(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20231128BHJP
B62J 45/42 20200101ALI20231128BHJP
【FI】
B62J35/00 A
B62J45/42
(21)【出願番号】P 2021017980
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西田 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 義隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌平
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070134(JP,A)
【文献】特開2012-148659(JP,A)
【文献】特開2016-068832(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02030883(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00,45/40-45/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(20)に取り付けられた燃料タンク(8)と、
前記燃料タンク(8)の内部に設けられ、前記燃料タンク(8)の車幅方向中央に対して車幅方向の一方に片寄って配置された燃料ポンプ(70)と、を備え、
前記燃料タンク(8)は、前記燃料タンク(8)の上面側に設けられた上壁部(60)を備え、
前記上壁部(60)は、
前記燃料ポンプ(70)が取り付けられたポンプ取付部(65)と、
前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方に設けられ、前記ポンプ取付部(65)よりも上方に膨出する膨出部(100)と、を備え、
前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方と、前記ポンプ取付部(65)の前方及び後方の少なくとも一方と、を含む少なくとも3方向に設けられ、
前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)に対して前記燃料ポンプ(70)が片寄っている側に配置された片寄り側隆起部(110)を含み、
前記片寄り側隆起部(110)は、
前記ポンプ取付部(65)の車幅方向鉛直断面を前方から見た断面視で、前記片寄り側隆起部(110)の上端から前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第一湾曲面(116)
と、前記第一湾曲面(116)の下端につながるとともに前記燃料タンク(8)の内方へ向けて湾曲し、前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第三湾曲面(118)上端につながる第二湾曲面(117)と、
前記第二湾曲面(117)を外側面とする段部(114)と、を有することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
車体フレーム(20)に取り付けられた燃料タンク(8)と、
前記燃料タンク(8)の内部に設けられた燃料ポンプ(70)と、を備え、
前記燃料タンク(8)は、前記燃料タンク(8)の上面側に設けられた上壁部(60)を備え、
前記上壁部(60)は、
前記燃料ポンプ(70)が取り付けられたポンプ取付部(65)と、
前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方に設けられ、前記ポンプ取付部(65)よりも上方に膨出する膨出部(100)と、を備え、
前記燃料ポンプ(70)は、前記燃料タンク(8)の車幅方向中央に対して車幅方向の一方に片寄って配置されており、
前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)に対して前記燃料ポンプ(70)が片寄っている側に配置された片寄り側隆起部(110)を含み、
前記片寄り側隆起部(110)は、前記ポンプ取付部(65)から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面(111)を有し、
前記上壁部(60)は、前記ポンプ取付部(65)と前記傾斜面(111)との間に介在する介在面(112)を有し、
前記介在面(112)は、水平に沿って設けられているか、または、前記ポンプ取付部(65)から遠ざかるに従って上方に位置するように前記傾斜面(111)よりも緩やかに傾斜して設けられ、
前記片寄り側隆起部(110)は、
前記ポンプ取付部(65)の車幅方向鉛直断面を前方から見た断面視で、前記片寄り側隆起部(110)の上端から前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第一湾曲面(116)
と、前記第一湾曲面(116)の下端につながるとともに前記燃料タンク(8)の内方へ向けて湾曲し、前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第三湾曲面(118)上端につながる第二湾曲面(117)と、
前記第二湾曲面(117)を外側面とする段部(114)と、を有することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方と、前記ポンプ取付部(65)の前方及び後方の少なくとも一方と、を含む少なくとも3方向に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記上壁部(60)は、前記ポンプ取付部(65)から外部へ水を抜くための水抜き部(66)を有し、
前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)の周囲のうち前記水抜き部(66)を除いた部分に設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記燃料タンク(8)は、上下方向に沿って延びるとともに段部(114)を有する稜線(115)を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記燃料タンク(8)に貯留された燃料の液面を検知する液面センサ(80)と、
前記燃料タンク(8)の内部に設けられ、前記液面センサ(80)と前記燃料ポンプ(70)とをつなぐように延びるセンサアーム(90)と、を備え、
前記センサアーム(90)は、前記燃料ポンプ(70)から車幅方向一方へ延びた後に前後方向一方へ延びており、
前記液面センサ(80)は、前記センサアーム(90)の前記前後方向一方の端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フレームに取り付けられた燃料タンクと、燃料タンクの内部に設けられた燃料ポンプと、を備えた鞍乗型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の燃料タンクは、略水平な分割面上で上下分割体を一体に接合した略直方体形状の中空のタンク本体を有する。燃料ポンプは、タンク本体の上面のブラケットを介して、タンク本体内に臨んだ状態で設けられている。タンク本体の上面においてブラケットの後方及び右方の部分は、ブラケットの取付面よりも上方に膨出している。タンク本体の上面において前部左側の部分は、略水平に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料ポンプには、車体フレームから燃料タンクを経て振動が伝わる。燃料ポンプに対して振動が過度に伝わると、燃料ポンプの耐久性が低下する可能性がある。そのため、燃料ポンプに伝わる振動を小さくする技術が求められている。
【0005】
そこで本発明は、燃料ポンプに伝わる振動を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る鞍乗型車両は、車体フレーム(20)に取り付けられた燃料タンク(8)と、前記燃料タンク(8)の内部に設けられ、前記燃料タンク(8)の車幅方向中央に対して車幅方向の一方に片寄って配置された燃料ポンプ(70)と、を備え、前記燃料タンク(8)は、前記燃料タンク(8)の上面側に設けられた上壁部(60)を備え、前記上壁部(60)は、前記燃料ポンプ(70)が取り付けられたポンプ取付部(65)と、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方に設けられ、前記ポンプ取付部(65)よりも上方に膨出する膨出部(100)と、を備え、前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方と、前記ポンプ取付部(65)の前方及び後方の少なくとも一方と、を含む少なくとも3方向に設けられ、前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)に対して前記燃料ポンプ(70)が片寄っている側に配置された片寄り側隆起部(110)を含み、前記片寄り側隆起部(110)は、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向鉛直断面を前方から見た断面視で、前記片寄り側隆起部(110)の上端から前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第一湾曲面(116)と、前記第一湾曲面(116)の下端につながるとともに前記燃料タンク(8)の内方へ向けて湾曲し、前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第三湾曲面(118)上端につながる第二湾曲面(117)と、前記第二湾曲面(117)を外側面とする段部(114)と、を有する。
(2)本発明の態様に係る鞍乗型車両は、車体フレーム(20)に取り付けられた燃料タンク(8)と、前記燃料タンク(8)の内部に設けられた燃料ポンプ(70)と、を備え、前記燃料タンク(8)は、前記燃料タンク(8)の上面側に設けられた上壁部(60)を備え、前記上壁部(60)は、前記燃料ポンプ(70)が取り付けられたポンプ取付部(65)と、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方に設けられ、前記ポンプ取付部(65)よりも上方に膨出する膨出部(100)と、を備え、前記燃料ポンプ(70)は、前記燃料タンク(8)の車幅方向中央に対して車幅方向の一方に片寄って配置されており、前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)に対して前記燃料ポンプ(70)が片寄っている側に配置された片寄り側隆起部(110)を含み、前記片寄り側隆起部(110)は、前記ポンプ取付部(65)から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面(111)を有し、前記上壁部(60)は、前記ポンプ取付部(65)と前記傾斜面(111)との間に介在する介在面(112)を有し、前記介在面(112)は、水平に沿って設けられているか、または、前記ポンプ取付部(65)から遠ざかるに従って上方に位置するように前記傾斜面(111)よりも緩やかに傾斜して設けられ、前記片寄り側隆起部(110)は、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向鉛直断面を前方から見た断面視で、前記片寄り側隆起部(110)の上端から前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第一湾曲面(116)と、前記第一湾曲面(116)の下端につながるとともに前記燃料タンク(8)の内方へ向けて湾曲し、前記燃料タンク(8)の外方へ向けて湾曲する第三湾曲面(118)上端につながる第二湾曲面(117)と、前記第二湾曲面(117)を外側面とする段部(114)と、を有する。
【0007】
(3)上記(2)に記載の鞍乗型車両では、前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)の車幅方向両外方と、前記ポンプ取付部(65)の前方及び後方の少なくとも一方と、を含む少なくとも3方向に設けられていてもよい。
【0008】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の鞍乗型車両では、前記上壁部(60)は、前記ポンプ取付部(65)から外部へ水を抜くための水抜き部(66)を有し、前記膨出部(100)は、前記ポンプ取付部(65)の周囲のうち前記水抜き部(66)を除いた部分に設けられていてもよい。
【0010】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の鞍乗型車両では、前記燃料タンク(8)は、上下方向に沿って延びるとともに段部(114)を有する稜線(115)を含んでいてもよい。
【0011】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の鞍乗型車両では、前記燃料タンク(8)に貯留された燃料の液面を検知する液面センサ(80)と、前記燃料タンク(8)の内部に設けられ、前記液面センサ(80)と前記燃料ポンプ(70)とをつなぐように延びるセンサアーム(90)と、を備え、前記センサアーム(90)は、前記燃料ポンプ(70)から車幅方向一方へ延びた後に前後方向一方へ延びており、前記液面センサ(80)は、前記センサアーム(90)の前記前後方向一方の端部に取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記(1)、(2)に記載の鞍乗型車両によれば、車体フレームに取り付けられた燃料タンクと、燃料タンクの内部に設けられた燃料ポンプと、を備え、燃料タンクは、燃料タンクの上面側に設けられた上壁部を備え、上壁部は、燃料ポンプが取り付けられたポンプ取付部と、ポンプ取付部の車幅方向両外方に設けられ、ポンプ取付部よりも上方に膨出する膨出部と、を備えることで、以下の効果を奏する。
上壁部が、ポンプ取付部の車幅方向両外方に設けられ、ポンプ取付部よりも上方に膨出する膨出部を備えることで、膨出部により上壁部の断面係数(具体的には、上壁部を車幅方向及び上下方向を含む面で切断した断面の断面係数)が増加するため、上壁部の剛性が高くなる。そのため、車体フレームから燃料タンクの上壁部に振動が伝わった場合でも、膨出部により上壁部の振動を小さくすることができる。したがって、燃料ポンプに伝わる振動を小さくすることができる。
加えて、膨出部により上下方向の断面が大きくなることにより、前後方向の振動を小さくできるため、結果的に、車幅方向の振動よりも前後方向の振動を小さくすることができる。このように、振動の大きな方向を車幅方向に変えることができるため、燃料ポンプに伝わる振動のうち前後方向の成分を小さくする上で実益が大きい。
【0013】
本発明の上記(1)、(3)に記載の鞍乗型車両によれば、膨出部は、ポンプ取付部の車幅方向両外方と、ポンプ取付部の前方及び後方の少なくとも一方と、を含む少なくとも3方向に設けられていることで、以下の効果を奏する。
膨出部の設置領域が大きくなるため、上壁部の剛性をより一層高くすることができる。
したがって、燃料ポンプに伝わる振動をより効果的に小さくすることができる。
【0014】
本発明の上記(4)に記載の鞍乗型車両によれば、上壁部は、ポンプ取付部から外部へ水を抜くための水抜き部を有し、膨出部は、ポンプ取付部の周囲のうち水抜き部を除いた部分に設けられていることで、以下の効果を奏する。
水抜き部を設けつつ、膨出部の設置領域を可及的に大きくすることができる。したがって、水抜き部によりポンプ取付部から外部へ水を抜くことを可能とし、かつ、燃料ポンプに伝わる振動をより効果的に小さくすることができる。
【0015】
本発明の上記(2)に記載の鞍乗型車両によれば、燃料ポンプは、燃料タンクの車幅方向中央に対して車幅方向の一方に片寄って配置されており、膨出部は、ポンプ取付部に対して燃料ポンプが片寄っている側に配置された片寄り側隆起部を含み、片寄り側隆起部は、ポンプ取付部から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面を有し、上壁部は、ポンプ取付部と傾斜面との間に介在する介在面を有し、介在面は、水平に沿って設けられているか、または、ポンプ取付部から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜面よりも緩やかに傾斜して設けられていることで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、ポンプ取付部と傾斜面との間に介在面が存在せず、傾斜面がポンプ取付部から急峻に傾斜して設けられている場合、ポンプ取付部の近傍に局所的に応力が集中し、ひび割れ等が生じる可能性がある。これに対し、本構成によれば、上壁部がポンプ取付部と傾斜面との間に介在する介在面を有し、介在面は、水平に沿って設けられているか、または、ポンプ取付部から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜面よりも緩やかに傾斜して設けられていることで、ポンプ取付部の近傍に局所的に応力が集中すること(例えば、ポンプ取付部の近傍に局所的にせん断伸びが発生すること)を抑制することができる。したがって、ポンプ取付部の近傍にひび割れ等が生じることを抑制することができる。
特に、片寄り側隆起部の幅(車幅方向の長さ)が、膨出部のうちポンプ取付部に対して燃料ポンプが片寄っている側とは反対側に配置された部分の幅(車幅方向の長さ)よりも小さい場合は、ポンプ取付部の近傍に局所的に応力が集中しやすいため、ポンプ取付部の近傍にひび割れ等が生じることを抑制する上で実益が大きい。
【0016】
本発明の上記(5)に記載の鞍乗型車両によれば、燃料タンクは、上下方向に沿って延びるとともに段部を有する稜線を含むことでで、以下の効果を奏する。
段部を有する稜線により燃料タンクの剛性を高くすることができる。したがって、燃料ポンプに伝わる振動をより効果的に小さくすることができる。
【0017】
本発明の上記(6)に記載の鞍乗型車両によれば、燃料タンクに貯留された燃料の液面を検知する液面センサと、燃料タンクの内部に設けられ、液面センサと燃料ポンプとをつなぐように延びるセンサアームと、を備え、センサアームは、燃料ポンプから車幅方向一方へ延びた後に前後方向一方へ延びており、液面センサは、センサアームの前後方向一方の端部に取り付けられていることで、以下の効果を奏する。
ところで、センサアームには、車体フレームから燃料タンク、燃料ポンプを経て振動が伝わる。センサアームに対して振動が過度に伝わると、燃料ポンプの耐久性が低下する可能性がある。本構成によれば、センサアームは、燃料ポンプから車幅方向一方へ延びた後に前後方向一方へ延びており、液面センサは、センサアームの前後方向一方の端部に取り付けられていることで、センサアームが単純な直線形状を有する場合と比較して、センサアームの剛性が高くなる。そのため、車体フレームからセンサアームに振動が伝わった場合でも、センサアームの振動を小さくすることができる。したがって、燃料ポンプの耐久性が低下することを抑制することができる。
ところで、センサアームが燃料ポンプから車幅方向一方へ延びる場合、センサアームの付け根部分が前後方向の振動に弱くなり、センサアームの耐久性が低下する可能性がある。これに対し本構成によれば、上述の通り、膨出部により燃料ポンプに伝わる振動のうち前後方向の成分を小さくすることができるため、センサアームの付け根部分に前後方向の振動が作用することを抑制することができる。したがって、センサアームの耐久性が低下することを抑制することができる。さらに、センサアームの耐久性が低下することを抑制することにより、燃料ポンプの耐久性が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】実施形態の燃料タンクを含む周辺を左前方から見た斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III断面を含む前面図である。
【
図4】実施形態の燃料ポンプを含む周辺を右前方から見た斜視図である。
【
図8】実施形態の燃料タンクを前上方から見た斜視図である。
【
図10】
図6のX-X断面を含む、実施形態の燃料タンクを左上方から見た斜視図である。
【
図11】
図8のXI-XI断面を含む、実施形態の左側隆起部を含む周辺を前上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、鞍乗型車両の一例として自動二輪車を挙げて説明する。以下、自動二輪車を単に「車両」ということがある。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また、以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中心線CLが示されている。
【0020】
<車両全体>
図1に示すように、自動二輪車1(鞍乗型車両)は、ハンドル2によって操向される前輪3と、動力源を含むパワーユニット10によって駆動される後輪4と、パワーユニット10を支持する車体フレーム20と、を備える。
【0021】
車体フレーム20は、ハンドル2を操向可能に支持するヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21から後下方へ延びるメインフレーム22と、メインフレーム22の後端部から下方へ延びるピボットプレート23と、メインフレーム22の後部から後上方へ延びるシートレール24と、シートレール24の前後方向中間部とピボットプレート23の上部とを連結するバックステー25と、を備える。
【0022】
車体フレーム20の周囲は、車体カバー30で覆われている。車体カバー30の後部上方には、乗員が着座可能なシート6が支持されている。車体カバー30は、車体フレーム20の前部を覆うフロントカバー31と、ハンドル2回りを覆うハンドルカバー32と、シート6の下方を覆うリヤカバー33と、を備える。
【0023】
車体カバー30は、車体左右中心線に沿って前後方向に延びるセンタートンネル35を有する。センタートンネル35の下方には、シート6に着座した運転者が足を載せる左右一対のステップ36が設けられている。センタートンネル35の上方であってシート6とハンドル2との間は、乗員が車体を跨ぎやすくする跨ぎ空間37とされている。
【0024】
パワーユニット10は、可燃性の混合気を燃焼させて出力を得る内燃機関であるエンジン11と、始動機及び発電機として機能する不図示のACGスタータモータと、クランクシャフト(不図示)に連結されてエンジン11からの動力を駆動輪である後輪4に伝達する不図示の変速機(動力伝達機構)と、を備える。
【0025】
エンジン11は、車体フレーム20に固定的に支持されている。エンジン11は、不図示のクランクシャフトを収容するクランクケース12と、クランクケース12の前部から前方(やや斜め前上方)に向かって起立するシリンダ13と、を備える。
【0026】
クランクケース12の後方には、前後方向に延びるスイングアーム15が設けられている。スイングアーム15の前端部は、ピボットプレート23に対してピボット軸を介して上下揺動可能に支持されている。スイングアーム15の後端部は、後輪4の車軸を支持している。スイングアーム15の後端部とシートレール24の前後方向中間部との間には、緩衝装置であるリヤクッション7が架け渡されている。シートレール24には、エンジン11の燃料を貯留する燃料タンク8が支持されている。
【0027】
<燃料タンク>
図2に示すように、燃料タンク8は、中空のタンク本体40を備える。タンク本体40は、車体フレーム20の左右のシートレール24の後部に取り付けられている。タンク本体40は、シートレール24の上端縁に沿う分割線DS(
図7参照)の上側に位置する上分割体41と、分割面DSの下側に位置する下分割体42と、を備える。タンク本体40は、上分割体41と下分割体42とを一体に結合した結合体である。
【0028】
図3に示すように、上分割体41は、下方に開口する容器形状を有する。上分割体41は、下方開口を有する上側容器本体43と、上側容器本体43の下方開口縁から分割面DSに沿って外方に張り出す上フランジ44と、を備える。上側容器本体43は、
図6の上面視で、外方に向かって湾曲する外形を有する。上側容器本体43は、
図6の上面視で、車両後側に向かうに従って車幅方向の長さが小さくなっている。上側容器本体43は、
図7の側面視で、車両後側に向かうに従って上下方向の長さが小さくなっている。
【0029】
図3に示すように、下分割体42は、上方に開口する容器形状を有する。下分割体42は、上方開口を有する下側容器本体45と、下側容器本体45の上方開口縁から分割面DSに沿って外方に張り出す下フランジ46と、を備える。下側容器本体45は、
図7の側面視で、略水平に沿って延びる前部下面と、前部下面の後端から後上方に向かって延びる傾斜下面と、を有する。
図10に示すように、下側容器本体45の下壁部47には、後輪4(
図1参照)の上方への揺動範囲を確保するために上方に向かって弧状に湾曲する凹部48が設けられている。
【0030】
図3に示すように、上フランジ44の下面は、下フランジ46の上面と溶接により結合されている。タンク本体40は、上フランジ44と下フランジ46とが一体に結合したフランジ部49を有する。
図2に示すように、左右のシートレール24(
図2では左側のシートレール24を図示)には、フランジ部49の前部を支持する前側ブラケット50と、フランジ部49の後部を支持する後側ブラケット51と、が溶接等により結合されている。フランジ部49は、ボルト52等の締結部材を介して前側ブラケット50及び後側ブラケット51に固定されている。
【0031】
<上壁部>
燃料タンク8は、燃料タンク8の上面側に設けられた上壁部60を備える。上壁部60は、タンク本体40の上分割体41のうち上面側に位置する部分である。
図6に示すように、上壁部60は、タンク本体40内に連通する給油口61と、ポンプ取付口62と、を有する。
【0032】
給油口61は、上壁部60の後部に配置されている。給油口61は、上壁部60の車幅方向中央寄り(車幅方向中央に対してやや右側に片寄った位置)に配置されている。給油口61は、
図6の上面視で円形状を有する。給油口61は、上壁部60の後部のうち略水平に沿って設けられた平坦部63により囲まれている。給油口61は、上壁部60に対して着脱可能な燃料キャップ64(
図2参照)により塞がれる。
【0033】
ポンプ取付口62は、上壁部60の前部に配置されている。ポンプ取付口62は、上壁部60の左側に配置されている。ポンプ取付口62は、
図6の上面視で給油口61よりも大きい円形状を有する。ポンプ取付口62は、
図6の上面視で、給油口61よりも左側に配置されている。
【0034】
図3に示すように、上壁部60は、燃料ポンプ70が取り付けられたポンプ取付部65と、ポンプ取付部65よりも上方に膨出する膨出部100と、ポンプ取付部65から外部へ水を抜くための水抜き部66(
図8参照)と、を備える。ポンプ取付部65は、上壁部60のうち
図6の上面視でポンプ取付口62の周囲の環状部分である。
図10に示すように、ポンプ取付部65は、給油口61の周囲の平坦部63よりも前下方に配置されている。ポンプ取付部65は、平坦部63よりも下方に変位した位置で略水平に沿って設けられている。
【0035】
図6に示すように、ポンプ取付部65には、複数(例えば本実施形態では2つ)のブラケット67,68が固定されている。ブラケット67,68は、
図6の上面視で、ポンプ取付部65の径方向の幅内に配置されている。ブラケット67,68の下面は、ポンプ取付部65の上面に溶接により結合されている。
【0036】
2つのブラケット67,68は、
図6の上面視でポンプ取付口62を介して対向配置されている。ブラケット67,68は、
図6の上面視でポンプ取付口62に沿う弧状を有する。2つのブラケット67,68の一方(第一ブラケット67)は、ポンプ取付口62の前側から左側にわたって延びている。2つのブラケット67,68の他方(第二ブラケット68)は、ポンプ取付口62の右側から後側にわたって延びている。
【0037】
<燃料ポンプ>
図3に示すように、燃料タンク8には、タンク本体40内の燃料をエンジン11(
図1参照)に供給する燃料ポンプ70が設けられている。燃料ポンプ70は、ボルト等の締結部材を介して各ブラケット67,68に固定されている。図中において、符号71は燃料ポンプ70に接続されたポンプ側ジョイントを示す。
図2中符号72は、ポンプ側ジョイント71と不図示の燃料噴射弁とを接続する燃料ホースを示す。
【0038】
図3に示すように、燃料ポンプ70は、タンク本体40内に臨んだ状態で設けられている。燃料ポンプ70は、燃料タンク8の車幅方向中央に対して車幅方向の一方(本実施形態では左側)に片寄って配置されている。燃料ポンプ70は、上下方向に延びる筒状を有する。燃料ポンプ70は、ポンプ取付口62を通じて上下方向に延びる第一筒部73と、第一筒部73内を上下方向に延びる第二筒部74と、を備える。図中において、符号75は水平面に対して傾斜する板状の傾斜板、符号76は第二筒部74の下部と傾斜板とを連結する連結部材をそれぞれ示す。
【0039】
第一筒部73は、ポンプ取付口62と同軸に上下方向に延びる第一筒本体73aと、第一筒本体73aの下端から下方へ延びる延出部73bと、を備える。延出部73bは、第一筒本体73aの径方向に開口する取付孔73hを有する。延出部73bは、第一筒本体73aの周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0040】
第二筒部74は、第一筒部73に対して着脱可能に取り付けられている。第二筒部74の下部は、第一筒部73の下方に露出している。第二筒部74は、第一筒本体73aと同軸に上下方向に延びる第二筒本体74aと、第二筒本体74aの外周面から径方向外方に突出する突出部74bと、を備える。突出部74bは、第二筒本体74aの周方向に間隔をあけて複数配置されている。突出部74bは、延出部73bの取付孔73hと同じ数だけ設けられている。
【0041】
例えば、突出部74bは、突出部74bの弾性を利用してはめ込むことにより固定する方式(スナップフィット)により、延出部73bの取付孔73hに係合される。第二筒部74は、各延出部73bの取付孔73hに各突出部74bが係合されることで、第一筒部73に取り付けられる。
【0042】
<液面センサ>
タンク本体40内には、燃料タンク8に貯留された燃料の液面を検知する液面センサ80が設けられている。液面センサ80は、ワイヤ付きのフロート81,82(本実施形態では2つのフロート81,82)を備える。液面センサ80は、燃料の液面の変位に従って変動するワイヤの長さを測ることにより燃料の液面を検知する、いわゆるディスプレーサー式のレベルセンサである。
【0043】
<センサアーム>
タンク本体40内には、液面センサ80と燃料ポンプ70とをつなぐように延びるセンサアーム90が設けられている。
図4に示すように、センサアーム90は、燃料ポンプ70から車幅方向一方へ延びた後に前後方向一方へ延びている。
図5に示すように、センサアーム90は、燃料ポンプ70(具体的には、第二筒本体74aの下部右側部)から右方へ延びる第一延在部91と、第一延在部91の右端部から右後方へ延びる第二延在部92と、第二延在部92の後端部から後方へ延びる(具体的には、第二延在部92よりも急峻に右後方へ延びる)第三延在部93と、を備える。液面センサ80は、第三延在部93の後端部に取り付けられている。すなわち、液面センサ80は、センサアーム90の後端部に取り付けられている。
【0044】
図4に示すように、センサアーム90及び燃料ポンプ70には、液面センサ80から延びる配線83,84を支持する支持部85~88が設けられている。配線83,84は、液面センサ80からセンサアーム90の各支持部85,86を介してセンサアーム90に沿って延びている。その後、配線85,86は、燃料ポンプ70の各支持部87,88を介して上方へ向かって湾曲しつつ延びている。
【0045】
<膨出部>
図8に示すように、膨出部100は、ポンプ取付部65の車幅方向両外方と、ポンプ取付部65の後方と、を含む少なくとも3方向に設けられている。膨出部100は、上壁部60においてポンプ取付部65の周囲のうち水抜き部66を除いた部分に設けられている。水抜き部66は、ポンプ取付部65の前方にのみ設けられている。水抜き部66は、上壁部60のうちポンプ取付部65の前端縁につながる部分である。
図10に示すように、水抜き部66は、ポンプ取付部65の前端縁から前下方へ湾曲している。
【0046】
図6に示すように、膨出部100は、ポンプ取付部65の周囲のうち水抜き部66を除いた部分の全体にわたって延びている。膨出部100は、
図6の上面視で、前方に開放するC字状に形成されている。膨出部100は、ポンプ取付部65の左側に位置する左側隆起部110(片寄り側隆起部)と、ポンプ取付部65の右側に位置する右側隆起部120と、ポンプ取付部65の後側に位置する後側隆起部130と、を含む。左側隆起部110及び後側隆起部130、並びに後側隆起部130及び右側隆起部120は、ポンプ取付部65の周方向においてそれぞれ滑らかにつながっている。
【0047】
図3に示すように、左側隆起部110は、ポンプ取付部65に対して燃料ポンプ70が片寄っている側に配置されている。
図9の断面視で、左側隆起部110の車幅方向の長さは、右側隆起部120の車幅方向の長さよりも小さい。ここで、左側隆起部110の車幅方向の長さは、膨出部100のうちポンプ取付部65の左側に位置する部分の車幅方向の最大長さを意味する。右側隆起部120の車幅方向の長さは、膨出部100のうちポンプ取付部65の右側に位置する部分の車幅方向の最大長さを意味する。
【0048】
図11の断面視で、左側隆起部110は、ポンプ取付部65から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面111を有する。上壁部60は、ポンプ取付部65と傾斜面111との間に介在する介在面112を有する。介在面112は、ポンプ取付部65から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜面111よりも緩やかに傾斜して設けられている。言い換えると、上壁部60は、
図11の断面視で、ポンプ取付部65の左端から左上方に向けて湾曲しつつ傾斜する介在面112と、介在面112の左端に滑らかにつながると共に左上方に向けて湾曲しつつ介在面112よりも急峻に傾斜する傾斜面111と、を有する。
【0049】
図11の断面視で、上側容器本体43の左側壁113は、上下方向に沿って延びるとともに段部114を有する稜線115を含む。言い換えると、稜線115は、
図11の断面視で、左側隆起部110の上端から左下方に向けて湾曲する第一湾曲面116と、第一湾曲面116の下端に滑らかにつながると共に上側容器本体43内方へ向けて湾曲する第二湾曲面117(段部114の外側面)と、第二湾曲面117の下端に滑らかにつながるとともに第二湾曲面117の下端から左方へ向けて湾曲する第三湾曲面118と、を有する。
【0050】
第一湾曲面116及び第三湾曲面118は、
図11の断面視で上側容器本体43外方へ向けて湾曲している。一方、第二湾曲面117は、第一湾曲面116及び第三湾曲面118の湾曲方向とは反対方向(
図11の断面視で上側容器本体43内方)へ向けて湾曲している。すなわち、段部114は、上側容器本体43の左側壁113のうち第一湾曲面116と第三湾曲面118との間に設けられている。
【0051】
図3に示すように、右側隆起部120は、ポンプ取付部65に対して燃料ポンプ70が片寄っている側とは反対側に配置されている。
図9の断面視で、右側隆起部120は、ポンプ取付部65の右端から右上方へ向けて傾斜する第一右側傾斜面121と、第一右側傾斜面121の右端に滑らかにつながると共に右方へ向けて延びる(具体的には第一右側傾斜面121よりも緩やかに傾斜する)第二右側傾斜面122と、を有する。
図9の断面視で、第一右側傾斜面121の車幅方向の長さは、左側隆起部110の車幅方向の長さ(具体的には、
図11に示す傾斜面111と介在面112とを足し合わせ車幅方向の長さ)よりも大きい。
【0052】
図9に示すように、後側隆起部130は、左側隆起部110と右側隆起部120とをポンプ取付部65の周方向において滑らかにつないでいる。
図10に示すように、後側隆起部130は、給油口61周囲の平坦部63とポンプ取付部65とを前後方向において滑らかにつないでいる。
図10の断面視で、後側隆起部130は、ポンプ取付部65の後端から後上方へ向けて湾曲しつつ傾斜する第一後側傾斜面131と、第一後側傾斜面131の上端に滑らかにつながるとともに後下方へ向けて湾曲しつつ傾斜する第二後側傾斜面132と、を有する。第二後側傾斜面132の後端は、平坦部63の前端に滑らかにつながっている。
【0053】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態の自動二輪車1は、車体フレーム20に取り付けられた燃料タンク8と、燃料タンク8の内部に設けられた燃料ポンプ70と、を備え、燃料タンク8は、燃料タンク8の上面側に設けられた上壁部60を備え、上壁部60は、燃料ポンプ70が取り付けられたポンプ取付部65と、ポンプ取付部65の車幅方向両外方に設けられ、ポンプ取付部65よりも上方に膨出する膨出部100と、を備える。
この構成によれば、上壁部60が、ポンプ取付部65の車幅方向両外方に設けられ、ポンプ取付部65よりも上方に膨出する膨出部100を備えることで、膨出部100により上壁部60の断面係数(具体的には、上壁部60を車幅方向及び上下方向を含む面で切断した断面の断面係数)が増加するため、上壁部60の剛性が高くなる。そのため、車体フレーム20から燃料タンク8の上壁部60に振動が伝わった場合でも、膨出部100により上壁部60の振動を小さくすることができる。したがって、燃料ポンプ70に伝わる振動を小さくすることができる。
加えて、膨出部100により上下方向の断面が大きくなることにより、前後方向の振動を小さくできるため、結果的に、車幅方向の振動よりも前後方向の振動を小さくすることができる。このように、振動の大きな方向を車幅方向に変えることができるため、燃料ポンプ70に伝わる振動のうち前後方向の成分を小さくする上で実益が大きい。
【0054】
上記実施形態では、膨出部100は、ポンプ取付部65の車幅方向両外方と、ポンプ取付部65の後方と、を含む少なくとも3方向に設けられていることで、以下の効果を奏する。
膨出部100の設置領域が大きくなるため、上壁部60の剛性をより一層高くすることができる。したがって、燃料ポンプ70に伝わる振動をより効果的に小さくすることができる。
【0055】
上記実施形態では、上壁部60は、ポンプ取付部65から外部へ水を抜くための水抜き部66を有し、膨出部100は、ポンプ取付部65の周囲のうち水抜き部66を除いた部分に設けられていることで、以下の効果を奏する。
水抜き部66を設けつつ、膨出部100の設置領域を可及的に大きくすることができる。したがって、水抜き部66によりポンプ取付部65から外部へ水を抜くことを可能とし、かつ、燃料ポンプ70に伝わる振動をより効果的に小さくすることができる。
【0056】
上記実施形態では、燃料ポンプ70は、燃料タンク8の左側に片寄って配置されており、膨出部100は、ポンプ取付部65に対して燃料ポンプ70が片寄っている側に配置された左側隆起部110を含み、左側隆起部110は、ポンプ取付部65から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面111を有し、上壁部60は、ポンプ取付部65と傾斜面111との間に介在する介在面112を有し、介在面112は、ポンプ取付部65から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜面111よりも緩やかに傾斜して設けられていることで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、ポンプ取付部65と傾斜面111との間に介在面112が存在せず、傾斜面111がポンプ取付部65から急峻に傾斜して設けられている場合、ポンプ取付部65の近傍に局所的に応力が集中し、ひび割れ等が生じる可能性がある。これに対し、本構成によれば、上壁部60がポンプ取付部65と傾斜面111との間に介在する介在面112を有し、介在面112は、ポンプ取付部65から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜面111よりも緩やかに傾斜して設けられていることで、ポンプ取付部65の近傍に局所的に応力が集中すること(例えば、ポンプ取付部65の近傍に局所的にせん断伸びが発生すること)を抑制することができる。したがって、ポンプ取付部65の近傍にひび割れ等が生じることを抑制することができる。
特に、左側隆起部110の幅(車幅方向の長さ)が、膨出部100のうちポンプ取付部65に対して燃料ポンプ70が片寄っている側とは反対側(本実施形態ではポンプ取付部65の右側)に配置された部分(本実施形態では右側隆起部120)の幅(車幅方向の長さ)よりも小さい場合は、ポンプ取付部65の近傍に局所的に応力が集中しやすいため、ポンプ取付部65の近傍にひび割れ等が生じることを抑制する上で実益が大きい。
【0057】
上記実施形態では、燃料タンク8は、上下方向に沿って延びるとともに段部114を有する稜線115を含むことでで、以下の効果を奏する。
段部114を有する稜線115により燃料タンク8の剛性を高くすることができる。したがって、燃料ポンプ70に伝わる振動をより効果的に小さくすることができる。
【0058】
上記実施形態では、燃料タンク8に貯留された燃料の液面を検知する液面センサ80と、燃料タンク8の内部に設けられ、液面センサ80と燃料ポンプ70とをつなぐように延びるセンサアーム90と、を備え、センサアーム90は、燃料ポンプ70から右方へ延びた後に後方へ延びており、液面センサ80は、センサアーム90の後端部に取り付けられていることで、以下の効果を奏する。
ところで、センサアーム90には、車体フレーム20から燃料タンク8、燃料ポンプ70を経て振動が伝わる。センサアーム90に対して振動が過度に伝わると、燃料ポンプ70の耐久性が低下する可能性がある。本構成によれば、センサアーム90は、燃料ポンプ70から右方へ延びた後に後方へ延びており、液面センサ80は、センサアーム90の後端部に取り付けられていることで、センサアーム90が単純な直線形状を有する場合と比較して、センサアーム90の剛性が高くなる。そのため、車体フレーム20からセンサアーム90に振動が伝わった場合でも、センサアーム90の振動を小さくすることができる。したがって、燃料ポンプ70の耐久性が低下することを抑制することができる。
ところで、センサアーム90が燃料ポンプ70から車幅方向一方へ延びる場合、センサアーム90の付け根部分が前後方向の振動に弱くなり、センサアーム90の耐久性が低下する可能性がある。これに対し本構成によれば、上述の通り、膨出部100により燃料ポンプ70に伝わる振動のうち前後方向の成分を小さくすることができるため、センサアーム90の付け根部分に前後方向の振動が作用することを抑制することができる。したがって、センサアーム90の耐久性が低下することを抑制することができる。さらに、センサアーム90の耐久性が低下することを抑制することにより、燃料ポンプ70の耐久性が低下することを抑制することができる。
【0059】
<変形例>
なお、上記実施形態では、膨出部は、ポンプ取付部の車幅方向両外方と、ポンプ取付部の後方と、を含む少なくとも3方向に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、膨出部は、ポンプ取付部の車幅方向両外方のみに設けられていてもよい。例えば、膨出部の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0060】
上記実施形態では、上壁部は、ポンプ取付部から外部へ水を抜くための水抜き部を有し、膨出部は、ポンプ取付部の周囲のうち水抜き部を除いた部分に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、上壁部は、水抜き部を有しなくてもよい。例えば、膨出部は、ポンプ取付部の周囲の全周にわたって設けられていてもよい。例えば、膨出部は、ポンプ取付部の車幅方向両外方と、ポンプ取付部の前方及び後方の少なくとも一方と、を含む少なくとも3方向に設けられていてもよい。
【0061】
上記実施形態では、燃料ポンプは、燃料タンクの左側に片寄って配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、燃料ポンプは、燃料タンクの右側に片寄って配置されていてもよい。例えば、燃料ポンプは、燃料タンクの車幅方向中央に対して車幅方向の一方に片寄って配置されていてもよい。例えば、燃料ポンプは、燃料タンクの車幅方向中央に配置されていてもよい。例えば、燃料ポンプの配置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0062】
上記実施形態では、膨出部は、ポンプ取付部に対して左側に配置された左側隆起部を含み、左側隆起部は、ポンプ取付部から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、膨出部は、ポンプ取付部に対して右側に配置された右側隆起部を含み、右側隆起部は、ポンプ取付部から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面を有してもよい。例えば、膨出部は、ポンプ取付部に対して燃料ポンプが片寄っている側に配置された片寄り側隆起部を含み、片寄り側隆起部は、ポンプ取付部から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜する傾斜面を有してもよい。例えば、ポンプ取付部に対する隆起部の配置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0063】
上記実施形態では、上壁部は、ポンプ取付部と傾斜面との間に介在する介在面を有し、介在面は、ポンプ取付部から遠ざかるに従って上方に位置するように傾斜面よりも緩やかに傾斜して設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、介在面は、水平に沿って設けられていてもよい。例えば、ポンプ取付部と傾斜面との間に介在面が存在せず、傾斜面がポンプ取付部から急峻に傾斜して設けられていてもよい。例えば、傾斜面の設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0064】
上記実施形態では、燃料タンクは、上下方向に沿って延びるとともに段部を有する稜線を含む例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、燃料タンクにおいて上下方向に延びる稜線は、段部を有しなくてもよい。例えば、燃料タンクの稜線の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0065】
上記実施形態では、燃料タンクに貯留された燃料の液面を検知する液面センサと、燃料タンクの内部に設けられ、液面センサと燃料ポンプとをつなぐように延びるセンサアームと、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、燃料タンクの内部には、液面センサ及びセンサアームが設けられていなくてもよい。例えば、燃料タンクの内部の構成要素の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0066】
上記実施形態では、センサアームは、燃料ポンプから右方へ延びた後に後方へ延びており、液面センサは、センサアームの後端部に取り付けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、センサアームは、燃料ポンプから左方へ延びた後に後方へ延びており、液面センサは、センサアームの後端部に取り付けられていてもよい。例えば、センサアームは、燃料ポンプから車幅方向一方へ延びる第一延在部と、第一延在部の車幅方向一方の端部から前後方向一方へ延びる第二延在部と、を備え、液面センサは、第二延在部の前後方向一方の端部に取り付けられていてもよい。例えば、センサアームは、第二延在部の前後方向一方の端部から車幅方向一方へ延びる第三延在部を更に備え、液面センサは、第三延在部の車幅方向一方の端部に取り付けられていてもよい。例えば、センサアームは、燃料ポンプから車幅方向一方へのみ延びていてもよい。例えば、センサアームは、単純な直線形状を有していてもよい。例えば、センサアームの態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0067】
上記実施形態では、液面センサは、燃料の液面の変位に従って変動するワイヤの長さを測ることにより燃料の液面を検知する、いわゆるディスプレーサー式のレベルセンサである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、液面センサは、浮きの浮力を利用したフロート式や、電極間に電圧を印加する電極式、タンク本体内の燃料の圧力を測定する差圧式等の他の方式のレベルセンサであってもよい。例えば、液面センサの態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0068】
上記実施形態では、鞍乗型車両の一例として車体側にエンジンを搭載した自動二輪車を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、鞍乗型車両は、ユニットスイング式の自動二輪車であってもよい。例えば、鞍乗型車両の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、鞍乗型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪且つ後二輪の他に、前二輪且つ後一輪の車両も含む)の車両も含まれる。また、本発明は、自動二輪車のみならず、自動車等の四輪の車両にも適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
8 燃料タンク
20 車体フレーム
60 上壁部
65 ポンプ取付部
66 水抜き部
70 燃料ポンプ
80 液面センサ
90 センサアーム
100 膨出部
110 左側隆起部(片寄り側隆起部)
111 傾斜面
112 介在面
114 段部
115 稜線