(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231128BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231128BHJP
H10B 41/70 20230101ALI20231128BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20231128BHJP
H01L 21/363 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L29/78 612C
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H01L29/78 619A
H10B41/70
H10B12/00 801
H10B12/00 621Z
H10B12/00 671C
H10B12/00 671Z
H01L21/363
(21)【出願番号】P 2022149824
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2020097458の分割
【原出願日】2012-12-19
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2011282509
(32)【優先日】2011-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-181911(JP,A)
【文献】国際公開第2011/129233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/786
H01L 21/336
H10B 41/70
H10B 12/00
H01L 21/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを有する第1のチャネル形成領域を有する第1のトランジスタと、
酸化物半導体を有する第2のチャネル形成領域を有する第2のトランジスタと、
容量素子と、を有する半導体装置であって、
前記第1のチャネル形成領域上の第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に位置し、前記第1のチャネル形成領域と重なる領域を有する第1の導電層と、
前記シリコン上に位置し、前記第1の導電層の側面に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に位置し、前記第2のチャネル形成領域を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上の第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層上に位置し、前記酸化物半導体層と重なる領域を有する第2の導電層と、
前記第2の導電層上の第4の絶縁層と、
前記第4の絶縁層上に位置し、前記第4の絶縁層に設けられた第1の開口部を介して前記酸化物半導体層と導通する第3の導電層と、
前記第4の絶縁層上に位置し、前記第4の絶縁層に設けられた第2の開口部を介して前記酸化物半導体層と導通する第4の導電層と、
前記第3の導電層上の第5の絶縁層と、
前記第5の絶縁層上の第5の導電層と、
前記第5の導電層上の第6の絶縁層と、
前記第6の絶縁層上に位置し、前記第4の導電層と導通する第6の導電層と、を有し、
前記第1の導電層は、前記第1のトランジスタのゲート電極として機能する領域を有し、
前記第1の導電層は、前記第3の導電層と導通し、
前記第2の導電層は、前記第2のトランジスタのゲート電極として機能する領域を有し、
前記第3の導電層は、前記容量素子の一方の電極として機能する領域を有し、
前記第5の導電層は、前記容量素子の他方の電極として機能する領域を有し、
前記第5の絶縁層は、前記容量素子の誘電体として機能する領域を有し、
前記第1の導電層は、前記第3の導電層、前記第5の導電層および前記第6の導電層と重なる領域を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化物半導体を用いた半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指し、トランジスタ、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装
置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術
が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のよ
うな電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシ
リコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目され
ている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び
亜鉛(Zn)を含む非晶質の酸化物半導体膜を用いたトランジスタが開示されている(特
許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、アモルファスシリコン膜を用いたトランジス
タよりも動作が速く(電界効果移動度が高い、とも言う)、また、多結晶シリコン膜を用
いたトランジスタよりも製造が容易であるといった特徴を有している。
【0007】
しかし、酸化物半導体膜を用いたトランジスタは幾つかの問題が指摘されており、その
1つとして、トランジスタの電気特性の不安定さがある。具体的には、可視光または紫外
光の照射や、バイアス-熱ストレス試験(BTストレス試験とも言う。)において、トラ
ンジスタのしきい値電圧がマイナス側にシフトし、トランジスタがノーマリーオンの傾向
を示すことが指摘されている。この原因の1つとして、酸化物半導体膜中の酸素欠損など
が挙げられる。
【0008】
例えば、酸化物半導体膜が非晶質(アモルファス)であると、酸化物半導体膜中の金属
原子と酸素原子の結合状態は秩序化されておらず、酸素欠損が生じやすい状態にあるとい
える。そのため、酸化物半導体膜の電気特性(例えば、電気伝導度)が変化する恐れがあ
る。そして、このような酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいては、トランジスタ
の電気特性の変動要因となり、当該トランジスタを用いた半導体装置の信頼性を低下させ
ることになる。
【0009】
また、酸化物半導体膜中に発生した酸素欠損を低減する方法の一として、酸化物半導体
膜の近傍に形成された酸化膜等から当該酸化物半導体膜に酸素を供給し、酸素欠損を補填
する方法などが挙げられる。しかしながら、製造工程において、加熱処理等により酸化物
半導体膜の形成前(換言すると、酸化物半導体膜に酸素を供給する前)に、酸化物半導体
膜の近傍に形成された酸化膜等から酸素が放出してしまい、酸化物半導体膜へ酸素の供給
が十分に行えない恐れがある。
【0010】
このような問題に鑑み、本発明の一態様では、酸化物半導体膜を用いたトランジスタに
おいて、電気特性の安定したトランジスタを提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
加熱により酸素放出が可能な酸化膜上に、少なくとも酸化膜からの酸素の放出が抑制で
きる第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を
形成する。このような積層型の酸化物半導体膜の構成とすることで、第2の酸化物半導体
膜の形成時に酸化膜から酸素の放出を抑制し、その後の熱処理にて酸化膜から酸素を放出
させ、第1の酸化物半導体膜を通過し第2の酸化物半導体膜へ酸素の供給を好適に行うこ
とが可能となる。第2の酸化物半導体膜へ酸素を供給することで、酸素欠損の発生が抑制
され、電気特性が安定したものとなる。
【0012】
また、第1の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物半導体膜は、少なくともインジウム、
ガリウム、亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜
よりもインジウムの含有率が小さく、且つガリウムの含有率が大きい。そのため、第2の
酸化物半導体膜は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜上に形成され、第1の酸化物
半導体膜との界面から成長する結晶を有する膜とすることができる。より詳細には以下の
通りである。
【0013】
本発明の一態様は、第1の酸化物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第
2の酸化物半導体膜と、を有し、第1の酸化物半導体膜、及び前記第2の酸化物半導体膜
は、少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半
導体膜は、第2の酸化物半導体膜よりもインジウムの含有率が小さい、且つガリウムの含
有率が大きい半導体装置である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、酸化膜上に形成された第1の酸化物半導体膜と、第1の
酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜上に形成
されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜と接し、第2の酸化物半導体膜と重畳する領域に形
成されたゲート電極と、を有し、第1の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物半導体膜は、
少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体
膜は、第2の酸化物半導体膜よりもインジウムの含有率が小さく、且つガリウムの含有率
が大きい半導体装置である。
【0015】
なお、本明細書等において含有率とは、各膜中に含まれる成分の割合を示す。特に第1
の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物半導体膜において、言及する場合が多い。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、酸化膜上に形成された第1の酸化物半導体膜と、第1の
酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜上に形成
されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜と接し、第2の酸化物半導体膜と重畳する領域に形
成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成された保護絶縁膜と、保護絶縁膜上に形成さ
れた層間絶縁膜と、層間絶縁膜上に形成され、第2の酸化物半導体膜と電気的に接続され
たソース電極、及びドレイン電極と、を有し、第1の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物
半導体膜は、少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の
酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜よりもインジウムの含有率が小さい、且つガリ
ウムの含有率が大きい半導体装置である。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、酸化膜上に形成された第1の酸化物半導体膜と、第1の
酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜上に形成
されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜と接し、第2の酸化物半導体膜と重畳する領域に形
成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成された保護絶縁膜と、保護絶縁膜上に形成さ
れた層間絶縁膜と、ゲート絶縁膜、保護絶縁膜、及び層間絶縁膜に形成された第1の開口
、及び第2の開口と、第1の開口、及び第2の開口に充填され、第2の酸化物半導体膜と
電気的に接続されたソース電極、及びドレイン電極と、を有し、第1の酸化物半導体膜、
及び第2の酸化物半導体膜は、少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物
膜であり、第1の酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜よりもインジウムの含有率が
小さい、且つガリウムの含有率が大きい半導体装置である。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、酸化膜上に形成された第1の酸化物半導体膜と、第1の
酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜上に形成
されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜と接し、第2の酸化物半導体膜と重畳する領域に形
成されたゲート電極と、ゲート電極と重畳する領域に形成された絶縁膜と、チャネル長方
向の断面において、ゲート電極、及び絶縁膜の側面に形成されたサイドウォール絶縁膜と
、サイドウォール絶縁膜に接して形成され、第2の酸化物半導体膜と電気的に接続された
ソース電極、及びドレイン電極と、少なくともソース電極、及びドレイン電極上に形成さ
れた保護絶縁膜、及び層間絶縁膜と、を有し、第1の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物
半導体膜は、少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の
酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜よりもインジウムの含有率が小さい、且つガリ
ウムの含有率が大きい半導体装置である。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、酸化膜上に形成された第1の酸化物半導体膜と、第1の
酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜上に形成
されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜と接し、第2の酸化物半導体膜と重畳する領域に形
成されたゲート電極と、チャネル長方向の断面において、第2の酸化物半導体膜の一方の
側面と接するソース電極と、第2の酸化物半導体膜の他方の側面と接するドレイン電極と
、ゲート電極の一方の側面に形成された第1の導電膜と、ゲート電極の他方の側面に形成
された第2の導電膜と、第1の導電膜、及び第2の導電膜の側面に形成されたサイドウォ
ール絶縁膜と、少なくともゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極上に形成された保
護絶縁膜、及び層間絶縁膜と、を有し、第1の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物半導体
膜は、少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物
半導体膜は、第2の酸化物半導体膜よりもインジウムの含有率が小さい、且つガリウムの
含有率が大きい半導体装置である。
【0020】
上記構成において、第1の導電膜の少なくとも一部は、ゲート絶縁膜を介してソース電
極上に形成され、第2の導電膜の少なくとも一部は、ゲート絶縁膜を介してドレイン電極
上に形成されると好ましい。
【0021】
このように、ゲート電極に接して第1の導電膜、及び第2の導電膜を形成することで、
ゲート絶縁膜を介してソース電極、及びドレイン電極と重畳する領域(Lov領域ともい
う)を設けることができる。そのため微細化に伴うオン電流の低下を抑制することができ
る。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、酸化膜上に形成された第1の酸化物半導体膜と、第1の
酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜上に形成
されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜と接し、第2の酸化物半導体膜の上面、及び側面を
覆うゲート電極と、ゲート電極上に形成された保護絶縁膜、及び層間絶縁膜と、チャネル
長方向の断面において、層間絶縁膜、保護絶縁膜、ゲート絶縁膜、及び第2の酸化物半導
体膜を貫通する開口部において、第2の酸化物半導体膜の側面と接するソース電極、及び
ドレイン電極と、を有し、第1の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物半導体膜は、少なく
ともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜は、
第2の酸化物半導体膜よりもインジウムの含有率が小さい、且つガリウムの含有率が大き
い半導体装置である。
【0023】
上記各構成において、ソース電極、及びドレイン電極は、化学的機械的研磨処理によっ
て平坦化された表面を有していると好ましい。
【0024】
化学的機械的研磨処理によって平坦化された表面を有するソース電極、及びドレイン電
極は、形成時において、レジストマスクを用いたエッチング処理を用いないため、ソース
電極、及びドレイン電極のチャネル長方向の幅が微細化されている場合でも精密な加工を
正確に行うことができる。
【0025】
上記各構成において、第1の酸化物半導体膜は、低抵抗領域、及び高抵抗領域を含み、
少なくとも第2の酸化物半導体膜よりも外側に高抵抗領域を有すると好ましい。
【0026】
第2の酸化物半導体膜よりも外側に形成された第1の酸化物半導体膜の高抵抗領域は、
各トランジスタ間の分離層として機能する。このような構成とすることで隣接するトラン
ジスタ間が電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0027】
また、上記各構成において、第2の酸化物半導体膜は、チャネル領域、及びチャネル領
域に接する一対の低抵抗領域を含むと好ましい。第2の酸化物半導体膜のチャネル領域に
接する一対の低抵抗領域を形成することにより、第2の酸化物半導体膜と、ソース電極、
及びドレイン電極と、の接触抵抗を低減することができる。
【0028】
また、上記各構成において、第2の酸化物半導体膜は、チャネル幅方向の両側に高抵抗
領域を含むと好ましい。第2の酸化物半導体膜のチャネル幅方向の両側に高抵抗領域を形
成することにより、第2の酸化物半導体膜に形成される寄生チャネルの生成を抑制するこ
とができる。
【0029】
また、上記各構成において、第1の酸化物半導体膜は、膜中のガリウムの含有率がイン
ジウムの含有率と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムよりも大きく、第2の酸
化物半導体膜は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きいと好ましい
。第2の酸化物半導体膜の膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きいと
、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。
【0030】
また、上記各構成において、第1の酸化物半導体膜は、In:Ga:Zn=1:1:1
またはIn:Ga:Zn=1:3:2の原子数比の酸化物を用いて形成され、第2の酸化
物半導体膜は、In:Ga:Zn=3:1:2の原子数比の酸化物を用いて形成されると
好ましい。
【0031】
また、上記各構成において、第2の酸化物半導体膜は、結晶部を含み、結晶部は、c軸
が第2の酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うと好ましい。第2
の酸化物半導体膜が結晶部を含むことで、第2の酸化物半導体膜中の金属原子と酸素原子
の結合状態が秩序化され、酸素欠損の発生を抑制することが出来る。
【0032】
また、上記各構成において、保護絶縁膜は、酸化アルミニウム膜であり、酸化アルミニ
ウムの膜密度が3.2g/cm3以上であると好ましい。保護絶縁膜として、このような
酸化アルミニウム膜を用いることで、第2の酸化物半導体膜へ侵入する水素、水分などの
不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、電気特性の安定したトランジスタを提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】半導体装置の一態様を示す平面図、及び断面図。
【
図4】半導体装置の一態様を示す平面図、及び断面図。
【
図7】半導体装置の一態様を示す平面図、及び断面図。
【
図9】半導体装置の作製工程の一例を示す平面図、及び断面図。
【
図10】半導体装置の作製工程の一例を示す平面図、及び断面図。
【
図11】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図12】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図13】半導体装置の一態様を示す平面図、及び断面図。
【
図14】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図15】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図16】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図17】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図18】半導体装置の一態様を示す平面図、及び断面図。
【
図19】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図20】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図21】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図22】半導体装置の一形態を示す断面図、平面図及び回路図。
【
図23】半導体装置の一形態を示す回路図及び斜視図。
【
図24】半導体装置の一形態を示す断面図及び平面図。
【
図29】スパッタリングターゲットの作製工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する
。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱するこ
となく、その形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される
。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない
。
【0036】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0037】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0038】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」ま
たは「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電
極」の表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外
しない。
【0039】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に
限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり
、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「
配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0040】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合
や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このた
め、本明細書等においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いること
ができるものとする。
【0041】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0042】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置、及び半導体装置の作製方法の一形態を、
図1乃至
図3
を用いて説明する。
【0043】
〈半導体装置の構成例1〉
図1(A)乃至
図1(C)に、半導体装置の一例として、トップゲート構造のトランジ
スタの平面図および断面図を示す。
図1(A)は平面図であり、
図1(B)は、
図1(A
)におけるX1-Y1に係る断面図に相当し、
図1(C)は、
図1(A)におけるV1-
W1に係る断面図に相当する。なお、
図1(A)では、煩雑になることを避けるため、半
導体装置の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜110など)を省略している。
【0044】
図1(A)乃至
図1(C)に示す半導体装置は、酸化膜104と、酸化膜104上に形
成された第1の酸化物半導体膜106と、第1の酸化物半導体膜106上に形成された第
2の酸化物半導体膜108と、第2の酸化物半導体膜108上に形成されたゲート絶縁膜
110と、ゲート絶縁膜110と接し、第2の酸化物半導体膜108と重畳する領域に形
成されたゲート電極112と、を有している。
【0045】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、少なくとも
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜106は
、第2の酸化物半導体膜108よりもガリウムの含有率が大きい。
【0046】
また、第1の酸化物半導体膜106は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率
と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムの含有率よりも大きい。また、第2の酸
化物半導体膜108は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。第
2の酸化物半導体膜108のインジウムの含有率を大きくすることで、第2の酸化物半導
体膜108の結晶性を向上させることができる。
【0047】
このように、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108が積層して
形成されており、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108の組成が
異なる。また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108の形成時に
酸化膜104から放出される酸素を抑制することができる。
【0048】
ここで、第1の酸化物半導体膜106を形成しない構成を考える。その際に第2の酸化
物半導体膜108は、酸化膜104上に直接形成されることになる。例えば、第2の酸化
物半導体膜108を400℃等の加熱成膜を行うと、第2の酸化物半導体膜108の形成
前に酸化膜104から酸素が放出してしまう。その結果、第2の酸化物半導体膜108の
形成後に、酸化膜104から放出される酸素の量が少なくなり、第2の酸化物半導体膜1
08への酸素供給が十分に行うことができなくなる。また、酸化膜104が第2の酸化物
半導体膜108と異なる材料である場合、例えば、酸化膜104が酸化シリコン膜である
場合、第2の酸化物半導体膜108の膜中に酸化膜104の構成元素であるシリコンが不
純物として混入し、第2の酸化物半導体膜108の結晶化を阻害する懸念がある。
【0049】
しかし、本実施の形態に示す構成とすることで、例えば、酸化膜104の形成後に、第
1の酸化物半導体膜106は、低い温度(例えば、室温以上200℃以下)で形成し、第
2の酸化物半導体膜108は、高い温度(例えば、250℃以上500℃以下、好ましく
は300℃以上400℃以下)で形成することで、第1の酸化物半導体膜106により酸
化膜104から放出される酸素を抑制することができる。また、第2の酸化物半導体膜1
08は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜106上に形成されるため、第2の酸化
物半導体膜108の膜中に混入される不純物がない、または混入される不純物が極めて少
ないため、第1の酸化物半導体膜106との界面から成長する結晶部を有する酸化物半導
体膜とすることができる。
【0050】
すなわち、第1の酸化物半導体膜106は、少なくとも第2の酸化物半導体膜108の
成膜時において、酸化膜104から放出される酸素を抑制し、さらに第2の酸化物半導体
膜108の下地膜として機能するため、第2の酸化物半導体膜108の結晶性を高めるこ
とができる。また、酸化膜104からの放出される酸素は、第2の酸化物半導体膜108
形成後に、熱処理等により放出させ、第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸
化物半導体膜108に供給することができる。
【0051】
このように、第1の酸化物半導体膜106と第2の酸化物半導体膜108を積層する構
成とすることで、第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損の発生を抑制し、さらに第2の
酸化物半導体膜108の結晶性を向上させるといった優れた効果を奏する。
【0052】
第2の酸化物半導体膜108の結晶性が向上することで、第2の酸化物半導体膜中の金
属原子と酸素原子の結合状態が秩序化され、酸素欠損の発生を抑制することが出来る。ま
た、酸素欠損が発生したとしても、酸化膜104からの酸素の供給により、酸素欠損を補
填することが可能となる。
【0053】
なお、第1の酸化物半導体膜106において、ゲート電極112が重畳する領域、及び
第2の酸化物半導体膜108の外側には、それぞれ高抵抗領域106aが形成され、ゲー
ト電極112が重畳する領域に隣接して、一対の低抵抗領域106bが形成されている。
また、第2の酸化物半導体膜108において、ゲート電極112が重畳する領域には、チ
ャネル領域108aが形成されており、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して、一
対の低抵抗領域108bが形成されている。
【0054】
また、第2の酸化物半導体膜108の外側に形成された高抵抗領域106aは、各トラ
ンジスタ間の分離層として機能させる。例えば、第2の酸化物半導体膜108の外側に高
抵抗領域106aを設けない構成とした場合、隣接するトランジスタ間が電気的に接続さ
れる恐れがあるからである。
【0055】
また、ゲート電極112上に形成された保護絶縁膜114と、保護絶縁膜114上に形
成された層間絶縁膜116と、層間絶縁膜116上に形成され、第2の酸化物半導体膜1
08と電気的に接続されたソース電極118a、及びドレイン電極118bと、を含む構
成としても良い。なお、ソース電極118a、及びドレイン電極118bは、第2の酸化
物半導体膜108に形成された一対の低抵抗領域108bと接しているため、接触抵抗を
低減することができる。
【0056】
ここで、本発明の半導体装置に用いることができる各構成要素について、その詳細な説
明について以下記載する。
【0057】
[基板の詳細な説明]
基板102に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処
理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸
ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板などの基板を用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結
晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SO
I基板などを適用することも可能である。
【0058】
[酸化膜の詳細な説明]
酸化膜104は、基板102からの水素、水分などの不純物元素の拡散を防止する効果
があり、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜から選ばれた
一、または複数の膜による積層構造により形成することができる。また、酸化膜104の
その他の効果としては、のちに形成される第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化
物半導体膜108に酸素を供給する効果があると好ましい。例えば、酸化膜104として
、酸化シリコン膜を用いた場合、当該酸化膜104を加熱することにより酸素の一部を脱
離させることができるので、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜1
08に酸素を供給し、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108中
の酸素欠損を補填することができる。
【0059】
特に、酸化膜104中に少なくとも化学量論的組成を超える量の酸素が存在することが
好ましく、例えば、酸化膜104として、SiO2+α(ただし、α>0)で表される酸
化シリコン膜を用いることが好ましい。このような酸化シリコン膜を酸化膜104として
用いることで、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108に酸素を
供給することができる。
【0060】
[第1の酸化物半導体膜の詳細な説明]
第1の酸化物半導体膜106は、少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸
化物膜であり、In-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する)を用いることができ
る。なお、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを含む酸化物という意味で
あり、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。例えば、In-Sn-Ga
-Zn系酸化物、In-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物を
用いることができる。
【0061】
また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108よりもインジウム
の含有率が小さい、且つガリウムの含有率が大きい。また、第1の酸化物半導体膜106
は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率と等しい、またはガリウムの含有率が
インジウムの含有率よりも大きい。すなわち、含有率がIn≦Gaの組成となる酸化物を
用いるとよい。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、またはIn:Ga:Zn=1:
3:2の原子数比のIn-Ga-Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい
。
【0062】
また、第1の酸化物半導体膜106の形成方法としては、スパッタリング法、ALD(
Atomic Layer Deposition)法、蒸着法、塗布法などを用いるこ
とができる。また、第1の酸化物半導体膜106の膜厚は、5nmより大きく200nm
以下とし、好ましくは10nm以上30nm以下とする。また、第1の酸化物半導体膜1
06は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)、または非晶質などの状態をとる
。
【0063】
[第2の酸化物半導体膜の詳細な説明]
第2の酸化物半導体膜108は、少なくともインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸
化物膜であり、In-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する)を用いることができ
る。なお、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを含む酸化物という意味で
あり、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。例えば、In-Sn-Ga
-Zn系酸化物、In-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物を
用いることができる。
【0064】
また、第2の酸化物半導体膜108は、第1の酸化物半導体膜106よりもインジウム
の含有率が大きく、且つガリウムの含有率が小さい。また、第2の酸化物半導体膜108
は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。すなわち、含有率がI
n>Gaの組成となる酸化物を用いるとよい。例えば、In:Ga:Zn=3:1:2、
またはIn:Ga:Zn=2:1:3の原子数比のIn-Ga-Zn系酸化物やその組成
の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0065】
また、第2の酸化物半導体膜108の形成方法としては、スパッタリング法、ALD法
、蒸着法、塗布法などを用いることができる。また、第2の酸化物半導体膜108の膜厚
は、5nmより大きく200nm以下とし、好ましくは10nm以上30nm以下とする
。また、第2の酸化物半導体膜108は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)
、または微結晶などの結晶性を有する構造とすることが好ましい。
【0066】
また、第2の酸化物半導体膜108は、CAAC-OS(C Axis Aligne
d Crystalline Oxide Semiconductor)膜とすること
が好ましい。CAAC-OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CA
AC-OS膜は、非晶質相に結晶部を有する結晶-非晶質混相構造の酸化物半導体膜であ
る。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが
多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron
Microscope)による観察像では、CAAC-OS膜に含まれる非晶質部と結
晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC-OS膜には粒界(グレイ
ンバウンダリーともいう)は確認できない。そのため、CAAC-OS膜は、粒界に起因
する電子移動の低下が抑制される。
【0067】
CAAC-OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC-OS膜の被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三
角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状また
は金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸
およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、
85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、-
5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0068】
なお、CAAC-OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CA
AC-OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、表
面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC-OS膜へ不純
物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある
。
【0069】
CAAC-OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC-OS膜の形状(被形
成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。
なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC-OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、ま
たは成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0070】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射によるトランジスタ
の電気特性の変動が小さい。また、しきい値の変動、及びバラツキを抑制できる。よって
、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0071】
また、結晶部、または結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減する
ことができる。さらに、結晶部、または結晶性を有する酸化物半導体膜表面の平坦性を高
めることによって、該酸化物半導体を用いたトランジスタは、アモルファス状態の酸化物
半導体を用いたトランジスタ以上の電界効果移動度を得ることができる。酸化物半導体膜
表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく
、具体的には、平均面粗さ(Ra)が0.15nm以下、好ましくは0.1nm以下の表
面上に形成するとよい。
【0072】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている算術平均粗さを面に対して適用で
きるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均し
た値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0073】
【0074】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x1,y1,f(x1,
y1)),(x1,y2,f(x1,y2)),(x2,y1,f(x2,y1)),(
x2,y2,f(x2,y2))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面
に投影した長方形の面積をS0、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZ0とする。R
aは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて
測定可能である。
【0075】
また、第2の酸化物半導体膜108として、CAAC-OS膜を適用する場合、該CA
AC-OS膜を形成する方法としては、三つ挙げられる。一つめは、成膜温度を200℃
以上450℃以下として酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる
結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃っ
た結晶部を形成する方法である。二つめは、酸化物半導体膜を薄い膜厚で成膜した後、2
00℃以上700℃以下の熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸
が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形
成する方法である。三つめは、一層目の酸化物半導体膜を薄く成膜した後、200℃以上
700℃以下の熱処理を行い、さらに二層目の酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化
物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクト
ルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0076】
また、基板102を加熱しながら成膜することにより、成膜した第2の酸化物半導体膜
108に含まれる水素や水などの不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリ
ングによる損傷が軽減されるため好ましい。また、第2の酸化物半導体膜108を、AL
D法、蒸着法、塗布法などで成膜してもよい。
【0077】
なお、第2の酸化物半導体膜108として、CAAC-OS膜以外の結晶性を有する酸
化物半導体膜(単結晶または微結晶)を成膜する場合には、成膜温度は特に限定されない
。
【0078】
また、第2の酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2.8eV乃至3.2e
Vであり、シリコンのエネルギーギャップ1.1eVと比較して大きい。また、第2の酸
化物半導体膜108の少数キャリア密度は、1×10-9/cm3であり、シリコンの真
性キャリア密度の1×1011/cm3と比較して極めて小さい。
【0079】
第2の酸化物半導体膜108の多数キャリア(電子)は、トランジスタのソースから流
れるのみである。また、チャネル形成領域を完全空乏化することが可能であるため、トラ
ンジスタのオフ電流を極めて小さくすることが可能である。第2の酸化物半導体膜108
を用いたトランジスタのオフ電流は、室温において、10yA/μm以下、85℃~95
℃においても、1yA/μm以下となり、極めて小さい。
【0080】
なお、本明細書においてオフ電流とは、nチャネル型トランジスタの場合、ドレイン電
極をソース電極とゲート電極よりも高い電位とした状態において、ソース電極の電位を基
準としたときのゲート電極の電位が0V以下であるときに、ソース電極とドレイン電極の
間に流れる電流のことを意味する。または、pチャネル型トランジスタの場合、ドレイン
電極をソース電極とゲート電極よりも低い電位とした状態において、ソース電極の電位を
基準としたときのゲート電極の電位が0V以上であるときに、ソース電極とドレイン電極
の間に流れる電流のことを意味する。
【0081】
また、第2の酸化物半導体膜108を用いたトランジスタは、S値が小さくなり、理想
的な値が得られる。また、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0082】
[ゲート絶縁膜の詳細な説明]
ゲート絶縁膜110としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜
、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリ
コン膜等を用いることができる。ゲート絶縁膜110は、第2の酸化物半導体膜108と
接する部分において酸素を含むことが好ましい。特に、ゲート絶縁膜110は、膜中に少
なくとも化学量論的組成を超える量の酸素が存在することが好ましく、例えば、ゲート絶
縁膜110として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)
とすることが好ましい。この酸化シリコン膜をゲート絶縁膜110として用いることで、
第2の酸化物半導体膜108に酸素を供給することができ、電気特性を良好にすることが
できる。
【0083】
また、ゲート絶縁膜110としては、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウム
シリケート(HfSixOyx>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケー
ト(HfSiOxNy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy
(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh-k材料を用いることができる。こ
のような材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁膜11
0は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0084】
また、ゲート絶縁膜110の膜厚は、例えば1nm以上500nm以下とすることがで
きる。また、ゲート絶縁膜110の作製方法に特に限定はないが、例えば、スパッタリン
グ法、MBE法、PE-CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることが
できる。
【0085】
[ゲート電極の詳細な説明]
ゲート電極112としては、例えば、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、
アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料、またはこれらを含む合金材料
を用いることができる。また、ゲート電極112としては、導電性の金属酸化物を用いて
形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ
(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(In2O3-SnO2、I
TOと略記する場合がある)、インジウム亜鉛酸化物(In2O3-ZnO)、または、
これらの金属酸化物材料にシリコン、または酸化シリコンを含有させたものを用いること
ができる。また、ゲート電極112は、上記の材料を用いて単層、または積層して形成す
ることができる。形成方法も特に限定されず、蒸着法、PE-CVD法、スパッタリング
法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。
【0086】
[保護絶縁膜の詳細な説明]
保護絶縁膜114としては、無機絶縁膜を用いることが好ましく、酸化シリコン膜、酸
化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ガリウム膜、酸
化ハフニウム膜などの酸化物絶縁膜を単層、または積層して用いればよい。また、上述の
酸化物絶縁膜上に、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸
化アルミニウム膜などの窒化物絶縁膜の単層、または積層をさらに形成してもよい。例え
ば、スパッタリング法を用いて、ゲート電極112側から順に酸化シリコン膜、及び酸化
アルミニウム膜の積層を形成することができる。また、保護絶縁膜114の作製方法に特
に限定はないが、例えば、スパッタリング法、MBE法、PE-CVD法、パルスレーザ
堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。
【0087】
また、保護絶縁膜114としては、特に緻密性の高い無機絶縁膜を設けるとよい。例え
ば、スパッタリング法により酸化アルミニウム膜を形成することができる。酸化アルミニ
ウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm3以上、好ましくは3.6g/cm3以上)とす
ることによって、第2の酸化物半導体膜108に侵入する水素、水分などの不純物、及び
酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)を得ることができる。し
たがって、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、第2の酸化物半導体
膜108の変動要因となる水素、水分などの不純物の第2の酸化物半導体膜108への混
入、及び第2の酸化物半導体膜108を構成する主成分材料である酸素の放出を防止する
保護膜として機能する。なお、膜密度はラザフォード後方散乱法(RBS:Ruther
ford Backscattering Spectrometry)や、X線反射率
測定法(XRR:X-Ray Reflection)によって測定することができる。
【0088】
[層間絶縁膜の詳細な説明]
層間絶縁膜116としては、無機絶縁膜を用いることが好ましく、酸化シリコン膜、酸
化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜を単層、または積層して用いれ
ばよい。また、層間絶縁膜116の作製方法に特に限定はないが、例えば、スパッタリン
グ法、MBE法、PE-CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることが
できる。
【0089】
[ソース電極、及びドレイン電極の詳細な説明]
ソース電極118a、及びドレイン電極118bとしては、例えば、アルミニウム、ク
ロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素を含む金属膜
、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒
化タングステン膜)等を用いることができる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下
側、または上側の一方、または双方にチタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金
属膜、またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステ
ン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極118a、及びドレイン電極1
18bに用いる導電膜は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物と
しては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、イ
ンジウムスズ酸化物(In2O3-SnO2、ITOと略記する)、インジウム亜鉛酸化
物(In2O3-ZnO)を用いることができる。ソース電極、及びドレイン電極に用い
る導電膜は、上記の材料を用いて単層で又は積層して成膜することができる。形成方法も
特に限定されず、蒸着法、PE-CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各
種成膜方法を用いることができる。
【0090】
なお、その他の構成要素の詳細については、後述する半導体装置の作製方法1において
、
図2、及び
図3を用いて説明する。
【0091】
〈半導体装置の作製方法1〉
以下、
図2、及び
図3を用いて、本実施の形態に係る
図1に示す半導体装置の作製方法
の一例について説明する。
【0092】
まず、基板102を準備し、次に、基板102上に酸化膜104、第1の酸化物半導体
膜106、及び第2の酸化物半導体膜108を形成する(
図2(A)参照)。
【0093】
また、酸化膜104を形成する前に、基板102に対してプラズマ処理等を行っても良
い。プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆ス
パッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板10
2側にRF電源を用いて電圧を印加して基板102近傍にプラズマを形成して表面を改質
する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよ
い。逆スパッタリングを行うと、基板102表面に付着している粉状物質(パーティクル
、ごみともいう)を除去することができる。
【0094】
第2の酸化物半導体膜108の形成方法としては、ドライエッチング法により酸化物半
導体膜のエッチングを行う。エッチングガスには、BCl3、Cl2、O2等を用いるこ
とができる。エッチング速度の向上にはECRやICPなどの高密度プラズマ源を用いた
ドライエッチング装置を用いることができる。また、第2の酸化物半導体膜108の形成
工程において、第1の酸化物半導体膜106が島状に加工されないように第2の酸化物半
導体膜108のエッチング条件などを実施者が適宜選択すればよい。また、第2の酸化物
半導体膜108は、端部に20°乃至50°のテーパーを有していることが好ましい。
【0095】
なお、酸化膜104、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108
は、大気に触れさせること無く連続して成膜するのが好ましく、特に、第1の酸化物半導
体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108を連続して成膜するのが好ましい。このよ
うに、酸化膜104、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108を
大気に触れさせることなく連続して成膜することで、大気中に含まれる水分、水素といっ
た不純物元素が各界面に混入することを抑制することができる。
【0096】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108の成膜工程にお
いて、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108に水素、または水
がなるべく含まれないことが好ましい。例えば、第1の酸化物半導体膜106、及び第2
の酸化物半導体膜108の成膜工程の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で
酸化膜104が形成された基板102を予備加熱し、基板102、及び酸化膜104に吸
着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。ただし、予備加熱の温
度は、酸化膜104からの酸素の放出がない、または酸素の放出が少ない温度とすること
が好ましい。また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108の成
膜時、残留水分が排気された成膜室(成膜チャンバーともいう)で行うことが好ましく、
更に好ましくは、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、複
数の成膜室を有したマルチチャンバー構成のスパッタリング装置を用いて、真空中で連続
して成膜することが好ましい。
【0097】
なお、予備加熱室、及び成膜室の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例え
ば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ま
しい。また、排気手段は、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい
。クライオポンプを用いて排気した予備加熱室、及び成膜室は、例えば、水素原子、水(
H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気
されるため、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108に含まれる
水素、水分などの不純物の濃度を低減できる。
【0098】
なお、本実施の形態では、第1の酸化物半導体膜106として、原子数比がIn:Ga
:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを用い、第2の酸化物半導体膜108として
、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2の金属酸化物ターゲットを用い、スパッタリ
ング法により成膜する。ただし、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体
膜108に用いることのできるターゲットは、これらのターゲットの材料、及び組成に限
定されるものではない。また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜
108に用いることのできるターゲットは、単結晶、多結晶等の結晶性を有するターゲッ
トが好ましい。結晶性を有するターゲットを用いることにより、形成された薄膜も結晶性
を有し、特に形成された薄膜においては、c軸に配向された結晶となりやすい。
【0099】
ここで、c軸が上面の法線ベクトルに平行である結晶領域を有する酸化物半導体からな
るスパッタリング用ターゲットの作製方法について説明する(
図29参照)。
【0100】
まず、スパッタリングターゲットの原料を秤量する(ステップS101)。
【0101】
ここでは、スパッタリング用ターゲットの原料として、InOX原料(Inを含む原料
)、GaOY原料(Gaを含む原料)、及び、ZnOZ原料(Znを含む原料)を用意す
る。なお、X、YおよびZは任意の正数であり、例えばXは1.5、Yは1.5、Zは1
とすればよい。もちろん、上記の原料は一例であり、所望の化合物を得るために適宜原料
を選択すればよい。例えば、GaOY原料に代えて、MOY原料を用いてもよい。なお、
Mは、Sn、HfまたはAlとすればよい。または、Mは、ランタノイドであるLa、C
e、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuと
してもよい。本実施の形態では三種の原料を用いた例を示すが、これに限定されない。例
えば、本実施の形態を四種以上の原料を用いた場合に適用しても構わない。
【0102】
次に、InOX原料、GaOY原料およびZnOZ原料を所定の比率で混合する。
【0103】
所定の比率としては、例えば、InOX原料、GaOY原料およびZnOZ原料が、2
:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、1:1:2、3:1:4
または3:1:2のmol数比とする。このような比率を有する混合材料を用いることで
、c軸が上面の法線ベクトルに平行である結晶領域を有する酸化物半導体からなるスパッ
タリング用ターゲットを得やすくなる。
【0104】
より具体的には、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の組成を有するIn-G
a-Zn酸化物のスパッタリングターゲットを作製する場合は、In2O3:Ga2O3
:ZnO=1:1:2[mol数比]となるように、それぞれの原料を秤量する。
【0105】
なお、GaOY原料に代えて、MOY原料を用いた場合も、InOX原料、MOY原料
およびZnOZ原料は、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3
、1:1:2、3:1:4または3:1:2のmol数比とすればよい。
【0106】
まず、湿式方式によるスパッタリングターゲットの作製方法について述べる。スパッタ
リングターゲットの原料を秤量後、原料をボールミル等で粉砕及び混合して化合物粉末を
作製する。さらに、当該化合物粉末に、イオン交換水、有機添加物等を混合してスラリー
を作製する(ステップS111)。
【0107】
次いで、水分を透過するフィルタが敷かれた型にスラリーを流し込んで、水分を除去す
る。当該型は、金属製または酸化物製を用いればよく、矩形または丸形の上面形状を有す
る。また当該型は、底部に1つ又は複数の穴が設けられた構造を有すればよい。該穴を複
数設けると、スラリーの水分を速やかに除去することができる。当該フィルタは、多孔性
樹脂、布等を用いればよい。
【0108】
スラリー中の水分の除去は、スラリーが流し込まれた型の底部に設けられている穴から
の減圧排水により行われる。次いで、減圧排水により水分を除去されたスラリーをさらに
自然乾燥させる。これにより、水分が除去されたスラリーは、型の内部の形状に成形され
る(ステップS113)。
【0109】
次いで、得られた成形体を、酸素(O2)雰囲気中1400℃で焼成する(ステップS
114)。以上により、湿式方式によるスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0110】
次いで乾式方式によるスパッタリングターゲットの作製方法について述べる。スパッタ
リングターゲットの原料を秤量後、原料をボールミル等で粉砕及び混合して化合物粉末を
作製する(ステップS121)。
【0111】
得られた化合物粉末を型に敷き詰め、プレス装置にて加圧することにより、当該化合物
粉末を成形し成形体を得る(ステップS122)。
【0112】
得られた成形体を電気炉等の加熱装置内に設置し、酸素(O2)雰囲気中1400℃で
焼成する(ステップS123)。なお本実施の形態では、ステップS122及びステップ
S123のように、成形工程及び焼成工程が分かれている方式を、コールドプレス方式と
呼ぶこととする。コールドプレス方式に対して、成形工程及び焼成工程を同時に行うホッ
トプレス方式について、以下に説明する。
【0113】
まず上述したステップS121までの工程を行う。得られた化合物粉末を型に敷き詰め
、当該型をアルゴン(Ar)雰囲気中1000℃で加熱しながら、型内部に設けられた化
合物粉末をプレス装置により加圧する。このように、化合物粉末を焼成しながら加圧する
ことにより、当該化合物粉末を成形し成形体を得ることができる(ステップS125)。
以上により、乾式方式によるスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0114】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、希ガス(代
表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下におい
てスパッタリング法により形成することができる。
【0115】
また、第1の酸化物半導体膜106の成膜する温度は、好ましくは室温以上200℃以
下であり、第2の酸化物半導体膜108の成膜する温度は、好ましくは250℃以上50
0℃以下、更に好ましくは300℃以上400℃以下である。
【0116】
このように第1の酸化物半導体膜106を低温(室温以上200℃以下)で成膜し、第
2の酸化物半導体膜108を高温(250℃以上500℃以下)で成膜することで、酸化
膜104から放出される酸素を抑制し、且つ第2の酸化物半導体膜108の結晶性を向上
させることができる。
【0117】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、成膜直後に
おいて、化学量論的組成より酸素が多い過飽和の状態とすることが好ましい。例えば、ス
パッタリング法を用いて第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108
を成膜する場合、成膜ガスの酸素の占める割合が多い条件で成膜することが好ましく、特
に酸素雰囲気(酸素ガス100%)で成膜を行うことが好ましい。例えば、第1の酸化物
半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108として、In-Ga-Zn系酸化物(
IGZO)を用い、成膜ガスの酸素の占める割合が多い条件(特に酸素ガス100%の雰
囲気)で成膜すると、成膜温度を300℃以上としても、膜中からZnの放出が抑えられ
る。
【0118】
また、第1の酸化物半導体膜106を上述した金属酸化物ターゲットを用いて形成した
場合、ターゲットの組成と、基板上に形成される薄膜の組成と、が異なる場合がある。例
えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用いた場合
、成膜条件にも依存するが、薄膜である第1の酸化物半導体膜106の組成は、In:G
a:Zn=1:1:0.6~0.8[原子数比]となる場合がある。これは、第1の酸化
物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108の成膜中において、ZnOが昇華す
る、またはIn2O3、Ga2O3、ZnOの各成分のスパッタリングレートが異なるた
めだと考えられる。
【0119】
したがって、所望の組成の薄膜を形成したい場合においては、予め金属酸化物ターゲッ
トの組成を調整する必要がある。例えば、薄膜である第1の酸化物半導体膜106の組成
を、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]とする場合においては、金属酸化物ター
ゲットの組成を、In:Ga:Zn=1:1:1.5[原子数比]とすればよい。すなわ
ち、金属酸化物ターゲットのZnOの含有率を予め大きくすればよい。ただし、ターゲッ
トの組成は、上記数値に限定されず、成膜条件や、形成される薄膜の組成により適宜調整
することができる。また、金属酸化物ターゲットのZnOの含有率を大きくすることによ
り、得られる薄膜の結晶性が向上するため好ましい。また、上記においては、第1の酸化
物半導体膜106について説明を行ったが、第2の酸化物半導体膜108についても同様
に、所望の組成の薄膜を形成したい場合においては、金属酸化物ターゲットの組成を調整
してもよい。
【0120】
また、金属酸化物ターゲットの相対密度は90%以上100%以下、好ましくは95%
以上99.9%以下である。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、
成膜した第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は緻密な膜とす
ることができる。
【0121】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108を成膜する際に
用いるスパッタリングガスとしては、水素、水、水酸基、または水素化物などの不純物が
除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0122】
また、第2の酸化物半導体膜108の形成後、第2の酸化物半導体膜108に対して、
熱処理を行ってもよい。当該熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の
歪み点未満とする。当該熱処理を行うことで、第2の酸化物半導体膜108より過剰な水
素(水や水酸基を含む)を除去することが可能である。なお、当該熱処理は、本明細書等
において、脱水化処理(脱水素化処理)と記す場合がある。
【0123】
ただし、脱水化処理を行う場合において、酸化膜104から同時に酸素が脱離する可能
性があるため、脱水化処理の温度は、第2の酸化物半導体膜108から過剰な水素(水や
水酸基を含む)を除去し、且つ酸化膜104からの酸素の脱離を抑制できる温度に実施者
が適宜選択すればよい。なお、脱水素化処理により、酸化膜104から酸素が脱離される
可能性があるが、第1の酸化物半導体膜106が形成されているため、酸化膜104から
の酸素の脱離を抑制し、効果的に脱水素化処理を行うことができる。
【0124】
当該熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲
気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、第2の酸化物半導体膜10
8は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0125】
熱処理装置は、電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱
輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas R
apid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid T
hermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anne
al)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドラ
ンプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀
ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置であ
る。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アル
ゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気
体が用いられる。
【0126】
例えば、当該熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分
間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい
。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温
度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素
を含むガスに切り替えても良い。
【0127】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン
等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望
ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス
の純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上
(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0128】
また、上述の脱水化処理(脱水素化処理)を行うと、第2の酸化物半導体膜108を構
成する主成分材料である酸素が同時に脱離して減少してしまうおそれがある。第2の酸化
物半導体膜108において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在し、該酸素欠損に起
因してトランジスタの電気的特性変動を招くドナー準位が生じてしまう。よって、脱水化
処理(脱水素化処理)を行った場合、第2の酸化物半導体膜108の膜中に、酸素を供給
することが好ましい。第2の酸化物半導体膜108の膜中に酸素を供給することにより、
第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損を補填することができる。
【0129】
第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損を補填する方法の一例としては、第2の酸化物
半導体膜108に対して脱水化処理(脱水素化処理)を行った後、同じ炉に高純度の酸素
ガス、高純度の亜酸化窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレ
ーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で-
55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入
する。酸素ガス、または亜酸化窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。
または、熱処理装置に導入する酸素ガス、または亜酸化窒素ガスの純度を、6N(99.
9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち、酸素ガスまたは
亜酸化窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とするこ
とが好ましい。
【0130】
また、第2の酸化物半導体膜108に酸素を供給する方法の一例としては、第2の酸化
物半導体膜108に酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれ
かを含む)を添加することで、第2の酸化物半導体膜108に酸素を供給する。酸素の添
加方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンイン
プランテーション法、プラズマ処理などを用いる。
【0131】
また、第2の酸化物半導体膜108に酸素を供給する方法の一例としては、酸化膜10
4、または後に形成されるゲート絶縁膜110等を加熱することにより、酸素の一部を脱
離させ、第2の酸化物半導体膜108に酸素を供給する。特に本実施の形態においては、
酸化膜104から放出される酸素を第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸化
物半導体膜108へ酸素を供給するのが好適である。
【0132】
上述のように、第2の酸化物半導体膜108の形成後において、脱水化処理(脱水素化
処理)を行い第2の酸化物半導体膜108から、水素、または水分を除去して不純物が極
力含まれないように高純度化し、脱水化処理(脱水素化処理)によって同時に減少してし
まった酸素を第2の酸化物半導体膜108に加える、または酸素を供給し第2の酸化物半
導体膜108の酸素欠損を補填することが好ましい。また、本明細書等において、第2の
酸化物半導体膜108に酸素を供給する場合を、加酸素化処理と記す場合がある、または
第2の酸化物半導体膜108に含まれる酸素を化学量論的組成よりも多くする場合を過酸
素化処理と記す場合がある。
【0133】
なお、上記では、第2の酸化物半導体膜108を島状に加工した後に脱水化処理(脱水
素化処理)、および加酸素化処理を行う構成について説明したが、開示する発明の一態様
はこれに限定して解釈されない。第2の酸化物半導体膜108を島状に加工する前に、当
該処理を行ってもよい。また、後に形成される層間絶縁膜116の形成後に、加熱処理を
行い、酸化膜104、またはゲート絶縁膜110等から、第2の酸化物半導体膜108に
酸素を供給してもよい。
【0134】
このように、第2の酸化物半導体膜108は、脱水化処理(脱水素化処理)により、水
素または水分が除去され、加酸素化処理により酸素欠損を補填することによって、i型(
真性)化またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。このような酸化
物半導体膜中には、ドナーに由来するキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア
濃度は1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、さらに好まし
くは1×1011/cm3未満である。
【0135】
また、第2の酸化物半導体膜108は、銅、アルミニウム、塩素などの不純物がほとん
ど含まれない高純度化されたものであることが望ましい。トランジスタの作製工程におい
て、これらの不純物が第2の酸化物半導体膜108に混入または第2の酸化物半導体膜1
08の表面に付着する恐れのない工程を適宜選択することが好ましい。また、これらの不
純物が第2の酸化物半導体膜108の表面に付着した場合には、シュウ酸や希フッ酸など
に曝す、またはプラズマ処理(N2Oプラズマ処理など)を行うことにより、第2の酸化
物半導体膜108の表面の不純物を除去することが好ましい。具体的には、第2の酸化物
半導体膜108の銅濃度は1×1018atoms/cm3以下、好ましくは1×101
7atoms/cm3以下とする。また第2の酸化物半導体膜108のアルミニウム濃度
は1×1018atoms/cm3以下とする。また、第2の酸化物半導体膜108の塩
素濃度は2×1018atoms/cm3以下とする。
【0136】
また、第2の酸化物半導体膜108は、水素などの不純物が十分に除去される、または
、十分な酸素が供給されて酸素が過飽和の状態とされることにより、高純度化されたもの
であることが望ましい。具体的には、第2の酸化物半導体膜108の水素濃度は5×10
19atoms/cm3以下、望ましくは5×1018atoms/cm3以下、より望
ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。なお、上述の第2の酸化物半導体
膜108の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion
Mass Spectrometry)で測定されるものである。また、十分な酸素が
供給されて酸素が過飽和の状態とするため、第2の酸化物半導体膜108を包みこむよう
に過剰酸素を含む絶縁膜(SiOxなど)を接して設けると好ましい。
【0137】
過剰酸素を含む絶縁膜は、PE-CVD法やスパッタリング法における成膜条件を適宜
設定して膜中に酸素を多く含ませたSiOx膜や、酸化窒化シリコン膜を用いる。また、
多くの過剰酸素を絶縁膜に含ませたい場合には、イオン注入法やイオンドーピング法やプ
ラズマ処理によって、絶縁膜中に酸素を添加する。
【0138】
また、過剰酸素を含む絶縁膜の水素濃度が、7.2×1020atoms/cm3以上
である場合には、トランジスタの初期特性のバラツキの増大、トランジスタの電気特性に
関するL長依存性の増大、さらにBTストレス試験において大きく劣化するため、過剰酸
素を含む絶縁膜の水素濃度は、7.2×1020atoms/cm3未満とする。すなわ
ち、第2の酸化物半導体膜108の水素濃度は5×1019atoms/cm3以下、且
つ、過剰酸素を含む絶縁膜の水素濃度は、7.2×1020atoms/cm3未満とす
ることが好ましい。
【0139】
さらに第2の酸化物半導体膜108を包み、且つ、過剰酸素を含む絶縁膜の外側に配置
されるように、第2の酸化物半導体膜108の酸素の放出を抑えるブロッキング膜(Al
Oxなど)を設けると好ましい。
【0140】
過剰酸素を含む絶縁膜、またはブロッキング膜で第2の酸化物半導体膜108を包み込
むことで、第2の酸化物半導体膜108において化学量論的組成とほぼ一致するような状
態、または化学量論的組成より酸素が多い過飽和の状態とすることができる。
【0141】
次に、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108上にゲート絶縁
膜110、及び導電膜111を形成する(
図2(B)参照)。
【0142】
次に、フォトリソグラフィ工程により導電膜111上にレジストマスクを形成し、選択
的にエッチングを行って、ゲート電極112を形成した後、レジストマスクを除去する(
図2(C)参照)。
【0143】
なお、ゲート電極112を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成し
てもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないた
め、製造コストを低減できる。なお、ゲート電極112のエッチングは、ドライエッチン
グでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0144】
次に、ゲート絶縁膜110、及びゲート電極112上にレジストマスク132を形成す
る(
図2(D)参照)。
【0145】
次に、フォトリソグラフィ工程により、レジストマスク132を選択的に露光、及び現
像を行い、レジストマスク132aを形成する。その後、ゲート電極112、及びレジス
トマスク132aをマスクとして第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体
膜108にドーパント142を導入する。ドーパント142の導入により、第1の酸化物
半導体膜106には、高抵抗領域106aと、ゲート電極112が重畳する領域に隣接し
て一対の低抵抗領域106bと、が形成され、第2の酸化物半導体膜108には、チャネ
ル領域108aと、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して一対の低抵抗領域108
bと、が形成される(
図3(A)参照)。
【0146】
ドーパント142は、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108
の導電率を変化させる不純物である。ドーパント142としては、15族元素(代表的に
は窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、およびアンチモン(Sb))、ホウ素(B)
、アルミニウム(Al)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、イン
ジウム(In)、フッ素(F)、塩素(Cl)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)のい
ずれかから選択される一以上を用いることができる。
【0147】
また、ドーパント142は、注入法により、他の膜(例えばゲート絶縁膜110)を通
過して、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108に導入すること
もできる。ドーパント142の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、
プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。その際
には、ドーパント142の単体のイオンあるいはフッ化物、塩化物のイオンを用いると好
ましい。
【0148】
ドーパント142の導入工程は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また通過させる
膜の膜厚を適宜設定して制御すればよい。本実施の形態では、ドーパント142としてリ
ンを用いて、イオン注入法でリンイオンの注入を行う。なお、ドーパント142のドーズ
量は1×1013ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよい
。
【0149】
低抵抗領域108bにおけるドーパント142の濃度は、5×1018/cm3以上1
×1022/cm3以下であることが好ましい。
【0150】
また、ドーパント142を導入する際に、基板102を加熱しながら行ってもよい。
【0151】
なお、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108にドーパント1
42を導入する処理は、複数回行ってもよく、ドーパントの種類も複数種用いてもよい。
【0152】
また、ドーパント142の導入処理後、加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては、
温度300℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下で1時間、酸素雰
囲気下で行うことが好ましい。また、窒素雰囲気下、減圧下、大気(超乾燥エア)下で加
熱処理を行ってもよい。
【0153】
また、第2の酸化物半導体膜108を結晶性酸化物半導体膜、またはCAAC-OS膜
とした場合、ドーパント142の導入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、
ドーパント142の導入後に加熱処理を行うことによって、第2の酸化物半導体膜108
の結晶性を回復することができる。
【0154】
次に、レジストマスク132aを除去し、ゲート絶縁膜110、及びゲート電極112
上に保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116を形成する(
図3(B)参照)。
【0155】
次に、フォトリソグラフィ工程により層間絶縁膜116上にレジストマスクを形成し、
ゲート絶縁膜110、保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116を選択的にエッチング処
理し、第2の酸化物半導体膜108(より具体的には、第2の酸化物半導体膜108に形
成された低抵抗領域108b)に達する開口部を形成した後、レジストマスクを除去する
(
図3(C)参照)。
【0156】
次に、上記開口部に導電膜を成膜し、その後、フォトリソグラフィ工程により当該導電
膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行い、ソース電極118a、及び
ドレイン電極118bを形成する(
図3(D)参照)。
【0157】
なお、本実施の形態においては、
図3(D)に示すように、チャネル長方向の断面にお
いて、ゲート電極112とソース電極118aが形成された開口部との距離と、ゲート電
極112とドレイン電極118bが形成された開口部との距離が異なる。このような構成
とすることで、オフ電流を抑制することができる。
【0158】
以上の工程により、
図1に示す半導体装置を作製することができる。
【0159】
本実施の形態に示すように、本発明の技術的思想は、酸化膜上に形成された第1の酸化
物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、を積層し
て形成することで、少なくとも第2の酸化物半導体膜の成膜時において、酸化膜から放出
される酸素を抑制し、さらに第1の酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜の下地膜とし
て機能させるために、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。第2の
酸化物半導体膜の結晶性が向上することにより、当該第2の酸化物半導体膜の酸素欠損の
発生が抑制され、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる。
【0160】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0161】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示した半導体装置の変形例、及び実施の形態1に示
した半導体装置の作製方法と異なる作製方法について、
図4乃至
図6を用いて説明を行う
。なお、
図1乃至
図3で示した符号については、同様の符号を用い、その繰り返しの説明
は省略する。なお、同じ箇所の詳細な説明も省略する。
【0162】
〈半導体装置の構成例2〉
図4(A)乃至
図4(C)に、半導体装置の一例として、トップゲート構造のトランジ
スタの平面図および断面図を示す。
図4(A)は平面図であり、
図4(B)は、
図4(A
)におけるX2-Y2に係る断面図に相当し、
図4(C)は、
図4(A)におけるV2-
W2に係る断面図に相当する。なお、
図4(A)では、煩雑になることを避けるため、半
導体装置の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜110など)を省略している。
【0163】
図4(A)乃至
図4(C)に示す半導体装置は、酸化膜104と、酸化膜104上に形
成された第1の酸化物半導体膜106と、第1の酸化物半導体膜106上に形成された第
2の酸化物半導体膜108と、第2の酸化物半導体膜108上に形成されたゲート絶縁膜
110と、ゲート絶縁膜110と接し、第2の酸化物半導体膜108と重畳する領域に形
成されたゲート電極112と、を有している。
【0164】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、少なくとも
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜106は
、第2の酸化物半導体膜108よりもガリウムの含有率が大きい。
【0165】
また、第1の酸化物半導体膜106は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率
と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムの含有率よりも大きく、第2の酸化物半
導体膜108は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。第2の酸
化物半導体膜108のインジウムの含有率を大きくすることで、第2の酸化物半導体膜1
08の結晶性を向上させることができる。
【0166】
このように、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108が積層して
形成されており、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108の組成が
異なる。また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108の形成時に
酸化膜104から放出される酸素を抑制することができる。
【0167】
また、第2の酸化物半導体膜108は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜106
上に形成されるため、第1の酸化物半導体膜106との界面から成長する結晶部を有する
酸化物半導体膜とすることができる。
【0168】
すなわち、第1の酸化物半導体膜106は、少なくとも第2の酸化物半導体膜108の
成膜時において、酸化膜104から放出される酸素を抑制し、さらに第2の酸化物半導体
膜108の下地膜として機能するため、第2の酸化物半導体膜108の結晶性を高めるこ
とができる。また、酸化膜104からの放出される酸素は、第2の酸化物半導体膜108
形成後に、熱処理等により放出させ、第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸
化物半導体膜108に供給することができる。
【0169】
このように、第1の酸化物半導体膜106と第2の酸化物半導体膜108を積層する構
成とすることで、第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損の発生を抑制し、さらに第2の
酸化物半導体膜108の結晶性を向上させるといった優れた効果を奏する。
【0170】
なお、第1の酸化物半導体膜106において、ゲート電極112が重畳する領域、及び
第2の酸化物半導体膜108の外側には、それぞれ高抵抗領域106aが形成され、ゲー
ト電極112が重畳する領域に隣接して、一対の低抵抗領域106bが形成されている。
また、第2の酸化物半導体膜108において、ゲート電極112が重畳する領域には、チ
ャネル領域108aが形成されており、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して、一
対の低抵抗領域108bが形成されている。
【0171】
また、第2の酸化物半導体膜108の外側に形成された高抵抗領域106aは、各トラ
ンジスタ間の分離層として機能する。例えば、第2の酸化物半導体膜108の外側に高抵
抗領域106aを設けない構成とした場合、隣接するトランジスタ間が電気的に接続され
る恐れがあるからである。
【0172】
また、ゲート電極112上に形成された保護絶縁膜114と、保護絶縁膜114上に形
成された層間絶縁膜116と、ゲート絶縁膜110、保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜
116の第1の開口部151a、及び第2の開口部151bに充填され、第2の酸化物半
導体膜108と電気的に接続されたソース電極118a、及びドレイン電極118bと、
ソース電極118aと電気的に接続された配線119aと、ドレイン電極118bと電気
的に接続された配線119bと、を含む構成としても良い。なお、ソース電極118a、
及びドレイン電極118bは、第2の酸化物半導体膜108に形成された一対の低抵抗領
域108bと接しているため、接触抵抗を低減することができる。
【0173】
本実施の形態に示す半導体装置の構造は、ゲート絶縁膜110、保護絶縁膜114、及
び層間絶縁膜116の第1の開口部151aに充填されたソース電極118aと、ゲート
絶縁膜110、保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116の第2の開口部151bに充填
されたドレイン電極118bと、ソース電極118a、及びドレイン電極118bに電気
的に接続された配線119a、及び配線119bが形成されている点において、実施の形
態1に記載した半導体装置の構造と異なっている。
【0174】
また、本実施の形態に示す半導体装置は、後の半導体装置の作製方法において、記載す
るが、ソース電極118a、及びドレイン電極118bが充填された開口部(第1の開口
部151a、及び第2の開口部151b)を2回に分けて形成する。また、ソース電極1
18a、及びドレイン電極118bは、CMP処理により導電膜118を分断して形成さ
れる。そのため、ソース電極118a、及びドレイン電極118bの形成にフォトリソグ
ラフィ工程を用いる必要がなく、露光機の精度やフォトマスクのアライメントズレに影響
されずソース電極118a、及びドレイン電極118bを形成することが可能となる。そ
のため本実施の形態に示す半導体装置は、微細化に適した構造の一である。また、このよ
うな構造とすることで、ソース側コンタクト領域またはドレイン側コンタクト領域と、ゲ
ート電極112との距離を、例えば0.05μm以上0.1μm以下まで縮小することが
できる。したがって、ソースとドレイン間の抵抗を低減することができるため、半導体装
置の電気的特性(例えば、トランジスタのオン電流特性)を向上させることができる構造
である。
【0175】
なお、本実施の形態に示す半導体装置に用いることができる各構成要素の詳細について
は、実施の形態1に示す構成と同様とすることができるため、その説明は省略する。実施
の形態1で用いない構成について以下記載する。
【0176】
[配線の詳細な説明]
配線119a、及び配線119bとしては、例えば、アルミニウム、クロム、銅、タン
タル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素を含む金属膜、または上述し
た元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン
膜)等を用いることができる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側、または上側
の一方、または双方にチタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜、またはそ
れらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層さ
せた構成としても良い。また、配線119a、及び配線119bに用いる導電膜は、導電
性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2
O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(In2O
3-SnO2、ITOと略記する)、インジウム亜鉛酸化物(In2O3-ZnO)を用
いることができる。配線119a、及び配線119bに用いる導電膜は、上記の材料を用
いて単層で又は積層して成膜することができる。形成方法も特に限定されず、蒸着法、P
E-CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることがで
きる。
【0177】
なお、その他の構成要素の詳細については、後述する半導体装置の作製方法2において
、
図5、及び
図6を用いて説明する。
【0178】
〈半導体装置の作製方法2〉
以下、
図5、及び
図6を用いて、本実施の形態に係る
図4に示す半導体装置の作製方法
の一例について説明する。
【0179】
まず、実施の形態1に示す作製方法を参酌することで、
図5(A)に示す状態まで作製
することができる。なお、
図5(A)に示す断面図は、
図3(B)に示す断面図と同様で
ある。
【0180】
次に、フォトリソグラフィ工程により層間絶縁膜116上にレジストマスクを形成し、
ゲート絶縁膜110、保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116を選択的にエッチング処
理し、第2の酸化物半導体膜108(より具体的には、低抵抗領域108b)に達する第
1の開口部151aを形成し、レジストマスクを除去する(
図5(B)参照)。
【0181】
なお、上記フォトリソグラフィ工程の露光には、波長が数nm~数10nmと短い超紫
外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線によ
る露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。したがって、微細なパターンを形成すること
ができる。なお、十分に微細なパターンが形成できるのであれば、インクジェット法など
の他の方法を用いてレジストマスクを形成しても良い。この場合には、レジストマスクの
材料として、感光性を有する材料を用いる必要はない。
【0182】
次に、第1の開口部151a及び層間絶縁膜116上にレジストマスクを形成し、ゲー
ト絶縁膜110、保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116を選択的にエッチング処理し
、第2の酸化物半導体膜108(より、具体的には、低抵抗領域108b)に達する第2
の開口部151bを形成し、レジストマスクを除去する(
図5(C)参照)。これによっ
て、ゲート絶縁膜110、保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116に、ゲート電極11
2を挟んで一対の開口部が形成されることとなる。
【0183】
次に、第1の開口部151a、及び第2の開口部151bを充填するように、層間絶縁
膜116上に導電膜118を形成する(
図5(D)参照)。
【0184】
次に、層間絶縁膜116上(少なくともゲート電極112と重畳する領域)に設けられ
た導電膜118を除去するように、導電膜118に対してCMP(CMP:Chemic
al Mechanical Polishing、化学的機械研磨)処理を行うことで
、第1の開口部151a、及び第2の開口部151bに充填されたソース電極118a、
及びドレイン電極118bを形成する(
図6(A)参照)。
【0185】
本実施の形態では、導電膜118に対して、層間絶縁膜116の表面が露出する条件で
CMP処理を行うことにより、ソース電極118a及びドレイン電極118bを形成する
。なお、CMP処理の条件によっては保護絶縁膜114の表面も研磨される場合がある。
【0186】
ここで、CMP処理とは、被加工物の表面を化学的・機械的な複合作用により平坦化す
る手法である。より具体的には、研磨ステージの上に研磨布を貼り付け、被加工物と研磨
布との間にスラリー(研磨剤)を供給しながら研磨ステージと被加工物とを各々回転また
は揺動させて、被加工物の表面を、スラリーと被加工物表面との間での化学反応と、研磨
布と被加工物との機械的研磨の作用により、被加工物の表面を研磨する方法である。
【0187】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けて
CMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上
げ研磨を行うのが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによ
って、ソース電極118a、ドレイン電極118b、層間絶縁膜116の表面の平坦性を
より向上させることができる。
【0188】
なお、本実施の形態では、導電膜118の除去にCMP処理を用いたが、他の研磨(研
削、切削)処理を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドラ
イエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。
例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)
を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。研磨処理に、エッチング処理、プラズマ
処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜118の材料、膜厚
、及び表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0189】
上述したように、ソース電極118a、及びドレイン電極118bは、層間絶縁膜11
6、保護絶縁膜114、及びゲート絶縁膜110に設けられた開口部(第1の開口部15
1a、及び第2の開口部151b)を充填するように設けられる。したがって、ソース電
極118aと、第2の酸化物半導体膜108が接する領域(ソース側コンタクト領域)と
、ゲート電極112との距離(
図6(A)におけるL
SG)は、第1の開口部151aの
端部とゲート電極112との幅によって決定される。同様にドレイン電極118bと、第
2の酸化物半導体膜108が接する領域(ドレイン側コンタクト領域)とゲート電極11
2との距離(
図6(A)におけるL
DG)は、第2の開口部151bの端部とゲート電極
112との幅によって決定される。
【0190】
ソース電極118aを設けるための第1の開口部151aと、ドレイン電極118bを
設けるための第2の開口部151bを、一度の処理によって形成する場合、第1の開口部
151aと第2の開口部151bとのチャネル長方向の幅の最小加工寸法は、マスクの形
成に用いる露光装置の解像限界に制約される。したがって、第1の開口部151aと第2
の開口部151bとの距離を十分に縮小することが難しく、結果としてソース側コンタク
ト領域及びドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極112との距離(LSG及びLDG
)の微細化が困難である。
【0191】
しかしながら、本実施の形態で示す作製方法においては、第1の開口部151aと第2
の開口部151bを、2枚のマスクを用いて形成するため、露光装置の解像限界に依存せ
ず、自由に開口部の位置を設定することが可能である。よって、ソース側コンタクト領域
またはドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極112との距離(LSGまたはLDG)
を、例えば0.05μm以上0.1μm以下まで縮小することができる。LSG及びLD
Gを縮小することで、ソースとドレイン間の抵抗を低減することができるため、半導体装
置の電気的特性(例えば、トランジスタのオン電流特性)を向上させることができる。
【0192】
また、ソース電極118a及びドレイン電極118bを形成するために層間絶縁膜11
6上の導電膜118を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング処理を
用いないため、ソース電極118a、及びドレイン電極118bのチャネル長方向の幅が
微細化されている場合でも精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の
作製工程において、形状や特性のばらつきが少ない微細な構造を、歩留まりよく作製する
ことができる。
【0193】
次に、層間絶縁膜116、ソース電極118a、及びドレイン電極118b上に導電膜
119を成膜する(
図6(B)参照)。
【0194】
次に、フォトリソグラフィ工程により導電膜119上にレジストマスクを形成し、ソー
ス電極118aと電気的に接続された配線119a、及びドレイン電極118bと電気的
に接続された配線119bを形成する(
図6(C)参照)。
【0195】
以上の工程により、
図4に示す半導体装置を作製することができる。
【0196】
本実施の形態に示すように、本発明の技術的思想は、酸化膜上に形成された第1の酸化
物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、を積層し
て形成することで、少なくとも第2の酸化物半導体膜の成膜時において、酸化膜から放出
される酸素を抑制し、さらに第1の酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜の下地膜とし
て機能させるために、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。第2の
酸化物半導体膜の結晶性が向上することにより、当該第2の酸化物半導体膜の酸素欠損の
発生が抑制され、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる。
【0197】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0198】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1、及び実施の形態2に示した半導体装置の変形例、及
び実施の形態1、及び実施の形態2に示した半導体装置の作製方法と異なる作製方法につ
いて、
図7乃至
図12を用いて説明を行う。なお、
図1乃至
図6で示した符号については
、同様の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0199】
〈半導体装置の構成例3〉
図7(A)乃至
図7(C)に、半導体装置の一例として、トップゲート構造のトランジ
スタの平面図および断面図を示す。
図7(A)は平面図であり、
図7(B)は、
図7(A
)におけるX3-Y3に係る断面図に相当し、
図7(C)は、
図7(A)におけるV3-
W3に係る断面図に相当する。なお、
図7(A)では、煩雑になることを避けるため、半
導体装置の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜110など)を省略している。
【0200】
図7(A)乃至
図7(C)に示す半導体装置は、酸化膜104と、酸化膜104上に形
成された第1の酸化物半導体膜106と、第1の酸化物半導体膜106上に形成された第
2の酸化物半導体膜108と、第2の酸化物半導体膜108上に形成されたゲート絶縁膜
110と、ゲート絶縁膜110と接し、第2の酸化物半導体膜108と重畳する領域に形
成されたゲート電極112と、を有している。
【0201】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、少なくとも
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜106は
、第2の酸化物半導体膜108よりもガリウムの含有率が大きい。
【0202】
また、第1の酸化物半導体膜106は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率
と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムの含有率よりも大きく、第2の酸化物半
導体膜108は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。第2の酸
化物半導体膜108のインジウムの含有率を大きくすることで、第2の酸化物半導体膜1
08の結晶性を向上させることができる。
【0203】
このように、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108が積層して
形成されており、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108の組成が
異なる。また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108の形成時に
酸化膜104から放出される酸素を抑制することができる。
【0204】
また、第2の酸化物半導体膜108は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜106
上に形成されるため、第1の酸化物半導体膜106との界面から成長する結晶部を有する
酸化物半導体膜とすることができる。
【0205】
すなわち、第1の酸化物半導体膜106は、少なくとも第2の酸化物半導体膜108の
成膜時において、酸化膜104から放出される酸素を抑制し、さらに第2の酸化物半導体
膜108の下地膜として機能するため、第2の酸化物半導体膜108の結晶性を高めるこ
とができる。また、酸化膜104からの放出される酸素は、第2の酸化物半導体膜108
形成後に、熱処理等により放出させ、第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸
化物半導体膜108に供給することができる。
【0206】
このように、第1の酸化物半導体膜106と第2の酸化物半導体膜108を積層する構
成とすることで、第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損の発生を抑制し、さらに第2の
酸化物半導体膜108の結晶性を向上させるといった優れた効果を奏する。
【0207】
なお、第1の酸化物半導体膜106において、ゲート電極112が重畳する領域、及び
第2の酸化物半導体膜108の外側には、それぞれ高抵抗領域106aが形成され、ゲー
ト電極112が重畳する領域に隣接して、一対の低抵抗領域106bが形成されている。
また、第2の酸化物半導体膜108において、ゲート電極112が重畳する領域には、チ
ャネル領域108aが形成されており、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して、一
対の低抵抗領域108bが形成されている。
【0208】
また、第2の酸化物半導体膜108の外側に形成された高抵抗領域106aは、各トラ
ンジスタ間の分離層として機能する。例えば、第2の酸化物半導体膜108の外側に高抵
抗領域106aを設けない構成とした場合、隣接するトランジスタ間が電気的に接続され
る恐れがあるからである。
【0209】
また、ゲート電極112の重畳する領域に形成された絶縁膜113と、チャネル長方向
の断面において、ゲート電極112、及び絶縁膜113の側面に形成されたサイドウォー
ル絶縁膜115と、サイドウォール絶縁膜115に接して形成され、第2の酸化物半導体
膜108と電気的に接続されたソース電極118a、及びドレイン電極118bと、少な
くともソース電極118a、及びドレイン電極118b上に形成された保護絶縁膜114
、及び層間絶縁膜116と、層間絶縁膜116上に形成された絶縁膜120と、絶縁膜1
20、層間絶縁膜116、保護絶縁膜114に設けられた開口部を介してソース電極11
8a、及びドレイン電極118bと電気的に接続された配線119a、及び配線119b
と、を含む構成としても良い。なお、ソース電極118a、及びドレイン電極118bは
、第2の酸化物半導体膜108に形成された一対の低抵抗領域108bと接しているため
、接触抵抗を低減することができる。
【0210】
本実施の形態に示す半導体装置の構造は、ゲート電極112上の絶縁膜113と、ゲー
ト電極112の側面に設けられたサイドウォール絶縁膜115と、サイドウォール絶縁膜
115に接して形成されているソース電極118a、及びドレイン電極118bと、絶縁
膜120を有する点において、実施の形態1に記載した半導体装置の構造と異なっている
。
【0211】
また、本実施の形態に示す半導体装置は、ソース電極118a、及びドレイン電極11
8bとして用いる導電膜を、絶縁膜113、及びサイドウォール絶縁膜115上に形成し
た後、導電膜に対して平坦化処理(研磨処理とも言える。)を行い導電膜の一部を除去す
ることで、ソース電極118a、及びドレイン電極118bを形成する。そのため、ソー
ス電極118a、及びドレイン電極118bの形成にフォトリソグラフィ工程を用いる必
要がなく、露光機の精度やフォトマスクのアライメントズレに影響されずソース電極11
8a、及びドレイン電極118bを形成することが可能となる。そのため本実施の形態に
示す半導体装置は、微細化に適した構造の一である。
【0212】
なお、本実施の形態に示す半導体装置に用いることができる各構成要素の詳細について
は、実施の形態1、及び実施の形態2に示す構成と同様とすることができるため、その説
明は省略する。実施の形態1、及び実施の形態2で用いない構成について以下記載する。
【0213】
[絶縁膜、及びサイドウォール絶縁膜の詳細な説明]
絶縁膜113、サイドウォール絶縁膜115、及び絶縁膜120としては、無機絶縁膜
を用いることが好ましく、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化
酸化シリコン膜を単層、または積層して用いればよい。また、絶縁膜113、サイドウォ
ール絶縁膜115、及び絶縁膜120の作製方法に特に限定はないが、例えば、スパッタ
リング法、MBE法、PE-CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いるこ
とができる。
【0214】
なお、その他の構成要素の詳細については、後述する半導体装置の作製方法3において
、
図8乃至
図12を用いて説明する。
【0215】
〈半導体装置の作製方法3〉
以下、
図8乃至
図12を用いて、本実施の形態に係る
図7に示す半導体装置の作製方法
の一例について説明する。
【0216】
まず、実施の形態1に示す作製方法を参酌することで、
図8(A)に示す状態まで作製
することができる。なお、
図8(A)に示す断面は、
図2(B)に示す断面と同様である
。
【0217】
次に、導電膜111上に絶縁膜113aを形成する(
図8(B)参照)。
【0218】
次に、フォトリソグラフィ工程により絶縁膜113a上にレジストマスクを形成し、絶
縁膜113a、及び導電膜111を選択的にエッチング処理し、絶縁膜113、及びゲー
ト電極112を形成する(
図8(C)参照)。
【0219】
次に、ゲート絶縁膜110、及び絶縁膜113上にレジストマスク134を形成する(
図8(D)参照)。
【0220】
次に、フォトリソグラフィ工程により、レジストマスク134を選択的に露光、及び現
像を行い、レジストマスク134a、またはレジストマスク134bを形成する。その後
、ゲート電極112、絶縁膜113、及びレジストマスク(レジストマスク134a、ま
たはレジストマスク134b)をマスクとして第1の酸化物半導体膜106、及び第2の
酸化物半導体膜108にドーパント142を導入する。ドーパント142の導入により、
第1の酸化物半導体膜106には、高抵抗領域106aと、ゲート電極112が重畳する
領域に隣接して一対の低抵抗領域106bと、が形成され、第2の酸化物半導体膜108
には、チャネル領域108aと、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して一対の低抵
抗領域108bと、が形成される(
図9(B)、及び
図10(B)参照)。
【0221】
なお、本実施の形態においては、ドーパント142が導入され、低抵抗領域106bと
低抵抗領域108bが形成される位置を明確に表すため、
図9、及び
図10においては、
断面図、及び平面図を用いて説明を行う。
【0222】
図9(A)は平面図であり、
図9(B)は、
図9(A)におけるX3-Y3に係る断面
図に相当し、
図9(C)は、
図9(A)におけるV3-W3に係る断面図に相当する。な
お、
図9(A)では、煩雑になることを避けるため、半導体装置の構成要素の一部(例え
ば、ゲート絶縁膜110など)を省略している。また、
図10(A)は平面図であり、図
10(B)は、
図10(A)におけるX3-Y3に係る断面図に相当し、
図10(C)は
、
図10(A)におけるV3-W3に係る断面図に相当する。なお、
図10(A)では、
煩雑になることを避けるため、半導体装置の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜11
0など)を省略している。
【0223】
また、
図9、及び
図10は、低抵抗領域106bと低抵抗領域108bが形成される位
置について、2通りの作製方法の説明を行う。なお、
図9に示される方法、及び
図10に
示される方法ともに、本発明の一態様である。
【0224】
以下に
図9、及び
図10に示す作製方法の違いについて説明を行う。
【0225】
図9に示す作製方法においては、レジストマスク134aは、第2の酸化物半導体膜1
08の外側に形成される(
図9(A)乃至
図9(C)参照)。
【0226】
一方、
図10に示す作製方法においては、レジストマスク134bは、第2の酸化物半
導体膜108の長辺方向の内側に形成される(
図10(A)乃至
図10(C)参照)。
【0227】
図9に示す作製方法は、チャネル領域108a以外全面が低抵抗領域108bとなるた
め、後に形成されるソース電極118a、及びドレイン電極118bのコンタクト領域を
広く形成することができる。一方、
図10に示す作製方法は、第2の酸化物半導体膜10
8の長辺方向をチャネル領域108aと同様に低抵抗領域108bより高抵抗とすること
で、第2の酸化物半導体膜108の長辺方向に形成されうる寄生チャネル(寄生トランジ
スタともいう)の生成を抑制することができる。
【0228】
以上のように、レジストマスク134a、及びレジストマスク134bの形状を変更す
ることで、異なる効果を有する半導体装置を作製することができる。
【0229】
次に、レジストマスク(レジストマスク134a、またはレジストマスク134b)を
除去し、ゲート絶縁膜110、及び絶縁膜113上に絶縁膜115aを形成する(
図11
(A)参照)。
【0230】
次に、絶縁膜115aをエッチングすることによりサイドウォール絶縁膜115を形成
する。サイドウォール絶縁膜115は、絶縁膜115aに異方性の高いエッチング工程を
行うことで自己整合的に形成することができる。例えば、エッチング方法としては、ドラ
イエッチング法を用いると好ましい。また、ドライエッチング法に用いるエッチングガス
としては、例えば、トリフルオロメタン、オクタフルオロシクロブタン、テトラフルオロ
メタンなどのフッ素を含むガスが挙げられる。エッチングガスには、希ガスまたは水素を
添加してもよい。ドライエッチング法は、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエ
ッチング法(RIE法:Reactive Ion Etching法)を用いると好ま
しい。サイドウォール絶縁膜115形成後、ゲート電極112、絶縁膜113、及びサイ
ドウォール絶縁膜115をマスクとしてゲート絶縁膜110を加工し、第1の酸化物半導
体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108を露出させる(
図11(B)参照)。なお
、サイドウォール絶縁膜115の形成時にゲート絶縁膜110を加工してもよい。
【0231】
なお、本実施の形態では、ゲート電極112、及び絶縁膜113の形成直後の工程にお
いて、ゲート電極112、絶縁膜113、及びレジストマスク(レジストマスク134a
、またはレジストマスク134b)をマスクに用いて第1の酸化物半導体膜106、及び
第2の酸化物半導体膜108中にドーパント142を導入したが、サイドウォール絶縁膜
115の形成後にゲート電極112、絶縁膜113、サイドウォール絶縁膜115、及び
レジストマスクをマスクに用いて、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導
体膜108中にドーパント142を導入してもよい。こうすることで、サイドウォール絶
縁膜115と重畳する第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108の
領域を高抵抗領域に含めることができる。
【0232】
次に、第1の酸化物半導体膜106、第2の酸化物半導体膜108、絶縁膜113、及
びサイドウォール絶縁膜115を覆うように導電膜を形成し、当該導電膜にフォトリソグ
ラフィ工程、及びエッチング工程を行い、導電膜118を形成する(
図11(C)参照)
。
【0233】
次に、第1の酸化物半導体膜106、及び導電膜118上に絶縁膜114a、及び絶縁
膜116aを形成する(
図11(D)参照)。
【0234】
次に、絶縁膜113上(少なくともゲート電極112と重畳する領域)に設けられた導
電膜118を除去するように、絶縁膜114a、絶縁膜116a、及び導電膜118に対
してCMP処理を行うことで、絶縁膜114a、絶縁膜116a、及び導電膜118が分
断され、保護絶縁膜114、層間絶縁膜116、ソース電極118a、及びドレイン電極
118bがゲート電極112を挟む状態で形成される(
図12(A)参照)。
【0235】
なお、
図12(A)では、ソース電極118a、及びドレイン電極118bの表面と、
絶縁膜113、及び層間絶縁膜116の表面が同一平面に位置しているが、CMP装置に
よりソース電極118a、及びドレイン電極118bの表面と、絶縁膜113、及び層間
絶縁膜116を研磨する場合、ソース電極118aおよびドレイン電極118bと、絶縁
膜113、及び層間絶縁膜116の研磨スピード(または研磨レート)が異なる場合、ソ
ース電極118a、及びドレイン電極118bの表面と、絶縁膜113、または層間絶縁
膜116の表面は高さが異なり段差が生じることがある。例えば、ソース電極118a、
及びドレイン電極118bの表面が絶縁膜113の表面より低くなる(凹状となる)場合
がある。また、CMP処理条件によっては、サイドウォール絶縁膜115も研磨される可
能性がある。
【0236】
なお、ここでのCMP処理は、実施の形態2にて記載した導電膜118に対してのCM
P処理の内容を参酌することができる。
【0237】
次に、保護絶縁膜114、層間絶縁膜116、ソース電極118a、及びドレイン電極
118b上に絶縁膜120を形成する(
図12(B)参照)。
【0238】
次に、フォトリソグラフィ工程により絶縁膜120上にレジストマスクを形成し、保護
絶縁膜114、層間絶縁膜116、及び絶縁膜120を選択的にエッチング処理し、ソー
ス電極118a、及びドレイン電極118bに達する開口部を形成し、レジストマスクを
除去する。その後、当該開口部を覆うように導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程に
より当該導電膜上にレジストマスクを形成し、導電膜を選択的にエッチング処理し配線1
19a、及び配線119bを形成する(
図12(C)参照)。
【0239】
以上の工程により、
図7に示す半導体装置を作製することができる。
【0240】
本実施の形態に示すように、本発明の技術的思想は、酸化膜上に形成された第1の酸化
物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、を積層し
て形成することで、少なくとも第2の酸化物半導体膜の成膜時において、酸化膜から放出
される酸素を抑制し、さらに第1の酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜の下地膜とし
て機能するために、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。第2の酸
化物半導体膜の結晶性が向上することにより、当該第2の酸化物半導体膜の酸素欠損の発
生が抑制され、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる。
【0241】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0242】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態3に示した半導体装置の変形例、及び
実施の形態1乃至実施の形態3に示した半導体装置の作製方法と異なる作製方法について
、
図13乃至
図17を用いて説明を行う。なお、
図1乃至
図12で示した符号については
、同様の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0243】
〈半導体装置の構成例4〉
図13(A)乃至
図13(C)に、半導体装置の一例として、トップゲート構造のトラ
ンジスタの平面図および断面図を示す。
図13(A)は平面図であり、
図13(B)は、
図13(A)におけるX4-Y4に係る断面図に相当し、
図13(C)は、
図13(A)
におけるV4-W4に係る断面図に相当する。なお、
図13(A)では、煩雑になること
を避けるため、半導体装置の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜110など)を省略
している。
【0244】
図13(A)乃至
図13(C)に示す半導体装置は、酸化膜104と、酸化膜104上
に形成された第1の酸化物半導体膜106と、第1の酸化物半導体膜106上に形成され
た第2の酸化物半導体膜108と、第2の酸化物半導体膜108上に形成されたゲート絶
縁膜110と、ゲート絶縁膜110と接し、第2の酸化物半導体膜108と重畳する領域
に形成されたゲート電極112と、を有している。
【0245】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、少なくとも
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜106は
、第2の酸化物半導体膜108よりもガリウムの含有率が大きい。
【0246】
また、第1の酸化物半導体膜106は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率
と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムの含有率よりも大きく、第2の酸化物半
導体膜108は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。第2の酸
化物半導体膜108のインジウムの含有率を大きくすることで、第2の酸化物半導体膜1
08の結晶性を向上させることができる。
【0247】
このように、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108が積層して
形成されており、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108の組成が
異なる。また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108の形成時に
酸化膜104から放出される酸素を抑制することができる。
【0248】
また、第2の酸化物半導体膜108は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜106
上に形成されるため、第1の酸化物半導体膜106との界面から成長する結晶部を有する
酸化物半導体膜とすることができる。
【0249】
すなわち、第1の酸化物半導体膜106は、少なくとも第2の酸化物半導体膜108の
成膜時において、酸化膜104から放出される酸素を抑制し、さらに第2の酸化物半導体
膜108の下地膜として機能するため、第2の酸化物半導体膜108の結晶性を高めるこ
とができる。また、酸化膜104からの放出される酸素は、第2の酸化物半導体膜108
形成後に、熱処理等により放出させ、第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸
化物半導体膜108に供給することができる。
【0250】
このように、第1の酸化物半導体膜106と第2の酸化物半導体膜108を積層する構
成とすることで、第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損の発生を抑制し、さらに第2の
酸化物半導体膜108の結晶性を向上させるといった優れた効果を奏する。
【0251】
なお、第1の酸化物半導体膜106において、ゲート電極112が重畳する領域、及び
第2の酸化物半導体膜108の外側には、それぞれ高抵抗領域106aが形成され、ゲー
ト電極112が重畳する領域に隣接して、一対の低抵抗領域106bが形成されている。
また、第2の酸化物半導体膜108において、ゲート電極112が重畳する領域には、チ
ャネル領域108aが形成されており、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して、一
対の低抵抗領域108bが形成されている。
【0252】
また、第2の酸化物半導体膜108の外側に形成された高抵抗領域106aは、各トラ
ンジスタ間の分離層として機能する。例えば、第2の酸化物半導体膜108の外側に高抵
抗領域106aを設けない構成とした場合、隣接するトランジスタ間が電気的に接続され
る恐れがあるからである。
【0253】
また、チャネル長方向の断面において、第2の酸化物半導体膜108の一方の側面と接
するソース電極118aと、他方の側面と接するドレイン電極118bと、ゲート電極1
12の一方の側面に形成された第1の導電膜121aと、ゲート電極112の他方の側面
に形成された第2の導電膜121bと、第1の導電膜121a、及び第2の導電膜121
bの側面に形成されたサイドウォール絶縁膜115と、第1の酸化物半導体膜106、ソ
ース電極118a、ドレイン電極118b、サイドウォール絶縁膜115、及びゲート電
極112上に形成された保護絶縁膜114と、保護絶縁膜114上に形成された層間絶縁
膜116と、ソース電極118a、及びドレイン電極118bとそれぞれ電気的に接続さ
れた配線119a、及び配線119bと、を含む構成としても良い。なお、ソース電極1
18a、及びドレイン電極118bは、第2の酸化物半導体膜108に形成された一対の
低抵抗領域108bと接しているため、接触抵抗を低減することができる。
【0254】
本実施の形態に示す半導体装置の構造は、ゲート電極112の両側面に、第1の導電膜
121a、第2の導電膜121b、及びサイドウォール絶縁膜115が形成されている点
、ならびに第2の酸化物半導体膜108のチャネル長方向の断面において、一方の側面と
接するソース電極118a、及び他方の側面と接するドレイン電極118bが形成されて
いる点において、実施の形態1に記載した半導体装置の構造と異なっている。
【0255】
また、本実施の形態に示す半導体装置は、ゲート電極112の一方の側面に形成された
第1の導電膜121aの少なくとも一部が、ゲート絶縁膜110を介してソース電極11
8a上に形成され、ゲート電極112の他方の側面に形成された第2の導電膜121bの
少なくとも一部が、ゲート絶縁膜110を介してドレイン電極118b上に形成されてい
る。このように、ゲート電極112(より具体的には、ゲート電極112、第1の導電膜
121a、及び第2の導電膜121b)の一部がゲート絶縁膜110を介してソース電極
118a、及びドレイン電極118bと重畳する領域(Lov領域ともいう)を設けるこ
とができる。そのため本実施の形態に示す半導体装置は、微細化に適し、さらに微細化に
伴うオン電流の低下の抑制に適した構造の一である。
【0256】
なお、本実施の形態に示す半導体装置に用いることができる各構成要素の詳細について
は、実施の形態1乃至実施の形態3に示す構成と同様とすることができるため、その説明
は省略する。実施の形態1乃至実施の形態3で用いない構成について以下記載する。
【0257】
[第1の導電膜、及び第2の導電膜の詳細な説明]
第1の導電膜121a、及び第2の導電膜121bとしては、導電性を有していればよ
く、例えばタングステン、チタン等の金属膜、または、リン、ボロン等の不純物元素を含
むシリコン膜等を加工して形成することができる。または、ゲート電極112上に多結晶
シリコン膜を成膜し、エッチングによってゲート電極112に接する導電膜を形成した後
、該導電膜にリン、ボロン等の不純物元素をドーピングによって導入し、熱処理を施して
導電性を有する第1の導電膜121a、及び第2の導電膜121bとしてもよい。
【0258】
なお、その他の構成要素の詳細については、後述する半導体装置の作製方法4において
、
図14乃至
図17を用いて説明する。
【0259】
〈半導体装置の作製方法4〉
以下、
図14乃至
図17を用いて、本実施の形態に係る
図13に示す半導体装置の作製
方法の一例について説明する。
【0260】
まず、実施の形態1に示す作製方法を参酌することで、
図14(A)に示す状態まで作
製することができる。なお、
図14(A)に示す断面は、
図2(B)に示す半導体装置の
変形であり、第2の酸化物半導体膜108の面積のみ異なる。
【0261】
次に、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108上に導電膜を形
成し、フォトリソグラフィ工程により当該導電膜上にレジストマスクを形成し、導電膜を
選択的にエッチング処理し、導電膜118を形成する(
図14(B)参照)。
【0262】
次に、導電膜118にCMP処理を行い、第2の酸化物半導体膜108が露出するよう
に導電膜118の一部を除去する。該CMP処理によって、第2の酸化物半導体膜108
と重畳する領域の導電膜118が除去され、ソース電極118a、及びドレイン電極11
8bが形成される(
図14(C)参照)。
【0263】
なお、ここでのCMP処理は、実施の形態2にて記載した導電膜118に対してのCM
P処理の内容を参酌することができる。
【0264】
次に、第1の酸化物半導体膜106、第2の酸化物半導体膜108、ソース電極118
a、及びドレイン電極118b上にゲート絶縁膜110、及び導電膜111を形成する(
図14(D)参照)。
【0265】
次に、フォトリソグラフィ工程により導電膜111上にレジストマスクを形成し、導電
膜111を選択的にエッチング処理し、ゲート電極112を形成する(
図15(A)参照
)。
【0266】
次に、ゲート絶縁膜110、及びゲート電極112上にレジストマスク136を形成す
る(
図15(B)参照)。
【0267】
次に、フォトリソグラフィ工程により、レジストマスク136を選択的に露光、及び現
像を行い、レジストマスク136aを形成する。その後、ゲート電極112、及びレジス
トマスク136aをマスクとして第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体
膜108にドーパント142を導入する。ドーパント142の導入により、第1の酸化物
半導体膜106には、高抵抗領域106aと、ゲート電極112が重畳する領域に隣接し
て一対の低抵抗領域106bと、が形成され、第2の酸化物半導体膜108には、チャネ
ル領域108aと、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して一対の低抵抗領域108
bと、が形成される(
図15(C)参照)。
【0268】
なお、本実施の形態においては、ソース電極118a、及びドレイン電極118bを通
過して、第1の酸化物半導体膜106にドーパント142が導入され、低抵抗領域106
bが形成される構造について説明したが、これに限定されない。ソース電極118a、及
びドレイン電極118bが重畳する領域の第1の酸化物半導体膜106が高抵抗領域10
6aと同様の不純物濃度となってもよい。
【0269】
次に、レジストマスク136aを除去し、ゲート絶縁膜110、及びゲート電極112
上に導電膜121を形成する(
図15(D)参照)。
【0270】
次に、導電膜121上に絶縁膜115aを形成する(
図16(A)参照)。
【0271】
次に、絶縁膜115aをエッチングすることによりサイドウォール絶縁膜115を形成
する。サイドウォール絶縁膜115は、絶縁膜115aに異方性の高いエッチング工程を
行うことで自己整合的に形成することができる。例えば、エッチング方法としては、ドラ
イエッチング法を用いると好ましい。また、ドライエッチング法に用いるエッチングガス
としては、例えば、トリフルオロメタン、オクタフルオロシクロブタン、テトラフルオロ
メタンなどのフッ素を含むガスが挙げられる。エッチングガスには、希ガスまたは水素を
添加してもよい。ドライエッチング法は、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエ
ッチング法(RIE法:Reactive Ion Etching法)を用いると好ま
しい。サイドウォール絶縁膜115形成後、ゲート電極112、及びサイドウォール絶縁
膜115をマスクとして、導電膜121、及びゲート絶縁膜110を加工し、及び第1の
酸化物半導体膜106、ソース電極118a、及びドレイン電極118bを露出させる(
図16(B)参照)。なお、サイドウォール絶縁膜115の形成時に導電膜121、及び
ゲート絶縁膜110を加工してもよい。本実施の形態においては、導電膜121は第1の
導電膜121a、第2の導電膜121bに分断され、ゲート絶縁膜110は一部が除去さ
れ、ソース電極118a、及びドレイン電極118bの表面の一部が露出される。
【0272】
次に、第1の酸化物半導体膜106、ゲート電極112、サイドウォール絶縁膜115
、第1の導電膜121a、第2の導電膜121b、ソース電極118a、及びドレイン電
極118bを覆うように保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116を形成する(
図16(
C)参照)。
【0273】
次に、フォトリソグラフィ工程により層間絶縁膜116上にレジストマスクを形成し、
保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116を選択的にエッチング処理し、ソース電極11
8a、及びドレイン電極118bに達する開口部を形成し、レジストマスクを除去する(
図16(D)参照)。
【0274】
次に、当該開口部を充填するように、層間絶縁膜116上に導電膜119を形成する(
図17(A)参照)。
【0275】
次に、フォトリソグラフィ工程により導電膜119上にレジストマスクを形成し、導電
膜119を選択的にエッチング処理し配線119a、及び配線119bを形成する(
図1
7(B)参照)。
【0276】
以上の工程により、
図13に示す半導体装置を作製することができる。
【0277】
本実施の形態に示すように、本発明の技術的思想は、酸化膜上に形成された第1の酸化
物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、を積層し
て形成することで、少なくとも第2の酸化物半導体膜の成膜時において、酸化膜から放出
される酸素を抑制し、さらに第1の酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜の下地膜とし
て機能するために、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。第2の酸
化物半導体膜の結晶性が向上することにより、当該第2の酸化物半導体膜の酸素欠損の発
生が抑制され、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる。
【0278】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0279】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4に示した半導体装置の変形例、及び
実施の形態1乃至実施の形態4に示した半導体装置の作製方法と異なる作製方法について
、
図18乃至
図21を用いて説明を行う。なお、
図1乃至
図17で示した符号については
、同様の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0280】
〈半導体装置の構成例5〉
図18(A)乃至
図18(C)に、半導体装置の一例として、トップゲート構造のトラ
ンジスタの平面図および断面図を示す。
図18(A)は平面図であり、
図18(B)は、
図18(A)におけるX5-Y5に係る断面図に相当し、
図18(C)は、
図18(A)
におけるV5-W5に係る断面図に相当する。なお、
図18(A)では、煩雑になること
を避けるため、半導体装置の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜110など)を省略
している。
【0281】
図18(A)乃至
図18(C)に示す半導体装置は、酸化膜104と、酸化膜104上
に形成された第1の酸化物半導体膜106と、第1の酸化物半導体膜106上に形成され
た第2の酸化物半導体膜108と、第2の酸化物半導体膜108上に形成されたゲート絶
縁膜110と、ゲート絶縁膜110と接し、第2の酸化物半導体膜108と重畳する領域
に形成されたゲート電極112と、を有している。
【0282】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、少なくとも
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜106は
、第2の酸化物半導体膜108よりもガリウムの含有率が大きい。
【0283】
また、第1の酸化物半導体膜106は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率
と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムの含有率よりも大きく、第2の酸化物半
導体膜108は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。第2の酸
化物半導体膜108のインジウムの含有率を大きくすることで、第2の酸化物半導体膜1
08の結晶性を向上させることができる。
【0284】
このように、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108が積層して
形成されており、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108の組成が
異なる。また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108の形成時に
酸化膜104から放出される酸素を抑制することができる。
【0285】
また、第2の酸化物半導体膜108は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜106
上に形成されるため、第1の酸化物半導体膜106との界面から成長する結晶部を有する
酸化物半導体膜とすることができる。
【0286】
すなわち、第1の酸化物半導体膜106は、少なくとも第2の酸化物半導体膜108の
成膜時において、酸化膜104から放出される酸素を抑制し、さらに第2の酸化物半導体
膜108の下地膜として機能するため、第2の酸化物半導体膜108の結晶性を高めるこ
とができる。また、酸化膜104からの放出される酸素は、第2の酸化物半導体膜108
形成後に、熱処理等により放出させ、第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸
化物半導体膜108に供給することができる。
【0287】
このように、第1の酸化物半導体膜106と第2の酸化物半導体膜108を積層する構
成とすることで、第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損の発生を抑制し、さらに第2の
酸化物半導体膜108の結晶性を向上させるといった優れた効果を奏する。
【0288】
なお、第1の酸化物半導体膜106において、ゲート電極112が重畳する領域、及び
第2の酸化物半導体膜108の外側には、それぞれ高抵抗領域106aが形成され、ゲー
ト電極112が重畳する領域に隣接して、一対の低抵抗領域106bが形成されている。
また、第2の酸化物半導体膜108において、ゲート電極112が重畳する領域には、チ
ャネル領域108aが形成されており、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して、一
対の低抵抗領域108bが形成されている。
【0289】
また、第2の酸化物半導体膜108の外側に形成された高抵抗領域106aは、各トラ
ンジスタ間の分離層として機能する。例えば、第2の酸化物半導体膜108の外側に高抵
抗領域106aを設けない構成とした場合、隣接するトランジスタ間が電気的に接続され
る恐れがあるからである。
【0290】
また、ゲート電極112上に形成された保護絶縁膜114と、保護絶縁膜114上に形
成された層間絶縁膜116と、チャネル長方向の断面において、層間絶縁膜116、保護
絶縁膜114、ゲート絶縁膜110、及び第2の酸化物半導体膜108を貫通する開口部
において、第2の酸化物半導体膜108の側面と接するソース電極118a、及びドレイ
ン電極118bと、ソース電極118aと電気的に接続された配線119aと、ドレイン
電極118bと電気的に接続された配線119bと、を含む構成としても良い。なお、ソ
ース電極118a、及びドレイン電極118bは、第2の酸化物半導体膜108に形成さ
れた一対の低抵抗領域108bと接しているため、接触抵抗を低減することができる。
【0291】
本実施の形態に示す半導体装置の構造は、ゲート絶縁膜110、保護絶縁膜114、層
間絶縁膜116、及び第2の酸化物半導体膜108の開口部に充填されたソース電極11
8a、及びドレイン電極118bと、ソース電極118a、及びドレイン電極118bに
電気的に接続された配線119a、及び配線119bが形成されている点において、実施
の形態1に記載した半導体装置の構造と異なっている。
【0292】
また、本実施の形態に示す半導体装置の構造は、第2の酸化物半導体膜108の形状と
、第2の酸化物半導体膜108のチャネル領域108aの上面及び側面を覆うゲート絶縁
膜110、及びゲート電極112の形状についても、実施の形態1に示した半導体装置の
構造と異なっている。
【0293】
なお、本実施の形態に示す半導体装置は、第2の酸化物半導体膜108(より具体的に
はチャネル領域108a)の上面、及び側面にチャネルが形成される。
【0294】
このように、本実施の形態に示す半導体装置は、第2の酸化物半導体膜108を厚い状
態(所謂板状)で形成し、当該第2の酸化物半導体膜108の上面、及び側面を覆うよう
にゲート絶縁膜110を形成し、及びその上にゲート電極112を形成する。これにより
、チャネル幅は、第2の酸化物半導体膜108(より具体的にはチャネル領域108a)
の上面、及び側面を合わせた長さになるため、第2の酸化物半導体膜108の上面の幅を
増加させることなく、実質的なチャネル幅を増加させることができる。チャネル幅を増加
させることで、トランジスタのオン電流の低下や電気特性のばらつきを抑制することがで
きる。
【0295】
なお、本実施の形態に示す半導体装置に用いることができる各構成要素の詳細について
は、実施の形態1乃至実施の形態4に示す構成と同様とすることができるため、その説明
は省略する。実施の形態1乃至実施の形態4で用いない構成について以下記載する。
【0296】
[第2の酸化物半導体膜の詳細な説明]
第2の酸化物半導体膜108としては、実施の形態1に示す構成と同様とすることがで
きるが、膜厚においてのみ、実施の形態1の構成と異なる。本実施の形態に示す第2の酸
化物半導体膜108の膜厚は、5nmより大きく500nm以下とし、好ましくは100
nm以上300nm以下とする。
【0297】
なお、その他の構成要素の詳細については、後述する半導体装置の作製方法5において
、
図19乃至
図21を用いて説明する。
【0298】
〈半導体装置の作製方法5〉
以下、
図19乃至
図21を用いて、本実施の形態に係る
図18に示す半導体装置の作製
方法の一例について説明する。
【0299】
まず、実施の形態1に示す作製方法を参酌することで、
図19(A)に示す状態まで作
製することができる。なお、
図19(A)に示す断面は、
図2(A)に示す半導体装置の
変形であり、第2の酸化物半導体膜108の膜厚のみ異なる。
【0300】
次に、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108上にゲート絶縁
膜110、及び導電膜111を形成する(
図19(B)参照)。
【0301】
次に、フォトリソグラフィ工程により導電膜111上にレジストマスクを形成し、導電
膜111を選択的にエッチング処理し、ゲート電極112を形成する(
図19(C)参照
)。
【0302】
次に、ゲート絶縁膜110、及びゲート電極112上にレジストマスク138を形成す
る(
図19(D)参照)。
【0303】
次に、フォトリソグラフィ工程により、レジストマスク138を選択的に露光、及び現
像を行い、レジストマスク138aを形成する。その後、ゲート電極112、及びレジス
トマスク138aをマスクとして第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体
膜108にドーパント142を導入する。ドーパント142の導入により、第1の酸化物
半導体膜106には、高抵抗領域106aと、ゲート電極112が重畳する領域に隣接し
て一対の低抵抗領域106bと、が形成され、第2の酸化物半導体膜108には、チャネ
ル領域108aと、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して一対の低抵抗領域108
bと、が形成される(
図20(A)参照)。
【0304】
なお、本実施の形態においては、第2の酸化物半導体膜108を通過して、第1の酸化
物半導体膜106にドーパント142が導入され、低抵抗領域106bが形成される構造
について説明したが、これに限定されない。第2の酸化物半導体膜108が重畳する領域
の第1の酸化物半導体膜106が高抵抗領域106aと同様の不純物濃度となってもよい
。
【0305】
次に、レジストマスク138aを除去し、ゲート絶縁膜110、及びゲート電極112
上に保護絶縁膜114、及び層間絶縁膜116を形成する(
図20(B)参照)。
【0306】
次に、フォトリソグラフィ工程により層間絶縁膜116上にレジストマスクを形成し、
層間絶縁膜116、保護絶縁膜114、及び第2の酸化物半導体膜108を選択的にエッ
チング処理し、第1の酸化物半導体膜106に達する開口部153aを形成し、レジスト
マスクを除去する(
図20(C)参照)。
【0307】
次に、フォトリソグラフィ工程により開口部153a、及び層間絶縁膜116上にレジ
ストマスクを形成し、層間絶縁膜116、保護絶縁膜114、及び第2の酸化物半導体膜
108を選択的にエッチング処理し、第1の酸化物半導体膜106に達する開口部153
bを形成し、レジストマスクを除去する(
図20(D)参照)。これによって、ゲート電
極112、及びチャネル領域108aを挟んで一対の開口部が形成されることとなる。
【0308】
なお、本実施の形態においては、開口部153a、及び開口部153bは、第1の酸化
物半導体膜106に達するように形成したが、これに限定されない。例えば、酸化膜10
4に達するように形成してもよい。
【0309】
また、本実施の形態に示す作製方法においては、実施の形態2に示す作製方法と同様に
、開口部153aと開口部153bを、2枚のマスクを用いて形成するため、露光装置の
解像限界に依存せず、自由に開口部の位置を設定することが可能である。よって、ソース
側コンタクト領域またはドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極112との距離を、例
えば0.05μm以上0.1μm以下まで縮小することができる。ソース側コンタクト領
域またはドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極112との距離を縮小することで、ソ
ースとドレイン間の抵抗を低減することができるため、半導体装置の電気的特性(例えば
、トランジスタのオン電流特性)を向上させることができる。
【0310】
次に、開口部153a、及び開口部153bを充填するように、層間絶縁膜116上に
導電膜118を形成する(
図21(A)参照)。
【0311】
次に、層間絶縁膜116上(少なくともゲート電極112と重畳する領域)に設けられ
た導電膜118を除去するように、導電膜118に対してCMP処理を行うことで、開口
部153a、及び開口部153bに充填されたソース電極118a、及びドレイン電極1
18bを形成する(
図21(B)参照)。
【0312】
なお、本実施の形態においては、ソース電極118a、及びドレイン電極118bと、
第2の酸化物半導体膜108との接触領域は、層間絶縁膜116、保護絶縁膜114、ゲ
ート絶縁膜110、及び第2の酸化物半導体膜108を貫通する開口部において、第2の
酸化物半導体膜108の側面である。
【0313】
次に、層間絶縁膜116、ソース電極118a、及びドレイン電極118b上に導電膜
を形成し、フォトリソグラフィ工程により当該導電膜上にレジストマスクを形成し、ソー
ス電極118aと電気的に接続された配線119a、及びドレイン電極118bと電気的
に接続された配線119bを形成する(
図21(C)参照)。
【0314】
以上の工程により、
図18に示す半導体装置を作製することができる。
【0315】
本実施の形態に示すように、本発明の技術的思想は、酸化膜上に形成された第1の酸化
物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、を積層し
て形成することで、少なくとも第2の酸化物半導体膜の成膜時において、酸化膜から放出
される酸素を抑制し、さらに第1の酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜の下地膜とし
て機能するために、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。第2の酸
化物半導体膜の結晶性が向上することにより、当該第2の酸化物半導体膜の酸素欠損の発
生が抑制され、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる。
【0316】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0317】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本明細書に示す半導体装置を使用し、電力が供給されない状況でも
記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い構成の一例を、図面を用い
て説明する。
【0318】
図22は、半導体装置の構成の一例である。
図22(A)に、半導体装置の断面図を、
図22(B)に半導体装置の平面図を、
図22(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示
す。ここで、
図22(A)は、
図22(B)のC1-C2、及びD1-D2における断面
に相当する。
【0319】
図22(A)、及び
図22(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用い
たトランジスタ260を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ300を有
するものである。第2の半導体材料を用いたトランジスタ300としては、実施の形態3
で示す半導体装置の構造を適用することができる。なお、本実施の形態においては、記載
していないが、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態4、及び実施の形態5で用いた
半導体装置の構造を適用することもできる。
【0320】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は、異なる禁制帯幅を持つ材料とするこ
とが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(結晶性シリ
コンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以
外の材料として、例えば結晶性シリコンを用いたトランジスタは、高速動作が容易である
。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可
能とする。
【0321】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明
するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。
【0322】
図22(A)におけるトランジスタ260は、半導体材料(例えば、結晶性シリコンな
ど)を含む基板200に設けられたチャネル形成領域216と、チャネル形成領域216
を挟むように設けられた不純物領域220と、不純物領域220に接する金属間化合物領
域224と、チャネル形成領域216上に設けられたゲート絶縁膜208と、ゲート絶縁
膜208上に設けられたゲート電極210と、を有する。なお、図において、明示的には
ソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてト
ランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するため
に、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある
。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0323】
基板200上にはトランジスタ260を囲むように素子分離絶縁膜206が設けられて
おり、トランジスタ260を覆うように絶縁膜228、及び酸化膜230が設けられてい
る。なお、高集積化を実現するためには、
図22(A)に示すようにトランジスタ260
がサイドウォール絶縁膜を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ2
60の特性を重視する場合には、ゲート電極210の側面にサイドウォール絶縁膜を設け
、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域220としてもよい。
【0324】
結晶性シリコン基板を用いたトランジスタ260は、高速動作が可能である。このため
、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを
高速に行うことができる。トランジスタ260を覆うように絶縁膜、及び酸化膜を形成す
る。トランジスタ300、および容量素子264の形成前の処理として、該絶縁膜、及び
酸化膜にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜228、酸化膜230を形成し、同時に
ゲート電極210の上面を露出させる。
【0325】
絶縁膜228は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム
膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン
膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化膜23
0は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの酸化膜を用いる
ことができる。絶縁膜228、酸化膜230は、プラズマCVD法、またはスパッタリン
グ法等を用いて形成することができる。
【0326】
また、絶縁膜228は、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹
脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(lo
w-k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法
などの湿式法によって絶縁膜228を形成してもよい。
【0327】
なお、本実施の形態において、絶縁膜228として窒化シリコン膜を用い、酸化膜23
0として酸化シリコン膜を用いる。
【0328】
研磨処理(例えばCMP処理)により十分に平坦化した酸化膜230上に第1の酸化物
半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108を形成する。なお、酸化膜230表面
の平均面粗さは、0.15nm以下が好ましい。
【0329】
図22(A)に示すトランジスタ300は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いた
トランジスタである。ここで、トランジスタ300に含まれる第2の酸化物半導体膜10
8は、高純度化されたものであることが望ましい。高純度化された酸化物半導体を用いる
ことで、極めて優れたオフ特性のトランジスタ300を得ることができる。
【0330】
トランジスタ300は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり
記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、また
は、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため
、消費電力を十分に低減することができる。
【0331】
トランジスタ300上には、絶縁膜302、及び絶縁膜304が単層または積層で設け
られている。本実施の形態では、絶縁膜302、及び絶縁膜304として、トランジスタ
300側から酸化シリコン膜と酸化アルミニウム膜との積層を用いる。なお、酸化アルミ
ニウム膜を高密度(例えば、膜密度3.2g/cm3以上、好ましくは3.6g/cm3
以上)とすることによって、トランジスタ300に安定な電気特性を付与することができ
るため好ましい。
【0332】
また、絶縁膜302を介して、トランジスタ300のソース電極118aに接続された
配線119aと重畳する領域には、導電膜306が設けられており、配線119aと、絶
縁膜302と、導電膜306とによって、容量素子364が構成される。すなわち、トラ
ンジスタ300のソース電極118aは、容量素子364の一方の電極として機能し、導
電膜306は、容量素子364の他方の電極として機能する。なお、容量が不要の場合に
は、容量素子364を設けない構成とすることもできる。また、容量素子364は、別途
、トランジスタ300の上方に設けてもよい。
【0333】
トランジスタ300、及び容量素子364の上には絶縁膜304が設けられている。そ
して、絶縁膜304上にはトランジスタ300と、他のトランジスタを接続するための配
線308が設けられている。配線308は、絶縁膜302、絶縁膜304などに形成され
た開口部を充填するように形成され、ドレイン電極118bと電気的に接続される。
【0334】
また、
図22(A)、及び
図22(B)において、トランジスタ260と、トランジス
タ300とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ260の
ソース領域、またはドレイン領域と第2の酸化物半導体膜108の一部が重畳するように
設けられているのが好ましい。また、トランジスタ300、及び容量素子364が、トラ
ンジスタ260の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子3
64の導電膜306は、トランジスタ260のゲート電極210と少なくとも一部が重畳
して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占
有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0335】
【0336】
図22(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ260のソー
ス電極、またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Li
ne)とトランジスタ260のソース電極、またはドレイン電極の他方とは、電気的に接
続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ300のソース電
極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)
と、トランジスタ300のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジ
スタ260のゲート電極と、トランジスタ300のソース電極、またはドレイン電極の他
方は、容量素子364の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line
)と、容量素子364の電極の他方は電気的に接続されている。
【0337】
図22(C)に示す半導体装置では、トランジスタ260のゲート電極の電位が保持可
能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能であ
る。
【0338】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジス
タ300がオン状態となる電位にして、トランジスタ300をオン状態とする。これによ
り、第3の配線の電位が、トランジスタ260のゲート電極、および容量素子364に与
えられる。すなわち、トランジスタ260のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(
書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、
Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の
電位を、トランジスタ300がオフ状態となる電位にして、トランジスタ300をオフ状
態とすることにより、トランジスタ260のゲート電極に与えられた電荷が保持される(
保持)。
【0339】
トランジスタ300のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ260のゲート電極
の電荷は長時間にわたって保持される。
【0340】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状
態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ260のゲー
ト電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジ
スタ260をnチャネル型とすると、トランジスタ260のゲート電極にHighレベル
電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ260のゲー
ト電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低く
なるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ260を「オン状態
」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電
位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、トランジスタ260のゲ
ート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電
荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(>Vth_H)となれば、トラ
ンジスタ260は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第
5の配線の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ260は「オフ状態」
のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出
すことができる。
【0341】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読
み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態
にかかわらずトランジスタ260が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_H
より小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずト
ランジスタ260が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位
を第5の配線に与えればよい。
【0342】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電
流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持す
ることが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ
動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することがで
きる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)で
あっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0343】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、
素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲー
トへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため
、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導
体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、
信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報
の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0344】
トランジスタ300は、酸化膜230上に形成された第1の酸化物半導体膜106と、
第1の酸化物半導体膜106上に形成された第2の酸化物半導体膜108と、第2の酸化
物半導体膜108上に形成されたゲート絶縁膜110と、ゲート絶縁膜110と接し、第
2の酸化物半導体膜108と重畳する領域に形成されたゲート電極112と、を有してい
る。
【0345】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、少なくとも
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜106は
、第2の酸化物半導体膜108よりもガリウムの含有率が大きい。
【0346】
また、第1の酸化物半導体膜106は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率
と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムの含有率よりも大きく、第2の酸化物半
導体膜108は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。このよう
に、第2の酸化物半導体膜108のインジウムの含有率を大きくすることで、第2の酸化
物半導体膜108の結晶性を向上させることができる。
【0347】
このように、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108が積層して
形成されており、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108の組成が
異なる。また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108の形成時に
酸化膜104から放出される酸素を抑制することができる。
【0348】
また、第2の酸化物半導体膜108は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜106
上に形成されるため、第1の酸化物半導体膜106との界面から成長する結晶部を有する
酸化物半導体膜とすることができる。
【0349】
すなわち、第1の酸化物半導体膜106は、少なくとも第2の酸化物半導体膜108の
成膜時において、酸化膜104から放出される酸素を抑制し、さらに第2の酸化物半導体
膜108の下地膜として機能するため、第2の酸化物半導体膜108の結晶性を高めるこ
とができる。また、酸化膜104からの放出される酸素は、第2の酸化物半導体膜108
形成後に、熱処理等により放出させ、第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸
化物半導体膜108に供給することができる。
【0350】
このように、第1の酸化物半導体膜106と第2の酸化物半導体膜108を積層する構
成とすることで、第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損の発生を抑制し、さらに第2の
酸化物半導体膜108の結晶性を向上させるといった優れた効果を奏する。
【0351】
本実施の形態に示すように、本発明の技術的思想は、酸化膜上に形成された第1の酸化
物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、を積層し
て形成することで、少なくとも第2の酸化物半導体膜の成膜時において、酸化膜から放出
される酸素を抑制し、さらに第1の酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜の下地膜とし
て機能するために、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。第2の酸
化物半導体膜の結晶性が向上することにより、当該第2の酸化物半導体膜の酸素欠損の発
生が抑制され、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる。
【0352】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0353】
(実施の形態7)
本実施の形態においては、実施の形態1乃至実施の形態5に示す半導体装置を使用し、
電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無
い構成について、実施の形態6に示した構成と異なる構成について、
図23、及び
図24
を用いて説明を行う。
【0354】
図23(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、
図23(B)は半導体装置の一
例を示す概念図である。まず、
図23(A)に示す半導体装置について説明を行い、続け
て
図23(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
【0355】
図23(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ300のソース
電極、またはドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ300の
ゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ300のソース電極、またはドレイン電
極と容量素子354の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0356】
酸化物半導体を用いたトランジスタ300は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有
している。このため、トランジスタ300をオフ状態とすることで、容量素子354の第
1の端子の電位(あるいは、容量素子354に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたっ
て保持することが可能である。
【0357】
次に、
図23(A)に示す半導体装置(メモリセル350)に、情報の書き込みおよび
保持を行う場合について説明する。
【0358】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ300がオン状態となる電位として、トラ
ンジスタ300をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子354
の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ
300がオフ状態となる電位として、トランジスタ300をオフ状態とすることにより、
容量素子354の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0359】
トランジスタ300のオフ電流は極めて小さいから、容量素子354の第1の端子の電
位(あるいは容量素子に蓄積された電荷)は長時間にわたって保持することができる。
【0360】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ300がオン状態となると、浮
遊状態であるビット線BLと容量素子354とが導通し、ビット線BLと容量素子354
の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの
電位の変化量は、容量素子354の第1の端子の電位(あるいは容量素子354に蓄積さ
れた電荷)によって、異なる値をとる。
【0361】
例えば、容量素子354の第1の端子の電位をV、容量素子354の容量をC、ビット
線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前
のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は
、(CB*VB0+C*V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル350の状態と
して、容量素子354の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとると
すると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB*VB0+C*V
1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB
*VB0+C*V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0362】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことがで
きる。
【0363】
このように、
図23(A)に示す半導体装置は、トランジスタ300のオフ電流が極め
て小さいという特徴から、容量素子354に蓄積された電荷は長時間にわたって保持する
ことができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の
頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能
である。
【0364】
次に、
図23(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0365】
図23(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として
図23(A)に示したメモリ
セル350を複数有するメモリセルアレイ351a、及びメモリセルアレイ351bを有
し、下部に、メモリセルアレイ351a、及びメモリセルアレイ351bを動作させるた
めに必要な周辺回路353を有する。なお、周辺回路353は、メモリセルアレイ351
a、及びメモリセルアレイ351bと電気的に接続されている。
【0366】
図23(B)に示した構成とすることにより、周辺回路353をメモリセルアレイ35
1a、及びメモリセルアレイ351bの直下に設けることができるため半導体装置の小型
化を図ることができる。
【0367】
周辺回路353に設けられるトランジスタは、トランジスタ300とは異なる半導体材
料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム
、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いること
が好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いた
トランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高
速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能で
ある。
【0368】
なお、
図23(B)に示した半導体装置では、メモリセルアレイ351aと、メモリセ
ルアレイ351bと、2つのメモリセルアレイが積層された構成を例示したが、積層する
メモリセルアレイの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルアレイを積層する構
成としても良い。
【0369】
次に、
図23(A)に示したメモリセル350の具体的な構成について
図24を用いて
説明を行う。
【0370】
図24は、メモリセル350の構成の一例である。
図24(A)にメモリセル350の
断面図を、
図24(B)にメモリセル350の平面図をそれぞれ示す。ここで、
図24(
A)は、
図24(B)のF1-F2、及びG1-G2における断面に相当する。
【0371】
図24(A)、及び
図24(B)に示すトランジスタ300は、実施の形態3、または
実施の形態6で示した構成と同一の構成とすることができる。ただし、他の実施の形態に
示すトランジスタの構成としてもよい。
【0372】
トランジスタ300は、酸化膜274上に形成された第1の酸化物半導体膜106と、
第1の酸化物半導体膜106上に形成された第2の酸化物半導体膜108と、第2の酸化
物半導体膜108上に形成されたゲート絶縁膜110と、ゲート絶縁膜110と接し、第
2の酸化物半導体膜108と重畳する領域に形成されたゲート電極112と、を有してい
る。
【0373】
また、第1の酸化物半導体膜106、及び第2の酸化物半導体膜108は、少なくとも
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物膜であり、第1の酸化物半導体膜106は
、第2の酸化物半導体膜108よりもガリウムの含有率が大きい。
【0374】
また、第1の酸化物半導体膜106は、膜中のガリウムの含有率がインジウムの含有率
と等しい、またはガリウムの含有率がインジウムの含有率よりも大きく、第2の酸化物半
導体膜108は、膜中のインジウムの含有率がガリウムの含有率よりも大きい。このよう
に、第2の酸化物半導体膜108のインジウムの含有率を大きくすることで、第2の酸化
物半導体膜108の結晶性を向上させることができる。
【0375】
このように、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108が積層して
形成されており、第1の酸化物半導体膜106と、第2の酸化物半導体膜108の組成が
異なる。また、第1の酸化物半導体膜106は、第2の酸化物半導体膜108の形成時に
酸化膜104から放出される酸素を抑制することができる。
【0376】
また、第2の酸化物半導体膜108は、同種の材料である第1の酸化物半導体膜106
上に形成されるため、第1の酸化物半導体膜106との界面から成長する結晶部を有する
酸化物半導体膜とすることができる。
【0377】
すなわち、第1の酸化物半導体膜106は、少なくとも第2の酸化物半導体膜108の
成膜時において、酸化膜104から放出される酸素を抑制し、さらに第2の酸化物半導体
膜108の下地膜として機能するため、第2の酸化物半導体膜108の結晶性を高めるこ
とができる。また、酸化膜104からの放出される酸素は、第2の酸化物半導体膜108
形成後に、熱処理等により放出させ、第1の酸化物半導体膜106を通過させ、第2の酸
化物半導体膜108に供給することができる。
【0378】
このように、第1の酸化物半導体膜106と第2の酸化物半導体膜108を積層する構
成とすることで、第2の酸化物半導体膜108の酸素欠損の発生を抑制し、さらに第2の
酸化物半導体膜108の結晶性を向上させるといった優れた効果を奏する。
【0379】
なお、第1の酸化物半導体膜106において、ゲート電極112が重畳する領域、及び
第2の酸化物半導体膜108の外側には、それぞれ高抵抗領域106aが形成され、ゲー
ト電極112が重畳する領域に隣接して、一対の低抵抗領域106bが形成されている。
また、第2の酸化物半導体膜108において、ゲート電極112が重畳する領域には、チ
ャネル領域108aが形成されており、ゲート電極112が重畳する領域に隣接して、一
対の低抵抗領域108bが形成されている。
【0380】
また、第2の酸化物半導体膜108の外側に形成された高抵抗領域106aは、各トラ
ンジスタ間の分離層として機能する。例えば、第2の酸化物半導体膜108の外側に高抵
抗領域106aを設けない構成とした場合、隣接するトランジスタ間が電気的に接続され
る恐れがあるからである。
【0381】
また、ゲート電極112の重畳する領域に設けられた絶縁膜113と、ゲート電極11
2、及び絶縁膜113の側壁に形成されたサイドウォール絶縁膜115と、第2の酸化物
半導体膜108と電気的に接続されたソース電極118a、及びドレイン電極118bと
、層間絶縁膜116上に形成された絶縁膜120と、絶縁膜120、層間絶縁膜116、
保護絶縁膜114に設けられた開口部を介してソース電極118a、及びドレイン電極1
18bと電気的に接続された配線119a、及び配線119bと、を含む構成としても良
い。なお、ソース電極118a、及びドレイン電極118bは、第2の酸化物半導体膜1
08に形成された一対の低抵抗領域108bと接しているため、接触抵抗を低減すること
ができる。
【0382】
また、トランジスタ300上に絶縁膜258が形成されており、絶縁膜258を介して
、トランジスタ300のソース電極118aと接続された配線119aと重畳する領域に
は、導電膜262が設けられており、配線119aと、絶縁膜258と、導電膜262と
によって、容量素子354が構成されている。すなわち、トランジスタ300のソース電
極118aは、容量素子354の一方の電極として機能し、導電膜262は、容量素子3
54の他方の電極として機能する。
【0383】
また、トランジスタ300、及び容量素子354上には、絶縁膜256が単層または積
層で設けられている。そして、絶縁膜256上には、隣接するメモリセルと接続するため
の配線272が設けられている。配線272は、絶縁膜256、及び絶縁膜258などに
形成された開口、及び配線119bを介してトランジスタ300のドレイン電極118b
と電気的に接続されている。但し、配線272とドレイン電極118bとを直接接続して
もよい。なお、配線272は、
図23(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0384】
図24(A)、及び
図24(B)において、トランジスタ300のドレイン電極118
bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極としても機能することが
できる。
【0385】
このように、
図24(B)に示す平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の
占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0386】
以上のように、多層に形成された複数のメモリセルは、酸化物半導体を用いたトランジ
スタにより形成されている。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいた
め、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり
、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低
減することができる。
【0387】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速
動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(
より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備え
ることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺
回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0388】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体
装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0389】
本実施の形態に示すように、本発明の技術的思想は、酸化膜上に形成された第1の酸化
物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に形成された第2の酸化物半導体膜と、を積層し
て形成することで、少なくとも第2の酸化物半導体膜の成膜時において、酸化膜から放出
される酸素を抑制し、さらに第1の酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜の下地膜とし
て機能するために、第2の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることができる。第2の酸
化物半導体膜の結晶性が向上することにより、当該第2の酸化物半導体膜の酸素欠損の発
生が抑制され、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる。
【0390】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可
能である。
【0391】
(実施の形態8)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、
電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を
図25乃至
図28を用いて説明する。
【0392】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記
憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMが使用され
る理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである
。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合、以下の特徴が
ある。
【0393】
通常のSRAMは、
図25(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801
~806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコー
ダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ
804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし
1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点
がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常1
00~150F
2である。このためSRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最
も高い。
【0394】
それに対して、DRAMはメモリセルが
図25(B)に示すようにトランジスタ811
、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814に
て駆動している。1つのセルが1トランジスタ1容量の構成になっており、面積が小さい
。DRAMのメモリセル面積は通常10F
2以下である。ただし、DRAMは常にリフレ
ッシュが必要であり、書き換えをおこなわない場合でも電力を消費する。
【0395】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F2前後であ
り、且つ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、且
つ消費電力を低減することができる。
【0396】
次に、
図26に携帯機器のブロック図を示す。
図26に示す携帯機器はRF回路901
、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー90
4、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、デ
ィスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ
919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ91
3は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されてい
る。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、IF909を有
している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部
分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよ
び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することが
できる。
【0397】
次に、
図27にディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装
置を使用した例を示す。
図27に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953
、スイッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されてい
る。また、メモリ回路は、信号線から入力された画像データ(入力画像データ)、メモリ
952、及びメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、及び制御
を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号
により表示するディスプレイ957が接続されている。
【0398】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成さ
れる(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952
に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、ス
イッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送ら
れ、表示される。
【0399】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30~60Hz程度の
周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956から
読み出される。
【0400】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データ
Aに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像デー
タB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶され
る。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み
出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると
、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ9
55、及びディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像デ
ータBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメ
モリ952に記憶されるまで継続される。
【0401】
このようにメモリ952、及びメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像デ
ータの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモ
リ952、及びメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割
して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952及びメモリ9
53に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保
持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0402】
次に、
図28に電子書籍のブロック図を示す。
図28はバッテリー1001、電源回路
1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005
、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ10
09、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0403】
ここでは、
図28のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用
することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持
つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザー
が電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマー
キング機能をハイライト機能と言い、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を
太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザー
が指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合に
はフラッシュメモリ1004にコピーしても良い。このような場合においても、先の実施
の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが
高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0404】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が
搭載されている。このため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持
が可能で、且つ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
【0405】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組
み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0406】
102 基板
104 酸化膜
106 第1の酸化物半導体膜
106a 高抵抗領域
106b 低抵抗領域
108 第2の酸化物半導体膜
108a チャネル領域
108b 低抵抗領域
110 ゲート絶縁膜
111 導電膜
112 ゲート電極
113 絶縁膜
113a 絶縁膜
114 保護絶縁膜
114a 絶縁膜
115 サイドウォール絶縁膜
115a 絶縁膜
116 層間絶縁膜
116a 絶縁膜
118 導電膜
118a ソース電極
118b ドレイン電極
119 導電膜
119a 配線
119b 配線
120 絶縁膜
121 導電膜
121a 第1の導電膜
121b 第2の導電膜
132 レジストマスク
132a レジストマスク
134 レジストマスク
134a レジストマスク
134b レジストマスク
136 レジストマスク
136a レジストマスク
138 レジストマスク
138a レジストマスク
142 ドーパント
151a 第1の開口部
151b 第2の開口部
153a 開口部
153b 開口部
200 基板
206 素子分離絶縁膜
208 ゲート絶縁膜
210 ゲート電極
216 チャネル形成領域
220 不純物領域
224 金属間化合物領域
228 絶縁膜
230 酸化膜
256 絶縁膜
258 絶縁膜
260 トランジスタ
262 導電膜
264 容量素子
272 配線
274 酸化膜
300 トランジスタ
302 絶縁膜
304 絶縁膜
306 導電膜
308 配線
350 メモリセル
351a メモリセルアレイ
351b メモリセルアレイ
353 周辺回路
354 容量素子
364 容量素子
801 トランジスタ
802 トランジスタ
803 トランジスタ
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
807 Xデコーダー
808 Yデコーダー
811 トランジスタ
812 保持容量
813 Xデコーダー
814 Yデコーダー
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
909 IF
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
950 メモリ回路
951 メモリコントローラ
952 メモリ
953 メモリ
954 スイッチ
955 スイッチ
956 ディスプレイコントローラ
957 ディスプレイ
1001 バッテリー
1002 電源回路
1003 マイクロプロセッサ
1004 フラッシュメモリ
1005 音声回路
1006 キーボード
1007 メモリ回路
1008 タッチパネル
1009 ディスプレイ
1010 ディスプレイコントローラ