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特許7392011糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料
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  • 特許-糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
C12C5/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022021831
(22)【出願日】2022-02-16
(62)【分割の表示】P 2019043350の分割
【原出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2022059026
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018045815
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】須藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】森下 あい子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216999(JP,A)
【文献】特開2016-019468(JP,A)
【文献】特開2012-060930(JP,A)
【文献】特開2018-029563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C
C12F
C12H
C12J
C12L
C12G
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が17~45%であり、かつ、前記ペプチドが大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、ビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項2】
前記ペプチドの質量の比率が18~25%である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項3】
麦芽使用比率が50%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項4】
前記飲料のオリジナルエキス濃度が4°P以上14°P以下であり、かつ/または、前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの濃度が0.15mg/mL以上0.65mg/mL以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項5】
風味が改善された、大麦麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を17~45%に調整することを含んでなり、かつ、前記ペプチドが大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、製造方法。
【請求項6】
ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造工程において、大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを添加する工程を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記飲料のオリジナルエキス濃度が4°P以上10°P以下であり、かつ/または、前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの濃度が0.15mg/mL以上0.65mg/mL以下である、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
大麦麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を17~45%に調整することを含んでなり、かつ、前記ペプチドが大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、方法。
【請求項9】
前記飲料のオリジナルエキス濃度が4°P以上10°P以下であり、かつ/または、前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの濃度が0.15mg/mL以上0.65mg/mL以下である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料に関し、より詳細には糖質濃度
が0.5g/100mL未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりにより、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料が求めら
れている。これまでに、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料を目指して様々な技
術が開発されてきた。
【0003】
例えば、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料を安定的に製造する技術として、資
化性単糖類と資化性二糖類を糖源として用いる技術(特許文献1)が知られている。また
、低糖質ビールテイスト飲料を微生物汚染リスクが著しく低い方法で製造する技術として
、糖質原料中のオリゴ糖含有率を特定の範囲で使用する技術(特許文献2)が知られてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-131202号公報
【文献】特開2012-157323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糖質が低減されたビールテイスト発酵アルコール飲料のうち糖質濃度が0.5mg/1
00mL未満のいわゆる「糖質ゼロ」のビールテイスト発酵アルコール飲料は、かなりの
量の糖質が削減されているため、特に、水っぽい、薄い香味印象となってしまう。従って
、糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料において味の厚みが実現できれば、糖質
ゼロでありながら、飲み応えのあるビールテイスト発酵アルコール飲料を提供できる。
【0006】
すなわち、本発明は、味の厚みが実現された糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール
飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、糖質濃度が0.5mg/100mL未満まで低減されたビールテイスト
発酵アルコール飲料において、分子量800~1500Daのペプチドの比率を特定範囲
内にすることで、当該ビールテイスト発酵アルコール飲料において味の厚みを実現できる
ことを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0008】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.
5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料であって、HPLC分析用ゲ
ル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~
1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が17~
45%である、ビールテイスト発酵アルコール飲料。
[2]前記ペプチドの質量の比率が18~25%である、上記[1]に記載のビールテイ
スト発酵アルコール飲料。
[3]麦芽使用比率が50%以上である、上記[1]または[2]に記載のビールテイス
ト発酵アルコール飲料。
[4]風味が改善された、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とす
る、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方
法であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対す
る前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの
質量の比率(百分率)を17~45%に調整することを含んでなる方法。
[5]ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造工程において、麦芽および/または未発
芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分
子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを添加する工程を含
む、上記[4]に記載の製造方法。
[6]麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発
酵アルコール飲料に含まれる分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)
のペプチドを有効成分として含んでなる、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビール
テイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。
[7]麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.
5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法であって、H
PLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の
分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百
分率)を17~45%に調整することを含んでなる方法。
【0009】
本発明によれば、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコー
ル飲料において、分子量800~1500Daのペプチドの比率を特定範囲内に調整する
ことによって、味の厚みが実現された糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料を提
供でき、消費者の健康志向など、多様なニーズに応えることができる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1において実施した、HPLC分析用ゲル濾過法の保持時間と既知物質の分子量から作成した検量線を示した図である。
図2】実施例1の官能評価結果(n=5の平均値±標準誤差)を示した図である。分子量800~1500Daのペプチド画分の添加が味の厚みや渋味に与える影響を官能評価スコアで示した。
【発明の具体的説明】
【0011】
本発明において「ビールテイスト」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵
母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを
意味する。
【0012】
本発明において、「ビールテイスト発酵アルコール飲料」は、炭素源、窒素源、および
水などを原料として酵母により発酵させたビールテイストの発酵アルコール飲料であり、
ビール、発泡酒および原料として麦芽を使用するビールや発泡酒にアルコールを添加して
なる飲料(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類されるリキュール
系新ジャンル飲料)が挙げられる。
【0013】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、麦芽および/または未発芽の麦類を原
料の一部とするものであり、いずれの麦芽使用比率をも取ることができるが、例えば、麦
芽使用比率を50%未満、50%以上、67%未満、67%以上あるいは95%以上とす
ることができる。本明細書において「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除く全原料の質量
に対する麦芽質量の割合をいう。
【0014】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、糖質濃度が低減された糖質ゼロの飲料
であり、具体的には、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の糖質濃度は、0.5
g/100mL未満である。
【0015】
糖質濃度の測定は公知の方法によって行うことができ、当該試料の質量から、水分、タ
ンパク質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(栄養表示基準(平成21年
12月16日 消費者庁告示第9号 一部改正)参照)に従って行うことができる。
【0016】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではHPLC分析用ゲル濾過法で分画され
た前記飲料由来の全ペプチドの質量に対する飲料中の分子量800~1500Da(HP
LC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が特定範囲内であることを特
徴とする。当該比率は、飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過
法)のペプチド濃度(mg/mL)をHPLC分析用ゲル濾過法で分画された飲料由来の
全ペプチド濃度(mg/mL)で除することで算出することができる。本発明において、
当該ペプチド比率の下限値(以上または超える)は、味の厚みの付与の観点から17%(
好ましくは18%)とすることができ、また、上限値(以下または未満)は、45%(好
ましくは25%)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組
み合わせることができ、例えば、当該ペプチド比率の範囲は17~45%であり、好まし
くは18~25%であり、より好ましくは18%以上25%未満とすることができる。
【0017】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、飲料中の分子量800~150
0Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド濃度の下限値(以上または超える)を0
.10mg/mL(好ましくは0.15mg/mL)とすることができ、また、上限値(
以下または未満)を2.50mg/mL(好ましくは2.00mg/mL、1.50mg
/mL、1.20mg/mL、1.00mg/mL、0.70mg/mLまたは0.65
mg/mL)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合
わせることができ、例えば、飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル
濾過法)のペプチド濃度を0.10~2.50mg/mLまたは0.15~1.20mg
/mLとすることができる。
【0018】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、飲料中のオリジナルエキス濃度
(OE濃度)(°P)に対する、飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用
ゲル濾過法)のペプチド濃度(mg/mL)の比率の下限値(以上または超える)を0.
02(好ましくは0.03)とすることができ、また、上限値(以下または未満)を0.
50(好ましくは、0.30、0.15、0.07または0.05)とすることができる
。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、例えば、飲料
中のOE濃度(°P)に対する飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲ
ル濾過法)のペプチド濃度(mg/mL)の比率を0.02~0.50(好ましくは0.
03~0.30)とすることができる。
【0019】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料中のOE濃度の下限値(以上または超える
)は2°P(好ましくは4°P)とすることができ、また、上限値(以下または未満)を
20°P(好ましくは14°P、より好ましくは10°P)とすることができる。これら
の下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、例えば、本発明のビー
ルテイスト発酵アルコール飲料中のOE濃度を2~20°P(好ましくは4~14°P)
とすることができる。本発明において「オリジナルエキス濃度」は、市販の機器(例えば
、アルコライザー(アントンパール社製))を用いて測定することができる。なお、麦芽
および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコー
ル飲料では「オリジナルエキス濃度」を「原麦汁エキス濃度」と言い換えることができる
【0020】
飲料中のペプチドの分子量は高速液体クロマトグラフィーによるゲル濾過法(本明細書
において「HPLC分析用ゲル濾過法」ということがある)により測定される。具体的に
は、HPLC分析用ゲル濾過法の検量線(例えば、図1)を用いて保持時間から分子量を
算出し、保持時間により分子量の異なるサンプルを分取できる。HPLC分析用ゲル濾過
法による分子量の測定の具体例は後記実施例1に示される通りである。また、ペプチドの
定量はLowry法(ローリー法)により実施することができる。
【0021】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、糖質濃度が低減されているにもかかわ
らず、味の厚みが付与されていることを特徴とする。ここで、「味の厚み」とは、味の広
がり、複雑さ、ボディ感付与等により認識される香味感覚を意味する。
【0022】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、飲料中の糖質濃度が所定の範囲内に低
減され、かつ、飲料中の800~1500Daのペプチド比率が所定の範囲内に調整され
る限り、通常のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造することがで
きる。
【0023】
例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビ
ール酵母を添加して発酵を行い、得られた発酵液を低温にて貯蔵した後、濾過工程により
酵母を除去することによりビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。
なお、ビールテイスト発酵アルコール飲料のうちオールモルトビールは、麦芽、ホップ、
水から製造できることはいうまでもない。
【0024】
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料
と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮
沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。また、麦汁は、
糖化工程中に市販の酵素製剤を添加して作製することもできる。例えば、タンパク分解の
ためにプロテアーゼ製剤を、糖質分解のためにα-アミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製
剤、プルラナーゼ製剤等を、繊維素分解のためにβ-グルカナーゼ製剤、繊維素分解酵素
製剤等をそれぞれ用いることができ、あるいはこれらの混合製剤を用いることもできる。
【0025】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造の一態様においては、糖化工程また
は発酵工程において、エンド型プロテアーゼ活性が高い麦芽および/またはエンド型プロ
テアーゼ活性を保有する酵素製剤をタンパク分解のために使用することができる。このよ
うな工程を実施することによりビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分子量80
0~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの比率を増加させて、所定値
の範囲内に調整することができ、ひいては糖質ゼロでありながら、味の厚みが付与された
ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。すなわち、本発明によれば
糖化工程または発酵工程においてエンド型プロテアーゼ活性が高い麦芽および/またはエ
ンド型プロテアーゼを含む酵素製剤を使用することを含んでなる、ビールテイスト飲料の
製造方法が提供される。上記の麦芽や酵素製剤の酵素活性の特徴は、エンド型プロテアー
ゼ活性に基づいて特定することができる。
【0026】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、麦芽および未発芽の麦類のいずれかま
たは両方を原料の少なくとも一部とするものであり、好ましくは、麦芽または麦芽および
未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするものである。本発明のビールテイスト発酵ア
ルコール飲料においては、麦芽として大麦麦芽を原料の一部として使用することができる
。本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料においてはまた、未発芽の麦類として、未
発芽大麦(エキス化したものを含む)や、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を原
料として使用することができる。
【0027】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造では、麦芽および未発芽の麦類以外
に、米、とうもろこし、大豆、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)、
果実(例えば、果汁、濃縮果汁)、コリアンダーまたはその種、香辛料またはその原料(
例えば、こしょう、シナモン、さんしょう)、ハーブ(例えば、カモミール、セージ、バ
ジル)、野菜(例えば、かんしょ、かぼちゃ)、そばまたはごま、含糖質物(例えば、ハ
チミツ、黒糖)、食塩、みそ、花、茶、コーヒー、ココア(茶、コーヒーおよびココアは
その調製品を含む)、海産物(例えば、牡蠣、こんぶ、わかめ、かつお節)等の副原料;
タンパク質分解物や酵母エキス等の窒素源;香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整
剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。本発明のビ
ールテイスト発酵アルコール飲料は、醸造用水以外の使用原料を少なくとも麦芽およびホ
ップとすることができ、場合によっては更に糖類、米、とうもろこし、でんぷん等を使用
原料とすることができる。
【0028】
本発明においては、穀物類(例えば、麦芽および/または未発芽の麦類や大豆)から分
子量800~1500Daのペプチドが含まれる画分を調製し、該画分を糖質ゼロのビー
ルテイスト飲料に添加することによって、分子量800~1500Daのペプチドの比率
を所定値の範囲内に調整することができ、ひいては糖質ゼロでありながら、味の厚みが付
与されたビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。すなわち、本発明
によれば、穀物類から分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプ
チドが含まれる画分を調製し、該画分を糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテ
イスト発酵アルコール飲料に添加することを含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール
飲料の製造方法が提供される。上記ペプチド画分のビールテイスト発酵アルコール飲料へ
の添加は、該飲料の製造工程(例えば、発酵液への調合工程)において行うことができる
。なお、穀物類由来の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプ
チドは、例えば、穀物類をペプチダーゼ等のタンパク分解酵素で加水分解処理することに
より調製することができ、大豆タンパク加水分解物のような穀物類のタンパク加水分解物
から得てもよい。
【0029】
本発明においてはまた、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とす
るビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から分子量800~1500Da
のペプチドが含まれる画分を調製し、該画分を糖質ゼロのビールテイスト飲料に添加する
ことによって、分子量800~1500Daのペプチドの比率を所定値の範囲内に調整す
ることができ、ひいては糖質ゼロでありながら、味の厚みが付与されたビールテイスト発
酵アルコール飲料を製造することができる。すなわち、本発明によれば、麦芽および/ま
たは未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料を製
造し、次いで、前記飲料から分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)
のペプチドが含まれる画分を調製し、該画分を糖質濃度が0.5g/100mL未満のビ
ールテイスト発酵アルコール飲料に添加することを含んでなる、ビールテイスト発酵アル
コール飲料の製造方法が提供される。上記ペプチド画分のビールテイスト発酵アルコール
飲料への添加は、該飲料の製造工程(例えば、発酵液への調合工程)において行うことが
できる。
【0030】
また、本発明によれば、穀物類あるいは麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少な
くとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量800~1500
Daの1種または2種以上のペプチドが配合されてなるビールテイスト発酵アルコール飲
料が提供され、該飲料は本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の一部である。該ペ
プチドが配合されてなる飲料はビールテイスト発酵アルコール飲料としての風味が改善あ
るいは向上されており、具体的には、味の厚みが増強された飲料である。
【0031】
ビールテイスト発酵アルコール飲料における糖質の低減は公知の方法に従って行うこと
ができ、例えば、糖化工程中にグルコアミラーゼを添加する方法、発酵工程中にグルコア
ミラーゼを添加する方法(酵素利用技術大系 基礎・解析から改変・高度機能化・産業利
用まで(小宮山 眞 監修、株式会社エヌ・ティー・エス、2010年)など参照)、酵母に資
化される糖質を多く含む液糖を使用して酵母による資化性を高めることにより糖質を低減
する方法(特開2009-131202号公報参照)、糖化工程中に麦汁濾過を行う方法
(特開2012-147780号公報参照)により飲料中の糖質濃度を所定値にすること
ができる。
【0032】
本発明により提供される飲料は、場合によっては炭酸ガスを添加する工程に付し、さら
に、充填工程、殺菌工程などの工程を経て容器詰め飲料として提供することができる。殺
菌は容器への充填前であっても充填後であってもよい。また、飲料のpHが4未満に調整
されている場合には殺菌工程を経ずにそのまま充填工程を行って容器詰め飲料とすること
もできる。
【0033】
本発明による飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく
、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、
紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは、金属缶・樽容器、プラスチック
製ボトル(例えば、PETボトル)、瓶である。
【0034】
本発明の別の面によれば、風味が改善された、麦芽および/または未発芽の麦類を原料
の少なくとも一部とする、糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法であ
って、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記
飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の
比率(百分率)を17~45%に調整することを含んでなる方法が提供される。本発明に
おいてビールテイスト発酵アルコール飲料の「風味が改善された」あるいは「風味改善」
とは、糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料において味の厚みが実現されること
を意味するものとする。上記の本発明の製造方法は、好ましくは味の厚みが付与された糖
質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法である。上記の本発明の製造方法
は本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法についての記載に従っ
て実施することができる。
【0035】
本発明の別の面によれば、穀物類あるいは麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少
なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分子量800~150
0Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを有効成分として含んでなる、糖質ゼロ
のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤が提供される。ビールテイスト発酵ア
ルコール飲料の風味改善剤は、好ましくは糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料
の味の厚み付与剤である。本発明の風味改善剤は、本発明のビールテイスト発酵アルコー
ル飲料およびその製造方法に関する記載に従って実施することができる。
【0036】
本発明のさらに別の面によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする
、糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法が提供される。本発明の
風味改善方法は、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に
対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチ
ドの質量の比率(百分率)を17~45%に調整することにより実施できる。本発明の風
味改善方法は、好ましくは糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料に味の厚みを付
与する方法である。本発明の風味改善方法は、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲
料およびその製造方法に関する記載に従って実施することができる。
【実施例
【0037】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定される
ものではない。
【0038】
糖質濃度の分析
栄養表示基準に基づく糖質濃度の測定は、公知の五訂日本食品標準成分表分析マニュア
ルに記載の方法に従って行った。すなわち、サンプル飲料の質量から、水分(減圧加熱乾
燥法)、タンパク質(自動分析装置による方法)、脂質(ソックスレー抽出法(3))、
灰分(マッフル炉による燃焼法)および食物繊維量(プロスキー酵素重量法)を除いて算
出する方法により測定した。
【0039】
参考例1:ビールテイスト飲料に好ましい香味を付与するペプチド画分の特定
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
大麦麦芽、ホップ、酵素製剤を用いて、インフュージョン法にてビールテイスト発酵ア
ルコール飲料を製造した。具体的には、65℃の湯300mLに大麦麦芽100gを入れ
、60分保持し、さらに78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。続いて、ホ
ップを0.8g/L投入して100℃で90分煮沸したのち、濾過して発酵前液を得た。
【0040】
その後、常法に従ってビール酵母により発酵を行い、発酵液の香味確認を行った。その
結果、得られた発酵液は、雑味が抑制され、ビールらしく柔らかくスムーズなテクスチャ
ーがあり、調和のとれた味わいがあることが確認された。
【0041】
(2)ゲル濾過分画
上記(1)で得られた発酵液を0.45μmフィルターで濾過し、濾過済み発酵液を計
量して凍結乾燥した。乾燥物を100mM NaCl溶液で溶解して5倍濃縮液を調製し
、分画用サンプルとした。サンプルは、以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
【0042】
<ゲル濾過分画条件>
カラム:Hiload Superdex 30pg 26/600(GEヘルスケア社
製)
サンプル注入量:5mL
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29cv(カラム・ボリューム)から19.1mL(フラクション0)、その
後0.35cvから5mLずつ分画(フラクション1~51)
【0043】
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、表1のようにフラクションをプ
レ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。また、各画分
の香味特徴は5名の訓練されたパネラーのディスカッションにより決定した。
【0044】
【表1】
【0045】
(3)ペプチド画分の精製
上記(2)で得られた画分CおよびDは、固相抽出カラム(Bond Elute C
18、Agilent technologies社製)にて吸着処理を行い、脱塩水で洗浄した後、50%エ
タノール水溶液にて溶出して、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とした
。これをペプチド画分とした。
【0046】
(4)ローリー法によるタンパク定量
上記(2)のゲル濾過分画と上記(3)のペプチド画分の精製によって得られたペプチ
ド画分のタンパク定量は、市販のキット(DCプロテインアッセイ、Bio-Rad社製
)を用いたLowry法で行った。まず、上記分画液を適切な範囲になるように濃度調整
した。濃度調整したサンプル5μLに対し、A液を50μL加えて撹拌し、続いてB液を
400μL加えて攪拌した。室温で15分発色反応を行った後、96ウェルプレートに3
50μL移して750nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線に
基づき、ペプチド濃度(mg/mL)を算出した。なお、検量線はBSA(ウシ血清アル
ブミン)を用いて作成した。
【0047】
(5)結果
ペプチド分画物は、Superdex 75 10/300カラムにて分析を行い、分
子量を推定したところ、画分CおよびDのペプチドが分子量約800~1500Daに分
布していた。
【0048】
以上の結果より、ビールテイスト発酵アルコール飲料から分画・精製した分子量約80
0~1500Daのペプチド画分CおよびDは、飲み応え(すなわち、味の厚み)の付与
に有効であることが示唆された。
【0049】
実施例1:糖質ゼロビールテイスト発酵アルコール飲料の製造並びに該飲料へのペプチド
添加が味の厚みに与える影響の分析
(1)糖質ゼロビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
本実施例のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造においては、主原料として、大麦
麦芽を使用した。糖化に際しては酵素製剤を用い、糖化の温度、時間を調整し、濾過する
ことで、麦汁を得た。具体的には、50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽10質量
部、βグルカナーゼ酵素製剤およびグルコアミラーゼを主体とする酵素製剤を投入して3
0分保持後、64℃に昇温して70分保持した。その後、78℃に昇温して5分保持した
後、濾過して麦汁を得た。
【0050】
上記の麦汁調製工程に続いて、得られた麦汁にホップおよび資化性糖を主体とした液糖
を9.5質量部投入して100℃で90分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分
離した後、冷却して発酵前液を得た。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加し、常法に
従って主発酵および後発酵を行った。続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で維持する
ことにより貯蔵を行い、濾過して、清澄なビールテイストアルコール飲料を得た。
【0051】
(2)ペプチド画分の調製
市販のビールテイスト飲料をガス抜きした上で計量して凍結乾燥した。凍結乾燥物を1
00mM NaCl溶液に溶解して5倍濃縮液を調製し、ゲル濾過分画用サンプルとした
。参考例1(2)の記載に従ってゲル濾過分画を実施し、得られた画分C(フラクション
番号:F25~29)を、参考例1(3)の記載に従って精製した。この際、精製での回
収率向上に向け、固相抽出カラムの素通り画分を合成吸着材(セパビーズSP207、三
菱ケミカル社製)による回収も行った。タンパク定量は参考例1(4)に記載のローリー
法により行った。
【0052】
(3)HPLC分析用ゲル濾過画分の調製
試醸品に関しては、上記(1)で得られた試醸品をガス抜きした上で計量して凍結乾燥
した。各凍結乾燥物を50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0、150mM N
aCl含む)で溶解して2.5倍濃縮液を調製し、ゲル濾過分画用サンプルとした。ペプ
チド画分に関しては、10倍濃縮液相当になるよう上記の緩衝液で溶解し、ゲル濾過分画
用サンプルとした。分画サンプルについて、それぞれ、以下の条件にてゲル濾過分画を行
い、分画フラクション(フラクション1~10)を得た。
【0053】
HPLC分析用ゲル濾過法の条件は以下の通りであった。
<HPLC分析用ゲル濾過法分析条件>
カラム:Superdex 75 10/300(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:100μL
溶離液組成:50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、20%(v/v)アセトニトリ
ル、150mM NaCl
流速:0.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
【0054】
分画液のタンパク定量は参考例1(4)に記載のローリー法により行った。
【0055】
(4)HPLC分析用ゲル濾過法による分子量の測定
ア HPLC分析用ゲル濾過のサンプル調製
上記(3)で得られた分画フラクション(フラクション1~10)をサンプルとして使
用した。
【0056】
イ 分子量の検量線作成
上記HPLC分析用ゲル濾過条件記載のカラム、溶離液、流速、検出波長において、分
子量既知のペプチドを0.1~5mg/mLで適宜超純水に溶解したものを50μL注入
してHPLC分析を行い、保持時間を確認した(表2)。その保持時間、分子量から検量
線(図1)を作成した。
【0057】
【表2】
【0058】
ウ 分子量の算出
分子量測定の結果、フラクション1~10のうちフラクション7に含まれるペプチドは
分子量800~1500Daの範囲であることが確認された。
【0059】
(5)分子量800~1500Daのペプチド比率の算出
分子量800~1500Daのペプチド比率は各分画フラクションにおける製品相当の
ペプチド濃度を用いて以下の算出式にて求めた。
【数1】
【0060】
試醸品ペプチド比率は表3に示される通りであった。
【0061】
(6)糖質濃度およびオリジナルエキス濃度の分析
試醸品の糖質濃度の測定は前記の通り栄養表示基準に基づいて行った。結果は表3に示
される通りであった。また、試醸品のオリジナルエキス濃度(OE濃度)はBCОJビー
ル分析法(ビール酒造組合(2013年)、8.3.6、8.4.3および8.5に準じ
て測定した。測定はアルコライザー(アントンパール社製)を用いて行った。
【0062】
(7)官能評価
上記(1)で製造したビールテイスト発酵アルコール飲料(麦芽使用比率50%)に上
記(2)で得られたペプチド画分を添加しない試験区(試醸品)と添加する試験区(添加
品1~9)を設け、800~1500Daのペプチド濃度が表3のように調整されたサン
プル飲料(サンプル番号1~10)を調製した。
【0063】
官能評価は5名の訓練されたパネラーにより実施した。具体的には、「味の厚み」およ
び「雑味」について1~9点の0.5点刻みによる17段階で評価を行い、パネラー5名
の評価スコアの平均値を計算した。ここで、「味の厚み」とは、味の広がり、複雑さ、ボ
ディ感付与等により認識される香味感覚をいう。「味の厚み」についてはサンプル番号1
のサンプル飲料を1点(味の厚みがない)、サンプル番号6のサンプル飲料を5点(味の
厚みがある)とし、1.5点以上を味の厚みが向上したと判断した。また、「雑味」とは
、渋味・エグ味・収斂味をいう。「雑味」についてはサンプル番号1のサンプル飲料を1
点(雑味なし)、サンプル番号6のサンプル飲料を3点(多少の渋味)とし、4.0点以
上を渋味が向上したと判断した。
【0064】
「味の厚み」と「雑味の有無」についての官能評価結果に基づいて、以下の基準で総合
評価を行った。
◎:味の厚みが向上し(2.5点以上)、雑味が少ないもの(4.0点未満)
○:味の厚みがやや向上し(1.5点以上)、雑味が少ないもの(4.0点未満)または
味の厚みが向上するものの(2.5点以上)、雑味があるもの(4.0点以上)
×:味の厚みが向上していないもの(1.5点未満)
【0065】
官能評価の結果は表3および4と図2に示される通りであった。
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
表3の結果から、糖質濃度が0.5g/100mL未満の糖質ゼロビールテイスト発酵
アルコール飲料(麦芽使用比率50%)であっても、800~1500Daのペプチド比
率を高めることにより「味の厚み」が向上することが確認された。
図1
図2