(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン分散液中でのポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用
(51)【国際特許分類】
C08L 71/00 20060101AFI20231128BHJP
C08L 39/02 20060101ALI20231128BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20231128BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20231128BHJP
C09K 23/00 20220101ALI20231128BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231128BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231128BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231128BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20231128BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C08L71/00 Z
C08L39/02
C08L75/04
C08J9/04 103
C08J9/04 CFF
C09K23/00
C09D5/02
C09D7/63
C09D7/65
C09D175/04
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2022503012
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2019096494
(87)【国際公開番号】W WO2021007838
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クロスターマン
(72)【発明者】
【氏名】イーチェン リー
(72)【発明者】
【氏名】カイ-オリヴァー フェルトマン
(72)【発明者】
【氏名】マーフィン ヤンゼン
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-252402(JP,A)
【文献】特開2016-037531(JP,A)
【文献】国際公開第2018/015260(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0153865(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08J 9/00- 9/42
C09K 23/00- 23/56
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性補助界面活性剤を含む水性ポリウレタン分散液中での、添加剤としての、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用。
【請求項2】
前記ポリオールエステルが、少なくとも1種のカルボン酸でポリオールをエステル化することによって得られることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記ポリオールがC
3~C
8ポリオールおよびそれらのオリゴマーの群から選択されることを特徴とする、請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記カルボン酸が、一般式R-C(O)OH[式中、Rは、3~39個の炭素原子を有する一価の脂肪族飽和または不飽和の炭化水素基である]に従うこと、
ならびに/または多官能性ジカルボン酸および/もしくはトリカルボン酸が使用されること、
ならびに/または上で規定した前記一般式R-C(O)OHのカルボン酸と多官能性ジカルボン酸および/もしくはトリカルボン酸との混合物が使用されること
を特徴とする、請求項2または3記載の使用。
【請求項5】
使用される前記ポリオールエステルが、ソルビタンエステルおよび/またはポリグリセロールエステルの群から選択されるものを含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記ポリオールエステルがリン酸化されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記カチオン性高分子電解質が、ポリエチレンイミンおよびその縮合生成物、アルギニンおよび/またはヒスチジンを含むペプチドおよびポリアミド、アミン官能性およびグアニジン官能性シロキサン、ならびにアリルアミン、ジアリルアミン、それらのアルキル誘導体および四級化生成物、ビニルアミン、ジビニルアミン、ビニルピリジン、およびそれらの四級化生成物、ビニルイミダゾール、そのアルキル誘導体および四級化生成物、エチレン性不飽和カルボン酸とアミノアルコールとのエステル、エチレン性不飽和カルボン酸とN,N-ジアルキルアミノアルキルアミンとのアミド、ならびにこれらの物質の混合物の(コ)ポリマーであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記カチオン性高分子電解質が式4の少なくとも1種の繰り返し単位A
【化1】
および任意選択的な式5の少なくとも1種の繰り返し単位B
【化2】
[これらの式中、R
5およびR
6は、独立して、1~10個の炭素原子を有する同じもしくは異なる一価の脂肪族もしくは芳香族の飽和もしくは不飽和の炭化水素基またはHである]を有するポリマーである、
ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマーが、N-ビニルカルボキサミドのフリーラジカル重合およびそれに続くアミド官能基のアミン官能基への完全なまたは部分的な加水分解によって前記繰り返し単位Aおよび/またはBから製造することができることを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項10】
追加のモノエチレン性不飽和コモノマーまたはコモノマー混合物が、前記ポリマーならびに前記繰り返し単位AおよびBに任意選択的に組み込まれており、これらのコモノマーは、非イオン性、カチオン性、またはアニオン性のモノマーであることを特徴とする、請求項8または9記載の使用。
【請求項11】
前記水性ポリウレタン分散液の固形分が、分散液全体を基準として20~70重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記水性ポリウレタン分散液の総重量を基準とするポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との合計量が、0.2~20重量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
カチオン性高分子電解質が、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との総重量を基準として2.5~80重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質とを含む、アニオン性補助界面活性剤含有水性ポリウレタン分散液。
【請求項15】
アニオン性補助界面活性剤含有水性ポリウレタン分散液中での、添加剤としてのポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用による、多孔質ポリマーコーティングの製造方法であって、
a)少なくとも1種のアニオン性補助界面活性剤含有水性ポリウレタン分散液と、少なくとも1種のポリオールエステルと、少なくとも1種のカチオン性高分子電解質と、任意選択的な追加の添加剤とを含有する混合物を準備する工程、
b)前記混合物を発泡させて、均一な微細なセルの発泡体を得る工程、
c)任意選択的に、少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿った状態の前記発泡体の粘度を調整する工程、
d)前記発泡したポリウレタン分散液のコーティングを、適切な支持材に塗布する工程、
e)前記コーティングを乾燥する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックコーティングおよび合成皮革の分野に存する。
【0002】
これは、より詳しくは、添加剤としてポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用による、多孔質ポリマーコーティング、特に多孔質ポリウレタンコーティングの製造に関する。
【0003】
プラスチックでコーティングされた布地、例えば合成皮革は、一般的に、最上層またはトップコートでコーティングされた多孔質ポリマー層が上に積層されている、布地支持材からなる。
【0004】
これとの関係における多孔性ポリマー層は、好ましくは、マイクロメートル範囲の細孔を有し、空気透過性であり、したがって通気性、すなわち水蒸気に対して透過性を有するが、耐水性である。多孔質ポリマー層は、多くの場合多孔質ポリウレタンを含む。現在、多孔質ポリウレタン層は、通常はDMFを溶媒として使用する凝固法によって製造されている。しかしながら、環境への懸念のため、この製造方法に対する批判が高まってきており、そのため他のより環境に優しい技術に徐々に引き継がれることになる。これらの技術のうちの1つは、PUDと呼ばれる水性ポリウレタン分散液に基づくものである。これらは、通常、水中に分散したポリウレタン微粒子からなり、固形分は通常30~60重量%の範囲である。多孔質ポリウレタン層を製造するために、これらのPUDは機械的に発泡され、支持材(層の厚さは通常300~2000μmである)の上にコーティングされ、その後高温で乾燥される。この乾燥工程中に、PUD系の中に存在する水が蒸発し、ポリウレタン粒子のフィルムが形成される。フィルムの機械的強度をさらに高めるために、製造プロセス中にPUD系に親水性(ポリ)イソシアネートを添加することがさらに可能であり、これらはポリウレタン粒子の表面に存在する遊離OH基と乾燥工程中に反応することができ、その結果ポリウレタンフィルムの追加の架橋が生じる。
【0005】
このようにして製造されたPUDコーティングの機械的特性と触覚特性の両方が、多孔質ポリウレタンフィルムのセル構造によってかなりの程度決定される。さらに、多孔質ポリウレタンフィルムのセル構造は、材料の空気透過性および通気性に影響を与える。本明細書では、非常に細かく均一に分布したセルにより、特に優れた特性を実現することができる。上記製造プロセス中にセル構造に影響を与える慣習的な方法は、機械的発泡の前または最中に発泡体安定剤をPUD系に添加することである。適切な安定剤の第1の効果は、発泡工程中に十分な量の空気をPUD系に含ませることができることである。第2に、発泡体安定剤は、生成される気泡の形態に直接影響を与える。気泡の安定性は、安定剤の種類によってもかなりの程度影響を受ける。これは、セルの粗大化や乾燥亀裂などの乾燥欠陥を防ぐことができるため、発泡したPUDコーティングの乾燥中に特に重要である。
【0006】
過去に、ポリオールエステルは、機械的に発泡させたPUD系用の特に有効な安定剤として既に特定されている。例えば欧州特許出願公開第3487945号明細書を参照のこと。しかしながら、ポリオールエステルの1つの欠点は、この化合物の分類の発泡体安定化効果が、PUD系の中に存在する追加の補助界面活性剤、特にアニオン性補助界面活性剤の存在によって損なわれ得ることである。しかしながら、特に水性ポリウレタン分散液の製造では、補助界面活性剤の使用は珍しいことではない。補助界面活性剤は、この状況では水中でのポリウレタンプレポリマーの分散を改善するために使用され、通常最終製品の中に残る。ポリウレタン分散液の機械的発泡の間に、対応する補助界面活性剤は、特にポリオールエステルが発泡体の安定化のために使用される場合に、系の発泡特性に悪影響を及ぼす可能性がある。その結果、系の中に含ませられる空気は、含ませられるとしてもごくわずかしかできないことが多く、得られる発泡体構造は粗く不規則である。補助界面活性剤は、製造される発泡体の安定性に悪影響を及ぼす可能性もあり、これは発泡したPUD系の処理中に発泡体の老化を引き起こす可能性があり、ひいては製造される発泡体コーティングの不良および欠陥をもたらす可能性がある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、補助界面活性剤、特にアニオン性補助界面活性剤を含有するPUD系中であっても効率的な発泡および効率的な発泡体安定化を可能にするPUDベースの発泡体系および発泡体コーティングの製造のための添加剤を提供することであった。
【0008】
驚くべきことに、カチオン性高分子電解質と組み合わせてポリオールエステルを使用すると、前述した課題を解決できることが見出された。
【0009】
したがって、本発明は、水性ポリマー分散液中の、好ましくは水性ポリウレタン分散液中の、特に好ましくは補助界面活性剤、特にアニオン性補助界面活性剤を含むPUD系中の、添加剤としての、好ましくは発泡体添加剤としての、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用を提供する。
【0010】
本発明によるポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用は、驚くべきことに、本明細書において様々な利点を示す。
【0011】
本明細書における1つの利点は、補助界面活性剤が分散系の中に追加的に存在する場合であっても、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との本発明の組み合わされた使用がポリウレタン分散液の効率的な発泡を可能にすることである。このようにして生成された発泡体は、さらに、特に均一なセル分布を有する非常に微細な細孔構造が際立っており、ひいてはこれらの発泡体に基づいて製造される多孔質ポリマーコーティングの機械的および触覚的な特性に非常に有利な効果をもたらす。加えて、これによってコーティングの空気透過性または通気性を改善することが可能である。
【0012】
さらなる利点は、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との本発明の組み合わされた使用が、補助界面活性剤がPUD系の中に追加的に存在する場合であっても、特に安定な発泡体の製造を可能にすることである。これは、第1に、このようにして製造された発泡体の加工性に有利な効果をもたらす。第2に、発泡体の高められた安定性は、対応する発泡体の乾燥中に、セルの粗大化や乾燥亀裂などの乾燥欠陥を回避できるという利点をもたらす。さらに、改善された発泡体の安定性は、発泡体のより迅速な乾燥を可能にし、環境と経済の観点の両方から、加工上の優位性を提供する。
【0013】
水性ポリマー分散液中の発泡体添加剤としてのポリオールエステルの使用は、国際公開第2018/015260号において既に詳細に記載されている。本発明との関係におけるポリオールエステルの更なる説明については、この文献が完全に参照されている。
【0014】
本発明の範囲全体にわたっての「ポリオールエステル」という用語には、ポリオールエステルと、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシドとの反応によって得ることができるそのアルコキシル化付加物も含まれる。
【0015】
本発明の範囲全体にわたっての「ポリオールエステル」という用語には、そのイオン性誘導体、好ましくはリン酸化および硫酸化誘導体、特にリン酸化ポリオールエステルも含まれる。ポリオールエステルのこれらの誘導体、特にリン酸化ポリオールエステルは、本発明に従って好ましく使用可能なポリオールエステルである。ポリオールエステルのこれらおよびその他の誘導体は、以降でさらに詳細に説明されており、本発明との関係において好ましく使用可能である。
【0016】
本発明の範囲全体にわたっての「補助界面活性剤」という用語には、本発明によるポリオールエステルと一緒にポリマー分散液中に存在し得る追加の界面活性剤が包含される。これらには、特に、ポリマー分散液の製造中に使用される界面活性剤が含まれる。例えば、ポリウレタン分散液は、多くの場合、第2の工程で水に分散されてから鎖延長剤と反応するPUプレポリマーの合成によって製造される。プレポリマーの水への分散を改善するために、本明細書では補助界面活性剤を使用することができる。本発明との関係において、補助界面活性剤は、好ましくはアニオン性補助界面活性剤である。
【0017】
本発明の範囲全体にわたっての「カチオン性高分子電解質」という用語には、プロトンを受け入れることによってカチオン性になるカチオン性基または塩基性基を有する水溶性高分子化合物が包含される。これに関係して、「水溶性」とは、25℃の温度のポリマーが、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%の水溶性を有することを意味する。本明細書では、水溶液のpHに関わらず、正電荷を有する永久高分子電解質と、電荷状態が溶液のpHに依存する弱い高分子電解質とを区別する必要がある。本明細書における高分子電解質は、ホモポリマー、すなわち、1種のみの繰り返し単位を有するポリマーであってよく、またはコポリマー、すなわち少なくとも2種の異なる繰り返し単位から形成されるポリマーであってよい。高分子電解質がコポリマーである場合、これらは統計的もしくは秩序的な構造(ブロックコポリマーとして)または勾配分布を有し得る。
【0018】
本発明は、以降で詳しく例示目的で説明されるが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。範囲、一般式、または化合物の分類が本明細書の以降で指定されている場合、これらは、明示的に言及されている対応する範囲または化合物の群のみならず、個々の値(範囲)または化合物を除くことによって得ることができる化合物の全ての部分範囲および部分群も包含することが意図されている。本明細書との関係において文献が引用されている場合には、その内容、特にその文献が引用された文脈を形成する主題に関しては、その内容全体が本明細書の開示内容の一部を形成するとみなされる。別段の記載がない限り、パーセント割合は重量パーセントの数値である。測定により決定されたパラメータが以下に報告されている場合には、別段の記載がない限り、測定は、25℃の温度かつ101325Paの圧力で行われたものである。本発明において化学(実験)式が使用されている場合には、記載されている添え字は、絶対数だけでなく平均値の場合もある。高分子化合物に関する添え字は、好ましくは平均値である。本発明で提示される構造式および実験式は、繰り返し単位の異なる配置によって実現可能な全ての異性体を表す。
【0019】
本発明との関係において、好ましいポリオールエステルは、少なくとも1つのカルボン酸でポリオールをエステル化することによって得られるものである。これは、本発明の好ましい実施形態に対応する。
【0020】
本発明によるポリオールエステルの製造に使用される好ましいポリオールは、C3~C8ポリオールならびにそのオリゴマーおよび/またはコオリゴマーの群から選択される。コオリゴマーは、異なるポリオールの反応、例えばプロピレングリコールとアラビトールとの反応により得られる。ここで特に好ましいポリオールは、プロパン-1,3-ジオール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、イソソルビド、エリスリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、フシトール、マンニトール、ガラクチトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、およびグルコースである。グリセロールが極めて特に好ましい。好ましいポリオールオリゴマーは、1~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2.5~8個の繰り返し単位を有するC3~C8ポリオールのオリゴマーである。ここで特に好ましいものは、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ジエリスリトール、トリエリスリトール、テトラエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)、ならびに二糖およびオリゴ糖である。ソルビタンならびにオリゴおよび/またはポリグリセロールが極めて特に好ましい。特に、異なるポリオールの混合物を使用することが可能である。さらに、C3~C8ポリオール、そのオリゴマーおよび/またはそのコオリゴマーのアルコキシル化付加物を、本発明によるポリオールエステルの製造のために使用することも可能であり、これは、C3~C8ポリオール、そのオリゴマーおよび/またはそのコオリゴマーを、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシドと反応させることによって得ることができる。
【0021】
本発明によるポリオールエステルの製造のために、モノカルボン酸ならびに/または多官能性ジカルボン酸および/もしくはトリカルボン酸を使用することが可能である。本発明によるポリオールエステルの製造のために使用される好ましいカルボン酸は、一般式R-C(O)OHの形態に従い、ここでRは、3~39個の炭素原子、好ましくは7~21個、より好ましくは9~17個の炭素原子を有する一価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。本明細書で特に好ましいものは、酪酸(ブタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、パルミトール酸((Z)-9-ヘキサデセン酸)、オレイン酸((Z)-9-ヘキサデセン酸)、エライジン酸((E)-9-オクタデセン酸)、cis-バクセン酸((Z)-11-オクタデセン酸)、リノール酸((9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエン酸)、アルファ-リノレン酸((9Z,12Z,15Z)-9,12,15-オクタデカトリエン酸)、ガンマ-リノレン酸((6Z,9Z,12Z)-6,9,12-オクタデカトリエン酸)、ジ-ホモ-ガンマ-リノレン酸((8Z,11Z,14Z)-8,11,14-エイコサトリエン酸)、アラキドン酸((5Z,8Z,11Z,14Z)-5,8,11,14エイコサテトラエン酸)、エルカ酸((Z)-13-ドコセン酸)、ネルボン酸((Z)-15-テトラコセン酸)、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、およびウンデシニレン酸(undecenyloic acid)、ならびにこれらの混合物、例えば、菜種油酸、大豆脂肪酸、ヒマワリ脂肪酸、ピーナッツ脂肪酸、および/またはトール油脂肪酸から選択されるカルボン酸である。パルミチン酸およびステアリン酸、特にこれらの物質の混合物が極めて特に好ましい。
【0022】
適切な脂肪酸または脂肪酸エステル、特にグリセリドの供給源は、植物性または動物性の脂肪、油、およびワックスであってよい。例えば、豚脂、牛脂、ガチョウ脂肪、アヒル脂肪、鶏脂、馬脂、鯨油、魚油、パーム油、オリーブ油、アボカド油、種子仁油、ココナッツ油、パーム核油、ココアバター、綿実油、カボチャ種子油、トウモロコシ穀粒油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、ブドウ種子油、ゴマ油、亜麻仁油、大豆油、ピーナッツ油、ルパン油、菜種油、マスタード油、ヒマシ油、ジャトロファ油、クルミ油、ホホバ油、レシチン、例えば大豆や菜種やヒマワリに基づくもの、骨油、牛脚油、ボラージ油、ラノリン、エミュー油、鹿脂、マーモット油、ミンク油、サフラワー油、ヘンプ油、カボチャ油、イブニングプリムローズ油、トール油、ならびにカルナウバワックス、蜜ろう、キャンデリラワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、レタモワックス、キャランデイワックス、ラフィアワックス、エスパルトワックス、アルファルファワックス、バンブーワックス、ヘンプワックス、ダグラスファーワックス、コルクワックス、サイザルワックス、フラックスワックス、コットンワックス、ダンマーワックス、ティーワックス、コーヒーワックス、ライスワックス、オレアンダーワックス、またはウールワックスを使用することが可能である。
【0023】
さらに、本発明によるポリオールエステルが、多官能性ジおよびトリカルボン酸またはジおよびトリカルボン酸の環状無水物を使用して製造され、それによってポリオールポリエステルが得られる場合に、有利な場合がある。四官能性およびそれより多い官能性のカルボン酸またはその無水物も同様に、本発明との関係において好ましく使用可能である。本明細書では、2~18個の炭素原子の鎖長を有する脂肪族直鎖もしくは分岐ジカルボン酸および/もしくはトリカルボン酸、ならびに/または12~22個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の触媒的二量体化によって得られた二量体脂肪酸が好ましい。対応する多官能性酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、タプシン酸、タルトロン酸、酒石酸、リンゴ酸、またはクエン酸である。特に好ましくは、多官能性ジカルボン酸およびトリカルボン酸が、上述した一官能性カルボン酸と組み合わせて使用され、それによって部分的に架橋されたポリオールエステルが得られる。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態では、ポリオールエステルは、ソルビタンエステルおよび/またはポリグリセロールエステルの群から選択される。ポリグリセロールエステル、特にパルミチン酸ポリグリセロールおよびステアリン酸ポリグリセロール、ならびにこれらの物質の混合物が極めて特に好ましい。
【0025】
本明細書で特に好ましいものは、一般式1に従うポリグリセロールエステルである:
MaDbTc 式1
[式中、
M=[C3H5(OR1)2O1/2]であり、
D=[C3H5(OR1)1O2/2]であり、
T=[C3H5O3/2]であり、
a=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2であり、
b=0~10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1~4であり、
c=0~3、好ましくは0であり、
R
1
は、独立して、R2-C(O)-形態の同じもしくは異なる基またはHであり、
R2は、3~39個の炭素原子、好ましくは7~21個、より好ましくは9~17個の炭素原子を有する一価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基であり、
少なくとも1つのR
1
はR2-C(O)-形態の基に対応する]。
【0026】
構造の要素M、D、およびTは、それぞれの場合において、酸素橋を介してここで結合される。ここでは、2つのO1/2
基が常に結合して酸素橋(-O-)を形成し、任意のO1/2
基はもう1つのO1/2
基にのみ結合することができる。
【0027】
一般式2に対応するポリグリセロールエステルがさらに好ましい:
M
xD
yT
z 式2
[式中、
【化1】
【0028】
x=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2であり、
y=0~10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1~4であり、
z=0~3、好ましくは0より大きく2まで、特に好ましくは0であるが、
少なくとも1つのR
1
は水素ではない式1で定義されているR1であることを条件とする]。
【0029】
一般式3のポリグリセロールエステルがさらに好ましい:
【化2】
[式中、
k=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2であり、
m=0~10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1~3あるが、
少なくとも1つの
R
1
は水素ではない式1で定義されているR
1であり、かつk+mの合計がゼロより大きく、添え字kおよびmを有するフラグメントが統計的に分布していることを条件とする]。
【0030】
本発明との関係において、「ポリグリセロール」という用語は、グリセロールも含み得るポリグリセロールを意味すると特に理解される。したがって、量や質量などを計算するためには、あらゆるグリセロール画分も考慮に入れる必要がある。したがって、本発明との関係において、ポリグリセロールは、少なくとも1種のグリセロールオリゴマーおよびグリセロールを含む混合物でもある。グリセロールオリゴマーは、それぞれの場合において、全ての関連する構造、すなわち、例えば直鎖、分岐、および環状の化合物を意味すると理解するべきである。
【0031】
統計的な分布は、任意の数の望まれる数のブロックと任意の望まれるシーケンスとを有するブロック、またはランダム化された分布から構成されており、それらは交互の構造を有することもでき、あるいは鎖に沿って勾配を形成することもできる。特に、これらは、異なる分布のグループが任意選択的に互いに続くことができる任意の混合形態を構成することもできる。特定の実施形態は、実施形態の結果として統計的分布に制約をもたらす可能性がある。制約の影響を受けない全ての領域の統計的な分布に変更は存在しない。
【0032】
好ましくは、本発明に従って使用可能なポリグリセロールエステルは、5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下のR2-C(O)-形態のR
1
を有する。具体的には、R
1
は、上述したカルボン酸の群から選択される。
【0033】
本発明の同様に好ましい実施形態では、水性ポリマー分散液中の添加剤として使用されるポリグリセロールエステルは、上述した少なくとも1種のポリグリセロールと少なくとも1種のカルボン酸との反応によって得られるものである。この反応に適した反応条件は、好ましくは200~260℃の温度、かつ好ましくは20~800mbar、好ましくは50~500mbarの範囲の減圧であり、これによって水をより除去し易くすることができる。
【0034】
構造に関し、ポリオールエステルは、湿式化学指数、例えばヒドロキシル価、酸価、および加水分解価などによって特徴付けることができる。ヒドロキシル価を決定するための適切な方法は、具体的にはDGF C-V 17 a (53)、Ph. Eur. 2.5.3 方法A、およびDIN 53240に準拠するものである。酸価を決定するための適切な方法は、具体的には、DGF C-V 2、DIN EN ISO 2114、Ph. Eur. 2.5.1、ISO 3682、およびASTM D 974に準拠するものである。加水分解価を決定するための適切な方法は、具体的には、DGF C-V 3, DIN EN ISO 3681およびPh. Eur. 2.5.6に準拠するものである。
【0035】
本発明によれば、および本発明の特に好ましい実施形態に対応して、ポリグリセロールエステルの製造のために、平均縮合度が1~20、好ましくは2~10、より好ましくは2.5~8であるポリグリセロールが使用される場合が好ましい。平均縮合度Nは、ポリグリセロールのOH価(OHN、mg KOH/g単位)に基づいて決定することができ、以下にしたがってこれに関連付けられる:
【数1】
【0036】
ポリグリセロールのOH価は、本明細書で上述した通りに決定することができる。結果として、本発明によるポリグリセロールエステルの製造に好ましいポリグリセロールは、特に、1829~824、より好ましくは1352~888、特に好ましくは1244~920mg KOH/gのOH価を有するものである。
【0037】
使用されるポリグリセロールは、本明細書では様々な従来の方法、例えばグリシドールの重合(例えば塩基に触媒されるもの)、エピクロロヒドリンの重合(例えばNaOHなどの塩基の存在下)、またはグリセロールの重縮合によって得ることができる。本発明によれば、特に触媒量の塩基、特にNaOHまたはKOHの存在下でのグリセロールの縮合によるポリグリセロールの供給が好ましい。適切な反応条件は、200~260℃の温度、かつ20~800mbar、特に50~500mbarの範囲の減圧であり、これによって水をより除去し易くすることができる。さらに、例えばSolvay、Innovyn、Daicel、およびSpiga Nord S.p.A.から様々な市販のポリグリセロールを入手可能である。
【0038】
ポリグリセロールと、カルボン酸、特に脂肪酸および/または脂肪酸エステル(例えばトリグリセリド)との反応、およびポリグリセロールの供給は、共に当業者によく知られている広く使用されている方法によって行うことができる。対応する方法は、例えばRoempp Chemie Lexikon [Roempp’s Chemistry Lexicon] (Thieme-Verlag, 1996)に記載されている。
【0039】
本発明との関係おける好ましいソルビタンエステルは、ソルビトールまたはソルビトール水溶液を、200~260℃の温度で、任意選択的には適切な触媒の存在下で、上述した少なくとも1種のカルボン酸と反応させることによって得られるものであり、主に1,4と1,5のソルビタンエステルの混合物が得られる。対応する方法は、例えばRoempp Chemie Lexikon (Thieme-Verlag, 1996)に記載されている。
【0040】
本発明の範囲全体にわたっての「ポリオールエステル」という用語には、そのイオン性誘導体、好ましくはリン酸化および硫酸化誘導体、特にリン酸化ポリオールエステルも包含されることが既に明らかにされている。リン酸化ポリオールエステルは、本明細書では、ポリオールエステルとリン酸化試薬との反応、および任意選択的な、好ましくは必須のその後の中和によって得られる(特にIndustrial Applications of Surfactants. II. Preparation and Industrial Applications of Phosphate Esters. Edited by D. R. Karsa, Royal Society of Chemistry, Cambridge, 1990を参照のこと)。本発明との関係における好ましいリン酸化試薬は、オキシ塩化リン、五酸化リン(P4O10)、より好ましくはポリリン酸である。本発明の範囲全体にわたっての「リン酸化ポリオールエステル」という用語は、部分的にリン酸化されたポリオールエステルも網羅し、本発明の範囲全体にわたっての「硫酸化ポリオールエステル」という用語は、同様に部分的に硫酸化されたポリオールエステルも網羅する。
【0041】
さらに、本発明の範囲全体にわたってのポリオールエステルのイオン性誘導体は、ポリオールエステルと、ジまたはトリカルボン酸または対応する環状無水物、より好ましくは無水コハク酸との反応、および任意選択的な、好ましくは必須の中和によって得ることもできる。これらのポリオールエステルは、本発明との関係において特に好ましく使用することができる。
【0042】
さらに、本発明の範囲全体にわたってのポリオールエステルのイオン性誘導体は、ポリオールエステルを不飽和ジもしくはトリカルボン酸または対応する環状無水物との反応、それに続くスルホン化、および任意選択的な、好ましくは必須の中和によって得ることもできる。これらのポリオールエステルも、本発明との関係において特に好ましく使用することができる。
【0043】
本発明の範囲全体にわたっての「中和」という用語は、部分的な中和も包含する。部分的な中和を含む中和のためには、一般的な塩基を使用することができる。これらの塩基には、水溶性の金属水酸化物、例えば水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化タリウム(I)、および好ましくは水溶液中で遊離金属と水酸化物イオンへと解離するアルカリ金属水酸化物、特にNaOHおよびKOHが挙げられる。これらには、水と反応して水酸化物イオンを形成する無水塩基、例えば酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化銀、およびアンモニアも含まれる。これらの前述したアルカリだけでなく、塩基として使用可能な固体物質には、HO-を有さず(固体化合物中)、水に溶解すると同様にアルカリ反応を起こすものもある。これらの例としては、モノ-、ジ-、およびトリアルキルアミンなどのアミンが挙げられ、これらは、例えばアミドアミンの場合には、モノ-、ジ-、およびトリアルカノールアミン、モノ-、ジ-、およびトリアミノアルキルアミンのように官能化されたアルキル基であってもよく、かつ例えばシアン化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどの弱酸の塩であってもよい。
【0044】
本発明によるポリオールエステルのイオン性誘導体に関して、特にリン酸化ソルビタンエステルおよび/またはリン酸化ポリグリセロールエステル、特にリン酸化ポリグリセロールエステルが非常に好ましい。より具体的には、リン酸化および中和されたステアリン酸ポリグリセロールおよびパルミチン酸ポリグリセロール、ならびに2つの物質の混合物が、本発明との関係において好ましいポリオールエステルのイオン性誘導体である。
【0045】
本発明の特に好ましい実施形態では、上で規定した式1、2、および/または3のポリオールエステルを本発明に従って使用することが想定されている。ただし、追加の条件として、これらは(少なくとも部分的に)リン酸化されており、その結果、式1、2および/または3のこれらのポリオールエステルは、特にR
1
として少なくとも1つの(R3O)2P(O)-基[式中、R
3
は、独立してカチオン、好ましくは、Na+、K+、またはNH4
+、またはモノ-、ジ-、およびトリアルキルアミンのアンモニウムイオン(これは、例えばモノ-、ジ-、およびトリアルカノールアミンのアミドアミン、モノ-、ジ-、およびトリアミノアルキルアミンのアミドアミンの場合のような官能化されたアルキル基であってもよい)、またはHまたはR4-O-[式中、R
4
は、3~39個の炭素原子、好ましくは7~22個、より好ましくは9~18個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和もしくは不飽和の炭化水素基またはポリオール基である]]を有する。
【0046】
硫酸化ポリオールエステルの場合には、特に、ポリオールエステルと三酸化硫黄またはアミドスルホン酸との反応によって得られるものが好ましい。本明細書では、硫酸化ソルビタンエステルおよび/または硫酸化ポリグリセロールエステル、特に硫酸化ポリグリセロールステアレートおよび硫酸化ポリグリセロールパルミテートならびにこれら2つの物質の混合物が好ましい。
【0047】
本発明との関係において、ポリオールエステルと組み合わせて使用されるカチオン性高分子電解質が、ポリエチレンイミンおよびその縮合生成物、アルギニンおよび/またはヒスチジンを含むペプチドおよびポリアミド、アミン官能性およびグアニジン官能性シロキサン、ならびにアリルアミン、ジアリルアミン、それらのアルキル誘導体および四級化生成物、特にジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルアミン、ジビニルアミン、ビニルピリジン、およびそれらの四級化生成物、ビニルイミダゾール、そのアルキル誘導体および四級化生成物、エチレン性不飽和カルボン酸とアミノアルコールとのエステル、エチレン性不飽和カルボン酸とN,N-ジアルキルアミノアルキルアミンとのアミド、ならびにこれらの物質の混合物の(コ)ポリマーである場合も好ましい。本明細書では、ビニルアミンに基づく(コ)ポリマーが極めて特に好ましい。
【0048】
本発明との関係おいて、カチオン性高分子電解質が式4の少なくとも1種の繰り返し単位A
【化3】
および任意選択的な式5の少なくとも1種の繰り返し単位B
【化4】
[これらの式中、R
5および
R
6
は、独立して、1~10個の炭素原子、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個の炭素原子を有する同じもしくは異なる一価の脂肪族もしくは芳香族の飽和もしくは不飽和の炭化水素
基またはHであり、より好ましくはHである]を有するポリマーである場合も特に好ましい。
【0049】
本発明によれば、本明細書では、繰り返し単位Aが少なくとも50モル%程度、好ましくは少なくとも60モル%程度、より好ましくは少なくとも70モル%程度、さらに好ましくは少なくとも80モル%程度、さらに好ましくは少なくとも90モル%程度、最も好ましくは100モル%程度までポリマー中に存在する場合が好ましい。
【0050】
本発明による好ましい繰り返し単位AおよびBのポリマーは、N-ビニルカルボキサミドのフリーラジカル重合およびそれに続くアミド官能基のアミン官能基への完全なまたは部分的な加水分解によって製造することができる。加水分解は、ここでは酸性またはアルカリ性の条件下で行うことができる。本明細書において好ましいN-ビニルカルボキサミドは、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニル-N-プロピルホルムアミド、N-ビニル-N-イソプロピルホルムアミド、N-ビニル-N-ブチルホルムアミド、N-ビニル-N-イソブチルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-プロピルアセトアミド、N-ビニル-N-イソプロピルアセトアミド、N-ビニル-N-ブチルアセトアミド、N-ビニル-N-イソブチルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド、N-ビニルメチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-エチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-プロピルプロピオンアミド、およびこれらの物質の混合物であり、特にN-ビニルホルムアミドが好ましい。
【0051】
さらに修飾されたポリマーにするために、繰り返し単位AおよびBに加えて、追加のモノエチレン性不飽和コモノマーまたはコモノマー混合物を、本発明による好ましいポリマーに任意選択的に組み込むことができる。これらは、非イオン性、カチオン性、またはアニオン性のモノマーであってよい。ここでの好ましい非イオン性コモノマーは、ビニルアルコールまたはアリルアルコールなどの不飽和アルコールおよびそのアルコキシレート、不飽和ニトリル、脂肪族または芳香族オレフィン、N-ビニルラクタム、例えばN-ビニルピロリドンまたはN-ビニルカプロラクタム、有機カルボン酸のビニルエステル、モノエチレン性不飽和カルボン酸のエステル、ならびにモノエチレン性不飽和カルボン酸のアミドである。好ましいカチオン性コモノマーは、ビニルイミダゾールおよびビニルイミダゾール単位を含むモノマー、それらのアルキル誘導体および四級化生成物、ビニルピリジンおよびその四級化生成物、エチレン性不飽和カルボン酸とアミノアルコールとの塩基性エステル、ならびにエチレン性不飽和カルボン酸とN,N-ジアルキルアミノアルキルアミンとの塩基性アミドである。好ましいアニオン性コモノマーは、α,β-不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、および不飽和ジカルボン酸の部分エステルである。
【0052】
コモノマー含有ポリマーの場合、本明細書では、コモノマーが、ポリマー全体の組成を基準として0.1~50モル%、好ましくは0.5~25モル%、より好ましくは1~15モル%の濃度で使用される場合が好ましい。
【0053】
本発明との関係において、特に好ましいカチオン性高分子電解質は、1000~500000g/モル、好ましくは5000~250000g/モル、より好ましくは10000~100000g/モルの平均モル質量を有するものである。高分子電解質のモル質量は、本明細書では、特にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの当業者に公知の方法によって決定することができる。
【0054】
pH依存性の解離度を有するカチオン性高分子電解質の場合、これらの化合物の解離度、したがってそれらのカチオン特性が酸、例えば塩酸、乳酸、クエン酸、または硫酸の添加によって調整される場合、それは本発明の追加的な好ましい実施形態である。
【0055】
既に説明したように、本発明は、水性ポリマー分散液、好ましくは水性ポリウレタン分散液中の添加剤としての、上述したポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用を想定している。ここでのポリマー分散液は、好ましくは、水性ポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液、およびポリウレタン分散液の群から選択される。これらの分散液の固形分は、好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲である。本発明によれば、水性ポリウレタン分散液、特に補助界面活性剤含有水性ポリウレタン分散液中の添加剤としてのポリオールエステルおよびカチオン性高分子電解質の使用が特に好ましい。本明細書では、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、およびポリエーテルポリオールに基づくポリウレタン分散液が特に好ましい。
【0056】
本発明との関係において、水性ポリマー分散液の総重量を基準とするポリオールエステルとカチオン性高分子電解質の合計量が、0.2~20重量%の範囲、より好ましくは0.4~15重量%の範囲、特に好ましくは0.5~10重量%の範囲内にある場合が好ましい。
【0057】
カチオン性高分子電解質が、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との混合物全体を基準として2.5~80重量%、好ましくは5~75重量%、より好ましくは7.5~50重量%の量で使用される場合もさらに好ましい。
【0058】
好ましくは、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との本発明の組み合わせは、分散液の発泡のための発泡助剤または発泡体安定剤として水性ポリマー分散液中で使用される。ただし、これらは、さらに、乾燥助剤、レベリング添加剤、湿潤剤、およびレオロジー添加剤としても使用することができる。
【0059】
ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との本発明の組み合わせだけでなく、水性ポリマー分散液は、着色顔料、充填剤、平坦化剤、加水分解などの安定剤もしくはUV安定剤、酸化防止剤、吸収剤、架橋剤、レベリング添加剤、増粘剤、および追加の補助界面活性剤のような、追加的な添加物も含み得る。
【0060】
ポリオールエステルおよびカチオン性高分子電解質は、純粋な形態または適切な溶媒中でブレンドされた形態のいずれかで水性分散液に添加することができる。この場合、2つの成分は溶媒中で予めブレンドすることが可能であり、あるいは2つの異なる溶媒中で別々にブレンドすることが可能である。2つの成分のうちの一方のみを適切な溶媒中に予めブレンドし、他方の成分を純粋な形で水性分散液に添加することも可能である。これに関連して好ましい溶媒は、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、EO、PO、BO、および/またはSOに基づくポリアルキレングリコール、ならびにこれらの物質の混合物から選択され、水性の希釈液またはブレンドが極めて特に好ましい。ポリオールエステルおよび/またはカチオン性高分子電解質のブレンドまたは希釈液は、好ましくは10~80重量%、より好ましくは15~70重量%、さらに好ましくは20~60重量%の添加剤濃度を含む。
【0061】
ポリオールエステルおよび/またはカチオン性高分子電解質の水性の希釈液またはブレンドの場合、配合特性(粘度や均一性など)を改善するためにヒドロトロープ化合物をブレンドに添加すると有利な場合がある。ここでのヒドロトロープ化合物は、親水性部分と疎水性部分とからなる水溶性有機化合物であるが、分子量が小さすぎて界面活性剤特性を有さない。これらは、水性配合物中の有機物質、特に疎水性有機物質の溶解性または溶解特性を改善する。「ヒドロトロープ化合物」という用語は、当業者に公知である。本発明との関係において好ましいヒドロトロープ化合物は、トルエンスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、キシレンスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、クメンスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ならびにフェノールアルコキシレート、特に最大6個のアルコキシレート単位を有するフェノールエトキシレートである。配合特性を改善するために、ポリオールエステルおよび/またはカチオン性高分子電解質のブレンドは、同様に追加の補助界面活性剤も含み得る。これに関連して、本発明による好ましい補助界面活性剤は、例えば、脂肪酸アミド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、ベタイン、例えばアミドプロピルベタイン、アミンオキシド、四級アンモニウム界面活性剤、アンホ酢酸アンモニウム、および/または脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホスクシナメート、およびアルキルサルコシン塩である。さらに、補助界面活性剤は、シリコーンベースの界面活性剤、例えばトリシロキサン界面活性剤またはポリエーテルシロキサンを含み得る。脂肪酸のアンモニウムおよび/またはアルカリ金属塩の場合には、25重量%未満のステアリン酸塩を含む場合、特にステアリン酸塩を含まない場合が好ましい。
【0062】
上述したように、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との組み合わされた使用は、特に補助界面活性剤含有ポリマー分散液の場合、水性ポリマー分散液から製造される多孔質ポリマーコーティングの明確な改善をもたらすことから、本発明は、同様に、上で詳述した本発明によるポリオールエステルのうちの少なくとも1種と、本発明によるカチオン性高分子電解質のうちの少なくとも1種とを含有する水性ポリマー分散液を提供する。
【0063】
本発明は、上で詳述した、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との本発明の組み合わされた使用によって得られる、水性ポリマー分散液、好ましくは補助界面活性剤含有水性ポリマー分散液から製造される多孔質ポリマー層も提供する。
【0064】
好ましくは、本発明による多孔質ポリマーコーティングは、
a)少なくとも1種の水性ポリマー分散液と、本発明による少なくとも1種のポリオールエステルと、本発明による少なくとも1種のカチオン性高分子電解質と、任意選択的な追加の添加剤とを含有する混合物を準備する工程、
b)混合物を発泡させて、均一な微細なセルの発泡体を得る工程、
c)任意選択的に、少なくとも1種の増粘剤を添加して湿った状態の発泡体の粘度を調整する工程、
d)発泡したポリマー分散液のコーティングを適切な支持材に塗布する工程、
e)コーティングを乾燥/硬化する工程
を含む方法によって製造することができる。
【0065】
好ましい構成、特にこの方法で好ましく使用可能なポリオールエステル、カチオン性高分子電解質、およびポリマー分散液に関しては、前述した説明および上記好ましい実施形態、特に特許請求の範囲に詳述されているものが参照される。
【0066】
上述した本発明による方法の処理工程は、順序が時間的に固定されないことが明らかにされている。例えば、処理工程c)は、処理工程a)と同時に早い段階で実行することができる。
【0067】
処理工程b)において、大きい剪断力を加えることによって水性ポリマー分散液が発泡される場合、それは本発明の好ましい実施形態である。発泡は、本明細書では、当業者によく知られている剪断ユニット、例えばDispermat、溶解槽、Hansaミキサー、またはOakesミキサーによって行うことができる。
【0068】
さらに、処理工程c)の終わりに生成する湿った状態の発泡体が少なくとも5Pa・s、好ましくは少なくとも10Pa・s、より好ましくは少なくとも15Pa・s、さらに好ましくは少なくとも20Pa・sであるが、500Pa・s以下、好ましくは300Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下、さらに好ましくは100Pa・s以下である粘度を有する場合が好ましい。発泡体の粘度は、本明細書では、好ましくは、LV-4スピンドルを備えたブルックフィールド粘度計、LVTDモデルによって決定することができる。湿った状態の発泡体の粘度を決定するための対応する試験方法は、当業者に公知である。
【0069】
既に上で説明したように、湿った状態の発泡体の粘度を調整するために、追加の増粘剤を系に添加することができる。
【0070】
好ましくは、本発明との関係で有利に使用することができる増粘剤は、本明細書では、会合性増粘剤の分類から選択される。本明細書における会合性増粘剤は、ポリマー分散液中に存在する粒子の表面における会合によって増粘効果をもたらす物質である。この用語は当業者に公知である。好ましい会合性増粘剤は、ポリウレタン増粘剤、疎水化変性ポリアクリレート増粘剤、疎水化変性ポリエーテル増粘剤、および疎水化変性セルロースエーテルから選択される。ポリウレタン増粘剤が極めて特に好ましい。さらに、本発明との関係において、分散液の組成全体を基準とした増粘剤の濃度が0.01~10重量%の範囲、より好ましくは0.05~5重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲にある場合が好ましい。
【0071】
本発明との関係において、処理工程d)において、10~10000μm、好ましくは50~5000μm、より好ましくは75~3000μm、さらに好ましくは100~2500μmの層厚を有する発泡ポリマー分散液のコーティングが製造される場合にさらに好ましい。発泡ポリマー分散液のコーティングは、当業者によく知られている方法、例えばナイフコーティングによって製造することができる。本明細書では、直接的または間接的なコーティングプロセス(トランスファーコーティングと呼ばれる)のいずれかを使用することができる。
【0072】
本発明に関して、処理工程e)において、発泡およびコーティングされたポリマー分散液の乾燥が高温で行われる場合も好ましい。本発明に従って、本明細書では、最低50℃、好ましくは60℃、より好ましくは少なくとも70℃の乾燥温度が好ましい。さらに、乾燥欠陥の発生を回避するために、発泡およびコーティングされたポリマー分散液を異なる温度で複数の段階で乾燥させることが可能である。対応する乾燥技術は業界で広く普及しており、当業者に公知である。
【0073】
既に説明したように、処理工程c)~e)は、当業者に公知の広く実施されている方法によって実施することができる。これらの概要は、例えば“Coated and laminated Textiles” (Walter Fung, CR-Press, 2002)に記載されている。
【0074】
本発明との関係においては、特に、ポリオールエステルおよびカチオン性高分子電解質を含み、かつ平均セルサイズが350μm未満、好ましくは200μm未満、特に好ましくは150μm未満、最も好ましくは100μm未満である多孔質ポリマーコーティングが好ましい。平均セルサイズは、好ましくは顕微鏡による検査によって、好ましくは電子顕微鏡による検査によって決定することができる。この目的のために、多孔質ポリマーコーティングの断面が十分な倍率の顕微鏡で観察され、少なくとも25個のセルの大きさが確認される。この評価方法のために十分な統計を得ることを目的として、顕微鏡の倍率は、好ましくは観察視野に少なくとも10×10個のセルが存在するように選択する必要がある。その後、平均セルサイズは、視認されたセルまたはセルサイズの算術平均として計算される。顕微鏡によるセルサイズのこの決定は、当業者によく知られている。
【0075】
ポリオールエステルと、カチオン性高分子電解質と、任意選択的な追加の添加剤とを含む本発明の多孔質ポリマー層(またはポリマーコーティング)は、例えば、繊維産業、例えば合成皮革材料、建築および建設産業、エレクトロニクス産業、例えば発泡シール用、スポーツ産業、例えばスポーツマットの製造用、または自動車産業において使用することができる。
【0076】
実施例
物質:
SYNTEGRA(登録商標)YS 3000:DOWのMDI(メチルジフェニルジイソシアネート)ベースのポリウレタン分散液。これを製造するためのプロセスの結果として、製品は、アニオン性補助界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(CAS:25155-30-0)を1~3重量%含有する。
Lupasol(登録商標)4570:BASFの中程度の分子量のビニルアミン-ビニルホルムアミドコポリマー(モル比70:30)。水中で31重量%。
Lupasol(登録商標)FG 1904:BASFの分岐構造を有する多官能性カチオン性ポリエチレンイミン。
ORTEGOL(登録商標)PV 301:Evonik Nutrition & Care GmbHのポリウレタンベースの会合性増粘剤。
【0077】
粘度測定:
全ての粘度測定は、LV-4スピンドルを備えたブルックフィールド粘度計LVTDモデルを使用して、12rpmの一定の回転速度で行った。粘度測定のために、サンプルを100mlのジャーの中に移し、その中に測定スピンドルを浸した。常に一定の粘度計測定値の表示を待った。
【0078】
実施例1:ポリオールエステル界面活性剤のブレンド
103.3gのポリグリセロール(OHN=1124mg KOH/g、Mw=240g/mol)と155.0gの工業グレードのステアリン酸(パルミチン酸:ステアリン酸=50:50;155.0g)との反応によって製造した24gのポリグリセロール-3ステアレートを、6.3gのプロピレングリコールおよび69.7gの水とブレンドし、80℃で均一にした。
【0079】
実施例2:発泡実験
本発明による添加剤の組み合わせの有効性を試験するために、一連の発泡実験を行った。この目的のために、DOWのSYNTEGRA(登録商標)YS 3000ポリウレタン分散液を使用した。これは、アニオン性補助界面活性剤として1重量%~3重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(CAS:25155-30-0)を含む。使用した発泡体安定剤は、実施例1に記載の界面活性剤ブレンドであった。使用したカチオン性高分子電解質は、2つの物質Lupasol(登録商標)FG 1904およびLupasol(登録商標)4570であった。表1に、それぞれの実験の組成の概要が示されている。実験#1~#3では、ポリオールエステル界面活性剤のみ、またはカチオン性高分子電解質のみを添加剤として使用した。これらの実験は、個々の成分の効果を示すための比較実験として機能した。対照的に、実験#4および#5では、ポリオールエステル界面活性剤とカチオン性高分子電解質との本発明の組み合わせを使用して、これらの添加剤の組み合わせの改善された効果を実証した。
【0080】
全ての発泡実験は手作業で行った。この目的のために、ポリウレタン分散液、界面活性剤、およびカチオン性高分子電解質を最初に500mlのプラスチックカップに入れ、分散ディスク(直径=6cm)を備えた溶解槽を用いて1000rpmで3分間均質化した。次いで、混合物を発泡させるために、剪断速度を2000rpmに上げ、適切な渦が形成されるのに十分な程度まで溶解槽のディスクが常に分散液の中に浸されているようにした。この速度で、混合物を約350mlの体積まで発泡させた。続いて、Ortegol(登録商標)PV 301増粘剤をシリンジによって発泡体配合物に徐々に添加し、混合物に1000rpmでさらに15分間剪断力を加えた。この工程では、溶解槽のディスクを混合物に十分に深く浸し、系の中にそれ以上空気が導入されないようにしたが、全体の体積はまだ動いていた。
【0081】
【0082】
ポリオールエステル界面活性剤のみを含む発泡体の場合(実験#1)、発泡作業の終わりに非常に粗く不均一な発泡体が得られた。この発泡体を密閉容器に30分間保管すると、発泡体構造のさらなる粗大化が観察された。また、発泡体の粘度が非常に低く、そのため流動性が高い稠度を有することも注目された(発泡体の粘度も同様に表1に示されている)。カチオン性高分子電解質のみを含む発泡体の場合(実験#2および#3)、混合物は問題なく350mlの体積まで発泡できたものの、発泡後数分で泡の体積が約250mlまで減少することが観察された。ここでは混合物の粘度が著しく上昇したため、それらはほとんど撹拌できないままであった。サンプルを30分間保管すると、粘度のさらなる上昇が観察された。ポリオールエステル界面活性剤とカチオン性高分子電解質との本発明の添加剤の組み合わせを用いて行われた実験の場合(実験#4および#5)、発泡作業の終わりに微細なセルを有する均質な発泡体が得られ、これらは30分間の保管の間にわずかしか粗大化しなかった。
【0083】
その後、Mathis AGのLabcoater LTE-Sラボ用延反テーブル/乾燥機を用いて、発泡体を布地支持材(層厚さ約800μm)上にナイフコーティングし、次いで60℃で5分間、そして120℃でさらに5分間乾燥した。ここで注目すべきは、ポリオールエステル界面活性剤のみを含む発泡体(実験#1)が乾燥作業中にさらに粗くなり、そのため生成された布地コーティングが非常に粗いセルおよび不均一な発泡体構造を示したことである。この影響は、対応するサンプルがあまり魅力的な触覚特性を有さず、見た目も非常に悪いことであった。カチオン性高分子電解質のみを含むコーティングの場合(実験#2および#3)、発泡直後の粘度の明らかな上昇の結果として、発泡体を布地支持材上にナイフコーティングすることは困難を伴わずにはできなかった。これにより、発泡体コーティングに欠陥部位および不規則性が生じる。このことと、軽く発泡したコンパクトな塊だけがナイフコーティングされたという事実は、対応するサンプルが非常に硬く柔軟性に欠けるように感じられ、あまり魅力的でない触覚特性を有するという追加の影響を有していた。対照的に、ポリオールエステルとカチオン性高分子電解質との本発明の添加剤の組み合わせを含む発泡体(実験#4および#5)は欠陥のない形でナイフコーティングすることが可能であった。乾燥後、発泡体構造の顕著な粗大化は観察されず、その結果均質な外観だけでなく優れた触覚特性も特徴とする欠陥のない微細セルの発泡体コーティングが得られた。したがって、これらの実験は、本発明による添加剤の組み合わせの改善された効果を明確に示している。