(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】生産システムおよびその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2022513033
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014913
(87)【国際公開番号】W WO2021199330
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛澤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】青木 優和
(72)【発明者】
【氏名】伏見 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-238055(JP,A)
【文献】特開2012-25532(JP,A)
【文献】特開平5-44347(JP,A)
【文献】特開2002-19927(JP,A)
【文献】特開2019-155529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御機器と複数の前記制御機器にそれぞれ接続された複数の被制御機器を有する生産システムであって、
前記生産システムの搬送先である第2の領域の搬入口の幅である第2の搬入口幅、および、前記生産システムを、第1の領域から前記第2の領域に搬送する運搬装置の許容幅よりも狭くなるように、複数の前記制御機器および複数の前記被制御機器を搭載する複数のベースユニットの幅であるベースユニット幅を特定するベースユニット幅特定部と、
前記第1の領域で、特定された前記ベースユニット幅を有する複数の前記ベースユニットに複数の前記制御機器と、複数の前記被制御機器とが搭載された状態で、前記被制御機器の稼働テストを行う生産制御部と、
任意の一の前記制御機器と、対応する一の前記被制御機器とが同一のモジュールに含まれ、かつ、各々の前記モジュールの寸法および重量が、前記運搬装置の許容寸法および許容積載重量を超えないように、前記モジュールを単位として、前記生産システムの解体条件を決定する解体条件決定部と、
複数の前記モジュールを前記第1の領域から前記第2の領域に搬送する順序を決定する搬送スケジュール設定部と、を備える
ことを特徴とする生産システム。
【請求項2】
前記ベースユニット幅特定部は、さらに、前記ベースユニット幅を、前記生産システムの搬送元である前記第1の領域における搬入口の幅である第1の搬入口幅よりも狭くなるように特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記解体条件決定部は、前記モジュールの重量または重心が所定条件を満たさない場合には、前記ベースユニット幅を特定する条件を追加した状態で、再度、前記ベースユニット幅特定部に前記ベースユニット幅を特定させ、その後に前記解体条件を再度決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項4】
複数の前記ベースユニットは、フォークリフトのフォークが挿入される被挿入部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項5】
複数の前記ベースユニットは、それぞれ、
設置される床面に対する各々の前記ベースユニットの高さを調整可能な支持部材を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の生産システム。
【請求項6】
複数の前記モジュールは、第1のモジュールと、第2のモジュールとを有し、
前記第1のモジュールに備わる第1のベースユニットは、前記第2のモジュールに備わる第2のベースユニットに対向する第1の対向面に少なくとも一つの第1の凹部を有し、
前記第2のベースユニットは、前記第1のベースユニットに対向する第2の対向面に少なくとも一つの第1の凸部を有し、
前記第1の凹部と、前記第1の凸部とは対応する関係を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の生産システム。
【請求項7】
前記第1の凸部と前記第1の凹部とは、前記第1の凸部が前記第1の凹部に嵌合する関係を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の生産システム。
【請求項8】
複数の前記モジュールは、さらに、第3のモジュールを有し、
前記第2のベースユニットは、前記第3のモジュールに備わる第3のベースユニットの第4の対向面に対向する第3の対向面に少なくとも一つの第2の凹部を有し、
前記第3のベースユニットは、前記第4の対向面に少なくとも一つの第2の凸部を有し、
前記第2の凹部と前記第2の凸部とは対応する関係を有し、
水平面に沿う前記第1の対向面と平行な方向に対して、前記第1の凸部と前記第2の凸部とは異なる位置関係を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の生産システム。
【請求項9】
複数の前記モジュールは、さらに、前記第2のモジュールと同一の機能を有する第4のモジュールを有し、
前記第4のモジュールは、前記第2のモジュールにおける前記第1の凸部と略同一位置に凸部を有し、前記第2の凹部と略同一位置に凹部を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の生産システム。
【請求項10】
前記第1のベースユニットの前記第1の対向面の対辺側の面である非対向面は、他の前記モジュールの何れのベースユニットにも対向せず、凸部を有しない
ことを特徴とする請求項6に記載の生産システム。
【請求項11】
複数の前記制御機器は、通信ケーブルを介して相互に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項12】
複数の前記制御機器のうち少なくとも一台は、他の複数の制御機器に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項13】
複数の前記モジュールは、対応する前記制御機器に電源を供給する開閉器または分電盤を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項14】
複数の前記モジュールは、相互に隣接する第1のモジュールと、第2のモジュールとを有し、
前記第2のモジュールにおける前記制御機器は、前記第1のモジュールにおける電源が供給されていない状態を検出すると、前記第1のモジュールに関連する作業を停止する機能を備える
ことを特徴とする請求項13に記載の生産システム。
【請求項15】
複数の前記モジュールは、隣接する他のモジュールが正しいモジュールであるか否かを判定する隣接モジュール判定部を備え、
前記隣接モジュール判定部は、前記運搬装置によって搬送されている場合に隣接する他のモジュールが正しいモジュールであるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項16】
複数の制御機器と複数の前記制御機器にそれぞれ接続された複数の被制御機器を有する生産システムの組み立て方法であって、
前記生産システムの搬送先である第2の領域の搬入口の幅である第2の搬入口幅、および、前記生産システムを第1の領域から前記第2の領域に搬送する運搬装置の許容幅よりも狭くなるように、複数の前記制御機器および複数の前記被制御機器を搭載する複数のベースユニットの幅であるベースユニット幅を特定するベースユニット幅特定ステップと、
前記第1の領域で、特定された前記ベースユニット幅を有する複数の前記ベースユニットに複数の前記制御機器と、複数の前記被制御機器とが搭載された状態で、前記被制御機器の稼働テストを行う稼働テストステップと、
任意の一の前記制御機器と、対応する一の前記被制御機器とが同一のモジュールに含まれ、かつ、各々の前記モジュールの寸法および重量が、前記運搬装置の許容寸法および許容積載重量を超えないように、前記モジュールを単位として、前記生産システムの解体条件を決定する解体条件決定ステップと、
複数の前記モジュールを前記第1の領域から前記第2の領域に搬送する順序を決定する搬送スケジュール設定ステップと、を備える
ことを特徴とする生産システムの組み立て方法。
【請求項17】
前記ベースユニット幅特定ステップは、さらに、前記ベースユニット幅を前記生産システムの搬送元である前記第1の領域における搬入口の幅である第1の搬入口幅よりも狭くなるように特定する
ことを特徴とする請求項16に記載の生産システムの組み立て方法。
【請求項18】
前記解体条件決定ステップは、前記モジュールの重量または重心が所定条件を満たさない場合には、前記ベースユニット幅を特定する条件を追加した状態で、再度、前記ベースユニット幅特定ステップにおいて前記ベースユニット幅を特定させ、その後に前記解体条件を再度決定する
ことを特徴とする請求項16に記載の生産システムの組み立て方法。
【請求項19】
複数の前記モジュールは、フォークリフトのフォークが挿入される被挿入部を備えており、
前記第1または第2の領域において前記モジュールの前記被挿入部に向かって前記フォークを差し込むことで、前記モジュールを支持する前記フォークリフトが、前記モジュールを搬送する搬送ステップを有する
ことを特徴とする請求項16に記載の生産システムの組み立て方法。
【請求項20】
前記第1の領域で実行された前記稼働テストの際における複数の前記制御機器と、複数の前記被制御機器との接続関係は、前記第2の領域においても維持される
ことを特徴とする請求項16に記載の生産システムの組み立て方法。
【請求項21】
複数の前記モジュールは
、第1のモジュールと、第2のモジュールとを有し、
前記第1のモジュールに備わる第1のベースユニットは、前記第2のモジュールに備わる第2のベースユニットに対向する第1の対向面に少なくとも一つの第1の凹部を有し、
前記第2のベースユニットは、前記第1のベースユニットに対向する第2の対向面に少なくとも一つの第1の凸部を有し、
前記第1の凸部と前記第1の凹部とは、前記第1の凸部が前記第1の凹部に嵌合する関係を有し、
さらに、前記第1の凸部は、押圧されると、前記第2の対向面と同一面または前記第2の対向面よりも凹む位置まで押し込まれる構造を有し、
前記第1のモジュールが床面に設置された後、前記フォークリフトによって前記第1のモジュールに隣接する位置へ前記第2のモジュールを搬送する際に、前記第1の対向面によって前記第1の凸部を押し込みつつ、前記第2のモジュールの位置調節を行い、支持部材が前記第2のモジュールを支持できる状態で前記第1の凸部が前記第1の対向面に向かって突き出た場合に、前記フォークを前記被挿入部から引き抜くことにより前記第2のモジュールを設置するステップを有する
ことを特徴とする請求項19に記載の生産システムの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産システムおよびその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1には、「複数のロボットによって部品を組立てるロボットセルにおいて、前記複数のロボットをそれぞれ搭載した複数の架台と、各架台の一側面に開口する開口部と、前記複数の架台を各架台の前記開口部が同じ方向を向くように互いに隣接させて、各架台の前記一側面において、互いに隣接する2つの架台を結合する接続部材と、前記互いに隣接する2つの架台に前記接続部材の両端部をそれぞれ面接触させて締結する手段と、を有することを特徴とするロボットセル。」と記載されている(請求項1参照)。
また、下記特許文献2には、「互いに離間して並置されかつ互いに相対する方向に各々の可動部が駆動される一対のコンベア装置と、前記一対のコンベア装置に設けられかつ前記一対のコンベア装置の各々の可動部を駆動する駆動モータと、前記コンベア装置の前記可動部上に載置される搬送パレットと、前記搬送パレット上に載置された物品の加工若しくは組立を行なう工作装置又は前記物品の物理的特性の測定を行なう測定装置と、を単一の筐体内に収容したことを特徴とするユニット型物品生産装置。」と記載されている(請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-224742号公報
【文献】特開平7-1298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の生産ライン等、生産システムの高度化に伴い、生産システムの使用者等である需要者(生産システムを用いて製品の生産を行っている者)から、生産システムの製造者等である提供者(生産システムの製造委託先)に対して、生産システムを一括して、製造委託するケースが増加している。ここで、需要者工場で、旧生産システムが稼働している場合には、旧生産システムを停止し旧生産システムを取り除き、この需要者工場で新生産システムを設置し立上げを行う場合が多い。このため、需要者は、新生産システムの設置と立上げ時間を可能な限り短くしたいという要請がある。すなわち、需要者の新生産システムへの要請は、新生産システムの稼働開始までの時間を短くしたいという要請である。上述した特許文献1,2には、この要請に対応するために、提供者の工場で実現できる工夫が特に記載されておらず、新生産システムの稼働を開始するまでの時間の短縮が難しいという問題があった。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、稼働を開始するまでの時間を短くできる生産システムおよびその組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の生産システムは、複数の制御機器と複数の前記制御機器にそれぞれ接続された複数の被制御機器を有する生産システムであって、前記生産システムの搬送先である第2の領域の搬入口の幅である第2の搬入口幅、および、前記生産システムを、第1の領域から前記第2の領域に搬送する運搬装置の許容幅よりも狭くなるように、複数の前記制御機器および複数の前記被制御機器を搭載する複数のベースユニットの幅であるベースユニット幅を特定するベースユニット幅特定部と、前記第1の領域で、特定された前記ベースユニット幅を有する複数の前記ベースユニットに複数の前記制御機器と、複数の前記被制御機器とが搭載された状態で、前記被制御機器の稼働テストを行う生産制御部と、任意の一の前記制御機器と、対応する一の前記被制御機器とが同一のモジュールに含まれ、かつ、各々の前記モジュールの寸法および重量が、前記運搬装置の許容寸法および許容積載重量を超えないように、前記モジュールを単位として、前記生産システムの解体条件を決定する解体条件決定部と、複数の前記モジュールを前記第1の領域から前記第2の領域に搬送する順序を決定する搬送スケジュール設定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生産システムが稼働を開始するまでの時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】好適な第1実施形態による生産システムの模式的な斜視図である。
【
図5】設置工事における各ベースユニットの関係を示す図である。
【
図6】ベースユニットにおける係合部の位置関係を示す図である。
【
図7】変形例におけるモジュールの表示例を示す図である。
【
図8】
図7におけるモジュール構成を変更した表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の前提]
近年、生産システムの高度化に伴いロボットSI(System Integrate)やラインビルディングと呼ばれる事業が拡大している。従来の汎用型のロボットセルやモジュールの組み合わせでは、高度な製品が生産できない場合があり、生産システムを丸ごと委託先である提供者に製造を委託する事業が始まっている。提供者は、提供者側の工場(提供者工場)において、生産システムを組み立てる際に、委託元である需要者側の工場(需要者工場)の敷地内のレイアウトを考慮して生産システムを組み立てる。そして、提供者は、組み立てられた生産システムが設計した通りの動作を行うかを確認する稼働テストを行う。そして、提供者は、稼働テストが終了した生産システムを所定の部品に解体し、解体された所定の部品を需要者工場に搬送する。
【0009】
そして、提供者は、需要者工場において、搬送された所定の部品を組み合わせることで生産システムを組み立てる。組み立てられた生産システムは、需要者工場で稼働テストを行う。そして、需要者は、稼働テストに合格した生産システムの稼働を開始する。近年、製品の高度化に伴う生産システムの高度化によって、生産システムは数十から数百メートルに及ぶ場合があり、汎用ロボットセルでは実現できない規模の生産システムが望まれるようになってきている。
一方、需要者工場においては、既に旧生産システムが稼働していることが多いため、提供者側のロボットSIer(ロボットシステムインテグレータ)は需要者工場で新しい生産システムの組み立てを行うことができない場合がある。また、需要者工場で新しい生産システムの組み立てに割り当てられる時間は、需要者は製品を生産できないため、需要者工場では可能な限り速やかに新しい生産システムを組み立て、立上げることが望まれている。
【0010】
上述した特許文献1を適用した技術によれば、生産システム構成の変更と架台のメンテナンス性を考慮して、複数台のロボットステーション100を並べることができると考えられる。これにより、需要者の工場内で必要に応じて一度立上げられた生産システムの構成を変更することが可能になるものである。しかし、この技術では、需要者工場における生産ラインの組み立て時間の短縮は可能であるが、立上げ時間の短縮については考慮されていない。また、ロボットステーションに挿入される電源コントローラボックスによってロボットアームを制御するとされている。特許文献1には、ロボットステーション100を複数組合わせて一連の生産システムであるロボットセルを構成する旨が記載されている。しかし、電源コントローラ同士の接続方法は考慮されていないため、ロボットステーション同士の連携については考慮されていない。このため、当該技術では、ロボットステーション同士を連結させた後に稼働テスト等を行う必要が生じ、立上げ時間が長期化するおそれがある。すなわち、ロボットステーション100がそれぞれ独立して動作すると考えられるため、需要者自らが需要者工場で生産システムの変更を行う場合が考慮されたものである。特許文献1には、提供者が需要者の工場における立上げ時間を短縮する工夫を行う技術的思想は開示されていない。
【0011】
また、上述した特許文献2を適用した技術によれば、生産ラインの移動および工程変更を考慮した筐体50を構成できると考えられる。この筐体50内の中央制御装置55は、中継盤54を介して、他のユニット内の中央制御装置55との電気的な接続を行う。
図6に記載される
手作業用ユニット装置71を各ユニットの一部に挿入することが開示され、積極的に同一サイズの筐体50を組み合わせることで生産ラインの変更を容易にできることが示されている。つまり、この技術は、生産を行う需要者工場内で生産ラインの構成変更を目的とするものであり、需要者自らが需要者工場で生産ラインの変更や工程変更を行うものと考えられる。つまり、特許文献1同様に、特許文献2には、提供者が需要者の工場における立上げ時間を短縮する工夫を行う技術的思想は開示されていない。つまり、生産ラインの製造委託に伴い、需要者工場で生産ラインの組立て時間と立上げ時間の短縮を考慮されたものではなく、提供者工場で稼働テストを行う構成や工夫については記載も示唆もされておらず、後述する実施形態の課題は認識されていないと考えられる。
【0012】
また、特許文献2の内容を適用した技術によれば、生産システム(特許文献2では生産ラインと記載)が複雑化した場合、あるいは特許文献2に記載の筐体50に収められる多軸ねじ締めロボットや絶縁耐圧測定装置等以外の装置や構成が必要となり筐体50に収まらない構成が生じた場合には、筐体50の仕組みをそのまま利用することができなくなる。
また、需要者の要請に提供者が応えるには、需要者の工場のレイアウトに対応した生産ラインである必要がある。その際、生産ラインは直線上に構成されない場合があり、特許文献1に記載のロボットステーション100や特許文献2に記載の汎用の筐体50では配置が困難となる場合や、異なる大きさや形状のベースユニットに各装置を搭載する必要が生じる場合について考慮されていない。
他にも、同一の大きさや形状のベースユニットに各装置を配置すると、装置の配置数が極端に少ないまたは多いベースユニットが生じるため、却って搬送の効率や組み立てや立上げの効率が悪くなる場合が考慮されていない。
さらに、ベースユニットを単一の大きさや形状とした場合には、装置数が多いと、制御機器であるIoT(Internet of Things)コントローラ、PAC(Programmable Automation Controller)、PLC(Programmable Logic Controller)やIPC(Industrial Personal Computer)のI/Oモジュールに接続する入出力ポート数が足りなくなり、ベースユニット間を跨って配線をしなければならないことが生じる場合があることも考慮されていない。
従って、このような事態が生じると、需要者工場における生産システムに対して、個別に配線や配線後の稼働テストを行う必要が生じ、生産システムの立上げに時間を要することとなる。
【0013】
このように、特許文献1,2の何れを適用した技術も、需要者工場内のロボットステーションや筐体に関する技術である。すなわち、これらの技術は、「需要者工場以外の場所(例えば提供者工場)において事前に生産システムを一度組み立て、生産システムを部品に解体し、解体された部品を需要者工場で組み立てる」という過程において作業を効率化するものではない。そこで、後述する好適な実施形態は、提供者工場において、高度化された生産システムの稼働テストを行い、委託元の工場で生産システムの速やかな立上げを行うことを目的としている。
【0014】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成および動作〉
図1は、好適な第1実施形態による生産システムPの模式的な斜視図である。
図1において、生産システムPは、二系統の生産ライン15,16と、設計・生産管理装置50と、を備えている。生産システムPを構築する提供者の工場を提供者工場10(第1の領域)と呼び、生産システムPを使用する需要者の工場を需要者工場20(第2の領域)と呼ぶ。生産システムPは、図示の状態では、提供者工場10の床面11に設置されている。
【0015】
生産ライン15は、複数の(図示の例では5個の)モジュール1A(第1のモジュール),2A(第2のモジュール),3A(第3のモジュール),4A,5Aを備えている。同様に、生産ライン16は、複数の(図示の例では5個の)モジュール1B,2B(第4のモジュール),3B,4B,5Bを備えている。生産ライン15,16は、何れも製品に対して印字、検査、箱詰め等を行う生産ラインであり、同様の機能を備えている。従って、モジュール1A,2A,3A,4A,5Aの機能と、モジュール1B,2B,3B,4B,5Bの機能と、は同様である。そこで、モジュール1A~5A,1B~5Bを総称して「モジュール1,2,3,4,5」または「モジュール1~5」と称することがある。また、モジュールは組み立てられた生産システムPを解体または分解する単位である。その大きさや形状は異なるものであってもよく、セルとも呼ぶ。モジュールは、印字、検査、箱詰め、切削や溶接等の機能単位でモジュール化またはセル化してもよい。また、モジュールは、後述のベースユニットの重心や配線を考慮し、2つ以上の機能を有するモジュールやセルであってもよい。
【0016】
モジュール1A~5A,1B~5Bは、水平方向に沿って二列に配列されており、この配列方向をy軸方向とし、水平面においてy軸に直交する方向をx軸方向とし、上下方向をz軸方向とする。また、モジュール1~5のx軸方向の幅をモジュール幅WMと呼ぶ。提供者工場10には、搬入口幅W12(第1の搬入口幅)を有する搬入口12が設けられている。また、需要者工場20には、搬入口幅W22(第2の搬入口幅)を有する搬入口22が設けられている。また、提供者工場10および需要者工場20には、それぞれフォーク18a,28aを有するフォークリフト18,28が配置されている。
【0017】
生産システムPは、提供者工場10においてモジュール単位に解体され、フォークリフト18によって、例えばトラックである運搬装置30に搬入される。運搬装置30は、トラックに限らず、トレーラーやコンテナであってもよい。運搬装置30は、生産システムPを需要者工場20に運搬する。需要者工場20においては、モジュール単位に解体された生産システムPが、フォークリフト28によって搬入される。そして、搬入された生産システムPは、需要者工場20の内部に設置される。
【0018】
需要者工場20において、二点鎖線で示す領域25,26,27は、それぞれ生産ライン15,16および設計・生産管理装置50が設置される領域になる。
図1において、運搬装置30は1台のみ図示するが、複数台の運搬装置30を適用してもよい。運搬装置30は荷台32を備えている。そして、荷台32の内部空間の幅を荷台内幅W32(許容幅)と呼び、荷台32の内部空間の長さを荷台内長L32と呼ぶ。運搬装置30は、必要に応じて、提供者工場10と需要者工場20との間を複数回往復することによって提供者工場10から需要者工場20に生産システムPを搬送する。生産ライン15,16のモジュール幅WMは、搬入口幅W12,W22よりも狭く、かつ、荷台内幅W32よりも狭い。
【0019】
図2は、生産ライン15または16の模式的な斜視図である。
生産ライン15,16は、上述のように、それぞれモジュール1~5を備えている。y軸方向における各モジュール1,2,3,4,5の長さを、それぞれモジュール長L1,L2,L3,L4,L5と呼ぶ。また、モジュール1に隣接してローラコンベア702が配置されている。ローラコンベア702は、図示せぬ製造装置に接続されている。そして、該製造装置において生産された製品612は、向きが不揃いな状態で、ローラコンベア702を介して、生産ライン15,16に供給される。
【0020】
生産ライン15,16は、製品612に文字等を印字し、所定の製品検査を行い、製品検査に合格した製品612を梱包箱614に箱詰めする生産ラインである。そして、製品612を詰めた梱包箱614は、パレット704の上面に積み上げられ、出荷される。生産ライン15,16の内部においては、y軸方向に沿ってローラコンベア602,604が延設されている。
【0021】
ここで、ローラコンベア602は、モジュール1,2,3に渡って延設され、製品612をy軸方向に搬送する。また、ローラコンベア604は、モジュール3,4,5に渡って延設され、梱包箱614をy軸方向に搬送する。但し、これらローラコンベア602,604は、一点鎖線で示す各モジュール1~5の境界線に沿って分割することができる。モジュール1は、ピッキング・整列装置160(被制御機器)を備えている。ピッキング・整列装置160は、ローラコンベア702から製品612をピッキングし、向きを揃えてローラコンベア602に載置するものである。
被制御機器の一例として、モータを制御する信号線やシーケンス制御を行うためリミットスイッチ等を設けたものが考えられる。信号線やリミットスイッチ等はPLC等の制御機器のI/Oモジュールに接続されている。被制御機器は、ベースボードに接続されるI/Oモジュールだけでなく、PLCと共にベースボードに挿された通信モジュールが有する所定のインターフェースに接続されるスレーブI/Oモジュールや、スレーブI/Oユニットに接続することもできる。モジュール内の構成によっては、I/Oモジュールに接続される信号線として、数十から数百の配線が接続されることがある。
また、他の被制御機器の一例として、マシニングセンタ、CNC(Computerized Numerical Control)フライスや旋盤等の工作機械、ピッキングや溶接等を行うロボット、位置や角度を考慮したモーション制御を行うモータ等は、I/Oモジュールとは異なる所定のインターフェースでPLC等の制御機器に接続される。
【0022】
次に、モジュール2は、印字装置260(被制御機器)と、検査装置262(被制御機器)と、を備えている。ここで、印字装置260は、製品612に対して各種文字を印字する。また、検査装置262は、製品612に対して所定の製品検査を行い、製品検査に不合格であった製品612をローラコンベア602から排除する。また、検査装置262は、ローラコンベア602を介して、製品検査に合格した製品612をモジュール3に搬送する。
【0023】
次に、モジュール3は、箱詰装置360(被制御機器)を備えている。箱詰装置360は、空の梱包箱614に製品612を箱詰めし、梱包箱614を封函する。次に、モジュール4は、箱印字装置460(被制御機器)を備えている。箱印字装置460は、封函された梱包箱614に各種文字を印字する。次に、モジュール5は、パレッタライズ装置560(被制御機器)を備えている。パレッタライズ装置560は、モジュール4から搬出された梱包箱614をパレット704の上に配列させる。
【0024】
各モジュール1~5の底部には、それぞれ、略矩形板状のベースユニット110(第1のベースユニット),210(第2のベースユニット),310(第3のベースユニット),410,510(以下、「ベースユニット110等」と称することがある)が配置されている。そして、ベースユニット110等の上面には、開閉器102,202,302,402,502と、分電盤104,204,304,404,504と、コントローラ106,206,306,406,506(制御機器。以下、コントローラ106等と称することがある)と、がそれぞれ設けられている。開閉器102,202,302,402,502は、図示せぬ電源ラインに接続され、各モジュール1~5の電源のオン/オフ状態を切り替える。なお、ベースユニット110は、略矩形板状に限らず、ベースユニット110に搭載する装置を支持できる剛性があれば、数本のフレームを組み合わせたものであってもよい。
【0025】
分電盤104,204,304,404,504は、各々複数のブレーカ(図示略)を備え、対応するモジュール1,2,3,4,5の各部に対して配電する。コントローラ106,206,306,406,506は、対応するモジュール1,2,3,4,5の動作を制御する。さらに、モジュール2のベースユニット210には、これらコントローラ106等を統括管理する総合コントローラ620が設けられている。コントローラ106等および総合コントローラ620は、例えば一般的なマイクロコンピュータとしての構成を備えている。そして、各コントローラ106等は、総合コントローラ620と、通信ケーブル622によって接続されており、総合コントローラ620との間で双方向通信する。通信ケーブル622の接続方法は一例であり、総合コントローラ620をマスターとし、他の各コントローラ106等をデイジーチェーンで接続されていても実施できる。また、これらをマルチドロップで接続することもできる。コントローラ間の通信は、マルチドロップとデイジーチェーンとの組み合わせによっても実施できる。
【0026】
図3は、ベースユニット110,210の模式的な斜視図である。
上述のように、ベースユニット110,210は、略矩形板状に形成されている。ベースユニット110等のx軸方向の幅をベースユニット幅WBと呼ぶ。そして、図示の例においては、ベースユニット幅WBはモジュール幅WM(
図1参照)に等しい。そして、ベースユニット110,210において、相互に対向する面を対向面110a(第1の対向面),210a(第2の対向面)と呼ぶ。そして、対向面110a,210aに隣接する面を側面110b,210bと呼ぶ。また、ベースユニット110において、対向面110aの対辺側の面を非対向面110dと呼ぶ。非対向面110dは、他のベースユニットには対向しない。
【0027】
ベースユニット110の周縁部の6箇所位置には、アジャスターボルト610(支持部材)が装着されている。アジャスターボルト610は、提供者工場10または需要者工場20の床面11,21(
図1参照)に対するベースユニット110の高さを調節する。これにより、床面11,21に傾斜や段差が存在した場合であっても、ベースユニット110を水平に設置することができる。
【0028】
また、ベースユニット110の下面には、x軸方向に沿って平行に延設された、断面矩形枠状態の被挿入部112,114が固定されている。この被挿入部112,114にフォークリフト18,28(
図1参照)のフォーク18a,28aを挿入してベースユニット110を持ち上げることにより、フォークリフト18,28はベースユニット110およびモジュール1を安定して運搬できる。また、ベースユニット110と同様に、ベースユニット210においても、周縁部の6箇所位置には、アジャスターボルト610が装着されている。また、ベースユニット210の下面には、被挿入部112,114と同様に形成された被挿入部212,214が固定されている。
【0029】
ベースユニット110における対向面110aには、第1の係合部130が形成されている。ここで、第1の係合部130は、対向面110aから内側に略U字状に凹むように形成された一対の凹部132,134(第1の凹部)を備えている。また、ベースユニット210における対向面210aには、第2の係合部240が形成されている。ここで、第2の係合部240は、対向面210aから内側に凹むように形成された一対の凹部241,246と、一対の付勢部材243,248と、一対の突出部材242,247(第1の凸部)と、を備えている。
【0030】
付勢部材243,248は、例えばコイルスプリングであり、凹部241,246に各々遊挿される。突出部材242,247は、略直方体の棒状に形成され、ベースユニット110に対向する側の端部は、凹部132,134に沿うように略U字状に形成されている。突出部材242,247は、付勢部材243,248を各々押圧しつつ、凹部241,246に圧入されている。これにより、付勢部材243,248は、突出部材242,247をベースユニット110に向かって付勢する。ここで、ベースユニット110の非対向面110dには、凹部または凸部が設けられていない。これにより、非対向面110dに何かが引っかかるような事態を未然に防止できる。
【0031】
ベースユニット110の対向面110a付近の上部には隣接モジュール判定部152が装着されている。また、ベースユニット210の対向面210aの上部には、隣接モジュール判定部152に対向する位置に隣接モジュール判定部250が装着されている。隣接モジュール判定部152,250は、双方向に近接無線通信することにより、自モジュールに隣接するモジュールが正しいか否かを判定する。そして、隣接モジュール判定部152,250は、誤ったモジュールが隣接した場合には、その旨の警告を出力する。また、ベースユニット210の対向面210aの対辺側の面は、ベースユニット310(
図2参照)に対向する対向面210c(第3の対向面)になる。そして、対向面210cの上部には、隣接モジュール判定部250と同様に構成された隣接モジュール判定部252が装着されている。
【0032】
本実施形態において、同一の機能を有するモジュールには、同一構成の係合部が適用される。例えば、
図1に示したモジュール1A,1Bの構成は、モジュール1として
図2に示した通りであり、モジュール1A,1Bは同一の機能を有する。従って、モジュール1A,1Bに対して適用される2台のベースユニット110は、共に、
図3に示す第1の係合部130を備える。同様に、モジュール2A,2B(
図1参照)の構成は、モジュール2として
図2に示した通りであり、モジュール2A,2Bは同一の機能を有する。従って、モジュール2A,2Bに対して適用される2台のベースユニット210は、共に、
図3に示す第2の係合部240と、第3の係合部230と、を備える。換言すれば、モジュール2A,2Bは、同一位置または略同一位置に突出部材242,247および凹部232,234を備える。
【0033】
但し、各ベースユニット110等に備えられる隣接モジュール判定部152,250等は、機能が共通するか否かにかかわらず、個々のモジュールを識別する。すなわち、モジュール1Aに装着される隣接モジュール判定部152は、モジュール2Aに装着される隣接モジュール判定部250と、モジュール2Bに装着される隣接モジュール判定部250と、を別異なものとして識別する。他の隣接モジュール判定部も同様である。従って、作業員が、モジュール1Aとモジュール2Bとを所定距離内に近接させると、モジュール1Aの隣接モジュール判定部152と、モジュール2Bの隣接モジュール判定部250とが共に「誤ったモジュールが隣接している」旨の警告を出力する。
【0034】
また、隣接モジュール判定部152,250等は、バッテリー駆動されるため、商用電源が供給されていない状態(例えば、運搬装置30に積載されている状態)においても機能する。従って、作業員が、運搬装置30(
図1参照)にモジュール1Aとモジュール2Bとを隣接させて積載しようとすると、隣接モジュール判定部152,250は、その時点においても、警告を出力する。これにより、設置工事において隣接させるべきモジュールを、搬送段階から隣接させることができ、設置工事における効率を高めることができる。
【0035】
図4は、設計・生産管理装置50等のブロック図である。
設計・生産管理装置50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、SSDには、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、各種データ等が格納されている。OSおよびアプリケーションプログラムは、RAMに展開され、CPUによって実行される。
図4において、設計・生産管理装置50の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。
【0036】
すなわち、設計・生産管理装置50は、ベースユニット幅特定部51と、生産制御部52と、解体条件決定部53と、搬送スケジュール設定部54と
、を備えている。また、設計・生産管理装置50は、入力装置42と、出力装置44と、に接続されている。さらに、設計・生産管理装置50は、ネットワーク46を介して、生産ライン15,16の各総合コントローラ620と、他の情報機器48と、に接続されている。
図1に示される需要者工場20の領域27に配置される設計・生産管理装置50は提供者工場10の設計・生産管理装置50とは異なる装置であっても同一の装置であってもよい。需要者工場20の設計・生産管理装置50は、製造実行システムであるMES(Manufacturing Execution System)と接続していてもよく、または同一の計算機内にその機能を有していてもよい。また、設計・生産管理システム50は、ERP(Enterprise Resource Planning)と接続することもできる。設計・生産管理装置50について、提供者工場10において、設計・生産管理装置50を用いて生産ライン15、16を設計する際の工程について説明する。
【0037】
入力装置42は、マウス、キーボード等(図示せず)を備えており、設計・生産管理装置50に対して各種情報を入力する。また、出力装置44は、ディスプレイ、プリンタ等(図示せず)を備えており、設計・生産管理装置50から供給された情報を出力する。入力装置42から入力される情報は、例えば以下に列挙するものである。設計・生産管理装置50は、これらの入力された情報を制約条件として、モジュールとモジュールに属するコントローラに接続される被制御機器とを特定する。
・提供者工場10および需要者工場20の搬入口幅W12,W22
・運搬装置30の荷台内幅W32、荷台内長L32および許容積載重量
・各モジュール1~5のモジュール長L1,L2,L3,L4,L5
・各モジュール1~5の重量
但し、これらの情報は、ネットワーク46を介して他の情報機器48から入力してもよい。また、提供者工場10は、生産システム15、16を製造することから搬入口幅W12は需要者工場20の搬入口幅W22に比べて大きい場合が多いため、入力装置42に、搬入口幅W12の情報を入力せずとも実施できる。
【0038】
ベースユニット幅特定部51は、生産システムP(
図1参照)の搬送先である需要者工場20の搬入口幅W22よりも狭く、かつ、荷台内幅W32よりも狭くなるようにベースユニット幅WB(
図3参照)を決定する。これにより、生産システムPを運搬装置30に載置できるモジュールの幅を特定できる。また、ベースユニット幅WBの幅は、提供者工場10の搬入口幅W12の幅よりも小さくするよう決定することも
できる。
生産制御部52は、需要者工場20において生産システムPが実際に稼働する際、生産ライン15,16の総合コントローラ620と通信することにより、生産システムPを制御する機能を備えている。生産システムPを制御するラダー等を含むソフトウェアは別体の設計・生産管理装置50に導入してから需要者工場20へ提供することもできる。また、提供者工場10においては、生産システムPを需要者工場20に搬送する前に、需要者工場20と同等の条件で生産システムPが稼働され、生産システムPを構成する各機器が所期の性能を発揮するか否かの稼働テストが実行される。生産制御部52は、この稼働テストを実行する機能も備えている。
【0039】
解体条件決定部53は、提供者工場10において生産システムPを複数の部分に解体する際の解体条件を決定する。生産ライン15,16(
図1参照)は、モジュール単位で解体される。従って、解体条件決定部53は、生産ライン15,16を構成する各機器をモジュール1~5に配分する機能を有する。より詳細には、解体条件決定部53は、各モジュール1~5のモジュール長L1~L5(
図2参照)が運搬装置30の荷台内長L32を超えず、かつ、各モジュール1~5の重量が運搬装置30の許容積載重量を超えないように、各モジュール1~5の構成を決定する。
【0040】
その際、解体条件決定部53は、任意のコントローラ(例えば
図2におけるコントローラ106)と、そのコントローラによって制御される被制御機器(例えばピッキング・整列装置160)とが、必ず同一のモジュール(例えばモジュール1)に属するように、各モジュールの構成を決定する。一般的に、ある被制御機器と、その被制御機器を制御するコントローラとは、多数のケーブルで接続される。被制御機器の制御に用いる多数のケーブルをコントローラであるPLCのI/Oモジュールに接続する作業は非常に工数が大きいため、需要者工場20でケーブルの差し替えや、差し替えるコントローラを変更する作業がないことが望ましい。生産ラインの変更を前提とする特許文献1、2にはこのような観点は考慮されていない。また、上記の配線作業のみならず、配線を変更した後にコントローラが制御する対象の情報を認識するためのコンフィグレータを再設定し、ラダー等の制御ソフトウェアの変更が必要となる。さらに、モジュールが正しく動作するかを確認する単体テスト、単体テスト合格後にモジュール間の動作が正しく動作するかを確認する全体テストが必要となるため、上記した配線変更を抑制する工夫をすることが望ましい。
従って、ここでは配線変更を抑制するため、需要者工場20に生産システムPを搬送後に配線変更を行わず、モジュールそれぞれに属するコントローラ同士の接続を行うことで、生産システムPを立ち上げられる方法について説明する。
解体条件決定部53は、解体された生産システムPを効率よく搬送し、需要者工場20で効率よく生産システムPを立ち上げるために生産システムPの解体条件を特定する。そのため、解体条件決定部53は、各モジュールの構成について、幅が特定されたモジュール1,2,3,4,5について、各モジュールそれぞれが有する被制御機器とコントローラ106,206,306,406,506と配線方法を特定する。
例えば、モジュール1のピッキング装置160はピッキング手段と整列手段に分かれている場合に、製品612を検出・把持・角度・位置の変更を行った後に所定間隔でローラコンベア602に載置する。これらの動作を行うための制御信号線がコントローラ106のI/Oモジュールの入出力ポートよりも多くなる場合がある。
この場合は、ピッキング整列装置160を分割し、一部の装置をモジュール2に移す場合がある。その後、モジュール2のコントローラ206のI/Oモジュールに印字装置206とモジュール1から移された装置が配線可能であるかを特定する。さらに、解体する単位として特定されたモジュール2からモジュール5まで繰り返し、各モジュールの配線方法を特定する配線特定処理を行う。
ここでは、I/Oのポート数と配線数とを比較し配線可能か否かを判定したが、PLC等を用いる場合は、スキャンやサイクルと呼ばれる被制御機器の状態を読み込みと書き込みを所定間隔で行う処理を考慮する必要がある。
総合コントローラ620に接続されるコントローラ106が同一のスキャンタイムで処理される場合には、モジュール1に属する被制御機器の情報の読み込みと書き込みが所定のスキャンタイム内に完了することを制約条件
として追加することができる。
つまり、特定のモジュール内に書き込みや読み込みに時間を要する被制御機器を増やすと総合コントローラ620のスキャンタイム内に処理が終わらない場合があるので、被制御機器の一部を他のモジュールに属するように配置することによって
被制御機器が接続されるコントローラを変更し、各コントローラのスキャンにかかる時間を平準化させることが可能である。
これにより、総合コントローラ620のスキャンタイム内に全てのモジュールのスキャンが完了させることができる。なお、総合コントローラ620のスキャンタイムを長期化させることで配線を変更しないことも可能である。一方、コントローラ106等がそれぞれ個別のスキャンタイムを有する場合、つまり各コントローラが独立して稼働するような場合には、被制御機器がどのモジュールに属するかを比較的自由に設定可能となる。
また、各モジュールの配線が各コントローラのI/Oモジュールやモーションモジュール等との配線可能であることを特定するだけなく、各モジュールの重量バランスを特定し装置の位置の変更処理を行うことがある。すなわち、各モジュールは
図1に示すフォークリフト18,28で持ち上げて搬送するが、モジュール内の装置の配置方法によっては重心がモジュールの中央付近とならず、フォーク18a,28aで持ち上げられない場合がある。モジュールが
フォーク18a,28aで持ち上げられないことが予想される重心となる場合には、モジュール内の装置の位置を変更または一部の装置を隣接するモジュールへの移し替えを行う。
つまり、解体条件決定部53は、搬送可能な幅に区切られたモジュールの重量のバランスまたは重心を特定する処理を行い、その後、所定条件を満たすような装置位置の変更または所定の装置の属するモジュールを変更する装置の位置の変更処理を行う。装置の位置に変更があった場合には、配線方法を再度特定する。
上記した配線特定処理と装置の位置の変更処理を実行したものの、解体するモジュール単位を特定できない場合がある。その場合は、解体するモジュール数を増加させ、配線特定処理と装置の位置の変更処理を行うとよい。
解体するモジュール数は、提供者が任意の数を設定することも可能であり、入力装置42から入力される情報を基に自動で計算し特定することができる。また、提供者の経験からモジュールの幅、大きさ、形状と配置する装置を入力し制約条件とすることもできる。また、提供者が需要者の要請に対応するようモジュールの区切り方やモジュール内の装置の位置を固定または指定する状態を入力し、入力された情報を制約条件の一つとすることも可能である。
設計・生産管理装置50は、これらの制約条件と前述の入力装置42に入力された情報を条件とするモジュール単位が特定されるまで繰り返し演算を行う。つまり、制約条件を満たすモジュールの幅と奥行き、モジュールの数、コントローラと被制御機器の配線、モジュールの重量バランスや重心を特定する。これにより、効率良く解体と搬送、需要者工場20で効率良く組み立てと立上げを行うことができるモジュールを特定することができる。
本実施形態によれば、ある被制御機器と、その被制御機器を制御するコントローラとが同一のモジュールに含められるため、両者を接続する多数のケーブルを外すことなく、解体工事、運搬、設置工事を行うことができる。これにより、提供者工場10における解体工事や、需要者工場20における設置工事を省力化できる。ひいては、需要者工場20における生産システムPの組み立て、立上げ時間を短縮できるため、需要者が製品の製造開始時間を従来よりも早めることができ、提供者は顧客である需要者へ付加価値の高い生産システムを提供することができる。
【0041】
搬送スケジュール設定部54は、解体の単位である各モジュールを運搬装置30に搭載して提供者工場10から需要者工場20に搬送する順序を決定する。一度に搬送可能な一または複数のモジュールは、運搬装置30の荷台32に収納でき、かつ、合計重量が運搬装置30の許容積載重量以下になる範囲である。例えば、モジュール1~5のモジュール長L1~L5(
図2参照)と、運搬装置30の荷台内長L32(
図1参照)との間に、「L1+L2≦L32」および「L3+L4+L5≦L32」の関係があったとする。この場合、運搬装置30の第一便として生産ライン15のモジュール1A,2A(
図1参照)を搬送し、第二便としてモジュール3A,4A,5Aを搬送し、第三便として生産ライン16のモジュール1B,2Bを搬送し、第四便としてモジュール3B,4B,5Bを搬送することが考えられる。なお、運搬装置30の残りの空間が、第一便は「L32-L1-L2=La」、第二便は「L32-L3-L4-L5=Lb」、第四便は「L32-L3-L4-L5=Lc」としたときに、第三便は「L1+L2≦La+Lb+Ld」の関係となる。この場合は、モジュール1B、2Bを解体すると第三便を用いずに第一便、第二便、第四便のみとし合計三便で搬送可能である。但し、運搬装置30の空間に余裕があってもモジュール1Bと2Bを解体せずにモジュール単位で運搬回数や運搬便数を設定することによって、需要者工場20での組み立て、立ち上げ時間を短縮することができる。
ただし、余裕がある空間には、設計・生産管理装置50やモジュールに属さない部品や工具等を積載すると効率よく搬送や立ち上げを行うことができる。そのため、制約条件の一つとして、モジュールに属さない部品の大きさ、形状、重量を入力することも可能である。モジュールの搬送パターンが複数特定される場合には、モジュールに属さない部品の搬送を考慮して便を特定するとよい。
また、モジュールの搬送順序は生産ラインPのうち生産工程の昇順に、または、モジュールの設置場所が搬入口22から遠い順に搬送するとよい。これは、需要者工場20でモジュールの単体稼働テストを行う際に、生産工程の昇順(早い順)に稼働テストを実施となり、立ち上げ時間を短縮することができる。また、搬入口22から遠い順にモジュールを設置することで、搬入口22の近くを広く空けておくことができ、モジュールの組み立て作業が効率良く行うことができる。
【0042】
図5は、設置工事における各ベースユニット110,210の関係を示す図である。
図5のステップS1において、作業員は、モジュール1(
図2参照)を需要者工場20の床面21(
図1参照)の所定位置に設置し、モジュール1を床面21に固定する。作業員は、フォークリフト28(
図1参照)を操作して、ベースユニット210とともにモジュール2を持ち上げ、対向面110a,210aがx軸に沿って揃うように、モジュール2を配置する。
【0043】
次に、ステップS2において、作業員は、ベースユニット210の突出部材247をベースユニット210に押し込みつつ(細い白抜矢印参照)、ベースユニット210とともにモジュール2を、太い白抜矢印の方向に前進させる。その際、突出部材247が凹部132に嵌まらないように、突出部材247を押し込んだ状態に保つ。次に、ステップS3において、突出部材247が凹部132を過ぎると、作業員は、突出部材247をリリースする。但し、突出部材247は、ベースユニット110の対向面110aに係止されるため、対向面210aに押し込まれた状態に保たれる。そして、作業員は、突出部材242をベースユニット210に押し込み、モジュール2をさらに前進させる。
【0044】
次に、ステップS4において、ベースユニット110,210が揃う位置までモジュール2が前進すると、作業員は突出部材242をリリースする。これにより、突出部材242は凹部132に嵌合する。また、それと同時に、突出部材247も凹部134に嵌合する。これにより、作業員は、モジュール1に対してモジュール2を正確に位置決め可能であり、かつ、モジュール2の設置作業を迅速に実行できる。なお、
図5においてモジュール3,4,5のベースユニット310,410,510については図示を省略するが、作業員は、モジュール2と同様の手順で、モジュール3,4,5を順次設置することができる。
【0045】
図6は、各ベースユニットにおける係合部の位置関係を示す図である。
上述のように、ベースユニット110の対向面110aに設けられた第1の係合部130は、凹部132,134を備えている。ここで、両者のx軸方向の中心位置をx6,x1とする。また、ベースユニット210の対向面210aに設けられた第2の係合部240は、突出部材242,247を備えている。両者のx軸方向の中心位置は、上述した中心位置x6,x1に等しい。これにより、第1の係合部130と第2の係合部240とを係合させることができる。
【0046】
また、ベースユニット210の対向面210cに設けられた第3の係合部230は、凹部232,234(第2の凹部)を備えている。ここで、両者のx軸方向の中心位置をx5,x3とする。また、ベースユニット310の対向面310a(第4の対向面)に設けられた第4の係合部340は、突出部材342,347(第2の凸部)を備えている。両者のx軸方向の中心位置は、上述した中心位置x5,x3に等しい。これにより、第3の係合部230と第4の係合部340とを係合させることができる。
【0047】
また、ベースユニット310の対向面310cに設けられた第5の係合部330は、凹部332,334を備えている。ここで、両者のx軸方向の中心位置をx4,x2とする。また、ベースユニット410に設けられた第6の係合部(図示せず)は、凹部332,334に嵌合する突出部材(図示せず)を備えている。両者のx軸方向の中心位置は、上述した中心位置x4,x2に等しい。これにより、第5の係合部330と、第6の係合部(図示せず)とを係合させることができる。
【0048】
〈第1実施形態の効果〉
以上のように好適な実施形態によれば、生産システムPは、複数の制御機器(106,206,306,406,506)と複数の制御機器(106等)にそれぞれ接続された複数の被制御機器(160,260,262,360,460,560)を有する生産システムPであって、生産システムPの搬送元である第1の領域(10)における搬入口の幅である第1の搬入口幅(W12)、生産システムPの搬送先である第2の領域(20)の搬入口の幅である第2の搬入口幅(W22)、および生産システムPを第1の領域(10)から第2の領域(20)に搬送する運搬装置30の許容幅(W32)の何れよりも狭くなるように、複数の制御機器(106等)および複数の被制御機器(160等)を搭載する複数のベースユニット(110,210,310,410,510)の共通の幅であるベースユニット幅WBを特定するベースユニット幅特定部51と、第1の領域(10)で、特定されたベースユニット幅WBを有する複数のベースユニット(110等)に複数の制御機器(106等)と、複数の被制御機器(160等)とが搭載された状態で、被制御機器(160等)の稼働テストを行う生産制御部52と、任意の一の制御機器(106等)と、対応する一の被制御機器(160等)とが同一のモジュール1A~5A,1B~5Bに含まれ、かつ、各々のモジュール1A~5A,1B~5Bの寸法および重量が、運搬装置30の許容寸法および許容積載重量を超えないように、モジュールを単位として、生産システムPの解体条件を決定する解体条件決定部53と、複数のモジュール1A~5A,1B~5Bを第1の領域(10)から第2の領域(20)に搬送する順序を決定する搬送スケジュール設定部54と、を備える。
また、好適な実施形態は、他の観点においては、複数の制御機器(106,206,306,406,506)と複数の制御機器(106等)にそれぞれ接続された複数の被制御機器(160,260,262,360,460,560)を有する生産システム(P)の組み立て方法であって、生産システム(P)の搬送先である第2の領域(20)の搬入口の幅である第2の搬入口幅(W22)、または、生産システム(P)を第1の領域(10)から第2の領域(20)に搬送する運搬装置(30)の許容幅(W32)よりも狭くなるように、複数の制御機器(106等)および複数の被制御機器(160等)を搭載する複数のベースユニット(110,210,310,410,510)の幅であるベースユニット幅(WB)を特定するベースユニット幅特定ステップ(51)と、第1の領域(10)で、特定されたベースユニット幅(WB)を有する複数のベースユニット(110等)に複数の制御機器(106等)と、複数の被制御機器(160等)とが搭載された状態で、被制御機器(160等)の稼働テストを行う稼働テストステップ(52)と、任意の一の制御機器(106等)と、対応する一の被制御機器(160等)とが同一のモジュール(1A~5A,1B~5B)に含まれ、かつ、各々のモジュール(1A~5A,1B~5B)の寸法および重量が、運搬装置(30)の許容寸法および許容積載重量を超えないように、モジュールを単位として、生産システム(P)の解体条件を決定する解体条件決定ステップ(53)と、複数のモジュール(1A~5A,1B~5B)を第1の領域(10)から第2の領域(20)に搬送する順序を決定する搬送スケジュール設定ステップ(54)と、を備えることを特徴とする生産システムの組み立て方法である。
これにより、生産システムPは、当該生産システムPに対する適切な解体条件や適切な搬送順序を決定できるため、生産システムPの設置時間や立ち上げ時間を短くできる。なお、モジュール単位として生産システムPの解体条件を決定する解体条件決定部53は、ベースユニット幅WBは必ずしも第1の搬入口幅(W12)より小さくなる条件を設定せずとも実施できる。
【0049】
また、複数のベースユニット(110等)は、フォークリフト18,28のフォーク18a,28aが挿入される被挿入部(112,114,212,214等)を備え、これにより、第1または第2の領域(10,20)においてモジュール1A~5A,1B~5Bの被挿入部(112,114,212,214等)に向かってフォーク18a,28aを差し込むことで、モジュール1A~5A,1B~5Bを支持するフォークリフト18,28が、モジュール1A~5A,1B~5Bを搬送可能になっていることが一層好ましい。これにより、フォークリフト18,28を用いて、各モジュール1A~5A,1B~5Bを効率的に運搬でき、生産システムPの設置時間を一層短くできる。
【0050】
また、複数のベースユニット(110等)は、それぞれ、設置される床面11,21に対する各々のベースユニット(110等)の高さを調整可能な支持部材(610)を備えることが一層好ましい。これにより、床面11,21の傾斜や凹凸等を吸収できる。
【0051】
また、複数のモジュール1A~5A,1B~5Bは、相互に対向する第1のモジュール(1A)と、第2のモジュール(2A)とを有し、第1のモジュール(1A)に備わる第1のベースユニット(110)は、第2のモジュール(2A)に対向する第1の対向面(110a)に少なくとも一つの第1の凹部(132,134)を有し、第2のモジュール(2A)に備わる第2のベースユニット(210)は、第1のモジュール(1A)に対向する第2の対向面(210a)に少なくとも一つの第1の凸部(242,247)を有し、第1の凹部(132,134)と、第1の凸部(242,247)とは対応する関係を有することが一層好ましい。これにより、第1の凹部(132,134)と、第1の凸部(242,247)とを対応付けることができ、第1のモジュール(1A)と、第2のモジュール(2A)とを適切に設置できる。
【0052】
また、第1の凸部(242,247)は、押圧されると、第2の対向面(210a)と同一面または第2の対向面(210a)よりも凹む位置まで押し込まれる構造を有し、これにより、第1のモジュール(1A)が床面11,21に設置された後、フォークリフト18,28によって第1のモジュール(1A)に隣接する位置へ第2のモジュール(2A)を搬送する際に、第1の対向面(110a)によって第1の凸部(242,247)を押し込みつつ、第2のモジュール(2A)の位置調節を行い、支持部材(610)が第2のモジュール(2A)を支持できる状態で第1の凸部(242,247)が第1の対向面(110a)に向かって突き出た場合に、フォーク18a,28aを被挿入部(112,114,212,214等)から引き抜くことを可能にすると、一層好ましい。これにより、フォークリフト18,28等で第2のモジュール(2A)を移動させる際、第2のモジュール(2A)を直線的に移動させることができ、生産システムPの設置時間を一層短くできる。
【0053】
また、第1の凸部(242,247)と第1の凹部(132,134)とは、第1の凸部(242,247)を第1の凹部(132,134)に挿入することによって、第1および第2のベースユニット(110,210)が対向し、または接触する関係を有することが一層好ましい。これにより、第1および第2のベースユニット(110,210)の位置合わせを迅速かつ適切に行うことができ、生産システムPの設置時間を一層短くできる。
【0054】
また、複数のモジュール1A~5A,1B~5Bは、さらに、第2のモジュール(2A)と相互に対向する第3のモジュール(3A)を有し、第2のベースユニット(210)は、第3のモジュール(3A)に対向する第3の対向面(210c)に少なくとも一つの第2の凹部(232,234)を有し、第3のモジュール(3A)に備わる第3のベースユニット(310)は、第2のモジュール(2A)に対向する第4の対向面(310a)に少なくとも一つの第2の凸部(342,347)を有し、第2の凹部(232,234)と第2の凸部(342,347)とは対応する関係を有し、水平面に沿う第1の対向面(110a)と平行な方向(x軸方向)に対して、第1の凸部(242,247)と第2の凸部(342,347)とは異なる位置関係を有することが一層好ましい。このように、第1の凸部(242,247)と第2の凸部(342,347)とが異なる位置関係を有していると、第2のモジュール(2A)と第3のモジュール(3A)とを間違える可能性を低めることができ、生産システムPの設置時間を一層短くできる。
【0055】
また、複数のモジュール1A~5A,1B~5Bは、さらに、第2のモジュール(2A)と同一の機能を有する第4のモジュール(2B)を有し、第4のモジュール(2B)は、第2のモジュール(2A)における第1の凸部(242,247)と略同一位置に凸部を有し、第2の凹部(232,234)と略同一位置に凹部を有すると一層好ましい。これにより、同一仕様のモジュールは、同一の、または略同一のベースユニットを適用することができ、量産効果によって製造コストを低減できる。
【0056】
また、第1のベースユニット(110)の第1の対向面(110a)の対辺側の面である非対向面(110d)は、他のモジュール1A~5A,1B~5Bの何れにも対向せず、凸部を有しないようにすると、一層好ましい。これにより、非対向面110dに何かが引っかかるような事態を未然に防止できる。
【0057】
また、複数の制御機器(106等)は、通信ケーブル622を介して相互に接続されることが一層好ましい。これにより、各制御機器(106等)間で適切な連携を取ることができる。
【0058】
また、第1の領域(10)で実行された稼働テストの際における複数の制御機器(106,206,306,406,506)と、複数の被制御機器(160,260,262,360,460,560)との接続関係は、第2の領域(20)においても維持されることが一層好ましい。これにより、提供者工場10で稼働テストの際の生産システムPが適切に動作したのであれば、需要者工場20における設置工事後も稼働テストのモジュールやコントローラ間の構成を維持することができるため、生産システムPを適切に動作する可能性を高めることができる。
【0059】
また、複数の制御機器(106等)のうち少なくとも一台は、他の複数の制御機器に接続されていると、一層好ましい。これにより、複数の制御機器が協働して動作できる。制御機器同士が所定のインターフェースで接続し、モジュール間を接続する関係を作ることによって、第一のモジュールに属する第一のコントローラが第二のモジュールに属する被制御機器を制御することがなくなる。これにより、需要者工場20で配線の変更や、他のモジュールへの影響を小さくすることできる。
また、第一の制御機器(106等)と第二の制御機器との接続は、所定のコネクタや規格で指定された通信インターフェースで実現するとよい。PLCのI/Oモジュールのような、差し込むポートを自由に変更可能なインターフェースは、信号線を差し込んた後に被制御機器の情報を特定または認識が必要となる。しかし、通信向けインターフェースであれば、需要者工場20で制御機器同士を接続することで生産システムPを稼働させることができる。
【0060】
また、複数のモジュール1A~5A,1B~5Bは、対応する制御機器(106等)に電源を供給する開閉器(102等)または分電盤(104等)を備えることが一層好ましい。これにより、モジュール毎に電源を管理できる。また、需要者工場20に搬送したモジュールはコントローラと電源が独立しているため、モジュールの設置後すぐにモジュールの単体稼働テストを行うことができる。
【0061】
また、複数のモジュール1A~5A,1B~5Bは、相互に隣接する第1のモジュール(1A)と、第2のモジュール(2A)とを有し、第2のモジュール(2A)における制御機器(206)は、第1のモジュール(1A)における電源が切断された状態を検出すると、第1のモジュール(1A)に関連する作業を停止する機能を備えると一層好ましい。また、停止に限らず、隣接する前の工程のモジュールの電源が落ちている際に、前の工程のモジュールの作業を支援する工程を予め設定しておくとよい。例えば、前工程では賞味期限の印字を行い、次の工程では、その他の情報を印字するような類似する工程であれば、次のモジュールまでベルトコンベア等で製造中の製品を輸送すると次のモジュールの作業工程を増加させることで、生産を継続することができる。これにより、一つのモジュールの電源断状態が他のモジュールに及ぼす影響を抑制できる。
【0062】
また、複数のモジュール1A~5A,1B~5Bは、隣接する他のモジュールが正しいモジュールであるか否かを判定する隣接モジュール判定部(152,250等)を備え、隣接モジュール判定部(152,250等)は、運搬装置30によって搬送されている場合においても、隣接する他のモジュールが正しいモジュールであるか否かを判定することが一層好ましい。これにより、設置工事の際に隣接する複数のモジュールを、搬送段階においても隣接させるように促すことができ、設置工事を一層効率的に進めることができる。
また、モジュールごとに識別IDを付与することにより、隣接モジュール判定部(152、250等)は、RFID(Radio Frequency Identification)や近距離無線通信によって、隣接するモジュールまたは近づくモジュールが正しいモジュールであるか否かを判定することができる。
【0063】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成に他の構成を追加してもよく、構成の一部について他の構成に置換をすることも可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0064】
(1)
図6に示した例において、第1の係合部130は2個の凹部132,134を有し、第2の係合部240は2個の突出部材242,247を有していた。しかし、第1の係合部130には凹部132,134のうち一方のみを備え、第2の係合部240には、これに対応する側の1個の突出部材のみを備えるようにしてもよい。すなわち、各係合部は、凹部または突出部材を少なくとも一つ備えればよい。これは、他の第3の係合部230、第4の係合部340等においても同様である。
【0065】
(2)上記実施形態における設計・生産管理装置50のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0066】
(3)また、上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0067】
(4)
その他の変形例について、
図7、
図8を用いて説明する。
図7は、変形例におけるモジュール700a,700bの表示例を示す図である。
上述の実施形態と同様に、設計・生産管理装置50(
図4参照)は、ベースユニット幅特定部51と、解体条件決定部53と、搬送スケジュール設定部54とによって、モジュールの解体単位を特定される。そして、
図7は、出力装置44に含まれる表示手段に、生産システムPのうち解体されるモジュール700aとモジュール700bとが拡大され表示されている状態を示す。モジュール700aにおいては、ローラコンベア602aの周囲に生産装置710a,710b,710cが配置され、図示しないコントローラにこれらの装置が接続される予定である。
【0068】
一方、モジュール700bは、ローラコンベア602bと、印字装置260と、を有している。また、モジュール700aと700bの幅は幅Wa、奥行方向の長さは長さLaである。
解体条件決定部53(
図4参照)は、モジュール700aの重心が図面右側に寄っている状態であることを特定する。しかし、生産工程の都合により生産装置710a,710b,710cの配置が変更できない場合には、モジュール700aはフォークリフト18,28で搬送できないため好ましくない。この場合、ベースユニット幅特定部51(
図4参照)は、ベースユニットの大きさを変更する。すなわち、ベースユニット幅特定部51は、各ベースユニットの幅に限らず、奥行き方向の長さまたはベースユニットの数を変更することができる。
【0069】
図8は、
図7におけるモジュール構成を変更した表示例を示す図である。
すなわち、
図8は、ベースユニット幅特定部51がベースユニットの数を増加させ、ベースユニットの大きさを特定し、表示手段に3つのベースユニットを表示させた状態を示す。
図7に示したモジュール700aは、
図8においてモジュール700cとモジュール700dとに分割されている。モジュール700cのベースユニット幅はモジュール700aのベースユニット幅Waと変わらない。但し、モジュール700cの長さが長さLcに変更されている。同様に、モジュール700dのベースユニットは幅が幅Wdに、長さが長さLdに変更されている。
【0070】
モジュール700cとモジュール700dは、それぞれに属するコントローラを有しそれぞれが属する装置と接続される。必要に応じて、モジュール700cとモジュール700dのベースユニットのフォーク支持部は異なる方向に向けてもよく、その場合は搬送スケジュール設定部54によって、搬送の順序を変更することもできる。
このように、モジュールの重心や重量バランスを考慮して、モジュールの大きさ、形状、数を変更することが可能となり、効率よく生産システムを立ち上げることが可能となる。また、ベースユニット幅特定部51には、ユーザがベースユニットの数や大きさを入力して制約条件とすることも可能である。さらに、ベースユニット幅特定部51と解体条件決定部53とで演算を繰り返し、より適切なモジュールを特定するとよい。
【符号の説明】
【0071】
1A~5A,1B~5B モジュール
1A モジュール(第1のモジュール)
2A モジュール(第2のモジュール)
3A モジュール(第3のモジュール)
2B モジュール(第4のモジュール)
10 提供者工場(第1の領域)
11,21 床面
18,28 フォークリフト
18a,28a フォーク
20 需要者工場(第2の領域)
30 運搬装置
51 ベースユニット幅特定部
52 生産制御部
53 解体条件決定部
54 搬送スケジュール設定部
102,202,302,402,502 開閉器
104,204,304,404,504 分電盤
106,206,306,406,506 コントローラ(制御機器)
110 ベースユニット(第1のベースユニット)
110a 対向面(第1の対向面)
110d 非対向面
112,114,212,214 被挿入部
132,134 凹部(第1の凹部)
152,250,252 隣接モジュール判定部
160 ピッキング・整列装置(被制御機器)
210 ベースユニット(第2のベースユニット)
210a 対向面(第2の対向面)
210c 対向面(第3の対向面)
232,234 凹部(第2の凹部)
242,247 突出部材(第1の凸部)
260 印字装置(被制御機器)
262 検査装置(被制御機器)
310 ベースユニット(第3のベースユニット)
310a 対向面(第4の対向面)
342,347 突出部材(第2の凸部)
360 箱詰装置(被制御機器)
410,510 ベースユニット
460 箱印字装置(被制御機器)
560 パレッタライズ装置(被制御機器)
610 アジャスターボルト(支持部材)
622 通信ケーブル
P 生産システム
WB ベースユニット幅
W12 搬入口幅(第1の搬入口幅)
W22 搬入口幅(第2の搬入口幅)
W32 荷台内幅(許容幅)