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特許7391982電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20231128BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20231128BHJP
【FI】
G01S7/40 130
G01S13/931
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021551627
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037649
(87)【国際公開番号】W WO2021070762
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019187031
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】川路 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐原 徹
(72)【発明者】
【氏名】本間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 正光
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐東 将行
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153211(JP,A)
【文献】特開2018-162977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる位置において、物体検出範囲の中心方向の向きがそれぞれの所定の向きに設置された複数のセンサを含む電子機器であって、
前記複数のセンサのそれぞれは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、
を備え、
前記複数のセンサによる物体の検出結果に基づいて、当該複数のセンサの少なくともいずれかの向きのずれを判定する判定部をさらに備え、
前記複数のセンサは、第1センサ、第2センサ、及び第3センサを含み、
前記第3センサは、前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検出範囲と前記第3センサによる物体の検出範囲とが部分的に重なるように、所定の向きに設置され、
前記判定部は、前記第1センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れておらず、前記第2センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れている場合、当該第2センサの向きがずれていると判定する、電子機器。
【請求項2】
前記判定部は、前記複数のセンサによってそれぞれ検出される物体の位置に基づいて、当該複数のセンサの少なくともいずれかが設置された向きからずれているか否か判定する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記第1センサによる物体の検出範囲と前記第2センサによる物体の検出範囲とが部分的に重なるように、それぞれの所定の向きに設置され、
前記判定部は、前記第1センサ及び前記第2センサによる同じ物体の検出結果に基づいて、当該第1センサ及び当該第2センサのいずれかの向きのずれを判定する、請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1センサ及び前記第2センサによってそれぞれ検出される同じ物体の位置が所定の距離以上離れる場合、当該第1センサ及び当該第2センサのいずれかの向きがずれていると判定する、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1センサ及び前記第2センサがそれぞれの所定の向きに設置された際にそれぞれのセンサによる物体の検出範囲が部分的に重なっていた領域において、前記第1センサ及び前記第2センサのうち一方によって検出される物体が他方によって検出されない場合、当該第1センサ及び当該第2センサのいずれかの向きがずれていると判定する、請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記判定部は、前記第1センサ及び前記第3センサによってそれぞれ検出される第1物体の位置が所定の距離内にある場合、前記第2センサ及び前記第3センサによる第2物体の検出結果に基づいて、当該第1センサ及び当該第2センサの双方の向きがずれているか判定する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記判定部は、前記複数のセンサのいずれかの向きのずれが所定の度合い以内であると判定する場合、当該複数のセンサの少なくともいずれかによって検出される物体の位置のキャリブレーションを行う、請求項1から6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記判定部は、前記複数のセンサのいずれかの向きのずれが所定の度合いを超えると判定する場合、所定の報知情報を出力する、請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。
【請求項9】
それぞれ異なる位置において、物体検出範囲の中心方向の向きがそれぞれの所定の向きに設置された複数のセンサを含む電子機器の制御方法であって、
前記複数のセンサのそれぞれは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、
を備え、
前記複数のセンサは、第1センサ、第2センサ、及び第3センサを含み、
前記第3センサは、前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検出範囲と前記第3センサによる物体の検出範囲とが部分的に重なるように、所定の向きに設置され、
前記複数のセンサによる物体の検出結果に基づいて、当該複数のセンサの少なくともいずれかの向きのずれを前記電子機器によって判定するステップと、
前記第1センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れておらず、前記第2センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れている場合、当該第2センサの向きがずれていると前記電子機器によって判定するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項10】
それぞれ異なる位置において、物体検出範囲の中心方向の向きがそれぞれの所定の向きに設置された複数のセンサを含む電子機器の制御プログラムであって、
前記複数のセンサのそれぞれは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、
を備え、
前記複数のセンサは、第1センサ、第2センサ、及び第3センサを含み、
前記第3センサは、前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検出範囲と前記第3センサによる物体の検出範囲とが部分的に重なるように、所定の向きに設置され、
前記電子機器に、
前記複数のセンサによる物体の検出結果に基づいて、当該複数のセンサの少なくともいずれかの向きのずれを判定するステップと、
前記第1センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れておらず、前記第2センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れている場合、当該第2センサの向きがずれていると判定するステップと、
を実行させる、電子機器の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年10月10日に日本国に特許出願された特願2019-187031の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と所定の物体との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの物体に反射した反射波を受信することで、物体との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0004】
また、送信された電波が所定の物体に反射した反射波を受信するセンサが、何らかの要因によって、設置された向きからずれたことを検出する技術について、いくつかの提案がされている。例えば特許文献1は、車両を回転台に載せてリフレクタを用いて車載レーダを点検する技術を開示している。また、例えば特許文献2及び3は、レーダ装置とは別にレーザ装置を用いることで、車載レーダ装置の取り付け角度を調整する技術を開示している。また、特許文献4は、衝撃を検出する加速度センサを用いてレーダの異常を検出する技術を開示している。さらに、特許文献5は、ミリ波レーダのようなセンサが正常な場合の特徴を示すデータがあるか否かによって、センサの故障を判定する記述を開示している。特許文献5において、センサが正常な場合の特徴を示すデータは、地図データ、GPSによる測位データ、及びカメラによって検出されるデータなどに基づいて生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-117800号公報
【文献】特開2011-226810号公報
【文献】特開2001-349937号公報
【文献】特開2006-240453号公報
【文献】国際公開第WO2018/163277号
【発明の概要】
【0006】
一実施形態に係る電子機器は、
それぞれ異なる位置において、物体検出範囲の中心方向の向きがそれぞれの所定の向きに設置された複数のセンサを含む電子機器であって、
前記複数のセンサのそれぞれは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、
を備え、
前記複数のセンサによる物体の検出結果に基づいて、当該複数のセンサの少なくともいずれかの向きのずれを判定する判定部をさらに備え、
前記複数のセンサは、前記第1センサ、前記第2センサ、及び第3センサを含み、
前記第3センサは、前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検出範囲と前記第3センサによる物体の検出範囲とが部分的に重なるように、所定の向きに設置され、
前記判定部は、前記第1センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れておらず、前記第2センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れている場合、当該第2センサの向きがずれていると判定する。
【0007】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
それぞれ異なる位置において、物体検出範囲の中心方向の向きがそれぞれの所定の向きに設置された複数のセンサを含む電子機器の制御方法であって、
前記複数のセンサのそれぞれは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、
を備え、
前記複数のセンサは、前記第1センサ、前記第2センサ、及び第3センサを含み、
前記第3センサは、前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検出範囲と前記第3センサによる物体の検出範囲とが部分的に重なるように、所定の向きに設置され、
前記複数のセンサによる物体の検出結果に基づいて、当該複数のセンサの少なくともいずれかの向きのずれを前記電子機器によって判定するステップと、
前記第1センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れておらず、前記第2センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れている場合、当該第2センサの向きがずれていると前記電子機器によって判定するステップと、
を含む。
【0008】
一実施形態に係る電子機器の制御プログラムは、
それぞれ異なる位置において、物体検出範囲の中心方向の向きがそれぞれの所定の向きに設置された複数のセンサを含む電子機器の制御プログラムであって、
前記複数のセンサのそれぞれは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、
を備え、
前記複数のセンサは、前記第1センサ、前記第2センサ、及び第3センサを含み、
前記第3センサは、前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検出範囲と前記第3センサによる物体の検出範囲とが部分的に重なるように、所定の向きに設置され、
前記電子機器に、
前記複数のセンサによる物体の検出結果に基づいて、当該複数のセンサの少なくともいずれかの向きのずれを判定するステップと、
前記第1センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れておらず、前記第2センサが検出した物体の位置と、前記第3センサが検出した物体の位置が所定以上離れている場合、当該第2センサの向きがずれていると判定するステップと、
を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図2】一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図3】一実施形態に係る送信信号の構成を説明する図である。
図4】一実施形態に係る電子機器における送信アンテナ及び受信アンテナの配置の例を示す図である。
図5】一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図6】一実施形態に係る電子機器の接続態様を説明するブロック図である。
図7】一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図8】一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図9】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
図10】一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図11】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
図12】一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図13】一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図14】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
図15】一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図16】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
図17】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信するセンサを複数備える電子機器において、センサの取付状態の適否を判定できれば、利便性を向上させることができる。本開示の目的は、複数のセンサによって物体検出を行う電子機器において、センサの取付状態の適否を判定し得る電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することにある。一実施形態によれば、複数のセンサによって物体検出を行う電子機器において、センサの取付状態の適否を判定し得る電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体を検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0012】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、バス、トラック、タクシー、オートバイ、自転車、船舶、航空機、救急車、消防車、ヘリコプター、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、本開示に含まれる自動車は、全長、全幅、全高、排気量、定員、及び積載量などによって限定されない。例えば、本開示の自働車には、排気量が660ccより大きい自動車、及び排気量が660cc以下の自動車、いわゆる軽自動車なども含まれる。また、本開示に含まれる自動車は、エネルギーの一部若しくは全部に電気を利用し、モータを利用する自動車も含まれる。
【0013】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0015】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0016】
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。
【0017】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体を検出することができる。
【0018】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0019】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200を検出することができる。例えば、図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0020】
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。また、物体200は、車道にあるものだけではなく、歩道、農場、農地、駐車場、空き地、道路上の空間、店舗内、横断歩道、水上、空中、側溝、川、他の移動体の中、建物、その他の構造物の内部若しくは外部など、適宜な場所にあるものとしてよい。本開示において、センサ5が検出する物体200には、無生物の他に、人、犬、猫、及び馬、その他の動物などの生物も含む。本開示のセンサ5が検出する物体200は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含む。
【0021】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。また、センサ5が移動体100に設置される位置は、移動体100の外部及び内部のいずれでもよい。移動体100の内部とは、例えば、移動体100のボディの内側、バンパーの内側、ヘッドライトの内部、車内の空間内、又は、これらの任意の組み合わせでよい。
【0022】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0023】
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0024】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、このような実施形態について説明する。本開示で利用されるFMCWレーダレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式の信号に限定されない。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。記憶部40に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFM-CW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0025】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とを含んで構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A~30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。図2に示すように、電子機器1は、受信部30A~30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0026】
制御部10は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、到来角推定部13、物体検出部14、検出範囲決定部15、及びパラメータ設定部16を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0027】
送信部20は、図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに、送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、位相制御部23Aと、位相制御部23Bとを区別しない場合、単に「位相制御部23」と記す。また、以下、増幅器24Aと、増幅器24Bとを区別しない場合、単に「増幅器24」と記す。また、以下、送信アンテナ25Aと、送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。
【0028】
受信部30は、図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A~31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A~30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0029】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0030】
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0031】
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0032】
一実施形態において、記憶部40は、送信アンテナ25から送信する送信波T及び受信アンテナ31から受信する反射波Rによって物体を検出する範囲を設定するための各種パラメータを記憶してよい。このようなパラメータについては、さらに後述する。
【0033】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0034】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。具体的には、信号生成部21は、パラメータ設定部16によって設定されたパラメータにしたがって、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10(パラメータ設定部16)から周波数情報を受け取ることにより、例えば77~81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0035】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0036】
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0037】
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0038】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0039】
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、図3に示す例において、サブフレーム1~サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、図3に示すフレーム1及びフレーム2など、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。
【0040】
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0041】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0042】
以下、電子機器1は、図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。
【0043】
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。例えば、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、パラメータ設定部16によって選択された周波数としてよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。位相制御部23が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の位相制御部23のそれぞれに供給されてよい。また、受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0044】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0045】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の増幅器24は、複数の位相制御部23のうちそれぞれ対応するものから供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいてそれぞれ増幅させてよい。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0046】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の送信アンテナ25は、複数の増幅器24のうちそれぞれ対応するものによって増幅された送信信号を、それぞれ送信波Tとして出力(送信)してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0047】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25を備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0048】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を2つ備える例を示している。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25を備えてもよい。一方、一実施形態において、電子機器1は、送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成するようにする場合、複数の送信アンテナ25を備えてよい。一実施形態において、電子機器1は、任意の複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
【0049】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものとしてよい。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A~受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0050】
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0051】
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0052】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0053】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0054】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
【0055】
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ-デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部11に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
【0056】
距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離FFT処理部11は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0057】
距離FFT処理部11は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部11は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部11は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。例えば、定誤差確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。
【0058】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体200を検出することができる。一実施形態において、上述のような動作は、電子機器1の制御部10が行うものとしてよい。
【0059】
距離FFT処理部11は、1つのチャープ信号(例えば図3に示すc1)に基づいて、所定の物体との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部12に供給されてよい。また、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果は、物体検出部14などにも供給されてよい。
【0060】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との相対速度を推定する。速度FFT処理部12は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部12は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。速度FFT処理部12は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0061】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部12は、チャープ信号のサブフレーム(例えば図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の物体との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、図1に示した移動体100と所定の物体200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、到来角推定部13に供給されてよい。また、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果は、物体検出部14などにも供給されてよい。
【0062】
到来角推定部13は、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の物体200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部13は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
【0063】
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部13によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部14に供給されてよい。
【0064】
物体検出部14は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部13の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部14は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、検出範囲決定部15に供給されてよい。また、物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、ECU50に供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0065】
検出範囲決定部15は、送信信号及び受信信号によって送信波Tを反射する物体を検出する範囲(以下、「物体検出範囲」とも記す)を決定する。ここで、検出範囲決定部15は、例えば電子機器1が搭載された移動体100の運転者などによる操作に基づいて、物体検出範囲を決定してもよい。例えば、検出範囲決定部15は、移動体100の運転者などによって駐車支援ボタンが操作された場合、駐車支援に適切な物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、例えばECU50からの指示に基づいて、物体検出範囲を決定してもよい。例えば、移動体100が後進しようとしているとECU50によって判定された場合、検出範囲決定部15は、ECU50からの指示に基づいて、移動体100が後進する際に適切な物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、例えば移動体100におけるステアリング、アクセル、又はギアなどの操作状態の変化に基づいて、物体検出範囲を決定してもよい。さらに、検出範囲決定部15は、物体検出部14によって物体を検出した結果に基づいて、物体検出範囲を決定してもよい。
【0066】
パラメータ設定部16は、送信波Tを反射波Rとして反射する物体を検出する送信信号及び受信信号を規定する各種のパラメータを設定する。すなわち、パラメータ設定部16は、送信アンテナ25から送信波Tを送信するための各種のパラメータ、及び受信アンテナ31から反射波Rを受信するための各種のパラメータを設定する。
【0067】
特に、一実施形態において、パラメータ設定部16は、上述の物体検出範囲において物体の検出を行うために、送信波Tの送信及び反射波Rの受信に係る各種のパラメータを設定してよい。例えば、パラメータ設定部16は、反射波Rを受信して物体検出範囲における物体を検出するために、反射波Rを受信したい範囲などを規定してもよい。また、例えば、パラメータ設定部16は、複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信して物体検出範囲における物体を検出するために、送信波Tのビームを向けたい範囲などを規定してもよい。その他、パラメータ設定部16は、送信波Tの送信及び反射波Rの受信を行うための種々のパラメータを設定してよい。
【0068】
パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータは、信号生成部21に供給されてよい。これにより、信号生成部21は、パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータに基づいて、送信波Tとして送信される送信信号を生成することができる。パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータは、物体検出部14に供給されてもよい。これにより、物体検出部14は、パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータに基づいて決定される物体検出範囲において、物体を検出する処理を行うことができる。
【0069】
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。一実施形態に係る電子機器1において、ECU50は、後述のように、複数のセンサ5を制御してよい。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0070】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25及び任意の数の受信アンテナ31を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、図3に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
【0071】
図4は、一実施形態に係る電子機器のセンサにおける送信アンテナ及び受信アンテナの配置の例を示す図である。
【0072】
一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、図4に示すように、例えば2つの送信アンテナ25A及び25A’を備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、図4に示すように、4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dを備えてよい。
【0073】
4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dは、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の受信アンテナ31を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の受信アンテナ31によって受信することで、電子機器1は、反射波Rが到来する方向を推定することができる。ここで、送信波Tの波長λは、送信波Tの周波数帯域を例えば77GHzから81GHzまでとする場合、その中心周波数79GHzの送信波Tの波長としてもよい。
【0074】
また、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
【0075】
また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、図4に示すように、例えば4つの送信アンテナ25A、25A’、25B、及び25B’を備えてもよい。
【0076】
ここで、2つの送信アンテナ25A及び25Bは、図4に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、2つの送信アンテナ25A’及び25B’も、図4に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、水平方向にも変化させることができる。
【0077】
一方、図4に示すように、2つの送信アンテナ25B及び25B’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、図4に示す配置において、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
【0078】
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行う場合、複数の送信波Tが送信される際の経路差に基づいて、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにしてよい。一実施形態に係る電子機器1において、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために、例えば位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
【0079】
複数の送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために制御する位相の量は、当該所定の方向に対応させて、記憶部40に記憶しておいてよい。すなわち、ビームフォーミングを行う際のビームの向きと、位相の量との関係は、記憶部40に記憶しておいてよい。
【0080】
このような関係は、電子機器1による物体検出を行う前に、例えばテスト環境における実測等に基づいて定められてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、過去の測定データなどのような所定のデータに基づいて、位相制御部23が適宜推定する関係としてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、位相制御部23は、例えば外部とネットワーク接続することにより、適当な関係を取得してもよい。
【0081】
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行うための制御は、制御部10及び位相制御部23の少なくとも一方が行ってよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、少なくとも位相制御部23を含む機能部を、送信制御部とも記す。
【0082】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナ25は、複数の送信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、受信アンテナ31も、複数の受信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成(ビームフォーミング)するように制御してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の方向にビームを形成してもよい。
【0083】
また、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は垂直方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、垂直方向成分を含んで変化させてもよい。
【0084】
さらに、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は水平方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでもよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、水平方向成分を含んで変化させてもよい。
【0085】
また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の少なくとも一部をカバーする方向にビームを形成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うように、複数の送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
【0086】
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の送信アンテナ25から出力される広周波数の帯域信号(例えばFMCW信号)の周波数情報に基づいて位相の補償値を算出し、複数の送信アンテナのそれぞれに周波数依存の位相補償を実施することができる。これにより、送信信号の取り得る全周波数帯域において、特定の方向に対してビームフォーミングを高精度に行うことができる。
【0087】
このようなビームフォーミングによれば、物体の検出が必要な特定の方向において、物体を検出可能な距離を拡大することができる。また、上述のようなビームフォーミングによれば、不要な方向からの反射信号を低減することができる。このため、距離・角度を検出する精度を向上させることができる。
【0088】
図5は、一実施形態に係る電子機器1によって実現されるレーダの検出距離の種別を説明する図である。
【0089】
一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、物体検出範囲の切り出し及び/又は送信波のビームフォーミングを行うことができる。このような、物体検出範囲の切り出し及び送信波のビームフォーミングの少なくとも一方を採用することで、送信信号及び受信信号によって物体を検出可能な距離の範囲を規定することができる。
【0090】
図5に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr1の範囲で物体検出を行うことができる。図5に示す範囲r1は、例えば超短距離レーダ(USRR:Ultra short range radar)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。また、図5に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr2の範囲で物体検出を行うことができる。図5に示す範囲r2は、例えば短距離レーダ(SRR:Short range radar)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。さらに、図5に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr3の範囲で物体検出を行うことができる。図5に示す範囲r3は、例えば中距離レーダ(MRR:Mid range radar)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、例えば範囲r1、範囲r2、及び範囲r3のいずれかの範囲を適宜切り替えて物体検出を行うことができる。このように検出距離の異なるレーダは、検出距離が長くなればなるほど、距離の測定精度が低くなる傾向にある。
【0091】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、電子機器1は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する距離の範囲を、物体検出範囲に応じて設定してもよい。
【0092】
次に、電子機器1におけるセンサ5とECU50との接続態様について説明する。
【0093】
図6は、一実施形態に係る電子機器におけるセンサ5とECU50との接続態様の例を示す図である。
【0094】
図6は、例えば図1に示したような移動体100とセンサ5との接続の態様を概略的に示す図である。一実施形態に係る電子機器1は、複数のセンサ5を備えてもよい。例えば、複数のセンサ5は、図6に示すように、センサ5a、センサ5b、センサ5c、及びセンサ5dのように、4つのセンサを含むものとしてよい。以下、一実施形態に係る電子機器1において、例えばセンサ5a、センサ5b、センサ5c、及びセンサ5dのような複数のセンサを区別しない場合、単に「センサ5」と記す。図2においては、ECU50にセンサ5が1つだけ接続された例について説明した。図6においては、ECU50にセンサ5が4つ接続された例について説明する。
【0095】
図6に示すように、一実施形態において、複数のセンサ5は、それぞれECU50に接続される。ECU50は、移動体100を動作させる際に用いられる例えばステアリング及び/又はギアなどに接続されてもよい。ECU50は、移動体100を動作させる際に用いられる他の機能部、例えばブレーキなどに接続されてもよい。ECU50は、移動体100を動作させる際に用いられる任意の機能部に接続されてもよく、移動体100において制御される任意の機能部に接続されてもよい。さらに、ECU50は、図6に示すように、報知部90に接続されてもよい。一実施形態において、これらの各機能部は、それぞれの接続によって、各種の情報を通信することができる。
【0096】
図6に示す複数のセンサ5のそれぞれは、図2に示したセンサ5と同様の構成にしてよい。図6に示す複数のセンサ5は、それぞれECU50に接続されることにより、ECU50によってそれぞれ独立に制御されてもよい。
【0097】
ECU50は、複数のセンサ5から出力される情報に基づいて、移動体100の周囲の物体の検出など、各種の検出を行うことができる。また、ECU50は、前述のような各種の検出を行う際に、複数のセンサ5をそれぞれ制御することができる。一実施形態において、ECU50は、複数のセンサ5のうち少なくともいずれかの向きのずれを判定する判定部として機能してもよい。以下、ECU50は、適宜「判定部50」とも記す。判定部50によって判定される、複数のセンサ5のうち少なくともいずれかの向きのずれについては、さらに後述する。
【0098】
ECU(Electronic Control Unit))50は、例えば移動体100が自動車である場合に、ステアリング及びギアなど、移動体100における各種の機能部の状態を取得することができる。ECU50には、ステアリング及びギアのみならず、スロットル及び/又はブレーキなどの機能部が接続されてもよい。移動体100におけるスロットル及び/又はブレーキなどは、例えば一般的な自動車を変速するために用いるものと同様のものとしてよい。一実施形態において、移動体100におけるスロットル及び/又はブレーキなどは、運転者が操作するものとしてもよいし、自動運転においてECU50によって操作されるものとしてもよい。
【0099】
報知部90は、移動体100の運転者などに所定の情報を報知する。報知部90は、例えば音、音声、光、文字、映像、及び振動など、移動体100の運転者の聴覚、視覚、触覚の少なくともいずれかを刺激する任意の機能部としてよい。具体的には、報知部90は、例えばブザー、スピーカ、LEDのような発光部、LCDのような表示部、及びバイブレータのような触感呈示部などとしてよい。一実施形態において、報知部90は、移動体100の周囲の物体を検出した結果の情報を、例えば移動体100の運転者などに報知する。例えば、一実施形態において、移動体100の周囲の物体が検出されると、視覚情報を報知する報知部90は、当該物体を検出した旨を発光又は表示などによって、移動体の運転者に報知してよい。また、一実施形態において、移動体100の周囲の物体が検出されると、聴覚情報を報知する報知部90は、当該物体を検出した旨を音又は音声などによって、移動体の運転者に報知してもよい。さらに、一実施形態において、報知部90は、複数のセンサ5のうち少なくともいずれかの向きのずれの判定結果の情報を、例えば移動体100の運転者などに報知してもよい。
【0100】
移動体100が運転者によって運転されている場合、ECU50は、移動体100の各種の機能部の状態を検出することができる。例えば、ECU50は、移動体100のステアリングがどの程度の切れ角(操舵角)に操作されているかを検出することができる。例えば、ECU50は、移動体100のギアが前進又は後進のいずれに操作されているか、及び、変速機が何速に操作されているか、などを検出することができる。また、例えば、ECU50は、移動体100のスロットル及びブレーキのオン/オフ、並びに、スロットル及びブレーキの度合いなどを検出してもよい。
【0101】
また、移動体100が運転者によって運転されている場合、上述したように、報知部90は、複数のセンサ5のうち少なくともいずれかの向きのずれの判定結果の情報を報知してよい。この場合、制御部10及び/又はECU50は、複数のセンサ5のうち少なくともいずれかの向きのずれの判定結果の情報を、報知部90から報知するように制御してもよい。
【0102】
一方、自動運転によって移動体100が運転されている場合、ECU50は、移動体100の各種の機能部を制御することができる。ここで、自動運転とは、例えば、日本政府及び米国運輸省道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration(NHTSA))によって定義されるレベル1~5の自動運転としてよい。例えば、ECU50は、センサ5による検出結果に応じて、移動体100のステアリングを自動制御してよい。ECU50は、センサ5による検出結果に応じて、移動体100のギアを(例えば前進/後進にするなど)自動制御してよい。また、ECU50は、センサ5による検出結果に応じて、ギアを何速に操作するかを自動制御してよい。また、例えば、ECU50は、センサ5による検出結果に応じて、移動体100のスロットル及びブレーキのオン/オフ、並びに、スロットル及びブレーキの度合いなどを自動制御してもよい。
【0103】
このように、電子機器1は、移動体100の動作を制御するECU50を備えてもよい。この場合、複数のセンサ5は、移動体100の周囲の物体を検出した結果の情報を、ECU50に供給してもよい。そして、ECU50は、複数のセンサ5の少なくともいずれかから供給された情報に基づいて、複数のセンサ5のうち少なくともいずれかの向きのずれを判定してもよい。
【0104】
次に、一実施形態に係る電子機器1における複数のセンサ5の向きのずれについて説明する。
【0105】
一般的に、例えば自動車のような移動体にレーダ装置のような物体の位置を検出するセンサを取り付ける場合、例えば工場出荷時などにセンサのキャリブレーションを行い、正しい位置が検出されるようにセンサの調整が行われる。例えば、自動車のような移動体のボディなどに複数のセンサを取り付ける場合、それぞれのセンサが移動体に取り付けられる方向(角度)などの調整のように、ハードウェア的にセンサの調整を行うことができる。また、このようにして取り付けられたそれぞれのセンサが検出する物体と移動体との相対的な位置関係が正しくなるように、ソフトウェア的にセンサのキャリブレーションを行うこともできる。このように調整及びキャリブレーションを行うことにより、複数のセンサそれぞれによって検出される結果に基づいて、移動体は周囲の物体に関する情報を正しく把握することができる。
【0106】
しかしながら、上述のように調整及びキャリブレーションが適切に行われたとしても、その後、センサが物理的な衝撃を受けるなどして、センサの取付方向(角度)などが多少変化することも想定される。例えば、走行中の移動体のセンサに他の移動体などが接触したり、移動体の車庫入れの際にセンサを壁に擦ったりすることもあり得る。このような場合、ボディ又はバンパーなどに取り付けられたセンサの取付方向(角度)などが多少変化し得る。また、センサが物理的な衝撃を直接受けない場合でも、例えば移動体がある程度の距離を走行する間に振動を受け続けることにより、センサの取付方向(角度)などが多少変化することも想定される。原因が何であれ、センサの取付方向(角度)などが変化すると、当該センサは物体の位置を正しく検出することができなくなる。
【0107】
このような事態に対処するために、センサの取付方向(角度)を検出する手段を別途用意して、センサの取付方向(角度)が変化したことを検出してもよい。これに対し、一実施形態に係る電子機器1は、複数のセンサの取付方向(角度)などが適切であるか否かを、当該複数のセンサによって判定する。以下、センサの取付方向(角度)を、「センサの向き」とも記す。また、センサの取付方向(角度)の変化、すなわちセンサの向きの変化を、「センサの向きのずれ」とも記す。また、一実施形態において、センサの向きのずれとは、例えば、センサが設置された向きからのずれとしてもよい。
【0108】
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。
【0109】
一実施形態に係る電子機器1は、複数のセンサ5を含んでよい。一実施形態に係る電子機器1において、ECU50は、複数のセンサ5をそれぞれ独立して制御してよい。ここで、複数のセンサ5についての制御とは、例えばセンサ5による物体検出範囲を変更したり、センサ5による送信波の到達距離を変更したりしてよい。また、複数のセンサ5についての制御とは、センサ5による物体検出範囲の切り出し及び/又はセンサ5による送信波のビームフォーミングについての制御としてもよい。
【0110】
まず、電子機器1が、複数のセンサ5として、センサ5を2つ備える例について説明する。図7は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。一実施形態に係る電子機器1が2つのセンサ5を備える場合、図7に示すように、移動体100の2つの箇所にセンサ5を2つ設置してよい。
【0111】
図7に示す例において、移動体100の左前部分にはセンサ5aが設置され、移動体100の右前部分にはセンサ5bが設置されている。また、図7に示すように、移動体100の左前部分のセンサ5aは方向Danを向き、移動体100の右前部分のセンサ5bは方向Dbnを向いている。このように、一実施形態に係る電子機器1において、複数のセンサ5は、それぞれ異なる位置において、それぞれの所定の向きに設置されてよい。以下、図7に示す例において、センサ5aによる物体の検出範囲を、検出範囲Taとも記す。また、センサ5bによる物体の検出範囲を、検出範囲Tbとも記す。センサ5a及びセンサ5bは、図7に示すように、それぞれ方向Dan及び方向Dbnを中心として、所定の中心角の検出範囲を有する。また、図7に示す例において、センサ5aからは送信波Taが送信されるものとし、センサ5bからは送信波Tbが送信されるものとしてもよい。
【0112】
また、一実施形態に係る電子機器1において、センサ5a及びセンサ5bは、図7に示すように、それぞれのセンサ5による検出範囲が部分的に重なるように設置される。図7に示す例において、センサ5aによる検出範囲Taの右端(時計回り方向の端)の一部と、センサ5bによる検出範囲Tbの左端(反時計回り方向の端)の一部とは、重なりを有している。すなわち、この検出範囲Taと検出範囲Tbとの重なりの部分においては、センサ5a及びセンサ5bは、どちらも物体を検出することができる。例えば、図7に示す物体P1は、座標(x1,y1)の位置に存在するものとする。この場合、物体P1は、センサ5aによる検出範囲Ta内に存在するとともに、センサ5bによる検出範囲Tb内にも存在する。したがって、センサ5a及びセンサ5bは、どちらも物体P1を検出することができる。このように、一実施形態に係る電子機器1において、第1センサ5a及び第2センサ5bは、第1センサ5aによる物体の検出範囲Taと第2センサ5bによる物体の検出範囲Tbとが部分的に重なるように、それぞれの所定の向きに設置されてよい。
【0113】
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1において、センサ5a及びセンサ5bが正しい向きに設置されたら、次に、それぞれのセンサ5のキャリブレーションを行ってよい。具体的には、例えば、図7に示すように、センサ5a及びセンサ5bのそれぞれが検出する物体P1の位置が、電子機器1において同じ位置を示すようにキャリブレーションを行う。すなわち、例えばセンサ5aによって検出された物体P1の座標は、移動体100の正面方向における地点(x1,y1)であったとする。この場合、センサ5bによって検出された物体P1の座標も、移動体100の正面方向における地点(x1,y1)となるようにキャリブレーションを行う。このようなキャリブレーションが行われると、電子機器1において、物体P1は、センサ5a及びセンサ5bの双方によって、同じ位置(x1,y1)に検出される。
【0114】
図7に示すようなセンサ5の向きの調整及びセンサ5のキャリブレーションが行われるのは、例えば移動体100の工場出荷の時などとしてもよいし、車検などの各種の点検の時などとしてもよい。この場合、例えば物体P1は、反射率の高いコーナリフレクタなどを用いてもよい。コーナリフレクタなどの物体P1を既知の地点(x1,y1)に配置しておき、それをセンサ5a及び5bで検出してキャリブレーションを行ってもよい。
【0115】
一方、図7に示すようなセンサ5の向きの調整及びセンサ5のキャリブレーションが行われるのは、移動体100の工場出荷の時又は各種の点検の時などに限定されず、他のタイミングで行ってもよい。例えば、移動体100の通常の走行時等に、物体P1として適切な物体がセンサ5a及び5bによって検出された際に、センサ5の向きの調整及びセンサ5のキャリブレーションが行われるようにしてもよい。図7に示すようなセンサ5の向きの調整及びセンサ5のキャリブレーションが行われるのは、各種のタイミングとしてよい。例えば、そのようなタイミングとして、移動体100が一定距離走行した場合、移動体100が加速度センサ及び/又はジャイロセンサなどで所定値以上の振動を検知した場合、前回のキャリブレーションから所定時間経過した場合、ユーザがキャリブレーション開始指示を入力した場合、移動体100が速度センサ及び/又はジャイロセンサなどで所定値以上の加速度や速度を検知した場合など、その他の場合を適宜任意に組み合わせてもよい。ここで、移動体100が加速度センサ及び/又はジャイロセンサなどで所定値以上の振動を検知した場合とは、例えば、所定の振動数以上の揺れを検知した場合を含むとしてもよい。
【0116】
図7に示すようにセンサ5の向きの調整及びセンサ5のキャリブレーションが行われたら、電子機器1は、例えば通常の走行時などにおいて、移動体100の周囲に存在する物体を検出することができる。すなわち、電子機器1は、移動体100の周囲に存在する物体を検出して、報知部90によって移動体100の運転者などに知らせたり、又は移動体100に役立てたりしてよい。
【0117】
上述のように、センサ5の向きの調整及びセンサ5のキャリブレーションが行われた後に、何らかの原因により、センサ5の向きがずれることがある。例えば図7に示すような状況において、センサ5aが何かに接触するなどして、センサ5aの向きが少しずれたとする。
【0118】
図8は、センサ5aの向きが少しずれた様子を示す図である。図8に示すように、例えばセンサ5aが何かに接触するなどして、センサ5aの向きが反時計回りにφ1だけずれたとする。この場合、センサ5aの向きは、方向Danから方向Dan’にずれる。これに伴って、図8に示すように、センサ5aによる検出範囲も、検出範囲Taから検出範囲Ta’にずれている。
【0119】
図8においても、図7と同様に、物体P1は、移動体100の正面方向における位置(x1,y1)に存在するものとする。このような状況において、センサ5a及びセンサ5bのそれぞれによって物体P1を検出することを検討する。図8に示すように、センサ5a及びセンサ5bのそれぞれが検出する物体P1の位置は、電子機器1において同じ位置にならない。センサ5bは、検出範囲Tbにおいて、物体P1が依然として地点(x1,y1)に存在するものとして検出している。一方、センサ5aは、検出範囲Taが検出範囲Ta’にずれたため、物体P1が位置P1’に存在するものとして検出する。ここで、位置P1’の座標は座標(x1’,y1’)であるものとする。向きがずれたセンサ5a
によって検出された物体の位置は、検出範囲Ta’において割り当てられた座標に基づいて特定される。実際には座標(x1,y1)の位置に存在する物体P1は、検出範囲Ta’の右端(時計回り方向の端)において検出されている。この検出範囲Ta’は、センサ5aの向きがずれる前は検出範囲Taに対応していた。したがって、センサ5aは、物体P1が検出範囲Taの右端(時計回り方向の端)すなわち位置P1’(座標(x1’,y1’))に存在するものとして検出する。
【0120】
このように、センサ5a及びセンサ5bのいずれかの向きがずれている場合、電子機器1において同じ物体P1の位置を検出しても、その位置は同じにならない。このことから、一実施形態において、センサ5a及びセンサ5bによって同じ物体P1の位置を検出した際に、その位置(例えば座標)が同じにならない場合、センサ5a及びセンサ5bの一方の向きがずれていると判定してよい。逆に、一実施形態において、センサ5a及びセンサ5bによって同じ物体P1の位置を検出した際に、その位置(例えば座標)がほぼ同じになる場合、センサ5a及びセンサ5bの向きはずれていないと判定してよい。このような判定は、例えばECU(判定部)50が判定してもよい。ここでは、センサ5a及びセンサ5bのどちらがずれているか判定することはできないが、センサ5a及びセンサ5bのいずれか一方の向きがずれていることは判定できる。センサ5a及びセンサ5bのいずれか一方の向きがずれている場合に、センサ5a及びセンサ5bのどちらがずれているかを判定する動作については、さらに後述する。
【0121】
図9は、電子機器1において、図8に示したように、2つのセンサのいずれかの向きがずれているか否か判定する動作を説明するフローチャートである。図9に示す動作が開始する時点において、上述したような複数のセンサ5の向きの調整及び複数のセンサ5のキャリブレーションは完了しているものとする。また、図9に示す電子機器1の動作は、例として、制御部10及び/又はECU(判定部)50によって制御されるものとしてよい。以下、図9に示す電子機器1の動作は、ECU50によって制御されるものとして説明する。
【0122】
図9に示す動作が開始すると、ECU50は、電子機器1の第1センサ(例えばセンサ5a)によって物体を検出する(ステップS11)。次に、ECU50は、電子機器1の第2センサ(例えばセンサ5b)によって物体を検出する(ステップS12)。
【0123】
次に、ECU50は、第1及び第2のセンサによって検出された同じ物体(例えば物体P1)の位置(例えば座標)が所定以上に離れているか否か判定する(ステップS13)。ステップS13において、同じ物体の位置が所定以上に離れているか否かを判定するために、同じ位置とみなせる距離を予め設定し、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。ここで、同じ位置とみなせる距離は、電子機器1による物体検出の精度をはじめとして各種の要素に基づいて決定してよい。例えば、センサ5a及びセンサ5bによって検出された同じ物体の位置同士の距離が5cm以内であれば、センサ5a及びセンサ5bは同じ物体を同じ位置において検出しているとしてよい。この場合、センサ5a及びセンサ5bによって検出された同じ物体の位置同士の距離が5cmを超える場合、センサ5a及びセンサ5bは同じ物体を異なる位置において検出しているとしてよい。
【0124】
ステップS13において同じ物体の位置が所定以上に離れていないと判定される場合、ECU50は、第1及び第2のセンサのいずれもずれていないと判定する(ステップS14)。一方、ステップS13において同じ物体の位置が所定以上に離れていると判定される場合、ECU50は、第1及び第2のセンサのいずれかがずれていると判定する(ステップS15)。
【0125】
このように、一実施形態において、判定部50は、複数のセンサ5による物体の検出結果に基づいて、複数のセンサ5の少なくともいずれかの向きのずれを判定してよい。より具体的には、判定部50は、複数のセンサ5によってそれぞれ検出される物体の位置に基づいて、複数のセンサ5の少なくともいずれかが設置された向きからずれているか否か判定してもよい。また、判定部50は、第1センサ5a及び第2センサ5bによる同じ物体の検出結果に基づいて、第1センサ5a及び第2センサ5bのいずれかの向きのずれを判定してもよい。例えば、判定部50は、第1センサ5a及び第2センサ5bによってそれぞれ検出される同じ物体の位置が所定の距離以上離れる場合、第1センサ5a及び第2センサ5bのいずれかの向きがずれていると判定してもよい。
【0126】
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数のセンサの取付方向(角度)などが適切であるか否かを、当該複数のセンサによって判定することができる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数のセンサの取付方向(角度)などが適切であるか否かを判定する際に、例えばセンサの取付状態を検出するための他の機能部などを用いなくてもよい。
【0127】
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数のセンサによって物体検出を行う電子機器において、センサの取付状態の適否を判定し得る。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信するセンサを複数備える電子機器において、利便性を向上させることができる。
【0128】
次に、例えば図7に示すような状況において、センサ5aが何かに接触するなどして、センサ5aの向きが、図8に示すような状況よりも大きくずれた場合について説明する。
【0129】
図10は、センサ5aの向きが多少ずれた様子を示す図である。図10に示すように、例えばセンサ5aが何かに接触するなどして、センサ5aの向きが反時計回りにφ2だけずれたとする。この場合、センサ5aの向きは、方向Danから方向Dan”にずれる。これに伴って、図10に示すように、センサ5aによる検出範囲も、検出範囲Taから検出範囲Ta”にずれている。
【0130】
図10においては、物体Q1は、移動体100の正面方向のやや左側における位置(x11,y11)に存在するものとする。このような状況において、センサ5a及びセンサ5bのそれぞれによって物体Q1を検出することを検討する。図10に示すように、物体Q1の位置は、センサ5bによる検出範囲Tb内に存在しない。このため、センサ5bは、検出範囲Tbにおいて、物体Q1を検出することができない。一方、センサ5aは、検出範囲Taが検出範囲Ta”にずれたため、物体Q1が位置Q1’に存在するものとして検出する。ここで、位置Q1’の座標は(x11’,y11’)であるものとする。向き
がずれたセンサ5aによって検出された物体の位置は、検出範囲Ta”において割り当てられた座標に基づいて特定される。実際には座標(x11,y11)の位置に存在する物体Q1は、検出範囲Ta”の右端(時計回り方向の端)付近において検出されている。この検出範囲Ta”は、センサ5aの向きがずれる前は検出範囲Taに対応していた。したがって、センサ5aは、物体Q1が検出範囲Taの右端(時計回り方向の端)付近すなわち位置Q1’(座標(x11’,y11’))に存在するものとして検出する。
【0131】
図10に示すように、位置Q1’は、センサ5bによる検出範囲Tb内に存在するとともに、ずれる前のセンサ5aによる検出範囲Ta内に存在した位置である。すなわち、位置Q1’は、センサ5a及びセンサ5bがそれぞれの所定の向き(方向Dan及び方向Dbn)に設置された際(ずれる前)に、センサ5a及びセンサ5bによる物体の検出範囲(Ta及びTb)が部分的に重なっていた領域に存在する。したがって、仮に、センサ5a及びセンサ5bがそれぞれ設置された時点の向き(方向Dan及び方向Dbn)からずれていなければ、センサ5a及びセンサ5bは、どちらも位置Q1’において物体を検出するはずである。しかしながら、上述のように、この場合、センサ5aは物体Q1を検出する(電子機器1における位置Q1’)が、センサ5bは物体Q1を検出しない。
【0132】
このように、センサ5a及びセンサ5bによる物体の検出範囲(Ta及びTb)が部分的に重なっていた領域に存在する物体が、一方のセンサ5によって検出されるも他方のセンサ5によって検出されない場合があり得る。このような場合、センサ5a及びセンサ5bの一方の向きがずれていると判定してよい。このような判定は、例えばECU(判定部)50が判定してもよい。また、センサ5a及びセンサ5bによる物体の検出範囲(Ta及びTb)が部分的に重なっていた領域に存在する物体が、センサ5a及びセンサ5bの両方によって検出される場合、図8及び図9において説明した動作を行ってよい。ここでも、センサ5a及びセンサ5bのどちらがずれているか判定することはできないが、センサ5a及びセンサ5bのいずれか一方の向きがずれていることは判定できる。センサ5a及びセンサ5bのいずれか一方の向きがずれている場合に、センサ5a及びセンサ5bのどちらがずれているかを判定する動作については、さらに後述する。
【0133】
図11は、電子機器1において、図10に示したように、2つのセンサのいずれかの向きがずれているか否か判定する動作を説明するフローチャートである。図11に示す動作が開始する時点において、上述したような複数のセンサ5の向きの調整及び複数のセンサ5のキャリブレーションは完了しているものとする。また、図11に示す電子機器1の動作は、例として、制御部10及び/又はECU(判定部)50によって制御されるものとしてよい。以下、図11に示す電子機器1の動作は、ECU50によって制御されるものとして説明する。
【0134】
図11に示す動作が開始すると、ECU50は、図9に示した動作と同様に、ステップS11及びステップS12の処理を行う。
【0135】
次に、ECU50は、第1及び第2のセンサ5による検出範囲のうち、もともと(例えばセンサ5の設置時に)部分的に重なっていた検出範囲において、第1及び第2のセンサ5のうち一方のみが物体を検出したか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23において、第1及び第2のセンサ5のうち一方のみが物体を検出するとは、例えば、第1のセンサ5が検出する物体を第2のセンサ5が検出しない状態としてよい。また、ステップS23において、第1及び第2のセンサ5のうち一方のみが物体を検出するとは、例えば、第2のセンサ5が検出する物体を第1のセンサ5が検出しない状態としてよい。
【0136】
ステップS23において物体を検出するのが一方のセンサ5のみでない場合、同じ物体の位置が所定以上に離れていないと判定される場合、ECU50は、第1及び第2のセンサのいずれもずれていないと判定する(ステップS14)ここで、物体を検出するのが一方のセンサ5のみでない場合とは、例えば、第1及び第2のセンサ5のうち両方が物体を検出する場合としてよい。また、物体を検出するのが一方のセンサ5のみでない場合とは、例えば、第1及び第2のセンサ5のうち一方が検出する物体を他方も検出する場合としてもよい。一方、ステップS23において一方のセンサ5のみが物体を検出する場合、ECU50は、第1及び第2のセンサのいずれかがずれていると判定する(ステップS15)。
【0137】
このように、一実施形態において、判定部50は、複数のセンサ5による物体の検出結果に基づいて、複数のセンサ5の少なくともいずれかの向きのずれを判定してよい。より具体的には、判定部50は、複数のセンサ5によってそれぞれ検出される物体の位置に基づいて、複数のセンサ5の少なくともいずれかが設置された向きからずれているか否か判定してもよい。また、判定部50は、第1センサ5a及び第2センサ5bによる同じ物体の検出結果に基づいて、第1センサ5a及び第2センサ5bのいずれかの向きのずれを判定してもよい。例えば、第1センサ5a及び第2センサ5bがそれぞれの所定の向きに設置された際にそれぞれのセンサによる物体の検出範囲が部分的に重なっていた領域を重複領域とする。この場合、判定部50は、重複領域において、第1センサ5a及び第2センサ5bのうち一方によって検出される物体が他方によって検出されない場合、第1センサ5a及び第2センサ5bのいずれかの向きがずれていると判定してもよい。
【0138】
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数のセンサの取付方向(角度)などが適切であるか否かを、当該複数のセンサによって判定することができる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数のセンサの取付方向(角度)などが適切であるか否かを判定する際に、例えばセンサの取付状態を検出するための他の機能部などは不要になる。
【0139】
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数のセンサによって物体検出を行う電子機器において、センサの取付状態の適否を判定し得る。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信するセンサを複数備える電子機器において、利便性を向上させることができる。
【0140】
次に、電子機器1が、複数のセンサ5として、センサ5を3つ以上備える例について説明する。一実施形態に係る電子機器1は、センサ5を3つ以上備えることにより、2つのセンサ5のいずれかの向きがずれていると判定される際に、いずれのセンサ5の向きがずれているか判定することができる。
【0141】
図12は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。一実施形態に係る電子機器1が4つのセンサ5を備える場合、図12に示すように、移動体100の4つの箇所にセンサ5を4つ設置してよい。
【0142】
図12に示す例は、図7に示した移動体100において、さらに2つのセンサ5を設置したものとしてよい。したがって、図12において、移動体100の左前部分に設置されたセンサ5a、及び、移動体100の右前部分に設置されたセンサ5bについては、より詳細な説明を省略する。
【0143】
図12に示す例において、移動体100の右後部分にはセンサ5cが設置され、移動体100の左後部分にはセンサ5dが設置されている。また、図12に示すように、移動体100の右後部分のセンサ5cは方向Dcnを向き、移動体100の左後部分のセンサ5dは方向Ddnを向いている。このように、一実施形態に係る電子機器1において、複数のセンサ5は、それぞれ異なる位置において、それぞれの所定の向きに設置されてよい。以下、図12に示す例において、センサ5cによる物体の検出範囲を、検出範囲Tcとも記す。また、センサ5dによる物体の検出範囲を、検出範囲Tdとも記す。センサ5c及びセンサ5dは、図12に示すように、それぞれ方向Dcn及び方向Ddnを中心として、所定の中心角の検出範囲を有する。また、図12に示す例において、センサ5cからは送信波Tcが送信されるものとし、センサ5dからは送信波Tdが送信されるものとしてもよい。
【0144】
一実施形態に係る電子機器1において、センサ5b及びセンサ5cは、図12に示すように、それぞれのセンサ5による検出範囲が部分的に重なるように設置される。図12に示す例において、センサ5bによる検出範囲Tbの右端(時計回り方向の端)の一部と、センサ5cによる検出範囲Tcの左端(反時計回り方向の端)の一部とは、重なりを有している。すなわち、この検出範囲Tbと検出範囲Tcとの重なりの部分においては、センサ5b及びセンサ5cは、どちらも物体を検出することができる。例えば、図12に示す物体P2は、座標(x2,y2)の位置に存在するものとする。この場合、物体P2は、センサ5bによる検出範囲Tb内に存在するとともに、センサ5cによる検出範囲Tc内にも存在する。したがって、センサ5b及びセンサ5cは、どちらも物体P2を検出することができる。
【0145】
一実施形態に係る電子機器1において、センサ5c及びセンサ5dは、図12に示すように、それぞれのセンサ5による検出範囲が部分的に重なるように設置される。図12に示す例において、センサ5cによる検出範囲Tcの右端(時計回り方向の端)の一部と、センサ5dによる検出範囲Tdの左端(反時計回り方向の端)の一部とは、重なりを有している。すなわち、この検出範囲Tcと検出範囲Tdとの重なりの部分においては、センサ5c及びセンサ5dは、どちらも物体を検出することができる。例えば、図12に示す物体P3は、座標(x3,y3)の位置に存在するものとする。この場合、物体P3は、センサ5cによる検出範囲Tc内に存在するとともに、センサ5dによる検出範囲Td内にも存在する。したがって、センサ5c及びセンサ5dは、どちらも物体P3を検出することができる。
【0146】
一実施形態に係る電子機器1において、センサ5d及びセンサ5aは、図12に示すように、それぞれのセンサ5による検出範囲が部分的に重なるように設置される。図12に示す例において、センサ5dによる検出範囲Tdの右端(時計回り方向の端)の一部と、センサ5aによる検出範囲Taの左端(反時計回り方向の端)の一部とは、重なりを有している。すなわち、この検出範囲Tdと検出範囲Taとの重なりの部分においては、センサ5d及びセンサ5aは、どちらも物体を検出することができる。例えば、図12に示す物体P4は、座標(x4,y4)の位置に存在するものとする。この場合、物体P4は、センサ5dによる検出範囲Td内に存在するとともに、センサ5aによる検出範囲Ta内にも存在する。したがって、センサ5d及びセンサ5aは、どちらも物体P4を検出することができる。
【0147】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、複数のセンサ5は、第1センサ5a及び第2センサ5a並びに第3センサ5c(及び/又は5d)を含んでもよい。また、第3センサ5c(又は5d)は、第1センサ5a又は第2センサ5bによる物体の検出範囲(Ta又はTb)と、第3センサ5c(又は5d)による物体の検出範囲Tc(又はTd)とが部分的に重なるように、所定の向きに設置されてよい。
【0148】
図12に示すように、一実施形態に係る電子機器1において、センサ5a、センサ5b、センサ5c、及びセンサ5dが正しい向きに設置されたら、次に、図7において説明したのと同様に、それぞれのセンサ5のキャリブレーションを行ってよい。
【0149】
上述のように、センサ5の向きの調整及びセンサ5のキャリブレーションが行われた後に、何らかの原因により、センサ5の向きがずれることがある。例えば図12に示すような状況において、センサ5aが何かに接触するなどして、センサ5aの向きが少しずれたとする。
【0150】
図13は、センサ5aの向きが少しずれた様子を示す図である。図13に示すように、例えばセンサ5aが何かに接触するなどして、センサ5aの向きが反時計回りにφ1だけずれたとする。この場合、センサ5aの向きは、方向Danから方向Dan’にずれる。これに伴って、図13に示すように、センサ5aによる検出範囲も、検出範囲Taから検出範囲Ta’にずれている。図13は、センサ5a、センサ5b、センサ5c、及びセンサ5dが設置された移動体100において、図8に示したのと同じ状況が発生した状態を示している。したがって、図8における説明と同様の説明は、適宜省略する。
【0151】
図8及び図9において説明したように、センサ5a及びセンサ5bのように2つのセンサを設置する場合、センサ5a及びセンサ5bのいずれか一方の向きがずれていることは判定できる。しかしながら、図8及び図9において説明した動作においては、センサ5a及びセンサ5bのどちらがずれているか判定することはできなかった。これに対し、図13に示すように、3つ以上のセンサ5を含む電子機器1においては、センサ5a及びセンサ5bのいずれか一方の向きがずれている場合、センサ5a及びセンサ5bのどちらがずれているかを判定することができる。以下、このような動作について説明する。
【0152】
図13に示すように、センサ5b及びセンサ5cはどちらも、同じ物体P2を、同じ位置(座標(x2,y2))において検出している。したがって、図8及び図9において説明した動作をセンサ5b及びセンサ5cについて適用することで、センサ5b及びセンサ5cは、いずれもずれていないと判定してよい。また、図13に示すように、センサ5c及びセンサ5dはどちらも、同じ物体P3を、同じ位置(座標(x3,y3))において検出している。したがって、図8及び図9において説明した動作をセンサ5c及びセンサ5dについて適用することで、センサ5c及びセンサ5dは、いずれもずれていないと判定してよい。
【0153】
一方、図13に示すように、センサ5d及びセンサ5aのそれぞれが検出する物体P4の位置は、電子機器1において同じ位置にならない。センサ5dは、検出範囲Tdにおいて、物体P4が地点(x4,y4)に存在するものとして検出している。これに対し、センサ5aは、検出範囲Taが検出範囲Ta’にずれたため、物体P4が位置P4’に存在するものとして検出する。ここで、位置P4’の座標は座標(x4’,y4’)であるものとする。向きがずれたセンサ5aによって検出された物体の位置は、検出範囲Ta’において割り当てられた座標に基づいて特定される。実際には座標(x4,y4)の位置に存在する物体P4は、検出範囲Ta’の左端(反時計回り方向の端)寄りにおいて検出されている。この検出範囲Ta’は、センサ5aの向きがずれる前は検出範囲Taに対応していた。したがって、センサ5aは、物体P4が検出範囲Taの左端(反時計回り方向の端)寄り、すなわち位置P4’(座標(x4’,y4’))に存在するものとして検出する。したがって、図8及び図9において説明した動作をセンサ5d及びセンサ5aについて適用することで、センサ5d及びセンサ5aは、いずれかがずれていると判定してよい。
【0154】
以上の結果をまとめると、次のようになる。すなわち、センサ5a及びセンサ5bは、いずれかがずれていると判定される。また、センサ5b及びセンサ5cは、いずれもずれていないと判定される。また、センサ5c及びセンサ5dは、いずれもずれていないと判定される。また、センサ5d及びセンサ5aは、いずれかがずれていると判定される。これらの結果から、判定部50は、ずれているセンサ5がセンサ5aであると判定することができる。
【0155】
また、例えば、センサ5c及びセンサ5dのうち、センサ5cのみが設置された場合、センサ5b及びセンサ5cがどちらも同じ物体P2を同じ位置において検出すれば、センサ5bの向きはずれていないと判定してもよい。また、例えば、センサ5c及びセンサ5dのうち、センサ5dのみが設置された場合、センサ5d及びセンサ5aが同じ物体P2を異なる位置において検出すれば、センサ5aの向きはずれていると判定してもよい。
【0156】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、判定部50は、第1センサ5a及び第2センサ5bのいずれかの向きがずれていると判定する場合、次のようにしてもよい。すなわち、判定部50は、第1センサ5a又は第2センサ5b及び第3センサ5c(又は5d)による同じ物体の検出結果に基づいて、第1センサ5a及び第2センサ5bのいずれの向きがずれているか判定してもよい。
【0157】
図14は、電子機器1において、図13に示したように、センサ5a及びセンサ5bのような2つのセンサのいずれの向きがずれているか判定する動作を説明するフローチャートである。図14に示す動作が開始する時点は、例えば図9及び図11におけるステップS15のように、例えばセンサ5a及びセンサ5bのような2つのセンサ5のいずれかがずれていると判定された時点としてよい。図14に示す電子機器1の動作は、例として、制御部10及び/又はECU(判定部)50によって制御されるものとしてよい。以下、図14に示す電子機器1の動作は、ECU50によって制御されるものとして説明する。
【0158】
図14に示す動作が開始すると、ECU50は、電子機器1の第3センサ(例えばセンサ5c又はセンサ5d)によって物体を検出する(ステップS31)。
【0159】
次に、ECU50は、第1センサ5aが検出する物体の位置と、第1センサ5aが検出する物体と同じ物体として第3センサ5c又は5dが検出する物体の位置とが、所定以上に離れているか否か判定する(ステップS32)。ステップS32において物体が所定以上に離れているか否か判定する動作は、図9におけるステップS13と同様に行ってよい。
【0160】
ステップS32において2つのセンサ5によって検出される物体の位置が所定以上に離れていると判定される場合、ECU50は、第1センサ5aの向きがずれていると判定してよい(ステップS33)。
【0161】
一方、ステップS32において2つのセンサ5によって検出される物体の位置が所定以上に離れていないと判定される場合、ECU50は、ステップS34の動作を行ってよい。ステップS34において、ECU50は、第2センサ5bが検出する物体の位置と、第2センサ5bが検出する物体と同じ物体として第3センサ5c又は5dが検出する物体の位置とが、所定以上に離れているか否か判定する(ステップS34)。ステップS34において物体が所定以上に離れているか否か判定する動作も、図9におけるステップS13と同様に行ってよい。
【0162】
ステップS34において2つのセンサ5によって検出される物体の位置が所定以上に離れていると判定される場合、ECU50は、第2センサ5bの向きがずれていると判定してよい(ステップS35)。
【0163】
以上説明したように、電子機器1は、センサ5を3つ以上備えることにより、センサ5a及びセンサ5bのいずれか一方の向きがずれている場合に、センサ5a及びセンサ5bのどちらがずれているかを判定することができる。
【0164】
次に、電子機器1が、複数のセンサ5として、センサ5を3つ以上備える場合において、2つのセンサ5がたまたま同じ向きに同じ程度ずれた例について説明する。
【0165】
図15は、図13に示したようにセンサ5aの向きが少しずれるとともに、さらにセンサ5bの向きも少しずれた様子を示す図である。図15に示すように、例えばセンサ5aが何かに接触するなどして、センサ5aの向きが反時計回りにφ1だけずれるとともに、例えばセンサ5bが何かに接触するなどして、センサ5bの向きも反時計回りにφ1だけずれたとする。この場合、センサ5aの向きは、方向Danから方向Dan’にずれる。これに伴って、図15に示すように、センサ5aによる検出範囲も、検出範囲Taから検出範囲Ta’にずれている。また、この場合、センサ5bの向きは、方向Dbnから方向Dbn’にずれる。これに伴って、図15に示すように、センサ5bによる検出範囲も、検出範囲Tbから検出範囲Tb’にずれている。
【0166】
図15においても、図13と同様に、物体P1は、移動体100の正面方向における位置(x1,y1)に存在するものとする。このような状況において、センサ5a及びセンサ5bのそれぞれによって物体P1を検出することを検討する。図15に示すように、センサ5aは、検出範囲Taが検出範囲Ta’にずれたため、物体P1が位置P1’に存在するものとして検出する。ここで、位置P1’の座標は座標(x1’,y1’)であるものとする。また、センサ5bも、検出範囲Tbが検出範囲Tb’にずれたため、物体P1が位置P1’に存在するものとして検出する。すなわち、この場合、センサ5a及びセンサ5bは、たまたま同じ方向に同じ角度だけずれている。このような場合、電子機器1において例えば図8及び図9の動作を行ったとしても、センサ5a及びセンサ5bのいずれかの向きがずれていると判定されない。
【0167】
しかしながら、図15に示す状況においては、図13に示す状況と同様に、センサ5dは、検出範囲Tdにおいて、物体P4が地点(x4,y4)に存在するものとして検出している。これに対し、センサ5aは、検出範囲Taが検出範囲Ta’にずれたため、物体P4が位置P4’に存在するものとして検出する。同様に、図15に示す状況において、センサ5cは、検出範囲Tcにおいて、物体P2が地点(x2,y2)に存在するものとして検出している。これに対し、センサ5bは、検出範囲Tbが検出範囲Tb’にずれたため、物体P2が位置P2’に存在するものとして検出する。このような場合、センサ5a及びセンサ5bは、どちらも同じ方向に同じだけずれていると判定することができる。
【0168】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、判定部50は、第1センサ5a及び第2センサ5bによってそれぞれ検出される同じ第1物体の位置が所定の距離内にある場合、次のようにしてもよい。すなわち、判定部50は、第1センサ5a又は第2センサ5b及び第3センサ5c(又は5d)による同じ第2物体の検出結果に基づいて、第1センサ5a及び第2センサ5bの双方の向きがずれているか判定してもよい。
【0169】
図16は、電子機器1において、図15に示したように、センサ5a及びセンサ5bのような2つのセンサがどちらも同じ方向に同じだけずれていると判定する動作を説明するフローチャートである。
【0170】
図16に示す動作が開始する時点は、例えば図9及び図11に示した動作と同様に、複数のセンサ5の向きの調整及び複数のセンサ5のキャリブレーションは完了している時点としてよい。
【0171】
図16に示す動作が開始すると、ECU50は、電子機器1の第1センサ(例えばセンサ5a)によって物体を検出する(ステップS11)。次に、ECU50は、電子機器1の第2センサ(例えばセンサ5b)によって物体を検出する(ステップS12)。
【0172】
次に、ECU50は、第1及び第2のセンサによって検出された同じ物体(例えば物体P1)の位置(例えば座標)が所定以上に離れているか否か判定する(ステップS13)。ステップS13において、同じ物体の位置が所定以上に離れているか否かを判定するために、同じ位置とみなせる距離を予め設定し、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。ここで、同じ位置とみなせる距離は、電子機器1による物体検出の精度をはじめとして各種の要素に基づいて決定してよい。例えば、センサ5a及びセンサ5bによって検出された同じ物体の位置同士の距離が5cm以内であれば、センサ5a及びセンサ5bは同じ物体を同じ位置において検出しているとしてよい。この場合、センサ5a及びセンサ5bによって検出された同じ物体の位置同士の距離が5cmを超える場合、センサ5a及びセンサ5bは同じ物体を異なる位置において検出しているとしてよい。
【0173】
ステップS13において同じ物体の位置が所定以上に離れていると判定される場合、ECU50は、第1及び第2のセンサのいずれかがずれていると判定する(ステップS15)。この場合、図14に示す動作を行ってもよい。
【0174】
一方、ステップS13において同じ物体の位置が所定以上に離れていると判定されない場合、ECU50は、第3センサ5c(又は5d)によって物体を検出する(ステップS41)。ステップS41において、ECU50は、第3センサ5c(又は5d)が検出する物体の位置と、第3センサ5cが検出する物体と同じ物体として第1センサ5a及び第2センサ5bが検出する物体の位置とが、所定以上に離れているか否か判定する(ステップS42)。ステップS42において物体が所定以上に離れているか否か判定する動作も、図9におけるステップS13と同様に行ってよい。
【0175】
ステップS42において、両物体の位置が所定以上に離れている場合、ECU50は、第1及び第2センサ5a及び5bの向きがずれていると判定してよい(ステップS43)。
【0176】
以上説明したように、電子機器1は、センサ5を3つ以上備えることにより、2つのセンサ5がたまたま同じ向きに同じ程度ずれているか否かを判定することができる。
【0177】
次に、電子機器1において、センサ5の向きがずれている場合の動作について説明する。
【0178】
一実施形態に係る電子機器1において、センサ5の向きがずれていると判定された場合、例えばキャリブレーションによって修正可能な程度のずれであれば、キャリブレーションを行うことにより当該ずれを修正してもよい。一方、一実施形態に係る電子機器1において、センサ5の向きがずれていると判定された場合、例えばキャリブレーションによって修正不可能な程度のずれであれば、センサ5がずれている旨を報知部90によってユーザに通知してもよい。
【0179】
図17は、電子機器1において、センサ5の向きがずれていると判定された場合の動作を説明するフローチャートである。図17に示す動作が開始する時点は、判定部50によっていずれかのセンサ5の向きがずれていると判定された時点としてよい。例えば、図17に示す動作が開始する時点は、図9及び図11のステップS15の後、図14のステップS33及びステップS35の後、並びに図16のステップS43の後などとしてよい。
【0180】
図17に示す動作が開始すると、ECU50は、ずれていると判定されたセンサ5のずれが所定以上の度合いであるか否か判定する(ステップS51)。ステップS51においてセンサ5のずれと比較される所定の度合いのずれは、例えば電子機器1においてセンサ5のキャリブレーションが可能な程度のずれとして、予め記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0181】
ステップS51においてセンサ5のずれが所定以上の度合いでないと判定される場合、ECU50は、センサ5によって検出される物体の位置のキャリブレーションを行う(ステップS52)。一方、ステップS51においてセンサ5のずれが所定以上の度合いであると判定される場合、ECU50は、当該センサ5がずれている旨の情報(報知情報)を、例えば報知部90から出力する(ステップS53)。
【0182】
ステップS53において、センサ5がずれている旨の情報は、例えば音声若しくは音の超過情報、表示などの視覚情報、振動などの触覚情報の少なくともいずれかとしてよい。また、センサ5がずれている旨の情報は、例えば移動体100の運転者などに当該センサ5の修理又は調整を促すような情報としてもよい。ステップS53において報知情報が出力されることにより、例えば移動体100の運転者などは、いずれかのセンサ5の向きがずれていることを認識することができる。
【0183】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、判定部50は、複数のセンサ5のいずれかの向きのずれが所定の度合い以内であると判定する場合、複数のセンサ5の少なくともいずれかによって検出される物体の位置のキャリブレーションを行ってもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、判定部50は、複数のセンサ5のいずれかの向きのずれが所定の度合いを超えると判定する場合、例えば報知部90から、所定の報知情報を出力してもよい。
【0184】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0185】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
【0186】
上述した実施形態において、電子機器1のECU50は、センサ5の向きずれとして、例えば図12に示すようなXY平面と平行な水平方向のずれを判定した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1のECU50は、センサ5の向きずれとして、例えば図12に示すようなXY平面と垂直な方向のずれを判定してもよい。
【符号の説明】
【0187】
1 電子機器
5 センサ
10 制御部
11 距離FFT処理部
12 速度FFT処理部
13 到来角推定部
14 物体検出部
15 検出範囲決定部
16 パラメータ設定部
20 送信部
21 信号生成部
22 シンセサイザ
23 位相制御部
24 増幅器
25 送信アンテナ
30 受信部
31 受信アンテナ
32 LNA
33 ミキサ
34 IF部
35 AD変換部
40 記憶部
50 ECU(判定部)
82 ステアリング
84 ギア
90 報知部
100 移動体
200 物体

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