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特許7391947カメラの画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】カメラの画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20231128BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G01M17/007 K
G08G1/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021512659
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019068261
(87)【国際公開番号】W WO2020048659
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】1870996
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロルバック, チボー
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-092970(JP,A)
【文献】特開2013-196214(JP,A)
【文献】特開平08-005388(JP,A)
【文献】特開2002-109549(JP,A)
【文献】米国特許第09063548(US,B1)
【文献】特開2006-301722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M17/007
G08G 1/00-99/00
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 5/50
G06T 7/00- 7/90
G06V10/00-20/90
G06V30/418-20/90
G06V30/18
G06V40/16
G06V40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載されているカメラ(2)の画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法であって、前記車両(1)に結び付けられている基準のフレーム(3)における前記車両(1)の車線(10)のマーキングライン(11、12)のモデリングデータを前記画像処理デバイスが配信することが可能である方法において、
前記マーキングライン(11、12)の前記モデリングデータから、時間における第1の瞬間(T1)での前記マーキングライン(11、12)までの前記車両(1)の第1の距離(Yi)を決定する第1のステップ(101)と、
前記マーキングライン(11、12)の前記モデリングデータから、時間における第2の瞬間(T2)での前記マーキングライン(11、12)までの前記車両(1)の第2の距離(Y’i)を決定する第2のステップ(102)と、
初期不連続性(Di)が計算される初期不連続性計算ステップ(103)であって、前記初期不連続性(Di)が、前記第1の距離(Yi)と前記第2の距離(Y’i)との間の差の絶対値に等しい、初期不連続性計算ステップ(103)と、
初期不連続性誤検出を検知するステップ(104)であって、前記初期不連続性(Di)が、事前設定された低い初期しきい値(TBi)と比較され、前記初期不連続性(Di)が前記低い初期しきい値(TBi)よりも大きい場合に、初期不連続性誤検出(FPi)が検知され、前記低い初期しきい値(TBi)が、0.1メートルと0.3メートルとの間に含まれる値に等しく、前記第1の瞬間(T1)と前記第2の瞬間(T2)との間の時間差(DT)が、前記低い初期しきい値(TBi)を2メートル/秒に実質的に等しい横速度で割った商以下であり、前記時間差(DT)が1ミリ秒よりも大きい、初期不連続性誤検出を検知するステップ(104)とを含
前記初期不連続性(Di)がさらに、事前設定された高い初期しきい値(THi)と比較され、前記初期不連続性(Di)が、前記低い初期しきい値(TBi)よりも大きく、かつ前記高い初期しきい値(THi)よりも小さい場合に、初期不連続性誤検出が検知される、誤検出を検知するための方法。
【請求項2】
前記高い初期しきい値(THi)が、1.7メートルと2.3メートルとの間に含まれる値に等しい、請求項に記載の誤検出を検知するための方法。
【請求項3】
基準の前記フレーム(3)が、前記車両(1)の横方向に実質的に平行な縦軸(Y)と、前記車両(1)の前記カメラ(2)と同じ高さに配置されている原点(O)とを含み、前記第1の距離(Yi)および前記第2の距離(Y’i)が、それぞれ、時間における前記第1の瞬間(T1)での、および前記第2の瞬間(T2)での前記マーキングライン(11、12)の点(Pi、P’i)の前記原点(O)における縦座標に対応する、請求項1または2に記載の誤検出を検知するための方法。
【請求項4】
基準の前記フレーム(3)が、前記車両(1)の長手方向に実質的に平行な横軸(X)を含み、誤検出を検知するための前記方法がさらに、
前記マーキングライン(11、12)の前記モデリングデータから、前記マーキングライン(11、12)のホライズン点(Ph)の第1の縦座標(Yh)を決定する第3のステップ(201)であって、前記ホライズン点(Ph)の第1の横座標(Xh)が、時間における前記第1の瞬間(T1)での、所定のホライズン時間(dTh)の間に前記車両(1)によって走行されることになる距離に対応する距離である、第1の縦座標(Yh)を決定する第3のステップ(201)と、
前記マーキングライン(11、12)の前記モデリングデータから、前記マーキングライン(11、12)のホライズン点(P’h)の第2の縦座標(Y’h)を決定する第4のステップ(202)であって、前記ホライズン点(P’h)の第2の横座標(X’h)が、時間における前記第2の瞬間(T2)での、前記所定のホライズン時間(dTh)の間に前記車両(1)によって走行されることになる距離に対応する距離である、第2の縦座標(Y’h)を決定する第4のステップ(202)と、
ホライズン不連続性(Dh)が計算されるホライズン不連続性計算ステップ(203)であって、前記ホライズン不連続性(Dh)が、前記第1の縦座標(Yh)と前記第2の縦座標(Y’h)との間の差の絶対値から前記初期不連続性(Di)を差し引いた値に等しい、ホライズン不連続性計算ステップ(203)と、
前記ホライズン不連続性(Dh)が、事前設定されたホライズンしきい値(THh)と比較され、前記ホライズン不連続性(Dh)が前記ホライズンしきい値(THh)よりも大きい場合に、ホライズン不連続性誤検出(FPh)が検知される、ホライズン不連続性誤検出を検知するステップ(204)とを含む、請求項に記載の誤検出を検知するための方法。
【請求項5】
前記所定のホライズン時間(dTh)が、0.9秒と1.1秒との間に含まれる値であり、前記ホライズンしきい値(THh)が、0.2メートルと1メートルとの間に含まれる値である、請求項に記載の誤検出を検知するための方法。
【請求項6】
前記モデリングデータが、最適な明視距離(Xp)を含み、誤検出を検知するための前記方法がさらに、範囲誤検出を検知するステップ(304)であって、前記最適な明視距離(Xp)が、所定の範囲時間(dTp)の間に前記車両によって走行されることになる距離に等しい範囲しきい値(THp)と比較され、前記最適な明視距離(Xp)が前記範囲しきい値(THp)よりも小さい場合に、範囲誤検出(FPp)が検知される、範囲誤検出を検知するステップ(304)を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の誤検出を検知するための方法。
【請求項7】
前記所定の範囲時間(dTp)が、0.8秒と0.99秒との間に含まれる値である、請求項に記載の誤検出を検知するための方法。
【請求項8】
前記カメラ(2)による前記マーキングライン(11、12)の検知の一時的な喪失をユーザに警告するために、初期不連続性誤検出(FPi)、ホライズン不連続性誤検出(FPh)、および範囲誤検出(FPp)のうちの少なくとも一つの誤検出が検知された場合に前記車両(1)の前記ユーザに視覚的な警告を表示するステップ(124)をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の誤検出を検知するための方法。
【請求項9】
プログラム命令を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラム命令がコンピュータによって実行されたときに、前記プログラム命令が、請求項1からのいずれか一項に記載の誤検出を検知するための方法の前記ステップを実施する、コンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項に記載のコンピュータプログラムが格納されている可読データ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者支援システムを備えた車両の分野に関する。
【0002】
本発明は、カメラの画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
車両の車線のマーキングラインのモデリングデータを配信することが可能な画像処理デバイスを含む少なくとも1つのカメラを含む車両が、従来技術において知られている。
【0004】
従来技術のカメラ画像処理デバイスは、とりわけ、十分に保守されていない車線において車両が運転されている場合、またはマーキングの検知にあいまいさがある場合には、常に非常に信頼できるとは限らない。マーキングラインの誤った検知は、車両軌道のタイムリーでない修正をもたらす可能性がある。これによって、車両の乗客の快適性が低下し、ユーザが自動または半自動運転システムに不信感を抱くことになる可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、カメラ画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法を提供して、誤検知および関連付けられている不快感が回避されるのを可能にすることである。
【0006】
本発明は、車両1に搭載されているカメラの画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法に関し、前記画像処理デバイスは、車両に結び付けられている基準のフレームにおける車両の車線のマーキングラインのモデリングデータを配信することが可能であり、誤検出を検知するための方法は、下記のステップを含む:
- マーキングラインのモデリングデータから、時間における第1の瞬間でのマーキングラインまでの車両の第1の距離を決定する第1のステップ、
- マーキングラインのモデリングデータから、時間における第2の瞬間でのマーキングラインまでの車両の第2の距離を決定する第2のステップ、
- 初期不連続性が計算される初期不連続性計算ステップであって、初期不連続性が、第1の距離と第2の距離との間の差の絶対値に等しい、初期不連続性計算ステップ、
- 初期不連続性誤検出を検知するステップであって、初期不連続性が、事前設定された低い初期しきい値と比較され、初期不連続性がその低い初期しきい値よりも大きい場合に、初期不連続性誤検出が検知される、初期不連続性誤検出を検知するステップ。
【0007】
本発明の一態様によれば、低い初期しきい値は、0.1メートルと0.3メートルとの間に含まれる値に等しく、第1の瞬間と第2の瞬間との間における時間差は、低い初期しきい値を2メートル/秒に実質的に等しい横速度で割った商以下であり、その時間差は、1ミリ秒よりも大きい。
【0008】
本発明の一態様によれば、初期不連続性はさらに、事前設定された高い初期しきい値と比較され、初期不連続性が、低い初期しきい値よりも大きく、かつ高い初期しきい値よりも小さい場合に、初期不連続性誤検出が検知される。
【0009】
本発明の一態様によれば、高い初期しきい値は、1.7メートルと2.3メートルとの間に含まれる値に等しい。
【0010】
本発明の一態様によれば、基準のフレームは、車両の横方向に実質的に平行な縦軸と、車両のカメラと同じ高さに配置されている原点とを含み、第1の距離および第2の距離は、それぞれ、時間における第1の瞬間での、および第2の瞬間でのマーキングラインの点の原点における縦座標に対応する。
【0011】
本発明の一態様によれば、基準のフレームは、車両の長手方向に実質的に平行な横軸を含み、誤検出を検知するための方法はさらに、下記のステップを含む:
- マーキングラインのモデリングデータから、マーキングラインのホライズン点の第1の縦座標を決定する第3のステップであって、ホライズン点の第1の横座標が、時間における第1の瞬間での、所定のホライズン時間の間に車両によって走行されることになる距離に対応する距離である、第1の縦座標を決定する第3のステップ、
- マーキングラインのモデリングデータから、マーキングラインのホライズン点の第2の縦座標を決定する第4のステップであって、ホライズン点の第2の横座標が、時間における第2の瞬間での、前記所定のホライズン時間の間に車両によって走行されることになる距離に対応する距離である、第2の縦座標を決定する第4のステップ、
- ホライズン不連続性が計算されるホライズン不連続性計算ステップであって、ホライズン不連続性が、第1の縦座標と第2の縦座標との間の差の絶対値から初期不連続性を差し引いた値に等しい、ホライズン不連続性計算ステップ、
- ホライズン不連続性誤検出を検知するステップであって、ホライズン不連続性が、事前設定されたホライズンしきい値と比較され、ホライズン不連続性がホライズンしきい値よりも大きい場合に、ホライズン不連続性誤検出が検知される、ホライズン不連続性誤検出を検知するステップ。
【0012】
本発明の一態様によれば、所定のホライズン時間は、0.9秒と1.1秒との間に含まれる値であり、ホライズンしきい値は、0.2メートルと1メートルとの間に含まれる値である。
【0013】
本発明の一態様によれば、モデリングデータは、最適な明視距離を含み、誤検出を検知するための方法はさらに、範囲誤検出を検知するステップであって、最適な明視距離が、所定の範囲時間の間に車両によって走行されることになる距離に等しい範囲しきい値と比較され、最適な明視距離がその範囲しきい値よりも小さい場合に、範囲誤検出が検知される。
【0014】
本発明の一態様によれば、所定の範囲時間は、0.8秒と0.99秒との間に含まれる値である。
【0015】
本発明の一態様によれば、誤検出を検知するための方法はさらに、カメラによるマーキングラインの検知の一時的な喪失をそのユーザに警告するために、初期不連続性誤検出、ホライズン不連続性誤検出、および範囲誤検出のうちの誤検出が検知された場合に車両のユーザに視覚的な警告を表示するステップを含む。
【0016】
本発明の一態様によれば、マーキングラインのモデリングデータは、多項式タイプのものであり、多項式の次数は、3以上である。
【0017】
本発明はまた、プログラム命令を含むコンピュータプログラム製品であって、それらのプログラム命令がコンピュータによって実行されたときに、それらのプログラム命令が、誤検出を検知するための方法の少なくとも1つのステップを実施する、コンピュータプログラム製品に関する。
【0018】
本発明はまた、そのコンピュータプログラム製品が格納されている可読データ媒体に関する。
【0019】
本発明のその他の利点および特徴は、記述および図面を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】時間における第1の瞬間に車線において運転されている、カメラの画像処理デバイスを備えた車両を示す概略図である。
図2】時間における第2の瞬間に車線において運転されている、カメラの画像処理デバイスを備えた車両を示す概略図である。
図3図1に対する代替実施形態を示す概略図である。
図4図2に対する代替実施形態を示す概略図である。
図5図2の変形を示す概略図である。
図6】カメラ画像である。
図7】本発明による、カメラの画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法のステップを示す概略図である。
図8a】車両の車線のマーキングラインが示されているディスプレイスクリーンを示す図であり、その車線に関しては、誤検出が検知されていない。
図8b】車両の車線のマーキングラインが示されているディスプレイスクリーンを示す図であり、その車線に関しては、誤検出が検知されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、時間における第1の瞬間T1に、車両1のどちら側にも配置されている2つのマーキングライン11、12を含む車線10において運転されている前記車両1を示している。
【0022】
車両1は、マーキングライン11、12のモデリングデータを配信することが可能な画像処理デバイスを含むカメラ2を含む。
【0023】
モデリングデータは、マーキングライン11、12が、車両1に結び付けられている基準のフレーム3においてモデル化されることを可能にする。
【0024】
モデリングデータは、マーキングライン11、12に沿った地上のマーク(たとえば、反射ストリップ)が連続しているか否かに関係なく、マーキングライン11、12が連続曲線としてモデル化されることを可能にする。
【0025】
好ましくは、モデリングデータは、多項式タイプのものであり、多項式の次数は、3以上である。たとえば、画像処理デバイスは、多項式の係数を与えることが可能である。
【0026】
結び付けられている基準のフレーム3は、車両1の横方向に実質的に平行な縦軸Yと、車両の長手方向に実質的に平行な横軸Xとを含み、横軸Xと縦軸Yは、原点Oで交差している。
【0027】
車両1の長手方向は、たとえば、車両1の車軸の中心と、車両の前部と、車両の後部とを通る直線である。
【0028】
好ましくは、基準のフレーム3は、直交座標系である。
【0029】
車両1の横方向は、車両1の長手方向に垂直であり、たとえば、左前部ドアを通り、かつ右前部ドアを通る直線である。
【0030】
有利には、原点Oは、車両1のカメラ2と同じ高さに配置される。カメラ2は、車両1の前部に配置されている正面カメラである。
【0031】
マーキングライン11は、初期点Piを含み、座標系3におけるその初期点Piの座標は、横座標および縦座標によって表され、カメラ2の画像処理デバイスによって配信されるモデリングデータから決定されることが可能である。
【0032】
有利には、原点Oの横座標および縦座標は、ゼロに等しい。
【0033】
車両1は、誤検出を検知するためのデバイス5を含み、このデバイス5は、マーキングライン11、12の点の縦座標をその横座標から決定することが可能である。
【0034】
好ましい一実施形態においては、初期点Piの横座標Xiは、実質的にゼロに等しい。したがって横座標Xiは、原点Oと実質的に一致する。初期点Piの縦座標は、時間における第1の瞬間T1でのマーキングライン11までの車両1の第1の距離Yiである。第1の距離Yiは、原点Oでの初期点Piの縦座標である。第1の距離Yiは、マーキングライン11のモデリングデータから決定可能である。誤検出を検知するためのデバイス5は、カメラ2の画像処理デバイスによって配信されるマーキングライン11のモデリングデータから第1の距離Yiを決定することが可能である。
【0035】
マーキングライン11はまた、ホライズン点Phを含み、時間における第1の瞬間T1でのそのホライズン点Phの横座標は、所定のホライズン時間dThの間に車両1によって走行されることになる距離に対応する第1の横座標Xhである。
【0036】
車両1は、速度センサ6を含む。誤検出を検知するためのデバイス5は、設定された瞬間における車両の速度を前記速度センサ6から収集することが可能である。誤検出を検知するためのデバイスは、車両速度から、所定のホライズン時間dThの間に車両1によって走行されることになる距離を計算することが可能である。
【0037】
所定のホライズン時間dThは、好ましくは0.9秒と1.1秒との間に含まれ、典型的には1秒に等しい。
【0038】
たとえば、1秒に等しいホライズン時間dTh、および25メートル/秒に等しい車両速度に関しては、第1の横座標Xhは、25メートルに等しい。
【0039】
誤検出を検知するためのデバイス5は、事前に計算された第1の横座標Xhから、およびカメラ2の画像処理デバイスによって配信されるマーキングライン11のモデリングデータから、第1の瞬間T1でのホライズン点Phの縦座標(第1の縦座標Yhと呼ばれる)を決定することが可能である。
【0040】
図2は、車両1が時間における第2の瞬間T2に車線10において運転されているところを示しているという点で図1とは異なる。第1の瞬間T1は、第2の瞬間T2よりも前にある。車両1が車線10において運転されるにつれて、車両は、第1の瞬間T1と第2の瞬間T2との間で車線10においてゼロでない距離を走行する。
【0041】
第1の瞬間T1と第2の瞬間T2との間における絶対値での時間差DTは、好ましくは1ミリ秒と150ミリ秒との間に含まれる。
【0042】
基準のフレーム3が車両に結び付けられていて、車両1が車線10において位置を変更したので、マーキングライン11は、第2の瞬間T2において第2の距離Y’iだけ車両1から離れている。車両1の第2の距離Y’iは、初期点P’iの縦座標であり、したがってその初期点P’iの横座標Xiは、図1におけるのと同様に、原点Oと一致する。
【0043】
マーキングライン11は、新たなホライズン点P’hを含み、時間における第2の瞬間T2でのそのホライズン点P’hの横座標は、第2の瞬間T2での、所定のホライズン時間dThの間に車両1によって走行されることになる距離に対応する第2の横座標X’hである。
【0044】
第1の横座標Xhおよび第2の横座標X’hは、必ずしも等しいとは限らないが、それらは非常に近い。具体的には、ホライズン時間dThは、固定された値であるが、車両1の速度は、第1の瞬間T1と第2の瞬間T2とで必ずしも同じであるとは限らない。しかしながら、第1の瞬間T1と第2の瞬間T2との間における絶対値での時間差DTは、150ミリ秒よりも小さく、第1の横座標Xhと第2の横座標X’hとの間の差は小さい。
【0045】
たとえば、第1の瞬間T1と第2の瞬間T2との間での車両の速度の差が0.05メートル/秒に等しい場合には、第1の横座標Xhと第2の横座標X’hとの間の差は、1秒に等しいホライズン時間dThの間に、0.05メートルに等しくなる。
【0046】
誤検出を検知するためのデバイス5は、第2の瞬間t2での車両の速度から、所定のホライズン時間dThの間に車両1によって走行されることになる距離を計算することが可能であり、これは第2の横座標X’hに対応する。
【0047】
誤検出を検知するためのデバイス5は、事前に計算された第2の横座標X’hから、およびカメラ2の画像処理デバイスによって配信されるマーキングライン11のモデリングデータから、第2の瞬間T2でのホライズン点P’hの縦座標(第2の縦座標Y’hと呼ばれる)を決定することが可能である。
【0048】
図3および図4は、それぞれ図1および図2に対する代替実施形態を示している。
【0049】
図3は、初期点Piの横座標Xiが原点Oと一致しないという点で図1とは異なる。横座標Xiは、原点Oから所定の距離にある。
【0050】
図1におけるのと同様に、時間における第1の瞬間T1でのマーキングライン11までの車両1の第1の距離Yiは、点Piの縦座標によって定義される。
【0051】
誤検出を検知するためのデバイス5は、事前設定されて知られている横座標Xiから、およびカメラ2の画像処理デバイスによって配信されるマーキングライン11のモデリングデータから、第1の距離Yiを決定することが可能である。
【0052】
図4は、初期点P’iの横座標Xiが原点Oと一致しないという点で図2とは異なる。横座標Xiは、図3におけるのと同様に、原点Oから同じ所定の距離にある。
【0053】
図2におけるのと同様に、時間における第2の瞬間T2でのマーキングライン11までの車両1の第2の距離Y’iは、点P’iの縦座標によって定義される。
【0054】
誤検出を検知するためのデバイス5は、事前設定されて知られている横座標Xiから、およびカメラ2の画像処理デバイスによって配信されるマーキングライン11のモデリングデータから、第2の距離Y’iを決定することが可能である。
【0055】
図3および図4において示されているように、カメラ2が、車両の前部に配置されている正面カメラではないケースにおいては、横座標Xiと一致する原点Oを有さないことが有利である可能性がある。
【0056】
たとえば、カメラ2は、車両1の屋根に配置されている。有利には、横座標Xiは、カメラ2上に配置されている原点Oと、車両1の前部との間における距離である。
【0057】
図5は、図4に適用されることも可能である図2の変形である。
【0058】
図5は、第2の瞬間T2での第2の縦座標Y’hが、第1の瞬間T1において計算された第1の横座標Xhから、誤検出を検知するためのデバイス5によって決定されるという点で図2とは異なる。これは、第1の縦座標Yhおよび第2の縦座標Y’hが、同じ第1の横座標Xhを使用して決定されるという利点を有する。
【0059】
図6は、カメラ2によって撮影された画像20の例である。座標系3は、カメラ2の画像20上に重ね合わされている。マーキングライン11、12は、不連続である。
【0060】
マーキングライン11上に配置されている起点Piおよびホライズン点Ph(図1において例示されているものなど)が示されている。
【0061】
図7は、図1から図5において示されているものなど、車両1に搭載されているカメラ2の画像処理デバイスの誤検出を検知するための方法を示している。
【0062】
誤検出を検知するための方法は、初期不連続性誤検出FPi、ホライズン不連続性誤検出FPh、および範囲誤検出FPpのうちの誤検出が検知されることを可能にする。
【0063】
初期不連続性誤検出FPiを検知するために、誤検出を検知するための方法は、下記のステップを含む:
- マーキングライン11のモデリングデータから、第1の瞬間T1でのマーキングライン11までの車両1の第1の距離Yiを決定する第1のステップ101、
- マーキングライン11のモデリングデータから、第2の瞬間T2でのマーキングライン11までの車両1の第2の距離Y’iを決定する第2のステップ102、
- 初期不連続性Diが計算される初期不連続性計算ステップ103であって、初期不連続性Diが、第1の距離Yiと第2の距離Y’iとの間の差の絶対値に等しい、初期不連続性計算ステップ103、
- 初期不連続性誤検出を検知するステップ104であって、初期不連続性Diが、事前設定された低い初期しきい値TBiと比較され、初期不連続性Diがその低い初期しきい値TBiよりも大きい場合に、初期不連続性誤検出FPiが検知される、ステップ104。
【0064】
好ましい一実施形態においては、初期不連続性Diはさらに、事前設定された高い初期しきい値THiと比較され、初期不連続性Diが、低い初期しきい値TBiよりも大きく、かつ高い初期しきい値THiよりも小さい場合に、初期不連続性誤検出が検知される。これは、車両1による車線の変更のケースにおいて誤検出が検知されないことを可能にする。
【0065】
低い初期しきい値TBiは、0.1メートルと0.3メートルとの間に含まれる値に等しく、典型的には0.15メートルに等しい。
【0066】
高い初期しきい値THiは、1.7メートルと2.3メートルとの間に含まれる値に等しい。
【0067】
第1の瞬間T1と第2の瞬間T2との間における絶対値での時間差DTは、低い初期しきい値TBiを2メートル/秒に実質的に等しい横速度で割った商以下の値である。
【0068】
2メートル/秒の横速度を下回ると、横方向の動きは、意図的ではないとみなされる。この速度を上回ると、横方向の動きは、意図的であるとみなされる。したがって、2メートル/秒の速度を選択することは有利である。なぜなら、これは、故意でない横方向の動きのシナリオをカバーするからである。
【0069】
誤検出を検知するための方法のステップを実行するための十分な時間を、誤検出を検知するためのデバイス5に与えるために、第1の瞬間T1と第2の瞬間T2との間における絶対値での時間差DTは、1ミリ秒よりも大きい。
【0070】
したがって、0.1メートルに等しい低い初期しきい値TBiに関しては、絶対値での時間差DTは、1ミリ秒と、0.1を2で割った結果である50ミリ秒との間に含まれる値である。
【0071】
したがって、0.3メートルに等しい低い初期しきい値TBiに関しては、絶対値での時間差DTは、1ミリ秒と、0.3を2で割った結果である150ミリ秒との間に含まれる値である。
【0072】
ホライズン不連続性誤検出FPhを検知するために、誤検出を検知するための方法は、下記のステップを含む:
- マーキングライン11のモデリングデータから、第1の瞬間T1でのマーキングライン11のホライズン点Phの第1の縦座標Yhを決定する第3のステップ201、
- マーキングライン11のモデリングデータから、第2の瞬間T2でのマーキングライン11のホライズン点P’hの第2の縦座標Y’hを決定する第4のステップ202、
- ホライズン不連続性Dhが計算されるホライズン不連続性計算ステップ203であって、ホライズン不連続性Dhが、第1の縦座標Yhと第2の縦座標Y’hとの間の差の絶対値から初期不連続性Diを差し引いた値に等しい、ホライズン不連続性計算ステップ203、
- ホライズン不連続性誤検出を検知するステップ204であって、ホライズン不連続性Dhが、事前設定されたホライズンしきい値THhと比較され、ホライズン不連続性Dhがそのホライズンしきい値THhよりも大きい場合に、ホライズン不連続性誤検出FPhが検知される、ステップ204。
【0073】
ホライズン点Phの第1の縦座標Yhおよびホライズン点P’hの第2の縦座標Y’hは、図2図4、および図5の記述において説明されているように計算される第1の横座標Xhまたは第2の横座標X’hから、ならびにマーキングライン11のモデリングデータから決定される。
【0074】
ホライズンしきい値THhは、0.2メートルと1メートルとの間に含まれる。
【0075】
モデリングデータは、最適な明視距離Xpを含む。
【0076】
最適な明視距離Xpの例が、図6において与えられている。トラック21が、車線10において運転されている。カメラ2にとって、トラック21は、車線10における障害物である。トラック21は、マーキングライン11、12の一部分を遮っている。この例においては、最適な明視距離Xpは、トラック21とカメラ2との間における距離に実質的に相当する。
【0077】
範囲誤検出FPpを検知するために、誤検出を検知するための方法はさらに、範囲誤検出を検知するステップ304であって、最適な明視距離Xpが、所定の範囲時間dTpの間に車両によって走行されることになる距離に等しい範囲しきい値THpと比較され、最適な明視距離Xpがその範囲しきい値THpよりも小さい場合に、範囲誤検出FPpが検知される、ステップ304を含む。
【0078】
有利には、範囲誤検出を検知するステップ304は、第2の瞬間T1および/または第2の瞬間T2において実行される。
【0079】
所定の範囲時間dTpは、0.8秒と0.99秒との間に含まれる値であり、典型的には0.95秒に等しい。
【0080】
たとえば、0.95秒に等しい範囲時間dTp、および25メートル/秒に等しい車両速度に関しては、範囲しきい値THpは、0.95に25を掛けた結果である23.75メートルに等しい。
【0081】
もちろん、最適な明視距離Xpを、車両1が前記最適な明視距離Xpを走行するのにかかる時間へと変換し、この前記時間を範囲しきい値THpに比較することも、同等とみなされる。
【0082】
初期不連続性誤検出FPi、ホライズン不連続性誤検出FPh、および範囲誤検出FPpのうちのいずれか1つが検知された場合に、誤検出が検知される。
【0083】
有利には、誤検出が検知された場合に、誤検出を検知するための方法はさらに、カメラ2によるマーキングライン11の検知の一時的な喪失をそのユーザに警告するために、車両1のユーザに視覚的な警告を表示するステップ124を含む。
【0084】
たとえば、車両1は、ディスプレイスクリーン100を含み、そのディスプレイスクリーン100上には、車線10のマーキングライン11、12が表されている。誤検出を検知するためのデバイス5によってマーキングライン11に関して誤検出が検知された場合には、ディスプレイスクリーン100上のマーキングライン11の表示110は、たとえば色における変化を介して、変更される。マーキングライン12に関して誤検出が検知されなかった場合には、マーキングライン12の表示120は、変更されない。
【0085】
図8aにおいては、誤検出は検知されておらず、2つのマーキングライン11、12の表示110、120は、色が黒色である。
【0086】
図8bにおいては、マーキングライン11に関して誤検出が検知されている。マーキングライン11の表示110は、色がグレーであり、マーキングライン12の表示120は、変更されないままである。
【0087】
視覚的な警告の実施形態は、非限定的である。視覚的な警告は、絵文字、インジケータライトなどであることが可能である。
【0088】
誤検出を検知するためのデバイス5は、誤検出を検知するための方法のステップを実施するプログラム命令を含むプログラムを含む。
【0089】
誤検出を検知するためのデバイス5は、好ましくは有線リンクによって、車両1の速度センサ6に、およびカメラ2の画像処理デバイスに接続されている。速度センサ6と、誤検出を検知するためのデバイス5との間における接続は、直接的または間接的であることが可能である。たとえば、速度センサ6と、誤検出を検知するためのデバイス5との間に中間プロセッサが配置されることが可能であり、その中間プロセッサは、誤検出を検知するためのデバイス5へのデータの送信の前に、それらのデータがフィルタリングおよび検証されることを可能にする。
【0090】
速度センサ6と、誤検出を検知するためのデバイス5との間において採用される通信プロトコルは、たとえばCANプロトコルである。
【0091】
カメラ2と、誤検出を検知するためのデバイス5との間において採用される通信プロトコルは、たとえばCANプロトコルである。
【0092】
有利には、誤検出を検知するための方法のステップを実施するプログラム命令の実行は、時間差DTに等しい周期でループされる。プログラムが最初に実行されるときには、第1の瞬間T1は、前記第1の周期の瞬間に対応し、第2の瞬間T2は、前記第2の周期の瞬間に対応する。プログラムが2回目に実行されるときには、第1の瞬間T1は、前記第2の周期の前記瞬間に対応し、第2の瞬間T2は、前記第3の周期の瞬間に対応する、といった具合である。
【0093】
上述の例および記述は、マーキングライン11を例として取り上げて与えられている。類推によって、同じ例および説明が、マーキングライン12にも当てはまる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b