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▶ オーリス ヘルス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】滑車共有を組み込んだ医療システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20231128BHJP
【FI】
A61B34/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020569746
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 US2019038770
(87)【国際公開番号】W WO2020005854
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】62/691,374
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シュー・トラヴィス・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウッドリー・ブルース・アール
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043969(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0016853(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0011901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具であって、
複数の運動度を有する外科用エフェクタと、
前記外科用エフェクタに連結されたリストであって、少なくとも第1の滑車を含むリストと、
前記外科用エフェクタを前記複数の運動度で作動させるために、前記リストを通って前記外科用エフェクタまで延びる少なくとも2つのケーブルセグメントであって、前記第1の滑車の両側に係合し、かつ互いに独立している少なくとも2つのケーブルセグメントと、
を備え
前記第1の滑車は、近位の滑車セットの一部であり、
前記外科用器具は、前記近位の滑車セットに対して遠位の滑車セットを更に備え、
前記少なくとも2つのケーブルセグメントに係合して前記少なくとも2つのケーブルセグメントを方向づけする1つ以上の方向転換面が、前記近位の滑車セットと前記遠位の滑車セットとの間に形成され、
前記近位の滑車セットは、ピッチ軸を中心にして回転し、
前記遠位の滑車セットは、ヨー軸を中心にして回転し、
前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに交差しないように構成され、前記近位の滑車セットの両側および前記遠位の滑車セットの両側に前進可能および後退可能に係合される外科用器具。
【請求項2】
前記第1の滑車の両側に係合する前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、同じケーブルの一部ではない、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記第1の滑車の両側に係合する前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立して移動可能である、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記第1の滑車の両側に係合する前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立して作動可能である、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記外科用エフェクタの前記複数の運動度は、ピッチ軸を中心にした回転を含み、前記第1の滑車も前記ピッチ軸を中心にして回転する、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記外科用エフェクタは、前記リストを通って前記外科用エフェクタまで延びるN+1つのケーブルセグメントによって制御される、少なくともNの運動自由度を有する、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記外科用エフェクタは少なくとも3の運動度を有し、前記外科用器具は少なくとも4つのケーブルセグメントを含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記3の運動度は、前記外科用エフェクタの第1のヨー角、第2のヨー角、及びピッチ角を含む、請求項7に記載の外科用器具。
【請求項9】
前記リストは、前記外科用エフェクタのピッチ軸に沿って位置合わせされた少なくとも2つの滑車を前記近位の滑車セットとして含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記少なくとも2つの滑車は、互いに隣接して位置付けされている、請求項9に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記少なくとも2つの滑車は、互いに離間しており、前記リストの中心軸からオフセットされている、請求項9に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記少なくとも2つの滑車は、前記ピッチ軸と位置合わせされた前記リスト内の唯一の滑車である、請求項9に記載の外科用器具。
【請求項13】
前記1つ以上の方向転換面は静止している、請求項に記載の外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/691374号の利益を主張するものであり、当該仮特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に開示されるシステム及び方法は、ロボット医療システムに関し、具体的には、改善されたリスト構成を有するロボット医療システムに関する。
【背景技術】
【0003】
腹腔鏡検査などの医療処置は、患者の内部領域にアクセスし、それを可視化することを伴う場合がある。腹腔鏡処置では、腹腔鏡アクセスポートを通して医療器具を内部領域に挿入することができる。
【0004】
特定の処置においては、ロボット制御可能な医療システムを使用して、器具及びエンドエフェクタの挿入及び/又は操作を制御することができる。ロボット制御可能な医療システムは、ロボットアーム又は任意の他の器具位置付けデバイスを含んでもよい。ロボット制御可能な医療システムは、処置中の器具の位置付けを制御するために使用されるコントローラも含んでもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、外科用器具は、複数の運動度を有する外科用エフェクタと、外科用エフェクタに連結されたリストであって、少なくとも第1の滑車を含むリストと、外科用エフェクタを複数の運動度で作動させるために、リストを通って外科用エフェクタまで延びる少なくとも2つのケーブルセグメントであって、少なくとも2つのケーブルセグメントは、第1の滑車の両側に係合する、少なくとも2つのケーブルセグメントと、を備える。少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立している。
【0006】
外科用器具は、以下の機構の1つ以上を任意の組み合わせで更に含むことができる:(a)外科用エフェクタの複数の運動度が、ピッチ軸を中心にした回転を含み、第1の滑車もピッチ軸を中心にして回転する、
(b)外科用エフェクタは、リストを通って外科用エフェクタまで延びるN+1つのケーブルセグメントによって制御される、少なくともNの運動自由度を有する、(c)外科用エフェクタは少なくとも3の運動度を有し、外科用システムは少なくとも4つのケーブルセグメントを含む、(d)3の運動度は、外科用エフェクタの第1のヨー角、第2のヨー角、及びピッチ角を含む、(e)リストは、外科用エフェクタのピッチ軸に沿って位置合わせされた少なくとも2つの滑車を含む、(f)少なくとも2つの滑車は、互いに隣接して位置付けされる、(g)少なくとも2つの滑車は、互いに離間しており、リストの中心軸からオフセットされている、(h)少なくとも2つの滑車は、ピッチ軸と位置合わせされたリスト内の唯一の滑車である、(i)第1の滑車は、近位の滑車セットの一部である、(j)外科用器具は、近位の滑車セットに対して遠位の滑車セットを更に備える、(k)1つ以上の方向転換面は、近位の滑車セットと遠位の滑車セットとの間に形成される、(l)第1の滑車の両側に係合する少なくとも2つのケーブルセグメントは、同じケーブルの一部ではない、(m)第1の滑車の両側に係合する少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立して運動可能である、(n)第1の滑車の両側に係合する少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立して作動可能であり、及び/又は(o)1つ以上の方向転換面は静止している。
【0007】
別の態様では、外科用器具は、ピッチ軸を中心にして回転する第1の滑車と、少なくとも2の運動自由度を有する外科用エフェクタと、ピッチ軸を中心にした回転を含む運動度のうちの1つと、少なくとも2の運動自由度で外科用エフェクタを作動させるためにリストを通って延びる少なくとも第1のケーブルセグメント及び第2のケーブルセグメントであって、第1のケーブルセグメント及び第2のケーブルセグメントは両方とも第1の滑車に係合する、第1のケーブルセグメント及び第2のケーブルセグメントと、を備えるリストを備える。第1のケーブル及び第2のケーブルは、互いに独立している。
【0008】
1つ以上の滑車を含むリストと、Nの運動度を有する外科用エフェクタであって、Nの運動度のうちの少なくとも1つは、リストを通って延びるピッチ軸を中心にした回転を含む、外科用エフェクタと、を備え、少なくともN+1つのケーブルセグメントは、リストを通って延びて、外科用エフェクタをNの運動度で作動させ、N+1つのケーブルセグメントのうちの少なくとも2つは、リスト内の滑車のうちの1つを共有する。
【0009】
外科用器具は、任意の組み合わせで以下の機構のうちの1つ以上を更に含んでもよい:(a)リストは遠位クレビス及び近位クレビスを含む、(b)1つ以上の滑車は、第1の滑車セットの一部であり、リストは、第1の滑車セットの遠位に配置された第2の滑車セットを含む、(c)リストの遠位クレビスは、第1の滑車セットと第2の滑車セットとの間に方向転換面を含み、及び/又は(d)方向転換面は静止面である。
【0010】
別の態様では、外科用システムは、ロボットアームと、ロボットアームに連結された外科用エフェクタと、複数の運動度を有する外科用エフェクタと、外科用エフェクタとロボットアームとの間に位置付けられたリストと、を備え、リストは、少なくとも第1の滑車と、リストを通って外科用エフェクタまで延びる少なくとも2つのケーブルセグメントと、を含み、少なくとも2つのケーブルセグメントは、第1の滑車の両側に係合する。少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立している。
【0011】
別の態様では、外科用システムは、外科用エフェクタと、外科用エフェクタに連結されたリストであって、リストは近位クレビス及び遠位クレビスを備え、遠位クレビスは1つ以上の静止方向転換面を備える、リストと、外科用エフェクタを作動させるために、リストを通って外科用エフェクタまで延びる少なくとも2つのケーブルセグメントであって、遠位クレビス内の1つ以上の静止方向転換面に係合する少なくとも2つのケーブルセグメントと、を備える外科用器具、を備える。
【0012】
外科用システムは、任意の組み合わせで以下の機構のうちの1つ以上を更に含んでもよい:(a)外科用器具は、近位クレビス内の1つ以上の滑車と、遠位クレビス内の1つ以上の滑車を更に備える、(b)静止方向転換面は、近位クレビス内の1つ以上の滑車と遠位クレビス内の1つ以上の滑車との間に位置付けされる、(c)遠位クレビス内の1つ以上の静止方向転換面は、スロットの外周を形成する1つ以上の表面の一部であり、及び/又は(d)外科用器具は、近位クレビス内に1つ以上の静止方向転換面を更に備える。
【0013】
別の態様では、複数の運動度で外科用エフェクタを作動させる方法であって、その方法は、(i)外科用エフェクタに連結されたリスト内の第1の滑車の第1の側の周りに延びる第1のケーブルセグメントを前進又は後退させて、外科用エフェクタを第1の運動度で作動させることと、(ii)第1の滑車の第2の側の周りに延びる第2のケーブルセグメントを前進又は後退させて、外科用エフェクタを第2の運動度で作動させることと、を含む。
【0014】
その方法は、第1のケーブルセグメントを前進又は後退させることによって、かつ第2の滑車セグメントを前進又は後退させることによって、第1の滑車の軸を通って延びるピッチ軸を中心にして外科用エフェクタを回転させることを更に含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
開示される態様は、以下、添付の図面と併せて説明され、開示された態様を例示するが、限定するものではなく、同様の指定は同様の要素を示す。
図1】診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置(複数可)のために配置されたカートベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図2図1のロボットシステムの更なる態様を描写する。
図3】尿管鏡検査のために配置された図1のロボットシステムの実施形態を示す。
図4】血管処置のために配置された図1のロボットシステムの実施形態を示す。
図5】気管支鏡検査処置のために配置されたテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図6図5のロボットシステムの代替的な図である。
図7】ロボットアーム(複数可)を格納するように構成された例示的なシステムを示す。
図8】尿管鏡検査処置のために構成されたテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図9】腹腔鏡処置のために構成されたテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図10】ピッチ又は傾斜調節を備えた図5図9のテーブルベースのロボットシステムの実施形態を示す。
図11図5図10のテーブルベースのロボットシステムのテーブルとカラムとの間のインターフェースの詳細な例示を提供する。
図12】テーブルベースのロボットシステムの代替的実施形態を示す。
図13図12のテーブルベースのロボットシステムの端面図を示す。
図14】ロボットアームが取り付けられた、テーブルベースのロボットシステムの端面図を示す。
図15】例示的な器具ドライバを示す。
図16】対の器具ドライバを備えた例示的な医療器具を示す。
図17】駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸に対して平行である、器具ドライバ及び器具の代替的な設計を示す。
図18】器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具を示す。
図19】例示的なコントローラを示す。
図20】例示的な実施形態による、図16図18の器具の位置など、図1図10のロボットシステムの1つ以上の要素の位置を推定する位置特定システムを示すブロック図である。
図21】外科器具の側面図を示す。
図22】外科用器具の一態様の斜視図を示す。
図23A図22に示した外科用器具の外科用リストの斜視図を示す。
図23B図22に示した外科用器具の外科用リストの別の斜視図である。
図23C】ヨー軸を中心にした2つの鉗子半体の回転を示す、図22の外科用器具の斜視図を示す。
図23D】ピッチ軸を中心にした外科用エフェクタの回転を示す、図22の外科用器具の斜視図を示す。
図24A】ケーブルセグメントと近位及び遠位滑車との間の相互作用を示す、N+1のリストを共有する滑車の実施形態の側面図を示す。
図24B】ケーブルセグメントと近位及び遠位クレビスとの間の相互作用を示す、N+1のリストを共有する滑車の実施形態の側面図を示す。
図25A】N+1のリストを共有する滑車の遠位クレビスの上面斜視図を示す。
図25B】複数のケーブルセグメントが貫通して延びる、図25Aの遠位クレビスの上面図を示す。
図25C】複数のケーブルセグメントが貫通して延びる、図25Aの遠位クレビスの上面斜視図を示す。
図26A】N+1のリストを共有する滑車の近位クレビスの上面図を示す。
図26B】近位クレビスを通って延びる複数のケーブルセグメントを有する、図26Aの近位クレビスの上面図を示す。
図26C図26Aの近位クレビスの側面図、及びN+1のリストを共有する滑車の実施形態の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.概論
本開示の態様は、腹腔鏡などの低侵襲性、及び内視鏡などの非侵襲性の両方の処置を含む、様々な医療処置を行うことができるロボット制御可能な医療システムに統合され得る。内視鏡処置のうち、システムは、気管支鏡検査、尿管鏡検査、胃鏡検査などを行うことができる。
【0017】
幅広い処置を実行することに加えて、システムは、医師を支援するための強調された撮像及び誘導などの追加の利益を提供することができる。更に、システムは、厄介なアーム運動及び位置付けを必要とせずに、人間工学的位置付けから処置を行う能力を医師に提供することができる。また更に、システムは、システムの器具のうちの1つ以上が単一のユーザによって制御され得るように、改善された使いやすさで処置を行う能力を医師に提供することができる。
【0018】
以下、説明を目的として、図面と併せて、様々な実施形態を説明する。開示された概念の多くの他の実施態様が可能であり、開示された実施態様で様々な利点が達成され得ることを理解されたい。見出しが、参照のために本明細書に含まれ、様々なセクションの位置を特定する支援となる。これらの見出しは、それに関して説明される概念の範囲を限定することを意図するものではない。そのような概念は、本明細書全体にわたって適用可能性を有することができる。
【0019】
A.ロボットシステム-カート
ロボット制御可能な医療システムは、特定の処置に応じて様々な方法で構成され得る。図1は、診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置のために配置されたカートベースのロボット制御可能なシステム10の実施形態を示す。気管支鏡検査中、システム10は、気管支鏡検査のための処置特有の気管支鏡であり得る操縦可能な内視鏡13などの医療器具を、診断及び/又は治療用具を送達するための自然オリフィスアクセスポイント(すなわち、本実施例ではテーブル上に位置付けられた患者の口)に送達するための1つ以上のロボットアーム12を有するカート11を備えることができる。図示のように、カート11は、アクセスポイントへのアクセスを提供するために、患者の上部胴体に近接して位置付けることができる。同様に、ロボットアーム12は、アクセスポイントに対して気管支鏡を位置付けるために作動させてもよい。図1の配置は、胃腸管(GI)処置を、GI処置のための特殊な内視鏡である胃鏡を用いて実行するときにも利用してもよい。図2は、カートの例示的な実施形態をより詳細に描画する。
【0020】
図1を引き続き参照すると、一旦カート11が適切に位置付けられると、ロボットアーム12は、操縦可能な内視鏡13をロボットで、手動で、又はそれらの組み合わせで患者内に挿入することができる。図示のように、操縦可能な内視鏡13は、内側リーダ部分及び外側シース部分などの少なくとも2つの入れ子式部品を備えてもよく、各部分は、器具ドライバのセット28から別個の器具ドライバに連結され、各器具ドライバは、個々のロボットアームの遠位端部に連結されている。リーダ部分をシース部分と同軸上に整列させるのを容易にする器具ドライバ28のこの直線配置は、1つ以上のロボットアーム12を異なる角度及び/又は位置に操作することによって空間内に再位置付けされ得る「仮想レール」29を作成する。本明細書に記載される仮想レールは、破線を使用して図に示されており、したがって破線は、システムの物理的構造を示さない。仮想レール29に沿った器具ドライバ28の並進は、外側シース部分に対して内側リーダ部分を入れ子にするか、又は内視鏡13を患者から前進又は後退させる。仮想レール29の角度は、臨床用途又は医師の好みに基づいて調節、並進、及び枢動させられてもよい。例えば、気管支鏡検査では、図示の仮想レール29の角度及び位置は、内視鏡13を患者の口内に曲げ入れることによる摩擦を最小限に抑えながら内視鏡13への医師のアクセスを提供する妥協案を表す。
【0021】
内視鏡13は、対象の目的地又は手術部位に到達するまで、ロボットシステムからの正確なコマンドを使用して挿入後に患者の気管及び肺の下方に指向されてもよい。患者の肺網を通したナビゲーションを高め、及び/又は所望の標的に到達するために、内視鏡13を操縦して、内側リーダ部分を外側シース部分から入れ子状に延ばして、高められた関節運動及びより大きな曲げ半径を得てもよい。別個の器具ドライバ28の使用により、リーダ部分及びシース部分が互いに独立して駆動することも可能になる。
【0022】
例えば、内視鏡13は、例えば、患者の肺内の病変又は小結節などの標的に生検針を送達するように指向させされてもよい。針は、内視鏡の長さにわたる作業チャネルの下方に配置して、病理医によって分析される組織サンプルを得てもよい。病理の結果に応じて、追加の生検のために追加のツールが内視鏡の作業チャネルの下方に配置されてもよい。小結節を悪性と特定した後、内視鏡13は、潜在的な癌組織を切除するために器具を内視鏡的に送達してもよい。場合によっては、診断及び治療的処置は、別々の手順で提供することができる。これらの状況において、内視鏡13は、標的小結節の位置を「マーク」するために基準を送達するためにも使用されてもよい。他の例では、診断及び治療的処置は、同じ処置中に送達されてもよい。
【0023】
システム10は、カート11に支持ケーブルを介して接続されて、カート11への制御、電子機器、流体工学、光学系、センサ、及び/又は電力のためのサポートを提供し得る移動可能なタワー30も含んでもよい。タワー30内にそのような機能を置くことにより、動作を行う医師及びそのスタッフがより容易に調節及び/又は再位置付けすることができるより小さいフォームファクタのカート11が可能となる。更に、カート/テーブルと支持タワー30との間の機能の分割は、手術室の乱雑さを低減し、臨床ワークフローの改善を促進する。カート11は患者に近接して位置付けされてもよいが、タワー30は、処置中に邪魔にならないように遠隔位置に格納されてもよい。
【0024】
上述のロボットシステムのサポートにおいて、タワー30は、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内にコンピュータプログラム命令を記憶するコンピュータベースの制御システムの構成要素(複数可)を含んでもよい。これらの命令の実行は、実行がタワー30内で行われるのか又はカート11で行われるのかにかかわらず、そのシステム又はサブシステム(複数可)全体を制御してもよい。例えば、コンピュータシステムのプロセッサによって実行されるときに、命令は、ロボットシステムの構成要素に、関連するキャリッジ及びアームマウントを作動させ、ロボットアームを作動させ、医療器具を制御させてもよい。例えば、制御信号を受信したことに応答して、ロボットアームの関節内のモータは、アームを特定の姿勢に位置付けしてもよい。
【0025】
タワー30は、内視鏡13を通して配置することができるシステムに、制御された灌注及び吸引機能を提供するために、ポンプ、流量計、弁制御、及び/又は流体アクセスも含むことができる。これらの構成要素は、タワー30のコンピュータシステムも使用して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、灌注及び吸引能力は、別個のケーブル(複数可)を通して内視鏡13に直接送達されてもよい。
【0026】
タワー30は、フィルタリングされ、保護された電力をカート11に提供するように設計された電圧及びサージ保護具を含んでもよく、それによって、カート11内に電力変圧器及び他の補助電力構成要素を配置することが回避され、カート11はより小さく、より移動可能になる。
【0027】
タワー30は、ロボットシステム10全体に配置されたセンサのための支持機器も含んでもよい。例えば、タワー30は、ロボットシステム10を通して光センサ又はカメラから受信したデータを検出、受信、及び処理するためのオプトエレクトロニクス機器を含んでもよい。制御システムと組み合わせて、そのようなオプトエレクトロニクス機器は、タワー30内を含むシステム全体に配置された任意の数のコンソール内に表示するためのリアルタイム画像を生成するように使用されてもよい。同様に、タワー30は、配置された電磁(EM)センサから受信した信号を受信及び処理するための電子サブシステムも含んでもよい。タワー30は、医療器具内又は医療器具上のEMセンサによる検出のためにEM場発生器を収容し、位置付けするためにも使用されてもよい。
【0028】
タワー30は、システムの残りの部分で利用可能な他のコンソール、例えば、カートの上部に装着されたコンソールに追加して、コンソール31も含んでもよい。コンソール31は、医師オペレータのためのユーザインターフェース及びタッチスクリーンなどの表示画面を含んでもよい。システム10内のコンソールは、一般に、ロボット制御、並びに内視鏡13のナビゲーション情報及び位置特定情報などの処置の術前及びリアルタイム情報の両方を提供するように設計される。コンソール31が医師に利用可能な唯一のコンソールではない場合、コンソール31は、看護師などの第2のオペレータによって使用されて、患者の健康又は生命及びシステムの動作を監視し、並びにナビゲーション及び位置特定情報などの処置固有のデータを提供することができる。その他の実施形態では、コンソール30は、タワー30とは別個の本体内に収容される。
【0029】
タワー30は、1つ以上のケーブル又は接続(図示せず)を介してカート11及び内視鏡13に連結されてもよい。いくつかの実施形態では、タワー30からの支持機能は、単一ケーブルを通してカート11に提供されることにより、手術室を簡略化し、整理整頓することができる。他の実施形態では、特定の機能は、別個のケーブリング及び接続で連結されてもよい。例えば、単一の電力ケーブルを通してカートに電力が供給されてもよい一方、制御、光学、流体工学、及び/又はナビゲーションのためのサポートは、別個のケーブルを通して提供されてもよい。
【0030】
図2は、図1に示されるカートベースのロボット制御可能なシステムからのカートの実施形態の詳細な図を提供する。カート11は、概して、細長い支持構造14(「カラム」と呼ばれることが多い)、カートべース15、及びカラム14の頂部にあるコンソール16を含む。カラム14は、1つ以上のロボットアーム12(図2には3つ示されている)の配置を支持するためのキャリッジ17(代替的に「アーム支持体」)などの1つ以上のキャリッジを含んでもよい。キャリッジ17は、患者に対してより良好に位置付けするために垂直軸に沿って回転させてロボットアーム12のベースを調節する、個別に構成可能なアームマウントを含んでもよい。キャリッジ17は、キャリッジ17がカラム14に沿って垂直方向に並進することを可能にするキャリッジインターフェース19も含む。
【0031】
キャリッジインターフェース19は、キャリッジ17の垂直方向の並進を案内するためにカラム14の両側に位置付けされたスロット20などのスロットを通してカラム14に接続されている。スロット20は、カートベース15に対して様々な垂直方向の高さでキャリッジを位置付け及び保持するための垂直方向の並進インターフェースを含む。キャリッジ17の垂直方向の並進により、カート11は、様々なテーブルの高さ、患者のサイズ、及び医師の好みを満たすようにロボットアーム12のリーチを調節することが可能となる。同様に、キャリッジ17上の個別に構成可能なアームマウントにより、ロボットアーム12のロボットアームベース21を様々な構成で角度付けすることが可能となる。
【0032】
いくつかの実施形態では、キャリッジ17が垂直方向に並進する際にカラム14の内部チャンバ及び垂直方向の並進インターフェース内に汚れ及び流体が侵入するのを防止するために、スロット20には、スロット表面と同一平面及び平行であるスロットカバーが追加されてもよい。スロットカバーは、スロット20の垂直方向の頂部及び底部付近に位置付けされたばねスプールの対を通じて配置されてもよい。カバーは、スプール内でコイル巻きにされており、キャリッジ17が垂直方向に上下に並進して初めて配置して、それらのコイル状態から延伸及び後退する。スプールのばね荷重は、キャリッジ17がスプールに向かって並進するときにカバーをスプール内に後退させるための力を提供する一方で、キャリッジ17がスプールから離れるように並進するときに密封も維持する。カバーは、キャリッジ17が並進する際にカバーが適切に延伸及び後退するのを確実にするために、例えば、キャリッジインターフェース19内のブラケットを使用してキャリッジ17に接続されてもよい。
【0033】
カラム14は、例えば、コンソール16からの入力などのユーザ入力に応答して生成された制御信号に応答してキャリッジ17を機械的に並進させるために垂直方向に整列した主ねじを使用するように設計された、歯車及びモータなどの機構を内部に含んでもよい。
【0034】
ロボットアーム12は、一般に、一連の関節24によって接続されている一連の連結部23によって分離されたロボットアームベース21及びエンドエフェクタ22を備えてもよく、各関節は独立したアクチュエータを備え、各アクチュエータは、独立して制御可能なモータを備える。それぞれ独立して制御可能な関節は、ロボットアームが利用可能な独立した自由度を表す。アーム12の各々は、7つの関節を有し、したがって、7つの自由度を提供する。多数の関節は、多数の自由度をもたらし、「冗長」自由度を可能にする。冗長自由度は、ロボットアーム12が、異なる連結位置及び関節角度を使用して空間内の特定の位置、向き、及び軌道で、それらのそれぞれのエンドエフェクタ22を位置付けすることを可能にする。これにより、システムが空間内の所望のポイントから医療器具を位置付け及び指向させることが可能になると同時に、医師がアーム関節を患者から離れる臨床的に有利な位置へと移動させて、アームの衝突を回避しながらよりよいアクセスを生み出すことを可能にする。
【0035】
カートベース15は、床の上のカラム14、キャリッジ17、及びアーム12の重量の釣り合いをとる。したがって、カートベース15は、電子機器、モータ、電源、並びにカートの移動及び/又は固定化のいずれかを可能にする構成要素などの、より重い部品を収容する。例えば、カートベース15は、処置前にカートが部屋中をあちこちに容易に移動することを可能にする、転動可能なホイール形状のキャスタ25を含む。適切な位置に到達した後、キャスタ25は、処置中にカート11を定位置に保持するためのホイールロックを使用して静止させられてもよい。
【0036】
カラム14の垂直方向の端部に位置付けされたコンソール16は、ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース及び表示画面(又は、例えば、タッチスクリーン26などの二重目的デバイス)の両方を可能にして、術前データ及び術中データの両方を医師であるユーザに提供する。タッチスクリーン26上の潜在的な術前データは、術前計画、術前コンピュータ断層撮影(CT)スキャンから導出されたナビゲーション及びマッピングデータ、及び/又は術前の患者への問診からのメモを含んでもよい。ディスプレイ上の術中データは、ツールから提供される光学情報、センサからのセンサ及び座標情報、及び呼吸、心拍数、及び/又はパルスなどの不可欠な患者統計を含んでもよい。コンソール16は、医師が、キャリッジ17の反対側のカラム14側からコンソールにアクセスすることを可能にするように位置付けされ、傾斜がつけられてもよい。この位置から、医師は、コンソール16をカート11の背後から操作しながら、コンソール16、ロボットアーム12、及び患者を見ることができる。図示のように、コンソール16は、カート11の操作及び安定化を支援するハンドル27も含む。
【0037】
図3は、尿管鏡検査のために配置されたロボット制御可能なシステム10の一実施形態を示す。尿管鏡検査処置では、カート11は、患者の尿道及び尿管を横断するように設計された処置専用内視鏡である尿管鏡32を患者の下腹部領域に送達するように位置付けされてもよい。尿管鏡検査では、尿管鏡32が患者の尿道と直接整列して、領域内の敏感な解剖学的構造に対する摩擦及び力を低減することが望ましいことがある。図示のように、カート11は、テーブルの脚部に位置合わせして、ロボットアーム12が、尿管鏡32を、患者の尿道に直接直線状にアクセスするように位置付けすることができる。テーブルの脚部から、ロボットアーム12は、尿道を通して患者の下腹部に直接、仮想レール33に沿って尿管鏡32を挿入してもよい。
【0038】
気管支鏡検査におけるのと同様の制御技法を使用して尿道に挿入した後、尿管鏡32は、診断及び/又は治療用途のために、膀胱、尿管、及び/又は腎臓にナビゲートされてもよい。例えば、尿管鏡32を尿管や腎臓に向けて、尿管鏡32の作動チャンネルの下方に配置されたレーザ又は超音波結石破砕デバイスを用いて、腎臓結石の蓄積を破砕することができる。結石破砕術が完了した後、得られた結石片は、尿管鏡32の下方に配置されたバスケットを使用して除去されてもよい。
【0039】
図4は、血管処置のために同様に配されたロボット制御可能なシステムの一実施形態を示す。血管処置において、システム10は、カート11が、操縦可能なカテーテルなどの医療器具34を、患者の脚内の大腿動脈内のアクセスポイントに送達することができるように構成され得る。大腿動脈は、ナビゲーションのためのより大きな直径と、ナビゲーションを簡素化する、患者の心臓への、遠回りが比較的少ない曲がりくねった経路の両方を示す。尿管鏡処置のように、カート11は、患者の脚及び下腹部に向けて位置付けして、ロボットアーム12が患者の大腿/腰領域内の大腿動脈アクセスポイントへの直接的な線形アクセスで仮想レール35を提供することを可能にしてもよい。動脈内への挿入後、器具ドライバ28を並進させることによって医療器具34が指向され、挿入されてもよい。代替的には、カートは、例えば、肩及び手首付近の頚動脈及び腕動脈などの代替的な血管アクセスポイントに到達するために、患者の上腹部の周囲に位置付けされてもよい。
【0040】
B.ロボットシステム-テーブル
ロボット制御可能な医療システムの実施形態は、患者テーブルも組み込んでもよい。テーブルの組み込みは、カートを除去することによって手術室内の資本設備の量を低減し、患者へのより大きなアクセスを可能にする。図5は、気管支鏡検査処置のために配置されたこうしたロボット制御可能なシステムの一実施形態を示す。システム36は、床の上にプラットフォーム38(「テーブル」又は「ベッド」として図示)を支持するための支持構造体又はカラム37を含む。カートベースのシステムと同様に、システム36のロボットアーム39のエンドエフェクタは、器具ドライバ42の線形整列から形成された仮想レール41を通して、又はそれに沿って、図5の気管支鏡40などの細長い医療器具を操縦するように設計された器具ドライバ42を備える。実際には、X線透視撮像を提供するためのCアームは、放射器及び検出器をテーブル38の周囲に置くことによって、患者の上部腹部領域の上方に位置付けされてもよい。
【0041】
図6は、説明を目的として、患者及び医療器具なしのシステム36の代替的な図を提供する。図示のように、カラム37は、1つ以上のロボットアーム39のベースとなり得る、システム36内でリング形状として図示される1つ以上のキャリッジ43を含んでもよい。キャリッジ43は、カラム37の長さにわたる垂直方向のカラムインターフェース44に沿って並進して、ロボットアーム39が患者に到達するように位置付けされ得る異なるバンテージポイントを提供してもよい。キャリッジ(複数可)43は、カラム37内に位置付けされた機械的モータを使用してカラム37の周りを回転して、ロボットアーム39が、例えば、患者の両側などのテーブル38の複数の側面へのアクセスを有することを可能にしてもよい。複数のキャリッジを有する実施形態では、キャリッジはカラム上に個別に位置付けされてもよく、他のキャリッジとは独立して並進及び/又は回転してもよい。キャリッジ43はカラム37を取り囲む必要はなく、又は更には円形である必要はないが、図示されるようなリング形状は、構造的バランスを維持しながらカラム37の周りでのキャリッジ43の回転を容易にする。キャリッジ43の回転及び並進により、システムは、内視鏡及び腹腔鏡などの医療器具を患者の異なるアクセスポイントに位置合わせさせることができる。その他の実施形態(図示せず)では、システム36は、並行して延びるバー又はレールの形態の調節可能なアーム支持体を有する患者テーブル又はベッドを含んでもよい。1つ以上のロボットアーム39を、(例えば、肘関節を有する肩部を介して)垂直方向に調節することができる調節可能なアーム支持体に取り付けることができる。垂直方向の調節を提供することによって、ロボットアーム39は、有利なことに、患者テーブル又はベッドの下にコンパクトに格納されることができ、その後、処置中に引き上げられてもよい。
【0042】
アーム39は、ロボットアーム39に追加の構成可能性を提供するために個別に回転及び/又は入れ子式に延び得る一連の関節を備えるアームマウント45のセットを介してキャリッジに装着されてもよい。更に、アームマウント45は、キャリッジ43が適切に回転されると、アームマウント45がテーブル38の同じ側(図6に示すように)、テーブル38の両側(図9に示すように)、又はテーブル38の隣接する側部(図示せず)のいずれかに位置付けすることができるように、キャリッジ43上に位置付けしてもよい。
【0043】
カラム37は、テーブル38の支持及びキャリッジの垂直方向の並進のための経路を構造的に提供する。内部に、カラム37は、キャリッジの垂直方向の並進を案内するための主ねじ、及び主ねじに基づく当該キャリッジの並進を機械化するためのモータが備えられてもよい。カラム37は、キャリッジ43及びその上に装着されたロボットアーム39に電力及び制御信号も伝達してもよい。
【0044】
テーブルベース46は、図2に示すカート11のカートベース15と同様の機能を果たし、テーブル/ベッド38、カラム37、キャリッジ43、及びロボットアーム39の釣り合いをとるためにより重い構成要素を収容する。テーブルベース46は、処置中に安定性を提供するために剛性キャスタも組み込んでもよい。テーブルベース46の底部から配置されるキャスタは、ベース46の両側で反対方向に延び、システム36を移動させる必要があるときに後退してもよい。
【0045】
引き続き図6によれば、システム36は、テーブルとタワーとの間でシステム36の機能を分割して、テーブルのフォームファクタ及びバルクを低減するタワー(図示せず)も含んでもよい。先に開示された実施形態と同様に、タワーは、処理、計算、及び制御能力、電力、流体工学、並びに/又は光学及びセンサ処理などの様々な支持機能をテーブルに提供してもよい。タワーは、医師のアクセスを改善し、手術室を整理整頓するために、患者から離れて位置付けされるようにも移動可能であってもよい。更に、タワー内に構成要素を位置付けすることにより、ロボットアームの潜在的な収納のために、テーブルベース内により多くの格納空間を可能にする。タワーは、キーボード及び/又はペンダントなどのユーザ入力のためのユーザインターフェース、並びにリアルタイム撮像、ナビゲーション、及び追跡情報などの術前及び術中情報のための表示画面(又はタッチスクリーン)の両方を提供するマスターコントローラ又はコンソールも含んでもよい。いくつかの実施形態では、タワーは、送気のために使用されるガスタンク用のホルダも含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、テーブルベースは、使用されていないときにロボットアームを収容して格納してもよい。図7は、テーブルベースのシステムの一実施形態におけるロボットアームを格納するシステム47を示す。システム47では、キャリッジ48は、ロボットアーム50、アームマウント51、及びキャリッジ48をベース49内に格納するために、ベース49内へと垂直方向に並進させられてもよい。ベースカバー52は、並進及び後退して、キャリッジ48、アームマウント51、及びアーム50をカラム53の周りに配置させるように開き、使用されていないときにそれらを収容して保護するように閉じられてもよい。ベースカバー52は、閉じたときに汚れ及び流体の侵入を防止するために、その開口部の縁部に沿って膜54で封止されてもよい。
【0047】
図8は、尿管鏡検査処置のために構成されたロボット制御可能なテーブルベースのシステムの一実施形態を示す。尿管鏡検査では、テーブル38は、患者をカラム37及びテーブルベース46からオフアングルに位置付けするためのスイベル部分55を含んでもよい。スイベル部分55は、スイベル部分55の底部をカラム37から離すように位置付けするために、枢動点(例えば、患者の頭部の下に位置する)を中心に回転又は枢動してもよい。例えば、スイベル部分55の枢動により、Cアーム(図示せず)が、テーブル38の下のカラム(図示せず)と空間を奪い合うことなく、患者の下部腹部の上方に位置付けされることを可能にする。カラム37の周りにキャリッジ35(図示せず)を回転させることにより、ロボットアーム39は、尿道に到達するように、仮想レール57に沿って、患者の鼠径部領域に直接尿管鏡56を挿入してもよい。尿管鏡検査では、処置中に患者の脚の位置を支持し、患者の鼠径部領域への明確なアクセスを可能にするために、テーブル38のスイベル部分55にあぶみ58が固定されてもよい。
【0048】
腹腔鏡処置では、患者の腹壁内の小さな切開部(複数可)を通して、低侵襲性器具を患者の解剖学的構造に挿入してもよい。いくつかの実施形態では、低侵襲性器具は、患者内の解剖学的構造にアクセスするために使用されるシャフトなどの細長い剛性部材を備える。患者の腹腔の膨張後、器具は、把持、切断、アブレーション、縫合などの外科的又は医療的タスクを実施するように方向付けられてもよい。いくつかの実施形態では、器具は、腹腔鏡などのスコープを備えることができる。図9は、腹腔鏡処置のために構成されたロボット制御可能なテーブルベースのシステムの一実施形態を示す。図9に示すように、システム36のキャリッジ43を回転させ、垂直方向に調節して、ロボットアーム39の対をテーブル38の両側に位置付けしてもよく、それにより器具59は、アームマウント45を使用して位置付けされて、患者の両側の最小切開部を通過して患者の腹腔に到達することができる。
【0049】
腹腔鏡処置に対応するために、ロボット制御可能なテーブルシステムは、プラットフォームを所望の角度にも傾斜させてもよい。図10は、ピッチ又は傾斜調節を有するロボット制御可能な医療システムの実施形態を示す。図10に示すように、システム36は、テーブル38の傾斜に適応して、テーブルの一方の部分を他方の部分より床から離れた距離に位置付けすることができる。加えて、アームマウント45は、アーム39がテーブル38と同じ平面関係を維持するように、傾斜に一致するように回転させてもよい。急角度に適応するために、カラム37は、テーブル38が床に接触するか又はベース46と衝突するのを防ぐためにカラム37が垂直方向に延びるのを可能にする入れ子部分60も含んでもよい。
【0050】
図11は、テーブル38とカラム37との間のインターフェースの詳細な図示を提供する。ピッチ回転機構61は、カラム37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変更するように構成され得る。ピッチ回転機構61は、カラム-テーブルインターフェースにおける直交軸1、2の位置付けによって有効にされてもよく、各軸は、電気ピッチ角コマンドに応答して別個のモータ3、4によって作動させられる。一方のねじ5に沿った回転は、一方の軸1における傾斜調節を可能にし、他方のねじ6に沿った回転は、他方の軸2に沿った傾斜調節を可能にする。いくつかの実施形態では、カラム37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変更するために、玉継ぎ手をしようすることができる。
【0051】
例えば、ピッチ調節は、テーブルをトレンデレンブルグ体位に位置付けしようとするときに、すなわち下腹部手術のために患者の下腹部よりも床からより高い位置に患者の下腹部を位置付けしようとするときに、特に有用である。トレンデレンブルグ体位は、重力によって患者の内臓を患者の上腹部に向けてスライドさせ、腹腔鏡下前立腺全摘除術など、下腹部の外科的又は医学的処置を開始し実行するための低侵襲ツールのために、腹腔を空にする。
【0052】
図12及び図13は、テーブルベースの外科用ロボットシステム100の別の実施形態の等角図及び端面図を示す。外科用ロボットシステム100は、テーブル101に対して1つ以上のロボットアームを支持するように構成され得る1つ以上の調節可能なアーム支持体105(例えば、図14参照)を含む。図示の実施形態では、単一の調節可能なアーム支持体105が示されているが、テーブル101の反対側に追加のアーム支持体を設けることができる。調節可能アームサポート105は、テーブル101に対して移動して、調節可能アームサポート105及び/又はテーブル101に対してそれに取り付けられた任意のロボットアームの位置を調節及び/又は変更できるように構成され得る。例えば、調節可能なアーム支持体105は、テーブル101に対して1つ以上の自由度で調節することができる。調節可能なアーム支持体105は、1つ以上の調節可能なアーム支持体105及びそれに取り付けられた任意のロボットアームをテーブル101の下に容易に収容する能力を含む、システム100への高い汎用性を提供する。調節可能なアーム支持体105は、収容位置からテーブル101の上面の下の位置まで上昇させることができる。他の実施形態では、調節可能なアーム支持体105は、収容位置からテーブル101の上面の上方の位置まで上昇させることができる。
【0053】
調節可能なアーム支持体105は、リフト、横方向並進、傾斜などを含む、いくつかの自由度を提供することができる。図12及び図13の図示の実施形態では、アーム支持体105は、4自由度で構成され、図12に矢印で示されている。第1の自由度は、z方向(「Zリフト」)における調節可能なアーム支持体105の調節を可能にする。例えば、調節可能なアーム支持体105は、テーブル101を支持するカラム102に沿って、又はそれに対して上下に動くことができるように構成されたキャリッジ109を含むことができる。第2の自由度は、調節可能なアーム支持体105が傾くことを可能にすることができる。例えば、調節可能なアーム支持体105は、回転接合部を含むことができ、それは、例えば、調節可能なアーム支持体105を、トレンデレンブルク位置のベッドと位置合わせすることを可能にする。第3の自由度は、調節可能なアーム支持体105は「上方枢動する」ことを可能にすることができ、それを使用して、テーブル101の側面と調節可能なアーム支持体105との間の距離を調節することができる。第4の自由度は、テーブルの長手方向の長さに沿って調節可能なアーム支持体105の並進を可能にすることができる。
【0054】
図12及び図13の外科用ロボットシステム100は、ベース103に取り付けられたカラム102によって支持されるテーブルを備えることができる。したがって、ベース103及びカラム102は、支持面に対してテーブル101を支持する。床軸131及び支持軸133は、図13に示される。
【0055】
調節可能なアーム支持体105は、カラム102に取り付けることができる。他の実施形態では、調節可能なアーム支持体105は、テーブル101又はベース103に取り付けることができる。調節可能なアーム支持体105は、キャリッジ109、バー又はレールコネクタ111、及びバー又はレール107を含むことができる。いくつかの実施形態では、レール107に取り付けられた1つ以上のロボットアームは、互いに対して並進及び運動することができる。
【0056】
キャリッジ109は、第1の接合部113によってカラム102に取り付けられてもよく、それにより、キャリッジ109がカラム102に対して運動することが可能になる(例えば、第1又は垂直軸123の上下など)。第1の接合部113は、調節可能なアーム支持体105に第1の自由度(「Zリフト」)を提供することができる。調節可能なアーム支持体105は、調節可能なアーム支持体105の第2の自由度(傾斜)を提供する第2の接合部115を含むことができる。調節可能なアーム支持体105は、第3の自由度(「上方枢動」)を調節可能なアーム支持体105に提供することができる第3の接合部117を含むことができる。レールコネクタ111が第3の軸127を中心にして回転させられるときにレール107の方向を維持するように第3の接合部117を機械的に拘束する、追加の接合部119(図13に示す)を設けることができる。調節可能なアーム支持体105は、第4の軸129に沿って調節可能なアーム支持体105に対して第4の自由度(並進)を提供することができる第4の接合部121を含むことができる。
【0057】
図14は、テーブル101の判値側に取り付けられた2つの調節可能なアーム支持体105A、105Bを有する、外科用ロボットシステム140Aの端面図を示す。第1のロボットアーム142Aは、第1の調節可能なアーム支持体105Bのバー又はレール107Aに取り付けられる。第1のロボットアーム142Aは、レール107Aに取り付けられたベース144Aを含む。第1のロボットアーム142Aの遠位端部は、1つ以上のロボット医療器具又はツールに取り付けることができる器具駆動機構146Aを含む。同様に、第2のロボットアーム142Bは、レール107Bに取り付けられたベース144Bを含む。第2のロボットアーム142Bの遠位端部は、器具駆動機構146Bを含む。器具駆動機構146Bは、1つ以上のロボット医療器具又はツールに取り付けるように構成され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム142A、142Bのうちの1つ以上は、7つ以上の自由度を有するアームを備える。いくつかの実施形態では、ロボットアーム142A、142Bのうちの1つ以上は、挿入軸(挿入を含む1自由度)、リスト(リストピッチ、ヨー及びロールを含む3自由度)、エルボ(エルボピッチを含む1自由度)、ショルダ(ショルダピッチ及びヨーを含む2自由度)、及びベース144A、144B(並進を含む1自由度)、を含む8自由度を含むことができる。いくつかの実施形態では、挿入自由度は、ロボットアーム142a、142bによって提供することができるが、他の実施形態では、器具自体は、器具ベースの挿入アーキテクチャを介して挿入を提供する。
【0059】
C.器具ドライバ及びインターフェース
システムのロボットアームのエンドエフェクタは、(i)医療器具を作動させるための電気機械的手段を組み込む器具ドライバ(代替的には、「器具駆動機構」又は「器具デバイスマニピュレータ」と呼ばれる)と、(ii)モータなどの任意の電気機械的構成要素を欠いていてもよい除去可能な又は取り外し可能な医療用器具と、を備える。この二分法は、医療処置に使用される医療器具を滅菌する必要性、及びそれらの複雑な機械的アセンブリ及び敏感な電子機器により、高価な資本設備を十分に滅菌することができないことに起因している可能性がある。したがって、医療器具は、医師又は医師のスタッフによる個々の滅菌又は廃棄のために、器具ドライバ(したがってそのシステム)から取り外し、除去、及び交換されるように設計することができる。対照的に、器具ドライバは交換又は滅菌される必要がなく、保護のために掛け布をすることができる。
【0060】
図15は、例示的な器具ドライバを示す。ロボットアームの遠位端部に位置付けされた器具ドライバ62は、駆動シャフト64を介して医療器具に制御トルクを提供するために平行軸を伴って配された1つ以上の駆動ユニット63を備える。各駆動ユニット63は、器具と相互作用するための個々の駆動シャフト64と、モータシャフトの回転を所望のトルクに変換するためのギヤヘッド65と、駆動トルクを生成するためのモータ66と、モータシャフトの速度を測定し、制御回路にフィードバックを提供するエンコーダ67と、制御信号を受信し、駆動ユニットを作動させるための制御回路68と、を備える。各駆動ユニット63は独立して制御され電動化され、器具ドライバ62は、複数(図15に示すように4つ)の独立した駆動出力を医療器具に提供することができる。動作中、制御回路68は、制御信号を受信し、モータ66にモータ信号を送信し、エンコーダ67によって測定された得られたモータ速度を所望の速度と比較し、モータ信号を変調して所望のトルクを生成する。
【0061】
無菌環境を必要とする処置のために、ロボットシステムは、器具ドライバと医療器具との間に位置する、無菌ドレープに接続された無菌アダプタなどの駆動インターフェースを組み込んでもよい。無菌アダプタの主な目的は、器具ドライバの駆動シャフトから器具の駆動入力に角度運動を伝達する一方で、駆動シャフトと駆動入力との間の物理的分離、したがって無菌性を維持することである。したがって、例示的な無菌アダプタは、器具ドライバの駆動シャフトと嵌合されることが意図された一連の回転入力部及び出力部と、器具に対する駆動入力部から構成することができる。無菌アダプタに接続される無菌ドレープは、透明又は半透明プラスチックなどの薄い可撓性材料から構成され、器具ドライバ、ロボットアーム、及び(カートベースのシステムにおける)カート又は(テーブルベースのシステムにおける)テーブルなどの資本設備を覆うように設計される。ドレープの使用により、資本設備を、滅菌を必要としない領域(すなわち、非滅菌野)に依然として位置している間に、患者に近接して位置付けすることが可能となる。滅菌ドレープの反対側では、医療器具は、滅菌(すなわち、滅菌野)を必要とする領域において患者とインターフェースしてもよい。
【0062】
D.医療器具
図16は、対の器具ドライバを備えた例示的な医療器具を示す。ロボットシステムと共に使用するために設計された他の器具と同様に、医療器具70は、細長いシャフト71(又は細長い本体)及び器具ベース72を備える。医師による手動相互作用が意図されているその設計により「器具ハンドル」とも呼ばれる器具ベース72は、概して、ロボットアーム76の遠位端部において器具ドライバ75上の駆動インターフェースを通って延びる駆動出力部74と嵌合するように設計された、回転可能な駆動入力部73、例えば、レセプタクル、プーリ、又はスプールを備えてもよい。物理的に接続、ラッチ、及び/又は連結されるときに、器具ベース72の嵌合された駆動入力部73は、器具ドライバ75における駆動出力部74と回転軸線を共有して、駆動出力部74から駆動入力部73へのトルクの伝達を可能することができる。いくつかの実施形態では、駆動出力部74は、駆動入力部73上のレセプタクルと嵌合するように設計されたスプラインを備えてもよい。
【0063】
細長いシャフト71は、例えば、内視鏡におけるような解剖学的開口部若しくは管腔、又は腹腔鏡検査におけるような低侵襲性切開部のいずれかを通して送達されるように設計されている。細長いシャフト71は、可撓性(例えば、内視鏡と同様の特性を有する)若しくは剛性(例えば、腹腔鏡と同様の特性を有する)のいずれかであってもよく、又は可撓性部分及び剛性部分の両方のカスタマイズされた組み合わせを含んでもよい。腹腔鏡のために設計される場合、剛性の細長いシャフトの遠位端部は、少なくとも1つの自由度を有するクレビスから形成された接合されたリストから延びるエンドエフェクタ、及び駆動入力部が器具ドライバ75の駆動出力部74から受け取ったトルクに応答して回転する際に、腱からの力に基づいて作動させられ得る、例えば、把持具又ははさみなどの手術ツール又は医療器具に接続することができる。内視鏡検査のために設計される場合、可撓性の細長いシャフトの遠位端部は、器具ドライバ75の駆動出力部74から受信したトルクに基づいて関節運動及び屈曲され得る操縦可能又は制御可能な屈曲部を含んでもよい。
【0064】
器具ドライバ75からのトルクは、シャフト71に沿った腱を使用して細長いシャフト71の下流に伝達される。プルワイヤなどのこれらの個々の腱は、器具ハンドル72内の個々の駆動入力部73に個別に固定されてもよい。ハンドル72から、腱は、細長いシャフト71に沿って1つ以上のプルルーメン(pull lumen)の下方に向けられ、細長いシャフト71の遠位部分、又は細長いシャフトの遠位部分のリスト内に固定される。腹腔鏡、内視鏡、又はハイブリッド処置などの外科処置中、これらの腱は、リスト、把持具、又ははさみなどの遠位に取り付けられたエンドエフェクタに連結されてもよい。そのような構成の下で、駆動入力部73に及ぼされるトルクは、腱に張力を伝達し、それによってエンドエフェクタを何らかの方法で作動させる。いくつかの実施形態では、外科処置中に、腱は、関節を軸の周りで回転させ、それによってエンドエフェクタを一方向又は別の方向に運動させることができる。代替的に、腱は、細長いシャフト71の遠位端部で把持具の1つ以上のジョーに接続されてもよく、腱からの張力によって把持具が閉鎖される。
【0065】
内視鏡検査では、腱は、接着剤、制御リング、又は他の機械的固定を介して、細長いシャフト71に沿って(例えば、遠位端部に)位置付けされた屈曲部又は関節運動部に連結されてもよい。屈曲部の遠位端部に固定的に取り付けられる場合、駆動入力部73に及ぼされるトルクは、腱の下流に伝達され、より軟質の屈曲部(関節運動可能部又は領域と呼ばれることがある)を屈曲又は関節運動させる。非屈曲部分に沿って、個々の腱を内視鏡シャフトの壁に沿って(又は内側に)指向する個々のプルルーメンを螺旋状又は渦巻状にして、プルワイヤにおける張力からもたらされる半径方向の力の釣り合いをとることが有利であり得る。これらの間の螺旋及び/又は間隔の角度は、特定の目的のために変更又は設計されてもよく、より狭い螺旋は負荷力下でより小さいシャフト圧縮を呈する一方で、より少ない量の螺旋は負荷力下でより大きなシャフト圧縮をもたらすが、屈曲制限も示す。スペクトルのもう一方の端部では、プルルーメンは、細長いシャフト71の長手方向軸に平行に指向されて、所望の屈曲部又は関節運動可能部における制御された関節運動を可能にしてもよい。
【0066】
内視鏡検査では、細長いシャフト71は、ロボット処置を支援するいくつかの構成要素を収容する。シャフトは、シャフト71の遠位端部における手術領域に対して手術ツール(又は医療器具)を配置する、灌注する、及び/又は吸引するための作業チャネルを備えてもよい。シャフト71は、光学カメラを含んでもよい遠位先端部の光学アセンブリとの間で信号の授受を行うために、ワイヤ及び/又は光ファイバも収容してもよい。シャフト71は、発光ダイオードなどの近位に位置する光源からシャフトの遠位端部に光を搬送するための光ファイバも収容してもよい。
【0067】
器具70の遠位端部では、遠位先端部は、診断及び/又は治療、灌注、及び吸引のためにツールを手術部位に送達するための作業チャネルの開口部も備えてもよい。遠位先端部は、内部解剖学的空間の画像を捕捉するために、繊維スコープ又はデジタルカメラなどのカメラのためのポートも含んでもよい。関連して、遠位先端部は、カメラを使用するときに解剖学的空間を照明するための光源用のポートも含んでもよい。
【0068】
図16の実施例では、駆動シャフト軸、したがって駆動入力軸は、細長いシャフトの軸に直交する。しかしながら、この配置は、細長いシャフト71のロール能力を複雑にする。駆動入力部73を静止させながら、細長いシャフト71をその軸に沿ってロールさせることにより、腱が駆動入力部73から延出し、細長いシャフト71内のプルルーメンに入る際に、腱の望ましくないもつれをもたらす。結果として生じるそのような腱のもつれは、内視鏡処置中に可撓性の細長いシャフトの移動を予測することが意図される任意の制御アルゴリズムを妨害することがある。
【0069】
図17は、駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸に対して平行である、器具ドライバ及び器具の代替的な設計を示す。図示のように、円形の器具ドライバ80は、ロボットアーム82の端部において平行に位置合わせされた駆動出力部81を有する4つの駆動ユニットを備える。駆動ユニット及びそれらのそれぞれの駆動出力部81は、アセンブリ83内の駆動ユニットのうちの1つによって駆動される器具ドライバ80の回転アセンブリ83内に収容される。回転駆動ユニットによって提供されるトルクに応答して、回転アセンブリ83は、回転アセンブリ83を器具ドライバの非回転部分84に接続する円形ベアリングに沿って回転する。電力及び制御信号は、電気接点を通して器具ドライバ80の非回転部分84から回転アセンブリ83に伝達されてもよく、ブラシ付きスリップリング接続(図示せず)による回転を通して維持されてもよい。他の実施形態では、回転アセンブリ83は、非回転可能部分84に一体化され、したがって他の駆動ユニットと平行ではない別個の駆動ユニットに応答してもよい。回転機構83は、器具ドライバ80が、器具ドライバ軸85周りの単一ユニットとして、駆動ユニット及びそれらのそれぞれの駆動出力部81を回転させることを可能にする。
【0070】
先に開示した実施形態と同様に、器具86は、細長いシャフト部分88と、器具ドライバ80内の駆動出力部81を受容するように構成された複数の駆動入力部89(レセプタクル、プーリ、及びスプールなど)を備える器具ベース87(説明目的のために透明な外部スキンで示される)とを備えてもよい。先に開示された実施形態とは異なり、器具シャフト88は、図16の設計のように直交するのではなく、駆動入力89の軸に実質的に平行な軸を有する器具ベース87の中心から延びる。
【0071】
器具ドライバ80の回転アセンブリ83に連結されると、器具ベース87及び器具シャフト88を備える医療器具86は、器具ドライバ軸85を中心にして回転アセンブリ83と一緒に回転する。器具シャフト88は器具ベース87の中心に位置付けされているため、器具シャフト88は、取り付けられたときに器具ドライバ軸85と同軸である。したがって、回転アセンブリ83の回転により、器具シャフト88は、それ自体の長手方向軸を中心にして回転する。更に、器具ベース87が器具シャフト88と共に回転すると、器具ベース87内の駆動入力部89に接続された任意の腱は、回転中にもつれない。したがって、駆動出力部81、駆動入力部89、及び器具シャフト88の軸の平行性は、任意の制御腱をもつれることなくシャフト回転を可能にする。
【0072】
図18は、いくつかの実施形態に係る、器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具を示す。器具150は、上述の器具ドライバのいずれかに連結することができる。器具150は、細長いシャフト152と、シャフト152に接続されたエンドエフェクタ162と、シャフト152に連結されたハンドル170とを備える。細長いシャフト152は、近位部分154及び遠位部分156を有する管状部材を備える。細長いシャフト152は、その外側表面に沿った1つ以上のチャネル又は溝158を備える。溝158は、1つ以上のワイヤ又はケーブル180をそれを通して受容するように構成されている。したがって、1つ以上のケーブル180は、細長いシャフト152の外側表面に沿って延びる。他の実施形態では、ケーブル180は、細長いシャフト152を通って延びることもできる。いくつかの実施形態では、これらのケーブル180のうちの1つ以上の操作(例えば、器具ドライバを介して)により、エンドエフェクタ162の作動がもたらされる。
【0073】
器具ベースとも称され得る器具ハンドル170は、一般に、器具ドライバの取り付け面上で1つ以上のトルカプラと往復嵌合するように設計された1つ以上の機械的入力174、例えばレセプタクル、滑車又はスプールを有する取り付けインターフェース172を備えることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、器具150は、細長いシャフト152がハンドル170に対して並進することを可能にする一連の滑車又はケーブルを備える。換言すれば、器具150自体は器具の挿入を収容する器具ベースの挿入構造を備え、それによって器具150の挿入を提供するためにロボットアームへの依存を最小化する。他の実施形態では、ロボットアームは、器具の挿入に大きく関与することができる。
【0075】
E.コントローラ
本明細書に記載の任意のロボットシステムは、ロボットアームに取り付けられた器具を操作するための入力デバイス又はコントローラを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、器具と連結(例えば、通信的に、電子的に、電気的に、無線的に、及び/又は機械的に)することができ、それによりコントローラの操作は、例えば、マスタースレーブ制御を介して、器具の対応する操作を引き起こす。
【0076】
図19は、コントローラ182の実施形態の斜視図である。本実施形態では、コントローラ182は、インピーダンス制御及びアドミタンス制御の両方を有することができるハイブリッドコントローラを備える。他の実施形態では、コントローラ182は、インピーダンス又は受動的制御だけ利用することができる。他の実施形態では、コントローラ182は、アドミッタンス制御だけ利用することができる。ハイブリッドコントローラであることにより、コントローラ182は、有利には、使用中、より低い知覚慣性を有することができる。
【0077】
図示の実施形態では、コントローラ182は、2つの医療用器具の操作を可能にするように構成され、2つのハンドル184を含む。ハンドル184の各々は、ジンバル186に接続されている。各ジンバル186は位置付けプラットフォーム188に接続されている。
【0078】
図19に示すように、各位置付けプラットフォーム188は、プリズム接合部196によってカラム194に連結されたSCARAアーム(selective compliance assembly robot arm)198を含む。プリズム接合部196は、(例えば、レール197に沿って)カラム194に沿って並進するように構成され、ハンドル184のそれぞれがz方向に並進され、第1の自由度を提供するように構成されている。SCARAアーム198は、x-y平面におけるハンドル184の運動を可能にし、2つの更なる自由度を提供するように構成されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、1つ以上のロードセルがコントローラ内に位置付けされる。例えば、いくつかの実施形態では、ロードセル(図示せず)は、ジンバル186の各々の本体内に位置付けされる。ロードセルを設けることによって、コントローラ182の一部分は、アドミタンス制御下で動作することができ、それによって、使用中にコントローラの知覚慣性を有利に低減する。いくつかの実施形態では、位置付けプラットフォーム188はアドミタンス制御用に構成され、一方、ジンバル186はインピーダンス制御用に構成されている。他の実施形態では、ジンバル186はアドミタンス制御用に構成され、位置付けプラットフォーム188はインピーダンス制御用に構成されている。したがって、いくつかの実施形態では、位置付けプラットフォーム188の並進又は位置自由度は、アドミタンス制御に依存することができ、一方、ジンバル186の回転自由度はインピーダンス制御に依存する。
【0080】
F.ナビゲーション及び制御
従来の内視鏡検査は、オペレータ医師に腔内誘導を提供するために、蛍光透視法(例えば、Cアームを通して送達され得るような)、及び他の形態の放射線ベースの撮像モダリティの使用を伴うことがある。対照的に、本開示によって企図されるロボットシステムは、放射線への医師の曝露を低減し、手術室内の機器の量を低減するために、非放射線ベースのナビゲーション及び位置特定手段を提供することができる。本明細書で使用するとき、用語「位置特定」は、基準座標系内のオブジェクトの位置を判定及び/又は監視することを指すことがある。術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータなどの技術は、放射線を含まない動作環境を達成するために個別に又は組み合わせて使用されてもよい。放射線ベースの撮像モダリティが依然として使用されるその他の場合、術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータは、放射線ベースの撮像モダリティによってのみ取得される情報を改善するために、個別に又は組み合わせて使用されてもよい。
【0081】
図20は、例示的な実施形態に係る、器具の位置など、ロボットシステムの1つ以上の要素の位置を推定する位置特定システム90を示すブロック図である。位置特定システム90は、1つ以上の命令を実行するように構成されている1つ以上のコンピュータデバイスのセットであってもよい。コンピュータデバイスは、上述の1つ以上の構成要素内のプロセッサ(又は複数のプロセッサ)及びコンピュータ可読メモリによって具現化されてもよい。例として、限定するものではないが、コンピュータデバイスは、図1に示すタワー30、図1図4に示すカート、図5図14に示すベッド、などの中にあってよい。
【0082】
図20に示すように、位置特定システム90は、入力データ91~94を処理して医療器具の遠位先端部の位置データ96を生成する位置特定モジュール95を含んでもよい。位置データ96は、基準系に対する器具の遠位端部の位置及び/又は向きを表すデータ又は論理であってもよい。基準系は、患者の解剖学的構造、又はEM場発生器(EM場発生器についての以下の説明を参照)などの既知のオブジェクトに対する基準系とすることができる。
【0083】
ここで、様々な入力データ91~94についてより詳細に説明する。術前マッピングは、低用量CTスキャンの収集を利用して達成され得る。術前CTスキャンは、例えば、患者の内部解剖学的構造の断面図の「スライス」として可視化される3次元画像へと再構成される。全体として分析される場合、患者の肺網などの患者の解剖学的構造の解剖学的空腔、空間、及び構造のための画像ベースのモデルを生成することができる。中心線形状(center-line geometry)などの技法を判定し、CT画像から概算して、モデルデータ91と称される(術前CTスキャンのみを用いて生成した場合は「術前モデルデータ」とも称される)患者の解剖学的構造の3次元体積を生成することができる。中心線幾何学形状の使用は、米国特許出願第14/523,760号に述べられており、その内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。ネットワーク位相モデルは、CT画像からも導出されてもよく、気管支鏡検査に特に適している。
【0084】
いくつかの実施形態では、器具はカメラを装備して、視覚データ92を提供してもよい。位置特定モジュール95は、視覚データを処理して、1つ以上の視覚ベースの位置追跡を可能にしてもよい。例えば、術前モデルデータは、医療器具(例えば、内視鏡又は内視鏡の作業チャネルを通って前進する器具)のコンピュータビジョンベースの追跡を可能にするために、視覚データ92と共に使用されてもよい。例えば、術前モデルデータ91を使用して、ロボットシステムは、内視鏡の予想される移動経路に基づいてモデルから予測される内視鏡画像のライブラリを生成することができ、各画像はモデル内の位置にリンクされる。手術中に、このライブラリは、カメラ(例えば、内視鏡の遠位端部でのカメラ)で捕捉されたリアルタイム画像を画像ライブラリ内のものと比較して、位置特定を支援するために、ロボットシステムによって参照することができる。
【0085】
他のコンピュータビジョンベースの追跡技法は、カメラの動き、したがって内視鏡を判定するための特徴追跡を使用する。位置特定モジュール95のいくつかの特徴は、解剖学的管腔に対応する術前モデルデータ91内の円形幾何学形状を特定し、それらの幾何学的形状の変化を追跡して、どの解剖学的管腔が選択されたか、並びにカメラの相対的な回転及び/又は並進運動を判定することができる。位相マップの使用は、視覚ベースのアルゴリズム又は技法を更に向上させることができる。
【0086】
光学フロー、別のコンピュータビジョンベースの技法は、カメラの動きを推測するために、視覚データ92内のビデオシーケンス内の画像ピクセルの変位及び並進を分析してもよい。光学フロー技術の例としては、動き検出、オブジェクトセグメンテーション計算、輝度、動き補償符号化、立体視差測定などを挙げることができる。複数の反復にわたり複数のフレームを比較することにより、カメラ(したがって内視鏡)の動き及び位置を判定することができる。
【0087】
位置特定モジュール95は、リアルタイムEM追跡を使用して、術前モデルによって表される患者の解剖学的構造に位置合わせされ得るグローバル座標系内で内視鏡のリアルタイム位置を生成することができる。EM追跡では、医療器具(例えば、内視鏡器具)内の1つ以上の位置及び向きに埋め込まれた1つ以上のセンサコイルを備えるEMセンサ(又はトラッカー)は、既知の位置に位置付けされた1つ以上の静的EM場発生器によって生成されるEM場の変動を測定する。EMセンサによって検出された位置情報は、EMデータ93として記憶される。EM場発生器(又は送信機)は、埋め込まれたセンサが検出し得る低強度磁場を生成するために、患者に近接して配置してもよい。磁場はEMセンサのセンサコイル内に小さな電流を誘導し、EMセンサとEM場発生器との間の距離及び角度を判定するためにこの電流が分析され得る。これらの距離及び向きは、患者の解剖学的構造の術前モデル内の位置と座標系内の単一の位置を位置合わせする幾何学的変換を判定するために、患者の解剖学的構造(例えば、術前モデル)に術中「登録」することができる。一旦登録されると、医療器具の1つ以上の位置(例えば、内視鏡の遠位先端部)に埋め込まれたEMトラッカーは、患者の解剖学的構造を通じた医療器具の進行のリアルタイム表示を提供することができる。
【0088】
ロボットコマンド及び運動学データ94は、ロボットシステムのための位置特定データ96を提供するために、位置特定モジュール95によっても使用されてもよい。関節運動コマンドから生じるデバイスピッチ及びヨーは、術前較正中に判定することができる。術中、これらの較正測定値は、既知の挿入深度情報と組み合わせて使用されて、器具の位置を推定することができる。あるいは、これらの計算は、ネットワーク内の医療器具の位置を推定するために、EM、視覚、及び/又は位相モデリングと組み合わせて分析することができる。
【0089】
図17が示すように、多くの他の入力データを位置特定モジュール95によって使用することができる。例えば、図17には示されていないが、形状検知ファイバを利用する器具は、位置特定モジュール95が器具の位置及び形状を判定するために使用することができる形状データを提供することができる。
【0090】
位置特定モジュール95は、入力データ91~94を組み合わせて(複数可)使用することができる。場合によっては、そのような組み合わせは、位置特定モジュール95が入力データ91~94の各々から判定された位置に信頼重みを割り当てる確率的アプローチを使用してもよい。したがって、EMデータが信頼できるとはいえないことがある場合(EM干渉が存在する場合など)、EMデータ93によって判定された位置の信頼性を低下させることができ、位置特定モジュール95は、視覚データ92並びに/又はロボットコマンド及び運動学データ94により重く依存してもよい。
【0091】
上述のように、本明細書で論じられるロボットシステムは、上記の技術のうちの1つ以上の組み合わせを組み込むように設計してもよい。タワー、ベッド、及び/又はカートに基づいて、ロボットシステムのコンピュータベースの制御システムは、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に、コンピュータプログラム命令を記憶してもよく、コンピュータプログラム命令は、実行されると、システムに、センサデータ及びユーザコマンドを受信及び分析させ、システム全体の制御信号を生成させ、グローバル座標系内の器具の位置、解剖学的マップなどのナビゲーション及び位置特定データを表示させる。
【0092】
2.滑車共用リストの概要
図21は、外科用器具200の実施形態の側面図を示す。手術用器具200は、細長いシャフト202、ハンドル204、リスト206及びハンドルエフェクタ208を備えることができる。図22は、図21の外科用器具200などの、外科用器具の例示的な外科用エフェクタの拡大図であり、特定の構成要素は透明であるように示されている。
【0093】
既存の外科用器具は、器具のリスト内に1つ以上の滑車を含んでおり、その滑車の各々は、単一のケーブルセグメントによって係合されている。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,962,228号は、1つ以上の滑車を有するリストを備えたそのような外科用器具を開示しており、各滑車は、単一のケーブルセグメントによって係合されている。
【0094】
対照的に、本開示の以下の実施形態は、少なくとも2つのケーブルセグメントによって共有される1つ以上の滑車を備える新規な外科用器具に関する。滑車上で少なくとも2つのケーブルセグメントを共有することにより、外科用器具上の滑車の数を省くことによって、外科用器具のサイズを低減することができる。例えば、特定の実施形態では、外科用器具の外径は、5mm~6mmなど、6mm未満、に低減することができる。他の実施形態では、外科用器具上の滑車の数を省くことによって、器具の直径を増加させることなく、追加の構成要素を外科用器具に加えることができる。例えば、本明細書に記載の滑車共有構成の結果として取り除かれた滑車によって以前に占有されていたスペース内の外科用器具に、作業ルーメンを加えることができる。特定の状況では、ケーブルセグメントに滑車を共有させることにより、摩擦の増加がもたらされる可能性がある。しかしながら、本明細書に記載の実施形態の装填状況では、大部分の張力下にあるケーブルセグメントは、別個の滑車上にあることが見出されている。したがって、摩擦の増加は、上述のサイズ低減の利点を達成しながら管理することができる。滑車の数の低減と共に、本明細書に記載の外科用器具は、外科用器具を通してケーブルセグメントを方向付けるための方向転換面を含むこともできる。これらの方向転換面は、滑車の代わりに使用することができ、外科用器具のサイズを更に低減することができる。いくつかの実施形態では、方向転換面は静止していてもよい。いくつかの実施形態では、方向転換面は、器具の遠位クレビス内に見出すことができ、これも、以下に記載されるように、新規である。
【0095】
図22に示すように、外科用器具200は、リスト206及び外科用エフェクタ208、細長いシャフト202、近位クレビス250、遠位クレビス260、近位滑車220及び遠位滑車222を備えることができる。リスト206は、外科用エフェクタ208に機械的に連結することができる。遠位クレビス260は、近位クレビス250に対して遠位に位置することができる。同様に、遠位滑車222は、近位滑車220に対して遠位に位置することができる。外科用エフェクタ208は、ロボットアームに連結することができ、複数の運動度で作動することができる。例示される実施形態では、外科用エフェクタ208は、以下により詳細に記載されるように、ピッチ軸290及びヨー軸292を中心にした運動度を有する。いくつかの実施形態では、外科用エフェクタ208は、N+1つのケーブルセグメント及びNの運動自由度を有することができる。例えば、外科用エフェクタ208は、ピッチ軸290及びヨー軸292の周りに枢動可能な2自由度リストであることができる。いくつかの実施形態では、図22に示すように、外科用エフェクタ208は、例えば、ピッチ、ヨー、及びグリップなどの少なくとも3つの自由度を制御するために、少なくとも4つのケーブルセグメントを備えることができる。いくつかの実施形態では、互いに独立した少なくとも2つのケーブルセグメントは、近位滑車220又は遠位滑車222の少なくとも1つの滑車の両側に係合することができる。
【0096】
図23A及び図23Bは、ハウジングが取り外された外科用リスト206の図を示す。図23Aにより詳細に示されるように、リスト206は、第1のケーブルセグメント230、第2のケーブルセグメント232、第3のケーブルセグメント234、及び第4のケーブルセグメント236を含む4つのケーブルセグメントを備えることができる。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメントは、同じケーブルの一部分であることができる。例えば、第1のケーブルセグメント230と第2のケーブルセグメント232は、同じケーブルの一部分であることができる。同様に、いくつかの実施形態では、第3のケーブルセグメント234と第4のケーブルセグメント236は、同じケーブルの一部分であることができる。いくつかの実施形態では、第1のケーブルセグメント230と第2のケーブルセグメント232は、内側クリンプによって分離することができる。同様に、いくつかの実施形態では、第3のケーブルセグメント234と第4のケーブルセグメント236は、内側クリンプによって分離され得る。ケーブルセグメントは、細長いシャフト202を通って延びることができ、近位クレビス250を通って延びることができる。次いで、ケーブルセグメントは、近位滑車220の少なくとも一部分と係合することができ、遠位クレビス260に向かって延びることができる。次いで、ケーブルセグメントは、遠位滑車222の少なくとも一部分と係合することができる。ケーブルセグメント230、232、234、236の各々は、図24Bに示すように近位方向転換面252及び遠位方向転換面262と係合することができ、近位滑車220と遠位滑車222は、図24Aに示すように係合することができる。図23Bに示すように、近位滑車220は、2つのケーブルセグメントによって各々共有される2つの滑車220a、220bを備えることができる。
【0097】
図22に示すように、近位クレビス250は、細長いシャフト202の遠位端部に機械的に取り付けることができる。近位クレビス250は、ケーブルセグメントを近位滑車220に向けて方向転換する、図26Aに示すような近位方向転換面252を備えることができる。近位クレビス250の近位方向転換面252は、ケーブルセグメント230、232、234、236のもつれ若しくは剪断を低減するか、又は場合によっては防止することができる。近位方向転換面252は、ケーブルセグメントと近位クレビス250との間の摩擦量を低減することができる。遠位クレビス260は、近位滑車220と遠位滑車222との間に部分的に配置され得る。いくつかの実施形態では、遠位クレビス260は、近位滑車220と遠位滑車222の両方に機械的に連結することができる。
【0098】
図24Aは、ケーブルセグメント230、232、234、236と近位滑車220と遠位滑車222との間の相互作用の追加の詳細を示すリスト206の側面図を示す。図24Bは、ケーブルセグメント230、232、234、236と近位クレビス250と遠位クレビス260との間の相互作用を示す、リスト206の別の側面図を示す。本実施形態では、近位滑車220と遠位滑車222は各々、2つの滑車を備えることができる。他の実施形態では、近位滑車220と遠位滑車222は各々、2つ以上の滑車(3つ、4つ、5つ、又は6つなど)を備える。いくつかの実施形態では、近位滑車220の2つの滑車220a、220bは、互いに隣接し、ピッチ軸290に沿って位置合わせすることができる。いくつかの実施形態では、近位滑車220の2つの滑車220aと220bの各々は、リスト206の中心軸294からオフセットすることができ、それにより作業ルーメンは滑車の間に位置付けされる。作業ルーメンは、例えば、1つ以上の電気ケーブル、吸引潅注管、又は他の管状部材を収容することができる。いくつかの実施形態では、作業ルーメンは、.5~4.5mmであることができる。いくつかの実施形態では、遠位滑車222の2つの滑車222a、222bは、互いに隣接し、ヨー軸292に沿って位置合わせすることができる。いくつかの実施形態では、遠位滑車222の2つの滑車222a、222bの各々は、リスト206の中心軸294からオフセットすることができ、それにより作業ルーメンは滑車の間に位置付けされる。
【0099】
図23B及び図24Aに示すように、近位滑車220の各滑車は、2つのケーブルセグメントによって共有され得る。例えば、図23Aに示すように、第1のケーブルセグメント230及び第2のケーブルセグメント232は、近位滑車220の第1の側に経路付けすることができ、第3のケーブルセグメント234及び第4のケーブルセグメント236は、近位滑車220の第2の側に経路付けすることができる。そのような構成では、第1のケーブルセグメント230及び第3のケーブルセグメント234は、有利には近位滑車220の第1の滑車220aと係合し、一方、第2のケーブルセグメント232及び第4のケーブルセグメント236は、有利には、近位滑車220の第2の滑車220bと係合する。言い換えると、第一の滑車220aは、第1のケーブルセグメント230及び第3のケーブルセグメント234(同じケーブルの一部としては考慮されない)によって共有され、一方、第2の滑車220bは、第2のケーブルセグメント232及び第4のケーブルセグメント236(同じケーブルの一部としては考慮されない)によって共有される。第1のケーブルセグメント230及び第3のケーブルセグメント234は、同じケーブルの一部としては考慮されず、第2のケーブルセグメント232及び第4のケーブルセグメント236は、同じケーブルの一部としては考慮されないため、本明細書に記載の特定の実施形態の新規な態様の態様は、別個の、独立した、及び/又は独立して第2のケーブルセグメント又はケーブルから作動させられる、第1のケーブルセグメント又はケーブルによって共有される滑車を含むことに、留意されたい。いくつかの実施形態では、用語「独立して作動させられる」は、ケーブルセグメント(例えば、第1のケーブルセグメント230及び第3のケーブルセグメント234)は、互いに独立して及び/又は異なる速度で動き得ることを意味することができる。いくつかの実施形態では、独立したケーブルセグメントは、遠位滑車及び/又は近位滑車を中心にして、等しいが両側のマウントで動く。いくつかの実施形態では、近位滑車の周りで共有されるケーブル又はケーブルセグメントのいずれも、互いに係合も、交差もしない。いくつかの実施形態では、近位滑車の周りで共有されるケーブル又はケーブルセグメントのいずれも、クリンプを介してなど互いに直接接続されていない。そのような滑車共有構成は、リスト206が同程度の運動自由度に対してより少ないプーリを有することを可能にし、それは、リスト206及び細長いシャフト202がより小さな外径(例えば、特定の実施形態では6mm未満であり、特定の実施形態では6mmと5mmの間である)を有し、並びに/又は、例えば、遠位滑車222a、222b及び/若しくは近位滑車220a、220bの間に延びることができる作業ルーメンなどの、取り除かれた滑車の代わりに、追加の構成要素を外科用器具に追加することを可能にする。
【0100】
ケーブルセグメントは、ケーブルセグメントを後退又は前進させることが、外科用エフェクタ208を作動させて第1の運動度で動かすことができるように更に構成することができる。図23A図23B図23C及び図23Dに示す一実施形態では、外科用エフェクタ208は、それぞれピッチ軸290及びヨー軸292を中心にした近位滑車220及び遠位滑車222の回転によって作り出される3つの運動度を有することができる。図示の実施形態の外科用エフェクタ208は、遠位滑車222の第1の滑車222a及び第2の滑車222bにそれぞれ動作可能に接続された第1の鉗子半体208a及び第2の鉗子半体208bを含む。したがって、ヨー軸292を中心にした遠位滑車222の第1の滑車222aの回転は、ヨー軸292を中心にした第1の鉗子半体208aの回転を引き起こすことができる。同様に、ヨー軸292を中心にした遠位滑車222の第2の滑車222bの回転は、ヨー軸292を中心にした第2の鉗子半体208bの回転を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、外科用エフェクタ208のピッチ運動は、ケーブルセグメント230、232の更なる短縮と一致したケーブルセグメント234、236の更なる延長などの、ケーブルセグメントの作動の組み合わせによって作動させることができ、それにより、遠位クレビスはピッチ軸290を中心にして回転することができる。他の実施形態では、外科用エフェクタ208は、近位滑車220がピッチ軸290を中心にして回転するときに、ピッチ軸290を中心にして作動することができる。
【0101】
図23A、23B、23C、及び23Dに示す実施形態では、近位滑車220及び遠位滑車222の回転は、ケーブルセグメント230、232、234、236を後退又は前進させることによって引き起こされる。特定の実施形態では、入力コントローラは、4つのケーブルセグメント230、232、234、236の各々に連結され得る。そのような構成では、第1の入力コントローラは、第1のケーブルセグメント230を前進/後退させることができる。第2の入力コントローラは、第2のケーブルセグメント232を前進/後退させることができる。第3の入力コントローラは、第3のケーブルセグメント234を前進/後退させることができ、第4の入力コントローラは第4のケーブルセグメント236を前進/後退させることができる。第1のケーブルセグメント230及び第3のケーブルセグメント234は、近位滑車220の第1の滑車220aを共有することができ、第2のケーブルセグメント232及び第4のケーブルセグメント236は、近位滑車220の第2の滑車220bを共有することができる。この構成により、前述のように、外科用エフェクタ208及び外科用リスト206の外径を低減することができ、特定の実施形態では、例えば5~6mmなど、6mm未満の直径に低減することができる。
【0102】
図23A及び23Bは、例示的な「ニュートラル」状態における外科用エフェクタ208示しており、すなわち、第1のヨー角272、第2のヨー角274、及びピッチ角270は中心軸294からオフセットされておらず、ケーブルセグメントは前進又は後退させられていない。第1のヨー角272は、第1のケーブルセグメント230を前進/後退させ、第2のケーブルセグメント232を後退/前進させることによって操作することができる。
【0103】
図23Cは、ヨー軸292を中心にして第1のヨー角272及び第2のヨー角274で回転した外科用エフェクタ208の2つの鉗子反対208a、208bを示す。図23C及び図23Dは、いくつかの実施形態に係る、外科用エフェクタ208の潜在的なヨー及びピッチの動きを示す。図23Cに示すように、第1のケーブル230を前進させ、及び/又は第2のケーブル232を後退させることにより、遠位滑車220の第1の滑車220a及び第1の鉗子半体208aを、ヨー軸292を中心にして回転させ、それにより第1のヨー角272は増加する。一方、第1のケーブルセグメント230を後退させ、及び/又は第2のケーブルセグメント232を前進させることにより、遠位滑車220の第1の滑車220a及び第1の鉗子半体208aを、ヨー軸292を中心にして回転させ、それにより第1のヨー角272は減少する。同様に、第2のヨー角274は、第3のケーブル234を前進/後退させ、第4のケーブル236を後退/前進させることによって操作することができる。第3のケーブル234を前進させ、及び/又は第4のケーブル236を後退させることにより、遠位滑車220の第2の滑車220b及び第2の鉗子半体208bを、ヨー軸292を中心にして回転させ、それにより第2のヨー角274は増加する。一方、第3のケーブル234を後退させ、及び/又は第4のケーブル236を前進させることにより、遠位滑車220の第2の滑車220b及び第2の鉗子半体208bを、ヨー軸292を中心にして回転させ、それにより第2のヨー角274は減少する。
【0104】
図23Dは、ピッチ軸290を中心にしてピッチ角270で回転させた外科用エフェクタ208を示す。図23Dに示すように、外科用エフェクタ208のピッチ角270は、第1のケーブルセグメント230及び第2のケーブルセグメント232を後退/前進させ、第3のケーブルセグメント234及び第4のケーブルセグメント236を前進/後退させることによって操作することができる。一方、第1のケーブルセグメント230及び第2のケーブルセグメント232の両方を前進させ、第3のケーブルセグメント234及び第4のケーブルセグメント236の両方を後退させることにより、近位滑車220をヨー軸を中心にして回転させることができ、それによりピッチ角270は減少する。
【0105】
上記の記載は、各運動は非同期的であり、独立して制御され得る自由度を制御する構成である。しかしながら、特定のロボット外科手術では、自由度を同時に変更され得る。当業者は、制御可能な3つの自由度についての同時運動が、4つのケーブルセグメント230、232、234、236を前進及び後退させるためのより複雑な制御スキームによって達成され得ることに留意するであろう。いくつかの実施形態では、4つのケーブルセグメント230、232、234、236は金属から形成されており、他の実施形態では、4つのケーブルセグメントは非金属から形成されている。一実施形態では、この制御スキームは、ユーザの運動を手術部位における手術エフェクタ208の対応する動作に翻訳するように構成されたマスタデバイスのコンピュータプログラム命令を記憶するコンピュータベースの制御システムを含む。コンピュータプログラムは、入力コントローラを回転させてケーブルセグメントの長さ及び/又は運動を計算するために必要な電気負荷を測定するように構成され得る。コンピュータプログラムは、ケーブルセグメントの長さを変化させるために入力コントローラに必要とされる回転量を増加/減少させることによって、ケーブルがポリマーである場合など、ケーブルセグメントの弾性の変化を補償するように更に構成することができる。張力は、全ての入力コントローラの回転を協調的に増加又は減少させることによって調節することができる。同時に回転を増加させることによって張力を増加させることができ、同時に回転を減少させることによって張力を減少させることができる。コンピュータプログラムは、ケーブル内の最小レベルの張力を維持するように更に構成することができる。任意のケーブルにおける張力が最小張力閾値を下回って降下していると感知された場合、コンピュータプログラムは、全てのケーブルにおけるケーブル張力が最低張力閾値を上回るまで、協調して全ての入力コントローラの回転を増加させることができる。全てのケーブルにおける張力が、上限張力閾値を超えて上昇していると感知された場合、コンピュータプログラムは、任意のケーブルにおけるケーブル張力が上限張力閾値を下回るまで、協調して全ての入力コントローラの回転を減少させることができる。コンピュータプログラムは、具体的には作業部材が物体を保持している、又は一緒に押されている状況において、ケーブルセグメントに連結された入力コントローラを作動させるモータの負荷に基づいて、オペレータの把持強度を認識するように更に構成することができる。より一般的には、コンピュータプログラムは、ロボットアームを介した外科用器具の並進及び回転を更に制御するように更に構成することができ、特定の実施形態では、図16を参照して上述したように、駆動出力74を備えた器具ドライバ75を含むことができる。器具ドライバ75の駆動出力74から受信したトルクは、ケーブルセグメント230、232、234、236を別々に及び/又は独立して作動させるために使用することができる。特定の実施形態では、駆動出力74の各々を使用して、単一のケーブルセグメントを作動させることができる。
【0106】
図25Aは、遠位クレビス260の実施形態の上面斜視図を示す。遠位クレビス260は、2つのアーム264及び遠位方向転換面262を備えることができる。遠位クレビス260及び遠位方向転換面262は、図24A及び図24Bに示すように、近位滑車220と遠位滑車222との間に形成されるように構成され得る。任意選択で、遠位クレビス260の遠位方向転換面262は、第1の滑車セット(例えば、近位滑車220)と第2の滑車セット(例えば、遠位滑車222)との間に配置することができる。2つのアーム264は、遠位クレビス260の側部分から外科用エフェクタ208(図示せず)に向かって遠位に延びることができる。2つのアーム264の各々は、2つのアーム264の幅を通って延びる開口部266を備えるように構成され得る。開口部266は、図23B及び図24Bに示すように、細長いロッド282が開口部266及び遠位滑車222内に挿入され得るように位置付け及び構成され得る。細長いロッド282及び開口部266は、遠位滑車222の回転軸を画定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、遠位クレビス260及び遠位滑車222と関連付けられた回転軸は、図22に示すようなヨー軸292であることができる。
【0107】
遠位方向転換面262は、図25Aに示すように、遠位クレビス260の底部を通って延びるスロット、凹部、又は開口部268の周り又は周囲に延びる1つ以上の表面を備えることができる。いくつかの実施形態では、遠位方向転換面262は、遠位クレビス260の1つ以上の開口部268の外周を形成する1つ以上の表面の一部である。遠位方向転換面262は、角度をつけ、湾曲させ、又は傾斜させることができ、それにより上述のようにケーブルセグメントを後退又は前進させて、外科用エフェクタ208を作動させるとき、ケーブルセグメント230、232、234、236と遠位クレビス260との間の摩擦を低減することができる。いくつかの実施形態では、遠位方向転換面は、曲率半径を最大化することによってケーブル寿命を増加させるように構成される。遠位方向転換面262は、ケーブルセグメント230、232、234、236がもつれるか、又は捩れるのを防止するようにも構成され得る。いくつかの実施形態では、遠位方向転換面262は静止していることができる。いくつかの実施形態では、遠位方向転換面262は非静止であることができる。いくつかの実施形態では、遠位方向転換面262は、ケーブルセグメント230、232、234、236と係合するように構成された、回転可能なボール又は表面などの少なくとも1つの可動構成要素を備えることができる。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメントは、遠位リダイレクト面262の少なくとも一部と係合するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメントは、遠位方向転換面262の全体部分と係合するように構成され得る。いくつかの実施形態では、遠位クレビス260の遠位方向転換面262は、遠位方向転換面254とケーブルセグメントとの間の摩擦を低減するための材料でコーティングされてもよい。
【0108】
図25Bに示すように、ケーブルセグメント230、232、234、236は、遠位クレビス260を通って遠位滑車222(図示せず)に向かって延びる。図26Cは、遠位クレビス260及び遠位方向転換面262を通って延びた後のケーブルセグメント230、232、234、236の実施形態を示す。ケーブルセグメントは、遠位方向転換面262を通って延びたる後、遠位滑車222の周りに延びる。いくつかの実施形態では、図23Bに示すように、ケーブルセグメント230、232、234、236は、遠位滑車222の複数の溝(図示せず)の少なくとも一部分に能動的に係合する。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメントは、遠位滑車222の複数の溝の全体部分に能動的に係合する。図23B及び24Aに示すように、遠位滑車222の複数の溝の各々は、2つのケーブルセグメントを係合させるように構成され得る。例えば、図24A及び図25Cに示す実施形態では、第1のケーブルセグメント230及び第2のケーブルセグメント232は、遠位滑車222の第1の滑車222aと係合し、第3のケーブルセグメント234及び第4のケーブルセグメント236は、遠位滑車222の第2の滑車222bと係合する。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメント230、232、234、236は、互いに交差しないように構成され得る。ケーブルセグメント230、232、234、236は、外科用エフェクタ208に動作可能に連結された遠位滑車222の第1の滑車の第1の側の周りに延びるケーブルセグメントを後退又は前進させることが、外科用エフェクタ208を第1の運動度で作動させ、遠位滑車222の第1の滑車の第2の側の周りに延びる第2のケーブルセグメントを前進又は後退させることが、外科用エフェクタ208を第2の運動度で作動させるように更に構成することができる。
【0109】
図26Aは、近位クレビス250の実施形態の上面図を示す。近位クレビス250は、2つのアーム254及び近位方向転換面252を備えることができる。近位クレビス250及び近位方向転換面252は、細長いシャフト202(図示せず)と近位滑車220(図示せず)との間に形成されるように構成され得る。2つのアーム254は、図23Aに示すように、近位クレビス250の側部分から外科用エフェクタ208に向かって遠位に延びることができる。2つのアーム254の及びは、図26Cに示すように、2つのアーム254の幅を通って延びる開口部256を有するように構成され得る。開口部256は、図23B及び図26Cに示すように、第1の細長いロッド280が開口部256及び近位滑車220内に挿入され得るように位置付け及び構成され得る。第1の細長いロッド280及び開口部256は、遠位滑車222の回転軸を画定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、近位クレビス250及び近位滑車220に関連する回転軸は、図22に示すようにピッチ軸290であることができる。
【0110】
近位方向転換面252は、スロット、近位クレビス250の底部を通って延びるスロット、凹部、又は開口部258の周り若しくは周囲に延びる1つ以上の表面を備えることができる。いくつかの実施形態では、近位方向転換面252は、近位クレビス250の1つ以上の開口部268の外周を形成する1つ以上の表面の一部であることができる。近位方向転換面252は、角度をつけ、湾曲させ、又は傾斜させることができ、それにより上述のようにケーブルセグメントを後退又は前進させて、外科用エフェクタ208を作動させるとき、ケーブルセグメント230、232、234、236と近位クレビス250との間の摩擦を低減することができる。近位方向転換面252は、ケーブルセグメント230、232、234、236がもつれるか、又は捩れるのを防止するようにも構成され得る。いくつかの実施形態では、近位方向転換面252は静止していることができる。いくつかの実施形態では、近位方向転換面252は非静止であることができる。例えば、近位方向転換面252は、ケーブルセグメント230、232、234、236と係合するように構成された、回転可能なボール又は表面などの少なくとも1つの可動構成要素を備えることができる。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメント230、232、234、236は、近位方向転換面252の少なくとも一部分と係合するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメントは、近位方向転換面252の全体部分に係合するように構成され得る。
【0111】
図26Bに示すように、ケーブルセグメント230、232、234、236は、近位クレビス250を通って近位滑車220(図26Bには示されていない)に向かって延びるように構成され得る。図23B図24A及び図24Bは、近位クレビス250及び近位方向転換面252を通って延びた後のケーブルセグメント230、232、234、236の構成の実施形態を示す。ケーブルセグメントは、近位方向転換面252を通って延びた後、近位滑車220の周りに延びるように構成され得る。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメント230、232、234、236は、近位滑車220の複数の溝の少なくとも一部分と能動的に係合するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメント230、232、234、236は、近位滑車220の複数の溝の全体部分に能動的に係合するように構成され得る。図26Cに示すように、近位滑車220の複数の溝の各々は、2つのケーブルセグメントに係合するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメント230、232、234、236は、互いに交差しないように構成され得る。ケーブルセグメント230、232、234、236は、外科用エフェクタ208に動作可能に連結された近位滑車220の第1の滑車の第1の側の周りに延びるケーブルセグメントを後退又は前進させることが、外科用エフェクタ308を第1の運動度で作動させ、遠位滑車222の第1の滑車の第2の側の周りに延びる第2のケーブルセグメントを前進又は後退させることが、外科用エフェクタ208を第2の運動度で作動させるように更に構成され得る。
【0112】
図26Cは、近位クレビス250の側面図を示す。近位クレビスは、近位方向転換面252を備える。近位方向転換面252は、ケーブルセグメント230、232、234、236を、近位クレビス250及び細長いシャフト202(図示せず)の実質的に中央付近から近位滑車220の溝に方向転換するように構成され得る。いくつかの実施形態では、近位クレビス250の近位方向転換面252は、1つ以上の可動面を備えることができる。いくつかの実施形態では、近位クレビス250の近位方向転換面252は、近位方向転換面252とケーブルセグメントとの間の摩擦を低減するための材料でコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメントは、近位方向転換面252の少なくとも一部分と係合するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ケーブルセグメントは、近位方向転換面252の全体部分に係合するように構成され得る。
【0113】
3.実施システム及び用語
本明細書に開示された実施形態は、ロボット制御可能な医療システムのためのシステム、方法、及び装置を提供する。本明細書に記載された様々な実施形態は、ケーブルセグメントによって共有された1つ以上の滑車を備えるリストを有するロボット制御可能な医療システムを含む。
【0114】
本明細書で使用するとき、用語「連結する」、「連結している」、「連結された」、又は単語連結の他の変形は、間接的接続又は直接的接続のいずれかを示し得ることに留意されたい。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「連結される」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されるか、又は第2の構成要素に直接的に接続されてもよい。
【0115】
本明細書に記載のロボット動作作動機能は、プロセッサ可読媒体又はコンピュータ可読媒体上に1つ以上の命令として記憶することができる。用語「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータ又はプロセッサによってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体を指す。実施例として、限定するものではないが、そのような媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、若しくは他の磁気記憶デバイス、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる任意の他の媒体を含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、有形であり、非一時的であってもよいことに留意されたい。本明細書で使用するとき、用語「コード」は、コンピューティングデバイス又はプロセッサによって実行可能であるソフトウェア、命令、コード、又はデータを指してもよい。
【0116】
本明細書に開示される方法は、記載される方法を達成するための1つ以上の工程又は行為を含む。方法工程及び/又は行為は、特許請求の範囲から逸脱することなく互いに交換されてもよい。換言すれば、記載されている方法の適切な動作のために特定の順序の工程又は行為が必要とされない限り、特許請求の範囲から逸脱することなく、特定の工程及び/又は行為の順序及び/又は使用を修正してもよい。
【0117】
本明細書で使用するとき、用語「複数」は、2つ以上を示す。例えば、複数の構成要素は、2つ以上の構成要素を示す。用語「判定する」は、多種多様な行為を包含し、したがって、「判定する」は、計算する、演算する、処理する、導出する、調査する、ルックアップする(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造を見ること)、確認することなどを含むことができる。また、「判定する」は、受け取る(例えば、情報を受信すること)、アクセスする(例えば、メモリ内のデータにアクセスすること)などを含むことができる。また、「判定する」は、解決する、選択する、選出する、確立するなどを含むことができる。
【0118】
語句「基づく」は、別途明示的に指定されない限り、「のみに基づく」ことを意味しない。換言すれば、語句「基づく」は、「のみに基づく」及び「少なくとも基づく」の両方を記載する。
【0119】
開示される実施形態の前述の説明は、任意の当業者が本発明を製造すること、又は使用することを可能にするために提供される。これらの実施態様に対する種々の修正は、当業者には容易に明らかになり、かつ、本明細書で規定される一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施態様に適用することができる。例えば、当業者であれば、締結、装着、結合、又は係合ツール構成要素の均等の方法、特定の作動運動を生み出すための均等の機構、及び電気エネルギーを送達するための均等の機構など、多くの対応する代替的かつ均等の構造的詳細を使用することができると理解されるであろう。したがって、本発明は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原則及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるものである。
【0120】
〔実施の態様〕
(1) 外科用器具であって、
複数の運動度を有する外科用エフェクタと、
前記外科用エフェクタに連結されたリストであって、少なくとも第1の滑車を含むリストと、
前記外科用エフェクタを前記複数の運動度で作動させるために、前記リストを通って前記外科用エフェクタまで延びる少なくとも2つのケーブルセグメントであって、前記第1の滑車の両側に係合し、かつ互いに独立している少なくとも2つのケーブルセグメントと、
を備える外科用器具。
(2) 前記第1の滑車の両側に係合する前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、同じケーブルの一部ではない、実施態様1に記載の外科用器具。
(3) 前記第1の滑車の両側に係合する前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立して移動可能である、実施態様1に記載の外科用器具。
(4) 前記第1の滑車の両側に係合する前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立して作動可能である、実施態様1に記載の外科用器具。
(5) 前記外科用エフェクタの前記複数の運動度は、ピッチ軸を中心にした回転を含み、前記第1の滑車も前記ピッチ軸を中心にして回転する、実施態様1に記載の外科用器具。
【0121】
(6) 前記外科用エフェクタは、前記リストを通って前記外科用エフェクタまで延びるN+1つのケーブルセグメントによって制御される、少なくともNの運動自由度を有する、実施態様1に記載の外科用器具。
(7) 前記外科用エフェクタは少なくとも3の運動度を有し、前記外科用システムは少なくとも4つのケーブルセグメントを含む、実施態様1に記載の外科用器具。
(8) 前記3の運動度は、前記外科用エフェクタの第1のヨー角、第2のヨー角、及びピッチ角を含む、実施態様7に記載の外科用器具。
(9) 前記リストは、前記外科用エフェクタのピッチ軸に沿って位置合わせされた少なくとも2つの滑車を含む、実施態様1に記載の外科用器具。
(10) 前記少なくとも2つの滑車は、互いに隣接して位置付けされている、実施態様9に記載の外科用器具。
【0122】
(11) 前記少なくとも2つの滑車は、互いに離間しており、前記リストの中心軸からオフセットされている、実施態様9に記載の外科用器具。
(12) 前記少なくとも2つの滑車は、前記ピッチ軸と位置合わせされた前記リスト内の唯一の滑車である、実施態様9に記載の外科用器具。
(13) 前記第1の滑車は、近位の滑車セットの一部である、実施態様1に記載の外科用器具。
(14) 前記外科用器具は、前記近位の滑車セットに対して遠位の滑車セットを更に備える、実施態様13に記載の外科用器具。
(15) 1つ以上の方向転換面が、前記近位の滑車セットと前記遠位の滑車セットとの間に形成されている、実施態様13に記載の外科用器具。
【0123】
(16) 前記1つ以上の方向転換面は静止している、実施態様15に記載の外科用器具。
(17) 外科用器具であって、
1つ以上の滑車を含むリストと、
Nの運動度を有する外科用エフェクタであって、前記Nの運動度のうちの少なくとも1は、前記リストを通って延びるピッチ軸を中心にした回転を含む、外科用エフェクタと、を備え、
少なくともN+1つのケーブルセグメントは、前記リストを通って延びて、前記外科用エフェクタを前記Nの運動度で作動させ、
前記N+1つのケーブルセグメントのうちの少なくとも2つが、前記リスト内の前記滑車のうちの1つを共有する、
外科用器具。
(18) 前記外科用エフェクタは少なくとも2の運動度を有し、前記外科用エフェクタは、第1の滑車と係合する少なくとも第1のケーブルセグメント及び第2のケーブルセグメントを備え、前記第1のケーブルセグメント及び前記第2のケーブルセグメントは互いに独立している、実施態様17に記載の外科用器具。
(19) 前記リストは遠位クレビス及び近位クレビスを含む、実施態様17に記載の外科用器具。
(20) 前記1つ以上の滑車は、第1の滑車セットの一部であり、前記リストは、前記第1の滑車セットの遠位に位置付けされた第2の滑車セットを含む、実施態様17に記載の外科用器具。
【0124】
(21) 前記リストの前記遠位クレビスは、前記第1の滑車セットと前記第2の滑車セットとの間に方向転換面を含む、実施態様19に記載の外科用器具。
(22) 前記方向転換面は静止面である、実施態様21に記載の外科用器具。
(23) 外科用システムであって、
外科用器具であって、
外科用エフェクタと、
前記外科用エフェクタに連結されたリストであって、前記リストは近位クレビス及び遠位クレビスを備え、前記遠位クレビスは1つ以上の静止方向転換面を備える、リストと、
前記外科用エフェクタを作動させるために、前記リストを通って前記外科用エフェクタまで延びる少なくとも2つのケーブルセグメントであって、前記遠位クレビス内の前記1つ以上の静止方向転換面に係合する少なくとも2つのケーブルセグメントと、
を備える外科用器具、
を備える外科用システム。
(24) 前記外科用エフェクタはロボットアームに連結されており、複数の運動度を有し、
前記リストは、少なくとも第1の滑車を備え、
前記少なくとも2つのケーブルセグメントは、互いに独立しており、前記第1の滑車の両側に係合するように構成されている、
実施態様23に記載の外科用システム。
(25) 前記外科用器具は、前記近位クレビス内の1つ以上の滑車と、前記遠位クレビス内の1つ以上の滑車とを更に備える、実施態様23に記載の外科用システム。
【0125】
(26) 前記静止方向転換面は、前記近位クレビス内の前記1つ以上の滑車と前記遠位クレビス内の前記1つ以上の滑車との間に位置付けされている、実施態様24に記載の外科用システム。
(27) 前記遠位クレビス内の前記1つ以上の静止方向転換面は、スロットの外周を形成する1つ以上の表面の一部である、実施態様23に記載の外科用システム。
(28) 前記外科用器具は、前記近位クレビス内に1つ以上の静止方向転換面を更に備える、実施態様23に記載の外科用システム。
(29) 複数の運動度で外科用エフェクタを作動させる方法であって、
前記外科用エフェクタに連結されたリスト内の第1の滑車の第1の側の周りに延びる第1のケーブルセグメントを前進又は後退させて、前記外科用エフェクタを第1の運動度で作動させることと、
前記第1の滑車の第2の側の周りに延びる第2のケーブルセグメントを前進又は後退させて、前記外科用エフェクタを第2の運動度で作動させることと、
を含む方法。
(30) 前記第1のケーブルセグメントを前進又は後退させることによって、かつ前記第2の滑車セグメントを前進又は後退させることによって、前記第1の滑車の軸を通って延びるピッチ軸を中心にして前記外科用エフェクタを回転させることを更に含む、実施態様29に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A
図24B
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図26C