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特許7392015誘電分散のないニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】誘電分散のないニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/495 20060101AFI20231128BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20231128BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20231128BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20231128BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20231128BHJP
   H01G 4/10 20060101ALI20231128BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20231128BHJP
   H01G 7/00 20060101ALI20231128BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C04B35/495
C01G33/00 A
H01B3/12 313Z
H01G4/12 540
H01G4/30 515
H01G4/30 544
H01G4/30 547
H01G4/10
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
H01G4/33 102
H01G7/00 Z
H01L29/78 617T
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022034083
(22)【出願日】2022-03-07
(65)【公開番号】P2022173061
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0059379
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2021年3月8日 ウェブサイト https://doi.org/10.1016/j.ceramint.2021.03.046にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジウォン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンユン・ガン
(72)【発明者】
【氏名】スンヒョプ・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ソングン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンチョル・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンホ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソンフン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヘナ・イム
(72)【発明者】
【氏名】ソヨン・ユ
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-335716(JP,A)
【文献】特開2021-063003(JP,A)
【文献】特開2012-240884(JP,A)
【文献】So Yeon Yoo,Design of dispersion-free dielectrics as engineering perovskite unit cells of KCa2Li(n-3)NbnO3n+1 ceramics,Ceramics International,2021年03月08日,vol.47,p.17331-17336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/495
C01G 33/00
H01B 3/12
H01G 4/12
H01G 4/30
H01G 4/10
H01G 4/33
H01G 7/00
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
[化学式1]
KCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
【請求項2】
請求項1に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物のKイオンがHイオンでカチオン置換された、化学式2で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
[化学式2]
HCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
【請求項3】
前記化学式2で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体は、板状の粒子が積層された層状構造を有する、請求項2に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物のHイオンが脱落した、化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
【請求項5】
前記化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体は、ナノシート状を有する、請求項4に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
【請求項6】
前記ナノシートは、50nm~50μmの平均直径及び10nm以下の厚さを有する、請求項に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
【請求項7】
前記ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物は、10~10Hzの周波数範囲で、100以下の誘電定数及び0.25以下の誘電損失を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
【請求項8】
前記ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物は、10~10の周波数範囲で、90以下の誘電定数及び0.02以下の誘電損失を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物。
【請求項9】
請求項4に記載の化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体が積層された、ナノシート薄膜。
【請求項10】
請求項9に記載のナノシート薄膜を含む、キャパシタ。
【請求項11】
請求項9に記載のナノシート薄膜を含む、チューニング可能な素子。
【請求項12】
請求項9に記載のナノシート薄膜を含む、トランジスタ用ゲート。
【請求項13】
カリウム前駆体、カルシウム前駆体、リチウム前駆体、及びニオビオム酸化物を混合及び仮焼して、化学式1で表される組成を有する誘電体を形成する段階を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法。
[化学式1]
KCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
【請求項14】
前記化学式1で表される誘電体を酸性溶液で撹拌してKイオンをHイオンでカチオン置換させて、化学式2で表される組成を有する誘電体を形成する段階を更に含む、請求項13に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法。
[化学式2]
HCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
【請求項15】
前記化学式2で表される誘電体を水酸化物溶液で撹拌して、化学式3で表される組成を有する誘電体を形成する段階を更に含む、請求項14に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法。
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
【請求項16】
前記化学式3で表される組成を有する誘電体は、化学式2で表される組成を有するバルク誘電体が剥離されたナノシート状を有する、請求項15に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法。
【請求項17】
前記仮焼は800~1200℃の温度範囲で行われる、請求項13に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法。
【請求項18】
形成された化学式1で表される組成を有する誘電体を1100~1150℃の空気雰囲気下で焼結する、請求項13に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法。
【請求項19】
前記水酸化物溶液は、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAOH)、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(TPAOH)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAOH)、及びテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAOH)から構成される群より選択される一種以上の溶液である、請求項15に記載のニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法。
【請求項20】
化学式3で表される組成を有するナノシート状の誘電体から電気泳動法又はラングミュア・ブロジェット法でナノシート薄膜を形成する、ナノシート薄膜の製造方法。
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、広い周波数領域で高誘電率と低誘電損失特性を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コードレス電話機や移動通信端末のデュプレクサ(Duplexer)、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter)、多層回路基板、マイクロ波帯の共振器やフィルタ、コンピュータ用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)といった電子部品及び積層セラミックコンデンサ(MLCC、multilayer ceramic capacitor)の集積化、超小型化に伴い、それらの中に用いられる誘電体材料もまた小型化、高性能化及び安定化が求められている。さらには、集積化や柔軟化、超軽量化の傾向に合わせて微細且つ安定した特性を示し得る新規な物質を見出すための研究が進んでいる。
【0003】
最近、酸化物ナノシートは、多様な組成及び構造にて容易に製造でき且つ電子装置に適合した有用な特性を示すため注目を集めている。特に、ニオブ酸八面体を有するペロブスカイトナノシートを用いて作製した誘電体薄膜も試みられている。層状構造ナノシートは、母組成の化合物から示される種々の特性を更に優れた特性に変換させてナノシートならではの特性を発現する。次世代デバイスに適合したナノシート材料の母組成としては、KCaNbO、KTiNbO、KLaNbO、KCaNaNbOなどの種々のペロブスカイト物質が報告されている。
【0004】
また、MLCCなどを具現するためには、誘電体の容量を決める内部電極の面積を広げ且つ電極と誘電体の厚さを低減させるべきことは必須であるが、従来技術によれば、誘電体の厚さを低減するには大きな限界がある。MLCCの誘電体材料としては、高い誘電定数を持つBaTiO、SrTiO、CaTiO、あるいはこれらを組み合わせた組成などのチタン酸化物が主に用いられている。しかし、このようなチタン酸化物誘電体物質の場合、球形の粒子で合成されるため、既存の誘電体膜を成膜する技術によれば、薄膜の作製後の熱処理工程の際に、基板界面の劣化、組成のずれ、多くの粒界面を有するという問題によって非線形的な誘電特性(non-linear electric property、ΔC/C)を引き起こし高い誘電損失を示す。さらに、誘電体層が1~3μm程度まで薄層化すると、絶縁性や高温負荷時の耐久性が悪化して信頼性低下をもたらすようになるため、これらの材料の場合には、高容量化を目標とするナノ厚さレベルのMLCCに適用され難い。
【0005】
また、既存の誘電体材料を合成してMLCC構成単位を作製するスクリーン印刷方式(シートに電極ペーストを印刷して多層に積層し切断した後に高温焼結を行う工程)によって薄膜化及び高積層化、小型化を具現するには限界がある。したがって、次世代デバイスへの適用が可能なMLCCの具現のためには、ナノ厚さレベルの薄膜でも安定した特性を有する誘電体ナノシートだけではなく多様な特性を有するナノシートのために広い周波数領域で安定した誘電特性を示し且つ多様な組成を有するペロブスカイト層状構造の母材料の研究開発の必要性が台頭してきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の具現例は、このような問題点を解決するために高誘電率と低誘電損失の誘電特性を有する誘電体組成物を提供することをその目的とする。
【0007】
また、層状出発粒子を球形ではないシート状に作製する場合に粒界面を極力低減できるのみならず、結晶質のシートを用いる場合に熱処理工程が不要となって基板と誘電物質間の劣化問題を解決することをその目的とする。
【0008】
さらに、これによって積層セラミックキャパシタ、チューニング可能な素子、及びトランジスタ用ゲートなどの多様な種類の電子機器に用いることができ、従来の材料に代え得る新規な材料を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る一具現例においては、化学式1で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物を提供する。
【0010】
[化学式1]
KCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
また、前述したニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物のKイオンがHイオンでカチオン置換された、化学式2で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体;を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物を提供する。
【0011】
[化学式2]
HCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
一具現例において、前記化学式2で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体は、板状の粒子が積層された層状構造を有してよい。
【0012】
また、前述したニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物のHイオンが脱落した、化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体;を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物を提供する。
【0013】
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
一具現例において、前記化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体は、ナノシート状を有してよい。
【0014】
一具現例において、前記ナノシートは、50nm~50μmの平均直径及び10nm以下の厚さを有してよい。
【0015】
一具現例において、前記ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物は、10~10Hzの周波数範囲で、100以下の誘電定数及び0.25以下の誘電損失を有してよい。
【0016】
一具現例において、前記ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物は、10~10の周波数範囲で、90以下の誘電定数及び0.02以下の誘電損失を有してよい。
【0017】
本発明に係る一具現例において、前述した化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体が積層された、ナノシート薄膜を提供する。
【0018】
また、前述したナノシート薄膜を含む、キャパシタ、チューニング可能な素子、及びトランジスタ用ゲートを提供する。
【0019】
本発明に係る他の具現例において、カリウム前駆体、カルシウム前駆体、リチウム前駆体、及びニオビオム酸化物を混合及び仮焼して化学式1で表される組成を有する誘電体を形成する段階;を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法を提供する。
【0020】
[化学式1]
KCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20 x+y=3)
一具現例において、前記化学式1で表される誘電体を酸性溶液で撹拌してKイオンをHイオンでカチオン置換させて、化学式2で表される組成を有する誘電体を形成する段階;を更に含んでよい。
【0021】
[化学式2]
HCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20 x+y=3)
一具現例において、前記化学式2で表される誘電体を水酸化物溶液で撹拌して、化学式3で表される組成を有する誘電体を形成する段階を更に含んでよい。
【0022】
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20 x+y=3)
一具現例において、前記化学式3で表される組成を有する誘電体は、化学式2で表される組成を有するバルク誘電体が剥離されたナノシート状を有してよい。
【0023】
一具現例において、前記仮焼は、800~~1200℃の温度範囲で行われてよい。
【0024】
一具現例において、形成された化学式1で表される組成を有する誘電体を1100~1150℃の空気雰囲気下で焼結してよい。
【0025】
一具現例において、前記水酸化物溶液は、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAOH)、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(TPAOH)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAOH)、及びテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAOH)から構成される群より選択される一種以上の溶液であってよい。
【0026】
本発明に係る他の具現例において、化学式3で表される組成を有するナノシート状の誘電体を電気泳動法又はラングミュア・ブロジェット法でナノシート薄膜を形成する、ナノシート薄膜の製造方法が提供される。
【0027】
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20 x+y=3)
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物は、誘電率が大きく誘電損失は低い特性を有すると共に、ナノレベルの厚さでも線形的且つ優れた誘電率を有し絶縁特性を実現することができる、低温素子の作製に応用可能なナノシート状の誘電物質を提供することができる。また、出発粒子を球形ではないシート状に作製することで粒界面を極力低減できるのみならず、結晶質のシートを用いる場合に熱処理工程を不要とする長所を有する。
【0029】
また、従来の誘電体素子の製造工程で求められていた真空装置や高価の蒸着装備を不要とするため、低コスト及び早期作製時間を充足する素子の製造工程の設計を可能にした。
【0030】
さらに、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体の合成条件に応じてナノシートの大きさが調節でき、用途に適合した大きさのナノシートを合成可能な技術を提供し、素子に適用する場合により均一な薄膜を作製できる方法を提供する。
【0031】
したがって、従来の素子製造工程で生じていた基板と誘電物質間の劣化問題が解決でき且つ誘電体バルク共振器、積層セラミックキャパシタ、チューニング可能な素子、トランジスタ用ゲート、及びランダムアクセスメモリ素子などといった電子情報機器の広範な分野に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る実施例において種々の温度で合成されたKCaLiNb13サンプルのX線回折分析特性を示した図である。
図2a】本発明に係る実施例においてそれぞれ1100℃(図2a)、1125℃(図2b)、1150℃(図2c)の焼結温度で製造されたKCaLiNb13サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した図である。
図2b】本発明に係る実施例においてそれぞれ1100℃(図2a)、1125℃(図2b)、1150℃(図2c)の焼結温度で製造されたKCaLiNb13サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した図である。
図2c】本発明に係る実施例においてそれぞれ1100℃(図2a)、1125℃(図2b)、1150℃(図2c)の焼結温度で製造されたKCaLiNb13サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した図である。
図3】本発明に係る実施例においてKCaLiNb13の透過電子顕微鏡(TEM)写真を示した図である。
図4a】本発明に係る実施例においてKCaLiNb13の誘電定数値を示した図である。
図4b】本発明に係る実施例においてKCaLiNb13の誘電損失値を示した図である。
図5a】本発明に係る実施例においてLi挿入によるKCaLiNb13の誘電特性及び周波数変化に応じた安定性を比較して示した図である。
図5b】本発明に係る実施例においてLi挿入によるKCaLiNb13の誘電特性及び周波数変化に応じた安定性を比較して示した図である。
図6a】本発明に係る実施例においてCaLiNb13ナノシートのAFM写真を示した図である。
図6b】本発明に係る実施例においてCaLiNb13ナノシートのAFM写真を示した図である。
【0033】
[発明を実施するための具体的な内容]
以下、本発明の実施例をより詳しく説明することにする。
【0034】
本文に開示されている本発明の実施例は、単に説明のための目的から例示されたものであるに過ぎず、本発明の実施例は種々の形態で実施されてよく、本文に説明された実施例に限定されると解釈されてはいけない。
【0035】
本発明は、種々の変更を加えることができ且つ種々の形態を有し得るところ、実施例は本発明を特定の開示形態に限定するためのものではなく、本発明の思想や技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0036】
単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味となっていない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせてなるものが存在することを指定するために用いたものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせてなるものなどの存在又は付加可能性を予め排除するために用いたものではない理解されるべきである。
【0037】
本発明の具現例では、ニオブ酸層を含むペロブスカイト構造層が増えるほど高い誘電性を呈し且つナノレベルの薄膜でも誘電体ナノ材料としての応用が可能である点を基にして、二重層状ペロブスカイト構造を有するKCaNb10セラミック組成物と単一のペロブスカイト構造を有するLiNbOを合成して一般式KCaLiNb13(KCLNO)で表される誘電特性を有する物質を効率的に製造することに関して多様な検討を行って合成した。
【0038】
ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物
前述した目的を達成するために、本発明に係る一具現例において、化学式1で表される組成(KCLNO)を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体;を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物を提供する。
【0039】
[化学式1]
KCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20 x+y=3)
また、前述したニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物のKイオンがHイオンでカチオン置換された、化学式2で表される組成(HCLNO)を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体;を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物を提供する。
【0040】
[化学式2]
HCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20 x+y=3)
一具現例において、前記化学式2で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体は、板状の粒子が積層された層状構造を有してよい。例えば、層あたり4層の単位格子を有する積層された層状構造を有してよい。具体的に、前記ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体は、Li挿入による追加合成によって集合層を4層に変更させたものであってよい。一方、Liを挿入していないニオブ酸誘電体、例えば、KCaNb10の場合、ペロブスカイト構造の八面体単位格子の集合層が3層に過ぎず、他の層状構造を有し得る。かかる層状構造の違いによって誘電定数が増加し誘電損失は低減し、且つ周波数に応じた誘電率の分散が少ないという特徴を有し得る。
【0041】
また、前述したニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物のHイオンが脱落した、化学式3で表される組成(CLNO)を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体;を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物を提供する。
【0042】
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
一具現例において、前記化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体はナノシート状を有してよい。
【0043】
一具現例において、前記ナノシートは、50nm~50μmの平均直径及び10nm以下の厚さを有してよい。前記ナノシートが前述した平均直径と厚さ範囲を有する場合、高い誘電特性及び周波数変化に応じた優れた安定性を有し得る。
【0044】
一具現例において、前記ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物は、10~10Hzの周波数範囲で、100以下の誘電定数及び0.25以下の誘電損失を有してよい。例えば、10~10Hzの周波数範囲で、90以下の誘電定数及び0.02以下の誘電損失を有してよい。一方、前記ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体は、周波数変化に応じた誘電定数と誘電損失の変化を有し得る。すなわち、周波数に応じたこれらの値の分散(dispersion)が少ない特徴を有し得る。例えば、前記10~10Hzの周波数範囲で、60~70の誘電定数と0.02以下の誘電損失を有し得る。よって、広い周波数領域で高誘電率と低誘電損失特性を有し得る。
【0045】
本発明に係る一具現例において、前述した化学式3で表される組成を有するニオブ酸カルシウムリチウム誘電体が積層された、ナノシート薄膜を提供する。
【0046】
また、前述したナノシート薄膜を含む、キャパシタ、チューニング可能な素子、及びトランジスタ用ゲートを提供する。このように前述したKCLNO誘電体物質は、広い範囲で誘電特性を示すことからナノシートセラミックキャパシタ、チューニング可能な素子、及び次世代TFTの誘電膜などに用いられ得る。
【0047】
したがって、本発明の具現例は、一般式KCaLiNb13(KCLNO)で表される組成物を提供し、KイオンをHイオンで置換してから仮焼して、一般式HCaLiNb13(HCLNO)で表される誘電体組成物を提供する。また、ナノレベルの誘電体膜への応用のためにHイオンをTBAイオンで置換してから剥離して、一般式CaLiNb13(CLNO)で表されるニオブ酸系誘電体ナノシートを提供する。
【0048】
ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法
本発明に係る他の具現例において、カリウム前駆体、カルシウム前駆体、リチウム前駆体、及びニオビオム酸化物を混合及び仮焼して、化学式1で表される組成を有する誘電体を形成する段階;を含む、ニオブ酸カルシウムリチウム誘電体組成物の製造方法を提供する。
【0049】
[化学式1]
KCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20)
先ず、カリウム前駆体、カルシウム前駆体、リチウム前駆体、及びニオビオム酸化物を混合してから仮焼してよい。
【0050】
前記カリウム前駆体、カルシウム前駆体、リチウム前駆体は、それぞれカリウム化合物、カルシウム化合物、リチウム化合物であれば、それらの種類は限定されるものではない。具体的に、それぞれKCO、CaCO、及びLiNbOであってよいが、これらに限定されるものではない。前記カリウム前駆体、カルシウム前駆体、リチウム前駆体、及びニオビオム酸化物は、純度99%以上のものが好ましい。
【0051】
例えば、KCO、CaCO、LiNbO、及びNbを用いて、一般式KCaLiNb13(1.80≦x≦2.20、0.80≦y≦1.20)を満たす組成比にて秤量した後、エタノールを溶媒にしてジルコニアボールとともにボールミル工程にて湿式混合後、100℃のオーブンで乾燥してから、1100℃で仮焼して収得してよい。
【0052】
具体的に、純度99%以上のKCO、CaCO、及びNbを用いて、一般式KCaNb10を満たす組成比にて秤量した後、エタノールを溶媒にしてジルコニアボールとともにボールミル工程にて湿式混合後、100℃のオーブンで乾燥し、1200℃で仮焼してKCNOを得た後、該組成物に他の合成物であるLiNbOを一般式KCaLiNb13の組成比に合わせて秤量してジルコニアボールとともにボールミル工程にて湿式混合後、100℃のオーブンで乾燥し、800~1200℃で仮焼してKCLNOを得たものであってよい。
【0053】
次に、前記化学式1で表される誘電体を酸性溶液で撹拌してKイオンをHイオンでカチオン置換させて、化学式2で表される組成を有する誘電体を形成してよい。
【0054】
[化学式2]
HCaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
前記化学式2で表されるHCaLiNb13ニオブ酸誘電体組成物は、前記化学式1で表される誘電体組成物を酸性溶液で撹拌してCaLiNb4O13層の間に一層ずつ挿入されているKイオンをHイオンでカチオン置換させて製造してよい。前記化学式1で表される誘電体組成物を酸性溶液で撹拌すると、KイオンがHイオンで置換されて前記化学式2で表される誘電体組成物を収得することができる。
【0055】
例えば、合成されたKCLNO合成物は、1M~7MのHNO、HCl、HSOなどの酸溶液で5日間撹拌してCLNO層の間に挿入されているKイオンをHイオンで置換したものであってよい。置換済みの溶液を遠心分離機を用いてDI Waterで数回洗浄した後、65℃で24時間乾燥してHCLNOを得てよい。合成されたKCLNO組成物は、100kgf/cmの圧力で直径12mm、高さ0.5~1mmのペレットに成形した後、電気炉を用いて1100~1200℃の空気雰囲気下で焼結(sintering)してよい。
【0056】
前記酸性溶液は特に限定されるものではなくて、例えば、HNO、HCl、HSOなどを用いてよい。
【0057】
例えば、前記化学式1で表される一具現例として、KCaLiNbO13の非線形的な誘電特性を解決するためにHイオンで置換してよい、これにより、合成された前記化学式2のHCaLiNb4O13で表されるニオブ酸誘電体組成物は、高誘電率、低誘電損失だけでなく、広い周波数領域において線形的誘電特性を有し得る。すなわち、本発明に係る化学式2のHCaLiNb4O13で表されるニオブ酸誘電体組成物は、多様な範囲の周波数領域でもキャパシタンスの変化がほとんどなく高誘電率を保ちつつも誘電損失が極めて低い特性を有することを特徴とする。
【0058】
したがって、前記化学式2のHCaLiNb13で表される誘電体物質は、広い範囲で優れた誘電特性を示すことから積層セラミックキャパシタ、マイクロ波誘電体、次世代TFTの誘電膜などに用いられ得る。また、剥離以前のバルク状態でも優れた誘電率を有する特徴があるので、バルク材料としてマイクロ波誘電体などに適用可能である。
【0059】
例示的な具現例において、前記前駆体混合物は、湿式混合して形成してよく、具体的に、ジルコニアボールとともにボールミル工程にて湿式混合して前駆体混合物を形成してよい。
【0060】
次に、前記化学式2で表される誘電体を水酸化物溶液で撹拌して化学式3で表される組成を有する誘電体を形成してよい。
【0061】
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20、x+y=3)
前記化学式3で表されるニオブ酸誘電体組成物は、前記化学式2で表される誘電体組成物を水酸化物溶液で撹拌して製造してよい。
【0062】
一具現例において、前記製造されたナノシート状誘電体組成物から単結晶シートを剥離してよい。例えば、前記化学式2で表される誘電体組成物をテトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAOH)溶液で撹拌して、化学式2のHイオンがTBAイオンに剥離してナノシート薄膜を製造してよい。
【0063】
一具現例において、前記化学式3で表される組成を有する誘電体は、化学式2で表される組成を有するバルク誘電体が剥離されたナノシート状を有してよい。
【0064】
具体的に、HイオンがCaLiNb13層の間に挿入されて層状構造を有している本発明のHCaLiNb13試片をテトラブチルアムモニウム(TBAOH)溶液で数日間撹拌すると、CaLiNb13層の間に存在しているHイオンを、例えばTBAイオンが安定化させ、バルク試片がコロイド化し、HCaLiNb13単結晶シートとして1枚ずつ剥離されるようになる。
【0065】
前記化学式3で表される誘電体組成物は、ナノシート状誘電体組成物であって、ナノ厚さレベルのシート状に剥離することができ、このようなナノ厚さレベルでも高誘電率及び低誘電損失を示す。また、前記化学式3で表される誘電体組成物は線形的誘電特性を有する。
【0066】
一具現例において、前記仮焼は800~1200℃の温度範囲で行われてよい。好ましくは、900~1100℃で行われてよく、より好ましくは、1000~1100℃で行われてよい。前記仮焼温度が800℃未満であると、ペロブスカイト素材に合成されないことがあり、また1200℃を超える場合は、溶ける部分が生じることがある。
【0067】
一具現例において、形成された化学式1で表される組成を有する誘電体を1100~1150℃の空気雰囲気下で焼結してよい。前記焼結温度が1100℃未満であると、誘電体素材の粒子の大きさが小さ過ぎることがあり、また1150℃を超える場合は、溶ける部分が生じることがある。
【0068】
一具現例において、前記水酸化物溶液は特に限定されるものではないが、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAOH)、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(TPAOH)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAOH)、及びテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAOH)から構成される群より選択される一種以上の溶液であってよい。
【0069】
本発明に係る他の具現例において、化学式3で表される組成を有するナノシート状の誘電体を電気泳動法又はラングミュア・ブロジェット法にてナノシート薄膜を形成する、ナノシート薄膜の製造方法が提供される。
【0070】
[化学式3]
CaLiNb13
(前記式中、xは1.80≦x≦2.20、yは0.80≦y≦1.20 x+y=3)
具体的に、化学式3で表されるナノシート状の誘電体を有し、電気泳動法又はラングミュア・ブロジェット法(Langmuir-Blodgett、以下、LB法)にてナノ単層薄膜又はナノシートが積層された多層薄膜を形成してよい。ナノシート薄膜を形成するための方法は、例えば、LBトラフ(Langmuir-Blodgett trough)の水面上に剥離されたナノシートを分散して規則的なナノ構造の単層膜を形成するようにバリアを用いて圧縮し、Au、Pt、ITO、SROなどの金属又は酸化物電極が蒸着された適宜な基板を水平又は垂直下降させて単層膜を転移させる過程を含んでよい。
【0071】
一方、電気泳動法及びLB法をにて単層膜或いは多層膜も作製することができる。このように作製されたCLNOナノシート膜はナノレベルで今後の次世代デバイスに適用することができる。
【0072】
実施例
以下、実施例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明に関する理解を助けるために例示の目的で提供されるだけのものであり、本発明の範疇及び範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0073】
実施例1:KCaLiNb13物質の合成
KCaLiNb13で表される主な成分の組成物を満たす誘電体セラミック物質を合成するために、純度99%以上のKCO、CaCO、Nb、及びLiNbOを用意する。
【0074】
次に、一般式KCaNb10を満たす組成比にて各物質を秤量した後、エタノールを溶媒にしてジルコニアボールとともにボールミル工程にて24時間湿式混合する。その後、100℃のオーブンでエタノールを全て乾燥してから乾式粉砕し、粉砕された物質を1200℃で10時間仮焼してKCaNb10を得る。
【0075】
得られたKCaNb10とLiNbOを一般式KCaLiNb13を満たす組成比にて秤量し、エタノールを溶媒にしてジルコニアボールとともにボールミル工程にて24時間湿式混合する。800~1200℃の温度で仮焼する。
【0076】
得られたKCaLiNb13誘電体組成物を100kgf/cmの圧力で直径12mm、高さ0.5~1mmのペレットに成形し、1100~1150℃の空気雰囲気下で焼結(sintering)した。焼結されたペレット状のセラミック誘電体を測定するために、両端面に導電性ペーストを塗布し、600℃で熱処理を施した。
【0077】
試験例1:KCaLiNb13誘電体特性
実施例1で用意されたニオブ酸カルシウムリチウム誘電体試片を、Agilent Technologies社のインピーダンス・アナライザ(Impedance Analyzer)で測定してその特性を確認し、その結果を図1図4に示した。
【0078】
図1は、実施例1に係るKCaLiNb13のX線回折分析特性を示したものであって、横軸は2シータ(theta)、縦軸は回折ピークの強度を示している。これより仮焼温度の変化にも相の変化が大きくないことが分かる。しかし、900℃と1200℃の仮焼X線回折分析ピークは、八面体4層の構造と異なる層の物質が混在されていることが分かる。
【0079】
図2は、実施例1に係るKCaLiNb13焼結体の走査電子顕微鏡写真を示している。図2から誘電体セラミック物質が層状構造を有していることを確認することができ、板状の粒子を形成したことが示されている。このような走査電子顕微鏡による測定結果は、先のX線回折分析ともよく符合する。
【0080】
図3は、実施例1に係るKCaLiNb13焼結体の透過電子顕微鏡写真を示しており、これより焼結体が層あたり4層の単位格子を有していることを確認することができる。
【0081】
次に、図4aと4bは、実施例1に係るKCaLiNb13誘電特性を測定した結果を示している。仮焼は1000℃で、焼結は1100~1150℃で施して誘電率及び誘電損失を測定した結果である。誘電率及び誘電損失を測定した結果、周波数の変化に応じた安定した値を示していることが分かる。
【0082】
また、図5aと5bは、Li挿入によるKCaLiNb13(KCLNO)の誘電特性及び周波数の変化に応じた安定性を比べた結果を示している。図5aでは誘電定数を、図5bでは誘電損失値をそれぞれ示しており、Liを挿入して集合層が4層であるペロブスカイト層を有する場合(KCLNO)が、3層ペロブスカイト層を有する場合(KCaNb10、KCNO)やLiの代わりにNaを挿入する場合(KCaNaNb13、KCNNO)に比べて、高い誘電特性及び周波数の変化に応じた優れた安定性を示すことを確認することができる。
【0083】
実施例2:HCaLiNb13物質の合成
実施例1で合成されたKCaLiNb13粉末を4MのHCl溶液で7日間マグネチック撹拌機を用いて撹拌してKイオンをHイオンで置換させる。置換済みの溶液は遠心分離機を用いてDI Waterで数回洗浄する。洗浄する間にPHメータを用いて溶液のPH濃度が中性に近づいたかを確認する。その後、65℃で24時間乾燥すると、HCaLiNb13を得ることができる。
【0084】
実施例3:CaLiNb13物質の合成及び薄膜LBを用いた薄膜の蒸着
次に、実施例2で得られたHCaLiNb13セラミック物質を用いてH:TBA=1:1の比でテトラブチルアムモニウム水酸化物を添加し、室温で7~14日間撹拌反応させて、組成式CaLiNb13で表されるペロブスカイトナノシートが分散された不透明のコロイド溶液を作製し、得られたコロイドのAFM写真を図6に示した。
【0085】
次いで、得られたナノシートコロイド溶液をLBトラフに満たされた超純水に分散させた。該分散溶液を展開後、水面の安定及び下層液の温度が一定になることを目的に30分間の安定化時間をもたせた後、Au、Pt、ITO、SRO、Nb-STOなどの用意した基板を利用して垂直又は水平下降させ、バリアは両側から表面圧力を維持させるだけの1mm/minの速度で圧縮して基板の表面に単層膜を転移させた。このような方法を数回繰り返して所望の層数を有するペロブスカイトナノシート薄膜を作製し、作製された薄膜はUV処理を施して有機ポリマーを除去した。
【0086】
図6a及び6bは、製造されたCaLiNb13ナノシートのAFM写真を示し、図5から4層の単分子層を有するナノシートの姿を見ることができ、単分子層として存在することを確認することができる。
【0087】
前述した本発明の実施例は本発明の技術的思想を限定すると解釈されてはいけない。本発明の保護範囲は請求の範囲に記載された事項によって制限され、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を種々の形態に改良変更することが可能である。したがって、このような改良及び変更が通常の知識を有する者にとって自明なことである限り、本発明の保護範囲に属するといえる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b