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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】凝集砥粒
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20231128BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20231128BHJP
   B24D 3/14 20060101ALI20231128BHJP
   B24D 3/18 20060101ALI20231128BHJP
   B24D 3/32 20060101ALI20231128BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
B24D3/00 330A
B24D3/14
B24D3/18
B24D3/32
B24D3/00 320A
C04B35/111 500
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020532743
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084234
(87)【国際公開番号】W WO2019115476
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】102017130046.5
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】サヒン エルタン
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544736(JP,A)
【文献】特表2004-510873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0107412(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0052824(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0086848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24D 3/14
B24D 3/18
B24D 3/32
C09K 3/14
C04B 35/111
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機または有機バインダーマトリックス中に結合されている複数の個別の砥粒から構成された凝集砥粒であって、
前記バインダーマトリックス中に結合されている前記砥粒のうち、前記凝集砥粒の総質量に対して少なくとも8質量%の前記砥粒が、97質量%超のパーセンテージをアルファ-アルミナが占めている溶融アルミナベース多結晶アルミナ砥粒であり、前記多結晶アルミナ砥粒が、20μm~100μmの結晶サイズを有する複数のAl23一次結晶から構成されており、
細孔容積が5容積%~30容積%である閉マクロ気孔率を有し
閉マクロ孔の平均孔径が、10μm~100μmである、前記凝集砥粒。
【請求項2】
前記多結晶アルミナ砥粒に加え、個別のコンパクトモノリシック砥粒が前記バインダーマトリックス中に追加的に結合されている、請求項1に記載の凝集砥粒。
【請求項3】
前記個別のコンパクトモノリシック砥粒の平均粒度が、前記多結晶アルミナ砥粒の最大粒度と、前記多結晶砥粒中に存在する前記一次結晶の最小結晶サイズとの間にある、請求項2に記載の凝集砥粒。
【請求項4】
前記バインダーマトリックス中に追加的に結合されている前記個別のコンパクトモノリシック砥粒が、前記多結晶アルミナ砥粒中に存在する前記一次結晶の平均径に対応する平均径を有する、請求項2または3に記載の凝集砥粒。
【請求項5】
前記バインダーマトリックス中に追加的に結合されている前記個別のコンパクトモノリシック砥粒が、前記多結晶アルミナ砥粒中に存在する前記一次結晶の平均径に対応する20μm~100μmの平均径を有する、請求項2~4のいずれか1項記載の凝集砥粒
【請求項6】
追加の個別のモノリシック砥粒が占めるパーセンテージが、前記凝集砥粒の総質量に対して、5質量%~60質量%である、請求項2~のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【請求項7】
追加の個別のモノリシック砥粒が占めるパーセンテージが、前記凝集砥粒の総質量に対して、10質量%~60質量%である、請求項2~のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【請求項8】
追加の個別のモノリシック砥粒が占めるパーセンテージが、前記凝集砥粒の総質量に対して、15質量%~55質量%である、請求項2~7のいずれか1項に記載の凝集砥粒
【請求項9】
最大孔径が、120μm前後の範囲にある、請求項1~8のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【請求項10】
1容積%~15容積%の開気孔率を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【請求項11】
かさ密度が0.9g/cm3~1.8g/cm3である、請求項1~10のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【請求項12】
前記バインダーマトリックスが有機バインダーであり、前記凝集砥粒の開気孔率が3容積%未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【請求項13】
前記バインダーマトリックスが、アルミノシリケートとアルカリシリケートとを、Al23対SiO2のモル比1:2~1:20で含み、500°未満の温度で硬化されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【請求項14】
開気孔率が5容積%~15容積%である、請求項1~11及び13のいずれか1項に記載の凝集砥粒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機または有機バインダーマトリックス中に結合されている複数の個別の砥粒から構成された凝集砥粒(agglomerate abrasive grain)に関する。
【背景技術】
【0002】
凝集砥粒は、研削・研磨業界では以前から知られており、研削砥石(abrasive wheel)にも研磨ベルトにも使用されている。凝集砥粒は、所定の平均粒度(average grain size)を有する個別の砥粒が凝集したものであり、ここで個別の砥粒は、バインダーマトリックスによってまとまった状態で保持されている。無機または有機バインダーは結合剤として使用することができ、その場合、有機バインダーとしてはフェノール樹脂が使用されることが多く、一方、無機バインダーとしてはビトリファイドまたはセラミックス材料が使用される。
凝集砥粒の大きな利点は、微粉状の個別のコンパクト砥粒が、凝集砥粒を形成する元となる一次粒子として使用できることである。凝集砥粒は、複数の個別の結晶粒から成り、それら元の結晶粒と比較してかなり大きく、また、凝集砥粒と同程度のサイズを有する個別の結晶粒と比較した場合、研削プロセスでの摩耗メカニズムはまったく異なることが明らかになっている。
圧力条件に応じて、個別の結晶粒は、研削プロセス中に原理どおり切れ味が悪くなるかまたは砕けるが、凝集砥粒は選択が可能であり、特に、個別の摩耗した砥粒がバインダーマトリックスから脱落するとその下に位置する砥粒が使用されて常に新しい切刃が形成されるようにして使用することができる。そのため、このような凝集砥粒は、寿命が長く、低温研削(cool grinding)を特徴とし、均質で均一な表面研削パターンを生み出す。
【0003】
研磨材による表面の機械加工では、機械加工の対象となる材料、用いられる研削方法および所望の表面品質によって、研磨材に対してまったく異なる要求がなされる。そのため、異なる材料、例えば、木、金属、セラミックス、天然石または合成材料などの表面の機械加工には、やはり異なる研削条件および研磨材が求められ、それらをそれぞれの用途に個別に合わせる必要がある。
個別の砥粒を使用する場合には砥粒のタイプおよび砥粒のサイズしか変えることができないが、凝集砥粒を使用することにより、それぞれの用途に応じて凝集砥粒を最適化するためのさらなる選択肢が多数もたらされる。
【0004】
欧州特許出願公開第2174751号には、アルミノシリケートベースバインダーによりまとまった状態で保持されている微粉状の一次砥粒から構成された砥粒凝集物(abrasive grain agglomerate)が記載されている。ここで使用されている無機バインダーは450℃未満の温度で完全に硬化し、それにより並外れて高い強度の砥粒凝集物が形成される。この凝集物は、過酷な加工に耐え得る材料を高圧で研削するいくつかの用途の場合に大きな利点を有する。その高い強度のために、この砥粒凝集物は、穏やかな研削条件にはあまり適さない。
米国特許第4799939号には、バインダーと中空体とから構成されている被浸食性マトリックス中に配置されている個別の砥粒を含有する被浸食性凝集物が記載されている。この中空体は、好ましくは中空球であり、バインダーマトリックスを分解されやすくする機能を有する。この中空球はきわめて小さい径を有することから、できる限り多くの中空球をバインダーマトリックスに埋め込むことが可能である。バインダーとしては有機化合物が好ましくは使用される。
英国特許出願第2021626号には、砥粒造粒物であって、砥粒および細孔形成粒子が合成樹脂バインダーにてまとまった状態で保持されている砥粒造粒物が開示されている。この造粒物は420μm~2000μmの粒度を有するが、ここで、個別の砥粒は250μmより小さい粒度を有し15~40体積パーセントの量で加えられており、一方、細孔形成粒子は44μm~297μmのサイズを有し2~75体積パーセントの量で加えられている。バインダーが占めるパーセンテージは、10~50体積パーセントである。バインダーの体積が得られておりその値が固体粒子間の体積より有意に小さい場合には満足な結合もすでに実現されていることが示されたという事実から、完成した凝集体は、相互に連結している細孔のネットワークを有することができる。この開気孔率は、凝集体の総体積の50%まで達することができる。
【0005】
最後に言及した2つの文書によれば、比較的柔軟な砥粒凝集物が得られ、これらの砥粒凝集物は、穏やかな研削条件に、とりわけ、合成樹脂ボンドが好ましく使用される場合に、よく適している。
米国特許第6679782号には、結合研磨材における使用のための砥粒凝集物が記載されている。この砥粒凝集物は、このような方法で研磨材の気孔率、ひいては研磨効果に影響を及ぼすように、できる限り最大の開気孔率を有することが可能である。
米国特許出願公開第2015-0052824号には、個別の砥粒と中空体との混合物から構成されている砥粒凝集物が記載されている。ここでは、中空体が凝集砥粒に所望の閉気孔率をもたらしている。
【発明の概要】
【0006】
すでに述べたとおり材料および研削条件はさまざまに異なることから、表面の機械加工のための特別な研削作業に向けてさらに進化し最適化されている特別な凝集砥粒に対する需要は依然として大きい。
この目的の解決策を模索する過程では、とりわけ、研削プロセスに応じて凝集砥粒の気孔率および強度がその寿命およびその挙動に与える影響を考慮した。
本発明による凝集砥粒は、バインダーを介して結合された複数の個別の砥粒から構成されており、時間が経過しても良好な研削効率を有する(自生発刃)。
本発明の目的は、無機または有機バインダーマトリックス中に結合されている複数の個別の砥粒から構成された凝集砥粒であって、該マトリックス中に結合されている該砥粒のうち、該凝集砥粒の総質量に対して少なくとも8質量%の該砥粒が、97質量%超のパーセンテージをアルファ-アルミナが占めている溶融アルミナベース多結晶アルミナ砥粒である、凝集砥粒によって、究極的に解決される。該多結晶アルミナ砥粒については、20μm~100μmの結晶サイズを有する複数のAl23一次結晶から構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
規定の閉気孔率を有する凝集砥粒を得ようと試みていたところ、驚くべきことに、とりわけ肯定的な結果は、それぞれの凝集砥粒が多結晶砥粒から実質的に構成されている場合に実現でき、この多結晶砥粒は、その生成に起因して、一定の閉マクロ気孔率(closed macroporosity)をすでに有していることが見出された。多結晶砥粒は、欧州特許第2523906号による電気アーク炉でアルミナを融解させることにより生成される。
【0008】
このようにして、無機または有機バインダーマトリックス中に結合されている複数の個別の砥粒を含む凝集砥粒を得ることができる。ここで、該砥粒のうち、該凝集砥粒の総質量に対して少なくとも8質量%の該砥粒は、97質量%超のパーセンテージをアルファ-アルミナが占めている溶融アルミナベース多結晶アルミナ砥粒である。該多結晶アルミナ砥粒は、20μm~100μmの結晶サイズを有する複数のAl23一次結晶から構成されている。この凝集砥粒は、細孔容積が5容積%~30容積%の閉マクロ気孔率を有し、好ましくは、ここで、閉マクロ孔(closed macropore)の平均孔径は、10μm~100μm、好ましくは15μm~80μm、より好ましくは20μm~70μmであり、好ましくは、その最大孔径は、120μm前後の範囲(すなわち、約120μm)にある。使用されるバインダーの量およびタイプによっては、閉気孔に加え、一定のパーセンテージの開気孔を凝集砥粒に賦与することができる。したがって、本発明による凝集砥粒の好ましい一実施形態は、1容積%~15容積%の開気孔を追加で有する凝集砥粒を提供する。
【0009】
本開発の過程でテストした応用品について、開気孔率対閉気孔率の比は、有利には、1:1~1:10であるべきであることが見出された。このことは、研磨材中での凝集砥粒の結合を開孔中へのバインダー浸透によって改善する目的で高いパーセンテージの開気孔率が追求されることが多い事例において、先行技術によるコンパクトモノリシック砥粒(compact monolithic abrasive grain)から構成されている多くの公知の凝集砥粒に反している。しかし、ここで使用する多結晶アルミナ砥粒は不規則かつ起伏のある表面を有することから、研磨材のバインダーマトリックス中における良好な固定は自ずと確保される。凝集砥粒の開気孔率が高すぎると、使用するバインダーのタイプによっては、多結晶アルミナ砥粒が凝集砥粒中で十分強固に保持されないおそれがさらに高まる可能性がある。このことは、本発明の場合にはとりわけ決定的に重要である。その理由は、多結晶アルミナ砥粒は凝集砥粒中で特殊な摩耗メカニズムを発生させることが明らかであり、それにより、多結晶アルミナ砥粒を構成している個別の一次結晶が砥粒から脱落して新しい切刃が開放されるからである。これは、本発明による凝集砥粒で表面処理した場合に、結晶粒の摩耗を低く保ちながら驚くほど高度かつ平滑な材料除去がもたらされることを説明する。このメカニズムが発動できるようになるには、多結晶アルミナ砥粒自体が凝集砥粒中で強固に結合されていることが必要になる。
したがって、本発明による凝集砥粒の開気孔率は、バインダーマトリックスが、有機バインダー、例えばフェノール樹脂などをベースにしたものであるときは、好ましくは3容積%未満である。
【0010】
逆に、特定の無機バインダーを使用すれば開気孔率のパーセンテージは容易に高くすることができる。そのような無機バインダーは、いわゆるジオポリマーが形成されることにより並外れて緊密な結合を形成する、Al23対SiO2のモル比1:2~1:20でアルミノシリケートとアルカリシリケートとを含み、このとき、凝集砥粒の開気孔率は、好ましくは5容積%~15容積%である。
概して言えば、開気孔率と閉気孔率との合計は、凝集砥粒のかさ密度が0.9g/cm3~1.8g/cm3であるように選択された場合に有利であることがわかった。
【0011】
いくつかの応用品においては、自生発刃の開始は困難であり、せいぜい遅れて起きるか、またはまったく起きないかであることが示されている。このような事例においては、多結晶アルミナ砥粒に加え、個別のモノリシック砥粒がバインダーマトリックス中に追加的に結合された場合に有利であることが証明されている。このとき、個別のモノリシック砥粒の平均粒度は、好ましくは、多結晶アルミナ砥粒の最大粒度と、多結晶砥粒中に存在する一次結晶の最小結晶サイズとの間にある。
本発明のとりわけ有利な一実施形態において、バインダーマトリックス中に追加的に結合される個別のモノリシック砥粒の平均径は20μm~100μmであり、したがって、多結晶アルミナ砥粒中の一次結晶のサイズに対応する。機械加工の対象となる工作物の均質で平滑な表面は、このようにして確保することができる。
【0012】
追加的な個別のコンパクトモノリシック砥粒が占めるパーセンテージは、凝集砥粒の総質量に対して、好ましくは5質量%~60質量%、好ましくは10質量%~60質量%、より好ましくは15質量%~55質量%である。
本発明によれば、「個別のコンパクトモノリシック砥粒」とは、溶融されるプロセス、アルミナジルコニアによるか(ZK40などの結晶粒)、またはセラミックプロセスによるか、またはゾルゲル法などの化学的プロセスによるか(例えば、SGK2などの結晶粒)、そのいずれかにより生成される均質な結晶粒を意味することを本発明者らは意図している。
【0013】
閉気孔率は、好ましくは、多結晶砥粒の構成および量により調節することができる。開気孔率の調節は、使用するバインダーの量を通して主に行われる。
卓越して良好な研削結果は、凝集砥粒中の多結晶アルミナ砥粒の緊密な結合により説明できる。これにより、全体としての多結晶アルミナ砥粒は凝集砥粒から脱落することなく、多結晶アルミナ砥粒中の一次結晶が脱落して新しい切刃が形成されることが可能になる。緊密な結合の潜在的な欠点は、同じく全体としての凝集砥粒をわずかに柔軟にすると同時に自生発刃メカニズムを促進する閉マクロ気孔率により補われることは明らかである。研削プロセス中に開放されるこの細孔は、冷却潤滑剤と材料表面との直接的な接触を追加的にもたらすことができ、それにより、機械加工される材料の表面品質が改善される。
【0014】
本発明による凝集砥粒の有利な一実施形態は、20質量%~40質量%のバインダーマトリックスと、60質量%~80質量%の砥粒とを含む凝集砥粒を提供する。体積パーセントで表すと、凝集砥粒の有利な実施形態は、20体積%~70体積%のバインダーマトリックスと30体積%~80体積%の砥粒とを有し、ここでは、砥粒の体積パーセンテージには、閉マクロ孔の容積パーセンテージが含まれる。
すでに述べたモノリシック砥粒に加え、使用されるバインダーは、充填剤および/または研削補助剤を追加的に含むことができ、その目的のために、すべての公知の充填剤および研削補助剤、特に、以下の元素:ナトリウム、ケイ素、カリウム、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、マンガン、銅、亜鉛、鉄、チタン、アンチモンおよび/もしくはスズを含む群の、硫化物、リン塩、炭酸塩および/もしくはハロゲン化物、ならびに/または硫化物、リン酸塩、炭酸塩および/もしくはハロゲン化物含有錯化合物の群に由来する、すべての公知の充填剤および研削補助剤を使用することができる。
本発明による凝集砥粒は、好ましくは0.4~3.0mmの平均径を有し、一方、凝集砥粒中で互いに連結している個別の砥粒の平均粒度は、好ましくは30μm~1000μmである。
【実施例
【0015】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(例1)(比較例)
比較例1を調製するために、8kgの砥粒(ZPSK F150、Imerys)を、2.45kgのメタカオリン(PoleStar450、Imerys)と、インテンシブミキサー(RO1型、Eirich)で向流にて5分間混合した(300rpm)。続いて、水と水ガラスとの混合物(20部の水+80部のシリケートWoellner39T)2.45lを、790rpmにて1分以内にこの混合物に加えた。この液体を砥粒と均質に混合した後、造粒プロセスを200rpmにて開始し、凝集物のサイズが2~5mm前後に達するまで続けた。このようにして得られた凝集砥粒グリーン体をベルト乾燥機で125℃前後にて乾燥させた。凝集砥粒のグリーン体を乾燥させたものを粉砕し、1.2~1.7mmの結晶粒画分に分級し、次いで、ロータリーキルンで450℃にて硬化させた。
(例2)(比較例)
例2は例1と同じように調製したが、ここでは8kgのZPSK F60(Imerys)を砥粒として使用した。
(例3)(本発明実施例)
例3は例1と同じように調製し、ここでは8kgの多結晶アルミナ砥粒ZPTMX F60、Imerys製を使用した。
【0016】
研削テスト1(外筒式スルーフィード研削)
平均粒度1.2~1.7mmから成る凝集砥石造粒体(agglomerate abrasive granulation)は、上記の例1~例3に従って作製したものであるが、この造粒体から、外径50mmから成る鋼管1.4301(X5CrNi18-10;V2A)を研削する手段として用いる研磨ベルトを作製した。研磨ベルト用の支持体として、堅いポリエステル支持体を選択した。この研磨ベルトの寸法は、150mm×2500mmであった。研削は、切削スピード(Vc)30m/秒で行い、送り速度(Vf)は2~3m/分とした。粗さ値(Rz)を、研削作業の開始時点と、1回当たり10mのスループット6回実施後とで計測した。6回のスループットの後、6箇所の所定の計測ポイントにおける鋼管の平均径減少量を測定することにより、ベルトの摩耗量を同時に測定した。冷却潤滑剤としてエマルションを使用した。
【0017】
異なる粒度のコンパクトモノリシック砥粒から構成されている凝集砥粒を比較例1および比較例2に使用したが、ここで3つの例示的な造粒体すべての化学組成は同一であり、99質量%前後のα-アルミナと、わずかなパーセンテージの酸化チタンおよび酸化クロムから成る。平均粒度が70μmの砥粒、すなわち、多結晶アルミナ砥粒ZPTMX中の一次結晶の径に対応する平均径を有する砥粒は、FEPAに従うZPSK F150のものを選択した。例2では、モノリシック砥粒と多結晶アルミナ砥粒との直接的な比較のために、FEPAに従いZPSK F60を選択した。テストの結果を下記の表1に要約する。
【0018】
【表1】


上の表から推測できることは、異なる凝集砥粒から構成されている3種類の研磨ベルトの研磨性能(鋼管の平均径減少量)は互いにほぼ同程度ではあるが、凝集砥粒のベース結晶粒として粗目のコンパクトモノリシック砥粒ZPSK F60を備えるベルトの場合にやや利点が認められるということである。驚くべきことに、粗さ値については、小粒のモノリシック砥粒ZPSK 150(例1)を備える研磨ベルトの成績が最も悪い。最良の表面品質は、この試験においては本発明による凝集砥粒(例3)で得られており、粗さ値は4.8μmである。大きな差は、ベルト摩耗量に見出すことができる。21gという成績であった例3(本発明実施例)のベルトは、ベルト摩耗量が群を抜いて小さく、したがって研磨ベルトの寿命が最も優れていることになる。例3は、例1との比較では3倍の寿命を、例2との比較では2倍超の寿命を実現している。研磨ベルトの寿命という観点に立てば、本発明による凝集砥粒を用いることにより、大きな研磨性能が実現できるだけでなく同時に切替時間も短縮されることになり、このことは、研削プロセスの効率性のさらなる改善に関連する。例3による研磨ベルトを使用した際に工作物のわずかな発熱が測定されたが、このことから、凝集砥粒は、ポリエステル支持体上でかなり強固に結合されていること、および、多結晶アルミナ砥粒も凝集物中で強固に固定されており、おそらく耐摩耗性もモノリシック砥粒より有意に高いことが示唆される。しかし、熱の発生は致命的なものではまったくなかったことから、工作物に対する損傷を危惧する必要はなかった。
(例4)(比較例)
例4は例1と同じように調製したが、ここでは砥粒として8kgのZK40 F150(アルミナジルコニア、Imerys製)を使用した。
(例5)(本発明実施例)
例5は例1と同じように調製したが、ここでは砥粒として4kgのZK40 F150と4kgのZPTMX F60(多結晶アルミナ砥粒)との混合物を使用した。
(例6)(本発明実施例)
例6は例1と同じように調製したが、ここでは砥粒として1.6kgのSGK2 F150(ゾルゲルコランダム、Imerys製)と6.4kgのZPTMX F60(多結晶アルミナ砥粒)との混合物を使用した。
【0019】
研削テスト2(対向平面研削(counter direction flat grinding))
寸法50mm×5mm×2.000mmから成る平鋼1.4301(X5CrNi18-10;V2A)を研削する際に用いた研磨ベルトは、上記の例3~例6に従って作製した平均粒度1.2~1.7mmの凝集砥粒から作製した。この目的のために、3つの工作物をつなぎ合わせたため、全体で総幅150mmの平鋼を研削した。研削テスト1の場合と同様に、研磨ベルト用の支持体として、堅いポリエステル支持体を選択した。この研削ベルトの長さは3.000mmであり、ベルト幅は200mmであった。研削テスト1の場合と同様に、冷却潤滑剤としてエマルションを使用した。テストに際しては、ベルトのコンディショニングのために3回の研削サイクルを最初に行った(較正およびグラインディング・イン(grinding in))。30回の研削サイクルの後、研磨性能、粗さ値およびベルト摩耗量をそのつど引き続き測定した。
【0020】
比較例4については、平均粒度が70μmの、FEPAに従うグリットサイズF150を有するコンパクトモノリシックアルミナジルコニア砥粒、すなわち、多結晶アルミナ砥粒ZPTMX中の一次結晶の径に対応する平均径を有する砥粒から構成されている凝集砥粒を使用した。アルミナジルコニアは、自生発刃することから、高い研磨性能を有することで知られている。本発明による例5のためにはアルミナジルコニアZK40 F150とZPTMX F60との50:50比での混合物を選択し、同じく本発明に従う例6のためにはゾルゲルコランダムSGK2 F150とZPTMX F60との20:80比での混合物を選択した。ゾルゲルコランダムは、高い靭性および耐摩耗性を有することから選択した。加えて、専ら多結晶アルミナ砥粒から構成した凝集砥粒(例3)を備えるベルトは、研削テスト2においても選択した。テスト結果を下記の表2に要約する。
【0021】
【表2】
【0022】
表2から推測できることは、砥粒の混合物を含む凝集砥粒の事例では、異なる凝集砥粒を用いた研削ベルトの研磨性能は大体同程度ではあるが、凝集砥粒中にゾルゲル砥粒を含むベルトの事例(例6)において小さな優位性が認められるということである。粗さ値については、多結晶アルミナ砥粒ZPTMXを専ら含有する研削ベルト(例3)の成績が最も良い。この点に関しては、とりわけ、ゾルゲルコランダムとの混合物を用いた事例(例6)に不利が認められる。そしてまた、ベルト摩耗量には大きな差を見出すことができる。驚くべきことに、砥粒混合物を用いた凝集砥粒を備える2種類のベルト(例5および例6)は、多結晶アルミナ砥粒を専ら含有する凝集砥粒を備えるベルトよりベルト摩耗量が小さいことがわかる。比較例4を用いたベルトは、アルミナジルコニアF150から専ら構成されている凝集砥粒の事例であり、ベルト摩耗量は群を抜いて大きい。本発明による例3、例5および例6は、いずれの場合も、先行技術を代表する比較例4のベルトに比して2倍超の寿命を実現している。研磨ベルトの寿命という観点に立てば、この応用品の場合においても、本発明による凝集砥粒を用いることにより、従来の凝集砥粒に比して有意に高い研磨性能が実現できる。したがって、多結晶アルミナ砥粒との砥粒混合物を含む凝集砥粒の場合は切替時間をさらに短縮できることになり、このことは研削プロセスの効率性のさらなる改善に関連する、ということにも注目できる。
【0023】
上に詳述した実施例は、本発明を説明することを意図したものであるにすぎず、決して、限定とみなされるべきではない。本発明者によるさらなる分析から、他の砥粒タイプを用いた混合物および他の粒度を用いた混合物から構成されている凝集砥粒は、凝集砥粒の一定のパーセンテージを多結晶アルミナ砥粒が占める限りは、従来の凝集砥粒と比較して有利であることが示されている。これにより、本発明の凝集砥粒は、凝集砥粒の総質量に対して少なくとも8質量%の多結晶アルミナ砥粒を含有すべきである、ということが限定要件として見出された。