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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ネコ科動物用飼料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/158 20160101AFI20231128BHJP
   A23K 50/42 20160101ALI20231128BHJP
   A23K 50/48 20160101ALI20231128BHJP
【FI】
A23K20/158
A23K50/42
A23K50/48
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021544172
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 US2020015808
(87)【国際公開番号】W WO2020160216
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】19305123.2
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン フック,イングリッド
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0332686(US,A1)
【文献】国際公開第2004/075653(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/098193(WO,A1)
【文献】特表2011-505876(JP,A)
【文献】特表2010-519315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心肥大の予防および/または治療に使用される、エイコサペンタエン酸/ドコサヘキサエン酸(EPA/DHA)と炭水化物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
(a)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項2】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、請求項1記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項3】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料からなり、
前記乾燥飼料組成物が少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、請求項1または2記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項4】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項5】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、請求項1記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項6】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料からなり、
前記湿潤飼料組成物が少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項7】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、請求項1、5または6記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項8】
ネコの心肥大を予防および/または治療するための、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項9】
前記ネコが無症候性肥大型心筋症に罹患している、請求項8記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項10】
前記ネコが、LAリモデリングが見られない無症候性肥大型心筋症に罹患している、請求項8または9記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項11】
栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
(a)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項12】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、請求項11記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項13】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、請求項11または12記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項14】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、請求項11から13までのいずれか1項記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項15】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、請求項11記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項16】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、請求項11または12記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項17】
前記組成物が湿潤飼料からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、請求項11、15または16記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
【請求項18】
(a)乾燥飼料組成物からなる栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を調製するための、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と、
または
(b)湿潤飼料組成物からなる栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を調製するための、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と、
の使用であって、
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、予防および/または治療を必要とするネコ科動物において心肥大を予防および/または治療するためのものである使用。
【請求項19】
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、請求項11から17までのいずれか1項記載の組成物である、請求項18記載の使用。
【請求項20】
前記組成物が、ネコの心肥大を予防および/または治療するためのものである、請求項18または19記載の使用。
【請求項21】
前記ネコが、LAリモデリングが見られない無症候性肥大型心筋症に罹患している、請求項20記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2019年2月1日に出願された欧州特許出願第19305123.2号に対する優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
今回開示される主題は、ネコの心肥大を予防および/または治療するための栄養学的に完全な飼料組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
肥大型心筋症(HCM)はネコ、特に老ネコにおいて最もよく見られる心疾患であり、この種における心不全の最も一般的な原因である(非特許文献1、非特許文献2)。この疾患は、心筋の異常肥大または肥厚である心肥大を特徴とし得る。罹患ネコの大半が長期にわたって臨床兆候がないままであると推定されるが(無症候性肥大型心筋症またはaHCMとして知られる)、一部は鬱血性心不全および心臓死等の重篤な合併症を起こす(非特許文献3)。aHCMは、心室中隔および左室壁(LVW)の肥厚を伴う左心室の肥大、拡張期充満障害、ならびに左房拡大を特徴とする。さらに、診断は心室中隔または左室壁の最大厚さの心エコー測定に基づく(非特許文献4)。
【0004】
さらに、ネコ種全般で心機能および腎機能に密接な関係があることが知られている。aHCMおよび慢性腎臓病(CKD)の有病率がネコの年齢と共に上昇することが観察されている。したがって、aHCMの治療の適合には、無症候性か否かを問わず、CKDの可能性も考慮に入れる必要がある。
【0005】
当該技術分野で提案されている治療は、介入または薬物療法に適している可能性がある。例えば、特許文献1には、HCMによって引き起こされる症状の治療におけるトラセミドの使用が開示されている。さらに、特許文献2には、治療が満足のいくものではなく、出願時に依然として試験中ではあったが、HCMの治療のためのホスホジエステラーゼIII型阻害剤およびCa2+増感剤の使用が開示されている。aHCMのネコの治療には進展は殆ど見られていない。最近まで、軽度または中等度のaHCMのネコに対する治療効果を確立する利用可能なデータはなかった(非特許文献5)。
【0006】
更なる研究により、食餌または或る栄養素が遺伝的素因を有する個体において心筋症の表現型発現を変更し得ることが示唆されている(非特許文献6)。例えば、Freeman et al.は、市販のネコ用飼料組成物をベースとする乾燥食餌および湿潤食餌等の2種類の食餌を用いて3つの異なるネコ群(群A、BおよびC)を試験した。各群について、栄養素プロファイルおよび成分が同様の市販の乾燥および湿潤食餌を選択した。この試験を、HCMに罹患しているが、心疾患の臨床兆候がない(例えばaHCMの)ネコに対して行った。群Cは、収縮期の心室中隔厚(IVSs)、左心房(LA)径、および左心房と大動脈との比率(LA/Ao)が有意に減少し、体重も有意に減少した。それにも関わらず、群Cでは、特に拡張期の左室自由壁厚(LVWd)および拡張期の心室中隔厚(IVSd)の統計的に有意でない減少が見られた。要約すると、Freeman et al.は、aHCMの治療に対するこれらの市販の食餌のいかなる有意な効果も実証することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第2514421号明細書
【文献】国際公開第2010/060874号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Riesen et al, 2007, Schweizer Archiv fur Tierheilkunde; Vol. 149:65-71
【文献】Rush et al., 1998, Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice Nov.1998; 28:1459-1479
【文献】Fox et al., 2018, Circulation 92(9):2645-2651
【文献】Fox, 1995, Circulation 92(9):2645-2651
【文献】Fox et al., 2015, J. Vet. Cardiology, Vol. 17: S150-S158
【文献】Freeman et al. 2014, J. Vet. Intern. Med., Vol. 28: 847-856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、心肥大を予防または治療するための新規の飼料組成物が依然として必要とされている。
【0010】
心肥大、特に無症候性肥大型心筋症のネコにおいて腎臓機能に影響を及ぼさない飼料組成物が依然として必要とされている。
【0011】
心肥大、特に無症候性肥大型心筋症を有し、既存の慢性腎臓病を有しないネコにおいて腎臓機能に影響を及ぼさない飼料組成物が依然として必要とされている。
【0012】
腎臓機能に影響を及ぼさない、心肥大、特に無症候性肥大型心筋症の予防または治療のための組成物が依然として必要とされている。
【0013】
今回開示される主題は、これらの必要性の全てまたは一部を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の第1の態様は、心肥大の予防および/または治療に使用される、EPA/DHAと炭水化物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
(a)栄養学的に完全な飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物(NFE)と
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)栄養学的に完全な飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物(NFE)と
を含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に関する。
【0015】
幾つかの実施形態では、乾燥飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む。
【0016】
幾つかの実施形態では、湿潤飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、心肥大を予防および/または治療する方法に使用されるEPA/DHAと炭水化物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物において、
(a)栄養学的に完全な飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHA、
(ii)約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプン
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)栄養学的に完全な飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHA、
(ii)約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプン
を含む湿潤飼料組成物からなる。
【0018】
さらに、上記の実施形態は、心肥大を予防および/または治療する方法に使用される、EPA/DHAと炭水化物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
(a)栄養学的に完全な飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物(NFE)と
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)栄養学的に完全な飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物(NFE)と
を含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を包含する。
【0019】
幾つかの実施形態では、乾燥飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質をさらに含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、乾燥飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の範囲の量の脂肪をさらに含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、乾燥飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンをさらに含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、湿潤飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、湿潤飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質をさらに含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、湿潤飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の範囲の量の脂肪をさらに含む。
【0025】
幾つかの実施形態では、湿潤飼料である上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンをさらに含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心臓壁の肥厚を減少させるために使用される。
【0027】
幾つかの実施形態では、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、インスリン様成長因子I(IGF-I)の血中濃度を減少させるために使用される。
【0028】
幾つかの実施形態では、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心臓トロポニンI(cTnI)の血中濃度を減少させるために使用される。
【0029】
幾つかの実施形態では、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大のネコの予防および/または治療に使用される。
【0030】
幾つかの実施形態では、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大のネコの予防および/または治療に使用され、上記ネコは、無症候性肥大型心筋症に罹患し、上記ネコは、LAリモデリングが見られない無症候性肥大型心筋症に罹患している。
【0031】
幾つかの実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、ネコの予防および/または治療に使用され、上記組成物はネコ科動物の体重の大きな変化を引き起こさない。
【0032】
本開示の第2の態様は、上記および本明細書全体を通して定義される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物にさらに関する。
【0033】
本開示の第3の態様は、無症候性肥大型心筋症に罹患したネコにおいて心肥大を治療する方法であって、ネコに栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を与える工程を少なくとも含む、方法にさらに関する。
【0034】
本開示の別の態様は、無症候性肥大型心筋症に罹患したネコにおいて心肥大を治療する方法であって、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を含む給餌を推奨する工程を少なくとも含む、方法にさらに関する。
【0035】
本開示は、慢性腎臓病(CKD)を予防および/または治療する方法に使用される、EPA/DHAと、炭水化物と、タンパク質とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
(a)栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物(NFE)と、
(iii)少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質と
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物(NFE)と、
(iii)少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質と
を含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物にも関する。
【0036】
幾つかの実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物からなる。
【0037】
本開示は、aHCMに罹患したネコ、特にaHCMに罹患した老ネコにおいて慢性腎臓病を予防および/または治療する方法に使用されるEPA/DHAと、炭水化物と、タンパク質とを含む、本開示において上記される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物にも関する。
【0038】
対象となるネコは、慢性腎臓病を有していても、または有していなくてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、本開示は、少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、組成物が乾燥飼料組成物である、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に関する。
【0040】
或る特定の実施形態では、乾燥飼料組成物は、約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む。
【0041】
或る特定の実施形態では、乾燥飼料組成物は、少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む。
【0042】
或る特定の実施形態では、乾燥飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む。
【0043】
或る特定の実施形態では、乾燥飼料組成物は、約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンを含む。
【0044】
幾つかの実施形態では、本開示は、少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、組成物が湿潤飼料組成物である、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に関する。
【0045】
或る特定の実施形態では、湿潤飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む。
【0046】
或る特定の実施形態では、湿潤飼料組成物は、少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む。
【0047】
或る特定の実施形態では、湿潤飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む。
【0048】
或る特定の実施形態では、湿潤飼料組成物は、約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンを含む。
【0049】
或る実施形態では、本開示は、予防および/または治療を必要とするネコ科動物において心肥大を予防および/または治療する方法であって、ネコ科動物に栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を提供する工程を含む、方法を提供する。
【0050】
或る特定の実施形態では、ネコ科動物はネコである。
【0051】
或る特定の実施形態では、ネコは無症候性肥大型心筋症に罹患している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示は、心肥大の治療および/または予防のための栄養飼料製品を提供する。或る実施形態では、本明細書に開示される栄養飼料製品は、ネコ科の動物、特にネコにおける無症候性肥大型心筋症(aHCM)の治療および/または予防に使用することができる。本明細書に開示される栄養製品は、心臓壁の肥厚の進行に作用し、良好な栄養状態(体重およびボディコンディションスコア(BCS))を維持しながら自然発症心疾患を制限することが可能である。或る実施形態では、本明細書で提供される栄養製品はネコ、特に高齢ネコにおいて適切な腎臓機能を維持することが可能である。或る実施形態では、栄養製品は、慢性腎臓病(CKD)の有無に関わらず、aHCMを有するネコにおける腎臓機能に影響を及ぼさないことが可能である。
【0053】
今回開示される主題は、多量のEPA/DHAと中程度の量の可溶無窒素物とを含む、湿潤または乾燥形態で利用可能な栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を提供することによって達成された。本明細書の実施例に示されるように、かかる栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大のネコ、特にaHCMに罹患しているネコに提供した場合に、耐容性良好であり、心臓壁、特に心室中隔(IVS)および左室壁(LVW)の肥厚を顕著に減少させる。
【0054】
本明細書の実施例に示されるように、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大を起こしているネコ科の動物において心臓壁の厚さの低減をもたらす。或る実施形態では、本明細書で示されるように、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大を伴う疾患の初期段階のネコ科の動物を含む、心肥大を起こしやすいネコ科動物において心室中隔および左室壁の厚さの低減をもたらす。特に、本明細書に開示される栄養学的に完全な食餌は、ネコ科の動物においてaHCMの初期段階、すなわち無症候のHCMの段階で心肥大を低減することが示された。
【0055】
本明細書に開示される栄養学的に完全な飼料組成物の予期せぬ有益な効果は、(i)心拍の調節、(ii)循環トロポニン-Iのレベルの低下、(iii)インスリンの平均レベルの変化を引き起こさないインスリンのピークの低下、(iv)腎臓機能に対して有害な影響がないこと、および(v)循環IGF-1のレベルの低下によっても説明され、これらの有益な効果は心肥大、すなわちHCM、特にaHCMに起因する心筋の変化の回復を意味する。
【0056】
実施例に示されるような或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、左心房(LA)のリモデリングがない場合の心臓壁の厚さの増大、特に心室中隔および左室壁の厚さの増大が見られるネコ科の動物における様々な上記の有益な効果の誘導によって説明されるように、HCMのごく初期段階を含む心肥大のごく初期段階で作用する。
【0057】
下記実施例に提示されるように、驚くべきこと、また有利なことに、多量のタンパク質を含む飼料組成物が一般にCKDの転帰の悪化を伴うにも関わらず、本開示の栄養学的に完全な飼料組成物がaHCMのネコにおいて腎機能に影響を及ぼさないことが見出された。
【0058】
本開示は、多量のEPA/DHAと、中程度の量の可溶無窒素物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物にも関する。かかる組成物は動物、より詳細にはaHCMに罹患した動物における心肥大の治療または予防に有用である。或る実施形態では、動物はネコ科動物である。或る実施形態では、動物はネコである。本開示の栄養学的に完全な飼料組成物は、aHCMに罹患したネコ科動物を含む心肥大のネコ科動物を治療する方法に使用することもできる。或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全な飼料組成物は、乾燥ネコ科動物用飼料組成物である。或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全な飼料製品は、乾燥ネコ用飼料組成物である。或る他の実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、湿潤飼料組成物である。或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全な飼料組成物は、湿潤ネコ用飼料組成物である。
【0059】
或る実施形態では、本開示は、心肥大の予防および/または治療に使用される、少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物(NFE)とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に関する。
【0060】
或る実施形態では、本開示は、EPA/DHAと炭水化物とを含み、EPA/DHAが少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量で存在し、可溶無窒素物が約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量で存在する、栄養学的に完全な乾燥ネコ科動物用飼料組成物、ならびに心肥大の予防および/または治療へのその使用に関する。
【0061】
或る実施形態では、本開示は、EPA/DHAと炭水化物とを含み、EPA/DHAが少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量で存在し、可溶無窒素物が約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量で存在する、栄養学的に完全な湿潤ネコ科動物用飼料組成物、ならびに心肥大の予防および/または治療へのその使用に関する。
【0062】
或る実施形態では、本開示は、EPA/DHAと炭水化物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物、ならびに心肥大の予防および/または治療へのその使用に関し、ここで、栄養学的に完全な飼料組成物は、少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む乾燥飼料組成物を含むか、または栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む湿潤飼料組成物を含む。
【0063】
定義
本明細書に使用される用語は概して、本開示の文脈内で、また各用語が使用される特定の文脈において、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。或る用語は、以下または本明細書の他の部分で論考され、本開示の組成物および方法、ならびにそれらを作製および使用する方法を説明する付加的な指針を与える。
【0064】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の指示がない限り、複数の指示対象を含む。このため、例えば「化合物(a compound)」への言及は、化合物の混合物を含む。
【0065】
「約」または「およそ」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者によって決定される特定の値について許容可能な誤差範囲内を意味し、これは値を測定または決定する方法、すなわち測定システムの限界に一部依存する。例えば、当該技術分野における慣例によると、「約」は3または4以上の標準偏差内を意味し得る。代替的には、「約」は所与の値の最大10%、より好ましくは最大5%、さらにより好ましくは最大1%の範囲を意味し得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、「動物」または「ペット」という用語は、例えば家畜または野生動物を指すために使用される場合がある。或る実施形態では、これらの用語は、ネコまたはネコ科動物を指すこともある。
【0067】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」という用語またはその任意の他の変化形は、非排他的包含を対象にすることを意図し、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、これらの要素だけでなく、明示的に列挙されない、またはかかるプロセス、方法、物品もしくは装置に固有の他の要素を含んでいてもよい。
【0068】
本明細書における詳細な説明では、「実施形態(embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「一実施形態」、「様々な実施形態では」等への言及は、記載の実施形態が特定の特徴、構造または特性を含み得るが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造または特性を含むわけではないことを示す。さらに、かかる語句は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性が実施形態に関連して記載される場合、明示的に記載されているか否かを問わず、かかる特徴、構造または特性を他の実施形態に関連して用いることは当業者の知識の範囲内であると考えられる。本明細書を読むことで、代替的な実施形態において本開示を実施する方法が当業者には明らかとなる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「EPA/DHA」という用語は、(i)エイコサペンタエン酸(EPA)のみ、(ii)ドコサヘキサエン酸(DHA)のみ、または(iii)エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸との組合せ(EPA+DHA)からなる脂肪酸または脂肪酸の混合物を意味する。
【0070】
本明細書で使用される場合、重量/Mcal(約4.18MJ)として表される構成成分の量は、全飼料組成物の代謝エネルギー(ME)単位当たりの上記構成成分の重量での量を指す。代謝エネルギーは、標準方法に従い、特に2017年7月付の欧州規格EN 16967(ICS.65.120)に準拠して従来通りに決定することができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「飼料組成物」または「食餌」という用語は、成長、修復および生命維持プロセスを持続させ、エネルギーを供給するために生物の体内で使用される、タンパク質、炭水化物および/または脂肪を含有する物質を指す。飼料は、補助物質または添加物、例えばミネラル、ビタミンおよび調味料も含有し得る(Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, 10th Edition, 1993を参照されたい)。特定の実施形態では、本開示によるネコ科動物用飼料組成物は、完全かつバランスの取れた栄養所要量をネコ科の動物、特にネコに与える栄養学的に完全な飼料組成物からなる。このため、本明細書に記載される飼料組成物は、上記ネコ科の動物、例えば上記ネコに唯一の飼料として与えることができ、付加的な飼料(水を除く)なしに生命を維持することが可能な栄養学的に十分な餌である完全なネコ科動物用飼料、例えば完全なネコ用飼料である。さらに、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、ネコ科動物、すなわちネコの体重および/またはさらにはボディコンディションスコア(BCS)に著しい変化を引き起こさない。飼料組成物は担体、希釈剤または賦形剤を含有し得る。使用目的に応じて、担体、希釈剤または賦形剤は、動物への使用、特にネコ等のネコ科の動物への使用に適しているように選ぶことができる。
【0072】
実例として、本明細書に記載される栄養学的に完全な飼料組成物は、限定されるものではないが、穀類および植物性タンパク質抽出物、繊維、油および脂肪、タンパク質、チコリーパルプ、酵母およびその一部、ミネラル、ビタミン、保存料、酸化防止剤、水、アルギニン、ナトリウムを含み得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「乾燥飼料」、「湿潤飼料」および「半湿潤飼料」という用語は、ネコ科の動物がその食餌中で摂取する任意の製品を包含する栄養学的に完全なネコ科動物用飼料製品を意味する。或る実施形態では、ネコ科動物用飼料製品は調理済みの製品である。製品は、肉または動物由来の材料(例えば牛肉、鶏肉、七面鳥の肉、ラム肉、魚肉、血漿、髄入りの骨等、またはそれらの1つ以上)を含み得る。製品は、代替的には、タンパク質源を提供するために肉が使われていなくてもよい(或る実施形態では、ダイズ、トウモロコシグルテンまたはダイズ製品等の肉代用品を含み得る)。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ネコ科動物」という用語は、チーター、ピューマ、ジャガー、レパード、ライオン、オオヤマネコ、ライガー、トラ、パンサー、ボブキャット、オセロット、スミロドン、カラカル、サーバルおよびネコを含む群で選択される動物、例えば高齢ペット動物を含むペット動物を包含する。本明細書で使用される場合、ネコは、野良ネコおよび家ネコを包含する。特定の実施形態では、ネコは家ネコである。より具体的な実施形態では、ネコは老ネコである。
【0075】
本明細書で使用される場合、「心肥大」は、心臓への慢性ストレスおよびストレスの増加による心筋細胞の大きさの増大および細胞外基質等の他の心筋構成要素の変化に起因する心筋の異常肥大または肥厚に関する。心肥大は、心室中隔および左室壁の肥厚を伴う左心室の肥大を特徴とするHCMを包含する。肥大が軽度かつ限局性である場合、ネコは長期間にわたって無症状のままである可能性がある(aHCM)。しかしながら、肥大が重度の場合、心室の拡張が困難となり、左心充満圧の上昇および左心房の拡張(圧力の上昇に応答したLAリモデリング)が見られる。ネコにおけるHCMは、全身性高血圧または流出障害による圧負荷に続発するだけでなく、甲状腺機能亢進症および高ソマトトロピン分泌症/末端肥大症の場合のようなホルモン刺激に続発する可能性がある。
【0076】
本開示によると、HCMはaHCMを包含する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「慢性腎臓病」(CKD)は、腎臓機能が数ヶ月から数年にわたって徐々に失われる一種の腎疾患に関する。初めは一般に無症状である。合併症は、心疾患のリスクの増大を含み得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、有意な変化または差または減少または増加は、試験パラメーター、例えば、限定されるものではないが、表8の試験パラメーターの再現性がある(p値<0.05)、すなわち一貫して観察される変化または差または減少または増加である。p値の測定は、利用可能な値および実験条件に応じて当業者に既知である。
【0079】
本明細書で使用される場合、有意でない変化または差または減少は、試験パラメーター、例えば、限定されるものではないが、表8の試験パラメーターの再現性がない(p値>0.05)、すなわち一貫して観察されない変化または差または減少である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「提供する」という用語は、販売、供給、投与または給餌することを指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、所与の生理的機能に関して「影響を及ぼさない」とは、この生理的機能およびその状態を定義するパラメーターが、任意の補助治療の有無に関わらず、経時的に有意に変化しないことを意味すると意図される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」または「質量%」または「重量による」という用語は、(i)組成物の総重量に対するパーセンテージとしての組成物中の構成要素/構成成分の重量による量、または(ii)最終物または製品の重量に対するパーセンテージとしての材料中の構成要素/構成成分の重量による量のいずれかを指すことを意図する。
【0083】
飼料組成物
本開示の飼料組成物は、広範な構成成分を含み得る。本開示の飼料組成物中に組み込むことができる構成成分の非限定的な例を以下に列挙する。
【0084】
EPA/DHA
或る実施形態では、組成物は、エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸を含み得る。本明細書で使用される場合、「EPA/DHA」という用語は、(i)エイコサペンタエン酸(EPA)のみ、(ii)ドコサヘキサエン酸(DHA)のみ、または(iii)エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸との組合せ(EPA+DHA)からなる脂肪酸または脂肪酸の混合物を意味する。このため、「EPA/DHA」の量は、以下のいずれかを意味し得る:(i)DHAの非存在下でのEPAの量、(ii)EPAの非存在下でのDHAの量、または(iii)EPAとDHAとの組合せの量。
【0085】
したがって、本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、EPAまたはDHAまたはEPAとDHAとの組合せを、全飼料組成物の代謝エネルギー単位当たりの指定のEPA/DHA重量での量で含む。
【0086】
本開示の或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料が「Xg/Mcal(約4.18MJ)」のEPA/DHAを含む場合、ネコ科動物用飼料は、Xg/Mcal(約4.18MJ)のEPAを含んでいてもよく、DHAを含まない。これらの実施形態によると、Xg/Mcal(約4.18MJ)のEPA/DHAは、DHAがない状態のXg/Mcal(約4.18MJ)のEPAに相当する。
【0087】
本開示の或る他の実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、「Xg/Mcal(約4.18MJ)」のEPA/DHAを含み、ネコ科動物用飼料は、Xg/Mcal(約4.18MJ)のDHAを含んでいてもよく、EPAを含まない。これらの他の実施形態によると、Xmg/Mcal(約4.18MJ)のEPA/DHAは、EPAがない状態のXmg/Mcal(約4.18MJ)のDHAに相当する。
【0088】
本開示の或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、「Xg/Mcal(約4.18MJ)」のEPA/DHAを含み、ネコ科動物用飼料は、Xg/Mcal(約4.18MJ)のEPAとDHAとの組合せを含んでいてもよい。これらの実施形態によると、EPAおよびDHAの両方が組成物中に存在する。さらに、これらの実施形態では、EPA/DHAの組合せ中に存在するEPAおよびDHAのそれぞれの量に関して特定の要件はない。例えば、限定を目的とするものではないが、EPAとDHAとの重量/エネルギー比は、約0.0001~約1000の範囲であり得る。
【0089】
EPA/DHAを含有する混合物の特性は、これまで幾つかの文献に、例えば血栓症の治療において、高コレステロール血症において、心筋虚血において(国際公開第87/03899号)、動脈硬化の予防において、脳梗塞において、脂質異常症において、心筋梗塞において(欧州特許出願公開第0228314号明細書)、アテローム性動脈硬化症の予防法において、抗血栓薬として、抗高血圧薬として(特開昭62091188号公報)、血栓症病理学において、血小板凝集において、自己免疫症候群において、急性および慢性炎症において、アテローム性動脈硬化症において、心筋梗塞、静脈血栓症において、脂質異常症状態において、高血圧において、血管運動攣縮に起因する病変および閉塞において、糖尿病において(国際公開第87/02247号)、非ステロイド抗炎症剤の副作用の予防において(欧州特許出願公開第0195570号明細書)、糖尿病合併症の予防法および管理において(特開昭60-248610号公報)、高コレステロール血症において、高トリグリセリド血症において(独国特許出願公開第3438630号明細書)、抗凝固薬として、高コレステロール血症において(ベルギー国特許発明第899184号明細書)、記載されている。
【0090】
或る実施形態では、EPA/DHAは、本開示の乾燥飼料組成物中に少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量で存在する。或る実施形態では、EPA/DHAは、本開示の湿潤飼料組成物中に少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約1.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約2.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約2.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約3.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約3.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約4.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約4.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約5.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約5.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約6.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約6.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約7.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約7.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約8.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約8.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約9.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約9.5g/Mcal(約4.18MJ)または少なくとも約10g/Mcal(約4.18MJ)の量で存在する。
【0091】
或る実施形態では、EPA/DHAは、湿潤飼料組成物中に少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量で存在する。或る実施形態では、EPA/DHAは、湿潤飼料組成物中に少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約1.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約2.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約2.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約3.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約3.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約4.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約4.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約5.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約5.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約6.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約6.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約7.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約7.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約8.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約8.5g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約9.0g/Mcal(約4.18MJ)、少なくとも約9.5g/Mcal(約4.18MJ)または少なくとも約10g/Mcal(約4.18MJ)の量で存在する。
【0092】
可溶無窒素物(NFE)
或る実施形態では、組成物は可溶無窒素物(NFE)を含み得る。本明細書で使用される場合、当該技術分野で既知のように、NFEは可溶性炭水化物画分を含む。本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、NFEを含む。
【0093】
NFEは、今回開示される主題の飼料組成物中に存在する場合に広範な可溶性多糖、デンプン、ゴム、粘液およびペクチンを包含し得る。当該技術分野で従来既知のように、NFEは、幾つかの実施形態では上記飼料組成物中に存在し得る粗繊維物質に含まれる不溶性炭水化物画分を含まない。
【0094】
通例、飼料組成物中のNFEの量は、上記飼料組成物の全乾物量から他の構成成分(タンパク質、脂肪、粗繊維、灰分)の各々の含有量を減算することによって決定される。
【0095】
或る実施形態では、飼料組成物の定性的および定量的特徴がエネルギー密度(例えば、g/Mcal(約4.18MJ)単位の代謝エネルギー密度)として表される場合、NFE含有量は、全飼料組成物のエネルギー値から他の構成成分(タンパク質、脂肪、粗繊維、灰分)の各々のエネルギー値を減算することによって決定される。
【0096】
或る実施形態では、飼料組成物の定性的および定量的特徴が重量百分率(例えば、上記組成物の乾物の総重量ベースの重量百分率)として表される場合、NFE含有量は、上記飼料組成物の総重量から他の構成成分(タンパク質、脂肪、粗繊維、灰分)の重量百分率を減算することによって決定される。
【0097】
或る実施形態では、NFEは、本開示の乾燥飼料組成物中に約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量で存在する。或る実施形態では、NFEは、本開示の乾燥飼料組成物中に約60g/Mcal(約4.18MJ)以下、約55g/Mcal(約4.18MJ)以下、約50g/Mcal(約4.18MJ)以下、約45g/Mcal(約4.18MJ)以下、約40g/Mcal(約4.18MJ)以下、約35g/Mcal(約4.18MJ)以下、約30g/Mcal(約4.18MJ)以下、約25g/Mcal(約4.18MJ)以下、約20g/Mcal(約4.18MJ)以下、約15g/Mcal(約4.18MJ)以下または約10g/Mcal(約4.18MJ)以下の量で存在する。
【0098】
或る実施形態では、NFEは、本開示の湿潤飼料組成物中に約35g/Mcal(約4.18MJ)以下、約30g/Mcal(約4.18MJ)以下、約25g/Mcal(約4.18MJ)以下、約20g/Mcal(約4.18MJ)以下、約15g/Mcal(約4.18MJ)以下または約10g/Mcal(約4.18MJ)以下の量で存在する。
【0099】
炭水化物
或る実施形態では、組成物は炭水化物を含み得る。本明細書で使用される場合、「炭水化物」という用語は、体内で加水分解されてエネルギーのために代謝される多糖および糖の混合物を意味する。飼料組成物中の炭水化物含有量は、当業者に既知の様々な方法によって決定することができる。炭水化物は、デンプン(あらゆる種類、トウモロコシ、小麦、大麦等)、ビートパルプ(少量の糖を含有する)、およびオオバコを含む当業者に既知の様々な炭水化物源のいずれかの形態で供給され得る。
【0100】
デンプン
本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に含まれる可溶無窒素物の重要な供給源は、デンプンからなる。広範なデンプンが本開示の組成物への使用に適していることが当業者には理解される。
【0101】
或る実施形態では、「デンプン」という用語は、本明細書で使用される場合、アミロースおよびアミロペクチンから構成される多糖を指す。デンプンは、植物源に応じて、通常は直径1~100μmの顆粒として多くの植物組織に見られる。化学的には、デンプンは、α-D(1-4)結合および/またはα-D(1-6)結合によって結合したα-D-グルコピラノシル単位から構成され、およそ1000個のα-D(1-4)結合したグルコースからなる直鎖ポリグルカンであるアミロース、および分岐がα-D(1-6)結合として生じる、およそ4000個のグルコース単位(unite)からなる分岐グルカンであるアミロペクチンの2つの分子型からなる多糖である。
【0102】
本明細書で使用される場合、デンプンは、異なる割合のアミロペクチンを含有するA型、B型およびC型デンプンの様々な結晶構造を包含する。A型デンプンは、主に穀類に見られ、B型デンプンは、主に塊茎およびアミロースに富んだデンプンに見られる。C型デンプンは、A型およびB型の両方の混合物からなり、主にマメ科植物に見られる。
【0103】
概して、可消化デンプンは、小腸において酵素であるα-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびスクロースイソマルターゼによって分解(加水分解)され、遊離グルコースを生じ、これが続いて吸収される。
【0104】
本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料に含まれるデンプンは、食餌目的に適した任意のデンプンであり得る。
【0105】
実際に、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物の調製に使用される出発物質に含まれる天然デンプンは、製造プロセス中に変化を起こしやすい。しかしながら、製造方法に用いられる条件(例えば乾燥、湿潤または半湿潤)に関わらず、ひいてはプロセス中にデンプンが起こす可能性がある物理化学的変化に関わらずに、得られる最終ネコ科動物用飼料製品が、肥大型心筋症(HCM)を含む心筋症、特に無症候性HCMに対するその有益な効果を完全に発揮することが本明細書に示される。
【0106】
本開示に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に含まれるデンプンの指定の量は、上記飼料組成物の作製のために供給される原料の総量に含まれるデンプンの量からなる。
【0107】
また、本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に含まれるデンプンの量は、上記ネコ科動物用飼料組成物の調製に使用される出発物質に含まれるデンプンの総量に等しい。
【0108】
予め既知でない場合、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物の調製に使用される出発物質のデンプン含有量は、当該技術分野で既知の従来の手法に従い、特に既知の偏光法に従い、例えばNF EN ISO 10520に準拠して決定することができる。
【0109】
出発物質が加工デンプンまたはプレゼラチン化(pre-gelatinized)デンプンも含み得る、或る実施形態では、デンプン含有量をNF EN ISO 15914に準拠して決定することもできる。
【0110】
本開示は、EPA/DHAと可溶無窒素物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を提供する。本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、多量のEPA/DHAと、中程度の量の可溶無窒素物とを含む。栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は湿潤飼料製品、半湿潤飼料製品または乾燥飼料製品を含み得る。中程度の量の可溶無窒素物と共に多量のEPA/DHAを含む乾燥または湿潤飼料組成物が、心肥大のネコ科の動物、特にHCMまたはaHCMに罹患しているネコにおいて心臓壁の肥厚、特に心室中隔(IVS)の肥厚、より詳細には拡張末期に測定される心室中隔(IVSd)、および左室壁(LVW)、より詳細には拡張末期に測定される左室壁(LVWd)の肥厚を減少させることが本明細書に示される。
【0111】
タンパク質
或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、多量のタンパク質を含み得る。本開示による組成物のタンパク質含有量は、除脂肪体重の維持を確実にするために十分に高くすることができる。本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、タンパク質の1つ以上の異なる供給源を含有し得る。概して、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、製造プロセスに使用することができるタンパク質源に含まれる複数のタンパク質を含む。或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に含まれるタンパク質は、天然形態である。或る他の実施形態では、タンパク質は、ほぼ完全に加水分解されたタンパク質を含む、少なくとも部分的に加水分解された形態で存在していてもよい。或る実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、タンパク質を肉または動物由来の材料、例えば牛肉、鶏肉、七面鳥の肉、ラム肉、魚肉、血漿、骨髄等、またはそれらの1つ以上の形態で含み得る。或る他の実施形態では、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、肉が使われていなくてもよく、タンパク質源を提供するためにダイズ、トウモロコシグルテン、または任意の他のタンパク質含有ダイズ製品等の肉代用品タンパク質源を含み得る。或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、ダイズタンパク質濃縮物、乳タンパク質、グルテン等の付加的なタンパク質源を含み得る。
【0112】
脂肪
或る実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、栄養学的に適切な量の脂肪をさらに含有し得る。
【0113】
本明細書で使用される「脂肪」という表現は、室温でのそれらの粘稠度に関わらず、すなわち、上記「脂肪」が本質的に流体の形態で存在するか、または本質的に固体の形態で存在するかに関わらず、任意の飼料に許容可能な脂肪および/または油を含む。本開示による組成物は、動物および/または植物由来の脂肪を含み得る。脂肪は、当業者に既知の様々な供給源のいずれかによって供給することができる。植物脂肪源としては、限定されるものではないが、小麦、ヒマワリ、サフラワー、菜種、オリーブ、ルリジサ、亜麻仁、ラッカセイ、ブラックカラント種子、綿実、小麦胚芽、トウモロコシ胚芽、ならびにこれらおよび他の植物脂肪源に由来する油が挙げられる。動物源としては、例えば、限定されるものではないが、鶏脂、七面鳥の脂、牛脂、鴨脂、豚脂、ラム脂等、魚油、または任意の肉、肉副産物、水産物、乳製品、卵等が挙げられる。飼料の脂肪含有量は、当業者に既知の様々な方法によって決定することができる。
【0114】
アルギニン
本開示の或る実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、ネコ科動物の健康を維持するのに十分な量のアルギニンをさらに含み得る。アルギニンは、ネコに必須の栄養素である。具体的には、アルギニンは、食餌性アルギニンを含まない1回の食餌が死をもたらす可能性があるほど重要な栄養素の唯一の例である。一方で、高レベルのアルギニンは、一酸化窒素(NO)に異化される可能性があり、炎症を引き起こす恐れがある。容易に理解されるように、アルギニンは一般に、完全なネコ科動物用飼料に含まれるタンパク質に含有される。このため、殆どの実施形態では、アルギニンは、本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料のアルギニン量の要件を満たすための特定のサプリメントとしては添加されない。
【0115】
ナトリウム
本開示の或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、ナトリウム(Na)を含む。特定の実施形態では、少量のナトリウムを使用する。ナトリウムは、生命に不可欠なミネラルである。ナトリウムは、血液中および細胞周囲の流体中に見られ、細胞環境を維持し、細胞の腫脹または脱水を防ぐ。ナトリウムは、適切な神経および筋細胞の機能を維持するのにも重要である。したがって、ネコ用飼料中の特定のナトリウム量が健常なネコに適切である。ネコ科動物用飼料組成物中のナトリウム含有量は、エネルギー、他のミネラル、ビタミン、脂肪、タンパク質および炭水化物と適切な割合でバランスを取ることができる。ナトリウム源としては、例えば、限定されるものではないが、肉、家禽肉、魚肉および卵等が挙げられる。ナトリウム源は、食塩の形態であってもよい。
【0116】
繊維
本開示の或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、1つ以上の食物繊維を含む。
【0117】
本明細書で使用される場合、「繊維」という用語は、「食物繊維」と同様であり、本開示の目的上、可溶性繊維および不溶性繊維を含むことを意味する全繊維として解釈されるものとする。小腸での消化および吸収に耐性があり、かつ大腸での発酵に耐性がある非デンプン性多糖として定義され得る不溶性繊維とは対照的に、可溶性繊維は、小腸での消化および吸収に耐性があり、大腸で完全または部分的な発酵を受けると定義され得る。可溶性繊維は、短鎖脂肪酸をエネルギーの供給源として結腸細胞に提供することによってプレバイオティクス効果を有すると考えられる。不溶性繊維は、輸送効果および安定(ballast)効果に有用と考えられる。
【0118】
繊維の非限定的な例としては、ビートパルプ、グアーガム、チコリー根、オオバコ、ペクチン、ブルーベリー、クランベリー、カボチャ、リンゴ、オート麦、豆類、柑橘類、大麦、エンドウまたはそれらの組合せを含む第1の群、およびセルロース、全粒小麦製品、小麦、オート麦、トウモロコシふすま、亜麻仁、ブドウ、セロリ、サヤマメ、カリフラワー、ジャガイモの皮、果物の皮、野菜の皮、ラッカセイの殻、ダイズ繊維またはそれらの組合せを含む第2の群が挙げられる。特定の実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、チコリーパルプまたはセルロースを含む。
【0119】
或る非限定的な実施形態では、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、乾物の総重量ベースで少なくとも約0.5重量%の量の繊維を含み得る。
【0120】
本明細書において表示される重量百分率は、他の表示がない限り、飼料組成物の乾物の総重量に対する重量によるものである。
【0121】
他の成分
或る実施形態では、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、補助物質または添加物、例えばミネラル、ビタミンおよび調味料も含有し得る(Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, 10th Edition, 1993を参照されたい)。
【0122】
或る実施形態では、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、灰分を含み得る。灰分は、カルシウム、リン、ナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウムまたはそれらの組合せ等のミネラルを含み得る。灰分含有量は、本明細書に記載されるネコ科動物用飼料組成物の分析的測定の結果として指定される場合、それに含まれるミネラルの総量の尺度となる。ミネラル含有量は、それに含まれる特定の無機構成成分の量の尺度となり、これはカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)および塩素(Cl)を含む。
【0123】
容易に理解されるように、本開示に包含される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物の全ての実施形態が、各々が栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物の乾物の総重量と比較して所与の重量百分率で上記組成物に含まれる様々な成分を含む。
【0124】
或る実施形態では、本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、タンパク質、炭水化物、脂肪、EPA/DHAの1つ以上の供給源、任意に繊維、および任意にビタミン、ミネラル等の1つ以上の更なる成分を含み、それに含まれる各々の成分の重量の総和は、上記ネコ科動物用飼料組成物の乾物の総重量ベースで100重量%となる。
【0125】
乾燥飼料組成物
或る実施形態では、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む乾燥飼料組成物を含む。
【0126】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約0.6g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAを含む。
【0127】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、非常に高いEPA/DHAの量、例えば約10g/Mcal(約4.18MJ)よりも高いEPA/DHAの量は、血小板に対する抗凝集作用による止血変化(hemostatic alterations)、ビタミンE欠乏症、脂質過酸化および軽度の下痢を含み得る潜在的悪影響を引き起こす恐れがあると理解される。
【0128】
或る実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物中に存在する可溶無窒素物の量は、少なくとも約1g/Mcal(約4.18MJ)である。
【0129】
デンプンは、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物に含まれる可溶無窒素物の供給源の1つである。
【0130】
或る実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む。
【0131】
或る実施形態では、デンプンは穀類源から提供される。デンプンの供給源の或る非限定的な実施形態は、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ(maize (corn))、米およびキャッサバのような主要飼料を包含する。
【0132】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む。
【0133】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約125g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む。
【0134】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の範囲の量の脂肪を含む。
【0135】
或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約30g/Mcal(約4.18MJ)~約40g/Mcal(約4.18MJ)または約30g/Mcal(約4.18MJ)~約35g/Mcal(約4.18MJ)の範囲の量の脂肪を含む。
【0136】
或る非限定的な実施形態では、乾燥飼料組成物は、約35g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む。
【0137】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンを含む。
【0138】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約8g/Mcal(約4.18MJ)の量のアルギニンを含む。
【0139】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約0.7g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のナトリウム(Na)を含む。或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約0.68g/Mcal(約4.18MJ)の量のナトリウムを含む。
【0140】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物中のナトリウムの量は、少なくとも約0.19g/Mcal(約4.18MJ)である。
【0141】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、大麦、オオバコおよびその誘導体、デンプン、ならびに天然小麦グルテンからなる群から選択される1つ以上の構成成分を含む。
【0142】
例示的な実施形態によると、栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、(i)少なくとも約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の大麦、(ii)少なくとも約3.50g/Mcal(約4.18MJ)の量のオオバコおよびその誘導体、(iii)約40g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプン、(iv)少なくとも約50g/Mcal(約4.18MJ)の量の天然小麦グルテン、ならびに(v)それらの組合せからなる群から選択される1つ以上の構成成分を含む。
【0143】
大麦は2種類あり、その花穂上の花の列数によって区別される。二条大麦は、穀粒をつける中央の小花と、通常は不稔である外側の小花とを有する。六条大麦は、より高いタンパク質含有量を有し、動物用飼料により適しており、二条大麦は、より高い糖含有量を有するため、麦芽製造により一般に使用される。
【0144】
本明細書で使用される場合、「オオバコおよびその誘導体」は、プランタゴ・サイリウム(Plantago psyllium)という名の植物およびその誘導体、例えばオオバコ外皮を指す。
【0145】
本明細書で使用される場合、「天然小麦グルテン」は、小麦に由来する非変性炭水化物成分を指す。
【0146】
従来認められているように、ペット用乾燥飼料は、押出工程に続く乾燥工程を含むプロセスの最終生成物である。
【0147】
或る実施形態では、本開示による栄養学的に完全な乾燥ネコ科動物用飼料は、最大でも約12%の含水率を有する。幾つかの実施形態では、上記乾燥ネコ科動物用飼料は、約7%以下、例えば約5%の含水率を有する。或る非限定的な実施形態では、栄養学的に完全な乾燥ネコ科動物用飼料は、約3%超の含水率を有する。約5.5%の含水率を有する栄養学的に完全な乾燥ネコ科動物用飼料を実施例に示す。具体的には、乾燥飼料組成物は約10%未満の水分を有し得る。
【0148】
或る実施形態では、乾燥飼料製品はキッブル(kibble)の形態をとる。キッブルの非限定的な例としては、粒状物、ペレット、ペット用飼料の小片、脱水肉、代替肉、野菜およびそれらの組合せ、ならびに肉または野菜のジャーキー、ローハイド(rawhide)およびビスケット等のペット用スナックが挙げられる。
【0149】
本開示の栄養学的に完全な乾燥ネコ科動物用飼料組成物は、成分を混合し、それらを混練して、加熱調理され得る粘稠性のドウ(consistent dough)を作製することによって製造することができる。乾燥ペット用飼料を作製するプロセスは、通常は焼成および/または押出によって行われる。ドウを通例、成分の加熱調理に加圧蒸気または熱水を用いるエキスパンダーおよび/または押出機と呼ばれる機械に投入する。押出機内でドウは超高圧および高温を受ける。次いで、ドウをダイ(特定のサイズおよび形状の穴)に押し通した後、ナイフを用いて切断する。膨らんだドウ片を乾燥機に通し、摂取されるまでの飼料の安定性を確実にする規定の目標値まで水分を低下させることでキッブルにする。次いで、キッブルに脂肪、油、ミネラル、ビタミン、天然抽出物のカクテルを噴霧し、任意にパッケージに密封することができる。
【0150】
或る実施形態では、栄養学的に完全な乾燥ネコ科動物用飼料組成物をパッケージングする。このようにして、消費者はパッケージから飼料製品中の成分を特定し、それが対象となる特定のペットに適しているか確認することができる。或る実施形態では、パッケージは金属、プラスチック、紙またはカードであり得る。
【0151】
湿潤飼料組成物
或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全な飼料組成物は、(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む湿潤飼料組成物である。
【0152】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約1.8g/Mcal(約4.18MJ)のEPA/DHAを含む。
【0153】
非常に高いEPA/DHAの量、例えば10g/Mcal(約4.18MJ)よりも高いEPA/DHAの量が血小板に対する抗凝集作用による止血変化(hemostatic alterations)、ビタミンE欠乏症、脂質過酸化および軽度の下痢を含み得る潜在的悪影響を引き起こす恐れがあることが提唱される。
【0154】
特定の実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物中に存在する可溶無窒素物の量は、約32g/Mcal(約4.18MJ)である。
【0155】
特定の実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物中に存在する可溶無窒素物の量は、少なくとも約1g/Mcal(約4.18MJ)である。
【0156】
デンプンは、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物に含まれる可溶無窒素物の供給源の1つである。
【0157】
或る特定の実施形態では、本開示による栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む。
【0158】
或る実施形態では、デンプンは穀類源から提供される。デンプンの供給源の或る非限定的な実施形態は、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ、米およびキャッサバのような主要飼料を包含する。
【0159】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む。
【0160】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約133g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む。
【0161】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の範囲の量の脂肪を含む。
【0162】
或る特定の実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約30g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)、約35~約43g/Mcal(約4.18MJ)、約40~約42g/Mcal(約4.18MJ)または約30g/Mcal(約4.18MJ)~約40g/Mcal(約4.18MJ)の範囲の量の脂肪を含む。或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用乾燥飼料組成物は、約30g/Mcal(約4.18MJ)~約35g/Mcal(約4.18MJ)の範囲の量の脂肪を含む。
【0163】
実例として、或る非限定的な実施形態では、湿潤飼料組成物は、約41g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む。
【0164】
代替的な実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンを含む。
【0165】
例示的な実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約7.3g/Mcal(約4.18MJ)の量のアルギニンを含む。
【0166】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約0.7g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のナトリウム(Na)を含む。或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約0.60g/Mcal(約4.18MJ)の量のナトリウムを含む。
【0167】
特定の実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、約0.19g/Mcal(約4.18MJ)の量のナトリウムを含む。
【0168】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、オオバコおよびその誘導体、デンプン、植物由来のタンパク質、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の構成成分を含む。
【0169】
例示的な実施形態として、栄養学的に完全なネコ科動物用湿潤飼料組成物は、少なくとも、(i)少なくとも約0.1g/Mcal(約4.18MJ)の量のオオバコおよびその誘導体と、(ii)約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の穀類源のデンプンと、(iv)少なくとも約30g/Mcal(約4.18MJ)の量の植物由来のタンパク質とを含む。
【0170】
植物由来のタンパク質としては、限定されるものではないが、ナッツ、種子、油脂性の果実、スピルリナ、クロレラ、クラマス(klamath)、ダイズ、ラッカセイ、カボチャ種子、アーモンド、豆類、フェヌグリーク、ヒヨコマメ、チアシード、キノア、ソバ、オート麦ふすま、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ等に由来するタンパク質が挙げられる。
【0171】
従来認められているように、湿潤ペット用飼料は、(乾燥工程の代わりに)最終減菌工程を含むプロセスの最終生成物である。
【0172】
特定の実施形態では、本開示による栄養学的に完全な湿潤ネコ科動物用飼料は、約30%超の含水率を有する。幾つかの実施形態では、上記湿潤ネコ科動物用飼料は、約40%以上の含水率を有する。例えば、限定を目的とするものではないが、80%の含水率を有する栄養学的に完全な湿潤ネコ科動物用飼料が本明細書に提示される実施例に示される。具体的には、湿潤飼料組成物は30%超の水分を有する。
【0173】
特定の実施形態では、湿潤飼料は、チャンク形態、より詳細にはグレイビー中のチャンクの形態からなる。特定の実施形態では、湿潤飼料は、チャンクおよびグレイビー、ゼリー、ローフ、ムース、テリーヌまたはバイト(bite)中のチャンクの形態からなる。
【0174】
「チャンクおよびグレイビー」製品は、肉エマルジョンを作製し、この肉エマルジョンを加圧下でマズル(muzzle)に通した後、加熱調理することによって調製される、予め形成された肉の粒を含む。調理済みの肉等の製品をチャンク状に角切りし、これを最後にグレイビーまたはソースと混合する。次いで、2つの構成成分を容器、通常は缶またはパウチに充填し、これを縫合または封止し、滅菌する。グラウンドローフ(ground loaf)とは対照的に、チャンクおよびグレイビー組成物は、調製された状態で物理的に分離された個別のチャンク(すなわち、挽き肉および穀物の塊)を有する。これらの個別の粒は、最終容器においてグレイビー状の液体中に存在する。給餌の際に、チャンクおよびグレイビー製品は、缶から流れ出て、他の乾燥製品と容易に混合することができる。チャンクおよびグレイビー製品は、個々の成分のより良好な一体性を可能にするが、チャンクおよびグレイビー製品の不均一な配合は、消費者に嫌われることもある。
【0175】
湿潤飼料組成物は概して、缶状容器にパッケージングされ、それに含まれる水分のために外観上「湿潤」とみなされる。2つのタイプの湿潤組成物が当該技術分野において一般に知られている。第1の組成物は、当該技術分野で「グラウンドローフ」として知られている。ローフ製品は通例、構成成分の混合物を加熱下で接触させ、本質的に均一なセル内ハニカム(intracellular honeycomb)状の塊または「グラウンドローフ」を作製することによって調製される。次いで、グラウンドローフ塊を缶等の円筒状容器にパッケージングする。充填後に、グラウンドローフは容器の形となるため、コンパニオンアニマルに与える際にグラウンドローフを切る必要がある。
【0176】
或る実施形態では、栄養学的に完全な乾燥ネコ科動物用飼料組成物をパッケージングする。このようにして、消費者はパッケージから飼料製品中の成分を特定し、それが対象となる特定のペットに適しているか確認することができる。或る実施形態では、パッケージは金属、プラスチック、紙またはカードであり得る。
【0177】
半湿潤飼料組成物
代替的な実施形態では、本明細書に記載される栄養学的に完全な飼料組成物は、(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、(ii)約40g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む半湿潤飼料組成物からなる。
【0178】
従来認められているように、半湿潤ペット用飼料は、乾燥ペット用飼料と湿潤ペット用飼料との中間の含水率値を得ることを可能にするプロセスの最終生成物である。幾つかの実施形態では、上記プロセスは、湿潤剤を添加する工程を含み得る。幾つかの実施形態では、上記プロセスは、押出工程およびその後の過熱流(SHS)による処理工程を含む。
【0179】
幾つかの実施形態では、本開示による栄養学的に完全な半湿潤ネコ科動物用飼料は、約12%超かつ最大でも約30%の水分を含有する。例示的な実施形態では、半湿潤飼料組成物は、約11%~約20%の水分および/または約0.64~約0.75の水分活性を有する。
【0180】
或る非限定的な実施形態では、半湿潤飼料は、特許出願公開である国際公開第2009/018990号、国際公開第2009/018996号、国際公開第2010/112097号、国際公開第2014/122072号、国際公開第2016/071372号および/または国際公開第2016/071367号に記載されるプロセスまたは方法等の過熱流(SHS)プロセスを用いて得ることができる。
【0181】
或る実施形態では、半湿潤飼料は、柔らかい半湿潤キッブルからなる。
【0182】
栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物の使用
本開示は、ネコ科の動物、特にネコにおける心肥大の予防および/または治療、特に無症候性肥大型心筋症(aHCM)を含む肥大型心筋症(HCM)の予防または治療への本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物の使用をさらに提供する。
【0183】
或る実施形態では、本開示は、心肥大の予防および/または治療に使用されるEPA/DHAと可溶無窒素物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、栄養学的に完全な飼料組成物が、少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む乾燥飼料組成物からなるか、または栄養学的に完全な飼料組成物が、少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物に関する。
【0184】
本明細書で前述したように、心肥大は心臓壁、より具体的には心室中隔および左室壁の肥厚を伴う左心室の肥大を特徴とする。心肥大が幾つかの方法によって診断され得ることが当業者に既知である。心肥大は、心臓壁の最大厚さの心エコー測定によって診断することができる。具体的には、心臓壁の最大厚さを、拡張期の心室中隔(IVSd)の3つの部位および拡張期の左室壁(LVWd)の2つの部位において測定する。
【0185】
心臓トロポニン(cTnI)は、心筋傷害の高感度かつ特異的なマーカーであり、無症候性肥大型心筋症(aHCM)に罹患したネコにおいて増加している。したがって、心臓トロポニンIの血中濃度の上昇は、ネコにおいて心臓死までの時間と関連している。さらに、インスリン様成長因子I(IGF-1)の血中濃度は、心肥大の尺度とも関連している。さらに、心臓の伸展性が異常となり(硬化)、左心充満圧の上昇および左心房の拡張(圧力の上昇に応答したLAリモデリング)が見られる。LAリモデリングを有しないネコは、HCMの最初期段階、すなわちaHCMにある。LAリモデリングを有するネコは、aHCMのやや進行した段階にあるが、依然としてaHCMの初期無症候段階にある。
【0186】
本明細書の他の部分で詳述され、実施例に示されるように、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大、特に明らかな症状が見られない初期段階のHCM(すなわち、無症候性HCM(aHCM)を包含する無症候性心肥大)を含むHCMに起因する心筋の変化と関連する様々な生理的パラメーターに対してプラスに作用する。
【0187】
注目すべきことに、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料は、治療を受けたネコ科動物、特に治療を受けたネコのSAAの測定によると炎症状態に対しては効果を有しない。
【0188】
さらに、本明細書の実施例に示されるように、望ましくない影響は、本明細書に記載される栄養学的に完全な飼料を与えたネコ科の動物において1年以上にわたって観察されなかった。
【0189】
このため、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大の原因の生理的欠陥または原因の生理的脱調節の種類に関わらず、心肥大の予防または治療に有用である。実例として、本開示による栄養学的に完全な飼料組成物によって予防または治療することができる心肥大は、全身性高血圧もしくは流出障害による血圧過負荷に続発する可能性があり、または代替的には、例えば甲状腺機能亢進症もしくは高ソマトトロピン分泌症もしくは末端肥大症の場合のようなホルモン刺激に続発する可能性があり、またはさらにはネコ科の動物の特定の遺伝的背景、例えばネコの特定の遺伝的背景に起因する可能性がある。
【0190】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心臓壁の肥厚を減少させるために使用される。
【0191】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、インスリン様成長因子I(IGF-I)の血中濃度を減少させるために使用される。
【0192】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心臓トロポニンI(cTnI)の血中濃度を減少させるために使用される。
【0193】
或る実施形態では、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心拍を調節するために使用される。
【0194】
本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、心肥大のネコの予防および/または治療に特に有用である。特定の実施形態では、上記ネコはaHCMに罹患している。或る実施形態では、上記ネコは、LAリモデリングが見られないaHCMに罹患している。或る他の実施形態では、上記ネコは、LAリモデリングが見られるaHCMに罹患している。
【0195】
治療方法
本開示は、aHCMに罹患したネコ科動物において心肥大を予防および/または治療する方法も提供する。或る実施形態では、方法は、本開示において定義される栄養学的に完全なネコ科動物用組成物を上記ネコ科動物に与える工程を少なくとも含む。
【0196】
実施例に示されるように、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、上記飼料組成物が乾燥飼料であるか、または湿潤飼料であるかに関わらず、心肥大の予防および/または治療を可能にする。或る実施形態では、(i)本明細書に記載される乾燥飼料のみを与えたネコ科の動物、(ii)本明細書に記載される湿潤飼料のみを与えたネコ科の動物、ならびに(iii)上記乾燥飼料および上記湿潤飼料の両方(すなわち「混合乾燥/湿潤」)を与えたネコ科の動物において有益な効果が得られる。
【0197】
或る実施形態では、本開示の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物をネコ等のネコ科の動物に毎日提供する。
【0198】
或る実施形態では、本明細書に開示される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、治療対象のネコ科の動物に治療期間にわたって唯一の栄養学的に完全な飼料として提供することができる。これらの実施形態によると、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を動物に治療期間にわたって毎日提供する。
【0199】
或る他の実施形態では、本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、治療対象のネコ科の動物に第2のネコ科動物用飼料組成物と交互に提供することができる。或る実施形態では、第2のネコ科動物用飼料組成物も栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物である。第2の栄養学的に完全な飼料組成物は、多種多様な商品化されたネコ科動物用飼料組成物、例えば多種多様な商品化されたネコ用飼料組成物のいずれかを含む既知のネコ科動物用飼料組成物から選択することができる。
【0200】
これらの他の実施形態によると、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を隔日で、すなわち2日に1回のタイムスケジュールに従って提供する。これらの他の実施形態の別の態様では、上記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を3日、4日、5日、6日または7日に1回のタイムスケジュールに従って提供する。
【0201】
ネコ科の動物、特にネコに毎日給餌を行う上で、動物の飼い主が動物に栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を常に毎日与える体系的な方法に従って事を進めない場合があることが理解されるものとする。
【0202】
或る実施形態では、HCMの予防または治療、特にaHCMの予防または治療の有益な効果は、動物に本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を隔日で与える場合にもたらされる。3日、4日、5日、6日または7日に1回の動物への給餌は、有益な効果を減少させ、より長期の治療を必要とする可能性がある。
【0203】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、心肥大の効率的な予防または治療、例えばaHCMの完全に効率的な治療を含む、HCMの完全に効率的な予防または治療は、ネコ等のネコ科の動物に本明細書に記載される栄養学的に完全な飼料組成物を隔日でまたは毎日提供することを必要とする。
【0204】
本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物を与える期間は、特に心肥大の重症度に応じて数週間~数年間の範囲であり得る。
【0205】
本明細書の他の部分で既に明記したように、心肥大は全身性高血圧によって引き起こされる可能性がある。高血圧状態の発生が最近の事象であり、したがって心肥大が最小(例えばaHCMの段階)である、或る実施形態では、短期間の治療が心臓壁の正常な厚さ、特に心室中隔および/または左室壁の正常な厚さを回復させるのに十分であり得る。これらの実施形態では、心肥大の新たな発生を予防し、例えばHCMの新たな発生を予防するために、動物を同時に抗高血圧剤で治療することができる。
【0206】
或る他の実施形態では、食餌療法は、より長期間、例えば12ヶ月以上、例えば18ヶ月以上、または例えば24ヶ月以上にわたり、(i)ネコ等のネコ科の動物に本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物のみを提供することを含む給餌スケジュールに従うか、または(ii)本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物および別のネコ科動物用飼料組成物を交互に与えるスケジュールに従って治療対象の動物に提供される。
【0207】
或る実施形態では、ネコ科の動物に本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物をより長期間、例えば2年以上にわたって提供する。或る実施形態では、ネコ科の動物に本明細書に記載される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物をネコ等の上記ネコ科の動物の全生涯にわたって提供する。
【0208】
本開示は、本開示において定義される栄養学的に完全なネコ科動物用組成物を含む給餌を推奨する工程を少なくとも含む、aHCMに罹患したネコにおいて心肥大を予防または治療する方法も含む。
【0209】
本開示の方法は、aHCMまたはHCMに罹患したネコにおいて腎臓機能に影響を及ぼさない。
【0210】
本開示の方法は、本開示において定義される栄養学的に完全なネコ科動物用組成物を含む給餌を推奨する工程をさらに含み得る。
【実施例
【0211】
今回開示される主題は、本開示の例示として与えられ、限定を目的としない以下の実施例を参照することによってより良く理解される。実施例において使用される材料および方法を以下に要約する。
【0212】
略称:
2d 2次元
aHCM 無症候性肥大型心筋症
DHA ドコサヘキサエン酸
EPA エイコサペンタエン酸
HCM 肥大型心筋症
IVSd 拡張期の心室中隔
LVWd 拡張期の左室壁
A. 材料および方法
A.1. 目的
本臨床試験の目的は、ネコにおけるaHCMの治療のための心臓壁の厚さに対する新規の高EPA/DHAかつ中程度可溶無窒素物の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物の効果を調査することであった。
【0213】
A.2. 臨床研究
対照食餌をDune(乾燥飼料処方)およびSloot(湿潤飼料処方)と名付ける。
【0214】
試験食餌をBeach(乾燥処方)およびLake(湿潤処方)と名付ける。
【0215】
飼料組成物は、ネコの好みに応じて乾燥のみ、湿潤のみ、または混合乾燥/湿潤の給餌として与えた。
【0216】
表1に、臨床研究に参加したネコの情報を提示する。合計44匹のネコが臨床研究に参加し、全てがaHCMと診断された。表2に示すように、23匹のネコに試験飼料組成物(Beach/Lake)を与え、21匹のネコに対照飼料組成物(Dune/Sloot)を与えた。
【0217】
【表1】
【0218】
【表2】
【0219】
ネコは、研究の開始時に望んだ場合に乾燥のみ、湿潤のみ、または混合乾燥/湿潤の食餌を好みに応じて選ぶことができた。ネコに12ヶ月にわたって食餌を与え、6および12ヶ月後に検査した(心エコー検査、血液測定、BW、BCS)。
【0220】
試験乾燥飼料組成物(BEACH)、対照乾燥飼料組成物(DUNE)、試験湿潤飼料組成物(LAKE)および対照湿潤飼料組成物(SLOOT)の組成を表3に記載する。
【0221】
飼料組成物は、エネルギー密度、より具体的には代謝エネルギー(ME)を単位として表される。したがって、本開示における飼料組成物は、1メガカロリー(約4.18MJ)当たりの重量で表され、規格EN 16967:2017 E(欧州規格EN 16967、Animal feeding stuffs: Methods of sampling and analysis - Predictive equations for metabolizable energy in feed materials and compound feed (pet food) for cats and dogs including dietetic food;2017年7月)の処方によって決定された。
【0222】
以下のパラメーターを測定した:
-2Dモードで測定される拡張期の心室中隔の最大厚さに相当する2d-IVSd-最大。
【0223】
-2Dモードで測定される拡張期の心室中隔の厚さが少なくとも6mmの領域の数に相当する2d-IVSd 6mm以上の部位数。
【0224】
-2Dモードで測定される拡張期の心室中隔の3つの別個の領域において測定された厚さの総和に相当する2d-IVSd 部位の総和。
【0225】
-2Dモードで測定される拡張期の左室壁の最大厚さに相当する2d-LVWd-最大。
【0226】
-2Dモードで測定される拡張期の左室壁の厚さが少なくとも6mmの領域の数に相当する2d-LVWd 6mm以上の部位数。
【0227】
-2Dモードで測定される拡張期の左室壁の2つの別個の領域において測定された厚さの総和に相当する2d-LVWD 部位の総和。
【0228】
-2Dモードで測定される拡張期の心室中隔および拡張期の左室壁の5つの別個の領域において測定された厚さの総和に相当する2d-IVSdおよびLVFW(6mm以上の部位数)。
【0229】
-Mモードによって測定される拡張期の心室中隔の厚さに相当するM-IVSd。
【0230】
-Mモードによって測定される拡張期の左室自由壁の厚さに相当するM_LVFWd。
【0231】
-左心房の最大直径に相当するLA_最大直径。
【0232】
-左心房の16mmを超える最大直径に相当するLA_最大直径>16。
【0233】
-左心房大動脈基部比に相当するLA/Ao。
【0234】
-1.5を超える左心房大動脈基部比に相当するLA/Ao>1.5。
【0235】
-左心房の直径が少なくとも16mmかつ/または左心房大動脈基部比が1.5を超える症例数に相当するLA≧16mmかつ/またはLA/Ao≧1.5の症例数(0/1/2基準)。
【0236】
-拡張期の左室内径に相当するLVIDd。
【0237】
-収縮期の左室内径に相当するLVIDs。
【0238】
-血液が心臓弁の1つを通る際に生じる心音に相当する心雑音グレード。
【0239】
-心雑音が3未満または心雑音が少なくとも3の症例数に相当する心雑音グレード3未満または3以上の症例数。
【0240】
-拡張早期の重力によるピーク血流速度(E波)と拡張後期のピーク流速(A波)との比率に相当するE/A波。
【0241】
-ネコの心拍に相当する心拍。
【0242】
-左室流出路に相当する最大LVOT速度。
【0243】
-右室流出路に相当する最大RVOT速度。
【0244】
-インスリンの血中濃度に相当するインスリン。
【0245】
-IGF-1の血中濃度に相当するIGF-1。
【0246】
-血清アミロイドAの血中濃度に相当するSAA。
【0247】
-N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチドの血中濃度に相当するNT-proBNP。
【0248】
-心臓細胞損傷のマーカーであり、心不全および心臓死の発生の指標となるトロポニンIの血中濃度に相当するcTnI。
【0249】
-ネコの体重に相当する体重。
【0250】
-ネコのボディコンディションスコアに相当するBCS(BCSは、ネコの体重および健康の指標となる)。
【0251】
-血液中のクレアチンレベルに相当するクレアチニンの血清濃度。
【0252】
-老廃物の尿素に由来する血液中の窒素のレベルに相当する血中尿素窒素(BUN)の血清濃度。
【0253】
-血液中のリン酸塩のレベルに相当するリン酸塩の血清濃度。
【0254】
-血液中のFGF-23のレベルに相当する血清線維芽細胞増殖因子-23(FGF-23)の血清濃度。
【0255】
心臓の厚さは、心室中隔の3つの部位および左室自由壁の2つの部位において2dモードまたはMモード超音波法を用いて測定する。
【0256】
クレアチニン、BUN、リン酸塩およびFGF-23の血清濃度のパラメーターにより、腎排泄機能の測定が可能となる。
【0257】
A.3. 種々のパラメーターの測定に用いた方法
心エコー検査(2Dモード、Mモードおよびカラーフロー、スペクトルおよび組織ドプラ)を覚醒ネコに対して化学的抑制なしに行った。種々のレベル(乳頭筋、僧帽弁および大動脈弁)での右傍胸骨4および5腔長軸および短軸像を得た。加えて、主に僧帽弁流入、肺静脈血流、左室流出(LVOT)および大動脈血流のスペクトルドプラについては、左心尖部4腔および5腔像を得た。
【0258】
右室流出(RVOT)路および肺動脈を最適化した頭側右および左傍胸骨像を、これらの領域からスペクトルドプラについて得た。測定は、RVOT/PA流を最適化した画像から行った。
【0259】
左室、僧帽弁および左心房/大動脈のMモードを2D画像へのカーソル配置後に得た。Mモード測定には上縁-上縁(leading-edge to leading-edge)法を用いた。
【0260】
拡張末期および収縮末期の心室中隔、左室内腔および左室自由壁の2D測定を、カーソル配置をガイドするために血液-心内膜境界および心筋-心外膜境界を用いて乳頭筋レベルの短軸像に対して行った。
【0261】
2D左心房および大動脈径を拡張期の右傍胸骨短軸像において得た。
【0262】
2D心室中隔および左室自由壁測定を拡張末期の左心室の右傍胸骨短軸および長軸(4または5腔)像において得た(Freeman, Rush et al. 2014)。
【0263】
IVSdを基底、中間および先端領域において測定し、LVWdを基底および中間領域において、限局性肥大を最適化したいずれかの右傍胸骨長軸4または5腔像から測定した。測定は、測定された最大厚さ(最大-)、5つの別個の領域において測定された厚さの総和(総和-)、6mm以上の厚さの領域数(数(n-))と注記した。
【0264】
スペクトルドプラ測定では、パルス波(またはエイリアシングが明らかであった場合に連続波)について以下の速度を記録した:十分に分離して与えられる僧帽弁流入EおよびA波速度、左室流出、大動脈、右室流出および肺速度。
【0265】
肺静脈血流については、ピーク収縮期および拡張期前進波、ならびに心房反転波速度を記録した。心房反転波の持続時間を僧帽弁A波持続時間と比較した。左室流出路におけるサンプル容積により左室流出および僧帽弁流入の両方の記録が可能であるため、パルスドプラにより大動脈弁の閉鎖から僧帽弁E波の開始までの時間(等容弛緩時間;IVRT)を測定することが可能であった。
【0266】
カラーMモードを左心室において左心尖部4腔像に対して用い、Mモードのカーソルを僧帽弁流入のカラムと一致させて僧帽弁流入を評価した。ナイキスト限界を僧帽弁流入(E)のコアのエイリアシングが生じるまで減少させ、カラーMモードを得た。
【0267】
色の相違がない場合、早期僧帽弁流入波の赤-青境界を用いて傾きを測定し、僧帽弁血流伝播速度を得た(Schober, Fuentes et al. 2003)。
【0268】
次に、左心尖部4腔像から、IVS、LVFW(およびRVFW)の縦運動と一致させ、サンプル容積を心筋において房室輪のレベルにし、PW-TDIスペクトルを得て、ピークS’、E’およびA’速度を測定した。
【0269】
全体的肥大は、IVSdおよびLVWdの両方の全領域における6mm以上の厚さと定義された。
【0270】
左房拡大は、LA最大≧16mm(Schober and Maerz 2006)および/またはLA最大/Ao≧1.5mm(Abbott and MacLean 2006)と定義された。
【0271】
僧帽弁の収縮期前方運動、左房拡大、または大動脈速度の増大のようなHCMの指標となる潜在的な同時の所見と共に、最も厚い拡張末期心室中隔(IVSd)もしくは左室自由壁(LVWd)セグメント、またはMモードもしくは2Dモードの両方で6mmを超える測定(Fox, Liu et al. 1995)の場合にHCMが診断された。
【0272】
トロポニンIおよびIGF-1の血中濃度を、Siemensのキットを参照のSiemensのADVIA Centaur TnI-Ultra(登録商標) Assay(5 ReadyPack(登録商標)-Testreagenzpackungen mit ADVIA Centaur(登録商標) TnI-Ultra(商標) Binary Lite-Reagenz)、02790309およびImmulite 2000/XPIと共に用い、Advia Centaur XPを用いてCLIA法によって分析した。
【0273】
クレアチニンの血清濃度は、AU480 Chemistry Analyzer(Beckman Coulter)を用いた動態比色分析(除タンパクを行わないJaffe)によって測定した。
【0274】
血中尿素窒素(BUN)の血清濃度は、AU480 Chemistry Analyzer(Beckman Coulter)を用いた動態UV試験によって測定した。
【0275】
リン酸塩の血清濃度は、AU480 Chemistry Analyzer(Beckman Coulter)を用いた測光UVアッセイ(リンモリブデン酸アンモニウム錯体、UV試験)によって測定した。
【0276】
血清線維芽細胞増殖因子-23の血清濃度は、FGF23 ELISAキット(Kainos Laboratories, Inc.)を用いた二段階サンドイッチ酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いて測定した。
【0277】
A.4. 試験した飼料組成物
表3に、試験した飼料組成物に含まれる構成成分およびその量を提示する。
【0278】
【表3】
【0279】
実施例1:栄養学的に完全な飼料組成物は、aHCMに罹患したネコにおいて心臓壁の肥厚を減少させる
1.1. 乾燥飼料、湿潤飼料および混合乾燥/湿潤飼料として提供される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料
0、6および12ヶ月の時点で測定した、試験集団(Beach/Lake)および全ての給餌タイプ(乾燥、湿潤、混合乾燥/湿潤)を与えた集団における心室中隔および左室壁の肥厚、ならびに血液分析(IGF-1およびトロポニンI)の平均値を表4に示す。
【0280】
【表4】
【0281】
表4に示す結果から、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料がaHCMに罹患したネコの心臓壁、特に心室中隔および左室壁の厚さの減少を引き起こすことが示される。
【0282】
1.2. 乾燥および湿潤飼料の両方(混合乾燥/湿潤)として提供される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料
0、6および12ヶ月の時点で測定した、試験集団(Beach/Lake)および混合乾燥/湿潤組成物のみを与えた集団における心室中隔および左室壁の肥厚、ならびに血液分析(IGF-1およびトロポニンI)の平均値を下記表5に示す。
【0283】
【表5】
【0284】
表5に示す結果から、湿潤飼料および乾燥飼料の両方として自由に提供された栄養学的に完全なネコ科動物用飼料がaHCMに罹患したネコの心臓壁、特に心室中隔および左室壁の厚さの減少を引き起こすことが示される。
【0285】
1.3. 乾燥飼料として提供される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料
0、6および12ヶ月の時点で測定した、試験集団(Beach/Lake)および乾燥組成物のみを与えた集団における心室中隔および左室壁の肥厚、ならびに血液分析(IGF-1およびトロポニンI)の平均値を下記表6に示す。
【0286】
【表6】
【0287】
表6に示す結果から、乾燥飼料として自由に提供された栄養学的に完全なネコ科動物用飼料がaHCMに罹患したネコの心臓壁、特に心室中隔および左室壁の厚さの減少を引き起こすことが示される。
【0288】
1.4. 湿潤飼料として提供される栄養学的に完全なネコ科動物用飼料
0、6および12ヶ月の時点で測定した、試験集団(Beach/Lake)および湿潤組成物のみを与えた集団における心室中隔および左室壁の肥厚、ならびに血液分析(IGF-1およびトロポニンI)の平均値を下記表7に示す。
【0289】
【表7】
【0290】
表7に示す結果から、湿潤飼料として自由に提供された栄養学的に完全なネコ科動物用飼料がaHCMに罹患したネコの心臓壁、特に心室中隔および左室壁の厚さの減少を引き起こすことが示される。
【0291】
1.5. 飼料組成物の効果のP値
aHCMに罹患したネコの全集団における飼料組成物の効果のP値を下記表8に示す。
【0292】
【表8-1】
【0293】
【表8-2】
【0294】
【表8-3】
【0295】
より良好な理解のために、「固定効果」は、試験パラメーターに対する飼料組成物および時間、ならびに飼料組成物と時間との間の相互作用の影響である。「スライス食餌」は、1つの飼料組成物(試験または対照)における時点間の比較である。P値は、時点が大きく異なるとすることによって誤りを犯すリスクであり、p値を3つの時点に対して補正する。
【0296】
結果から、飼料組成物が、無症候性HCM(aHCM)のネコにおいて拡張期の心室中隔および左室壁の肥厚を逆転させると実証されたことが示される。「6mmのカットオフ値を超える肥厚部の平均数」は、「心室中隔の3つの部位」において50%、「心室中隔および左室壁を合わせた5つの部位」において40%減少する。「左室壁の平均厚さ」は、6mmのカットオフ値未満に減少する。
【0297】
さらに、飼料組成物は、IGF-1の血中レベルを有意に低下させるだけでなく、心臓トロポニンI(cTnI)の血中レベルを有意に低下させることが実証された。
【0298】
さらに、結果から、ネコの体重、さらにはBCSに有意な変化が見られないことが示される。したがって、飼料組成物は栄養学的に完全である。
【0299】
実施例2:栄養学的に完全な飼料組成物は、左心房リモデリング(LAリモデリング)を有しない無症候性HCMに罹患したネコにおいて心臓壁の肥厚を減少させる
左心房リモデリングが見られる無症候性HCMに罹患したネコにおける飼料組成物の効果のP値を下記表9に示す。
【0300】
【表9-1】
【0301】
【表9-2】
【0302】
【表9-3】
【0303】
左心房リモデリングが見られない無症候性HCMに罹患したネコにおける飼料組成物の効果のP値を下記表10に示す。
【0304】
【表10-1】
【0305】
【表10-2】
【0306】
結果から、飼料組成物が、LAリモデリングが見られないaHCMのネコにおいても拡張期の心室中隔および左室壁の肥厚を逆転させると実証されたことが示される。実際に、LAリモデリングを有しないネコは、集団全体と同じ結果を示したが、LAリモデリングを有するネコは、心室中隔の3つの部位における6mmのカットオフ値を超える肥厚部の平均数(2d-IVSd 6mm以上の部位数)および2Dモードで測定される拡張期の心室中隔の3つの別個の領域において測定された厚さの総和値(2d-IVSd 総和)に対してのみ効果を示し、心室中隔および左室壁を合わせた5つの部位(2d-IVSdおよびLVFW 6mm以上の部位数)でも、左室壁の平均厚さ(2d-LVWd-最大)に対しても効果を示さなかった。cTnIの減少は、LAリモデリングを有するおよび有しないネコにおいて見られる。このことは、LAリモデリングを有しないネコが、心臓の硬化が見られない疾患の最初期段階にあるにも関わらず、食餌の効果の影響を受けやすいことによって説明され得る。
【0307】
実施例3:栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物は、aHCMのネコにおいて腎臓機能に影響を及ぼさない。
【0308】
驚くべきことに、多量のタンパク質、すなわち少なくとも115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む乾燥飼料組成物および少なくとも117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む湿潤飼料組成物が、aHCMに罹患したネコにおける腎機能に対して有害な影響を与えないことが見出された。
【0309】
クレアチニン、BUN、リン酸塩および線維芽細胞増殖因子-23(FGF-23)の血清濃度を、非鎮静状態の絶食ネコにおいて、割り当てられた飼料組成物を給餌する前、ならびにその6および12ヶ月後に測定した(表11)。
【0310】
ウィルコクソンの一標本符号付き検定により、血清濃度がベースライン時に研究所内上限基準範囲を下回るかを分析した。二元配置反復測定ANOVAにより、測定変数を時間(ベースライン、6および12ヶ月)ならびに対照および試験群の両方で5%の有意水準を用いて比較した。結果を中央値(範囲)として表す。
【0311】
4つのパラメーターの血清濃度は、ベースライン時に研究所内上限基準範囲を有意に下回っていた(P<.0001)。BUN(血中尿素窒素)について有意な食餌-時間相互作用が見られ(P=0.0013)、試験飼料組成物の6および12ヶ月の給餌後に有意に増大したが、いずれの群においてもクレアチニン、リン酸塩またはFGF-23について経時的に有意な変化は見られず、少数のネコの血清濃度が各時点で基準範囲を上回った。
【0312】
表11の結果から以下のことが示される:
-クレアチニンについては、試験12ヶ月と対照0ヶ月との間および試験12ヶ月と対照12ヶ月との間にのみ有意差が見られる。しかしながら、試験群および対照群において経時的な差は見られない。
【0313】
-BUNについては、試験0ヶ月と試験6ヶ月との間および試験0ヶ月と試験12ヶ月との間にのみ有意差が見られる。しかしながら、対照群において経時的な差は見られず、異なる時点で試験群と対照群との間に差は見られない。
【0314】
-リン酸塩については、試験0ヶ月と試験6ヶ月との間および試験0ヶ月と試験12ヶ月との間にのみ有意差が見られる。しかしながら、対照群において経時的な差は見られず、異なる時点で試験群と対照群との間に差は見られない。
【0315】
-FGF23については、試験12ヶ月と対照6ヶ月との間にのみ有意差が見られる。しかしながら、試験群または対照群において経時的な変化は見られない。試験群の他の時点と対照群の他の時点との間に差は見られない。
【0316】
【表11】
【0317】
異なる上付き文字(「a」、「b」および「ab」)は、異なる時点について有意な群内および群間比較の差を特定し、角括弧は血清濃度が上限基準範囲以上のネコの数を示す
≪(x-x)≫:(最小範囲-最大範囲)
「b」は「a」と有意に異なる
「ab」は有意でない
したがって、aHCMのネコにおける腎臓機能に対し、多量のタンパク質を含む栄養学的に完全な飼料組成物の12ヶ月にわたる給餌の有害な影響は見られない。
【0318】
今回開示される主題およびその利点を詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲によって定義される本願の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換えおよび修正を本明細書において行うことができると理解すべきである。さらに、本願の範囲が本明細書に記載されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されないことが意図される。今回開示される主題の開示から当業者には容易に理解されるように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、または実質的に同じ結果を達成する、既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法または工程を、今回開示される主題に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法または工程を範囲内に含むことを意図したものである。
【0319】
本願全体を通して引用される任意の特許、特許出願、刊行物、製品記述およびプロトコルについて、その全ての開示全体をあらゆる目的で参照により本明細書に援用するものとする。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
心肥大の予防および/または治療に使用される、エイコサペンタエン酸/ドコサヘキサエン酸(EPA/DHA)と炭水化物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
(a)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態2
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、実施形態1に記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態3
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料からなり、
前記乾燥飼料組成物が少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、実施形態1または2に記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態4
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、実施形態1から3までのいずれか1つに記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態5
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、実施形態1に記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態6
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料からなり、
前記湿潤飼料組成物が少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、実施形態1から5までのいずれか1つに記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態7
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、実施形態1、5または6に記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態8
ネコの心肥大を予防および/または治療するための、実施形態1から7までのいずれか1つに項記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態9
前記ネコが無症候性肥大型心筋症に罹患している、実施形態8に記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態10
前記ネコが、LAリモデリングが見られない無症候性肥大型心筋症に罹患している、実施形態8または9に記載の使用のための栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態11
栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
(a)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む乾燥飼料組成物からなるか、または
(b)前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が、
(i)少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のEPA/DHAと、
(ii)約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物と
を含む湿潤飼料組成物からなる、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態12
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、実施形態11に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態13
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、実施形態11または12に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態14
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物からなり、
前記乾燥飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、実施形態11から13までのいずれか1つに記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態15
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、実施形態11に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態16
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物からなり、
前記湿潤飼料組成物が少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、実施形態11または12に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態17
前記組成物が湿潤飼料からなり、
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、実施形態11、15または16に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態18
無症候性肥大型心筋症に罹患したネコにおいて心肥大を予防および/または治療する方法であって、前記ネコに実施形態11から17までのいずれか1つに記載の組成物を与える工程を少なくとも含む、方法。
実施形態19
無症候性肥大型心筋症に罹患したネコにおいて心肥大を治療する方法であって、実施形態11から17までのいずれか1つに記載の組成物を含む給餌を推奨する工程を少なくとも含む、方法。
実施形態20
少なくとも約0.5g/Mcal(約4.18MJ)の量のエイコサペンタエン酸/ドコサヘキサエン酸(EPA/DHA)と、約60g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が乾燥飼料組成物である、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態21
前記乾燥飼料組成物が約50g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、実施形態20に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態22
前記乾燥飼料組成物が少なくとも約115g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、実施形態20に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態23
前記乾燥飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、実施形態20に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態24
前記乾燥飼料組成物が約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンを含む、実施形態20に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態25
少なくとも約1.0g/Mcal(約4.18MJ)の量のエイコサペンタエン酸/ドコサヘキサエン酸(EPA/DHA)と、約35g/Mcal(約4.18MJ)以下の量の可溶無窒素物とを含む栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物であって、
前記栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物が湿潤飼料組成物である、栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態26
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のデンプンを含む、実施形態25に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態27
前記湿潤飼料組成物が少なくとも約117g/Mcal(約4.18MJ)の量のタンパク質を含む、実施形態25に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態28
前記湿潤飼料組成物が約20g/Mcal(約4.18MJ)~約45g/Mcal(約4.18MJ)の量の脂肪を含む、実施形態25に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態29
前記湿潤飼料組成物が約9g/Mcal(約4.18MJ)以下の量のアルギニンを含む、実施形態25に記載の栄養学的に完全なネコ科動物用飼料組成物。
実施形態30
予防および/または治療を必要とするネコ科動物において心肥大を予防および/または治療する方法であって、前記ネコ科動物に実施形態20から29までのいずれか1つに記載の組成物を提供する工程を含む、方法。
実施形態31
前記ネコ科動物がネコである、実施形態30に記載の方法。
実施形態32
前記ネコが無症候性肥大型心筋症に罹患している、実施形態31に記載の方法。