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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信機
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20231128BHJP
   H04W 48/02 20090101ALI20231128BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W48/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022123620
(22)【出願日】2022-08-02
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】飯束 嘉庸
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-096579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるチャネル番号の複信用ペアチャネルを変調送信部の送信周波数と受信復調部の受信周波数として、半複信方式で通信の中継を行うN台(但し、Nは2以上の整数)の無線中継器と、変調送信部に対して送信周波数を可変設定することが可能であり、前記各無線中継器の変調送信部の送信周波数と同一周波数であるN個の受信復調部を有すると共に、前記N個の受信復調部から得られる各復調信号はそれぞれ可変減衰器を介して合成され、その合成した信号により音声を再生出力させるM台(但し、N=2の場合:Mは3以上の整数、N≧3の場合:MはN以上の整数)の無線通信機とからなる無線通信ネットワークであって、
前記各無線通信機は、送信モードへの移行が指示された場合に、自機の各受信復調部について電波の受信状態にあるか否かを確認する手順と、全ての受信復調部が受信状態である場合には送信不可とし、非受信状態の受信復調部がある場合には、その非受信状態にある受信復調部の受信周波数と複信用ペアチャネルの関係にある周波数を自機の変調送信部の送信周波数に設定して送信を行う手順とを実行すると共に、操作部の特定キーが操作される度に、順次1つの受信復調部を選択して、選択した受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を0dBとし、それ以外の受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log 10 {X/(N-1)}dB[但し、0<X≦0.5]とした状態と、全ての受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log 10 (1/N)}dBとした状態とを巡回的に繰り返す動作を実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記台の無線通信機の内の複数台の無線通信機が、前記台の無線中継器の内の特定の無線中継器のみを利用するという共通属性でグループを構成し、前記グループに属する無線通信機が、N個の受信復調部の内の前記特定の無線中継器の変調送信部の送信周波数と同一の周波数である受信復調部のみを動作状態とし、他の受信復調部を非動作状態とすることとした請求項1に係る無線通信システム。
【請求項3】
前記請求項1の無線通信システムにおいて用いられる無線通信機であって、N個の受信復調部が出力する各復調信号がそれぞれ可変減衰器を介して合成され、操作部の特定キーが操作される度に、順次1つの受信復調部を選択して、選択した受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を0dBとし、それ以外の受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log10{X/(N-1)}dB[但し、0<X≦0.5]とした状態と、全ての受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log10(1/N)}dBとした状態とを巡回的に繰り返すことを特徴とする無線通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機同士が無線中継器を介して半複信方式で通信を行う無線通信システム及び同システムに適用される無線通信機に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定小電力無線局である無線通信機同士の複信ペアチャネルを使用した半複信方式の通信において、その通信エリアを拡張する場合には、最も簡単な手段として無線中継器が用いられる。
【0003】
そのような無線通信システムとしては、図9に示すように、無線中継器200の変調送信部TX1と受信復調部RX1にはそれぞれ複信用ペアチャネルである(CH-A_L)と(CH-A_H)の周波数が設定され、各無線通信機201,202の変調送信部TX1と受信復調部RX1にはそれぞれ(CH-A_H)と(CH-A_L)の周波数が設定されており、同図の(A)と(B)のように、各無線通信機201,202間でそれぞれが相互に送信モードと受信モードを切り替えることで半複信方式による通信が実行される。
ただし、複信用ペアチャネルとは、下記非特許文献1における第1-5~1-6頁の表3.2及び表3.4に示されるチャネル番号(1~19,32~40)の複信用ペアチャネル(対波)であり、(CH-A_H)や(CH-A_L)における「A」はチャネル番号を、「L」と「H」は同一チャネル番号の中での421MHz帯と440MHz帯のいずれであるかを示す。
【0004】
なお、図9(A),(B)に係る無線通信システムは、下記非特許文献1における第1-2頁及び第1-3頁に記載されている標準システムの構成におけるエリア拡大型の内の簡易中継型に相当しており、前記のように、複信方式用の2波の周波数(ペアチャネル)を使用する2周波単信方式であり、各無線通信機201,202(下記非特許文献1では基地局無線設備と子局無線設備に相当)は無線中継器200(下記非特許文献1では中継局無線設備に相当))を介した半複信方式の通信が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】社団法人電波産業会、「特定小電力無線局/無線電話用無線設備/標準規格」,RCR STD-20 5.1版、令和3年10月29日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図9の無線通信システムにおいて、無線通信機201,202の間で半複信方式の通信が実行されている場合、無線通信機202は他の無線通信機203からの送信電波(CH-A_H)の受信ができず、また、他の無線通信機203は電波(CH-A_H)を送信するに際して複信用ペアチャネルの他方の周波数である(CH-A_L)でキャリアセンス(前記非特許文献1の第1-10頁の(3)アを参照)を行う必要があるが、無線中継器200からの送信電波(CH-A_L)が検出されるために、各無線通信機201,202との通信ができない。
すなわち、当然ではあるが、他の無線通信機203は、無線通信機201,202の間での通信が終了しなければ、各無線通信機201,202との通信を行うことができない。
【0007】
そこで、本発明は、異なる複信用ペアチャネルに係る変調送信部と受信復調部を備えた複数の半複信方式の無線中継器と、その各無線中継器の送信周波数に対応する各受信復調部を備えた多数の無線通信機とでネットワークを構成し、前記問題点を解消すると共に、各種利便性を付加した無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、異なるチャネル番号の複信用ペアチャネルを変調送信部の送信周波数と受信復調部の受信周波数として、半複信方式で通信の中継を行うN台(但し、Nは2以上の整数)の無線中継器と、変調送信部に対して送信周波数を可変設定することが可能であり、前記各無線中継器の変調送信部の送信周波数と同一周波数であるN個の受信復調部を有すると共に、前記N個の受信復調部から得られる各復調信号を合成し、その合成した信号により音声を再生出力させるM台(但し、N=2の場合:Mは3以上の整数、N≧3の場合:MはN以上の整数)の無線通信機とからなる無線通信ネットワークであって、前記各無線通信機は、送信モードへの移行が指示された場合に、自機の各受信復調部について電波の受信状態にあるか否かを確認する手順と、全ての受信復調部が受信状態である場合には送信不可とし、非受信状態の受信復調部がある場合には、その非受信状態にある受信復調部の受信周波数と複信用ペアチャネルの関係にある周波数を自機の変調送信部の送信周波数に設定して送信を行う手順とを実行することを特徴とする無線通信システムに係る。
【0009】
この発明は、複数の無線中継器を用いて無線通信機同士が半複信方式で通信を行う無線通信システムに関する。
この発明によれば、N台の無線中継器の内で、無線通信機側からの電波を受信していない無線中継器があれば、ネットワーク内の全ての無線通信機においてはその空いている無線中継器の受信復調部の受信周波数を確認することができる。
なぜなら、各無線中継器はそれぞれが異なるチャネル番号の複信用ペアチャネルを送受信に使用しており、各無線通信機は各無線中継器の変調送信部の周波数を受信周波数とする受信復調部を備えているため、その各受信復調部において電波を受信しているか否かに基づいて前記確認が可能になるからである。
したがって、無線通信機からは、非受信状態にある受信復調部の受信周波数と複信用ペアチャネルの関係にある周波数を送信周波数に設定して送信を行うようにすれば、必ず使用されていない無線中継器を介して他の無線通信機へ音声信号を送信することができ、ネットワーク内で他の無線中継器が中継している通信と並行して通信を実行できる。
なお、無線通信機において、全ての受信復調部が受信状態である場合に送信が不可であることは当然である一方、前記確認により非受信状態の受信復調部があって送信を行う際にはキャリアセンスを実行しなければならないが、すでにその送信に係る周波数と複信用ペアチャネルの関係にある周波数について使用されていないことが当該受信復調部の非受信状態から確認されており、予めキャリアセンスが実行されていることになる。
【0010】
前記第1の発明においては、前記M台の無線通信機の内の複数台の無線通信機が、前記N台の無線中継器の内の特定の無線中継器のみを利用するという共通属性でグループを構成し、前記グループに属する無線通信機が、N個の受信復調部の内の前記特定の無線中継器の変調送信部の送信周波数と同一の周波数である受信復調部のみを動作状態とし、他の受信復調部を非動作状態とするようにすれば、ネットワーク内で無線中継器を単位としたグループ通信の運用が可能になる。
その場合、無線通信機は各無線中継器の送信周波数に対応する受信復調部を有して、その復調信号を合成して再生するようになっているが、自機が属する無線中継器の送信周波数と同一周波数である受信周波数の受信復調部以外の受信復調部を非動作状態にしているため、グループ内の通信において他のグループの音声が混入することはなく、円滑なグループ運用が可能になる。
【0011】
第2の発明は、前記第1の発明の無線通信システムに好適な無線通信機に関するものであり、N個の受信復調部が出力する各復調信号がそれぞれ可変減衰器を介して合成され、操作部の特定キーが操作される度に、順次1つの受信復調部を選択して、選択した受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を0dBとし、それ以外の受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log10{X/(N-1)}dB[但し、0<X≦0.5]とした状態と、全ての受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log10(1/N)}dBとした状態とを巡回的に繰り返すことを特徴とする無線通信機に係る。
【0012】
この発明の無線通信機を適用すれば、前記第1の発明におけるグループ運用に際して、自機の属するグループ内通信で用いられる受信復調部だけを動作状態として、それ以外の受信復調部を非動作状態としてしまうという一義的な運用だけでなく、特定キーが操作される度に、各グループ内通信の音声を順次選択的に聴取してゆくことができ、また全てのグループ内通信の音声を一括して聴取するという選択もできることから、簡単な操作で自機を多様な運用に対応させることが可能になる。
また、Xの設定の仕方によって、グループ内通信の音声聴き取りに支障のない範囲で他のグループの通話内容も聴けるようにもでき、また殆ど聴こえないような状態にすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線通信システムによれば、ネットワーク内で無線中継器の台数分の半複信方式での通信が許容される。
そして、無線通信機側からどの無線中継器が空いているかを確認できていることは、予めキャリアセンスが実行されていることに外ならず、空いている無線中継器を用いて通信を開始することができる。
また、ネットワークに属する全ての無線通信機は全体の通話内容を傍受することができる。
一方、無線中継器単位で無線通信機がグループを構成し、各無線通信機において自機が属するグループで使用されているチャネルの受信復調部以外を非動作状態にすることで、無線通信機のグループ運用が可能になる。
また、そのようなグループ運用においても、特定の無線通信機だけ全ての受信復調部を動作状態にしておくことで、全体の通信内容を傍受できるというような運用も可能である。
本発明の無線通信機によれば、前記発明の無線通信システムに適用され、簡単なキー操作だけで自機を多様な運用に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の無線通信システムの実施形態に係る模式的な無線通信ネットワーク図である(無線通信機1,2が半複信方式で通信中)。
図2】実施形態に係る模式的な無線通信ネットワーク図である(無線通信機1,2が半複信方式で通信中)。
図3】実施形態に係る無線通信ネットワークに用いられている無線中継器の機能ブロック図である。
図4】実施形態に係る無線通信ネットワークに用いられている無線通信機の機能ブロック図である。
図5】無線通信機が送信モードへ移行する際の送信周波数の設定し、通話が終了して送信モードを抜けるまでの手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る模式的な無線通信ネットワーク図である(無線通信機1が送信中に無線通信機3が送信した状態)。
図7】実施形態に係る模式的な無線通信ネットワーク図である(無線通信機1が送信中に無線通信機5が無線通信機3への返信のために送信した状態)。
図8】実施形態に係る模式的な無線通信ネットワーク図である(無線中継器51,52ごとに各無線通信機がグループ化された状態)。
図9】半複信方式の無線中継器を用いた通信における従来技術の問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の無線通信システム及び無線通信機の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1及び図2は、2台の無線中継器51,52と5台の無線通信機1~5で構成された無線通信ネットワークにおいて、無線通信機1,2が無線中継器51を介して半複信方式での通信を実行している状態を示し、図1では無線通信機1から無線通信機2へ、図2では無線通信機2から無線通信機1へそれぞれ音声信号の送信がなされている。
ただし、各図において、TX1(変調送信部)とRX1,RX2(受信復調部)及びCH-A_L,CH-A_H,CH-B_L,CH-B_Hの周波数表記に関しては[背景技術]の欄での説明に準じる。
【0016】
各図において、無線中継器51は、複信用チャネル番号Aの440MHz帯を受信周波数(CH-A_H)とし、421MHz帯を送信周波数(CH-A_L)として半複信方式での無線中継動作を実行し、無線中継器52は、複信用チャネル番号Bの440MHz帯を受信周波数(CH-B_H)とし、421MHz帯を送信周波数(CH-B_L)として半複信方式での無線中継動作を実行するものである。
【0017】
この各無線中継器51,52の機能上の基本的構成は図3に示される。
アンテナ501から得られる電波信号は受信復調部502へ入力されており、設定されている受信チャネルの無線信号が復調されて変調送信部503へ出力され、変調送信部503では入力された復調信号でキャリア信号を変調し、その変調後のキャリア信号を電力増幅して設定された送信チャネルでアンテナ504から発射送信させる。
なお、各無線中継器51,52の半複信方式での中継動作を含むシステム全体の動作制御はシステム制御部505によって行われる。
【0018】
一方、各無線通信機1~5については、変調送信部TX1の送信周波数を各無線中継器51,52の受信周波数である(CH-A_H)又は(CH-B_H)に設定可能であると共に、各無線中継器51,52の送信周波数(CH-A_L),(CH-B_L)に対応した受信周波数に設定されている2つの受信復調部(RX1:CH-A_L),(RX2:CH-B_L)を備えている。
そして、図1及び図2で示されているように、各受信復調部(RX1:CH-A_L),(RX2:CH-B_L)の復調信号は合成されてスピーカ(又はイヤホン)から再生音声として出力されるようになっている。
【0019】
この各無線通信機1~5の機能上の基本的構成は図4に示される。
受信系については、アンテナ101で受信した電波信号が2つの受信復調部102,103に入力されており、異なる受信チャネル(RX1:CH-A_L),(RX2:CH-B_L)に設定された各受信復調部102,103で受信信号を選択して復調することにより、各受信チャネルの音声信号を得る。
各受信復調部102,103で復調された音声信号は、出力制御部104においていずれか一方の音声を出力するか又は双方を合成出力させるかが選択され、その選択された音声信号が増幅器105で増幅されてスピーカ(又はイヤホン)106で音声再生される。
なお、図1図2図6及び図7では合成出力させている状態が示されている。
【0020】
一方、送信系については、マイクロホン107からの音声信号が増幅器108で増幅されて変調送信部109へ出力され、変調送信部109ではキャリア信号を音声信号で変調し、その変調されたキャリア信号を電力増幅してアンテナ110から発射送信させる。
そして、変調送信部109に設定される送信周波数は、後述するように、前記各受信復調部102,103の受信状態の確認結果に基づいて、送信が可能な場合には前記各無線中継器51,52の受信復調部(502)の受信周波数(CH-A_H),(CH-B_H)のいずれかが設定される。
【0021】
前記無線通信機1~5のシステム全体の動作制御はシステム制御部111によって行われる。
すなわち、システム制御部111は、操作部112からの指示信号や受信復調部102,103から得られる各種信号に基づいて、受信復調部102,103や変調送信部109のチャネル設定、出力制御部104での各復調信号の減衰器(図示せず)による減衰量の設定や信号の合成、動作モードの切り替え等を行い、また、液晶表示部113に対して使用チャネルや動作モードの表示に関する制御も実行する。
なお、前記操作部112からの指示信号としては、UP/DOWNボタン、ACCESSキー及びCUEキーの各種操作信号があるが、それらの操作信号もシステム制御部111が受け付けて、その操作に対応する制御を行う。
【0022】
図1及び図2に戻って、無線通信機1,2による無線中継器51を介した半複信方式の通信において、無線中継器51への上り電波の周波数は(CH-A_H)であり、無線中継器51からの下り電波の周波数は(CH-A_L)である。
したがって、無線通信機1,2のいずれかが送信状態にあるときには、ネットワーク内の全ての無線通信機1~5では受信復調部(RX1:CH-A_L)で受信した音声信号を再生でき、無線通信機1,2の通信に係る通話を傍受することができる。
【0023】
一方、図1及び図2のような無線通信機1,2の通信状態に限らず、このネットワーク内の無線通信機1~5が無線中継器51を介して送信を実行している状態では、図9で説明した状態と同様に、他の無線通信機が周波数(CH-A_H)で送信を行うことができず(キャリアセンスでビジーとなる)、前記送信が終了するまで待たざるを得ない。
【0024】
しかし、このネットワークでは、無線中継器51がチャネル番号Aの複信用ペアチャネルを用いているのに対して、チャネル番号Bの複信用ペアチャネルを用いた無線中継器52も備えており、例えば、図1図2の通信状態にあっても、無線通信機1,2以外の無線通信機3~5から無線中継器52を介した半複信方式の通信を行うことが可能である。
さらに一般的には、無線通信機1~5のいずれかが一方の無線中継器51/52を介した通信を実行している場合にも、他の無線通信機は他方の無線中継器52/51を介した通信を並行して行うことが可能である。
【0025】
また、無線通信機1~5のいずれにおいても、各無線中継器51,52の変調送信部TX1(503)の送信周波数と同一周波数を受信周波数とする受信復調部(RX1:CH-A_L),(RX2:CH-B_L)を有しており、且つそれらの受信復調部(RX1),(RX2)の復調信号を合成してスピーカ(又はイヤホン)から再生音声として出力させているため、無線通信機1~5では常にネットワーク内で交わされる通信の音声を傍受することができる。
【0026】
以上から、この実施形態に係るネットワークにおいて各無線通信機1~5が送信モードへ移行し、通話が終了して送信モードを抜けるまでの手順は図5のフローチャートのようになる。
ただし、図4の無線通信機の機能ブロック図と図1(又は図2)での各無線通信機1~5との関係において、受信復調部102は(RX1:CH-A_L)に、受信復調部103は(RX2:CH-B_L)に相当し、変調送信部109はTX1であって(CH-A_H)又は(CH-B_H)の送信周波数に設定可能であり、以下ではそれらの表記を併記することがある。
【0027】
先ず、変調送信部109(TX1)はOFF状態にあり、受信復調部102(RX1:CH-A_L)と受信復調部103(RX2:CH-B_L)とが共にON状態にあり、操作部112のACCESSキーがONにされると、システム制御部111は受信復調部102(RX1:CH-A_L)と受信復調部103(RX2:CH-B_L)が受信状態にあるか否かを確認する(S1,S2)。
ここで、双方とも受信状態にあると、無線通信機1~5において変調送信部109(TX1)に設定する周波数は無線中継器51,52の受信復調部102,103(RX1)の受信周波数(CH-A_H),(CH-B_H)であるため、キャリアセンスを行うまでもなく自機からの送信は不可であり、システム制御部111がビジー処理を行って元の状態に戻る(S3,S4→S1)。
【0028】
一方、受信復調部102(RX1)のみが受信状態にある場合には、変調送信部109(TX1)の送信周波数を(CH-B_H)に設定して送信モードへ移行する(S5,S6)。
すなわち、受信復調部102(RX1)のみが受信状態であることは、複信用ペアチャネルCH-Aに係る無線中継器51を介した通信がなされていることを意味し、したがって、ネットワークにおいて周波数(CH-A_H)を用いた通信はできないが、もう一方の複信用ペアチャネル(CH-B)に係る無線中継器52を介した通信は可能であるため、システム制御部111は変調送信部109(TX1)に周波数(CH-B_H)を設定する。
【0029】
このステップS5,S6の手順は、例えば、図1及び図2のように、無線通信機1と無線通信機2とが半複信方式での通信を実行中において、図6に示すように、無線通信機3が無線中継器52を介して前記以外の無線通信機4又は5と半複信方式の通信を開始しようとする場合に対応している。
そして、図7は、無線通信機3の発呼に対して無線通信機5が応答し、無線通信機5が無線中継器52を介して無線通信機3へ送信している状態を示している。
【0030】
したがって、その状態では、無線中継器51を介してチャネル番号Aの複信用ペアチャネル(CH-A_H),(CH-A_L)を用いた無線通信機1と無線通信機2の半複信方式の通信と、無線中継器52を介してチャネル番号Bの複信用ペアチャネル(CH-B_H),(CH-B_L)を用いた無線通信機3と無線通信機5の半複信方式の通信とがネットワーク内で並行して実行されると共に、通信を実行している無線通信機も含めて、ネットワーク内の全ての無線通信機1~5では受信復調部102(RX1:CH-A_L)と受信復調部103(RX2:CH-B_L)が復調した音声信号を合成した再生音声として、双方の通信に係る通話を傍受できる。
【0031】
図5のフローチャートに戻って、ステップ5で受信復調部102(RX1)のみの受信状態でなかった場合は、受信復調部103(RX2)のみ受信状態であるか、又は受信復調部102(RX1),103(RX2)の双方とも非受信状態ということになるが、この場合には、システム制御部111は変調送信部109(TX1)の送信周波数を(CH-A_H)に設定して送信モードへ移行させる(S7,S8)。
【0032】
すなわち、受信復調部103(RX2)のみ受信状態であることは、チャネル番号Bの複信用ペアチャネル(CH-B_H),(CH-B_L)に係る無線中継器52を介した通信がなされていることを意味し、したがって、ネットワークにおいて周波数(CH-B_H)を用いた通信はできないが、チャネル番号Aの複信用ペアチャネル(CH-A_H),(CH-A_L)に係る無線中継器51を介した通信は可能であるため、システム制御部111は変調送信部109(TX1)に周波数(CH-A_H)を設定する。
また、受信復調部102(RX1),103(RX2)の双方とも非受信状態であれば、変調送信部109(TX1)に(CH-A_H)又は(CH-B_H)のいずれの周波数を設定しても通信が可能であることになるが、この実施形態では(CH-A_H)の方を優先して設定するようにしている。
【0033】
以上のように、ACCESSキーがON操作されると、受信復調部102(RX1),103(RX2)の受信状態を確認し、その結果に応じて変調送信部109(TX1)に送信周波数が設定されて送信モードへ移行するが(S5~S8)、その場合には、送信周波数に対して複信ペアチャネルの関係にある周波数について、受信復調部102(RX1)又は103(RX2)が非受信状態になっていることで、予め同周波数が使用されていないことを確認しているため、キャリアセンスは既に実行されていることになる。
以降、送信モードでの通話が終了してACCESSキーが再度ON操作されると、システム制御部111は変調送信部109(TX1)をON状態からOFF状態に切り替えて送信動作を終了させて送信モードを抜ける(S9,S10)。
【0034】
ところで、図8に示すように、無線中継器51,52ごとに無線通信機1~5がグループ(1)とグループ(2)を構成して各グループ内で通信を行うと共に、無線通信機2が各グループに属さないで双方のグループ内の通信を傍受しながら、各無線中継器51,52を介して各グループの無線通信機と適宜通信を行うようなネットワーク構成が求められることがある。
例えば、ホテル業務を想定した場合、グループ(1)を宿泊部門グループ、グループ(2)を料飲部門グループ、無線通信機2をジェネラルマネージャというように対応させることができる。
【0035】
そのようなネットワーク構成においては、グループ(1)の無線通信機1,4とグループ(2)の無線通信機3,5はそれぞれ各自が属するグループ内での通話を聴ければよく、他のグループの通話音声が合成して再生されると自身のグループの通話内容が聴きづらくなる。
ただし、無線通信機2については、双方のグループ(1),(2)内での通話を常に聴いている必要がある。
【0036】
そこで、図8に示すように、グループ(1)の各無線通信機1,4では、無線中継器51の送信周波数(CH-A_L)に対応する受信復調部102(RX1:CH-A_L)をON状態に、受信復調部103(RX2:CH-B_L)をOFF状態に保つようにし、グループ(2)の各無線通信機3,5では、無線中継器52の送信周波数(CH-B_L)に対応する受信復調部103(RX2:CH-B_L)をON状態に、受信復調部102(RX1:CH-A_L)をOFF状態に保つようにする。
このようにすることにより、各グループ(1),(2)において、他のグループの通話音は合成再生されず、自身のグループの通話だけを明瞭に聴くことができるため、グループ毎の独立した同時運用が可能になる。
この各無線通信機1,4,3,5の受信復調部102(RX1),103(RX2)に対するON/OFF設定は、操作部112からの操作入力によりシステム制御部111を通じて行うことができる。
但し、無線通信機2については、その役割から前記設定の対象外とされる。
【0037】
なお、この実施形態では2台の無線中継器51,52を用いたネットワークであるため、各無線通信機1~5の受信復調部も2つの構成になっているが、3台以上の多数の無線中継器を用いたエリアの広いネットワークの場合には、無線通信機1~5は受信復調部を無線中継器の台数だけ有することになる。
その場合には、ある無線中継器のグループに属する各無線通信機は、多数の受信復調部の内の当該無線中継器の変調送信部の周波数と同一の受信周波数の受信復調部のみをON状態に、他の受信復調部をOFF状態に保つようにする。
【0038】
前記グループ運用により適合した個々の無線通信機1~5の構成として、出力制御部104に各受信復調部102(RX1),103(RX2)に対応した減衰器を設けておき、操作部112の特定キー(例えば、ACCESSキー)のON操作を行う度に、システム制御部111が各減衰器を制御することにより、受信復調部102(RX1)と受信復調部103(RX2)の出力信号を巡回的に次の(a),(b),(c)の状態にすることも考えられる。
(a)受信復調部102(RX1)の復調信号はそのままで、受信復調部103(RX2)の復調信号は12dBだけ減衰させて、各信号を合成出力させる。
(b)受信復調部102(RX1)の復調信号は12dBだけ減衰させ、受信復調部103(RX2)の復調信号はそのままで、各信号を合成出力させる。
(c)受信復調部102(RX1)と受信復調部103(RX2)の各復調信号をそれぞれ6dBだけ減衰させて、各信号を合成出力させる。
【0039】
このような機能を無線通信機1~5に具備させることにより、操作部112の特定キーに対するON操作だけで、個々の無線通信機1~5を自由にグループ運用に適合させることができ、またネットワーク内での様々な使用条件に適合させた2つの受信音声の調整が可能になる。
さらに、復調信号に対する減衰量も調整設定できるようにしておけば、きめ細かな調整ができることになる。
【0040】
なお、この場合においても一般化して、N台(N≧2)の無線中継器を用いたネットワークであって、受信復調部をN個有している場合の無線通信機の構成としては、N個の受信復調部が出力する各復調信号がそれぞれ可変減衰器を介して合成され、操作部の特定キーが操作される度に、順次1つの受信復調部を選択して、選択した受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を0dBとし、それ以外の受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log10{X/(N-1)}dB[但し、0<X≦0.5]とした状態と、全ての受信復調部に対応する可変減衰器の減衰量を20*log10(1/N)}dBとした状態とを巡回的に繰り返すようにすればよい。
【0041】
ここに、「20*log10{X/(N-1)}dB[但し、0<X≦0.5]」の意義は、各受信復調部の復調信号を1/2以下に減衰させると共に、(N-1)個の受信復調部の復調信号を合成するために、さらに1/(N-1)のレベルに減衰させるということであり、「20*log10(1/N)}dB」の意義は、N個の受信復調部の復調信号を前記のように減衰させることなく、その全てを合成させるため1/Nのレベルに減衰させるということである。
なお、前記の無線中継器が2台の例であれば、N=2、Xは1/4に該当する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は無線中継器を用いた無線通信ネットワークに適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1~5…無線通信機、51,52…無線中継器、101…アンテナ、102,103…受信復調部、104…出力制御部、105…増幅器、106…スピーカ(イヤホン)、107…マイクロホン、108…増幅器、109…変調送信部、110…アンテナ、111…システム制御部、112…操作部、113…表示部、501…アンテナ、502…受信復調部、503…変調送信部、504…アンテナ、505…システム制御部、200…無線中継器、201~203…無線通信機。
【要約】      (修正有)
【課題】異なる複信用ペアチャネルに係る複数の半複信方式の無線中継器と多数の無線通信機とでネットワークを構成し、通信ができない状況が発生しない無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線通信システムにおいて、無線通信ネットワークは、異なる複信用ペアチャネルを送受信周波数とするN台の無線中継器51、52、…と、M台(N=2でMは3以上、N≧3でMはN以上)の無線通信機1~5とからなる。各無線通信機は、各無線中継器の送信周波数と同一周波数であるN個の受信復調部を有し、その復調信号を合成して音声出力させる。さらに、送信モードで各受信復調部の受信状態か否かを確認し、非受信状態にある受信復調部の受信周波数と複信用ペアチャネルの関係にある周波数を変調送信部に設定して送信する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9