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  • 特許-架橋ポリマー組成物および被覆導体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】架橋ポリマー組成物および被覆導体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20231128BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20231128BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20231128BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20231128BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20231128BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C08L23/26
C08K7/28
C08F8/42
C08F8/00
H01B3/44 L
H01B7/02 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021569548
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 CN2019088291
(87)【国際公開番号】W WO2020237416
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ホー、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、ウェンク
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、シエンミン
(72)【発明者】
【氏名】エッセガー、モハメッド
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、シャオシン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユウ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107987367(CN,A)
【文献】特開2017-212199(JP,A)
【文献】特開2007-312679(JP,A)
【文献】特開平05-222210(JP,A)
【文献】特開2010-129387(JP,A)
【文献】特開平06-068720(JP,A)
【文献】特開2002-038074(JP,A)
【文献】特開2012-177028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/26
C08K 7/28
C08F 8/42
C08F 8/00
H01B 3/44
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)
(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、
(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する、無機中空ミクロスフェアと、を含む架橋ポリマー組成物であって、
前記架橋ポリマー組成物が、
11MPa~40MPaの引張強度、および
12%~100%の引張伸びを有し、
前記無機中空ミクロスフェアが、ガラス中空ミクロスフェアである、架橋ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ガラス中空ミクロスフェアが、
(i)30μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~50MPaの破砕強度、および
(iii)0.20g/cc~0.35g/ccの密度を有する、請求項1に記載の架橋ポリマー組成物。
【請求項3】
(A)75重量%~99重量%のシラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)1重量%~25重量%の無機中空ミクロスフェアと、を含む、請求項1または2に記載の架橋ポリマー組成物。
【請求項4】
前記架橋ポリマー組成物が、0.650g/cc~0.800g/ccの密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋ポリマー組成物。
【請求項5】
前記架橋ポリマー組成物が、1.80~2.06の誘電率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の架橋ポリマー組成物。
【請求項6】
導体と、
前記導体上の被覆と、を含む、被覆導体であって、前記被覆が、
(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)
(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、
(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する、無機中空ミクロスフェアと、を含む、架橋ポリマー組成物を含み、
前記架橋ポリマー組成物が、
11MPa~40MPaの引張強度、および
12%~100%の引張伸びを有し、
前記無機中空ミクロスフェアが、ガラス中空ミクロスフェアである、被覆導体。
【請求項7】
前記被覆が、前記導体に直接接触する、請求項6に記載の被覆導体。
【請求項8】
前記ガラス中空ミクロスフェアが、
(i)30μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~50MPaの破砕強度、および
(iii)0.20g/cc~0.35g/ccの密度を有する、請求項6または7に記載の被覆導体。
【請求項9】
前記架橋ポリマー組成物が、
(A)75重量%~99重量%のシラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)1重量%~25重量%の無機中空ミクロスフェアと、を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項10】
前記架橋ポリマー組成物が、0.650g/cc~0.800g/ccの密度を有する、請求項6~9のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項11】
前記架橋ポリマー組成物が、1.80~2.06の誘電率を有する、請求項6~10のいずれか一項に記載の被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
通信ケーブルはしばしば、ポリオレフィンを含有する絶縁材料で導体を被覆することによって形成される。ポリオレフィンの誘電性能を改善するために、ポリオレフィンはよく、化学的発泡(chemical blowing)剤または物理的発泡(physical blowing)剤を使用して発泡される(foamed)。しかしながら、発泡は、絶縁材料の引張強度を低減することが知られている。加えて、発泡セルの均一性およびサイズは、特に、スモールフォームファクタプラガブル(SFP)ケーブルなどの小さなケーブルにおいて、制御することが困難である。
【0002】
当該技術分野は、ワイヤおよびケーブル用途に適した誘電性能および機械的性能(例えば、引張強度)の組み合わせを呈するポリオレフィンを含有する、被覆組成物、さらに絶縁材料の必要性を認識している。
【0003】
本開示は、架橋ポリマー組成物を提供する。架橋ポリマー組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、(B)(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する無機中空ミクロスフェアと、を含有する。架橋ポリマー組成物は、11MPa~40MPaの引張強度および12%~100%の引張伸びを有する。
【0004】
本開示はまた、被覆導体を提供する。被覆導体は、導体と、導体上の被覆と、を含み、被覆は、架橋ポリマー組成物を含む。架橋ポリマー組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、(B)(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する無機中空ミクロスフェアと、を含有する。架橋ポリマー組成物は、11MPa~40MPaの引張強度および12%~100%の引張伸びを有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の実施形態による架橋ポリマー組成物の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
元素周期表へのいかなる参照も、CRC Press,Inc.によって1990~1991に発行されたときのものである。この表における元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0007】
米国特許慣行の目的のため、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度まで)および当技術分野の一般知識に関して、それらの全体が参照によって組み込まれる(またはその同等の米国版が、参照によってそのように組み込まれる)。
【0008】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値から上限値のすべての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば、1、または2、または3~5、または6、または7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7には、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0009】
反対の記載がない限り、または当技術分野において慣習的にそうでないと述べられていない限り、文脈から示唆されない限り、すべての部およびパーセントは重量を基準としており、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。
【0010】
「アルコキシ」(または「アルコキシ基」)は、-OZラジカルを指し、代表的なZとしては、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、シリル基、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルコキシラジカルの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、およびt-ブトキシが挙げられる。
【0011】
「アルキル」および「アルキル基」は、飽和直鎖状、環状、または分岐状炭化水素基を指す。
【0012】
「アルケニル」または「アルケニル基」は、少なくとも1つのC=C二重結合を含有するヒドロカルビル基を指す。アルキル基は、直鎖状、環状、または分岐状であり得る。好適なアルケニル基の非限定的な例としては、エテニル基、n-プロペニル基、i-プロペニル基、n-ブテニル基、t-ブテニル基、i-ブテニル基などが挙げられる。
【0013】
「アリール」および「アリール基」は、芳香族炭化水素から1個の水素原子を欠失することによって芳香族炭化水素から誘導される有機ラジカルを指す。アリール基は、単環系および/または縮合環系であってもよく、これらの各環は、好適には、5~7個、好ましくは5個または6個の原子を含有する。2つ以上のアリール基が単結合を介して結合している構造も含まれる。具体的な例としては、限定されないが、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、インデニル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどが挙げられる。
【0014】
「アルファ-オレフィン」、「α-オレフィン」、および同様の用語は、炭化水素分子または置換炭化水素分子(すなわち、例えば、ハロゲン、酸素、窒素など、水素および炭素以外の1個以上の原子を含む炭化水素分子)を指し、炭化水素分子は、(i)唯一のエチレン系不飽和であって、この不飽和が、第1の炭素原子と第2の炭素原子との間に位置する、唯一のエチレン系不飽和と、(ii)少なくとも2個の炭素原子、または3~20個の炭素原子、または4~10個の炭素原子、または4~8個の炭素原子と、を含む。α-オレフィンの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、およびこれらのモノマーの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0015】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ以上のポリマーの組成物を指す。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、ならびにドメイン構成を測定および/または特定するために使用される任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含有しても、含有しなくてもよい。
【0016】
「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、直鎖状様式で接合された2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフト方式ではなく、重合官能基に関して端部と端部とが接合(共有結合)している化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。一実施形態では、ブロックは、その中に組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、結晶化度のタイプ(例えば、ポリエチレン対ポリプロピレン)、そのような組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、長鎖分岐または超分岐を含む分岐の量、均一性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性で異なる。
【0017】
「ケーブル」は、保護絶縁体、ジャケット、シース内の少なくとも1つの導体、例えば、ワイヤ、光ファイバなどである。ケーブルは、一般的な保護ジャケットまたはシース内でともに結合した2つ以上のワイヤまたは2つ以上の光ファイバであり得る。組み合わせケーブルは、電気ワイヤおよび光ファイバの両方を含有し得る。ジャケットまたはシース内部の個々のワイヤまたはファイバは、むき出しであってもよく、覆われてもよく、または絶縁されてもよい。ケーブルは、低、中、および/または高電圧用途のために設計され得る。
【0018】
「カルボキシレート」は、カルボン酸の塩またはエステルを指す。「カルボン酸」は、カルボキシル基(-COOH)を含有する有機酸である。
【0019】
「組成物」という用語は、組成物を構成する材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0020】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびこれらの派生語は、任意の追加の成分、ステップ、または手順が、本明細書で具体的に開示されているかに関わらず、それらの存在を除外するよう意図されない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、任意の続く記述の範囲から任意の他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順も除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、逆もまた同様である。
【0021】
「導体」は、任意の電圧(DC、AC、または過渡)において、熱、光、および/または電気を伝導するための、1つ以上のワイヤ、または1つ以上のファイバである。導体は、単一ワイヤ/ファイバまたは複数ワイヤ/ファイバであってもよく、撚り線形態または管状形態であってもよい。好適な導体の非限定的な例としては、炭素、銀、金、銅、およびアルミニウムなどの様々な金属が挙げられる。導体はまた、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作製された光学ファイバであり得る。導体は、保護シース内に配置されてもされなくてもよい。導体は、単一のケーブルでも、一緒に束ねられた複数のケーブル(すなわち、ケーブルコアまたはコア)でもよい。
【0022】
「架橋性」および「硬化性」は、物品に成形される前または後のポリマーが、硬化も架橋もされておらず、実質的な架橋を誘発した処理に供されても、曝露されてもいないが、ポリマーが、このような処理(例えば、水への曝露)に供されるかまたは曝露されたときに実質的な架橋をもたらすであろう添加剤または機能性を含むことを示す。
【0023】
「架橋された」および同様の用語は、ポリマー組成物が、物品に成形される前または後に、90重量パーセント以下のキシレンまたはデカリン抽出物(すなわち、10重量パーセント以上のゲル含有量)を有することを示す。
【0024】
「硬化された」および同様の用語は、ポリマーが、物品に成形される前または後に、架橋を誘発する処理に供されたか、または曝露されたことを示す。
【0025】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合エチレンモノマーを含有し、かつ任意に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。エチレン系ポリマーには、エチレンホモポリマー、およびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」という用語は、交換可能に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの非限定的な例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ultra low density polyethylene)(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene)(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られている)、シングルサイト触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状、または直鎖状のプラストマー/エラストマー、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。一般に、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均一触媒系、第4族遷移金属およびメタロセンなどのリガンド構造を含む均一触媒系、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロバレントアリールオキシエーテル、ホスフィンイミン、およびその他などを使用して、気相、流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成することができる。不均一触媒および/または均一触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器構成のいずれかにおいても使用され得る。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、その中に重合された芳香族コモノマーを含有しない。
【0026】
「エチレンプラストマー/エラストマー」は、エチレン由来の単位、および少なくとも1つのC~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー由来の単位を含む、均一短鎖分岐分布を含有する、実質的に直鎖状、または直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cc、または0.880g/cc、または0.890g/cc~0.900g/cc、または0.902g/cc、または0.904g/cc、または0.909g、または0.910g/cc、または0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー/エラストマーの非限定的な例としては、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、およびLucene(商標)(LG Chem Ltd.から入手可能)が挙げられる。
【0027】
「高密度ポリエチレン」(または「HDPE」)は、エチレンホモポリマーまたは少なくとも1つのC~C10α-オレフィンコモノマー、もしくはC~Cα-オレフィンコモノマーおよび0.94g/cc、もしくは0.945g/cc、もしくは0.95g/cc、もしくは0.955g/cc~0.96g/cc、もしくは0.97g/cc、もしくは0.98g/cc超の密度を有するエチレン/α-オレフィンコポリマーである。HDPEは、単峰性コポリマーまたは多峰性コポリマーであり得る。「単峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で1つの明瞭なピークを有するエチレン/C-C10α-オレフィンコポリマーである。「多峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すGPCで少なくとも2つの明瞭なピークを有するエチレン/C-C10α-オレフィンコポリマーである。多峰性には、2つのピーク(双峰性)を有するコポリマー、ならびに3つ以上のピークを有するコポリマーが含まれる。HDPEの非限定的な例としては、各々The Dow Chemical Companyから入手可能なDOW(商標)高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ELITE(商標)強化ポリエチレン樹脂、およびCONTINUUM(商標)二峰生ポリエチレン樹脂、LyondellBasellから入手可能なLUPOLEN(商標)、ならびにBorealis、Ineos、およびExxonMobilからのHDPE製品が挙げられる。
【0028】
「ヒドロカルビル」および「炭化水素」という用語は、分岐または非分岐、飽和または不飽和、環式、多環式、または非環式種を含む、水素および炭素原子のみを含有する置換基を指す。非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、およびアルキニル基が挙げられる。
【0029】
「加水分解性シラン基」は、水と反応するシラン基である。これらには、加水分解してシラノール基を生じさせることができ、次いで縮合してモノマーまたはポリマーを架橋することができる、モノマーまたはポリマー上のアルコキシシラン基が含まれる。
【0030】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーである。この総称は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを指すために通常用いられるコポリマーを含む。
【0031】
「ジャケット」は、導体の最も外側の被覆である。導体が単一の被覆を含む場合、被覆は導体上でジャケットおよび絶縁体の両方として機能する場合がある。
【0032】
「直鎖状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)は、エチレン由来の単位と、少なくとも1つのC~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー由来の単位とを含む、不均一短鎖分岐分布を含有する直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、もし存在したとしても長鎖分岐がほとんどないことを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc、または0.915g/cc、または0.920g/cc、または0.925g/cc~0.930g/cc、または0.935g/cc、または0.940g/ccの密度を有する。LLDPEの非限定的な例としては、各々the Dow Chemical Companyから入手可能なTUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂およびDOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂、ならびにMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)が挙げられる。
【0033】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、エチレンホモポリマー、または0.915g/cc~0.940g/ccの密度を有し、かつ広いMWDを有する長鎖分岐を含有する、少なくとも1つのC~C10α-オレフィン、好ましくはC~Cを含む、エチレン/α-オレフィンコポリマーからなる。LDPEは、典型的には、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を備えた管状反応器またはオートクレーブ)により生成される。LDPEの非限定的な例としては、MarFlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobilなどからのLDPE製品が挙げられる。
【0034】
中密度ポリエチレン(または「MDPE」)は、エチレンホモポリマー、または0.926g/cc~0.940g/ccの密度を有する、少なくとも1つのC~C10α-オレフィン、もしくはC~Cα-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0035】
「多成分エチレン系コポリマー」(または「EPE」)は、エチレン由来の単位と、特許参考文献USP6,111,023、USP5,677,383、およびUSP6,984,695に記載されているような、少なくとも1つのC~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー由来の単位と、を含む。EPE樹脂は、0.905g/cc、または0.908g/cc、または0.912g/cc、または0.920g/cc~0.926g/cc、または0.929g/cc、または0.940g/cc、または0.962g/ccの密度を有する。EPE樹脂の非限定的な例としては、ELITE(商標)強化ポリエチレンおよびELITE AT(商標)先端技術樹脂(各々The Dow Chemical Companyから入手可能)、SURPASS(商標)ポリエチレン(PE)樹脂(Nova Chemicalsから入手可能)、およびSMART(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「オレフィン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50モルパーセントを超える重合オレフィンモノマーを含有するポリマーであり、かつ任意に、少なくとも1つのコモノマーを含有してもよい。オレフィン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0037】
「ポリマー」は、同一のタイプまたは異なるタイプであるかに関わらず、重合形態でポリマーを構成する複数のおよび/もしくは繰り返しの「単位」または「mer単位」を提供するモノマーを重合することによって調製される化合物である。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語、および少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために通常用いられるコポリマーという用語を包含する。それはまた、例えばランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づく」特定のモノマー部分を含有する、1つ以上の特定のモノマーで「作製された」ものなどを指すが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものと称される。
【0038】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50モルパーセント超の重合プロピレンモノマーを含有し、かつ任意に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。プロピレン系ポリマーには、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンコポリマー(プロピレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「プロピレン系ポリマー」および「ポリプロピレン」という用語は、交換可能に使用され得る。プロピレン系ポリマー(ポリプロピレン)の非限定的な例は、少なくとも1つのCまたはC~C10α-オレフィンコモノマーを有するプロピレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0039】
「シース」は総称であり、ケーブルに関連して使用される場合、絶縁被覆または層、保護ジャケットなどを含む。
【0040】
「シングルサイト触媒の直鎖状低密度ポリエチレン」(または「m-LLDPE」)は、エチレンから誘導される単位、および少なくとも1つのC~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマーから誘導される単位を含む、均一短鎖分岐分布を含有する直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。m-LLDPEは、0.913g/cc、または0.918g/cc、または0.920g/cc~0.925g/cc、または0.940g/ccの密度を有する。m-LLDPEの非限定的な例としては、EXCEED(商標)メタロセンPE(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、LUFLEXEN(商標)m-LLDPE(LyondellBasellから入手可能)、およびELTEX(商標)PF m-LLDPE(Ineos Olefins&Polymersから入手可能)が挙げられる。
【0041】
「超低密度ポリエチレン(Ultra low density polyethylene)」(または「ULDPE」)および「超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene)」(または「VLDPE」)は、エチレン由来の単位、および少なくとも1つのC~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC~Cα-オレフィンコモノマー由来の単位を含む、不均一短鎖分岐分布を含有する直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。ULDPEおよびVLDPEは各々、0.885g/cc、または0.90g/cc~0.915g/ccの密度を有する。ULDPEおよびVLDPEの非限定的な例としては、各々The Dow Chemical Companyから入手可能なATTANE(商標)ULDPE樹脂およびFLEXOMER(商標)VLDPE樹脂が挙げられる。
【0042】
「ワイヤ」は、単一撚線の伝導性金属、例えば、銅もしくはアルミニウムまたは単一撚線の光学ファイバである。
【0043】
試験方法
破砕強度は、ASTM D3102-72に従って測定される。結果は、メガパスカル(MPa)で記録される。
【0044】
10、D50、およびD90粒子サイズは、レーザー粒子サイズアナライザーを使用して測定される。D10粒子サイズは、ミクロスフェアの質量の10%がこの値未満の直径を有する粒子からなる粒径である。D50粒子サイズは、ミクロスフェアの質量の50%がこの値未満の直径を有する粒子からなり、ミクロスフェアの質量の50%が、当該値より大きい直径を有する粒子からなる粒径である。D90粒子サイズは、ミクロスフェアの質量の90%がこの値未満の直径を有する粒子からなる粒径である。
【0045】
密度を、ASTM D792、方法Bに従って測定する。結果を、1立方センチメートル当たりのグラム(g)(g/ccまたはg/cm)で記録する。
【0046】
誘電率(DC)は、ASTM D1531に従って、1ギガヘルツ(GHz)で測定される。試験は、以下の実施例セクションで説明されるように調製された100mmx100mmx1mmプラークで実施される。
【0047】
ゲル含有量は、ASTM 2765に従って、180℃で5時間煮沸デカリンで抽出することにより測定される。結果は、組成物の総重量に基づいて、パーセント(%)で記録される。ゲルのパーセントは、通常、架橋レベルの増加とともに増加する。
【0048】
メルトインデックス(MI)(Iとしても知られる)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16キログラム(kg)重量に従って測定し、10分当たりに溶出されるグラム(g/10分)で報告する。
【0049】
引張強度および引張伸びは、ASTM D638に従って測定される。試験は、以下の実施例セクションで説明されるように調製された100mmx100mmx1mmプラークで実施される。引張強度は、メガパスカル(MPa)で記録される。引張伸びは、パーセンテージとして記録される。
【0050】
発明の詳細
本開示は、架橋ポリマー組成物を提供する。架橋ポリマー組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、(B)(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する無機中空ミクロスフェアと、を含有する。架橋ポリマー組成物は、11MPa~40MPaの引張強度および12%~100%の引張伸びを有する。
【0051】
A.シラン官能化エチレン系ポリマー
架橋ポリマー組成物は、シラン官能化エチレン系ポリマーを含む。「シラン官能化エチレン系ポリマー」は、シランと、ポリマーの総重量に基づいて、50重量%以上、または過半量の重合エチレンと、を含有するポリマーである。好適なシラン官能化ポリオレフィンの非限定的な例としては、エチレン/シランコポリマー、シラングラフト化ポリオレフィン(Si-g-PE)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
「エチレン/シランコポリマー」は、エチレンと加水分解性シランモノマー(ビニルアルコキシシランモノマーなど)との共重合によって形成される。一実施形態では、エチレン/シランコポリマーは、エチレン、加水分解性シランモノマー、および、任意に、不飽和エステルの共重合によって調製される。エチレン/シランコポリマーの調製は、例えば、USP3,225,018およびUSP4,574,133に記載されており、各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
「シラングラフト化ポリエチレン」(または「Si-g-PE」)は、加水分解性シランモノマー(ビニルアルコキシシランモノマーなど)をベースポリエチレンの主鎖にグラフト化することによって形成される。一実施形態では、グラフト化は、ペルオキシドなどのフリーラジカル発生剤の存在下で行われる。加水分解性シランモノマーは、(i)被覆導体(SIOPLAS(商標)プロセスとしても知られる)などの最終物品を作製するために使用される組成物にSi-g-PEを組み込むか、もしくは配合する前に、または(ii)最終物品を形成する組成物の押出(溶融ブレンドおよび押出中にSi-g-PEがインサイチュで形成される、MONOSIL(商標)プロセスとしても知られる)と同時に、ベースポリエチレンの主鎖にグラフト化することができる。一実施形態では、Si-g-PEは、Si-g-PEが無機中空ミクロスフェア、および他の任意の成分と配合される前に形成される。別の実施形態では、Si-g-PEは、ポリエチレン、加水分解性シランモノマー、および過酸化物開始剤を、無機中空ミクロスフェア、および他の任意の成分とともに配合することによって、インサイチュで形成される。
【0054】
Si-g-PEのベースポリエチレンは、本明細書に開示される任意のエチレン系ポリマーであり得る。好適なエチレン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレンホモポリマー、ならびに不飽和エステルおよび/またはα-オレフィンなどの1つ以上の重合性コモノマーを含有するエチレン系インターポリマーが挙げられる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0055】
エチレン/シランコポリマーまたはSi-g-PEを作製するために使用される加水分解性シランモノマーは、エチレンと効果的に共重合してエチレン/シランコポリマーを形成するか、またはエチレン系ポリマーにグラフト化してSi-g-PEを形成するであろう、シラン含有モノマーである。例示的な加水分解性シランモノマーは、以下の構造(A)を有するものであり、
【化1】
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、xおよびyは、0または1であるが、但し、xが1であるとき、yが1であることを条件とし、nは、1~12の整数(両端値を含む)であるか、あるいはnは1~4の整数であり、各R’’は独立して、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノもしくは置換アミノ基(アルキルアミノ、アリールアミノ)、または1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基などの加水分解性有機基であるが、但し、3つのR’’基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。
【0056】
好適な加水分解性シランモノマーの非限定的な例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、またはガンマ-(メタ)アクリルオキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、および例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、またはヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を有する、シランが挙げられる。加水分解性基の例としては、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、およびアルキルまたはアリールアミノ基が挙げられる。
【0057】
一実施形態では、加水分解性シランモノマーは、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ガンマ-(メタ)アクリルオキシ、プロピルトリメトキシシラン、およびこれらのシランの混合物などの不飽和アルコキシシランである。
【0058】
エチレン/シランコポリマーを作製するために使用される好適な不飽和エステルの非限定的な例としては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートが挙げられる。好適なアルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチルなどが挙げられる。一実施形態では、アルキル基は、1個、または2~4個、または8個の炭素原子を有する。好適なアルキルアクリレートの非限定的な例としては、エチルアクリレート、メチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。好適なアルキルメタクリレートの非限定的な例としては、メチルメタクリレートおよびn-ブチルメタクリレートが挙げられる。一実施形態では、カルボキシレート基は、2~5個、または6個、または8個の炭素原子を有する。好適なビニルカルボキシレートの非限定的な例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノアートが挙げられる。
【0059】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、シラン官能化エチレン系ポリマーの総重量に基づいて、0.1重量%、または0.3重量%、または0.5重量%、または0.8重量%、または1.0重量%、または1.2重量%、または1.5重量%、または1.6重量%~1.8重量%、または2.0重量%、または2.3重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%、または4.5重量%、または5.0重量%のシランを含有する。
【0060】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、シラン官能化ポリエチレンの総重量に基づいて、(i)50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%~97重量%、または98重量%、または99重量%、または100重量%未満のエチレン、および(ii)0.1重量%、または0.3重量%、または0.5重量%、または0.8重量%、または1.0重量%、または1.2重量%、または1.5重量%、または1.6重量%~1.8重量%、または2.0重量%、または2.3重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%、または4.5重量%、または5.0重量%のシランを含有する。
【0061】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、0.850g/cc、または0.860g/cc、または0.875g/cc、または0.890g/cc、または0.900g/cc、または0.910g/cc、または0.915g/cc、または0.920g/cc~0.925g/cc、または0.930g/cc、または0.940g/cc、または0.950g/cc、または0.960g/cc、または0.965g/ccの密度を有する。別の実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、0.850g/cc~0.965g/cc、または0.900g/cc~0.950g/cc、または0.920g/cc~0.925g/ccの密度を有する。
【0062】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、0.1g/10分、または0.5g/10分、または1.0g/10分、または1.5g/10分~6g/10分、または10g/10分、または15g/10分、または20g/10分、または30g/10分、または40g/10分、または50g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。別の実施形態では、官能化エチレン系ポリマーは、0.1g/10分~50g/10分、または0.5g/10分~10g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。
【0063】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、エチレン/シランコポリマーである。エチレン/シランコポリマーは、エチレンおよび加水分解性シランモノマーを唯一のモノマー単位として含有する。別の実施形態では、エチレン/シランコポリマーは、任意に、C、またはC~C、またはC、またはC10、またはC12、またはC16、またはC18、またはC20のα-オレフィン、不飽和エステル、およびこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、エチレン/シランコポリマーは、エチレン/不飽和エステル/シラン反応器コポリマーである。好適なエチレン/シランコポリマーの非限定的な例としては、各々がThe Dow Chemical Companyから入手可能なSI-LINK(商標)DFDA-5451 NTおよびSI-LINK(商標)AC DFDB-5451 NTが挙げられる。
【0064】
エチレン/シラン反応器コポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0065】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、Si-g-PEである。
【0066】
Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、ベースエチレン系ポリマーの総重量に基づいて、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%~97重量%、または98重量%、または99重量%、または100重量%のエチレンを含む。
【0067】
一実施形態では、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、0.850g/cc、または0.860g/cc、または0.875g/cc、または0.890g/cc、または0.900g/cc、または0.910g/cc、または0.915g/cc、または0.920g/cc~0.925g/cc、または0.930g/cc、または0.940g/cc、または0.950g/cc、または0.960g/cc、または0.965g/ccの密度を有する。別の実施形態では、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、0.850g/cc~0.965g/cc、または0.900g/cc~0.950g/cc、または0.920g/cc~0.925g/ccの密度を有する。
【0068】
一実施形態では、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、0.1g/10分、または0.5g/10分、または1.0g/10分、または1.5g/10分~6g/10分、または10g/10分、または15g/10分、または20g/10分、または30g/10分、または40g/10分、または50g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。別の実施形態では、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、0.1g/10分~50g/10分、または0.5g/10分~10g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。
【0069】
一実施形態では、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。α-オレフィンは、3、または4~6、または8、または10、または12、または16、または18、または20個の炭素原子を含有する。好適なα-オレフィンの非限定的な例としては、プロピレン、ブテン、ヘキセン、およびオクテンが挙げられる。一実施形態では、エチレン系コポリマーは、エチレン/オクテンコポリマーである。エチレン系コポリマーがエチレン/α-オレフィンコポリマーである場合、Si-g-PEは、シラングラフト化エチレン/α-オレフィンコポリマーである。Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーとして有用な好適なエチレン/α-オレフィンコポリマーの非限定的な例としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なENGAGE(商標)およびINFUSE(商標)樹脂が挙げられる。
【0070】
一実施形態では、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)である。LDPEは、エチレンホモポリマー、または0.915g/cc~0.940g/ccの密度を有し、かつ広いMWDを有する長鎖分岐を含有する、少なくとも1つのC~C10α-オレフィン、またはC~Cα-オレフィンを含む、エチレン/α-オレフィンコポリマーからなる。一実施形態では、LDPEは、0.915g/cc、または0.920g/cc~0.925g/cc、または0.930g/cc、または0.940g/ccの密度を有する。
【0071】
一実施形態では、Si-g-PEは、シラングラフト化エチレン/C~Cα-オレフィンコポリマーである。シラングラフト化エチレン/C~Cα-オレフィンコポリマーは、加水分解性シランモノマー、エチレン、およびC~Cα-オレフィンコモノマーからなる。言い換えれば、シラングラフト化エチレン/C~Cα-オレフィンコポリマーは、加水分解性シランモノマー、エチレン、およびC~Cα-オレフィンコモノマーを唯一のモノマー単位として含有する。
【0072】
一実施形態では、Si-g-PEは、シラングラフト化LDPE(「Si-g-LDPE」)である。Si-g-LDPEは、以下の特性:Si-g-LDPEの総重量に基づいて、(i)0.915g/cc~0.940g/cc、もしくは0.920g/cc~0.930g/ccの密度、および/または(ii)0.1g/10分~50g/10分、もしくは0.5g/10分~10g/10分のメルトインデックス、および/または(iii)0.1重量%~5重量%、もしくは0.5重量%~3.0重量%のシラン含有量のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。さらなる実施形態では、Si-g-LDPEは、加水分解性シランモノマー、エチレン、およびC-Cα-オレフィンコモノマーからなる。
【0073】
Si-g-PEは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0074】
シラン官能化エチレン系ポリマーのブレンドも使用され得、シラン官能化エチレン系ポリマーを、ポリオレフィンが(i)互いに混和性または相溶性になる程度まで、および(ii)シラン官能化エチレン系ポリマーが、(シラン官能化エチレン系ポリマーを含む、ポリオレフィンの組み合わされた重量に基づいて)ブレンドの50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または98重量%、または99重量%~100重量%未満を構成する程度まで、1つ以上の他のポリオレフィンで希釈され得る。
【0075】
シラン官能化エチレン系ポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0076】
B.無機中空ミクロスフェア
架橋ポリマー組成物は、無機中空ミクロスフェアを含有する。無機中空ミクロスフェアは、(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する。
【0077】
「無機中空ミクロスフェア」は、コアおよびシェル構造を有する球形粒子であり、コアは中空であり、大気圧以下のガス(空気など)で満たされ、シェルは無機物質である。
【0078】
好適な無機物質の非限定的な例としては、ガラス(過半重量パーセント、または50重量%超、または80重量%超の二酸化ケイ素を含有する)およびセラミックが挙げられる。
【0079】
一実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、ガラス中空ミクロスフェアである。
【0080】
無機中空ミクロスフェアは、17MPa~140MPaの破砕強度を有する。一実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、17MPa、または20MPa~42MPa、または45MPa、または48MPa、または49MPa、または50MPa、または55MPa、または60MPa、または65MPa、または70MPa、または80MPa、または90MPa、または100MPa、または120MPa、または140MPaの破砕強度を有する。別の実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、17MPa~70MPa、または20MPa~70MPa、または17MPa~49MPa、または20MPa~42MPaの破砕強度を有する。
【0081】
いずれかの特定の理論によって拘束されることを望まないが、17MPa未満の破砕強度を有する無機中空ミクロスフェアは、架橋性ポリマー組成物との配合中に破壊を受け、それによって、無機中空ミクロスフェアなどによるボイドの組み込みによって駆動される誘電率の所望の低減を弱めるであろうと考えられる。一方、140MPaを超える破砕強度を有する無機中空ミクロスフェアは、高い破砕強度が無機中空ミクロスフェアのより厚いシェルの結果であるため、高い密度(0.40g/cc超)を有する。したがって、同じ体積負荷で、140MPaを超える破砕強度を有する無機中空ミクロスフェアは、誘電率の所望の低減を達成しないであろう0.800g/ccを超える密度を有する架橋ポリマー組成物をもたらすであろう。
【0082】
無機中空ミクロスフェアは、0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する。一実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、0.10g/cc、または0.15g/cc、または0.20g/cc、または0.23g/cc~0.32g/cc、または0.35g/cc、または0.40g/ccの密度を有する。別の実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、0.20g/cc~0.35g/cc、または0.23g/cc~0.32g/ccの密度を有する。
【0083】
無機中空ミクロスフェアは、10μm~100μmのD90粒子サイズを有する。一実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、10μm、または20μm、または30μm、または40μm~70μm、または80μm、または90μm、または100μmのD90粒子サイズを有する。別の実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、30μm~100μm、または40μm~100μm、または20μm~70μm、または40μm~70μmのD90粒子サイズを有する。
【0084】
一実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、10μm、または20μm、または30μm~50μm、または60μm、または70μm、または80μm、または90μm、または100μmのD50粒子サイズを有する。
【0085】
一実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、10μm、または15μm~20μm、または30μm、または50μm、または80μm、または90μm、または100μmのD10粒子サイズを有する。
【0086】
一実施形態では、無機中空ミクロスフェアは、(i)10μm~100μm、または30μm~100μm、または40μm~100μm、または20μm~70μm、または40μm~70μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPa、または17MPa~70MPa、または20MPa~70MPa、または17MPa~49MPa、または20MPa~42MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/cc、または0.20g/cc~0.35g/cc、または0.23g/cc~0.32g/ccの密度を有するガラス中空ミクロスフェアである。別の実施形態では、ガラス中空ミクロスフェアは、以下の特性:(iv)10μm~100μm、もしくは30μm~70μmのD50粒子サイズ、および/または(v)10μm~100μm、もしくは10μm~50μmのD10粒子サイズのうちの一方または両方を有する。
【0087】
好適なガラス中空ミクロスフェアの非限定的な例としては、各々3M(商標)から入手可能な、グラスバブルS32HSおよびグラスバブルXLD3000が挙げられる。
【0088】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する本無機中空ミクロスフェアとは物理的および/または構造的に異なる無機中空ミクロスフェアを含まないか、または実質的に含まない。言い換えれば、架橋ポリマー組成物は、以下の範囲:(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度の外のD90粒子サイズ、破砕強度、および/または密度を有する無機中空ミクロスフェアを除外する。
【0089】
無機中空ミクロスフェアは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0090】
C.任意の添加剤
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)無機中空ミクロスフェア、および(C)1つ以上の任意の添加剤を含む。
【0091】
好適な任意の添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、着色剤、腐食防止剤、潤滑剤、シラノール縮合触媒、紫外線(UV)吸収剤または安定剤、ブロッキング防止剤、カップリング剤、相溶化剤、可塑剤、充填剤、加工助剤、湿気捕捉剤、スコーチ遅延剤、金属不活性化剤、シロキサン、架橋助剤、伸展油、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0092】
一実施形態では、組成物は、酸化防止剤を含む。「酸化防止剤」は、ポリマーの加工中に起こり得る酸化を最小限に抑えるために使用することができる化学的化合物のタイプまたはクラスを指す。好適な酸化防止剤としては、高分子量ヒンダードフェノールおよび硫黄ならびにリン含有フェノールなどの多官能性フェノールが挙げられる。好適なヒンダードフェノールの非限定的な例は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)であり、BASFからIrganox(登録商標)1010として市販されている。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.05重量%、または0.1重量%~0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%、または0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%の酸化防止剤を含有する。
【0093】
一実施形態では、組成物は、ルイス酸およびブレンステッド酸および塩基などのシラノール縮合触媒を含む。「シラノール縮合触媒」は、シラノール官能化ポリオレフィンの架橋を促進する。ルイス酸は、ルイス塩基からの電子対を受け入れることができる化学種である。ルイス塩基は、電子対をルイス酸に供与することができる化学種である。好適なルイス酸の非限定的な例としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)などのカルボン酸スズ、およびナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ならびにナフテン酸コバルトなどの様々な他の有機金属化合物が挙げられる。好適なルイス塩基の非限定的な例としては、一級、二級、および三級アミンが挙げられる。これらの触媒は、典型的には湿気硬化用途に使用される。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.001重量%、または0.005重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.03重量%~0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、0.5重量%、または1.0重量%のシラノール縮合触媒を含む。MONOSIL(商標)プロセス中、シラノール縮合触媒は、これがシランのポリオレフィン主鎖へのグラフト化反応中に存在して、インサイチュでSi-g-PEを形成するように、典型的には、反応押出機に添加される。このように、シラン官能化エチレン系ポリマーは、押出機を出る前にいくらかのカップリング(光架橋)を経験し得、それが押出機を出た後、典型的には水分(例えば、サウナ浴もしくは冷却浴)および/または保管、輸送、もしくは使用される環境に存在する湿気に曝露されると、架橋が完了する。
【0094】
一実施形態では、シラノール縮合触媒は、触媒マスターバッチブレンドに含まれ、触媒マスターバッチは組成物に含まれる。好適な触媒マスターバッチの非限定的な例としては、The Dow Chemical CompanyからSI-LINK(商標)の商品名で販売されるものが挙げられ、SI-LINK(商標)DFDA-5481 Naturalが含まれる。SI-LINK(商標)DFDA-5481 Naturalは、1-ブテン/エテンポリマー、エテンホモポリマー、フェノール化合物酸化防止剤、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)(シラノール縮合触媒)、およびフェノールヒドラジド化合物のブレンドを含有する触媒マスターバッチである。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.3重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%~5.0重量%、または6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%のシラノール縮合触媒または触媒マスターバッチを含有する。
【0095】
一実施形態では、組成物は、紫外線(UV)吸収剤または安定剤を含む。好適なUV安定剤の非限定的な例としては、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N-1,2-エタンジイルビスN-3-4,6-ビスブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノプロピル-N,N-ジブチル-N,N-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-1,5,8,12-テトラキス[4,6-ビス(n-ブチル-n-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン(SABO S.p.A.of Levate,Italyから、SABO(商標)STAB UV-119として市販されている)などの、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)である。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.001重量%、または0.002重量%、または0.005重量%、または0.006重量%~0.007重量%、または0.008重量%、または0.009重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%のUV吸収剤または安定剤を含有する。
【0096】
一実施形態では、組成物は、金属不活性化剤を含む。金属不活性化剤は、金属表面および微量の金属鉱物の触媒作用を抑制する。金属不活性化剤は、微量の金属および金属表面を、例えば、封鎖によって、不活性な形態に変換する。好適な金属不活性化剤の非限定的な例としては、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、2,2’-オキサミンドビス[エチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)(OABH)が挙げられる。金属不活性化剤は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.03重量%、または0.04重量%~0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%、または2重量%、または3重量%、または5重量%、または8重量%、または10重量%の量で存在する。
【0097】
一実施形態では、組成物は、充填剤を含む。好適な充填剤の非限定的な例としては、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、有機粘土、およびこれらの組み合わせが挙げられる。充填剤は、難燃特性を有していても、または有していなくてもよい。一実施形態では、充填剤は、そうでなければ充填剤がシラン硬化反応を妨害しなければならない可能性がある傾向を防止または遅延させる材料(ステアリン酸など)で被覆される。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.5重量%、または0.6重量%、または0.8重量%~1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または5.0重量%の充填剤を含有する。
【0098】
一実施形態では、組成物は加工助剤を含む。好適な加工助剤の非限定的な例としては、油、有機酸(ステアリン酸など)、および有機酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛など)が挙げられる。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.5重量%、または0.6重量%、または0.7重量%~1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%の加工助剤を含有する。
【0099】
一実施形態では、組成物は、湿気捕捉剤を含む。湿気捕捉剤は、組成物中の不必要な水を除去または不活性化して、保管中または押出条件での組成物中の不必要な(早期)架橋および他の水性開始反応(water-initiated reaction)を防止する。湿気捕捉剤の非限定的な例としては、オルトエステル、アセタール、ケタール、またはアルコキシシランなどのシランから選択される有機化合物が挙げられる。一実施形態では、湿気捕捉剤は、アルコキシシラン(例えば、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、またはオクチルトリエトキシシラン)である。アルコキシシラン湿気捕捉剤は、ポリオレフィンにグラフト化されていないか、または共重合されていない。湿気捕捉剤は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.03重量%、または0.04重量%、または0.05重量%、または0.1重量%~0.2重量%、または0.3重量%、または0.5重量%、または0.75重量%、または1.0重量%の量で存在する。
【0100】
一実施形態では、組成物は、シロキサンを含む。好適なシロキサンの非限定的な例は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。好適なPDMSの非限定的な例は、ジメチルビニルシリル末端ポリジメチルシロキサンである。一実施形態では、PDMSは、PDMSマスターバッチブレンドに含まれ、PDMSマスターバッチは、組成物に含まれる。好適なPDMSマスターバッチの非限定的な例は、Dow Corningから入手可能なMB50-002マスターバッチである。MB50-002マスターバッチには、マスターバッチの総重量に基づいて、50重量%の、LDPEに分散されたジメチルビニルシリル末端PDMSが含まれている。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.2重量%、または0.5重量%、または0.8重量%~1.0重量%、または1.5重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または5.0重量%のシロキサンを含有する。
【0101】
一実施形態では、組成物は、架橋助剤を含む。「架橋助剤」は、組成物の架橋効率を改善する物質である。好適な架橋助剤の非限定的な例は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)である。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.1重量%~0.5重量%、または1.0重量%の架橋助剤を含有する。
【0102】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、または0.002重量%、または0.005重量%、または0.006重量%~0.007重量%、または0.008重量%、または0.009重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含有する。
【0103】
添加剤は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0104】
D.架橋ポリマー組成物
架橋ポリマー組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)無機中空ミクロスフェア、および任意に(C)添加剤を含有する。架橋ポリマー組成物は、11MPa~40MPaの引張強度および12%~100%の引張伸びを有する。
【0105】
架橋ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物を架橋することによって形成される。一実施形態では、架橋性ポリマー組成物の架橋は、押出機で始まる。別の実施形態では、架橋は、架橋性ポリマー組成物が、導体上などに押し出されるまで遅延される。架橋性ポリマー組成物の架橋は、湿度の高い環境(例えば、周囲条件またはサウナもしくは水浴での硬化)への曝露、および/または熱(過酸化物が架橋に使用される場合を含む)もしくは放射線の適用によって開始および/または加速され得る。一実施形態では、架橋性ポリマー組成物の架橋は、例えば、110℃、または120℃、または130℃~140℃、または150℃の温度での、熱の適用によって開始および/または加速される。
【0106】
架橋ポリマー組成物は、シラン官能化エチレン系ポリマー鎖と無機中空ミクロスフェアとの間の結合を含む。いずれかの特定の理論によって拘束されることを望まないが、架橋は、シラン官能化エチレン系ポリマーマトリックス全体に分散された無機中空ミクロスフェアの安定性を改善し、(少なくとも11MPaの引張強度および少なくとも12%の引張伸びによって証明されるように)架橋された機械的性能を改善し、2.06以下への誘電率の低下に寄与すると考えられる。
【0107】
図1は、シラン結合を介してシラン官能化エチレン系ポリマー鎖4に結合したガラス中空ミクロスフェア2を含有する本架橋ポリマー組成物の概略図を示す。具体的には、(二酸化ケイ素からの)ガラス中空ミクロスフェア2に存在するシラノール基は、縮合反応を介してシラン官能化エチレン系ポリマー鎖4中のシランと結合することができる。
【0108】
一実施形態では、架橋性ポリマー組成物は、(A)エチレン/シランコポリマー、(B)無機中空ミクロスフェア、および任意に(C)添加剤を含有する。別の実施形態では、架橋性ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、(A)75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%~92重量%、または95重量%、または99重量%のエチレン/シランコポリマー、(B)1重量%、または5重量%、または8重量%~16重量%、または18重量%、または20重量%、または25重量%の無機中空ミクロスフェア、および任意に(C)0重量%、または0重量%超、または1重量%~5重量%の添加剤を含有するか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。架橋性組成物は、架橋前の本組成物である。
【0109】
一実施形態では、架橋性ポリマー組成物は、エチレン系ポリマー(すなわち、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマー)、加水分解性シランモノマー、過酸化物(過酸化ジ-第三級アミル(DTAP)など)、無機中空ミクロスフェア、および任意に、添加剤を含有する。押出中、エチレン系ポリマー、加水分解性シランモノマー、および過酸化物は、反応してSi-g-PEを形成する。一実施形態では、架橋性ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、75重量%、または80重量%、または83重量%~91重量%、または95重量%、または99重量%のエチレン系ポリマー(すなわち、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマー)、0重量%超、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.3重量%~0.7重量%、または0.8重量%、または1.0重量%の加水分解性シランモノマー、0重量%超、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%~0.05重量%、または0.06重量%、または0.10重量%、または0.5重量%の過酸化物(過酸化ジ-第三級アミル(DTAP)など)、1重量%、または5重量%、または8重量%~16重量%、または18重量%、または20重量%、または25重量%の無機中空ミクロスフェア、および任意に、0重量%、または1重量%~5重量%の添加剤を含有するか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
【0110】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、架橋ポリマー組成物の総重量に基づいて、(A)75重量%~99重量%、または80重量%~95重量%のシラン官能化エチレン系ポリマー(例えば、エチレン/シランコポリマーまたはSi-g-LDPE)、および逆数量の(B)無機中空ミクロスフェア、または1重量%~25重量%、もしくは5重量%~20重量%の無機中空ミクロスフェアを含有するか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。架橋組成物は、架橋後の本組成物である。
【0111】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、架橋ポリマー組成物の総重量に基づいて、(A)75重量%~99重量%、または80重量%~95重量%のシラン官能化エチレン系ポリマー(例えば、エチレン/シランコポリマーまたはSi-g-LDPE)、(B)1重量%~25重量%、または5重量%~20重量%の無機中空ミクロスフェア、および任意に(C)0~5重量%、または0.01重量%~5重量%の添加剤を含有するか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
【0112】
架橋ポリマー組成物は、11MPa~40MPaの引張強度および12%~100%の引張伸びを有する。一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、11MPa~20MPa、または11MPa~16MPaの引張強度および14%~50%、または14%~40%の引張伸びを有する。11MPaを超える引張強度と12%を超える引張伸びとの組み合わせは、機械的性能の望ましいバランスを示すため、ワイヤおよびケーブル用途において有利である。
【0113】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーおよび無機中空ミクロスフェアを含有する架橋ポリマー組成物は、0.650g/cc、または0.700g/cc、または0.710g/cc~0.770g/cc、または0.775g/cc、または0.780g/cc、または0.790g/cc、または0.800g/ccの密度を有する。別の実施形態では、架橋ポリマー組成物は、0.650g/cc~0.800g/cc、または0.700g/cc~0.780g/cc、または0.700g/cc~0.770g/ccの密度を有する。
【0114】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、1.80、または1.85、または1.90、または1.95、または1.99~2.06の誘電率(DC)を有する。別の実施形態では、架橋ポリマー組成物は、1.80~2.06、または1.90~2.06、または1.99~2.06のDCを有する。2.08未満の誘電率は、低減した誘電率が低い信号減衰および十分な信号伝送(例えば、より高い伝送容量およびより高い伝送速度)をもたらすため、ワイヤおよびケーブル用途において有益である。
【0115】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、架橋ポリマー組成物の総重量に基づいて、(A)75重量%~99重量%、または80重量%~95重量%のシラン官能化エチレン系ポリマー(例えば、エチレン/シランコポリマーまたはSi-g-LDPE)、(B)1重量%~25重量%、または5重量%~20重量%のガラス中空ミクロスフェア、および任意に(C)0~5重量%、または0.01重量%~5重量%の添加剤を含有するか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。架橋ポリマー組成物は、(i)11MPa~40MPa、または11MPa~20MPa、または11MPa~16MPaの引張強度、および(ii)12%~100%、または14%~50%、または14%~40%の引張伸びを有する。さらなる実施形態では、架橋ポリマー組成物は、以下の特性:(iii)0.650g/cc~0.800g/cc、もしくは0.700g/cc~0.780g/cc、もしくは0.700g/cc~0.770g/ccの密度、および/または(iv)1.80~2.06、もしくは1.90~2.06、もしくは1.99~2.06のDCのうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
【0116】
上述の組成物の各々における構成成分の合計が、100重量パーセントをもたらすことが理解される。
【0117】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、シラン官能化エチレン系ポリマー以外のポリマー成分を含まないか、または実質的に含まない。
【0118】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、シラン官能化プロピレン系ポリマーおよびマレイン酸官能化プロピレン系ポリマーなどのプロピレン系ポリマーを含まないか、または実質的に含まない。
【0119】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、ポリアミドを含まないか、または実質的に含まない。いずれかの特定の理論によって拘束されることを望まないが、ポリアミドの極性は、2.06を超えるDCを呈する架橋ポリマー組成物をもたらすであろうと考えられる。
【0120】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーを含まないか、または実質的に含まない。
【0121】
架橋ポリマー組成物ミクロスフェアは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0122】
E.被覆導体
本開示は、被覆導体を提供する。被覆導体は、導体、および導体上の被覆を含み、被覆は、架橋ポリマー組成物を含む。架橋ポリマー組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、(B)(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する無機中空ミクロスフェアと、を含有する。架橋ポリマー組成物は、11MPa~40MPaの引張強度および12%~100%の引張伸びを有する。
【0123】
架橋ポリマー組成物は、本明細書に開示される任意の架橋ポリマー組成物であり得る。
【0124】
一実施形態では、架橋ポリマー組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、(B)(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する無機中空ミクロスフェアと、任意に、(C)添加剤と、を含有する。
【0125】
シラン官能化エチレン系ポリマー、無機中空ミクロスフェア、および任意の添加剤は、本明細書に開示されるいずれかのそれぞれのシラン官能化エチレン系ポリマー、無機中空ミクロスフェア、および任意の添加剤であり得る。
【0126】
一実施形態では、被覆は、導体用の絶縁シースである。別の実施形態では、被覆は、導体用のジャケットである。
【0127】
被覆導体を製造するためのプロセスは、架橋性ポリマー組成物を少なくともシラン官能化エチレン系ポリマーの溶融温度まで加熱し、次いでポリマー溶融ブレンドを導体上に押し出すことを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触または間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。押出中および/または押出後に、架橋が起こり、架橋ポリマー組成物が形成される。
【0128】
被覆は、導体上にある。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的にまたは部分的に覆うか、またはそうでなければ囲むかもしくは包むことができる。被覆は、導体を囲む唯一の構成成分であり得る。被覆が導体を囲む唯一の構成成分である場合、被覆はジャケットおよび/または絶縁体として機能し得る。一実施形態では、被覆は、被覆導体の最外層である。あるいは、被覆は、金属導体を包む1層の多層ジャケットまたはシースであり得る。一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。別の実施形態では、被覆は、導体を囲む絶縁層と直接接触する。
【0129】
一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。本明細書で使用される「直接接触する」という用語は、被覆が導体に直接隣接して位置し、被覆が導体に接触し、介在層、介在被覆、および/または介在構造が被覆と導体との間に存在しない被覆構成である。
【0130】
一実施形態では、被覆は、導体と間接接触する。本明細書で使用される「間接接触する」という用語は、介在層、介在被覆、または介在構造が被覆と導体との間に存在する被覆構成である。好適な介在層、介在被覆、および介在構造の非限定的な例としては、絶縁層、防湿層、緩衝管、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好適な絶縁層の非限定的な例としては、発泡絶縁層、熱可塑性絶縁層、架橋絶縁層、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0131】
被覆は、架橋されている。一実施形態では、架橋性ポリマー組成物の架橋は、押出機で始まるが、ごくわずかな程度である。別の実施形態では、架橋は、架橋性ポリマー組成物が導体上に押し出されるまで遅延される。架橋性ポリマー組成物の架橋は、湿度の高い環境(例えば、周囲条件またはサウナもしくは水浴での硬化)への曝露、および/または熱(過酸化物が架橋に使用される場合を含む)もしくは放射線の適用によって開始および/または加速され得る。一実施形態では、架橋性ポリマー組成物の架橋は、例えば、110℃、または120℃、または130℃~140℃、または150℃の温度での、熱の適用によって開始および/または加速される。
【0132】
一実施形態では、被覆は、0.13mm~0.76mmの厚さを有する。
【0133】
一実施形態では、被覆導体は、
導体と、
導体上の被覆と、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、被覆は、架橋ポリマー組成物の総重量に基づいて、
(A)75重量%~99重量%、または80重量%~95重量%のシラン官能化エチレン系ポリマー(例えば、エチレン/シランコポリマーまたはSi-g-LDPE)と、
(B)1重量%~25重量%、または5重量%~20重量%のガラス中空ミクロスフェアと、
(C)0~5重量%、または0.01重量%~5重量%の任意の添加剤と、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、架橋ポリマー組成物を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、
架橋ポリマー組成物は、
(i)11MPa~40MPa、または11MPa~20MPa、または11MPa~16MPaの引張強度、
(ii)12%~100%、または14%~50%、または14%~40%の引張伸びを有し、
架橋ポリマー組成物は、任意に、以下の特性:
(iii)0.650g/cc~0.800g/cc、もしくは0.700g/cc~0.780g/cc、もしくは0.700g/cc~0.770g/ccの密度、および/または
(iv)1.80~2.06、もしくは1.90~2.06、もしくは1.99~2.06のDCのうちの1つ、いくつか、またはすべてを有し、
被覆は、導体と直接接触する。
【0134】
一実施形態では、被覆導体は、光ファイバケーブル、通信ケーブル(電話ケーブル、ローカルエリアネットワーク(LAN)ケーブル、またはスモールフォームファクタプラガブル(SFP)ケーブルなど)、家庭用電化製品用の電源ケーブル、配線、携帯電話および/またはコンピュータ用の電源ケーブル、充電器ワイヤ、コンピュータデータコード、電源コード、機器内配線用電線、屋内配線用電線、家庭用電化製品付属コード、ならびにこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0135】
別の実施形態では、本架橋ポリマー組成物は、導体、例えば、電気コネクタまたは電気コネクタの構成要素上の被覆以外の物品に溶融成形される。
【0136】
被覆導体は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0137】
ここで、限定ではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例
【0138】
実施例で使用される材料を以下の表1および表2に提供する。
【表1】
【表2】
【0139】
A.エチレン/シランコポリマーによる架橋ポリマー組成物の生成(EX.1)
SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT(エチレン/シランコポリマー)ペレットを、130℃の温度および10回転/分(rpm)の回転子速度に設定されたブラベンダーミキサーに供給し、エチレン/シランコポリマーが溶融形態になるまで混合する。次いで、ガラス中空ミクロスフェアをミキサーに供給し、混合物を130℃の温度で80rpmの回転子速度で4分の期間ブレンドして、架橋性ポリマー組成物を形成する。
【0140】
B.Si-g-LDPEを含有する架橋ポリマー組成物の生成(EX.2、EX.4、EX.7)
AXELERON(商標)CX 1258 NT CPD(LDPE)ペレットを、130℃の温度および10rpmの回転子速度に設定されたブラベンダーミキサーに供給し、VTMSおよびDTAP、LDPEが溶融形態になるまでLDPEと混合する。次いで、ガラス中空ミクロスフェアをミキサーに供給し、混合物を130℃の温度で80rpmの回転子速度で4分の期間ブレンドして、架橋性ポリマー組成物を形成する。
【0141】
C.LDPEを含有する比較試料組成物の生成(CS3、CS5、CS6、CS8-11)
AXELERON(商標)CX 1258 NT CPD(LDPE)ペレットを、130℃の温度および10rpmの回転子速度に設定されたブラベンダーミキサーに供給し、LDPEが溶融形態になるまで混合する。次いで、ガラス中空ミクロスフェアをミキサーに供給し、混合物を130℃の温度で80rpmの回転子速度で4分の期間ブレンドして、ポリマー組成物を形成する。
【0142】
CS11は、ガラス中空ミクロスフェアなしで形成される。
【0143】
CS3、CS5、CS6、およびCS8~11の組成物は架橋性ではない。
【0144】
D.プラーク調製
各実施例および比較組成物は、DC試験、密度試験、引張強度試験、および引張伸び試験のためにプラークに形成される。
【0145】
型サイズ(および得られたプラークサイズ)は、100mmx100mmx1mmである。各試料の10グラム片を計量し、2つの2mmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの間に挟む。試料およびPETフィルムを型に入れる。次いで、型をホットプレス機の上部プレートと下部プレートとの間に挟み、予熱期間に140℃で10分間、0MPaの圧力で保持する。予熱後、型を8回通気し、次いで型の温度を5分以内に180℃に上昇させ、圧力を10MPaに上昇させる。型を180℃の温度および10MPaの圧力で5分の期間保持する。次いで、型を10MPaの圧力で10分以内に25℃に冷却する。プラークを次いで特性試験のために型から取り外す。Ex.1、Ex2、Ex4、およびEx7から形成されるプラークは架橋されている。
【0146】
各実施例の組成および特性、ならびに比較組成を以下の表3に提供する。
【0147】
表3に示されるように、CS3およびCS5は各々、(A)エチレン系ポリマー(AXELERON(商標)CX 1258 NT CPD)と、(B)(i)10~100μm(40μm)のD90粒子サイズ、(ii)17~140MPa(20.7MPa)の破砕強度、および(iii)0.10~0.40g/cc(0.23g/cc)の密度を有するガラス中空ミクロスフェア(グラスバブルXLD3000)と、を含有する。CS3およびCS5は各々、シラン官能化ポリオレフィンを欠く。CS3およびCS5は各々、11MPa未満の引張強度(それぞれ、9.43MPaおよび9.84MPa)を呈する。加えて、CS5は、12%未満の引張伸び(3.54%)を呈する。
【0148】
CS8は、(A)エチレン系ポリマー(AXELERON(商標)CX 1258 NT CPD)と、(B)(i)10~100μm(70μm)のD90粒子サイズ、(ii)17~140MPa(110.3MPa)の破砕強度、および(iii)0.10~0.40g/cc(0.32g/cc)の密度を有するガラス中空ミクロスフェア(グラスバブルS32HS)と、を含有する。CS8は、シラン官能化ポリオレフィンを欠く。CS8は、11MPa未満の引張強度(10.70MPa)および12%未満の引張伸び(5.72%)を呈する。
【0149】
CS6およびCS9は各々、(A)エチレン系ポリマー(AXELERON(商標)CX 1258 NT CPD)と、(B)(i)10~100μm(それぞれ、90μmおよび70μm)のD90粒子サイズ、(ii)17MPa未満(それぞれ、5.2MPaおよび13.8MPa)の破砕強度、および(iii)0.10~0.40g/cc(それぞれ、0.25g/ccおよび0.32g/cc)の密度を有するガラス中空ミクロスフェア(それぞれ、グラスバブルK25およびグラスバブルS32)と、を含有する。CS6およびCS9は各々、シラン官能化ポリオレフィンを欠く。17MPa未満の破砕強度を有するCS6およびCS9におけるガラス中空ミクロスフェアは、ブレンド中に破損した。さらに、CS6およびCS9は、11MPa未満の引張強度(それぞれ、10.49MPaおよび8.28)および2.06を超える誘電率(それぞれ、2.22および2.11)を呈する。加えて、CS6は、0.800g/ccを超える密度(0.910g/cc)を呈する。
【0150】
CS10は、(A)エチレン系ポリマー(AXELERON(商標)CX 1258 NT CPD)と、(B)(i)10~100μm(30μm)のD90粒子サイズ、(ii)17~140MPa(110.3MPa)の破砕強度、および(iii)0.40g/cc超(0.46g/cc)の密度を有するガラス中空ミクロスフェア(グラスバブルiM16K)と、を含有する。CS10は、シラン官能化ポリオレフィンを欠く。CS10は、11MPa未満の引張強度(10.53MPa)、12%未満の引張伸び(3.39%)、および2.06を超える誘電率(2.10)を呈する。
【0151】
対照的に、(A)シラン官能化ポリオレフィン(SI-LINK(商標)DFDA-5451 NTまたはAXELERON(商標)CX 1258 NT CPDをVTMSとDTAPの存在下で反応させることによって形成されるSi-g-LDPE)と、(B)(i)10~100μm(それぞれ、70μmおよび40μm)のD90粒子サイズ、(ii)17~140MPa(それぞれ、41.4MPaおよび20.7MPa)の破砕強度、および(iii)0.10~0.40g/cc(それぞれ、0.32g/ccおよび0.23g/cc)の密度を有するガラス中空ミクロスフェア(グラスバブルS32HSまたはグラスバブルXLD3000)と、を含有する、架橋組成物(Ex.1、Ex.2、Ex.4、Ex.7)は予想外に、(i)少なくとも11MPaの引張強度、(ii)少なくとも12%の引張伸び、(iii)0.800g/cc未満の密度、および(iv)1.8~2.06の誘電率を呈する。Ex.1、Ex.2、Ex.4、およびEx.7は各々、ワイヤおよびケーブル用途についての機械的特性の望ましいバランスを示しており、Ex.1、Ex.2、Ex.4、およびEx.7が各々、ワイヤおよびケーブル用途に適していることを示す。
【表3】
【0152】
いずれかの特定の理論によって拘束されることを望まないが、シラン官能化ポリオレフィンは、(i)10~100μmのD90粒子サイズ、(ii)17~140MPaの破砕強度、および(iii)0.10~0.40g/ccの密度を有するガラス中空ミクロスフェアと架橋する(すなわち、結合する)と考えられ、これは、シラン官能化ポリオレフィンマトリックスに分散したガラス中空ミクロスフェアの安定性を改善し、予想外に、0.650g/cc~0.800g/ccの密度も有しながら、(2.08未満の誘電率によって証明されるように)改善された誘電性能および(少なくとも11MPaの引張強度および少なくとも12%の引張伸びによって証明されるように)改善された機械的性能を有する架橋組成物をもたらす。2.08未満の誘電率は、低い誘電率が、ワイヤおよびケーブルが低い減衰および十分な伝送性能(例えば、より高い伝送容量およびより高い伝送速度)を呈することを示すため、ワイヤおよびケーブル用途において有益である。
【0153】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部分、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、次の特許請求の範囲内に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
(態様)
(態様1)
(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)
(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、
(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する、無機中空ミクロスフェアと、を含む架橋ポリマー組成物であって、
前記架橋ポリマー組成物が、
11MPa~40MPaの引張強度、および
12%~100%の引張伸びを有する、架橋ポリマー組成物。
(態様2)
前記無機中空ミクロスフェアが、
(i)30μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~50MPaの破砕強度、および
(iii)0.20g/cc~0.35g/ccの密度を有する、ガラス中空ミクロスフェアである、態様1に記載の架橋ポリマー組成物。
(態様3)
(A)75重量%~99重量%のシラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)1重量%~25重量%の無機中空ミクロスフェアと、を含む、態様1または2に記載の架橋ポリマー組成物。
(態様4)
前記架橋ポリマー組成物が、0.650g/cc~0.800g/ccの密度を有する、態様1~3のいずれか一項に記載の架橋ポリマー組成物。
(態様5)
前記架橋ポリマー組成物が、1.80~2.06の誘電率を有する、態様1~4のいずれか一項に記載の架橋ポリマー組成物。
(態様6)
導体と、
前記導体上の被覆と、を含む、被覆導体であって、前記被覆が、
(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)
(i)10μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~140MPaの破砕強度、
(iii)0.10g/cc~0.40g/ccの密度を有する、無機中空ミクロスフェアと、を含む、架橋ポリマー組成物を含み、
前記架橋ポリマー組成物が、
11MPa~40MPaの引張強度、および
12%~100%の引張伸びを有する、被覆導体。
(態様7)
前記被覆が、前記導体に直接接触する、態様6に記載の被覆導体。
(態様8)
前記無機中空ミクロスフェアが、
(i)30μm~100μmのD90粒子サイズ、
(ii)17MPa~50MPaの破砕強度、および
(iii)0.20g/cc~0.35g/ccの密度を有する、ガラス中空ミクロスフェアである、態様6または7に記載の被覆導体。
(態様9)
前記架橋ポリマー組成物が、
(A)75重量%~99重量%のシラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)1重量%~25重量%の無機中空ミクロスフェアと、を含む、態様6~8のいずれか一項に記載の被覆導体。
(態様10)
前記架橋ポリマー組成物が、0.650g/cc~0.800g/ccの密度を有する、態様6~9のいずれか一項に記載の被覆導体。
(態様11)
前記架橋ポリマー組成物が、1.80~2.06の誘電率を有する、態様6~10のいずれか一項に記載の被覆導体。
図1