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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20231128BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021522179
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020018953
(87)【国際公開番号】W WO2020241238
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019098550
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】井上 開人
(72)【発明者】
【氏名】木村 明寛
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-149912(JP,A)
【文献】特開2019-012767(JP,A)
【文献】特開2019-029631(JP,A)
【文献】特開2007-115731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
厚さ方向において離間した第1主面および第1裏面を有し、前記第1裏面が前記支持部材に対向して、前記支持部材に接合された金属部材と、
前記支持部材と前記金属部材とを接合する接合層と、
前記第1主面に対向し、前記金属部材に接合された半導体素子と、
前記支持部材、前記金属部材、前記接合層および前記半導体素子を覆う封止部材と、
を備えており、
前記金属部材は、第1金属材料からなる第1金属体および第2金属材料からなる第2金属体を含み、かつ、前記第1金属体と前記第2金属体との境界があり、
前記第2金属材料の線膨張係数は、前記第1金属材料の線膨張係数よりも小さく、
前記第1金属体は、複数の第1金属層を含み、
前記第2金属体は、複数の第2金属層を含み、
前記金属部材は、前記複数の第1金属層と前記複数の第2金属層とが、前記厚さ方向に交互に積層された積層構造をなし、
前記金属部材は、前記第1主面および前記第1裏面に挟まれ、かつ、前記第1主面および前記第1裏面に繋がる側面を有しており、さらに、前記側面から前記金属部材の内方に向かって延出するき裂が形成されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記複数の第1金属層は、前記金属部材における、前記第1主面側の表層および前記第1裏面側の表層を含む、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の第1金属層の各厚さは、前記複数の第2金属層の各厚さよりも大きい、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記き裂は、互いに接する前記第1金属層と前記第2金属層との部分剥離によって、形成されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記き裂には、前記封止部材が充填されている、
請求項1または請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1金属材料は、銅を含む、
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2金属材料は、モリブデンを含む、
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記支持部材は、絶縁基板を含んでおり、
前記絶縁基板は、前記厚さ方向において離間した第2主面および第2裏面を有し、かつ、前記第2主面が前記金属部材に対向する、
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記支持部材は、配線層をさらに含んでおり、
前記配線層は、前記厚さ方向において離間した第3主面および第3裏面を有し、かつ、前記第3裏面が前記絶縁基板に接合されており、
前記金属部材は、前記第1裏面が前記第3主面に対向して、前記配線層に接合されている、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2金属材料の線膨張係数は、前記第1金属材料の線膨張係数よりも、前記絶縁基板の線膨張係数に近い値である、
請求項8または請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記絶縁基板は、構成材料がセラミックスである、
請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記絶縁基板の裏面は、前記封止部材から露出している、
請求項8ないし請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記接合層は、はんだである、
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体素子は、導電性接合材によって、前記金属部材に接合されている、
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記金属部材の厚さは、前記支持部材の厚さよりも大きい、
請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記金属部材の厚さは、0.5mm以上5mm以下である、
請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子が搭載された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子を搭載した半導体装置が知られている。特許文献1には、半導体素子を搭載した半導体装置の一例が開示されている。特許文献1に記載の半導体装置は、半導体素子、支持部材、熱拡散板、および、封止部材を備えている。半導体素子は、はんだによって、熱拡散板に接合されている。支持部材は、導電パターン、金属板および絶縁樹脂を含んでいる。支持部材は、金属板(たとえばアルミニウム、銅などの金属あるいはその合金)の上面に絶縁樹脂(たとえばセラミックス)が形成されており、当該絶縁樹脂の上に導電パターン(たとえばアルミニウム、銅などの金属あるいはその合金)が形成されている。熱拡散板は、たとえば銅あるいは銅合金からなる板状部材である。熱拡散板は、はんだによって、支持部材の導電パターンに接合されている。封止部材は、半導体素子、支持部材の一部、熱拡散板、および、各はんだを覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-294390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の通電時に、半導体素子から熱が発生する。このとき、半導体素子の発熱による温度上昇とともに、構成部材の熱膨張によって、たとえば熱拡散板と支持部材とを接合するはんだに熱応力がかかる。この熱応力は、当該はんだの凝集破壊を引き起こす可能性があり、接合不良や導通不良などの製品故障の原因である。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、半導体素子の発熱時の熱応力を緩和することにより、信頼性の向上を図った半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、支持部材と、厚さ方向において離間した第1主面および第1裏面を有し、前記第1裏面が前記支持部材に対向して、前記支持部材に接合された金属部材と、前記支持部材と前記金属部材とを接合する接合層と、前記第1主面に対向し、前記金属部材に接合された半導体素子と、前記支持部材、前記金属部材、前記接合層および前記半導体素子を覆う封止部材と、を備えており、前記金属部材は、第1金属材料からなる第1金属体および第2金属材料からなる第2金属体を含み、かつ、前記第1金属体と前記第2金属体との境界があり、前記第2金属材料の線膨張係数は、前記第1金属材料の線膨張係数よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の半導体装置によれば、半導体素子の発熱時の熱応力を緩和することができる。よって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態にかかる半導体装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態にかかる半導体装置を示す平面図である。
図3図2の平面図において、封止部材を想像線(二点鎖線)で示した図である。
図4】第1実施形態にかかる半導体装置を示す底面図である。
図5】第1実施形態にかかる半導体装置を示す側面図(右側面図)である。
図6】第1実施形態にかかる半導体装置を示す側面図(左側面図)である。
図7】第1実施形態にかかる半導体装置を示す正面図である。
図8図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図3のIX-IX線に沿う断面図である。
図10図3のX-X線に沿う断面図である。
図11図3のXI-XI線に沿う断面図である。
図12図3の一部を拡大した部分拡大図である。
図13図12のXIII-XIII線に沿う断面図である。
図14】第1実施形態にかかる金属部材の断面模式図である。
図15】第2実施形態にかかる半導体装置を示す平面図である。
図16】第3実施形態にかかる半導体装置を示す平面図である。
図17図16のXVII-XVII線に沿う断面図である。
図18】変形例にかかる金属部材を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の半導体装置の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。なお、同一あるいは類似の構成には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
図1図14は、第1実施形態にかかる半導体装置A1を示している。半導体装置A1は、複数の半導体素子10、支持部材2、複数の金属部材30、複数の第1接合層41、複数の第2接合層42、一対の入力端子51、一対の出力端子52、複数の制御端子53、複数の検出端子54、複数の接続部材6、および、封止部材7を備えている。
【0011】
図1は、半導体装置A1を示す斜視図である。図2は、半導体装置A1を示す平面図である。図3は、図2の平面図において、封止部材7を想像線(二点鎖線)で示した図である。図4は、半導体装置A1を示す底面図である。図5は、半導体装置A1を示す側面図(右側面図)である。図6は、半導体装置A1を示す側面図(左側面図)である。図7は、半導体装置A1を示す正面図である。図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。図9は、図3のIX-IX線に沿う断面図である。図10は、図3のX-X線に沿う断面図である。図11は、図3のXI-XI線に沿う断面図である。図12は、図3の一部を拡大した部分拡大図である。図13は、図12のXIII-XIII線に沿う断面図である。図14は、金属部材30の断面模式図である。
【0012】
説明の便宜上、互いに直交する3つの方向を、x方向、y方向、z方向と定義する。z方向は、半導体装置A1の厚さ方向である。x方向は、半導体装置A1の平面図(図2参照)における左右方向である。y方向は、半導体装置A1の平面図(図2参照)における上下方向である。また、x方向の一方をx1方向、x方向の他方をx2方向とする。同様に、y方向の一方をy1方向、y方向の他方をy2方向とし、z方向の一方をz1方向、z方向の他方をz2方向とする。本開示において、z1方向を下、z2方向を上という場合もある。
【0013】
半導体装置A1は、たとえば、モータの駆動源、様々な電気製品のインバータ装置、および、様々な電気製品のDC/DCコンバータなどに用いられる電力変換装置(パワーモジュール)である。半導体装置A1は、たとえばハーフブリッジ型のスイッチング回路を構成する。
【0014】
複数の半導体素子10の各々は、たとえばMOSFETである。なお、各半導体素子10は、MOSFETに限定されず、MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor FET)を含む電界効果トランジスタ、または、IGBTを含むバイポーラトランジスタなどのスイッチング素子であってもよい。あるいは、各半導体素子10は、スイッチング素子のみならず、LSIなどのICチップ、ダイオード、コンデンサなどであってもよい。本実施形態においては、各半導体素子10は、nチャネル型のMOSFETである場合を示すが、pチャネル型であってもよい。各半導体素子10は、SiC(炭化ケイ素)を主とする半導体材料を用いて構成されている。なお、当該半導体材料は、SiCに限定されず、Si(シリコン)、GaAs(ヒ化ガリウム)、GaN(窒化ガリウム)、あるいは、Ga23(酸化ガリウム)などであってもよい。
【0015】
各半導体素子10は、第1接合層41によって、複数の金属部材30のいずれかに接合される。各半導体素子10は、たとえば、z方向に見て(以下、「平面視」ともいう。)、矩形状である。
【0016】
各半導体素子10は、図13に示すように、主面101および裏面102を有する。主面101および裏面102は、z方向において、互いに離間する。主面101は、z2方向を向き、裏面102は、z1方向を向く。裏面102は、第1接合層41に接しており、かつ、複数の金属部材30のいずれかに対向する。
【0017】
各半導体素子10は、図12および図13に示すように、第1電極11、第2電極12、第3電極13および絶縁膜14を有する。
【0018】
第1電極11は、各半導体素子10において、z方向の主面101側に配置されている。第1電極11は、当該半導体素子10の主面101において露出する。第1電極11は、たとえばソース電極であって、ソース電流が流れる。第1電極11は、図12に示すように、たとえば4つに分割された構成となっている。
【0019】
第2電極12は、各半導体素子10において、z方向の裏面102側に配置されている。第2電極12は、当該半導体素子10の裏面102において露出する。第2電極12は、たとえばドレイン電極であって、ドレイン電流が流れる。
【0020】
第3電極13は、各半導体素子10において、z方向の主面101側に配置されている。第3電極13は、当該半導体素子10の主面101において露出する。第3電極13は、たとえばゲート電極であって、半導体素子10を駆動させるためのゲート電圧(制御電圧)が印加される。平面視において、第3電極13の大きさは、4つに分割された第1電極11の1つの部分の大きさよりも小さい。
【0021】
絶縁膜14は、各半導体素子10において、z方向の主面101側に配置されている。第3電極13は、当該半導体素子10の主面101において露出する。絶縁膜14は、平面視において第1電極11および第3電極13をそれぞれ囲んでいる。絶縁膜14は、第1電極11と第3電極13とを絶縁する。絶縁膜14は、たとえば、SiO2(二酸化ケイ素)層、SiN4(窒化ケイ素)層、ポリベンゾオキサゾール層がこの順番で積層されたものであり、ポリベンゾオキサゾール層が、各半導体素子10の主面101側の表層である。なお、絶縁膜14においては、ポリベンゾオキサゾール層に代えてポリイミド層でもよい。
【0022】
複数の半導体素子10は、複数の第1素子10Aおよび複数の第2素子10Bを含む。先述のとおり、半導体装置A1はハーフブリッジ型のスイッチング回路を構成する。複数の第1素子10Aは、このスイッチング回路における上アーム回路を構成する。複数の第2素子10Bは、このスイッチング回路における下アーム回路を構成する。半導体装置A1は、図3に示すように、2つの(一対の)第1素子10Aおよび2つの(一対の)第2素子10Bを含む。なお、半導体素子10の個数は、本構成に限定されず、半導体装置A1に要求される性能に応じて自在に設定可能である。
【0023】
支持部材2は、複数の金属部材30を介して、複数の半導体素子10を支持する。支持部材2は、絶縁基板21および複数の配線層22を含む。
【0024】
絶縁基板21は、複数の配線層22が配置されている。絶縁基板21は、電気絶縁性を有する。絶縁基板21の構成材料は、たとえば熱伝導性に優れたセラミックスである。このようなセラミックスとしては、たとえばAlN(窒化アルミニウム)、SiN(窒化ケイ素)、Al23(酸化アルミニウム)などが挙げられる。絶縁基板21は、平板状である。絶縁基板21は、図3に示すように、平面視矩形状である。各絶縁基板21の厚さ(z方向の寸法)は、0.2mm以上1.0mm以下(たとえば0.5mm)である。
【0025】
絶縁基板21は、図8図11に示すように、主面211および裏面212を有する。主面211および裏面212は、z方向において、互いに離間する。主面211は、z2方向を向き、裏面212は、z1方向を向く。裏面212は、封止部材7から露出する。裏面212には、たとえば図示しないヒートシンクなどが接続されうる。なお、絶縁基板21の構成は、図示したものに限定されず、複数の配線層22ごとに個別に設けてもよい。主面211が特許請求の範囲に記載の「第2主面」に相当し、裏面212が特許請求の範囲に記載の「第2裏面」に相当する。
【0026】
複数の配線層22はそれぞれ、絶縁基板21の主面211上に形成される。複数の配線層22は、互いに離間する。各配線層22は、たとえば銀を含む金属からなる。なお、各配線層22の構成材料は、銀を含む金属に限定されない。たとえば、銅を含む金属であってもよいし、当該銅を含む金属に銀めっきが施されていてもよい。または、当該銀めっきの代わりに、アルミニウム層、ニッケル層、銀層の順に積層された複数種の金属めっきを施してもよい。複数の配線層22はいずれも、平面視において、絶縁基板21の周縁よりも内方に位置する。各配線層22は平面視矩形状である。各配線層22は、封止部材7に覆われている。各配線層22の厚さ(z方向の寸法)は、5μm以上80μm以下である。
【0027】
複数の配線層22は、図3に示すように、一対の第1配線層22A、一対の第2配線層22Bおよび第3配線層22Cを含む。一対の第1配線層22A、一対の第2配線層22Bおよび第3配線層22Cは、平面視において互いに離間する。
【0028】
一対の第1配線層22Aは、絶縁基板21においてx1方向側に位置する。第1配線層22Aは、y方向において互いに離間している。
【0029】
一対の第2配線層22Bは、絶縁基板21においてx2方向側に位置する。一対の第2配線層22Bは、y方向において、互いに離間している。一対の第2配線層22Bは、x方向において、一対の第1配線層22Aの隣に位置する。
【0030】
第3配線層22Cは、絶縁基板21においてx1方向側に位置する。第3配線層22Cは、一対の第1配線層22Aの間に位置する。
【0031】
複数の配線層22(一対の第1配線層22A、一対の第2配線層22Bおよび第3配線層22C)はそれぞれ、主面221および裏面222を有する。主面221および裏面222は、z方向において、互いに離間する。主面221は、z2方向を向き、裏面222は、z1方向を向く。裏面222は、各配線層22が絶縁基板21に接合された状態において、絶縁基板21の主面211に対向する。主面221が特許請求の範囲に記載の「第3主面」に相当し、裏面222が特許請求の範囲に記載の「第3裏面」に相当する。
【0032】
複数の金属部材30は、各配線層22の上にそれぞれ1つずつ配置される。各金属部材30は、第2接合層42によって、各配線層22(支持部材2)に接合される。複数の金属部材30は、第1接合層41によって、複数の半導体素子10が接合されている。各金属部材30の厚さ(z方向の寸法)は、0.5mm以上5mm以下(好ましくは1.0mm以上3mm以下)である。
【0033】
複数の金属部材30は、図3に示すように、一対の第1金属部材30A、一対の第2金属部材30Bおよび第3金属部材30Cを含む。一対の第1金属部材30A、一対の第2金属部材30Bおよび第3金属部材30Cは、平面視において互いに離間する。
【0034】
一対の第1金属部材30Aは、図3および図10に示すように、一対の第1配線層22Aの上にそれぞれ配置されている。各第1金属部材30Aの上にはそれぞれ、各第1素子10Aがそれぞれ接合される。
【0035】
一対の第2金属部材30Bは、図3図8および図9に示すように、一対の第2配線層22Bの上にそれぞれ配置されている。各第2金属部材30Bの上にはそれぞれ、各第2素子10Bがそれぞれ接合されている。
【0036】
第3金属部材30Cは、図3図9および図10に示すように、第3配線層22Cの上に配置されている。第3金属部材30Cには、複数の半導体素子10のいずれも接合されていない。なお、第3金属部材30Cには複数の半導体素子10のいずれも接合されないため、半導体装置A1は第3金属部材30Cを備えていなくてもよい。
【0037】
複数の金属部材30(一対の第1金属部材30A、一対の第2金属部材30Bおよび第3金属部材30C)はそれぞれ、図8図11および図13に示すように、主面301、裏面302および複数の側面303を有する。
【0038】
主面301および裏面302は、z方向において、互いに離間する。主面301は、z2方向を向き、裏面302は、z1方向を向く。主面301は、各半導体素子10が各金属部材30に接合された状態において、各半導体素子10の主面101に対向する。裏面302は、各金属部材30が各配線層22に接合された状態において、各配線層22の主面221に対向する。主面301が特許請求の範囲に記載の「第1主面」に相当し、裏面302が特許請求の範囲に記載の「第1裏面」に相当する。
【0039】
複数の側面303はそれぞれ、z方向において主面301および裏面302に挟まれており、かつ、これらの両方に繋がる。各金属部材30は、x方向において離間し、かつ、互いに反対側を向く一対の側面303と、y方向において離間し、かつ、互いに反対側を向く一対の側面303との合計4つの側面303を有する。
【0040】
複数の金属部材30(一対の第1金属部材30A、一対の第2金属部材30Bおよび第3金属部材30C)はそれぞれ、図13および図14に示すように、第1金属体31および第2金属体32を含んでいる。第1金属体31は、第1金属材料からなり、第2金属体32は、第2金属材料からなる。第2金属材料の線膨張係数は、第1金属材料の線膨張係数よりも小さい。つまり、第2金属体32の線膨張係数は、第1金属体31の線膨張係数よりも小さい。また、第2金属材料の線膨張係数は、第1金属材料の線膨張係数よりも、絶縁基板21(支持部材2)の線膨張係数に近い値である。第1金属材料は、たとえばCu(銅)を含む金属であり、第2金属材料は、たとえばMo(モリブデン)を含む金属である。Cuの線膨張係数は、およそ16ppm/Kであり、Moの線膨張係数は、およそ5.1ppm/Kである。また、各金属部材30における第2金属体32の含有率は、10%以上40%以下(好ましくは30%)である。なお、第2金属材料は、Moを含む金属に限定されず、たとえばW(タングステン)を含む金属であってもよい。
【0041】
各金属部材30において、第1金属体31は、複数の第1金属層311を含み、複数の第2金属体32は、複数の第2金属層321を含んでいる。図13に示す例示においては、第1金属体31は7つの第1金属層311を含み、第2金属体32は6つの第2金属層321を含んでいる。各金属部材30は、複数の第1金属層311と複数の第2金属層321とが、z方向において、交互に積層された積層構造をなす。各金属部材30において、複数の第1金属層311は、図13に示すように、主面301側の表層および裏面302側の表層を含んでいる。よって、各金属部材30の積層構造における最上層および最下層はそれぞれ、複数の第1金属層311に含まれる。各第1金属層311の厚さは、各第2金属層321の厚さよりも、大きい。たとえば、各第1金属層311の厚さは、0.1mm以上0.8mm以下(好ましくは0.2mm以上0.4mm以下)であり、各第2金属層321の厚さは、0.1mm以上0.5mm以下(好ましくは0.1mm)である。なお、第1金属層311および第2金属層321の数は、特に限定されない。ただし、主面301側の表層および裏面302側の表層がともに第1金属層311であるためには、第1金属層311の数が第2金属層321の数よりも多い必要がある。
【0042】
各金属部材30は、図13および図14に示すように、複数の界面33を有する。各界面33は、互いに接する各第1金属層311と各第2金属層321との境界である。さらに、各金属部材30は、平面視において、複数の側面303のいずれかから、当該金属部材30の内方に延出するき裂34を含んでいる。き裂34は、側面303から、10μm以上100μm以下(好ましくは20μm以上40μm以下)伸展している。き裂34は、各界面33における部分剥離によって形成されている。よって、各第1金属層311と各第2金属層321とによって形成される界面33は、互いに当接する部分と、き裂34によって当接しない部分とがある。なお、き裂34は、すべての界面33に形成されている必要はなく、1つ以上の界面33に形成されていればよい。また、き裂34は、すべての側面303から延出する必要はなく、1つ以上の側面303から延出していればよい。き裂34には、図14に示すように、封止部材7が充填されている。なお、各金属部材30において、き裂34が形成されていなくてもよい。
【0043】
各金属部材30においては、先述のとおり、第1金属材料(たとえばCu)からなる複数の第1金属層311と、第2金属材料(たとえばMo)からなる複数の第2金属層321とが積層されている。そして、第2金属材料の線膨張係数は、第1金属材料の線膨張係数よりも小さい。これにより、各金属部材30は、第1金属材料のみからなる場合よりも、線膨張係数が小さくなる。半導体装置A1においては、各金属部材30としての線膨張係数は、3ppm/K以上14ppm/K以下(好ましくは7ppm/K以上11ppm/K以下)である。
【0044】
複数の第1接合層41はそれぞれ、各半導体素子10と各金属部材30との間に介在し、これらを接合する。第1接合層41は、たとえばはんだである。当該はんだは、鉛含有であってもよいし、鉛フリーであってもよい。また、各第1接合層41は、はんだに限定されず、焼結金属などの他の導電性接合材であってもよい。第1接合層41が、特許請求の範囲に記載の「導電性接合材」に相当する。
【0045】
複数の第2接合層42はそれぞれ、各金属部材30と各配線層22との間に介在し、これらを接合する。各第2接合層42は、たとえばはんだである。当該はんだは、鉛含有であってもよいし、鉛フリーであってもよい。また、各第2接合層42は、はんだに限定されず、焼結金属などの他の導電性接合材であってもよいし、絶縁性接合材(接着剤)であってもよい。第2接合層42が、特許請求の範囲に記載の「接合層」に相当する。
【0046】
一対の入力端子51、一対の出力端子52、複数の制御端子53、および、複数の検出端子54はそれぞれ、銅または銅合金からなる。一対の入力端子51、一対の出力端子52、複数の制御端子53、および、複数の検出端子54は、同一のリードフレームから構成される。
【0047】
一対の入力端子51は、図1図4に示すように、半導体装置A1において、x1方向側に位置する。一対の入力端子51は、y方向において、互いに離間している。一対の入力端子51は、外部の直流電源に接続される。一対の入力端子51の間には、たとえば直流電圧が印加される。一対の入力端子51はそれぞれ、一部が封止部材7に覆われており、これにより、封止部材7に支持されている。
【0048】
一対の入力端子51は、第1入力端子51Aおよび第2入力端子51Bを含む。第1入力端子51Aは、正極(P端子)であり、第2入力端子51Bは、負極(N端子)である。第1入力端子51Aおよび第2入力端子51B(一対の入力端子51)はそれぞれ、パッド部511および端子部512を含む。
【0049】
パッド部511は、平面視において支持部材2の周縁の外方に位置し、かつ、支持部材2に対してz方向に離間している。パッド部511は、封止部材7に覆われている。なお、パッド部511の表面には、たとえば銀めっきを施していてもよい。
【0050】
端子部512は、パッド部511に繋がり、かつ、封止部材7から露出している。端子部512は、半導体装置A1を配線基板に実装する際に用いられる。端子部512は、y方向に見て、L字状をなす。なお、端子部512の表面には、たとえばニッケルめっきを施していてもよい。
【0051】
端子部512は、基部513および起立部514を含む。基部513は、パッド部511に繋がり、かつ、封止部材7(後述の側面731)からx方向に延びている。起立部514は、基部513のx方向における先端から、z2方向に延びている。
【0052】
一対の出力端子52は、図1図4に示すように、半導体装置A1において、x2方向側に位置する。一対の出力端子52は、図1図4に示すように、y方向において互いに離間している。一対の出力端子52から、複数の半導体素子10により電力変換された交流電力(交流電圧)が出力される。一対の出力端子52はそれぞれ、一部が封止部材7に覆われており、これにより、封止部材7に支持されている。一対の出力端子52はそれぞれ、パッド部521および端子部522を含む。
【0053】
パッド部521は、平面視において支持部材2の周縁の外方に位置し、かつ、支持部材2に対してz方向に離間している。パッド部521は、封止部材7に覆われている。なお、パッド部521の表面には、たとえば銀めっきを施していてもよい。
【0054】
端子部522は、パッド部521に繋がり、かつ、封止部材7から露出している。端子部522は、半導体装置A1を配線基板に実装する際に用いられる。端子部522は、y方向に見て、L字状をなす。端子部522の形状は、各入力端子51の端子部512の形状と略同一である。なお、端子部522の表面には、たとえばニッケルめっきを施していてもよい。
【0055】
端子部522は、基部523および起立部524を含む。基部523は、パッド部521に繋がり、かつ、封止部材7(後述の側面732)からx方向に延びている。起立部524は、基部523のx方向における先端から、z2方向に延びている。
【0056】
複数の制御端子53は、図1図4に示すように、半導体装置A1において、x方向の両側に位置する。x1方向側に位置する複数の制御端子53はともに、y方向において、一対の入力端子51の間に位置する。x2方向側に位置する複数の制御端子53はともに、y方向において、一対の出力端子52の間に位置する。制御端子53の個数は、半導体素子10の個数に対応している。よって、半導体装置A1は、4つの制御端子53を備えている。各制御端子53には、各半導体素子10を駆動させるための制御電圧(ゲート電圧)が印加される。各制御端子53は、一部が封止部材7に覆われており、これにより、封止部材7に支持されている。各制御端子53は、パッド部531および端子部532を含む。
【0057】
パッド部531は、平面視において支持部材2の周縁の外方に位置し、かつ、支持部材2に対してz方向に離間している。パッド部531は、封止部材7に覆われている。なお、パッド部531の表面には、たとえば銀めっきを施していてもよい。
【0058】
端子部532は、パッド部531に繋がり、かつ、封止部材7から露出している。端子部532は、半導体装置A1を配線基板に実装する際に用いられる。端子部532は、y方向に見て、L字状をなす。なお、端子部532の表面には、たとえばニッケルめっきを施していてもよい。
【0059】
端子部532は、基部533および起立部534を含む。基部533は、パッド部531に繋がり、かつ、封止部材7(後述の側面731あるいは側面732のいずれか)からx方向に延びている。基部533のx方向の寸法は、一対の入力端子51の各基部513および一対の出力端子52の各基部523のx方向の各寸法よりも小さい。起立部534は、基部533のx方向における先端から、z2方向に延びている。
【0060】
複数の検出端子54は、図1図4に示すように、半導体装置A1において、x方向の両側に位置する。x1方向側に位置する複数の検出端子54はともに、y方向において、一対の入力端子51の間に位置する。x2方向側に位置する複数の検出端子54はともに、y方向において、一対の出力端子52の間に位置する。本実施形態においては、検出端子54の個数は、半導体素子10の個数に対応している。よって、半導体装置A1は、4つの検出端子54を備えている。各検出端子54には、各半導体素子10の第1電極11(ソース電極)に流れる電流に対応した電圧が印加される。各検出端子54は、パッド部541および端子部542を含む。
【0061】
パッド部541は、平面視において支持部材2の周縁の外方に位置し、かつ、支持部材2に対して、z方向に離間している。パッド部541は、封止部材7に覆われている。なお、パッド部541の表面には、たとえば銀めっきを施していてもよい。
【0062】
端子部542は、パッド部541に繋がり、かつ、封止部材7から露出している。端子部542は、半導体装置A1を配線基板に実装する際に用いられる。端子部542は、y方向に見て、L字状をなす。なお、端子部542の表面には、たとえばニッケルめっきを施していてもよい。
【0063】
端子部542は、基部543および起立部544を含む。基部533は、パッド部531に繋がり、かつ、封止部材7(後述の側面731あるいは側面732のいずれか)からx方向に延びている。基部543のx方向の寸法は、各制御端子53の基部533のx方向の寸法と略同じであり、かつ、一対の入力端子51の各基部513および一対の出力端子52の各基部523のx方向の各寸法よりも小さい。起立部544は、基部543のx方向における先端から、z2方向に延びている。
【0064】
複数の接続部材6はそれぞれ、離間した2つの部材間を導通させる。複数の接続部材6は、図3に示すように、複数の第1ワイヤ611、複数の第2ワイヤ612、複数の第3ワイヤ613、複数の第4ワイヤ614、第1導通部材621、第2導通部材622、第3導通部材623、および、第4導通部材624を含む。
【0065】
複数の第1ワイヤ611はそれぞれ、一対の第1素子10Aの各第1電極11と、一対の第2金属部材30Bの各主面301とに接合されている。これにより、各第2金属部材30B(各第2配線層22B)は、各第1ワイヤ611を介して、各第1素子10Aの第1電極11に導通している。各第1ワイヤ611の構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0066】
複数の第2ワイヤ612はそれぞれ、一対の第2素子10Bの各第1電極11と、第3金属部材30Cの主面301とに接合されている。これにより、第3金属部材30C(第3配線層22C)は、各第2ワイヤ612を介して、各第2素子10Bの第1電極11に導通している。各第2ワイヤ612の構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0067】
複数の第3ワイヤ613はそれぞれ、複数の半導体素子10の各第3電極13と、複数の制御端子53の各パッド部531とに接合されている。これにより、各制御端子53は、各第3ワイヤ613を介して、各半導体素子10の第3電極13に導通している。各第3ワイヤ613の構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0068】
複数の第4ワイヤ614はそれぞれ、複数の半導体素子10の各第1電極11と、複数の検出端子54の各パッド部541とに接合されている。これにより、各検出端子54は、各第4ワイヤ614を介して、各半導体素子10の第1電極11に導通している。各第4ワイヤ614の構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0069】
第1導通部材621は、図3および図10に示すように、一方の第1金属部材30Aの主面301と、他方の第1金属部材30Aの主面301とに接合されている。これにより、一対の第1金属部材30A(一対の第1配線層22A)は、相互に導通している。第1導通部材621は、平面視において、y方向に延び、かつ、第3配線層22Cを跨いでいる。第1導通部材621は、図3に示すように、たとえば複数のボンディングワイヤから構成される。当該ボンディングワイヤの構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0070】
第2導通部材622は、図3および図8に示すように、第1入力端子51Aのパッド部511と、一方の第1金属部材30Aの主面301とに接合されている。これにより、第1入力端子51Aは、第2導通部材622を介して、一方の第1金属部材30A(一方の第1配線層22A)に導通している。よって、第1入力端子51Aは、第2導通部材622および一方の第1金属部材30A(一方の第1配線層22A)を介して、一方の第1素子10Aの第2電極12に導通している。第2導通部材622は、図3に示すように、たとえば複数のボンディングワイヤから構成される。当該ボンディングワイヤの構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0071】
第3導通部材623は、図3に示すように、第2入力端子51Bのパッド部511と、第3配線層22Cの主面221とに接合されている。これにより、第2入力端子51Bは、第3導通部材623、第3金属部材30C(第3配線層22C)、および、複数の第2ワイヤ612を介して、各第2素子10Bの第1電極11に導通している。第3導通部材623は、図3に示すように、たとえば複数のボンディングワイヤから構成される。当該ボンディングワイヤの構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0072】
一対の第4導通部材624は、図3および図8に示すように、一対の出力端子52の各パッド部521と、一対の第2金属部材30Bの各主面301とに接合されている。これにより、一対の出力端子52は、一対の第4導通部材624および一対の第2金属部材30B(一対の第2配線層22B)を介して、各第2素子10Bの第2電極12に導通している。また、一対の出力端子52は、一対の第4導通部材624、一対の第2金属部材30B(第2配線層22B)および複数の第1ワイヤ611を介して、各第1素子10Aの第1電極11に導通している。一対の第4導通部材624はそれぞれ、図3に示すように、たとえば複数のボンディングワイヤから構成される。当該ボンディングワイヤの構成材料は、たとえばアルミニウムを含む金属、銅を含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0073】
なお、第1導通部材621、第2導通部材622、第3導通部材623、および、一対の第4導通部材624はそれぞれ、複数のボンディングワイヤではなく、金属リードあるいはボンディングリボンであってもよい。当該金属リードあるいはボンディングリボンの各構成材料は、たとえば銅を含む金属、アルミニウムを含む金属あるいは金を含む金属などである。
【0074】
封止部材7は、半導体装置A1の半導体パッケージである。封止部材7は、図1図11に示すように、半導体装置A1の各構成部材を覆う。ただし、支持部材2、一対の入力端子51、一対の出力端子52、複数の制御端子53、および、複数の検出端子54においては、それぞれ一部ずつを覆っている。封止部材7の構成材料は、たとえばエポキシ樹脂である。封止部材7は、たとえば、x方向の寸法が20mm以上120mm以下(好ましくは25mm以上60mm以下)であり、y方向の寸法20mm以上120mm以下(好ましくは40mm以上70mm以下)であり、z方向の寸法が5mm以上10mm以下(好ましくは7mm)である。封止部材7は、主面71、裏面72、複数の側面731~734、および、一対の取付孔74を有する。
【0075】
主面71および裏面72は、図5図7に示すように、z方向において、離間する。主面71は、z2方向を向き、裏面72は、z1方向を向く。裏面72は、図4に示すように、平面視において、絶縁基板21の裏面212を囲む枠状である。絶縁基板21の裏面212は、当該裏面72から露出する。複数の側面731~734の各々は、z方向において主面71および裏面72に挟まれており、かつ、これらの両方に繋がる。図3に示すように、側面731,732は、x方向において、離間する。側面731は、x1方向を向き、側面732は、x2方向を向く。図3に示すように、側面733,734は、y方向において、離間する。側面733は、y1方向を向き、側面734は、y2方向を向く。
【0076】
図3に示すように、側面731から、一対の入力端子51の各端子部512と、一対の第2素子10Bに対応して配置された一対の制御端子53の各端子部532および一対の検出端子54の各端子部542とが露出している。また、図3に示すように、側面732から、一対の出力端子52の各端子部522と、一対の第1素子10Aに対応して配置された一対の制御端子53の各端子部532および一対の検出端子54の各端子部542とが露出している。
【0077】
一対の取付孔74は、図5図7および図10に示すように、z方向において主面71から裏面72まで繋がり、封止部材7を貫通する。一対の取付孔74はそれぞれ、図2図4に示すように、たとえば平面視円形状である。一対の取付孔74は、絶縁基板21のy方向の両側に位置する。一対の取付孔74のy方向の離間距離は、たとえば15mm以上100mm以下(好ましくは30mm以上70mm以下)である。一対の取付孔74は、半導体装置A1をヒートシンクに取り付ける際に利用されうる。
【0078】
以上のように構成された半導体装置A1の作用効果は、次の通りである。
【0079】
半導体装置A1によれば、半導体素子10、支持部材2および金属部材30を備えている。半導体素子10は、第1接合層41によって、金属部材30に接合されており、金属部材30は、第2接合層42によって、支持部材2に接合されている。各金属部材30は、第1金属材料からなる第1金属体31と、第2金属材料からなる第2金属体32とを含んでおり、第1金属体31と第2金属体32との境界(界面33に相当)がある。そして、第2金属材料の線膨張係数は、第1金属材料の線膨張係数よりも小さい。この構成によると、半導体素子10からの熱によって、金属部材30が熱膨張する際、第1金属体31と第2金属体32との境界付近に熱ひずみが生じ、当該境界付近の熱応力が局所的に緩和される。したがって、金属部材30が第1金属材料のみから構成された場合よりも、金属部材30の熱膨張による熱応力を緩和させることができる。これにより、たとえば、金属部材30に接する第2接合層42にかかる熱応力を緩和させ、第2接合層42の凝集破壊を抑制できる。つまり、半導体装置A1は、接合不良や導通不良などの製品故障の発生が抑制されるので、信頼性を向上させることができる。また、半導体装置A1は、金属部材30に接する第1接合層41にかかる熱応力も緩和させることができるので、第1接合層41の凝集破壊を抑制できる。
【0080】
半導体装置A1によれば、各金属部材30は、その厚さが、支持部材2の厚さよりも大きく、0.5mm以上5mm以下(好ましくは1.0mm以下3mm以上)である。たとえば、本開示の半導体装置A1と異なる半導体装置において、各金属部材の厚さを金属部材30の厚さよりも小さくして、金属部材の剛性を低くすることで、熱応力を緩和させることも可能である。しかしながら、このような手法(金属部材を薄くする手法)では、金属部材に反りが生じて、当該金属部材と支持部材2との間に封止部材7が入り込み、支持部材2が損壊する(割れる)可能性がある。また、金属部材を薄くする手法では、金属部材による熱拡散効率が低下する可能性がある。一方、半導体装置A1においては、第1金属体31と第2金属体32とを含む金属部材30を用いることで、先述のとおり、金属部材30の熱応力を緩和させている。したがって、半導体装置A1は、支持部材2の損壊や熱拡散効率の低下を抑制しつつ、第2接合層42にかかる熱応力を緩和させることができる。
【0081】
半導体装置A1によれば、各金属部材30において、第1金属体31は複数の第1金属層311を含み、第2金属体32は、複数の第2金属層321を含んでいる。複数の第1金属層311と複数の第2金属層321とは、z方向に交互に積層されている。よって、各金属部材30は、複数の第1金属層311と複数の第2金属層321との積層構造をなす。この構成によると、各金属部材30は、第1金属材料と第2金属材料との合金(固溶体)で構成された場合よりも、z方向の熱伝導率を向上させることができる。
【0082】
半導体装置A1によれば、各第2金属層321の厚さ(z方向の寸法)は、各第1金属層311の厚さ(z方向の寸法)よりも小さい。第2金属材料の熱伝導率は、第1金属材料の熱伝導率よりも低いため、各金属部材30が第1金属材料のみから構成された場合よりも熱拡散効率が低下する。したがって、半導体装置A1においては、熱伝導率が低い各第2金属層321を薄くすることで、各第1金属層311と各第2金属層321とが同じ厚さである場合よりも、熱拡散効率の低下を抑制できる。
【0083】
半導体装置A1によれば、各金属部材30は、第1金属層311と第2金属層321との界面33に、き裂34が形成されている。き裂34は、当該界面33における部分剥離である。この構成によると、第1金属層311と第2金属層321との間にき裂34が介在する部分において、金属部材30の熱応力を緩和できる。したがって、半導体装置A1は、熱応力に対する信頼性を向上させることができる。また、き裂34には、封止部材7が充填されていることから、アンカー効果によって、各金属部材30と封止部材7との密着性を向上させることができる。したがって、半導体装置A1は、熱応力の緩和を図りつつ、封止部材7の密着性を向上させることができる。
【0084】
半導体装置A1によれば、各金属部材30において、複数の第1金属層311は、主面301側の表層と裏面302側の表層とを含んでいる。つまり、各金属部材30のz方向の各表面はともに第1金属層311である。この構成によると、半導体素子10の初期の熱拡散性を向上させることができる。また、各第2金属層321は、各第1金属層311よりも、第1接合層41および第2接合層42の各付着力が低い。したがって、各金属部材30のz方向の各表面をともに第1金属層311にすることで、各金属部材30に対する、第1接合層41および第2接合層42の各付着力を高めることができる。
【0085】
半導体装置A1によれば、各金属部材30は、第1金属材料からなる第1金属体31と第2金属材料からなる第2金属体32とを含んでいる。また、各金属部材30において、第2金属材料の線膨張係数が、第1金属材料の線膨張係数よりも、絶縁基板21の線膨張係数に近い値である。この構成によると、各金属部材30が第1金属材料のみから構成された場合よりも、各金属部材30を、絶縁基板21の線膨張係数に近づけることができる。したがって、各金属部材30の線膨張係数と絶縁基板21の線膨張係数との差が小さくなるため、第2接合層42にかかる熱応力を緩和させることができる。
【0086】
半導体装置A1によれば、支持部材2は、絶縁基板21を含んでいる。絶縁基板21は、熱伝導性に優れたセラミックスからなる。この構成によると、半導体素子10によって生じた熱は、金属部材30によって熱拡散され、そして、絶縁基板21に伝達される。したがって、半導体装置A1は、半導体素子10からの熱が、金属部材30および絶縁基板21に拡散されるため、半導体素子10の放熱効率の向上を図ることができる。さらに、絶縁基板21は、裏面212が封止部材7から露出している。この構成によると、絶縁基板21に伝達された熱が、裏面212から外部に放出される。また、半導体装置A1にヒートシンクが取り付けられている場合、裏面212から当該ヒートシンクに伝達される。したがって、半導体装置A1は、半導体素子10からの発熱を、効率よく放熱することができる。
【0087】
図15は、第2実施形態にかかる半導体装置A2を示している。図15は、半導体装置A2を示す平面図であって、封止部材7を想像線(二点鎖線)で示している。半導体装置A2は、半導体装置A1と比較して、支持部材2の複数の配線層22の構成が主に異なっており、これに伴い、複数の半導体素子10、複数の金属部材30、一対の入力端子51、一対の出力端子52、複数の制御端子53、複数の検出端子54、および、複数の接続部材6などの配置もそれぞれ異なっている。
【0088】
図15に示すように、支持部材2の複数の配線層22は、第1配線層22A、一対の第2配線層22B、第3配線層22C、および、第4配線層22Dを含む。よって、半導体装置A2は、半導体装置A1と異なり、第1配線層22Aが1つであり、かつ、第4配線層22Dをさらに備えている。
【0089】
第1配線層22Aは、絶縁基板21において、x2方向側、かつ、y2方向側に位置する。一対の第2配線層22Bは、絶縁基板21において、x1方向側、かつ、y1方向側に位置する。一対の第2配線層22Bは、y方向に隣接している。第3配線層22Cは、x2方向側、かつ、y1方向側に位置する。第3配線層22Cは、y方向において、第1配線層22Aの隣に位置する。第3配線層22Cと第1配線層22Aとは略同じ形状である。第4配線層22Dは、x1方向側、かつ、y2方向側に位置する。第4配線層22Dは、x方向において、第1配線層22Aの隣に位置する。第4配線層22Dは、一対の第2配線層22Bの一方と略同じ形状である。
【0090】
図15に示すように、複数の金属部材30は、第1金属部材30A、一対の第2金属部材30B、第3金属部材30C、および、第4金属部材30Dを含む。よって、半導体装置A2は、半導体装置A1と異なり、第1金属部材30Aが1つであり、かつ、第4金属部材30Dをさらに備えている。
【0091】
第1金属部材30Aは、第2接合層42によって、第1配線層22Aに接合されている。第1金属部材30Aには、2つの第1素子10Aがそれぞれ、第1接合層41によって接合されている。したがって、本実施形態においては、1つの金属部材30(第1金属部材30A)に、2つの半導体素子10(第1素子10A)が接合されている。
【0092】
一対の第2金属部材30Bはそれぞれ、第1実施形態と同様に、一対の第2素子10Bがそれぞれ、第1接合層41によって接合されている。第4金属部材30Dは、複数の半導体素子10のいずれも接合されていない。第4金属部材30Dは、複数の第1ワイヤ611および第1導通部材621が接合されている。
【0093】
半導体装置A2において、第1導通部材621は、第4金属部材30Dと一対の第2金属部材30Bの一方とに接合され、これらを導通している。
【0094】
半導体装置A2において、一対の入力端子51は、図15に示すように、x2方向側に位置する。また、一対の入力端子51は、y方向において離間しており、第1入力端子51Aがy2方向に位置し、第2入力端子51Bがy1方向に位置する。
【0095】
半導体装置A2において、第1入力端子51Aは、第2導通部材622および第1金属部材30Aを介して、各第1素子10Aの第2電極12に導通している。第2入力端子51Bは、第3導通部材623、第3金属部材30Cおよび複数の第2ワイヤ612を介して、各第2素子10Bの第1電極11に導通している。
【0096】
半導体装置A2において、一対の出力端子52は、図15に示すように、x1方向側に位置する。半導体装置A2において、y1方向側の出力端子52は、第4導通部材624および第2金属部材30Bを介して、一対の第2素子10Bの一方の第2電極12に導通するとともに、第4導通部材624、第2金属部材30B、第1導通部材621、第4金属部材30Dおよび複数の第1ワイヤ611を介して、一対の第1素子10Aの一方の第1電極11に導通している。また、y2方向側の出力端子52は、第4導通部材624および第2金属部材30Bを介して、一対の第2素子10Bの他方の第2電極12に導通するとともに、第4導通部材624、第2金属部材30Bおよび複数の第1ワイヤ611を介して、一対の第1素子10Aの他方の第1電極11に導通している。
【0097】
半導体装置A2は、一部が側面731から突き出た制御端子53と、一部が側面732から突き出た制御端子53とを備えている。一部が側面731から突き出た制御端子53は、複数の第3ワイヤ613を介して、各第1素子10Aの第3電極13にそれぞれ導通している。また、一部が側面732から突き出た制御端子53は、複数の第3ワイヤ613を介して、各第2素子10Bの第3電極13にそれぞれ導通している。本実施形態においては、2つの制御端子53を設け、一方の制御端子53が一対の第1素子10Aに対して共通であり、他方の制御端子53が一対の第2素子10Bに対して共通である場合を示すが、これに限定されない。たとえば、半導体装置A1と同様に、複数の半導体素子10(一対の第1素子10Aおよび一対の第2素子10B)にそれぞれ対応した4つの制御端子53を設けてもよい。
【0098】
半導体装置A2は、一部が側面731から突き出た検出端子54と、一部が側面732から突き出た検出端子54とを備えている。一部が側面732から突き出た検出端子54は、第4ワイヤ614を介して、一対の第1素子10Aのいずれかの第1電極11に導通している。また、一部が側面731から突き出た検出端子54は、第4ワイヤ614を介して、一対の第2素子10Bのいずれかの第1電極11に導通している。本実施形態において、2つの検出端子54を設け、一方の検出端子54が一対の第1素子10Aのいずれかに導通し、他方の検出端子54が一対の第2素子10Bのいずれかに導通している場合を示すが、これに限定されない。たとえば、半導体装置A1と同様に、複数の半導体素子10(一対の第1素子10Aおよび一対の第2素子10B)にそれぞれ対応した4つの検出端子54を設けてもよい。
【0099】
以上のように構成された半導体装置A2の作用効果は、次の通りである。
【0100】
半導体装置A2によれば、半導体素子10、支持部材2および金属部材30を備えている。半導体素子10は、第1接合層41によって、金属部材30に接合されており、金属部材30は、第2接合層42によって、支持部材2に接合されている。金属部材30は、第1金属体31と第2金属体32とを含んでおり、第1金属体31と第2金属体32との境界(界面33に相当)がある。第1金属体31は第1金属材料からなり、第2金属体32は第2金属材料からなり、第2金属材料の線膨張係数は、第1金属材料の線膨張係数よりも小さい。したがって、半導体装置A2は、半導体装置A1と同様に、金属部材30に接する第2接合層42にかかる熱応力を緩和させることができるので、第2接合層42の凝集破壊を抑制できる。つまり、半導体装置A2は、接合不良や導通不良などの製品故障の発生が抑制されるので、信頼性を向上させることができる。
【0101】
半導体装置A2によれば、その他、半導体装置A1と同一あるいは類似の構成によって、半導体装置A1と同様の効果を奏することができる。
【0102】
第1実施形態および第2実施形態では、各金属部材30が第2接合層42によって各配線層22に接合された場合を示したが、これに限定されない。たとえば、各金属部材30が第2接合層42によって絶縁基板21に接合されていてもよい。つまり、支持部材2が複数の配線層22を含んでいなくてもよい。この場合であっても、金属部材30に接する第2接合層42にかかる熱応力を緩和させることができる。
【0103】
第1実施形態および第2実施形態では、第1入力端子51Aが第2導通部材622を介して第1金属部材30Aに導通している場合を示したが、第1入力端子51Aが第1金属部材30Aに直接接合されてこれらが導通していてもよい。同様に、第2入力端子51Bが第3導通部材623を介して第3金属部材30Cに導通している場合を示したが、第2入力端子51Bが第3金属部材30Cに直接接合されてこれらが導通していてもよい。また、各出力端子52が第4導通部材624を介して各第2金属部材30Bに導通している場合を示したが、各出力端子52が各第2金属部材30Bにそれぞれ直接接合されてこれが導通していてもよい。
【0104】
図16および図17は、第3実施形態にかかる半導体装置A3を示している。図16は、半導体装置A3を示す平面図であって、封止部材7を想像線(二点鎖線)で示している。図17は、図16のXVII-XVII線に沿う断面図である。半導体装置A3は、いわゆるTO(Transistor Outline)パッケージ型である。
【0105】
支持部材2は、いわゆるリードフレームである。支持部材2の構成材料は、たとえば銅あるいは銅合金である。支持部材2は、図16および図17に示すように、ダイパッド部251、複数のインナーリード部252および複数のアウターリード部253を含む。
【0106】
ダイパッド部251は、金属部材30が接合されており、当該金属部材30を介して、半導体素子10が搭載されている。ダイパッド部251は、図16および図17に示すように、z1方向を向く面の一部が封止部材7から露出している。よって、ダイパッド部251は当該一部の面を除き、封止部材7に覆われている。
【0107】
複数のインナーリード部252はそれぞれ、ダイパッド部251から離間しており、かつ、封止部材7に覆われた部分である。各インナーリード部252には、各接続部材6の一端が接合されている。半導体装置A3における支持部材2は、2つのインナーリード部252を備えている。
【0108】
複数のアウターリード部253はそれぞれ、複数のインナーリード部252のいずれかに繋がり、かつ、封止部材7から露出した部分である。複数のアウターリード部253は、半導体装置A3の端子であり、電気製品などの配線基板に接合されうる。
【0109】
複数の接続部材6はそれぞれ、ボンディングワイヤである。なお、各接続部材6は、ボンディングワイヤの代わりに、金属リードやボンディングリボンなどを用いてもよい。半導体装置A3は、図16に示すように、2つの接続部材6を備えている。なお、接続部材6の数は、特に限定されない。図16に示すように、2つの接続部材6の一方は、半導体素子10の第3電極13と、2つのインナーリード部252の一方とに接合され、これらを導通させる。2つの接続部材6の他方は、半導体素子10の第1電極11と、2つのインナーリード部252の他方とに接合され、これらを導通させる。
【0110】
以上のように構成された半導体装置A3の作用効果は、次の通りである。
【0111】
半導体装置A3によれば、半導体素子10、支持部材2および金属部材30を備えている。半導体素子10は、第1接合層41によって、金属部材30に接合されており、金属部材30は、第2接合層42によって、支持部材2に接合されている。金属部材30は、第1金属体31と第2金属体32とを含んでおり、第1金属体31と第2金属体32との境界(界面33に相当)がある。第1金属体31は第1金属材料からなり、第2金属体32は第2金属材料からなり、第2金属材料の線膨張係数は、第1金属材料の線膨張係数よりも小さい。したがって、半導体装置A3は、半導体装置A1と同様に、金属部材30に接する第2接合層42にかかる熱応力を緩和させることができるので、第2接合層42の凝集破壊を抑制できる。つまり、半導体装置A3は、接合不良や導通不良などの製品故障の発生が抑制されるので、信頼性を向上させることができる。
【0112】
半導体装置A3によれば、その他、半導体装置A1(A2)と同一あるいは類似の構成によって、半導体装置A1(A2)と同様の効果を奏することができる。
【0113】
第3実施形態では、半導体装置A3は、いわゆるTOパッケージ型である場合を示したが、これに限定されず、SOP(Small Outline Package)、Non-Leadパッケージ、あるいは、BGA(Ball Grid Array)パッケージなど様々な形式の半導体パッケージに適用できる。
【0114】
第3実施形態では、支持部材2がリードフレームである場合を示したが、これに限定されず、インタポーザ、プリント基板、DBC(Direct Bonded Copper)基板あるいはDBA(Direct Bonded Aluminum)基板などであってもよい。
【0115】
図18は、金属部材30の変形例を示している。図18は、変形例にかかる金属部材30の断面図であって、半導体装置A1における図13に対応する。図18に示す金属部材30は、半導体装置A1~A3における各金属部材30の代わりに用いることができる。
【0116】
変形例にかかる金属部材30は、図18に示すように、第2金属体32が複数の細孔を有する多孔質体であり、この複数の細孔に第1金属体31が充填されている。よって、変形例にかかる金属部材30は、積層構造と異なる複合材である。各金属部材30における第2金属体32の含有率は、10%以上40%以下(好ましくは30%)である。図18に示す例示においては、複数の細孔はすべて、図18に表れていない部分において、第2金属体32の外方に繋がっているため、複数の細孔すべてに第1金属体31が充填されている。なお、第2金属体32の全ての細孔に、第1金属体31が充填されておらず、第1金属体31が充填されたものと、空気が充填された気孔であるものとが混在していてもよい。たとえば、第2金属体32に当該第2金属体32の外方に繋がらない細孔がある場合には、当該細孔には、第1金属体31が充填されない。
【0117】
本変形例にかかる金属部材30は、たとえば次のように形成される。まず、複数の細孔を有する多孔質体の第2金属体32を用意する。この時点では、各細孔は、気孔である。また、第2金属体32における細孔の占有率は、10%以上70%以下(好ましくは30%)である。そして、第1金属材料の融点が第2金属材料の融点よりも低い性質を利用し、固相の第2金属体32に、液相の第1金属体31を含浸させる。これにより、金属部材30は、第2金属体32の複数の細孔に、第1金属体31が充填された構造となる。
【0118】
図18に示す金属部材30を用いた場合であっても、第1金属体31と第2金属体32との境界付近において、半導体素子10の発熱に起因する金属部材30の熱ひずみが生じるため、当該境界付近の熱応力が緩和される。したがって、各金属部材30の熱膨張による熱応力を緩和させることができるので、当該金属部材30に接する第2接合層42にかかる熱応力が緩和し、当該第2接合層42の凝集破壊を抑制できる。よって、図18に示す金属部材30を用いた半導体装置においても、接合不良や導通不良などの製品故障の発生が抑制されるので、信頼性を向上させることができる。
【0119】
本開示にかかる半導体装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の半導体装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0120】
本開示にかかる半導体装置は、以下の付記に関する実施形態を含む。
[付記1]
支持部材と、
厚さ方向において離間した第1主面および第1裏面を有し、前記第1裏面が前記支持部材に対向して、前記支持部材に接合された金属部材と、
前記支持部材と前記金属部材とを接合する接合層と、
前記第1主面に対向し、前記金属部材に接合された半導体素子と、
前記支持部材、前記金属部材、前記接合層および前記半導体素子を覆う封止部材と、
を備えており、
前記金属部材は、第1金属材料からなる第1金属体および第2金属材料からなる第2金属体を含み、かつ、前記第1金属体と前記第2金属体との境界があり、
前記第2金属材料の線膨張係数は、前記第1金属材料の線膨張係数よりも小さい、半導体装置。
[付記2]
前記第1金属体は、複数の第1金属層を含み、
前記第2金属体は、複数の第2金属層を含み、
前記金属部材は、前記複数の第1金属層と前記複数の第2金属層とが、前記厚さ方向に交互に積層された積層構造をなす、付記1に記載の半導体装置。
[付記3]
前記複数の第1金属層は、前記金属部材における、前記第1主面側の表層および前記第1裏面側の表層を含む、付記2に記載の半導体装置。
[付記4]
前記複数の第1金属層の各厚さは、前記複数の第2金属層の各厚さよりも大きい、付記2または付記3に記載の半導体装置。
[付記5]
前記金属部材は、前記第1主面および前記第1裏面に挟まれ、かつ、前記第1主面および前記第1裏面に繋がる側面を有しており、さらに、前記側面から前記金属部材の内方に向かって延出するき裂が形成されている、付記2ないし付記4のいずれかに記載の半導体装置。
[付記6]
前記き裂は、互いに接する前記第1金属層と前記第2金属層との部分剥離によって、形成されている、付記5に記載の半導体装置。
[付記7]
前記き裂には、前記封止部材が充填されている、付記5または付記6に記載の半導体装置。
[付記8]
前記第1金属材料は、銅を含む、付記1ないし付記7のいずれかに記載の半導体装置。
[付記9]
前記第2金属材料は、モリブデンを含む、付記1ないし付記8のいずれかに記載の半導体装置。
[付記10]
前記支持部材は、絶縁基板を含んでおり、
前記絶縁基板は、前記厚さ方向において離間した第2主面および第2裏面を有し、かつ、前記第2主面が前記金属部材に対向する、付記1ないし付記9のいずれかに記載の半導体装置。
[付記11]
前記支持部材は、配線層をさらに含んでおり、
前記配線層は、前記厚さ方向において離間した第3主面および第3裏面を有し、かつ、前記第3裏面が前記絶縁基板に接合されており、
前記金属部材は、前記第1裏面が前記第3主面に対向して、前記配線層に接合されている、付記10に記載の半導体装置。
[付記12]
前記第2金属材料の線膨張係数は、前記第1金属材料の線膨張係数よりも、前記絶縁基板の線膨張係数に近い値である、付記10または付記11に記載の半導体装置。
[付記13]
前記絶縁基板は、構成材料がセラミックスである、付記10ないし付記12のいずれかに記載の半導体装置。
[付記14]
前記絶縁基板の裏面は、前記封止部材から露出している、付記10ないし付記13のいずれかに記載の半導体装置。
[付記15]
前記接合層は、はんだである、付記1ないし付記14のいずれかに記載の半導体装置。
[付記16]
前記半導体素子は、導電性接合材によって、前記金属部材に接合されている、付記1ないし付記15のいずれかに記載の半導体装置。
[付記17]
前記金属部材の厚さは、前記支持部材の厚さよりも大きい、付記1ないし付記16のいずれかに記載の半導体装置。
[付記18]
前記金属部材の厚さは、0.5mm以上5mm以下である、付記1ないし付記17のいずれかに記載の半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18