(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】レーダーリミッタ歪み補償
(51)【国際特許分類】
H04L 5/02 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
H04L5/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022035589
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン ワトキンス
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0235857(US,A1)
【文献】特開2017-225105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0266245(US,A1)
【文献】福本 めぐみ ほか,全二重MIMO通信を用いた無線LANのためのメディアアクセス制御プロトコル,マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2013)シンポジウム論文集,2013年07月,第2013巻,第2号,pp.522~529
【文献】猿渡 俊介 ほか,全二重無線通信の実用化に向けた課題と可能性,電子情報通信学会誌,2018年04月,第101巻,第4号,pp.387~393
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 5/02
G01S 7/03
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全二重無線装置であって、
所定の長さ未満のパルス幅と前記長さ以上のパルス期間を有する送信信号を送信するように構成された、アンテナと結合する送信経路と、
受信信号を受信するように構成された、前記アンテナと結合する受信経路と、
前記受信経路が分岐した一方の受信経路であって前記受信信号のうち、前記パルス幅に対応する第1の信号を検出するための第1受信経路と、
前記受信経路が分岐した他方の受信経路であって前記受信信号のうち、前記パルス期間に対応する第2の信号を検出するための第2受信経路と、ここで前記第2受信経路は、無線周波数リミッタを備え、
可変インピーダンスコンポーネントと、
第1のポート、第2のポート、第3のポート、及び第4のポートを備える第1の方向性結合器と、
第5のポート、第6のポート、及び第7のポートを備える第2の方向性結合器と、
前記第1の方向性結合器を介して前記受信経路と、前記第2の方向性結合器を介して前記送信経路とからそれぞれ信号を入力し、前記受信信号における自己干渉の少なくとも一部分を除去して前記第1受信経路に信号を出力するように構成された自己干渉除去回路と、を備え、
前記第1のポートは前記第2のポートに結合され、前記第3のポートは前記第4のポートに結合され、
前記第1のポートは、前記受信経路に結合され、
前記第2のポートは、前記第2受信経路の前記無線周波数リミッタに結合され、
前記第3のポートは、前記自己干渉除去回路に結合され、
前記第4のポートは、前記可変インピーダンスコンポーネントに結合され、
前記第5のポートは前記第6のポートと結合され、
前記第5のポートは前記送信経路に結合され、
前記第6のポートは前記アンテナに結合され、
前記第7のポートは前記自己干渉除去回路に結合される、全二重無線装置。
【請求項2】
前記可変インピーダンスコンポーネントは、
前記可変インピーダンスコンポーネントの位相を制御するように構成された可変位相シフタと、
前記可変インピーダンスコンポーネントの振幅を制御するように構成された可変抵抗とのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の全二重無線装置。
【請求項3】
前記可変位相シフタによって提供される位相シフトを変化させることと、
前記可変抵抗によって提供される減衰の量を変化させることとのうちの少なくとも1つによって、前記可変インピーダンスコンポーネントのインピーダンスを同調するように構成された制御装置をさらに備える、請求項2に記載の全二重無線装置。
【請求項4】
前記可変インピーダンスコンポーネントは、前記可変位相シフタ及び可変減衰器を備え、
前記可変位相シフタの入力は、前記第1の方向性結合器の第4のポートに結合され、
前記可変抵抗の入力は、前記可変位相シフタの出力に結合され、
前記可変抵抗の出力は、アースに結合される、請求項2に記載の全二重無線装置。
【請求項5】
前記可変インピーダンスコンポーネントは、前記可変位相シフタと可変減衰器とを備え、
前記可変位相シフタは、
第8のポート、第9のポート、第10のポート、及び第11のポートを備えるハイブリッド結合器と、
第1のバラクタダイオードと、
第2のバラクタダイオードとを備え、
前記ハイブリッド結合器の第8のポートは、前記第1の方向性結合器の第4のポートに結合され、
前記ハイブリッド結合器の第9のポートは、前記第1のバラクタダイオードのアノードに結合され、
前記ハイブリッド結合器の第10のポートは、前記第2のバラクタダイオードのアノードに結合され、
前記第1のバラクタダイオードのカソードと前記第2のバラクタダイオードのカソードは、位相制御入力に結合され、
前記可変抵抗は、
第1の端子と第2の端子とを備えるキャパシタと、ここで、前記第1の端子は前記ハイブリッド結合器の第11のポートに結合され、
PINダイオードとを備え、
前記PINダイオードのアノードは、前記キャパシタの第2の端子と振幅制御入力に結合され、
前記PINダイオードのカソードは、アースに結合される、請求項2に記載の全二重無線装置。
【請求項6】
制御装置は、
前記位相制御入力に印加される位相制御信号の振幅を調節することと、
前記振幅制御入力に印加される電圧制御信号の振幅を調節することとのうちの少なくとも1つによって前記可変インピーダンスコンポーネントの可変インピーダンスを同調するように構成されている、請求項5に記載の全二重無線装置。
【請求項7】
前記可変インピーダンスコンポーネントは、可変遅延線と可変減衰器とを備え、
前記可変遅延線の入力は、前記第1の方向性結合器の第4のポートに結合され、
前記可変遅延線の出力は、前記可変減衰器の入力に結合され、
前記可変減衰器の出力は、アースに接続される、請求項1に記載の全二重無線装置。
【請求項8】
可変インピーダンスは、
第8のポート、第9のポート、及び第10のポートを備える電力分割器と、
可変遅延線と、
可変減衰器とを備え、
前記電力分割器の第
8のポートは、前記第1の方向性結合器の第4のポートに結合され、
前記電力分割器の第
9のポートは、前記可変遅延線の入力に結合され、
前記電力分割器の第
10のポートは、前記可変減衰器の入力に結合され、
前記可変遅延線の出力は、前記可変減衰器の出力に結合される、請求項1に記載の全二重無線装置。
【請求項9】
前記送信経路は、前記アンテナを介して前記送信信号を送信するように構成され、
前記受信経路は、前記アンテナを介して前記受信信号を受信するように構成される、請求項1に記載の全二重無線装置。
【請求項10】
前記自己干渉除去回路は、
可変減衰器と、
可変位相シフタと、
第1の入力、第2の入力、及び第1の出力を備える信号結合器とを備え、
前記第2の方向性結合器の第7のポートは、前記可変減衰器の入力に結合され、
前記可変減衰器の出力は、前記可変位相シフタの入力に結合され、
前記可変位相シフタの出力は、前記信号結合器の第1の入力に結合され、
前記第1の方向性結合器の第3のポートは、前記信号結合器の第2の入力に結合され、
前記信号結合器の第1の出力は、前記第1受信経路に結合されている、請求項9に記載の全二重無線装置。
【請求項11】
サーキュレーターをさらに備え、前記サーキュレーターは、第8のポート、第9のポート、及び第10のポートを備え、
前記サーキュレーターの第8のポートは、前記第2の方向性結合器の第6のポートに結合され、
前記サーキュレーターの第9のポートは、前記アンテナに結合され、
前記サーキュレーターの第10のポートは、前記第1の方向性結合器の第1のポートに結合されている、請求項10に記載の全二重無線装置。
【請求項12】
前記送信経路は、電力増幅器を備え、
前記第1受信経路は、第2の無線周波数リミッタ及び第1の低ノイズ増幅器を備え、
前記第2受信経路は、第2の低ノイズ増幅器をさらに備える、請求項10に記載の全二重無線装置。
【請求項13】
前記第1受信経路は、全二重動作のために使用される、請求項1に記載の全二重無線装置。
【請求項14】
請求項1に記載の前記全二重無線装置を備えるレーダー。
【請求項15】
請求項1に記載の前記全二重無線装置を備える気象レーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで説明する実施形態は、全二重無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全二重(FD通信)は、同時に同じ周波数におけるワイヤレス信号の同時送受信(STAR)である。全二重(FD)テクノロジーは、さまざまな用途を有している。例えば、全二重(FD)テクノロジーは、802.11ax WiFi標準規格に対するオプションとして承認されている。特に興味深いことは、レーダーにおける、特に動作環境が比較的静的であることによる、気象レーダーにおける全二重(FD)テクノロジーの使用である。
【0003】
既知の全二重(FD)気象レーダーは、気象特徴(例えば、雲の形成)を検出し、2つの受信機経路を備えており、1つの受信機経路は、(ここでは、近い受信経路と呼ばれる)予め定められた距離未満の近いオブジェクトを検出するためのものであり、別の受信機経路は、(ここでは、遠い受信経路と呼ばれる)予め定められた距離より大きいオブジェクトを検出するためのものである。この既知のシステムでは、送信パルスが依然として送信されている間に(反射によってもたらされる)信号が受信されることから、近い受信経路のために全二重(FD)通信を実現することだけが必要である。
【0004】
全二重(FD)テクノロジーを有する既知の課題は、自己干渉の十分な除去を達成することである。高電力送信信号が受信機経路において漏洩するとき、自己干渉は、全二重(FD)テクノロジーにおいて生じる。十分な自己干渉除去(SiC)を達成することは、所望の信号(例えば、離れたオブジェクトからの反射)の検出を可能にし、これは、送信信号よりも何桁も低い電力(100+db)を有している。
【0005】
気象レーダーについて約158デシベル(dB)の自己干渉除去は、約100ワット(W)の大きな送信電力により、送信及び受信経路の間で必要とされる。さらに、いくつかの気象レーダーは、キロワット単位でさらに大きな送信電力を有し、したがって、より高い自己干渉除去が必要とされることがある。
【0006】
自己干渉除去(SiC)を達成するための1つの方法は、無線周波数(RF)除去とデジタルベースバンド除去の組み合わせを使用することである。無線周波数(RF)除去は、受信信号が低ノイズ増幅器(LNA)に入るより前に生じる。無線周波数(RF)除去は、アナログドメインにおいて自己干渉のおおよそのレプリカを生成するために、送信信号の振幅及び移相を調節することを伴うことが多い。この信号は、受信信号中に存在する自己干渉を除去するために(少なくとも部分的に)使用される。しかしながら、自己干渉は、全二重(FD)システムにおいて生じる歪みの唯一の形態ではない。
【0007】
近い受信経路と遠い受信経路の両方は、これらの低ノイズ増幅器(LNA)へ過負荷及び損傷を防ぐためのリミッタを含む。リミッタは、排他的ではないが、ダイオードを使用して実現されることが多いが非線形コンポーネントである。リミッタは、受信信号において歪みをもたらすことが多い。この歪みは、無線周波数(RF)自己干渉除去(SiC)を使用することによって除去することはできない。なぜなら、歪みは(除去信号を発生させるために自己干渉除去フィルタによって実質的に使用される)送信経路において現れる信号に関連していないからである。
【0008】
この観点から、全二重(FD)通信システムにおけるリミッタの歪みの影響を低減させる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
実施形態の構成は、例として作成され、図面と共に解釈される以下の詳細な説明からより完全に理解され、認識されるだろう。
【
図2】
図2は、レーダー送信信号の例を示している。
【
図3】
図3は、全二重(FD)レーダーシステムを示している。
【
図4A】
図4Aは、レーダーパルス上の歪みの影響を示している。
【
図4B】
図4Bは、自己干渉除去回路の出力上の歪みの影響を示している。
【
図5】
図5は、無線周波数(RF)自己干渉除去及び/又はリミッタを有する、並びに有さないレーダーシステムに対するシミュレーションした結果を示している。
【
図6】
図6は、全二重(FD)レーダーシステムにおけるリミッタの歪みの影響を低減させるためのアプローチを示している。
【
図7】
図7は、例にしたがって可変インピーダンスを使用してリミッタの歪み抑制を有する全二重(FD)レーダーシステムを示している。
【
図8A】
図8Aは、例にしたがって可変インピーダンスを発生させるための回路を示している。
【
図8B】
図8Bは、例にしたがって可変インピーダンスを発生させるための回路のインプリメンテーションを示している。
【
図9】
図9は、例及び他の既知のレーダーシステムにしたがう、レーダーシステムの比較の実行を示している。
【
図10A】
図10Aは、別の例にしたがう可変インピーダンスを発生させるための回路を示している。
【
図10B】
図10Bは、さらなる例にしたがう可変インピーダンスを発生させるための回路を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様にしたがうと、全二重無線装置が提供され、第1の信号を送信するように構成された送信経路と、受信信号を受信するように構成された受信経路と、受信信号の第1の期間を観測するための近い受信経路と、受信信号の第2の期間を観測するための遠い受信経路と、遠い受信経路は、無線周波数リミッタを備え、送信経路と近い受信経路との間に結合され、受信信号における自己干渉の少なくとも一部分を除去するように構成された自己干渉除去回路と、可変インピーダンスコンポーネントと、第1のポート、第2のポート、第3のポート、及び第4のポートを備える方向性結合器とを備える。ここで、第1のポートは第1の送信線によって第2のポートに結合され、第3のポートは、第2の送信線によって第4のポートに結合され、ここで、第1のポートは、受信経路に結合され、第2のポートは、遠い受信経路の無線周波数リミッタに結合され、第3のポートは、自己干渉除去回路に結合され、第4のポートは、可変インピーダンスコンポーネントに結合される。
【0011】
実施形態において、第1のポートは入力ポートであり、第2のポートは送信されるポートであり、第3のポートは結合されるポートであり、第4のポートは分離されるポートである。
【0012】
実施形態において、結合されることは電気的に接続されることを含む。
【0013】
実施形態において、近い受信経路は低ノイズ増幅器を備える受信機チェーンであり、近い受信経路は、第1の信号が送信されている間、受信信号を観測するように構成されている。
【0014】
実施形態において、第1のポートに入力される信号の一部分が第3のポートに結合されるように方向性結合器は構成され、第1のポートに入力される信号の大部分引く第3のポートに結合される部分は、第2のポートに出力される。
【0015】
実施形態において、可変インピーダンスコンポーネントはアースに結合される。
実施形態において、可変インピーダンスコンポーネントは自己干渉除去回路に結合されない。実施形態において、方向性結合器の第3の部分のみが自己干渉除去回路に結合される。
【0016】
実施形態において、可変インピーダンスコンポーネントは、可変インピーダンスコンポーネントの位相を制御するように構成された可変位相シフタと、可変インピーダンスコンポーネントの振幅を制御するように構成された可変抵抗とのうちの少なくとも1つを備える。
【0017】
実施形態において、可変インピーダンスコンポーネントは、可変インピーダンスコンポーネントの位相を制御するように構成された可変位相シフタと、可変インピーダンスコンポーネントの振幅を制御するように構成された可変抵抗とを備える。
【0018】
実施形態において、全二重無線装置は、可変位相シフタによって提供される位相シフトを変化させることと、可変抵抗によって提供される減衰の量を変化させることとのうちの少なくとも1つによって、可変インピーダンスコンポーネントのインピーダンスを同調するように構成された制御装置をさらに備える。
【0019】
実施形態において、可変インピーダンスコンポーネントは、可変位相シフタ及び可変減衰器を備え、可変位相シフタの入力は、方向性結合器の第4のポートに結合され、可変抵抗の入力は、可変位相シフタの出力に結合され、可変抵抗の出力は、アースに結合される。
【0020】
実施形態において、可変インピーダンスコンポーネントは、可変位相シフタと可変減衰器とを備え、ここで、可変位相シフタは、第5のポート、第6のポート、第7のポート、及び第8のポートを備えるハイブリッド結合器と、第1のバラクタダイオードと、第2のバラクタダイオードとを備えている。ここで、ハイブリッド結合器の第5のポートは、方向性結合器の第4のポートに結合され、ハイブリッド結合器の第6のポートは、第1のバラクタダイオードのアノードに結合され、ハイブリッド結合器の第7のポートは、第2のバラクタダイオードのアノードに結合され、第1のバラクタダイオードのカソードと第2のバラクタダイオードのカソードは、位相制御入力に結合されている。可変抵抗は、第1の端子と第2の端子とを備えるキャパシタと、ここで、第1の端子はハイブリッド結合器の第8のポートに結合され、PINダイオードとを備え、ここで、PINダイオードのアノードは、キャパシタの第2の端子と振幅制御入力に結合され、PINダイオードのカソードは、アースに結合される。
【0021】
実施形態において、制御装置は、位相制御入力に印加される移送制御信号の振幅を調節することと、振幅制御入力に印加される電圧制御信号の振幅を調節することとのうちの少なくとも1つによって可変インピーダンスコンポーネントの可変インピーダンスを同調するように構成されている。
【0022】
実施形態において、可変インピーダンスコンポーネントは、可変遅延線と可変減衰器とを備え、ここで、可変遅延線の入力は、方向性結合器の第4のポートに結合され、可変遅延線の出力は、可変減衰器の入力に結合され、可変減衰器の出力は、アースに接続される。
【0023】
実施形態において、可変インピーダンスは、第5のポート、第6のポート、及び第7のポートを備える電力分割器と、可変遅延線と、可変減衰器とを備えている。ここで、電力分割器の第5のポートは、方向性結合器の第4のポートに結合され、電力分割器の第6のポートは、可変遅延線の入力に結合され、電力分割器の第7のポートは、可変減衰器の入力に結合され、可変遅延線の出力は、可変減衰器の出力に結合される。
【0024】
実施形態において、電力分割器は、第5のポートに入力される信号を、第6のポートと第7のポートに出力される2つの同等のコンポーネントに分割するように構成されている。
【0025】
実施形態において、全二重無線装置はアンテナをさらに備え、送信経路は、アンテナを介して第1の信号を送信するように構成され、受信経路は、アンテナを介して受信信号を受信するように構成されている。
【0026】
実施形態において、自己干渉除去回路は、第5のポート、第6のポート、及び第7のポートを備える第2の方向性結合器と、ここで、第5のポートは、第3の送信線によって第6のポートに結合され、可変減衰器と、可変位相シフタと、第1の入力、第2の入力、及び第1の出力を備える信号結合器とを備えている。ここで、第2の方向性結合器の第5のポートは、送信経路に結合され、第2の方向性結合器の第6のポートは、アンテナに結合され、第2の方向性結合器の第7のポートは、可変減衰器の入力に結合され、可変減衰器の出力は、可変位相シフタの入力に結合され、可変位相シフタの出力は、信号結合器の第1の入力に結合され、方向性結合器の第3のポートは、信号結合器の第2の入力に結合され、信号結合器の第1の出力は、近い受信経路に結合されている。
【0027】
実施形態において、信号結合器は、第1の入力の信号から第2の入力の信号を減算し、第1の出力の結果を出力するように構成されている。
【0028】
実施形態において、第5のポートは、第2の方向性結合器の入力ポートであり、第6のポートは、第2の方向性結合器の送信されるポートであり、第7のポートは、第2の方向性結合器の結合されるポートである。
【0029】
実施形態において、全二重無線装置はサーキュレーターをさらに備え、サーキュレーターは、第8のポート、第9のポート、及び第10のポートを備えている。ここで、サーキュレーターの第8のポートは、第2の方向性結合器の第6のポートに結合され、サーキュレーターの第9のポートは、アンテナに結合され、サーキュレーターの第10のポートは、方向性結合器の第1のポートに結合されている。
【0030】
実施形態において、サーキュレーターは、信号が入力されたポートの直後のポート上に信号を出力するように構成され、ここで、第9のポートは、第8のポートの直後であり、第10のポートは、第9のポートの直後であり、第8のポートは、第9のポートの直後である。
【0031】
実施形態において、送信経路は、電力増幅器を備え、近い受信経路は、第2のリミッタ及び第1の低ノイズ増幅器を備え、遠い受信経路は、第2の低ノイズ増幅器をさらに備えている。
【0032】
実施形態において、近い受信経路は、全二重動作のために使用される。
【0033】
請求項1に記載の全二重無線装置を備えるレーダーも開示される。
【0034】
請求項1に記載の全二重無線装置を備える気象レーダーも開示される。
【0035】
図1は、レーダーシステムを示している。
図1のレーダーシステムは、レーダーシステムの送信経路に接続されている電力増幅器101を備えている。電力増幅器は、サーキュレーター102に電気的に結合されている。サーキュレーター102は、アンテナ103に結合されている。技術的に知られているように、サーキュレーターは、電子回路において信号フローの方向を制御するために使用される受動的なデバイスである。受信及び送信のための信号アンテナがあることが、レーダーシステムでは一般的である。結果として、サーキュレーター102は、送信経路と受信経路との間に分離を提供するために
図1において使用される。サーキュレーター102は、無線周波数(RF)リミッタ104にも結合されている。無線周波数(RF)リミッタ104は、低ノイズ増幅器(LNA)105に結合され、その出力は、レーダーシステムの受信経路に接続されている。
【0036】
図1のシステムにおいて、無線周波数(RF)リミッタ104は、100ワットに等しいことがある、送信の間に発生する電力から低ノイズ増幅器(LNA)を保護するために提供される。サーキュレーター102は典型的には、送信経路に接続されたポートと受信経路に接続された経路ポートとの間におおよそ20デシベル(dB)の分離を提供する。このケースでは、1ワットの電力がサーキュレーター102を通して低ノイズ増幅器(LNA)105の入力へと漏洩する。さらに、送信信号の後方を反射する、アンテナと送信経路との間にミスマッチがあることが多い。この反射された信号の電力は、サーキュレーター102の漏洩電力と類似したレベルのもの(すなわち、1ワット)であることがある。
【0037】
図2は、レーダー送信信号の例を示す。レーダーシステムは、短パルスを送信する。
図2は、第1のパルス202と第2のパルス203とを備えるレーダー送信信号201を示している。
図2は、縮尺通りではなく、実例目的のみのためのものであることが理解されるだろう。パルス幅(すなわち、エネルギーのパルスの立ち上がり端と立ち下がり端との間で経過する時間)は、典型的に約40μ秒である。レーダー信号の典型的な送信周波数が与えられると、このパルス幅は、その間に最初の6キロメートルについては受信が可能ではない範囲と等しい。結果として、十分な自己干渉除去なしでは6キロメートルよりも近いオブジェクトを観測することが可能ではない。なぜなら、送信信号からの自己干渉は、複数のオブジェクトからの任意の反射を圧倒するからである。
【0038】
パルス期間(すなわち、第1のパルス202立ち上がり端と第2のパルス203の立ち上がり端との間の時間)は、典型的に400μ秒であり、60キロメートルまでの検出を可能にする。送信信号201のパルスは、立ち上がり時間と立ち下がり時間とを規定する。これらは、
図2において線形の傾きとして示されている。段階的な送信を有するように送信信号を成形することは、送信信号がスペクトル放射マスク内に保たれ、規則に従うことを確実にする。
【0039】
6キロメートルを下回る受信が必要とされる場合3つのオプションがある。
【0040】
第1のオプションは、異なる周波数で第2のより短いパルスを送信することである。しかしながら、このアプローチは、周波数リソースを倍にすることを必要とする。
【0041】
第2のオプションは、2つの代替パルスを送信することである。近いオブジェクトを検出するためのより短いパルス幅の第1のパルスと、遠いオブジェクトを検出するためのより長いパルス幅の第2のパルスである。しかしながら、このアプローチは、複雑さを追加し、画像化時間を倍にする(または、画像化レートを半分にする)。
【0042】
第3のアプローチは、全二重(FD)技術を活用することである。このケースでは、近い及び遠いオブジェクトの両方から信号(例えば反射)の受信のために1つの長いパルスを使用することができる。なぜなら、全二重(FD)技術は、レーダーの位相を送信する間に近接場信号を観測することを可能にするからである。
【0043】
図3は、全二重(FD)レーダーシステムを示している。
図3は、単一の周波数チャネルを使用し、2つの受信経路:近い受信経路と遠い受信経路とを備える全二重(FD)レーダーシステムである。
【0044】
詳しくは、
図3は、レーダーシステムの送信経路に電気的に結合された電力増幅器301を示している。電力増幅器は、第1の方向性結合器302にも電気的に結合されている。
【0045】
技術的に知られているように、方向性結合器は、方向性結合器を通して方向性結合器の別のポートに伸長する送信線からの規定された電力の量を結合する受動電子デバイスである。これは、方向性結合器を通して送信線上に存在する信号の割合が回路の別の部分において使用されることを可能にする。
【0046】
方向性結合器は4つのポートを有している。電力が印加される入力ポート(ポート1)。入力ポートからの電力が出力される送信されるポート(ポート2)。入力ポート(ポート1)に印加された電力の一部が現れる結合されるポート(ポート3)及び分離されるポート(ポート4)。結合されるポート(ポート3)は前方に結合されるポートとして呼ばれることがあり、分離されるポート(ポート4)は後方に結合されるポートとして呼ばれることがある。送信されるポート(ポート2)から出力された電力の量は、入力ポート(ポート1)に入力された電力引く結合されるポート(ポート3)に結合された電力の量に等しい。
【0047】
送信されるポート(ポート2)に印加される電力の一部は、分離されるポート(ポート4)に結合され、それにより、逆方向への結合(したがって、「後方に結合されるポート」)を提供する。しかしながら、デバイスは、このモードで通常使用されず、分離されるポート(ポート4)は、通常整合負荷(典型的には50オーム)で終端する。
【0048】
理想的な方向性結合器において、電力が入力ポート(ポート1)上の入力であるとき、第1の部分は送信されるポート(ポート2)に結合され、第2の部分は結合されたポート(ポート3)に結合されるが、分離されるポート(ポート4)には電力は結合されない。同様に、電力が送信されるポート(ポート2)に印加されるとき、電力は入力ポート(ポート1)及び分離されるポート(ポート4)に印加されるが、結合されるポート(ポート3)には電力は結合されない。実際には、背後電力があることが多い(すなわち、電力が入力ポート(ポート1)に入力されるとき、電力は分離されるポート(ポート4)から出力され、及び/又は電力が送信されるポート(ポート2)に入力されるとき、電力は結合されるポート(ポート3)から出力される)。背後電力の量又は意図されない結合は、方向性結合器の指向性に関連する。
【0049】
1つの例では、方向性結合器は、2つの送信線を使用して実現される。第1の送信線は、入力ポート(ポート1)を送信ポート(ポート2)に結合し、第2の送信線は、結合されるポート(ポート3)と分離されるポート(ポート4)とを結合する。第1の送信線と第2の送信線は、互いに十分に近くに(すなわち、互いの近接近内に)位置付けられ、1つの送信線からのエネルギー及びフィールドは、他の送信線と相互作用する。
【0050】
図3において、結合ポート(ポート3)は、自己干渉除去回路に接続され、これは、以下でより詳細に説明される。第1の方向性結合器302の送信されるポート(ポート2)は、サーキュレーター303の第1の端子に電気的に結合される。サーキュレーター303の第2の端子は、アンテナ304に接続される。
【0051】
自己干渉除去(SiC)回路は、第1の方向性結合器302の結合されるポート(ポート3)に接続された可変減衰器305を備える。結合されるポート(302)の出力は、送信信号の結合されたバージョンである基準信号である。可変減衰器は、基準信号を減衰するように構成されている。可変減衰器305の出力は、可変位相シフタ306に電気的に結合されている。可変位相シフタ306は、減衰された基準信号の位相を変化させるように構成されている。可変位相シフタ306の出力は、信号結合器307に結合される。可変減衰器305と可変位相シフタ306は、基準信号の利得と位相を操作するように構成され、所望の信号コンポーネントと自己干渉コンポーネントとを備える受信信号から、信号結合器307によって、修正された基準信号が減算されるとき、システムの自己干渉は、除去される。
【0052】
信号結合器307の出力は、第1の無線周波数(RF)リミッタ308に接続されている。技術的に知られているように、リミッタは、過負荷及び損傷を防ぐために、電力を下流コンポーネントに制限する電子コンポーネントである。第1の無線周波数(RF)リミッタ308の出力は、第1の低ノイズ増幅器309に接続されている。低ノイズ増幅器309は、第1の無線周波数(RF)リミッタ308から出力される信号を増幅するように構成されている。受信信号に対応するこの信号は、システムの自己干渉(SI)を(少なくとも部分的に)除去するように調節される。第1の無線周波数(RF)リミッタ308及び第1の低ノイズ増幅器309は、
図3のシステムにおいて、近い受信経路を形成する。
【0053】
図3のシステムにおいて、受信は、送信経路がパルスを送信するときの時間の間にのみ、近い受信経路で生じる。上述したように、この期間はオプション的に40μ秒である。パルスが送信された後、受信が遠い受信経路のみで生じる。送信パルスの送信の間に信号を受信するのは近い受信経路のみであることから、(例えば、自己干渉除去フィルタを含む)全二重(FD)システムは近い受信経路に対してのみ必要とされる。
【0054】
サーキュレーター303は、第3の端子も備えている。第3の端子は、アンテナ304を介して受信信号を近い及び遠い受信経路回路に伝える。サーキュレーター303の第3の端子からの出力は、ここでは受信信号と呼ばれる。上述したように、受信信号は、所望の信号コンポーネントを備えている。レーダーにおいて、所望の信号コンポーネントは、オブジェクトによって(例えば、反射により)発生する信号を表す。受信信号は、自己干渉(SI)コンポーネントも備えている。自己干渉(SI)コンポーネントは、アンテナ自己干渉及びサーキュレーター自己干渉から形成される。
【0055】
サーキュレーター303の第3の端子は、第2の方向性結合器310に結合される。第2の方向性結合器310は、信号の一部分を取り出すという点で、上述した第1の方向性結合器302類似した機能性を有する。
図3において、第2の方向性結合器310の入力ポート(ポート1)は、サーキュレーター303に結合され、第2の方向性結合器310の送信されるポート(ポート2)は、第2の、無線周波数(RF)リミッタ311に結合され、第2の方向性結合器310の結合されるポート(ポート3)は、信号結合器307に結合される。結果として、ある割合の受信信号は、第2の方向性結合器310によって自己干渉除去回路、特に信号結合器307に結合される。ある割合の受信信号はまた、遠い受信経路によって処理するために、第2の方向性結合器310の送信されるポート(ポート2)において出力される。
図3において、第2の方向性結合器310の分離されるポート(ポート4)は、50Ω(オーム)終端313に結合される。
【0056】
第2の無線周波数(RF)リミッタ311は、第2の低ノイズ増幅器312に接続されている。第2の無線周波数(RF)リミッタ311及び第2の低ノイズ増幅器312は、遠い受信経路を形成する。
【0057】
送信パルスの間、近い受信経路と遠い受信経路の両方は、サーキュレーター303の漏洩により、大きな漏洩信号を受ける。さらに、上述のように、アンテナ304からの反射のミスマッチは大きな影響を与えるかもしれない。近い受信経路において、信号の振幅は、第2の方向性結合器310によって低減される。なぜなら、漏洩信号の一部分のみ(すなわち大部分ではない)が信号結合器307に結合されるからである。しかしながら、漏洩信号は、(第2のRFリミッタ311及び第2の低ノイズ増幅器312を備える)遠い受信経路にほぼ全出力で到達する。第2のRFリミッタ311なしでは、遠い受信経路の第2の低ノイズ増幅器312は、損傷を受けるかもしれない。
【0058】
第2のRFリミッタ311は、入力波形をクリップする半導体ダイオードを使用することが可能であり、これは、このケースでは、送信されるパルスの漏洩したコンポーネントに対応する。第2のRFリミッタ311からのクリッピングは、波形に歪みをもたらす。
【0059】
図4Aは、レーダーパルスの歪みの影響を示す。
図4Aは、歪み401のないレーダーパルスの形状と、リミッタ402によってクリップされたレーダーパルスの形状とを示している。
【0060】
図3に戻って参照すると、クリップされた信号のうちのいくつかは、インピーダンスミスマッチにより、方向性結合器310に向けてRFリミッタ311から戻って反射される。この信号は、第2の方向性結合器310によって、分離されるポート(ポート4)に結合されるだろう。実際には方向性結合器は理想的ではないことから、第2の方向性結合器310の結合されるポート(ポート3)に結合されたいくらかの電力があるかもしれず、
図3に示すような近い受信経路に現れる歪みをもたらす。
【0061】
任意のリミッタの歪みがない場合には、(例えば、サーキュレーター303による)送信信号における漏洩は、第2の方向性結合器310を介して近い受信経路(特に信号結合器307)に結合される。(基準信号とも呼ばれる)送信信号のレプリカはまた、第1の方向性結合器302を介して近い受信経路に結合されている。いったん基準信号の位相及び利得が可変減衰器305及び可変位相シフタによって変化すると、修正された基準信号は信号結合器307に出力される。減衰及び位相シフトは、適切に決定され、送信信号の結合された、減衰された、シフトされたバージョンは、漏洩信号をキャンセルし、それにより、自己干渉を除去する。
【0062】
しかしながら、リミッタの歪みは受信経路に一意的である(すなわち、そのソースは、送信経路ではない)ことから、送信信号のような自己干渉の結合された、減衰された、位相シフトされたバージョンによって除去できない。
【0063】
図4Bは、自己干渉除去回路の出力への歪みの影響を示している。特に
図4Bでは、RF自己干渉除去回路の出力において第2のRFリミッタによって生成される歪みを備える波形を示している。
【0064】
図5は、無線周波数(RF)自己干渉除去(SiC)及び/又はリミッタなしで、並びにこれらと共に、レーダーシステムについてのシミュレートされた結果を示している。特に
図5は、システムの出力電力が入力電力でどのように変化するかを示している。この文脈では、入力電力(P
IN)は送信パルスの電力を表し、出力電力(P
OUT)は、近い受信経路の低ノイズ増幅器(LNA)に印加される信号の電力を表す。
【0065】
図5に示される状況において、入力電力(すなわち、送信パルスの電力)は-10から50dBm(すなわち、10ミリワット(mW)から100ワット(W))へと線形に増加する。この電力バリエーションは、送信パルスの立ち上がり時間の間に生じるバリエーションに特有である。
【0066】
図5は、リミッタも自己干渉除去(SiC)もない、近い受信経路の低ノイズ増幅器(LNA)に印加される最大電力が16dBmであることを示している。無線周波数(RF)自己干渉除去(SiC)(のみ)が使用されるとき(すなわち、遠い受信経路上にリミッタなしで)、近い受信経路の低ノイズ増幅器(LNA)に印加される最大電力は、-54dBmである。このケースでは、自己干渉除去の70dBが提供される。
【0067】
遠い受信経路上のリミッタ及び自己干渉除去(SiC)回路が使用されるとき、近い受信経路の低ノイズ増幅器(LNA)に印加される最大電力は-34dBmである。このケースでは、自己干渉除去最大50dBが提供される。
図5のシミュレーションでは、自己干渉除去(SiC)回路の可変減衰器と可変位相シフタは、近い受信経路の低ノイズ増幅器(LNA)に印加される最大出力電力を、入力電力の最も広い範囲と比較して-34dBmに制限するように最適化された。さらに、この構成により、特定の入力電力で、急勾配をヌルに同調することも可能である。
【0068】
図5から、近い受信経路の入力電力を最小化するアプローチが無線周波数(RF)自己干渉除去のみを使用することが明らかである。しかしながら、このアプローチは現実的ではない。とりわけ、なぜなら高電力漏洩信号から遠い受信経路の低ノイズ増幅器を保護するために、遠い受信経路上にリミッタが必要とされるからである。結果として、リミッタの存在によりもたらされるリミッタの歪みの量を低減させる必要があり、近い受信経路の低ノイズ増幅器(LNA)に印加される最大出力電力は低減され、自己干渉除去単独で達成されるものにより近くなる。
【0069】
図6は、全二重(FD)レーダーシステムシステムにおけるリミッタの歪みの影響を減少させるためのアプローチを示している。
図6では、
図3において使用されたものと同じ参照番号が、類似のコンポーネントを示す。
図3において示されたこれらのコンポートに加えて、
図6において示されるシステムはまた、第2の方向性結合器310の第4のポートに結合された第2の可変位相シフタ601と、第2の可変位相シフタ601の出力に結合された第2の可変減衰器602を備えている。
【0070】
可変減衰器602の出力は、電力分割器603の第2のポートに結合され、電力分割器603の第3のポートは、方向性結合器310の第3のポートに結合され、電力分割器603の第1のポートは、信号結合器の入力に結合される。技術的に知られているように、電力分割器603は、第1のポートに存在する信号を2つのコンポーネントに分割し、2つのコンポーネントを第2及び第3のポートにそれぞれ出力するように構成されている受動電子デバイスである。電力分割器603は、電力結合器としても使用されることができる。このコンフィギュレーションでは、電力分割器603は、第2のポートと第3のポートに出力された信号を組み合わせる。組み合わされた信号は、電力増幅器603の第1のポートに出力される。
【0071】
図6は、第2の方向性結合器310の分離されるポート(ポート4)からエラー信号が発生する。分離されるポート(ポート4)の出力は、位相シフトされ、減衰され、漏洩除去信号を発生させる。漏洩除去信号は、第2のRFリミッタ311によって発生したリミッタの歪みを補償する。
【0072】
図6に示したアプローチはリミッタの歪みの影響を低減させるが、追加の損失及び増加したボードサイズを招く追加のコンポーネントが、電力分割器603に対する要件により、必要とされるだろう。
【0073】
近い受信経路に存在するリミッタの歪みの量を低減させるための別の方法は、結合器の指向性を増加させることであり、それにより、第2の方向性結合器310の送信されるポート(ポート2)と第2の方向性結合器310の結合されるポート(ポート3)との間の結合の量を減少させ、これは、実質的に信号結合器307に供給される。これは、指向性を増加させるために、方向性結合器のプリント基板上に追加の基板を使用することにより達成できる。しかしながら、このアプローチは同調可能ではない。結果として、このアプローチは、全二重(FD)システムのように非常に高い除去が必要とされるシステムに対しては適切ではない。さらに、このアプローチは、プリント基板の最上部に機械的に取り付けられる材料の追加の要素を必要とする。
【0074】
図7は、例にしたがう可変インピーダンスを使用するリミッタの歪み抑制を有する全二重(FD)レーダーシステムを示している。
図7において、
図3で使用されるものと同じ参照番号が類似のコンポーネントを示す。
図3に示されるこれらのコンポーネントに加えて、
図7において示されるシステムはまた、第2の方向性結合器310の分離されるポート(ポート4)に結合された可変インピーダンス701を備えている。可変インピーダンス701は、
図3において分離されるポート(ポート4)に接続された50Ω(オーム)終端を置き換え、第2の方向性結合器310の指向性を増加させ、それにより、近い受信経路におけるリミッタの歪みの量を減少させる。リミッタの歪みを減少させるためのこのアプローチは有利である。なぜなら、これは既存のハードウェアへの最少の修正を必要とするからである。
【0075】
図8Aは、例にしたがって可変インピーダンスを発生させるための第1の回路を示している。第1の可変インピーダンス回路801は、可変位相シフタ802及び可変抵抗器803を備えている。可変抵抗器803は、可変インピーダンスの大きさを制御し、可変位相シフタ802は、可変インピーダンスの位相を制御する。
【0076】
図8Bは、例にしたがって可変インピーダンスを発生させる回路のインプリメンテーションを示している。
図8Bにおいて、可変インピーダンス回路804は、ハイブリッド結合器805を使用して実現される。可変インピーダンス回路804の入力は、ハイブリッド結合器の第1のポートに結合されている。
【0077】
ハイブリッド結合器の既知のタイプは、直角位相結合器である。技術的に知られているように、直角位相ハイブリッド結合器は、4つの送信線セクションを備えており、そのそれぞれは、波長の四分の一の長さである。直角位相ハイブリッド結合器の送信線のうちの2つは、システムの特徴インピーダンス(Z0)に等しいインピーダンスを有する一方で、他の2つの送信線は、2の平方根で割った特徴インピーダンス(Z0/√2)に等しいインピーダンスを有している。オプション的に、システムの特徴インピーダンスは50Ωである。
【0078】
直角位相ハイブリッド結合器は、第1のポート805a、第2のポート805b、第3のポート805c、及び第4のポート805dを備える4ポートデバイスである。第1のポート805aと第2のポート805bとの間の第1の送信線、第3のポート805cと第4のポート805dとの間の第2の送信線は、2の平方根で割った特徴インピーダンス(すなわち、Z0/√2)に等しいインピーダンスを有している。第1のポート805aと第4のポート805dとの間の第3の送信線と第2のポート805bと第3のポート805cとの間の第4の送信線は、システムの特徴インピーダンス(すなわち、Z0)に等しいインピーダンスを有している。
【0079】
図8Bのインプリメンテーションにおいて、ハイブリッド結合器805の第2のポートと第3のポートは、それぞれ、第1のバラクタダイオード806と第2のバラクタダイオード807の形態で、無効負荷によって終端している。技術的に知られているように、バラクタダイオードは、逆バイアス電圧におけるバリエーションによってそのキャパシタンスが変化するダイオードである。第1のバラクタダイオード806のアノードは、ハイブリッド結合器805の第2のポートに結合されている。第1のバラクタダイオード806のカソードは、正の電圧が印加される位相制御線に結合されている。第2のバラクタダイオード807のアノードは、ハイブリッド結合器805の第3のポートに結合されている。第2のバラクタダイオード807のカソードは、位相制御線に結合されている。
【0080】
図8Bにおいて、位相制御線に印加される信号の大きさは、ハイブリッド結合器805の第2のポート及び第3のポートの負荷を制御する。第1及び第2のバラクタダイオードによって表れるリアクタンスは、反射をもたらし、これは、組み合わされるとき、ハイブリッド結合器805の第4のポート805dに出力をもたらし、これは、ハイブリッド結合器805の第1のポート805aに入力される信号の位相シフトされたバージョンである。結果として、入力信号の位相シフトされたバージョンは、位相制御線を制御することによって取得できる。
【0081】
ハイブリッド結合器805の第4のポート805dは、DCブロッキングキャパシタ808に結合されている。キャパシタ808はまた、ダイオード809の、オプション的にPINダイオードのアノードに結合される。ダイオード809のカソードは、アースに結合される。
【0082】
振幅制御線はまた、キャパシタ808及びダイオード809のアノードに結合されている。振幅制御線に印加される信号は、入力インピーダンスの大きさを制御する。
【0083】
1つの例において、振幅及び位相制御線は、制御装置(図示せず)に接続されている。制御装置は、可変位相シフタ及び可変抵抗器を同調するように構成されている。
図8A及び8Bに示される可変インピーダンスは、異なる周波数で異なる応答を提供する。結果として、可変インピーダンスの特性は、制御装置によって同調され、システムの動作周波数でリミッタの歪みにおける低減が達成される。
【0084】
可変インピーダンスを同調することは、異なる形態をとることがある。1つの例では、近い受信経路の第1の低ノイズ増幅器309の出力における自己干渉のレベルが観測され、可変インピーダンス702の振幅及び位相は、自己干渉の量を最少化するように調節される。オプション的に、近い受信経路の自己干渉の量は、(例えば、ダイオード及びフィルタを備える)電力検出器を使用してアナログドメインにおいて観測される。代替的に、近い受信経路の自己干渉の量は、デジタルドメインにおいて観測される。
【0085】
オプション的に、制御装置は、入力/出力モジュール、プロセッサ、及び不揮発性メモリを備えている。入力/出力モジュールは、位相制御線及び振幅制御線に結合されている。プロセッサは、入力/出力モジュールに、及び不揮発性メモリに結合されている。不揮発性メモリは、コンピュータプログラム命令を記憶し、コンピュータプログラム命令が実行されるとき、プロセッサに、可変インピーダンスコンポーネントを同調させ、入力/出力モジュールに、同調の間に決定されるような可変インピーダンスコンポーネントを構成する信号を位相制御線及び振幅制御線に出力させる。特に、不揮発性メモリは、コンピュータプログラム命令を記憶し、コンピュータプログラム命令が実行されるとき、プロセッサに、(例えば、上述のようなアナログ手段又はデジタル手段を使用して)近い受信経路の出力上の自己干渉の量を観測させ、近い受信経路の出力における自己干渉電力を低減させるために、可変インピーダンス702の振幅及び位相を最適化する第1のアルゴリズムを実行させる。
【0086】
図7、
図8A及び帯
図8Bに関連して説明したような可変インピーダンスの使用は、他のアプローチよりも物理的に類似しており、より少ない基板面積を占めるという利点を有している。さらに、インプリメンテーションの単純な構造は、より少ない損傷を受け、回路が入力電力の広い領域に渡って同調されることを可能にする。
【0087】
図9は、例及び他の既知のレーダーシステムにしたがうレーダーシステムの性能比較を示している。特に
図9では、方向性結合器の分離されるポート(ポート4)を終端する可変インピーダンスを使用する、ここで説明した技術は、自己干渉除去(SiC)の量を10デシベル(dB)だけ増加させることを示しており、これは、近い受信経路における絶対電力を10dBだけ減少させ、それにより、第1の低ノイズ増幅器309の過負荷及びそれを潜在的に損傷させることを防ぐ。
図9は、ここで開示した可変インピーダンス終端技術は、自己干渉除去の量を向上させ、他の技術と視覚して、リミッタの歪みの影響を低減させる一方で、依然として高電力漏洩信号から、遠い受信経路の低ノイズ増幅器(LNA)を保護することを示している。
【0088】
図10Aは、別の例にしたがう可変インピーダンスを発生させる回路を示している。第2の可変インピーダンス回路1001は、回路の入力に接続された可変遅延線1002を備えている。可変遅延線は、可変遅延線1002の入力と可変遅延線1002の出力との間で信号が伝搬する伝搬遅延を変化させるように構成されている。遅延線の出力は、可変減衰器1003の入力に結合されている結合されている。可変減衰器は、可変遅延線1002によって出力される信号の振幅を変化させるように構成されている。可変減衰器1003の出力は、アースに結合されている。
【0089】
図10Bは、さらなる例にしたがう可変インピーダンスを発生させる回路を示している。第3の可変インピーダンス回路1004は、電力分割器1005を備えている。電力分割器1005の第1のポートは、第3の可変インピーダンス回路1004に入力に結合されている。電力分割器1005の第2のポートは、可変遅延線1002の入力に結合されている。電力分割器1005の第3のポートは、可変減衰器1003の入力に結合されている。可変減衰器1003の出力は、可変遅延線1002の出力に結合されている。
【0090】
リミッタの歪みを減少させるための上述の技術についての多くの使用ケースがある。例えば、全二重(FD)は、動作幅大幅に拡張することから、気象レーダーにしっくりくる。上述の可変インピーダンスは、その性能を増加させるために全二重気象レータに組み込まれることができる。
【0091】
さらに、リミッタは全二重が適用できる多くの通信システムにおいて使用される。例えば、上述のリミッタの歪み技術は、ミリ波バックホールのようなレーダー外の他の分野で使用できる。
【0092】
ここで使用される用語は、電気に結合されている(すなわち、電流が流れることを可能にする方法で接続されている)ことを意味している。
【0093】
ある構成を説明してきたが、構成は、例として提示されており、保護の範囲を限定するようには意図されていない。ここで説明される発明の概念は、様々な形式で実現されてもよい。さらに、以下の特許請求の範囲で規定される保護の範囲から逸脱することなく、ここで説明した特定のインプリメンテーションへのさまざまな省略、置換、及び変更がなされてもよい。