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特許7391954多血症治療のためのカテーテル、カテーテルベースのシステム、およびそれらの方法
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  • 特許-多血症治療のためのカテーテル、カテーテルベースのシステム、およびそれらの方法 図1
  • 特許-多血症治療のためのカテーテル、カテーテルベースのシステム、およびそれらの方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】多血症治療のためのカテーテル、カテーテルベースのシステム、およびそれらの方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20231128BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M1/34 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021518571
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 US2019057874
(87)【国際公開番号】W WO2020086854
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】62/750,124
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521442637
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】アミン、ムルタザ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】グーチ、ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】プレヒテル、エリッカ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シェフィールド、アンドリュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロイ-チョウドリー、プラビル
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0115956(US,A1)
【文献】特許第5486069(JP,B2)
【文献】特表2001-513349(JP,A)
【文献】特表平10-509360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0054854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも一時的に患者の血管内に存在するように構成される閉鎖遠位端を有する遠位端部であって、前記遠位端部は半透膜を含む遠位端部と、
前記遠位端部において管腔出口に接合された管腔入口であって、前記管腔入口は前記遠位端部に第1浸透濃度を有する流入水を搬送するように設計される、管腔入口と
を含むカテーテルであって、
前記半透膜は前記血管から前記遠位部内に血液由来の水分を通過させるように構成され、前記流入水によって吸収された前記血液由来の水分は前記第1浸透濃度より低い第2浸透濃度を有する排出水を生成する、
カテーテルと、
b)前記排出水を回収するように構成されるリザーバと、
前記流入水および前記排出水を含む流体回収システムの1つ以上の流体を移動させるように構成されるポンプと
を含む流体回収システムであって、
前記流体回収システムは前記患者の血管から、実質的に前記水分からなる膜透過物および前記流入水のための膜保持液を生成するように構成される限外濾過膜と、排泄のために前記膜透過物を前記患者の膀胱に短絡させるように構成されるシャントとをさらに含む、流体回収システムとを含む多血症治療のためのシステム。
【請求項2】
前記流体回収システムは、前記流体回収システムのモードを、前記リザーバ内の前記患者の血管からの前記水分を回収することから前記膜透過物および前記流入水のための前記膜保持液を生成することに切り替えるように構成されるスイッチバルブをさらに含む請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記カテーテルは、前記管腔入口と前記管腔出口との間に配置された隔壁をさらに含み、前記隔壁の遠位端は、前記カテーテルの閉鎖端の近位にある請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記カテーテルは単一ルーメンのカテーテルであって、前記単一ルーメンは前記カテーテルの閉鎖端の近位における折り目で折曲げられる請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記カテーテルの反管腔側表面は、表面積増加手段のない場合よりも前記反管腔側表面の表面積を増加させるための前記表面積増加手段を含み、それによって前記患者の血管から前記半透膜を通る前記水分の流れを増加させる請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記半透膜は、前記患者の血管内の前記水分を前記半透膜を透過させる一方、ポリペプチドまたはタンパク質を含むより大きい血液由来の代謝物、細胞断片、または細胞を透過させないように構成される孔径を有する請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記流入水は、溶解されたポリマーを含む水性溶液であって、前記第1浸透濃度は前記患者が必要とする量を超える前記水分を前記半透膜を通して前記血管から除去するための浸透ポテンシャルを作るのに十分である請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多血症治療のためのカテーテル、カテーテルベースのシステム、およびそれらの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多血症、すなわち体液過負荷は、血漿が過剰な量の水分を保持した結果として、血管内区画内の血液量が正常値を超える病状である。体が必要とする量を超える水分を濾過するのに腎臓がもはや効果的ではない慢性腎臓病、特に末期腎疾患(「ESRD」)などのその進行期に苦しむ患者において水分は蓄積され得る。体が必要とする量を超える水分を濾過するため、腎臓に血液を注入するのに心臓がもはや効果的ではないうっ血性心不全(「CHF」)などの慢性心臓病に苦しむ患者においても、水分は蓄積され得る。正常値を超える血管内区画内の血液量は、高血圧、心臓へのストレスにつながり得、胸膜腔内の体液の蓄積による息切れを引き起こし得、これは生活の質を低下させ、CHFなどの他の疾患を悪化させて死に至ることさえあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、多血症に対処することは、その病状に苦しむ人々にとって重要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書には、カテーテル、カテーテルベースのシステム、および前述のものに取り組むためのそれらの方法が開示される。
本明細書には、いくつかの実施形態において、閉鎖遠位端を有するカテーテルの遠位端部において管腔出口に接合された管腔入口を含む多血症治療のための患者内のカテーテルが開示される。遠位端部は、少なくとも一時的に患者の血管内に存在するように構成され、遠位端部は半透膜を含む。管腔入口は、第1浸透濃度を有する流入水を遠位端部に搬送するように設計される。半透膜は血管から遠位部内に血液由来の水分を通過させるように構成される。血液由来の水分は、流入水によって吸収されて第1浸透濃度より低い第2浸透濃度を有する排出水を生成する。
【0005】
いくつかの実施形態において、カテーテルは単一ルーメンカテーテルである。単一ルーメンはカテーテルの閉鎖端の近位の折り目で折曲げられる。
いくつかの実施形態において、カテーテルは、管腔入口と管腔出口との間に配置された隔壁をさらに含む。隔壁の遠位端は、カテーテルの閉鎖端の近位にある。
【0006】
いくつかの実施形態において、半透膜は、患者の血管内の水分を半透膜を透過させる一方、ポリペプチドまたはタンパク質を含むより大きい血液由来の代謝物、細胞断片、または細胞を透過させないように構成される孔径を有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、カテーテルの反管腔側表面は表面積増加手段のないそのようなカテーテルよりも反管腔側表面の表面積を増加させるための表面積増加手段を含む。表面積増加手段は、患者の血管から半透膜を通る水分の流れを増加させる。
【0008】
いくつかの実施形態において、流入水は溶解されたポリマーを含む水性溶液である。第1浸透濃度は患者が必要とする量を超える水分を半透膜を通して血管から除去するための浸透ポテンシャルを作るのに十分である。
【0009】
本明細書にはまた、いくつかの実施形態において、カテーテルの閉鎖端の近位の折曲ルーメンの「U」型の遠位端部に接合された管腔入口および管腔出口を含むカテーテルの折曲ルーメンを含む、多血症治療のためのカテーテルが開示される。カテーテルの閉鎖端を含むカテーテルの遠位端部は、少なくとも一時的に患者の血管内区画の血管内に存在するように構成される。患者の血管内に存在するように構成されたカテーテルの少なくとも遠位端部は、半透膜で形成される。半透膜は、管腔入口によって搬送される、第1浸透濃度を有する流入水に、患者の血管内の血液由来の水分が半透膜を通って透過するのを可能にし、管腔出口によって搬送される第2浸透濃度を有する排出水を生成するように構成され、第2浸透濃度は第1浸透濃度より低い。
【0010】
いくつかの実施形態において、カテーテルは、管腔入口と管腔出口との間に配置された隔壁をさらに含む。隔壁の遠位端はカテーテルの閉鎖端の手前にあり、それによってカテーテルの閉鎖端の近位に折曲ルーメンの「U」型の遠位端部を形成する。
【0011】
いくつかの実施形態において、半透膜は、患者の血管内の水分が半透膜を通って透過するのを可能にするが、ポリペプチドまたはタンパク質を含むより大きい血液由来の代謝物、細胞断片、または細胞を透過させないように構成された孔径を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、カテーテルの反管腔側表面は、表面積増加手段のないそのようなカテーテルよりも反管腔側表面の表面積を増加させるための表面積増加手段を含む。表面積増加手段は、患者の血管から半透膜を通る水分の流れを増加させる。
【0013】
本明細書にはまた、いくつかの実施形態において、カテーテルおよび流体回収システムを含む、患者における多血症治療のためのシステムが開示される。カテーテルは、閉鎖遠位端を有するカテーテルの遠位端部において管腔出口に接合された管腔入口を含む。遠位端部は、少なくとも一時的に患者の血管内に存在するように構成され、遠位端部は半透膜を含む。管腔入口は、第1浸透濃度を有する流入水を遠位端部に搬送するように設計される。半透膜は血管から遠位部内に血液由来の水分を通過させるように構成される。血液由来の水分は、流入水によって吸収されて第1浸透濃度より低い第2浸透濃度を有する排出水を生成する。流体回収システムは、排出水を回収するように構成されるリザーバと、流入水および排出水を含むシステムの1つ以上の流体を移動するように構成されるポンプとを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、流体回収システムは、流入水のための患者の血管から、実質的に水分からなる膜透過物、および、膜保持液を生成するように構成される限外濾過膜をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、流体回収システムは、排泄のために膜透過物を患者の膀胱に短絡させるように構成されるシャントをさらに含む。
いくつかの実施形態において、流体回収システムは、流体回収システムのモードを、リザーバ内の患者の血管からの水分を回収することから、流入水のための膜透過物および膜保持液を生成することに切り替えるように構成されたスイッチバルブをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、カテーテルは管腔入口と管腔出口との間に配置された隔壁をさらに含み、隔壁の遠位端はカテーテルの閉鎖端の近位にある。
いくつかの実施形態において、半透膜は患者の血管内の水分を半透膜を透過させる一方、ポリペプチドまたはタンパク質を含むより大きい血液由来の代謝物、細胞断片、または細胞を透過させないように構成される孔径を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、流入水は溶解されたポリマーを含む水性溶液である。第1浸透濃度は患者が必要とする量を超える水分を半透膜を通して血管から除去するための浸透ポテンシャルを作るのに十分である。
【0018】
本明細書にはまた、いくつかの実施形態において、カテーテルと流体回収システムとを含む多血症治療のためのシステムが開示される。カテーテルは、カテーテルの閉鎖端の近位の折曲ルーメンの「U」型の遠位端部に接合された管腔入口および管腔出口を含むカテーテルの折曲ルーメンを含む。カテーテルの閉鎖端を含むカテーテルの遠位端部は、少なくとも一時的に患者の血管内区画の血管内に存在するように構成される。患者の血管内に存在するように構成されたカテーテルの少なくとも遠位端部は、半透膜で形成される。半透膜は、管腔入口によって搬送される、第1浸透濃度を有する流入水に、患者の血管内の血液由来の水分が半透膜を通って透過するのを可能にし、管腔出口によって搬送される第2浸透濃度を有する排出水を生成するように構成され、第2浸透濃度は第1浸透濃度より低い。流体回収システムは、排出水を回収するように構成されるリザーバと、流入水および排出水を含むシステムの1つ以上の流体を移動するように構成されるポンプとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、流体回収システムは、実質的に流入水のための患者の血管からの水分からなる膜透過物、および、膜保持液を生成するように構成される限外濾過膜をさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、流体回収システムは、排泄のために膜透過物を患者の膀胱に短絡させるように構成されるシャントをさらに含む。
いくつかの実施形態において、流体回収システムは、流体回収システムのモードを、リザーバ内の患者の血管からの水分を回収することから、膜透過物および膜保持液を生成することに切り替えるように構成されたスイッチバルブをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、カテーテルは管腔入口と管腔出口との間に配置された隔壁をさらに含む。隔壁の遠位端はカテーテルの閉鎖端の手前にあり、それによってカテーテルの閉鎖端の近位に折曲ルーメンの「U」型の遠位端部を形成する。
【0022】
いくつかの実施形態において、半透膜は、患者の血管内の水分が半透膜を通って透過するのを可能にするが、ポリペプチドまたはタンパク質を含むより大きい血液由来の代謝物、細胞断片、または細胞を透過させないように構成された孔径を有する。
【0023】
本明細書にはまた、いくつかの実施形態において、患者の血管内に閉鎖端のカテーテルを挿入することを含む多血症治療のための方法が開示される。カテーテルは、半透膜と、遠位端部において管腔出口に接合される管腔入口とを有する遠位端部を含む。本方法は、第1浸透濃度を有する流入水を管腔入口に案内することと、血管から半透膜を通って遠位端部に血液由来の水分を吸収し、第1浸透濃度より低い第2浸透濃度を有する排出水を生成することと、管腔出口によってカテーテルから外へ排出水を案内することとをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、本方法はカテーテルに流体的に結合したポンプで流入水を管腔入口内に注入することと、管腔出口から外へ排出水を汲み出すこととをさらに含む。
いくつかの実施形態において、本方法は廃棄物として排出水を処理することをさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本方法は流体回収システムで排出水をリサイクルして流入水を生成することをさらに含む。
いくつかの実施形態において、カテーテルからの排出水を案内することは、流体回収システムの流体リザーバ内に排出水を案内することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本方法は、流体回収システムのモードを、流体リザーバで排出水を回収することから流体回収システムの限外濾過膜で排出水を濾過することに切り替えることをさらに含む。排出水の濾過により、流入水の水性膜透過物および膜保持液が生成される。
【0027】
いくつかの実施形態において、本方法は膜透過物を排泄のために患者の膀胱に短絡することをさらに含む。
本明細書に提供された概念のこれらの特徴および他の特徴は、そのような概念の特定の実施形態をより詳細に開示する添付の図面および以下の記載の観点から、当業者にはより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】いくつかの実施形態による多血症治療のためのカテーテルを示す図。
図2】いくつかの実施形態による多血症治療のためのシステムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
いくつかの特定の実施形態がより詳細に開示される前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に分離でき、任意選択的に、本明細書に開示される他の複数の実施形態のうちのいずれかの特徴と組み合わせるか、または置換することができる特徴を有し得ることも理解されたい。
【0030】
本明細書に使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態の説明の目的のためであり、それらの用語が本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3など)は、一般に、特徴またはステップの一群内の異なる複数の特徴またはステップを区別または識別するために使用され、シリアルまたは数値の限定を供給しない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴またはステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴またはステップに限定される必要はない。「左」、「右」、「前部」、「後部」、「頂部」、「底部」、などの名称は、便宜上使用され、例えば、特定の任意の固定された位置、配向、または方向を含意することを意図していない。代わりに、そのような名称は、例えば、相対的な位置、配向、または方向を反映するために使用される。単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈で特に明確に指示されなければ、複数形の参照が含まれる。
【0031】
「近位」に関して、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「近位部」または「近位端部」は、カテーテルが患者に使用されるとき、臨床医の近くにあることが意図されるカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位長」は、カテーテルが患者に使用されるとき、臨床医の近くにあることが意図されるカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「近位端」は、カテーテルが患者に使用されるとき、臨床医の近くにあることが意図されるカテーテルの一端を含む。カテーテルの近位部、近位端部、または近位長は、カテーテルの近位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの近位部、近位端部、または近位長は、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、特に文脈が示唆しなければ、カテーテルの近位部、近位端部、または近位長は、カテーテルの末端部または末端長ではない。
【0032】
「遠位」に関して、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「遠位部」または「遠位端部」は、カテーテルが患者に使用されるとき、患者の近くまたは患者内にあることが意図されるカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位長」は、カテーテルが患者に使用されるとき、患者の近くまたは患者内にあることが意図されるカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「遠位端」は、カテーテルが患者に使用されるとき、患者の近くまたは患者内にあることが意図されるカテーテルの一端を含む。カテーテルの遠位部、遠位端部、または遠位長は、カテーテルの遠位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの遠位部、遠位端部、または遠位長は、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、特に文脈が示唆しなければ、カテーテルの遠位部、遠位端部、または遠位長は、カテーテルの末端部または末端長ではない。
【0033】
特に定義されなければ、本明細書に使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
上述したように、多血症は血漿が過剰な量の水分を保持した結果として、血管内区画内の血液量が正常値を超える病状である。体が必要とする量を超える水分を濾過するのに腎臓がもはや効果的ではない慢性腎臓病、特にESRDなどのその進行期に苦しむ患者において水分は蓄積され得る。体が必要とする量を超える水分を濾過するため、腎臓に血液を注入するのに心臓がもはや効果的ではないCHFなどの慢性心臓病に苦しむ患者においても、水分は蓄積され得る。正常値を超える血管内区画内の血液量は、高血圧、心臓へのストレスにつながり得、胸膜腔内の体液の蓄積による息切れを引き起こし得、これは生活の質を低下させ、CHFなどの他の疾患を悪化させて死に至ることさえあり得る。したがって、多血症に対処することは、その病状に苦しむ人々にとって重要である。本明細書には、カテーテル、カテーテルベースのシステム、および前述のものに取り組むためのそれらの方法が開示される。
【0034】
カテーテル
図1は、いくつかの実施形態による多血症治療のためのカテーテル100を示す。
示されるように、多血症治療のためのカテーテル100は、カテーテル100の折曲ルーメン110を含み、その折曲ルーメン110は、カテーテル100の閉鎖端102の近位において、折曲ルーメン110の「U」型の遠位端部116に接合された管腔入口112と管腔出口114とを含む。カテーテル100の閉鎖遠位端を含むカテーテル100の遠位端部は、患者の血管内区画の血管内に少なくとも一時的に存在するように構成される。患者の血管内に存在するように構成された、カテーテル100の少なくとも遠位端部は半透膜から形成される。半透膜は、患者の血管内の血液由来の水分が、管腔入口112によって搬送される第1浸透濃度を有する流入水に、その半透膜を介して透過し、管腔出口114によって搬送される第2浸透濃度を有する排出水を生成するように構成され、第2浸透濃度は第1浸透濃度より低い。
【0035】
カテーテル100は、管腔入口112と管腔出口114との間に配置された隔壁113をさらに含み、それによって管腔入口112と管腔出口114とを形成する。隔壁113の遠位端はカテーテル100の閉鎖端の近位にある。実際、隔壁113の遠位端はカテーテル100の閉鎖端102のすぐ手前にあり、それによってカテーテル100の閉鎖端102の近位に折曲ルーメン110の「U」型の遠位端部116を形成する。したがって、カテーテル100は、カテーテルの閉鎖端の近位において、折り目で折曲げられる単一ルーメンカテーテルである。そうとはいえ、本明細書に提供された概念を使用するマルチルーメンカテーテルも可能である。
【0036】
カテーテル100の半透膜は、患者の血管内の水分が半透膜を通って透過するのを可能にするが、ポリペプチドまたはタンパク質などのより大きい血液由来の代謝物、血小板などの細胞断片、または赤血球または白血球などの細胞を透過させない孔径の孔を有する。しかしながら、半透膜の孔はNa、K、Ca2+、Mg2+、またはClなどのイオン、ならびに前述のより大きな代謝物よりも低分子量の尿素またはクレアチニンなどの分子が半透膜を通って透過するのを可能にするような大きさにされ得る。そのような膜の一例は、限定するものではないが、透析膜を含む。
【0037】
反管腔側表面、すなわちカテーテル100の外側表面は、平らで滑らかな反管腔側表面の表面積よりも、反管腔側表面の表面積を増加させるための表面積増加手段を含み得る。表面積増加手段は、限定するものではないが、渦巻き、波形、フィンまたはそれらの組み合わせを含む。表面積増加手段は患者の血管から半透膜を通る水分の流れを増加させる。
【0038】
示されるように、流入水は管腔入口112によって折曲ルーメン110の「U」型の遠位端部116に搬送され、途中で流入水は、浸透によって、患者の血管から半透膜を通って流入水に水分を引き抜く。流入水は、定期的に新しくされる流入水リザーバからポンプで流入水リザーバから管腔入口112内に流入水を注入することによって調達され得る。第1または当初浸透濃度を有する流入水は、患者の血管からの水分を吸収すると、最終的には当初浸透濃度より低い第2または最終浸透濃度を有する排出水になる。折曲ルーメン110の「U」型の遠位端部116および管腔出口114の両方に沿い、流入水は、そうさせる浸透ポテンシャルがある限り、排出水へ変化する。流入水リザーバから管腔入口112内に流入水をポンプで注入することと同じ動作で、排出水は廃棄のために管腔出口114によって排出水リザーバに搬送され得る。
【0039】
流入水は、その治療セッション中、半透膜を通って患者の血管から患者が必要とする量を超える水分を除去する浸透ポテンシャルを作るのに十分な濃度で、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)などの溶解されたポリマーまたはポリアクリル酸ナトリウムを含む水性溶液であり得る。
【0040】
カテーテル100は長期間のインプラントとして構成され得、またカテーテル100は定期的に交換されるように構成され得る。後者に関して、例えば、患者が眠る一晩中などの、複数の透析セッションの間に使用するために、各透析セッションの終わりに患者の動静脈瘻内にカテーテル100が移植され得るという点で、カテーテル100は使い捨て可能である。カテーテル100で使用された流入水、またはそれから生成された排出水(すなわち、カテーテル100で使用された流体)もまた使い捨て可能である。排出水の廃棄のために、流入水は空のカートリッジに加えてすぐに使用できるカートリッジに供給され得る。流入水が本明細書に記載されたように排出水になる間、外部ポンプは、流入水カートリッジからカテーテル100を通って排出水カートリッジに流入水を注入するために使用され得る。ポンプはバッテリーまたは商用電源から動力を供給され得る。
【0041】
前述の観点から、カテーテル100は、患者の血流から患者の必要とする量を超える水分を除去するように構成される。したがって、カテーテル100は、多血症を弱めることにより、よって、各透析セッションで除去する必要のある水分量、および週ごとに患者が必要とする透析セッションの数を減少させ、患者の生活の質を改善できる。
【0042】
カテーテルシステム
図2は、いくつかの実施形態による多血症治療のためのシステム200を示す。
本明細書にはまた、いくつかの実施形態において、本明細書の上記のカテーテル100および流体回収システム210を含む多血症治療のためのシステム200が開示される。流体回収システム210は排出水を回収するように構成された流体リザーバ212と、流入水および排出水を含むシステム210の1つ以上の流体を移動させるように構成されたポンプ214とを含む。
【0043】
流体回収システム210は、患者の血管から、実質的に水分からなる膜透過物を生成するように構成される限外濾過膜218をさらに含み得る。限外濾過膜218は、限外濾過膜218に対する膜供給液の浸透濃度を増加させ、膜供給液は、流入水のための流体リザーバ212内の膜保持液になる。
【0044】
限外濾過膜218などを用いる限外濾過は、限外濾過のための比較的高圧を作ることができるポンプ214を必要とし、それがひいては、ポンプ214がシステム200の外側から動力を供給されることを必要とする。そのような動力は商用電源によって、任意選択により患者の皮膚の下の誘導結合を介して供給され得る。システム200が再充電されるように動力は夜に適用され得る。
【0045】
流体回収システム210は、排泄のために膜透過物を患者の膀胱に短絡させるように構成されるシャントをさらに含み得る。流体回収システム210がシャントを備えるように構成されるとき、システム200のカテーテル100は、患者の膀胱を介した排泄のため、膜透過物を短絡させる尿管に迅速にアクセスするために、患者の腎静脈内などに長期間のインプラントのために構成され得る。
【0046】
流体回収システム210は、流体回収システム210のモードを、流体リザーバ212内の患者の血管からの水分の回収から、膜透過物および膜保持液の生成に切り替えるように構成されたスイッチバルブ216をさらに含む。本明細書に上記されたカテーテル100の使い捨ての実施形態で使用された使い捨ての流体の代わりに、カテーテル100の本実施形態で使用される流体は限外濾過膜218で患者から吸収された水分を除去することによって再利用可能である。実際、流体リザーバ212の中の排出水が特定の量に到達したとき、または排出水によって及ぼされる特定の圧力に達したとき、スイッチバルブ216は、流体回収システム210のモードを、カテーテル100を通じた流体の注入により流体リザーバ212内に患者の血管から水分を回収することから、膜透過物および膜保持液を生成することに、切り替えるように作動され得る。
【0047】
本明細書に上記されたカテーテル100の使い捨ての実施形態の利点に加えて、カテーテル100の長期移植は、カテーテル100の使い捨ての実施形態と比較して、感染のリスクを減少させ、患者の日々の生活の制限を減らす可能性がある。
【0048】
方法
多血症治療のための方法は、いくつかの実施形態において、患者の血管内にカテーテル100などの閉鎖端を有するカテーテルを挿入することを含む。本明細書に上記されたように、カテーテル100は、半透膜と、遠位端部において管腔出口114に接合される管腔入口112とを有する遠位端部を含む。本方法は、第1浸透濃度を有する本明細書に上記された流入水を管腔入口112に案内することと、血管から半透膜を介して遠位端部に血液由来の水分を吸収し、第1浸透濃度より低い第2浸透濃度を有する排出水を生成することと、管腔出口114によってカテーテル100から外へ排出水を案内することとをさらに含む。
【0049】
本方法は、本明細書に上記されたポンプがカテーテル100に流体的に結合されるとき、ポンプで流入水を管腔入口112内に注入することと、管腔出口114から外へ排出水を汲み出すことをさらに含む。
【0050】
本明細書に上記されたカテーテル100の使い捨ての実施形態を参照して記載されるように、本方法は廃棄物として排出水を処理することをさらに含む。例えば、排出水は排出水のための空のカートリッジ内に注入され得、排出水を含むカートリッジは廃棄物として処理され得る。
【0051】
本方法は、流体回収システム210で排出水をリサイクルして流入水を生成することをさらに含む。流体回収システム210が使用されるとき、カテーテル100からの排出水を案内することは、流体回収システム210の流体リザーバ212内に排出水を案内することを含む。流体リザーバ212の中の排出水が特定の量に到達したとき、または流体リザーバ212が排出水によって及ぼされる特定の圧力に達したとき、流体回収システム210のモードは、流体リザーバ212で排出水を回収することから流体回収システム210の限外濾過膜218で排出水を濾過することに切り替えられる。排出水の濾過により、流入水の水性膜透過物および膜保持液が生成される。膜透過物はその後、排泄のために患者の膀胱に短絡される。
【0052】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示され、特定の実施形態が若干詳細に開示されるが、それらの特定の実施形態が本明細書に提供される概念の範囲を限定する意図はない。追加の適応および/または変更は当業者に明白であり得、より広い態様において、これらの適応および/または変更もまた包含される。したがって、本明細書に提供される概念の範囲から逸脱することなく、特定の実施形態から逸脱がなされる場合がある。
図1
図2