(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】モータ収容構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20231128BHJP
H02K 5/18 20060101ALI20231128BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20231128BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K5/18
H02K9/06 B
H02K9/19 A
(21)【出願番号】P 2022013630
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 祐一
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065929(WO,A1)
【文献】特開2009-278751(JP,A)
【文献】特開2016-226210(JP,A)
【文献】特開2016-030526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(22)とステータ(23)とを有するモータ(20)と、前記モータ(20)を収容するハウジング(10A)の一部を構成し且つ内部に冷却媒体が通る冷媒流路(35)を有するモータカバー(12、212)と、を有するモータ収容構造であって、
前記モータカバー(12、212)は、前記モータ(20)の軸方向の一方の面に対向して配置され、少なくとも前記ロータ(22)に対向する領域に前記ロータ(22)の軸方向端面に向けて突出するフィン(40、240)を有
し、
前記モータカバー(12、212)は、前記ロータ(22)に対向するロータ対向面(12B)と、前記ステータ(23)に対向するステータ対向面(12C)とを有し、
前記フィン(40、240)は、前記ロータ対向面(12B)から前記ステータ対向面(12C)に向かって延びるように設けられ、前記ステータ(23)のコイル(25)に対向する部位では、軸方向の高さ(H1)が前記ロータ対向面(12B)の部位に比べて低減されている、
ことを特徴とするモータ収容構造。
【請求項2】
前記フィン(40、240)は、前記モータ(20)の軸方向視において、前記冷媒流路(35)と重複している、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ収容構造。
【請求項3】
前記フィン(40)は、前記ロータ(22)の中心軸(O)に向かって放射状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ収容構造。
【請求項4】
前記フィン(240)は、前記ロータ(22)の回転進行方向(RA)に進むに連れて、前記ロータ(22)の中心軸(O)に対する径が小さくなるように設けられる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ収容構造。
【請求項5】
前記ロータ(22)には、前記モータ(20)の軸方向に貫通する貫通孔(22D)が設けられている、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載のモータ収容構造。
【請求項6】
前記フィン(40、240)の内径側端部は、前記モータ(20)の軸方向視で前記ロータ(22)の貫通孔(22D)の開口(22B1)と重なる部位まで延びている、
ことを特徴とする請求項
5に記載のモータ収容構造。
【請求項7】
前記ロータ(22)は、前記モータカバー(12、212)側の軸方向端面に配置されるカバー側端面板(22B)を有し、
前記カバー側端面板(22B)には、前記ロータ(22)の貫通孔(22D)の開口(22B1)が形成され、
前記カバー側端面板(22B)には、回転進行方向(RA)に向かって開口し前記貫通孔(22D)に導風する第2フィン(41)が設けられている、
ことを特徴とする請求項
5または
6に記載のモータ収容構造。
【請求項8】
前記モータカバー(12、212)は、アルミニウムを含む材料で製造されている、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のモータ収容構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータとステータとからなるモータを収容するモータ収容構造において、モータを冷却する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、カバーに設けられた油路から、ステータのコイルに対してオイルを吐出しており、これにより、ステータを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、オイルという冷却媒体を利用して、ステータを効果的に冷却している。しかしながら、ロータを冷却することに関しては改善の余地があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ロータの周囲の空気によりロータを冷却できるモータ収容構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
モータ収容構造は、ロータとステータとを有するモータと、前記モータを収容するハウジングの一部を構成し且つ内部に冷却媒体が通る冷媒流路を有するモータカバーと、を有するモータ収容構造であって、前記モータカバーは、前記モータの軸方向の一方の面に対向して配置され、少なくとも前記ロータに対向する領域に前記ロータの軸方向端面に向けて突出するフィンを有し、前記モータカバーは、前記ロータに対向するロータ対向面と、前記ステータに対向するステータ対向面とを有し、前記フィンは、前記ロータ対向面から前記ステータ対向面に向かって延びるように設けられ、前記ステータのコイルに対向する部位では、軸方向の高さが前記ロータ対向面の部位に比べて低減されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ロータの周囲の空気によりロータを冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の左側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係るモータカバーの内表面を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係るモータカバーの内表面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ図に示す方向に対応する。各図に示す符号FRは前方を示し、符号UPは上方を示し、符号LHは左方を示す。
【0009】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置10の左側面図である。
図2は、駆動装置10の要部の断面を示す図である。
図3は、
図1からモータカバー12を省略した図である。
本実施の形態では、モータ収容構造が、車両の駆動装置10に適用された構成を説明する。駆動装置10は、ハイブブリッド車両や、電動車両に適用される。
【0010】
駆動装置10は、ハウジング10A(
図1参照)を有する。ハウジング10Aの内部には、電動モータ20(
図2参照)や、図示しない変速機などを備えている。ハウジング10Aは、アルミニウム合金製である。ハウジング10Aは、容器状で左側(軸方向一側)が開放されたケーシング11と、ケーシング11の開放端を塞ぐモータカバー12と、を備える。モータカバー12は、ハウジングの一部を構成する。
【0011】
図2に示すように、ハウジング10Aの内部の電動モータ20は、シャフト21と、シャフト21に固定されたロータ22と、ロータ22の周囲に配置されたステータ23とを有する。
シャフト21は、左右方向に延びる。シャフト21は、モータカバー12とケーシング11のそれぞれに対して軸受15、16を介して回転可能に支持される。シャフト21は、回転軸Oの周りに回転する。シャフト21は、動力伝達機構(不図示)を介して駆動輪(不図示)に接続される。
【0012】
ロータ22は、複数枚の環状鋼板が積層されたロータ本体部22Aと、ロータ本体部22Aの軸方向両端に配置された端面板22B、22Cとを有する。すなわち、ロータ22は、モータカバー12側の軸方向端面に配置されるカバー側端面板22Bを有する。また、ロータ22は、ケーシング11側の軸方向端面に配置される内側端面板22Cを有する。
ロータ22は、複数の環状鋼板間に設けられた複数の永久磁石を備える。ロータ22は、ステータ23が生成する回転磁界により、シャフト21と一体に回転する。
【0013】
ステータ23は、略円筒状のステータコア24と、ステータコア24に巻かれたコイル25とを有する。
ステータコア24は、複数枚の電磁鋼板が積層されて構成される。ステータコア24には、径方向外側に突出する被締結部24Aが形成されている。被締結部24Aは、周方向に等間隔に形成される。本実施の形態では、被締結部24Aは、6か所形成されている。被締結部24Aは、固定部材の一例としてのボルト17によりケーシング11に固定される。
【0014】
コイル25は、ステータコア24に対してモータカバー12側に突出するカバー側コイルエンド25Aを有する。また、コイル25は、ステータコア24に対してケーシング11側に突出する内側コイルエンド25Bを有する。
【0015】
駆動装置10内には、冷却オイル(冷却媒体)が循環可能な冷媒流路33、34,35、36,37、38が形成されている。駆動装置10は、冷媒流路33~38内で冷却オイルを循環させる冷媒循環機構30を有する。
冷媒循環機構30は、ポンプ31を有する。ポンプ31の下流側には、ラジエータ32が配置される。ラジエータ32は、冷却オイルを放熱させて冷却する。ラジエータ32の下流側には、配管33を介してフィードチューブ34が接続されている。フィードチューブ34は、モータカバー12に接続される。
【0016】
モータカバー12には、フィードチューブ34が接続されるカバー冷媒流路(冷媒流路)35が形成される。本実施の形態のカバー冷媒流路35は、フィードチューブ34が接続される前部冷媒流路35Aを備える。前部冷媒流路35Aは、前上がりに延びる。前部冷媒流路35Aの後端部には、前下がりに延びる後部冷媒流路35Bが形成される。前部冷媒流路35Aや後部冷媒流路35Bは、ステータ対向面12Cよりも径方向外側の外周面12Dに形成されている。
【0017】
図2に示すように、前部冷媒流路35Aには、左右方向(軸方向)に延びるコネクトパイプ36が接続される。コネクトパイプ36は、ケーシング11の冷媒流路38に接続される。
また、後部冷媒流路35Bには、フィードパイプ37が接続される。フィードパイプ37には、ステータ23側に開口する吐出口37Aが形成されている。吐出口37Aは、軸方向に複数形成される。吐出口37Aを通じて、冷却オイルがステータ23に向けて噴射され、ステータ23が冷却される。ステータ23を冷却した冷却オイルは、ハウジング10A内を落下して、図示しない孔を通じてケーシング11の冷媒流路38に流入可能に構成されている。
ケーシング11の冷媒流路38は、ポンプ31に接続される。
【0018】
ポンプ31が駆動することにより、冷却オイルが圧送され、冷却オイルが、ラジエータ32、冷媒流路33~38、ポンプ31などを循環する。この際に、冷却オイルはラジエータ32で放熱して冷却される。また、ラジエータ32で冷却された冷却オイルは、駆動装置10内に供給され各部を冷却して昇温する。
【0019】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るモータカバー12の内表面を示す図である。換言すれば、
図4は、モータカバー12の右側面図である。
モータカバー12は、シャフト21の軸方向一端側(左側)に対向するシャフト対向面12Aを有する。シャフト対向面12Aの周囲には、ロータ22の軸方向一端側に対向するロータ対向面12Bが形成されている。ロータ対向面12Bの周囲には、ステータ23の軸方向一端側に対向するステータ対向面12Cが形成されている。ステータ対向面12Cの周囲には、外周面12Dが形成されている。外周面12Dの外周部には、外周面12Dを縁取るようにフランジ部12Eが形成されている。フランジ部12Eは、固定部材により、ケーシング11の固定部11B(
図3参照)に固定される。固定部材は、例えば、ボルトである。
【0020】
モータカバー12には、モータカバー12の内面からロータ22のカバー側端面板22Bに向けて突出する複数の放射フィン40が形成されている。放射フィン40は、ロータ22の中心軸Oに向かって放射状に形成されている。放射フィン40は、径方向に延びる突条形状である。放射フィン40は、カバー冷媒流路35に近接して形成されている。本実施の形態では、放射フィン40は、電動モータ20の軸方向視(中心軸Oの軸方向視)において、カバー冷媒流路35と重複するように形成される。なお、放射フィン40の一部は、カバー冷媒流路35に重複しなくてもよい。放射フィン40は、外周面12D、ステータ対向面12C、ロータ対向面12Bに延在して形成される。
【0021】
具体的には、
図2に示すように、放射フィン40は、外周面12Dおよびステータ対向面12Cに形成されたコア対向部40Aを有する。コア対向部40Aは、ステータ23のステータコア24に対向する。コア対向部40Aよりも径方向内側には、コイル対向部40Bが形成されている。コイル対向部40Bは、ステータ対向面12Cに形成されている。コイル対向部40Bは、コイル25のカバー側コイルエンド25Aに対向する。コイル対向部40Bよりも径方向内側には、ロータ対向部40Cが形成されている。ロータ対向部40Cは、ロータ対向面12Bに形成されている。ロータ対向部40Cは、ロータ22のカバー側端面板22Bに対向する。
【0022】
ここで、本実施の形態の放射フィン40は、モータカバー12の形成位置に応じて、シャフト21の軸方向に沿った高さL1、L2、L3が異なっている。コイル対向部40Bは軸方向に沿った高さL1が、コア対向部40Aの高さL2よりも低くなっている。また、ロータ対向部40Cは、軸方向の高さL3が、コア対向部40Aの高さL2よりも高くなっている。換言すれば、ロータ対向部40C、コア対向部40A、コイル対向部40Bの順に、本実施の形態では、ステータコア24に対する距離λ3、λ2、λ1が大きくなっている。
カバー側コイルエンド25Aは、放射フィン40の右端(突出端)よりも左方に進入している。カバー側コイルエンド25Aは、放射フィン40と軸方向で重複する。
【0023】
これにより、モータカバー12の内面に、軸方向に突出する放射フィン40が設けられていても、カバー側コイルエンド25Aとの接触を回避しながら、モータカバー12の全体を電動モータ20に近接させることができ、駆動装置10の全体を軸方向に小型化し易くなっている。また、モータカバー12の放射フィン40を、ステータ23に近接させ易いため、モータカバー12と隣合う放射フィン40とステータ23とにより閉じられた空間を形成し易く、モータカバー12と隣合う放射フィン40とステータ23とに囲まれた空気を一定の方向に案内し易くなっている。
【0024】
図2、
図3に示すように、ロータ22には、電動モータ20の軸方向に貫通する貫通孔22D(
図2参照)が設けられている。
詳細には、ロータ22のカバー側端面板22Bには、ロータ22の貫通孔22Dの開口22B1が形成される。開口22B1は、周方向に等間隔で形成される。開口22B1は、ロータ22が回転する場合に、電動モータ20の軸方向視で、放射フィン40を横切る位置に形成される。換言すれば、放射フィン40の内径側端部は、電動モータ20の軸方向視でロータ22の貫通孔22Dの開口22B1と重なる部位まで延びている。これにより、冷却された空気がフィンによって開口23B2に案内され易くなる。
【0025】
また、ロータ本体部22Aには、カバー側端面板22Bの開口22B1に連通する貫通孔22A1が形成されている。貫通孔22A1は開口22B1毎に形成される。貫通孔22A1は、周方向に複数形成される。
さらに、ロータ22の内側端面板22Cには、ロータ本体部22Aの貫通孔22A1に連通する開口22C1が形成されている。開口22C1は、貫通孔22A1毎に形成される。開口22B1は、周方向に複数形成される。
【0026】
開口22B1と、貫通孔22A1と、開口22C1とにより、ロータ22では、厚み方向、すなわち、軸方向に空気が移動可能な貫通孔22Dが形成される。これにより、冷却された空気がロータ22内を通過可能であるため、ロータ22を内部からも冷却することができる。本実施の形態では、開口22B1と、貫通孔22A1と、開口22C1とが軸方向に延びる線LA上で一直線上に貫通する。線LAは、放射フィン40のロータ対向部40Cと径方向において重複する。
【0027】
ここで、カバー側端面板22Bには、導入フィン(第2フィン)41が形成される。導入フィン41は板状である。導入フィン41は、ロータ22の回転時に、開口22B1に空気を導入するようにカバー側端面板22Bに対して傾斜して設けられる。具体的には、導入フィン41は、ロータ22の回転進行方向RAに進むに連れて、カバー側端面板22Bから離間するようにカバー側端面板22Bに対して傾斜して設けられる。これにより、導入フィン41は、カバー側端面板22Bと共に、回転進行方向RAに開口する開口形状を形成する。導入フィン41は、軸方向視において、開口22B1に重複している。
【0028】
また、内側端面板22Cには、導出フィン42が形成される。導出フィン42は板状である。導出フィン42は、ロータ22の開口22C1から空気を導出するように配置される。具体的には、導出フィン42は、ロータ22の回転進行方向RAと反対側に進むに連れて、カバー側端面板22Bから離間するように傾斜して設けられる。
【0029】
ここで、モータカバー12にはカバー冷媒流路35が形成されているため、カバー冷媒流路35の周辺の部位は冷却される。このとき、モータカバー12には放射フィン40が設けられているため、放射フィン40によりモータカバー12の内面の空気が冷却され易くなっている。特に、本実施の形態のモータカバー12は、アルミニウム合金製であるため、熱伝導率が高く、冷却オイルの温度が周辺に伝わり易くなっている。このため、カバー冷媒流路35の形成部位の周辺の空気も冷却され易くなっている。
【0030】
また、ロータ22が回転すると、ロータ22の回転に伴い、ロータ22の周辺の空気が流動する。本実施の形態では、モータカバー12にロータ22側に突出する放射フィン40が設けられているため、流動する空気が放射フィン40に案内され易くなっている。すなわち、放射フィン40により冷却された空気がロータ22に案内され易く、ロータ22が冷却され易くなっている。特に、本実施の形態では、放射フィン40がカバー冷媒流路35に重複しているため、カバー冷媒流路35の冷却オイルにより直接的に冷却された空気をロータ22に案内し易い。よって、ロータ22が冷却され易くなっている。
【0031】
また、本実施の形態では、ロータ22には、導入フィン41と貫通孔22Dが形成されている。ロータ22側に案内された空気は、導入フィン41によりロータ22の貫通孔22D内に導入され易く、ロータ22を内部から冷却し易くなっている。
【0032】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、駆動装置10は、ロータ22とステータ23とを有するモータ20と、モータ20を収容するハウジング10Aの一部を構成し且つ内部に冷却オイルが通るカバー冷媒流路35を有するモータカバー12と、を有する。この駆動装置10において、モータカバー12は、モータ20の軸方向の一方の面に対向して配置され、少なくともロータ22に対向する領域にロータ22の軸方向端面に向けて突出する放射フィン40を有する。
この構成によれば、放射フィン40により空気に熱を伝え易いためカバー冷媒流路35付近の空気を冷却できると共に、ロータ22の回転により放射フィン40の周囲の冷たい空気を攪拌させながらロータ22の周囲まで案内することができる。このため、ロータ22の周囲の空気によりロータ22を冷却できる。
【0033】
本実施の形態では、放射フィン40は、モータ20の軸方向視において、カバー冷媒流路35と重複している。
この構成によれば、放射フィン40により案内される空気が冷却され易くできる。
【0034】
また、本実施の形態では、フィン40は、ロータ22の中心軸Oに向かって放射状に形成されている。
この構成によれば、ロータ22が回転した際の空気を、放射フィン40によってロータ22側に案内できるためロータ22を効率よく冷却することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、モータカバー12は、ロータ22に対向するロータ対向面12Bと、ステータ23に対向するステータ対向面12Cとを有し、放射フィン40は、ロータ対向面12Bからステータ対向面12Cに向かって延びるように設けられ、ステータ23のコイル25に対向する部位では、軸方向の高さH1がロータ対向面12Bの部位に比べて低減されている。
この構成によれば、ステータ23のコイル25に対向するモータカバー12の部位には、軸方向の高さH1が抑えられた放射フィン40が設けられるので、放射フィン40が設けられたモータカバー12であっても、モータカバー12をモータ20に近接させ易く、駆動装置10の左右方向(軸方向)の厚みを抑えることができる。
【0036】
また、本実施の形態では、ロータ22には、モータ20の軸方向に貫通する貫通孔22Dが設けられている。
この構成によれば、冷却された空気がロータ22の貫通孔22Dを通過可能であるため、ロータ22を内部からも冷却することができる。
【0037】
また、本実施の形態では、放射フィン40の内径側端部は、モータ20の軸方向視でロータ22の貫通孔22Dの開口22B1と重なる部位まで延びている。
この構成によれば、冷却された空気が放射フィン40によって開口22B1に案内可能であるため、ロータ22の内部に冷却された空気を通し易くできる。
【0038】
また、本実施の形態では、ロータ22は、モータカバー12側の軸方向端面に配置されるカバー側端面板22Bを有し、カバー側端面板22Bには、ロータ22の貫通孔22Dの開口22B1が形成され、カバー側端面板22Bには、回転進行方向RAに向かって開口し貫通孔22Dに導風する第2フィン41が設けられている。
この構成によれば、ロータ22の回転を利用して冷却された空気をロータ22内に流入させ易くできる。
【0039】
また、本実施の形態では、モータカバー12は、アルミニウムを含む材料で製造されている。
この構成によれば、アルミニウムは熱伝導率が高いので、アルミニウムを含まない場合に比べてモータカバー12の熱伝導率を高くし易い。このため、カバー冷媒流路35によりモータカバー12の周辺の空気をより冷却し易くできる。よって、より冷えた空気をロータ22)に案内し易くできる。
【0040】
[第2の実施の形態]
本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るモータカバー212の内表面を示す図である。
図5は、モータカバー212の右側面を示している。
第2の実施の形態のモータカバー212では、第1の実施の形態の放射フィン40に代えて、湾曲フィン240を有する。湾曲フィン240は、ロータ22の回転進行方向RAに進むに連れて、ロータ22の中心軸Oに対する径が小さくなるように設けられる。湾曲フィン240は、中心軸Oに対して螺旋状に形成されている。湾曲フィン240は、湾曲して延びる突条形状である。湾曲フィン240は、本実施の形態では、電動モータ20の軸方向視で、カバー冷媒流路35に重複して形成される。
【0042】
湾曲フィン240は、外周面12D、ステータ対向面12C、ロータ対向面12Bに延在して形成されている。湾曲フィン240は、放射フィン40のコア対向部40A、コイル対向部40B、ロータ対向部40Cに対応するコア対向部240A、コイル対向部240B、ロータ対向部240Cを備える。湾曲フィン240同士の間隔W1、W2、W3は、径方向内側に進むに連れて狭くなっている。すなわち、径方向外端部の間隔W1よりも径方向中途部の間隔W2が小さい。また、径方向中途部の間隔W2よりも径方向内端部の間隔W3が小さい。
【0043】
ここで、湾曲フィン240は、直線状に延びる放射フィン40に比べて長くなり易い。よって、ロータ22が回転する場合に、湾曲フィン240に案内される空気と湾曲フィン240の接触面積が大きくなり易く、冷却オイルの温度を空気に伝え易く、より周辺の空気が冷却され易くなっている。
【0044】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施の形態によれば、駆動装置10は、ロータ22とステータ23とを有するモータ20と、モータ20を収容するハウジング10Aの一部を構成し且つ内部に冷却媒体が通るカバー冷媒流路35を有するモータカバー212と、を有する。この駆動装置10において、モータカバー212は、モータ20の軸方向の一方の面に対向して配置され、少なくともロータ22に対向する領域にロータ22の軸方向端面に向けて突出する湾曲フィン240を有する。
したがって、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ロータ22の周囲の空気によりロータ22を冷却できる。
【0045】
また、本実施の形態では、フィン240は、ロータ22の回転進行方向RAに進むに連れて、ロータ22の中心軸Oに対する径が小さくなるように設けられる。
この構成によれば、ロータ22が回転した際の空気を、湾曲フィン240によってロータ22側に案内できるためロータ22を効率よく冷却することができる。また、この構成によれば、放射状に形成した場合よりも湾曲フィン240を長くし易く、湾曲フィン240と空気の接触面積を増やすことができ、より空気を冷却し易くできる。
【0046】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0047】
上記実施の形態では、電動モータ20は駆動輪を駆動する構成を説明したが、発電用のモータでもよい。
【0048】
上記実施の形態では、モータカバー12は、アルミニウム合金で製造される構成を説明したが、例えば、アルミニウムフレークを混入させて熱伝導性を高めた樹脂でもよい。
【0049】
上記実施の形態では、フィン40、240においては、コイル対向部40、240の軸方向の高さL1が他の部分に比べて高さが抑制された構成を説明したが、コイル対向部40、240が省略されてもよい。すなわち、フィン40、240において、コア対向部40A、240Aと、ロータ対向部40C、240Cとが分離された構成でもよい。
【0050】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0051】
(構成1)ロータとステータとを有するモータと、前記モータを収容するハウジングの一部を構成し且つ内部に冷却媒体が通る冷媒流路を有するモータカバーと、を有するモータ収容構造であって、前記モータカバーは、前記モータの軸方向の一方の面に対向して配置され、少なくとも前記ロータに対向する領域に前記ロータの軸方向端面に向けて突出するフィンを有する、ことを特徴とするモータ収容構造。
この構成によれば、フィンにより空気に熱を伝え易いため冷媒流路付近の空気を冷却できると共に、ロータの回転によりフィンの周囲の冷たい空気を攪拌させながらロータの周囲まで案内することができる。このため、ロータの周囲の空気によりロータを冷却できる。
【0052】
(構成2)前記フィンは、前記モータの軸方向視において、前記冷媒流路と重複している、ことを特徴とする構成1に記載のモータ収容構造。
この構成によれば、フィンにより案内される空気が冷却され易くできる。
【0053】
(構成3)前記フィンは、前記ロータの中心軸に向かって放射状に形成されている、ことを特徴とする構成1または2に記載のモータ収容構造。
この構成によれば、ロータが回転した際の空気を、フィンによってロータ側に案内できるためロータを効率よく冷却することができる。
【0054】
(構成4)前記フィンは、前記ロータの回転進行方向に進むに連れて、前記ロータの中心軸に対する径が小さくなるように設けられる、ことを特徴とする構成1または2に記載のモータ収容構造。
この構成によれば、ロータが回転した際の空気を、フィンによってロータ側に案内できるためロータを効率よく冷却することができる。また、この構成によれば、放射状に形成した場合よりもフィンを長くし易く、フィンと空気の接触面積を増やすことができ、より空気を冷却し易くできる。
【0055】
(構成5)前記モータカバーは、前記ロータに対向するロータ対向面と、前記ステータに対向するステータ対向面とを有し、前記フィンは、前記ロータ対向面から前記ステータ対向面に向かって延びるように設けられ、前記ステータのコイルに対向する部位では、軸方向の高さが前記ロータ対向面の部位に比べて低減されている、ことを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のモータ収容構造。
この構成によれば、ステータのコイルに対向するモータカバーの部位には、軸方向の高さが抑えられたフィンが設けれる、または、フィンは設けられないので、フィンが設けられたモータカバーであっても、モータカバーをモータに近接させ易く、モータ収容構造の軸方向の厚みを抑えることができる。
【0056】
(構成6)前記ロータには、前記モータの軸方向に貫通する貫通孔が設けられている、ことを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のモータ収容構造。
この構成によれば、冷却された空気がロータの貫通孔を通過可能であるため、ロータを内部からも冷却することができる。
【0057】
(構成7)前記フィンの内径側端部は、前記モータの軸方向視で前記ロータの貫通孔の開口と重なる部位まで延びている、ことを特徴とする構成6に記載のモータ収容構造。
この構成によれば、冷却された空気がフィンによって開口に案内可能であるため、ロータの内部に冷却された空気を通し易くできる。
【0058】
(構成8)前記ロータは、前記モータカバー側の軸方向端面に配置されるカバー側端面板を有し、前記カバー側端面板には、前記ロータの貫通孔の開口が形成され、前記カバー側端面板には、回転進行方向に向かって開口し前記貫通孔に導風する第2フィンが設けられている、ことを特徴とする構成6または7に記載のモータ収容構造。
この構成によれば、ロータの回転を利用して冷却された空気をロータ内に流入させ易くできる。
【0059】
(構成9)前記モータカバーは、アルミニウムを含む材料で製造されている、ことを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のモータ収容構造。
この構成によれば、アルミニウムは熱伝導率が高いので、アルミニウムを含まない場合に比べてモータカバーの熱伝導率を高くし易い。このため、冷媒流路によりモータカバー12の周辺の空気をより冷却し易くできる。よって、より冷えた空気をロータに案内し易くできる。
【符号の説明】
【0060】
10A ハウジング
12 モータカバー
12B ロータ対向面
12C ステータ対向面
20 電動モータ(モータ)
21 シャフト
22 ロータ
22B カバー側端面板
22B1 開口
22D 貫通孔
23 ステータ
25 コイル
35 カバー冷媒流路(冷媒流路)
40 放射フィン(フィン)
41 導入フィン(第2フィン)
212 モータカバー
240 湾曲フィン(フィン)
H1 軸方向の高さ
O 中心軸
RA 回転進行方向