(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2483 20160101AFI20231128BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20231128BHJP
H01M 8/0276 20160101ALI20231128BHJP
H01M 8/16 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01M8/2483
H01M8/0258
H01M8/0276
H01M8/16
H01M4/90 Y
(21)【出願番号】P 2022090395
(22)【出願日】2022-06-02
【審査請求日】2023-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】窪田 裕次
(72)【発明者】
【氏名】真家 卓也
(72)【発明者】
【氏名】片桐 規晟
(72)【発明者】
【氏名】安田 光介
(72)【発明者】
【氏名】中内 崚河
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-519619(JP,A)
【文献】特開2018-092749(JP,A)
【文献】特開2013-084363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負極板と、
複数の正極板と、
複数の膜電極接合体と、
環状を呈する複数のシール部材と、を備え、
前記膜電極接合体は、イオン透過膜と、
有機物の脱水素反応を生じさせる酸化触媒を担持する担持層と、を有し、
前記負極板及び前記正極板は、前記膜電極接合体を挟持して交互に積層され、
前記負極板と前記膜電極接合体とで囲まれた第1空間と、前記正極板と前記膜電極接合体とで囲まれた第2空間と、を有し、
前記負極板と前記正極板との間には、前記シール部材が配置され、
前記負極板は、板状を呈する一対の負極部材が積層して構成され、前記第1空間に接続される第1流路及び第2流路を有し、
前記第1流路は、前記負極板の法線に沿った視野において前記シール部材の環の外側で前記負極板を貫通する第1主流路と、
前記環の内側で前記負極板を貫通する第1貫通孔と、
前記第1貫通孔と前記第1主流路とを接続する第1接続孔と、を有し、
前記第2流路は、前記環の外側で前記負極板を貫通する第2主流路と、
前記環の内側で前記負極板を貫通する第2貫通孔と、
前記第2貫通孔と前記第2主流路とを接続する第2接続孔と、を有し、
前記一対の負極部材の界面は、前記第1接続孔及び第2接続孔と重なるセルスタック。
【請求項2】
前記第1流路は、前記第1空間に対し前記第2流路とは反対側に設けられ、
前記負極板は、前記膜電極接合体と共に前記第1空間を形成する第1凹部を有する請求項1に記載のセルスタック。
【請求項3】
前記正極板を挟んで隣り合う2つの前記負極板に挟持される第1接続部材を有し、
前記第1接続部材は、2つの前記負極板がそれぞれ有する前記第1主流路に接続して連通し、
前記正極板は、前記第1接続部材を挿通する第1挿通孔を有する請求項1又は2に記載のセルスタック。
【請求項4】
前記正極板は、板状を呈する一対の正極部材が積層して構成され、前記第2空間に接続される第3流路及び第4流路を有し、
前記第3流路は、前記視野において前記環の内側で前記正極板を貫通する第3貫通孔と、
前記環の外側で前記正極板を貫通する第3主流路と、
前記第3貫通孔と前記第3主流路とを接続する第3接続孔と、を有し、
前記第4流路は、前記環の内側で前記正極板を貫通する第4貫通孔と、
前記環の外側で前記正極板を貫通する第4主流路と、
前記第4貫通孔と前記第4主流路とを接続する第4接続孔と、を有し、
前記一対の正極部材の界面は、前記第3接続孔及び第4接続孔と重なる請求項1に記載のセルスタック。
【請求項5】
前記第3流路は、前記第2空間に対し前記第4流路とは反対側に設けられ、
前記正極板は、前記膜電極接合体と共に前記第2空間を形成する第2凹部を有する請求項4に記載のセルスタック。
【請求項6】
前記負極板を挟んで隣り合う2つの前記正極板に挟持される第2接続部材を有し、
前記第2接続部材は、2つの前記正極板がそれぞれ有する前記第3主流路に接続して連通し、
前記負極板は、前記第2接続部材を挿通する第2挿通孔を有する請求項4に記載のセルスタック。
【請求項7】
前記正極板を挟んで隣り合う2つの前記負極板に挟持され、前記負極板同士を電気的に接続する負極接続部材を有する請求項1に記載のセルスタック。
【請求項8】
前記負極接続部材は貫通孔を有し、
前記貫通孔に挿通されるとともに、前記負極接続部材を挟持する前記負極板同士を係止する負極係止部材をさらに有する請求項7に記載のセルスタック。
【請求項9】
前記負極板を挟んで隣り合う2つの前記正極板に挟持され、前記正極板同士を電気的に接続する正極接続部材を有する請求項1に記載のセルスタック。
【請求項10】
前記正極接続部材は貫通孔を有し、
前記貫通孔に挿通されるとともに、前記正極接続部材を挟持する前記正極板同士を係止する正極係止部材をさらに有する請求項9に記載のセルスタック。
【請求項11】
前記膜電極接合体は、前記イオン透過膜に対し前記担持層とは反対側に、触媒を担持させたガス拡散層を有し、
前記触媒は、酸素還元触媒である請求項1に記載のセルスタック。
【請求項12】
前記酸化触媒は、前記有機物を嫌気的に分解する嫌気性微生物である請求項1に記載のセルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を燃料とし、有機物を代謝してエネルギーを得る微生物を電池触媒として用いた微生物燃料電池が検討されている(例えば、特許文献1参照)。燃料として排液に含まれる有機物を用いた場合、微生物燃料電池は、発電の機能と共に排液浄化の機能も有することとなる。そのため、微生物燃料電池は、環境に配慮した未使用エネルギーの回収技術として注目されている。
【0003】
特許文献1に記載の構成では、一対のアノードとカソードとを有する単セルを電気的に並列接続して集積している。このような構成の微生物燃料電池では、電池全体として高容量(例えば、大きな電気容量または高い出力密度)を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微生物燃料電池を並列接続した組電池は、高容量化できる一方で、電池全体の構成が大型化しやすい。そのため、高容量しつつ電池構成を小型化可能な構成が求められていた。
【0006】
また、このような要求は、直接型メタノール燃料電池など、有機物を含む液状燃料を用いて発電する他の構成の燃料電池においても同様に有する。
【0007】
本明細書においては、複数の単セルを並列接続して組み合わせた構成を「セルスタック」と称する。また、セルスタックを構成として含み、必要な配線、液体燃料が流動する配管を接続した電池構成の全体を指して、「液体燃料電池」と称する。セルスタックを小型化することができれば、全体構成としての液体燃料電池を小型化することができる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、従来よりも小型化が可能なセルスタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0010】
[1]複数の負極板と、複数の正極板と、複数の膜電極接合体と、環状を呈する複数のシール部材と、を備え、前記膜電極接合体は、イオン透過膜と、有機物の脱水素反応を生じさせる酸化触媒を担持する担持層と、を有し、前記負極板及び前記正極板は、前記膜電極接合体を挟持して交互に積層され、前記負極板と前記膜電極接合体とで囲まれた第1空間と、前記正極板と前記膜電極接合体とで囲まれた第2空間と、を有し、前記負極板と前記正極板との間には、前記シール部材が配置され、前記負極板は、板状を呈する一対の負極部材が積層して構成され、前記第1空間に接続される第1流路及び第2流路を有し、前記第1流路は、前記負極板の法線に沿った視野において前記シール部材の環の外側で前記負極板を貫通する第1主流路と、前記環の内側で前記負極板を貫通する第1貫通孔と、前記第1貫通孔と前記第1主流路とを接続する第1接続孔と、を有し、前記第2流路は、前記環の外側で前記負極板を貫通する第2主流路と、前記環の内側で前記負極板を貫通する第2貫通孔と、前記第2貫通孔と前記第2主流路とを接続する第2接続孔と、を有し、前記一対の負極部材の界面は、前記第1接続孔及び第2接続孔と重なるセルスタック。
【0011】
[2]前記第1流路は、前記第1空間に対し前記第2流路とは反対側に設けられ、前記負極板は、前記膜電極接合体と共に前記第1空間を形成する第1凹部を有する[1]に記載のセルスタック。
【0012】
[3]前記正極板を挟んで隣り合う2つの前記負極板に挟持される第1接続部材を有し、前記第1接続部材は、2つの前記負極板がそれぞれ有する前記第1主流路に接続して連通し、前記正極板は、前記第1接続部材を挿通する第1挿通孔を有する[1]又は[2]に記載のセルスタック。
【0013】
[4]前記正極板は、板状を呈する一対の正極部材が積層して構成され、前記第2空間に接続される第3流路及び第4流路を有し、前記第3流路は、前記視野において前記環の内側で前記正極板を貫通する第3貫通孔と、前記環の外側で前記正極板を貫通する第3主流路と、前記第3貫通孔と前記第3主流路とを接続する第3接続孔と、を有し、前記第4流路は、前記環の内側で前記正極板を貫通する第4貫通孔と、前記環の外側で前記正極板を貫通する第4主流路と、前記第4貫通孔と前記第4主流路とを接続する第4接続孔と、を有し、前記一対の正極部材の界面は、前記第3接続孔及び第4接続孔と重なる[1]から[3]のいずれか1項に記載のセルスタック。
【0014】
[5]前記第3流路は、前記第2空間に対し前記第4流路とは反対側に設けられ、前記正極板は、前記膜電極接合体と共に前記第2空間を形成する第2凹部を有する[4]に記載のセルスタック。
【0015】
[6]前記負極板を挟んで隣り合う2つの前記正極板に挟持される第2接続部材を有し、前記第2接続部材は、2つの前記正極板がそれぞれ有する前記第3主流路に接続して連通し、前記負極板は、前記第2接続部材を挿通する第2挿通孔を有する[4]又は[5]に記載のセルスタック。
【0016】
[7]前記正極板を挟んで隣り合う2つの前記負極板に挟持され、前記負極板同士を電気的に接続する負極接続部材を有する[1]から[6]のいずれか1項に記載のセルスタック。
【0017】
[8]前記負極接続部材は貫通孔を有し、前記貫通孔に挿通されるとともに、前記負極接続部材を挟持する前記負極板同士を係止する負極係止部材をさらに有する[7]に記載のセルスタック。
【0018】
[9]前記負極板を挟んで隣り合う2つの前記正極板に挟持され、前記正極板同士を電気的に接続する正極接続部材を有する[1]から[8]のいずれか1項に記載のセルスタック。
【0019】
[10]前記正極接続部材は貫通孔を有し、前記貫通孔に挿通されるとともに、前記正極接続部材を挟持する前記正極板同士を係止する正極係止部材をさらに有する[9]に記載のセルスタック。
【0020】
[11]前記膜電極接合体は、前記イオン透過膜に対し前記担持層とは反対側に、触媒を担持させたガス拡散層を有し、前記触媒は、酸素還元触媒である[1]から[10]のいずれか1項に記載のセルスタック。
【0021】
[12]前記酸化触媒は、前記有機物を嫌気的に分解する嫌気性微生物である[1]から[11]のいずれか1項に記載のセルスタック。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来よりも小型化が可能なセルスタックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態のセルスタック100を有する液体燃料電池1000の模式図である。
【
図2】
図2は、セルスタック100の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、内部負極板10A(負極板10)の構成及び周辺構成を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、内部正極板20A(正極板20)の構成及び周辺構成を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の線分VI-VIにおける、膜電極接合体30の概略矢視断面図である。
【
図8】
図8は、第1接続部材50Aを用いた組み立て工程を示す説明図である。
【
図9】
図9は、セルスタック100における第1接続部材50Aの周辺の構成の説明図である。
【
図11】
図11は、電極接続部材80を使用する様子を示す説明図である。
【
図12】
図12は、セルスタック100を有する液体燃料電池1000を使用する様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~
図12を参照しながら、本実施形態に係るセルスタックについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0025】
以下の説明においては、xyz直交座標系を設定し、このxyz直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。ここでは、水平面内の所定方向をx軸方向、水平面内においてx軸方向と直交する方向をy軸方向、x軸方向及びy軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をz軸方向とする。また、+z方向を「上」、-z方向を「下」と称することがある。この意味において、例えば部材の「上端」とは、図に示す部材の+z方向の端部を指す。
【0026】
図1は、本実施形態のセルスタック100を有する液体燃料電池1000の模式図である。液体燃料電池1000は、セルスタック100を含む電池本体1100と、電池本体1100を支持する支持台1200と、を有する。
【0027】
電池本体1100は、セルスタック100と、セルスタック100を挟持する一対のエンドプレート1110と、セルスタック100が有する燃料流路に設けられた接続バルブ1120と、を有する。
【0028】
エンドプレート1110は、一対の板状部材であり、セルスタック100を挟持して支えている。エンドプレート1110は、例えば樹脂材料で構成することができる。また、エンドプレート1110は、表面に絶縁処理を施した金属材料で構成してもよい。
【0029】
接続バルブ1120は、燃料流路101,102の端部に設けられ、外部からセルスタック100の内部に燃料を供給する配管を接続するために用いる。液体燃料電池の燃料としては、有機物が含まれる液体や、酸素を含む気体が考えられる。接続バルブ1120は、これら液体を流動させる配管を液密に接続、または気体を流動させる配管を気密に接続可能なバルブを用いることができる。
【0030】
詳しくは後述するが、セルスタック100は、内部に合計4つの燃料流路101,102を有する。接続バルブ1120は、燃料流路101,102の両端にそれぞれ設けられている。
【0031】
支持台1200は、電池本体1100を支持する基台である。支持台1200は、
図1に示すような板状部材であってもよく、枠体であってもよい。支持台1200の下面(-z側の面)には、キャスタ1210を有してもよい。
【0032】
図2は、セルスタック100の分解斜視図である。セルスタック100は、複数の負極板10と、複数の正極板20と、複数の膜電極接合体30と、複数のシール部材40と、を備える。その他、セルスタック100は、複数の第1接続部材50Aと、複数の第2接続部材50Bと、を有する。
【0033】
x方向に隣り合う負極板10及び正極板20は、膜電極接合体30を挟持して交互に積層されている。また、負極板10と正極板20との間には、環状のシール部材40が配置されている。詳細には、負極板10と正極板20との間において、負極板10と膜電極接合体30との間、及び正極板20と膜電極接合体30との間には、それぞれシール部材40が配置されている。
【0034】
詳しくは後述するが、各負極板10は、それぞれ四隅に、x方向に貫通する貫通孔である第1主流路111と、第2主流路121と、第1挿通孔19とが形成されている。また、各正極板20は、それぞれ四隅に、x方向に貫通する貫通孔である第3主流路231と、第4主流路241と、第1挿通孔19とが形成されている。これらの各貫通孔は、第1接続部材50A及び第2接続部材50Bのいずれかを介してx方向に連通し、燃料流路101,102を構成する。
【0035】
以下、各構成を順に説明する。
【0036】
[負極板]
セルスタック100は、2つの負極板10を有する。セルスタック100が有する負極板10は、セルスタック100の内部に配置される内部負極板10Aと、セルスタック100の端部に配置される端部負極板10Bを有する。内部負極板10Aは、x方向の両面が膜電極接合体30と対向と対向する。端部負極板10Bは、x方向の一方の面が膜電極接合体30と対向する。
【0037】
図3は、内部負極板10A(負極板10)の構成及び周辺構成を示す分解斜視図である。内部負極板10Aは、一対の負極部材15と、負極部材15に挟持されるシール部材41と、が積層して構成されている。
【0038】
シール部材41は、公知の液状ガスケットと併用してもよい。液状ガスケットは、x方向の視野においてシール部材41の外側に塗布し、シール部材41の機能を補助するために用いられる。なお、シール部材41の代わりに液状ガスケットのみを用いてもよい。
【0039】
負極部材15は、負極本体151と、スペーサ152とを有する。負極本体151は、x方向の視野において矩形の板状部材であり、導電性を有する。負極本体151の材料は、電極材料として通常知られた材料を採用することができる。一対の負極部材15をそれぞれ負極部材15A,15Bとしたとき、負極部材15Aが有する負極本体151Aと、負極部材15Bが有する負極本体151Bとは、いずれか一方にシール部材41を保持する溝(不図示)が設けられている他は、互いを重ね合わせた界面に対して鏡像となっている。
【0040】
スペーサ152は、x方向の視野において負極本体151の外縁と同じ外縁形状を有する環状の部材であり、絶縁性を有する。また、スペーサ152は、x方向の視野において担持層32(後述)の周囲に存在している。スペーサ152の材料は、絶縁性を有する樹脂材料や無機材料を採用することができる。スペーサ152は1つの部材であってもよく、2以上の部材で構成されていてもよい。スペーサ152は、担持層32よりも固く、高い剛性を有する。
【0041】
セルスタック100を組み立てる際、担持層32は負極板10及び正極板20に挟まれ圧縮される。一方、担持層32よりも固いスペーサ152は、圧縮に抵抗し厚さを維持する。これにより、スペーサ152は、担持層32がスペーサ152よりも薄く圧縮されることを抑制し、担持層32の厚さを制御する。
【0042】
負極部材15は、負極本体151と環状のスペーサ152とで囲まれた第1凹部10aを有する。すなわち、内部負極板10Aは、第1凹部10aを有する。なお、
図3では、スペーサ152の環の形状を矩形としているが、これに限らない。
【0043】
内部負極板10Aに対向する膜電極接合体30は、x方向の視野において、スペーサ152の内周よりも大きい。そのため、内部負極板10Aと膜電極接合体30とを重ねると、膜電極接合体30は、第1凹部10aを全て覆い、第1凹部10aとで囲まれた第1空間100Xを形成する。シール部材40は、第1空間100Xに収容されている。
【0044】
内部負極板10Aは、内部負極板10Aの上方に、第1空間100Xに接続される第1流路110を有している。第1流路110は、第1主流路111と、第1貫通孔112と、第1接続孔113とが互いに連通して形成された流路である。
【0045】
第1主流路111は、x方向の視野において、シール部材40の環の外側で内部負極板10A(負極板10)を貫通している。第1主流路111は、負極部材15A,15Bのそれぞれに形成された貫通孔111a,111bがx方向に重なり連通することで形成される。
【0046】
第1貫通孔112は、シール部材40の環の内側で内部負極板10A(負極板10)を貫通している。第1貫通孔112は、各負極部材15の負極本体151に複数形成され、y方向に配列している。
【0047】
図3では、第1貫通孔112が負極本体151に複数形成されることとしたがこれに限らず、第1貫通孔112が1つのみ形成されることとしてもよい。さらに、
図3では、第1貫通孔112をx方向の視野において円形として示しているが、これに限らず、種々の形状を採用可能である。例えば、y軸方向に長軸を有する細長い第1貫通孔112が負極本体151に1つのみ形成されることとしてもよい。
【0048】
第1接続孔113は、第1貫通孔112と第1主流路111とを接続する。第1接続孔113は、負極部材15A,15Bのそれぞれに形成された凹部113a,113bがx方向に重なり形成される。言い換えると、第1接続孔113は、一対の負極部材15の界面と重なり、一対の負極部材15の界面で凹部113a、113bに分割される構成となっている。
【0049】
第1接続孔113の周囲には、第1接続孔113を囲んでシール部材41が配置されている。一対の負極部材15のいずれか一方には、シール部材41が嵌合する溝が設けられている。
【0050】
第1接続孔113は、y方向に広がって設けられ、第1主流路111に対し複数の第1貫通孔112をまとめて接続していることとしているが、これに限らない。例えば、第1主流路111と第1貫通孔112とを第1接続孔113により一対一で接続する構成であってもよい。
【0051】
また、内部負極板10Aは、第1空間100Xに対し第1流路110とは反対側である内部負極板10Aの下方に、第1空間100Xに接続される第2流路120を有している。第2流路120は、第2主流路121と、第2貫通孔122と、第2接続孔123とが互いに連通して形成された流路である。
【0052】
第2主流路121は、x方向の視野において、シール部材40の環の外側で内部負極板10A(負極板10)を貫通している。第2主流路121は、負極部材15A,15Bのそれぞれに形成された貫通孔121a,121bがx方向に重なり連通することで形成される。
【0053】
第2貫通孔122は、シール部材40の環の内側で内部負極板10A(負極板10)を貫通している。第2貫通孔122は、各負極部材15の負極本体151に複数形成され、y方向に配列している。第2貫通孔122は、第1貫通孔112と同数形成されている。
【0054】
第2接続孔123は、第2貫通孔122と第2主流路121とを接続する。第2接続孔123は、負極部材15A,15Bのそれぞれに形成された凹部123a,123bがx方向に重なり形成される。言い換えると、第2接続孔123は、一対の負極部材15の界面と重なり、一対の負極部材15の界面で凹部123a、123bに分割される構成となっている。
【0055】
第2接続孔213は、y方向に広がって設けられ、第2主流路121に対し複数の第2貫通孔122をまとめて接続していることとしているが、これに限らない。例えば、第2主流路121と第2貫通孔122とを第2接続孔123により一対一で接続する構成であってもよい。
【0056】
第2流路120は、第1流路110に対してx方向で点対称に設けられており、第1流路110と同様の構成を有する。これにより、負極本体151の上下を反転させたとしても同じ形状となり、組み立てが容易となる。
【0057】
なお、第1流路110と第2流路120とは同様の構成としたが、それぞれ異なる構成であってもよい。また、第1流路110と第2流路120との配置は点対称でなくてもよい。
【0058】
内部負極板10Aが有する第1流路110は、x方向の視野において、シール部材40の環の外側に形成された第1主流路111から、内部負極板10Aの内部に形成された第1接続孔113を介して、シール部材40の環の内側に形成された第1貫通孔112へとつながる流路であり、内部負極板10Aの内部で屈曲した流路である。これにより、第1流路110はシール部材40を迂回してシール部材40の環の外側と内側とを接続することができ、第1流路110とシール部材40とが干渉せず、シール部材40による封止を行うことができる。
【0059】
同様に、内部負極板10Aが有する第2流路120は、x方向の視野において、シール部材40の環の外側に形成された第2主流路121から、内部負極板10Aの内部に形成された第2接続孔123を介して、シール部材40の環の内側に形成された第2貫通孔122へとつながる流路であり、内部負極板10Aの内部で屈曲した流路である。これにより、第2流路120はシール部材40を迂回してシール部材40の環の外側と内側とを接続することができ、第2流路120とシール部材40とが干渉せず、シール部材40による封止を行うことができる。
【0060】
また、内部負極板10Aが一対の負極部材15の積層体であることにより、内部負極板10Aの内部において屈曲する複雑な構成の流路(第1流路110、第2流路120)を容易に形成することができる。
【0061】
また、内部負極板10Aは、第1主流路111及び第2主流路121とは異なる対角の位置に、内部負極板10Aの厚さ方向に貫通する第1挿通孔19を有する。第1挿通孔19は、負極部材15A,15Bのそれぞれに形成された貫通孔がx方向に重なり連通することで形成される。第1挿通孔19の機能については、後述する。
【0062】
[正極板]
図2に示すように、セルスタック100は、2つの正極板20を有する。セルスタック100が有する正極板20は、セルスタック100の内部に配置される内部正極板20Aと、セルスタック100の端部に配置される端部正極板20Bを有する。内部正極板20Aは、x方向の両面が膜電極接合体30と対向と対向する。端部正極板20Bは、x方向の一方の面が膜電極接合体30と対向する。
【0063】
図4は、内部正極板20A(正極板20)の構成及び周辺構成を示す分解斜視図である。内部正極板20Aは、一対の正極部材25と、正極部材25に挟持されるシール部材42と、が積層して構成されている。
【0064】
正極部材25は、正極本体251と、スペーサ252とを有する。正極本体251は、x方向の視野において矩形の板状部材であり、導電性を有する。正極本体251の材料は、上述の負極本体151と同様とすることができる。一対の正極部材25をそれぞれ正極部材25A,25Bとしたとき、正極部材25Aが有する正極本体251Aと、正極部材25Bが有する正極本体251Bとは、いずれか一方にシール部材42を保持する溝(不図示)が設けられている他は、互いを重ね合わせた界面に対して鏡像となっている。
【0065】
スペーサ252は、x方向の視野において正極本体251の外縁と同じ外縁形状を有する環状の部材であり、絶縁性を有する。スペーサ252の材料及び構成は、上述のスペーサ152と同様とすることができる。
【0066】
正極部材25は、正極本体251と環状のスペーサ252とで囲まれた第2凹部20aを有する。すなわち、内部正極板20Aは、第2凹部20aを有する。なお、
図4では、スペーサ252の環の形状を矩形としているが、これに限らない。
【0067】
内部正極板20Aに対向する膜電極接合体30は、x方向の視野において、スペーサ252の内周よりも大きい。そのため、内部正極板20Aと膜電極接合体30とを重ねると、膜電極接合体30は、第2凹部20aを全て覆い、第2凹部20aとで囲まれた第2空間100Yを形成する。シール部材40は、第2空間100Yに収容されている。
【0068】
内部正極板20Aは、内部正極板20Aの上方に、第2空間100Yに接続される第3流路230を有している。第3流路230は、第3主流路231と、第3貫通孔232と、第3接続孔233とが互いに連通して形成された流路である。第3主流路231は、x方向において内部負極板10Aの第1挿通孔19と重なる位置に設けられている。
【0069】
第3流路230は、上述の第1流路110と同様の構成を採用することができる。すなわち、第3流路230の構成は、上述した第1流路110の第1主流路111、第1貫通孔112、第1接続孔113を、それぞれ第3主流路231、第3貫通孔232、第3接続孔233と読み替えることにより理解することができる。
【0070】
第3主流路231は、正極部材25A,25Bのそれぞれに形成された貫通孔231a,231bがx方向に重なり連通することで形成される。
【0071】
第3接続孔233は、一対の正極部材25の界面と重なり、一対の正極部材25の界面で凹部233a、233bに分割される構成となっている。
【0072】
また、内部正極板20Aは、第2空間100Yに対し第3流路230とは反対側である内部正極板20Aの下方に、第2空間100Yに接続される第4流路240を有している。第4流路240は、第4主流路241と、第4貫通孔242と、第4接続孔243とが互いに連通して形成された流路である。第4主流路241は、x方向において内部負極板10Aの第1挿通孔19と重なる位置に設けられている。
【0073】
第4流路240は、上述の第2流路120と同様の構成を採用することができる。すなわち、第4流路240の構成は、上述した第2流路120の第2主流路121、第2貫通孔122、第2接続孔123を、それぞれ第4主流路241、第4貫通孔242、第4接続孔243と読み替えることにより理解することができる。
【0074】
第4主流路241は、正極部材25A,25Bのそれぞれに形成された貫通孔241a,241bがx方向に重なり連通することで形成される。
【0075】
第4接続孔243は、一対の正極部材25の界面と重なり、一対の正極部材25の界面で凹部243a、243bに分割される構成となっている。
【0076】
正極部材25(正極本体251)は、第2凹部20aに面する面において、第3貫通孔232と第4貫通孔242をz方向に接続する溝25aを有する。溝25aは、正極板20に供給する酸素含有気体(後述)が流動する流路として機能する。
【0077】
内部正極板20Aが有する第3流路230は、x方向の視野において、シール部材40の環の外側に形成された第3主流路231から、内部正極板20Aの内部に形成された第3接続孔233を介して、シール部材40の環の内側に形成された第3貫通孔232へとつながる流路であり、内部正極板20Aの内部で屈曲した流路である。これにより、第3流路230はシール部材40を迂回してシール部材40の環の外側と内側とを接続することができ、第3流路230とシール部材40とが干渉せず、シール部材40による封止を行うことができる。
【0078】
同様に、内部正極板20Aが有する第4流路240は、x方向の視野において、シール部材40の環の外側に形成された第4主流路241から、内部正極板20Aの内部に形成された第4接続孔243を介して、シール部材40の環の内側に形成された第4貫通孔242へとつながる流路であり、内部正極板20Aの内部で屈曲した流路である。これにより、第4流路240はシール部材40を迂回してシール部材40の環の外側と内側とを接続することができ、第4流路240とシール部材40とが干渉せず、シール部材40による封止を行うことができる。
【0079】
また、内部正極板20Aが一対の正極部材25の積層体であることにより、内部正極板20Aの内部において屈曲する複雑な構成の流路(第3流路230、第4流路240)を容易に形成することができる。
【0080】
また、内部正極板20Aは、第3主流路231及び第4主流路241とは異なる対角の位置に、内部正極板20Aの厚さ方向に貫通する第2挿通孔29を有する。第2挿通孔29は、正極部材25A,25Bのそれぞれに形成された貫通孔がx方向に重なり連通することで形成される。第2挿通孔29の機能については、後述する。
【0081】
[膜電極接合体]
図5は、膜電極接合体30の模式図である。
図6は、
図5の線分VI-VIにおける、膜電極接合体30の概略矢視断面図である。膜電極接合体30は、イオン透過膜31と、担持層32と、ガス拡散層33と、を有する。
【0082】
イオン透過膜31は、陽イオンである水素イオン(H+)を透過させる機能を有する。イオン透過膜31は、公知のイオン透過膜を用いることができる。
【0083】
担持層32は、イオン透過膜31の一方側に設けられた層であり、有機物の脱水素反応と水の酸化反応とを生じさせる酸化触媒を担持する。酸化触媒は、液体燃料電池1000において用いられる液体燃料に応じて適切なものを用いる。例えば、液体燃料が有機物を含む排液である場合には、酸化触媒として有機物を嫌気的に分解する嫌気性微生物を用いる。また、液体燃料がメタノールである場合には、酸化触媒としてメタノールの脱水素反応と水の酸化反応とを生じさせる白金系触媒を用いる。
【0084】
担持層32は、導電性を有する多孔質材料を用いて形成される。多孔質材料の細孔径は、用いる液体燃料を拡散しやすい大きさが好ましく、予め予備実験で設定することが好ましい。このような材料としては、グラファイトフェルトが挙げられる。
【0085】
また、担持層32は、セルスタックを組み立てたとき、負極板10(負極本体151A)と接している。
【0086】
ガス拡散層33は、イオン透過膜31に対し担持層32とは反対側に形成された層である。ガス拡散層33は、酸素還元触媒を担持している。酸素還元触媒は、非白金触媒であることが好ましく、炭素系触媒であることがより好ましく、窒素を含有するカーボンアロイ触媒であることがさらに好ましい。
【0087】
ガス拡散層33は、導電性を有する多孔質材料を用いて形成される。例えば、ガス拡散としては、不織布状のカーボンペーパーを挙げることができる。また、ガス拡散層33は、撥水性を有していると好ましい。このような材料としては、マイクロポーラス層(MPL)付きガス拡散層が挙げられる。
【0088】
また、ガス拡散層33は、セルスタックを組み立てたとき、正極板20と接する厚さとするとよい。
【0089】
膜電極接合体30において、担持層32及びガス拡散層33は、イオン透過膜31の法線方向から見た視野において、イオン透過膜31よりも小さく形成されている。同視野において、イオン透過膜31の外縁部には、担持層32及びガス拡散層33が形成されておらずイオン透過膜31が露出した領域(額縁部31a)が形成されている。
【0090】
[接続部材]
図7は、接続部材50を示す模式図である。接続部材50は、第1接続部材50A及び第2接続部材50Bのいずれにも共通して用いられる。
【0091】
接続部材50は、絶縁性材料で構成され、本体501と、接続部502と、フランジ503とを有する。
【0092】
本体501は、貫通孔50aを有する円筒状の部材である。貫通孔50aの内部には、有機物が含まれる液体や、酸素を含む気体などの液体燃料電池の燃料が流動する。
【0093】
本体501の両端には、貫通孔50aを囲んで円環状の溝501aが設けられている。溝501aには、シール部材(Oリング)が収容される。
【0094】
接続部502は、本体501の両端において貫通孔50aの縁に沿って設けられた円筒状の凸部であり、本体501の中心軸と同軸の構造部分である。
【0095】
フランジ503は、本体501の外壁から外に向けて広がる構造部分であり、ネジ穴503aを有する。フランジ503は接続部材50を他の部材に接続し固定する際に用いる。
【0096】
図8,9は、接続部材50の使用方法を示す概略断面図である。
図8では、第1接続部材50Aを使用することとして説明する。
図8は、第1接続部材50Aを用いた組み立て工程を示す説明図である。
図9は、セルスタック100における第1接続部材50Aの周辺の構成の説明図である。
【0097】
図8に示すように、第1接続部材50Aは、一端側の接続部502において負極板10の第1主流路111に挿入され、負極板10に接続する。第1接続部材50Aは、負極板10の両側から第1主流路111に接続する。第1接続部材50Aは、例えば、シール部材42を負極本体151に接触させた状態で、フランジ(不図示)でネジ止めされ固定される。
【0098】
また、第1接続部材50Aは、正極板20の第2挿通孔29に挿入され正極板20を貫通する。
【0099】
このようにして第1接続部材50Aを配置し、さらに、負極板10及び正極板20の間に膜電極接合体30及びシール部材40を挟持して組み立てると、
図9に示すような構成となる。
【0100】
セルスタック100では、膜電極接合体30の額縁部31aが負極板10と正極板20とのそれぞれのスペーサ及びシール部材40に挟まれて固定される。
【0101】
また、セルスタック100において、第1接続部材50Aは、正極板20を挟んで隣り合う2つの負極板10に挟持されて固定される。第1接続部材50Aの貫通孔50aは、負極板10が有する第1主流路111と連通する。
【0102】
第1主流路111において、対向する2つの第1接続部材50A同士は離間している。2つの第1接続部材50Aの間の隙間(2つの第1接続部材50Aがそれぞれ有する接続部502の先端の間)には、第1接続孔113が開口している。
【0103】
また、第1接続部材50Aは、正極板20の第2挿通孔29に挿通されている。
【0104】
これにより、第1接続部材50Aの貫通孔50a及び負極板10の第1主流路111が連通し、第1燃料流路101Aを形成する。セルスタック100においては、第1燃料流路101Aに対し、複数の第1接続孔113が接続する形となり、本流路である第1燃料流路101Aに、支流路である第1接続孔113及び第1貫通孔112が接続されるマニールド形状が形成される。これにより、第1燃料流路101Aの内部を流動する燃料は、負極板10の内部に供給され、負極板10を介して第1空間100Xに供給される。
【0105】
このとき、第1接続部材50Aは、第2挿通孔29に挿通され正極板20を貫通している。そのため、第1燃料流路101Aの内部を流動する燃料は、正極部材25の間から正極板20の内部に向かって漏れ出ることは無い。
【0106】
なお、
図9では、第1接続部材50Aが第1主流路111に接続されることとして説明したが、第1接続部材50Aが第2主流路121に接続され、第2燃料流路101Bを形成する構成についても同様に理解することができる。
【0107】
同様に、第2接続部材50Bが第3主流路231に接続され、第3燃料流路102Aを形成する構成についても同様に理解することができる。すなわち、当該構成は、
図9の説明に基づいて、第2接続部材50Bが負極板10の第1挿通孔19に挿通され、第2接続部材50Bの接続部502が正極板20の第3主流路231に接続される構成を同様に理解することができる。
【0108】
同様に、第2接続部材50Bが第4主流路241に接続され、第4燃料流路102Bを形成する構成についても同様に理解することができる。すなわち、当該構成は、
図9の説明に基づいて、第2接続部材50Bが負極板10の第1挿通孔19に挿通され、第2接続部材50Bの接続部502が正極板20の第4主流路241に接続される構成を同様に理解することができる。
【0109】
[負極接続部材、正極接続部材]
図10は、電極接続部材80を示す模式図である。電極接続部材80は、導電性を有する円筒形の部材である。電極接続部材80は貫通孔80aを有し、貫通孔80aに係止部材85を挿通し固定して用いる。係止部材85は、例えばボルト85aとナット85bである。
【0110】
電極接続部材80は、負極接続部材80A及び正極接続部材80Bのいずれにも共通して用いられる。
【0111】
図11は、電極接続部材80を使用する様子を示す説明図である。セルスタック100において重ね合わせた負極板10の上端には、x方向(負極板10の法線方向)で互いに重なる位置に凹部10Xが形成されている。同様に、正極板20の上端には、x方向(正極板20の法線方向)で互いに重なる位置に凹部20Xが形成されている。さらに、エンドプレート1110の上端には、x方向で凹部10Xと凹部20Xとに重なる位置に、凹部1110Xが形成されている。
【0112】
負極板10の上端には、正極板20の凹部20Xと重なる位置に貫通孔(不図示)が形成されている。同様に、正極板20の上端には、負極板10の凹部10Xと重なる位置に貫通孔(不図示)が形成されている。
【0113】
負極接続部材80Aは、正極板20を挟んで隣り合う2つの負極板10に挟持され、負極板10同士(負極板10A,10B)を電気的に接続する。さらに、負極接続部材80Aの貫通孔80aにはボルト85が挿通され、負極接続部材80Aを挟持する負極板10同士を係止する。
【0114】
正極接続部材80Bは、負極板10を挟んで隣り合う2つの正極板20に挟持され、正極板20同士(正極板20A,20B)を電気的に接続する。さらに、正極接続部材80Bの貫通孔80aにはボルト85が挿通され、正極接続部材80Bを挟持する正極板20同士を係止する。
【0115】
これにより、負極板10及び正極板20をそれぞれ並列に接続することができる。
【0116】
なお、凹部10X、20Xの形成位置、及び電極接続部材80の配置位置は、
図1,11に示した位置に限らない。負極板10同士及び正極板20同士をそれぞれ電気的に接続可能であれば、負極板10及び正極板20の上端のみならず、左端や右端に設けてもよい。また、複数箇所に負極接続部材80A、正極接続部材80Bを設け、複数箇所で負極板10同士及び正極板20同士をそれぞれ電気的に接続してもよい。
【0117】
図12は、セルスタック100を有する液体燃料電池1000を使用する様子を説明する説明図である。液体燃料電池1000の使用の際には、下方の接続バルブ1120Aから第2燃料流路101Bに対して有機物含む液体燃料Lを供給する。その際、第2燃料流路101Bの他端に設けられた接続バルブ1120は閉じておく。
【0118】
液体燃料Lは、第2燃料流路101Bを流動した後、第2接続孔123に供給される。全ての第2接続孔123において、液体燃料Lの液面高さは一致した状態で第2貫通孔122に達すると想定される。液体燃料Lは第2貫通孔122を介して第1空間100Xに供給される。
【0119】
一方、第2空間100Yに対しても、不図示の第4燃料流路を介して酸素を含む気体燃料Gが供給される。
【0120】
負極板10が面する第1空間100Xにおいては、膜電極接合体30の担持層に担持された酸化触媒(微生物、金属触媒)により液体燃料L中の有機物が分解され、水素イオンと電子とが生じる。
【0121】
生じた水素イオンは、膜電極接合体30のイオン透過膜を介して第2空間100Yに移動する。第2空間100Yにおいては、ガス拡散層に担持された触媒が、気体燃料Gに含まれる酸素と、移動してくる水素イオンと、負極(第1空間100X)で生じ外部回路を介して第2空間100Yに移動する電子と、の結合を促進して水を生じさせる。液体燃料電池1000は、負極接続部材80A及び正極接続部材80Bを介して並列に接続されている。
【0122】
液体燃料Lは、第1貫通孔112、第1接続孔113を介して第1燃料流路101Aに排出される。さらに、液体燃料Lは、接続バルブ1120Bを介して、装置外に排出される。
【0123】
液体燃料電池1000に対しては、液体燃料Lを第1燃料流路101A及び第2燃料流路101Bの4カ所の接続バルブ1120のいずれから供給してもよい。同様に、液体燃料電池1000に対しては、気体燃料Gを第3燃料流路102A及び第4燃料流路102Bの4カ所の接続バルブ1120のいずれから供給してもよい。
【0124】
さらに、第1燃料流路101A及び第2燃料流路101Bの4カ所の接続バルブ1120から純水を供給して、装置内の洗浄に用いてもよい。
【0125】
以上のような構成のセルスタック100は、負極板10が一対の負極部材15を重ね合わせて構成され、負極部材15をそれぞれ加工することで第1流路110を形成している。そのため、負極板10の内部において屈曲する複雑な形状の流路を容易に形成可能である。また、負極板10が上記構成であるために、例えば第1接続孔113を薄く形成することが容易となり、負極板10全体を薄型化することができる。
【0126】
また、同様の理由により、正極板20において流路を容易に形成可能であると共に、正極板20全体を薄型化することができる。
【0127】
これらにより、セルスタック100は、従来知られた構成のものと比べて薄型化が可能となる。
【0128】
さらに、本実施形態においては、セルスタック100は負極板10、正極板20共に2枚ずつ、計4枚を重ねた積層構造(3セル構造)としたが、必要に応じて内部負極板10A、内部正極板20Aを増やしセル数を変更することにより、容易に容量を増やすことができる。
【0129】
加えて、負極板10の第1流路110及び第2流路120、正極板20の第3流路230及び第4流路240は、それぞれ燃料流路のマニホールド構造の一部を構成している。そのため、内部負極板10A及び内部正極板20Aの積層数を増やす際、別途燃料流路を作り直す必要が無く、容量の増加が容易となる。
【0130】
以上より、セルスタック100においては、容量の増加が容易であり、且つ従来よりも小型化が可能なセルスタックとなる。
【0131】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0132】
10,10A…負極板、10a…第1凹部、10X,20X,113a,123a,233a,243a,1110X…凹部、15,15A,15B…負極部材、19…第1挿通孔、20,20A…正極板、20a…第2凹部、25,25A,25B…正極部材、29…第2挿通孔、30…膜電極接合体、31…イオン透過膜、32…担持層、33…ガス拡散層、40,41…シール部材、50…接続部材、50a,80a,111a,121a,231a,241a…貫通孔、50A…第1接続部材、50B…第2接続部材、80A…負極接続部材、80B…正極接続部材、85…係止部材、100…セルスタック、100X…第1空間、100Y…第2空間、110…第1流路、111…第1主流路、112…第1貫通孔、113…第1接続孔、120…第2流路、121…第2主流路、122…第2貫通孔、123,213…第2接続孔、152,252…スペーサ、230…第3流路、231…第3主流路、232…第3貫通孔、233…第3接続孔、240…第4流路、241…第4主流路、242…第4貫通孔、243…第4接続孔、502…接続部
【要約】
【課題】従来よりも小型化が可能なセルスタックを提供する。
【解決手段】負極板と正極板と膜電極接合体とシール部材とを備え、膜電極接合体は、イオン透過膜と酸化触媒を担持する担持層とを有し、負極板及び正極板は、膜電極接合体を挟持して交互に積層され、負極板と正極板との間には、シール部材が配置され、負極板は一対の負極部材が積層して構成され、負極板と膜電極接合体とで囲まれた第1空間に接続される第1流路及び第2流路を有し、第1流路は、シール部材の環の外側で負極板を貫通する第1主流路と、環の内側で負極板を貫通する第1貫通孔と、第1貫通孔と第1主流路とを接続する第1接続孔と、を有し、第2流路は、環の外側で負極板を貫通する第2主流路と、環の内側で負極板を貫通する第2貫通孔と、第2貫通孔と第2主流路とを接続する第2接続孔と、を有し、一対の負極部材の界面は、第1接続孔及び第2接続孔と重なるセルスタック。
【選択図】
図2