(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ホルダ、切削工具及び切削加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20231128BHJP
B23B 29/02 20060101ALI20231128BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20231128BHJP
F16F 15/12 20060101ALI20231128BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20231128BHJP
F16F 7/104 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B23B27/00 C
B23B29/02 A
B23C9/00 Z
F16F15/12 L
F16F15/02 C
F16F7/104
(21)【出願番号】P 2022514389
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012243
(87)【国際公開番号】W WO2021205878
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020068404
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権隨 佑知
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0067787(US,A1)
【文献】特開2005-186240(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 - 29/02
B23C 9/00
F16F 15/02
F16F 15/12
F16F 7/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って第1端から第2端にかけて延びた棒形状であって、前記中心軸に沿って延びた円筒形状の空洞を有する本体と、
前記空洞の内部に位置する円柱形状の錘と、
前記空洞の内表面及び前記錘に当接する弾性部材と、を有し、
前記錘は、
前記第1端の側に位置する第1端面と、
前記第2端の側に位置する第2端面と、
前記第1端面及び前記第2端面に接続された外周面と、を有し、
前記弾性部材は、
前記内表面及び前記外周面に当接する環状の第1弾性部材と、
前記内表面及び前記第1端面に当接する環状の第2弾性部材と、
前記内表面及び前記第2端面に当接する環状の第3弾性部材と、を有し、
前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも太
く、
前記中心軸を含む断面において、前記第1弾性部材の断面の中心が、前記外周面よりも前記中心軸から離れて位置する、ホルダ。
【請求項2】
前記内表面は、
前記第1端の側に位置する第1面と、
前記第2端の側に位置する第2面と、
前記第1面及び前記第2面に接続された内周面と、を有し、
前記第2弾性部材は、前記第1面及び前記内周面に当接する、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも硬い、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記第1端面は、前記外周面に接続される外縁に位置する環状の段差部を有し、
前記第2弾性部材は、前記段差部に当接する、請求項1~3のいずれか1つに記載のホルダ。
【請求項5】
前記中心軸を含む断面において、
前記第2弾性部材の断面の中心が、前記第1端面よりも前記第2端の近くに位置する、請求項4に記載のホルダ。
【請求項6】
前記中心軸を含む断面において、
前記第2弾性部材の断面の中心が、前記外周面よりも前記中心軸の近くに位置する、請求項4又は5に記載のホルダ。
【請求項7】
前記内表面及び前記外周面の間隔が、前記内表面及び前記第1端面の間隔よりも広い、請求項1~6のいずれか1つに記載のホルダ。
【請求項8】
前記内表面の表面粗さが、前記本体の外表面における表面粗さよりも小さい、請求項1~7のいずれか1つに記載のホルダ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載のホルダと、
前記ホルダに装着された切削インサートと、を備えた、切削工具。
【請求項10】
請求項9に記載の切削工具及び被削材のうち少なくとも一方を回転させる工程と、
前記切削工具を前記被削材に接触させる工程と、
前記切削工具を前記被削材から離す工程と、を備えた、切削加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年4月6日に出願された日本国特許出願2020-068404号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、切削加工において用いられるホルダに関する。具体的には、防振機構を備えたホルダに関する。
【背景技術】
【0003】
従来から防振機構を備えた切削工具が提案されている。特表2017-500507号公報(特許文献1)に記載の切削工具においては、ホルダの本体が空洞を有し、この空洞に吸収体及び弾性要素が封入される。吸収体は、制振ピースとして機能する。弾性要素は、空洞に対する吸収体の位置決め部材として機能する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の限定されない一面に基づくホルダは、中心軸に沿って第1端から第2端にかけて延びた棒形状であって、前記中心軸に沿って延びた円筒形状の空洞を有する本体と、前記空洞の内部に位置する円柱形状の錘と、前記空洞の内表面及び前記錘に当接する弾性部材と、を有する。前記錘は、前記第1端の側に位置する第1端面と、前記第2端の側に位置する第2端面と、前記第1端面及び前記第2端面に接続された外周面と、を有する。前記弾性部材は、前記内表面及び前記外周面に当接する環状の第1弾性部材と、前記内表面及び前記第1端面に当接する環状の第2弾性部材と、を有する。前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも太い。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の限定されない一面のホルダ(切削工具)を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す領域A1を拡大した拡大図である。
【
図3】
図1に示すIII-III断面の断面図である。
【
図4】
図3に示す領域A2を拡大した拡大図である。
【
図5】
図1に示すホルダにおける錘及び弾性部材の斜視図である。
【
図6】
図1に示すホルダにおける錘の斜視図である。
【
図7】
図1に示すホルダにおける錘及び弾性部材の側面図である。
【
図8】
図1に示すホルダにおける錘の側面図である。
【
図9】本開示の限定されない一面の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
【
図10】本開示の限定されない一面の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
【
図11】本開示の限定されない一面の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<ホルダ>
以下、本開示の限定されない一面のホルダ1について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図では、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示される。したがって、ホルダ1は、参照する各図に示されない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0007】
ホルダ1は、
図1に示す限定されない一例のように、中心軸O1に沿って第1端3aから第2端3bにかけて延びた棒形状の本体3を有してもよい。一般的には、第1端3aが「先端」と呼ばれ、第2端3bが「後端」と呼ばれる。本体3は、例えば、円柱形状であってもよく、また、多角柱形状であってもよい。本体3の材質としては、例えば、鋼、鋳鉄及びアルミニウム合金などが挙げられ得る。
【0008】
本体3の大きさは、被削材の大きさに応じて適宜設定されてもよい。例えば、中心軸O1に沿った方向における本体3の長さは、60mm以上3500mm以下程度に設定されてもよい。また、中心軸O1に直交する方向における本体3の幅(径)は、6mm以上250mm以下程度に設定されてもよい。
【0009】
本体3は、
図2に示す限定されない一例のように、第1端3aの側に位置し、切削インサートを取り付け可能なポケット5を有してもよい。ポケット5は、切削インサートの取り付け前は本体3のうち第1端3aの側において窪んだ部位であってもよい。ポケット5の数は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。ポケット5の数が複数の場合には、その数は、2~10であってもよい。
【0010】
本体3は、
図3に示す限定されない一例のように、空洞7を有してもよい。空洞7は、以下で説明する錘を内部に収容するために用いることが可能である。空洞7は、中心軸O1に沿って延びてもよい。また、空洞7は、円筒形状であってもよい。円筒形状とは、概ね円筒形状であればよく、厳密な意味での円筒形状である必要はない。なお、空洞7は、ポケット5よりも第2端3bの近くに位置してもよい。この場合には、本体3のうちポケット5が位置する部分の剛性が確保され易い。
【0011】
ホルダ1は、錘9を有してもよい。錘9は、防振部材として機能することが可能である。錘9は、空洞7の内部に位置してもよい。また、錘9は、
図5~
図8に示す限定されない一例のように、円柱形状であってもよい。円柱形状とは、概ね円柱形状であればよく、厳密な意味での円柱形状である必要はない。
【0012】
錘9の材質としては、例えば、タングステン合金などが挙げられ得る。錘9の材質の比重は、本体3の材質の比重と同じであってもよく、また、異なってもよい。例えば、錘9の材質の比重は、本体3の材質の比重よりも大きくてもよい。
【0013】
ホルダ1は、弾性部材11を有してもよい。弾性部材11は、
図4に示す限定されない一例のように、空洞7の内表面13及び錘9に当接(接触)してもよい。弾性部材11は、空洞7に対する錘9の位置決め部材として機能することが可能である。また、弾性部材11は、防振性能に寄与する部材としても機能することが可能である。
【0014】
弾性部材11の材質としては、例えば、ゴム及び樹脂などが挙げられ得る。具体的には、天然ゴム、ブタジエンゴム、エチレンゴム、プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム及びシリコーンゴムなどが挙げられ得る。
【0015】
ここで、錘9は、第1端面15、第2端面17及び外周面19を有してもよい。第1端面15は、第1端3aの側に位置してもよい。第2端面17は、第2端3bの側に位置してもよい。外周面19は、第1端面15及び第2端面17に接続されてもよい。
【0016】
弾性部材11は、第1弾性部材21及び第2弾性部材23を有してもよい。第1弾性部材21は、内表面13及び外周面19に当接してもよい。第2弾性部材23は、内表面13及び第1端面15に当接してもよい。
【0017】
第1弾性部材21及び第2弾性部材23は、環状であってもよい。
図5に示す限定されない一例のように、第1弾性部材21及び第2弾性部材23は、円環状であってもよい。
【0018】
弾性部材11が上記の第1弾性部材21を有する場合には、中心軸O1に直交する方向での防振機能が得られ易い。また、弾性部材11が上記の第2弾性部材23を有する場合には、中心軸O1に沿った方向での防振機能が得られ易い。そのため、ホルダ1の防振性能が高い。
【0019】
第2弾性部材23は、第1弾性部材21よりも太くてもよい。言い換えれば、
図4に示す限定されない一例のように、第2弾性部材23の最大幅W12が、第1弾性部材21の最大幅W11よりも大きくてもよい。
【0020】
通常、錘及び弾性部材が空洞に封入されるホルダは、錘及び弾性部材を空洞に挿入するため、中心軸に沿った方向に開口する凹部を有する本体と、凹部の開口を塞ぐ蓋体と、を有する。錘及び弾性部材が空洞に挿入された後、凹部の開口が蓋体によって閉じられる。
【0021】
第2弾性部材23には、第1弾性部材21と比較して常時大きな負荷が加わり易い。第2弾性部材23が第1弾性部材21よりも太い場合には、第2弾性部材23の広範囲に上記の負荷が分散され易く、第2弾性部材23が劣化しにくい。そのため、ホルダ1の防振性能が高い。
【0022】
第2弾性部材23の最大幅W12は、第1弾性部材21の最大幅W11の1.2倍以上であってもよい。また、最大幅W12は、最大幅W11の7倍以下であってもよい。最大幅W11は、0.5mm~3mm程度に設定されてもよい。最大幅W12は、0.6mm~20mm程度に設定されてもよい。
【0023】
第2弾性部材23の外径は、第1弾性部材21の外径と同じであってもよく、また、異なってもよい。第2弾性部材23の内径は、第1弾性部材21の内径と同じであってもよく、また、異なってもよい。例えば、
図4に示す限定されない一例のように、第2弾性部材23の外径が、第1弾性部材21の外径と同じであってもよく、また、第2弾性部材23の内径が、第1弾性部材21の内径よりも小さくてもよい。
【0024】
内表面13は、第1面25、第2面27及び内周面29を有してもよい。第1面25は、第1端3aの側に位置してもよい。第2面27は、第2端3bの側に位置してもよい。内周面29は、第1面25及び第2面27に接続されてもよい。なお、第1面25は、第1端面15と対向してもよい。第2面27は、第2端面17と対向してもよい。内周面29は、外周面19と対向してもよい。
【0025】
第2弾性部材23は、第1面25及び内周面29に当接してもよい。この場合には、中心軸O1に直交する方向での防振機能に第2弾性部材23も寄与し得るため、防振機能が向上し易い。
【0026】
第2弾性部材23の硬さは、第1弾性部材21の硬さと同じであってもよく、また、異なってもよい。第2弾性部材23が、第1弾性部材21よりも硬い場合には、常時大きな負荷が加わり易い第2弾性部材23の耐久性が高い。そのため、ホルダ1の耐久性が高い。なお、上記した第2弾性部材23が第1弾性部材21よりも硬いは、第2弾性部材23が第1弾性部材21よりもヤング率(弾性率)が高い、と置き換えてもよい。
【0027】
第1弾性部材21及び第2弾性部材23の硬さは、特定の値に限定されない。硬さをヤング率によって評価する場合には、第1弾性部材21のヤング率は、0.5~1.5MPa程度に設定されてもよい。第2弾性部材23のヤング率は、1.5~5MPa程度に設定されてもよい。ヤング率は、ナノインデンテーション法を用いて測定してもよい。
【0028】
第1端面15は、
図6に示す限定されない一例のように、段差部31を有してもよい。段差部31は、外周面19に接続される第1端面15の外縁に位置してもよい。段差部31は、環状であってもよい。段差部31は、円環状であってもよい。
【0029】
第2弾性部材23は、
図4に示す限定されない一例のように、段差部31に当接してもよい。この場合には、錘9に対する第2弾性部材23の位置決め精度が高い。
【0030】
図4に示す限定されない一例のように、中心軸O1を含む断面において、第2弾性部材23の断面の中心O2が、第1端面15よりも第2端3bの近くに位置してもよい。より具体的には、第1端面15が、第1端面15において最も第1端3aの側に位置する第1領域15aを有してもよく、中心O2が、第1領域15aよりも第2端3bの近くに位置してもよい。この場合には、第2弾性部材23が段差部31から外れにくく、錘9に対する第2弾性部材23の位置決め精度が高い。
【0031】
中心軸O1を含む断面において、第2弾性部材23の断面の中心O2が、外周面19よりも中心軸O1の近くに位置してもよい。この場合には、第2弾性部材23が段差部31から外れにくく、錘9に対する第2弾性部材23の位置決め精度が高い。
【0032】
外周面19は、
図6に示す限定されない一例のように、中心軸O1の周方向に沿って延びた溝33を有してもよい。第1弾性部材21は、
図4に示す限定されない一例のように、溝33に当接してもよい。この場合には、錘9に対する第1弾性部材21の位置決め精度が高い。
【0033】
内表面13及び外周面19の間隔W21が、内表面13及び第1端面15の間隔W22よりも広くてもよい。切削加工時のホルダ1の振動は、中心軸O1に沿った方向よりも中心軸O1に直交する方向において大きくなり易い。相対的に大きく振動し易い方向における間隔W21が広い場合には、第1弾性部材21による振動抑制の効果が発揮され易い。
【0034】
中心軸O1を含む断面において、第1弾性部材21の断面の中心O3は、外周面19よりも中心軸O1から離れて位置してもよい。この場合には、第1弾性部材21による振動抑制の効果が発揮され易い。
【0035】
内表面13の表面粗さは、本体3の外表面35における表面粗さと同じであってもよく、また、異なってもよい。内表面13の表面粗さが、外表面35の表面粗さよりも小さい場合には、第1弾性部材21及び第2弾性部材23が傷付きにくい。
【0036】
内表面13及び外表面35の表面粗さは、特定の値に限定されない。表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で評価してもよい。算術平均粗さ(Ra)で表面粗さを評価する場合には、内表面13の算術平均粗さ(Ra)は、1.6μm~6.3μm程度に設定されてもよい。外表面35の算術平均粗さ(Ra)は、1.6μm~6.3μm程度に設定されてもよい。算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601-2001に準拠して測定してもよい。
【0037】
第1弾性部材21の数は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。弾性部材11が、複数の第1弾性部材21を有する場合には、その数は、2~4であってもよい。
【0038】
弾性部材11は、内表面13及び第2端面17に当接する環状の第3弾性部材37を有してもよい。この場合には、中心軸O1に沿った方向での防振機能に第3弾性部材37も寄与し得るため、防振機能が向上し易い。
【0039】
第3弾性部材37は、第1弾性部材21よりも太くてもよい。第3弾性部材37には、第2弾性部材23と同様に、第1弾性部材21と比較して常時大きな負荷が加わり易い。第3弾性部材37が第1弾性部材21よりも太い場合には、第3弾性部材37の広範囲に上記の負荷が分散され易く、第3弾性部材37が劣化しにくい。そのため、ホルダ1の防振性能が高い。なお、第3弾性部材37の構成は、第2弾性部材23の構成と同じであってもよく、また、異なってもよい。
【0040】
図3に示す限定されない一例のように、本体3は、中心軸O1に沿って延びた棒形状の第1部材39と、第1部材39よりも第1端3aの側に位置し、第1部材39に当接(接触)する第2部材41と、をさらに有してもよい。第1部材39は、シャンクとも呼ばれ、工作機械によって把持可能な部材であってもよい。第2部材41は、ヘッドとも呼ばれ、切削インサートを固定可能な部材であってもよい。
図2に示す限定されない一例のように、上記したポケット5は、第2部材41に位置してもよい。
【0041】
図3に示す限定されない一例のように、第1部材39は、第1端3aに向かって開口する凹部43を有してもよい。空洞7は、凹部43及び第2部材41によって形成されてもよい。
【0042】
第1部材39が凹部43を有する場合には、ホルダ1に対する錘9の着脱を、凹部43の開口を介して行うことが可能となる。また、凹部43及び第2部材41によって空洞7が形成される場合には、第1部材39の内部に空洞7が位置することから、切削加工時に大きな衝撃が加わり易い第2部材41の剛性を確保し易い。なお、第1部材39及び第2部材41は、着脱可能に構成されてもよい。
【0043】
中心軸O1に沿った方向における空洞7の中心(中央)7aは、中心軸O1に沿った方向における第1部材39の中心(中央)39aよりも第1端3aの側に位置してもよい。この場合には、切削加工時に大きな衝撃が加わり易い第1端3aの近くに防振機構を構成する空洞7が位置することから、切削加工時にびびり振動が発生しにくい。また、第1部材39のうち中心39aよりも第2端3bの側に位置する部位の剛性を確保し易い。そのため、この部位を工作機械で把持してもよい。なお、空洞7の全体が、中心39aよりも第1端3aの側に位置してもよい。
【0044】
ホルダ1は、凹部43の開口を塞ぐ蓋体をさらに有してもよい。この場合には、錘9が空洞7から意図せずに抜け出すことが避けられ易い。なお、第2部材41を蓋体として用いてもよい。
【0045】
<切削工具>
次に、本開示の限定されない一面の切削工具101について、上記のホルダ1を備える場合を例に挙げて、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0046】
切削工具101は、
図1及び
図2に示す限定されない一例のように、ホルダ1と、ホルダ1に装着された切削インサート103と、を備えてもよい。切削工具101がホルダ1を備える場合には、ホルダ1の防振性能が高いことから、優れた切削性能を発揮することが可能となる。
【0047】
切削インサート103は、単にインサート103といってもよい。また、インサート103は、多角板形状であってもよい。
【0048】
インサート103は、切刃105を有してもよい。インサート103は、切刃105がホルダ1の第1端3aの側において側方に突出するようにポケット5に位置してもよい。切削工具101は、切刃105を被削材に接触させることによって切削加工を行うことが可能である。なお、切刃105は、本体3の第1端3aの側において中心軸O1から最も離れて位置してもよい。この場合には、切刃105の近傍のみを被削材に接触させることが可能となる。
【0049】
インサート103は、貫通孔107をさらに有してもよい。また、切削工具101は、固定部材109をさらに備えてもよい。固定部材109は、インサート103をホルダ1に固定するための部材であってもよい。固定部材109は、ネジであってもよい。なお、固定部材109は、ネジに限定されず、例えば、クランプ部材などであってもよい。
【0050】
ホルダ1は、貫通孔107に対応する位置にネジ孔を有してもよい。インサート103の貫通孔107に固定部材109であるネジを挿入するとともに、このネジをホルダ1のネジ孔に固定することによって、インサート103をホルダ1に固定することが可能である。なお、貫通孔107及びネジ孔は、中心軸O1に直交する方向に延びてもよい。
【0051】
インサート103の材質としては、例えば、超硬合金及びサーメットなどが挙げられ得る。超硬合金の組成としては、例えば、WC-Co、WC-TiC-Co及びWC-TiC-TaC-Coが挙げられ得る。WC-Coは、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成され得る。WC-TiC-Coは、WC-Coに炭化チタン(TiC)を添加したものであってもよい。WC-TiC-TaC-Coは、WC-TiC-Coに炭化タンタル(TaC)を添加したものであってもよい。
【0052】
また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料であってもよい。具体的には、サーメットとして、炭化チタン(TiC)、又は窒化チタン(TiN)などのチタン化合物を主成分としたものが挙げられ得る。
【0053】
<切削加工物の製造方法>
次に、本開示の限定されない一面の切削加工物203の製造方法について
図9~
図11を用いて説明する。
【0054】
切削加工物203の製造方法は、以下の(1)~(4)の工程を備えてもよい。
(1)
図9に示す限定されない一例のように、上記の限定されない実施形態に代表される切削工具101と、被削材201とを準備し、
(2)被削材201を回転させ、
(3)
図10に示す限定されない一例のように、被削材201と切削工具101とを互いに接触させ、
(4)
図11に示す限定されない一例のように、被削材201と切削工具101とを互いに離す。
【0055】
具体的に説明すると、(1)の工程において準備する被削材201の材質としては、例えば、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄及び非鉄金属などが挙げられ得る。
【0056】
(2)の工程では、
図9に示す限定されない一例のように、被削材201をその回転軸O4を基準に回転させてもよい。
【0057】
(3)の工程では、まず、切削工具101を矢印Y1方向に移動させて、回転している被削材201に切削工具101を相対的に近づけてもよい。次に、
図10に示す限定されない一例のように、回転している被削材201に切削工具101を接触させてもよい。そして、被削材201に切刃105を接触させて、被削材201を切削してもよい。
【0058】
(4)の工程では、
図11に示す限定されない一例のように、切削工具101を矢印Y2方向に移動させることによって、切削工具101を被削材201から離し、切削加工物203を得てもよい。
【0059】
切削加工物203の製造方法において、ホルダ1を備える切削工具101を用いる場合には、ホルダ1の防振性能が高いことから、びびり振動の発生を抑制しつつ優れた加工精度で被削材201を切削することが可能となる。その結果、精度が高い加工表面を有する切削加工物203を得ることが可能となる。
【0060】
なお、(3)の工程では、被削材201を切削工具101に近づけてもよい。(4)の工程では、被削材201を切削工具101から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、被削材201を回転させた状態を維持して、被削材201の異なる箇所に切刃105を接触させる工程を繰り返してもよい。
【0061】
以上、限定されない実施形態のホルダ1、切削工具101及び切削加工物203の製造方法について例示したが、本開示は上記の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。
【0062】
例えば、上記の限定されない実施形態では、切削工具101が旋削工具であるが、これに代えて、切削工具101を、例えば、転削工具にしてもよい。切削工具101を転削工具にする場合には、切削加工物203の製造方法における(2)の工程では、切削工具101を回転させてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1・・・ホルダ
3・・・本体
3a・・第1端
3b・・第2端
5・・・ポケット
7・・・空洞
7a・・中心(中央)
9・・・錘
11・・・弾性部材
13・・・内表面
15・・・第1端面
15a・・第1領域
17・・・第2端面
19・・・外周面
21・・・第1弾性部材
23・・・第2弾性部材
25・・・第1面
27・・・第2面
29・・・内周面
31・・・段差部
33・・・溝
35・・・外表面
37・・・第3弾性部材
39・・・第1部材
39a・・中心(中央)
41・・・第2部材
43・・・凹部
101・・・切削工具
103・・・切削インサート(インサート)
105・・・切刃
107・・・貫通孔
109・・・固定部材(ネジ)
201・・・被削材
203・・・切削加工物
O1・・・中心軸
O2・・・第2弾性部材の断面の中心
O3・・・第1弾性部材の断面の中心
O4・・・回転軸