(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】建設機械制御装置、建設機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
B66C15/00 A
(21)【出願番号】P 2022120440
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】山 尚史
(72)【発明者】
【氏名】大西 眞
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208568(JP,A)
【文献】特開2003-054247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の操作レバーのグリップ部に取り付けられ操作者が触れているか否かを検出するタッチセンサと、
前記建設機械の運転席の近傍に設けられ、前記操作者の脚部によって操作可能な脚部スイッチと、
前記タッチセンサの検出結果
と前記脚部スイッチの検出結果とに基づいて、
前記グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、前記脚部スイッチが操作者によって押されていない場合に、前記建設機械を停止させる制御部
を有する建設機械制御装置。
【請求項2】
警報を行う警報部を有し、
前記制御部は、
前記グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、前記脚部スイッチが操作者によって押されていない場合に、前記警報部によって警報を予め決められた警報期間において警報を行う
請求項
1に記載の建設機械制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記警報期間が経過しても、前記グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、前記脚部スイッチが操作者によって押されていない場合に前記建設機械を停止させる
請求項
2に記載の建設機械制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、前記脚部スイッチが操作者によって押されていないことが検出されたことが、予め決められた不感時間において継続した場合に、前記警報を行う
請求項
2に記載の建設機械制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記建設機械を停止する場合に、前記建設機械の稼働中の動作を停止開始から停止終了までの間に停止するように稼働速度を減速させてから停止させる抑制制御を行う
請求項1から請求項
4のうちいずれか1項に記載の建設機械制御装置。
【請求項6】
前記建設機械は、クレーンであり、
前記制御部は、前記クレーンのアームの旋回、前記クレーンの走行のうち少なくともいずれか一方を停止させる
請求項
5に記載の建設機械制御装置。
【請求項7】
タッチセンサが、建設機械の操作レバーのグリップ部に取り付けられ操作者が触れているか否かを検出し、
脚部スイッチが、建設機械の運転席の近傍に設けられ、前記建設機械の操作者の脚部によって操作されているか否かを検出し、
制御部が、前記タッチセンサの検出結果
と前記脚部スイッチの検出結果とに基づいて、
前記グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、前記脚部スイッチが操作者によって押されていない場合に、前記建設機械を停止させる
建設機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械制御装置、建設機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場では、様々な種類の建設機械が利用されている。例えば、建設現場では、クローラクレーンが利用される。クローラクレーンは、運転席において一人のオペレータが運転(操作)を行う。このような建設機械を運転している途中において、オペレータに体調不良が生じる場合がある。
特許文献1には、オペレータから事前に入力された情報を用いて、体調分析と行動予測を行うことで、作業ミスの低減、労働災害の防止などに役立てることについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オペレータによっては、当日朝あの調子が良かったとしても、体調が急変する場合もあり得る。そのため、体調分析や行動予測をしたとしても、予測するだけでは、その精度が必ずしも十分ではない。
また、オペレータは、建設機械において一人で運転(操作)を行う場合が多く、そのため、オペレータについて第三者による体調管理をすることは容易ではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、建設機械のオペレータの体調も考慮しつつ、作業の安全性を高めることができる建設機械制御装置、建設機械の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、建設機械の操作レバーのグリップ部に取り付けられ操作者が触れているか否かを検出するタッチセンサと、前記建設機械の運転席の近傍に設けられ、前記操作者の脚部によって操作可能な脚部スイッチと、前記タッチセンサの検出結果と前記脚部スイッチの検出結果とに基づいて、前記グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、前記脚部スイッチが操作者によって押されていない場合に、前記建設機械を停止させる制御部を有する建設機械制御装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、タッチセンサが、建設機械の操作レバーのグリップ部に取り付けられ操作者が触れているか否かを検出し、脚部スイッチが、建設機械の運転席の近傍に設けられ、前記建設機械の操作者の脚部によって操作されているか否かを検出し、制御部が、前記タッチセンサの検出結果と前記脚部スイッチの検出結果とに基づいて、前記グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、前記脚部スイッチが操作者によって押されていない場合に、前記建設機械を停止させる建設機械の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、この発明によれば、建設機械のオペレータの体調も考慮しつつ、作業の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】建設機械制御装置1を備えた建設機械Kの機能を表す概略機能ブロック図である。
【
図2】クローラクレーンの運転席の室内の一例を示す図である。
【
図5】旋回ブレーキK2とタッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態と制御内容との関係を表す制御ルールデータの一例を示す図である。
【
図6】停止制御を実行する場合における制御状態の遷移を示す図である。
【
図7】建設機械制御装置1の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による建設機械制御装置について図面を参照して説明する。
図1は、建設機械制御装置1を備えた建設機械Kの機能を表す概略機能ブロック図である。
建設機械Kは、建設現場において用いることができる機械であればよい。建設機械Kは、例えば、クローラクレーン、タワークレーン、トラベラクレーン、ホイールローダ、ホイールジャンボ、油圧ショベル等のうちいずれかであってもよい。この実施形態においては、建設機械Kがクローラクレーンである場合を一例として説明する。
【0013】
建設機械Kは、駆動部K1と、旋回ブレーキK2と、建設機械制御装置1を有する。
駆動部K1は、例えば、クローラクレーンのアームを旋回させる油圧モータであってもよく、クローラクレーンの走行装置(走行用モータ)であってもよい。
旋回ブレーキK2は、アームの旋回動作を停止させる。旋回ブレーキK2がオンの状態である場合には、アームの旋回動作を停止させ、旋回ブレーキK2がオフの状態である場合には、アームの旋回動作を許容する。すなわち、旋回ブレーキK2がオフの状態である場合には、オペレータからの旋回操作に応じて、アームを旋回することが可能である。旋回ブレーキK2がオンの状態の場合には、旋回操作がなされていても、旋回動作を行わない。クローラクレーンでは、運転を行わない場合に、旋回ブレーキK2をオンにして動作を停止状態とする場合がある。このような場合には、旋回ブレーキK2の状態を検出することによって、建設機械制御装置1が建設機械Kを停止させる制御を行うか否かを判定することができ、旋回ブレーキK2がオンの状態である場合には、建設機械Kが停止状態であるため、オペレータによる旋回動作や走行動作が行われない状態であるため、建設機械制御装置1が建設機械Kに関して警報や停止制御は行わなくてもよい。
【0014】
建設機械制御装置1は、タッチセンサ10、脚部スイッチ11、表示部12、スピーカ13、警報部14、制御部15を有する。
タッチセンサ10は、建設機械の操作レバーのグリップ部に取り付けられ操作者が触れているか否かを検出する。脚部スイッチ11は、建設機械の運転席の近傍に設けられ、前記操作者の脚部によって操作可能なスイッチである。表示部12は、各種情報を表示する。表示部12は、例えば、液晶表示パネルであり、各種情報を表示することができる。また、表示部12は、ランプであってもよく、ランプの点灯、消灯、点滅等によって、各種情報を表示する。スピーカ13は、音を出力する。
【0015】
警報部14は、警報を行う。例えば、警報部14は、制御部16からの指示に基づいて、表示部12によって警報の内容を表す表示を行う。
警報部14は、表示部12が液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルに、文字列、画像、図形等のうち少なくとも1つを用いて警報の内容を表す情報を表示する。
また、警報部14は、表示部12がランプである場合、当該ランプを点灯または点滅させることで警報を行う。また、警報部14は、ランプの色を、通常状態を表す色によって点灯させている状態から、警報を表す色に切り替えることで警報を行うようにしてもよい。
【0016】
制御部15は、タッチセンサ10の検出結果に基づいて、操作者(例えばオペレータ)がグリップ部に触れていない場合に建設機械を停止させる。
制御部15は、脚部スイッチ11の検出結果に基づいて、操作者が脚部スイッチを操作していない場合に建設機械を停止させるようにしてもよい。
制御部15は、グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、脚部スイッチ11が操作者によって押されていない場合に、建設機械を停止させる。
【0017】
制御部15は、グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、脚部スイッチ11が操作者によって押されていない場合に、警報部14によって警報を予め決められた警報期間において警報を行う。
制御部15は、警報期間が経過しても、グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、脚部スイッチ11が操作者によって押されていない場合に建設機械を停止させる。
制御部15は、グリップ部に触れていないことが検出され、かつ、脚部スイッチ11が操作者によって押されていないことが検出されたことが、予め決められた不感時間において継続した場合に、警報を行う。
制御部15は、建設機械を停止する場合に、建設機械の稼働中の動作を停止開始から停止終了までの間に停止するように稼働速度を減速させてから停止させる抑制制御を行う。
【0018】
制御部15は、建設機械Kがクレーンである場合には、クレーンのアームの旋回、前記クレーンの走行のうち少なくともいずれか一方を停止させる。
【0019】
警報部14、制御部15は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0020】
図2は、建設機械がクローラクレーンの場合であって、当該クローラクレーンの運転席の室内の一例を示す図である。
座席Sの左側には、左肘掛け部LAが設けられており、座席Sの右側には、右肘掛け部RAが設けられている。左肘掛け部LAの上面側には、レバー100が左肘掛け部LAの上面から上方に伸びるように設けられている。
左肘掛け部LAの座席Sに対向している側面LAaには、脚部スイッチ11が設けられている。
右肘掛け部RAの上面側には、レバー200、レバー201、レバー202が右肘掛け部RAの上面から上方に伸びるようにして、横方向に並ぶように設けられている。
【0021】
図3は、レバー100の外観を表す外観図である。
レバー100の先端部、グリップ部101が設けられている。
グリップ部101の外周面の一部には、スイッチ部102が設けられている。スイッチ部102には、少なくとも1つのスイッチが設けられている。スイッチは、例えば、ウインチの巻き上げ速度を切り替えるスイッチがある。
グリップ部101の外周面の周方向において、スイッチ部102が設けられていない部分には、タッチセンサ10が設けられている。グリップ部101の長手方向においてタッチセンサ10の長さは、人の拳の幅に応じた長さ(例えば同程度)に設定されている。
タッチセンサ10は、グリップ部101を人によって触れられたた否かを検出する。タッチセンサ10は、例えば、静電容量式センサであり、静電容量の変化に基づいて、人によって触れられているか否かを検出する。例えば、グリップ部101をオペレータが握っていない状態では、タッチセンサ10に触れられていないため、タッチセンサ10は、触れられていない状態であることを示す検出結果を出力し、グリップ部101をオペレータが握っている状態では、タッチセンサ10に触れられているため、タッチセンサ10は、触れられている状態であることを示す検出結果を出力する。
タッチセンサ10の外周面は、グリップ部101の周方向の曲面に沿うように成形された金属板であり、例えば、金属としてはステンレスまたはアルミニウムである。
レバー100は、クレーンの旋回動作とエンジン回転数の制御を行うためのレバーである。クローラクレーンを運転する場合には、基本的に常にレバー100を握って各種操作を行う必要があるため、オペレータは、運転中において常に左手でグリップ部101を握る。そのため、グリップ部101をオペレータが握っていない場合には、運転をする意識を消失した状態となった可能性がある。例えば、オペレータが意識を消失した状態となった場合には、グリップ部101を握る力が低減または無くなり、また、左手がグリップ部101を握ることが可能な高さに腕を維持する力が低減または無くなるため、グリップ部101から左手が離れる。
なお、オペレータは
図2に示すレバー200、201、202については、必要に応じて右手で握り、操作をする。
【0022】
図4は、左肘掛け部LAを拡大した拡大図である。
オペレータは、クローラクレーンを運転する場合、左手でレバー100のグリップ部101を握って各種操作をする。
また、左肘掛け部LAの側面LAaには、脚部スイッチ11が設けられている。脚部スイッチ11は、例えば、リミットスイッチを用いるようにしてもよい。
オペレータは、クローラクレーンを運転する場合、左足の膝近傍の部位によって、脚部スイッチ11を押下することが可能となっている。オペレータは、運転をする意識を維持している場合には、左脚の膝を外側(左肘掛け部LA側)に開くことで、膝近傍の部位を脚部スイッチ11に対して押し付けることができ、これにより、脚部スイッチ11がオンの状態となる。体調不良等により、オペレータが運転をする意識を消失した状態となった場合には、左脚を外側に開く動作を意識的に行うことができなくなり、左脚を外側に押し付ける力が低減または無くなるため、脚部スイッチ11を押すことができない状態となる。
このように、脚部スイッチ11は、オペレータの運転する意識がある場合に押すことが可能であり、運転する意識が消失した場合に押せなくなる位置に設けられる。
なお、脚部スイッチ11は、左肘掛け部LAの側面に設けられる場合について説明したが、右肘掛け部RAの側面に設けられるようにしてもよい。
【0023】
図5は、旋回ブレーキK2とタッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態と制御内容との関係を表す制御ルールデータの一例を示す図である。
制御ルールデータは、旋回ブレーキの状態と、旋回動作、タッチセンサ、脚部スイッチ、制御内容が対応付けられたデータである。
旋回ブレーキの状態は、「旋回ブレーキON」(オン)と、「旋回ブレーキOFF」(オフ)のいずれかの状態がある。
【0024】
旋回動作は、「停止」と「旋回可」との状態がある。「停止」は、旋回動作が行われない状態を表し、「旋回可」は、オペレータの操作内容に応じて、旋回動作を行うことが可能な状態を表す。
タッチセンサは、「離れている」(オフ)と、「触れている」(オン)の状態がある。「離れている」は、オペレータがグリップ部101から手を離している状態であるため、タッチセンサ10の検出結果がオフであることを示している。「触れている」は、オペレータがグリップ部101を手で握っている状態であるため、タッチセンサ10の検出結果がオンであることを示している。
【0025】
脚部スイッチは、「制限なし」と、「押していない」と、「押している」の状態がある。「制限なし」は、脚部スイッチの状態が押しているか押していないかについての制限がない(どちらでもよい)ことを示す。「押していない」は、オペレータが脚部スイッチ11を押していない状態であるため、脚部スイッチ11の検出結果がオフであることを示している。
「押している」は、オペレータが脚部スイッチ11を脚で押している状態であるため、脚部スイッチ11の検出結果がオフであることを示している。
【0026】
制御内容は、「停止制御なし」と「停止制御実施」がある。「停止制御なし」は、制御部15による停止制御は実施しないことを表す。「停止制御実施」は、制御部15による停止制御を実行することを表す。
【0027】
例えば、旋回ブレーキK2がオンの状態(旋回ブレーキON)である場合には、建設機械Kが停止状態であるため、旋回動作も「停止」しており、タッチセンサ10の検出結果が「離れている」を示しており、脚部スイッチの状態は「制限なし」であるため、建設機械制御装置1が建設機械Kに関して停止制御が行われないことを示す。
【0028】
旋回ブレーキK2がオフの状態(旋回ブレーキOFF)の場合には、旋回動作はいずれも「旋回可」であり、旋回動作が可能な状態である。その上で、タッチセンサ10が「触れている」場合(オンの場合)であって、脚部スイッチ11が「押していない」の場合(オフの場合)と、タッチセンサ10が「離れている」場合(オフの場合)であって、脚部スイッチ11が「押している」の場合(オンの場合)については、タッチセンサと脚部スイッチの少なくともいずれか一方がオンであるため、停止制御が行われないことを示す。
旋回ブレーキK2がオフの状態(旋回ブレーキOFF)の場合であり、旋回動作が「旋回可」であり、タッチセンサ10が「離れている」場合(オフの場合)であって、脚部スイッチ11が「押していない」場合(オフの場合)には、タッチセンサと脚部スイッチの両方がオフであるため、停止制御を実行することを示す。
【0029】
制御部15は、このような
図5に示す関係をルールデータとして予め所定の記憶領域内に記憶しており、この記憶領域に記憶されたルールデータを参照することで、建設機械Kに対して制御信号を出力する。
【0030】
図6は、停止制御を実行する場合における制御状態の遷移を示す図である。
制御部15が実行する停止制御は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の検出結果の組み合わせと、経過時間に応じて、第1状態、第2状態、第3状態、第4状態の順に遷移する。
第1状態は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の検出結果がいずれもオフであり、停止制御が開始された時刻T0から時刻T1までの時間t1が経過するまでの状態である。時間t1が経過するまでの間に、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の少なくともいずれか一方がオンとなった場合には、停止制御は解除(停止制御から離脱)され、停止制御が行われない。この時間t1は任意に決めることができるが、例えば1秒である。第1状態では、警報も建設機械Kの停止も行われない。
【0031】
第2状態は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の検出結果がいずれもオフの状態が時刻T0から継続している状態であって、停止制御が開始された時刻T1から時刻T2までの時間t2が経過するまでの状態である。時間t2が経過するまでの間に、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の少なくともいずれか一方がオンとなった場合には、停止制御は解除され、停止制御が行われない。この時間t2は任意に決めることができるが、例えば2秒である。第2状態では、警報が行われるが、建設機械Kの停止は行われない。
【0032】
第3状態は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の検出結果がいずれもオフの状態が時刻T0から継続している状態であって、停止制御が開始された時刻T2から時刻T3までの時間t3が経過するまでの状態である。時間t3は、任意に決めることができるが、例えば、3秒である。第3状態において時刻T2が到来すると、制御部15は、速度抑制制御を行い、時間t3が経過するまでの間(時刻T3までの間)に、駆動部K1を停止させる。速度抑制制御は、駆動部K1が駆動している速度を低減させつつ、停止させる制御である。例えば、制御部15は、クローラクレーンのアームの旋回動作を対象として速度抑制制御を行う場合、アームを旋回させる油圧モータの流量を制御することで、アームの旋回速度を減速させつつ停止させる。旋回速度の減速は、漸次低減するものであればよい。制御部15は、クローラクレーンの走行装置(走行用モータ)を対象として速度抑制制御を行う場合、走行用モータの駆動速度を減速させつつ停止させる。
速度抑制制御は、駆動部K1が最大速度で駆動している状態であっても、時間t3が経過するまでの間に漸次速度を低減させて駆動を停止させる。
【0033】
ここでは、第3状態に移行した場合には、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の少なくともいずれか一方がオンとなった場合であっても、停止制御は継続する。
第3状態が終了すると、駆動部K1が停止状態(第4状態)となる。停止状態となった後、建設機械Kは、オペレータによって再起動の操作入力がされるまでは、停止状態を維持する。
【0034】
図7は、建設機械制御装置1の動作を説明するフローチャートである。
制御部15は、旋回ブレーキK2の操作状態を検出し、旋回ブレーキK2がオフの状態であるか否かを判定する(ステップS101)。
旋回ブレーキK2がオフではない場合(オンである場合)(ステップS101-NO)、制御部15は、一定のウエイト時間を経過した後、再度ステップS101の処理を実行する。ここでは、旋回ブレーキK2がオンである場合には、クレーンの旋回動作が行われないが、走行装置による走行も行われない状態である。
【0035】
一方、旋回ブレーキK2がオフである場合(ステップS101-YES)、制御部15は、建設機械Kのアームが旋回可能な状態に移行していると判定し(ステップS102)、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態を取り込む(ステップS10)。
制御部15は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフであるか否かを判定する(ステップS104)。
タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフではない(ステップS104-NO)、すなわち、タッチセンサ10と脚部スイッチ11のうち少なくともいずれか一方がオンである場合、制御部15は、処理をステップS101に移行する。
【0036】
一方、制御部15は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフである場合(ステップS104-YES)、制御部15内に設けられているタイマーのカウントを開始する(ステップS105)。ここでは、グリップ部101からオペレータの手が離れており、かつ、脚部スイッチ11からオペレータの脚が離れている状態である。
【0037】
制御部15は、タイマーのカウント値に基づいて、不感時間(時間t1)が経過したか否かを判定する(ステップS106)。
制御部15は、不感時間を経過していないと判定した場合(ステップS106-NO)、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態を取り込み(ステップS110)、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフであるか否かを判定する(ステップS111)。
【0038】
制御部15は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフである場合(ステップS111-YES)、処理をステップS106に移行する。ここでは、オペレータに体調不良等が生じ、グリップ部101を握ることができない状況であり、かつ、脚部スイッチ11についても脚によって押すことができない状態となってしまっていることを検出することができる。これにより、引き続きタイマーのカウント値がカウントアップされるため、タッチセンサ10と脚部スイッチ11を触れていない状態が継続している時間の計測が行われる。
【0039】
一方、制御部15は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフではない(ステップS111-NO)、すなわち、タッチセンサ10と脚部スイッチ11のうち少なくともいずれか一方がオンである場合、タイマーのカウントを停止するとともに、カウント値をリセットし(ステップS112)、処理をステップS101に移行する。ここでは、タッチセンサ10と脚部スイッチ11のうち少なくともいずれか一方に対してオペレータが触れた状態に移行したことを検出することができる。例えば、オペレータが何らかの理由でグリップ部101から手を離し、かつ、脚部スイッチ11を押下していない状態から、グリップ部101を握る、または脚部スイッチ11を押す動作を意識的に行ったことを検出することができるため、オペレータが建設機械Kを運転するための意識があると推定することができる。
【0040】
一方、ステップS106において、制御部15は、タイマーのカウント値に基づいて、不感時間を経過したと判定した場合には(ステップS106-YES)、制御部15は、警報部14に対して警報を行うように指示を出力する(ステップS107)。警報部14は、制御部15からの指示に基づいて、警報の内容を示す文字列を表示部12によって表示させるとともに、スピーカ13から警報音を出力する。これにより、建設機械Kを停止させる状態に移行することをオペレータが把握可能な状態となる。オペレータは、表示部12に表示された警報の内容を視認したり、スピーカ13から出力される警報音を聞くことができた場合には、グリップ部101を握るか脚部スイッチ11を押す必要があることを認識することができ、グリップ部101を握るか脚部スイッチ11を押すことができる。オペレータは、体調不良等により、表示部12に表示された警報の内容を視認したり、スピーカ13から出力される警報音を聞くことができない状況である場合、グリップ部101を握ることができず、脚部スイッチ11を押すことができない状況が継続する。
【0041】
制御部15は、警報部14に警報するよう指示を出力した後、タイマーのカウント値に基づいて、警報期間(時間t2)が経過したか否かを判定する(ステップS108)。
制御部15は、警報期間が経過していない場合(ステップS108-NO)、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態を取り込み(ステップS110)、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフであるか否かを判定する(ステップS120)。
タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフではない(ステップS121-NO)、すなわち、タッチセンサ10と脚部スイッチ11のうち少なくともいずれか一方がオンである場合、タイマーのカウントを停止するとともに、カウント値をリセットし(ステップS122)、処理をステップS101に移行する。ここでは、タッチセンサ10と脚部スイッチ11のうち少なくともいずれか一方に対してオペレータが触れた状態(建設機械Kを意識的に操作可能な状態)に移行したことを検出することができる。
一方、制御部15は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の状態が両方ともオフである場合(ステップS121-YES)、処理をステップS108に移行する。
【0042】
制御部15は、ステップS108において、タイマーのカウント値に基づいて、警報期間が経過したと判定した場合(ステップS108-YES)、流量制御を行う指示を駆動部K1に対して出力し(ステップS109)、停止させる(ステップS110)。ここでは、体調不良等により、オペレータがグリップ部101を握ることができない状況であり、かつ、脚部スイッチ11を押すことができない状況であることが一定時間継続したことが検出された状態である。
これにより、建設機械Kは、駆動部K1が駆動状態であった場合には、速度を落としながら動作を停止する。例えば、アームが旋回している場合には、旋回速度を減速させつつ停止させる。また、走行装置が駆動している場合には、走行速度を減速させつつ停止させる。ここでは、駆動部K1の駆動速度を落としながら停止させるようにしたので、駆動状態において急に動作を停止させることにより働く慣性を低減させて停止させることができる。例えば、アームの旋回動作を急に停止させた場合には、荷揺れによる転倒、荷揺れによる荷の他の物体への衝突、ジブの破損等が生じる場合があるが、旋回速度を減速させつつ停止させることで、このような状態を回避し、安全性を高めて停止することができる。また、走行装置の走行動作を急に停止させた場合には、急停止によりオペレータに対する衝撃が加わってしまう場合があるが、走行速度を減速させつつ停止させることで、このような衝撃を低減させ、安全性を高めて停止することができる。
【0043】
図8は、脚部スイッチ11の他の設置例を示す図であり、
図1に示す座席Sの側面側からみた側面図である。
脚部スイッチ11aは、座席Sの下方であって床面の高さであって、側面側からみて、座席Sの座面Saの前方端部の位置よりも背面Sb側に設置されている。脚部スイッチ11aは左足のかかとで押すことが可能な位置、または、右足のかかとで押すことが可能な位置に設けられる。例えば、脚部スイッチ11aは、左足のかかとで押すことが可能な位置に設けられる。
この場合、オペレータは、運転をする意識を維持している場合には、左脚のかかとを座面の端部よりも手前側に引くようにすることで脚部スイッチ11aに対して押し付けることで、脚部スイッチ11aを押すことができ、これにより、脚部スイッチ11aがオンの状態となる。体調不良等により、オペレータが運転をする意識を消失した状態となった場合には、左足のかかとを手前に引く力が低減または無くなるため、脚部スイッチ11aを押すことができない状態となる。
このように、脚部スイッチ11aは、オペレータの運転する意識がある場合に押すことが可能であり、運転する意識が消失した場合に押せなくなる位置に設けられる。
このような脚部スイッチ11aは、上述した脚部スイッチ11の代わりに設けるようにしてもよい。例えば、左肘掛け部の側面に相当する部位が座席Sの近傍に無い場合には、脚部スイッチ11aを設けるようにしてもよい。
【0044】
以上説明した実施形態によれば、建設機械Kを運転している間において、タッチセンサ10と脚部スイッチ11の検出結果がいずれもオフである場合に、停止制御をするようにしたので、体調不良等によりオペレータがグリップ部101を握ることができず、脚部スイッチ11を押すことができない状態となった場合に、駆動部K1を停止するようにした。これにより、体調不良等によってオペレータが運転をする意識を消失している状態となった場合に、駆動部K1の駆動を停止することができ、安全性を高めることができる。例えば、オペレータの運転する意識が消失しているにもかかわらず旋回動作が継続してしまったり、クローラクレーンの走行が継続してしまうことを防止することができる。
このように、オペレータが運転する意識を消失した状態では操作をすることができなくなる部位にセンサを設けるようにしたので、センサの検出結果に基づいて、オペレータの運転する意識が消失したか否かを推定することができる。
【0045】
上述した実施形態によれば、タッチセンサ10がオンであり脚部スイッチ11がオフの場合には、停止制御を行わないようにした。これにより、オペレータが建設機械Kを運転する意思を持ってグリップ部101を握っていると見なすことができるため、一時的に脚部スイッチ11から脚を離し、脚を休ませたとしても、このような状態を許容し、駆動部K1が停止しないようにすることができる。
また、タッチセンサ10がオフであり脚部スイッチ11がオンの場合に停止制御を行わないようにした。これにより、オペレータが建設機械Kを運転する意思を持って脚部スイッチ11を押していると推定できる。そのため、一時的にグリップ部101から左手を離し、携帯電話を操作する、汗を拭く等の動作をしたとしても、運転する意識を消失しておらず、意識的にグリップ部101から手を離している状態であると推定できるため、このような状態を許容し、駆動部K1が停止しないようにすることができる。
【0046】
上述した実施形態において、建設機械制御装置1は、タッチセンサ10と脚部スイッチ11との両方の検出結果を参照し、停止制御をする場合について説明したが、脚部スイッチ11の検出結果にかかわらず、タッチセンサ10の検出結果を参照し、停止制御をしてもよいし、タッチセンサ10の検出結果にかかわらず、脚部スイッチ11の検出結果を参照し、停止制御をしてもよい。
【0047】
なお、上述した実施形態において、タッチセンサ10は、静電容量式センサが用いられる場合について説明したが、抵抗膜方式センサであってもよいし、マイクロスイッチのように物理的に押し込むスイッチであってもよい。
【0048】
また、上述した実施形態において、建設機械Kがクローラクレーンである場合について説明したが、建設機械Kがタワークレーンであってもよい。タワークレーンの場合、オペレータは、運転時において、左手で操作するレバーと右手で操作するレバーを基本的にそれぞれ握る。そのため、右手で握るレバーのグリップにもタッチセンサを設けるようにしてもよい。そして、左手のグリップのタッチセンサと、右手のグリップのタッチセンサと、脚部スイッチとのいずれもオフとなった場合に、停止制御を行うようにしてもよい。左手のグリップのタッチセンサと、右手のグリップのタッチセンサと、脚部スイッチのすくなくともいずれか1つについてオンとなった場合には、不感時間、警報期間であっても停止制御から離脱(解除)するようにしてもよい。
【0049】
上述した実施形態における警報部14、制御部15をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0050】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…建設機械制御装置,5…信号処理部,10…タッチセンサ,11,11a…脚部スイッチ,12…表示部,13…スピーカ,14…警報部,15…制御部,16…制御部,100,200,201,202…レバー,101…グリップ部,102…スイッチ部,K…建設機械,K1…駆動部,K2…旋回ブレーキ,S…座席,Sa…座面,Sb…背面
【要約】
【課題】建設機械のオペレータの体調も考慮しつつ、作業の安全性を高める。
【解決手段】建設機械の操作レバーのグリップ部に取り付けられ操作者が触れているか否かを検出するタッチセンサと、前記タッチセンサの検出結果に基づいて、前記操作者が前記グリップ部に触れていない場合に前記建設機械を停止させる制御部を有する。
【選択図】
図1