は、高速伝送線路を介して高速論理ゲート2-485に伝送することができる。基板間のケーブルを介した信号伝送について、クロック・パルスはケーブルに起因して劣化する場合がある。例えば、伝送線路の制限された帯域幅が、クロック・パルスを別様に歪ませる場合があり、結果としてタイミングを不均等にする場合がある。いくつかの実施態様において、伝送歪みが4つのクロック信号に等しく影響を及ぼすように、同じタイプのケーブル又は伝送線路をすべてのクロック信号に使用することができる。例えば、信号歪み及びタイミング・オフセットが、4つのクロック信号について基本的に同じであるとき、結果として受信論理ゲート2-485によって生成される駆動パルスは、基本的に、クロック信号の伝送からの信号歪みがない場合と同じになる。したがって、1フィート(a foot)以上の距離を介したクロック信号の伝送は、駆動パルス持続時間に影響を及ぼすことなく、許容することができる。これは、システムクロックに同期され、精密に調整可能なパルス持続時間(例えば約3psの増分で調整可能)を有する超短駆動パルスを生成するのに有用であり得る。
【0091】
ダイオードドライバ回路2-390のクロック信号がドライバ回路の近くでローカルに(例えば、ダイオードドライバ回路2-390と同じ基板上に)生成される場合、クロック信号の伝送に関連する信号歪みは、重大でない場合があり、伝送線路はある程度異なってもよい。この場合、2つの差動クロック信号を必要とせず、パルス発生器2-380の回路構成が異なっていてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、2つの差動クロック信号は、キャパシタC1とAC結合することができ、高速論理ゲート2-485のデータ入力に与えることができる。AC結合は、クロック2-430の出力論理基準(output logic standard)と論理ゲート2-485の入力論理基準との間に差がある場合に使用され得る。キャパシタC1は、約10nFと約1μFとの間の静電容量を有することができる。いくつかの実施形態によれば、論理ゲートは、エミッタ結合論理(ECL)2入力差動AND/NANDゲートを含んでもよい。論理ゲート2-485の例は、オン・セミコンダクタ(ON Semiconductor)[米国ロード・アイランド州イースト・グリニッジ(East Greenwich)所在]から入手可能なモデルMC100EP05を含む。いくつかの実施形態では、例えば、クロックの出力論理基準が論理ゲートの入力論理基準と一致する場合、クロック2-430と論理ゲート2-485との間にAC結合が存在しなくてもよい。
【0093】
論理ゲート2-485のデータ入力(
【0094】
【数6】
)に供給される差動クロック信号のAC結合された信号は、
図2-4Bに示されるように生じ、水平の破線は、ゼロ電圧レベルを示す。
図2-4Bの図示は、伝送線路によって導入される歪みを含まない。歪みは、信号プロファイルの形状を丸め、変化させ得るが、同じタイプ及び長さのケーブルが各クロック信号に使用されるときは、クロック信号の相対位相に影響を及ぼさないものであり得る。遅延要素2-483は、
図2-4Bにおいて垂直破線によって示される遅延Δtを設けることができ、この遅延は、3psと小さい増分で調整可能であり得る。いくつかの実施態様において、遅延要素2-483は、1psと10psとの間の値を有する増分で調整可能な遅延を設けることができる。論理ゲート2-485は、受信クロック信号を処理し、遅延要素2-483によって導入される遅延に対応する出力ポートQにおいて出力信号を生成することができる。
【0095】
遅延Δtが小さいと、論理ゲート2-485の非反転出力からの出力信号は、
図2-4Bの下側のトレース(trace)に示されるように、短パルスまたは超短パルスのシーケンスを含み得る。高速論理ゲート2-485を用いると、パルス持続時間は、いくつかの実施形態においては約50psと約2nsとの間(FWHM)であってもよく、いくつかの実施形態においては約50psと約0.5nsとの間であってもよく、いくつかの実施形態においては約50psと約200psとの間であってもよく、さらには、いくつかの実施形態においては約50psと約100psとの間であってもよい。ポートQからの駆動パルスは、ECL論理ゲート2-485の高速スルー・レートに起因して、実質的に方形のプロファイルを有することができる。いくつかの実施形態では、バイアス回路2-487を、出力ポートQに接続することができ、正のエミッタ結合論理に対して電圧V
1が印加され得る。バイアス回路2-487は、電圧源V
1と基準電位(例えば、グランド)との間に直列に接続された分圧抵抗R
1,R
2を含み得る。パルス発生器2-380の出力端子P
outから与えられる出力パルスは、いくつかの実施形態によれば、DCオフセットを含み得る。
【0096】
いくつかの事例において、パルス発生器2-381の第1の段は、
図2-4Cに示すように、ファン・アウト2-481及び遅延2-483の代わりに、2重出力クロック(dual-output clock)を含んでもよい。2重出力クロック2-430は、2つの差動クロック信号を発生させることができ、2つの差動クロック信号の間に調整可能な位相遅延をもたらすことができる。いくつかの実施態様において、調整可能な位相遅延は、3psものわずかな対応する時間分解能を有することができる。
図2-4Bを参照すると、Δtのこの調整増分は、出力電気パルスの持続時間の微細な時間的制御を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態では、
図2-4Cに示すように、2つの差動クロック信号は、並列に配置された2つの高速論理ゲート2-485のデータ入力に並列に供給されてもよい。2つ以上の高速論理ゲート2-485が並列に接続されている場合、これらの論理ゲートは同じであってもよく、並列に動作して、パルス発生器の出力P
outにおいてより大きい電流駆動機能を与えることができる。本発明者らは、論理ゲート2-485又はゲートが、高速切り換え(例えば、超短駆動パルスを生成するための速やかな立ち上がり及び立ち下がり時間)を可能にする必要があり、ダイオードドライバ回路2-490内の少なくとも1つのトランジスタを駆動するのに十分な出力電流を与える必要があることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施態様において、論理ゲート2-485を並列に接続することによって、パルスドライバ回路の性能を改善することができ、100ps未満の光パルスを生成することが可能になる。
【0098】
ダイオードドライバ回路2-390の構造に応じて、論理ゲート2-485から非反転または反転出力が取得され得る。
図2-4Cに示す実施形態の場合、反転出力が使用される。そのような実施形態では、プルダウンネットワーク2-488は、パルス発生器からの出力ポートと基準電位(例えば、グランド)との間を接続し得る。反転出力は、ダイオードドライバ回路2-390のアンプによって反転され得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、ダイオードドライバ回路2-390は、直列に接続された複数の増幅段を含み得る。
図2-5A、
図2-5B、および
図2-5Cにはダイオードドライバ回路2-390の例示的な複数の段が示されているが、ダイオードドライバ回路は、示されている電気部品の構成のみに限定されるものではない。いくつかの実施形態によれば、ダイオードドライバ回路の第1の段2-510(
図2-5A)は、パルス発生器2-380から受信された信号S
1の電圧利得を反転して提供する共通ソースFET増幅器を含み得る。ダイオードドライバ回路2-390の第2の段2-520は、
図2-5Bに示されるように、ソースフォロワを含み得る。ソースフォロワは、ダイオードドライバ回路2-390の第3の段2-530の高電力トランジスタM3を駆動するのに必要な電圧と電流を提供し得る。
【0100】
いくつかの実装形態によれば、
図2-5Aを参照すると、ダイオードドライバ回路2-390の第1の段は、共通ソースまたは共通エミッタ増幅器構成において接続された高速トランジスタM1を含み得る。いくつかの実施態様では、トランジスタM1は、カリフォルニア州サンノゼのBroadcom Limited(登録商標)から入手可能なpHEMTのモデルATF-331M-BLKのような高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor : HEMT)を含むことができるが、他の高速トランジスタを使用することもできる。AC結合入力ネットワーク(C
3、R
3、R
4)は、トランジスタM1のゲートに接続することができる。いくつかの実施形態によると、C
3の値は、0.25マイクロファラド(μF)~4μFであり、R
3の値は、10オーム~200オームであり、R
4の値は、5オーム~100オームである。いくつかの事例では、C
3の値は1μFの20%以内であり、R
3の値は50オームの20%以内であり、R
4の値は20オームの20%以内である。インダクタL1は、供給電位V
1とトランジスタのドレインとの間において抵抗R
5と直列に接続され得る。いくつかの実施形態によれば、インダクタは、10ナノヘンリー(nH)~200nHの値を有し、R
5の値は10オーム~200オームであり得る。いくつかの事例では、L
1の値は47nHの20%以内であり、R
5の値は50オームの20%以内である。いくつかの実装形態において、トランジスタM1のドレインは、3.3V電源または5V電源のいずれかに接続されてもよいが、ほぼこれらの値の他の電圧電源を使用してもよい。ダイオードドライバ回路がダイオードの適切なパルス動作を提供する場合、トランジスタM1による電力消費を低減するために、例えば、3.3Vの供給電圧を使用することができる。例えば、5Vの供給電圧を使用して、ダイオードドライバ回路2-390の第1の段2-510からより高い利得を提供することができる。ダイオードレーザの利得スイッチング性能および/または光出力の増大を向上させるために、より高い利得が必要とされてもよい。トランジスタのソースと基準電位との間にバイパス抵抗(R
6、C
4)が接続されて、トランジスタを安定してバイアスすることができる。いくつかの実施形態によれば、R
6の値は、2オーム~20オームであり、C
4の値は、0.25μF~5μFであり得る。いくつかの事例では、R
6の値は、5オームの20%以内であり、C
4の値は、1μFの20%以内である。いくつかの態様では、出力ネットワーク(C
5、R
7)は、トランジスタM1の出力と基準電位との間を接続し得る。いくつかの実施形態によれば、C
5の値は、0.5ピコファラッド(pF)~10pFであり、R
7の値は、2オーム~50オームであり得る。いくつかの事例では、C
5の値は、1.8pFの20%以内であり、R
7の値は、10オームの20%以内である。いくつかの実施態様では、インダクタL
1は、トランジスタM1のターンオフ時にキャパシタC
5を急速に充電して、出力パルス電圧をより迅速に増大させることを補助することができる。
【0101】
第1の段2-510が入力信号S1を反転および増幅するため、第1の段からの出力信号S2は、一連の短い電気パルスを含み得る。いくつかの実施形態によれば、これらのパルスは、500ps以下のパルス持続時間を有し得る。これらのパルスの持続時間は、パルス発生回路2-380内の遅延Δtを調節することによって電子的に調節され得る。上述したように、これらのパルスの持続時間を調整することにより、レーザダイオードに注入される電流の量を制御することができる。
【0102】
ダイオードドライバ回路2-390の第2の段2-520は、例えば
図2-5Bに示すように、ソースフォロワまたはエミッタフォロワ構成で接続された第2のトランジスタM2を含み得る。AC結合およびバイアス入力ネットワーク(C
3、R
8、R
9、C
6)は、第2のトランジスタのゲートに接続し得る。いくつかの実施形態によると、C
3の値は、0.25μF~5μFであり、R
8の値は、25オーム~400オームであり、R
9の値は、2オーム~50オームであり、C
6の値は、0.025μF~0.5μFであり得る。いくつかの事例では、C
3の値は、1μFの20%以内であり、R
8の値は、100オームの20%以内であり、R
9の値は、10オームの20%以内であり、C
6の値は、0.1μFの20%以内である。いくつかの実施形態によれば、0.025μF~0.5μFの値を有するシャントキャパシタ(shunt capacitor)C
7は、トランジスタM
2のドレインに接続し、そのドレインは、電圧源V
2に接続し得る。いくつかの事例では、シャントキャパシタC
7は、0.1μFの20%以内の値を有する。シャントキャパシタC
7は、ターンオン時にトランジスタM2に電流を供給するのを助けることができる。いくつかの実施形態では、第2の段階2-520のM2の電源V
2は、第1の段2-510の電源V
1と同じ電源であってもよい。バイパス抵抗ネットワーク(R
10、R
11、C
8)は、トランジスタM2の安定したバイアスのために、第2のトランジスタM2のソースと基準電位との間を接続し得る。いくつかの実施形態によれば、R
10の値は5オーム~100オームであり、R
11の値は10オーム~200オームであり、C
8の値は0.25μF~5μFであり得る。いくつかの事例では、R
10の値は20オームの20%以内であり、R
11の値は50オームの20%以内であり、C
8の値は1μFの20%以内である。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、第2段2-520のバイアスピン(bias pin)P1に電圧が印加され得る。第2のトランジスタM2はボルテージフォロワとして構成されているので、M1から受け取った一連の短いパルスに加えて、トランジスタにおける小さな電圧降下を差し引いたバイアス電圧が、M2の出力に印加される。いくつかの実施形態では、バイアス電圧が、ダイオードドライバ回路2-390の第3の段2-530のレーザダイオード2-201をその発振閾値(lasing threshold)付近にバイアスするように使用され得る。レーザダイオードをその閾値付近にバイアスすることにより、レーザダイオードからの光パルスのより速いターンオン時間(turn-on time)を達成できる。いくつかの実装形態では、バイアス電圧が、ダイオードドライバ回路2-390の第3の段2-530のトランジスタM3をそのターンオン電圧のすぐ下にバイアスするように使用され得る。トランジスタM3をそのターンオン電圧のすぐ下にバイアスすることにより、トランジスタのより速いターンオンを提供し、続いて、レーザダイオード2-201のより速いターンオンを提供し得る。
【0104】
第2の段2-520からの出力は、ダイオードドライバ回路2-390の第3の段2-530(
図2-5C)に位置するハイパワートランジスタM3のゲートに直接的に供給され得る。ハイパワートランジスタの一例は、カリフォルニア州エルセグンドのEfficient Power Conversion Corporationから入手可能なモデルEPC2037のエンハンスメントモードGaNパワートランジスタである。パワートランジスタM3は、レーザダイオード2-201を流れる電流を切り替えるために接続され得る。例えば、レーザダイオードは、トランジスタM3のドレインと高電圧電源V
ld(例えば、12Vより大きい電源)との間に接続され得る。抵抗器R
14はレーザダイオードと直列に接続されて、レーザダイオード2-201に印加される電流を制限し得る。いくつかの実施形態によれば、抵抗器R
14の値は、4オーム~60オームであり得る。いくつかの事例では、R
14は、15オームの20%以内の値を有する。レーザダイオード2-201のターンオン速度を上げるために、電荷蓄積キャパシタC9は、レーザダイオードとトランジスタM3との間に接続され得る。いくつかの実施形態によれば、電荷蓄積キャパシタC
9の値は、100pF~1200pFであり得る。いくつかの事例では、C
9は、440pFの20%以内の値を有する。トランジスタM3がオンすると、キャパシタC
9に蓄積された電荷によって、レーザダイオード2-201に初期電流を供給し得る。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、バイパスインダクタL2は、レーザダイオード2-201の両端間に抵抗器R13と直列に接続されてもよい。いくつかの実施形態によれば、バイパスインダクタL2の値は10nH~120nHであり、抵抗器R13の値は5オーム~100オームであり得る。いくつかの事例では、L2の値は30nHの20%以内であり、R13の値は25オームの20%以内である。バイパスインダクタL2は、パワートランジスタM3がオフにする(導通しなくなる)ときに過渡逆バイアス(transient reverse bias)をレーザダイオードに提供することにより、レーザダイオード2-201のターンオフ時間を短縮し得る。
【0106】
いくつかの実装形態では、モニタポート(monitor port)は、高インピーダンス抵抗器R12を介してパワートランジスタM3のドレインに接続し得る。いくつかの実施形態によれば、R12の値は約5キロオームであり得る。モニタポートを使用して、レーザダイオード2-201に印加される電気パルスの持続時間を監視できる。発明者は、第2の段2-520のモニタポートおよびバイアスポートを使用して、レーザダイオード2-201の健全性(health)を評価できることも認識し、諒解した。例えば、パルス信号がレーザダイオードに印加されない場合、バイアス電圧は、第2の段2-250へのバイアス入力で掃引されてもよい。トランジスタM3のドレインの電圧を測定することができ、そこからレーザダイオード2-201の両端に印加される電圧およびレーザダイオードを流れる電流を決定することができる。いくつかの実装形態では、さらに、フォトダイオード(図示せず)を使用して、レーザダイオード2-201からの光出力を監視し、レーザダイオードの健全性を評価してもよい。
【0107】
図2-4Cに示すようなパルス発生回路2-380及び
図2-5A~2-5Cに示すようなパルスドライバ回路2-390で駆動されるレーザダイオード2-201(ドイツのレーゲンスブルクのOSRAM Opto Semiconductors GmbHから入手可能なモデルPL520B)からの出力光パルスの時間プロファイルが、
図2-6に示される。この実証では、レーザダイオードは20Vにバイアスされ、平均出力光パワーは約2.8mWである。光パワーは、約550psで約62dBのピーク値から40dB低下する。(印加された電気パルスの持続時間を短くすることによって)平均出力光パワーを小さくすると、レーザダイオード2-201のターンオフ時間が短くなる。たとえば、20Vの同じバイアスで平均光パワーが約1mWに低下すると、ターンオフ時間は約490psに短縮する。示されているドライバ回路では、ターンオフ時間は、広範囲の出力電力(出力電力のほぼ3倍の変化)にわたって極めて安定する。
【0108】
必要に応じて、レーザダイオード2-201を変更して、光パルスのターンオフ時間をさらに短縮することができる。1つの変形例は、
図2-2Cに関連して上述したように、回路基板の導電性相互接続又はピンとレーザダイオードチップとの間に追加の並列ワイヤボンド(parallel wire bonds)を追加することを含み得る。別の変形例は、レーザダイオードからの出力を、高レベルの放射よりも低レベルの放射を減衰させる非線形光学素子である可飽和吸収体(saturable absorber)に提供することを含み得る。いくつかの実装形態では、可飽和吸収体は、レーザダイオードと同じチップ上に集積された半導体デバイスを備えてもよい。いくつかの実施形態によれば、可飽和吸収体は、レーザダイオードの光学キャビティの一端に形成された可飽和吸収体ミラーとして形成されてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、可飽和吸収体は、半導体p-n接合を備え、接合にバイアスを印加するように構成されたバイアス電源を含み得る。バイアス供給源は、各光パルス後に活性領域からキャリアを掃引し、可飽和吸収体の応答を改善するために使用され得る。いくつかの実施形態において、バイアスは、可飽和回復時間を時間依存にするように(例えば、パルス繰り返し数において)変調することができる。この変調は、パルス特性をさらに改善することができる。例えば、可飽和吸収体は、可飽和吸収体の回復時間が十分である場合は、低い強度において別様により大きく吸収することによって、パルス・テールを抑制することができる。そのような差動吸収はまた、パルス長をも低減することができる。可飽和吸収体の回復時間は、可飽和吸収体に対する逆方向バイアスを印加又は増大することによって調整することができる。
【0110】
III.バイオ光電子チップに対する光パルスの結合
本発明者らは、レーザダイオード2-201からの出力パルス1-122を、使用者が携帯型生体分析機器1-100に取り付けおよび取り外すことができるパッケージ化バイオ光電子チップ1-140内に配置された数万の反応室1-330、またはそれ以上に確実に結合することが、光学的かつ機械的に困難であることを認識し、諒解した。チップに結合された場合、光パワーが効率的に結合され、数万の反応室に均一に分配されることが重要である。このような光学的結合には、最大数時間、たとえば遺伝子配列解析の実行中に、バイオ光電子チップの光カプラ1-310でのレーザダイオードの出力ビームのミクロンレベルまたはサブミクロンレベルの位置決め精度が必要になる場合がある。また、携帯型機器1-100は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140の各設置後に、ユーザの介入を最小限にするか又は全く行わずに、レーザダイオード2-201からの光ビームを光カプラ1-310上に確実に位置決めすることができなければならない。これには、光カプラ1-130の位置にビームを正確に向けるために、光ビームの長距離で粗い(1/10ミリメートルおよび1/10の角度で)位置決め制御と角度調整が必要になる場合がある。
【0111】
本発明者らは、パッケージ化チップ1-140の各設置後に、レーザダイオード2-201からの光ビームをバイオ光電子チップ1-141の光カプラ1-310上に確実に位置決めすることを可能にし、機器の動作時間において安定した位置合わせを維持するためにビームの精密な位置決め制御を提供する光電気機械システム(opto-electromechanical system)を考案した。再び
図1-1を参照すると、生体分析機器1-100のための光電気機械システムは、位置合わせ構造1-102と、コンパクトなビームステアリングアセンブリ1-115と、位置合わせ構造1-102に搭載された1つ以上の調節可能な光学部品(1-121、1-127)との組み合わせを含み得る。位置合わせ構造1-102は、生体分析機器1-100の光学および電子部品の正確な位置合わせのための位置合わせ構造を提供することができる。さらに、複数のセンサ(例えば、1つ以上のフォトダイオード、クワッド検出器等)は、バイオ光電子チップ1-141上に配置され、ビームステアリングアセンブリ1-115を制御して、バイオ光電子チップ1-141上の光カプラ1-310への光ビームの正確な位置合わせを維持するためのフィードバック信号を提供することができる。このようなフィードバックループは、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで、比例積分微分(proportional-integral-derivative : PID)制御ループとして具体化され得る。
【0112】
位置合わせ構造1-102の一例が
図3-1Aに示されているが、位置合わせ構造は、示されているもの以外の形状および機構を有するように製造されてもよい。いくつかの実施形態によれば、位置合わせ構造1-102は、携帯型生体分析機器1-100内の光学および電子構成要素(パッケージ化バイオ光電子チップ1-140等)のための構造的支持および見当合わせされた位置合わせ(registered alignment)を提供するように形成される固体物質(solid material)を含む。例えば、再び
図1-1を参照すると、位置合わせ構造1-102は、正確に位置合わせされて、ビームステアリングアセンブリ1-115、パルスソース基板1-110、およびパルスソース基板1-110からの光ビームに作用する光学部品(例えば、変向ミラー1-121および集束レンズ1-127)を搭載するように適合され得る。これらの光学部品およびビームステアリングアセンブリ1-115は、出力ビームをレーザダイオード2-201からパッケージ化バイオ光電子チップ1140に方向付けすることができる。
【0113】
位置合わせ構造1-102は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140を位置合わせ構造に見当合わせする(registering)ための機構をさらに含み、その機構は、ユーザがパッケージ化チップ1-140を機器に組み込んだ後に、レーザダイオード2-201からのビームの光カプラ1-310及びバイオ光電子チップ1-141上のミクロンスケールの導波路への再現可能で安定した光学位置合わせを補助する。例えば、位置合わせ機構は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140上の特徴および/またはインターポーザなどの介在構成要素(intervening component)と係合する位置合わせ構造上に形成され得る。位置合わせ機構は、生体分析機器1-100に搭載されたときに、各パッケージ化バイオ光電子チップ1-140を位置合わせ構造1-102に対して同じ位置に確実に見当合わせするのに役立つ。バイオ光電子チップ1-141は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140が機器1-100に配置されたときに各バイオ光電子チップ1-141がほぼ同じ向きに見当合わせするように、パッケージ内に高精度で搭載され得る。このようにして、各パッケージ化チップ1-140が生体分析機器1-100に組み込まれた後、位置合わせ構造に見当合わせされたレーザダイオードからのビームは、光カプラ1-310に対して位置合わせされた位置から数十ミクロン以内に確実かつ再現可能に位置合わせされ得る。位置合わせされた位置の数十ミクロン以内にある場合、生体分析機器1-100の自動位置合わせルーチンは、ユーザの介入を必要とせずに、ミクロンまたはサブミクロンレベルの最終的な位置合わせを達成できる。位置合わせ構造1-102は、レーザダイオード2-201、ビームステアリングアセンブリ1-115、結合光学部品(例えば、変向ミラー1-121および集束レンズ1-127)、及びパッケージ化チップ1-140を、機器の動作中に互いに位置合わせされた構成において維持するための機械的安定性を提供することができる。
【0114】
いくつかの実装形態によれば、位置合わせ構造1-102は、光源およびバイオ光電子チップ1-141からの熱の除去を助けるための熱放散機能も提供することができる。いくつかの事例では、位置合わせ構造1-102は、生体分析機器1-100の筐体の少なくとも一部分を形成することもできる。機器の筐体の一部分を形成することにより、位置合わせ構造1-102は、機器の外部に直接的に熱を放散できる。
【0115】
さらに詳細に、
図3-1Aを参照すると、位置合わせ構造1-102は、幾つかの実装形態では、見当合わせプラットフォーム(registration platform)3-102を含み得る。
図3-1Aは、位置合わせ構造1-102の上面斜視写真を示す。見当合わせプラットフォーム3-102は、任意の適切な物質から機械加工、鋳造、または成形され、光学部品およびパッケージ化バイオ光電子チップ1-140が搭載される位置合わせ構造1-102の一部分を含む。例えば、見当合わせプラットフォーム3-102は、位置合わせ構造1-102のプレート状部分を含むことができる。いくつかの事例では、位置合わせ構造1-102は、アルミニウム、アルミニウム合金、または任意の適切な金属から機械加工または鋳造されてもよい。他の実施形態では、位置合わせ構造は、硬質プラスチックから成形されてもよい。いくつかの実施形態では、位置合わせ構造は、位置合わせ構造に搭載された構成要素からの熱の放散を助ける熱伝導性物質(アルミニウムまたはアルミニウム合金など)から形成されてもよい。例えば、熱は、位置合わせ構造1-102を通って外壁3-150に伝達して、そこで、熱は機器の外部に放散され得る。いくつかの事例では、見当合わせプラットフォーム3-102および/または位置合わせ構造1-102上の追加の特徴(例えば、壁、リブ)は、生体分析機器1-100内に搭載されたときに、機器内の空気流を方向付けまたは遮断するのを助けるバッフル(baffle)の少なくとも一部分を含む。
【0116】
光学部品および電子部品をプラットフォームにおよび互いに見当合わせするために使用され得る位置合わせ構造1-102に形成された複数の特徴があり得る。例えば、変向ミラーマウント1-106を位置合わせ構造1-102に位置合わせするために使用され得る複数の第1のキネマティック凹部(kinematic recesses)3-140(例えば、円錐形の穴)があり得る。さらに、見当合わせプラットフォームに形成された光学位置合わせレール(optical adjustment rail)3-130があり得る。レンズマウント1-108は光学レールに取り付けられ、手動で調整可能である。位置合わせ構造1-102は、位置合わせ構造が生体分析機器1-100の他の構成要素に取り付けられる(例えば、ベースシェル(base shell)に固定される)ように、複数の取り付け穴3-142をさらに含み得る。
【0117】
位置合わせ構造1-102は、見当合わせプラットフォーム3-102に形成されたチップ開口部3-120および凹状チップガイド3-110を含み得る。いくつかの実施形態によれば、チップ開口部および凹状チップガイドは、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140を受け取り、見当合わせプラットフォーム3-102に位置合わせする位置合わせレセプタクル(aligning receptacle)を提供し得る。チップガイド3-110内には、場合によっては磁石などのチップ保持構成要素を収容できる保持穴3-112があり得る。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、位置合わせ構造1-102の下側の追加の詳細が
図3-1Bに示される。いくつかの事例では、見当合わせプラットフォームの下側に第2のキネマティック凹部3-160があり得る。第2のキネマティック凹部3-160は、プラットフォームに取り付けられたときに、ビームステアリングアセンブリ1-115を見当合わせプラットフォーム3-102に再現可能に位置合わせするために使用され得る。パルスソース基板1-110からの光ビームがプラットフォームを通過して見当合わせプラットフォーム3-102の上面に到達するように、見当合わせプラットフォーム3-102を通過する光学的スルーホール(optical through-hole)3-170があり得る。
【0119】
いくつかの実施形態によれば、位置合わせ構造1-102は、見当合わせプラットフォーム3-102に剛性を提供可能な壁3-150を含み得る。壁3-150は、プラットフォーム1-102の周辺にあってもよいが、いくつかの実装形態は、プラットフォームの内部領域まで延びるおよび/または内部領域にわたる壁を含んでもよい。壁3-150は、見当合わせプラットフォーム3-102から離れて(例えば、垂直にまたはある角度で)延びることができる。いくつかの実施形態では、位置合わせ構造は、追加的または代替的に、見当合わせプラットフォーム3-102の内部領域内に延びるおよび/または内部領域にわたる補強リブ3-155を含み得る。
【0120】
いくつかの実施態様では、レーザダイオード2-201からパッケージ化バイオ光電子チップ1-140に光ビームを方向付けする複数の光学部品は、見当合わせプラットフォーム3-102の中心に沿って、位置合わせ構造の反りまたはねじれモードまたは熱膨張に対して実質的に中間である位置に配置され得る。見当合わせプラットフォーム3-102の中心に沿って複数の光学部品を配置すると、温度変化、応力変化、およびねじれ振動がビームアライメントに与える影響を軽減できる。
【0121】
生体分析機器1-100のための例示的な光学システム3-205が、
図3-2Aに示されている。いくつかの実施形態では、光学システム3-205は、3つのレンズと1つの変向ミラーを含むが、いくつかの実施形態では、より少ないまたはより多い光学部品が使用されてもよい。例えば、基板レンズマウント(board lens mount)3-205によりパルスソース基板1-110に取り付けられた第1のレンズ3-210があり得る。第1のレンズ3-210は、基板レンズマウント3-205内に取り付けられ、レーザダイオード2-201の上に慎重に位置合わせされ、基板レンズマウント3-205を介してパルスソース基板1-110に接着または他の方法で取り付けられてもよい。第2のレンズ3-220は、ビームステアリングアセンブリ1-115内のチップ・チルトジンバルマウント(tip-tilt gimbal mount)に取り付けられ得る。いくつかの実装形態では、ジンバルに取り付けられた第2のレンズ3-220の代わりに、光学フラット(optical flat)(図示せず)が代わりに使用されてもよい。そのような実施形態では、パルスソース基板1-110とパッケージ化バイオ光電子チップ1-140との間に2つのレンズのみが必要とされてもよい。ビームステアリングアセンブリ1-115およびパルスソース基板1-110は、キネマティック凹部3-160を使用して、位置合わせ構造1-102の下側に位置合わせして取り付けることができる。複数の実施形態によれば、変向ミラー1-121および集束レンズ1-127は、見当合わせプラットフォーム3-102の上面に位置合わせして取り付けることができる。
【0122】
図3-2Aは、パルスソース基板1-110上に取り付けられたレーザダイオード2-201を示すが、他の実施形態は、生体分析機器1-100の内部または外部のどこかに取り付けられた1つ以上のレーザダイオードまたは発光ダイオードを有することができ、光ファイバを使用して、
図3-2Aに示されるレーザダイオード2-201の位置に励起放射を送達することができる。たとえば、(同じまたは異なる波長を有する)1つまたは複数のレーザダイオードは、1つまたは複数の光ファイバに結合され得る。1つまたは複数のファイバからの出力は、単一の光ファイバに結合できる。単一の光ファイバの端は、レーザダイオード2-201の位置に取り付けられ、第1のレンズ3-210に向かって配向され得る。いくつかの事例では、屈折率分布型レンズ(graded-refractive index lens)は、単一の光ファイバの端に結合されて、第1のレンズ3-210の代わりに使用されてもよい。
【0123】
いくつかの実装形態では、1つまたは複数のファイバ結合レーザは、生体分析機器1-100の外部に配置され得る。そのような事例では、1つまたは複数のクロック信号は、1つまたは複数のファイバ結合レーザの駆動電子機器から、または1つまたは複数のファイバ結合レーザから出力される光パルスから取得され得る。1つまたは複数のクロック信号は、バイオ光電子チップ1-141に提供され、チップ1-141でのデータ収集をトリガーするために使用され得る。例えば、1つまたは複数のクロック信号を使用して、チップ1-141上の複数の時間ビニング光検出器1-132の電荷蓄積ビンのタイミングを決定することができる。
【0124】
いくつかの実施態様では、第1のレンズ3-210は、レーザダイオード2-201からの放射を収集し、放射を部分的にコリメートする短い焦点距離(10mm以下)の非球面レンズを含み得る。焦点距離は、2mm~5mmであり得る。いくつかの実施形態によれば、第1のレンズ3-210は、約3mmの焦点距離を有し得る。第1のレンズ3-210は、レーザダイオード2-201の出射面から第1のレンズの焦点距離の5%以内の距離に取り付けられてもよい。第1のレンズの後の光ビームは発散されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のレンズ3-210は、例えば0.5以上の大きな開口数(NA)を有する。いくつかの事例では、NAは0.5~0.9である。いくつかの態様では、第1のレンズ3-210のNAは、レーザダイオード2-201のNAにほぼ一致するように選択されてもよい。第1のレンズ3-210は、レーザダイオード2-201の発振波長λに対して反射防止コーティングされてもよく、またはλ/4ピークツーバレー以下の波面歪みを提供してもよい。いくつかの事例では、第1のレンズ3-210は、λ/10ピークツーバレー以下の波面歪みを提供し得る。
【0125】
光学システム3-205の第2のレンズ3-220(またはいくつかの実施形態では、光学フラット)は、第1のレンズ3-210から短い距離でビームステアリングアセンブリ1-115のチップ・チルトジンバルマウントに取り付けられてもよい。第2のレンズ3-220(または光学フラット)は、出射ビーム3-201を横方向にシフトさせて、バイオ光電子チップ1-141上でそれぞれYおよびX並進(Y and X translations)を引き起こすように、2つの軸の周り(
図3-2のX軸およびY軸の周り)で回転可能であってもよい。第2のレンズの後の光ビーム3-201は、ほぼ平行(例えば、コリメートされた3度以内)にされ得る。いくつかの事例では、第2のレンズは、レーザダイオード2-201のレーザ発振波長λに対して反射防止コーティングされた平凸レンズ(plano-convex lens)であってもよく、またはλ/4ピークツーバレー以下の波面歪みを付与し得る。いくつかの事例では、第2のレンズ3-220は、λ/10ピークツーバレー以下の波面歪みを提供し得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、第2のレンズ3-220は、第1のレンズ3-210よりも著しく長い焦点距離およびより小さいNAを有し得る。例えば、第2のレンズ3-220は、40mm~80mmの焦点距離と、0.02~0.1のNAを有し得る。いくつかの実施形態によれば、第2のレンズ3-220は、第1のレンズ3-210の10mm以内に位置してもよい。例えば、第2のレンズ3-220は、第1のレンズから、第2のレンズの焦点距離から光ビーム経路に沿って間隔を空ける(de-spaced)ことができる。第2のレンズの間隔(de-spacing)は、第2のレンズ3-220の焦点距離の80%程度であり得る。第2のレンズ3-220の間隔によって、第2のレンズの回転は、本質的に、バイオ光電子チップ1-141上の光カプラ1-310におけるビームの位置のシフトを、光カプラにおけるビームの方向角のわずかな変化で提供することができる。
【0127】
生体分析機器1-100の光学システム3-205は、第1のキネマティック凹部3-140および変向ミラーマウント1-106を使用して、自己で位置合わせして位置合わせ構造1-102の上面に取り付けられる第1の変向ミラー1-121をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、変向ミラーマウント1-106は、手動で調整可能であり、相対する複数のねじを使用して所定の位置に固定される。手動で調整可能な変向ミラーマウント3-225の一例を
図3-2Aに示す。変向ミラー1-121の手動調整を使用して、必要に応じて、機器の初期の工場調整とフィールドサービスの調整を行うことができる。いくつかの実施形態によれば、3つのネジ3-227は、変向ミラー1-121をチップする、チルトする、上げる、および下げる(tip, tilt, raise, and lower)ように調整され得る。例えば、3つのネジは、見当合わせプラットフォーム3-102への3点接触を構成してもよい。変向ミラー1-121は、第3のレンズから第3のレンズ1-127のほぼ1焦点距離(one focal length)だけ離れた位置に配置されていてもよい。したがって、変向ミラー1-121のチップおよびチルト調整(tip and tilt adjustments)は、バイオ光電子チップ1-114の光カプラ上のレーザダイオードからの光ビームの横方向位置を変化させることができる。変向ミラーを上下することにより、第3のレンズ1-127からの光ビームの出射角を変化させることができ、バイオ光電子チップ1-141の光カプラに対する光ビームのピッチ入射角(
図1-3を参照するθ
i)を変化させることができる。粗い位置合わせが得られた後、(調整ネジと対向する)相対する複数のネジを使用して、変向ミラーマウントを所定の位置に固定することができる。いくつかの実施形態によれば、第1の変向ミラー1-121は、λ/4ピークツーバレー以下の波面歪みに寄与する入射ビームに対して約45度に配向された光学フラットである。いくつかの事例では、第1の変向ミラー1-121は、λ/10ピークツーバレー以下の波面歪みを提供し得る。
【0128】
第3の集束レンズ1-127は、手動の単軸または多軸の調節可能なレンズマウント1-108および1つまたは2つの光学調節レール3-130を使用して、見当合わせプラットフォーム3-102の上面に取り付けられてもよい。
図3-1Aは、単軸調整可能レンズマウント1-108を備えた実施形態を示す。
図3-2Bは、二軸の調整可能なレンズマウント3-208が実装される実施形態を示す。第3のレンズ1-127は、1つまたは複数の光学調整レール3-130に沿ってスライドし、複数のネジで所定の位置に固定できる。いくつかの実施形態によれば、第3のレンズの位置の調整が、初期の工場の調整中に、またはフィールドサービス中に行われてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、第3のレンズ1-127のヨー角(yaw angle)は調整可能であってもよい。例えば、レンズマウント1-108は、第3のレンズの回転を提供し得る。第3のレンズのヨーを調整することによって、バイオ光電子チップ1-141の光カプラに対するビームのヨー入射角(
図1-3を参照するφ
i)を調整するために使用され得る。他の実施形態では、
図3-2Bに示されるように、第3のレンズのヨー角は調整できず、その代わりに、第3のレンズ1-127の横方向の動きは調整可能である。レンズマウント3-208および変向ミラーマウント3-225の調整は手動のネジ調整として示されているが、自動または半自動の調整可能なマウントを使用して、変向ミラー1-121及び/又は第3のレンズ1-127を調整できる。そのような実施形態では、複数のアクチュエータ(例えば、直線運動アクチュエータ、電動ねじアクチュエータ、圧電アクチュエータ、ボイスコイル・ドライバ(voice-coil drivers)など)を使用して、変向ミラー1-121及び/又は第3のレンズ1-127を調整することができる。
【0130】
いくつかの実装形態では、第3のレンズ1-127は第2のレンズ3-220と同じ構成であってもよいが、他の実施形態の第2のレンズ3-220とは異なる焦点距離およびNAを有し得る。第3のレンズは、第2のレンズから50mm以内に配置され、第3のレンズ1-127とバイオ光電子チップの光カプラとの間の距離が、第3のレンズの焦点距離にほぼ等しくなる。いくつかの事例では、第3のレンズ1-127は、レーザダイオード2-201のレーザ発振波長λに対して反射防止コーティングされた平凸レンズであってもよく、またはλ/4ピークツーバレー以下の波面歪みに寄与し得る。いくつかの事例では、第3のレンズ1-127は、λ/10ピークツーバレー以下の波面歪みを提供し得る。いくつかの実施態様では、第3のレンズ1-127は、第3のレンズによって必要とされる高さの量を低減するために、
図3-2Bに示されるように、円形のレンズから丸い短い端部を有する長方形または半長方形の形状に切断されてもよい。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、第2の変向ミラー3-240は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140内に配置されてもよい。したがって、第2の変向ミラー3-240およびパッケージ化バイオ光電子チップ1-140は、分析される各試料とともに生体分析機器1-100に組み込まれおよびそこから取り出されてもよい。
【0132】
いくつかの実装形態では、光学システム3-205は、レーザダイオード2-201からのビーム出力を拡大する。バイオ光電子チップ1-141上の光カプラ1-310での集束ビームの倍率は10~30であり得る。さらに、拡大されたビームは、光カプラによく適合する楕円の横方向強度プロファイルを有し得る。いくつかの実施形態では、光カプラ1-310での焦点スポットは、約1:3のアスペクト比(例えば、25ミクロン×70ミクロン)を有し得る。楕円の長軸は、バイオ光電子チップ1-141の表面に位置する複数の平行な導波路に放射を均一に分配するように方向付けられてもよい。いくつかの実施形態によれば、楕円ビーム(elliptical beam)の長軸は、バイオ光電子チップ1-141の表面上で50ミクロン~150ミクロンの長さを有し得る。いくつかの事例では、バイオ光電子チップにおけるビームのさらなる延長は、例えば、増加した数の導波路に結合される電力量を増大させるために望ましいことがある。そのような事例では、1つ以上のシリンドリカルレンズ(cylindrical lens)またはプリズムが、第1の変向ミラー1-121の後に光学システムに含まれてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態による、ビームステアリングアセンブリ1-115のさらなる詳細が、
図3-3に示されている。ビームステアリングアセンブリ1-115は、回転可能なXプレート(X-plate)3-320および回転可能なYフレーム(Y-frame)3-330を支持するビームステアリングケーシング3-305を備えてもよい。第2のレンズ3-220は、Xプレート3-32のレンズマウント3-360に取り付けることができる。Xプレートの回転によって、第2レンズを通過するビームがX方向においてシフトされ、Yフレーム3-330の回転によって、第2レンズを通過するビームがY方向においてシフトされ得る。Xプレート3-320は、Yフレーム3-330に取り付けられた複数のXベアリング(X-bearing)3-325で支持され得る。いくつかの実施形態によれば、Yフレーム3-330は、複数のYベアリング(Y-bearing)3-335によってビームステアリングケーシング3-305に結合されてもよい。いくつかの事例では、Yフレーム3-330は、複数のYベアリング3-335によってパルスソース基板110または別の回路基板に接続されてもよい。2つのXベアリング3-325と2つのYベアリング3-335があり得る。いくつかの実施形態では、Xプレート3-320およびYフレーム3-330は、それらの回転軸の周りで重量が釣り合っているため、重量によるいずれのプレートの優先的な回転が無視できるか、またはない。
【0134】
Xプレート3-320およびYフレーム3-330の回転を駆動するために使用されるXプレート3-320の下方に位置する2つ以上のボイスコイル3-340があり得る。Xプレート3-320の下側にあるボイスコイル3-340に近接して保持される強磁性体または磁気ロッドがあり得る。活性化されると、ボイスコイル3-340は、Xプレート3-320とYフレーム3-330のいずれかまたは両方を回転させるために、強磁性材料または磁気ロッドに起電力を提供し得る。いくつかの実装形態では、Xプレート3-320およびYフレーム3-330の動きを検知するために、XプレートまたはYフレームが回転するにつれて静電容量を変化させる櫛形電極(interdigitated electrodes)3-350があり得る。(例えば、共振LC回路を使用して)これらの電極の静電容量を電子的に検出することにより、Xプレート3-320及びYフレーム3-330の位置及び/又は偏向ビーム3-201の位置を決定し得る。他の実施形態では、以下でさらに説明するように、誘導性センサを使用して、XプレートまたはYフレームの回転を検知することができる。
【0135】
ビームステアリングアセンブリ1-115の位置合わせ構造1-102への位置合わせを助けるために、ビームステアリングケーシング3-305に機械加工された第3のキネマティック凹部3-310があり得る。第1、第2、および第3のキネマティック凹部は、対応する構成要素の表面に機械加工された円錐状凹部を備えてもよい。第3のキネマティック凹部3-310は、位置合わせ構造1-102の下側に形成された第2のキネマティック凹部3-160と位置合わせすることができる(
図3-1B参照)。示されている例では、プラットフォーム1-102に3つの第2のキネマティック凹部3-160があり、ビームステアリングケーシング3-305の上側に3つの対応する第3のキネマティック凹部3-310が機械加工されている。組み立て中に、3つのボールベアリングをキネマティック凹部の対応する複数の対の間に配置し、ビームステアリングアセンブリが位置合わせ構造に取り付けられたときに、ビームステアリングアセンブリ1-115を見当合わせプラットフォーム3-102に正確に位置合わせすることができる。変向ミラーマウント1-106は、同じ方法を使用して見当合わせプラットフォーム3-102の上側に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態によれば、パルスソース基板1-110は、次に、
図3-3に示されるように、ビームステアリングケーシング3-305の下側に位置合わせされ、(ピン及び/又はネジで)取り付けられる。
【0136】
いくつかの実施形態による、パルスソース基板1-110のさらなる詳細が、
図3-4Aに示されている。この図は、パルスソース基板1-110の平面図を示している。いくつかの実施形態によれば、基板レンズマウント3-205およびボイスコイル3-340は、パルスソース基板1-110の中心付近に取り付けられてもよい。
図3-4Aに示す実施形態では、複数のインダクタ3-450を含む2つの誘導性センサを使用して、Xプレート3-320およびYフレーム3-330の回転を検知する。
【0137】
動作中、(基板レンズマウント3-205内に位置する)レーザダイオード2-201からのビームは、基板レンズマウント3-205に取り付けられた第1のレンズ3-210によって収集され、ビームステアリングアセンブリ1-115のXプレート3-320内で第2のレンズマウント3-360によって支持された第2のレンズを介して方向付けされる。第2のレンズ3-220がXプレート3-320およびYフレーム3-330の回転によってチップ・チルトする(tips and tilts)と、レーザダイオード2-201からのビームはXおよびY方向に偏向する。
【0138】
通常、ドライバまたはアクチュエータによって加えられる力がPCBを変形させ、光源からバイオ光電子チップ1-141への光ビームの位置合わせに悪影響を及ぼす可能性があるため、ミクロンレベルの位置合わせ公差が必要なビームステアリングアセンブリ1-115のXプレート3-320およびYフレーム3-330用のアクチュエータとして、同じプリント回路基板上に光源(例えば、レーザダイオード2-201)を配置しようとすることはない。ただし、ドライバを別のPCBに配置するには、機器内に追加のスペースが必要になる。以下に説明するように、発明者らは、アクチュエータの動作(例えば、ボイスコイル3-340の動作)によるPCBの望ましくない動きを減らすことができる補強部材を実装した。
【0139】
パルスソース基板1-110のいくつかの実施形態は、光源に結合し、光源から熱を除去するように配置された熱伝導性要素3-430を含むことができる。例示的な熱伝導性要素3-430の追加の詳細が
図3-4Bに示されている。熱伝導性要素3-430は、高い熱伝導率を提供する金属または金属の組み合わせから形成され得る。このような金属には、金、アルミニウム、銅が含まれるが、これらに限定されない。熱伝導性要素3-430は、任意の適切な手段(例えば、接着剤、留め具、圧入、またはそれらの組み合わせ)によってパルスソース基板1-110に取り付けることができる。いくつかの実施形態によれば、熱伝導性要素3-430の第1の部分3-431は、パルスソース基板1-110の表面にわたって延び、レーザダイオード2-201が取り付けられたアセンブリに接触することができる。例えば、第1の部分3-431は、レーザダイオード2-201が取り付けられている缶パッケージ(can package)に接触し得る。熱伝導性要素3-430への熱伝達を改善するために、熱エポキシ3-440をレーザダイオードアセンブリおよび熱伝導性要素3-430の第1の部分3-431の接合部に適用することができる。いくつかの事例では、レーザダイオード2-201を含むパッケージまたはハウジング2-212と熱伝導性要素3-430との間の圧縮(compression)によって、熱伝導性要素3-430に十分な放熱が提供されて、熱エポキシを使用しなくてもよい。レーザダイオードパッケージは、例えば、レーザダイオード2-201への電気的接続を提供するために、ピン3-420を介してパルスソース基板に取り付けることができる。いくつかの事例では、レーザダイオードパッケージの場合は、レーザダイオード2-201との電気的接続を含むことができ、熱伝導性要素3-430は、レーザダイオード2-201に電圧または基準電位を印加するための電極として追加的に使用され得る。
【0140】
熱伝導性要素3-430の第2の部分3-433は、パルスソース基板1-110を通って延びて、熱伝達を基板1-110を通って裏側の熱伝導および補強要素3-710に提供することができる。次に、
図3-7を参照して、補強部材3-710の特徴について説明する。
【0141】
本発明者らは、レーザダイオードビームの位置検出、ビームステアリングアセンブリ1-115の動作、及びその製造が、容量性櫛形電極3-350ではなく誘導性センサを使用して改善できることを認識し、諒解した。例えば、本発明者らは、回転可能なステージの動きに対する静電容量の変化が数ピコファラド程度であり、この変化を高分解能で測定することは困難であることを見出した。
【0142】
誘導性センシングの一例を
図3-5に示す。そのような実施形態では、櫛形電極3-350の代わりに、インダクタ3-450を各回転軸についてパルスソース基板1-110上に配置することができる。複数の小型インダクタ3-450(例えば、Wurthのインダクタ)は、(
図3-3に示す)Xプレート3-320およびYフレーム3-330の可動部分の近くでパルスソース基板1-110に直接的に取り付けられ得る。さらに、複数の導電性要素3-550(導電性のカップ(cup)または鉄のカップなど)は、Xプレート3-320およびYフレーム3-330の可動部分に取り付けられてもよい。導電性要素3-550は、インダクタ3-450上で上下に移動し得る。
図3-3を参照すると、導電性要素3-550は、Xプレート3-320の下側の凹部内に搭載され、
図3-4Aの右側に示されるX検知インダクタ(X-sensing inductor)3-450の上に取り付けることができる。同様に、導電性要素3-550は、Yフレーム3-330の下側の凹部内に搭載され、
図3-4Aの左下に示されるY検知インダクタ(Y-sensing inductor)3-450の上に取り付けることができる。
【0143】
動作中、交流電気信号がインダクタ3-450に印加されてもよい。導電性要素3-550がインダクタ上を上下に移動するにつれて、変化する電磁場は、導電性要素3-550内に渦電流を生成することができ、この渦電流は、インダクタ3-450に逆に作用し、インダクタ3-450のインダクタンスを変化させる。インダクタンスの変化は、たとえば、共振LC回路にインダクタ3-450を含めて、共振周波数を記録することで検出できる。本発明者らは、インダクタンスの変化が、櫛形電極3-350のためのキャパシタンスの変化よりもかなり大きく、ジンバル動作(gimbal movement)およびビーム位置のかなり高い分解能が、誘導性検知を使用して測定できることを認識し、諒解した。
【0144】
図3-3に示されるようなジンバルマウントによる潜在的効果は、動作軸間にクロスカップリングが存在し得ることである。たとえば、複数のボイスコイルにXプレート3-320をY軸の周りに回転させるように指示すると、X軸の周りにYフレームが少し回転し得る。そのようなクロスカップリングの量を決定するために測定が実施された。
図3-6Aは、
図3-5に示される各軸上の誘導性センサを使用するジンバルビームステアリングアセンブリ1-115の典型的なY-X結合(Y-to-X coupling)を示すプロット図である。このプロット図は、Xプレートが固定され、Yフレームがその範囲にわたって動かされている間の、レーザダイオード2-201からの集束レーザビームのX方向における検知されたずれ(deviation)を示す。プロット図は、Xのずれが約2μm未満である場合にYフレームを400μm動かすことができることを示している。典型的なX-Y結合(X-to-Y coupling)を示すプロット図が、
図3-6Bに示されている。このプロット図は、レーザダイオードビームのX位置が400μm以上移動した場合のY位置の移動が無視できることを示している。
【0145】
本発明者らは、活性化されたボイスコイル3-340を有するパルスソース基板1-110が、動作中に共振振動を受けやすいことを見出した。たとえば、アクティブフィードバックループを使用してジンバルとレーザビームの位置を安定させるためにボイスコイル3-340が活性化されると、パルスソース基板1-110で機械的共振を励起できる。これにより、バイオ光電子チップ1-141の位置においてレーザビームの位置の数ミクロンだけの振動を生じさせることができる。いくつかの実施形態によれば、基板補強部材3-710は、(
図3-7に示すように)パルスソース基板1-110の裏面に取り付けられて、共振電気機械振動(resonant electro-mechanical vibrations)がパルスソース基板1-110内で励起されるのを防止することができる。
【0146】
いくつかの実施形態によれば、基板補強部材3-710は、アルミニウムまたは硬質プラスチックから形成されてもよい。いくつかの事例では、基板補強部材3-710は、プリント回路基板の支持されていない領域にわたる(span)ように構成され、プリント回路基板上のいくつかの位置に取り付けられてもよい。例えば、基板補強部材3-710は、パルスソース基板1-110の大部分にわたり、パルスソースボード上のいくつかの支持されていない位置およびパルスソース基板1-110の周辺に取り付けられ得る。いくつかの事例では、基板補強部材3-710は、パルスソース基板1-110の裏側のボイスコイル3-340の近くの位置に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、基板補強部材3-710は熱伝導性であり、レーザダイオード2-201の近くのパルスソース基板1-110の裏側に取り付けられてもよい。そのような実施形態では、基板補強部材3-710は、パルスソース基板1-110の機械的安定性を提供することに加えて、レーザダイオード2-201から熱を除去するのを助けることができる。
【0147】
ビームステアリングアセンブリ1-115のX、Yジンバルマウントの長期安定性は、容量性センサと誘導性センサの両方について、発明者によって測定された。誘導性センサを使用してXプレート3-320およびYフレーム3-330の位置を一定に維持する場合のX軸ドリフトおよびY軸ドリフトの両方についての結果の一例のプロットを
図3-8に示す。この測定では、レーザダイオードビームをイメージングアレイ(imaging array)に焦点を合わせ、アレイ上のビーム位置を経時的に記録した。プロット図は、ビーム位置がほぼ2時間の期間にわたって1μm以下だけずれたことを示し、誘導性センサを備えたビームステアリングアセンブリ1-115の優れた長期安定性を示している。容量性センサを使用した場合、ビームドリフトは、同じ期間で最大8μmであると測定された。容量性センサのドリフトが大きいのは、検出分解能が低いためと考えられている。
【0148】
幾つかの実施形態によれば、集束された光ビーム3-201のバイオ光電子チップ1-141上への信頼性が高く、ユーザにとって使いやすい位置合わせは、位置合わせ構造1-102へのチップの再現可能な位置合わせを必要とする。いくつかの実施形態による、パッケージ化光電子チップ1-140を受容する位置合わせ構造1-102の領域のクローズアップ図(close-up view)を、
図3-9Aに示す。写真に見えるのは、見当合わせプラットフォーム3-102のチップ開口部3-120を通して見ることができるチップインタフェースモジュール1-145の一部である。チップ開口部3-120の中央には、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140への熱接触および熱除去を提供するサーマルポスト(thermal post)1-185がある。サーマルポスト1-185の底面は、熱電冷却器などのヒートシンク要素1-1190(
図1-1を参照)と密接に接触していてもよい。いくつかの実施形態によれば、ヒートシンク要素1-190は、主制御基板1-180のバネに取り付けられてもよく、その結果、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140が生体分析機器1-100に取り付けられたときに、サーマルポスト1-185が主制御基板1-180に対してバネ力に抗して移動することができる。サーマルポスト1-185は、アルミニウム、銅、金、グラファイト、タングステン、亜鉛などの高熱伝導率を提供する適切な材料または材料の組み合わせから形成され得るが、これらに限定されない。いくつかの事例では、サーマルポスト1-185は、セラミックやアルミナなどの非導電性材料で形成され得る。
【0149】
レーザダイオード2-201から来る光ビーム3-201に対するパッケージ化バイオ光電子チップ1-140の光学的位置合わせを助けるために、凹状チップガイド3-110は、位置合わせ構造1-102の見当合わせプラットフォーム3-102に形成される。凹状チップガイド3-110は、ユーザによって機器に取り付けられたときに、位置合わせ構造と見当合わせプラットフォーム3-102に見当合わせされた光学部品とへのパッケージ化バイオ光電子チップ1-140の位置合わせを提供することができる。このようにして、バイオ光電子チップは、光ビーム3-201への信頼性の高い位置合わせで交換することができる。
【0150】
凹状チップガイド3-110は、チップインタフェースモジュール1-145への(
図3-9Bに示される)インターポーザ3-930の位置合わせおよび見当合わせをさらに提供し得る。例えば、インターポーザ3-930上の対応するインターポーザタブ3-950(interposer tab)に嵌合する凹状チップガイド3-110に形成されたインターポーザガイド3-920があり得る。インターポーザガイド3-920、インターポーザタブ3-950、および凹状チップガイド3-110は、ユーザが下にあるチップインタフェースモジュール1-145に対してインターポーザ3-930を方向付けるのを助けることができる。ユーザがインターポーザを凹状チップガイド3-110に組み込むと、インターポーザ位置合わせピン3-961、3-962は、チップインタフェースモジュール1-145に位置する(図面において少し見える)対応する穴3-963、3-964に係合することができる。インターポーザ位置合わせピン3-961、3-962は、インターポーザ上の複数のスプリングピン3-940を、チップインタフェースモジュール1-145に位置する対応する導電性パッド3-942に正確に位置合わせすることができる。
【0151】
インターポーザ3-930を所定の位置に保持するために、磁気保持部(magnetic retainer)3-910、3-912を凹状チップガイド3-110の周囲およびインターポーザ3-930の周囲に配置して、複数のインターポーザスプリングピン3-940をチップインタフェースモジュール1-145上の対応する導電性パッド3-942と密接に接触するように引き込むことができる。いくつかの実施形態によれば、磁気保持部は、例えば、保持穴3-112(
図3-1Aを参照)に取り付けられる複数の対の磁石であるか、または磁石および対応する強磁性材料であってもよい。パッケージ化バイオ光電子チップ1-140が生体分析機器1-100内に配置されると、パッケージ化バイオ光電子チップ上の複数の電気ピンがインターポーザ3-930上の複数のピンに押し付けられて、バイオ光電子チップ1-141と生体分析機器1-100との間に複数の電気接点を提供することができる。さらに、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140上のサーマルパッドがサーマルポスト1-185に押し付けられて、チップインタフェースモジュール1-145の下に位置するヒートシンク要素1-190への密接な熱接触と熱伝導を提供することができる。いくつかの実施形態によれば、生体分析機器1-100の蓋は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140に押し付けられ、ピンへの電気接触およびサーマルポスト1-185への熱接触を改善する。いくつかの実施形態によれば、凹状チップガイド3-110および/またはインターポーザ3-930の上面上の位置合わせ機構は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140を、生体分析機器1-100の見当合わせプラットフォーム3-102および光学システム3-205に(例えば、数十ミクロン以内に)位置合わせするための正確な位置合わせ機構を提供することができる。
【0152】
いくつかの実施態様において、バイオ光電子チップ1-141およびそのパッケージは、使い捨てであってもよく、一方で、他の実施態様では、チップは再使用可能であってもよい。チップが機器によって受け取られるとき、チップは、複数のコンタクト・パッド3-942を介して機器1-100と電気的に通信し、機器の光学システム3-205およびレーザダイオード2-201と光通信してもよい。主制御基板1-180は、電力、1つ又は複数のクロック信号、及び制御信号をパッケージ化バイオ光電子チップ1-140に与えるように構成されている回路と、反応室で複数の光検出器から検出される蛍光発光を表す信号を受信するように構成されている信号処理回路とを含むことができる。主制御基板1-180および/またはチップインタフェースモジュール1-145はまた、バイオ光電子チップ1-141の導波路に結合されている光パルス1-122の光結合及びパワー・レベルに関するフィードバック信号を受信するように構成されている回路をも含むことができる。バイオ光電子チップから戻されるデータは、部分的に又は全体的に機器1-100によって処理することができるが、データは、いくつかの実施態様では、ネットワーク接続を介して1つ又は複数の遠隔データ・プロセッサに伝送されてもよい。
【0153】
これに関して、主制御基板1-180は、ディスプレイ(例えば、生体分析機器に取り付け可能なタッチスクリーンまたはLCDディスプレイ)上にユーザインタフェースをレンダリングする(render)ための計算およびグラフィカル資源を含み得る。ユーザインタフェースにより、ユーザは、例えば、励起パルスをパッケージ化バイオ光電子チップ1-140に送達するための光源を選択することができる。ユーザインタフェースは、ユーザが機器の電源を選択することを可能にする(例えば、オンボードバッテリーまたはライン電力(line power))。いくつかの事例では、ユーザインタフェースは、ユーザが複数の生体分析機器のネットワークで生体分析機器を設定し、試料または異なる試料に関して並行して操作できるようにすることができる。また、ネットワーク接続により、バイオ光電子チップ1-141から受信したデータへの外部コンピューティングリソースのアクセスが高速化されるため、試料分析をより迅速に実行できる。
【0154】
携帯型バイオ光電子機器の複数の構成要素がどのように配置されるかのさらなる詳細は、
図3-10Aおよび
図3-10Bに示されている。
図3-10Aに示す複数の構成要素の配置は、
図1-1に示す構成要素と同様であるが、位置合わせ構造1-102は図示されていない。いくつかの実施形態によれば、チップインタフェースモジュール1-145は、レセプタクルガイド1-107の近くに配置されてもよく、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140と電気接続するように構成される。いくつかの実装形態によれば、ヒートシンク要素1-190がチップインタフェースモジュール1-145に取り付けられ、サーマルポスト1-185がチップインタフェースモジュール1-145を通り抜けることができる。
【0155】
複数の実施形態では、チップインタフェースモジュール1-145は、プリント回路基板および電子部品(例えば、集積回路チップおよび抵抗器、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、インダクタなどのディスクリート部品)を含むことができる。チップインタフェースモジュールは、(例えば、インターポーザ3-930を介して)パッケージ化バイオ光電子チップ1-140に電気接続を行い、チップに関連する様々な機能を実行するように構成され得る。このような機能には、バイオ光電子チップ1-141への電力分配、チップ温度の評価及び制御、チップに対する光ビームのアライメントの評価及び制御、データ取得のためにチップに1つ又は複数のクロック信号を提供すること、チップからのデータの受信、さらなる分析のためにプロセッサへのデータリンクを介して送信するためにチップからデータをパッケージング及び/又はフォーマッティングすること、チップ負荷状態の評価、及びチップが機器内にないとき又はチップ上の蓋が開いているときにレーザを無効にすることができるレーザのための安全インターロック(safety interlock)の制御が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
電気コネクタ3-1005を使用して、制御基板1-180、バッテリー3-1010、チップインタフェースモジュール1-145、パルスソース基板1-110、およびビームステアリングアセンブリ1-115間で電力及び/又はデータを渡すことができる。いくつかの実施形態では、冷却ファン3-1020を(破線で示す)ケーシング3-1030に取り付け、パルスソース基板1-110の近くに配置して、光源からの熱除去を助けることができる。(破線で示される)ヒンジ式アクセスポート(hinged access port)3-1035が開いて、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140の組み込みおよび取り外しのためのレセプタクルガイド1-107へのアクセスを提供する。
【0157】
いくつかの実施形態によれば、バッテリー3-1010は、(例えば、ライン電力または発電機電力が利用できない場合に)遠隔地で使用されるときに、携帯型バイオ光電子機器に数時間電力を供給するために使用することができる1つ以上の再充電可能なバッテリーを含み得る。いくつかの実装形態では、バッテリー3-1010は、8個以下のモデル18650の3.7Vのリチウムイオンバッテリーのアセンブリを備えてもよい。いくつかの実施形態では、バッテリー3-1010は、
図3-10Aに示されるように、機器ケーシング3-1030の内部に取り付けられてもよい。
【0158】
他の実施形態では、
図3-10Bに示されるように、機器のバッテリー3-1010は、機器ケーシング3-1030の外部に取り付けられてもよい。外部取り付けにより、よりコンパクトな機器が提供され、バッテリーパックを簡単に交換できるため、バッテリー電源で機器をより長い時間動作させることができる。いくつかの事例では、蓄電素子(例えば、図示されていないキャパシタ)を機器内に含めて、機器の動作中にバッテリー3-1010のホットスワップ(hot-swapping)を可能にし、バッテリーの交換中に中断を最小限に抑えるかまたは中断することなく生体分析を継続することができる。
【0159】
より多くの数の反応室がバイオ光電子チップ1-141に含まれる場合、光励起源(optical excitation source)のサイズが増大し、データ処理能力が増大し得る。データ処理容量の増大によって、機器制御基板1-180が大きくなる場合がある。光源のサイズまたは数が増大すると、機器内の熱が増大し、バイオ光電子チップに対する光学的アライメントに望ましくない影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態では、パルスソース基板1-110およびその上に取り付けられた1つまたは複数の光源は、ビームステアリングアセンブリ1-115から離れてファン3-1020の近くに移動されてもよい。加えて、熱放散要素3-1050(例えば、冷却フィンまたは熱伝導プレート)をパルスソース基板1-110に取り付けて、光源からの熱の除去を助けてもよい。パルスソース基板1-110とビームステアリングアセンブリ1-115を分離することにより、機器制御基板1-180のサイズを大きくして、より多くの電子部品を収容することができる。機器制御基板1-180は、光源1-110からのビームがビームステアリングアセンブリ1-115を通過することを可能にする穴を含み得る。機器構成要素の他の配置も可能である。
【0160】
図3-10Cは、生体分析機器1-100の複数の構成要素の別の配置を示している。この図では、位置合わせ構造1-102は、位置合わせ構造1-102によって部分的に包囲された上部室(upper chamber)3-1090内の複数の構成要素が見えるように破断図で示されている。上部室3-1090は、位置合わせ構造1-102と、位置合わせ構造に取り付けられた機器制御基板1-180とによって実質的に包囲されていてもよい。上部室3-1090は、機器の電子機器の大部分を含んでもよい。
【0161】
図示の実施形態では、少なくとも1つの光学部品が、位置合わせ構造1-102の見当合わせプラットフォーム3-302の上面に取り付けられている。例えば、変向ミラー1-121、変向ミラーマウント3-225、第2のレンズ1-127、および第2のレンズマウント3-208は、見当合わせプラットフォーム3-102の上面に見当合わせされ得る。また、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140は、同じ表面に見当合わせすることができる。ビームステアリングアセンブリ1-115およびレーザダイオード2-201を備えたパルスソース基板1-110は、見当合わせプラットフォーム1-102の対向する下面に見当合わせすることができるので、上述のように、これらの構成要素および光学構成要素のすべてを位置合わせし、安定した位置合わせを維持することができる。パッケージ化バイオ光電子チップ1-140は、
図3-9Aおよび
図3-9Bに関連して上述されたように、凹状チップガイド3-110内に配置されたインターポーザ3-930によって受け取られ得る。インターポーザ3-930は、パッケージ化チップ1-140上の複数のコンタクトとチップインタフェースモジュール1-145上の複数のコンタクトとの間の電気的接続を提供することができる。
【0162】
バイオ光電子チップ1-141から熱を除去するために、チップは、インターポーザ3-930およびチップインタフェースモジュール1-145の開口を通じて熱を伝達する1つまたは複数のサーマルポスト1-185に熱接触(thermal contact)で取り付けることができる。サーマルポスト1-185はまた、機器制御基板1-180の開口を通って延び、機器の下部室3-1091内に取り付けられた熱放散要素3-1052と熱的に接触することができる。いくつかの実施形態では、サーマルポスト1-185は、
図3-10Cに示されるように、熱放散要素3-1052と熱的に接触するヒートシンク要素1-190(例えば、熱電冷却器)と熱的に接触してもよい。このようにして、バイオ光電子チップ1-141からの熱の大部分を、チップおよび上部室3-1090から下部室3-1091内の熱放散要素3-1052に伝達することができる。
【0163】
冷却ファン3-1020を下部室に配置し、空気流を(
図3-10Cの太い矢印で示す)任意の適切な方向に下部室を通るようにすることができる。熱放散を改善するために、複数のフィン3-1053を熱放散要素3-1052全体に配置することができる。熱放散要素3-1052は、アルミニウムなどであるがこれに限定されない高い熱伝導率を有する任意の適切な材料または材料の組み合わせで形成されてもよい。いくつかの実施形態では、空気流は、機器制御基板1-180によって下部室3-1091にほとんど制限され得る。例えば、機器制御基板1-180は、生体分析機器1-100の室3-1091の少なくとも1つの壁を形成する拡大面(extended surface)の大部分を含むことができる。図示された例では、機器制御基板1-180は、下部室3-1091に対する上部壁または天井を実質的に形成し、下部室内に空気流を封じ込めるのを助ける。
【0164】
レーザダイオード2-201及びパルスソース基板1-110から熱を除去するために、熱伝導性補強要素3-710は、下部室3-1091内に配置された第2の熱放散要素3-1050に熱的に結合され得る。第2の熱放散要素3-1050は、複数の冷却フィン3-1051も含むことができ、空気が複数の冷却フィン3-1051を流れる。いくつかの事例では、補強要素3-710は、第2の熱放散要素3-1050に直接的に接触してもよい。他の事例では、補強要素3-710は、
図3-10Cに示されるように、第2の熱放散要素3-1050と熱的に接触するヒートシンク要素1-190(例えば、熱電冷却器)と熱的に接触してもよい。
【0165】
いくつかの実装形態によれば、機器に電力を供給するための1つまたは複数のバッテリー3-1010を下部室3-1091に配置することができる。これらのバッテリーは放電されると、熱を発生し得る。放電中のバッテリーからの熱は、下部室3-1091内の空気の流れによって除去され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、位置合わせ構造1-102は、熱除去のためのいくつかの手段に関与するか、または提供することができる。例えば、位置合わせ構造1-102に隣接して、または位置合わせ構造により少なくとも部分的に包囲された室3-1090内に取り付けられた複数の電気部品からの熱は、位置合わせ構造1-102に放射され、吸収され得る。次いで、過剰な熱は、生体分析機器1-100の外部に放散され得る(例えば、機器の周囲またはその近くに位置する複数の壁1-103によって放散される)。
【0167】
いくつかの実装形態では、位置合わせ構造1-102は、生体分析機器1-100内の室3-1090の少なくとも1つの壁面の大部分を形成することができる。いくつかの事例では、位置合わせ構造1-102は、生体分析機器の外部エンクロージャの少なくとも一部分を形成できる。いくつかの事例では、位置合わせ構造1-102および/または見当合わせプラットフォーム3-102は、機器内の空気流を案内または遮断する壁の少なくとも一部分を形成することができる。例えば、(見当合わせプラットフォームを形成することができる)位置合わせ構造1-102の上壁または天井は、下部室から受け取った任意の空気流を下部室に戻し、排気し、乱流空気流(turbulent air flow)が(破線で示される)光ビーム経路に到達するのを防止することができ、このような乱流は、バイオ光電子チップ1-141へのビーム位置合わせに悪影響を与える可能性がある。いくつかの事例では、空気流は、位置合わせ構造1-102の1つまたは複数の壁によって少なくとも部分的に包囲された室3-1090に流入することができ、1つまたは複数の壁は、生体分析機器1-100の外部に熱放散を提供することができる。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、携帯型バイオ光電子機器1-100は、小型であり、容易に携帯可能であり得る。たとえば、機器1-100は、30cm以下の外形寸法を有し、機器の重量は、バッテリー重量を含めて3キログラム以下であり、いくつかの事例では2キログラム以下であり得る。いくつかの実施形態では、機器1-100は、25cm以下の外形寸法を有し、機器の重量は、バッテリー重量を含めて2キログラム以下であり得る。いくつかの実施形態では、機器1-100は、20cm以下の外形寸法を有し、機器の重量は、バッテリー重量を含めて2キログラム以下であり得る。機器の全体形状は長方形であってもよい。
【0169】
IV.バイオ光電子チップへの光ビームの自動位置合わせ
いくつかの実施形態によれば、自動位置合わせ手順および機器を使用して、パルスソース基板1-110からのレーザビームを、バイオ光電子チップ1-140上のカプラ1-310(格子カプラ)に対して位置合わせすることができる。位置合わせ手順は、
図4-1に示すように、格子カプラ1-310に対する螺旋探索を実行することを含むことができる。螺旋探索は、ビームステアリングアセンブリ1-115内のXプレート3-320及びYフレーム3-330を回転させて光ビームをチップ1-141の表面上でx方向及びy方向に偏向させることによって実行され得る。例えば、パッケージ化チップ1-140が生体分析機器1-100に装填されてパルスレーザダイオードがオンにされた後、レーザビームは、
図4-1において「A」とマークされた位置においてチップの表面に衝突し得る。この位置において、チップ1-141に配置されたクワッド検出器1-320によって信号は検出され得ない。クワッド検出器からの信号が監視されている間に、螺旋探索経路4-110が実行され得る。位置「B」において、クワッド検出器は、その検出器からのビームのx、y位置信号を見当合わせし始めることができる。その後、制御回路が、クワッド検出器の中心に対するビームの位置を決定し、螺旋経路の実行を取り消し、ビームをクワッド検出器1-320の中心、すなわち点「C」へと方向制御するように、ボイスコイル8-122,8-123を動作させることができる。カプラ1-310は、クワッド検出器の上でほぼ中心に位置することができる。その後、導波路1-312又は複数の導波路に結合される光エネルギーの量を増大させるために、位置及び入射角の微調整を行うことができる。いくつかの実施形態において、複数の導波路1-312の端部における複数の集積フォトダイオード1-324からの光パワーが監視され、それによって、複数の光導波路に結合されるパワーの均一性を増大させるために、格子カプラにおいてレーザビームに微調整を行うことができる。
【0170】
他の方法及び装置を使用して、クワッド検出器1-320を探索し、集束ビーム3-250を格子カプラ1-310に位置合わせすることができる。いくつかの実施形態において、レーザビームを検出することができる範囲を拡大するために、クワッド検出器1-320の感度を改善することができる。例えば、高いパワー(例えば、完全にオン)にあるレーザ・パワーを有するクワッド検出器からの信号を、低い設定(例えば、オフまたはほぼオフ)にあるレーザ・パワーを有するクワッド検出器からの信号に対して比較することができる。加えて、レーザビームがクワッド検出器から相当の距離に位置し得るときは、クワッド検出器の位置検出感度を改善するために、より長い期間にわたって信号を積分することができる。
【0171】
いくつかの実施形態において、光散乱素子(
図4-1には示されていない)を、チップ1-141上でクワッド検出器1-320の周囲に作製することができる。集束ビームが不整合になっており、周縁位置においてクワッド検出器から離れているとき、散乱素子は、集束ビームからの光をクワッド検出器1-320に向けて散乱させることができる。このとき、検出される散乱光は、ビームの位置を示す。
【0172】
いくつかの実施態様において、幅が予期される集束ビームサイズと同様である、狭い線形散乱素子又はライン検出器が、クワッド検出器の中心を通じて(又はクワッド検出器に対して任意の適切な向きにおいて)設置され、クワッド検出器の対向する辺を大きく越えて(例えば、妥当に予測される初期ビーム・オフセット誤差よりも大きい距離まで)延在することができる。この素子又は検出器の向きは設計によって分かるため、集束ビームは最初に、クワッド検出器1-320への散乱によって、又は、直にライン検出器によってのいずれかで、ビームが素子又は検出器に衝突され、肯定的に検出されるまで、素子に垂直な方向において走査することができる。その後、ビームは、クワッド検出器1-320を発見するために他の方向において走査することができる。
【0173】
いくつかの実装形態では、複数の光検出器1-322を使用して、ビームをバイオ光電子チップ1-141上の光カプラ1-310に位置合わせすることができる。例えば、1つ以上の光検出器1-322を使用して、ビームステアリングアセンブリ1-115によってパルスビームが走査されるときに1つ以上の反応室1-330に送達される励起放射の量を検知することができる。いくつかの事例では、複数の反応室に結合された励起放射を監視するために、光検出器1-322のサブグループ(例えば、アレイの中心に位置する光検出器のグループ)を使用してもよい。
【0174】
位置合わせの後、入射レーザビームを能動的に位置合わせされた位置にあるままにすることができる。例えば、クワッド検出器1-320に対する初期位置合わせ後に決定されるビームのx、y位置を、クワッド検出器からのフィードバックならびにボイスコイル3-340の起動を使用して能動的に維持して、ビームをほぼ固定の位置に維持することができる。加えて、導波路に結合されるパワーの量は、例えば、レーザダイオード2-201への注入電流を調整することによって、測定全体を通じてほぼ一定のレベルに維持することができる。
【0175】
ビーム位置合わせ及びパワー安定化のための例示的な回路が、いくつかの実施形態に従って、
図4-2に示されている。クワッド検出器1-320は4つのフォトダイオードとして表されており、導波路フォトダイオード1-324は、図面における第5のフォトダイオードとして表されている。いくつかの実施態様において、光パワーが単一の格子カプラ1-310から結合される、多数の導波路があってもよい。したがって、導波路の端部に、制御回路4-230に接続される信号出力を有する多数の導波路フォトダイオード1-324があってもよい。ダイオードの光伝導によって生成される電圧を検出するために、増幅回路4-210が配置され得る。増幅回路4-210は、いくつかの実施形態によれば、アナログ信号をデジタル信号に変換するCMOS電子デバイス(例えばFET、サンプリング回路、アナログ-デジタル変換器)を備えることができる。他の実施形態では、アナログ信号が、増幅回路から制御回路4-230に与えられてもよい。
【0176】
いくつかの実施形態において、制御回路は、アナログ及びデジタル回路、ASIC、FPGA、DSP、マイクロコントローラ及びマイクロコントローラコード、並びにマイクロプロセッサ及びコードのうちの1つ又は組み合わせを含んでもよい。制御回路2-230は、1つ又は複数の導波路フォトダイオードからの受信信号を処理して、各導波路における光パワーのレベルを決定するように構成することができる。制御回路2-230は、クワッド検出器1-320からの受信信号を処理して、クワッド検出器に対する光ビームのx、y位置を決定するように、さらに構成することができる。いくつかの実施態様において、制御回路2-230は、各導波路に結合されるパワーを検出し、パワーが導波路内で均質化され、導波路にわたって最も高い均一性を有するようにレーザビームを動かすためのアクチュエータに対する制御信号を与えるように構成されている。
【0177】
x方向におけるレーザビームの位置は、例えば、以下のアルゴリズムを実行するように適合されている制御回路2-230によって決定することができる:
Sx=[(VQ2+VQ3)-(VQ1+VQ4)]/VT
式中、Sxはx方向に対応する正規化信号レベルであり、VQnは、クワッド検出器のn番目のフォトダイオードから受信される信号レベル(例えば、電圧)であり、VTは、4つすべてのフォトダイオードからの信号を合計することによって受信される総信号レベルである。加えて、y方向におけるレーザビームの位置は、例えば、以下のアルゴリズムを使用して決定することができる:
Sy=[(VQ3+VQ4)-(VQ1+VQ2)]/VT。
【0178】
チップ1-141上のすべての導波路に結合される平均パワーは、チップ上の導波路の各々におけるパワーを検出するように構成されているすべてのフォトダイオード1-324からの信号を合計することによって決定することができる。
【0179】
x,yにおける検出されるビーム位置に応答して、ならびに、1つ以上のフォトダイオードによってバイオ光電子チップ1-141の1つ又は複数の導波路内で検出されるパワー・レベルに応答して、制御回路2-230によって制御信号を発生させることができる。制御信号は、ビームステアリングアセンブリ1-115のボイスコイル3-340への通信リンク(SM1、SM2)、およびレーザダイオード電力の量を制御するパルスソース基板1-110への通信リンクDPを介して、デジタル信号として供給されてもよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで具体化されるPID制御ループを使用して、1つ以上の導波路におけるパワーを本質的に一定値に維持することができる。1つ以上の導波路におけるパワーは、1つ以上の導波路から光を受け取るように構成された1つ以上のフォトダイオードによって検知され得る。PID制御ループからの出力は、1つまたは複数の導波路において本質的に一定のパワー・レベルを維持する微調整を行うために、ビームステアリングアセンブリ1-115に供給され得る。
【0181】
いくつかの実施形態によれば、光源から供給されるパワーは、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで具体化されるPID制御ループを使用して安定化され得る。例えば、レーザダイオード2-201からのパワーは、フォトダイオードを用いて監視され、PID制御ループへの入力信号として供給され得る。フォトダイオードは、レーザダイオードパッケージ2-212の内部にあってもよく、またはパッケージの外部に取り付けられてもよく、散乱励起光または変向ミラー1-121などの変向ミラーからの部分的な透過光を検出するように配置されてもよい。
【0182】
バイオ光電子チップ1-141上の光カプラ(例えば、格子カプラ)に対するパルスレーザビームの位置合わせ及び位置合わせの維持のための例示的な方法4-300が、
図4-3に示されている。いくつかの実施形態によれば、生体分析機器1-100内の制御回路4-230は、パッケージ化バイオ光電子チップ1-140が機器内に装填されていることを検出する(動作4-305)ように構成することができる。新しいチップが搭載されるとき、その光カプラは、パルスレーザダイオード2-201からの集束レーザビームに正確に位置合わせされていないことがあるが、位置合わせされた位置から数十ミクロン(10’s of microns)以内であってもよい。装填が検出されるのに応答して、制御回路4-230は、例えば、
図4-1に示すように、バイオ光電子チップの表面にわたってパルスレーザビームの螺旋走査(又は上述した任意の他の適切な走査方法)を実行する(動作4-310)ように、ビームステアリングアセンブリ1-115を動作させることができる。制御回路は、ビームを螺旋経路4-110または他の任意の適切な経路内で動かすように、パルスソース基板1-110上のボイスコイル3-340を動作させることができる。パルスレーザビームがチップの表面にわたって走査されている間、レーザビームの位置が検出されるか否かを判定するために、制御回路4-230によって、クワッド検出器1-320からの信号を監視することができる(動作4-315)。
【0183】
クワッド検出器からの信号が、パルスレーザビームの位置が検出されていないことを示す場合(動作4-320)、制御回路は、バイオ光電子チップの表面にわたってレーザビームを走査し続けることができる(動作4-310)。代替的に、ビームの位置が検出された場合、螺旋走査を停止することができ、ビームステアリングアセンブリのボイスコイルを駆動して、パルスレーザビームを、クワッド検出器1-320に対してほぼ中心に合わせることができる(動作4-325)。いくつかの実施形態によれば、格子カプラ1-310は、クワッド検出器に対してほぼ中心に合わせることができ、それによって、レーザビームをクワッド検出器に対して中心に合わせることによって、ビームが格子カプラにほぼ位置合わせする。おおよそ格子カプラの位置にあるパルスレーザビームによって、制御回路は、格子カプラのすぐ近傍でx-y走査を実行する(動作4-330)ように、パルスソース基板1-110のボイスコイル3-340を駆動することができる。例えば、ビームステアリングアセンブリは、第1の最適な結合値を発見するためのx方向における連続的な線形走査を実行し、その後、第2の最適な結合値を発見するためのy方向における線形走査を実行するように駆動され得る。レーザビームが走査されている間、クワッド検出器1-320及び1つ又は複数の導波路フォトダイオード1-324からの出力信号を監視することができる(動作4-335)。
【0184】
パルスレーザビームが格子カプラの近傍で走査されるとき、1つ又は複数の導波路フォトダイオード1-324から検出されるパワーは増大及び低減し得る。いくつかの実施形態において、(クワッド検出器1-320によって決定されるものとしての)パルスレーザビームの第1のx1、y1位置に対応する(1つ又は複数の導波路フォトダイオード1-324によって検出される)導波路に結合される総パワー内の最大値があり得る。いくつかの事例において、格子カプラに接続されている複数の導波路において検出されるパワー・レベルがほぼ(例えば±20%以内又はさらには±10%以内で)等しい、パルスレーザビームの第2のx2、y2位置があり得る。第2の位置において、導波路に結合される総パワーは、第1の位置において導波路に結合される量未満であり得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、制御回路4-230は、導波路にわたって所定の均一性(例えば、±15%)以内で導波路に結合される最高の総パワーが達成されるまで、パルスレーザビームを動かすように適合することができる。対応する位置は、第1の位置x1、y1及び第2の位置x2、y2とは異なり得る、第1の最適化位置x3、y3であってもよい。いくつかの実施態様において、導波路にわたるより大きいパワー変動を許容することができる(結果もたらされるデータからパワー変動が正規化することができる)。そのような実施態様において、第1の最適化位置x3、y3は、導波路への総パワーが最大化される位置であり得る。
【0186】
第1の最適化位置x3、y3が発見されていないと制御回路4-230が判定する(動作4-340)場合、制御回路は、パルスソース基板1-110のボイスコイル3-340を、格子カプラ1-310の近傍におけるパルスレーザビームのx-y走査を実行する(動作4-330)ように動作させ続けることができる。第1の最適化結合位置が発見されている場合、制御回路4-230は、クワッド検出器1-320によって検知される固定位置にレーザビームを維持するようにボイスコイル3-340を動作させることによって、レーザビームの位置を保持することができる(動作4-345)。
【0187】
パルスレーザビームの位置が維持されることによって、バイオ光電子チップ1-141上での測定を開始することができる。いくつかの実施形態において、パルスレーザビームの位置は、数十分、数時間以上にわたって継続し得る測定の間に、クワッド検出器1-320に対して維持することができる。例えば、アクティブ・フィードバックを利用して、光カプラにおけるビームの位置を(クワッド検出器1-320を用いて)検知することができ、(例えば、システム内のドリフト又は変動を補償するようにボイスコイル3-340を動作させることによって)検知された位置にパルスレーザビームを維持することができる。
【0188】
測定が開始すると、反応室内の光パワー・レベルも維持することができる(動作4-370)。いくつかの実施形態によれば、光パワー・レベルを維持することは、1つ又は複数の導波路の端部に位置する1つ又は複数の導波路フォトダイオード1-324を用いて導波路パワー・レベルを監視することと、パルスレーザ・システム1-110のレーザダイオード2-201に注入される電流量を変更することによって、光パワーの変化を補償することとを含むことができる。上述したように、注入電流の量は、レーザダイオードに印加される電気パルスの持続時間を変更することにより変更され得る。このように、そうでなければ反応室内に生じることになるパワー変動を、大きく低減することができる。
【0189】
いくつかの実施形態において、制御回路2-230は、測定の終わりに、バイオ光電子チップ1-141または生体分析機器1-100から測定終了信号を受信することができる。制御回路が測定終了信号を検出しない(動作4-375)場合、ビームの位置及びパワー・レベルは維持され得る。制御回路が測定終了信号を検出する(動作4-375)場合、工程は終了することができる。いくつかの実施形態において、工程を終了することは、パルスソース基板1-110、そのボイスコイル3-340及びレーザダイオード2-201の電源を切ることを含み得る。
【0190】
生体分析機器のさまざまな構成が可能である。以下にいくつかの構成例を示す。
(1)試料内の異なる生化学的試料を識別するシステムは、携帯型機器を備え、携帯型機器は、単一の固有波長で動作するように構成されたレーザダイオードと、単一の固有波長を有する光パルスのビームをレーザダイオードに出力させるレーザダイオードに結合されたドライバ回路と、複数のサンプル分析画素を含むバイオ光電子チップを含むパッケージ化バイオ光電子チップを受け入れるように構成されたチップレセプタクルであって、複数のサンプル分析画素によって生成された複数の電気信号を受信するように、パッケージ化バイオ光電子チップ上の複数の第2のコンタクトに電気的に接続する複数の第1のコンタクトを含むチップレセプタクルと、レーザダイオードからパッケージ化バイオ光電子チップへの光パルスのビームを方向制御し、バイオ光電子チップ上の光カプラへの光パルスのビームの位置合わせを自動的に維持するように構成されたビームステアリングアセンブリと、を含む。
【0191】
(2)構成1のシステムにおいて、携帯型機器は、3つの異なる生化学試料に結合され、単一の固有波長を有する光パルスのみで励起される蛍光体の励起に応答して、3つの異なる生化学試料を識別する複数の試料分析画素の各試料分析画素から3つの異なる電子信号を受信するように構成される。
【0192】
(3)構成3のシステムにおいて、3つの異なる生化学試料は、ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体の群から選択される3つの異なる生化学試料である。
(4)構成1~3のいずれか1つのシステムにおいて、単一の固有波長が、505nm~535nmの間の値を有する。
【0193】
(5)構成1~4のいずれか1つのシステムにおいて、携帯型機器の重量は、3キログラム以下である。
(6)構成1~5のいずれか1つのシステムにおいて、携帯型機器は、25センチメートル以下の最大エッジ長さ(maximum edge length)を有する。
【0194】
(7)構成1~6のいずれか1つのシステムにおいて、ビームステアリングアセンブリは、2時間にわたって1ミクロン以下のドリフトの光カプラでのビーム位置の安定性を提供する。
【0195】
(8)構成1~7のいずれか1つのシステムにおいて、携帯型機器は、チップレセプタクルのための凹部が形成された位置合わせ構造を含む。
(9)構成8のシステムにおいて、位置合わせ構造は、ビームステアリングアセンブリ、パッケージ化バイオ光電子チップ、及び介在光学構成要素を位置合わせ構造及びレーザダイオードからパッケージ化バイオ光電子チップまで延びる光ビーム経路に見当合わせおよび位置合わせする機構を含む。
【0196】
(10)試料内の異なる生化学的試料を識別するシステムは、携帯型機器を備え、携帯型機器は、単一の固有波長で動作するように構成されたレーザダイオードと、単一の固有波長を有する光パルスのビームをレーザダイオードに出力させるレーザダイオードに結合されたドライバ回路と、複数のサンプルが含まれる複数の反応室を有するバイオ光電子チップを含むパッケージ化バイオ光電子チップを受け入れるように構成されたチップレセプタクルと、レーザダイオードからバイオ光電子チップへの光パルスのビームを方向制御し、バイオ光電子チップ上の光カプラへの光パルスの位置合わせを自動的に維持するように構成されたビームステアリングアセンブリであって、ドライバ回路は、プリント回路基板上に形成され、ビームステアリングアセンブリ内の複数の光学部品を作動させる複数のボイスコイルを含む、ビームステアリングアセンブリと、位置合わせ構造と、を含み、ビームステアリングアセンブリおよびパッケージ化バイオ光電子チップは、位置合わせ構造に位置合わせされて取り付けられる。
【0197】
(11)試料内の異なる生化学的試料を識別するシステムは、携帯型機器を備え、携帯型機器は、単一の固有波長で動作するように構成されたレーザダイオードと、単一の固有波長を有する光パルスのビームをレーザダイオードに出力させるレーザダイオードに結合されたドライバ回路と、複数のサンプルが含まれる複数の反応室を有するバイオ光電子チップを含むパッケージ化バイオ光電子チップを受け入れるように構成されたチップレセプタクルと、レーザダイオードからバイオ光電子チップへの光パルスのビームを案内し、バイオ光電子チップ上の光カプラへの光パルスの位置合わせを自動的に維持するように構成されたビームステアリングアセンブリおよび光学系と、を含み、ビームステアリングアセンブリおよび光学系は、3つのレンズを含み、該3つのレンズのうちの1つがチップおよびチルトされて、バイオ光電子チップ上の光パルスのビームの位置を変更する。
【0198】
(12)機器内に支持されたプリント回路基板は、プリント回路基板に隣接して配置された磁石または強磁性材料に作用するように配置された複数のボイスコイルと、プリント回路基板の電気機械的振動を防止するために、プリント回路基板の1つ以上の支持されていない領域に取り付けられた基板補強部材と、を含む。
【0199】
(13)携帯型生体分析機器は、位置合わせ構造と、位置合わせ構造に見当合わせされたパルス光源と、位置合わせ構造内に形成され、パッケージ化バイオ光電子チップを受け取るように構成されたチップレセプタクルと、位置合わせ構造に見当合わせされ、パルス光源からパッケージ化光電子チップへ光パルスビームを方向制御するように構成されたビームステアリングアセンブリと、を含み、位置合わせ構造は、携帯型生体分析機器内又はその上の少なくとも1つの囲い壁の大部分を形成する。
【0200】
(14)(13)の生体分析機器において、少なくとも一つの囲い壁が、生体分析機器内で発生した熱を放散する。
(15)(13)または(14)の生体分析機器において、少なくとも一つの囲い壁が、生体分析機器内の強制された空気流を案内するかまたは遮断する。
【0201】
(16)(13)~(15)のいずれかの生体分析機器において、生体分析機器の重量が、3キログラム以下である。
(17)(13)~(16)のいずれかの生体分析機器において、生体分析機器は、25センチメートル以下の最大エッジ長さを有する。
【0202】
(18)(13)~(17)のいずれかの生体分析機器において、位置合わせ構造は、パルス光源およびビームステアリングアセンブリが位置合わせされる見当合わせプラットフォームを含み、さらに、見当合わせプラットフォームに取り付けられ、光パルスのビームに作用する少なくとも1つの光学部品を含む。
【0203】
(19)(18)の生体分析機器において、パッケージ化生体光電子チップおよび少なくとも1つの光学部品は、見当合わせプラットフォームの第1の表面に見当合わせされ、パルス光源およびビームステアリングアセンブリは、見当合わせプラットフォームの第1の表面に対向する第2の表面に見当合わせされる。
【0204】
(20)(19)の生体分析機器において、見当合わせプラットフォームの第2の表面に形成されたキネマティック凹部をさらに含み、ビームステアリングアセンブリは、キネマティック凹部を用いて見当合わせプラットフォームに自己位置合わせされる。
【0205】
(21)(18)の生体分析機器において、位置合わせ構造が、見当合わせプラットフォームを補強する壁または補強リブを含む。
(22)(13)~(21)のいずれかの生体分析機器は、生体分析機器内の室の壁の大部分を形成するプリント回路制御基板をさらに含む。
【0206】
(23)(22)の生体分析機器において、プリント回路制御基板は、生体分析機器内の強制された空気流の大部分を室に閉じ込める。
(24)(22)または(23)の生体分析機器は、チップレセプタクルに隣接して配置され、パッケージ化バイオ光電子チップから室に向けて熱を伝達するように配置されたサーマルポストと、室内に配置され、サーマルポストに熱的に結合された熱放散要素と、をさらに含む。
【0207】
(25)(22)~(24)のいずれかの生体分析機器は、パルス光源が搭載された回路基板に取り付けられ且つパルス光源から室に向かって熱を伝達するように構成された熱伝導性補強要素と、室内に配置され、熱伝導性補強要素に熱的に結合された熱放散要素と、をさらに含む。
【0208】
(26)(22)~(25)のいずれかの生体分析機器は、室内に配置された少なくとも1つのバッテリーをさらに含む。
(27)(13)~(26)のいずれかの生体分析機器において、パルス光源は、レーザダイオードが搭載されたパルスソース回路基板と、パルスソース基板上に構成されたレーザダイオードのドライバ回路と、を含み、パルスソース基板は、ビームステアリングアセンブリに直接取り付けられている。
【0209】
(28)(27)の生体分析機器は、ビームステアリングアセンブリ内の可動構成要素の動きを検知するパルスソース回路基板上に位置する誘導性センサをさらに含む。
(29)(28)の生体分析機器は、ビームステアリングアセンブリ内の可動構成要素に取り付けられ、可動構成要素の動きに伴って誘導性センサのインダクタンスを変化させる導電性要素をさらに含む。
【0210】
(30)(27)~(29)のいずれかの生体分析機器は、パルスソース回路基板に取り付けられた集光レンズと、パルスソース回路基板に取り付けられた2つ以上のボイスコイルと、を含み、2つ以上のボイスコイルは、ビームステアリングアセンブリ内の可動構成要素を活性化させるように構成される。
【0211】
(31)(13)~(30)のいずれかの生体分析機器において、ビームステアリングアセンブリが、チップレセプタクルの位置における光パルスのビームの位置の動きを、2時間にわたって、ドリフトが1ミクロン以下に安定化させる。
【0212】
(32)(31)または(30)の生体分析機器は、バイオ光電子チップ上の少なくとも1つのフォトダイオードから信号を受信し、2つ以上のボイスコイルを活性化させて光パルスを光カプラに対して位置決めするように構成されたビーム制御回路をさらに含む。
【0213】
(33)(27)~(32)のいずれかの生体分析機器は、パルスソース基板を補強するパルスソース回路基板に取り付けられた基板補強要素をさらに含む。
(34)(33)の生体分析機器において、基板補強要素は、熱放散要素に熱的に結合される。
【0214】
(35)(27)~(34)のいずれかの生体分析機器において、ドライバ回路は、単極パルスを生成するように構成されたパルス発生回路と、レーザダイオードに電気パルスを出力するダイオードドライバ回路と、を含む。
【0215】
(36)(35)の生体分析機器において、パルス発生回路は、差動クロック信号を受信し、単極パルスを出力するように構成された論理ゲートを含む。
(37)(35)または(36)の生体分析機器において、ダイオードドライバ回路は、共通ソース増幅器として接続され、パルス発生回路から単極パルスを受信するように構成された第1のトランジスタと、ソースフォロワとして接続され、共通ソース増幅器からの出力を受け取るように構成された第2のトランジスタと、を含む。
【0216】
(38)(37)の生体分析機器において、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタは、高電子移動度トランジスタである。
(39)(37)または(38)の生体分析機器は、第1のトランジスタのドレインと第1のトランジスタに対する電圧源との間に接続されたインダクタをさらに含む。
【0217】
(40)(35)~(39)のいずれかの生体分析機器において、ダイオードドライバ回路は、レーザダイオードのカソードと基準電位との間に接続された電界効果トランジスタと、レーザダイオードのアノードとカソードとの間に直列に接続されたインダクタおよび抵抗器と、アノードと基準電位との間に接続されたキャパシタと、を含む。
【0218】
(41)(37)~(40)のいずれかの生体分析機器は、ダイオードドライバ回路は、電界効果トランジスタのゲートへの単極パルスの印加に応答して、40ピコ秒~250ピコ秒の時間的な半値全幅値を有する光パルスを平均してレーザダイオードに出力させる。
【0219】
(42)(35)~(41)のいずれかの生体分析機器において、ダイオードドライバ回路は、パルスの強度が光パルスのピーク値から最大600ピコ秒だけ40dB以上低下するように、レーザダイオードに光パルスを出力させる。
【0220】
(43)(13)~(42)のいずれかの生体分析機器において、ビームステアリングアセンブリは、レンズと、レンズを支持して2つの軸の周りを回転させて、レンズを通過するビームを横方向に平行移動させるジンバルと、を含む。
【0221】
(44)(13)~(43)のいずれかの生体分析機器は、パルス光源に隣接して取り付けられた第1のレンズと、ビームステアリングアセンブリの可動構成要素に取り付けられた第2のレンズと、第2のレンズからのビームをバイオ光電子チップ上の光カプラに集束するように構成された第3のレンズと、を含む。
【0222】
(45)(44)の生体分析機器において、第1のレンズ、第2のレンズ、および第3のレンズは、パルス光源とチップレセプタクルとの間に配置されるレンズだけである。
(46)(44)又は(45)の生体分析機器において、第1のレンズ、第2のレンズ及び第3のレンズは、レーザダイオードの出射面において出射されたビームの光カプラの位置で拡大ビームを生成し、拡大ビームの倍率は、10倍と30倍との間である。
【0223】
(47)(44)~(46)のいずれかの生体分析機器において、第1のレンズ、第2のレンズ、および第3のレンズは、光カプラの位置で楕円ビームを生成する。
(48)(13)~(47)のいずれかの生体分析機器において、生体分析機器は、パッケージ化バイオ光電子チップから受信したデータを処理してDNAに関する情報を決定するように構成されている。
【0224】
(49)(13)~(47)のいずれかの生体分析機器において、生体分析機器は、パッケージ化バイオ光電子チップから受信したデータを処理して1つまたは複数のタンパク質に関する情報を決定するように構成されている。
【0225】
(50)(13)~(47)のいずれかの生体分析機器において、生体分析機器は、パッケージ化バイオ光電子チップから受信したデータを処理して少なくとも1つの代謝反応に関する情報を決定するように構成されている。
【0226】
V.結論
このように、携帯型生体分析機器のいくつかの実施形態のいくつかの態様を説明したが、様々な変更、修正、及び改善が当業者には容易に想到されることが諒解されるべきである。そのような変更、修正、及び改善はこの開示の一部であるように意図されており、本発明の精神及び範囲内にあることが意図されている。本教示を様々な実施形態及び例に関連して説明したが、本教示がこのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者には諒解されるであろう様々な代替形態、修正、及び均等物を包含する。
【0227】
様々な発明の実施形態が説明及び図示されてきたが、当業者は、その機能を実施し、かつ/又は、それらの結果及び/又は説明されている利点の1つもしくは複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定し、そのような変形及び/又は修正の各々は、説明されている本発明の実施形態の範囲内にあると考えられる。より一般的には、当業者は、説明されているすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例であるように意図されていること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される特定の1つ又は複数の用途に応じて決まることを容易に諒解するであろう。当業者は、日常の実験のみを使用して、説明されている特定の発明の実施形態に対する多くの均等物を認識することになり、又は、それを究明することが可能になる。それゆえ、上記の実施形態は例としてのみ提示されていること、ならびに、添付の特許請求項及びその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求されているのとは他の様態で実践されてもよいことが理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、説明されている各個々の特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法を対象とし得る。加えて、そのような特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、及び/又は方法の任意の組み合わせが、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0228】
さらに、本発明のいくつかの利点が示され得るが、本発明のすべての実施形態がすべての説明されている利点を含むとは限らないことは諒解されるべきである。いくつかの実施形態は、有利であるとして説明されている任意の特徴を実装しなくてもよい。したがって、上記の説明及び図面は例示のみを目的としたものである。
【0229】
限定ではないが、特許、特許出願、論説、著書、論文、及びウェブ・ページを含む、この出願において引用されているすべての文献及び同様の資料は、そのような文献及び同様の資料の形式にかかわらず、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。組み込まれている文献及び同様の資料のうちの1つ又は複数が、限定ではないが、定義されている用語、用語の用法、説明されている技法などを含め、この出願と異なるか、又は、相反する場合、この出願が優先する。
【0230】
使用されている節の見出しは、構成のみを目的としており、決して説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
また、説明されている技術は、そのうち少なくとも1つの例が設けられている方法として具現化され得る。方法の一部分として実施される動作は、任意の適切な様式で順序付けられてもよい。したがって、動作が示されているものとは異なる順序で実施され、たとえ例示的な実施形態においては順次の動作として示されていたとしても、いくつかの動作を同時に実施することを含んでもよい実施形態が構築されてもよい。
【0231】
定義及び使用されているものとしてのすべての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれている文書における定義、及び/又は、定義されている用語の通常の意味に優先するものとして理解されるべきである。
【0232】
数値及び範囲は、本明細書及び特許請求の範囲において、近似する又は正確な値又は範囲として記載されている場合がある。例えば、いくつかの事例において、「約(about)」、「おおよそ(approximately)」、及び「実質的に(substantially)」という用語が、値を参照して使用されている場合がある。 そのような参照は、参照されている値、ならびに、その値に妥当な変動が加わった値及び差し引かれた値を包含するように意図されている。例えば、「約10と約20との間」という語句は、いくつかの実施形態における「正確に10と正確に20との間」、及び、いくつかの実施形態における「10+δ1と20+δ2との間」を意味するように意図されている。値の変動δ1、δ2の量は、いくつかの実施形態においては値の5%未満であってもよく、いくつかの実施形態においては値の10%未満であってもよく、さらに、いくつかの実施形態においては値の20%未満であってもよい。例えば、2桁以上を含む範囲のような、値の大きい範囲が与えられている実施形態では、値の変動δ1、δ2の量は、50%程度と高くなり得る。例えば、動作可能範囲が2から200まで延在する場合、「約80」は、40と120との間の値を包含してもよく、範囲は、1と300との間と大きくなってもよい。正確な値が意図される場合、例えば、「正確に2と正確に200との間」のように、「正確に」という用語が使用される。
【0233】
「隣接する」という用語は、2つの要素が互いに近接近して(例えば、2つの要素のうちの大きい方の横方向寸法又は垂直方向寸法の約5分の1未満の距離内に)配置されることを指し得る。いくつかの事例において、隣接する要素の間には、介在する構造又は層があってもよい。いくつかの事例において、隣接する要素は、介在する構造又は要素なしに互いに直に隣接してもよい。
【0234】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、明確に逆に指示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味するように理解されるべきである。
【0235】
「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、そのように結合されている要素、すなわち、いくつかの事例では結合して存在し、他の事例では分離して存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。「及び/又は」を用いてリストされている複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合されている要素の「1つ又は複数」として解釈されるべきである。「及び/又は」条項によって具体的に識別されている要素以外の他の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定例として、「備える(comprising)」のような限定しない文言とともに使用されているとき、「A及び/又はB」に対する参照は、1実施形態においてはAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態においてはBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態においてはAとBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指し得る、などであり得る。
【0236】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、「又は」は、上記で定義されているような「及び/又は」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、リスト内で項目を分離しているとき、「又は」又は「及び/又は」は、包含的である、すなわち、複数の要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上をも含み、また任意選択的に追加のリストされていない項目も含むものとして解釈されるべきである。「~のうちの1つのみ」もしくは「~のうちの正確に1つ」、又は、特許請求の範囲において使用されるとき、「~からなる」のように、明確に逆に指示されている用語だけは、複数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般的に、使用されているような「又は」という用語は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」又は「~のうちの正確に1つ」のような、排他性の用語が先行するときは、排他的な選択肢(すなわち「1方又は他方であり、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。「基本的に~からなる」は、特許請求の範囲において使用されるとき、特許法の分野において使用されるものとしての、その通常の意味を有するべきである。
【0237】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、1つ又は複数の要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的にリストされているあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に識別されている要素以外の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。したがって、非限定例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、もしくは、同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1実施形態においては、Bが存在せず、2つ以上のAを任意選択的に含む少なくとも1つのAを指し(また、任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aが存在せず、2つ以上のBを任意選択的に含む少なくとも1つのBを指し(また、任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態では、任意選択的に2つ以上のAを含む少なくとも1つのA、及び、任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つのBを指し得る(また、任意選択的に他の要素を含む)、などである。
【0238】
特許請求の範囲において、及び、上記の本明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「~から構成される」などのようなすべての移行句は、限定しないものである、すなわち、含むが、それに限定されないことを意味するものとして理解されるべきである。「~からなる」及び「基本的に~からなる」という移行句のみが、それぞれ限定的な又は半限定的な移行句であるべきである。
【0239】
特許請求の範囲は、その旨述べられていない限り、記載されている順序又は要素に限定されるものとして読み取られるべきではない。添付の特許請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって、形態及び詳細に様々な変更を行うことができることが理解されるべきである。以下の特許請求項の及びその均等物の精神及び範囲内に入るすべての実施形態が特許請求される。