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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231128BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231128BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 616T
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022056834
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2021037947の分割
【原出願日】2014-06-26
(65)【公開番号】P2022097483
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2013136451
(32)【優先日】2013-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 秀明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】立石 真理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正弘
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038400(JP,A)
【文献】特開2013-009297(JP,A)
【文献】特開2010-141304(JP,A)
【文献】特開2012-134475(JP,A)
【文献】特開2011-091375(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027467(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、29/786、
H05B 33/14、
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、シリコンを有し、
前記第2のトランジスタのチャネル形成領域は、酸化物半導体層を有し、
前記酸化物半導体層は、電子線のプローブ径を1nmに収束させたナノビーム電子線回折における回折パターンにおいて、特定の面に配向した結晶状態を示さない円周状に配置された複数のスポットが観察される領域を有する半導体装置。
【請求項2】
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのゲートと接続された第2のトランジスタと、容量と、を有し、
前記容量は、前記第1のトランジスタのゲートと接続され、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、シリコンを有し、
前記第2のトランジスタのチャネル形成領域は、酸化物半導体層を有し、
前記酸化物半導体層は、電子線のプローブ径を1nmに収束させたナノビーム電子線回折における回折パターンにおいて、特定の面に配向した結晶状態を示さない円周状に配置された複数のスポットが観察される領域を有する半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記酸化物半導体層は、複数の結晶を有し、
前記複数の結晶の各々の大きさは、1nm以上10nm以下である半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一において、
前記酸化物半導体層は、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、半導体装置および半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、電気光学装置、半導体回路、表示装置、発光装置及び電子機器はすべて半導
体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体膜を用いてトランジスタを構成する技術が注
目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも
表記する。)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半
導体膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として半導体特
性を示す金属酸化物(酸化物半導体)が注目されている。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、In、Zn、Ga、Snなどを含む非晶質酸化物を用いて
トランジスタを作製する技術が特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-165529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、比較的容易にトランジスタ特性を得られるものの
、物性が不安定になりやすく、信頼性の確保が困難である。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、酸化物半導体を含み、信頼性の高い半導体装置を提供するこ
とを課題の一とする。
【0008】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。上記以外の課題は、
明細書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題
を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示する発明の一態様は、酸化物半導体層及び酸化物半導体層と接する絶縁層を含む積層
構造を含み、酸化物半導体層は、チャネルが形成される第1の層と、第1の層と絶縁層と
の間に設けられ、第1の層の伝導帯下端のエネルギーよりも真空準位に近い伝導帯下端の
エネルギーを有する第2の層とを含む。上記において、第2の層は、酸化物半導体層と接
する絶縁層と、チャネルとの間に欠陥準位が形成されることを抑制するバリア層として機
能する。また、第1の層及び第2の層は、それぞれ巨視的には原子配列に周期性が見られ
ない程度に極微細な結晶部を含む。例えば、1nm以上10nm以下の範囲で原子配列に
周期性が確認される結晶部を含む。結晶部を含む第1の層及び第2の層は、非晶質酸化物
半導体層と比較して欠陥準位密度が低減された酸化物半導体層であり、該酸化物半導体層
を適用することで、欠陥準位密度に起因するトランジスタの電気特性の変動を抑制するこ
とができる。
【0010】
より具体的には、例えば以下の構成とすることができる。
【0011】
本発明の一態様は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層と互いに重なるゲート電極層と、
酸化物半導体層とゲート電極層の間のゲート絶縁層と、酸化物半導体層と電気的に接続す
るソース電極層及びドレイン電極層と、酸化物半導体層を介してゲート絶縁層と互いに重
なる絶縁層と、を有し、酸化物半導体層は、チャネルが形成される第1の層と、第1の層
と絶縁層との間の第2の層との積層構造を含み、第1の層及び第2の層はそれぞれ、10
nm以下のサイズの結晶を含み、第1の層及び第2の層はそれぞれ、In-M-Zn酸化
物(Mは、Al、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf)で表記される酸化
物半導体層であり、且つ、第2の層のインジウムに対するMの原子数比は第1の層のイン
ジウムに対するMの原子数比よりも高いことを特徴とする半導体装置である。
【0012】
また、本発明の一態様は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層と互いに重なるゲート電極
層と、酸化物半導体層とゲート電極層の間のゲート絶縁層と、酸化物半導体層と電気的に
接続するソース電極層及びドレイン電極層と、酸化物半導体層を介してゲート絶縁層と互
いに重なる絶縁層と、を有し、酸化物半導体層は、チャネルが形成される第1の層と、第
1の層と絶縁層との間の第2の層と、第1の層とゲート絶縁層との間の第3の層と、を含
み、第1の層乃至第3の層はそれぞれ、10nm以下のサイズの結晶を含み、第1の層、
第2の層及び第3の層はそれぞれ、In-M-Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Ge、Y
、Zr、Sn、La、Ce又はHf)で表記される酸化物半導体層であり、且つ、第2の
層のインジウムに対するMの原子数比及び第3の層のインジウムに対するMの原子数比は
それぞれ、第1の層のインジウムに対するMの原子数比よりも高いことを特徴とする半導
体装置である。
【0013】
上記の半導体装置において、第3の層は、電子線のプローブ径を1nm以上10nm以下
に収束させたナノビーム電子線回折における回折パターンにおいて、円周状に配置された
複数のスポットが観察される。
【0014】
また、上記の半導体装置において、第1の層及び第2の層は、電子線のプローブ径を1n
m以上10nm以下に収束させたナノビーム電子線回折における回折パターンにおいて、
円周状に配置された複数のスポットが観察される。
【0015】
また、上記の半導体装置において、第2の層の伝導帯下端のエネルギーは、第1の層の伝
導帯下端のエネルギーよりも0.05eV以上2eV以下の範囲で真空準位に近いことが
好ましい。
【0016】
また、上記の半導体装置において、絶縁層は、酸化物半導体層上に接して設けられ、絶縁
層に設けられたコンタクトホール(開口部とも呼ぶ)において、酸化物半導体層と、ソー
ス電極層又はドレイン電極層とが電気的に接続してもよい。この場合、ソース電極層及び
ドレイン電極層は、絶縁層に及び第2の層に設けられたコンタクトホールにおいて、第1
の層と電気的に接続することが好ましい。
【0017】
また、上記の半導体装置において、ソース電極層及びドレイン電極層は、第1の層の側面
及び上面の一部と接するように設けられ、第3の層は、ソース電極層及びドレイン電極層
から露出した第1の層の一部と接するように、ソース電極層及びドレイン電極層上に設け
られていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の一例及びそのバンド図を示す模式図。
図2】本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の一例及びそのバンド図を示す模式図。
図3】本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の一例及びそのバンド図を示す模式図。
図4】ナノ結晶酸化物半導体層の断面TEM像及びナノビーム電子線回折パターンを示す図。
図5】参考例の試料の作製方法を示す模式図。
図6】ナノ結晶酸化物半導体層のナノビーム電子線回折パターンを示す図。
図7】ナノ結晶酸化物半導体層の断面TEM像を示す図。
図8】ナノ結晶酸化物半導体層のナノビーム電子線回折パターンを示す図。
図9】石英ガラス基板のナノビーム電子線回折パターンを示す図。
図10】ナノ結晶酸化物半導体層のナノビーム電子線回折パターンを示す図。
図11】ナノ結晶酸化物半導体層のXRDスペクトルの測定結果を示す図。
図12】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
図13】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
図14】半導体装置の作製方法の一例を示す図。
図15】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
図16】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
図17】半導体装置の作製方法の一例を示す図。
図18】本発明の一態様の半導体装置の回路図。
図19】本発明の一態様の半導体装置の回路図及び概念図。
図20】実施の形態に係る表示パネルの構成を説明する図。
図21】実施の形態に係る電子機器のブロック図を説明する図。
図22】実施の形態に係る電子機器の外観図を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以
下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易
に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈される
ものではない。
【0021】
なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には
同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様
の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場
合がある。
【0022】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、又は領域は、明瞭
化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0023】
なお、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は、便宜上用いるもので
あり、工程順又は積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の
」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載
されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場
合がある。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に含まれる酸化物半導体層について、図
1乃至図11を参照して説明する。
【0025】
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の一例を示す模式図であ
る。本発明の一態様の半導体装置は、ゲート電極層102と、ゲート電極層102上のゲ
ート絶縁層104と、ゲート絶縁層104上の酸化物半導体層106と、酸化物半導体層
106上の絶縁層108と、の積層構造を含む。
【0026】
酸化物半導体層106は、第1の層106aと、第1の層106aと絶縁層108との間
の第2の層106bとの積層構造を有する。
【0027】
第1の層106a及び第2の層106bは、巨視的には原子配列に周期性が見られない程
度に極微細な結晶部を含む酸化物半導体層である。具体的には、第1の層106a及び第
2の層106bはそれぞれ、1nm以上10nm以下、又は1nm以上3nm以下のサイ
ズの結晶部(以下、本明細書等においてナノ結晶(nc:nano crystal)と
も表記する。)を含む。
【0028】
第1の層106a及び第2の層106bに含まれる結晶部は、当該結晶部の大きさに近い
、又は結晶部の大きさよりも小さいプローブ径(例えば、1nm以上30nm以下)の電
子線を照射して得られる電子線回折パターンにおいて、円を描くように(リング状に)輝
度の高い領域を有し、且つ輝度の高い領域内に複数のスポット(輝点)が観察される。複
数のスポットが円周状に配置されることで、リング状に輝度の高い領域を形成している、
と言い換えることもできる。
【0029】
また、電子線回折による測定範囲を、平面方向及び奥行き方向ともに、含まれる結晶部の
大きさに近い範囲以下、又は結晶部の大きさよりも小さい範囲以下に縮小することで、電
子線回折パターンにおいて、結晶状態を示す規則性を有するスポットが観察される場合が
ある。平面方向の測定範囲を縮小するには、電子線のプローブ径を縮小(例えば、1nm
以上30nm以下)すればよい。また、奥行き方向の測定範囲を縮小するには、例えば、
イオンミリング加工等によって10nm以下に薄片化された領域を測定すればよい。
【0030】
なお、第1の層106a及び第2の層106bともに、断面方向及び平面方向の双方の電
子線回折パターンにおいて、上述のリング状の輝度の高い領域内に配置された複数のスポ
ットを確認することが可能である。結晶部が、断面方向または平面方向の指向性を持たず
に膜中にランダムに含まれることで、断面方向の電子線回折パターンで確認されるスポッ
トと、平面方向の電子線回折パターンで確認されるスポットとは、同様の傾向を示す。
【0031】
なお、酸化物半導体層中に含まれる結晶部が、10nm以下であって用いるプローブ径よ
りも大きい結晶部を有すると、断面方向と平面方向との電子線回折パターンにおいて異な
る傾向がみられる場合がある。例えば、断面方向にプローブ径よりも大きい原子配列の周
期性を有し、平面方向にプローブ径と同等又はプローブ径よりも小さい原子配列の周期性
を有する結晶部を測定する場合、断面方向の電子線回折パターンで確認されるスポットは
、平面方向の電子線回折パターンで確認されるスポットよりもブロードとなることがある
。また、第1の層106a及び第2の層106bはそれぞれ、断面方向及び平面方向の電
子線回折パターンの傾向が同様である領域と、異なる傾向がみられる領域と、を有する場
合がある。例えば、第1の層106aにおいて、第2の層106bとの界面近傍において
は、断面方向及び平面方向の電子線回折パターンに異なる傾向が見られ、ゲート絶縁層1
04との界面近傍においては、断面方向及び平面方向の電子線回折パターンが同様の傾向
を示す場合がある。
【0032】
なお、上述したように、第1の層106a及び第2の層106bにおいて原子配列に周期
性を有する領域は、例えば1nm以上10nm以下と微小な範囲であり、また、異なる結
晶部間では結晶方位に秩序性が見られない。したがって、第1の層106a及び第2の層
106bはそれぞれ膜全体では配向性が見られない。そのため、酸化物半導体層106の
分析方法によっては、第1の層106a及び第2の層106bに含まれる結晶部を解析す
ることができずに、非晶質酸化物半導体層と区別がつかない場合ある。
【0033】
例えば、結晶部を含む第1の層106a又は第2の層106bをそれぞれ、断面方向及び
平面方向から透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron
Microscope)によって観察しても、結晶構造を明確には確認することが困難
である。
【0034】
また、酸化物半導体層106に対して、第1の層106a及び第2の層106bに含まれ
る結晶部よりも大きい径のX線を用いるX線回折(XRD:X-Ray Diffrac
tion)装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では
、結晶面を示すピークが検出されない。
【0035】
さらに、第1の層106a又は第2の層106bに対して、結晶部よりも大きいプローブ
径(例えば、100nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともい
う。)では、ハローパターンのような回折パターンが観測される場合がある。
【0036】
また、電子線のプローブ径を大きくするに伴って、上述したリング状の輝度の高い領域が
ブロードとなり、リングの幅が広くなることが確認される。また、プローブ径を例えば、
50nm以上とすると、リング状の輝度の高い領域内にスポットを観察することが困難と
なる。
【0037】
本実施の形態で示すナノ結晶を含む酸化物半導体層(以下、ナノ結晶酸化物半導体層とも
表記する。)は、非晶質酸化物半導体層と比較して、膜密度が高く緻密な膜である。酸化
物半導体層は、欠陥が少ない程、又は、水素等の不純物濃度が低い程、膜密度が高くなる
。酸化物半導体層にとって、酸素欠陥及び/又は水素等の不純物は、欠陥準位の生成要因
となるため、ナノ結晶を含む第1の層106a及び第2の層106bは、非晶質酸化物半
導体層と比較して欠陥準位密度が低減された領域であるといえる。なお、本明細書等にお
いて非晶質酸化物半導体層とは、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない
酸化物半導体層を指す。
【0038】
また、第1の層106aと、第2の層106bには、少なくともインジウム及び亜鉛を構
成元素として有する金属酸化物を用いることが好ましい。また、第1の層106aと第2
の層106bの構成元素を同一とし、両者の組成を異ならせてもよい。
【0039】
なお、本実施の形態において、第1の層106a及び第2の層106bはともに少なくと
もインジウム及び亜鉛を含むナノ結晶酸化物半導体層であり、材料や成膜条件によっては
、各領域同士の界面が不明確になる場合もある。よって、図1においては、第1の層10
6aと第2の層106bの界面を模式的に点線で図示している。これは以降の各図面にお
いても同様である。
【0040】
第1の層106aがIn-M-Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、
La、Ce又はHf)で表記される酸化物半導体層である場合、第2の層106bとして
は、第1の層106aと同様にIn-M-Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Ge、Y、Z
r、Sn、La、Ce又はHf)で表記され、第1の層106aよりもインジウムに対す
るMの原子数比が高い酸化物半導体層とすることが好ましい。
【0041】
より具体的には、第2の層106bとして、第1の層106aよりも前述の元素を1.5
倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物半導
体層を適用する。前述の元素Mは、インジウムよりも酸素と強く結合するため、インジウ
ムに対するMの原子数比の高い酸化物半導体は、膜中での酸素欠損が生じにくい。すなわ
ち、第2の層106bは、第1の層106aよりも酸素欠損が生じにくい酸化物半導体層
である。なお、インジウムに対するMの原子数比が高い程、酸化物半導体層のエネルギー
ギャップ(バンドギャップ)が大きくなるため、インジウムに対するMの原子数比が高す
ぎると、第2の層106bは絶縁層として機能する。従って、第2の層106bが半導体
層として機能しうる程度にインジウムに対するMの原子数比を調整することが好ましい。
【0042】
第1の層106a及び第2の層106bがそれぞれ、少なくともインジウム、亜鉛および
M(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)を含む
In-M-Zn酸化物であるとき、第1の層106aをIn:M:Zn=x:y:z
[原子数比]、第2の層106bをIn:M:Zn=x:y:z[原子数比]と
すると、y/xをy/xよりも大きくすることが好ましい。y/xはy
よりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。この
とき、第1の層106aにおいて、yがx以上であるとトランジスタの電気特性を安
定させることができる。ただし、yがxの3倍以上になると、トランジスタの電界効
果移動度が低下してしまうため、yはxの3倍未満であることが好ましい。
【0043】
なお、第1の層106aがIn-M-Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除いてのI
nとMの原子数比率は好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic
%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満
とする。また、第2の層106bがIn-M-Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除
いてのInとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが50at
omic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomi
c%以上とする。
【0044】
また、第2の層106bは、伝導帯下端のエネルギーが第1の層106aよりも、0.0
5eV、0.07eV、0.1eV、0.15eVのいずれか以上であって、2eV、1
eV、0.5eV、0.4eVのいずれか以下の範囲で真空準位に近い酸化物半導体で形
成することが好ましい。
【0045】
このような構造において、ゲート電極層102に電界を印加すると、酸化物半導体層10
6のうち、伝導帯下端のエネルギーが最も小さい層である第1の層106aがキャリアの
主な移動経路(チャネル)となる。ここで、チャネル形成領域(第1の層106a)と絶
縁層108との間に第2の層106bを含むことにより、酸化物半導体層106と絶縁層
108との界面において不純物及び欠陥により形成されうるトラップ準位と、チャネル形
成領域との間には隔たりがある。この結果、第1の層106aを流れる電子がトラップ準
位に捕獲されにくく、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電
界効果移動度を高めることができる。また、トラップ準位に電子が捕獲されると、該電子
がマイナスの固定電荷となり、トランジスタのしきい値電圧の変動要因となる。しかしな
がら、第1の層106aとトラップ準位との間に隔たりがあるため、トラップ準位におけ
る電子の捕獲を低減することが可能であり、しきい値電圧の変動を低減することができる
【0046】
なお、第1の層106a及び第2の層106bは、各層を単に積層するのではなく連続接
合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化する構造)が形成
されるように作製する。すなわち、各層の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥
準位を形成するような不純物が存在しないような積層構造とする。仮に、積層された第1
の層106aと第2の層106bとの間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの
連続性が失われ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結合して、消滅してしまう
【0047】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置
(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層すること
が必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体層にとって不
純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプ
を用いて高真空排気(5×10-7Pa~1×10-4Pa程度まで)することが好まし
い。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー
内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
【0048】
図1(B)は、図1(A)の積層構造のD1-D2におけるバンド構造の一部を模式的に
示している。ここでは、酸化物半導体層106と接する絶縁層であるゲート絶縁層104
及び絶縁層108として酸化シリコン層を設けた場合について説明する。なお、図1(B
)において、Evacは真空準位のエネルギーを示し、Ecは伝導帯下端のエネルギーを
示す。
【0049】
図1(B)に示すように、第1の層106a及び第2の層106bにおいて、伝導帯下端
のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化するともいう
ことができる。これは、第1の層106aと第2の層106bが共通の元素を含み、双方
の領域間で、酸素が相互に移動することで混合層が形成されるためであるということがで
きる。
【0050】
図1(B)より、酸化物半導体層106において第1の層106aがウェル(井戸)とな
り、チャネル領域が第1の層106aに形成されることがわかる。なお、酸化物半導体層
106は、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、第1の層106aと第
2の層106bとが連続接合している、ともいえる。
【0051】
第2の層106bと絶縁層108との界面近傍には、絶縁層108の構成元素(例えばシ
リコン)または炭素等の不純物や、欠陥に起因したトラップ準位が形成され得るものの、
チャネルが形成される第1の層106aとの間に第2の層106bが設けられることによ
り、第1の層106aとトラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、第1の層10
6aと第2の層106bとのエネルギー差が小さい場合、第1の層106aの電子が該エ
ネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲される
ことで、絶縁膜界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス
方向にシフトしてしまう。したがって、第1の層106aと第2の層106bの伝導帯下
端のエネルギー差を、0.05eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トラン
ジスタのしきい値電圧の変動が低減され、安定した電気特性となるため好適である。
【0052】
酸化物半導体層を用いた半導体装置において、信頼性の向上のためにはチャネルとして機
能する酸化物半導体層およびその界面の欠陥準位密度を低減する必要がある。特に、酸化
物半導体層を用いたトランジスタのしきい値電圧のマイナス方向への変動は、チャネルと
して機能する酸化物半導体層及びその界面の酸素欠損に起因する欠陥準位が原因であると
考えられる。
【0053】
そこで、本実施の形態に示すように、非晶質酸化物半導体層と比較して欠陥準位密度の低
減された第1の層106a及び第2の層106bを含む酸化物半導体層をトランジスタに
用いることで、当該トランジスタの、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減
することが可能である。よって、当該トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0054】
図2(A)は、本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の他の一例を示す模式図
である。図2(A)に示す積層構造は、図1(A)の積層構造と同様に、ゲート電極層1
02と、ゲート電極層102上のゲート絶縁層104と、ゲート絶縁層104上の酸化物
半導体層116と、酸化物半導体層116上の絶縁層108と、を含み、酸化物半導体層
116は、チャネルが形成される第1の層116aと、第1の層116aと絶縁層108
との間の第2の層116bと、第1の層116aとゲート絶縁層104との間の第3の層
116cと、を含む。
【0055】
図2(A)に含まれる酸化物半導体層116は、チャネルとして機能する第1の層116
aとゲート絶縁層104との間に、第3の層116cを含む点で、図1(A)に示した酸
化物半導体層106と相違し、その他の構成は、図1(A)と同様とすることができる。
例えば、酸化物半導体層116の第1の層116aは、先に示した酸化物半導体層106
の第1の層106aについての説明を参酌することができ、酸化物半導体層116の第2
の層116bは、先に示した酸化物半導体層106の第2の層106bについての説明を
参酌することができる。
【0056】
酸化物半導体層116に含まれる第1の層116a、第2の層116b及び第3の層11
6cは、それぞれナノ結晶を含む酸化物半導体層である。また、第3の層116cは、第
1の層116a及び第2の層116bと同様に、少なくともインジウム及び亜鉛を構成元
素として有する金属酸化物を用いることが好ましい。また、第1の層116a乃至第3の
層116cの構成元素を同一とし、それぞれの組成を異ならせてもよい。
【0057】
第1の層116aがIn-M-Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、
La、Ce又はHf)で表記される酸化物半導体層である場合、第3の層116cとして
は、第1の層116aと同様にIn-M-Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Ge、Y、Z
r、Sn、La、Ce又はHf)で表記され、第1の層116aよりもインジウムに対す
るMの原子数比が高い酸化物半導体層とすることが好ましい。すなわち、第3の層116
cは、第1の層116aよりも酸素欠損が生じにくい酸化物半導体層である。より具体的
には、第3の層116cとして、第1の層116aよりも前述の元素を1.5倍以上、好
ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物半導体層を適用
する。
【0058】
また、第3の層116c、第1の層116a、及び第2の層116bが、少なくともイン
ジウム、亜鉛およびM(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはH
f等の金属)を含むIn-M-Zn酸化物であるとき、第3の層116cをIn:M:Z
n=x:y:z[原子数比]、第1の層116aをIn:M:Zn=x:y
[原子数比]、第2の層116bをIn:M:Zn=x:y:z[原子数比]
とすると、y/xおよびy/xがy/xよりも大きくなることが好ましい。
/xおよびy/xはy/xよりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さ
らに好ましくは3倍以上とする。このとき、第1の層116aにおいて、yがx以上
であるとトランジスタの電気特性を安定させることができる。ただし、yがxの3倍
以上になると、トランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、yはxの3倍
未満であることが好ましい。
【0059】
なお、第3の層116cがIn-M-Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除いてのI
nとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic
%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上
とする。また、第1の層116aがIn-M-Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除
いてのInとMの原子数比率は好ましくはInが25atomic%以上、Mが75at
omic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomi
c%未満とする。また、第2の層116bがIn-M-Zn酸化物であるとき、Znおよ
びOを除いてのInとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが
50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75a
tomic%以上とする。
【0060】
なお、第3の層116cと、第2の層116bとは、異なる構成元素を含む層としてもよ
いし、同じ構成元素を同一の原子数比で、又は異なる原子数比で含む層としてもよい。
【0061】
また、第3の層116c及び第2の層116bは、伝導帯下端のエネルギーが第1の層1
16aよりも、0.05eV、0.07eV、0.1eV、0.15eVのいずれか以上
であって、2eV、1eV、0.5eV、0.4eVのいずれか以下の範囲で真空準位に
近い酸化物半導体で形成することが好ましい。
【0062】
図2(A)の積層構造のD3-D4におけるバンド構造の模式図を図2(B)に示す。
【0063】
図2(B)に示すように、酸化物半導体層116において第1の層116aがウェル(井
戸)となり、チャネル領域が第1の層116aに形成される。なお、酸化物半導体層11
6は、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、第3の層116cと第1の
層116aと第2の層116bとが連続接合している、ともいえる。
【0064】
チャネルとして機能する第1の層116aの上層又は下層に設けられる第3の層116c
又は第2の層116bはバリア層として機能し、酸化物半導体層116に接する絶縁層(
ゲート絶縁層104及び絶縁層108)と、酸化物半導体層116との界面に形成される
トラップ準位の影響が、トランジスタのキャリアの主な経路(キャリアパス)となる第1
の層106aへと及ぶことを抑制することができる。
【0065】
例えば、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損は、酸化物半導体のエネルギーギャップ内の
深いエネルギー位置に存在する局在準位として顕在化する。このような局在準位にキャリ
アがトラップされることで、トランジスタの信頼性が低下するため、酸化物半導体層に含
まれる酸素欠損を低減することが必要となる。図2に示す積層構造においては、第1の層
116aと比較して酸素欠損の生じにくい酸化物半導体層である第3の層116c及び第
2の層116bを第1の層116aの上下に接して設けることで、チャネルとして機能す
る第1の層116aにおける酸素欠損を低減することができる。
【0066】
また、酸化物半導体層116が、構成元素の異なる絶縁層(例えば、酸化シリコン膜を含
む下地絶縁層)と接する場合、2層の界面に界面準位が形成され、該界面準位はチャネル
を形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが出
現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしながら、図
2に示す積層構造を含むトランジスタにおいては第1の層116a乃至第3の層116c
はそれぞれ、少なくともインジウム及び亜鉛を含んで構成されるため、チャネルとして機
能する第1の層116aの界面に界面準位を形成しにくくなる。よって、トランジスタの
しきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
【0067】
また、ゲート絶縁層104と酸化物半導体層116との界面にチャネルが形成される場合
、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。しかしながら
、本実施の形態の積層構造を含むトランジスタにおいては、チャネルが形成される第1の
層116aとゲート絶縁層104との間に、酸化物半導体を含んでなる第3の層116c
が設けられており、第3の層116cと第1の層116aとの界面ではキャリアの散乱が
起こりにくい。よって、該トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
【0068】
また、第3の層116c及び第2の層116bはそれぞれ、ゲート絶縁層104及び絶縁
層108の構成元素が、チャネルが形成される第1の層116aへ混入して、不純物によ
る準位が形成されることを抑制するためのバリア層としても機能する。
【0069】
なお、図2(B)では、第3の層116cの伝導帯下端のエネルギーが、第2の層116
bの伝導帯下端のエネルギーよりも真空準位に近い場合を例に示したが、本発明の一態様
はこれに限れられるものではない。第3の層116c及び第2の層116bは、それぞれ
が少なくとも第1の層116aの伝導帯下端のエネルギーよりも真空準位に近い伝導帯下
端のエネルギーを有していればよく、第3の層116cは第2の層116bの伝導帯下端
のエネルギーのよりも真空準位から離れた伝導帯下端のエネルギーを有していてもよいし
、両者が同じエネルギーであってもよい。
【0070】
また、以上の説明においては、少なくとも第1の層及び第2の層を含む酸化物半導体層が
ゲート絶縁層を介してゲート電極層上に設けられたボトムゲート構造について述べたが、
本発明の一態様はこれに限られるものではない。
【0071】
図3(A)に、本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の他の一例を示す模式図
を示す。図3(A)に示す積層構造は、絶縁層108と、絶縁層108上の酸化物半導体
層116と、酸化物半導体層116上のゲート絶縁層104と、ゲート絶縁層104上の
ゲート電極層102と、を含み、酸化物半導体層116は、チャネルが形成される第1の
層116aと、第1の層116aと絶縁層108との間の第2の層116bと、第1の層
116aとゲート絶縁層104との間の第3の層116cと、を含む。
【0072】
また、図3(A)の積層構造のD5-D6におけるバンド構造の一部を図3(B)に模式
的に図示する。
【0073】
図3に示す積層構造は、図2に示す積層構造の積層順を逆としてトップゲート構造とした
場合を例に示している。各々の層の構成は先の説明と同様とすることができる。図3に示
すトップゲート構造の詳細は、図2についての説明を参酌することができ、同様の効果を
奏することが可能である。
【0074】
なお、図3においては、第1の層116aの上下に重なる第2の層116b及び第3の層
116cがそれぞれ設けられたトップゲート型の構造を示したが、本発明の一態様はこれ
に限られない。例えば、第1の層116a上に重なる酸化物半導体層を設けて2層とし、
その2層の酸化物半導体層上方にゲート電極層を有するトップゲート型の構造に適用して
もよい。
【0075】
以上示したように、本実施の形態の積層構造を含むトランジスタは、酸化物半導体層にお
いてチャネルが形成される第1の層と絶縁層との間に、第2の層を有することで、酸化物
半導体層の界面とチャネルを遠ざけることができるため、界面準位のチャネルへの影響を
抑制することが可能となる。
【0076】
また、第1の層116a乃至第3の層116cは、非晶質酸化物半導体と比較して欠陥準
位密度の低減されたナノ結晶酸化物半導体で構成される。欠陥準位密度の低減された第1
の層乃至第3の層を含む酸化物半導体層をトランジスタに用いることで、当該トランジス
タの、電気特性の変動を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0077】
(参考例)
本参考例では、本実施の形態の酸化物半導体層に含まれるナノ結晶について、ナノビーム
電子線回折パターンを用いて説明する。
【0078】
≪酸化物半導体層の断面方向のナノビーム電子線回折パターン≫本参考例で用いる試料1
の作製方法を以下に示す。試料1では、第1の層に相当する酸化物半導体層の一例として
、In-Ga-Zn系酸化物膜を石英ガラス基板上に膜厚50nmで成膜した。その成膜
条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲットを用いて、
酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、基
板温度を室温とした。また、酸化物半導体層を成膜後、450℃で窒素雰囲気下にて1時
間の第1の加熱処理、及び、450℃で窒素及び酸素雰囲気下にて1時間の第2の加熱処
理を行った。
【0079】
第2の加熱処理後の酸化物半導体層を、Arイオンを用いたイオンミリング法によって5
0nm程度(40nm±10nm)に薄片化した。はじめに、薄片化の補強のために酸化
物半導体層が成膜された石英ガラス基板をダミー基板と貼り合わせた後、切断及び研磨に
よって、厚さ約50μmまで薄片化した。その後、図5に示すように、酸化物半導体層2
04が設けられた石英ガラス基板200及びダミー基板202に対して、低角度(およそ
3°)からアルゴンイオンを照射して、イオンミリングを行い、50nm程度(40nm
±10nm)に薄片化された領域210aを形成し、その断面を観察した。
【0080】
第1及び第2の加熱処理後の酸化物半導体層を、50nm程度(40nm±10nm)に
薄片化した試料1の断面TEM像を図4(A)に示す。また、図4(A)に示す断面を、
ナノビーム電子線回折によって測定した電子線回折パターンを図4(B)~図4(E)に
示す。図4(B)は、プローブ径を1nmに収束させた電子線を照射した電子線回折パタ
ーンである。図4(C)は、プローブ径を10nmに収束させた電子線を照射した電子線
回折パターンである。図4(D)は、プローブ径を20nmに収束させた電子線を照射し
た電子線回折パターンである。そして、図4(E)は、プローブ径を30nmに収束させ
た電子線を照射した電子線回折パターンである。
【0081】
図4(B)に示すように、試料1の断面方向の電子線回折パターンにおいて、リング状の
輝度の高い領域を有し、且つ輝度の高い領域内に複数のスポット(輝点)が観察される。
また、図4(C)~図4(E)より、電子線のプローブ径を大きくして測定範囲を広げる
と、当該複数のスポットは徐々にブロードとなり、リング状の輝度の高い領域の幅も広が
っていくことが確認される。
【0082】
本参考例の試料1に含まれる結晶部の大きさが10nm以下、又は5nm以下である場合
、酸化物半導体層を50nm程度に薄片化した試料1では、奥行き方向の測定範囲が該結
晶部の大きさよりも大きくなるため、測定範囲内に複数の結晶部が含まれることがある。
そこで、試料1と同じ作製方法で作製した酸化物半導体層を10nm以下、好ましくは5
nm以下、より好ましくは3nm以下に薄片化した領域を試料2とし、その断面をナノビ
ーム電子線回折によって観察した。
【0083】
Arイオンを用いてイオンミリングを行い、図5に示すように、10nm以下、例えば5
~10nmに薄片化された領域210bを形成し、その断面を観察した。
【0084】
図6(A)~図6(D)に、10nm以下に薄片化した試料2の任意の4点を、プローブ
径を1nmに収束させた電子線を用いて測定したナノビーム電子線回折パターンを示す。
【0085】
図6(A)及び図6(B)では、特定の面に配向した結晶状態を示す規則性を有するスポ
ットが観察される。ここから、本実施の形態に係る酸化物半導体層は、確かに結晶部を有
していることがわかる。一方で、図6(C)及び図6(D)では、リング状の輝度の高い
領域内に配置された複数のスポットが観察される。
【0086】
上述したように、ナノ結晶酸化物半導体層に含まれる結晶部の大きさは、例えば、10n
m以下、または5nm以下と極微細である。よって、例えば、試料を10nm以下に薄片
化し、且つ電子線を1nmに収束して、測定範囲を平面方向及び奥行き方向ともに縮小(
例えば、一つの結晶部の大きさよりも小さい領域まで縮小)した場合、測定する領域によ
っては、特定の面に配向した結晶状態を示す規則性を有するスポットを観察することがで
きる。また、測定する領域に複数の結晶部が含まれると、結晶部を透過した電子線が結晶
の大きさよりも大きく広がることで、奥行き方向の結晶のスポットが観測されうる。この
場合、ナノビーム電子線回折パターンにおいて複数のスポットが観測されると考えること
ができる。
【0087】
次に、試料1及び試料2とは組成の異なる酸化物半導体層を、試料3として作製し、ナノ
ビーム電子線を照射して電子線回折パターンを確認した。試料3は、本実施の形態の酸化
物半導体層において第2の層又は第3の層に相当する酸化物半導体層の一例である。
【0088】
試料3の作製方法を以下に示す。試料3では、In-Ga-Zn系酸化物膜を石英ガラス
基板上に膜厚100nmで成膜した。その成膜条件は、In:Ga:Zn=1:3:2(
原子数比)である酸化物ターゲットを用いて、酸素及びアルゴン雰囲気下(Ar流量30
sccm、酸素流量15sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、基
板温度を室温とした。
【0089】
成膜した酸化物半導体層を、50nm程度(40nm±10nm)に薄片化した試料3の
断面TEM像を図7に示す。また、図7に示す断面を、ナノビーム電子線回折によって測
定した電子線回折パターンを図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)、図8
E)及び図8(F)に示す。図8(A)は、プローブ径を1nmに収束させた電子線を照
射した電子線回折パターンである。図8(B)は、プローブ径を10nmに収束させた電
子線を照射した電子線回折パターンである。図8(C)は、プローブ径を20nmに収束
させた電子線を照射した電子線回折パターンである。図8(D)は、プローブ径を30n
mに収束させた電子線を照射した電子線回折パターンである。図8(E)は、プローブ径
を50nmに収束させた電子線を照射した電子線回折パターンである。そして、図8(F
)は、プローブ径を100nmに収束させた電子線を照射した電子線回折パターンである
【0090】
図8に示すように、試料1と組成の異なる試料3においても、断面方向の電子線回折パタ
ーンにおいて、リング状の輝度の高い領域を有し、且つ輝度の高い領域内に複数のスポッ
ト(輝点)が観察される。また、図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)、図
8(E)及び図8(F)より、電子線のプローブ径を大きくして測定範囲を広げると、当
該複数のスポットは徐々にブロードとなり、リング状の輝度の高い領域の幅も広がってい
くことが確認される。
【0091】
≪石英ガラス基板におけるナノビーム電子線回折パターン≫図9に、石英ガラス基板にお
けるナノビーム電子線回折パターンを示す。図9の測定条件は、図4(B)及び図8(A
)と同様とし、電子線のプローブ径を1nmに収束させた。
【0092】
図9より、非晶質構造を有する石英ガラス基板では、特定のスポットに回折されずメイン
スポットから輝度が連続的に変化するハローパターンが観測される。このように、非晶質
構造を有する膜においては、極微小な領域の電子線回折を行ったとしても、本実施の形態
の酸化物半導体層で観察されるような円周状に配置された複数のスポットが観察されない
。従って、本参考例の試料1乃至試料3で観察される円周状に配置された複数のスポット
は、本参考例の酸化物半導体層に特有のものであることが確認される。
【0093】
≪酸化物半導体層の断面方向及び平面方向のナノビーム電子線回折パターン≫次いで、成
膜した酸化物半導体層について、断面方向及び平面方向からそれぞれ電子線を照射した電
子線回折パターンを比較した。比較に用いた試料4の作製方法を以下に示す。
【0094】
試料4では、In-Ga-Zn系酸化物膜を石英ガラス基板上に膜厚50nmで成膜した
。その成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲット
を用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.
5kW、基板温度を室温とした。
【0095】
成膜した酸化物半導体層に対して平面方向から電子線を照射したナノビーム電子線回折パ
ターンを図10(A)に示す。また、酸化物半導体層を50nm程度に薄片化した後、断
面方向に電子線を照射したナノビーム電子線回折パターンを図10(B)に示す。図10
(A)及び図10(B)は、ともにプローブ径を1nmに収束させた電子線を照射した電
子線回折パターンである。
【0096】
図10(A)及び図10(B)に示すように、平面方向の電子線回折パターンにおいても
、断面方向の電子線回折パターンと同様にリング状の輝度の高い領域を有し、且つ輝度の
高い領域内に複数のスポット(輝点)が観察された。したがって、本参考例の試料4では
、膜中の断面方向または平面方向に偏ることなく、略一様に結晶部を含むことが確認され
た。
【0097】
≪X線回折による分析≫次いで、石英ガラス基板上に酸化物半導体層が設けられた試料5
をX線回折(XRD:X-Ray Diffraction)を用いて分析した。図11
にout-of-plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す。なお、
試料5の作製方法は、上述の試料4と同様とした。
【0098】
図11において、縦軸はX線回折強度(任意単位)であり、横軸は回折角2θ(deg.
)である。なお、XRDスペクトルの測定は、Bruker AXS社製X線回折装置D
-8 ADVANCEを用いた。
【0099】
図11に示すように、2θ=20~23°近傍に石英に起因するピークが観察されるもの
の、酸化物半導体層に含まれる結晶部に起因するピークは確認できない。したがって、図
11の結果からも、本参考例の酸化物半導体層に含まれる結晶部は、極微細な結晶部であ
ることが示唆される。
【0100】
以上示したように、本実施の形態に係る酸化物半導体層に含まれる結晶部の大きさは、例
えば、10nm以下、または5nm以下であることが推測される。本実施の形態に係る酸
化物半導体層は、例えば、1nm以上10nm以下の結晶部(ナノ結晶(nc:nano
crystal))を含む酸化物半導体層である。
【0101】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0102】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した積層構造を有する半導体装置について、図12
乃至図17を参照して説明する。
【0103】
<トランジスタの構成例1>
図12に半導体装置の構成例を示す。図12では、半導体装置の一例として、ボトムゲー
ト構造のトランジスタを図示している。図12(A)は、トランジスタ450の平面図で
あり、図12(B)は、図12(A)のV1-W1における断面図であり、図12(C)
は、図12(A)のX1-Y1における断面図である。なお、図12(A)では煩雑にな
ることを避けるため、構成要素の一部(例えば、絶縁層408等)を省略して図示してい
る。これは以降の平面図においても同様である。
【0104】
図12に示すトランジスタ450は、基板400上に設けられたゲート電極層402と、
ゲート電極層402上のゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層404上に設けられ、ゲー
ト電極層402と互いに重なる酸化物半導体層406と、酸化物半導体層406と電気的
に接続するソース電極層410a及びドレイン電極層410bと、酸化物半導体層406
を介してゲート絶縁層404と互いに重なる絶縁層408と、を含む。
【0105】
トランジスタ450に含まれる酸化物半導体層406は、チャネルが形成される第1の層
406aと、第1の層406aと絶縁層408との間の第2の層406bとの積層構造を
含む。第1の層406a及び第2の層406bはそれぞれナノ結晶を含む酸化物半導体層
であり、図1で示した第1の層106a及び第2の層106bにそれぞれ相当する。
【0106】
上述したように、第1の層406a及び第2の層406bは、それぞれインジウム及び亜
鉛を構成元素として含み、且つ、第2の層406bの伝導帯下端のエネルギーは、第1の
層406aの伝導帯下端のエネルギーよりも0.05eV以上2eV以下の範囲で真空準
位に近い。
【0107】
第1の層406a及び第2の層406bがナノ結晶を含むことで、酸化物半導体層406
は非晶質酸化物半導体と比較して欠陥準位密度の低減された酸化物半導体層とすることが
できる。また、酸化物半導体層406においてチャネルが形成される第1の層406aと
絶縁層408との間に第2の層406bを含むことで、酸化物半導体層406と絶縁層4
08との間に形成されうるトラップ準位が、チャネルに与える影響を低減又は抑制するこ
とが可能となる。従って、トランジスタ450の電気特性を安定化させることができる。
【0108】
また、酸化物半導体層406においてチャネルが形成される第1の層406aは、水素が
可能な限り低減されていることが好ましい。具体的には、第1の層406aにおいて、二
次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectr
ometry)により得られる水素濃度を、2×1020atoms/cm以下、好ま
しくは5×1019atoms/cm以下、1×1019atoms/cm以下、5
×1018atoms/cm以下、1×1018atoms/cm以下、5×10
atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm以下とす
る。
【0109】
トランジスタ450においてゲート絶縁層404は、絶縁層404a及び絶縁層404b
の積層構造を有する。絶縁層404a及び絶縁層404bはそれぞれ、酸化窒化シリコン
、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化ア
ルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系
金属酸化物などを用いることができる。なお、本実施の形態では、絶縁層404a及び絶
縁層404bの積層構造でなるゲート絶縁層404を設ける場合を例に示すが、これに限
られず、単層構造のゲート絶縁層としてもよいし、三層以上の積層構造を含むゲート絶縁
層としてもよい。
【0110】
ゲート絶縁層404において、ゲート電極層402に接する絶縁層404aとして、窒化
シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等の窒化物絶縁
膜を形成することで、ゲート電極層402を構成する金属元素の拡散を防ぐことができる
ため好ましい。
【0111】
また、絶縁層404aとして、窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜を用いることがよ
り好ましい。窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘
電率が高く、同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、ゲート絶縁層を物理的
に厚膜化することができる。例えば、絶縁層404aの膜厚を300nm以上400nm
以下とすることができる。よって、トランジスタ450の絶縁耐圧の低下の抑制又は絶縁
耐圧を向上させることができ、半導体装置の静電破壊を抑制することができる。
【0112】
また、絶縁層404aとして好適に用いることのできる窒化物絶縁膜は、緻密な膜を形成
可能でゲート電極層402の金属元素の拡散を防ぐことができる一方で、欠陥準位密度や
内部応力が大きいので、酸化物半導体層406との界面を形成するとしきい値電圧の変動
を引き起こす恐れがある。よって、絶縁層404aとして窒化物絶縁膜を形成する場合に
は、酸化物半導体層406との間に絶縁層404bとして酸化シリコン、酸化窒化シリコ
ン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等の酸化物絶縁膜を設けることが好ましい
。酸化物半導体層406と窒化物絶縁膜でなる絶縁層404aとの間に酸化物絶縁膜でな
る絶縁層404bを形成することで、ゲート絶縁層404と酸化物半導体層406の界面
を安定化することが可能となる。
【0113】
絶縁層404bの膜厚は、例えば25nm以上150nm以下とすることができる。なお
、酸化物半導体層406と接する絶縁層404bに酸化物絶縁膜を用いることで、酸化物
半導体層406に酸素を供給することも可能である。酸化物半導体中に含まれる酸素欠損
は、酸化物半導体をn型化し、電気特性の変動を引き起こすため、絶縁層404bから酸
素を供給し、酸素欠損を補填することは、信頼性の向上に有効である。
【0114】
または、ゲート絶縁層404として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添
加されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムア
ルミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh
-k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0115】
また、トランジスタ450において、酸化物半導体層406の上層に接して設けられる絶
縁層408としては、酸素を含む絶縁層(酸化物絶縁層)、換言すると酸素を放出するこ
とが可能な絶縁層を含むことが好ましい。絶縁層408から酸素を放出することで、酸化
物半導体層406(より具体的にはチャネルが形成される第1の層406a)へ酸素を供
給し、酸化物半導体層406の膜中又は界面の酸素欠損を補填することが可能となるため
である。なお、酸素を放出することが可能な絶縁層としては、酸化シリコン層、酸化窒化
シリコン層、又は酸化アルミニウム層を適用することができる。
【0116】
本実施の形態では、絶縁層408を、絶縁層408a及び絶縁層408bの積層構造とし
、絶縁層408aとして、酸化物半導体の酸素欠損を低減することが可能な酸化物絶縁膜
を用い、絶縁層408bとして外部からの不純物が酸化物半導体層406に移動するのを
防ぐことが可能な窒化物絶縁膜を用いている。以下に、絶縁層408aとして好適に用い
ることが可能な酸化物絶縁膜、及び絶縁層408bとして好適に用いることが可能な窒化
物絶縁膜の詳細について説明する。
【0117】
酸化物絶縁膜は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用
いて形成する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加
熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸
化物絶縁膜は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018
atoms/cm以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm以上である酸
化物絶縁膜である。なお、上記TDS分析時における基板温度としては100℃以上70
0℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0118】
絶縁層408aとして用いることが可能な酸化物絶縁膜としては、厚さが30nm以上5
00nm以下、好ましくは50nm以上400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリ
コン等を用いることができる。
【0119】
絶縁層408bとして用いることが可能な窒化物絶縁膜は、酸素、水素、水、アルカリ金
属、アルカリ土類金属等のブロッキング効果を有する。絶縁膜124として窒化物絶縁膜
を設けることで、半導体層110からの酸素の外部への拡散と、外部から半導体層110
への水素、水等の侵入を防ぐことができる。窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化
酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、酸素、水素、
水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜の代わ
りに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸素
、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸
化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イ
ットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
【0120】
<トランジスタの構成例2>
図13に、トランジスタ450の変形例としてトランジスタ460を図示する。図13
A)は、トランジスタ460の平面図であり、図13(B)は、図13(A)のV2-W
2における断面図であり、図13(C)は、図13(A)のX2-Y2における断面図で
ある。
【0121】
図13に示すトランジスタ460は、基板400上に設けられたゲート電極層402と、
ゲート電極層402上のゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層404上に設けられ、ゲー
ト電極層402と互いに重なる酸化物半導体層406と、酸化物半導体層を介してゲート
絶縁層404と互いに重なる絶縁層408と、絶縁層408に設けられたコンタクトホー
ルにおいて酸化物半導体層406と電気的に接続するソース電極層410a及びドレイン
電極層410bとを含む。トランジスタ460において、ゲート絶縁層404は、絶縁層
404a及び絶縁層404bを含む。また、絶縁層408は、絶縁層408a及び絶縁層
408bを含む。
【0122】
図13に示すトランジスタ460は、ソース電極層410a及びドレイン電極層410b
と、絶縁層408との積層順が、図12に示すトランジスタ450と相違する。すなわち
、トランジスタ450では、島状の酸化物半導体層406を覆うようにソース電極層41
0a及びドレイン電極層410bとなる導電膜を形成後、該導電膜を加工してソース電極
層410a及びドレイン電極層410bを形成し、ソース電極層410a及びドレイン電
極層410bから露出した酸化物半導体層406の一部を覆うようにソース電極層410
a及びドレイン電極層410b上に絶縁層408を形成する。従って、トランジスタ45
0では島状の酸化物半導体層406の側面及び上面の一部に接するように、ソース電極層
410a及びドレイン電極層410bが形成される。
【0123】
一方、トランジスタ460では、島状の酸化物半導体層406を覆うように絶縁層408
を形成し、絶縁層408にコンタクトホールを形成した後、該コンタクトホールにおいて
酸化物半導体層406と接続するソース電極層410a及びドレイン電極層410bを形
成する。従って、トランジスタ460では、酸化物半導体層406の上面の一部に接する
ようにソース電極層410a及びドレイン電極層410bが形成される。但し、絶縁層4
08へのコンタクトホールの形成条件によっては、酸化物半導体層406の一部が同時に
エッチングされる場合がある。例えば、第2の層406bと絶縁層408にコンタクトホ
ールが形成され、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bと第1の層406a
とが接する場合がある。
【0124】
トランジスタ460に含まれるその他の構成は、トランジスタ450と同様の構成とする
ことができる。
【0125】
<トランジスタの作製方法1>
以下に、トランジスタ460の作製方法の一例について、図14を参照して説明する。
【0126】
まず、基板400上に、ゲート電極層402(これと同じ層で形成される配線を含む)を
形成し、ゲート電極層402上にゲート絶縁層404を形成する(図14(A)参照)。
【0127】
基板400の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板400として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの
単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、S
OI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたもの
を、基板400として用いてもよい。なお、基板400として、ガラス基板を用いる場合
、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)
、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)
、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表
示装置を作製することができる。
【0128】
また、基板400として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ460
を形成してもよい。本発明の一態様の半導体装置に含まれる酸化物半導体層は、室温で成
膜することが可能であるため、耐熱性の低い可撓性基板であっても好適に用いることが可
能である。または、基板400とトランジスタ460との間に剥離層を設けてもよい。剥
離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板400より分離し、
他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ460は耐熱性の劣
る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0129】
ゲート電極層402の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニ
ウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金
材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層402としてリン等の不純物元
素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイド等のシ
リサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層402は単層構造としてもよいし、積層構造と
してもよい。ゲート電極層402はテーパ形状としてもよく、例えばテーパ角を15°以
上70°以下とすればよい。ここで、テーパ角とは、テーパ形状を有する層の側面と、当
該層の底面との間の角度を指す。
【0130】
また、ゲート電極層402の材料は、酸化インジウム酸化スズ、酸化タングステンを含む
インジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むイ
ンジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、酸化インジウム酸化亜鉛、酸
化ケイ素を添加したインジウムスズ酸化物等の導電性材料を適用することもできる。
【0131】
または、ゲート電極層402の材料として、窒素を含むIn-Ga-Zn系酸化物、窒素
を含むIn-Sn系酸化物、窒素を含むIn-Ga系酸化物、窒素を含むIn-Zn系酸
化物、窒素を含むSn系酸化物、窒素を含むIn系酸化物、金属窒化物膜(窒化インジウ
ム膜、窒化亜鉛膜、窒化タンタル膜、窒化タングステン膜など)を用いてもよい。これら
の材料は、5電子ボルト以上の仕事関数を有するため、これらの材料を用いてゲート電極
層402を形成することでトランジスタのしきい値電圧をプラスにすることができ、ノー
マリオフのスイッチングトランジスタを実現できる。
【0132】
ゲート絶縁層404としては、プラズマCVD法、スパッタリング法等により、酸化シリ
コン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化アルミニウム
層、酸化ハフニウム層、酸化イットリウム層、酸化ジルコニウム層、酸化ガリウム層、酸
化タンタル層、酸化マグネシウム層、酸化ランタン層、酸化セリウム層、及び酸化ネオジ
ム層を一種以上含む絶縁層を用いることができる。なお、ゲート絶縁層404は、上述の
絶縁層の材料を用いた積層構造としてもよい。
【0133】
なお、後に形成される酸化物半導体層406と接する絶縁層404bは、酸化物絶縁層で
あることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)
を有することがより好ましい。絶縁層404bに酸素過剰領域を形成するには、例えば酸
素雰囲気下にて絶縁層404bを形成すればよい。又は、成膜後の絶縁層404bに酸素
を導入して酸素過剰領域を形成してもよい。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イ
オンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることが
できる。
【0134】
本実施の形態では、絶縁層404aとして、窒化シリコン膜を形成し、絶縁層404bと
して酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0135】
次いで、ゲート絶縁層404上に第1の層406aとなる第1の酸化物半導体膜407a
と、第2の層406bとなる第2の酸化物半導体膜407bとを積層する。
【0136】
本実施の形態において第1の酸化物半導体膜407aには、In-M-Zn酸化物(Mは
Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHf)で表記される酸化物半導
体を用いる。また、InとMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%未
満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満、
Mが75atomic%以上とする。
【0137】
また、本実施の形態において第2の酸化物半導体膜407bには、In-M-Zn酸化物
(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表
記され、第1の酸化物半導体膜407aよりもインジウムに対するMの原子数比が高い酸
化物半導体を適用する。具体的には、第1の酸化物半導体膜407aよりも元素Mを1.
5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物半
導体を用いることが好ましい。元素Mはインジウムよりも酸素と強く結合するため、酸素
欠損が生じることを抑制する機能を有する。よって、第2の酸化物半導体膜407bは第
1の酸化物半導体膜407aよりも酸素欠損が生じにくい酸化物半導体膜とすることがで
きる。
【0138】
また、第2の酸化物半導体膜407bとして、伝導帯下端のエネルギーが第1の酸化物半
導体膜407aよりも真空準位に近い酸化物半導体を適用する。例えば、第2の酸化物半
導体膜407bの伝導帯下端のエネルギーと、第1の酸化物半導体膜407aの伝導帯下
端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、また
は0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV
以下とすることが好ましい。
【0139】
例えば、第2の酸化物半導体膜407bにおいて、InとMの原子数比率は、好ましくは
、Inが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくは、I
nが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
【0140】
また、例えば、第1の酸化物半導体膜407aとしてIn:Ga:Zn=1:1:1また
は3:1:2の原子数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いることができる。また、第2の
酸化物半導体膜407bとしてIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:4、1:3:6
、1:6:4、または1:9:6の原子数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いることがで
きる。なお、第1の酸化物半導体膜407a、及び第2の酸化物半導体膜407bの原子
数比はそれぞれ、上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0141】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果
移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする
トランジスタの半導体特性を得るために、第1の酸化物半導体膜407a、第2の酸化物
半導体膜407bのキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、
原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0142】
第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bの成膜方法は、スパッ
タリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、
パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等
を適宜用いることができる。
【0143】
なお、成膜後の酸化物半導体膜中の酸素欠損を低減させるために、酸素を含む雰囲気下に
て第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bを形成することが好
ましい。また、第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bの界面
に不純物が混入しないように、第1の酸化物半導体膜407aを成膜後、大気開放するこ
となく連続的に第2の酸化物半導体膜407bを成膜することが好ましい。
【0144】
例えば、多結晶を含有するスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法によっ
て第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bを形成することで、
ナノ結晶を含む第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bを形成
することができる。
【0145】
また、第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bを成膜する際、
できる限り膜中に含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させる
には、例えば、スパッタリング法を用いて成膜を行う場合には、成膜室内を高真空排気す
るのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガス
やアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、より好ましくは-1
00℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化
物半導体膜208に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0146】
また、成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオ
ポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、
ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプは、
例えば、水素分子、水(HO)など水素原子を含む化合物、炭素原子を含む化合物、等
の排気能力が高いため、クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した膜中に含まれ
る不純物の濃度を低減できる。
【0147】
また、第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bをスパッタリン
グ法で成膜する場合、成膜に用いる金属酸化物ターゲットの相対密度(充填率)は90%
以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下とする。相対密度の高い金属酸
化物ターゲットを用いることにより、成膜される膜を緻密な膜とすることができる。
【0148】
なお、第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bは、室温下にて
成膜することが好ましい。第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜40
7bを室温下にて成膜することで、生産性よくナノ結晶を含有する酸化物半導体膜を形成
することが可能となる。
【0149】
次いで、第1の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bを所望の領域
に加工することで、第1の層406a及び第2の層406bを含む島状の酸化物半導体層
406を形成する。なお、酸化物半導体層406への加工の際に、ゲート絶縁層404の
一部(第1の層406a及び第2の層406bから露出した領域)がエッチングされ膜厚
が減少することがある。
【0150】
島状の酸化物半導体層406を形成後、熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、250
℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、より好ましくは320℃以
上370℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、
又は減圧雰囲気で行えばよい。また、熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で熱処理を行
った後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行っても
よい。ここでの加熱処理によって、ゲート絶縁層404及び酸化物半導体層406の少な
くとも一から水素や水などの不純物を除去することができる。なお、当該熱処理は、第1
の酸化物半導体膜407a及び第2の酸化物半導体膜407bを島状に加工する前に行っ
てもよい。
【0151】
次に、酸化物半導体層406上に絶縁層408を形成する(図14(C)参照)。
【0152】
絶縁層408としては、先のゲート絶縁層404と同様の材料を単層で又は積層で用いる
ことができる。
【0153】
本実施の形態では、絶縁層408を酸化物絶縁層でなる絶縁層408a及び窒化物絶縁層
でなる絶縁層408bの積層構造とし、絶縁層408aとして酸化窒化シリコン膜、絶縁
層408bとして窒化シリコン膜を形成する。なお、絶縁層408aは、化学量論的組成
よりも過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。
【0154】
絶縁層408aを形成後に熱処理を行うことが好ましい。熱処理によって、絶縁層408
aに含まれる酸素の一部を酸化物半導体層406に移動させ、酸化物半導体層406中の
酸素欠損を補填することが可能である。熱処理の条件は、酸化物半導体層406を形成後
の熱処理と同様とすることができる。
【0155】
次に、絶縁層408を所望の領域に加工することで、酸化物半導体層406に達するコン
タクトホール409を形成する(図14(D)参照)。
【0156】
なお、コンタクトホール409は、酸化物半導体層406の一部が露出するように形成す
る。コンタクトホール409の形成時に、酸化物半導体層406の第2の層406bを少
なくとも一部を除去して、該コンタクトホール409と重なる第2の層406bの膜厚を
低減することが好ましい。または、コンタクトホール409の形成時に第1の層406a
の一部が露出するように第2の層406bにコンタクトホールを形成することが好ましい
【0157】
第2の層406bの一部を除去、又は第2の層406bにコンタクトホールを形成するこ
とで、酸化物半導体層406において、後に形成されるソース電極層410a及びドレイ
ン電極層410bと接する位置の膜厚をその他の膜厚よりも低減することができる。これ
によって、酸化物半導体層406とソース電極層410a及びドレイン電極層410bと
のコンタクト抵抗を低減することができるため好ましい。上述したように、第2の層40
6bは、第1の層406aと比較して、インジウムに対して元素M(Mは、Al、Ga、
Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf)の原子数比が高い領域である。インジウム
に対する元素Mの原子数比が高い程、酸化物半導体層のエネルギーギャップ(バンドギャ
ップ)が大きくなるため、第2の層406bは、第1の層406aよりも絶縁性の高い酸
化物膜である。従って、後に形成されるソース電極層410a及びドレイン電極層410
bと、酸化物半導体層406とのコンタクト抵抗を低減するためには、第2の層406b
の膜厚を低減又は第2の層406bを一部除去することは有効である。
【0158】
コンタクトホール409の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いること
ができる。ただし、コンタクトホール409の形成方法としては、これに限定されず、ウ
エットエッチング法、またはドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた
形成方法としてもよい。
【0159】
次いで、コンタクトホール409及び絶縁層408上に導電膜を形成し、これを加工する
ことで、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bを形成する(図14(E)参
照)。
【0160】
ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとなる導電膜の材料としては、アルミ
ニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀
、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単
層構造または積層構造として用いることができる。例えば、アルミニウム膜上にチタン膜
を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅-マグネシウ
ム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、
そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらに
その上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリ
ブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または
銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造
等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いても
よい。また、導電膜は、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0161】
以上の工程によって、チャネル保護型のトランジスタ460を形成することができる。
【0162】
<半導体装置の構成例3>
図15にトランジスタ350の構成例を示す。トランジスタ350は、実施の形態1で図
3を用いて説明した積層構造を有するトップゲート構造のトランジスタである。図15
A)は、トランジスタ350の平面図であり、図15(B)は図15(A)のV3-W3
における断面図であり、図15(C)は図15(A)のX3-Y3における断面図である
【0163】
なお、トランジスタ350の構成要素は、積層順が異なる以外は多くの部分で先に示した
トップゲート構造のトランジスタと共通している。よって、詳細な構成については、先の
説明を参酌することが可能であるため記載を省略することがある。
【0164】
図15に示すトランジスタ350は、基板300上に設けられた絶縁層308上に、島状
の酸化物半導体層316と、酸化物半導体層316と電気的に接続するソース電極層31
0a及びドレイン電極層310bと、ソース電極層310a及びドレイン電極層310b
から露出した酸化物半導体層316の一部と接するゲート絶縁層304と、ゲート絶縁層
304を介して酸化物半導体層316と互いに重なるゲート電極層302と、を含む。
【0165】
トランジスタ350に含まれる酸化物半導体層316は、チャネルが形成される第1の層
316aと、第1の層316aと絶縁層308との間の第2の層316bと、第1の層3
16aとゲート絶縁層304との間の第3の層316cと、の積層構造を含む。第1の層
316a、第2の層316b及び第3の層316cはそれぞれナノ結晶を含む酸化物半導
体層であり、実施の形態1で示した第1の層106a、第2の層106b及び第3の層1
06cにそれぞれ相当する。
【0166】
また、第1の層316a、第2の層316b及び第3の層316cは、それぞれインジウ
ム及び亜鉛を構成元素として含み、且つ、第2の層316b及び第3の層316cの伝導
帯下端のエネルギーは、それぞれ第1の層316aの伝導帯下端のエネルギーよりも0.
05eV以上2eV以下の範囲で真空準位に近い。
【0167】
トランジスタ350において、下地絶縁層として機能する絶縁層308は、基板300か
らの不純物の拡散を防止する役割を有する他、第2の層316b及び/又は第1の層31
6aに酸素を供給する役割を担う。よって、絶縁層308には酸素を含む絶縁層を用いる
ものとする。詳細は、絶縁層408aと同様の構成とすることができる。絶縁層308か
ら酸素が供給されることで、酸化物半導体層316における酸素欠損を低減することが可
能となる。なお、基板300に他の半導体素子が形成されている場合、絶縁層308は、
層間絶縁膜としての機能も有する。その場合は、表面が平坦になるようにCMP(Che
mical Mechanical Polishing)法等で平坦化処理を行うこと
が好ましい。
【0168】
<半導体装置の構成例4>
図16にトランジスタ360の構成例を示す。トランジスタ360は、トランジスタ35
0とは一部が異なる構成を有するトップゲート構造のトランジスタである。図16(A)
は、トランジスタ360の平面図であり、図16(B)は図16(A)のV4-W4にお
ける断面図であり、図16(C)は図16(A)のX4-Y4における断面図である。
【0169】
図16に示すトランジスタ360は、基板300上に設けられた絶縁層308上に、島状
の酸化物半導体層316と、酸化物半導体層316と電気的に接続するソース電極層31
0a及びドレイン電極層310bと、酸化物半導体層316と接するゲート絶縁層304
と、ゲート絶縁層304を介して酸化物半導体層316と互いに重なるゲート電極層30
2と、を含む。
【0170】
酸化物半導体層316は、第1の層316a、第2の層316b及び第3の層316cを
含む。第2の層316bは絶縁層308上に接して設けられ、第1の層316aは第2の
層316b上に接して設けられる。ソース電極層310a及びドレイン電極層310bは
、島状の第2の層316b及び第1の層316aの一側面及び第1の層316aの上面の
一部を覆うように設けられる。また、第3の層316cは、ソース電極層310a及びド
レイン電極層310b上に位置し、ソース電極層310a及びドレイン電極層310bか
ら露出した第1の層316aの一部と接している。
【0171】
図16(B)に示すように、トランジスタ360はW長方向の断面において、島状の第2
の層316b及び第1の層316aの側面を第3の層316cが覆い、さらに第3の層3
16cの側面をゲート絶縁層304によって覆う構成を有する。当該構成とすることで、
酸化物半導体層316のW長方向端部において生じうる寄生チャネルの影響を低減するこ
とができる。
【0172】
また、図16(A)及び図16(C)に示すように、第3の層316c及びゲート絶縁層
304は、ゲート電極層302と同一の平面形状を有しており、換言すると、断面図にお
いて第3の層316cの上端部は、ゲート絶縁層304の下端部と一致し、ゲート絶縁層
304の上端部は、ゲート電極層302の下端部と一致する。このような形状は、ゲート
電極層302をマスクとして(または、ゲート電極層302を形成したマスクと同じマス
クを用いて)、第3の層316c及びゲート絶縁層304を加工することで、形成するこ
とができる。なお、本明細書等において「同一」又は「一致」の表現は、厳密に同一、又
は一致であることを要しない趣旨で用いるものであり、略同一又は略一致を範疇に含む。
例えば、同一のマスクを用いたエッチングによって得られた形状における一致の程度を包
含する。
【0173】
<半導体装置の作製方法2>
図16に示すトランジスタ360の作製方法の一例を図17を用いて説明する。
【0174】
まず、基板300上に、絶縁層308及び第2の層316bとなる第2の酸化物半導体膜
317b及び第1の層316aとなる第1の酸化物半導体膜317aを形成する(図17
(A)参照)。
【0175】
絶縁層308は、単層としても積層としてもよい。但し、少なくとも後に形成される酸化
物半導体層316と接する領域は、酸素を含む材料で形成する。また、過剰に酸素を含む
層とすることが好ましい。
【0176】
また、絶縁層308は、膜中の水素濃度が低減されていることが好ましい。よって、絶縁
層308を成膜後、水素の除去を目的とした熱処理(脱水化処理又は脱水素化処理)を行
うことが好ましい。なお、熱処理によって絶縁層308から酸素が脱離することがある。
そのため、脱水化又は脱水素化処理を行った絶縁層308に対して酸素を導入する処理を
行うことが好ましい。
【0177】
第2の酸化物半導体膜317bは、第2の酸化物半導体膜407bと同様の材料及び方法
で形成することができる。また、第1の酸化物半導体膜317aは、第1の酸化物半導体
膜407aと同様の材料及び方法で形成することができる。
【0178】
第2の酸化物半導体膜317b及び第1の酸化物半導体膜317aを形成後、熱処理を行
うことが好ましい。熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上50
0℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、又は減
圧雰囲気で行えばよい。また、熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で熱処理を行った後
に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。
【0179】
次いで、第2の酸化物半導体膜317b及び第1の酸化物半導体膜317aを加工して島
状の第2の層316b及び第1の層316aを形成する。ここでは、第2の層316b及
び第1の層316aは同一のマスクを用いたエッチングによって加工することができる。
よって、第2の層316bと第1の層316aの平面形状は同一であり、第2の層316
bの上端部と第1の層316aの下端部とは一致している。
【0180】
なお、第2の層316b及び第1の層316aへの加工の際に、第2の酸化物半導体膜3
17bのオーバーエッチングによって絶縁層308の一部(島状の第2の層316bから
露出した領域)がエッチングされ膜厚が減少することがある。
【0181】
次に、第1の層316a上に導電膜を形成し、該導電膜を加工してソース電極層310a
及びドレイン電極層310bを形成する(図17(B)参照)。
【0182】
なお、本実施の形態において、ソース電極層310a及びドレイン電極層310bの端部
は階段状に複数の段を設けた形状とする。当該端部の加工は、アッシングによってレジス
トマスクを後退させる工程とエッチングの工程を交互に複数回行うことで形成することが
できる。
【0183】
なお、本実施の形態においては、ソース電極層310a及びドレイン電極層310bの端
部に二つの段を設けた形状を例示しているが、段数は三つ以上であってもよいし、加工途
中にレジストのアッシングを行わずに段数を1つとしてもよい。ソース電極層310a及
びドレイン電極層310bの膜厚が厚いほど、当該段数を増やすことが好ましい。なお、
ソース電極層310a及びドレイン電極層310bの端部は対称的でなくともよい。また
、各階段形状の上面と断面との間に任意の曲率半径を有する曲面が形成されていてもよい
【0184】
ソース電極層310a及びドレイン電極層310bを上記のような複数の段を設けた形状
とすることで、それらの上方に形成される膜、具体的には、第3の層316c、ゲート絶
縁層304などの被覆性が向上し、トランジスタの電気特性や長期信頼性を向上させるこ
とができる。
【0185】
なお、ソース電極層310a及びドレイン電極層310bの加工の際に、導電膜のオーバ
ーエッチングによって、絶縁層308の一部及び第1の層316aの一部(ソース電極層
310a及びドレイン電極層310bから露出した領域)がエッチングされ膜厚が減少す
ることがある。
【0186】
なお、ソース電極層310a及びドレイン電極層310bとなる導電膜が残渣物として第
1の層316a上に残存すると、該残渣物が第1の層316a中又は界面において不純物
準位を形成することがある。または、該残渣物によって、第1の層316aから酸素が引
き抜かれてしまい、酸素欠損が形成されることがある。
【0187】
よって、ソース電極層310a及びドレイン電極層310bを形成後、第1の層316a
表面に該残渣物除去処理を施してもよい。残渣物除去処理は、エッチング(例えば、ウェ
ットエッチング)による処理、もしくは、酸素又は一酸化二窒素を用いたプラズマ処理に
よって行うことができる。当該残渣物除去処理によって、ソース電極層310a及びドレ
イン電極層310b間に露出した第1の層316aの一部の膜厚が1nm以上3nm以下
程度減少することがある。
【0188】
次いで、ソース電極層310a及びドレイン電極層310b上に第3の層316cとなる
第3の酸化物半導体膜317c及びゲート絶縁層304となるゲート絶縁膜303を積層
して形成する(図17(C)参照)。
【0189】
なお、第3の酸化物半導体膜317cとゲート絶縁膜303とを大気に開放せずに連続的
に形成すると、第3の酸化物半導体膜317c表面に水素や水分などの不純物が吸着する
ことを防止することができるため、好ましい。
【0190】
第3の酸化物半導体膜317cは、第2の酸化物半導体膜317bと同様の材料及び方法
を用いて形成することができる。
【0191】
ゲート絶縁膜303は、ゲート絶縁層404と同様の材料及び方法を用いて形成すること
ができる。
【0192】
次いで、ゲート絶縁膜403上にゲート電極層302を形成する。その後、該ゲート電極
層302をマスクとして第3の酸化物半導体膜317c及びゲート絶縁膜303を加工し
て、第3の層316c及びゲート絶縁層304を形成する(図17(D)参照)。ゲート
電極層302をマスクとして自己整合的に第3の層316c及びゲート絶縁層304の加
工を行うと、マスク枚数を増加することがないため好適である。
【0193】
ゲート電極層302は、ゲート電極層402と同様の材料及び方法を用いて形成すること
ができる。
【0194】
第3の酸化物半導体膜317cを第3の層316cへと加工することで、第3の層316
cに含有されるインジウムの外方拡散を抑制することができる。インジウムの外方拡散は
、トランジスタの電気特性の変動を引き起こす要因や、工程中の成膜室内の汚染要因とな
るため、ゲート電極層302をマスクとした第3の層316cへの加工は効果的である。
【0195】
以上によって、トランジスタ360を作製することができる。
【0196】
本実施の形態で示すトランジスタは、実施の形態1の積層構造を含み、酸化物半導体層に
おいてチャネルが形成される第1の層と絶縁層との間に、第3の層を有することで、酸化
物半導体層の界面とチャネルを遠ざけることができるため、界面準位のチャネルへの影響
を抑制することが可能となる。また、第1の層乃至第3の層は、非晶質酸化物半導体と比
較して欠陥準位密度の低減されたナノ結晶酸化物半導体で構成される。欠陥準位密度の低
減された第1の層乃至第3の層を含む酸化物半導体層をトランジスタに用いることで、当
該トランジスタの電気特性の変動を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0197】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0198】
(実施の形態3)
本発明の一態様に係る半導体装置の一例として、論理回路であるNOR型回路の回路図の
一例を図18(A)に示す。図18(B)はNAND型回路の回路図である。
【0199】
図18(A)に示すNOR型回路において、pチャネル型トランジスタであるトランジス
タ801、802は、チャネル形成領域に酸化物半導体以外の半導体材料(例えば、シリ
コンなど)を用いたトランジスタとし、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ8
03、804は、酸化物半導体を含み実施の形態2で示すトランジスタと同様な構造を有
するトランジスタを用いる。
【0200】
シリコンなどの半導体材料を用いたトランジスタは高速動作が容易である。一方、酸化物
半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0201】
論理回路の小型化のために、nチャネル型のトランジスタであるトランジスタ803、8
04は、pチャネル型のトランジスタであるトランジスタ801、802上に積層される
ことが好ましい。例えば、単結晶シリコン基板を用いてトランジスタ801、802を形
成し、絶縁層を介してトランジスタ801、802上にトランジスタ803、804を形
成することが可能である。
【0202】
また、図18(B)に示すNAND型回路では、pチャネル型トランジスタであるトラン
ジスタ811、814は、チャネル形成領域に酸化物半導体以外の半導体材料(例えば、
シリコンなど)を用いたトランジスタとし、nチャネル型トランジスタであるトランジス
タ812、813は、酸化物半導体層を含み、上記実施の形態2で示すトランジスタと同
様な構造を有するトランジスタを用いる。
【0203】
また、図18(A)に示すNOR回路と同様に、論理回路の小型化のために、nチャネル
型のトランジスタであるトランジスタ812、813は、pチャネル型のトランジスタで
あるトランジスタ811、814上に積層されることが好ましい。
【0204】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流
の極めて小さいトランジスタを適用することで、消費電力を十分に低減することができる
【0205】
また、異なる半導体材料を用いた半導体素子を積層することにより、微細化及び高集積化
を実現し、かつ安定で高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製
方法を提供することができる。
【0206】
また、本発明の一態様に係る酸化物半導体層を含むトランジスタの構成を適用することで
、信頼性が高く、安定した特性を示すNOR型回路とNAND型回路を提供することがで
きる。
【0207】
なお、本実施の形態では、実施の形態2に示すトランジスタを使用したNOR型回路とN
AND型回路の例を示したが、特に限定されず、実施の形態2に示すトランジスタを使用
したAND型回路やOR回路などを形成することもできる。
【0208】
または、本実施の形態や、別の実施の形態で述べたトランジスタと、表示素子とを組み合
わせて、表示装置を構成することが可能である。例えば、表示素子、表示素子を有する装
置である表示装置、発光素子、及び発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態
を用いること、又は様々な素子を有することが出来る。表示素子、表示装置、発光素子又
は発光装置の一例としては、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物及び無機物
を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑
色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電
子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GL
V)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、デジタルマイクロミラーデバイス(DM
D)、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブ、など、電気磁気的作用によ
り、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。
EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子
を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又は
SED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction El
ectron-emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装
置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプ
レイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)な
どがある。電子インク又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパー
などがある。
【0209】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0210】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況
でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置
)の一例を、図面を用いて説明する。
【0211】
図19(A)は、本実施の形態の半導体装置を示す回路図である。
【0212】
図19(A)に示すトランジスタ260は、酸化物半導体以外の半導体材料(例えば、シ
リコンなど)を用いたトランジスタを適用することができ、高速動作が容易である。また
、トランジスタ262には本発明の一態様の酸化物半導体層を含み実施の形態2で示すト
ランジスタと同様な構造を有するトランジスタを適用することができ、その特性により長
時間の電荷保持を可能とする。
【0213】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明す
るが、本実施の形態に示す半導体装置に用いるトランジスタとしては、pチャネル型トラ
ンジスタを用いることもできる。
【0214】
図19(A)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ260のソース
電極層とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ260
のドレイン電極層とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line
)とトランジスタ262のソース電極層又はドレイン電極層の一方とは、電気的に接続さ
れ、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ262のゲート電極層とは、電気
的に接続されている。そして、トランジスタ260のゲート電極層と、トランジスタ26
2のソース電極層又はドレイン電極層の他方は、容量素子264の電極の一方と電気的に
接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子264の電極の他方は電気的に
接続されている。
【0215】
図19(A)に示す半導体装置では、トランジスタ260のゲート電極層の電位が保持可
能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能であ
る。
【0216】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ
262がオン状態となる電位にして、トランジスタ262をオン状態とする。これにより
、第3の配線の電位が、トランジスタ260のゲート電極層、および容量素子264に与
えられる。すなわち、トランジスタ260のゲート電極層には、所定の電荷が与えられる
(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷
、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線
の電位を、トランジスタ262がオフ状態となる電位にして、トランジスタ262をオフ
状態とすることにより、トランジスタ260のゲート電極層に与えられた電荷が保持され
る(保持)。
【0217】
トランジスタ262のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ260のゲート電極層
の電荷は長時間にわたって保持される。
【0218】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態
で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ260のゲート
電極層に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジ
スタ260をnチャネル型とすると、トランジスタ260のゲート電極層にHighレベ
ル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ260のゲ
ート電極層にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより
低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ260を「オン
状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線
の電位をVth_HとVth_Lの間の電位Vとすることにより、トランジスタ260
のゲート電極層に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレ
ベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば
、トランジスタ260は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合に
は、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ260は「オフ
状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を
読み出すことができる。
【0219】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み
出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極層の状態
にかかわらずトランジスタ260が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_H
より小さい電位を第5の配線に与えればよい。又は、ゲート電極層の状態にかかわらずト
ランジスタ260が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位
を第5の配線に与えればよい。
【0220】
図19(B)に異なる記憶装置の構造の一形態の例を示す。図19(B)は、半導体装置
の回路構成の一例を示し、図19(C)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、
図19(B)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図19(C)に示す半導体装
置について、以下説明を行う。
【0221】
図19(B)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ262のソース電
極またはドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ262のゲー
ト電極層とは電気的に接続され、トランジスタ262のソース電極またはドレイン電極と
容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0222】
酸化物半導体を用いたトランジスタ262は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有し
ている。このため、トランジスタ262をオフ状態とすることで、容量素子254の第1
の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって
保持することが可能である。
【0223】
次に、図19(B)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込み及び保持
を行う場合について説明する。
【0224】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ262がオン状態となる電位として、トラン
ジスタ262をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の
第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ2
62がオフ状態となる電位として、トランジスタ262をオフ状態とすることにより、容
量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0225】
トランジスタ262のオフ電流は極めて小さいため、容量素子254の第1の端子の電位
(あるいは容量素子に蓄積された電荷)を長時間にわたって保持することができる。
【0226】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ262がオン状態となると、浮遊
状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254の
間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電
位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積され
た電荷)によって、異なる値をとる。
【0227】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線
BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前の
ビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、
(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態とし
て、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとす
ると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V1
)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×
VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0228】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができ
る。
【0229】
このように、図19(B)に示す半導体装置は、トランジスタ262のオフ電流が極めて
小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持するこ
とができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻
度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。ま
た、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能で
ある。
【0230】
次に、図19(C)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0231】
図19(C)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図19(B)に示したメモリセ
ル250を複数有するメモリセルアレイ251a及びメモリセルアレイ251bを有し、
下部に、メモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及びメモリセルアレイ25
1b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メ
モリセルアレイ251と電気的に接続されている。
【0232】
図19(C)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251
(メモリセルアレイ251a及びメモリセルアレイ251b)の直下に設けることができ
るため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0233】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ262とは異なる半導体材料
を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、
炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが
好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたト
ランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、前記トランジスタにより、高
速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能で
ある。
【0234】
なお、図19(C)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセ
ルアレイ251aと、メモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層
するメモリセルアレイの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルアレイを積層す
る構成としてもよい。
【0235】
トランジスタ262として、本発明の一態様の酸化物半導体層をチャネル形成領域に用い
るトランジスタを適用することによって、長期にわたり記憶内容を保持することが可能で
ある。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極
めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減すること
ができる。
【0236】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0237】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示パネルの構成について、図20を参照しながら
説明する。
【0238】
図20(A)は、本発明の一態様の表示パネルの上面図であり、図20(B)は、本発明
の一態様の表示パネルの画素に液晶素子を適用する場合に用いることができる画素回路を
説明するための回路図である。また、図20(C)は、本発明の一態様の表示パネルの画
素に有機EL素子を適用する場合に用いることができる画素回路を説明するための回路図
である。
【0239】
画素部に配置するトランジスタは、実施の形態2に従って形成することができる。また、
当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャネル
型トランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基
板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に実施の形態3に示すトランジスタを用
いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0240】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図20(A)に示す。表示装置の
基板500上には、画素部501、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路
503、信号線駆動回路504を有する。画素部501には、複数の信号線が信号線駆動
回路504から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路502、及び第
2の走査線駆動回路503から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領
域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装置
の基板500はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続
部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている
【0241】
図20(A)では、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路503、信号線
駆動回路504は、画素部501と同じ基板500上に形成される。そのため、外部に設
ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板5
00外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増え
る。同じ基板500上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ
、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0242】
<液晶パネル>
また、画素の回路構成の一例を図20(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示パネルの
画素に適用することができる画素回路を示す。
【0243】
この画素回路は、一つの画素に複数の画素電極層を有する構成に適用できる。それぞれの
画素電極層は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆動
できるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画素
電極層に印加する信号を、独立して制御できる。
【0244】
トランジスタ516のゲート配線512と、トランジスタ517のゲート配線513には
、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として
機能するソース電極層又はドレイン電極層514は、トランジスタ516とトランジスタ
517で共通に用いられている。トランジスタ516とトランジスタ517は実施の形態
2で説明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表
示パネルを提供することができる。
【0245】
トランジスタ516と電気的に接続する第1の画素電極層と、トランジスタ517と電気
的に接続する第2の画素電極層の形状について説明する。第1の画素電極層と第2の画素
電極層の形状は、スリットによって分離されている。第1の画素電極層はV字型に広がる
形状を有し、第2の画素電極層は第1の画素電極層の外側を囲むように形成される。
【0246】
トランジスタ516のゲート電極層はゲート配線512と接続され、トランジスタ517
のゲート電極層はゲート配線513と接続されている。ゲート配線512とゲート配線5
13に異なるゲート信号を与えてトランジスタ516とトランジスタ517の動作タイミ
ングを異ならせ、液晶の配向を制御できる。
【0247】
また、容量配線510と、誘電体として機能するゲート絶縁層と、第1の画素電極層また
は第2の画素電極層と電気的に接続する容量電極とで保持容量を形成してもよい。
【0248】
マルチドメイン構造は、一画素に第1の液晶素子518と第2の液晶素子519を備える
。第1の液晶素子518は第1の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成され
、第2の液晶素子519は第2の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成され
る。
【0249】
なお、図20(B)に示す画素回路は、これに限定されない。例えば、図20(B)に示
す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路な
どを追加してもよい。
【0250】
<有機ELパネル>
また、画素の回路構成の他の一例を図20(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用い
た表示パネルの画素構造を示す。
【0251】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極の一方から電子が、
他方から正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして
、電子および正孔が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、そ
の励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光
素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0252】
図20(C)は、適用可能な画素回路の一例を示す図である。ここではnチャネル型のト
ランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。なお、本発明の一態様の酸化物半導体層
は、nチャネル型のトランジスタのチャネル形成領域に用いることができる。また、当該
画素回路は、デジタル時間階調駆動を適用することができる。
【0253】
適用可能な画素回路の構成及びデジタル時間階調駆動を適用した場合の画素の動作につい
て説明する。
【0254】
画素520は、スイッチング用トランジスタ521、駆動用トランジスタ522、発光素
子524及び容量素子523を有している。スイッチング用トランジスタ521は、ゲー
ト電極層が走査線526に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一方
)が信号線525に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が駆
動用トランジスタ522のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ522は
、ゲート電極層が容量素子523を介して電源線527に接続され、第1電極が電源線5
27に接続され、第2電極が発光素子524の第1電極(画素電極)に接続されている。
発光素子524の第2電極は共通電極528に相当する。共通電極528は、同一基板上
に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0255】
スイッチング用トランジスタ521および駆動用トランジスタ522は実施の形態3で説
明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL表示
パネルを提供することができる。
【0256】
発光素子524の第2電極(共通電極528)の電位は低電源電位に設定する。なお、低
電源電位とは、電源線527に設定される高電源電位より低い電位であり、例えばGND
、0Vなどを低電源電位として設定することができる。発光素子524の順方向のしきい
値電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光素子524
に印加することにより、発光素子524に電流を流して発光させる。なお、発光素子52
4の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しき
い値電圧を含む。
【0257】
なお、容量素子523は駆動用トランジスタ522のゲート容量を代用することにより省
略できる。駆動用トランジスタ522のゲート容量については、チャネル形成領域とゲー
ト電極層との間で容量が形成されていてもよい。
【0258】
次に、駆動用トランジスタ522に入力する信号について説明する。電圧入力電圧駆動方
式の場合、駆動用トランジスタ522が十分にオンするか、オフするかの二つの状態とな
るようなビデオ信号を、駆動用トランジスタ522に入力する。なお、駆動用トランジス
タ522を線形領域で動作させるために、電源線527の電圧よりも高い電圧を駆動用ト
ランジスタ522のゲート電極層にかける。また、信号線525には、電源線電圧に駆動
用トランジスタ522の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。
【0259】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ522のゲート電極層に発光素子52
4の順方向電圧に駆動用トランジスタ522の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をか
ける。なお、駆動用トランジスタ522が飽和領域で動作するようにビデオ信号を入力し
、発光素子524に電流を流す。また、駆動用トランジスタ522を飽和領域で動作させ
るために、電源線527の電位を、駆動用トランジスタ522のゲート電位より高くする
。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子524にビデオ信号に応じた電流を流し
、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0260】
なお、画素回路の構成は、図20(C)に示す画素構成に限定されない。例えば、図20
(C)に示す画素回路にスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理
回路などを追加してもよい。
【0261】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0262】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の酸化物半導体層を用いた半導体装置および電子機器
の構成について、図21および図22を参照しながら説明する。
【0263】
図21は、本発明の一態様の酸化物半導体層を適用した半導体装置を含む電子機器のブロ
ック図である。
【0264】
図22は、本発明の一態様の酸化物半導体層を適用した半導体装置を含む電子機器の外観
図である。
【0265】
図21に示す電子機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベ
ースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッ
サ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路91
2、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918など
より構成されている。
【0266】
アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス(
IF)909を有している。また、メモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成す
ることができる。
【0267】
実施の形態2で説明するトランジスタを、メモリ回路912に適用することにより、情報
の書き込みおよび読み出しが可能な信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【0268】
また、実施の形態2で説明するトランジスタを、CPU907またはDSP908に含ま
れるレジスタ等に適用することにより、情報の書き込みおよび読み出しが可能な信頼性の
高い電子機器を提供することができる。
【0269】
なお、実施の形態2で説明するトランジスタのオフリーク電流が極めて小さい場合は、長
期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたメモリ回路912を提供でき
る。また、パワーゲーティングされている期間に、パワーゲーティング前の状態をレジス
タ等に記憶することができるCPU907またはDSP908を提供することができる。
【0270】
また、ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ91
6によって構成されている。
【0271】
表示部914はマトリクス状に配置された複数の画素を有する。画素は画素回路を備え、
画素回路はゲートドライバ916と電気的に接続されている。
【0272】
実施の形態2で説明するトランジスタを、画素回路またはゲートドライバ916に適宜用
いることができる。これにより、信頼性の高いディスプレイを提供することができる。
【0273】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機とも
いう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメ
ラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型
ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられ
る。
【0274】
図22(A)は、携帯型の情報端末であり、本体1101、筐体1102、表示部110
3a、1103bなどによって構成されている。表示部1103bはタッチパネルとなっ
ており、表示部1103bに表示されるキーボードボタン1104を触れることで画面操
作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部1103aをタッチパネルとして構成
してもよい。実施の形態3で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや
有機発光パネルを作製して表示部1103a、1103bに適用することにより、信頼性
の高い携帯型の情報端末とすることができる。
【0275】
図22(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など
)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表
示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を
制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(
イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0276】
また、図22(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としても
よい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロード
する構成とすることも可能である。
【0277】
図22(B)は、携帯音楽プレイヤーであり、本体1021には表示部1023と、耳に
装着するための固定部1022と、スピーカー、操作ボタン1024、外部メモリスロッ
ト1025等が設けられている。実施の形態3で示したトランジスタをスイッチング素子
として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1023に適用することにより、よ
り信頼性の高い携帯音楽プレイヤーとすることができる。
【0278】
さらに、図22(B)に示す携帯音楽プレイヤーにアンテナやマイク機能や無線機能を持
たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフリ
ーでの会話も可能である。
【0279】
図22(C)は、携帯電話であり、筐体1030及び筐体1031の二つの筐体で構成さ
れている。筐体1031には、表示パネル1032、スピーカー1033、マイクロフォ
ン1034、ポインティングデバイス1036、カメラ用レンズ1037、外部接続端子
1038などを備えている。また、筐体1030には、携帯電話の充電を行う太陽電池セ
ル1040、外部メモリスロット1041などを備えている。また、アンテナは筐体10
31内部に内蔵されている。実施の形態3で説明するトランジスタを表示パネル1032
に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0280】
また、表示パネル1032はタッチパネルを備えており、図22(C)には映像表示され
ている複数の操作キー1035を点線で示している。なお、太陽電池セル1040で出力
される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0281】
例えば、昇圧回路などの電源回路に用いられるパワートランジスタも実施の形態3で説明
するトランジスタの酸化物半導体層の膜厚を2μm以上50μm以下とすることで形成す
ることができる。
【0282】
表示パネル1032は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル
1032と同一面上にカメラ用レンズ1037を備えているため、テレビ電話が可能であ
る。スピーカー1033及びマイクロフォン1034は音声通話に限らず、テレビ電話、
録音、再生などが可能である。さらに、筐体1030と筐体1031は、スライドし、図
22(C)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適
した小型化が可能である。
【0283】
外部接続端子1038はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能
であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部
メモリスロット1041に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応でき
る。
【0284】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであっても
よい。
【0285】
図22(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置1050は、
筐体1051に表示部1053が組み込まれている。表示部1053により、映像を表示
することが可能である。また、筐体1051を支持するスタンド1055にCPUが内蔵
されている。実施の形態3で説明するトランジスタを表示部1053およびCPUに適用
することにより、信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0286】
テレビジョン装置1050の操作は、筐体1051が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から
出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0287】
なお、テレビジョン装置1050は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線に
よる通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向
(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0288】
また、テレビジョン装置1050は、外部接続端子1054や、記憶媒体再生録画部10
52、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子1054は、USBケーブルなど
の各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能で
ある。記憶媒体再生録画部1052では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記
憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリ
スロットに差し込まれた外部メモリ1056にデータ保存されている画像や映像などを表
示部1053に映し出すことも可能である。
【0289】
また、実施の形態2で説明するトランジスタのオフリーク電流が極めて小さい場合は、当
該トランジスタを外部メモリ1056やCPUに適用することにより、消費電力が十分に
低減された信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0290】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0291】
102 ゲート電極層
104 ゲート絶縁層
106 酸化物半導体層
106a 層
106b 層
106c 層
108 絶縁層
110 半導体層
116 酸化物半導体層
116a 層
116b 層
116c 層
124 絶縁膜
200 石英ガラス基板
202 ダミー基板
204 酸化物半導体層
208 酸化物半導体膜
208a 酸化物半導体層
208b 酸化物半導体層
210a 領域
210b 領域
250 メモリセル
251 メモリセルアレイ
251a メモリセルアレイ
251b メモリセルアレイ
253 周辺回路
254 容量素子
260 トランジスタ
262 トランジスタ
264 容量素子
300 基板
302 ゲート電極層
303 ゲート絶縁膜
304 ゲート絶縁層
308 絶縁層
310a ソース電極層
310b ドレイン電極層
314a 酸化物半導体層
314b 酸化物半導体層
316 酸化物半導体層
316a 層
316b 層
316c 層
317a 酸化物半導体膜
317b 酸化物半導体膜
317c 酸化物半導体膜
350 トランジスタ
360 トランジスタ
400 基板
402 ゲート電極層
403 ゲート絶縁膜
404 ゲート絶縁層
404a 絶縁層
404b 絶縁層
406 酸化物半導体層
406a 層
406b 層
407a 酸化物半導体膜
407b 酸化物半導体膜
408 絶縁層
408a 絶縁層
408b 絶縁層
409 コンタクトホール
410a ソース電極層
410b ドレイン電極層
450 トランジスタ
460 トランジスタ
500 基板
501 画素部
502 走査線駆動回路
503 走査線駆動回路
504 信号線駆動回路
510 容量配線
512 ゲート配線
513 ゲート配線
514 ドレイン電極層
516 トランジスタ
517 トランジスタ
518 液晶素子
519 液晶素子
520 画素
521 スイッチング用トランジスタ
522 駆動用トランジスタ
523 容量素子
524 発光素子
525 信号線
526 走査線
527 電源線
528 共通電極
801 トランジスタ
802 トランジスタ
803 トランジスタ
804 トランジスタ
811 トランジスタ
812 トランジスタ
813 トランジスタ
814 トランジスタ
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
1021 本体
1022 固定部
1023 表示部
1024 操作ボタン
1025 外部メモリスロット
1030 筐体
1031 筐体
1032 表示パネル
1033 スピーカー
1034 マイクロフォン
1035 操作キー
1036 ポインティングデバイス
1037 カメラ用レンズ
1038 外部接続端子
1040 太陽電池セル
1041 外部メモリスロット
1050 テレビジョン装置
1051 筐体
1052 記憶媒体再生録画部
1053 表示部
1054 外部接続端子
1055 スタンド
1056 外部メモリ
1101 本体
1102 筐体
1103a 表示部
1103b 表示部
1104 キーボードボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22