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特許7391985制御された差動等化電圧勾配制限を備えた汎用アナログスイッチ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】制御された差動等化電圧勾配制限を備えた汎用アナログスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20231128BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20231128BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H03K17/687 G
H03K17/00 D
H03K17/16 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021556672
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 US2020023851
(87)【国際公開番号】W WO2020191290
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】62/821,880
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/823,528
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507364997
【氏名又は名称】サイプレス セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cypress Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オレン シュロモ
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04492876(US,A)
【文献】再公表特許第2014/024337(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347111(US,A1)
【文献】特開2017-060339(JP,A)
【文献】特開2012-170238(JP,A)
【文献】特開平09-107639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0174358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第1のセレクタ回路と、第2のセレクタ回路と、を含む差動勾配制限スイッチであって、
前記第1のトランジスタは、前記差動勾配制限スイッチの第1のポートに結合された第1のソース-ドレイン(SD)端子およびボディ端子と、ゲートと、第2のSD端子と、を含み、
前記第2のトランジスタは、前記差動勾配制限スイッチの第2のポートに結合された第1のSD端子およびボディ端子と、ゲートと、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子に結合された第2のSD端子と、を含み、
前記第1のセレクタ回路は、前記第1のトランジスタの前記ゲートと、前記第1のポートで受信された電圧(VLeft)と、第1の電流源と、に結合されており、前記第1のセレクタ回路は、前記差動勾配制限スイッチを閉成するためのスイッチイネーブル(Switch_en)信号が前記第1のセレクタ回路によって受信された場合には前記第1の電流源に、前記Switch_en信号が受信されていない場合には前記VLeftに、前記第1のトランジスタの前記ゲートを結合するように構成されており、
前記第2のセレクタ回路は、前記第2のトランジスタの前記ゲートと、前記第2のポートで受信された電圧(VRight)と、第2の電流源と、に結合されており、前記第2のセレクタ回路は、前記Switch_en信号が前記第2のセレクタ回路によって受信された場合には前記第2の電流源に、前記Switch_en信号が受信されていない場合には前記VRightに、前記第2のトランジスタの前記ゲートを結合するように構成されており、
前記差動勾配制限スイッチは、
前記第1のトランジスタの前記ゲートに結合された第1の容量性素子と、
前記第2のトランジスタの前記ゲートに結合された第2の容量性素子と
をさらに含み、
前記第1の容量性素子および前記第2の容量性素子ならびに前記第1の電流源および前記第2の電流源は、閉成された際に前記差動勾配制限スイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配を制限するように構成されており、
前記差動勾配制限スイッチは、最低電圧セレクタをさらに含み、
前記最低電圧セレクタは、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に、かつ、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子と前記第2のトランジスタの前記第2のSD端子との間のノードに結合されており、
前記最低電圧セレクタは、前記ノードを前記第1のポートまたは前記第2のポートにおける最低電圧に結合し、これにより、前記最低電圧にある前記第1のポートまたは前記第2のポートに結合された前記第1のトランジスタまたは前記第2のトランジスタのドレイン端子およびボディ端子によって形成されるP/N接合の順方向バイアスを阻止するように構成されており、
前記最低電圧セレクタは、第3のトランジスタおよび第4のトランジスタを含み、
前記第3のトランジスタと前記第4のトランジスタとは、互いに対して直列に、かつ、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタに対して並列に結合されており、
前記第3のトランジスタは、
前記第4のトランジスタの第1のSD端子に、かつ、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間の前記ノードに結合された第1のSD端子と、
前記差動勾配制限スイッチの前記第1のポートに結合された第2のSD端子と、
前記差動勾配制限スイッチの前記第2のポートに結合されたゲートと、
を有し、
前記第4のトランジスタは、
前記差動勾配制限スイッチの前記第2のポートに結合された第2のSD端子と、
前記差動勾配制限スイッチの前記第1のポートに結合されたゲートと、
を有する、
差動勾配制限スイッチ。
【請求項2】
前記第1の容量性素子は、前記第1のトランジスタの前記ゲートと前記差動勾配制限スイッチの前記第2のポートとの間に結合された第1のコンデンサを含み、
前記第2の容量性素子は、前記第2のトランジスタの前記ゲートと前記差動勾配制限スイッチの前記第1のポートとの間に結合された第2のコンデンサを含む、
請求項1記載の差動勾配制限スイッチ。
【請求項3】
前記第1の容量性素子は、前記第1のトランジスタの前記ゲートに、かつ、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子と前記第2のトランジスタの前記第2のSD端子との間に結合された第1のコンデンサを含み、
前記第2の容量性素子は、前記第2のトランジスタの前記ゲートに、かつ、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子と前記第2のトランジスタの前記第2のSD端子との間に結合された第2のコンデンサを含む、
請求項1記載の差動勾配制限スイッチ。
【請求項4】
前記差動勾配制限スイッチは、
第1のインバータおよび前記VLeftに結合された第1のレベルシフタと、
第2のインバータおよび前記VRightに結合された第2のレベルシフタと、
をさらに含み、
前記第1のレベルシフタおよび前記第2のレベルシフタの各々は、低電圧(LV)の入力信号を受信し、各自に結合されている前記第1のインバータまたは前記第2のインバータに、高電圧(HV)のSwitch_en信号を出力するように構成されている、
請求項1記載の差動勾配制限スイッチ。
【請求項5】
前記第1のセレクタ回路は、第1のインバータを含み、
前記第2のセレクタ回路は、第2のインバータを含む、
請求項1記載の差動勾配制限スイッチ。
【請求項6】
マルチコンシューマ電圧レギュレータであって、前記マルチコンシューマ電圧レギュレータは、
電圧出力部を有するレギュレータと、
前記電圧出力部に結合された入力部および複数の差動勾配制限スイッチを有するマルチプレクサと、
を含み、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、前記マルチプレクサの入力部に結合された第1のポートと、複数のコンシューマのうちの1つに結合された第2のポートと、を含み、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、第1のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタは、前記差動勾配制限スイッチの第1のポートに結合された第1のソース-ドレイン(SD)端子およびボディ端子と、ゲートと、第2のSD端子と、を含み、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、第2のトランジスタを含み、前記第2のトランジスタは、前記差動勾配制限スイッチの第2のポートに結合された第1のSD端子およびボディ端子と、ゲートと、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子に結合された第2のSD端子と、を含み、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、閉成された際に、前記複数の差動勾配制限スイッチのうちの閉成された第1の差動勾配制限スイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配が制限されるように、かつ、残っている複数の差動勾配制限スイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配に実質的に等しくなるように、前記差動勾配制限スイッチを流れる電流を制限するように構成されており、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、第1のセレクタ回路をさらに含み、前記第1のセレクタ回路は、前記第1のトランジスタの前記ゲートと、前記第1のポートで受信された電圧(VLeft)と、第1の電流源と、に結合されており、前記第1のセレクタ回路は、前記差動勾配制限スイッチを閉成するためのスイッチイネーブル(Switch_en)信号が前記第1のセレクタ回路によって受信された場合には前記第1の電流源に、前記Switch_en信号が受信されていない場合には前記VLeftに、前記第1のトランジスタの前記ゲートを結合するように構成されており、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、第2のセレクタ回路をさらに含み、前記第2のセレクタ回路は、前記第2のトランジスタの前記ゲートと、前記第2のポートで受信された電圧(VRight)と、第2の電流源と、に結合されており、前記第2のセレクタ回路は、前記Switch_en信号が前記第2のセレクタ回路によって受信された場合には前記第2の電流源に、前記Switch_en信号が受信されていない場合には前記VRightに、前記第2のトランジスタの前記ゲートを結合するように構成されており、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、前記第1のトランジスタの前記ゲートに結合された第1の容量性素子と、前記第2のトランジスタの前記ゲートに結合された第2の容量性素子と、をさらに含み、
前記第1の容量性素子および前記第2の容量性素子ならびに前記第1の電流源および前記第2の電流源は、閉成された際に前記差動勾配制限スイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配を制限するように、かつ、前記第1のポートに結合された入力容量と、前記第2のポートに結合された負荷容量と、の間の急電圧勾配の(または制御されていない)電荷共有を阻止するように構成されており、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、最低電圧セレクタをさらに含み、
前記最低電圧セレクタは、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に、かつ、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子と前記第2のトランジスタの前記第2のSD端子との間のノードに結合されており、
前記最低電圧セレクタは、前記ノードを前記第1のポートまたは前記第2のポートにおける最低電圧に結合し、これにより、前記最低電圧にある前記第1のポートまたは前記第2のポートに結合された前記第1のトランジスタまたは前記第2のトランジスタのドレイン端子およびボディ端子によって形成されるP/N接合の順方向バイアスを阻止するように構成されており、
前記最低電圧セレクタは、第3のトランジスタおよび第4のトランジスタを含み、
前記第3のトランジスタと前記第4のトランジスタとは、互いに対して直列に、かつ、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタに対して並列に結合されており、
前記第3のトランジスタは、
前記第4のトランジスタの第1のSD端子に、かつ、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間の前記ノードに結合された第1のSD端子と、
前記差動勾配制限スイッチの前記第1のポートに結合された第2のSD端子と、
前記差動勾配制限スイッチの前記第2のポートに結合されたゲートと、
を有し、
前記第4のトランジスタは、
前記差動勾配制限スイッチの前記第2のポートに結合された第2のSD端子と、
前記差動勾配制限スイッチの前記第1のポートに結合されたゲートと、
を有する、
電圧レギュレータ。
【請求項7】
前記第1の容量性素子は、前記第1のトランジスタの前記ゲートと前記差動勾配制限スイッチの前記第2のポートとの間に結合された第1のコンデンサを含み、
前記第2の容量性素子は、前記第2のトランジスタの前記ゲートと前記差動勾配制限スイッチの前記第1のポートとの間に結合された第2のコンデンサを含む、
請求項6記載の電圧レギュレータ。
【請求項8】
前記第1の容量性素子は、前記第1のトランジスタの前記ゲートに、かつ、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子と前記第2のトランジスタの前記第2のSD端子との間のノードに結合された第1のコンデンサを含み、
前記第2の容量性素子は、前記第2のトランジスタの前記ゲートに、かつ、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子と前記第2のトランジスタの前記第2のSD端子との間のノードに結合された第2のコンデンサを含む、
請求項6記載の電圧レギュレータ。
【請求項9】
第1のセレクタ回路は、第1のインバータを含み、
第2のセレクタ回路は、第2のインバータを含み、
前記複数の差動勾配制限スイッチの各々は、
前記第1のインバータおよび前記VLeftに結合された第1のレベルシフタと、
前記第2のインバータおよび前記VRightに結合された第2のレベルシフタと、
をさらに含み、
前記第1のレベルシフタおよび前記第2のレベルシフタの各々は、低電圧(LV)の入力信号を受信し、各自に結合されている前記第1のインバータまたは前記第2のインバータに、高電圧(HV)のSwitch_en信号を出力するように構成されている、
請求項6記載の電圧レギュレータ。
【請求項10】
スイッチの両端にわたる電圧遷移の差動勾配を制限するように、前記スイッチを動作させる方法であって、前記方法は、
第1の電圧(VLeft)を、前記スイッチの第1のポートから前記スイッチ内の第1のトランジスタの第1のソース-ドレイン(SD)端子およびボディ端子に結合するステップであって、前記第1のトランジスタは、ゲートおよび第2のSD端子をさらに含むステップと、
第2の電圧(VRight)を、前記スイッチの第2のポートから前記スイッチの第2のトランジスタの第1のSD端子およびボディ端子に結合するステップであって、前記第2のトランジスタは、ゲートと、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子に結合された第2のSD端子と、をさらに含むステップと、
前記スイッチを閉成するステップと、
を含み、
LeftがVRightよりも大きい場合には、
前記スイッチを閉成するステップは、前記第1のトランジスタの前記ゲートと前記第2のポートとの間に結合された第1のフィードバックコンデンサと、第1の電流源と、を結合することにより、前記第1のトランジスタの前記ゲートを駆動し、その間、前記第2のポートにおける電圧遷移の勾配に対する前記第1のポートにおける電圧遷移の勾配を制限するステップを含み、
前記第2のポートにおける電圧遷移の勾配は、制限するものではなく、前記第1のポートにおける勾配以下であり、
前記スイッチの両端にわたる電圧遷移の差動勾配は、前記第1のポートにおける電圧遷移および前記第2のポートにおける電圧遷移の絶対値の合計に等しくなり、
前記方法は、
前記第1の電圧および前記第2の電圧のうちのどちらが最低であるかを決定するステップと、
最低電圧を有する前記第1のポートまたは前記第2のポートを、前記第1のトランジスタの前記第2のSD端子と前記第2のトランジスタの前記第2のSD端子との間のノードに結合するステップと、
をさらに含み、
前記スイッチは、最低電圧セレクタをさらに含み、
前記最低電圧セレクタは、第3のトランジスタおよび第4のトランジスタを含み、
前記第3のトランジスタと前記第4のトランジスタとは、互いに対して直列に、かつ、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタに対して並列に結合されており、
前記第3のトランジスタは、前記第4のトランジスタの第1のSD端子に、かつ、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間の前記ノードに結合された第1のSD端子を有する、
方法。
【請求項11】
前記VRightがVLeftよりも大きい場合には、
前記スイッチを閉成するステップは、前記第2のトランジスタの前記ゲートと前記第1のポートとの間に結合された第2のフィードバックコンデンサと、第2の電流源と、を結合することにより、前記第2のトランジスタの前記ゲートを駆動し、その間、前記第1のポートにおける電圧遷移の勾配に対する前記第2のポートにおける電圧遷移の勾配を制限するステップを含み、
前記第1のポートにおける電圧遷移の勾配は、制限するものではなく、前記第2のポートにおける勾配以下であり、
前記スイッチの両端にわたる電圧遷移の差動勾配は、前記第1のポートにおける電圧遷移および前記第2のポートにおける電圧遷移の絶対値の合計に等しくなる、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記スイッチを開成するために、前記VLeftを前記第1のポートから前記第1のトランジスタの前記ゲートおよび前記第1のフィードバックコンデンサに結合し、
前記スイッチを開成するために、前記VRightを前記第2のポートから前記第2のトランジスタの前記ゲートおよび前記第2のフィードバックコンデンサに結合する、
ことによって、前記スイッチを開成するステップをさらに含む、
請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年3月21日に出願された米国仮特許出願第62/821,880号明細書の優先権および利益を主張する2020年3月19日に出願された米国非仮出願第16/823,528号明細書の国際出願であり、これら両方の内容全体を参照によりあらゆる目的で本明細書に援用するものとする。
【0002】
本開示は、一般的に、アナログスイッチに関し、より具体的には、マルチコンシューマ電圧レギュレータにおいて使用するための差動勾配制限されたアナログスイッチと、その動作方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
アナログスイッチは、スイッチの相異なる側における信号同士を接続または切断するため、かつ/またはよくあることであるが、複数の信号がそれぞれ異なる電圧ドメインにある場合に両側の間の電圧を等化するために、広範囲の用途に向けて設計および使用されている。図1を参照すると、従来のアナログスイッチ100は、典型的には、スイッチ100の相異なる側(VLeftおよびVRight)における信号同士を接続または切断するために、金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(FET102)のような1つまたは複数の電圧制御された半導体デバイスと、入力信号を受信して、FET102をオンまたはオフにするための1つまたは複数のスイッチイネーブル信号(Switch_en)および補完信号(Switch_en_b)を生成するように構成された制御回路104と、を含む。
【0004】
図2を参照すると、従来のアナログスイッチは、典型的に、スイッチが具現化された回路の設計および要件によって異なる著しい電圧差を有する2つの負荷同士を接続する際に、急電圧勾配遷移を引き起こすことに留意されたい。この結果、今度は、制御されていない非常に高いピーク電流が発生する可能性があり、このようなピーク電流は、スイッチが含まれている他の回路に対する望ましくないノイズおよび/または妨害、ならびに回路の誤動作、またはスイッチの一方もしくは両方の側における回路または素子に対する損傷を引き起こす可能性があり、それゆえ望ましくない。一般的に、電圧勾配は、電圧の変化を時間の変化で割ったもの(遷移)として説明または定義される。遷移勾配が一定でない場合、例えばよくあることであるが、遷移の開始時には電圧の変化が比較的高速であり、遷移の終了に向かって緩慢になる場合には、「電圧勾配」とは、電圧遷移中に達成される単位時間あたりの電圧の変化の最大の大きさを意味する。図2にグラフで示されている実施形態では、ON/OFF入力信号の印加に続いて、スイッチ100の第1のVLeft側における10ボルト(v)信号を、スイッチの第2のVRightにおける4v信号に接続する従来のアナログスイッチが、結果的に、スイッチの左側および右側の両方において急電圧勾配をもたらすことが見て取れる。とりわけ、アナログスイッチを閉成すると、約100ナノ秒(nsec)未満で10vのVLeftから7vの等化電圧(Vequalization)まで降下し、かつ4vのVRightから等化電圧まで上昇する急電圧勾配がもたらされる結果となることに留意されたい。
【0005】
多くの用途では、閉成されたアナログスイッチの両端にわたる電圧変化が、このような急電圧勾配遷移を生じさせてはならない。このことは、静電容量センサ、半導体メモリ、マイクロコントローラ、インターフェース、およびその他の電気回路または素子のようなコンシューマに電力または基準電圧を結合するために電圧レギュレータにおいて使用されるアナログスイッチの場合のような、高電圧用途において特に当てはまる。電圧レギュレータを介してコンシューマを電圧源に接続または切断するために従来のアナログスイッチを使用すると、多くの場合、時間の経過に伴って、制御されていない急速な電圧の変化(dv/dt)が発生し、スイッチの両端にわたる急電圧勾配遷移と、望ましくないほど高いピーク電流および/または電圧不足の状況とが生じる結果となる。さらに、この電圧勾配は、もし制限されなければ、電圧源出力部および/または電圧源供給部において望ましくない一時的な電圧降下を引き起こす可能性がある。
【0006】
従来のアナログスイッチに関する別の問題は、単一の安定化電圧源からシステム内またはデバイス内の複数のコンシューマに給電することを試みて、複数の従来のアナログスイッチが使用されるような用途において発生する。複数のコンシューマのうちの1つのコンシューマの容量性負荷が、他のコンシューマの容量性負荷および/または電圧源の出力容量よりも大幅に大きい場合には、そのより大きな容量性負荷を有するコンシューマを、従来のアナログスイッチを介して電圧源に結合すると、電圧源と、他のコンシューマに供給される電圧とにおいて、制御されていない急電圧勾配遷移が生じる結果となる。
【0007】
したがって、広範囲の電圧差に対して、閉成されたスイッチの両端にわたる電圧遷移の電圧勾配を制限することができるアナログスイッチが必要とされている。さらに、単一の電圧レギュレータから複数の回路および素子に電力および/または基準電圧を供給するための、複数のそのようなスイッチを含む電圧レギュレータおよび回路が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
閉成されたスイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配を制限するための、汎用の勾配制限アナログスイッチと、その動作方法とが提供される。勾配制限アナログスイッチは、マルチプルまたはマルチコンシューマ電圧レギュレータのマルチプレクサにおいて特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
差動勾配制限スイッチは、広範囲の入力電圧差、容量性負荷、および動作状況に対する、閉成されたスイッチの両端にわたるシームレスな双方向の自己整合性の差動電圧遷移勾配制限を提供するように構成されている。一般的に、勾配制限アナログスイッチは、第1のトランジスタを含み、第1のトランジスタは、スイッチの第1のポートに結合された第1のソース-ドレイン(SD)およびウェルと、ゲートと、第2のSDとを有し、勾配制限アナログスイッチは、第2のトランジスタを含み、第2のトランジスタは、第2のポートに結合された第1のSDおよびウェルと、ゲートと、第1のトランジスタの第2のSDに結合された第2のSDとを有する。第1のセレクタ回路は、第1のトランジスタのゲートを、スイッチを閉成するための信号が受信された場合には第1の電流源に結合し、信号が受信されていない場合には第1のポートにおける電圧に結合する。第2のセレクタ回路は、第2のトランジスタのゲートを、信号が受信された場合には第2の電流源に結合し、さもなければ第2のポートにおける電圧に結合する。スイッチは、第1のトランジスタに結合された第1の容量性素子と、第2のトランジスタのゲートに結合された第2の容量性素子とをさらに含む。これらの容量性素子は、ディスクリートのフィードバック/積分コンデンサを含むことも、またはトランジスタのゲートとSDの間に生成される真性容量を含むこともでき、電流源と一緒に、閉成されたスイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配を制限するように寸法設定および/または構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、差動勾配制限スイッチは、最低電圧セレクタをさらに含み、最低電圧セレクタは、第1のポートと第2のポートとの間に、かつ第1のトランジスタの第2のSDと第2のトランジスタの第2のSDとの間のノードに結合されており、最低電圧セレクタは、ノードを第1のポートまたは第2のポートにおける最低電圧に結合し、これにより、最低電圧にある第1のポートまたは第2のポートに結合された第1のトランジスタまたは第2のトランジスタの順方向バイアスを阻止するように構成されている。例示的な一実施形態では、最低電圧セレクタは、第3のトランジスタおよび第4のトランジスタを含み、第3のトランジスタと第4のトランジスタとは、互いに対して直列に、かつ第1のトランジスタおよび第2のトランジスタに対して並列に結合されている。第3のトランジスタは、第4のトランジスタの第1のSDに、かつ第1のトランジスタと第2のトランジスタとの間のノードに結合された第1のSDと、スイッチの第1のポートに結合された第2のSDと、スイッチの第2のポートに結合されたゲートとを有する。第4のトランジスタは、スイッチの第2のポートに結合された第2のSDと、スイッチの第1のポートに結合されたゲートとを有する。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる特徴および利点、ならびに本発明の種々の実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明される。本発明が、本明細書に記載されている特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は、例示のみを目的として本明細書に提示されている。追加的な実施形態は、関連分野の当業者には、本明細書に含まれる教示に基づいて明らかであろう。
【0012】
以下では、本発明の実施形態を、添付の概略図を参照しながら単なる例として説明する。添付の概略図では、対応する参照符号が対応する部分を指している。さらに、本明細書に組み込まれていて、かつ本明細書の一部を形成している添付の図面は、本発明の実施形態を示し、その説明と共に、本発明の原理を説明するため、かつ関連分野の当業者が本発明を作成および使用することを可能にするためにさらに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のアナログスイッチの概略ブロック図である(従来技術)。
図2図1の閉成されたスイッチの両端にわたる制御されていない急勾配遷移をグラフで示した波形図である(従来技術)。
図3】差動勾配制限スイッチの一実施形態のブロック図である。
図4】差動勾配制限スイッチの一実施形態の詳細な概略ブロック図である。
図5図4の閉成された差動勾配制限スイッチの両端にわたる制御された勾配遷移をグラフで示した波形図であり、ここでは、両側における容量性負荷が類似している。
図6A】定常状態状況で開成されている差動勾配制限スイッチに対して等価のスイッチの概略図である。
図6B】定常状態状況で開成されている差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図7A】定常状態状況で閉成されている差動勾配制限スイッチに対して等価のスイッチの概略図である。
図7B】定常状態状況で閉成されている差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図8A】VLeftがVRightよりも大きい場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチに対して等価のスイッチの概略図である。
図8B】VLeftがVRightよりも大きい場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図9A】VLeftがVRightよりも小さい場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチに対して等価のスイッチの概略図である。
図9B】VLeftがVRightよりも小さい場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図10A】種々異なる電圧および容量負荷の場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図10B】種々異なる電圧および容量負荷の場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図10C】種々異なる電圧および容量負荷の場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図10D】種々異なる電圧および容量負荷の場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図10E】種々異なる電圧および容量負荷の場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図10F】種々異なる電圧および容量負荷の場合における、遷移中の、閉成された差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。
図11】差動勾配制限スイッチの別の実施形態の概略ブロック図であり、ここでは、トランジスタのウェルまたはボディ端子が固定電圧に接続されている。
図12】差動勾配制限スイッチの別の実施形態の概略ブロック図であり、ここでは、インバータが高電圧に接続されており、これにより、いずれかのポートにおける最高電圧以上の電圧にあるスイッチを無効にする。
図13A】差動勾配制限スイッチの別の実施形態の概略ブロック図であり、ここでは、スイッチ内のトランジスタ間のノードに容量性素子が結合されている。
図13B】差動勾配制限スイッチの別の実施形態の概略ブロック図であり、ここでは、トランジスタのドレイン-ゲート間の静電容量(CGD)がフィードバック容量性素子として機能する。
図14】スイッチの第1のポートおよび第2のポートと、スイッチの中間ノードとの間に結合されていて、かつ順方向バイアス保護の強化を提供する最低電圧セレクタをさらに含む、差動勾配制限スイッチの一実施形態の概略ブロック図である。
図15】1つのマルチプレクサを介して複数のコンシューマを駆動するためのマルチコンシューマ電圧レギュレータの一実施形態の概略ブロック図である。
図16A】従来のアナログスイッチを使用するマルチコンシューマ電圧レギュレータと、差動勾配制限スイッチを使用するマルチコンシューマ電圧レギュレータとに関して、新しい大容量のコンシューマを追加したことによるマルチコンシューマ電圧レギュレータへの影響を比較した波形図であり、ここでは、新しいコンシューマの容量性負荷は、レギュレータおよび他のコンシューマの容量性負荷よりも格段に大きい。
図16B】従来のアナログスイッチを使用するマルチコンシューマ電圧レギュレータと、差動勾配制限スイッチを使用するマルチコンシューマ電圧レギュレータとに関して、新しい大容量のコンシューマを追加したことによるマルチコンシューマ電圧レギュレータへの影響を比較した波形図であり、ここでは、新しいコンシューマの容量性負荷は、レギュレータおよび他のコンシューマの容量性負荷よりも格段に大きい。
図17】複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを介して、安定化電圧よりも低いそれぞれ異なる電圧を有する複数の新しいコンシューマに、電圧レギュレータを同時に接続するプロセスをグラフで示した波形図である。
図18】複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを介して、安定化電圧よりも高いまたは低いそれぞれ異なる電圧を有する複数の新しいコンシューマに、電圧レギュレータを同時に接続するプロセスをグラフで示した波形図である。
図19】複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを介して、それぞれ異なる電圧を有する複数の新しいコンシューマに、電圧レギュレータを同時に接続するプロセスをグラフで示した波形図であり、ここでは、コンシューマのうちの1つの容量性負荷は、レギュレータおよび他のコンシューマの容量性負荷よりも格段に大きい。
図20】複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを有するマルチコンシューマ電圧レギュレータを動作させるための方法のフローチャートである。
図21】差動勾配制限スイッチを動作させるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
スイッチの両端にわたる広範囲の入力電圧差および広範囲の容量性負荷比に対して、閉成されたスイッチの両端にわたる勾配を制限するための汎用の差動勾配制限スイッチと、その動作方法とが提供される。本開示のスイッチおよび方法は、マルチプルまたはマルチコンシューマ電圧レギュレータにおいてまたはそれと共に使用すると、また、このようなスイッチによって接続された回路間の電荷共有を制限する必要がある任意の用途においてまたはそれと共に使用すると、特に有用である。
【0015】
以下の記載では、説明する目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、これらの特定の詳細を用いることなく本発明を実施してもよいことは当業者には明らかであろう。他の事例では、本明細書の理解を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造および技術は、詳細には示されていないか、またはブロック図の形態で示されている。
【0016】
本明細書における「一実施形態」または「実施形態」への参照は、その実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の種々の場所における「一実施形態では」という句の出現は、必ずしも全てにおいて同一の実施形態を指しているとは限らない。本明細書で使用される「結合」という用語は、2つ以上のコンポーネントまたは構成要素を直接的に電気的に接続することと、1つ以上の介在するコンポーネントを介して間接的に接続することとの両方を含むことができる。
【0017】
図3は、広範囲の入力電圧差、容量性負荷、および動作状況に対する、閉成されたスイッチの両端にわたるシームレスな双方向の自己整合性の差動電圧遷移勾配制限を提供するように構成された、両側対称ランプ制御機構またはランプ制御回路を組み込んでいる、差動勾配制限スイッチ300の一実施形態のブロック図である。「シームレス」とは、スイッチ300が閉成された際に、スイッチ300の相対する両側または両ポート302,304における電圧(VLeft,VRight)が、スイッチまたはスイッチコンポーネントの外部制御を必要とすることなく、等化が達成されるまで一定の差動勾配で互いに向かって遷移することを意味する。一旦遷移が終了すれば、スイッチ300は、標準のアナログスイッチと同様に動作する。
【0018】
図3を参照すると、差動勾配制限スイッチ300は、スイッチの第1のポート302と第2のポート304との間で直列に結合された第1のスイッチング素子306および第2のスイッチング素子308を含む。これらのスイッチング素子は、一般的に同様に寸法設定されていて、同様または実質的に等しい閾値電圧(VTH)を有し、一般的に任意の適切な種類のトランジスタを含むことができる。図3に示されている実施形態では、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子が示されており、以下では、電界効果トランジスタ(FET)として説明されている。第1のFET306は、スイッチ300の第1のポート302に結合された第1のソース-ドレイン(SD)領域または端子310およびウェルまたはボディ端子312と、ゲート314と、第2のSD端子316と、を含む。同様に、第2のFET308は、スイッチ300の第2のポート304に結合された第1のSD端子318およびボディ端子320と、ゲート322と、第1のFETの第2のSD端子316に結合された第2のSD端子324と、を含む。
【0019】
スイッチは、第1のセレクタ回路326をさらに含み、第1のセレクタ回路326は、第1のFET306のゲート314と、図示の実施形態では第1のポート302で受信された電圧(VLeft)のような固定電圧または高電圧(HV)と、第1の電流源328と、に結合されている。第1のセレクタ回路326は、スイッチ300を閉成するためのスイッチイネーブル(Switch_en)信号が第1のセレクタ回路によって受信された場合には第1の電流源328に、スイッチを開成するためにSwitch_en信号が受信されていない場合にはVLeftのような固定電圧またはHVに、第1のFET306のゲート314を選択的に結合するように構成されている。スイッチは、第2のセレクタ回路330をさらに含み、第2のセレクタ回路330は、第2のFET308のゲート322と、第2のポート304で受信されたVRightのような固定電圧またはHVと、第2の電流源332と、に結合されている。第2のセレクタ回路330は、スイッチ300を閉成するためのSwitch_en信号が第2のセレクタ回路によって受信された場合には第2の電流源332に、スイッチを開成するためにSwitch_en信号が受信されていない場合にはVRightのような固定電圧またはHVに、第2のFET308のゲート322を選択的に結合するように構成されている。第1のセレクタ回路326および第2のセレクタ回路330は、Switch_en信号を受信することが可能であって、かつ第1の電流源328および第2の電流源332またはHV(VLeftまたはVRight)のいずれかを第1のFET306または第2のFET308のそれぞれのゲート314,322に選択的に結合することが可能な、任意の適切な回路またはサブ回路を含むことができる。オプションで、スイッチ300を動作させるための入力信号が、Switch_en信号として機能するために必要とされる電圧よりも低い電圧である場合、すなわち、VLeftまたはVRightよりも低い電圧である場合には、スイッチは、低電圧(LV)の入力信号を、Switch_en信号のために必要とされるHVドメインへとシフトさせるための制御回路またはレベルシフタ(この図面には図示せず)をさらに含むことができる。
【0020】
スイッチ300は、第1のFET306のゲート314に結合された第1のフィードバック容量性素子またはコンデンサ334と、第2のFET308のゲート322に結合された第2のフィードバック容量性素子336とをさらに含む。第1のFET306および第2のFET308と同様に、第1のコンデンサ334および第2のコンデンサ336も、一般的に同様に寸法設定されていて、実質的に等しい静電容量を有する。第1のコンデンサ334および第2のコンデンサ336は、ゲート314,322と、それぞれ第1のポート302および第2のポート304との間に結合されているものとして図示されているが、このことが、必ずしも全ての実施形態に当てはまっていなくてもよいことに留意されたい。いくつかの代替的な実施形態では、第1のコンデンサ334および第2のコンデンサ336は、ゲート314,322と、第1のFET306および第2のFET308の第2のSD端子316,324間のノード338との間に結合されている。さらに、第1のコンデンサ334および第2のコンデンサ336は、金属コンデンサのような物理的なディスクリート素子を含んでいる必要はなく、むしろ、実質的に等しく寸法設定された第1のFET306および第2のFET308のゲートとドレイン(CGD)との間に形成される真性容量(CGD)から形成可能であることに留意されたい。
【0021】
図4は、より詳細に図示された差動勾配制限スイッチ400の一実施形態の概略ブロック図である。一般的に、差動勾配制限スイッチ400は、広範囲の入力電圧差、容量性負荷、および動作状況に対する、閉成されたスイッチ400の両端にわたるシームレスな双方向の自己整合性の差動電圧遷移勾配制限を提供するように構成された、両側対称ランプ制御機構またはランプ制御回路を組み込んでいる。「シームレス」とは、スイッチ400が閉成された際に、スイッチ400の相対する両側または両ポート402,404における電圧(VLeft,VRight)が、スイッチまたはスイッチコンポーネントの外部制御を必要とすることなく、等化が達成されるまで一定の差動勾配で互いに向かって遷移することを意味する。一旦遷移が終了すれば、スイッチ400は、標準のアナログスイッチと同様に動作する。
【0022】
図4を参照すると、差動勾配制限スイッチ400は、第1のレベルシフタ406および第2のレベルシフタ408を含み、第1のレベルシフタ406および第2のレベルシフタ408は、低電圧(LV)の入力信号を受信して、スイッチを動作させるための高電圧(HV)のスイッチイネーブル信号(HV_OUT)へとシフトまたは生成するように構成されている。スイッチ400は、第1のポート402と第2のポート404との間で直列に結合された、第1のスイッチング素子またはトランジスタ410および第2のスイッチング素子またはトランジスタ412をさらに含む。図示の実施形態では、第1および第2のトランジスタは、電界効果トランジスタ(FET410,412)である。第1のFET410は、第1のレベルシフタ406に結合されたゲート414と、第1のポート402に結合された第1のソース-ドレイン(SD)端子または第1のSD416およびウェルまたはボディ端子418と、第2のFET412の第2のSD422に結合された第2のSD420とを有する。第2のFET412も、第2のレベルシフタ408に結合されたゲート424と、第2のポート404に結合された第1のSD426およびボディ端子428とを有する。
【0023】
図4では、第1のFET410および第2のFET412は、pチャネル金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(PMOS)として図示されていることに留意されたい。しかしながら、本発明の外延および範囲から逸脱することなく、差動勾配制限スイッチ400を、適切に選択されたバイアスおよび電圧を有するnチャネルMOSFET(NMOS)を使用して実装してもよいことが理解されよう。種々の違いの中でも、NMOSを使用するためには、典型的に、接続部からグラウンドに電流をプルするのではなく、むしろ、第1のポート402および第2のポート404にそれぞれ供給されるVLeft/VRightよりも高い電圧源から電流をプッシュするための電流源が必要となる。さらに、第1のFET410および第2のFET412のSD端子または領域がソースであるかドレインであるかはFETの電圧状況によって異なり、特定のSD端子が、ある特定の電圧状況下ではドレインとして動作する場合がある一方で、他の電圧状況下ではFETのソースとして機能する場合もあるということに留意されたい。
【0024】
一般的に、上記の図3の実施形態のように、差動勾配制限スイッチ400は、広範囲の入力電圧差、容量性負荷、および動作状況に対する、閉成されたスイッチ400の両端にわたるシームレスな双方向の自己整合性の差動電圧遷移勾配制限を提供するように構成された、両側対称ランプ制御機構をさらに組み込んでいる。「シームレス」とは、スイッチ400が閉成された際に、スイッチ400の相対する両ポート402,404における電圧(VLeft,VRight)が、スイッチまたはスイッチコンポーネントの外部制御を必要とすることなく、等化が達成されるまで一定の差動勾配で互いに向かって遷移することを意味する。一旦遷移が終了すれば、スイッチ400は、標準のアナログスイッチと同様に動作する。
【0025】
スイッチ400は、ここでは第1のインバータ430として図示された第1のセレクタ回路をさらに含み、第1のセレクタ回路は、第1のFET410のゲート414と、図示の実施形態では第1のポート402で受信された電圧(VLeft)のような固定電圧または高電圧(HV)と、第1の電流源432と、に結合されている。第1のインバータ430は、スイッチ400を閉成するための入力信号が供給されて、スイッチイネーブル(HV_OUT)信号が第1のインバータによって受信された場合に、第1のFET410のゲート414を第1の電流源432に選択的に結合するように構成されている。第1のインバータ430は、スイッチを開成するためにSwitch_en信号が受信されていない場合に、VLeftのような固定電圧またはHVを第1のFET410のゲート414に選択的に結合するようにさらに構成されている。第2のインバータ434は、第2のFET412のゲート424と、第2のポート404で受信されたVRightのような固定電圧またはHVと、第2の電流源436と、に結合されている。第2のインバータ434も、第1のインバータ430と同様に、スイッチ400を閉成するための入力信号が印加された場合には第2の電流源436に、スイッチを開成するために入力信号が印加されていない場合にはVRightに、第2のFET412のゲート424を結合するように構成されている。
【0026】
スイッチ400は、第1のFET410のゲート414と第2のポート404との間に結合されたコンデンサ438のような第1のフィードバック/積分容量性素子と、第2のFET412のゲート424とスイッチ400の第1のポート402との間に結合された第2のフィードバック/積分容量性素子440とをさらに含む。第1のフィードバックコンデンサ438および第2のフィードバックコンデンサ440は、対称的または実質的に等しく寸法設定されている。以下でより詳細に説明するように、第1のコンデンサ438および第2のコンデンサ440は、金属コンデンサのような物理的なディスクリート素子を含んでいる必要はなく、むしろ、実質的に等しく寸法設定された第1のFET410および第2のFET412のゲートとドレイン(CGD)との間に形成される真性容量(CGD)から形成可能である。
【0027】
一般的に、第1のFET410および第2のFET412のバイアスは、電流源432,436をスナップバック状況から保護して、予測可能な電流を維持するために選択されている。「スナップバック状況」とは、FET410,412のようなCMOSデバイスのドレイン-ソース間電圧(Vds)が、このCMOSデバイスが具現化された回路内において望ましくない影響を引き起こす許容最大電圧を超過しないということを意味する。例えば、差動勾配制限スイッチ400の一実施形態では、スナップバック電圧は、約6vとして定義されるであろう。
【0028】
図5は、スイッチの第1のポート402および第2のポート404について、閉成された差動勾配制限スイッチ400の両端にわたる制御された勾配遷移をグラフで示した波形図であり、ここでは、両方のポートが実質的に等しい容量性負荷を有していて、VLeftとVRightとの間の電圧差は、約6ボルトである。スイッチ400が初期時に開成されている図4および図5を参照すると、スイッチ400が閉成されたとき、すなわち、入力信号が最初にレベルシフタ406,408に印加されたときに、第1の電流源432および第2の電流源436は、第1のインバータ430および第2のインバータ434を介して第1のFET410および第2のFET412のゲート414,424に選択的に結合され、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しい勾配で、FETのゲートをGNDに向けて同時に放電する。スイッチ400の両端にわたる電圧遷移のランプまたは勾配は、両方のゲート414,424に対するゲート-ソース間バイアス(VGS)が、第1のFET410および第2のFET412のための閾値電圧(V)を上回った場合(|VGS|>VTP)にのみ開始する。図5では時間t1として図示されているこの状態に到達すると、スイッチ400のどちらのポート402,404がより高い電圧を有しているかによってランプ制御動作が異なる。図5に示されている例のように、VLeft>VRightであって、かつ|VGS-1st FET|>Vである場合には、等化電圧(VEqualization)に到達するまで、第1のFET410を流れる電流が、図5の曲線502,504として図示されている、両方のポート402,404における互いに向かって差動勾配制限された遷移を維持することを可能にするために、第1のFET410が、第1の電流源432および第1のコンデンサ438によって自己整合されるようにバイアスされる。このような状況下では、第2のFET412のゲート424-第1のSD426間のバイアス|VGS-2nd FET|≒|VGD-2nd FET|は、ゲート424における電圧(VGATE-2nd FET)がグラウンド(GND)に等しくなる(|VGS-2nd FET|≒|VGD-2nd FET|=VRight)まで増加し続け、GNDに遷移している間、第1のFET410に対する第2のFETの抵抗は、低いと見なされる。この理由から、FET410の第2のSD420とFET412の第2のSD422との間のノード442における電圧(VMid)は、VRightに近くなり、第2のFET412の順方向バイアスを阻止する。スイッチ400の差動勾配は、両側または両ポート402,404における絶対的な勾配502,504の合計に等しく、これらの絶対的な勾配502,504は、両側の総静電容量に対するそれぞれ他方の側の静電容量の比に比例する。したがって、それぞれの側の遷移の電圧勾配を、
Slope(VLEFT)=[ICURRENT_SOURCE/CFEEDBACK]×CLOAD_RIGHT/[CLOADLEFT+CLOAD_RIGHT] (式1)
Slope(VRIGHT)=[ICURRENT_SOURCE/CFEEDBACK]×CLOADLEFT/[CLOADLEFT+CLOAD_RIGHT] (式2)
のように推定または計算することができる。
【0029】
したがって、差動勾配を、
Slope(VLEFT_RIGHT_DIFF)=Slope(VLEFT)+Slope(VRIGHT)=ICURRENT_SOURCE/CFEEDBACK (式3)
によって推定または計算することができる。
【0030】
図6Aおよび図6Bは、図4に示されているような差動勾配制限スイッチの、開成されている定常状態を示す。図6Aは、定常状況で開成されている差動勾配制限スイッチ600に対して等価のスイッチの概略図である。図6Bは、スイッチの両方のポートにおける、定常状況で開成されている差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図である。とりわけ、左側の回路図は、VLeftがVRightよりも大きい場合を示し、右側の回路図は、VRightがVLeftよりも大きい場合を示す。図6Aを参照すると、スイッチ600内の第1のFET604のゲート602は、第1のFET604のソース606に短絡されていて、かつスイッチの第1のポート608に結合されている。第2のFET612のゲート610は、第2のFET612のソース614に短絡されていて、かつスイッチ600の第2のポート616に結合されている。したがって、第1のFET604および第2のFET612のうちの少なくとも一方のゲート-ソース間電圧(VGS)は、0vに等しい。この状態では、スイッチ600の両側またはポート608,616は、互いに切断されており、その一方で、中間ノードVMidは、図6Bの簡略化された電気概略図に示されているように、VLeftまたはVRightのうちの低い方に、より低い電圧を有する方のFETの閾値電圧(V)を加えたものにバイアスされており、すなわちVMid=MIN(VRight,VLeft)+Vである。
【0031】
図7Aおよび図7Bは、図4に示されているような差動勾配制限スイッチ700の、閉成されている定常状態を示す。図7Aは、閉成されている定常状況における差動勾配制限スイッチ700に対して等価のスイッチの概略図である。図7Bは、閉成されている定常状況における差動勾配制限スイッチの簡略化された電気概略図であり、ここでは、スイッチの両方のポートにおける電圧VLeftおよびVRightが実質的に等しい。図7Aを参照すると、第1のFET704のゲート702および第2のFET708のゲート706の両方がグラウンドに短絡されており、これによって、第1のFET704および第2のFET708の両方のゲート-ソース間電圧(VGS)が互いに等しく、かつVLeftおよびVRightに等しくなっている。この状態では、スイッチ700の両側または両ポート710,712は、非常に低い抵抗で接続されており、その一方で、中間ノード714の電圧(VMid)は、実質的にVLeftおよびVRightに等しくなっており、その結果、図7Bに概略的に示されている簡略化された電気回路が得られる。
【0032】
図8Aおよび図8Bは、遷移中の、図4に示されているような差動勾配制限スイッチに対して等価のスイッチスキームおよび簡略化された電気概略図を示し、以下ではこの図を参照しながら、VLeft>VRightの場合における、閉成時からVLeft=VRightである定常状態に達するまでの両側差動スイッチの動作原理について説明する。図8Aおよび図8Bを参照すると、スイッチ800が初期時に閉成されている場合、第1のFET806および第2のFET808の両方のためのゲートランプ制御回路(そのうちの1つのみが示されており、電流源802と、フィードバック/積分コンデンサ804と、両方のFET806,808と、を含む)は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しい勾配で、FETのゲート810,812をGNDに向けて同時に放電する。スイッチ800の両端にわたる電圧遷移のランプまたは勾配は、両方のゲート810,812に対するゲート-ソース間バイアス(VGS)が、第1のFET806および第2のFET808のための閾値電圧(V)を上回った場合(|VGS|>VTP)にのみ開始する。この状態に達すると、スイッチ800のどちらの側またはポート814,816がより高い電圧を有しているかによってランプ制御動作が異なる。図8Aおよび図8Bに示されている例のように、VLeft>VRightであって、かつ|VGS-1st FET|>Vである場合には、第1のFET806を流れる電流が、両側または両ポート814,816における互いに向かう差動勾配制限された遷移を維持することを可能にするために、第1のFET806が、ランプ制御(電流源802およびコンデンサ804)によって自己整合されるようにバイアスされる。このような状況下では、第2のFET808のゲート-ソース間バイアス|VGS-2nd FET|≒|VGD-2nd FET|は、VGATE-2nd FET=GND(|VGS-2nd FET|≒|VGD-2nd FET|=VRight)になるまで増加し続ける。VGATE-2nd FET=GNDであるこの定常状態およびGNDに遷移している間、第1のFET806に比べて第2のFETの抵抗は、低いと見なされる。この理由から、VMidは、VRightに近くなり、第2のFET808の順方向バイアスを阻止する。(スイッチの両側または両ポート814,816における絶対的な勾配の合計である)スイッチ800の差動勾配は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しく、有意である場合にはCFEEDBACKに追加されるFETのゲート-ドレイン間の静電容量(CGD)を無視すると、それぞれの側の勾配は、両側の総静電容量に対するそれぞれ他方の側の静電容量の比に比例する。したがって、それぞれの側の遷移の電圧勾配を、
Slope(VLEFT)=[ICURRENT_SOURCE/CFEEDBACK]×CLOAD_RIGHT/[CLOADLEFT+CLOAD_RIGHT] (式1)
Slope(VRIGHT)=[ICURRENT_SOURCE/CFEEDBACK]×CLOADLEFT/[CLOADLEFT+CLOAD_RIGHT] (式2)
のように推定または計算することができる。
【0033】
したがって、差動勾配を、
Slope(VLEFT_RIGHT_DIFF)=Slope(VLEFT)+Slope(VRIGHT)=ICURRENT_SOURCE/CFEEDBACK (式3)
によって推定または計算することができる。
【0034】
スイッチ800の両側または両ポート814,816の電圧が等しくなった後には、ランプ制御は、もはやスイッチの動作に影響を与えることはなく、両方のゲート810,812は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKの電圧勾配でGNDに向けて放電し続け、これは、閉成されているスイッチの定常状況である。通常、低抵抗であると見なされている低電圧側に近いFETのゲートの方が、自己整合された差動ランプ制御を形成したFETのゲートよりも早くGNDに到達する。
【0035】
図9Aおよび図9Bは、図4に示されているような差動勾配制限スイッチの一部に対して等価のスイッチスキームおよび簡略化された電気概略図を示し、以下ではこの図を参照しながら、VLeftが初期時にVRightよりも小さい場合であって、かつVLeft=VRightである定常状態に達するまで閉成される場合における、両側差動スイッチの動作原理について説明する。図9Aおよび図9Bを参照すると、スイッチ900が初期時に閉成されている場合、第1のFET906および第2のFET908の両方のためのゲートランプ制御回路(そのうちの1つのみが示されており、電流源902と、フィードバック/積分コンデンサ904と、両方のFET906,908と、を含む)図9Aおよび図9Bは、図4に示されているような差動勾配制限スイッチの一部に対して等価のスイッチスキームおよび簡略化された電気概略図を示し、以下ではこの図を参照しながら、VLeftが初期時にVRightよりも小さい場合であって、かつVLeft=VRightである定常状態に達するまで閉成される場合における、両側差動スイッチの動作原理について説明する。図9Aおよび図9Bを参照すると、スイッチ900が初期時に閉成されている場合、ゲートランプ制御回路(電流源902と、フィードバック/積分コンデンサ904と、第1のFET906および第2のFET908の両方と、を含む)は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しい勾配で、FETのゲート910,912をGNDに向けて同時に放電する。スイッチ900の両端にわたる電圧遷移のランプまたは勾配は、両方のゲート910,912に対するゲート-ソース間バイアス(VGS)が、第1のFET906および第2のFET908のための閾値電圧(V)を上回った場合-|VGS|>VTPにのみ開始する。この状態に達すると、スイッチ900のどちらの側またはポート914,916がより高い電圧を有しているかによってランプ制御動作が異なる。図9Aおよび図9Bに示されている例のように、VLeft<VRightであって、かつ|VGS-2nd FET|>Vである場合には、第2のFET908を流れる電流が、両側または両ポート914,916における互いに向かう差動勾配制限された遷移を維持することを可能にするために、第2のFET908が、ランプ制御(電流源902およびコンデンサ904)によって自己整合されるようにバイアスされる。このような状況下では、第1のFET906のゲート-ソース間バイアス|VGS-1st FET|≒|VGD-1st FET|は、VGATE-1st FET=GND(|VGS-1st FET|≒|VGD-1st FET|=VRight)になるまで増加し続ける。VGATE-1st FET=GNDであるこの定常状態およびGNDに遷移している間、第2のFET908に比べて第1のFETの抵抗は、低いと見なされる。この理由から、VMidは、VLeftに近くなり、第1のFET906の順方向バイアスを阻止する。(スイッチの両側または両ポート914,916における絶対的な勾配の合計である)スイッチ900の差動勾配は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しく、それぞれの側の勾配は、両側の総静電容量に対するそれぞれ他方の側の静電容量の比に比例する。FETのゲート-ドレイン間の静電容量(CGD)を無視すると、それぞれの側の遷移の電圧勾配と、スイッチ900の差動勾配とを、上記の式1~3を使用して推定することができる。
【0036】
図10A図10Fは、図4に示されているような閉成された差動勾配制限スイッチ1000の一部の簡略化された電気概略図であり、以下ではこれらの図を参照しながら、種々異なる電圧および容量負荷の場合における、遷移中のスイッチの両側差動対称ランプ制御メカニズムの動作原理について説明する。図10A図10Dに隣接する矢印は、各図に関して説明されるスイッチ動作のためのランプアップまたはランプダウンの遷移方向を示す。図10E図10Fに隣接する矢印は、以下に説明するように、スイッチ1000の動作の結果、スイッチの両ポートが互いに向かって同時にランプダウン/ランプアップすることを示す。
【0037】
図10A図10Bを参照すると、スイッチのポート1002,1004のうちの、より高い電圧(VLeftまたはVRight)を有するポート1002,1004が、著しく小さい負荷容量(CLeftまたはCRight)も有する場合には、そのポートに隣接するFETは、ランプダウン制御されたゲートを有するソースフォロワとして機能する。図10Aを参照すると、図示の実施形態では、スイッチ1000の第1のポート1002は、第2のポート1004における電圧(VRight)よりも高い電圧(VLeft)にあり、かつ第2のポートにおける負荷容量(CRight)よりも著しく小さい負荷容量(CLeft)を有する。したがって、スイッチ1000内の第1のFET1006は、第1の電流源1010と、第1のフィードバック/積分コンデンサ1012とによって制御される、ランプダウン制御されたゲート1008を有するソースフォロワとして構成されている。第1のFET1006のドレイン1014は、(グラウンドとして示されている)強力な電源によってバイアスされ、第1のFETのソース1016は、自身をゲート1008に自己整合させ、その結果、第1のポート1002の高い方の電圧(VLeft)は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKによって決定された、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しい一定の勾配で減少する。低い方の電圧のポート、すなわち第2のポート1004における電圧遷移の勾配は、実質的にゼロに等しい。
【0038】
図10Bを参照すると、スイッチ1000の第1のポート1002が、第2のポート1004における電圧(VRight)よりも低い電圧(VLeft)にあり、かつ第2のポートにおける負荷容量(CRight)よりも著しく大きい負荷容量(CLeft)を有する場合には、スイッチ1000内の第2のFET1018は、第2の電流源1022と、第2のフィードバック/積分コンデンサ1024とによって制御される、ランプダウン制御されたゲート1020を有するソースフォロワとして構成されている。第2のFET1018のドレイン1026は、(グラウンドとして示されている)強力な電源によってバイアスされ、第2のFETのソース1028は、自身をゲート1020に自己整合させ、その結果、第2のポート1004の高い方の電圧(VRight)は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKによって決定された、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しい一定の勾配で減少する。低い方の電圧のポート、すなわち第1のポート1002における電圧遷移の勾配は、実質的にゼロに等しいままである。
【0039】
図10C図10Dを参照すると、スイッチのポート1002,1004のうちの、より高い電圧(VLeftまたはVRight)を有するポート1002,1004が、著しく大きい負荷容量(CLeftまたはCRight)も有する場合には、そのポートに隣接するFETは、ミラー段として機能し、このミラー段では、FETのドレインにおける所望の電圧勾配を維持するためにゲートバイアスが自己整合される。図10Cを参照すると、図示の実施形態では、スイッチ1000の第1のポート1002は、より高い電圧(VLeft)にあり、かつ第2のポート1004における負荷容量(CRight)よりも著しく大きい負荷容量(CLeft)も有する。したがって、第1のFET1006は、第1の電流源1010と第1のコンデンサ1012とによってゲート1008が制御されるランプアップ制御回路として機能するミラー段として構成されている。第1のFET1006のソース1016は、(電源Vsとして示されている)強力な電源によってバイアスされ、第1のFET1006のドレイン1014は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKによって決定された、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しい一定の勾配で上昇する。高い方の電圧のポート、すなわち第1のポート1002における電圧遷移の勾配は、実質的にゼロに等しい。
【0040】
図10Dは、第1のポート1002における電圧(VLeft)が、第2のポート1004における電圧(VRight)よりも低く、かつスイッチ1000の第1のポート1002が、第2のポートにおける負荷容量(CRight)よりも著しく小さい負荷容量(CLeft)を有する場合を示す。図10Dを参照すると、第2のFET1018は、第2の電流源1022と第1のコンデンサ1024とによってゲート1020が制御される、ミラー段に基づいたランプアップ制御回路として機能する。第2のFET1018のソース1028は、(電源Vsとして示されている)強力な電源によってバイアスされ、第2のFET1018のドレイン1026は、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKによって決定された、ICURRENT-SOURCE/CFEEDBACKに等しい一定の勾配で上昇する。高い方の電圧のポート、すなわち第2のポート1004における電圧遷移の勾配は、実質的にゼロに等しい。
【0041】
図10E図10Fを参照すると、スイッチのポート1002,1004の一方が、より高い電圧(VLeftまたはVRight)を有しているが、実質的に等しいまたは同じオーダの負荷容量(CLeftおよびCRight)を有する場合には、そのポートに隣接するFETは、ソースフォロワおよびミラー段の両方として機能する。図10Eを参照すると、図示の実施形態では、スイッチ1000の第1のポート1002は、より高い電圧(VLeft)にあり、かつランプダウンし、低い方の電圧の第2のポート1004は、それぞれ両側の総静電容量に対するそれぞれ他方の側の静電容量の比に依存する勾配でランプアップする。しかしながら、第1のポート1002と第2のポート1004との間の差動電圧勾配は、各々の負荷容量とは無関係である。この差動勾配は、2つのスイッチポートの絶対的な勾配の合計であり、それぞれの側の勾配は、両側の総静電容量に対するそれぞれ他方の側の静電容量の比に比例する。FETのゲート-ドレイン間の静電容量(CGD)を無視すると、それぞれの側の遷移の電圧勾配と、スイッチ1000の差動勾配とを、上記の式1~3を使用して推定することができる。
【0042】
図10Fは、第1のポート1002における電圧(VLeft)が、第2のポート1004における電圧(VRight)よりも低く、かつスイッチ1000が、図10Eに関して上で説明した場合と同様かつ対称的に動作する場合を示しているが、ただし、VLeftがランプアップされ、VRightがランプダウンされるという違いがある。
【0043】
図11は、差動勾配制限スイッチの別の実施形態の概略ブロック図である。図11を参照すると、差動勾配制限スイッチ1100は、第1のインバータ1104に結合された第1のレベルシフタ1102と、第1のインバータの出力部に結合されたゲート1108を有する第1のFET1106と、第2のインバータ1112に結合された第2のレベルシフタ1110と、第2のインバータの出力部に結合されたゲート1116を有する第2のトランジスタまたはFET1114と、を含む。第1のFET1106のドレインは、ノード1118において第2のFET1114のドレインに結合されている。第1のFET1106のソース1120は、スイッチの第1のポート1124に結合されており、第2のFET1114のソース1126は、第2のポート1130に結合されている。
【0044】
図4の実施形態のように、スイッチ1100は、閉成されたスイッチ1100の両端にわたるシームレスな双方向の自己整合性の差動電圧遷移勾配制限を提供するように構成された、両側対称ランプ制御機構をさらに組み込んでいる。一般的に、両側対称ランプ制御機構は、第1のFET1106および第2のFET1114に加えて、第1のインバータ1104に結合された第1の電流源1132、第2のインバータ1112に結合された第2の電流源1134、第1のFET1106のゲート1108と第2のポート1130との間に結合されたコンデンサ1136のような第1のフィードバック/積分容量性素子、および第2のFET1114のゲート1116とスイッチ1100の第1のポート1124との間に結合された第2のフィードバック/積分コンデンサ1138を含む。
【0045】
図4の実施形態とは異なり、トランジスタ1106,1114のウェルまたはボディ端子1122,1128は、スイッチ1100の入力ポート(1124または1130)に印加される安定化入力電圧のような固定高電圧(HV)に接続されており、この固定高電圧(HV)は、いずれかのポートに印加される最高電圧(VLeft,VRight)以上である。この実施形態の利点は、ウェルまたはボディ端子がソースまたはドレイン領域よりも高くバイアスされるので、トランジスタ1106,1114が意図せずにまたは不注意に順方向にバイアスされる危険性が低減されること、または実質的に排除されることを含む。
【0046】
図12は、差動勾配制限スイッチのさらに別の実施形態の概略ブロック図である。図12を参照すると、差動勾配制限スイッチ1200は、第1のインバータ1204に結合された第1のレベルシフタ1202と、第1のインバータの出力部に結合されたゲート1208を有する第1のFET1206と、第2のインバータ1212に結合された第2のレベルシフタ1210と、第2のインバータの出力部に結合されたゲート1216を有する第2のトランジスタまたはFET1214と、を含む。第1のFET1206のドレインは、ノード1218において第2のFET1214のドレインに結合されている。第1のFET1206のソース1220は、スイッチの第1のポート1224に結合されており、第2のFET1214のソース1226は、第2のポート1230に結合されている。
【0047】
図4および図11の実施形態のように、スイッチ1200は、両側対称ランプ制御機構をさらに組み込んでいる。一般的に、両側対称ランプ制御機構は、第1のFET1206および第2のFET1214に加えて、第1のインバータ1204に結合された第1の電流源1232、第2のインバータ1212に結合された第2の電流源1234、第1のFET1206のゲート1208と第2のポート1230との間に結合されたコンデンサ1236のような第1のフィードバック/積分容量性素子、および第2のFET1214のゲート1216とスイッチ1200の第1のポート1224との間に結合された第2のフィードバック/積分コンデンサ1238を含む。
【0048】
第1のレベルシフタ406およびインバータ430が第1のポート402に結合されていて、かつ第2のレベルシフタ408およびインバータ434が第2のポート404に結合されている図4の実施形態とは異なり、この実施形態では、第1のレベルシフタ1202および第2のレベルシフタ1210と、インバータ1204,1212とが、固定高電圧(HV)に結合されており、これにより、第1のポート1224または第2のポート1230への入力電圧がHVよりも高くなるとスイッチ1200を無効にする。一般的に、固定HVは、スイッチ1200の入力ポート(1224または1230)に印加される安定化入力電圧のような、いずれかのポートに印加されることが予想される最高電圧(VLeft,VRight)以上になるように選択されている。
【0049】
図13Aおよび図13Bは、差動勾配制限スイッチの別の実施形態の概略ブロック図である。図13Aを参照すると、差動勾配制限スイッチ1300は、第1のインバータ1304に結合された第1のレベルシフタ1302と、第1のインバータの出力部に結合されたゲート1308を有する第1のFET1306と、第2のインバータ1312に結合された第2のレベルシフタ1310と、第2のインバータの出力部に結合されたゲート1316を有する第2のトランジスタまたはFET1314と、を含む。第1のFET1306のドレインは、ノード1318において第2のFET1314のドレインに結合されている。第1のFET1306のソース1320は、スイッチの第1のポート1324に結合されており、第2のFET1314のソース1326は、第2のポート1330に結合されている。
【0050】
図4の実施形態のように、スイッチ1300は、第1のインバータ1304に結合された第1の電流源1332と、第2のインバータ1312に結合された第2の電流源1334と、フィードバックおよび積分のための第1の容量性素子1336および第2の容量性素子1338とをさらに含む。図4の実施形態とは異なり、第1の容量性素子1336および第2の容量性素子1338は、第1のFET1306のドレインと第2のFET1314のドレインとの間のノード1318における電圧(VMid)に結合されている。
【0051】
図13Bは、図13Aの差動勾配制限スイッチ1300の別の実施形態の概略ブロック図であり、ここでは、第1の容量性素子1336および第2の容量性素子1338は、金属コンデンサのような物理的なディスクリート素子を含んでおらず、むしろ、実質的に等しく寸法設定された第1のFET1306および第2のFET1314のゲートとドレイン(CGD)との間に形成される真性容量(CGD)から形成されている。この実施形態の利点は、コンポーネント数が削減されているおかげで、スイッチ1300がより小型に、かつより少ない複雑性および費用で実装されることを含む。
【0052】
図14は、スイッチの中間ノードにおける電圧(VMid)のプルダウンを強化するための、かつ順方向バイアス保護の強化を提供するための最低電圧選択回路または最低電圧セレクタをさらに含む、差動勾配制限スイッチ1400の一実施形態の概略ブロック図である。順方向バイアス保護は、VMid(ノード1418)をスイッチ1400の2つのポート1424,1430の最低電圧に結合することによって強化され、これにより、図示の実施形態では第1のFET1406および第2のFET1414のP型のドレイン領域または端子に接続されているVMidが、第1のFET1406および第2のFET1414のnウェルボディ端子1422,1428を著しく上回って上昇し、第1のFETおよび第2のFETのドレイン端子およびボディ端子によって形成されるP/N接合を順方向にバイアスすることを阻止している。
【0053】
図14を参照すると、差動勾配制限スイッチ1400は、第1のインバータ1404に結合された第1のレベルシフタ1402と、第1のインバータの出力部に結合されたゲート1408を有する第1のFET1406と、第2のインバータ1412に結合された第2のレベルシフタ1410と、第2のインバータの出力部に結合されたゲート1416を有する第2のトランジスタまたはFET1414と、を含む。第1のFET1406のドレインは、ノード1418において第2のFET1414のドレインに結合されている。第1のFET1406のソース1420は、スイッチの第1のポート1424に結合されており、第2のFET1414のソース1426は、第2のポート1430に結合されている。
【0054】
図4の実施形態のように、スイッチ1400は、両側対称ランプ制御機構をさらに組み込んでいる。一般的に、両側対称ランプ制御機構は、第1のFET1406および第2のFET1414に加えて、第1のインバータ1404に結合された第1の電流源1432、第2のインバータ1412に結合された第2の電流源1434、第1のFET1406のゲート1408と第2のポート1430との間に結合されたコンデンサ1436のような第1のフィードバック/積分容量性素子、および第2のFET1414のゲート1416とスイッチ1400の第1のポート1424との間に結合された第2のフィードバック/積分コンデンサ1438を含む。
【0055】
図4の実施形態とは異なり、スイッチ1400は、スイッチの中間ノード1418における電圧(VMid)のプルダウンを強化するための、かつ順方向バイアス保護の強化を提供するための最低電圧セレクタ1440をさらに含む。図示の実施形態では、最低電圧セレクタ1440は、FET1442,1444のような第3のトランジスタおよび第4のトランジスタを含み、第3のトランジスタと第4のトランジスタとは、ソース1446,1448を介して互いに対して直列に、かつ中間ノード1418に結合されており、スイッチ1400の第1のFET1406および第2のFET1414に対して並列に結合されている。第3のFET1442は、スイッチ1400の第2のポート1430に結合されたゲート1450と、第1のポート1424に結合されたドレイン1452と、第3のFET1442のソース1446および中間ノード1418に結合されたボディ端子1454とをさらに含む。第4のFET1444は、スイッチ1400の第2のポート1430に結合されたゲート1456と、第1のポート1424に結合されたドレイン1458と、第4のFET1444のソース1448および中間ノード1418に結合されたボディ端子1460とをさらに含む。
【0056】
一般的に、第3のFET1442および第4のFET1444は、第1のFET1406および第2のFET1414とは反対にドープされたチャネルを含む。図示の実施形態では、第3のFET1442および第4のFET1444は、nチャネル金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(NMOS)を含み、第1のFET1406および第2のFET1414は、pチャネル(PMOS)トランジスタを含む。NMOSスイッチとPMOSスイッチとを並列に組み合わせることにより、1種類のFETのみを使用した場合には不可能であった、ゼロボルトから最高電圧(HV)までのフルスイングをスイッチ1400に給電または結合することが可能となることに注意されたい。しかしながら、図4の実施形態における差動勾配制限スイッチ400と同様に、本発明の外延および範囲から逸脱することなく、第1のFET1406および第2のFET1414のためにNMOSを使用し、第3のFET1442および第4のFET1444のためにPMOSを使用して、バイアスおよび電圧を適切に選択することにより、最低電圧セレクタ1440を含むスイッチ1400を実装してもよいことが理解されよう。
【0057】
上記の差動勾配制限スイッチの実施形態は、閉成されたスイッチの両端にわたる電圧変化が急峻な遷移勾配をもたらしてはならないような広範囲の高電圧用途にとって好適であることが理解されよう。とりわけ、上記のスイッチは、複数のコンシューマを駆動するためのマルチコンシューマ電圧レギュレータを実装するために、電圧レギュレータおよびマルチプレクサと組み合わせて使用すると、特に有用であることに留意されたい。図15は、マルチコンシューマ電圧レギュレータのそのような一実施形態の概略ブロック図である。図15を参照すると、マルチコンシューマ電圧レギュレータ1500は、安定化出力電圧(Vreg)を受信および/または生成するためのデジタル-アナログ(D→A)レギュレータのような電圧レギュレータ1502と、この図では概略的なスイッチ記号によって表現されている複数の差動勾配制限スイッチ1506を備えるマルチプレクサ1504と、を含み、これらの差動勾配制限スイッチ1506は、安定化出力電圧を、ここでは負荷コンデンサ1508a~nとして概略的に表現されている容量性負荷を有する複数のコンシューマ(Consumer-1~n)に結合する。スイッチ1506は、上記の差動勾配制限スイッチの実施形態のいずれかを含むことができる。
【0058】
一般的に、図示の実施形態のように、電圧レギュレータ1502は、電圧トリム信号を受信し、所定の範囲にわたって安定化出力電圧を調節またはトリミングするための電圧トリムデコーダ1510をさらに含む。さらに、いくつかの実施形態では、マルチコンシューマ電圧レギュレータ1500は、電圧レギュレータ1502の出力部とグラウンドとの間に結合された出力コンデンサ1512をさらに含む。複数のコンシューマを電圧レギュレータに結合するために使用される従来のアナログスイッチとは異なり、出力コンデンサ1512は、電圧レギュレータ1502に結合された複数のコンシューマのいずれの静電容量1508a~nよりも大きい静電容量を有している必要はない。それどころか、マルチプレクサ1504において差動勾配制限スイッチ1506を使用することにより、出力コンデンサ1512は、電圧レギュレータ1502に結合された複数のコンシューマのいずれの静電容量1508a~nよりも大きいまたは小さい、広範囲の静電容量を有することが可能となる。コンデンサ1508a~nは、広範囲の負荷容量にわたって動的に変化する静電容量を有することが可能となるので、これは特に有利である。とりわけ、複数のコンシューマのコンデンサ1508a~nは、コンシューマが電圧レギュレータに接続される前もしくは後、またはそれどころかスイッチ1506の両端にわたる電圧遷移中にも、遷移勾配に対して実質的な影響を与えることなく変化可能であることに留意されたい。さらに、電圧レギュレータ1502が、所要の電流において複数のコンシューマの全てによって必要とされる電圧へとランプアップ/ランプダウンさせるために十分に強力である場合には、より小型の出力コンデンサ1512は、入力トリムが一旦大幅に変化されると電圧レギュレータの出力の電圧遷移がより高速であるので、有利であろう。出力コンデンサ1512は、新たに接続される任意のコンシューマの電圧遷移に対して影響を及ぼさず、また、追加されたコンシューマを駆動するために電圧レギュレータ1502が必要とする出力電流を、差動勾配制限スイッチ1506が制限するので、より小型の出力コンデンサ1512と、より非力な電圧レギュレータとを使用することが可能となる。
【0059】
図16Aおよび図16Bは、従来のアナログスイッチを使用するマルチコンシューマ電圧レギュレータと、差動勾配制限スイッチを使用する電圧レギュレータとに関して、新しい大容量のコンシューマを追加したことによるマルチコンシューマ電圧レギュレータへの影響を比較した波形図である。
【0060】
図16Aは、安定化出力電圧(Vreg)と、複数の従来のアナログスイッチを含む1つのマルチプレクサを介して3つのコンシューマに結合された電圧とを示す。図16Aを参照すると、t1よりも前の時間に、Consumer-2およびConsumer-3を電圧レギュレータに結合するために、イネーブル信号(En Consumer-2およびEn Consumer-3)が2つの別個のアナログスイッチに供給される。安定化出力電圧(Vreg)と、Consumer-2およびConsumer-3をレギュレータ出力部に結合する従来のアナログスイッチのコンシューマ側またはポートにおける電圧とは、全て実質的に10vである。時間t1で、イネーブル信号(En Consumer-1)が、Consumer-1をレギュレータ出力部に結合する第3の従来のアナログスイッチにアサートされる。この例では、Consumer-1は、時間t1の前には6vの電圧にあり、Consumer-2ならびにConsumer-3およびレギュレータ出力部に比べて大きい静電容量を有しているので、VregおよびConsumer-2ならびにConsumer-3に結合された電圧は、レギュレータ出力部と、Consumer-1と、Consumer-2と、Consumer-3との間での電荷共有の結果として、100nsecで5vの急電圧勾配1602で降下する。レギュレータ出力部、Consumer-2、およびConsumer-3における電圧は、回復しはするが、これらが最初に降下したときの速度よりもはるかに緩慢な速度で回復する。図示の例では、電圧が10vまで回復するのに時間t2から時間t3まで約1μsecかかる。さらに重要なことに、電圧レギュレータ、Consumer-2、およびConsumer-3は、制御されていない急電圧勾配遷移、ひいては望ましくない急電圧勾配遷移にさらされており、Consumer-2およびConsumer-3に対する潜在的な損傷または破壊的な電圧不足の状況にさらされている。
【0061】
図16Bは、安定化出力電圧(Vreg)と、上記のような複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを介して3つのコンシューマに結合された電圧とを示す。図16Bを参照すると、ここでもt1よりも前の時間に、Consumer-2およびConsumer-3を電圧レギュレータに結合するために、イネーブル信号(En Consumer-2およびEn Consumer-3)が2つの別個の差動勾配制限スイッチに供給される。安定化出力電圧(Vreg)と、差動勾配制限スイッチのコンシューマ側またはポートにおける電圧とは、全て実質的に10vである。時間t1で、イネーブル信号(En Consumer-1)が、Consumer-1をレギュレータ出力部に結合する第3の差動勾配制限スイッチにアサートされる。図16Aの例のように、Consumer-1は、時間t1の前には6vの電圧にあり、Consumer-2ならびにConsumer-3およびレギュレータ出力部Vregに比べて大きい静電容量を有している。しかしながら、Consumer-1をレギュレータ出力部に結合する差動勾配制限スイッチの勾配制限特性のおかげで、Consumer-1に結合された電圧は、1μsecで6vという制御および制限された電圧勾配1604で増加する。図4に関して前に説明したように、制限された電圧勾配の絶対的な大きさは、差動勾配制限スイッチ内の電流源によって供給された電流を、スイッチ内のフィードバックコンデンサの静電容量で割ったものによって決定される。さらに、図16Bにグラフで示されているように、電圧レギュレータ、Consumer-2、またはConsumer-3は、この例では急電圧勾配遷移にさらされておらず、または実に如何なる電圧遷移にもさらされておらず、また、Consumer-2およびConsumer-3は、潜在的な損傷または破壊的な電圧不足の状況にもさらされていない。
【0062】
図17は、上記のような複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを介して、安定化電圧よりも低いそれぞれ異なる電圧を有する複数の新しいコンシューマに、電圧レギュレータを同時に接続するプロセスをグラフで示した波形図である。図17を参照すると、t1よりも前の時間におけるレギュレータの出力電圧(Vreg)は、10vである。差動勾配制限スイッチのコンシューマ側またはポートにおける電圧は、Consumer-1に関しては4vであり、Consumer-2に関しては6vであり、Consumer-3に関しては8vである。時間t1で、Consumer-1、Consumer-2、およびConsumer-3をレギュレータの出力電圧(Vreg)に結合するために、イネーブル信号(En Consumer-1、En Consumer-2、およびEn Consumer-3)が3つの別個の差動勾配制限スイッチに供給される。差動勾配制限スイッチの勾配制限特性のおかげで、3つ全てのコンシューマに結合された電圧は、1μsecで6vという実質的に等しい制御された一定の電圧勾配1702で増加またはランプアップする。初期電圧の差または容量性負荷の差にもかかわらず、電荷共有は存在せず、3つのコンシューマまたは電圧レギュレータのいずれも急電圧勾配遷移にさらされておらず、または潜在的な損傷または破壊的な電圧不足の状況にもさらされていない。
【0063】
図18は、複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを介して、安定化電圧よりも高いまたは低いそれぞれ異なる電圧を有する複数の新しいコンシューマに、電圧レギュレータを同時に接続するプロセスをグラフで示した波形図である。図18を参照すると、t1よりも前の時間におけるレギュレータの出力電圧(Vreg)は、8vである。差動勾配制限スイッチのコンシューマ側またはポートにおける電圧は、Consumer-1に関しては4vであり、Consumer-2に関しては6vであり、Consumer-3に関しては10vである。時間t1で、Consumer-1、Consumer-2、およびConsumer-3をレギュレータの出力電圧(Vreg)に結合するために、イネーブル信号(En Consumer-1、En Consumer-2、およびEn Consumer-3)が3つの別個の差動勾配制限スイッチに供給される。Consumer-3における電圧は、制御および制限された一定のランプダウン電圧勾配1802で減少またはランプダウンし始め、それと同時に、Consumer-1およびConsumer-2における電圧は、制御および制限された一定のランプアップ電圧勾配1804で増加またはランプアップし始める。レギュレータの出力電圧(Vreg)は、8vで変化しないままである。さらに、差動勾配制限スイッチの勾配制限特性のおかげで、制限されたランプダウン電圧勾配1802の絶対的な大きさと、制限されたランプアップ電圧勾配1804の絶対的な大きさとが、実質的に等しくなる。初期電圧の差または容量性負荷の差にもかかわらず、電荷共有は存在せず、3つのコンシューマまたは電圧レギュレータのいずれも急電圧勾配遷移にさらされておらず、または潜在的な損傷または破壊的な電圧不足の状況にもさらされていない。
【0064】
図19は、複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを介して、それぞれ異なる電圧を有する複数の新しいコンシューマに、電圧レギュレータを同時に接続するプロセスをグラフで示した波形図であり、ここでは、3つ全てのコンシューマが、それぞれ異なる初期電圧にあり、コンシューマのうちの1つ(Consumer-1)の容量性負荷は、レギュレータおよび他のコンシューマの両方の容量性負荷よりも格段に大きく、電圧レギュレータは、Consumer-1のための6v/1μsecの遷移を支援するために(電流的に)十分に強力なものではない。図19を参照すると、t1よりも前の時間におけるレギュレータの出力電圧(Vreg)は10vであり、差動勾配制限スイッチのコンシューマ側またはポートにおける電圧は、Consumer-1に関しては4vであり、Consumer-2に関しては6vであり、Consumer-3に関しては10vである。Consumer-1の容量性負荷は、電圧レギュレータ、Consumer-2、およびConsumer-3の容量性負荷よりもはるかに大きい(C>>(CREG,C,C))。時間t1で、Consumer-1、Consumer-2、およびConsumer-3をレギュレータの出力電圧(Vreg)に結合するために、イネーブル信号(En Consumer-1、En Consumer-2、およびEn Consumer-3)が3つの別個の差動勾配制限スイッチに供給される。レギュレータ出力部における電圧(Vreg)は、即座に、ただし制御および制限された一定のランプダウン電圧勾配1902で減少またはランプダウンし始め、それと同時に、Consumer-1、Consumer-2、およびConsumer-3における電圧は、増加またはランプアップし始める。Consumer-1、Consumer-2、およびConsumer-3における電圧が増加するときの勾配の絶対的な大きさは、Vregのランプダウンの制限された電圧勾配1902よりも小さいが、Vregおよびコンシューマ電圧が、約6MV/secという制限された差動勾配1904で互いに向かってランプしていて、かつ急電圧勾配遷移を経験していないことに留意されたい。
【0065】
以下では、図20のフローチャートを参照しながら、複数の差動勾配制限スイッチを含む1つのマルチプレクサを有するマルチコンシューマ電圧レギュレータを動作させるための方法について説明する。図20を参照すると、本方法は、複数の差動勾配制限スイッチを含むマルチコンシューマ電圧レギュレータ内のマルチプレクサにレギュレータ電圧を結合することから始まる(2002)。次に、第1の時間に、第1の電圧にある第1のコンシューマが、スイッチを閉成するための信号が印加されることによって複数の差動勾配制限スイッチのうちの第1の差動勾配制限スイッチを介してレギュレータ電圧に結合され、スイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配が制限される(2004)。上で説明したように、差動勾配制限スイッチの両端にわたる電圧勾配は、差動勾配制限スイッチ内の電流源によって供給された電流を、スイッチ内のフィードバックコンデンサの静電容量で割ったものによって決定および制限される。次に、第2の時間に、第2の電圧にある第2のコンシューマが、第2の差動勾配制限スイッチを介してレギュレータ電圧に結合され、第2のスイッチの両端にわたる電圧遷移の勾配が制限される(2006)。一般的に、差動勾配制限スイッチの各々は、スイッチの第1のポートに結合されたソースを有する第1のトランジスタと、スイッチの第2のポートに結合されたソースおよび第1のトランジスタのドレインに結合されたドレインを有する第2のトランジスタと、を含む。最後に、いくつかの実施形態では、差動勾配制限スイッチは、スイッチの第1のポートと第2のポートとの間に結合された最低電圧選択回路または最低電圧セレクタをさらに含み、本方法は、最低電圧選択回路により、第1のトランジスタのドレインと第2のトランジスタのドレインとの間の(またはスイッチ構成およびバイアスによってはソース間の)ノードを、最低電圧にあるスイッチのポートに結合して、これにより順方向バイアス状況を阻止することをさらに含む(2008)。
【0066】
次に、図21のフローチャートを参照しながら、差動勾配制限スイッチを動作させるための方法について説明する。次に、図21のフローチャートを参照しながら、差動勾配制限スイッチを動作させるための方法について説明する。以下のステップは、順番に列挙または記載されているが、全てのステップをこの順序で連続して実行する必要はないことに留意されたい。むしろ、いくつかのステップを実質的に同時に実行し、他のステップをその後に連続して実行してもよい。
【0067】
図21を参照すると、本方法は、第1の電圧(VLeft)を、スイッチの第1のポートからスイッチ内の第1のトランジスタの第1のソース-ドレイン(SD)端子およびボディ端子に結合することから始まる(2102)。それと実質的に同時に、第2の電圧(VRight)が、スイッチの第2のポートからスイッチの第2のトランジスタの第1のSD端子およびボディ端子に結合される(2104)。
【0068】
オプションで、スイッチが最低電圧セレクタをさらに含む場合には、スイッチを閉成するためにスイッチを動作させる方法は、第1の電圧および第2の電圧のうちのどちらが最低であるかを決定することと、最低電圧を有する第1のポートまたは第2のポートを、第1のトランジスタの第2のSD端子と第2のトランジスタの第2のSD端子との間のノードに結合することとをさらに含む(2106)。
【0069】
次に、スイッチを閉成するためのスイッチイネーブル信号が印加される。VLeftがVRightよりも大きい場合には、第1のトランジスタのゲートと第2のポートとの間に結合された第1のフィードバックコンデンサと、第1の電流源とを第1のトランジスタのゲートに結合することによってこのゲートを駆動することにより、スイッチが閉成され、これにより、第2のポートにおける電圧遷移の勾配に対する第1のポートにおける電圧遷移の勾配を制限する(2108)。第1のポートの電圧遷移の勾配は、電流源およびフィードバック容量(ICURRENT_SOURCE/CFEEDBACK)によって制限される。第2のポートにおける電圧遷移の勾配は、制限要因ではなく、第1のポートにおける勾配以下である。
【0070】
RightがVLeftよりも大きい場合には、第2のトランジスタのゲートと第1のポートとの間に結合された第2のフィードバックコンデンサと、第2の電流源とを第2のトランジスタのゲートに結合することによってこのゲートを駆動することにより、スイッチが閉成され、その間、第1のポートにおける電圧遷移の勾配に対する第2のポートにおける電圧遷移の勾配を制限する(2110)。この場合、第1のポートにおける電圧遷移の勾配は、制限するものではなく、一般的に第2のポートにおける勾配以下である。
【0071】
どちらの場合も、すなわちVLeft>VRightである場合にもVRight>VLeftである場合にも、スイッチの両端にわたる電圧遷移の差動勾配は、第1のポートおよび第2のポートにおける電圧遷移の絶対値の合計に等しくなる。
【0072】
次に、VLeftを第1のポートから第1のトランジスタのゲートに結合し、VRightを第2のポートから第2のトランジスタのゲートに結合することによって、スイッチを開成することができる(2112)。
【0073】
これまで、差動勾配制限スイッチと、そのようなスイッチを含むマルチコンシューマ電圧レギュレータと、それらを動作させるための方法とを開示してきた。本発明の実施形態について、特定の機能の実装およびそれらの関係を説明する機能的および概略的なブロック図を用いて上で説明してきた。これらの機能的な構築ブロックの境界は、本明細書では説明の簡便性のために任意に定義されたものである。特定の機能およびそれらの関係が適切に実行される限り、これに代わる境界を定義してもよい。
【0074】
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするものであるので、他の者は、当業者の技術の範囲内の知識を適用することによって、過度の実験なしに、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態を修正すること、および/または種々の用途に適合させることが容易に可能である。したがって、そのような適合および修正は、本明細書に提示される教示および案内に基づいて、開示された実施形態の均等物の意味内および範囲内にあることが意図されている。本明細書の表現または用語は、本明細書の表現または用語が、教示および案内に照らして当業者によって解釈されるように説明することを目的としたものであって、限定することを目的としたものではないことが理解されるべきである。
【0075】
概要および要約の章ではなく詳細な説明の章が、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図していることが理解されるべきである。概要および要約の章は、発明者によって企図された本発明の1つまたは複数の例示的な実施形態を記載し得るが、ただし全ての例示的な実施形態を記載し得るわけではなく、したがって、本発明および添付の特許請求の範囲を限定することを意図したものでは決してない。
【0076】
本発明の外延および範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物のみによって規定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21