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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電子回路及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 H
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021148895
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041491
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】小山 将央
(72)【発明者】
【氏名】林 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】高尾 和人
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/122853(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/101907(WO,A1)
【文献】特開2014-217196(JP,A)
【文献】特開2020-107434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電圧に基づく矩形波電圧を受けて、第1電圧を発生させる共振回路と、
1次側インダクタと、2次側インダクタとを含むトランスを介して前記第1電圧を伝送する第1伝送回路と、
前記1次側インダクタの第1端に電気的に接続された第1キャパシタと、前記1次側インダクタの第2端に電気的に接続された第2キャパシタを介して前記第1電圧を伝送する第2伝送回路と、
前記第1伝送回路又は前記第2伝送回路により伝送された前記第1電圧を整流し、第2直流電圧を生成する整流回路と、
前記第1伝送回路と前記整流回路とを接続する第1スイッチ回路と、
前記第2伝送回路と前記整流回路とを接続する第2スイッチ回路と、
を備えた電子回路。
【請求項2】
前記第2スイッチ回路は、前記第1キャパシタと前記整流回路の第1入力端とを接続する第1スイッチと、前記第2キャパシタと前記整流回路の第2入力端とを接続する第2スイッチとを含む
請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記第1スイッチ回路は、
前記2次側インダクタの第1端子と前記整流回路の第1入力端との間に接続された第3スイッチと、
前記2次側インダクタの第2端子と前記整流回路の第2入力端との間に接続された第4スイッチと
のうちの少なくとも一方を含む
請求項1又は2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記第1直流電圧を変調することにより前記矩形波電圧を生成する矩形波生成回路を備え、
前記共振回路は、前記矩形波生成回路の第1出力端と前記1次側インダクタの第1端との間に直列に接続された第3キャパシタ及び第1インダクタを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項5】
前記共振回路は、前記矩形波生成回路の第2出力端と前記1次側インダクタの第2端との間に直列に接続された第4キャパシタ及び第2インダクタを含む
請求項4に記載の電子回路。
【請求項6】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、トランジスタを含む
請求項2に記載の電子回路。
【請求項7】
前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの少なくとも一方は、トランジスタを含む
請求項3に記載の電子回路。
【請求項8】
前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの少なくとも一方は、直列接続された複数の前記トランジスタを含む
請求項7に記載の電子回路。
【請求項9】
前記第1直流電圧を生成する電圧源を備え、
前記矩形波生成回路は、前記電圧源に直列に接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を含み、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子を制御することにより前記矩形波電圧を生成する
請求項4に記載の電子回路。
【請求項10】
前記矩形波生成回路は、前記電圧源に直列に接続され第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を含み、
前記第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子に並列に接続され、
前記矩形波生成回路は、前記第1スイッチング素子~第4スイッチング素子を制御することにより前記矩形波電圧を生成する
請求項9に記載の電子回路。
【請求項11】
前記整流回路は、直列に接続された第1整流素子及び第2整流素子と、直列に接続された第3整流素子及び第4整流素子とを備え、
前記第3整流素子及び前記第4整流素子は、前記第1整流素子及び第2整流素子に並列に接続され、
前記第1整流素子~第4整流素子を制御することにより前記第1電圧を整流する
請求項1~10のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項12】
前記第1整流素子~第4整流素子はダイオードを含む
請求項11に記載の電子回路。
【請求項13】
前記第1整流素子~第4整流素子はトランジスタを含む
請求項11に記載の電子回路。
【請求項14】
前記第1スイッチ回路は、前記第2直流電圧の設定に応じて、前記第1伝送回路及び前記整流回路間を接続又は遮断し、
前記第2スイッチ回路は、前記第2直流電圧の設定に応じて、前記第2伝送回路及び前記整流回路間を遮断又は接続する
請求項1~13のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項15】
前記第1スイッチ回路は、前記設定が低電圧の場合は、前記第1伝送回路及び前記整流回路間を接続し、前記設定が低電圧より高い高電圧の場合は、前記第1伝送回路及び前記整流回路間を遮断し、
前記第2スイッチ回路は、前記設定が前記低電圧の場合は、前記第2伝送回路及び前記整流回路間を遮断し、前記設定が低電圧より高い高電圧の場合は、前記第2伝送回路及び前記整流回路間を接続する
請求項14に記載の電子回路。
【請求項16】
前記2次側インダクタの巻線の巻き回数は、前記1次側インダクタの巻線の巻き回数より小さい
請求項1~15のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項17】
第1直流電圧を第2直流電圧に変換する方法であって、
第1直流電圧を変調して矩形波電圧を生成し、
前記矩形波電圧を共振回路に供給することで第1電圧を生成し、
前記第2直流電圧の設定が低電圧の場合は、前記第1電圧を磁気結合に基づき伝送し、
前記第2直流電圧の設定が前記低電圧より大きい高電圧の場合は、前記第1電圧を電界結合に基づき伝送し、
前記磁気結合又は前記電界結合に基づき伝送された前記第1電圧を整流して、前記第2直流電圧を生成する
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子回路及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率及び低ノイズを兼ね備えたDC-DCコンバータとしてLLC共振コンバータが知られている。LLC共振コンバータは、トランスの漏れインダクタンスと、1次側インダクタンス(励磁インダクタンス)及びキャパシタの共振を利用していることに由来する。LLC共振コンバータでは、複数のスイッチング素子を交互にオンして直流電圧から矩形波電圧を生成し、矩形波電圧を共振回路に入力する。共振回路で生じた正弦波状の電圧をトランスにより変換し、変換後の電圧を整流することで、変換された直流電圧を得る。
【0003】
変換された電圧として、入力した直流電圧よりも十分に(例えば一桁以上)低い電圧を得たい場合、トランスにおける2次側巻線の巻線数を1次側巻線の巻線数よりも小さくして降圧比を調整する方法が用いられる。この場合、2次側巻線で生じる電力損失は小さく、また、2次側巻線がトランスのサイズに占める割合は1次側巻線に比べて小さい。一方で、変換された電圧として入力した直流電圧と同値もしくは半値程度の高電圧を得たい場合、トランスにおける2次側巻線の巻線数を1次側巻線の巻線数と同程度にする方法が考えられる。しかしながら、この方法では、2次側巻線による電力損失が大きくなることやトランスのサイズが大きくなる問題がある。スイッチングの周波数(動作周波数)の調整によって出力電圧と入力電圧との比を調整することも可能であるが、調整幅にも限りがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-107434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、変換後の電圧の大きさに拘わらず、低損失で電圧を変換可能な電子回路及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電子回路は、第1直流電圧に基づく矩形波電圧を受けて第1電圧を発生させる共振回路と、1次側インダクタと、2次側インダクタとを含むトランスを介して前記第1電圧を伝送する第1伝送回路と、前記1次側インダクタの第1端に電気的に接続された第1キャパシタと、前記1次側インダクタの第2端に電気的に接続された第2キャパシタを介して前記第1電圧を伝送する第2伝送回路と、前記第1伝送回路又は前記第2伝送回路により伝送された前記第1電圧を整流し、第2直流電圧を生成する整流回路と、前記第1伝送回路と前記整流回路とを接続する第1スイッチ回路と、前記第2伝送回路と前記整流回路とを接続する第2スイッチ回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る電子回路1のブロック図。
図2】第1伝送回路及び第2伝送回路をそれぞれ選択した場合の等価回路図。
図3図1の電子回路1にスイッチ回路を制御する制御回路を設けた例を示す図。
図4】変形例2に係る電子回路の例を示すブロック図。
図5】変形例3に係る電子回路の例を示すブロック図。
図6】変形例4に係る電子回路の一例を示すブロック図。
図7】変形例5に係る電子回路の一例を示すブロック図。
図8】変形例6に係る電子回路の一例を示すブロック図。
図9】変形例7に係る電子回路の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図面において同一の構成要素は、同じ番号を付し、説明は、適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子回路1(電子装置)のブロック図である。電子回路1は、入力電圧(第1直流電圧)を提供する電圧源101と、入力電圧を出力電圧(第2直流電圧)に変換するLLC共振コンバータ102とを含む。
【0010】
LLC共振コンバータ102は、電圧源101により提供される入力電圧を変調することにより矩形波電圧を生成する矩形波生成回路110と、矩形波電圧を入力とし共振に基づき電圧(第1電圧)を発生させる共振回路120とを備える。共振回路120により発生させられる電圧(第1電圧)は例えば正弦波状の電圧(交流電圧)である。LLC共振コンバータ102は、正弦波状の電圧をトランスTによる磁気結合を用いて伝送する第1伝送回路130と、正弦波状の電圧をキャパシタCc1、Cc2による電界結合を用いて伝送する第2伝送回路140とを備える。また、LLC共振コンバータ102は、第1伝送回路130と整流回路160との間を接続するスイッチ回路151と、第2伝送回路140と整流回路160との間を接続するスイッチ回路152とを備える。またLLC共振コンバータ102は、第1伝送回路130又は第2伝送回路140により伝送された正弦波状の電圧を整流して、直流の出力電圧Voutに変換する整流回路160を備える。整流回路160の出力は、図示しない負荷装置に接続されている。負荷装置は、出力電圧による電流を消費する装置でもよいし、出力電圧の大きさを変換する他のLLCコンバータでもよい。
【0011】
矩形波生成回路110は、電圧源101に直列に接続されたスイッチング素子Q1、Q2を備えている。スイッチング素子Q1、Q2はハーフブリッジ構成を有する。スイッチング素子Q1、Q2はN型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。ただし、スイッチング素子Q1、Q2は、JFET(Junction Field-Effect-Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)などのユニポーラトランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのバイポーラトランジスタなど、他の種類のトランジスタでもよい。例えば、数百Vオーダーの高電圧出力を想定した場合、スイッチング素子Q1、Q2はSiやSiCやGaNを材料とするパワートランジスタでもよい。スイッチング素子Q1、Q2間の接続ノードは、矩形波生成回路110の第1出力端N1に対応し、第1出力端N1と反対側のスイッチング素子Q2のノードは、矩形波生成回路110の第2出力端N2に対応する。
【0012】
矩形波生成回路110は、動作周波数fsw(スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数)に応じてスイッチング素子Q1、Q2を交互にオンすることにより、入力電圧Vinを変調する。これにより、所望のデューティ比の矩形波電圧(方形パルス電圧)を生成する。変調の方式として、PWM(Pulse Width Modulation)又はPFM(Pulse Frequency Modulation)などを用いてもよい。生成された矩形波電圧は共振回路120に入力される。デューティ比は特定の値に限定されないが、一例として1/2である。
【0013】
共振回路120は、キャパシタCr(第3キャパシタ)、インダクタLr(第1インダクタ)、トランスTの1次側インダクタLmpを含む。トランスTの漏れインダクタをインダクタLrとして扱ってもよい。キャパシタCr及びインダクタLrは、矩形波生成回路110の第1出力端N1と1次側インダクタLmpの第1端(共振回路120の第1出力端N3)との間に直列に接続されている。共振回路120の共振周波数frは、キャパシタCrの容量値、インダクタLrのインダクタンス値依存し、さらにインダクタLrに電気的に接続されたキャパシタCc1,Cc2の容量値にも依存する。共振回路120は、矩形波生成回路110から入力される矩形波電圧に基づき、動作周波数fsw(矩形波の周波数)に応じた周波数を有する電圧(正弦波状の電圧)を出力する。
【0014】
第1伝送回路130は、トランスTを有する。トランスTは、1次側インダクタLmpと、2次側インダクタLmsとを含む。トランスTは、1次側インダクタLmpと2次側インダクタLmsとの間の磁気結合を用いて、1次側インダクタLmpで受けた正弦波状の電圧を2次側インダクタLmsに伝送する。正弦波状の電圧は、2次側インダクタLmsと1次側インダクタLmpとの巻線数の比に応じた大きさに変換され、変換後の電圧が2次側インダクタLmsに誘起される。2次側インダクタLmsの第1端は、整流回路160における第1入力端N5に接続されている。2次側インダクタLmsの第2端は、スイッチSW1を介して、整流回路160における第2入力端N6に接続されている。第1伝送回路130は、スイッチSW1がオンされている場合に、共振回路120から受けた正弦波状の電圧を、トランスTを介して(磁気結合により)、後段の整流回路160に伝送する。
【0015】
第2伝送回路140は、1次側インダクタLmpの第1端(共振回路120の第1出力端N3)に電気的に接続されたキャパシタCc1(第1キャパシタ)を含む。また第2伝送回路140は、1次側インダクタLmpの第2端(共振回路120の第2出力端N4)に電気的に接続されたキャパシタCc2(第2キャパシタ)を含む。キャパシタCc1は、スイッチSW2を介して、整流回路160における第1入力端N5に接続されている。キャパシタCc2は、スイッチSW3を介して、整流回路160における第2入力端N6に接続されている。第2伝送回路140は、スイッチSW2、SW3がオンにされている場合に、共振回路120から受けた正弦波状の電圧を、キャパシタCc1、Cc2を介して(電界結合により)、後段の整流回路160に伝送する。キャパシタCc1、Cc2は、正弦波の電圧を受ける第1電極と、第2電極とを含み、第1電極及び第2電極間の電界結合により当該電圧を第2電極側に伝送する。なお、キャパシタCc1、Cc2は共振回路120の一部を構成してもよい。また共振回路120におけるキャパシタCr1も、キャパシタCc1、Cc2とともに、第2伝送回路140の一部を構成してもよい。
【0016】
スイッチ回路151は、第1伝送回路130と整流回路160との間の接続及び遮断を切り替える。スイッチ回路151はスイッチSW1を含む。スイッチSW1(第4スイッチ)は、2次側インダクタLmsの第2端子と整流回路160の第2入力端N6との間を接続する。
【0017】
スイッチ回路152は、第2伝送回路140と整流回路160との間の接続及び遮断を切り替える。スイッチ回路152は、スイッチSW2、SW3を含む。スイッチSW2(第1スイッチ)は、キャパシタCc1と整流回路160の第1入力端N5との間を接続する。スイッチSW3(第2スイッチ)は、キャパシタCc2と整流回路160の第2入力端N6との間を接続する。
【0018】
共振回路120の出力電圧(正弦波状の電圧)を第2伝送回路140に入力する場合は、スイッチ回路152におけるスイッチSW2とスイッチSW3とをオンにすることにより、第2伝送回路140と整流回路160との間を接続する。スイッチ回路151におけるスイッチSW1はオフにすることにより、第1伝送回路130と整流回路160との間を遮断する。
【0019】
共振回路120の出力電圧(正弦波状の電圧)を第1伝送回路130に入力する場合は、スイッチ回路151におけるスイッチSW1をオンにすることにより、第1伝送回路130と整流回路160との間を接続する。スイッチ回路152におけるスイッチSW2とスイッチSW3はオフにすることにより、第2伝送回路140と整流回路160との間を遮断する。
【0020】
整流回路160は複数のダイオードD1、D2、D3、D4と、出力キャパシタCoutとを含む。ダイオードD1~D4は、任意の種類のダイオードでよい。例えば数百Vオーダーの高電圧出力を想定した場合には、SiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)が用いられてよい。ダイオードD1、D2、D3、D4はフルブリッジ構成を有する。すなわち、ダイオードD1、D2は直列に接続され、ダイオードD3、D4は直列に接続されている。ダイオードD3、D4は、ダイオードD1、D2に並列に接続されている。出力キャパシタCoutは、ダイオードD1、D2に並列に接続され、また、ダイオードD3、D4に並列に接続されている。整流回路160は、第1伝送回路130又は第2伝送回路140から入力された電圧(正弦波状の電圧)を整流し、整流された電圧を出力キャパシタCoutにより平滑化する。整流回路160は、平滑化された電圧を、変換後の出力電圧Voutとして出力する。
【0021】
スイッチ回路151、152は、出力電圧の設定(目標値)に応じてスイッチSW1と、スイッチSW2、SW3とを相補的にオン・オフすることで、第1伝送回路130又は第2伝送回路140を選択する。すなわち第1伝送回路130を用いた磁気結合による伝送経路、または第2伝送回路140を用いた電界結合による伝送経路を選択する。
【0022】
出力電圧の設定(目標値)が所定の電圧閾値よりも小さい小電圧のときは、スイッチSW1をオン、スイッチSW2、SW3をオフにすることで、第1伝送回路130を選択する。これにより、正弦波状の電圧はトランスTを介して伝送され、伝送された電圧は整流回路160に入力される。この際、電圧は、1次側インダクタと2次側インダクタとの巻き数比に応じて降圧される。2次側インダクタの巻数は、出力電圧の設定に応じてあらかじめ調整しておく。出力電圧が小電圧のため2次側インダクタの巻数は少なくてよく、このため低損失ですむ。
【0023】
図2(A)は、第1伝送回路130を選択した場合、すなわちスイッチSW1をオン、スイッチSW2、SW3をオフにした場合の図1の等価回路図である。共振回路120の出力電圧はトランスTを用いた磁気結合により伝送され、伝送された電圧が整流回路160に提供される。
【0024】
一方、出力電圧の設定(目標値)が所定の電圧閾値より大きい大電圧のときはスイッチSW1をオフ、スイッチSW2、SW3をオンにすることで、第2伝送回路140を選択する。これにより、正弦波状の電圧はキャパシタCc1、Cc2による電界結合を介して伝送され、伝送された電圧は整流回路160に提供される。電界結合の場合、結合の前後で電圧の大きさは変わらない。キャパシタCc1、Cc2は電流の直流成分を遮断し、共振回路120側と整流回路側160間を電気的に絶縁する機能を有する。キャパシタCc1、Cc2の直流定格電圧すなわち直流絶縁耐圧については、トランスTの1次側インダクタLmpと2次側インダクタLms間の絶縁耐圧と同程度の値を選択するのが望ましい。
【0025】
図2(B)は、第2伝送回路140を選択した場合、すなわちスイッチSW1をオフ、スイッチSW2、SW3をオンにした場合の図1の等価回路図である。共振回路120の出力電圧は、キャパシタCc1、Cc2を介して伝送され、整流回路160に提供される。
【0026】
以下、具体例として、矩形波電圧のデューティ比が1/2の場合の動作を考える。入力電圧Vinの1/2(Vin/2)など、大電圧を出力電圧の設定(目標値)とする場合は、第2伝送回路140を選択する。すなわち電界結合による伝送経路を選択する。一例として、キャパシタCc1、Cc2にはVin/2の振幅の電圧が入力され、入力された電圧は、キャパシタCc1、Cc2で電界結合により後段に伝送される。これにより低損失で大電圧を整流回路160に伝送できる。一方、入力電圧Vinの1/16(Vin/16)など小さい電圧を目標値とする場合(降圧する必要がある場合)、第1伝送回路130を選択する。すなわち磁気結合による伝送経路を選択する。共振回路120からのVin/2の電圧はトランスTで小さい電圧に変換され、変換された電圧は、後段に伝送される。トランスTにおける2次側インダクタの巻線は少ないため、低損失で電圧を伝送できる。
【0027】
図3は、図1の電子回路1にスイッチSW1~SW3を制御する制御回路を設けた例を示す。
制御回路170は、第1伝送回路130(磁気結合による伝送経路)を選択する場合は、スイッチSW1をオンにする制御信号をスイッチSW1に送り、スイッチSW2、SW3をオフにする制御信号をスイッチSW2、SW3に送る。一方、制御回路170は、第2伝送回路140(電界結合による伝送経路)を選択する場合は、スイッチSW1をオフにする制御信号をスイッチSW1に送り、スイッチSW2、SW3をオンにする制御信号をスイッチSW2、SW3に送る。スイッチSW1~SW3は制御回路170からの制御信号に基づき、オン又はオフする。制御回路170は外部回路からの指示信号に基づき、第1伝送回路130及び第2伝送回路140のいずれを選択するかを決定してもよい。例えば制御回路170は、出力電圧の設定を示す信号を受信し、設定が大電圧のときは第2伝送回路140(電界結合による伝送経路)を選択し、設定が小電圧のときは第1伝送回路130(磁気結合による伝送経路)を選択する。
【0028】
磁界結合方式の場合の回路構成(図2(A)参照)と、電界結合方式の場合の回路構成(図2(B)参照)とでは、キャパシタCc1、Cc2の影響により共振周波数が異なる。
【0029】
磁界結合方式の場合の共振回路120の共振周波数frは以下の式(1)で表される。
【数1】
【0030】
電界結合方式の場合の共振回路120の共振周波数frは以下の式(2)で表される。
【数2】
【0031】
式(2)において、CnはキャパシタCr、Cc1、Cc2の合成容量である。
【0032】
例えばCrとCc1とCc2が同じ値とすると、電界結合方式の場合の共振周波数は、磁界結合方式の場合の√3(=31/2)倍となる。このため、磁界結合方式と電界結合方式とで、矩形波生成回路110における動作周波数fswを変更してもよい。例えば電界結合方式の場合の動作周波数fswを、磁界結合方式よりも高くしてもよい。なお、矩形波生成回路110における動作周波数fswは、共振回路120の共振周波数frに対し、少しだけ小さい値に設定して位相遅れを生じさせることで、ソフトスイッチングを成立させるのが望ましい。矩形波生成回路110のスイッチング素子Q1、Q2がソフトスイッチングすることにより、素子の電力損失は小さく抑えられる。望ましい動作周波数fswと共振周波数frとの比fsw/frは、例えば、0.9程度である。動作周波数fswに応じてゲイン(第1伝送回路130及び第2伝送回路140の出力電圧と入力電圧との比に比例)が変動するため、所望の出力電圧Voutを得るために必要なゲインに応じて、動作周波数を決定してもよい。
【0033】
以上、本実施形態によれば出力電圧が小さい場合はトランス(磁界結合)を介して電圧を伝送し、出力電圧が大きい場合は、キャパシタ(電界結合)を介して電圧を伝送する。これにより、出力電圧の大きさに拘わらず、低損失で電圧をDC-DC変換することが可能になる。
【0034】
(変形例1)
上述の実施形態において2次側インダクタLmsの巻数は予め決まっていたが、出力電圧の設定(目標値)を複数の中から選択可能にし、選択された設定に応じて2次側インダクタの巻数を調整する機構を設けてもよい。上述の図3の構成を用いる場合、制御回路170は、出力電圧の設定に応じて、2次側インダクタの巻数を目標値に応じて調整する信号を当該機構に送信するようにしてもよい。当該機構は当該信号に基づき巻数を調整する。本変形例によれば、動作周波数fswの調整よりも広範囲で出力電圧を調整でき、かつ広範囲において低損失でDC-DC変換できる。
【0035】
(変形例2)
図4は、変形例2に係る電子回路1Aの例を示すブロック図である。共振回路120においてキャパシタCr2(第4キャパシタ)及びインダクタLr2(第4インダクタ)が追加されている。キャパシタCr2及びインダクタLr2は、矩形波生成回路110の第2出力端N2と1次側インダクタの第2端(共振回路120の第2出力端N4)との間に直列に接続されている。共振回路120の共振周波数frは、キャパシタCr2の容量値及びインダクタLr2のインダクタンス値にも依存する。キャパシタCr2が、第2伝送回路140の一部を構成してもよい(つまりキャパシタCr2が共振回路120と第2伝送回路140に共通に含まれる)。
【0036】
(変形例3)
図5は、変形例3に係る電子回路1Bの例を示す。図4の電子回路1AからキャパシタCc1、Cc2が除去されている。共振回路120に含まれるキャパシタCr1、Cr2が電界結合用のキャパシタとして機能する。キャパシタCr1、Cr2は、容量結合により電圧を伝送する第2伝送回路140に含まれる。キャパシタCr1は、共振回路120により出力された正弦波状の電圧(第1電圧)を電界結合により伝送するための、第1キャパシタ又は第3キャパシタに対応する。キャパシタCr2は、共振回路120により出力された正弦波状の電圧(第1電圧)を電界結合により伝送するための、第2キャパシタ又は第4キャパシタに対応する。
【0037】
(変形例4)
図6は、変形例4に係る電子回路1Cの一例を示すブロック図である。
図1のハーフブリッジ構成の代わりに、4つのスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4を接続したフルブリッジ構成を用いた矩形波生成回路110Aが設けられている。
【0038】
スイッチング素子Q3、Q4は電圧源101に直列に接続されている。スイッチング素子Q3、Q4は、スイッチング素子Q1、Q2と並列に接続されている。スイッチング素子Q1、Q2間の接続ノードN1(第1出力端)がキャパシタCrの一端に接続されている。スイッチング素子Q3、Q4間の接続ノードN7が1次側インダクタLmpの第2端(共振回路120の第2出力端N4)に接続されている。スイッチング素子Q1、Q2でデューティ比1/2の矩形波電圧を生成し、かつスイッチング素子Q3、Q4でデューティ比1/2の矩形波電圧を生成する場合、電界結合による伝送経路を用いた場合の出力電圧Voutは、概ね入力電圧Vinと同じ電圧となる。よって、出力電圧としてVinを得たい場合はフルブリッジ構成を用い、2/Vinを得たい場合は上述した図1のハーフブリッジ構成を用いればよい。
【0039】
(変形例5)
図7は、変形例5に係る電子回路1Dの一例を示すブロック図である。
整流回路160Aにおける整流素子としてダイオードD1~D4の代わりに、スイッチング素子SR1、SR2、SR3、SR4が用いられている。スイッチング素子SR1~SR4はN型のMOSFETであるが、P型のMOSFETまたは他の種類のトランジスタでもよい。図7の構成では、スイッチング素子SR1~SR4を制御する回路(図示せず)が必要になるが、ダイオードD1~D4を用いた場合よりも、導通損失を低減できる。
【0040】
(変形例6)
図8は、変形例6に係る電子回路1Eの一例を示すブロック図である。図1のスイッチSW1、SW2、SW3を、スイッチング素子により構成した例を示す。スイッチング素子Q3、Q4は、図1のスイッチSW1に対応し、スイッチング素子Q5は、図1のスイッチSW2に対応し、スイッチング素子Q6は、図1のスイッチSW3に対応する。スイッチング素子Q3~Q6は、N型のMOSFETであるが、P型のMOSFET又は他の種類のトランジスタでもよい。スイッチング素子Q3~Q6として、SiC-MOSFETを用いてもよい。スイッチング素子Q3、Q4は、2次側インダクタLmsの第2端子と、整流回路160における第2入力端N6との間に直列に接続されている。スイッチング素子Q3、Q4はボディダイオードを介した通電を防ぐため、ソース・ドレインの向きが逆になっている。スイッチング素子Q3、Q4は同時にオンされ、あるいは同時にオフされる。
【0041】
(変形例7)
図9は、変形例7に係る電子回路1Fの一例を示すブロック図である。上述の図8におけるスイッチング素子Q3の位置が変更されている。スイッチング素子Q3は、2次側インダクタLmsの第1端と、整流回路160における第1入力端N5との間を接続するスイッチ(第3スイッチ)である。スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q4と同時にオンされ、あるいはスイッチング素子Q4と同時にオフされる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1、1A~1F 電子回路
101 電圧源
102 LLC共振コンバータ
110、110A 矩形波生成回路
120 共振回路
130 第1伝送回路
140 第2伝送回路
151 スイッチ回路
152 スイッチ回路
160、160A 整流回路
170 制御回路
Cc1、Cc2、Cr、Cr1、Cr2 キャパシタ
Cn 合成容量
Cout 出力キャパシタ
D1~D4 ダイオード
fr 共振周波数
fsw 動作周波数
Lmp 1次側インダクタ
Lms 2次側インダクタ
Lr、Lr1、Lr2 インダクタ
N1 矩形波生成回路の第1出力端
N2 矩形波生成回路の第2出力端
N3 共振回路の第1出力端
N4 共振回路の第2出力端
N5 整流回路の第1入力端
N6 整流回路の第2入力端
N7 矩形波生成回路の第2出力端
Q1~Q6 スイッチング素子
SR1~SR4 スイッチング素子
SW1~SW3 スイッチ
T トランス
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9