IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7391892UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤
<>
  • 特許-UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤 図1
  • 特許-UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤 図2
  • 特許-UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤 図3
  • 特許-UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤 図4
  • 特許-UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤 図5
  • 特許-UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤 図6
  • 特許-UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】UV及び高エネルギー可視光の重合性吸収剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/34 20060101AFI20231128BHJP
   C08F 20/56 20060101ALI20231128BHJP
   C08F 12/26 20060101ALI20231128BHJP
   C08F 16/12 20060101ALI20231128BHJP
   C08F 34/02 20060101ALI20231128BHJP
   C08F 26/00 20060101ALI20231128BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20231128BHJP
   C07C 215/28 20060101ALI20231128BHJP
   C07C 217/48 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C08F20/34
C08F20/56
C08F12/26
C08F16/12
C08F34/02
C08F26/00
G02C7/04
C07C215/28 CSP
C07C217/48
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020572376
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2019054246
(87)【国際公開番号】W WO2020003022
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】62/691,666
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/398,722
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マハルビ・グラーム
(72)【発明者】
【氏名】マハデバン・シブクマル
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド・スティーブン・シー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ソノダ・レイラニ・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】シンハ・ドーラ
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
G02C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
Yは、連結基であり、
は、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む重合性基であり、
が、H又はC~Cアルキルであり、
及びRは、独立して、C~Cアルキル又はシクロアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、
及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルである、化合物。
【請求項2】
が、Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びRが、独立してH又はメチルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Yが、C~Cアルキレン、アルキレンオキシ、C~Cオキサアルキレン、C~Cチアアルキレン、C~Cアルキレン-エステル-C~Cアルキレン、C~Cアルキレン-アミド-C~Cアルキレン、又はC~Cアルキレン-アミン-C~Cアルキレンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
、(メタ)アクリレートを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
、R、及びRが、独立して、C~Cアルキルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェノキシ)エチルメタクリレート;
2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)チオ)エチルメタクリレート;
2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)(メチル)アミノ)エチルメタクリレート;
2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)アミノ)エチルメタクリレート;
N-(2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェノキシ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)チオ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)アミノ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)(メチル)アミノ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェノキシ)エチル)アクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)チオ)エチル)アクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)アミノ)エチル)アクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)(メチル)アミノ)エチル)アクリルアミド;
3-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)プロピルメタクリレート;
N-(3-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)プロピル)メタクリルアミド;
4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェネチルメタクリレート;又は
N-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェネチル)メタクリルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である眼科用デバイスであって、前記反応性混合物が、前記眼科用デバイスを作製するのに好適な1以上のモノマーと、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を含む重合性高エネルギー光吸収化合物と、を含む、眼科用デバイス。
【請求項9】
前記反応性混合物が、第2の重合性化合物を更に含む、請求項8に記載の眼科用デバイス。
【請求項10】
前記第2の重合性化合物が、UV吸収化合物である、請求項9に記載の眼科用デバイス。
【請求項11】
前記UV吸収化合物が、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又はこれらの混合物を含む、請求項10に記載の眼科用デバイス。
【請求項12】
前記眼科用デバイスを作製するのに好適な前記モノマーが、親水性成分、シリコーン含有成分、又はこれらの混合物を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項13】
コンタクトレンズ、角膜オンレー、角膜インレー、眼内レンズ、又はオーバーレイレンズである、請求項8~12のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項14】
ヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項8~13のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項15】
眼科用デバイスを作製するための方法であって、
(a)請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、1以上のデバイス形成モノマー、及びラジカル開始剤を含有する反応性混合物を提供することと、
(b)前記反応性混合物を重合させて前記眼科用デバイスを形成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年4月30日出願の米国特許出願第16/398,722号及び2018年6月29日出願の米国特許仮出願第62/691,666号に対する優先権を主張するものであり、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、UV及び高エネルギー可視光吸収剤に関する。より具体的には、本発明は、様々な波長のUV及び/又は高エネルギー可視光を吸収し、更に物品に組み込まれたときに視覚的に透明である、重合性官能基を有する化合物に関する。したがって、化合物は、眼科用デバイスなどの生物医学用デバイスを含むポリマー物品において使用することができる。
【背景技術】
【0003】
UV及び高エネルギー可視光などの太陽からの高エネルギー放射線は、細胞損傷に関与することが既知である。波長が280nm未満の放射線の大部分は、地球の大気によって吸収されるが、280~400nmの範囲の波長を有する光子は、角膜の変性変化、並びに加齢関連白内障及び黄斑変性症を含むいくつかの眼障害に関連している。(Statement on Ocular Ultraviolet Radiation Hazards in Sunlight,American Optometric Association,November 10,1993を参照)。ヒト角膜は、最大320nmの波長の放射線をいくらか吸収するが(30%透過)(Doutch,J.J.、Quantock,A.J.、Joyce,N.C.、Meek,K.M、Biophys.J、2012、102、1258~1264)、320~400nmの範囲の波長の範囲の放射線から眼の奥を保護することにおいて非効率的である。
【0004】
コンタクトレンズ規格は、380nmで紫外線波長の上側を規定する。米国検眼協会によって定義された現行のクラスIのUV吸収基準は、280~315nmの放射線(UVB)の>99%及び316~380nmの放射線(UVA)の>90%が、コンタクトレンズによって吸収されることを必要とする。この基準は、角膜の保護(<1%のUV B透過率)に効果的に対処するが、網膜損傷に関連するより低エネルギー紫外線(>380かつ<400nm)(Ham,W.T,Mueller,H.A.,Sliney,D.H.Nature 1976;260(5547):153-5)にも高エネルギー可視放射線にもほとんど注意が払われていない。
【0005】
高エネルギー可視光線はまた、視覚的な不快感又は概日リズムの乱れを引き起こす場合がある。例えば、コンピュータ及び電子デバイススクリーン、フラットスクリーンテレビ、エネルギー効率の高いライト、及びLEDライトは、高エネルギー可視光を発することが知られている。このような光源への長期曝露は、眼精疲労を引き起こす場合がある。夜間に高エネルギー可視光を発するデバイスを見ることも、自然な概日リズムを乱して、例えば、睡眠不足につながることが推測される。
【0006】
眼に達する前に高エネルギー光を吸収することは、眼科分野において望ましい目標であり続けている。しかしながら、特定の波長範囲が吸収される程度も重要である。例えば、UV A及びUV Bの範囲では、できるだけ多くの放射線を吸収することが望ましい場合がある。一方、高エネルギー可視光は可視スペクトルの一部を形成するので、このような光を完全に吸収すると視力に悪影響を及ぼし得る。したがって、高エネルギー可視光では、部分吸収がより望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高エネルギー放射線の望ましくない波長の標的吸収を提供し、機能的製品に加工可能な材料が必要とされている。高エネルギー放射線を吸収又は減衰させる化合物は、眼科用デバイスにおいて使用されるとき、角膜、並びに眼環境における内部細胞を、劣化、疲労、及び/又は概日リズムの乱れから保護するのに役立ち得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、UV及び/又は高エネルギー可視(HEV)光は吸収するが、約450nmよりも長い波長は実質的に透過する(例えば、80%超を透過)、高エネルギー光吸収化合物に関する。したがって、化合物は、UV(UVA及びUVB)、低エネルギーUV光(385nm~400nm)、又はHEV(例えば、400~450nm)などの高エネルギー光の標的吸収を提供するのに有効である。
【0009】
また、化合物は、重合性であり、全般的に、他の原材料に加えて、ソフトコンタクトレンズなどの眼科用デバイスを作製するために使用される重合及び加工の条件にも適合する。したがって、既存の製造プロセス及び設備を著しく変更する必要なしに、化合物を最終生成物に容易に共有結合的に組み込むことができる。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、式Iの化合物であって、
【0011】
【化1】
式中、Yは、連結基であり、Pは、重合性基であり、Rが、H又はC~Cアルキルであり、R及びRは、独立して、C~Cアルキル又はシクロアルキルであり、Rは、C~Cアルキルであり、R及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルである、化合物を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、眼科用デバイスを作製するのに好適な1つ以上のモノマーと、本明細書に記載の式Iの化合物を含む重合性高エネルギー光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である眼科用デバイスを提供する。
【0013】
更なる態様では、本発明は、眼科用デバイスを作製する方法を提供する。方法は、(a)本明細書に記載の式Iの化合物、1つ以上のデバイス形成モノマー、及びラジカル開始剤を含有する反応性混合物を提供することと、(b)反応性混合物を重合させて眼科用デバイスを形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】化合物(F)、(M)、及び(P)の0.2mMメタノール溶液のUV-VIS透過スペクトルを示す。
図2】化合物(F)及び(M)を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
図3】2重量パーセントの化合物(F)及び様々なレベルのNorbloc(登録商標)を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
図4】化合物(M)を含む従来のヒドロゲルコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
図5】直射日光への曝露後の、化合物(F)を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(7A)のUV-VIS透過スペクトルを示す。
図6】屋内照明への曝露後の、化合物(F)を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(7B)のUV-VIS透過スペクトルを示す。
図7】2重量パーセントの化合物(N)(実施例12)を含有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下の説明に記載されている構造又はプロセス工程の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、本明細書に記載の教示を用いた様々な方法によって実行又は実施することが可能である。
【0016】
上述のように、一態様では、本発明は、UV/HEV吸収化合物を提供する。化合物は、重合性官能基を含有する。かなりの量のUV光に加えて、若干量のHEV光を吸収する眼科用デバイスを、本明細書に記載のとおり容易に調製できることが見出された。
【0017】
式Iの化合物は、屋内照明に曝露されたときに実質的に光安定性であることも見出されており、これは、当該化合物が眼科用デバイスに組み込まれたときに時間がたってもそれほど分解を受けないことを意味する。このような光安定性は、21週間などの試験期間にわたって眼科用デバイスのUV/Vis透過スペクトルを測定することによって判定することができる。試験期間にわたるスペクトルの有意な変化は、光安定性の欠如を示す。例として、本発明の化合物が組み込まれた眼科用デバイス(コンタクトレンズなど)は、室温で21週間にわたって屋内オフィス照明に曝露したとき、380~700nmの波長範囲にわたって、5%以下、好ましくは2%以下、又はより好ましくは0.5%以下の平均透過率の変化を示す。更なる例として、本発明の化合物を含有する眼科用デバイス(コンタクトレンズなど)は、室温で21週間にわたって屋内オフィス照明に曝露したとき、400~500nmの波長範囲にわたって、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更により好ましくは1%以下の平均透過率の変化を示す。このような変化は、21週間目及びゼロ時における(380~700nmの範囲にわたる)平均透過率の差の絶対値として計算することができる。
【0018】
したがって、本発明の化合物は、可視スペクトルでは透過するが、UV(UVA、UVB)、及び/又はHEVを首尾よく吸収することができる。化合物は重合性であり、また実質的に光安定性でもある。したがって、化合物は、生物医学用デバイス及び眼科用デバイスを含む様々な製品に組み込むのに好適である。
【0019】
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0020】
特段の規定がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008,edited by:Richard G.Jones,Jaroslav Kahovec,Robert Stepto,Edward S.Wilks,Michael Hess,Tatsuki Kitayama,and W.Val Metanomskiに開示される定義に一致する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本明細書で使用するとき、「(メタ)」という用語は、任意選択のメチル置換を意味する。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0022】
どこに化学構造が記載されていようと、構造における置換基について開示された選択肢を任意の組み合わせで組み合わせてもよいことを理解すべきである。したがって、構造が置換基R及びR**を含有しており、これらがそれぞれ3つの可能性のある基のリストを含んでいる場合、9とおりの組み合わせが開示される。特性の組み合わせについても同じことが当てはまる。
【0023】
一般式[***における「n」などの下付き文字が、ポリマーの化学式における繰り返し単位の数を表示するために使用されるとき、式は、高分子の数平均分子量を表すと解釈すべきである。
【0024】
「個体」という用語は、ヒト及び脊椎動物を含む。
【0025】
「生物医学用デバイス」という用語は、哺乳類の組織又は体液の中又は上のいずれか、好ましくは、ヒトの組織又は体液の中又は上のいずれかにおいて用いられるように設計されている、任意の物品を指す。これらのデバイスの例としては、創傷包帯、シーラント、組織補填体、薬物送達システム、コーティング、癒着防止バリア、カテーテル、インプラント、ステント、並びに眼内レンズ及びコンタクトレンズなどの眼科用デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。生物医学用デバイスは、眼科用デバイス、具体的にはコンタクトレンズ、最も具体的にはシリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルから作製されるコンタクトレンズであってもよい。
【0026】
「眼の表面」という用語は、角膜、結膜、涙腺、副涙腺、鼻涙管、及びマイボーム腺の表面及び腺上皮、並びにそれらの先端及び基部マトリクス、点、並びに神経支配による上皮の連続性と内分泌系及び免疫系との両方によって機能的システムとして連結されている瞼を含む隣接した又は関連する構造を含む。
【0027】
「眼科用デバイス」という用語は、眼若しくは眼の任意の一部(眼の表面を含む)の中又は上に存在する任意の装置を指す。これらのデバイスは、光学補正、外見向上、視力強化、治療効果(例えば、包帯として)、若しくは医薬成分及び栄養補助成分などの活性成分の供給、又は前述の任意の組み合わせを提供することができる。眼科用デバイスの例としては、限定されるものではないが、レンズ、光学及び眼挿入物(限定されるものではないが、涙点プラグを含む)などが挙げられる。「レンズ」は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズ、眼内レンズ、及びオーバーレイレンズを含む。眼科用デバイスは、コンタクトレンズを含み得る。
【0028】
「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用デバイスを指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくはモニタリング、紫外線吸収、可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの任意の組み合わせを含む、矯正的、美容的、又は治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、技術分野で既知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水率、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理、機械、若しくは光学特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有するハイブリッドレンズであり得る。
【0029】
本発明の生物医学用デバイス、眼科用デバイス、及びレンズは、シリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルで構成され得る。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、硬化されたデバイス内で互いに共有結合した、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有成分を含有する。
【0030】
「標的巨大分子」は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、希釈剤などを含む反応性モノマー混合物から合成されている巨大分子を意味する。
【0031】
「重合性化合物」という用語は、1つ又は2つ以上の重合性基を含有する化合物を意味する。この用語は、例えば、モノマー、マクロマー、オリゴマー、プレポリマー、架橋剤などを包含する。
【0032】
「重合性基」は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合、例えばラジカル重合開始条件に供されたときに重合することができる炭素-炭素二重結合などの、連鎖成長重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、及び他のビニル基が挙げられる。好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、及びスチリル官能基、並びに前述のうちの任意の混合物を含む。より好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。重合性基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。例えば、(メタ)アクリルアミド中の窒素原子は、水素に結合されてもよく、又は水素は、アルキル若しくはシクロアルキル(それ自体が更に置換されてもよい)で置換されてもよい。
【0033】
限定されるものではないが、バルク、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む、任意の種類のフリーラジカル重合、並びに、安定性フリーラジカル重合、窒素酸化物媒介リビング重合、原子移動ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、有機テルル媒介リビングラジカル重合などの、制御ラジカル重合法のいずれかを使用することができる。
【0034】
「モノマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる単官能性分子である。いくつかのモノマーは、架橋剤として作用することができる二官能性不純物を有する。「親水性モノマー」はまた、5重量%の濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合したときに、透明な単相溶液が得られるモノマーである。「親水性成分」は、5重量%の濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合したときに、透明な単相溶液が得られる、モノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。「疎水性成分」は、25℃で脱イオン水中でわずかに可溶性又は不溶性であるモノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。
【0035】
「巨大分子」は、1500を超える数平均分子量を有する有機化合物であり、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0036】
「マクロモノマー」又は「マクロマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる1つの基を有する巨大分子である。一般的に、マクロマーの化学構造は、標的高分子の化学構造とは異なり、すなわち、マクロマーのペンダント基の繰り返し単位は、標的高分子又はその主鎖の繰り返し単位とは異なる。モノマーとマクロマーとの間の差は、ペンダント基の化学構造、分子量、及び分子量分布のうちの1つに過ぎない。結果として、かつ本明細書で使用するとき、特許文献は、約1,500ダルトン以下の比較的低い分子量を有する重合性化合物としてモノマーを定義することがあり、これは、本質的にいくつかのマクロマーを含む。具体的には、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(mPDMS)及びモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(OH-mPDMS)は、モノマー又はマクロマーと称され得る。更に、特許文献は、1つ又は2つ以上の重合性基を有するものとしてマクロマーを定義することがあり、マクロマーの一般的な定義を本質的に拡大してプレポリマーを含む。結果として、かつ本明細書で使用するとき、二官能性及び多官能性マクロマー、プレポリマー、及び架橋剤は、互換的に使用され得る。
【0037】
「シリコーン含有成分」は、通常は、シロキシ基、シロキサン基、カルボシロキサン基、及びこれらの混合物の形態で、少なくとも1つのケイ素-酸素結合を有する、反応性混合物中のモノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、又はポリマーである。
【0038】
本発明において有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,760,100号、同第5,849,811号、同第5,962,548号、同第5,965,631号、同第5,998,498号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,943,203号、同第6,951,894号、同第7,052,131号、同第7,247,692号、同第7,396,890号、同第7,461,937号、同第7,468,398号、同第7,538,146号、同第7,553,880号、同第7,572,841号、同第7,666,921号、同第7,691,916号、同第7,786,185号、同第7,825,170号、同第7,915,323号、同第7,994,356号、同第8,022,158号、同第8,163,206号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,415,404号、同第8,420,711号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,568,626号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第8,980,972号、同第9,056,878号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9,156,934号、同第9,170,349号、同第9,217,813号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、及び欧州特許第080539号に見出すことができる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
「ポリマー」は、重合中に使用されるモノマーの繰り返し単位で構成される標的巨大分子である。
【0040】
「ホモポリマー」は、1つのモノマーから作製したポリマーであり、「コポリマー」は、2つ又は3つ以上のモノマーから作製したポリマーであり、「ターポリマー」は、3つのモノマーから作製したポリマーである。「ブロックコポリマー」は、組成上異なるブロック又はセグメントから成る。ジブロックコポリマーは、2つのブロックを有する。トリブロックコポリマーは、3つのブロックを有する。「くし形又はグラフトコポリマー」は、少なくとも1つのマクロマーから作製される。
【0041】
「繰り返し単位」は、特定のモノマー又はマクロマーの重合に対応する、ポリマー内の原子の最小の基である。
【0042】
「開始剤」は、続いてモノマーと反応してフリーラジカル重合反応を開始することができるラジカルに分解可能である分子である。熱開始剤は、温度に応じて特定の速度で分解し、典型的な例は、1,1’-アゾビスイソブチロニトリル及び4,4’-アオビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、及びラウロイルパーオキシドなどのパーオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムなどの過酸、並びに様々な酸化還元系である。光開始剤は、光化学プロセスにより分解し、典型例は、ベンジル、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、及びこれらの混合物の誘導体、並びに様々なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシド、並びにこれらの組み合わせである。
【0043】
「架橋剤」は、分子上の2つ又は3つ以上の位置でフリーラジカル重合を受け、それによって分岐点及びポリマーネットワークを作り出すことができる、二官能性又は多官能性モノマー又はマクロマーである。一般的な例は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレートなどである。
【0044】
「プレポリマー」は、更に反応を受けてポリマーを形成可能な、残存している重合性基を含有するモノマーの反応生成物である。
【0045】
「ポリマーネットワーク」は、膨潤し得るが溶媒に溶解できない架橋巨大分子である。「ヒドロゲル」は、典型的には少なくとも10重量%の水を吸収しながら、水又は水溶液中で膨潤するポリマーネットワークである。「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分と共に少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルである。親水性成分はまた、非反応性ポリマーを含んでもよい。
【0046】
「従来のヒドロゲル」は、いかなるシロキシ、シロキサン、又はカルボシロキサン基も有しない成分から作製されたポリマーネットワークを指す。従来のヒドロゲルは、親水性モノマーを含む反応性混合物から調製される。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(「NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(「DMA」)、又は酢酸ビニルが挙げられる。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。市販の従来のヒドロゲルとしては、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(それらの変形の全てを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるポリマーネットワークを指す。シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変形の全てを含む)に加えて、米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されるようなシリコーンヒドロゲルが挙げられる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
「相互貫入ポリマーネットワーク」は、分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合しておらず、制動化学結合なしに分離することができない、2つ又は3つ以上のネットワークを含む。「半貫入ポリマーネットワーク」は、1つ又は2つ以上のネットワークと、少なくとも1つのネットワークと少なくとも1つのポリマーとの間の分子レベルで何らかの混合によって特徴付けられる1つ又は2つ以上のポリマーと、を含む。異なるポリマーの混合物は、「ポリマーブレンド」である。半貫入ネットワークは、技術的にはポリマーブレンドであるが、場合によっては、ポリマーは、容易に除去することができないように絡まっている。
【0049】
「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」という用語は、一緒に混合され、重合条件にさらされたときに、従来の又は本発明のシリコーンヒドロゲルに加えて、それから作製される生物医学用デバイス、眼科用デバイス、及びコンタクトレンズを形成する成分(反応性及び非反応性の両方)の混合物を指す。反応性モノマー混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、及び反応開始剤などの反応性成分、湿潤剤、離型剤、ポリマー、染料などの添加剤、光吸収化合物、例えば、UV吸収剤、顔料、染料、及びフォトクロミック化合物(それらのいずれも反応性又は非反応性であってもよいが、得られる生物医学装置内に保持されることが可能である)、並びに医薬化合物及び栄養補助化合物、及び任意の希釈剤を含んでもよい。作製される生物医学用デバイス及びその使用目的に基づき、多様な添加剤が添加され得ることが理解されるであろう。反応性混合物の成分の濃度は、希釈剤を除いて、反応性混合物中の全ての成分の重量百分率として表される。希釈剤が使用される場合、それらの濃度は、反応性混合物中の全ての成分及び希釈剤の量に基づき重量百分率として表される。
【0050】
「反応性成分」は、共有結合、水素結合、静電相互作用、相互貫入ポリマーネットワークの形成、又は任意の他の手段により、得られるヒドロゲルのポリマーネットワークの化学構造の一部となる、反応性混合物の成分である。
【0051】
「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」という用語は、少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルコンタクトレンズを指す。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは全般的に、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過性を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を機能させて酸素を眼に送る。
【0052】
「多官能性」という用語は、2つ又は3つ以上の重合性基を有する成分を指す。「単官能性」という用語は、1つの重合性基を有する成分を指す。
【0053】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0054】
「アルキル」は、指定された数の炭素原子を含有する任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基を指す。数が指定されていない場合、アルキル(アルキル上の任意選択の置換基を含む)は、1~16個の炭素原子を含有していてよい。好ましくは、アルキル基は、1~10個の炭素原子、あるいは1~8個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を含有する。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-、sec-及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、3-エチルブチルなどが挙げられる。アルキル上の置換基の例としては、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アルキレン」は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、及び-CHCHCHCH-などの、二価アルキル基を意味する。
【0055】
「ハロアルキル」は、1個又は2個以上のハロゲン原子で置換された上で定義されるアルキル基を指し、各ハロゲンは、独立して、F、Cl、Br、又はIである。好ましいハロゲンは、Fである。好ましいハロアルキル基は、1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素、更により好ましくは1~2個の炭素を含有する。「ハロアルキル」は、-CF-又は-CFCF-などのペルハロアルキル基を含む。「ハロアルキレン」は、-CHCF-などの二価ハロアルキル基を意味する。
【0056】
「シクロアルキル」は、指定された数の環炭素原子を含有する任意選択で置換された環状炭化水素を指す。数が示されていない場合、シクロアルキルは、3~12個の環炭素原子を含有してもよい。好ましくは、C~Cシクロアルキル基、C~Cシクロアルキル、より好ましくはC~Cシクロアルキル、更により好ましくはC~Cシクロアルキルである。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「シクロアルキレン」は、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、又は1,4-シクロヘキシレンなどの二価シクロアルキル基を意味する。
【0057】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1つの環炭素が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されている、上で定義されるシクロアルキル環又は環系を指す。ヘテロシクロアルキル環は、任意選択で、他のヘテロシクロアルキル環及び/又は非芳香族炭化水素環及び/又はフェニル環に縮合しているか、又は他の方法で結合される。好ましいヘテロシクロアルキル基は、5~7員を有する。より好ましいヘテロシクロアルキル基は、5又は6員を有する。ヘテロシクロアルキレンは、二価ヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0058】
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を含有する、任意選択で置換された芳香族炭化水素環系を指す。アリール基は、示された数の環炭素原子を含有する。数が示されていない場合、アリールは、6~14個の環炭素原子を含有してもよい。芳香環は、任意選択で、他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環に縮合していてもよく、又は他の方法で結合されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルが挙げられる。アリール上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アリーレン」は、二価アリール基、例えば1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、又は1,4-フェニレンを意味する。
【0059】
「ヘテロアリール」は、上で定義したように、少なくとも1つの環炭素原子が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されているアリール環又は環系を指す。ヘテロアリール環は、1つ又は2つ以上のヘテロアリール環、芳香族若しくは非芳香族炭化水素環、又はヘテロシクロアルキル環に縮合していてもよく、又は別の方法で結合されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、及びチエニルが挙げられる。「ヘテロアリーレン」は、二価ヘテロアリール基を意味する。
【0060】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びイソプロポキシが挙げられる。「チオアルキル」は、硫黄架橋を介して親分子に結合しているアルキル基を意味する。チオアルキル基の例としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、及びイソプロピルチオが挙げられる。「アリールオキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアリール基を指す。例としては、フェノキシが挙げられる。「環状アルコキシ」は、酸素架橋を介して親部分に結合しているシクロアルキル基を意味する。
【0061】
「アルキルアミン」は、-NH架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルキレンアミンは、-CHCHNH-などの二価アルキルアミン基を意味する。
【0062】
「シロキサニル」は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造を指す。したがって、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si基(すなわち、シロキサン基)を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を意味する。「シロキサニル」は、モノマー(例えば、Si-O-Si)並びにオリゴマー/ポリマー構造(例えば、-[Si-O]-であって、式中、nは2又は3以上である、構造)を包含する。シロキサニル基中の各ケイ素原子は、それらの原子価を完全なものにするために、独立して選択されるR基(ここで、Rは、式Aの選択肢(b)~(i)で定義されるとおりである)で置換されている。
【0063】
「シリル」は、式RSi-の構造を指し、「シロキシ」は、式RSi-O-の構造を指し、ここで、シリル又はシロキシ中の各Rは、トリメチルシロキシ、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはエチル又はメチル)、及びC~Cシクロアルキルから独立して選択される。
【0064】
「アルキレンオキシ」は、一般式-(アルキレン-O-)-又は-(O-アルキレン)-の基を指し、ここで、アルキレンは、上で定義したとおりであり、pは、1~200、又は1~100、又は1~50、又は1~25、又は1~20、又は1~10であり、各アルキレンは、独立して、ヒドロキシル、ハロ(例えば、フルオロ)、アミノ、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ又は2つ以上の基で任意選択で置換されている。pが1より大きい場合、各アルキレンは、同じであっても異なっていてもよく、アルキレンオキシは、ブロック又はランダム構成であってもよい。アルキレンオキシが分子中に末端基を形成するとき、アルキレンオキシの末端は、例えば、ヒドロキシ又はアルコキシ(例えば、HO-[CHCHO]-又はCHO-[CHCHO]-)であってもよい。アルキレンオキシの例としては、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、ポリブチレンオキシ、及びポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシ)が挙げられる。
【0065】
「オキサアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH基が、-CHCHOCH(CH)CH-などの酸素原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。「チアアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH基が、-CHCHSCH(CH)CH-などの硫黄原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。
【0066】
「連結基」という用語は、重合性基を親分子に連結させる部分を指す。連結基は、連結基がその一部である化合物に適合し、化合物の重合を不所望に妨害せず、重合条件、更には最終生成物の加工及び保管の条件下で安定である任意の部分であってよい。例えば、連結基は、結合であってもよく、又は1つ以上のアルキレン、ハロアルキレン、アミド、アミン、アルキレンアミン、カルバメート、エステル(-CO-)、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アルキレンオキシ、オキサアルキレン、チアアルキレン、ハロアルキレンオキシ(1つ以上のハロ基で置換されたアルキレンオキシ、例えば、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCH-)、シロキサニル、アルキレンシロキサニル、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。連結基は、1つ又は2つ以上の置換基で任意選択で置換されてもよい。好適な置換基としては、アルキル、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、HO-アルキレンオキシ、MeO-アルキレンオキシ、シロキサニル、シロキシ、シロキシ-アルキレンオキシ-、シロキシ-アルキレン-アルキレンオキシ-(1つを超えるアルキレンオキシ基が存在してもよく、アルキレン及びアルキレンオキシ中の各メチレンは、独立して、ヒドロキシルで任意選択で置換されている)、エーテル、アミン、カルボニル、カルバメート、及びこれらの組み合わせから独立して選択されるものを挙げることができる。連結基はまた、(メタ)アクリレートなどの更なる重合性基で置換されてもよい(連結基が連結している重合性基に加えて)。
【0067】
好ましい連結基としては、C~Cアルキレン(好ましくは、C~Cアルキレン)及びC~Cオキサアルキレン(好ましくは、C~Cオキサアルキレン)が挙げられ、これらはそれぞれ、ヒドロキシル及びシロキシから独立して選択される1つ又は2つの基で任意選択で置換されている。好ましい連結基としてはまた、カルボキシレート、アミド、C~Cアルキレン-カルボキシレート-C~Cアルキレン、又はC~Cアルキレン-アミドC~Cアルキレンが挙げられる。
【0068】
連結基が上述のような部分(例えば、アルキレン及びシクロアルキレン)の組み合わせから成る場合、部分は任意の順序で存在してもよい。例えば、下記の式Eにおいて、Lが、-アルキレン-シクロアルキレン-であると示されている場合、Rg-Lは、Rg-アルキレン-シクロアルキレン-、又はRg-シクロアルキレン-アルキレン-のいずれかであってもよい。これにかかわらず、列記する順序は、連結基が結合している末端重合性基(例えば、Rg又はPg)から始まって、その部分が化合物中に現れる好ましい順序を表す。例えば、式E中、L及びLが、両方ともアルキレン-シクロアルキレンであるとして示されている場合、Rg-Lは、好ましくは、Rg-アルキレン-シクロアルキレン-であり、-L-Rgは、好ましくは、-シクロアルキレン-アルキレン-Rgである。
【0069】
「高エネルギー吸収剤」、「UV/HEV吸収剤」又は「高エネルギー光吸収化合物」という用語は、様々な波長の紫外線、高エネルギー可視光、又はその両方を吸収する化学物質を指す。ある材料が特定の波長の光を吸収する能力は、そのUV/Vis透過スペクトルを測定することによって判定することができる。特定の波長で吸収を示さない化合物は、その波長で実質的に100パーセントの透過率を示す。逆に、特定の波長で完全に吸収する化合物は、その波長で実質的に0%の透過率を示す。材料の透過の量が、特定の波長範囲についての百分率(パーセント)として示される場合、材料は、その範囲内の全ての波長においてその透過パーセントを示すことを理解されたい。
【0070】
別途記載のない限り、比率、百分率、部などは重量による。
【0071】
別途記載のない限り、例えば、「2~10」のような数字範囲は、その範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0072】
上述のように、一態様では、本発明は、式IのUV/HEV吸収化合物であって、
【0073】
【化2】
式中、
Yは、連結基であり、
は、重合性基であり、
が、H又はC~Cアルキルであり、
及びRは、独立して、C~Cアルキル又はシクロアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、
及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルである、化合物を提供する。
【0074】
式I-1.式Iの化合物としては、RがH、メチル、エチル、n-プロピル、又はイソプロピルである式Iの化合物である、式I-1の化合物を挙げることができる。より好ましくは、Rは、Hである。
【0075】
I-2.式I及び式I-1の好ましい化合物としては、RがC~Cアルキルである式I又はI-1の化合物である、式I-1の化合物が挙げられる。好ましくは、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、又はイソプロピルである。より好ましくは、Rは、メチルである。
【0076】
I-3.式I、I-1、及び式I-2の好ましい化合物としては、RがC~Cアルキルである式I、I-1、又は式I-2の化合物である、式I-3の化合物が挙げられる。好ましくは、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、又はイソプロピルである。より好ましくは、Rは、メチルである。
【0077】
I-4.式I、I-1、I-2、及びI-3の好ましい化合物としては、Rがメチル、エチル、n-プロピル、又はイソプロピルである式I、I-1、I-2又はI-3の化合物である、式I-4の化合物が挙げられる。より好ましくは、Rは、メチルである。
【0078】
I-5.式I、I-1、I-2、I-3、及びI-4の好ましい化合物としては、R、R、R、及びRが同じであり、かつC~Cアルキルである式I、I-1、I-2、I-3、又はI-4の化合物である、式I-5の化合物が挙げられる。より好ましくは、R、R、R、及びRは、各々、メチル、エチル、n-プロピル、又はイソプロピルである。更により好ましくは、R、R、R、及びRは、各々メチルである。
【0079】
I-6.式I、I-1、I-2、I-3、I-4、及びI-5の好ましい化合物としては、R及びRが独立してH、メチル、エチル、n-プロピル、又はイソプロピルである式I、I-1、I-2、I-3、I-4又はI-5の化合物である、式I-6の化合物が挙げられる。好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つはHである(そして、他方は、例えば、H又はメチルであってよい)。より好ましくは、R及びRは、いずれもHである。
【0080】
I-7.式I、I-1、I-2、I-3、I-4、I-5、及びI-6の好ましい化合物としては、P(重合性基)が、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドである式I、I-1、I-2、I-3、I-4、I-5、又はI-6の化合物である、式I-7の化合物が挙げられる。より好ましくは、Pは、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドである。より好ましくは、Pはメタクリレートである。
【0081】
I-8.式I、I-1、I-2、I-3、I-4、I-5、I-6、及びI-7の好ましい化合物としては、Y(連結基)が、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、チアルキレン、アルキレンアミン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又は前述の基のいずれかの組み合わせである式I、I-1、I-2、I-3、I-4、I-5、I-6、又はI-7の化合物である、式I-8の化合物が挙げられる。好ましい連結基としては、C-Cアルキレン(例えば、エチレン又はプロピレン)、C-Cオキサアルキレン、C-Cチアルキレン、C-Cアルキレンアミン、C-Cアルキレン-アミド-C-Cアルキレン、及びC-Cアルキレン-アミン-C-Cアルキレンが挙げられる。特に好ましいのは、C-Cオキサアルキレン(例えば、-CHCH-O-)、C-Cチアルキレン(例えば、-CHCH-S-)、及びC-Cアルキレンアミン(例えば、-CHCH-N(H)-又は-CHCH-N(CH)-)である。
【0082】
式Iの化合物の具体例としては、表1に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
【表1-1】
【0084】
【表1-2】
【0085】
【表1-3】
【0086】
【表1-4】
【0087】
式Iの化合物は、望ましい吸収特性を提供するために、他の吸収化合物と組み合わせて使用することができる。例えば、好ましい組成物は、式Iの化合物と、UV吸収化合物である第2の化合物とを含み得る。UV吸収化合物は、技術分野において既知であり、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又はこれらの任意の混合物が挙げられるがこれらに限定されない、いくつかの部類に分類される。好ましい部類のUV吸収化合物は、Norbloc(2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール)などのベンゾトリアゾールである。
【0088】
特に好ましい組成物は、2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6ジメトキシフェノキシ)エチルメタクリレート及び2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを含む。
【0089】
式Iの化合物は、以下の反応スキーム1及び関連する説明、並びに当業者によって使用され得る関連文献手順に示されるように調製することができる。これらの反応の例示的な試薬及び手順は、実施例に示される。
【0090】
【化3】
【0091】
スキーム1を参照すると、トリエチルアミンの存在下で、式IIのヘテロ原子含有化合物(Xについて、式中、X=-NH、又はNH(CH)、又は-SH、又は-OH)をジクロロメタン中塩化アセチルと反応させて、式IIIのアシル保護化合物を得る。無水酢酸(Butenandt,A.,et Al.,1957,90,1120-1124.を参照)若しくは酢酸中硝酸ナトリウム(Wang,J.,et al.,Angewandte Chemie,2012,51(49),12334-12338.を参照)の存在下でCu(NOを用いることによって、又は発煙硝酸(You,L.,et al.,Chinese Chem.Lett.,2008,19(7),811-819.)を用いることによって式IIIをニトロ化して、式IVの化合物を得ることができる。HO及びMeOH中NaOHを使用する加水分解によって式IVの化合物のアシル保護基を脱保護して、式Vの化合物を得ることができる。好ましくはエタノール中SnClによって、又はNHClなどの酸の存在下で鉄粉を用いて(Tsuji,K.,et al.,Chem.Pharm.Bull.,1992,40,2399-2409により報告されている方法を使用)、あるいはPtO/Hを用いて(Leonard,N.J.,et al.,J.Org.Chem.,1946,11,405-418により報告されている方法を使用)、式Vの化合物におけるニトロ基を還元して、式VIの化合物を得ることができる。次いで、式VIの化合物をジメチルスルホキシドなどの溶媒中に溶解させ、85℃において炭酸カリウムの存在下で2-クロロエチルメタクリレート又は2-クロロエチルメタクリルアミド又は2-クロロエチルアクリルアミドと反応させて、式VIIの化合物を得ることができる。式Iの化合物を得るための式VIIのN-アルキル化は、既知の方法によって達成され得る(例えば、Chuang,H.,et al.,ChemMedChem,2011,6,450-456.;Sokolova,M.S.,et al.,Russian J.Org.Chem.,2008,44,1631-1635.;Wang,J.X.,et al.,Chinese Chem.Lett.,2004,15,1161-1163を参照されたい)。当業者には認識されるように、上記の工程は、所望の化合物を提供するために必要に応じて容易に改変され得る。式Iの化合物は、スキーム1に示したもの以外の他の手順によって作製することもできる。
【0092】
式Iの高エネルギー光吸収化合物は、生物医学用デバイス及び眼科用デバイスを含む様々な製品を形成するために反応性混合物中に含まれ得る。概して、高エネルギー光吸収化合物は、その溶解度の限度までの任意の量で存在し得る。例えば、化合物は、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.5~約5重量%、又は約0.75重量%~約4重量%の範囲の量で存在し得る。上限は、典型的には、反応性モノマー混合物中の化合物と他のコモノマー及び又は希釈剤との溶解度によって決定される。
【0093】
好ましくは、本発明の高エネルギー光吸収化合物は、眼科用デバイスに含まれる。ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、角膜オンレー、角膜インレー、眼内レンズ、又はオーバーレイレンズを含む、様々な眼科用デバイスを調製することができる。好ましくは、眼科用デバイスは、従来の又はシリコーンヒドロゲル配合物から作製され得るソフトコンタクトレンズである。
【0094】
本発明の眼科用デバイスは、式Iの1つ以上の化合物と、所望の眼科用デバイスを作製するのに好適な1つ以上のモノマー(本明細書では、デバイス形成モノマー又はヒドロゲル形成モノマーとも呼ばれる)と、任意選択の成分と、を含有する反応性混合物のフリーラジカル反応生成物を含む。したがって、反応性混合物は、例えば、式Iの化合物に加えて、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、ポリアミドなどの湿潤剤、架橋剤、並びに希釈剤及び開始剤などの更なる成分のうちの1つ以上を含んでいてよい。
【0095】
親水性成分
親水性モノマーの好適なファミリーの例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニル尿素、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0096】
親水性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーの非限定的な例としては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド)、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド)、N,N-ビス-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
親水性モノマーはまた、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、ベタイン、及びこれらの混合物など、イオン性であってもよい。このような荷電モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドプロパン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩(CBT)、1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-,分子内塩(SBT)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム,4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-,分子内塩,4-オキシド(9CI)(PBT)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、及びメタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0098】
親水性N-ビニルラクタムモノマー及びN-ビニルアミドモノマーの非限定的な例としては、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド(NVA)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、1-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
親水性O-ビニルカルバメートモノマー及びO-ビニルカーボネートモノマーの非限定的な例としては、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート及びN-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステルが挙げられる。親水性ビニルカーボネートモノマー又はビニルカルバメートモノマーの更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている。親水性オキサゾロンモノマーは、米国特許第4,910,277号に開示されている。
【0100】
他の親水性ビニル化合物としては、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、アリルアルコール、及び2-エチルオキサゾリンが挙げられる。
【0101】
親水性モノマーはまた、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアミドなどの重合性部分を有する、直鎖若しくは分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの統計的ランダム若しくはブロックコポリマーのマクロマー又はプレポリマーであってもよい。これらのポリエーテルのマクロマーは、1つの重合性基を有し、プレポリマーは、2つ又は3つ以上の重合性基を有し得る。
【0102】
本発明の好ましい親水性モノマーは、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物である。好ましい親水性モノマーとしては、DMA及びHEMAの混合物が挙げられる。他の好適な親水性モノマーは、当業者には明らかとなるであろう。
【0103】
概して、反応性モノマー混合物中に存在する親水性モノマーの量に関して、特に制限はない。親水性モノマーの量は、含水量、透明性、湿潤性、タンパク質取り込みなどを含む、得られるヒドロゲルの所望の特性に基づいて選択され得る。湿潤性は、接触角によって測定され得、望ましい接触角は、約100°未満、約80°未満、及び約60°未満である。親水性モノマーは、反応性モノマー混合物中の反応性成分の総重量に基づき、例えば、約0.1~約100重量パーセントの範囲、あるいは約1~約80重量パーセントの範囲、あるいは約5~約65重量パーセントの範囲、あるいは約40~約60重量パーセントの範囲、あるいは約55~約60重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
【0104】
シリコーン含有成分
本発明での使用に好適なシリコーン含有成分は、1つ又は2つ以上の重合性化合物を含み、各化合物は、独立して、少なくとも1つの重合性基、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基(複数可)をシロキサン基(複数可)に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含む。シリコーン含有成分は、例えば、下記に定義される基などの1~220個のシロキサン繰り返し単位を含有してもよい。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1つのフッ素原子も含有し得る。
【0105】
シリコーン含有成分は、上で定義された1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又はこれらの混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0106】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、スチリル、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0107】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0108】
式A.シリコーン含有成分は、式Aの1つ又は2つ以上の重合性化合物を含んでもよく、
【0109】
【化4】
式中、
少なくとも1つのRは、式R-Lの基であり、ここで、Rは、重合性基であり、Lは、連結基であり、残りのRは、それぞれ独立して、
(a)R-L-、
(b)1つ又は2つ以上のヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC~C16アルキル、
(c)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC~C12シクロアルキル、
(d)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC~C14アリール基、
(e)ハロ、
(f)アルコキシ、環状アルコキシ、又はアリールオキシ、
(g)シロキシ、
(h)ポリエチレンオキシアルキル、ポリプロピレンオキシアルキル、又はポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシアルキル)などのアルキレンオキシ-アルキル又はアルコキシ-アルキレンオキシ-アルキル、あるいは
(i)アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロ又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されている1~100個のシロキサン繰り返し単位を含む一価シロキサン鎖であり、
nは、0~500、又は0~200、又は0~100、又は0~20であり、nが0以外であるとき、nが表示値と同等のモードを有する分布であることが理解される。nが2以上であるとき、SiO単位は、同じ又は異なるR置換基を担持してもよく、異なるR置換基が存在する場合、n基は、ランダム又はブロック構成であってもよい。
【0110】
式Aにおいて、3つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、代替的に2つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、又は代替的に1つのRは、重合性基を含んでもよい。
【0111】
式B.式Aのシリコーン含有成分は、式Bの単官能性重合性化合物であってもよく、
【0112】
【化5】
式中、
Rgは、重合性基であり、
Lは、連結基であり、
j1及びj2は、それぞれ独立して、0~220の整数であり、但し、j1及びj2の合計は1~220であり、
A1、RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA7は独立して、各発生において、C~Cアルキル、C~C12シクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~C12環状アルコキシ、アルコキシ-アルキレンオキシ-アルキル、アリール(例えば、フェニル)、アリール-アルキル(例えば、ベンジル)、ハロアルキル(例えば、部分若しくは完全にフッ素化されたアルキル)、シロキシ、フルオロ、又はこれらの組み合わせであり、前述の基の各アルキル基は、1つ又は2つ以上のヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、又はベンジルで任意選択で置換されており、各シクロアルキルは、1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、又はベンジルで任意選択で置換されており、各アリールは、1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、又はベンジルで任意選択で置換されており、
A6は、シロキシ、C~Cアルキル(例えば、C~Cアルキル、若しくはブチル、若しくはメチル)、又はアリール(例えば、フェニル)であり、アルキル及びアリールは、1つ又は2つ以上のフッ素原子で任意選択で置換されていてもよい。
【0113】
式B-1.式Bの化合物は、式B-1の化合物を含んでもよく、これらは、式中、j1が0であり、j2が1~220であるか、又はj2が1~100であるか、又はj2が1~50であるか、又はj2が1~20であるか、又はj2が1~5であるか、又はj2が1である、式Bの化合物である。
【0114】
B-2.式Bの化合物は、式B-2の化合物を含んでもよく、これらは、式中、j1及びj2が、独立して4~100、又は4~20、又は4~10、又は24~100、又は10~100である、式Bの化合物である。
【0115】
B-3.式B、B-1、及びB-2の化合物は、式B-3の化合物を含んでもよく、これらは、式中、RA1、RA2、RA3、及びRA4が、独立して、各発生において、C~Cアルキル又はシロキシである、式B、B-1、又はB-2の化合物である。好ましいアルキルは、C~Cアルキルであるか、又はより好ましくはメチルである。好ましいシロキシは、トリメチルシロキシである。
【0116】
B-4.式B、B-1、B-2、及びB-3の化合物は、式B-4の化合物を含んでもよく、これらは、式中、RA5及びRA7が、独立して、アルコキシ-アルキレンオキシ-アルキルであり、好ましくは、独立して、式CHO-[CHCHO]-CHCHCHであって、式中、pは、1~50の整数である、メトキシキャップされたポリエチレンオキシアルキルである、式B、B-1、B-2、又はB-3の化合物である。
【0117】
B-5.式B、B-1、B-2、及びB-3の化合物は、式B-5の化合物を含んでもよく、これらは、式中、RA5及びRA7が、独立して、トリメチルシロキシなどのシロキシである、式B、B-1、B-2、又はB-3の化合物である。
【0118】
B-6.式B、B-1、B-2、及びB-3の化合物は、式B-6の化合物を含んでもよく、これらは、式中、RA5及びRA7が、独立して、C~Cアルキル、代替的にC~Cアルキル、又は代替的にブチル又はメチルである、式B、B-1、B-2、又はB-3の化合物である。
【0119】
B-7.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、及びB-6の化合物は、式B-7の化合物を含んでもよく、これらは、式中、RA6が、C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、又はn-ブチル)である、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、又はB-6の化合物である。より好ましくは、RA6は、n-ブチルである。
【0120】
B-8.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、及びB-7の化合物は、式B-8の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Rgが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、又はB-7の化合物である。好ましくは、Rgは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又はスチリルを含む。より好ましくは、Rgは、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドを含む。Rgが(メタ)アクリルアミドであるとき、窒素基は、RA9で置換されてもよく、RA9は、H、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、例えばn-ブチル、n-プロピル、メチル、若しくはエチル)、又はC~Cシクロアルキル(好ましくはC~Cシクロアルキル)であり、アルキル及びシクロアルキルは、ヒドロキシル、アミド、エーテル、シリル(例えば、トリメチルシリル)、シロキシ(例えば、トリメチルシロキシ)、アルキル-シロキサニル(アルキルは、それ自体がフルオロで任意選択で置換されている)、アリール-シロキサニル(アリールは、それ自体がフルオロで任意選択で置換されている)、及びシリル-オキサアルキレン(オキサアルキレンは、それ自体がヒドロキシルで任意選択で置換されている)から独立して選択される1つ又は2つ以上の基で任意選択で置換されている。
【0121】
B-9.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、及びB-8の化合物は、式B-9の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、アルキレン(好ましくはC~Cアルキレン)、シクロアルキレン(好ましくはC~Cシクロアルキレン)、アルキレンオキシ(好ましくはエチレンオキシ)、ハロアルキレンオキシ(好ましくはハロエチレンオキシ)、アミド、オキサアルキレン(好ましくは3~6個の炭素原子を含有する)、シロキサニル、アルキレンシロキサニル、カルバメート、アルキレンアミン(好ましくはC~Cアルキレンアミン)、又はこれらの2つ若しくは3つ以上の組み合わせを含み、連結基が、アルキル、ヒドロキシル、エーテル、アミン、カルボニル、シロキシ、及びカルバメートから独立して選択される1つ又は2つ以上の置換基で任意選択で置換されている、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、又はB-8の化合物である。
【0122】
B-10.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-10の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、アルキレン-シロキサニル-アルキレン-アルキレンオキシ-、又はアルキレン-シロキサニル-アルキレン-[アルキレンオキシ-アルキレン-シロキサニル]-アルキレンオキシ-(ここで、qは1~50である)である、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。
【0123】
B-11.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-11の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、C~Cアルキレン、好ましくはC~Cアルキレン、より好ましくはn-プロピレンである、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。
【0124】
B-12.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-12の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、アルキレン-カルバメート-オキサアルキレンである、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。好ましくは、連結基は、CHCHN(H)-C(=O)-O-CHCH-O-CHCHCHである。
【0125】
B-13.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-13の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、オキサアルキレンである、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。好ましくは、連結基は、CHCH-O-CHCHCHである。
【0126】
B-14.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-14の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、アルキレン-[シロキサニル-アルキレン]-である(ここで、qは1~50である)、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。そのような連結基の例は、-(CH-[Si(CH-O-Si(CH-(CH-である。
【0127】
B-15.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-15の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、アルキレンオキシ-カルバメート-アルキレン-シクロアルキレン-カルバメート-オキサアルキレンであり、シクロアルキレンが、1つ、2つ、又は3つの独立して選択されたアルキル基(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチル)で任意選択で置換されている、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。そのような連結基の例は、-[OCHCH-OC(=O)-NH-CH-[1,3-シクロヘキシレン]-NHC(=O)O-CHCH-O-CHCH-であり、シクロヘキシレンは、1位及び5位において3つのメチル基で置換されている。
【0128】
B-16.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、Rgが、スチリルを含み、連結基が、結合又はアルキレンオキシであり、アルキレンオキシ中の各アルキレンは、独立して、ヒドロキシルで任意選択で置換されている、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である、式B-16の化合物を含み得る。そのような連結基の例は、-O-(CH-である。そのような連結基の別の例は、-O-CHCH(OH)CH-O-(CH-である。
【0129】
B-17.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-17の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Rgが、スチリルを含み、連結基が、アルキレンアミンである、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。そのような連結基の例は、-NH-(CH-である。
【0130】
B-18.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-18の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、ヒドロキシル、シロキシ、又はシリル-アルキレンオキシで任意選択で置換されているオキサアルキレンである(アルキレンオキシは、それ自体がヒドロキシルで任意選択で置換されている)、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。そのような連結基の例は、-CHCH(G)CH-O-(CH-であり、式中、Gは、ヒドロキシルである。別の例では、Gは、RSiO-であり、2つのR基は、トリメチルシロキシであり、第3は、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチル)であるか、又は第3は、C~Cシクロアルキルである。更なる例では、Gは、RSi-(CH-O-CHCH(OH)CH-O-であり、2つのR基は、トリメチルシロキシであり、第3は、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチル)又はC~Cシクロアルキルである。なおも更なる例では、Gは、(メタ)アクリレートなどの重合性基である。そのような化合物は、架橋剤として機能し得る。
【0131】
B-19.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-19の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Rgが、スチリルを含み、連結基が、ヒドロキシルで任意選択で置換されているアミン-オキサアルキレンである、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。そのような連結基の例は、-NH-CHCH(OH)CH-O-(CH-である。
【0132】
B-20.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-20の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Rgが、スチリルを含み、連結基が、アルキレンオキシ-カルバメート-オキサアルキレンである、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。そのような連結基の例は、-O-(CH-N(H)C(=O)O-(CH-O-(CH-である。
【0133】
B-21.式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、及びB-9の化合物は、式B-21の化合物を含んでもよく、これらは、式中、連結基が、アルキレン-カルバメート-オキサアルキレンである、式B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、又はB-9の化合物である。そのような連結基の例は、-(CH-N(H)C(=O)O-(CH-O-(CH-である。
【0134】
式C.式A、B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、B-9、B-10、B-11、B-12、B-13、B-14、B-15、B-18、及びB-21のシリコーン含有成分としては、式Cの化合物を含んでもよく、これらは、次の構造を有する式A、B、B-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、B-9、B-10、B-11、B-12、B-13、B-14、B-15、B-18、又はB-21の化合物であり、
【0135】
【化6】
式中、
A8は、水素又はメチルであり、
Zは、O、S、又はN(RA9)であり、及び
L、j1、j2、RA1、RA2、RA3、RA4、RA5、RA6、RA7、及びRA9は、式B又はその様々な下位式(例えば、B-1、B-2など)で定義されるとおりである。
【0136】
C-1.式Cの化合物は、式C-1の(メタ)アクリレートを含んでもよく、これらは、式中、ZがOである、式Cの化合物である。
【0137】
C-2.式Cの化合物は、式C-2の(メタ)アクリルアミドを含んでもよく、これらは、式中、ZがN(RA9)であり、RA9がHである、式Cの化合物である。
【0138】
C-3.式Cの化合物は、式C-3の(メタ)アクリルアミドを含んでもよく、これらは、式中、ZがN(RA9)であり、RA9が非置換であるか、又は上述のように任意選択で置換されているC~Cアルキルである、式Cの化合物である。RA9の例としては、CH、-CHCH(OH)CH(OH)、-(CH-シロキサニル、-(CH-SiR、及び-CHCH(OH)CH-O-(CH-SiRが挙げられ、前述の基中の各Rは、独立して、トリメチルシロキシ、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチル)、及びC~Cシクロアルキルから選択される。RA9の更なる例としては、-(CH-Si(Me)(SiMe、及び-(CH-Si(Me)-[O-SiMe1~10-CHが挙げられる。
【0139】
式D.式Cの化合物は、式Dの化合物を含んでもよく、
【0140】
【化7】
式中、
A8は、水素又はメチルであり、
は、O又はN(RA9)であり、
は、1~8個の炭素原子を含有するアルキレン、又は3~10個の炭素原子を含有するオキサアルキレンであり、Lは、ヒドロキシルで任意選択で置換されており、
j2、RA3、RA4、RA5、RA6、RA7、及びRA9は、式B又はその様々な下位式(例えば、B-1、B-2など)で定義されるとおりである。
【0141】
D-1.式Dの化合物は、式D-1の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Lが、ヒドロキシルで任意選択で置換されているC~Cアルキレンである、式Dの化合物である。好ましくは、Lは、ヒドロキシルで任意選択で置換されているn-プロピレンである。
【0142】
D-2.式Dの化合物は、式D-2の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Lが、ヒドロキシルで任意選択で置換されている4~8個の炭素原子を含有するオキサアルキレンである、式Dの化合物である。好ましくは、Lは、ヒドロキシルで任意選択で置換されている5又は6個の炭素原子を含有するオキサアルキレンである。例としては、-(CH-O-(CH-、及び-CHCH(OH)CH-O-(CH-が挙げられる。
【0143】
D-3.式D、D-1、及びD-2の化合物は、式D-3の化合物を含んでもよく、これらは、式中、ZがOである、式D、D-1、又はD-2の化合物である。
【0144】
D-4.式D、D-1、及びD-2の化合物は、式D-4の化合物を含んでもよく、これらは、式中、ZがN(RA9)であり、RA9がHである、式D、D-1、又はD-2の化合物である。
【0145】
D-5.式D、D-1、及びD-2の化合物は、式D-5の化合物を含んでもよく、これらは、式中、ZがN(RA9)であり、RA9が、ヒドロキシル、シロキシ、及びC~Cアルキル-シロキサニル-から選択される1つ又は2つの置換基で任意選択で置換されているC~Cアルキルである、式D、D-1、又はD-2の化合物である。
【0146】
D-6.式D、D-1、D-2、D-3、D-4、及びD-5の化合物は、式D-6の化合物を含んでもよく、これらは、式中、j2が1である、式D、D-1、D-2、D-3、D-4、又はD-5の化合物である。
【0147】
D-7.式D、D-1、D-2、D-3、D-4、及びD-5の化合物は、式D-7の化合物を含んでもよく、これらは、式中、j2が2~220、又は2~100、又は10~100、又は24~100、又は4~20、又は4~10である、式D、D-1、D-2、D-3、D-4、又はD-5の化合物である。
【0148】
D-8.式D、D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6、及びD-7の化合物は、式D-8の化合物を含んでもよく、これらは、式中、RA3、RA4、RA5、RA6、及びRA7が独立して、C~Cアルキル又はシロキシである、式D、D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6、又はD-7の化合物である。好ましくは、RA3、RA4、RA5、RA6、及びRA7は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、及びトリメチルシロキシから独立して選択される。より好ましくは、RA3、RA4、RA5、RA6、及びRA7は、メチル、n-ブチル、及びトリメチルシロキシから独立して選択される。
【0149】
D-9.式D、D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6、及びD-7の化合物は、式D-9の化合物を含んでもよく、これらは、式中、RA3及びRA4が、独立して、C~Cアルキル(例えば、メチル若しくはエチル)又はシロキシ(例えば、トリメチルシロキシ)であり、RA5、RA6、及びRA7が、独立して、C~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、又はn-ブチル)である、式D、D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6又はD-7の化合物である。
【0150】
式E.本発明で使用するシリコーン含有成分は、多官能性シリコーン含有成分を含み得る。したがって、例えば、式Aのシリコーン含有成分は、式Eの二官能性材料を含んでもよく、
【0151】
【化8】
式中、
Rg、L、j1、j2、RA1、RA2、RA3、RA4、RA5、及びRA7は、式B又はその様々な下位式(例えば、B-1、B-2など)について上で定義されるとおりであり、
は、連結基であり、
Rgは、重合性基である。
【0152】
E-1.式Eの化合物は、式E-1の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Rg及びRgがそれぞれ、構造CH=CH-O-C(=O)-O-又は構造CH=C(CH)-O-C(=O)-O-のビニルカーボネートである、式Eの化合物である。
【0153】
E-2.式Eの化合物は、式E-2の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Rg及びRgがそれぞれ、(メタ)アクリレートである、式Eの化合物である。
【0154】
E-3.式Eの化合物は、式E-3の化合物を含んでもよく、これらは、式中、Rg及びRgが、それぞれ(メタ)アクリルアミドであり、窒素基が、RA9で置換されてもよい(RA9は上で定義されるとおりである)、式Eの化合物である。
【0155】
E-4.式E、E-1、E-2、及びE-3の好適な化合物は、式E-4の化合物を含み、これらは、式中、j1が0であり、j2が1~220であるか、又はj2が1~100であるか、又はj2が1~50であるか、又はj2が1~20である、式E、E-1、E-2、又はE-3の化合物である。
【0156】
E-5.式E、E-1、E-2、及びE-3の好適な化合物は、式E-5の化合物を含み、これらは、式中、j1及びj2が、独立して、4~100である、式E、E-1、E-2、又はE-3の化合物である。
【0157】
E-6.式E、E-1、E-2、E-3、E-4、及びE-5の好適な化合物は、式E-6の化合物を含み、これらは、式中、RA1、RA2、RA3、RA4、及びRA5が、独立して、各発生においてC~Cアルキルであり、好ましくは、それらが、独立して、C~Cアルキルであるか、又は好ましくは、それぞれがメチルである、式E、E-1、E-2、E-3、E-4、又はE-5の化合物である。
【0158】
E-7.式E、E-1、E-2、E-3、E-4、E-5、及びE-6の好適な化合物は、式E-7の化合物を含み、これらは、式中、RA7が、アルコキシ-アルキレンオキシ-アルキルであり、好ましくは、式CHO-[CHCHO]-CHCHCH(ここで、pは、1~50、又は1~30、又は1~10、又は6~10の整数である)のメトキシキャップされたポリエチレンオキシアルキルである、式E、E-1、E-2、E-3、E-4、E-5、又はE-6の化合物である。
【0159】
E-8.式E、E-1、E-2、E-3、E-4、E-5、E-6、及びE-7の好適な化合物は、式E-8の化合物を含み、これらは、式中、Lが、アルキレン、カルバメート、シロキサニル、シクロアルキレン、アミド、ハロアルキレンオキシ、オキサアルキレン、又はこれらの2つ又は3つ以上の組み合わせを含み、連結基が、アルキル、ヒドロキシル、エーテル、アミン、カルボニル、及びカルバメートから独立して選択される1つ又は2つ以上の置換基で任意選択で置換されている、式E、E-1、E-2、E-3、E-4、E-5、E-6、又はE-7の化合物である。
【0160】
E-9.式E、E-1、E-2、E-3、E-4、E-5、E-6、E-7、及びE-8の好適な化合物は、式E-9の化合物を含み、これらは、式中、Lが、アルキレン、カルバメート、シロキサニル、シクロアルキレン、アミド、ハロアルキレンオキシ、オキサアルキレン、又はこれらの2つ又は3つ以上の組み合わせを含み、連結基が、アルキル、ヒドロキシル、エーテル、アミン、カルボニル、及びカルバメートから独立して選択される1つ又は2つ以上の置換基で任意選択で置換されている、式E、E-1、E-2、E-3、E-4、E-5、E-6、E-7、又はE-8の化合物である。
【0161】
本発明で使用するのに好適なシリコーン含有成分の例としては、表2に列挙する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。表2中の化合物がポリシロキサン基を含有する場合、このような化合物中のSiO繰り返し単位の数は、別途記載のない限り、好ましくは3~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~20である。
【0162】
【表2-1】
【0163】
【表2-2】
【0164】
好適なシリコーン含有成分の追加の非限定的な例を、表3に列挙する。別途記載のない限り、適用可能な場合、j2は、好ましくは1~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。j1又はj2を含有する化合物において、j1とj2の合計は、好ましくは2~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。
【0165】
【表3-1】
【0166】
【表3-2】
【0167】
シリコーン含有成分の混合物を使用してもよい。例として、好適な混合物としては、4個及び15個のSiO繰り返し単位を含有するOH-mPDMSの混合物などの、異なる分子量を有するモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピルオキシ)-プロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-MPDMS)の混合物;異なる分子量を有するOH-mPDMS(例えば、4個及び15個の繰り返しSiO繰り返し単位を含有する)と、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)などのシリコーン系架橋剤との混合物;2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)と、mPDMS1000などのモノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)との混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0168】
本発明で使用するシリコーン含有成分は、約400~約4000ダルトンの平均分子量を有し得る。
【0169】
シリコーン含有成分(複数可)は、反応性混合物(希釈剤を除く)の、全ての反応性成分に基づいて、最大約95重量%、又は約10~約80重量%、又は約20~約70重量%の量で存在し得る。
【0170】
ポリアミド
反応性混合物は、少なくとも1つのポリアミドを含んでいてよい。本明細書で使用するとき、「ポリアミド」という用語は、アミド基を含有する繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーを指す。ポリアミドは、環状アミド基、非環状アミド基、及びこれらの組み合わせを含み得、当業者に既知の任意のポリアミドであってもよい。非環状ポリアミドは、ペンダント非環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。環状ポリアミドは、環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。
【0171】
好適な非環状ポリアミドの例としては、式G1及びG2の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0172】
【化9】
式中、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR44)-であり、式中、R44は、C~Cアルキル基であり、R40は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基から選択され、R41は、H、直鎖又は分岐鎖の置換又は非置換C~Cアルキル基、最大2個の炭素原子を有するアミノ基、最大4個の炭素原子を有するアミド基、及び最大2個の炭素基を有するアルコキシ基から選択され、R42は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R43は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R40及びR41の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下であり、R42及びR43の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下である。R40及びR41の炭素原子の数は、合計で6以下又は4以下であってよい。R42及びR43の炭素原子の数は、合計で6以下であってよい。本明細書で使用するとき、置換アルキル基は、アミン基、アミド基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、若しくはカルボキシル基、又はこれらの組み合わせで置換されているアルキル基を含む。
【0173】
40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択され得る。Xは、直接結合であってもよく、R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択され得る。R42及びR43は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基、メチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され得る。
【0174】
本発明の非環状ポリアミドは、式LV若しくは式LVIの繰り返し単位の大部分を含み得るか、又は非環状ポリアミドは、少なくとも約70モル%、及び少なくとも80モル%など、式G若しくは式G1の繰り返し単位の少なくとも50モル%を含み得る。式G及び式G1の繰り返し単位の具体的な例としては、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチル-プロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、並びに式G2及びG3の非環状アミド由来の繰り返し単位が挙げられる。
【0175】
【化10】
【0176】
環状ポリアミドを形成するために使用され得る好適な環状アミドの例としては、α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、及びε-ラクタムが挙げられる。好適な環状ポリアミドの例としては、式G4の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマー
【0177】
【化11】
式中、R45は、水素原子又はメチル基であり、fは、1~10の数であり、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR46)-であり、ここで、R46は、C~Cアルキル基である。式LIX中、fは、7、6、5、4、3、2、又は1を含む、8以下であり得る。式G4中、fは、5、4、3、2、又は1を含む、6以下であり得る。式G4中、fは、2、3、4、5、6、7、又は8を含む、2~8であり得る。式LIX中、fは、2又は3であり得る。Xが直接結合のとき、fは、2であり得る。かかる事例において、環状ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)であり得る。
【0178】
本発明の環状ポリアミドは、式G4の繰り返し単位の50モル%以上を含んでもよく、又は環状ポリアミドは、少なくとも70モル%、及び少なくとも80モル%など、式G4の繰り返し単位の少なくとも50モル%を含んでもよい。
【0179】
ポリアミドはまた、環状アミド及び非環状アミドの両方の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。追加の繰り返し単位は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、他の親水性モノマー、及びシロキサン置換(メタ)アクリレートから選択されるモノマーから形成され得る。好適な親水性モノマーとして列挙されるモノマーのいずれも、追加の繰り返し単位を形成するためにコモノマーとして使用され得る。ポリアミドを形成するために使用され得る追加のモノマーの具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。イオン性モノマーも含まれ得る。イオン性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL、CAS#148969-96-4)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩(CBT、カルボキシベタイン、CAS 79704-35-1)、1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-,分子内塩(SBT、スルホベタイン、CAS 80293-60-3)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム,4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-,分子内塩,4-オキシド(9CI)(PBT、ホスホベタイン、CAS 163674-35-9、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0180】
反応性モノマー混合物は、非環状ポリアミド及び環状ポリアミドの両方又はそれらのコポリマーを含んでもよい。非環状ポリアミドは、本明細書に説明される非環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得、環状ポリアミドは、本明細書に説明される環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得る。ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide)(PVMA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリビニルアセトアミド(PNVA)、ポリ(ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリアクリルアミド、並びにこれらのコポリマー及び混合物の群から選択され得る。ポリアミドは、PVP(例えば、PVP K90)とPVMA(例えば、約570KDaのMwを有する)の混合物であってよい。
【0181】
反応性混合物中の全てのポリアミドの総量は、あらゆる場合において、反応性モノマー混合物の反応性成分の総重量に基づいて、1重量%~約15重量%の範囲内、及び約5重量%~約15重量%の範囲内など、1重量%~約35重量%の範囲内であり得る。
【0182】
理論に束縛されるものではないが、シリコーンヒドロゲルと共に使用されるとき、ポリアミドは内部湿潤剤として機能する。本発明のポリアミドは、非重合性であってもよく、この場合、半相互貫入ネットワークとしてシリコーンヒドロゲル内に組み込まれる。ポリアミドは、シリコーンヒドロゲル内に封入されるか、又は物理的に保持される。代替的に、本発明のポリアミドは、例えば、ポリアミドマクロマー又はプレポリマーとして重合性であり得、この場合、シリコーンヒドロゲル内に共有結合的に組み込まれる。重合性及び非重合性のポリアミドの混合物もまた使用され得る。
【0183】
ポリアミドが反応性モノマー混合物内に組み込まれているとき、ポリアミドは、少なくとも100,000ダルトン、約150,000超、約150,000~約2,000,000ダルトン、約300,000ダルトン~約1,800,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。反応性モノマー混合物と相溶性である場合、高分子量ポリアミドを使用することができる。
【0184】
架橋剤
概して、架橋モノマー、多官能性マクロマー、及びプレポリマーとも称される1つ又は2つ以上の架橋剤を反応性混合物に添加することが望ましい。架橋剤は、二官能性架橋剤、三官能性架橋剤、四官能性架橋剤、及びこれらの混合物から選択されてもよく、これにはシリコーン含有架橋剤及び非シリコーン含有架橋剤が含まれる。非シリコーン含有架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリアリルシアヌレート(TAC)、グリセロールトリメタクリレート、メタクリルオキシエチルビニルカーボネート(HEMAVc)、アリルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、及びポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられ、ポリエチレングリコールは、最大約5000ダルトンの分子量を有する。架橋剤は、通常の量、例えば、反応性配合物100グラム当たり約0.000415~約0.0156モルで反応性混合物中に用いられる。代替的に、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有成分が分子設計により、又は不純物のために多官能性である場合、反応性混合物への架橋剤の添加は、任意選択である。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への追加の架橋剤の添加を必要としない親水性モノマー及びマクロマーの例としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドでエンドキャップされたポリエーテルが挙げられる。他の架橋剤は当業者に既知となり、本発明のシリコーンヒドロゲルを作製するために使用され得る。
【0185】
配合物中の他の反応性成分のうちの1つ又は2つ以上に対して同様の反応性を有する架橋剤を選択することが望ましい場合がある。場合によっては、得られるシリコーンヒドロゲルのいくらかの物理的、機械的、又は生物学的特性を制御するために、異なる反応性を有する架橋剤の混合物を選択することが望ましい場合がある。シリコーンヒドロゲルの構造及び形態は、使用される希釈剤(複数可)及び硬化条件によっても影響を受け得る。
【0186】
弾性率を更に増加させ、引張強度を維持するために、マクロマー、架橋剤、及びプレポリマーを含む、多官能性シリコーン含有成分も含まれ得る。シリコーン含有架橋剤は、単独で、又は他の架橋剤と組み合わせて使用され得る。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への架橋モノマーの添加を必要としないシリコーン含有成分の例としては、α,ω-ビスメタクリロイルプロピル(bismethacryloxypropyl)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。別の例は、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)である。
【0187】
硬い化学構造、及びフリーラジカル重合を受ける重合性基を有する架橋剤もまた使用され得る。好適な硬い構造の非限定的な例としては、1,4-フェニレンジアクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス[4-(2-アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、及び4-ビニルベンジルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせなど、フェニル及びベンジル環を含む架橋剤が挙げられる。硬い架橋剤は、全反応性成分の総重量に基づき、約0.5~約15、又は約2~10、3~7の量で含まれ得る。本発明のシリコーンヒドロゲルの物理的及び機械的特性は、反応性混合物中の成分を調整することによって特定の用途に最適化され得る。
【0188】
シリコーン架橋剤の非限定的な例としては、式E(及びその下位式)の化合物及び表3に示される多官能性化合物などの、上記の多官能性シリコーン含有成分も含む。
【0189】
更なる構成成分
反応性混合物は、希釈剤、開始剤、UV吸収剤、可視光吸収剤、光互変化合物、医薬品、栄養補助剤、抗菌物質、着色剤、顔料、共重合性染料、非重合性染料、離型剤、及びこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、追加成分を含有し得る。
【0190】
シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類には、2~20個の炭素原子を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。希釈剤は、一級、二級及び三級アルコールであり得る。
【0191】
概して、反応性成分は、希釈剤中で混合して、反応性混合物を形成する。好適な希釈剤は、技術分野において既知である。シリコーンヒドロゲルについて、好適な希釈剤は、国際公開第03/022321号及び米国特許第6020445号に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類には、2~20個の炭素を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。一級及び三級アルコールが使用され得る。好ましい種類には、5~20個の炭素を有するアルコール及び10~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。使用され得る具体的な希釈剤には、1-エトキシ-2-プロパノール、ジイソプロピルアミノエタノール、イソプロパノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、2-エチル-1-ブタノール、(3-アセトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、tert-ブトキシエタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、これらの混合物などが挙げられる。アミド希釈剤の例としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド及びジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0192】
好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、エタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0193】
より好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、1-ドデカノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、これらの混合物などが挙げられる。希釈剤が存在する場合、概して、希釈剤の存在量に関して特定の制限はない。希釈剤を使用するとき、希釈剤は、(反応性配合物及び非反応性配合物を含む)反応性混合物の総重量に基づいて、約5~約50重量パーセントの範囲及び約15~約40重量パーセントの範囲など、約2~約70重量パーセントの範囲の量で存在し得る。希釈剤の混合物を使用してもよい。
【0194】
重合開始剤は、反応性混合物中で使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、イソ-プロピルパーカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどの、中程度の高温でフリーラジカルを発生させるもの、並びに芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び三級アミン+ジケトン、これらの混合物などの光開始剤系のうちの少なくとも1つを挙げることができる。光開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホス-フィンオキシド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、並びにカンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。
【0195】
市販の(IGM Resins B.V.(The Netherlands)製の)可視光開始剤系としては、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1700、Irgacure(登録商標)1800、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1850、及びLucrin(登録商標)TPO開始剤が挙げられる。市販の(IGM Resins B.V.製の)UV光開始剤としては、Darocur(登録商標)1173及びDarocur(登録商標)2959が挙げられる。使用され得るこれらの及び他の光反応開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic&Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello&K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998に開示されている。開始剤は、反応性混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応性モノマー混合物の100部当たり約0.1~約2重量部で、反応性混合物中で使用される。反応性混合物の重合は、使用する重合開始剤に応じて熱又は可視光若しくは紫外光又は他の手段を適切に選択して使用して開始することができる。代替的に、開始は、光開始剤なしで電子ビームを使用して実施され得る。しかしながら、光開始剤が使用されるとき、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819)、又は1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせなどの、ビスアシルホスフィンオキシドである。
【0196】
式Iの化合物は、本発明で使用するのに好ましい高エネルギー光吸収化合物であるが、他の高エネルギー光吸収化合物が実施例に記載され、単独で又は式Iの化合物と組み合わせて使用することができる。これらとしては、例えば、式IIの化合物、式IIIの化合物、及び/又は式IVの化合物であって、
【0197】
【化12】
式中、Yは、連結基であり、Pは、重合性基であり、Rは、C~Cアルキルであり、R及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルである、化合物が挙げられる。好ましくは、Rは、メチル又はエチルである。好ましくは、R及びRは、いずれもHである。好ましくは、Pは、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドである。好ましくは、Yは、C~Cオキサアルキレン(例えば、-CHCH-O-)、C~Cチアルキレン(例えば、-CHCH-S-)、又はC-Cアルキレンアミン(例えば、-CHCH-N(H)-又は-CHCH-N(CH)-)である。
【0198】
【化13】
式中、Yは、連結基であり、Pは、重合性基であり、R10は、C~Cアルキルであり、R11及びR12は、独立して、H又はC~Cアルキルである。好ましくは、R10は、メチル又はエチルである。好ましくは、R11及びR12は、いずれもHである。好ましくは、Pは、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドである。好ましくは、Yは、C~Cオキサアルキレン(例えば、-CHCH-O-)、C~Cチアルキレン(例えば、-CHCH-S-)、又はC-Cアルキレンアミン(例えば、-CHCH-N(H)-又は-CHCH-N(CH)-)である。
【0199】
【化14】
式中、Yは連結基であり、Pは重合性基である。好ましくは、Yは結合である。好ましくは、Pgはビニルである。式IVの好ましい化合物としては、式IV-1の化合物が挙げられる:
【0200】
【化15】
【0201】
本発明の眼科用デバイスを作製するための反応性混合物は、1つ以上の高エネルギー光吸収化合物に加えて、他の重合性化合物及び任意選択の成分のいずれかを含み得る。
【0202】
好ましい反応性混合物は、高エネルギー光吸収化合物と、親水性成分と、を含み得る。
【0203】
好ましい反応性混合物は、高エネルギー光吸収化合物と、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、メタクリル酸、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、を含み得る。HEMA及びメタクリル酸の混合物が好ましい。
【0204】
好ましい反応性混合物は、高エネルギー光吸収化合物と、親水性成分と、シリコーン含有成分と、を含み得る。
【0205】
好ましい反応性混合物は、高エネルギー光吸収化合物と、親水性成分と、式D(又はD-1、D-2などの下位式)の化合物を含むシリコーン含有成分と、を含み得る。
【0206】
好ましい反応性混合物は、高エネルギー光吸収化合物と、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、式Dの化合物(又はD-1、D-2などの下位式)の化合物を含むシリコーン含有成分と、内部湿潤剤と、を含み得る。
【0207】
好ましい反応性混合物は、高エネルギー光吸収化合物と、DMA、HEMA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)、モノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの混合物から選択されるシリコーン含有成分と、湿潤剤(好ましくはPVP又はPVMA)と、を含み得る。親水性成分については、DMA及びHEMAの混合物が好ましい。シリコーン含有成分については、SiMAA及びmPDMSの混合物が好ましい。
【0208】
好ましい反応性混合物は、高エネルギー光吸収化合物と、DMA及びHEMAの混合物を含む親水性成分と、2~20個の繰り返し単位を有するOH-mPDMSの混合物(好ましくは4個及び15個の繰り返し単位の混合物)を含むシリコーン含有成分と、を含み得る。好ましくは、反応性混合物は、ac-PDMSなどのシリコーン含有架橋剤を更に含む。また好ましくは、反応性混合物は、湿潤剤(好ましくはDMA、PVP、PVMA、又はこれらの混合物)を含有する。
【0209】
前述の反応性混合物は、1つ以上の開始剤、内部湿潤剤、架橋剤、他のUV又はHEV吸収剤、及び希釈剤などであるが、これらに限定されない任意選択の成分を含有していてもよい。
【0210】
ヒドロゲルの硬化及びレンズの製造
反応性混合物は、振とう又は撹拌などの技術分野で既知の方法のいずれかによって形成され、既知の方法によるポリマー物品又はデバイスの形成に使用され得る。反応性成分は、反応性混合物を形成するために、希釈剤をしようするか又は使用しないかのいずれかで一緒に混合される。
【0211】
例えば、眼科用デバイスは、反応性成分及び任意選択で希釈剤(複数可)を重合開始剤と混合し、適切な条件で硬化させて、後で旋盤加工、切削などによって適切な形状に成形され得る生成物を形成することによって調製することができる。代替的に、反応性混合物は、成形型に入れた後に硬化させ、適切な物品にすることができる。
【0212】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどの成形眼科用デバイスを作製する方法は、反応性モノマー混合物を調製することと、反応性モノマー混合物を第1の成形型に移すことと、第2の成形型を、反応性モノマー混合物で充填された第1の成形型の上に配置することと、フリーラジカル共重合によって反応性モノマー混合物を硬化させて、コンタクトレンズの形状でシリコーンヒドロゲルを形成することと、を含み得る。
【0213】
反応性混合物は、回転成形及び静的成形を含む、コンタクトレンズの作製において、反応性混合物を成形するための任意の既知のプロセスを介して硬化されてもよい。回転成形方法は、米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示され、静的成形方法は、米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。本発明のコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルの直接成型により形成してもよく、これは経済的であり、含水レンズの最終形状を正確に制御できる。この方法では、反応性混合物は、所望の最終シリコーンヒドロゲルの形状を有する成形型内に配置され、反応性混合物は、モノマーが重合する条件に供され、それにより所望の最終製品のおよその形状のポリマーを生成する。
【0214】
硬化後、レンズを抽出に供して、未反応成分を除去し、レンズをレンズ成形型から取り外してもよい。抽出は、アルコールなどの有機溶媒など、従来の抽出流体を使用して行われてもよいし、又は水溶液を使用して抽出してもよい。
【0215】
水溶液は、水を含む溶液である。本発明の水溶液は、少なくとも約20重量%の水、又は少なくとも約50重量%の水、又は少なくとも約70重量%の水、又は少なくとも約95重量%の水を含み得る。水溶液はまた、無機塩又は離型剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助剤、これらの組み合わせなどの追加の水溶性配合物を含んでもよい。離型剤は、化合物又は化合物の混合物であり、これは、水と組み合わせると、離型剤を含まない水溶液を使用してコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間と比較した場合、成形型からコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間が減少する。水溶液は、精製、再利用又は特別な廃棄処理などの特別な取り扱いを必要としない場合がある。
【0216】
抽出は、例えば、水溶液中にこのレンズを浸漬すること、又は水溶液の流れにレンズをさらすことを介して行なうことができる。抽出はまた、例えば、水溶液を加熱することと、水溶液を撹拌することと、水溶液の離型剤の濃度を、レンズの離型が生じるのに十分なレベルにまで増大させることと、レンズの機械的撹拌又は超音波撹拌と、少なくとも1種の濾過助剤又は抽出助剤を水溶液に取り入れて、未反応成分をレンズから適切に除去することを容易にするのに十分な濃度にすることと、のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。熱、振動又はその両方の追加の有無にかかわらず、前述は、バッチプロセス又は連続プロセスで行われてもよい。
【0217】
浸出及び離型を促進するために、物理的撹拌の適用が望ましい場合がある。例えば、レンズが付着しているレンズ成形型部分は、水溶液中で振動させるか又は前後運動させることができる。他の方法には、超音波を水溶液に通すことが含まれてもよい。
【0218】
レンズは、限定されないが高圧蒸気処理などの既知の手段により殺菌してもよい。
【0219】
上記のように、好ましい眼科用デバイスはコンタクトレンズであり、より好ましくはソフトヒドロゲルコンタクトレンズである。本明細書に記載の透過波長及びパーセントは、例えば、実施例に記載される方法を使用して、様々な厚さのレンズ上で測定され得る。例として、ソフトコンタクトレンズにおける透過スペクトルを測定するための好ましい中心厚は、80~100マイクロメートル、又は90~100マイクロメートル、又は90~95マイクロメートルであり得る。典型的には、例えば、4nmの器具スリット幅を使用して、レンズの中心で測定を行ってよい。1つ以上の重合性高エネルギー光吸収化合物の様々な濃度を使用して、上記透過特性を達成することができる。例えば、濃度は、希釈剤を除く反応性混合物中の全ての成分の重量パーセントに基づいて、少なくとも1パーセント、又は少なくとも2パーセント、かつ最大10パーセント又は最大5パーセントの範囲であってよい。典型的な濃度は、3~5%の範囲であってよい。
【0220】
本発明によるシリコーンヒドロゲル眼科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)は、好ましくは、以下の特性を示す。全ての値の前には「約」が付き、このデバイスは、列挙する性質の任意の組み合わせを有することができる。特性は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許付与前公開第2018/0037690号に記載されているように、当業者に既知の方法によって決定することができる。
【0221】
「HO」%:少なくとも20%、又は少なくとも25%及び/又は最大80%若しくは最大70%
ヘイズ:30%以下、又は10%以下
Kruss DCA(°):100°以下、又は50°以下
引張弾性率(psi):120以下、又は80~120
Dk(バレル)少なくとも80、又は少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも200
破断伸び:少なくとも100
イオン性シリコンヒドロゲルに関しては、(前述したものに加えて)以下の性質もまた好ましい場合がある:
リゾチーム取り込み(μg/レンズ):少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも500、又は少なくとも700
ポリクオタニウム1(PQ1)取り込み(%):15以下、又は10以下、又は5以下
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例にて詳細に記述する。
【実施例
【0222】
試験方法
溶液中の有機化合物の紫外線可視スペクトルを、Perkin Elmer Lambda 45又はAgilent Cary 6000i UV/VISスキャン分光計で測定した。使用前に、機器を少なくとも30分間熱平衡化させた。Perkin Elmer機器では、スキャン範囲は200-800nmであり、走査速度は、毎分960nmであり、スリット幅は4nmであり、モードは透過又は吸光度に設定し、ベースライン補正を選択した。Cary機器では、走査範囲は200~800nmであり、走査速度は600nm/分であり、スリット幅は2nmであり、モードは透過又は吸光度であり、ベースライン補正を選択した。自動ゼロ関数を使用してサンプルを分析する前に、ベースライン補正を行った。
【0223】
コンタクトレンズの紫外線可視スペクトルを、充填溶液を使用し、Perkin Elmer Lambda 45 UV/VIS又はAgilent Cary 6000i UV/VIS走査分光計で測定した。使用前に、機器を少なくとも30分間熱平衡化させた。Perkin Elmer機器では、スキャン範囲は200-800nmであり、走査速度は、毎分960nmであり、スリット幅は4nmであり、モードを透過に設定し、ベースライン補正を選択した。ベースライン補正は、プラスチック2ピース型レンズホルダー及び同じ溶媒が入っているキュベットを使用して実施した。これらの2ピース型コンタクトレンズホルダーは、入射光ビームが横断する位置にサンプルを石英キュベット内に保持するように設計した。参照キュベットはまた、2ピース型ホルダーも収容していた。サンプルの厚さが一定であることを確実にするために、全てのレンズを同一の成形型を使用して作製した。コンタクトレンズの中心厚さは、電子式厚さ計を使用して測定した。報告された中心厚さ及び透過率スペクトルは、3つの個々のレンズデータを平均化することによって得られる。
【0224】
キュベットの外面が完全に清潔で乾燥し、キュベット内に気泡が存在しないことを確実にすることが重要である。参照キュベット及びそのレンズホルダーが一定のままであり、全てのサンプルが同じサンプルキュベット及びそのレンズホルダーを使用するときに、測定の再現性が改善され、キュベットの両方が器具に適切に挿入されることを確実にする。
【0225】
実施例及び図面で使用する略語は、以下の意味を有する。
HNO:硝酸
TsOH:p-トルエンスルホン酸
AcCl:塩化アセチル
HCl:塩酸
EtN:トリエチルアミン
DCM:ジクロロメタン
SnCl:スズ(II)塩化物又は塩化第一スズ
Cu(NO:硝酸銅(II)又は硝酸銅
EtOH:エタノール
NACO:炭酸ナトリウム
EtOAc:酢酸エチル
BHT:2、6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール
CDCl:重水素化クロロホルム
CsCO:セシウム又は炭酸セシウム
NaHCO:重炭酸ナトリウム
NaSO:硫酸ナトリウム
CO:炭酸カリウム
DMSO:ジメチルスルホキシド
3-クロロプロピオフェノン(Sigma-Aldrich)
1-(3-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル)-エタン-1-オン(Combi-Blocks)
1-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)-エタン-1-オン(Combi-Blocks)
BC:PP、TT、Z、又はこれらのブレンドから作製された背面又は基部が湾曲したプラスチック成形型
FC:PP、TT、Z、又はこれらのブレンドから作製された前面が湾曲したプラスチック成形型
PP:プロピレンのホモポリマーであるポリプロピレン
TT:水添スチレンブタジエンブロックコポリマーであるTuftec(Asahi Kasei Chemicals)
Z:ポリシクロオレフィン熱可塑性ポリマーであるZeonor(Nippon Zeon Co Ltd)
Da:ダルトン又はg/モル
kDa:キロダルトン、又は1,000ダルトンに等しい原子質量単位
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド(Jarchem)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Bimax)
MAA:メタクリル酸(Acros)
PVP:ポリ(N-ビニルピロリドン)(ISP Ashland)
PDMA:ポリジメチルアクリルアミド
PVMA:ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
TEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート(Esstech)
Tegomer V-Si 2250:ジアクリルオキシポリジメチルシロキサン(Evonik)
Irgacure1700:25%ビス(2、6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及び75%2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF)の混合物
Irgacure819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(BASF)
Irgacure1870:ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシド及び1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンのブレンド(BASF)
mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(M=800~1000ダルトン)(Gelest)
HO-mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(M=400~1500ダルトン)(Ortec又はDSM-Polymer Technology Group)
SiMAA:2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(Toray)、又は3-(3-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)プロポキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
RB247:1,4-ビス[2-メタクリルオキシエチルアミノ]-9,10-アントラキノン
D3O:3,7-ジメチル-3-オクタノール(Vigon)
DIW:脱イオン水
MeOH:メタノール
IPA:イソプロピルアルコール
Norbloc(登録商標):2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール又は3-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチルメタクリレートCAS#96478-09-0(Janssen)
TL03光:Phillips TLK 40W/03電球
LED:発光ダイオード
L:リットル
mL:ミリリットル
Equiv.又はeq.:当量
LCMS:液体クロマトグラフィ-質量分析
kg:キログラム
g:グラム
mol:モル
mmol:ミリモル
TLC:薄層クロマトグラフィ
H NMR:プロトン核磁気共鳴分光法
UV-VIS:紫外線-可視分光法
BAGE:ホウ酸グリセロールエステル(ホウ酸のグリセロールに対するモル比は1:2であった)、299.3グラム(mol)のグリセロール及び99.8グラム(mol)のホウ酸を、好適な反応器内で1247.4グラムの5%(重量/重量)EDTA水溶液に溶解させた後、適度な減圧下(2~6トル)にて4~5時間撹拌しながら90~94℃まで加熱し、室温まで冷却した。
PS:ホウ酸塩緩衝パッケージ溶液:18.52グラム(300mmol)のホウ酸、3.7グラム(9.7mmol)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197mmol)の硫酸ナトリウムを、十分な脱イオン水に溶解させて、2リットルメスフラスコを満たした。
【0226】
実施例1-スキーム2における化合物(F)の合成
【0227】
【化16】
【0228】
4-アセチル-2,6-ジメトキシフェニルアセテート(B)の合成
4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシアセトフェノン(5.0g、26.0mmol)及びトリエチルアミン(5.78グラム、57.20mmol)を、窒素下でDCM(50mL)に溶解させ、0℃(氷浴)まで冷却した。塩化アセチル(2.2グラム、28.00mmol)を滴下し、反応混合物を同じ温度で30分間撹拌し、続いて、室温で6時間撹拌した。完了後、水(50mL)を添加し、DCM(3×25mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、残渣をDCM/n-ヘキサンから再結晶化させて、白色固形物(収率95%)を得た。H-NMR(CDCl,500MHz):δ2.36(s,3H),2.60(s,3H),3.89(s,6H),7.23(s,2H).
【0229】
4-アセチル-2,6-ジメトキシ-3-ニトロフェニルアセテート(C)の合成
4-アセチル-2,6-ジメトキシフェニルアセテート(4.22グラム、17.80mmol)を弱く加熱(40~45℃)しながら無水酢酸(50mL)に溶解させ、Cu(NO(5.38グラム、22.30mmol)を一度に添加し、30~40分間にわたって時折冷却(氷浴)することによって発熱を制御した。反応混合物を氷水(500mL)に注ぎ、15分間撹拌し、沈殿した固形物を濾過し、水で十分に洗浄し、空気中で乾燥させ、次の工程のためにそのまま使用した。明褐色の固形物(収率91%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ2.39(s,3H),2.55(s,3H),3.94(s,6H),6.97(s,1H).
【0230】
1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)エタン-1-オン(D)の合成
4-アセチル-2,6-ジメトキシ-3-ニトロフェニルアセテート(4.52グラム、16.00mmol)をメタノール(50mL)及び3N NaOH(16.1mL、48.00mmol)に滴下溶解させた。完了後、反応混合物を0℃(氷浴)まで冷却し、2N HClを添加することによってpH2に酸性化した。沈殿した固体を濾過し、水で十分に洗浄して、白色の固形物を得た(収率98%)。H-NMR(CDOD,500MHz):δ2.54(s,3H),3.89(s,3H),3.99(s,3H),7.27(s,1H).
【0231】
1-(2-アミノ-4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル)エタン-1-オン(E)の合成
1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)エタン-1-オン(0.95グラム、4.00mmol)をエタノール(20mL)に懸濁させ、メタノール(5mL)を添加して懸濁液を溶解させた。SnCl(3.74g、19.7mmol)を添加し、反応物を還流条件下で6時間加熱した。溶媒を除去し、1N NaOHをpH8になるまで滴下し、15分間撹拌した後、1N HClでpH7に調整した。DCM(25mL)を添加し、濾過し、残分をDCM(15mL×3)で洗浄し、濾液をDCM(3×15mL)で抽出し、合わせた有機抽出物をブライン(1×25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗生成物を熱EtOAcに懸濁させ、室温で6時間放置して濾過し、橙色の固形物を得た(収率80%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ2.52(s,3H),3.87(s,6H),6.13(br s,1H),6.44(br s,2H),6.92(s,1H).
【0232】
2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェノキシ)エチルメタクリレート(F)の合成
1-(2-アミノ-4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル)エタン-1-オン(2.00グラム、9.50mmol)、2-クロロエチルメタクリレート(1.76グラム、11.90mmol)、及び炭酸カリウム(1.71グラム、12.40mmol)を、DMSO(25mL)中で一緒に混合し、85℃で24時間加熱した(300ppmのBHTを添加)。反応物を室温まで冷却し、水(50mL)を添加し、EtOAc(3×25mL)で抽出し、合わせた抽出物を水(3×15mL)、ブライン(1×25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムのショートプラグに通し、n-ヘキサン中30%酢酸エチルで溶出して、黄色の油状物を得た(収率90%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ2.65(s,3H),2.51(s,3H),3.79(s,3H),3.84(s,3H),4.26(m,2H),4.45(m,2H),5.68(s,1H),6.11(s,1H),6.33(br s,2H),6.94(s,1H).0.2mMメタノール溶液中の化合物(F)のUV-VISスペクトルを図1に示す。
【0233】
実施例2-スキーム3における化合物(M)の合成
【0234】
【化17】
【0235】
1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)プロパン-1-オン(H)
硝酸(発煙、200mL)を氷塩浴中で-5℃まで冷却し、(氷塩浴を使用して)-5℃~-3℃の温度を維持する速度で撹拌しながら、3-クロロプロピオフェノン(40.0グラム)を少しずつ添加した。添加が完了した後、反応混合物を更に30分間-3℃で撹拌した後、氷水(1000.0グラム)に注いだ。黄色沈殿物を濾過により回収し、NaHCO水溶液及び水で十分に洗浄した。EtOH(300mL)から再結晶化させて、明黄色の針状晶として(H)を得た(収率95%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ1.24(t,3H,J=7.0Hz),2.78(m,2H),7.32(s,1H),7.55(m,1H),8.08(d,1H,J=9.0Hz).
【0236】
2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-2-エチル-1,3-ジオキソラン(I)
1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)プロパン-1-オン(6.5グラム、30.4mmol)及び無水1,2-エチレングリコール(4.2グラム、67.5mmol)を無水トルエン(200mL)に溶解させた後、数mLのトルエンに溶解させたトルエンスルホン酸(300mg、触媒)を添加した。反応混合物をDean-Stark条件下で48時間還流させた。溶媒を減圧下で除去し、水(25mL)を添加し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて、オフホワイトの固形物として(I)を得た(収率97%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ0.98(t,3H,J=7.1Hz),2.16(m,2H),3.70(m,2H),4.01(m,2H),7.37(m,2H),7.60(m,1H).
【0237】
2-(3-(2-エチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-4-ニトロフェノキシ)エタン-1-オール(J)
2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-2-エチル-1,3-ジオキソラン(30.69g、118.4mmol)を無水1,2-エチレングリコール(145mL)に60℃で溶解させた。次いで、CsCO(33.56g、118.4mmol)を添加し、反応混合物を窒素下で6時間かけて165℃まで加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、DCM(500mL)及び1N HClを添加した(pH=3)。水層を更なるDCMで抽出した(3×100mL)。合わせた有機抽出物をブライン(50mL)、水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、褐色がかった油状物として(J)を得た(収率82%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ0.98(t,3H,J=7.0Hz),2.21(m,2H),3.68(m,2H),3.98(m,4H),4.14(m,2H),6.88(dd,1H,J=2.8,8.8Hz),7.12(d,2H J=2.8Hz),7.44(d,1H,J=8.8Hz).
【0238】
1-(5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ニトロフェニル)プロパン-1-オン(K)
2-(3-(2-エチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-4-ニトロフェノキシ)エタン-1-オール(18.0g、63.55mmol)をMeOH(180mL)に溶解させた。濃HCl(40mL)を添加し、溶液を3時間還流させた。その後、溶媒を減圧下でその元の体積の1/4まで除去し、氷水(500グラム)に注いだ。沈殿物を濾過により回収し、EtOHから再結晶させて、褐色の固形物として(K)を得た(収率83%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ1.26(t,3H,J=7.3Hz),2.75(m,2H),4.02(m,2H),4.19(m,2H),6.77(d,2H J=3.0Hz),7.02(dd,1H,J=3.0,9.1Hz),8.17(d,1H,J=9.1Hz).
【0239】
2-(4-ニトロ-3-プロピオニルフェノキシ)エチルメタクリレート(L)
1-(5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ニトロフェニル)プロパン-1-オン(8.0グラム、33.4mmol)及びトリエチルアミン(7.45g、73.60mmol)をDCM(180mL)に溶解させ、0℃(氷浴)まで冷却した。塩化メタクリロイル(3.85g、36.78mmol、300ppmのBHTを含有)を、温度を0℃で30分間維持しながら、窒素雰囲気下、撹拌しながら滴下した。反応混合物を室温まで加温し、次いで、更に6時間撹拌した。水(50mL)を添加し、水層をDCMで更に抽出した(3×50mL)。合わせた有機抽出物を水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をEtOH(50mL)から再結晶化させて、明黄色の固形物として(L)を得た(収率85%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ1.26(t,3H,J=7.2Hz),1.95(s,3H),2.76(m,2H),4.33(m,2H),4.53(m,2H),5.62(s,1H),6.14(s,1H),6.78(d,2H J=2.9Hz),7.02(dd,1H,J=2.9,8.9Hz),8.17(d,1H,J=8.9Hz).
【0240】
2-(4-アミノ-3-プロピオニルフェノキシ)エチルメタクリレート(M)
2-(4-ニトロ-3-プロピオニルフェノキシ)エチルメタクリレート(14.29グラム、46.50mmol)を、若干加熱しながらEtOH(200mL、300ppmのBHTを含有)に溶解させた。SnCl(44.1グラム、233.0mmol)を添加し、反応混合物を1~2時間還流させた。反応混合物を室温まで冷却し、5%NaCO水溶液を添加して、反応混合物のpHを8.0にした。EtOAc(200mL)を添加し、得られた懸濁液を濾過して沈殿した金属塩を除去した。濾液をEtOAcで抽出し(3×100mL)、合わせた有機抽出物をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をEtOH(75mL)から再結晶化させることにより精製して、明黄色の固形物として(M)を得た(収率98%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ1.20(t,3H,J=7.0Hz),1.96(s,3H),2.95(m,2H),4.19(m,2H),4.47(m,2H),5.60(s,1H),6.15(s,1H),6.62(d,2H J=9.0Hz),7.02(dd,1H,J=3.0,9.0Hz),8.17(d,1H,J=3.0Hz).0.2mMメタノール溶液中の化合物(M)のUV-VISスペクトルを図1に示す。
【0241】
実施例3-スキーム4における化合物(P)の合成
【0242】
【化18】
【0243】
2-(5-アセチル-2-ニトロフェノキシ)エチルメタクリレート(O)
3-ヒドロキシ-4-ニトロアセトフェノン(2.5グラム、13.8mmol)をDMSO(25mL)に溶解させ、次いで、KCO(2.98g、21.6mmol)を添加し、続いて、2-クロロエチルメタクリレート(3.04g、20.5mmol)を添加した。反応混合物を85℃で24時間加熱した。水を添加し、DCMで抽出した(3×25mL)。合わせた有機抽出物をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をEtOH(30mL)から再結晶化させることにより精製して、明黄色の固形物として(O)を得た(収率90%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ1.95(s,3H),2.61(s,3H),4.44(m,2H),4.57(m,2H),5.61(s,1H),6.15(s,1H),7.17(d,2H J=9.0Hz),8.15(dd,1H,J=1.5,9.0Hz),8.41(d,1H,J=1.5Hz).
【0244】
2-(5-アセチル-2-アミノフェノキシ)エチルメタクリレート(P)
2-(5-アセチル-2-ニトロフェノキシ)エチルメタクリレート(0.8グラム、2.73mmol)を、若干加熱しながらEtOH(25mL、300ppmのBHTを含有)に溶解させた。SnCl(2.59グラム、13.7mmol)を添加し、反応混合物を1~2時間還流させた。反応混合物を室温まで冷却し、5%NaCO水溶液を添加して、反応混合物のpHを8.0にした。EtOAc(25mL)を添加し、得られた懸濁液を濾過して沈殿した金属塩を除去した。濾液をEtOAcで抽出し(3×20mL)、合わせた有機抽出物をブライン(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をEtOH(20mL)から再結晶化させることにより精製して、明黄色の固形物として(P)を得た(収率80%)。H-NMR(CDCl,500MHz):δ1.96(s,3H),2.53(s,3H),4.32(m,2H),4.57(m,2H),5.60(s,1H),6.15(s,1H),6.80(d,2H J=8.5Hz),7.35(m,2H).0.2mMメタノール溶液中の化合物(P)のUV-VISスペクトルを図1に示す。
【0245】
実施例4
77重量パーセントの表4に列挙する配合物及び23重量パーセントの希釈剤D3Oで構成される反応性モノマー混合物(4A、4B、及び4C)を調製した。PVPを除く全ての成分を、窒素雰囲気下周囲温度にて90分間ジャー内で混合した後、PVPを添加し、周囲温度で更に240分間混合した。その後、ジャーに蓋をし、室温で約1000~1500分間ローラー上に置いた。周囲温度及び室温は、典型的には25~30℃である。次に、反応性モノマー混合物を、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルターを通して濾過した。全ての反応性モノマー混合物を、コンタクトレンズを作製する前に45分間真空(40トル)を加えることによって、周囲温度で脱気した。
【0246】
【表4】
【0247】
窒素ガス雰囲気及び約0.2パーセント未満の酸素ガスが入っているグローブボックス内で、約75~100μLの反応性モノマー混合物(4A)を、エッペンドルフピペットを使用して室温で90:10のZ:TTブレンドから成るFC内に分注した。次いで、90:10のZ:TTブレンドから成るBCをFC上に配置した。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させた。8つの成形型アセンブリを収容しているトレイを、それぞれ63℃に維持された隣接するグローブボックスに移し、石英プレートを使用して、トレイ内の成形型アセンブリを覆い、固定した。トレイの位置で約2.1mW/cmの強度を有する435nmのLEDライトを使用して、上部及び下部から10分間レンズを硬化させた。
【0248】
大部分のレンズがFCに付着した状態で、レンズを手動で離型し、レンズを約1リットルの70%IPA中に約1時間又は2時間浮かせることによって取り外し、続いて70%IPAで2回、次いでDI水で3回洗浄した。各洗浄工程を約30分続けた。レンズ(4A)をホウ酸塩緩衝パッケージ溶液中で一晩平衡化させ、その後、新しいホウ酸塩緩衝パッケージ溶液中で保管した。これらのレンズの平均中心厚は、87マイクロメートルであった。
【0249】
硬化温度が64℃であり、強度が1.5mW/cmであったことを除いて、反応性モノマー混合物(4B)から同様にレンズを作製した。これらのレンズの平均中心厚は、88マイクロメートルであった。
【0250】
反応性モノマー混合物(4C)から同様にレンズを作製した。全ての硬化、水和、及び中心厚の値は同一であった。
【0251】
レンズ(4A)、(4B)及び(4C)のUV-VIS透過スペクトルを図2に示す。
【0252】
実施例5
77重量パーセントの表5に列挙する配合物及び23重量パーセントの希釈剤D3Oで構成される2つの反応性モノマー混合物(バッチA及びB)を調製した。PVPを除く全ての成分を、窒素雰囲気下周囲温度にて90分間ジャー内で混合した後、PVPを添加し、周囲温度で更に240分間混合した。その後、ジャーに蓋をし、室温で約1000~1500分間ローラー上に置いた。周囲温度及び室温は、典型的には25~30℃である。次に、反応性モノマー混合物を、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルターを通して濾過した。全ての反応性モノマー混合物を、コンタクトレンズを作製する前に45分間真空(40トル)を加えることによって、周囲温度で脱気した。
【0253】
【表5】
【0254】
窒素ガス雰囲気及び約0.5パーセント未満の酸素ガスが入っているグローブボックス内で、約75μLのバッチAを、エッペンドルフピペットを使用して室温で90:10(w/w)のZ:TTブレンドから成るFC内に分注した。次いで、90:10のZ:TTブレンドから成るBCをFC上に配置した。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させた。8つの成形型アセンブリを収容しているトレイを、それぞれ65℃に維持された隣接するグローブボックスに移し、石英プレートを使用してトレイ内の成形型アセンブリを覆い、固定した。トレイの位置で約2.0mW/cmの強度を有する435nmのLEDライトを使用して、上部及び下部から15分間レンズを硬化させた。
【0255】
大部分のレンズがFCに付着した状態でレンズを手で離型し、レンズを約1リットルの70パーセントIPA中に約1時間浮かせることによって取り外し、続いて、約30分間70パーセントIPAで1回、次いで、DI水で2回洗浄し、各工程を約15分間続けた。次いで、レンズ(5A)をホウ酸塩緩衝パッケージ溶液中で約30分間平衡化させ、その後、新しいホウ酸塩緩衝パッケージ溶液中で保管した。これらのレンズの平均中心厚は、89マイクロメートルであった。
【0256】
8.03グラムのバッチAと4.02グラムのバッチBとの混合物を、真空(40トル)を45分間加えることにより周囲温度で脱気した。次に、上記と同じ硬化工程及び水和工程に従ってレンズ(5B)を作製した。これらのレンズの平均中心厚は、87マイクロメートルであった。
【0257】
4.01グラムのバッチAと8.02グラムのバッチBとの混合物を、真空(40トル)を45分間加えることにより周囲温度で脱気した。次に、上記と同じ硬化工程及び水和工程に従ってレンズ(5C)を作製した。これらのレンズの平均中心厚は、88マイクロメートルであった。
【0258】
バッチBを、真空(40トル)を45分間加えることによって周囲温度で脱気した。次に、上記と同じ硬化工程及び水和工程に従ってレンズ(5D)を作製した。これらのレンズの平均中心厚は、90マイクロメートルであった。
【0259】
このようにして、2重量パーセントの化合物(F)及び様々な量のNorbloc(登録商標)を含むレンズを調製した。レンズ(5A)はNorbloc(登録商標)を含有していなかったが、レンズ(5B)は0.5重量パーセントのNorbloc(登録商標)を含有しており、(5C)は1重量パーセントのNorbloc(登録商標)を含有しており、(5D)は1.5重量パーセントのNorbloc(登録商標)を含有していた。これらレンズのUV-VIS透過スペクトルを図3に示し、これは、約2重量パーセントの化合物(F)及び約0.5重量パーセントのNorbloc(登録商標)を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約400nm~約450nmの高エネルギー可視光をいくらか吸収すると同時に、約250nm~約400nmのほぼ完全な吸収を示すことを実証する。Norbloc(登録商標)の重量パーセントを約1重量%まで増加させると、約400nm~約450nmの高エネルギー可視光をいくらか吸収すると同時に、約250nm~約400nmを完全に吸収した。
【0260】
実施例6
52重量パーセントの表6に列挙する配合物及び48重量パーセントの希釈剤BAGEで構成される反応性モノマー混合物(バッチC)を調製した。成分を、窒素雰囲気下周囲温度にてジャー内で混合した。その後、ジャーに蓋をし、周囲温度で1379分間ローラー上に置いた。次いで、反応性モノマー混合物を、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルターを通して濾過した。
【0261】
【表6】
【0262】
バッチCを、真空(40トル)を45分間加えることによって周囲温度で脱気した。次いで、窒素ガス雰囲気及び約0.2パーセント未満の酸素ガスが入っているグローブボックス内で、約75μLの反応性混合物を、エッペンドルフピペットを使用して室温で90:10のZ:TTブレンドから成るFC内に分注した。次いで、90:10のZ:TTブレンドから成るBCをFC上に配置した。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させた。8つの成形型アセンブリを収容しているトレイを、それぞれ65℃に維持された隣接するグローブボックスに移し、石英プレートを使用してトレイ内の成形型アセンブリを覆い、固定した。トレイの位置で約2.1mW/cmの強度を有するLEDライト435nmを使用して、上部及び下部から8分間レンズを硬化させた。
【0263】
大部分のレンズがFCに付着した状態で、レンズ(6A)を手で離型し、30パーセントIPA中に約30~60分間浮かせることによって取り外し、続いて、DIWに30分間、次いでPSに30分間浸漬した。レンズは依然としていくらか粘着性を有していたため、再びDIWに浸漬し、PS()を収容しているバイアル瓶内に個々に入れた。これらのレンズの平均中心厚は、86マイクロメートルであった。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型工程の目的は、レンズの全てを損傷することなく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークからパッケージ溶液で膨潤したヒドロゲルに移行させることである。
【0264】
17.8ミリグラムの化合物(M)を6.885グラムのバッチCに溶解させて、約0.5重量パーセントの化合物(M)を含有する反応性モノマー混合物を得た。先のレンズ(6A)を作製するために使用したのと同じ硬化条件及び水和工程を使用して、レンズ(6B)を調製した。これらのレンズの平均中心厚は、86マイクロメートルであった。
【0265】
45.3ミリグラムの化合物(M)を4.442グラムのバッチCに溶解させて、約2重量パーセントの化合物(M)を含有する反応性モノマー混合物を得た。先のレンズ(6A)を作製するために使用したのと同じ硬化条件及び水和工程を使用して、レンズ(6C)を調製した。これらのレンズの平均中心厚は、86マイクロメートルであった。
【0266】
レンズ(6A)、(6B)、及び(6C)のUV-VIS透過スペクトルを図4に示し、これは、約2重量パーセントの化合物(F)及び約1重量パーセントのNorbloc(登録商標)を含む従来のヒドロゲルコンタクトレンズが、約400nm~約450nmの高エネルギー可視光をいくらか吸収すると同時に、約250nm~約400nmのほぼ完全な吸収を示すことを実証する。配合物中の化合物(M)の濃度を増加させると、約400nm~約450nmの高エネルギー可視光をいくらか吸収すると同時に、約250nm~約400nmを完全に吸収させ得る。
【0267】
実施例7
表5にバッチBとして列挙された成分を含む反応性モノマー混合物と、実施例5と同じ硬化工程及び水和工程とを用いて、レンズを作製した。レンズを、PSを収容しているガラスバイアル瓶内にてパッケージングし、次いで、直射日光のあたる窓枠(7A)、又は屋内照明のみで直射日光に曝露されることのないキャビネットの上(7B)に置いた。対照は暗所で保管した。3、5、9、15、及び21週間の曝露後、図5及び図6に示すとおりレンズのUV-可視透過スペクトルを測定した。
【0268】
直射日光に曝露されたレンズでは、高エネルギー可視光の吸収が経時的に変化した。最初の9週間では、400nmにおける光透過率のパーセントは、約5%から約17%に変化した。15週間の日光曝露後、400nmにおける光透過率のパーセントは、約44%まで増加し、21週間後、約90%に増加した。これらのデータに基づいて、化合物(F)を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、直射日光下でレンズを保管しないという要件以外には、極端なパッケージ又は特別な取り扱い説明書を必要とすることがない。
【0269】
屋内照明に曝露されたレンズでは、400nm~450nmの高エネルギー可視光の吸収は、経時的にそれほど変化しなかった。例えば、0週目と21週目との間の450nmにおける透過率の変化は、5%未満であった。
【0270】
実施例8(理論実施例)
52重量パーセントの表7に列挙する配合物及び48重量パーセントの希釈剤BAGEで構成される反応性モノマー混合物(バッチD)を調製する。成分を、窒素雰囲気下周囲温度にてジャー内で混合する。その後、ジャーに蓋をし、周囲温度で約1400分間ローラー上に置く。次いで、反応性モノマー混合物を、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルターを通して濾過する。
【0271】
【表7】
【0272】
バッチDを、真空(40トル)を45分間加えることによって周囲温度で脱気する。次いで、窒素ガス雰囲気及び約0.2パーセント未満の酸素ガスが入っているグローブボックス内で、約75μLの反応性混合物を、エッペンドルフピペットを使用して室温で90:10のZ:TTブレンドから成るFC内に分注する。次いで、90:10のZ:TTブレンドから成るBCをFC上に配置する。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させる。8つの成形型アセンブリを収容しているトレイを、それぞれ約65℃に維持された隣接するグローブボックスに移し、石英プレートを使用してトレイ内の成形型アセンブリを覆い、固定する。トレイの位置で約2mW/cmの強度を有する435nmのLEDライトを使用して、上部及び下部から約8分間レンズを硬化させる。
【0273】
レンズ(8A)を手で離型し、30パーセントIPA中に約30~60分間浮かせることによって取り外し、続いて、DIWに30分間、次いでPSに30分間浸漬する。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型工程の目的は、レンズの全てを損傷することなく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークからパッケージ溶液で膨潤したヒドロゲルに移行させることである。
【0274】
約50ミリグラムの化合物(F)を約10グラムのバッチDに溶解させて、約0.5重量パーセントの化合物(F)を含有する反応性モノマー混合物を得る。先のレンズ(8A)を作製するために使用したのと同じ硬化条件及び水和工程を使用して、レンズ(8B)を調製することができる。
【0275】
約200ミリグラムの化合物(F)を約10グラムのバッチDに溶解させて、約2重量パーセントの化合物(F)を含有する反応性モノマー混合物を得る。先のレンズ(8A)を作製するために使用したのと同じ硬化条件及び水和工程を使用して、レンズ(8C)を調製することができる。
【0276】
実施例9~11(理論実施例)
実施例5に記載のものと同様の手順を使用して、表8に示すシリコーンヒドロゲル配合物からコンタクトレンズを調製することができる。これらの実施例では、約77重量パーセントの表8に列挙する配合物及び約23重量パーセントの希釈剤(例えば、D3O)を含む反応性モノマー混合物を調製する。
【0277】
【表8】
【0278】
実施例12
スキーム5に示すような、(Z)-3-ヒドロキシ-1-(ナフタレン-2-イル)-3-(4-ビニルフェニル)プロパ-2-エン-1-オン(N)の合成
【0279】
【化19】
【0280】
磁気撹拌棒が入っている250mL丸底フラスコに、メチル4-ビニルベンゾエート(2グラム、12.3ミリモル)及びNaH(4.9グラム、10当量、油懸濁液中の60%水素化ナトリウム)を添加した。50mLの乾燥THF(モレキュラーシーブ)を含有する均圧滴下漏斗を取り付け、反応系を乾燥窒素ガスで20分間パージした。その後、THFを激しく撹拌しながらゆっくりと添加した。2-アセトナフトノン(3.5グラム、12.3ミリモル)及び少量のヒドロキノンを10mLの乾燥THFに溶解し、反応混合物に滴下した。反応容器の内容物を12時間撹拌した。次いで、反応フラスコを氷浴に入れ、塩酸水溶液をゆっくり添加して過剰なNaHと反応させた。揮発性成分を回転蒸発によって除去し、残留物をDCM中に溶解/懸濁させた。濾過後、有機層を分液漏斗内でジクロロメタンで抽出し、希塩酸及びブラインで洗浄し、次いでMgSOで乾燥させた。濾過後、溶媒を回転蒸発により除去した。残留物を酢酸エチルに溶解させた。未反応のアセトナフトンを、過剰ヘキサンへの沈殿によって除去した。粗生成物を濾過及び回転蒸発によって単離し、次いで、酢酸エチル/ヘキサン(1:5)を溶離剤として用いてシリカカラムを使用して更に精製し、(Z)-3-ヒドロキシ-1-(ナフタレン-2-イル)-3-(4-ビニルフェニル)プロパ-2-エン-1-オン(N)を得た。HNMR(500MHz、CDCl)δ5.40(1H、d、J=11.0Hz、ビニル)、5.91(1H、d、J=17.5Hz、ビニル)、6.79(1H、dd、J=11.0Hz、J=17.5Hz、ビニル)、6.99(1H、s、エノールH-C=C-O-)、7.52-8.03(10H、m、Ar-H)、8.54(1H、s、Ar-H)注:交換可能なエノールプロトンは観察されなかった。
【0281】
77重量パーセントの表9に列挙する配合物及び23重量パーセントの希釈剤D3Oで構成される反応性モノマー混合物(RMM)を調製した。PVPを除く全ての成分を、窒素雰囲気下周囲温度にて90分間ジャー内で混合した後、PVPを添加し、周囲温度で更に240分間混合した。その後、ジャーに蓋をし、均一な溶液が得られるまで室温で約1000~6000分間、典型的には約1500~1600分間ローラー上に配置した。周囲温度及び室温は、典型的には25~30℃である。次に、反応性モノマー混合物を、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルターを通して濾過した。全ての反応性モノマー混合物を、コンタクトレンズを作製する前に45分間真空(40トル)を加えることによって、周囲温度で脱気した。
【0282】
【表9】
【0283】
窒素ガス雰囲気及び約0.2パーセント未満の酸素ガスが入っているグローブボックス内で、約75~100μLのRMMを、エッペンドルフピペットを使用して室温で90:10のZ:TTブレンドから成るFC内に分注した。次いで、90:10のZ:TTブレンドから成るBCをFC上に配置した。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させた。8つの成形型アセンブリを収容しているトレイを、それぞれ65℃に維持された隣接するグローブボックスに移し、石英プレートを使用してトレイ内の成形型アセンブリを覆い、固定した。435nmLED光を用いて、約5分間1.0mW/cm、次いで約10分間2.5mW/cmでレンズを上部及び底部から硬化させた。
【0284】
大部分のレンズがFCに付着した状態でレンズを手で離型し、レンズを約1リットルの70パーセントIPA中に約1時間又は2時間浮かせることによって取り外し、続いて、70パーセントIPAで2回、次いで脱イオン水で3回洗浄した。各洗浄工程を約30分続けた。レンズをホウ酸塩緩衝パッケージ溶液中で一晩平衡化させ、その後、新しいホウ酸塩緩衝パッケージ溶液中に保管した。これらのレンズの平均中心厚は、約85マイクロメートルであった。
【0285】
レンズ(実施例12)のUV-VIS透過スペクトルを図7に示し、これは、約2重量パーセントの化合物(N)を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約400nm~約450nmの青色光をいくらか吸収すると同時に、約250nm~約400nmの完全な吸収を示すことを実証する。
【0286】
〔実施の態様〕
(1) 式Iの化合物であって、
【0287】
【化20】
式中、
Yは、連結基であり、
は、重合性基であり、
が、H又はC~Cアルキルであり、
及びRは、独立して、C~Cアルキル又はシクロアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、
及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルである、化合物。
(2) Rが、Hである、実施態様1に記載の化合物。
(3) R及びRが、独立してH又はメチルである、実施態様1又は2に記載の化合物。
(4) Yが、C~Cアルキレン、アルキレンオキシ、C~Cオキサアルキレン、C~Cチアアルキレン、C~Cアルキレン-エステル-C~Cアルキレン、C~Cアルキレン-アミド-C~Cアルキレン、又はC~Cアルキレン-アミン-C~Cアルキレンを含む、実施態様1~3のいずれかに記載の化合物。
(5) Pが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、実施態様1~4のいずれかに記載の化合物。
【0288】
(6) R、R、及びRが、独立して、C~Cアルキルである、実施態様1~5のいずれかに記載の化合物。
(7) 2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェノキシ)エチルメタクリレート;
2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)チオ)エチルメタクリレート;
2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)(メチル)アミノ)エチルメタクリレート;
2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)アミノ)エチルメタクリレート;
N-(2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェノキシ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)チオ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)アミノ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)(メチル)アミノ)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェノキシ)エチル)アクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)チオ)エチル)アクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)アミノ)エチル)アクリルアミド;
N-(2-((4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)(メチル)アミノ)エチル)アクリルアミド;
3-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)プロピルメタクリレート;
N-(3-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェニル)プロピル)メタクリルアミド;
4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェネチルメタクリレート;又は
N-(4-アセチル-3-アミノ-2,6-ジメトキシフェネチル)メタクリルアミドである、実施態様1に記載の化合物。
(8) 反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である眼科用デバイスであって、前記眼科用デバイスを作製するのに好適な1つ以上のモノマーと、実施態様1~7のいずれかに記載の化合物を含む重合性高エネルギー光吸収化合物と、を含む、眼科用デバイス。
(9) 第2の重合性高エネルギー光吸収化合物を更に含む、実施態様8に記載の眼科用デバイス。
(10) 前記第2の重合性高エネルギー光吸収化合物が、UV吸収化合物である、実施態様9に記載の眼科用デバイス。
【0289】
(11) 前記UV吸収化合物が、式Iの化合物、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又はこれらの混合物を含む、実施態様10に記載の眼科用デバイス。
(12) 前記眼科用デバイスを作製するのに好適な前記モノマーが、親水性成分、シリコーン含有成分、又はこれらの混合物を含む、実施態様8~11のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(13) コンタクトレンズ、角膜オンレー(corneal onlay)、角膜インレー、眼内レンズ、又はオーバーレイレンズである、実施態様8~12のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(14) ヒドロゲルコンタクトレンズである、実施態様8~13のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(15) 眼科用デバイスを作製するための方法であって、
(a)実施態様1~7のいずれかに記載の化合物、1つ以上のデバイス形成モノマー、及びラジカル開始剤を含有する反応性混合物を提供することと、
(b)前記反応性混合物を重合させて前記眼科用デバイスを形成することと、を含む、方法。
【0290】
(16) 実施態様1~7のいずれかに記載の重合性高エネルギー光吸収化合物と、眼科用デバイスを作製するのに好適な1つ以上のモノマーと、を含む、反応性混合物の反応生成物であるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、約70°以下の接触角、少なくとも25パーセントの含水量、及び少なくとも80バーラーの酸素透過率を有する、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7