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  • 特許-金属-ゴム複合体及びその製造方法 図1
  • 特許-金属-ゴム複合体及びその製造方法 図2A
  • 特許-金属-ゴム複合体及びその製造方法 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】金属-ゴム複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/70 20060101AFI20231128BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231128BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20231128BHJP
   F16K 1/36 20060101ALN20231128BHJP
【FI】
B29C65/70
B29C45/14
B29C35/02
F16K1/36 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021040018
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139569
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-03-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大介
(72)【発明者】
【氏名】深澤 新平
(72)【発明者】
【氏名】池原 潤一郎
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-109341(JP,A)
【文献】特開平06-300161(JP,A)
【文献】特開2014-145013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/70
B29C 45/14
B29C 35/02
F16K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底のネジ穴が形成された金属部材と、前記金属部材の前記ネジ穴に充填されるとともに前記ネジ穴の雌ネジの凹凸に係合した加硫ゴムで形成されたゴム部材と、を備えた金属-ゴム複合体であって、
前記金属-ゴム複合体が電磁弁のプランジャーである金属-ゴム複合体。
【請求項2】
請求項1に記載された金属-ゴム複合体において、
前記金属部材がステンレスで形成されている金属-ゴム複合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された金属-ゴム複合体において、
前記ネジ穴の止まり孔穴深さが1.8mm以上2.2mm以下である金属-ゴム複合体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された金属-ゴム複合体において、
前記ゴム部材を形成する前記加硫ゴムのゴム成分が水素化ニトリルゴムである金属-ゴム複合体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された金属-ゴム複合体において、
前記ゴム部材を形成する前記加硫ゴムのJIS K6253-3:2012に基づいてタイプDのデュロメータで測定される硬さが85以上95以下である金属-ゴム複合体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された金属-ゴム複合体において、
前記ゴム部材が物理的固定手段のみにより前記金属部材と複合している金属-ゴム複合体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された金属-ゴム複合体の製造方法であって、
前記金属部材に形成された有底のネジ穴に、前記ゴム部材を形成するための未加硫ゴムを、前記未加硫ゴムが前記ネジ穴の雌ネジの凹凸に係合するように充填し、前記未加硫ゴムを架橋させる金属-ゴム複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-ゴム複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁等に組み付けられる弁開閉のための部品であるプランジャーとして、金属部材とゴム部材との金属-ゴム複合体が用いられている。例えば、特許文献1には、金属部材のプランジャー本体の先端部に、ゴム部材のシール部が設けられたプランジャーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-300161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ゴム部材が金属部材から脱落するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、有底のネジ穴が形成された金属部材と、前記金属部材の前記ネジ穴に充填されるとともに前記ネジ穴の雌ネジの凹凸に係合した加硫ゴムで形成されたゴム部材とを備えた金属-ゴム複合体であって、前記金属-ゴム複合体が電磁弁のプランジャーである。
【0006】
本発明は、本発明の金属-ゴム複合体の製造方法であって、前記金属部材に形成された有底のネジ穴に、前記ゴム部材を形成するための未加硫ゴムを、前記未加硫ゴムが前記ネジ穴の雌ネジの凹凸に係合するように充填し、前記未加硫ゴムを架橋させるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゴム部材が金属部材に形成されたネジ穴の雌ネジの凹凸に係合しているので、ゴム部材が金属部材から脱落するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るプランジャーの断面図である。
図2A】電磁石がオフのときの空気圧電磁弁の内部構造を示す図である。
図2B】電磁石がオンのときの空気圧電磁弁の内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係るプランジャー10(金属-ゴム複合体)を示す。このプランジャー10は、例えば、空気圧電磁弁等に組み付けられる弁開閉のための部品である。
【0011】
実施形態に係るプランジャー10は、金属部材のプランジャー本体11と、ゴム部材のゴムシール12とを備える。
【0012】
プランジャー本体11は、円柱状に形成されている。プランジャー本体11は、先端部分がネック形状に形成され、それにより先端部に環状のフランジ111が構成されている。
【0013】
プランジャー本体11は、磁性を帯びた金属で形成されている。プランジャー本体11は、軽量であることによる可動性及び防錆性の観点から、ステンレスで形成されていることが好ましく、SUS430Fのステンレスで形成されていることがより好ましい。
【0014】
プランジャー本体11の先端面の中央には、ネジ穴112が形成されている。ネジ穴112としては、例えばM1乃至M3(典型的にはM1.6、M1.8、M2、又はM2.2)のメートルネジ用のものが挙げられる。ネジ穴112の雌ネジの内径Dは、例えば0.729mm以上2.621mm以下である。ネジ穴112の雌ネジのピッチPは、例えば0.2mm以上0.5mm以下である。ネジ穴112の止まり孔穴深さFは、後述するゴムシール12がプランジャー本体11から脱落するのを抑制する観点から、好ましくは1.8mm以上、より好ましくは1.9mm以上である。ネジ穴112の止まり孔穴深さFは、ゴムシール12の収縮によるヒケを抑制するとともに、ネジ穴112の深い部分でゴムシール12の架橋が不十分となって収縮にばらつきが生じるのを抑制して高い寸法精度を得る観点から、好ましくは2.2mm以下、より好ましくは2.1mm以下である。ここで、ネジ穴112の止まり孔穴深さFは、ネジ穴112の開口から底部の円錐孔部分の始点までの深さである。
【0015】
ゴムシール12は、プランジャー本体11のネジ穴112に充填されるとともに、ネジ穴112の雌ネジの凹凸に係合している。実施形態に係るプランジャー10によれば、このようにゴムシール12がプランジャー本体11に形成されたネジ穴112の雌ネジの凹凸に係合しているので、ゴムシール12のネジ穴112の雌ネジの凹凸への係合によりゴムシール12のネジ穴112の開口側への移動が規制され、それによりゴムシール12がプランジャー本体11から脱落するのを抑制することができる。ゴムシール12は、高いシール性を得る観点から、プランジャー本体11の先端面から僅かに突出するように形成されていることが好ましい。
【0016】
ゴムシール12は、加硫ゴムで形成されている。この加硫ゴムのゴム成分としては、例えば、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。この加硫ゴムのゴム成分は、高いシール性を得る観点から、水素化ニトリルゴムであることが好ましい。この加硫ゴムのJIS K6253-3:2012に基づいてタイプDのデュロメータで測定される硬さは、ゴムシール12がプランジャー本体11から脱落するのを抑制する観点から、好ましくは85以上95以下である。
【0017】
ゴムシール12は、ネジ穴112の雌ネジの凹凸への係合による物理的固定手段のみによりプランジャー本体11と複合していることが好ましい。接着剤による化学的固定手段も併用した場合、接着剤の塗布のための工数を要する、接着剤により金型が汚れる、接着剤を失活させないための管理が必要となる等の問題がある。しかしながら、物理的固定手段のみを用いる場合、これらの問題は生じないので、金型が接着剤で汚れることもなく、また、短いリードタイムで製造することができる。
【0018】
実施形態に係るプランジャー10は、プランジャー本体11に形成されたネジ穴112に、ゴムシール12を形成するための未加硫ゴムを、その未加硫ゴムがネジ穴112の雌ネジの凹凸に係合ように充填したものを金型のキャビティにセットした後、それを加熱及び加圧して未加硫ゴムを架橋させることにより製造することができる。
【0019】
図2A及びBは、実施形態に係るプランジャー10を組み付けた空気圧電磁弁20を示す。
【0020】
この空気圧電磁弁20では、ハウジング21内において、エア流通孔211に対向するように有底円筒孔のプランジャー収容部212が形成されている。このプランジャー収容部212には、実施形態に係るプランジャー10が、先端のゴムシール12がエア流通孔211側に配置されるように設けられている。プランジャー収容部212の外側には、図示しない電磁石が設けられている。プランジャー収容部212の中間部には段差213が形成されており、この段差213とプランジャー本体11のフランジ111との間にコイルスプリング22が圧縮状態で介設されている。これにより、プランジャー10がプランジャー収容部212の開口側に付勢されている。
【0021】
この空気圧電磁弁20では、電磁石がオフのとき、プランジャー10には電磁力が作用しないので、図2Aに示すように、プランジャー10は、コイルスプリング22によりプランジャー収容部212の開口側に付勢され、ゴムシール12がエア流通孔211の開口に当接して封止することによりエアの流通を遮断する。一方、電磁石がオンのとき、プランジャー10には電磁力が作用し、図2Bに示すように、プランジャー10は、電磁力が作用してコイルスプリング22の付勢に抗してプランジャー収容部212の底側に移動し、ゴムシール12がエア流通孔211の開口から離間してエア流通孔211が連通することによりエアを流通させる。
【0022】
なお、上記実施形態では、金属-ゴム複合体として、空気圧電磁弁20のプランジャー10を示したが、特にこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、金属-ゴム複合体及びその製造方法の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0024】
10 プランジャー(金属-ゴム複合体)
11 プランジャー本体(金属部材)
111 フランジ
112 ネジ穴
12 ゴムシール(ゴム部材)
20 空気圧電磁弁
21 ハウジング
211 エア流通孔
212 プランジャー収容部
213 段差
22 コイルスプリング
図1
図2A
図2B