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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】異常判定装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
G05B23/02 302V
G05B23/02 302S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022508299
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2021009903
(87)【国際公開番号】W WO2021187334
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020046633
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】羽田 啓太
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185391(JP,A)
【文献】特開2017-218975(JP,A)
【文献】特開2013-041448(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207718(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03629118(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の異常を判定する異常判定装置であって、
前記機械の状態に係るデータであって前記機械が正常に動作している際の正常データと、該正常データが取得されたときの前記機械の環境温度とを関連付けて記憶する正常データ記憶部と、
前記機械の状態に係るデータであって前記機械の診断を行う際の診断データと、該診断データが取得された時の前記機械の環境温度とを関連付けて記憶する診断データ記憶部と、
前記正常データ記憶部に記憶されている前記正常データについて前記環境温度毎に所定の特徴量を求め、求められた前記環境温度毎の前記特徴量から求めた統計量を前記環境温度毎の補正値として導出する補正値導出部と、
前記正常データ記憶部に前記正常データが含まれる少なくとも2つの環境温度についての前記補正値を用い、前記診断データが取得されたときの環境温度についての前記補正値を補間により求める補正値補間部と、
前記正常データの特徴量を、前記環境温度毎の前記補正値を用いて補正する正常データ補正部と、
前記補正された前記正常データの特徴量を正常時の学習データとして学習し学習モデルを構築する学習部と、
前記診断データの特徴量を、前記補正値補間部によって求められた前記補正値を用いて補正する診断データ補正部と、
当該補正された前記診断データの特徴量と前記学習モデルとの乖離度に基づいて前記診断データが正常であるか否を判定する機械異常判定部と、
前記機械から前記機械の状態に係るデータを取得する状態データ取得部と、
前記機械の前記環境温度を取得する環境温度取得部と、を備え、
前記補正値補間部は、前記環境温度と前記補正値との関係を表す関係式を求め、該関係式を用いて前記補間を実行し、
前記正常データ記憶部は、前記状態データ取得部により取得された前記機械の状態に係るデータを該データが取得されたときの前記環境温度と関連付けて記憶し、
前記補正値補間部は、前記機械の本稼働前に予め前記正常データ記憶部に記憶された前記正常データでは前記関係式の導出ができない場合、前記本稼働後に前記状態データ取得部により取得された前記データを追加データとして用いて前記補正値導出部により導出された補正値を用いて前記関係式の導出を行う、
異常判定装置。
【請求項2】
前記学習部は、前記機械の本稼働前に予め前記正常データ記憶部に記憶された前記正常データに基づいて得られた前記学習モデルを、前記機械の本稼働後に前記状態データ取得部により取得され前記正常データ補正部により補正された前記正常データを追加データとして用いて更新する、請求項に記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記機械は、電動機を有する機械であり、
前記機械の状態に係る前記データは、前記電動機のトルクコマンドの波形である、請求項1又は2に記載の異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の産業機械の異常を判定する装置が知られている。例えば、特許文献1は、産業機械が正常に動作している際に取得したデータと、診断対象となる産業機械から取得されたデータとの間の乖離度を機械学習手法により求め、得られた乖離度に基づいて異常を判定する装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6451662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3A図3Dは、機械から取得されるトルクコマンド波形の例を示す。図3Aから図3Dは、機械のある軸を駆動する電動機に対して同一のトルク指令が加わる場合のトルク波形である。具体的には、図3Aは環境温度が低温で機械が正常である場合のトルクコマンド波形201を示し、図3Bは環境温度が低温で機械が異常である場合のトルクコマンド波形202を示し、図3Cは環境温度が高温で機械が正常である場合のトルクコマンド波形203を示し、図3Dは環境温度が高温で機械が異常である場合のトルクコマンド波形204を示す。
【0005】
図3Aから図3Dを参照すると、低温・正常時のトルクコマンド波形201と、低温・異常時のトルクコマンド波形202とは、波形の特徴量(最大値、最小値、Peak to Peak(P2P)等)により識別し得ることを理解できる。また、高温・正常時のトルクコマンド波形203と、高温・異常時のトルクコマンド波形204とも、波形の特徴量により識別し得ることを理解できる。すなわち、正常時と異常時の環境温度が同一の場合は、トルクコマンド波形の乖離度を計算することで機械の異常を判定することができる。しかしながら、低温・異常時のトルクコマンド波形202と、高温・正常時のトルクコマンド波形203は似ているため、トルクコマンド波形に十分な乖離度がなく、機械の異常を判定できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、機械の異常を判定する異常判定装置であって、前記機械の状態に係るデータであって前記機械が正常に動作している際の正常データと、該正常データが取得されたときの前記機械の環境温度とを関連付けて記憶する正常データ記憶部と、前記機械の状態に係るデータであって前記機械の診断を行う際の診断データと、該診断データが取得された時の前記機械の環境温度とを関連付けて記憶する診断データ記憶部と、前記正常データ記憶部に記憶されている前記正常データについて前記環境温度毎に所定の特徴量を求め、求められた前記環境温度毎の前記特徴量から求めた統計量を前記環境温度毎の補正値として導出する補正値導出部と、前記正常データ記憶部に前記正常データが含まれる少なくとも2つの環境温度についての前記補正値を用い、前記診断データが取得されたときの環境温度についての前記補正値を補間により求める補正値補間部と、前記正常データの特徴量を、前記環境温度毎の前記補正値を用いて補正する正常データ補正部と、前記補正された前記正常データの特徴量を正常時の学習データとして学習し学習モデルを構築する学習部と、前記診断データの特徴量を、前記補正値補間部によって求められた前記補正値を用いて補正する診断データ補正部と、当該補正された前記診断データの特徴量と前記学習モデルとの乖離度に基づいて前記診断データが正常であるか否を判定する機械異常判定部と、前記機械から前記機械の状態に係るデータを取得する状態データ取得部と、前記機械の前記環境温度を取得する環境温度取得部と、を備え、前記補正値補間部は、前記環境温度と前記補正値との関係を表す関係式を求め、該関係式を用いて前記補間を実行し、前記正常データ記憶部は、前記状態データ取得部により取得された前記機械の状態に係るデータを該データが取得されたときの前記環境温度と関連付けて記憶し、前記補正値補間部は、前記機械の本稼働前に予め前記正常データ記憶部に記憶された前記正常データでは前記関係式の導出ができない場合、前記本稼働後に前記状態データ取得部により取得された前記データを追加データとして用いて前記補正値導出部により導出された補正値を用いて前記関係式の導出を行う、異常判定装置である。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本実施形態によれば、環境温度に応じて正常データから補正値を求めて機械の状態に係るデータの補正を行うことで、正確な診断を行うことが可能となる。
【0008】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る異常判定装置のハードウェア構成を表すブロック図である。
図2】異常判定装置の機能ブロック図である。
図3A】機械の低温・正常時における状態データとしてのトルクコマンド波形の例を示す図である。
図3B】機械の低温・異常時における状態データとしてのトルクコマンド波形の例を示す図である。
図3C】機械の高温・正常時における状態データとしてのトルクコマンド波形の例を示す図である。
図3D】機械の高温・異常時における状態データとしてのトルクコマンド波形の例を示す図である。
図4】補正値の補間の第1の例を示す図である。
図5】補正値の補間の第2の例を示す図である。
図6】第1の実施形態の診断処理を表すフローチャートである。
図7】第2の実施形態の診断処理を表すフローチャートである。
図8】第3の実施形態の診断処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は一実施形態に係る異常判定装置10のハードウェア構成を表すブロック図である。図1に示すように、異常判定装置10は、CPU1、ROM2、RAM3、不揮発性メモリ(フラッシュメモリ、HDD等)4がバス9を介して相互に接続される構成を有する。また、バス9には、インタフェース11を介して表示装置(液晶ディスプレイ等)21が接続され、インタフェース12を介して入力装置(キーボード、マウス等)22が接続され、インタフェース14を介して機械学習装置24が接続されている。異常判定装置10、表示装置21及び入力装置22は、一般的なパーソナルコンピュータにより実現することができる。また、異常判定装置10には、外部インタフェース13を介して機械50が接続される。以下で詳細に説明するように、異常判定装置10は、機械50の状態に係るデータ(以下では、状態データとも記載する)を取得して機械50の異常判定を行う。
【0012】
図2は、異常判定装置10の機能ブロック図である。異常判定装置10は、機械50の環境温度を機械50から直接、あるいは入力装置22を介して取得する環境温度取得部101と、機械50の状態に係るデータを取得する状態データ取得部102とを備える。また、異常判定装置10は、機械50の正常動作時の状態データと、該状態データが取得されたときの機械50の環境温度とを関連付けて記憶する正常データ記憶部113と、正常データ記憶部113に記憶されている状態データについて環境温度毎に所定の特徴量を求め、求められた環境温度毎の特徴量から算出した統計量を環境温度毎の補正値として導出する補正値導出部105と、補正値導出部105によって導出された補正値を用いて、状態データの特徴量を環境温度毎にそれぞれ補正する正常データ補正部103とを備える。更に、異常判定装置10は、機械50の診断を行う際の状態データと、該状態データが取得された時の機械50の環境温度とを関連付けて記憶する診断データ記憶部114と、正常データ記憶部113に状態データが含まれる少なくとも2つの環境温度についての補正値を用い、機械50の診断データが取得されたときの環境温度についての補正値を補間により求める補正値補間部104と、補正値補間部104によって導出された補正値を用いて、診断を行う際の状態データの特徴量を補正する診断データ補正部106とを備える。
【0013】
また、異常判定装置10は、機械学習装置24を備える。機械学習装置24は、正常データ補正部103によって補正された状態データの特徴量を正常時の学習データとして学習し学習モデルを構築する学習部242と、学習部242によって構築された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部241と、診断データ補正部106によって補正された診断データの特徴量と学習モデルとの乖離度に基づいて診断データが正常であるか否を判定する機械異常判定部243と、を備える。
【0014】
機械50は、工作機械、産業用ロボットとその他の各種機械を含む。機械50の状態データとしては、機械50の物理状態を表す各種データが含まれる。ここでは、例示として、機械50は工作機械であり、状態データは工作機械の軸を駆動する電動機に対するトルクコマンド(トルク制御)波形である場合について説明する。
【0015】
異常判定装置10において正常データ補正部103は、状態データの温度毎の補正値を用いて一定の規則にしたがって状態データの補正を行う。一定の規則は、例えば補正対象となる状態データの特徴量を、それぞれの環境温度についての補正値で割り算する演算である。これにより、補正対象となる状態データが正常時の状態データであった場合は補正後の特徴量は環境温度によらず1近辺となり、診断における比較が行い易くなる。
【0016】
正常データ補正部103における補正で用いる補正値は、補正値導出部105によって求められた、環境温度毎の正常時の状態データの波形群から求めた特徴量に対する所定の統計量である。補正値導出部105は、正常データ記憶部113に環境温度データと関連付けて記憶されている状態データ群の中から、特定の環境温度の状態データを抽出する。抽出された状態データ波形の特徴量に対して算出した所定の統計量を、当該環境温度における補正値とする。ここでは、波形の特徴量はP2P(Peak to Peak)を用いる。なお、波形の特徴量として最大値或いは最小値が用いられても良い。また、所定の統計量は、本実施形態では平均値を用いることとするが、中央値、最頻値等を用いても良いし、2つ以上の特徴量を用いても良い。同様の操作を行うことで、正常データ記憶部113に対応する環境温度における状態データが存在すれば、その環境温度における補正値を導出することが可能である。
【0017】
上述の構成により機械50の正常時の状態データを環境温度ごとに得ることは可能であるが、一般に機械の環境温度はあまり変動するものではなく、あらゆる環境温度について正常時の状態データを事前に取得して正常データ記憶部113に蓄積しておくことは困難である。したがって、事前に状態データが得られなかった環境温度については、補正値が得られないという問題が生じ得る。この点、本実施形態に係る異常判定装置10は、状態データが得られている環境温度についての補正値に基づいて、補正値が得られていない環境温度については補間演算により補正値を得る構成とした。異常判定装置10において、補正値補間部104がこの機能を担う。
【0018】
補正値補間部104による補正値の補間動作について説明する。例示として、図4に示すように、2つの環境温度(ここでは、20°Cと30°Cとする)についての補正値301、302が補正値導出部105によって事前に得られているとする。補正値補間部104は、既知の補正値301、302を用いて直線回帰により、環境温度と補正値との関係を表す直線311(関係式)を求める。補正値補間部104は、特定の環境温度(ここでは、25°Cとする)の補正値C1を、直線311を用いて算出する。
【0019】
また、他の補間計算の例として、図5に示すように3つの環境温度について既知の補正値321、322、323がある状況を想定する。この場合、補正値補間部104は、3つの補正値321、322、323を用いて、曲線近似により環境温度と補正値との関係を表す曲線331(関係式)を求めるようにしても良い。補正値補間部104は、特定の環境温度(ここでは、25°Cとする)の補正値C2を、曲線331を用いて算出する。
【0020】
診断データ補正部106は、補正値補間部104を用いて、診断データ記憶部114に記憶されている診断データに対応する環境温度における補正値を求める。そして、正常データ補正部103と同様の手法を用いて、診断データの補正を行う。
【0021】
次に、機械学習装置24による学習について説明する。機械学習装置24は、学習モデル記憶部241と、学習部242と、機械異常判定部243とを備える。学習部242は、正常データ補正部103で求められた補正された正常状態データ波形の特徴量を用いて機械学習を行い、学習モデルを構築する。構築された学習モデルは学習モデル記憶部241に記憶され、機械異常判定部243による異常判定に用いられる。
【0022】
本実施形態では、機械学習装置24は、MT法(マハラノビス・タグチ法)による異常判定を行う。学習部242は、正常データ補正部103により補正された正常データの特徴量を用いて、機械異常判定部243が正常データからの乖離度に基づき異常判定を行うための下記数理モデルを提供する。
【0023】
【数1】
dは、診断データの正常データからの乖離度を表すマハラノビス距離である。xは、診断データ補正部106により補正された診断データ波形の特徴量を並べたベクトルである。μは、正常データ補正部103により補正された正常状態データ波形の特徴量の平均値を並べたベクトルであり、Σは、正常データ補正部103により補正された正常状態データ波形の特徴量の分散共分散行列である。
【0024】
学習部242は、上記数式(1)で表される数理モデル(学習モデル)を、機械異常判定部243に提供する。機械異常判定部243は、診断データ補正部106により補正された診断データ波形の特徴量xについて上記数式(1)により正常データからの乖離度をマハラノビス距離dとして求める。そして、機械異常判定部243は、数式(1)により求められたマハラノビス距離dが予め設定した閾値よりも大きい場合、診断データが異常であると判定する。ここで用いる閾値は、例えば、実験値、経験値に基づいて設定しても良い。閾値は、異常判定装置10に対してユーザが設定できるように構成されていても良い。
【0025】
以降、異常判定装置10の実施形態例を説明する。ここでは、学習部242により学習モデルがすでに構築されているものとする。図6は、第1の実施形態の診断処理を表すフローチャートである。図6(及び図7図8)の診断処理は、異常判定装置10のCPU1による制御の下で実行される。第1の実施形態では、補正値の補間に必要な既知の補正値が既に補正値導出部105によって導出されているものとする。はじめに、状態データ取得部102を介して診断用の状態データ(診断データ)が取得される(ステップS101)。次に、以降の処理のために、既に補正値導出部105によって算出されている補正値が取り込まれる(ステップS102)。
【0026】
次に、補正値補間部104は、上述した補間演算により、診断データが取得されたときの環境温度についての補正値を算出する(ステップS103)。また、このとき、診断データ補正部106は、補正値補間部104の補間演算により得られた診断データについての補正値を用いて診断データの補正を行う(ステップS103)。次に、機械異常判定部243は、学習部242により既に構築されている学習モデル(すなわち、上記数式(1))を呼び出す(ステップS104)。次に、機械異常判定部243は、診断データの学習モデルからの乖離度を算出し、この乖離度を所定の閾値と比較することで、診断データの正常/異常の判定を行う(ステップS105)。
【0027】
図7は、第2の実施形態の診断処理を表すフローチャートである。はじめに、異常判定装置10(補正値補間部104)は、追加データを取得する必要があるかを判定する。ここで追加データとは、機械50の本稼働開始後に取得可能な正常時の状態データを表す。例えば、現在既に取得済みの状態データで補間演算が不可能な状態であれば、追加データの取得は必要であると判定する(ステップS201)。追加データの取得が不要な場合には(S201:NO)、上述のステップS101からS104の診断処理が実行される。
【0028】
追加データの取得が必要な場合(S201:YES)、異常判定装置10は、機械50から学習用の追加の状態データ(追加データ)を取得する(ステップS202)。補正値導出部105によって、追加データに対応する補正値が導出される(ステップS203)。補正値の更新(関係式の更新)に必要な既知の補正値が取り込まれる(ステップS204)。そして、取り込まれた既知の補正値に、追加データに対応する補正値を追加する更新がなされる。このように更新された補正値のセットが準備される(ステップS205)。
【0029】
処理はステップS201に戻り、更なる追加データの取得が不要な場合には(S201:NO)、上述したステップS101からS105による診断処理が実行される。ステップS101からS105での診断処理において、ステップS205において準備された補正値が適用される(ステップS205、S102)。
【0030】
図8は、第3の実施形態の診断処理を表すフローチャートである。はじめに、異常判定装置10(補正値補間部104)は、追加データを取得する必要があるかを判定する。例えば、現在既に取得済みの状態データで補間演算が不可能な状態であれば、追加データの取得は必要であると判定する(ステップS301)。追加データを取得する必要がある場合(S301:YES)、異常判定装置10は、機械50から学習用の追加の状態データ(追加データ)を取得する(ステップS302)。補正値導出部105によって、追加データに対応する補正値が導出される(ステップS303)。補正値の更新(関係式の更新)に必要な既知の補正値が取り込まれる(ステップS304)。
【0031】
そして、取り込まれた既知の補正値に、追加データに対応する補正値を追加する補正値の更新がなされる。このように更新された補正値のセットが準備される(ステップS305)。学習部242は、学習済みの学習モデルを呼び出す(ステップS306)。学習部242は、既に取得済の状態データに追加データを加えた上で再学習を実行し、学習モデルの再構築(学習モデルの更新)を行う(ステップS307)。処理はステップS301に戻り、追加データの取得が必要であるかが再度判定される(ステップS301)。
【0032】
追加データの取得が不要な場合には(S301:NO)、上述したステップS101からS105による診断処理が実行される。ステップS101からS105での診断処理において、ステップS305及びS307で更新された新補正値及び新学習モデルが適用される(ステップS305、S307、S102、S104)。
【0033】
上記図7及び図8で示した診断処理では、状態データ取得部による状態データ(追加データ)の取得を継続的に行い、追加データの取得が不要となったときに補正値補間部104が関係式を更新して診断に利用する処理に相当する。このような処理の変形例として、補正値補間部104は、補正値補間が可能になったとき、追加データの数が規定数に達したとき、或いは環境温度の変化の度合いが規定値を上回ったとき(環境温度が急激に変化したとき)に関係式の更新を行うようにしても良い。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、環境温度に応じて正常データから補正値を求めて状態データの補正を行うことで、正確な診断を行うことが可能となる。また、既知の補正値から未知の環境温度の補正値を補間して求めることで、事前に正常データが得られなかった環境温度についても補正が可能となる。
【0035】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0036】
上述の実施形態では、機械の状態に係るデータとしてトルクコマンド波形を用いる例を説明したが、これは一例であり、機械の状態を表すデータとしては、各種センサのデータ、電動機の入出力に係わる各種データ(速度、加速度等)等、各種のデータを用いることができる。
【0037】
また、上述の実施形態では、機械学習としてMT法を用いる例を示したが、診断データの正常データからの乖離度を評価するための手法としてMT法以外の手法が用いられても良い。例えば、機械の状態に係るデータとして正常時のデータと異常時のデータの双方が十分に得られる場合には、機械学習装置において教師有り学習を適用して学習モデルを構築し、この学習モデルを用いて異常判定を行うようにしても良い。
【0038】
上述の実施形態では、異常判定装置10が、状態データを機械50から取得する構成であったが、このような構成に替えて、異常判定装置は、キーボード等の入力装置、或いは、外部のコンピュータから状態データを取得するように構成されていてもよい。
【0039】
図2に示した異常判定装置10の機能ブロックは、異常判定装置10のCPU1が、記憶装置に格納された各種ソフトウェアを実行することで実現されても良く、或いは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを主体とした構成により実現されても良い。
【0040】
上述した実施形態における診断処理(図6図8)を実行するプログラムは、コンピュータに読み取り可能な各種記録媒体(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気記録媒体、CD-ROM、DVD-ROM等の光ディスク)に記録することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
4 不揮発性メモリ
10 異常判定装置
21 表示装置
22 入力装置
24 機械学習装置
50 機械
101 環境温度取得部
102 状態データ取得部
103 正常データ補正部
104 補正値補間部
105 補正値導出部
106 診断データ補正部
113 正常データ記憶部
114 診断データ記憶部
241 学習モデル記憶部
242 学習部
243 機械異常判定部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8